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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120801
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】バウムクーヘン焼成機
(51)【国際特許分類】
   A21B 5/04 20060101AFI20240829BHJP
   B25J 9/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A21B5/04
B25J9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027861
(22)【出願日】2023-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】504410941
【氏名又は名称】株式会社 不二商会
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】藤波 哲也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707AS30
(57)【要約】

【課題】 生地皿が暴露する熱を制御し、さらに作業員の作業環境を改善でき、バウムクーヘン焼成機の全自動化を実現して、省力化できる新しいバウムクーヘン焼成機を提供する。
【解決手段】 焼成炉110と熱源120と回転ドラム130と、架棒体200を第1の公転間欠停止位置から第6の公転間欠停止位置まで順に公転移動させる公転運動と架棒体200の自転運動を制御する駆動機構140と、駆動機構140の間欠的な公転運動と同期して公転運動軌跡を遮断するよう進退作動する蓋160および生地トレイ昇降装置180を備えた構成において、蓋160を第1の公転間欠停止位置とその直前にある公転間欠停止位置の間に設け、蓋開閉機構170の制御により蓋160の開閉運動がバウムクーヘンの焼成プロセスと連動するよう制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源が搭載された焼成炉と、
回転ドラム軸によって回転可能に支架された向かい合う左右一対の回転ドラムと、
前記回転ドラム間へ横架される架棒体と、
前記回転ドラムによる間欠回転により前記架棒体の位置を、前記焼成炉の開口内の下側付近に設けられた第1の公転間欠停止位置から、前記焼成炉の開口内の上側付近に設けられた第2の公転間欠停止位置、さらに後続の複数の公転間欠停止位置を経て前記第1の公転間欠停止位置まで順に公転移動させて周回する公転運動と、前記回転ドラムに支架された状態で前記架棒体を自転させる自転運動とを制御する駆動機構と、
前記第1の公転間欠停止位置にある前記架棒体に生地を塗布するための生地トレイと、
前記生地トレイの昇降運動を可能とする生地トレイ昇降装置を備え、
前記駆動機構による前記公転運動の間欠運動の停止期間において、前記第1の公転間欠停止位置にある前記架棒体に生地を塗布する生地塗布期間と、それ以外の非生地塗布期間があり、
前記生地トレイ昇降装置が、前記生地塗布期間において前記生地トレイが前記架棒体に生地を塗布する高さまで前記生地トレイを上昇させ、前記非生地塗布期間において前記生地トレイが前記架棒体に生地を塗布する高さから下方に前記生地トレイを下降させ、
前記生地トレイが、その上面開口を開閉する蓋と、前記上面開口に対する前記蓋の開閉運動を行う蓋開閉機構を備え、当該蓋開閉機構による前記蓋の前記開閉運動がバウムクーヘンの焼成プロセスと連動するよう制御されていることを特徴とするバウムクーヘン焼成機。
【請求項2】
前記蓋開閉機構により、前記生地トレイが前記生地塗布期間中にあるときは、前記蓋を全面開放状態または少なくとも前記架棒体への前記生地の塗布を可能となる範囲で開放状態とし、前記生地トレイが前記非生地塗布期間中にあるときは、前記蓋を全面閉鎖状態となるよう制御することを特徴とする請求項1に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項3】
前記蓋開閉機構が、前記生地塗布期間が終了し、前記非生地塗布期間が始まった後、前記架棒体に塗布された前記生地の成型操作が完了するまで前記蓋を開放しておくことを特徴とする請求項1に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項4】
前記蓋開閉機構が、前記生地トレイの上昇運動に連動して、上昇前、上昇中、または上昇後に前記蓋を開放し、前記生地トレイの下降運動に連動して、下降前、下降中、または下降後に前記蓋を閉鎖することを特徴とする請求項1に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項5】
前記蓋が前記生地トレイ内の生地を撹拌する撹拌子を備えたことを特徴とする請求項1に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項6】
前記撹拌子が前記蓋裏に立設された板状体であり、
前記蓋開閉機構の前記蓋の開閉運動に伴って前記撹拌子により前記生地トレイ内の生地が撹拌されることを特徴とする請求項5に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項7】
前記撹拌子が前記蓋裏に設けられた回転はね装置であり、少なくとも前記蓋の閉鎖状態において、前記回転はね装置が前記生地トレイの生地を撹拌するものである請求項5に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項8】
前記蓋が前記生地トレイの前記上面開口に対してスライドシャッターであり、
前記蓋開閉機構が前記スライドシャッターのスライド運動を制御するアクチュエータを備えたものであることを特徴とする請求項1に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項9】
前記蓋が前記生地トレイの前記上面開口に対してスライドシャッターと前記スライドシャッターの取っ手を備えたものであり、
前記蓋開閉機構が前記バウムクーヘン焼成機の稼働を支援するロボットアームであり、
前記ロボットアームが、前記蓋の前記取っ手を操作して前記スライドシャッターのスライド運動を制御することを特徴とする請求項8に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項10】
前記ロボットアームが、前記バウムクーヘン焼成機の前記焼成炉の前記駆動機構に対する前記架棒体の懸架操作、および、前記架棒体の取り出し操作を支援するものである請求項9に記載のバウムクーヘン焼成機。
【請求項11】
前記架棒体が、前記バウムクーヘンが焼成される中央円筒部と、前記中央円筒部の両端からそれぞれ外に延設され、前記回転ドラムの支持部に横架する支持棒を備えた構造であり、
前記中央円筒部がアルミニウム合金素材またはチタン合金素材で形成され、前記支持棒がステンレス素材または鋼材で形成されたものであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のバウムクーヘン焼成機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地を用いて焼成するバウムクーヘン焼成機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のバウムクーヘン焼成機は、例えば、実公昭46-4878号公報や、特公平7-24532号公報などに開示されているように、焼成炉の内部へ間欠回転可能に軸架された向かい合う左右一対の円形ドラムと、その両円形ドラムの左右相互間へ着脱自在に介挿使用される水平な麺棒とを備え、その麺棒が最下段位置へ到達した一旦停止時に、生地皿から生地を巻き付け状態に塗布されて、上記焼成炉の内部において自転しながら公転する運動中に、その生地を焼成する。このようなサイクルを繰り返すことにより、上記生地が樹木の年輪状に積層されたバウムクーヘンを製造するものが基本構造であった。
【0003】
図19は、自転運動と公転運動により回転ドラムに横架した麺棒に生地を塗布しながら焼成する一般的なバウムクーヘン焼成機の基本構造を示す図である。
一般的なバウムクーヘン焼成機では、公転軌道に沿って間欠的に周回する運動において、6か所の停止場所がある。図19において、それぞれの停止位置をP1からP6とする。それぞれの停止位置P1からP6ではバウムクーヘン焼成プロセスにおいて担っている役割としては以下の通りである。
【0004】
バウムクーヘンの焼成プロセスにおいて、P1は作業員による生地づけ、P2は作業員による生地成型、P3は蒸らし焼成、P4は本焼成、P5は色付け焼成、P6は整え準備である。
このうち、加熱焼成できる生地焼成ゾーンにある停止位置はP3からP6までの4か所である。特に、炉の構造上、P4の本焼成、P5の色付け焼成の2か所がメインとなっている。
バウムクーヘン焼成機は、その構造上、回転ドラムに横架している棒を生地に浸漬する段階と、浸漬して棒の周囲に付いた生地を自転させながら焼成する焼成段階とを交互にしながら焼成してゆくが、一般には生地の焼成を15層から30層程度を重ねるものが多い。
【0005】
【特許文献1】実公昭46-4878号公報
【特許文献2】特公平7-24532号公報
【特許文献3】特許第3686671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1の課題は、バウムクーヘン焼成機の焼成炉前面に配置される生地皿の表面付近の生地が焼成炉の熱に暴露されてしまうことである。
上記した特許文献1や特許文献2の従来の旧型のバウムクーヘン焼成機であれば、焼成炉の入口が上記開放されており、生地皿が常に熱に暴露した状態であった。そのため、生地皿表面付近の生地が焼成炉の熱で加熱されて蓄熱してゆき、均一な品質の焼成状態のバウムクーヘンを得ることができないという問題があった。
【0007】
従来技術において、生地皿への蓄熱を有効に防止する従来のバウムクーヘン焼成機として、特許文献3に記載したバウムクーヘン焼成機がある。
この特許文献3の従来のバウムクーヘン焼成機は、本願出願人が過去に特許出願し、すでに特許権を取得済みものである。
特許文献3の従来のバウムクーヘン焼成機は、焼成プロセスのうち、P2とP3との間、P6とP1との間に仕切板を設け、焼成プロセスの進行に伴ってこれら仕切板を開閉することで、焼成炉の入口が一時的に閉鎖されており、生地皿が熱に暴露した状態となる時間を短縮させていた。
図20は、特許文献3にかかる従来技術における特許第3686671号公報のバウムクーヘン焼成機の基本構造を示す図である。図20において、焼成炉Bを生地皿72が存在する入口側の生地塗布ゾーンZ1と、加熱源のガスバーナー8、9が存在する内奥側の生地焼成ゾーンZ2に仕切って区分できる第1仕切りシャッター43および第2仕切り回転シャッター45を設置すると共に、その第1仕切りシャッター43および第2仕切り回転シャッター45を回転ドラム14の間欠的な回転駆動と同期して、麺棒16の公転運動軌跡Rを遮断する如く進退作動させることにより、その回転ドラム14の一旦停止中には上記生地焼成ゾーンZ2を密閉して、ここからの放熱を防止する一方、上記回転ドラム14の回転時には同じく生地焼成ゾーンZ2を生地塗布ゾーンZ1との連通状態に開放するように定めたものとなっている。蓋43は焼成機の下方空間に余裕があるので上下昇降式の稼働で良いが、第2の仕切り回転シャッター45は焼成機の前面空間は作業員の作業空間であり余裕がないので、回転シャッター式となっている。
【0008】
しかし、バウムクーヘンの焼成時間は長いうえ、生地皿の配置位置は焼成炉に近く温度が高いため、生地皿表面付近の生地には蓄熱が進んでゆくので改善する余地があった。
つまり、バウムクーヘンの焼成時間は、上記したように、バウムクーヘンの焼成プロセスにおいて、P1生地づけ、P2生地成型、P3蒸らし焼成、P4本焼成、P5色付け焼成、P6整え準備の6プロセスがあり、この6プロセスでバウムクーヘン焼成機の炉内を1周する公転運動を1サイクルとなっており、そのサイクルを繰り返しながら生地を焼成し、このサイクルを15サイクルから30サイクル繰り返して15層から30層からなるバウムクーヘンを焼成するため、1本のバウムクーヘンを焼成するためには、長い焼成時間が必要である。
また、生地皿が暴露する熱は、従来のバウムクーヘン焼成機の構造上、生地皿の配置位置は焼成炉に近く位置せざるを得ず、やはり温度が高い。
このように、相当の時間にわたって、温度が高いエリアに生地皿が配置され、かつ、間欠動作ごとに仕切板が開閉して一時的であれ、数秒から十数秒間にわたって生地皿が焼成炉内の熱に暴露する状態となってしまう。生地皿表面付近の生地には蓄熱が進んでゆき、均一な品質の焼成状態のバウムクーヘンを得るためには改善する余地があった。
【0009】
ここで、本発明者は、生地皿にかかる熱を効率的に制御し、また、生地皿内の生地の蓄熱状態を効率的に分散化させるように改良できればバウムクーヘンの生地の状態を改善でき、バウムクーヘンの焼き上がりを改善できる可能性があることに気付いた。
【0010】
第2の課題は、焼成作業における省力化である。
バウムクーヘン焼成機は自動運転機であるが、バウムクーヘンの焼成を進めるため、運転中に作業員が必要であり、一部の成型作業を担っている。上記のバウムクーヘンの焼成プロセスにおいて、バウムクーヘン焼成機の正面にある開放空間である生地塗布ゾーンZ1の前に立ち、P1の生地づけ、P2の生地成型の操作を介助する必要がある。P1の生地づけプロセスでは生地トレイにおける生地の深さが重要であり、生地の供給をこまめに行う必要がある。また、P2の生地成型プロセスは、生地トレイから上昇した架棒体の生地の状態を確認し、バウムクーヘンの表面に生地づけされた状態をヘラなどで成型する必要がある。このP2の生地成型プロセスは自然で綺麗に焼き上がりに仕上げるためには自動化が難しく、作業員が介在した方が焼き上がりの品質が良い。
しかし、焼成機を操作する製造作業員の立ち位置は、バウムクーヘン焼成機の正面にある開放空間である生地塗布ゾーンZ1の前であり、高温で稼働している炉の開放された部分であるので遮熱することが難しく、放熱が大きくならざるを得ない。焼成機を操作する製造作業員の耐火温度にも限界があり、作業空間の改善が必要となっていた。
ここで、本発明者は、完全全自動のバウムクーヘン焼成機を実現し、作業員の作業環境を改善できる可能性があることに気付いた。
【0011】
そこで、以上の問題点に鑑み、本発明は、生地皿が暴露する熱を制御し、しっとりと柔らかい焼き上がりを実現し、さらに、作業員の作業環境を改善でき、バウムクーヘン焼成機の全自動化を実現して、省力化できる新しいバウムクーヘン焼成機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。なお、以下に記載の構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0013】
本発明のバウムクーヘン焼成機は、熱源が搭載された焼成炉と、回転ドラム軸によって回転可能に支架された向かい合う左右一対の回転ドラムと、前記回転ドラム間へ横架され、バウムクーヘンが焼成される架棒体と、前記回転ドラムによる間欠回転により前記架棒体の位置を、前記焼成炉の開口内の下側付近に設けられた第1の公転間欠停止位置から、前記焼成炉の開口内の上側付近に設けられた第2の公転間欠停止位置、さらに後続の複数の公転間欠停止位置を経て前記第1の公転間欠停止位置まで順に公転移動させて周回する公転運動と、前記回転ドラムに支架された状態で前記架棒体を自転させる自転運動を制御する駆動機構と、前記第1の公転間欠停止位置にある前記架棒体に生地を塗布するための生地トレイと、前記生地トレイの昇降運動を可能とする生地トレイ昇降装置を備え、前記駆動機構による前記公転運動の間欠運動の停止期間において、前記第1の公転間欠停止位置にある前記架棒体に生地を塗布する生地塗布期間と、それ以外の非生地塗布期間があり、前記生地トレイ昇降装置が、前記生地塗布期間において前記生地トレイが前記架棒体に生地を塗布する高さまで前記生地トレイを上昇させ、前記非生地塗布期間において前記生地トレイが前記架棒体に生地を塗布する高さから下方に前記生地トレイを下降させ、前記生地トレイが、その上面開口を開閉する蓋と、前記上面開口に対する前記蓋の開閉運動を行う蓋開閉機構を備え、当該蓋開閉機構による前記蓋の前記開閉運動がバウムクーヘンの焼成プロセスと連動するよう制御されていることを特徴とするバウムクーヘン焼成機である。
例えば、前記蓋開閉機構により、前記生地トレイが前記生地塗布期間中にあるときは、前記蓋を全面開放状態または少なくとも前記架棒体への前記生地の塗布を可能となる範囲で開放状態とし、前記生地トレイが前記非生地塗布期間中にあるときは、前記蓋を全面閉鎖状態となるよう制御することを特徴とする。
【0014】
上記構成により、生地トレイの上面開口を閉鎖できる蓋を備えるので、生地塗布期間中は蓋を開放状態として生地トレイを使用可能とするが、非生地塗布期間中は蓋を閉鎖状態するので生地トレイの表面付近において暴露する熱を制御することができ、生地トレイの生地の表面付近で蓄熱して硬くなることがなくなり、生地の状態を良好に保つことができ、しっとりと柔らかい焼き上がりを実現できる。
【0015】
上記構成において、蓋開閉機構の開閉運動は、生地トレイの上昇運動に連動して、上昇前、上昇中、または上昇後に蓋を開放し、生地トレイの下降運動に連動して、下降前、下降中、または下降後に蓋を閉鎖するもので良い。
上記構成により、生地塗布期間と非生地塗布期間の移行期間に適切に蓋の開閉運動を連動させることができる。
【0016】
次に、上記構成において、前記蓋が前記生地トレイ内の生地を撹拌する撹拌子を備えた構成が好ましい。
蓋開閉機構の蓋開閉運動を利用して、生地トレイ内の生地を撹拌することができる。
例えば、撹拌子が蓋裏に立設された板状体という構成がある。
蓋裏に立設された板状体であれば、蓋開閉機構の蓋の開閉運動に伴って撹拌子により生地トレイ内の生地を撹拌できる。
また、例えば、撹拌子が前記蓋裏に設けられた回転はね装置という構成がある。
回転はね装置は小型モータなどで能動的に回転可能とする。回転はね装置により少なくとも蓋の閉鎖状態において回転はね装置が生地トレイの生地を撹拌することができる。
【0017】
次に、蓋開閉機構の開閉機構について述べる。
例えば、蓋が生地トレイの上面開口に対してスライドシャッターであり、蓋開閉機構がスライドシャッターのスライド運動を制御するアクチュエータを備えた構成がある。
アクチュエータによりスライドシャッターをスライド運動させることにより蓋の開閉運動ができる。
なお、スライドシャッターの構造には、一枚の板体であるシャッターがスライド移動するタイプのものや、複数の板片が上下に重なった状態で摺動して伸縮するタイプや、複数の板片がアコーディオンのように折り畳み式で伸縮するタイプや、いわゆる商店店舗のシャッターのように板片が端部で丸まって収納状態となったり展開されて伸長状態になったりするタイプなど様々なものがあり得る。
【0018】
次に、例えば、蓋開閉機構が、生地トレイの上面開口に対してスライドシャッターと、スライドシャッターの取っ手を備えており、さらに、バウムクーヘン焼成機の稼働を支援するロボットアームを備えた構成がある。
ロボットアームが、蓋開閉機構の取っ手を操作して引いて開けたり、押して閉じたりすることができ、スライドシャッターの開閉運動を制御することができる。
【0019】
なお、ロボットアームを用いる構成の場合、ロボットアームは多機能であるので、バウムクーヘン焼成機の焼成炉の駆動機構に対する架棒体の懸架操作や、焼成後の架棒体の取り出し操作を支援することも可能である。
ロボットアームを備えた上記構成により、バウムクーヘン焼成機の焼成プロセスの全自動化が実現でき、作業員の作業環境を改善でき、省力化できる新しいバウムクーヘン焼成機を提供することができる。
【0020】
次に、バウムクーヘンが焼成される架棒体について述べる。
架棒体が、バウムクーヘンが焼成される中央円筒部と、中央円筒部の両端からそれぞれ外に延設され、回転ドラムの支持部に横架する支持棒を備えた構造がある。なお、支持棒は中央円筒部の端部付近に螺合させたり溶接して取り付けたりするものでよく、中央円筒部の内部は空洞とすることができる。
ここで、中央円筒部がアルミニウム素材またはチタン素材で形成され、支持棒がステンレス素材または鋼材で形成されたものとすることが可能である。
上記構成により、中央円筒部をアルミニウム素材またはチタン素材とすることで架棒体全体の重量を軽量化することが可能となる一方、支持棒はステンレス素材または鋼材で形成して構造的強度を大きくして焼成炉のドラムに支架する構造的強度を大きくできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のバウムクーヘン焼成機によれば、生地トレイの表面付近において暴露する熱を制御することができ、生地トレイの生地の表面付近で蓄熱して硬くなることがなくなり、生地の状態を良好に保つことができ、しっとりと柔らかい焼き上がりを実現できる。
また、本発明のバウムクーヘン焼成機によれば、ロボットアームを伴うことにより、バウムクーヘン焼成機の焼成プロセスの全自動化が実現でき、作業員の作業環境を改善でき、省力化できる新しいバウムクーヘン焼成機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のバウムクーヘン焼成機100の基本的な構造を簡単に示す図である。
図2】蓋160の構造と、蓋開閉機構170による生地トレイ150の上面開口の開閉動作を簡単に示した図である。
図3】蓋開閉機構170による蓋160の開閉動作と、生地トレイ昇降装置180による生地トレイ150の昇降動作の連動を分かりやすく示した図(その1)である。
図4】蓋開閉機構170による蓋160の開閉動作と、生地トレイ昇降装置180による生地トレイ150の昇降動作の連動を分かりやすく示した図(その2)である。
図5】蓋開閉機構170による蓋160の開閉動作と、生地トレイ昇降装置180による生地トレイ150の昇降動作の連動を分かりやすく示した図(その3)である。
図6】蓋開閉機構170による蓋160の開閉動作と、生地トレイ昇降装置180による生地トレイ150の昇降動作の連動を分かりやすく示した図(その4)である。
図7】1ストローク分の駆動機構140の制動による回転ドラム130に支架されている架棒体200の公転運動などを簡単に説明する図(その1)である。
図8】1ストローク分の駆動機構140の制動による回転ドラム130に支架されている架棒体200の公転運動などを簡単に説明する図(その2)である。
図9】1ストローク分の駆動機構140の制動による回転ドラム130に支架されている架棒体200の公転運動などを簡単に説明する図(その3)である。
図10】実施例2にかかるバウムクーヘン焼成機100が蓋開閉機構170としてロボットアーム170を伴う場合の生地トレイ150と蓋160の一例を示す図である。
図11】焼成プロセスが開始する際の蓋開閉機構170であるロボットアーム170のワーク173のデフォルト状態を簡単に示す図である。
図12】蓋開閉機構170であるロボットアームのワーク173による公転停止位置(1)にある架棒体200に対する生地塗布期間のストローク開始前の状態を示す図である。
図13】生地塗布期間の開始に向け、蓋開閉機構170であるロボットアーム170の制御により生地トレイ150の蓋160を開く様子を示す図である。
図14】生地トレイ150が上昇し、架棒体200および焼成済みのバウムクーヘンの表面の下方がバウムクーヘン生地に浸漬している様子を示す図である。
図15】生地塗布を終了し、生地トレイ昇降装置180の制御により生地トレイ150が下降する様子を示す図である。
図16】蓋開閉機構170であるロボットアーム170のワーク173の制御により生地トレイ150の蓋160を閉じる様子を示す図である。
図17】次のストロークに向けて、回転ドラム130の公転運動が起こり、図12の状態に戻る様子を示す図である。
図18】焼成プロセスが全て終わりロボットアーム170のワーク173が蓋160の孔から下方へ抜け出て図11に示すデフォルト状態に戻った様子を示す図である。
図19】従来のバウムクーヘン焼成機の基本構造を示す図である。
図20】特許文献3にかかる従来技術における特許第3686671号公報のバウムクーヘン焼成機の基本構造を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明のバウムクーヘン焼成機の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示したものに限定されるものではないことは言うまでもない。
実施例1は、本発明のバウムクーヘン焼成機の基本形を説明するものである。
実施例2は、ロボットアームにより焼成プロセスが支援される本発明のバウムクーヘン焼成機の応用例を説明するものである。
【実施例0024】
実施例1として、本発明のバウムクーヘン焼成機100の構成例について説明する。
図1は、本発明のバウムクーヘン焼成機100の基本的な構造をごく簡単に示す図である。図1(a)は正面図であるが、内部の構成要素が分かりやすいように断面で図示している。図1(b)は左側面図であり、内部の構成要素が分かりやすいように断面で図示している。いずれも内部の構造、公転間欠停止位置が分かるように簡単に図示している。
【0025】
本発明のバウムクーヘン焼成機100の構成例は、図1に示すように、筐体101、操作制御盤102、開口103、焼成炉110、熱源120、回転ドラム130、駆動機構140、生地トレイ150、蓋160、蓋開閉機構170、生地トレイ昇降装置180を備えている。これらは基本構造の一例であり、それら構成要素の仕組みや働きが改良されて異なるものであっても良く、また、これら構成要素とは異なる他の構成要素が加わったバウムクーヘン焼成機100であっても良い。
なお、図1において架棒体200はその芯棒210が回転ドラム130の架棒位置に支架できるものとなっており、回転ドラム130にある各々の公転間欠停止位置に架棒されているものとする。
【0026】
筐体101は、耐熱性の高い金属製の素材で形成されている。
操作制御盤102は、バウムクーヘン焼成機100の操作を制御するものであり、例えば、装置の前面などに配設されているが配設箇所は限定されない。操作指示を入力するスイッチ類、ボタン類、タッチパネルなどが配置されており、また、フットスイッチなどがあっても良い。なお、実施例2で後述するようにロボットアームにより焼成プロセスが支援されるものでも、操作員による操作が介在する場合もあり得るので、このような操作員が操作を制御する操作制御盤102を設けておくことは好ましい。
開口103は、筐体101に開けられた開口である。下方に生地トレイ150が配置され作業員がアプローチする口となっている。なお、後述する実施例2のロボットアームが焼成プロセスを支援する構成ではロボットアームがアプローチする口ともなる。
【0027】
焼成炉110は、耐熱性に優れた金属やセラミック素材により形成されており、内部に熱源120を備えている。通常のバウムクーヘン焼成機が備えている焼成炉であっても、設定温度などが許容範囲であるため使用することができる。
焼成炉110の大きさは限定されないが、例えば幅1500mm×高さ1650mm×奥行き約1000mmの筐体の中に収められている。
焼成炉110の正面には開口111が設けられている。作業員はこの開口111の前面に立って作業を行うこととなる。
【0028】
回転ドラム130は、向かい合う左右一対のものとなっており、回転ドラム軸によって回転可能に支持され、駆動機構140の駆動により間欠回転運動を行うものである。回転ドラム130の素材は特に限定されないが、例えば、耐熱性の高いステンレス鋼などで良い。
回転ドラム130の架棒箇所に対して、架棒体200が抜き差し交換自在に差し込み横架され、この構成例では、全体的に放射対称分布型、つまり円周軌跡に沿っておいて所定間隔で配置され、この構成例では6本の架棒体200が配置された例となっている。もちろん、架棒体200の個数や太さは限定されず、また、架棒体200の長さは回転ドラム130間の距離によって決まってくる。
【0029】
この構成例では、回転ドラム130の公転運動において間欠的に停止する位置が6カ所設けられている例とし、回転ドラム軸131によって間欠回転して焼成プロセスも6段階に分かれたものとなっている。つまり6回の間欠移動を行って一周するものとなっている。
ここでは、この6カ所の公転間欠停止位置をそれぞれ第1の公転間欠停止位置(1)、第2の公転間欠停止位置(2)、第3の公転間欠停止位置(3)、第4の公転間欠停止位置(4)、第5の公転間欠停止位置(5)、第6の公転間欠停止位置(6)とする。図中では簡単に(1)から(6)の番号を付して示している。
バウムクーヘン焼成機100の焼成プロセスにおいて、これらの各々の公転間欠停止位置で実行される焼成プロセスはそれぞれ下記のようになっている。
【0030】
第1の公転間欠停止位置(1)における焼成プロセスは、生地塗布プロセス+生地成型プロセスである。生地塗布が終了して生地トレイから架棒体200を引き揚げれば、引き続き、生地成型プロセスを始めることができる。第1の公転間欠停止位置(1)には生地トレイ150が設置されており、この生地トレイ150は生地トレイ昇降装置180により昇降可能に支持されている。
【0031】
ここで、第1の公転間欠停止位置(1)における焼成プロセスの期間は、生地塗布期間と、非生地塗布期間に分かれ、それに連動して生地トレイ昇降装置180の昇降運動が切り替わるが、この流れについては後述する。また、本発明では、後述するように、第1の公転間欠停止位置(1)における生地塗布期間には開閉機構170と連動して蓋160が開き、非生地塗布期間には蓋160が閉じるという開閉動作も実行される。
【0032】
第2の公転間欠停止位置(2)における焼成プロセスは、蒸らし成型プロセス+蒸らし焼成プロセスである。
第3の公転間欠停止位置(3)における焼成プロセスは、第1の本焼成プロセスである。
第4の公転間欠停止位置(4)における焼成プロセスは、第2の本焼成プロセスである。
第5の公転間欠停止位置(5)における焼成プロセスは、色付け焼成プロセスである。
第6の公転間欠停止位置(6)における焼成プロセスは、整え準備プロセスである。この整え準備プロセス自体も生地焼成ゾーンにあるため焼成は継続されて行われている。
このように、6つの公転間欠停止位置における焼成プロセスがあるが、第1の公転間欠停止位置(1)のみが焼成されていない「生地塗布ゾーン」であり、第2の公転間欠停止位置(2)から第6の公転間欠停止位置(6)の5カ所が「生地焼成ゾーン」にある。
【0033】
熱源120は焼成炉110内に配置された熱供給源であるが、バウムクーヘンを焼成するために十分なカロリーを供給できるものであれば特に限定されない。例えば、焼きムラができにくく安定した熱源として、ガス燃焼機器や電気発熱機器などが好適である。
この構成例では、熱源120として、焼成炉110内に、ガス燃焼器121、電気発熱機器122、電気発熱機器123、追加熱源である電気発熱機器124の4つが設けられている例となっている。なお、この例では、熱源としてガスと電気のハイブリッド型となっているが、特に限定されず、すべてをガス燃焼器で形成しても良く、すべてを電気発熱器で形成しても良い。
【0034】
ガス燃焼器121が燃焼炉110内の最奥部に燃焼炉110の中心に向けて斜めに設けられており、燃焼炉110の生地焼成ゾーン全体に熱を広範に供給するが、特に、第5の公転間欠停止位置(5)、第4の公転間欠停止位置(4)に近い位置にある。
電気発熱器122は、燃焼炉110内の第5の公転間欠停止位置(5)に支架されている架棒体に対向するように設けられている。
電気発熱器123は、燃焼炉110内の第4の公転間欠停止位置(4)に支架されている架棒体に対向するように角度を付けて設けられている。
さらに、追加熱源である電気発熱機器124は、燃焼炉110の内部の上面付近(天井シュバンク)に設けられている。この追加熱源である電気発熱機器124は、熱源としては、第3の公転間欠停止位置(3)の近くに配置されているが、さらには第2の公転間欠停止位置(2)にもその熱伝導域が拡がっている。
【0035】
駆動機構140は、架棒体200が支架されている軸を中心に自転する自転運動と、回転ドラム130による間欠回転により回転ドラム軸131に対する公転運動を行うように制動する駆動機構となっている。この構成例では架棒体200が6本あり回転ドラム130の6か所に架けているため、公転は1ストロークごとに60度回転する例となっている。
なお、本発明では、後述するように、
【0036】
生地トレイ150は、第1の公転間欠停止位置(1)に配置されており、回転ドラム130の公転運動に同期して昇降する生地トレイ昇降装置180を備えている。架棒体200が公転運動している際には公転運動を邪魔しないように生地トレイ150は下降しているが、本発明では、第1の公転間欠停止位置(1)にとどまる期間も、生地塗布期間と非生地塗布期間に分け、非生地塗布期間では生地トレイ150を下降させる。この流れは後述する。
公転が進み、新たに次の架棒体200が公転停止位置(1)に来れば生地を塗布するため、生地トレイ150が上昇して架棒体200が所定の深さ生地に浸漬するようになる。
【0037】
次に、蓋160を説明する。
蓋160は、生地トレイ150の上面開口に取り付けられており、開放状態としたり閉鎖状態にしたりすることができるものである。
例えば、蓋160としては、生地トレイ150の上面開口に対してスライド移動するスライドシャッターがある。
【0038】
スライドシャッターには様々なものがあり得る。
図2は、蓋160の構造と、蓋開閉機構170による生地トレイ150の上面開口の開閉動作を簡単に示した図である。
なお、この例では、蓋開閉機構170はごく簡単に蓋160に接続された存在として図示している。蓋開閉機構170としては、電気信号を受けて電気的に駆動する駆動機構を備えたアクチュエータ、例えば、スライダーなどのようなものでも良い。
また、蓋開閉機構170としてはロボットアームのような自律駆動可能なアクチュエータもあり得る。ロボットアームを用いる場合は、蓋160においてロボットアームのワークに適合する把持部を持つことが好ましい。
【0039】
スライドシャッターの構造としては、図2(a)に示すように、一枚の板体であるシャッターが生地トレイ150の上面開口に設けられたガイドに沿ってスライド移動するタイプのものがある。
また、図2(b)に示すように、複数の板片が上下に重なった状態で摺動して伸縮する構造のシャッターが生地トレイ150の上面開口に設けられたガイドに沿ってスライド移動するタイプのものがある。
また、図2(c)に示すように、複数の板片がアコーディオンのように折り畳み式で伸縮する構造のシャッターが生地トレイ150の上面開口に設けられたガイドに沿ってスライド移動するタイプのものがある。
また、図示しないが、いわゆる商店店舗のシャッターのように板片が端部で丸まって収納状態となったり展開されて伸長状態になったりする構造のシャッターも可能であり、生地トレイ150の上面開口に設けられたガイドに沿ってスライド移動するタイプのものもあり得る。
【0040】
生地トレイ昇降装置180は、生地トレイ150の昇降運動を行う昇降装置である。
生地トレイ昇降装置180は、駆動機構181と、上面に生地トレイ150を載置する載せ台182を備えている。
公転運動の間欠運動の停止期間において、第1の公転間欠停止位置にある前記架棒体に生地を塗布する生地塗布期間と、それ以外の非生地塗布期間があり、生地トレイ昇降装置180は、生地塗布期間において生地トレイ150が架棒体200に生地を塗布する高さまで生地トレイ150を上昇させる。また、非生地塗布期間において生地トレイ150が架棒体200に生地を塗布する高さから下方に生地トレイ150を下降させる。
【0041】
ここで、本発明では、蓋開閉機構170は、単なる蓋160の開閉を行うスイッチのような単機能ではなく、開閉運動がバウムクーヘンの焼成プロセスと連動している。
図3から図6は、蓋開閉機構170による蓋160の開閉動作と、生地トレイ昇降装置180による生地トレイ150の昇降動作の連動を分かりやすく示した図である。
図3から図6は、内部の様子が分かりやすいように側断面を中心に示している。図中奥側に回転ドラム130の内側の一部が見えており、その前に生地トレイ150、生地トレイ昇降装置180がある。なお、紙面に直交する方向に、架棒体200が収まる幅があり、生地トレイ150、蓋160は断面で示されており内部にバウムクーヘン用の生地が見えている。なお、図3および図4において、蓋開閉機構170の図示は省略している。
【0042】
図3(a)は、先行するストロークが完了し、次のストローク(当段のストローク)に向けて、回転ドラム130の公転運動が起こり、架棒体200が図3(a)の位置で停止したものとする。この状態では、まだ生地塗布期間が始まっておらず、非生地塗布期間の終了時点とも言える。
図3(b)は、当段のストロークで生地塗布期間が開始し、蓋開閉機構170の制御により蓋160が開かれた状態を示している。ここで、図3(b)に示すように、蓋160は架棒体200および架棒体200の表面に焼成されているバウムクーヘンを合わせた径の円筒形のものが通過できる幅分が開かれているものとする。
【0043】
図4(a)から図4(b)は、生地トレイ昇降装置180の駆動機構181の制御により、生地トレイ150を載置している載せ台182が上昇する様子を示している。
図4(a)に示すように、生地トレイ昇降装置180の駆動機構181の制御により生地トレイ150が上昇し、図4(b)に示すように、架棒体200および焼成済みのバウムクーヘンの表面の下方がバウムクーヘン生地に浸漬する。架棒体200は回転ドラム130の支持部132の自転運動により、表面に均一に塗布されるように回転している。
図4(b)の状態は、あらかじめ決まっている所定時間にわたって継続し、その間にバウムクーヘン生地が表面に均一に塗布される。これが生地塗布期間の実質的な中心期間と言える。
【0044】
所定時間が経過すると、図5(a)に示すように、生地塗布を終了するため、生地トレイ昇降装置180の制御により生地トレイ150が下降を開始する。
図5(b)に示すように、駆動機構181の制御により生地トレイ150が下降することにより架棒体200が生地トレイ150内の浸漬状態から抜け出て、バウムクーヘン生地塗布が終了する。この状態で実質的には非生地塗布期間に移行するとも言える。
なお、 図5(b)の状態も所定時間維持されることが好ましい。架棒体200と焼成済みのバウムクーヘンから過剰に塗布されたバウムクーヘン生地が滴り落ちるが、滴り落ちるバウムクーヘン生地を生地トレイ150に戻るように受け止めるためである。
なお、この図5(b)の期間において、バウムクーヘン生地塗布の状態を均すためバウムクーヘン成型補助期間として活用することも好ましい。図示しないが、例えば、塗布済みのバウムクーヘン生地の表面にヘラを軽く当てることにより表面を美しく成型することができる。
【0045】
次に、図6(a)に示すように、蓋開閉機構170の制御により生地トレイ150の蓋160を閉じる。このように、生地トレイ150の蓋160を閉じることにより、生地塗布期間が終了した時点で生地トレイ150の表面からの水分の蒸発を防ぎ、かつ焼成炉110の熱源120から受ける熱を遮断し、生地トレイ150中のバウムクーヘン生地の表面の生焼けを防止し、生地トレイ150中のバウムクーヘン生地の状態を良好に保つ。
この図3(a)から図6(a)に示す一連の生地塗布期間における処理のストロークが完了し、図6(b)に示すように、次のストロークに向けて、回転ドラム130の公転運動が起こり、図3(a)の状態に戻る。
【0046】
次に、蓋160の蓋開閉運動に伴って、生地トレイ150内のバウムクーヘン生地を撹拌する工夫について述べる。蓋160の裏側に撹拌子171を備えた構成とすれば、蓋160の開閉運動に伴って生地トレイ150内の生地を撹拌することができる。生地トレイ150内のバウムクーヘン生地を撹拌すると生地の状態を常に均一に保ち、いわゆる生地のダマというものが生じにくくなる。
【0047】
撹拌子171としては、例えば、蓋裏に立設された板状体という構成がある。
蓋裏に立設された板状体であれば、蓋開閉機構170による蓋160の開閉運動に伴って撹拌子171が生地トレイ内を移動するので、生地トレイ150内の生地を撹拌できる。
また、例えば、撹拌子171が蓋裏に設けられた回転はね装置という構成もあり得る。
回転はね装置は小型モータなどで能動的に回転可能とする。回転はね装置により少なくとも蓋の閉鎖状態において回転はね装置が生地トレイの生地を撹拌することができる。
【0048】
次に、本発明のバウムクーヘン焼成機100の1サイクルの焼成プロセスと、蓋開閉機構170の制御による生地トレイ150の蓋160の開閉動作との連携を説明しておく。
図7から図9は、1ストローク分の駆動機構140の制動による回転ドラム130に支架されている架棒体200の公転運動などを簡単に説明する図である。これらの図において回転ドラム130に対して架棒体200の横架位置を簡単に図示したものとなっている。つまり、架棒体200は架棒体の芯棒の断面が見えているように描かれている。
なお、右側がバウムクーヘン焼成機100の前面となっている。
以下の説明は、公転停止位置(1)にある1つの架棒体200に注目して説明する。
【0049】
焼成炉110内の回転ドラム130に6本の架棒体200が支架されており、駆動機構140(図示せず)により自転運動が行われている。非生地塗布期間にある生地トレイ昇降装置180の載せ台182に載置された生地トレイ150は下方に下降して待機している。生地トレイ150の蓋160は蓋開閉機構170の制御により閉鎖されている。
【0050】
図7(a)に示すように、次のストロークに向けて公転運動が起こり、架棒体200が公転停止位置(1)に到達する。駆動機構140による回転ドラム130の公転運動は停止するが、架棒体200の自転運動は継続している。
これで当段のストロークが開始する。
【0051】
図7(b)に示すように、生地塗布期間の開始に向け、蓋開閉機構170の制御により生地トレイ150の蓋160が開かれる。これは図3(b)で説明した状態である。
【0052】
図8(a)は、生地トレイ昇降装置180の駆動機構181の制御により、生地トレイ150を載置している載せ台182が上昇し、架棒体200および焼成済みのバウムクーヘンの表面の下方がバウムクーヘン生地に浸漬している様子を示している。架棒体200は回転ドラム130の支持部132の自転運動により、表面に均一に塗布されるように回転する。
図8(a)の状態は、所定時間にわたって継続する。これが生地塗布期間の実質的な中心期間と言える。
【0053】
所定時間が経過すると、図8(b)に示すように、生地塗布を終了し、生地トレイ昇降装置180の制御により生地トレイ150が下降する。
図8(b)に示すように、駆動機構181の制御により架棒体200が生地トレイ150内の浸漬状態から抜け出て、バウムクーヘン生地塗布が終了する。
なお、図8(b)の状態においてバウムクーヘン生地塗布の状態を均すためバウムクーヘン成型補助期間として活用することも好ましい。
【0054】
次に、図9(a)に示すように、蓋開閉機構170の制御により生地トレイ150の蓋160を閉じる。
この図7(a)から図9(b)に示す一連の生地塗布期間における処理のストロークが完了し、図9(b)に示すように、次のストロークに向けて、回転ドラム130の公転運動が起こり、図7(a)の状態に戻る。
【0055】
以上が、実施例1にかかる本発明のバウムクーヘン焼成機の簡単な説明である。
以上、本発明のバウムクーヘン焼成機によれば、生地トレイの表面付近において暴露する熱を制御することができ、生地トレイの生地の表面付近で蓄熱して硬くなることがなくなり、生地の状態を良好に保つことができ、しっとりと柔らかい焼き上がりを実現できる。
【実施例0056】
実施例2として、ロボットアームを伴うことにより作業員の負荷低減、作業環境を向上せしめた本発明のバウムクーヘン焼成機100の構成例について説明する。
なお、本発明のバウムクーヘン焼成機100の機械本体は実施例1と同様で良く、ここでは、実施例1と同様の説明は適宜省略し、ロボットアームを伴う部分について説明する。
図10は、ロボットアームを伴う場合の生地トレイ150と蓋160の一例を示す図である。実施例1に示したように、蓋160の構造は様々あり得るが、ここでは、一枚のスライドシャッター式の蓋160を例に示した。
図10に示すように、蓋160の機能自体は、生地トレイ150の開口を開閉するものであるが、蓋開閉機構170がロボットアームの例となっている。蓋開閉機構170であるロボットアームのワークは限定されないが、蓋160を確実に把持して操作できるように、この例では、ワークとして棒状のワーク173であり、蓋160にはこのワーク173を受け入れる孔が設けられた例となっている。
図10(b)に示すように、蓋160に設けられている孔にワーク173が貫通することにより、ワーク173が水平方向に移動することにより、蓋160を引き出したり押し入れたりすることができる構造となっている。
【0057】
次に、図11から図17を参照しつつ、本発明のバウムクーヘン焼成機100の1サイクルの焼成プロセスと、蓋開閉機構170であるロボットアーム170の制御による生地トレイ150の蓋160の開閉動作との連携を説明しておく。
なお、実施例1における図7から図9で説明したものと同様の部分については説明を簡単にして適宜省略することととし、蓋開閉機構170であるロボットアーム170のワーク173の動作を中心に説明する。
【0058】
蓋開閉機構170であるロボットアーム170は、ロボットアーム本体、ロボットアーム172、ロボットアームの先端171、ロボットアームのワーク173を備えた構成となっている。ここでは、図10に示したように、ロボットアームのワーク173は棒状のワークであり、蓋160に穿たれている孔に貫通するサイズの棒状体となっている。
【0059】
図11は、焼成プロセスが開始する際の蓋開閉機構170であるロボットアーム170のワーク173のデフォルト状態を簡単に示す図である。
図11に示すように、蓋開閉機構170であるロボットアーム170のワーク173はまだ蓋160の孔には嵌合していない。
【0060】
図12は、焼成プロセスが開始し、蓋開閉機構170であるロボットアーム170のワーク173による公転停止位置(1)にある架棒体200に対する生地塗布期間のストローク開始前の状態を示す図である。
図12に示すように、図11の状態からロボットアーム170のアーム172が稼働してロボットアームの先端171が上昇し、蓋160に穿たれている孔に貫通し、蓋160の開閉操作が可能な状態となる。
【0061】
図13は、生地塗布期間の開始に向け、蓋開閉機構170であるロボットアーム170の制御により生地トレイ150の蓋160を開く様子を示す図である。
この例では、ロボットアーム170の制御によりロボットアーム172がロボットアームの先端171を水平方向に図中右側へ水平移動するように稼働する。この動作に伴ってワーク173が図中右側へ水平移動し、蓋160が図中右側へ引き出され、生地トレイ150の上面の一部が開口する。
これは、図7(b)および図3(b)で説明した状態である。
【0062】
図14は、生地トレイ昇降装置180の駆動機構の制御により、生地トレイ150が上昇し、架棒体200および焼成済みのバウムクーヘンの表面の下方がバウムクーヘン生地に浸漬している様子を示している。架棒体200は回転ドラム130の支持部132の自転運動により、表面に均一に塗布されるように回転する。
図14の状態は、所定時間にわたって継続する。これが生地塗布期間の実質的な中心期間と言える。
【0063】
所定時間が経過すると、図15に示すように、生地塗布を終了し、生地トレイ昇降装置180の制御により生地トレイ150が下降する。なお、図11に示したようなデフォルト状態まで戻る必要はなく、架棒体200および焼成済みのバウムクーヘンの表面の下方がバウムクーヘン生地から十分に抜け出る程度の高さでも良い。
駆動機構181の制御により架棒体200が生地トレイ150内の浸漬状態から抜け出て、バウムクーヘン生地塗布が終了する。
なお、この図15の状態においてバウムクーヘン生地塗布の状態を均すためバウムクーヘン成型補助期間として活用することも好ましい。
【0064】
図16は、蓋開閉機構170であるロボットアーム170のワーク173の制御により生地トレイ150の蓋160を閉じる様子を示す図である。
この図12から図16に示す一連の生地塗布期間における処理のストロークが完了する。
その後、図17に示すように、次のストロークに向けて、回転ドラム130の公転運動が起こり、図12の状態に戻る。
【0065】
この後、6つの架棒体200に対するストロークが行われ、さらに、バウムクーヘンの焼成の層分にわたりこのストロークが繰り返される。
つまり、図12から図16の焼成プロセスを6回分繰り返せば6つの架棒体200に対するものを1層の焼成となるので、バウムクーヘンの焼成が18層あるとすると、それらを18回繰り返すこととなる。
【0066】
図18は、バウムクーヘンの焼成の層分にわたり図12から図16に示す一連の生地塗布期間における処理のストロークがすべて完了し、すべての架棒体200の周囲に所定の層分のバウムクーヘンが焼成され、焼成プロセスが全て終わった状態で、蓋開閉機構170であるロボットアーム170のワーク173が蓋160の孔から下方へ抜け出て図11に示すデフォルト状態に戻った様子を示す図である。
【0067】
以上が、実施例2にかかる本発明のバウムクーヘン焼成機の簡単な説明である。
実施例2にかかる本発明のバウムクーヘン焼成機によれば、ロボットアームを伴うことにより、バウムクーヘン焼成機の焼成プロセスの全自動化が実現でき、作業員の作業環境を改善でき、省力化できる新しいバウムクーヘン焼成機を提供することができる。
【0068】
以上、本発明のバウムクーヘン焼成機100の好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のバウムクーヘン焼成機100は、新しい焼き菓子を製造する機器および部材として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 バウムクーヘン焼成機
101 筐体
102 操作制御盤
103 開口
110 焼成炉
120 熱源
130 回転ドラム
140 駆動機構
150 生地トレイ
160 蓋
170 蓋開閉機構
180 生地トレイ昇降装置
200 架棒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20