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特開2024-120800ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム
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  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図1
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図2
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図3
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図4
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図5
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図6
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図7
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図8
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図9
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図10
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図11
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図12
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図13
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図14
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図15
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図16
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図17
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図18
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図19
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図20
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図21
  • 特開-ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム 図22
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120800
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム
(51)【国際特許分類】
   A21B 5/04 20060101AFI20240829BHJP
   B25J 9/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A21B5/04
B25J9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027860
(22)【出願日】2023-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】504410941
【氏名又は名称】株式会社 不二商会
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】藤波 哲也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707AS30
3C707BS10
3C707DS02
3C707EV25
3C707EW07
(57)【要約】

【課題】 作業員の作業環境を改善でき、バウムクーヘン焼成機の全自動化を実現して、省力化できる新しいバウムクーヘン焼成システムを提供する。
【解決手段】 バウムクーヘン焼成システム100は、バウムクーヘン焼成機本体200と、ロボットアーム300と、架棒体400と、架棒体ラック500を備える。バウムクーヘン焼成機本体200は、ロボットアーム300はアーム先端部、クランプ機構を備え、架棒体400は中央円筒部と両端の支持棒とその溝部を備える。クランプ機構で架棒体400の溝部をクランプして持ち上げ、アンクランプして離脱する。このクランプ、アンクランプをバウムクーヘン焼成機本体200の架棒体セッティングプロセス、焼成プロセス、架棒体回収プロセスに連動して実行する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源が搭載された焼成炉と、回転ドラム軸によって回転可能に支架された向かい合う左右一対の回転ドラムと、前記回転ドラム間へ横架される架棒体と、前記回転ドラムによる間欠回転により前記架棒体の位置を、前記焼成炉の開口内の付近に設けられた第1の公転間欠停止位置から、前記焼成炉の開口内の上側付近に設けられた第2の公転間欠停止位置、さらに後続の複数の公転間欠停止位置を経て前記第1の公転間欠停止位置まで順に公転移動させて周回する公転運動と、前記回転ドラムに横架された状態で前記架棒体を自転させる自転運動を制御する駆動機構と、前記第1の公転間欠停止位置にある前記架棒体に生地を塗布するための生地トレイと、前記生地トレイの昇降運動を可能とする生地トレイ昇降装置を備えたバウムクーヘン焼成機本体と、
前記架棒体を懸架して収納する架棒体ラックと、
前記バウムクーヘン焼成機本体と前記架棒体ラックとの間で前記架棒体を受け渡しするロボットアームを備えたことを特徴とするロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム。
【請求項2】
前記ロボットアームが、前記架棒体を把持して受け取る受け取り動作と、把持している前記架棒体をリリースして受け渡す受け渡し動作を行うワーク部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム。
【請求項3】
稼働プロセスとして、少なくとも、架棒体セッティングプロセス、焼成プロセス、架棒体回収プロセスを備え、
前記ロボットアームが前記ワーク部を用いて、
前記架棒体セッティングプロセスにおいて、前記架棒体ラックに懸架されている前記架棒体を前記ワーク部により順次受け取って取り出し、前記バウムクーヘン焼成機本体の前記回転ドラムに対して順次受け渡して横架する架棒体セッティング処理を実行し、
前記架棒体回収プロセスにおいて、前記バウムクーヘン焼成機本体の前記回転ドラムに横架されている前記架棒体を前記ワーク部により順次受け取って取り出し、前記架棒体ラックに対して順次受け渡して懸架する架棒体回収処理を実行することを特徴とする請求項2に記載のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム。
【請求項4】
前記架棒体が、前記バウムクーヘンが焼成される中央円筒部と、前記中央円筒部の両端からそれぞれ外に延設され、前記回転ドラムの横架部に横架する支持棒を備えた構造であり、
前記支持棒において、前記回転ドラムの前記横架部に嵌合する支架形状と、前記ロボットアームの前記ワーク部のクランプ機構を受け入れる把持受部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム。
【請求項5】
前記架棒体の前記中央円筒部がアルミニウム合金素材またはチタン合金素材で形成され、前記支持棒がステンレス素材または鋼材で形成されたものであることを特徴とする請求項4に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項6】
前記架棒体の前記支持棒における前記把持受部が溝であり、前記溝以外の前記支持棒の径である支持棒径に比べて前記溝の径である溝径が小さいものであり、
前記ロボットアームの前記ワーク部の前記クランプ機構が、前記把持受部の前記溝の幅よりも大きく前記溝に収まるクランプ片と、前記クランプ片が形成する把持径を可変とする可動片を備えたクランプ機構であり、
前記クランプ機構が、前記架棒体を外したアンクランプ状態では前記把持径が前記架棒体の前記溝径よりも大きく変化し、前記架棒体を懸架したクランプ状態では前記把持径が前記溝径よりも小さいものに変化することを特徴とする請求項4に記載のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム。
【請求項7】
前記クランプ機構が、前記架棒体の重量の印加がある場合に前記クランプ状態となり、前記架棒体の重量の印加が除去された場合には前記アンクランプ状態となることを特徴とする請求項6に記載のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム。
【請求項8】
前記回転ドラムが、前記駆動機構の前記公転運動に伴って公転回転をする前記横架部と、
前記横架部の前記公転回転と同一の前記公転運動をし、前記架棒体が下方に落下しないように支持する載置枠を備え、
前記載置枠が、前記第1の公転間欠停止位置において前記架棒体が下方に落下しない角度で前記架棒体を載置できる形状を備え、
前記架棒体セッティング処理において、
前記ロボットアームが、前記架棒体を前記載置枠に受け渡しをし、
前記横架部が、前記載置枠に載置された前記架棒体の両端にある前記支架形状を、対向するそれぞれの前記横架部により嵌合して支持することを特徴とする請求項7に記載のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム。
【請求項9】
前記回転ドラムの前記横架部が、前記架棒体の前記支架形状を前記横架部に対して固定するロック状態と、前記架棒体の前記支架形状を前記横架部に対する前記嵌合を外して固定を解くアンロック状態を切り替えるロック/アンロック機構を備えていることを特徴とする請求項8に記載のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム。
【請求項10】
前記回転ドラムが、前記横架部において、前記架棒体の前記支架形状に嵌合する凹部と、左右一対で対向し合う前記横架部の対向軸を回転軸として前記凹部を回転させる回転制御部と、前記凹部の底面から対向する前記横架部の方向へ突出と縮退が制御できる突出子を備え、
前記ロック状態への遷移において、左右一対で対向し合う前記横架部の一方の前記横架部の前記突出子が突出し、前記載置枠に載置されている前記架棒体を対向し合う他方側の前記横架部に対して押し込んで前記支持体を当該他方側の前記横架部の前記凹部に嵌合させて固定状態とし、前記回転制御部により前記架棒体が自転を開始し、
前記アンロック状態への遷移において、他方の前記横架部の前記突出子が突出し、押し込まれている前記支持体を前記一方側に前記横架部の前記凹部の嵌合を離脱させ、前記架棒体を前記載置枠に載置された状態に戻すことを特徴とする請求項9に記載のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム。
【請求項11】
前記駆動機構による前記公転運動の間欠運動の停止期間において、前記第1の公転間欠停止位置にある前記架棒体に生地を塗布する生地塗布期間と、それ以外の非生地塗布期間があり、
前記生地トレイ昇降装置が、前記生地塗布期間において前記生地トレイが前記架棒体に生地を塗布する高さまで前記生地トレイを上昇させ、前記非生地塗布期間において前記生地トレイが前記架棒体に生地を塗布する高さから下方に前記生地トレイを下降させ、
前記生地トレイが、その上面開口を開閉する蓋と、前記上面開口に対する前記蓋の開閉運動を行う蓋開閉機構を備え、当該蓋開閉機構による前記蓋の前記開閉運動が前記ロボットアームにより制御され、バウムクーヘンの焼成プロセスと連動するよう制御されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項12】
前記ロボットアームの前記蓋開閉機構の操作により、前記生地トレイが前記生地塗布期間中にあるときは、前記蓋を全面開放状態または少なくとも前記架棒体への前記生地の塗布を可能となる範囲で開放状態とし、前記生地トレイが前記非生地塗布期間中にあるときは、前記蓋を全面閉鎖状態となるよう制御することを特徴とする請求項11に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項13】
前記蓋が前記生地トレイの前記上面開口に対してスライドシャッターと前記スライドシャッターの操作片を備えたものであり、
前記ロボットアームが、前記蓋の前記操作片を操作して前記スライドシャッターのスライド運動を制御する操作部を備えていることを特徴とする請求項12に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項14】
前記蓋が前記生地トレイ内の生地を撹拌する撹拌子を備えたことを特徴とする請求項13に記載のバウムクーヘン焼成機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地を用いて焼成するバウムクーヘン焼成機本体をロボットアームを用いて稼働させるバウムクーヘン焼成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のバウムクーヘン焼成機は、例えば、実公昭46-4878号公報や、特公平7-24532号公報などに開示されているように、焼成炉の内部へ間欠回転可能に軸架された向かい合う左右一対の円形ドラムと、その両円形ドラムの左右相互間へ着脱自在に介挿使用される水平な麺棒とを備え、その麺棒が最下段位置へ到達した一旦停止時に、生地皿から生地を巻き付け状態に塗布されて、上記焼成炉の内部において自転しながら公転する運動中に、その生地を焼成する。このようなサイクルを繰り返すことにより、上記生地が樹木の年輪状に積層されたバウムクーヘンを製造するものが基本構造であった。
【0003】
図21は、自転運動と公転運動により回転ドラムに横架した麺棒に生地を塗布しながら焼成する一般的なバウムクーヘン焼成機の基本構造を示す図である。
一般的なバウムクーヘン焼成機では、公転軌道に沿って間欠的に周回する運動において、6か所の停止場所がある。図21において、それぞれの停止位置をP1からP6とする。それぞれの停止位置P1からP6ではバウムクーヘン焼成プロセスにおいて担っている役割としては以下の通りである。
【0004】
バウムクーヘンの焼成プロセスにおいて、P1は作業員による生地づけ、P2は作業員による生地成型、P3は蒸らし焼成、P4は本焼成、P5は色付け焼成、P6は整え準備である。
このうち、加熱焼成できる生地焼成ゾーンにある停止位置はP3からP6までの4か所である。特に、炉の構造上、P4の本焼成、P5の色付け焼成の2か所がメインとなっている。
バウムクーヘン焼成機は、その構造上、回転ドラムに横架している棒を生地に浸漬する段階と、浸漬して棒の周囲に付いた生地を自転させながら焼成する焼成段階とを交互にしながら焼成してゆくが、一般には生地の焼成を15層から30層程度を重ねるものが多い。
【0005】
【特許文献1】実公昭46-4878号公報
【特許文献2】特公平7-24532号公報
【特許文献3】特許第3686671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のバウムクーヘン焼成機における課題の一つは、焼成作業における省力化と作業員の負荷低減である。
バウムクーヘン焼成機は自動運転機であるが、バウムクーヘンの焼成を進めるため、運転中に作業員が必要であり、一部の成型作業を担っている。上記のバウムクーヘンの焼成プロセスにおいて、バウムクーヘン焼成機の正面にある開放空間である生地塗布ゾーンZ1の前に立ち、P1の生地づけ、P2の生地成型の操作を介助する必要がある。P1の生地づけプロセスでは生地トレイにおける生地の深さが重要であり、生地の供給をこまめに行う必要がある。また、P2の生地成型プロセスは、生地トレイから上昇した架棒体の生地の状態を確認し、バウムクーヘンの表面に生地づけされた状態をヘラなどで成型する必要がある。このP2の生地成型プロセスは自然で綺麗に焼き上がりに仕上げるためには自動化が難しく、作業員が介在した方が焼き上がりの品質が良い。
しかし、焼成機を操作する製造作業員の立ち位置は、バウムクーヘン焼成機の正面にある開放空間である生地塗布ゾーンZ1の前であり、高温で稼働している炉の開放された部分であるので遮熱することが難しく、放熱が大きくならざるを得ない。焼成機を操作する製造作業員の耐火温度にも限界があり、作業空間の改善が必要となっていた。
【0007】
この作業員の負荷を低減する工夫がされた優秀なバウムクーヘン焼成機は、本願出願人が特許権を取得済みの特許文献3の従来のバウムクーヘン焼成機がある。
この特許文献3の従来のバウムクーヘン焼成機は、焼成プロセスのうち、P2とP3との間、P6とP1との間に仕切板を設け、焼成プロセスの進行に伴ってこれら仕切板を開閉することで、焼成炉の入口が一時的に閉鎖されており、生地皿が熱に暴露した状態となる時間を短縮させていた。
図22は、特許第3686671号公報のバウムクーヘン焼成機の基本構造を示す図である。図22において、焼成炉Bを生地皿72が存在する入口側の生地塗布ゾーンZ1と、加熱源のガスバーナー8、9が存在する内奥側の生地焼成ゾーンZ2に仕切って区分できる第1仕切りシャッター43および第2仕切り回転シャッター45を設置すると共に、その第1仕切りシャッター43および第2仕切り回転シャッター45を回転ドラム14の間欠的な回転駆動と同期して、麺棒16の公転運動軌跡Rを遮断する如く進退作動させることにより、その回転ドラム14の一旦停止中には上記生地焼成ゾーンZ2を密閉して、ここからの放熱を防止する一方、上記回転ドラム14の回転時には同じく生地焼成ゾーンZ2を生地塗布ゾーンZ1との連通状態に開放するように定めたものとなっている。蓋43は焼成機の下方空間に余裕があるので上下昇降式の稼働で良いが、第2の仕切り回転シャッター45は焼成機の前面空間は作業員の作業空間であり余裕がないので、回転シャッター式となっている。
【0008】
ここで、本発明者は、完全全自動のバウムクーヘン焼成機を実現し、作業員の作業環境を改善できる可能性があることに気付いた。
作業員の作業を省力化する一つの方法として、自動車の組み立てラインなどではロボットアームを用いているケースがある。
ロボットアームはその先端に特定機能を備えたワークが装備されている。簡単なワークであれば従来技術においても利用可能となっている。例えば、電気溶接用の半田ごてが組み込まれていれば、自動車の溶接部分にワークを押し当てて溶接作業を代替することが可能である。
研究用のロボットアームであればいわゆる人の手指が再現されているワークもある。しかし、そのような人の手指型のワークは極めて高価であり、バウムクーヘン焼成機の焼成プロセスの一部を代替するにはコストパフォーマンスが明らかに合わない。また焼成炉の熱に暴露するため耐熱性に問題があったり、故障などの不具合が発生したりするおそれもある。
作業員の負担軽減を考えれば、バウムクーヘン焼成機の焼成プロセスの一部を代替するためロボットアームを用いることにはメリットもあることは確かである。
【0009】
しかし、現在、ロボットアームのワークとして、バウムクーヘン焼成機において用いられる架棒体(めん棒)を把持したり離したりする適切なワークが知られていない。
そこで、低コストでバウムクーヘン焼成機において用いられる架棒体を把持したり離したりする適切なワークを開発する余地があった。
【0010】
第2の課題は、バウムクーヘン焼成機の焼成炉前面に配置される生地皿の表面付近の生地が焼成炉の熱に暴露されてしまうことである。
上記した特許文献1や特許文献2の従来の旧型のバウムクーヘン焼成機であれば、焼成炉の入口が上記開放されており、生地皿が常に熱に暴露した状態であった。そのため、生地皿表面付近の生地が焼成炉の熱で加熱されて蓄熱してゆき、均一な品質の焼成状態のバウムクーヘンを得ることができないという問題があった。
特許文献3の特許第3686671号公報のバウムクーヘン焼成機であれば、第1仕切りシャッター43および第2仕切り回転シャッター45を設置しているので、焼成熱が開口から生地皿へ印加されるタイミングを低減でき、生地皿内の生地への蓄熱を低減することができる。
しかし、バウムクーヘンの焼成時間は長いうえ、生地皿の配置位置は焼成炉に近く温度が高いため、生地皿表面付近の生地には蓄熱が進んでゆくので改善する余地があった。
【0011】
本発明者は、生地皿にかかる熱を効率的に制御し、また、生地皿内の生地の蓄熱状態を効率的に分散化させるように改良できればバウムクーヘンの生地の状態を改善でき、バウムクーヘンの焼き上がりを改善できる可能性があることに気付いた。例えば、その生地皿への熱の印加をロボットアームのワークを通じて防止できる可能性に気付いた。
【0012】
そこで、以上の問題点に鑑み、本発明は、作業員の作業環境を改善でき、バウムクーヘン焼成機の全自動化を実現して、省力化できる新しいバウムクーヘン焼成機を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、生地皿が暴露する熱を制御し、しっとりと柔らかい焼き上がりを実現する新しいバウムクーヘン焼成機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。なお、以下に記載の構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
本発明のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システムは、熱源が搭載された焼成炉と、回転ドラム軸によって回転可能に支架された向かい合う左右一対の回転ドラムと、前記回転ドラム間へ横架される架棒体と、前記回転ドラムによる間欠回転により前記架棒体の位置を、前記焼成炉の開口内の付近に設けられた第1の公転間欠停止位置から、前記焼成炉の開口内の上側付近に設けられた第2の公転間欠停止位置、さらに後続の複数の公転間欠停止位置を経て前記第1の公転間欠停止位置まで順に公転移動させて周回する公転運動と、前記回転ドラムに横架された状態で前記架棒体を自転させる自転運動を制御する駆動機構と、前記第1の公転間欠停止位置にある前記架棒体に生地を塗布するための生地トレイと、前記生地トレイの昇降運動を可能とする生地トレイ昇降装置を備えたバウムクーヘン焼成機本体と、前記架棒体を懸架して収納する架棒体ラックと、前記バウムクーヘン焼成機本体と前記架棒体ラックとの間で前記架棒体を受け渡しするロボットアームを備えたことを特徴とするロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システムである。
上記構成により、ロボットアームが焼成プロセスの一部を担うため、作業員の作業環境を改善でき、バウムクーヘン焼成機の全自動化を実現して、省力化できる。
【0014】
ここで、ロボットアームが焼成プロセスの一部を担うため、ロボットアームが、前記架棒体を把持して受け取る受け取り動作と、把持している前記架棒体をリリースして受け渡す受け渡し動作を行うワーク部を備えた構成である。
そのワークの構造を説明する。なお、低コスト化のため、架棒体の方にもワークを受け入れる構造を持つ。
【0015】
架棒体は、前記バウムクーヘンが焼成される中央円筒部と、前記中央円筒部の両端からそれぞれ外に延設され、前記回転ドラムの横架部に横架する支持棒を備えた構造である。
ここで、前記支持棒において、前記回転ドラムの前記横架部に嵌合する支架形状と、前記ロボットアームの前記ワーク部のクランプ機構を受け入れる把持受部が設けられている構造とする。
例えば、素材としては、架棒体の前記中央円筒部がアルミニウム合金素材またはチタン合金素材で形成され、支持棒がステンレス素材または鋼材で形成されたものなどがあり得る。しかし、架棒体の素材は上記には限定されず、木製、樹脂製など様々な素材も可能である。
架棒体の支持棒における把持受部であるが、溝形状とすることができる。溝であるので溝以外の支持棒の径である支持棒径に比べて溝の径である溝径は小さいものとなっている。
【0016】
次に、ロボットアーム側のワークについて述べる。
ロボットアームのワーク部のクランプ機構として、前記把持受部の前記溝の幅よりも大きく前記溝に収まるクランプ片と、前記クランプ片が形成する把持径を可変とする可動片を備えたクランプ機構とする構成がある。
このクランプ機構が、前記架棒体を外したアンクランプ状態では前記把持径が前記架棒体の前記溝径よりも大きく変化し、前記架棒体を懸架したクランプ状態では前記把持径が前記溝径よりも小さいものに変化する。
例えば、このクランプ機構の変化は、前記架棒体の重量の印加がある場合に前記クランプ状態となり、前記架棒体の重量の印加が除去された場合には前記アンクランプ状態となるものが好ましい。
【0017】
上記構成により、架棒体とワークとの関係において、相対的に下方からワークのクランプ機構が架棒体の溝に向けてアクセスし、そのままワークが上昇すればワークのクランプ機構のクランプ片がアンクランプ状態から架棒体の把持受部の溝を捉えてクランプ状態に変化できる。つまり、アンクランプ状態では把持径が架棒体の溝径よりも大きいので、下方からワークのクランプ機構が架棒体の溝に向けてアクセスでき、その後、架棒体の重量によりクランプ状態に変化すると、把持径が溝径よりも小さいものに変化するため、クランプした架棒体をしっかりと把持できる。
逆に、相対的にワークのクランプ機構が架棒体の溝をクランプしたまま下方に向けて移動し、架棒体が別の物体により下方移動を制限されると、そのままワークだけが下降すればワークのクランプ機構のクランプ片がクランプ状態から架棒体の把持受部の溝を開放するアンクランプ状態に変化できる。
【0018】
このロボットアームのワーク部のクランプ機構を用いて、バウムクーヘン焼成機本体の架棒体を把持したり離したりする。
そのワークによる把持と離脱を適用は、バウムクーヘン焼成機本体における以下のプロセスに適用する。
バウムクーヘン焼成機本体が、稼働プロセスとして、少なくとも、架棒体セッティングプロセス、焼成プロセス、架棒体回収プロセスを備え、前記ロボットアームが前記ワーク部を用いて、前記架棒体セッティングプロセスにおいて、前記架棒体ラックに懸架されている前記架棒体を前記ワーク部により順次受け取って取り出し、前記バウムクーヘン焼成機本体の前記回転ドラムに対して順次受け渡して横架する架棒体セッティング処理を実行し、前記架棒体回収プロセスにおいて、前記バウムクーヘン焼成機本体の前記回転ドラムに横架されている前記架棒体を前記ワーク部により順次受け取って取り出し、前記架棒体ラックに対して順次受け渡して懸架する架棒体回収処理を実行する。
【0019】
上記構成により、架棒体セッティングプロセスにおいて、ロボットアームが、架棒体ラックに掛けられているバウムクーヘン焼成前の架棒体を次々と取り出して、次々とバウムクーヘン焼成機本体の回転ドラムに対して順次受け渡して横架することで、“架棒体セッティング処理”を実行する。
【0020】
なお、ロボットアームのワークから架棒体をバウムクーヘン焼成機本体の回転ドラムが受け取るため、回転ドラムが横架部の公転回転と同一の公転運動をする円板状の所定箇所に、一時的に架棒体を載置支持して下方に落下しないように支持する「載置枠」を備えた構成とする。
例えば、載置枠の形状がいわゆるC型の窪みを持っており、第1の公転間欠停止位置において架棒体が下方に落下しない角度、つまり、C型の窪みの開口部が上を向き、C字の辺が下にあれば、架棒体を載置できる形状となる。つまり、第1の公転間欠停止位置に到来したときに載置枠がC型の窪みの開口部が上を向くように公転するものであれば良い。
この載置枠を用いれば、架棒体セッティング処理において、前記ロボットアームが、前記架棒体を前記載置枠に受け渡しができる。
【0021】
なお、載置枠は架棒体を一時的に載置支持するものであり、架棒体が焼成プロセスに従って焼成炉内を公転したり、自転したりするためには、架棒体がしっかりと嵌合支持される必要がある。
そこで、横架部が載置枠に載置された架棒体の両端にある支架形状を対向するそれぞれの横架部により嵌合して支持するものとする。
例えば、回転ドラムの横架部が、架棒体の支架形状を横架部に対して固定するロック状態と、架棒体の支架形状を横架部に対する嵌合を外して固定を解くアンロック状態を切り替えるロック/アンロック機構を備えている構成がある。
【0022】
ここで、回転ドラムが、横架部において、架棒体の支架形状に嵌合する凹部と、左右一対で対向し合う横架部の対向軸を回転軸として凹部を回転させる回転制御部と、凹部の底面から対向する横架部の方向へ突出と縮退が制御できる突出子を備えた構成とする。
ロック/アンロック機構は、ロック状態への遷移において、左右一対で対向し合う横架部の一方の横架部の突出子が突出し、載置枠に載置されている架棒体を対向し合う他方側の横架部に対して押し込んで支持体を当該他方側の横架部の凹部に嵌合させて固定状態とする。このロック状態において、架棒体が回転ドラム間に固定され、回転制御部により自転を開始する。つまり、回転ドラムの一方の横架部から突出子が架棒体を他方へ押し付けることにより、嵌合して固定される。
また、ロック/アンロック機構は、アンロック状態への遷移において、他方の横架部の突出子が突出し、押し込まれている支持体を一方側に横架部の凹部の嵌合を離脱させ、架棒体を載置枠に載置された状態に戻してアンロック状態とする。つまり、回転ドラムの他方の横架部から突出子が架棒体を一方側へ押し戻すことにより、嵌合が外れて架棒体の固定状態が開放される。ここで、架棒体は載置枠に載置された状態に戻るので、架棒体が下方に落下することなく、ロボットアームのワークにより回収されるのを待つ状態となる。
【0023】
次に、本発明の第2の課題、つまり、生地皿が暴露する熱を制御し、しっとりと柔らかい焼き上がりを実現する新しいバウムクーヘン焼成機を提供する点について述べる。
本発明では、この課題を生地トレイにその上面開口を開閉する蓋と、上面開口に対する蓋の開閉運動を行う蓋開閉機構を備えた構成とすることで解決する。
なお、蓋開閉機構による蓋の開閉運動をバウムクーヘンの焼成プロセスと連動するよう制御し、さらに、蓋開閉動作をロボットアームにより行うものとする。上記したように、本発明のバウムクーヘン焼成機システムにおいて、バウムクーヘン焼成機本体の稼働プロセスには、少なくとも、架棒体セッティングプロセス、焼成プロセス、架棒体回収プロセスがあるが、この焼成プロセスにおいて、ロボットアームを用いた蓋開閉動作を実行する。
【0024】
もともと、焼成プロセスにおいて生地皿は昇降する。つまり、駆動機構による公転運動の間欠運動の停止期間において、第1の公転間欠停止位置にある架棒体に生地を塗布する生地塗布期間と、それ以外の非生地塗布期間があるものとし、生地トレイ昇降装置が、生地塗布期間において生地トレイが架棒体に生地を塗布する高さまで生地トレイを上昇させ、非生地塗布期間において生地トレイが架棒体に生地を塗布する高さから下方に生地トレイを下降させる。ここで、この生地トレイがその上面開口を開閉する蓋と、上面開口に対する蓋の開閉運動を行う蓋開閉機構を備えたものであり、当該蓋開閉機構による蓋の前記開閉運動がバウムクーヘンの焼成プロセスと連動するようロボットアームにより制御されていることを特徴とする。
【0025】
上記構成において、蓋開閉機構の開閉運動は、生地トレイの上昇運動に連動して、上昇前、上昇中、または上昇後に蓋を開放し、生地トレイの下降運動に連動して、下降前、下降中、または下降後に蓋を閉鎖するもので良い。
上記構成により、生地塗布期間と非生地塗布期間の移行期間に適切に蓋の開閉運動を連動させることができる。
【0026】
ロボットアームの前記蓋開閉機構の操作により、前記生地トレイが前記生地塗布期間中にあるときは、前記蓋を全面開放状態または少なくとも前記架棒体への前記生地の塗布を可能となる範囲で開放状態とし、前記生地トレイが前記非生地塗布期間中にあるときは、前記蓋を全面閉鎖状態となるよう制御する。
例えば、蓋が生地トレイの上面開口に対してスライドシャッターとスライドシャッターの操作片を備えたものであり、ロボットアームが蓋の操作片を操作してスライドシャッターのスライド運動を制御して蓋の開閉動作を制御する。操作片としては限定されないが、例えば、孔であり、ロボットアームのワークの突起がその孔に収まるものであれば、ロボットアームのワークの動作に従って蓋が開閉する。
なお、スライドシャッターの構造には、一枚の板体であるシャッターがスライド移動するタイプのものや、複数の板片が上下に重なった状態で摺動して伸縮するタイプや、複数の板片がアコーディオンのように折り畳み式で伸縮するタイプや、いわゆる商店店舗のシャッターのように板片が端部で丸まって収納状態となったり展開されて伸長状態になったりするタイプなど様々なものがあり得る。
【0027】
なお、蓋が生地トレイ内の生地を撹拌する撹拌子を備えていれば、ロボットアームによる開閉動作を通じて、生地トレイ内の生地を撹拌させることができる。
上記構成により、生地トレイの上面開口を閉鎖できる蓋を備えるので、生地塗布期間中は蓋を開放状態として生地トレイを使用可能とするが、非生地塗布期間中は蓋を閉鎖状態するので生地トレイの表面付近において暴露する熱を制御することができ、生地トレイの生地の表面付近で蓄熱して硬くなることがなくなり、生地の状態を良好に保つことができ、しっとりと柔らかい焼き上がりを実現できる。
【0028】
次に、上記構成において、前記蓋が前記生地トレイ内の生地を撹拌する撹拌子を備えた構成が好ましい。
蓋開閉機構の蓋開閉運動を利用して、生地トレイ内の生地を撹拌することができる。
例えば、撹拌子が蓋裏に立設された板状体という構成がある。
蓋裏に立設された板状体であれば、蓋開閉機構の蓋の開閉運動に伴って撹拌子により生地トレイ内の生地を撹拌できる。
また、例えば、撹拌子が前記蓋裏に設けられた回転はね装置という構成がある。
回転はね装置は小型モータなどで能動的に回転可能とする。回転はね装置により少なくとも蓋の閉鎖状態において回転はね装置が生地トレイの生地を撹拌することができる。
【発明の効果】
【0029】
また、本発明のバウムクーヘン焼成機によれば、ロボットアームを伴うことにより、バウムクーヘン焼成機の焼成プロセスの全自動化が実現でき、作業員の作業環境を改善でき、省力化できる新しいバウムクーヘン焼成機を提供することができる。
本発明のバウムクーヘン焼成機によれば、生地トレイの表面付近において暴露する熱を制御することができ、生地トレイの生地の表面付近で蓄熱して硬くなることがなくなり、生地の状態を良好に保つことができ、しっとりと柔らかい焼き上がりを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明のバウムクーヘン焼成システム100の構成の配置例を示す図である。
図2】本発明のバウムクーヘン焼成機本体200の基本的な構造をごく簡単に示す図である。
図3】ロボットアーム300の構成例を示す図である。
図4】架棒体400の構造とクランプ機構320の構造を簡単に示す図である。
図5】架棒体セッティングプロセスにおける架棒体セッティング処理を簡単に示した図(その1)である。
図6】架棒体セッティングプロセスにおける架棒体セッティング処理を簡単に示した図(その2)である。
図7】架棒体セッティングプロセスにおける架棒体セッティング処理を簡単に示した図(その3)である。
図8】架棒体セッティングプロセスにおける架棒体セッティング処理を簡単に示した図(その4)である。
図9】架棒体セッティングプロセスにおける架棒体セッティング処理を簡単に示した図(その5)である。
図10】架棒体セッティングプロセスにおける架棒体セッティング処理を簡単に示した図(その6)である。
図11】架棒体セッティングプロセスにおける架棒体セッティング処理を簡単に示した図(その7)である。
図12】ロボットアーム300のワークである操作部323により蓋の開閉操作ができるように取っ手となる孔を設けた構成例を示す図である。
図13】ロボットアーム300による蓋260の開閉動作と、生地トレイ昇降装置280による生地トレイ250の昇降動作の連動を分かりやすく示した図(その1)である。
図14】ロボットアーム300による蓋260の開閉動作と、生地トレイ昇降装置280による生地トレイ250の昇降動作の連動を分かりやすく示した図(その2)である。
図15】ロボットアーム300による蓋260の開閉動作と、生地トレイ昇降装置280による生地トレイ250の昇降動作の連動を分かりやすく示した図(その3)である。
図16】ロボットアーム300による蓋260の開閉動作と、生地トレイ昇降装置280による生地トレイ250の昇降動作の連動を分かりやすく示した図(その4)である。
図17】架棒体回収プロセスにおける架棒体回収処理を簡単に示した図(その1)である。
図18】架棒体回収プロセスにおける架棒体回収処理を簡単に示した図(その2)である。
図19】架棒体回収プロセスにおける架棒体回収処理を簡単に示した図(その3)である。
図20】架棒体回収プロセスにおける架棒体回収処理を簡単に示した図(その4)である。
図21】従来のバウムクーヘン焼成機の基本構造を示す図である。
図22】従来の特許第3686671号公報のバウムクーヘン焼成機の基本構造を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明のバウムクーヘン焼成機の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示したものに限定されるものではないことは言うまでもない。
【実施例0032】
実施例1として、本発明のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム100の構成例について説明する。
本発明のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム100は、バウムクーヘン焼成機本体200と、ロボットアーム300と、架棒体400、架棒体ラック500を備えた構成となっている。
【0033】
図1は、本発明のバウムクーヘン焼成システム100の構成の配置例を示す図である。図1は上面から示した平面視の図となっている。
この配置例では、図中左側にバウムクーヘン焼成機本体200が配置されており、架棒体ラック500がその近傍、この例では、図中上側に架棒体ラック500が配置されている。架棒体ラック500は架棒体400を複数本収納する棚があり、図1では最上面の棚に載置された架棒体400のみが図示されているが、下段は多段構成となっており、複数本の架棒体400が収納されているものとする。
ロボットアーム300は、バウムクーヘン焼成機本体200、架棒体ラック500ともにアクセスしやすい位置に配置されており、図1の例では、中央付近に配置されている。後述する図5図6図19図20に示すように、バウムクーヘン焼成機本体200と架棒体ラック500との間で架棒体400を受け取り受け渡しできるポジションにある。
【0034】
図2は、本発明のバウムクーヘン焼成機本体200の基本的な構造をごく簡単に示す図である。図2(a)は正面図であるが、内部の構成要素が分かりやすいように断面で図示している。図2(b)は左側面図であり、内部の構成要素が分かりやすいように断面で図示している。いずれも内部の構造、公転間欠停止位置が分かるように簡単に図示している。
【0035】
バウムクーヘン焼成機本体200の構成例は、図2に示すように、筐体201、操作制御盤202、開口203、焼成炉210、熱源220、回転ドラム230、駆動機構240、生地トレイ250、蓋260、生地トレイ昇降装置280を備えている。これらは基本構造の一例であり、それら構成要素の仕組みや働きが改良されて異なるものであっても良く、また、これら構成要素とは異なる他の構成要素が加わったバウムクーヘン焼成機本体200であっても良い。
なお、図2において架棒体400はその支持棒410が回転ドラム230の架棒位置に支架できるものとなっており、回転ドラム230にある各々の公転間欠停止位置に架棒されているものとする。
【0036】
まず簡単にバウムクーヘン焼成機本体200の構成と基本的な動作について説明する。
筐体201は、耐熱性の高い金属製の素材で形成されている。
操作制御盤202は、バウムクーヘン焼成機本体200の操作を制御するものであり、例えば、装置の前面などに配設されているが配設箇所は限定されない。操作指示を入力するスイッチ類、ボタン類、タッチパネルなどが配置されており、また、フットスイッチなどがあっても良い。なお、ロボットアームにより焼成プロセスが支援されるものでも、操作員による操作が介在する場合もあり得るので、このような操作員が操作を制御する操作制御盤202を設けておくことは好ましい。
開口203は、筐体201に開けられた開口である。下方に生地トレイ250が配置され架棒体セッティングプロセス、焼成プロセス、架棒体回収プロセスにおいてロボットアーム300がアプローチする開口ともなる。
【0037】
焼成炉210は、耐熱性に優れた金属やセラミック素材により形成されており、内部に熱源220を備えている。通常のバウムクーヘン焼成機が備えている焼成炉であっても、設定温度などが許容範囲であるため使用することができる。
焼成炉210の大きさは限定されないが、例えば幅1500mm×高さ1650mm×奥行き約1000mmの筐体の中に収められている。
焼成炉210の正面には開口203が設けられている。ロボットアーム300の配置位置は限定されないが、この開口203の前面に付近に配置するものとする。なお、架棒体ラック430はこの開口203の前方やや横付近でロボットアーム300がアクセスしやすい位置に配設することが好ましい。
【0038】
回転ドラム230は、向かい合う左右一対のものとなっており、回転ドラム軸によって回転可能に支持され、駆動機構240の駆動により間欠回転運動を行うものである。回転ドラム230の素材は特に限定されないが、例えば、耐熱性の高いステンレス鋼などで良い。
回転ドラム230の複数の架棒箇所に対して載置部231と横架部232が設けられている。
横架部232に対して架棒体400の支持棒410の端部が抜き差し交換自在に差し込み横架される。この構成例では、全体的に放射対称分布型、つまり円周軌跡に沿っておいて所定間隔で配置され、この構成例では6本の架棒体400が配置される例となっている。もちろん、架棒体400の個数や太さは限定されず、また、架棒体400の長さは回転ドラム230間の距離によって決まってくる。
【0039】
この構成例では、回転ドラム230の公転運動において間欠的に停止する位置が6カ所設けられている例とし、回転ドラム軸131によって間欠回転して焼成プロセスも6段階に分かれたものとなっている。つまり6回の間欠移動を行って一周するものとなっている。
ここでは、この6カ所の公転間欠停止位置をそれぞれ第1の公転間欠停止位置(1)、第2の公転間欠停止位置(2)、第3の公転間欠停止位置(3)、第4の公転間欠停止位置(4)、第5の公転間欠停止位置(5)、第6の公転間欠停止位置(6)とする。図中では簡単に(1)から(6)の番号を付して示している。
横架部232も回転ドラム230に対して、6つの横架部232が設けられている。
この回転ドラム230の載置部231、横架部232の構造や働きの概要は図8図9図10を参照しつつ後述する。
【0040】
バウムクーヘン焼成機本体200の焼成プロセスにおいて、これらの各々の公転間欠停止位置で実行される焼成プロセスはそれぞれ下記のようになっている。
第1の公転間欠停止位置(1)における焼成プロセスは、生地塗布プロセス+生地成型プロセスである。生地塗布が終了して生地トレイから架棒体400を引き揚げれば、引き続き、生地成型プロセスを始めることができる。第1の公転間欠停止位置(1)の下方には生地トレイ250が設置されており、この生地トレイ250は生地トレイ昇降装置280により昇降可能に支持されている。
【0041】
ここで、第1の公転間欠停止位置(1)における焼成プロセスの期間は、生地塗布期間と、非生地塗布期間に分かれ、それに連動して生地トレイ昇降装置280の昇降運動が切り替わるが、この流れについては後述する。
【0042】
第2の公転間欠停止位置(2)における焼成プロセスは、蒸らし成型プロセス+蒸らし焼成プロセスである。
第3の公転間欠停止位置(3)における焼成プロセスは、第1の本焼成プロセスである。
第4の公転間欠停止位置(4)における焼成プロセスは、第2の本焼成プロセスである。
第5の公転間欠停止位置(5)における焼成プロセスは、色付け焼成プロセスである。
第6の公転間欠停止位置(6)における焼成プロセスは、整え準備プロセスである。この整え準備プロセス自体も生地焼成ゾーンにあるため焼成は継続されて行われている。
このように、6つの公転間欠停止位置における焼成プロセスがあるが、第1の公転間欠停止位置(1)のみが焼成されていない「生地塗布ゾーン」であり、第2の公転間欠停止位置(2)から第6の公転間欠停止位置(6)の5カ所が「生地焼成ゾーン」にある。
【0043】
熱源220は焼成炉210内に配置された熱供給源であるが、バウムクーヘンを焼成するために十分なカロリーを供給できるものであれば特に限定されない。例えば、焼きムラができにくく安定した熱源として、ガス燃焼機器や電気発熱機器などが好適である。
この構成例では、熱源220として、焼成炉210内に、ガス燃焼器221、電気発熱機器222、電気発熱機器223、追加熱源である電気発熱機器224の4つが設けられている例となっている。なお、この例では、熱源としてガスと電気のハイブリッド型となっているが、特に限定されず、すべてをガス燃焼器で形成しても良く、すべてを電気発熱器で形成しても良い。
【0044】
ガス燃焼器221が燃焼炉110内の最奥部に燃焼炉210の中心に向けて斜めに設けられており、燃焼炉210の生地焼成ゾーン全体に熱を広範に供給するが、特に、第5の公転間欠停止位置(5)、第4の公転間欠停止位置(4)に近い位置にある。
電気発熱器222は、燃焼炉110内の第5の公転間欠停止位置(5)に支架されている架棒体に対向するように設けられている。
電気発熱器223は、燃焼炉110内の第4の公転間欠停止位置(4)に支架されている架棒体に対向するように角度を付けて設けられている。
さらに、追加熱源である電気発熱機器224は、燃焼炉110の内部の上面付近(天井シュバンク)に設けられている。この追加熱源である電気発熱機器124は、熱源としては、第3の公転間欠停止位置(3)の近くに配置されているが、さらには第2の公転間欠停止位置(2)にもその熱伝導域が拡がっている。
【0045】
駆動機構240は、架棒体400が支架されている軸を中心に自転する自転運動と、回転ドラム230による間欠回転により回転ドラム軸131に対する公転運動を行うように制動する駆動機構となっている。この構成例では架棒体400が6本あり回転ドラム230の6か所に架けているため、公転は1ストロークごとに60度回転する例となっている。
【0046】
生地トレイ250は、第1の公転間欠停止位置(1)の直下に配置されており、回転ドラム230の公転運動に同期して昇降する生地トレイ昇降装置280をそなえている。架棒体400が公転運動している際には公転運動を邪魔しないように生地トレイ250は下降しているが、本発明では、第1の公転間欠停止位置(1)にとどまる期間も、生地塗布期間と非生地塗布期間に分け、非生地塗布期間では生地トレイ250を下降させる。この流れは後述する。
公転が進み、新たに次の架棒体400が公転停止位置(1)に来れば生地を塗布するため、生地トレイ250が上昇して架棒体400が所定の深さ生地に浸漬するようになる。
【0047】
次に、蓋260を説明する。
蓋260は、生地トレイ250の上面開口に取り付けられており、開放状態としたり閉鎖状態にしたりすることができるものである。
例えば、蓋260としては、生地トレイ250の上面開口に対してスライド移動するスライドシャッターがある。
スライドシャッターには様々なものがあり得る。
スライドシャッターの構造としては、一枚の板体であるシャッターが生地トレイ250の上面開口に設けられたガイドに沿ってスライド移動するタイプのものがある。
また、複数の板片が上下に重なった状態で摺動して伸縮する構造のシャッターが生地トレイ250の上面開口に設けられたガイドに沿ってスライド移動するタイプのものがある。
また、複数の板片がアコーディオンのように折り畳み式で伸縮する構造のシャッターが生地トレイ250の上面開口に設けられたガイドに沿ってスライド移動するタイプのものがある。
また、いわゆる商店店舗のシャッターのように板片が端部で丸まって収納状態となったり展開されて伸長状態になったりする構造のシャッターも可能である。
ここでは、一枚の板体であるシャッターが生地トレイ250の上面開口に設けられたガイドに沿ってスライド移動するタイプとして説明する。
【0048】
次に、蓋260の蓋開閉運動に伴って、生地トレイ250内の生地を撹拌する工夫も可能である。例えば、蓋260の裏側に撹拌子を備えた構成とすれば蓋260の開閉運動に伴って生地トレイ250内の生地を撹拌することができる。撹拌子としては、例えば、蓋裏に立設された板状体という構成がある。蓋裏に立設された板状体であれば、蓋開閉機構による蓋260の開閉運動に伴って蓋裏の撹拌子が生地トレイ内を移動するので、生地トレイ250内の生地を撹拌できる。
また、例えば、蓋裏に設けられた回転はね装置を撹拌子とする構成がある。回転はね装置は小型モータなどで能動的に回転可能とする。回転はね装置により少なくとも蓋の閉鎖状態において回転はね装置が生地トレイの生地を撹拌することができる。
【0049】
生地トレイ昇降装置280は、生地トレイ250の昇降運動を行う昇降装置である。
公転運動の間欠運動の停止期間において、第1の公転間欠停止位置にある前記架棒体に生地を塗布する生地塗布期間と、それ以外の非生地塗布期間があり、生地トレイ昇降装置280は、生地塗布期間において生地トレイ250が架棒体400に生地を塗布する高さまで生地トレイ250を上昇させる。また、非生地塗布期間において生地トレイ250が架棒体400に生地を塗布する高さから下方に生地トレイ250を下降させる。
【0050】
本発明のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム100において、ロボットアーム300は、バウムクーヘン焼成機本体200と架棒体ラック500との間で架棒体400を受け渡しする装置である。
図3は、ロボットアーム300の構成例を示す図である。図3(a)は平面から見た様子を簡単に示した図、図3(b)は側面から見た様子を簡単に示した図である。
図3に示すように、ロボットアーム300は、ワーク部のベースとなるアーム先端部310と、アーム先端部310に搭載された架棒体400を把持して受け取る受け取り動作(クランプ動作)と、把持している架棒体400をリリースして受け渡す受け渡し動作(アンクランプ動作)を行うクランプ機構320、蓋260を開閉するためのスライドシャッターの操作部323、ロボットアームのアーム部分330を備えた例となっている。
アーム先端部310に搭載される各種ワークには様々なものがあり得る。
【0051】
まず、クランプされる対象となる架棒体400の構造について簡単に示す。
図4(a)に示すように、架棒体400は、バウムクーヘンが焼成される中央円筒部430と、中央円筒部430の両端からそれぞれ外に延設され、回転ドラム230の横架部232に横架する支持棒410を備えた構造である。さらに、支持棒410において、回転ドラム230の横架部232に嵌合する支架形状と、ロボットアーム300のワーク部のクランプ機構320を受け入れる把持受部420が設けられている。なお、この例では、把持受部420は支持棒410の径よりも細くなっており、外見上、溝形状に見えるものとなっている。
素材としては、例えば、架棒体400の中央円筒部430がアルミニウム合金素材またはチタン合金素材で形成され、支持棒410がステンレス素材または鋼材で形成されたものがある。もちろん木材などでもよい。
なお、図4(a)に示すように、架棒体400の両端に支持棒410が設けられ、それぞれに把持受部420である溝が形成されている。
【0052】
次に、図4(b)から図4(d)は、ワークの1つであるクランプ機構320による架棒体400を把持して受け取る受け取り動作(クランプ動作)と、把持している架棒体400をリリースして受け渡す受け渡し動作(アンクランプ動作)を簡単に示した図である。
図4(b)から図4(d)において、いずれもクランプ機構320の動作を簡単に示した図となっており、クランプ機構320の側面から示した動作と架棒体400の把持部分となる溝420の断面との関係を示している。図4に示すように、クランプ機構320には、載置されるものを受け入れる凹形状があるクランプ片322と、クランプ片322の凹形状が形成する把持径を可変とする可動片321を備えた構成となっている。
この例では、クランプ片322の凹形状が形成する把持径は、架棒体400の把持受部となる溝420の径幅よりも大きく、架棒体420の溝420を受け入れることができる径幅となっている。可動片321が回転することにより受け入れた架棒体420の溝420をクランプして捉えるものとなっている。
つまり、クランプ機構320が、架棒体400を外したアンクランプ状態では把持径が架棒体400の溝径420よりも大きく変化し(つまり開放状態となり)、架棒体400を懸架したクランプ状態では把持径が溝径420よりも小さいものに変化する。
【0053】
図4(b)は、デフォルト状態を示しており、クランプ機構320にクランプされるものがなければ、可動片321はクランプ片322に対して角度が付くようにバネなどで付勢されており、クランプ片322の上面が開放され、溝径420よりも大きく維持されている。
この状態は、架棒体400が別途、他の構成要素(例えば、架棒体ラック500や回転ドラムの載置枠)により載置されているものとする。
【0054】
このように載置されている架棒体400に対して、図4(c)のように、ロボットアームのアーム先端部310が下方からアプローチし、クランプ機構320が下方から溝部420を捉えると、可動片321が回転し、クランプ片322の上方を閉じる。
つまり、架棒体400の重量が印加されると図4(c)に示すようにクランプ状態となる。一度クランプ状態となると、架棒体400の重量の印加が無くならない限りクランプ状態が維持され、その結果、架棒体400がロボットアーム300により携挙され続ける。
【0055】
次に、図4(d)に示すように、ロボットアーム300が架棒体400を図示しない他の構成要素(例えば、架棒体ラック500や回転ドラムの載置枠)に架棒体400を載置して留置した後、ロボットアームのアーム先端部310を下方へ抜くと、架棒体400の重量の印加が無くなり、クランプ機構320の可動片321がデフォルト状態となるよう付勢力により回転し、クランプ片322の上方が開く。このように、架棒体400の重量の印加が除去された場合にはアンクランプ状態となる。
【0056】
以上が各構成要素の簡単な説明である。
次に、本実施例にかかる本発明のバウムクーヘン焼成システム100の1サイクルの焼成プロセスを説明する。
バウムクーヘン焼成システム100は、稼働プロセスとして、少なくとも、架棒体セッティングプロセス、焼成プロセス、架棒体回収プロセスを備えている。
以下、順に、各プロセスを追って説明する。
【0057】
[架棒体セッティングプロセス]
架棒体セッティングプロセスにおいて、バウムクーヘン焼成システム100は、ロボットアーム300がワーク部310を用いて、架棒体ラック500に懸架されている架棒体400をワーク部310により順次受け取って取り出し、バウムクーヘン焼成機本体200の回転ドラム230に対して順次受け渡して横架する架棒体セッティング処理を実行する。
図5から図11は、架棒体セッティングプロセスにおける架棒体セッティング処理を簡単に示した図である。
【0058】
図5は、架棒体セッティングプロセスが開始し、ロボットアーム300がワーク部310を用いて、架棒体ラック500にアプローチを始めた様子を示す図である。
図5(a)に示すように、ロボットアーム300がワーク部310を架棒体ラック500に振り向けて対向させる。
次に、図5(b)に示すように、ロボットアーム300がワーク部310を下方から架棒体ラック500に懸架されている架棒体400の1つにアプローチする。
【0059】
次に、図6に示すように、ロボットアーム300がワーク部310のクランプ機構320を下方から架棒体400の把持受部である溝部420に当てがいつつ上方へ移動し、図4(b)から図4(c)の要領で架棒体400の溝部420をクランプする。
ロボットアーム300がワーク部310のクランプ機構320により架棒体400の溝部420をクランプすれば受け取り、そのまま空中に携挙して持ち上げつつ、バウムクーヘン焼成機本体200の方へ振り向ける。
【0060】
図7は、側面から、バウムクーヘン焼成機本体200の内部とロボットアーム300を簡単に示した図である。バウムクーヘン焼成機本体200は正面中央で断面を取った図となっており、右側(奥側)にある回転ドラム230が見えている。また、公転運動が分かりやすいように、横架部232が簡単に示されている。バウムクーヘン焼成機本体200の内部やや下には生地トレイ250、蓋260、生地トレイ昇降装置280が簡単に断面などで示されている。
図7(a)から図7(b)に示すように、ロボットアーム300がアームを可動してワーク部310をバウムクーヘン焼成機本体200の回転ドラム230のうち、第1の公転停止位置にある横架部232に架棒体400を横架するためにアプローチする。
【0061】
図8は、左右一対の回転ドラム230のうちの一方の基本構造を簡単に示した図である。
この例では、回転ドラム230は内外2枚の構造となっている。この内外2枚の回転板は公転軌道を描くように間欠回転運動を行うよう回転制御されている。
図8(a)載置枠231が設けられた内側の回転板を簡単に示した図である。なお、この奥側には横架部232を備えて外側の回転板があるが理解がようになるように図示していない。このように載置枠231の形状は、第1の公転停止位置において、焼成炉の前面方向に開放され、架棒体400の支持棒410が載置できる窪みとなっている。つまり、この窪みに架棒体400の支持棒410を載置することができる。
図8(b)は、載置枠231の外側に位置している横架部232を示したものである。横架部232は中央に凹部があり、この凹部に架棒体400の支持棒410の端部が嵌合してロックするものとなっている。
また、横架部232の凹部の内部には、突出子233が内蔵されており、この突出子233が焼成炉210の中央側へ突出することにより、一度嵌合した凹部に架棒体400の支持棒410の端部を押し戻してロックを解除(アンロック)できる仕組みとなっている。
【0062】
図9図10は、横架部232への架棒体400の支持棒410のロック、アンロックの仕組みを簡単に示す図である。
ロボットアーム300のワーク310により、図9(a)に示すように、載置枠231が設けられている内側の回転板に架棒体400の溝部420が載置される。この状態では、まだ架棒体は横架部232の凹部にはロックされていない。
次に、図9(b)に示すように、図中、左側の横架部232から突出子233が飛び出し、架棒体400の左側の支持棒410の端部を右側へ押し込み、図中右側の支持棒410の端部が右側の横架部232の凹部へ押し込まれ、嵌合することによりロックが掛かった状態になる。なお、この例では、図中左側の横架部232も右側へ少し突出する構成とし、左側の横架部232の凹部へ架棒体400の図中左側の支持棒410の端部が嵌合するものとなっている。
図9(c)は、ロックを解除する仕組みを示した図である。図中、右側の横架部232から突出子233が飛び出し、架棒体400の右側の支持棒410の端部を左側へ押し返し、右側の横架部232の凹部から外れ、ロックが解除された状態になる。左側の横架部232も同様、突出していた突出子232が縮退し、左側の横架部232の凹部から外れ、ロックが解除された状態になる。
【0063】
なお、このバウムクーヘン焼成機本体200では架棒体400が自転するように、横架部232の凹部と嵌合する必要があるところ、架棒体400の支持棒410の端部が綺麗な円形断面であり、かつ、横架部232の凹部が綺麗な円形の窪みであれば、グリップ力が弱く、架棒体400の支持棒410がいわゆる空回りしてしまうおそれがある。そこで、この例では、図10に示すように、断面が円形ではないツメが設けられている例となっている。
【0064】
図10は、図9(b)に示すように、突出子233の働きにより架棒体400の支持棒410の端部が横架部232の凹部に押圧されているが、まだ両者の嵌合形状が一致せず、ロック待ち状態にある様子を示している。この例ではツメは1つとなっている。
図10(a)は、ロボットアーム300により受け渡された架棒体400の支持棒410の端部のツメが図中上を向いており、稼働機構240(図示せず)により自転運動をしている横架部232の凹部のツメは斜めになっており、この状態では嵌合しない。
横架部232は自転運動を続けるため、いずれ図10(b)に示すように、両者のツメが合致するときが到来する。この図10(b)の状態になれば、両者が嵌合し、ツメの働きにより、架棒体400の支持棒410がいわゆる空回りすることなく、自転運動に追随するようにロックされる。
【0065】
次に、図11に示すように、架棒体400の支持棒410の横架部232へのロックが完了すれば、ロボットアーム300のワーク部310を下方へ抜くと、架棒体400の重量が印加されなくなり、図4(b)から図4(c)に示したように、アンクランプ状態となり、架棒体400がロボットアーム300から離脱し、回転ドラム230内に懸架される。
この後、次の横架部232に次の架棒体400をセッティングするため、回転ドラム230が60度回転して公転運動を行い、第1の公転位置に到来した横架部232に次の架棒体400をセッティングする。
図5から図11に示した流れを1つのストロークとし、この架棒体セッティングプロセスを残りの5回分繰り返す。
【0066】
[焼成プロセス]
焼成プロセスは、バウムクーヘン焼成機本体200内で実行されるので、ロボットアーム300と連動することは必須ではないが、この構成例では、焼成プロセスにおいて、ロボットアーム300を用いて生地トレイ250の蓋260を開閉する動作を実行し、焼成炉210内の熱源220からの熱が生地トレイ250内の生地に印加され、蓄熱されてしまうことを防止する蓋260の開閉処理を実行する。
【0067】
図12は、ロボットアーム300のワークである操作部323により蓋の開閉操作ができるように取っ手となる孔を設けた構成例を示す図である。
本実施例では、ロボットアーム300は、単なる蓋260の開閉を行うスイッチのような単機能ではなく、開閉運動がバウムクーヘンの焼成プロセスと連動しているものとなっている。
ロボットアームのワークは限定されないが、蓋260を確実に把持して操作できるように、この例では、ワークとして棒状のワークである操作部323であり、蓋260にはこのワークである操作部323を受け入れる孔が設けられた例となっている。
図12(b)に示すように、蓋260に設けられている孔にワークである操作部323が貫通することにより、ワークである操作部323が水平方向に移動することにより、蓋260を引き出したり押し入れたりすることができる構造となっている。
【0068】
図13から図16は、ロボットアーム300による蓋260の開閉動作と、生地トレイ昇降装置280による生地トレイ250の昇降動作の連動を分かりやすく示した図である。
【0069】
図13(a)は、焼成プロセスが開始する際のロボットアーム300のワークである操作部323のデフォルト状態を簡単に示す図である。
図13(a)に示すように、ロボットアーム300のワークである操作部323はまだ蓋260の孔には嵌合していない。
【0070】
図13(b)は、焼成プロセスが開始し、ロボットアーム300のワークである操作部323による公転停止位置(1)にある架棒体200に対する生地塗布期間のストローク開始前の状態を示す図である。
図13(b)に示すように、図13(a)のデフォルト状態からロボットアーム300のアーム330が稼働してロボットアームの先端のワークである操作部323が上昇し、蓋260に穿たれている孔に貫通し、蓋260の開閉操作が可能な状態となる。なお、クランプ機構320はデフォルト状態のアンクランプ状態となっている。
【0071】
図14(a)は、生地塗布期間の開始に向け、ロボットアーム300の制御により生地トレイ250の蓋260を開く様子を示す図である。
この例では、ロボットアーム300の制御によりアーム部310の先端を水平方向に図中右側へ水平移動するように稼働する。この動作に伴ってワークである操作部323が図中右側へ水平移動し、蓋260が図中右側へ引き出され、生地トレイ250の上面の一部が開口する。
【0072】
図14(b)は、生地トレイ昇降装置280の駆動機構の制御により、生地トレイ250が上昇し、架棒体400および焼成済みのバウムクーヘンの表面の下方がバウムクーヘン生地に浸漬している様子を示している。架棒体400は回転ドラム230の横架部232の自転運動により、表面に均一に塗布されるように回転する。
図14(b)の状態は、所定時間にわたって継続する。これが生地塗布期間の実質的な中心期間と言える。
【0073】
所定時間が経過すると、図15(a)に示すように、生地塗布を終了し、生地トレイ昇降装置280の制御により生地トレイ250が下降する。なお、図13(a)に示したようなデフォルト状態まで戻る必要はなく、架棒体200および焼成済みのバウムクーヘンの表面の下方がバウムクーヘン生地から十分に抜け出る程度の高さでも良い。
生地トレイ昇降装置280の制御により架棒体200が生地トレイ250内の浸漬状態から抜け出て、バウムクーヘン生地塗布が終了する。
なお、この図15(a)の状態においてバウムクーヘン生地塗布の状態を均すためバウムクーヘン成型補助期間として活用することも好ましい。
【0074】
図15(b)は、ロボットアーム300のワークである操作部323の制御により生地トレイ250の蓋260を閉じる様子を示す図である。
この図13(b)から図15(b)に示す一連の生地塗布期間における処理のストロークが完了する。
その後、図16(a)に示すように、次のストロークに向けて、回転ドラム130の公転運動が起こり、図13(a)の状態に戻る。
【0075】
この後、6つの架棒体200に対するストロークが行われ、さらに、バウムクーヘンの焼成の層分にわたりこのストロークが繰り返される。
つまり、図13(b)から図16(a)の焼成プロセスを6回分繰り返せば6つの架棒体200に対するものを1層の焼成となるので、バウムクーヘンの焼成が18層あるとすると、それらを18回繰り返すこととなる。
【0076】
図16(b)は、バウムクーヘンの焼成の層分にわたり図13(b)から図16(a)に示す一連の生地塗布期間における処理のストロークがすべて完了し、すべての架棒体200の周囲に所定の層分のバウムクーヘンが焼成され、焼成プロセスが全て終わった状態で、ロボットアーム170のワークである操作部323が蓋260の孔から下方へ抜け出て図13(a)に示すデフォルト状態に戻った様子を示す図である。
【0077】
以上が、焼成プロセスにかかるロボットアーム300を用いたバウムクーヘン焼成システム100の簡単な説明である。
【0078】
[架棒体回収プロセス]
架棒体回収プロセスは、焼成プロセスでバウムクーヘンが焼成され、回転ドラム230に横架されている架棒体400をロボットアーム300により順次受け取って取り出し、架棒体ラック500に対して順次受け渡して懸架する架棒体回収処理を実行するプロセスである。
【0079】
図17から図20は、架棒体回収プロセスにおける架棒体回収処理を簡単に示した図である。
図17は、側面からバウムクーヘン焼成機本体200の内部とロボットアーム300を簡単に示した図である。バウムクーヘン焼成機本体200は正面中央で断面を取った図となっており、右側(奥側)にある回転ドラム230が見えている。また、公転運動が分かりやすいように、横架部232が簡単に示されている。
図17(a)から図17(b)に示すように、ロボットアーム300がアームを可動してワーク部310をバウムクーヘン焼成機本体200の回転ドラム230のうち、第1の公転停止位置にある横架部232に架棒体400を横架するためにアプローチする。
【0080】
次に、図18(a)から図18(b)に示すように、架棒体400の支持棒410の横架部232のアンロックが完了すれば、ロボットアーム300のワーク部310を上方へ持ち上げると、架棒体400の重量が印加され、図4(a)から図4(b)に示したように、クランプ状態となり、架棒体400がロボットアーム300のクランプ機構320により支持され、回転ドラム230内の横架部232から離脱する。
【0081】
図19(a)は、ロボットアーム300がワーク部310を用いて支持している架棒体400を架棒体ラック500の方へ振り向けた様子を示す図である。
次に、図19(b)に示すように、ロボットアーム300がワーク部310を上方から架棒体ラック500に架棒体400を載置する。
【0082】
次に、図20(a)に示すように、ロボットアーム300がワーク部310のクランプ機構320を架棒体400の把持受部である溝部420から抜け出るように下方へ抜くと、架棒体400の重量が印加されなくなり、図4(b)から図4(c)に示したように、アンクランプ状態となり、ロボットアーム300がワーク部310のクランプ機構320により架棒体400の溝部420をアンクランプすれば架棒体ラック500に対して架棒体400が載置され、受け渡される。
ロボットアーム300がワーク部310は、次の架棒体400を回収するため、バウムクーヘン焼成機本体200の方へ向かう。
この図17から図20の架棒体回収プロセスにおける架棒体回収処理を1ストロークとし、残りの5回分を繰り返せば、すべての架棒体400の回収処理が実行できる。
【0083】
以上、本発明のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システム100の好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のロボットアームを用いたバウムクーヘン焼成システムは、新しい焼き菓子を製造する機器および部材として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
100 バウムクーヘン焼成システム
200 バウムクーヘン焼成機本体
210 焼成炉
220 熱源
230 回転ドラム
240 駆動機構
250 生地トレイ
260 蓋
280 蓋開閉機構
300 ロボットアーム
310 アーム先端部310
320 クランプ機構320
321 可動片
322 クランプ片
323 操作部
330 アーム部分330
400 架棒体
410 支持棒
420 中央円筒部
500 架棒体ラック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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