(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120809
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】釣り用錘り
(51)【国際特許分類】
A01K 95/00 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A01K95/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023040124
(22)【出願日】2023-02-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】520086184
【氏名又は名称】織野 泉
(72)【発明者】
【氏名】織野 泉
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307AB17
2B307JA01
2B307JB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カレイのような、海底に棲息する魚を釣る際の、小突きの効果を向上する釣り用錘りを提供する。
【解決手段】錘り本体1また錘り本体の上に取り付けられた可動部材取り付け部材2に設けられた回動軸受け3に、長円形の板材を有し、全長が、錘本体または錘り本体と可動部材取り付け部材とを合わせたよりも長い砂泥拡散羽4を、回動軸受けを中心に回動可能な状態で取り付ける。これを海中に投入すると、降下中は砂泥拡散羽が上方に跳ね上がった状態を維持し、海底に到達した後、釣り竿の操作で錘りを引き上げると、砂泥拡散羽が錘り本体の方向に回動するので、錘り本体の下端が海底に接する面積よりも広範囲の砂泥を、錘り本体が突き刺さった深さより深く掻き上げることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錘り本体と、
一方の端が、前記錘り本体の道糸側に配されてなる可動部材取り付け部材、または前記錘り本体に、軸受けと可動軸を介して回動可能な状態で接合され、他方の端に、長円形状の板材を有する、砂泥拡散羽と、
を有する釣り用錘りであって、
前記砂泥拡散羽の全長が、前記錘り本体、または前記可動部材取り付け部材と前記錘り本体を合わせた長さよりも長いことを特徴とする釣り用錘り。
【請求項2】
前記板材は、長さ方向に隣接して表面と裏面に交互に設けられてなる凹凸部を有することを特徴とする、請求項1に記載の釣り用錘り。
【請求項3】
一方の端部が砂泥拡散羽に接合され、他方の端が、前記錘り本体に設けられてなる糸通しを介して道糸に接続されてなる、砂泥拡散羽牽引糸を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の釣り用錘り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用の錘りに関するもので、特に、砂や泥で構成される海底に棲息する魚を対象とする釣りに適した錘りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カレイやヒラメは、海底の砂や泥に潜むのに適した、偏平な魚体を有し、捕食行動としては、海底に同化して、餌が目の前を通るのを待ち、通った瞬間に捕らえるという行動様式が多い。このため、これらを釣る際は、小突きと称される、錘りの海底での上下動が効果がある。
【0003】
つまり、海底での錘りの動作により、砂や泥を掻き上げることが、餌の動作によるものであると、魚に認識させ、釣り針に付けられた餌に食いつかせることができる。しかし、海底の状況によっては、単に錘りで海底を叩いても、砂や泥が十分に掻き上げられないことがある。
【0004】
また、錘りの自重だけでは、砂などの海底の沈殿物を広範囲に拡散させることが容易ではなく、集魚効果を上げることが困難で充分な釣果を得るのが困難である。そして、一般的に使用される錘りの形状は様々であるが、錘りの自重と海底にある砂泥などに対し、接触する接触面でしか、砂や泥の拡散を引き起こすことができない。
【0005】
このような課題に対処するための技術として、特許文献1には、重りの底部周囲に脚を複数本設け、各脚の末端に、該脚の断面より面積の大きな足部を設けた魚釣りの錘りが開示されている。しかし、ここに開示されている魚釣りの錘りで、掻き上げられる海底の砂や泥は、足部で囲まれた部分のみで、効果の点で改善の余地がある。
【0006】
また、特許文献2には、形状が正三角錐に構成された三角錘りに当該三角錘りの底面の一つの角の近傍位置に吊り輪が埋め込まれている三角錘り本体と、平面前後に横長楕円形の基板における先端部分は鋭利に構成され、かつ、当該基板の前後方向における中心より少しく後方位置をもつと共に、当該基板の前後方向とは直交方向をもって断面U字状の転倒点が突設されているスコップとからなり、スコップを三角錘りの側面のうち、吊り輪に一番遠い面に当該三角錘りの頂角より当該スコップの先端部分が突き出して取付けられていることを特徴とする砂掻き上げ錘りが開示されている。しかし、ここに開示されている錘りも、砂を掻き上げることができるのは、スコップの部分に限定され、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-296417号公報
【特許文献2】実開平5-015774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の課題に鑑み、海底の砂や泥を、小突きの動作により、より広範囲に掻き上げ、拡散する機能を具備した、釣り用錘りを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題の解決のため、本発明者らが、錘りが接する部分以外の、海底の砂や泥を拡散可能な錘りの構造を、鋭意検討した結果、なされたものである。
【0010】
上記課題を解決するための、本発明の一態様に係る釣り用錘りは、錘り本体と、一方の端が、前記錘り本体の道糸側に配されてなる可動部材取り付け部材、または前記錘り本体に、軸受けと可動軸を介して回動可能な状態で接合され、他方の端に、長円形状の板材を有する、砂泥拡散羽と、を有する釣り用錘りであって、前記砂泥拡散羽の全長が、前記錘り本体、または前記可動部材取り付け部材と前記錘り本体を合わせた長さよりも長いことを特徴とする。
【0011】
また本発明の一態様に係る釣り用錘りは、前記板材が、長さ方向に隣接して表面と裏面に交互に設けられてなる凹凸部を有することを特徴とする。
【0012】
また本発明の一態様に係る釣り用錘りは、一方の端部が前記砂泥拡散羽に接合され、他方の端が、前記錘り本体に設けられてなる糸通しを介して道糸に接続されてなる糸を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る、釣り用錘りは、錘り本体または錘りの上端に設けられた可動部材取り付け部材に、上下方向に回動可能に取り付けられた砂泥拡散羽が設けられ、錘りが海中を降下する際は、水の抵抗で砂泥拡散羽が上方に回動した状態に保持され、長円形状の板材に設けられ凹凸により、水の抵抗が軽減され、降下速度の低下を生じることがない。
【0014】
錘りが海底に達すると、錘り本体の先端が自重で、海底の砂泥に突き刺さり、砂泥拡散羽の先端が海底に接した状態で拡がる。錘りが着底したのち、釣り竿の操作により、錘りを引き上げると、砂泥拡散羽が、自重で下方に回動し、その結果、海底の錘り本体の先端が突き刺さった部分の周囲の砂泥が、錘り本体が突き刺さったよりも深い部分から、上方に掻き上げられ、拡散する。
【0015】
また、本発明に係る釣り用錘りにおいては、一方の端部が砂泥拡散羽に接合され、他方の端が、錘り本体に設けられた糸通しを介して、道糸に接続された砂泥拡散羽牽引糸を追加することにより、道糸を上下動させて、砂泥拡散羽を上下に回動させることも可能であり、これによって、本発明に係る錘りの機能を強化できる。
【0016】
錘りに取り付ける砂泥拡散羽は、1枚のみでも、その機能を発現し得るが、全体のバランスや砂泥を掻き上げる機能を十全にするため、複数枚取り付けることが望ましい。しかし、その取り回しなどを考慮すると、その数の上限は4枚程度とするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】 本発明に係る拡散羽を可動部材取り付け部材、接合した状態を示す図で、
図3(a)は、砂泥拡散羽が2枚、
図3(b)は、砂泥拡散羽が3枚の例
【
図4】 本発明に係る釣り用錘りの一例を海中に投入した状態を示す図で、
図4(a)は、海中を降下している状態、
図4(b)は、海底に到達した状態、
図4(c)は、錘りを引き上げた状態
【
図5】 本発明に係る釣り用錘りの一例で、拡散羽に接合した牽引糸を、道糸に接続した例
【
図6】 本発明に係る釣り用錘りの一例で、回動軸受けを直接錘り本体に取り付け、砂泥拡散羽に、接合した砂泥拡散羽牽引糸を、錘り本体に設けた糸通しを介して、道糸に接続した例
【
図7】 本発明に係る釣り用錘りで、錘り本体に回動軸受けを取り付け、砂泥拡散羽牽引糸を用いた一例を海中に投入した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、具体的な図を参照しながら、本発明の実施の形態について、説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る、釣り用錘りの一例を示す図で、砂泥拡散羽4を、錘り本体1の上部に設けた可動部材取り付け部材2に、取り付けた例を示す図である。この例では、錘り本体1の、図における上部に、可動部材取り付け部材2が取り付けられ、可動部材取り付け部材2の図における左右の両端に、回動軸受け3が設けられ、回動軸受け3を介して砂泥拡散羽4が、回動軸受け3に遊嵌された部分を中心に回動可能な状態で取り付けられている。
【0020】
また、可動部材取り付け部材2には道糸5が接続されている。さらに、可動部材取り付け部材2の、図における上方には、受け部2aが取り付けられていることで、砂泥拡散羽4が上方の跳ね上がる位置を制限し、砂泥拡散羽4が、道糸5や図示していない天秤と絡まないようにすることが望ましい。
【0021】
図2は、本発明に係る、砂泥拡散羽4の一例を示す図で、
図2(a)は正面図、
図2(b)は側面図である。砂泥拡散羽4の主な構成要素である板材4aは、長円形で、図における上下方向に、それぞれが互いに逆となる面に凸部4c、4dが設けられ、回動軸4bを回動軸受け3に、回動可能な状態で遊嵌させる。なお、それぞれの凸部の反対側面は、凹形状となっていて、錘りが水中を降下する際の水の抵抗を減じたり、海底の砂泥の掻き上げの効率を向上したりする機能を有する。
【0022】
図3は、本発明に係る砂泥拡散羽を可動部材取り付け部材、接合した状態を示す図で、
図3(a)は、砂泥拡散羽4が2枚、
図3(b)は、砂泥拡散羽4が3枚の例で、
図3(a)では、四角形の、可動部材取り付け部材2bの、対向する辺に設けられた回動軸受け3に、砂泥拡散羽4が接合され、
図3(b)では、三角形の可動部材取り付け部材2cの、それぞれの辺に設けられた回動軸受け3に、砂泥拡散羽4が接合されている。四角形の可動部材取り付け部材を用いれば、4枚の砂泥拡散羽を接合可能で、五角形の可動部材取り付け部材を用いれば、5枚の砂泥拡散羽を接合可能であることは、勿論である。
【0023】
図4は、本発明に係る釣り用錘りの一例を海中に投入した状態を示す図で、
図4(a)は、海中を降下している状態、
図4(b)は、海底に到達した状態、
図4(c)は、錘りを引き上げた状態を示す。本発明に係る釣り用錘りは、海中に投入されると、
図4(a)に示したように、降下中は、水の抵抗を受け、海底6aに到達するまでは、砂泥拡散羽4の先端は上方に回動して跳ね上がった状態に保持され、
図4(b)に示したように、錘り本体1の先端が海底6bに突き刺さると、砂泥拡散羽4の下端は、自重で海底6bに接した状態となり、
図4(c)に示したように、道糸を上方に引き上げると、砂泥拡散羽4は自重で、錘り本体1の方に回動し、海底の砂泥を掻き上げる。しかも、砂泥拡散羽4は錘り本体1よりも、十分に長いので、錘り本体1が突き刺さる深さよりも深い部分の砂泥を掻き上げることができる。
【0024】
図5は、本発明に係る釣り用錘りの一例で、拡散羽牽引糸7を、砂泥拡散羽4に設けた糸接合部7aに接合し、可動部材取り付け部材2に設けた貫通孔7cを介して、道糸に結合した例を示す図である。
図1に示した例では、砂泥拡散羽4の上下方向への回動は、海中を降下する際の水の抵抗と自重によるが、ここに示した例では、道糸を引き上げると、砂泥拡散羽牽引糸7に引っ張られ、錘り本体1の方向に回動するので、砂泥拡散羽4が海底の砂泥を掻き上げる機能を向上できる。
【0025】
また、
図5の仕様では市販の錘りを変更できる。これは水深の深い場所や潮流がある場所において、錘り自体の重さを変える必要があり、砂泥拡散羽の機能を維持しながら市販の錘りに容易に変更する事が可能となり、様々な条件下においても効果をもたらす事ができる。
【0026】
図6は、本発明に係る釣り用錘りの一例で、回動軸受け3を直接錘り本体1に取り付け、砂泥拡散羽牽引糸7を、砂泥拡散羽4に設けた糸接合部7aに接合し、錘り本体1に設けた糸通し7bを介して、道糸に接続した例を示す図である。この例では、
図1の例に示した可動部材取り付け部材が不要となるので、構造が簡略化され、製造コストの低減に寄与し、砂泥拡散羽牽引糸7の機能により、海底の砂泥の掻き上げ機能を向上できるのは前記と同様である。
【0027】
図7は、本発明に係る釣り用錘りで、錘り本体1に回動軸受け3を取り付け、砂泥拡散羽牽引糸7を用いた一例を海中に投入した状態を示す図である。ここでは海底を図示していないが、海中を下降する際には、
図7(a)に示したように、砂泥拡散羽4は、上方に回動して跳ね上がり、海底に到達すると、
図7(b)に示したように錘り本体1の下端は、海底の砂泥に突き刺さって、拡散羽4の先端は、海底に接して静止し、錘りを引き上げると、
図7(c)に示したように、砂泥拡散羽4は砂泥拡散羽牽引糸7に引っ張られ、錘り本体1の方向に回動して、海底の砂泥を掻き上げる。
【0028】
以上に、説明したように、本発明によれば、簡単な構造で、小突きの効果を顕著にすることが可能な、釣り用錘りを提供できる。これによって、海底または川底に棲息する魚を対象とした釣りの釣果を増加できる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 ・・・錘り本体 2,2b,2c ・・・可動部材取り付け部材
2a ・・・受け部 3 ・・・回動軸受け 4 ・・・砂泥拡散羽
4a ・・・板材 4b ・・・回動軸 4c,4d ・・・凸部
5 ・・・道糸 7 ・・・砂泥拡散羽牽引糸 7a・・・糸接合部
7b ・・・ 糸通し 7c・・・貫通孔
【手続補正書】
【提出日】2023-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
錘り本体と、
一方の端が、前記錘り本体の道糸側に配されてなる可動部材取り付け部材、または前記錘り本体に、軸受けと可動軸を介して回動可能な状態で接合され、他方の端に、長円形状の板材を有する、砂泥拡散羽と、
を有する釣り用錘りであって、
前記砂泥拡散羽の全長が、前記錘り本体の長さ、または、前記可動部材取り付け部材と前記錘り本体との間の距離と、前記錘り本体の長さとを合わせた長さよりも長いことを特徴とする釣り用錘り。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
【特許文献1】特開2003-235417号公報
【特許文献2】実開平5-015774号公報
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の一態様に係る釣り用錘りは、錘り本体と、一方の端が、前記錘り本体の道糸側に配されてなる可動部材取り付け部材、または前記錘り本体に、軸受けと可動軸を介して回動可能な状態で接合され、他方の端に、長円形状の板材を有する、砂泥拡散羽と、を有する釣り用錘りであって、前記砂泥拡散羽の全長が、前記錘り本体の長さ、または、前記可動部材取り付け部材と前記錘り本体との間の距離と、前記錘り本体の長さとを合わせた長さよりも長いことを特徴とする。