IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社プラモール精工の特許一覧

特開2024-120811ガスベント部材及びそれを用いた射出成形用金型
<>
  • 特開-ガスベント部材及びそれを用いた射出成形用金型 図1
  • 特開-ガスベント部材及びそれを用いた射出成形用金型 図2
  • 特開-ガスベント部材及びそれを用いた射出成形用金型 図3
  • 特開-ガスベント部材及びそれを用いた射出成形用金型 図4
  • 特開-ガスベント部材及びそれを用いた射出成形用金型 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120811
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ガスベント部材及びそれを用いた射出成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/34 20060101AFI20240829BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B29C45/34
B29C33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023040127
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】509221412
【氏名又は名称】株式会社プラモール精工
(72)【発明者】
【氏名】脇山 高志
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ08
4F202AM28
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK43
4F202CP01
4F202CP03
4F202CP04
4F202CP06
(57)【要約】
【課題】 射出成形において、大型の成形体にも対応し得る、ガスベント部材を提供する。
【解決手段】 表面がキャビティ壁の少なくとも一部を構成し、反対側に真空引きアタッチメント6を取り付けたガスベント部材4の、キャビティ壁を構成する側の面に、少なくとも一つの板状のガス透過部材5を取り付ける。ガス透過部材5には、真空引きアタッチメントに連通するスリットが設けられているが、溶融した高分子材料が侵入しない程度の幅なので、成形体の外観には影響がない。またガスベント部材4は、ボルトで金型に取り付けるが、ボルトを取り付ける座ぐり穴を、閉塞部材で塞ぐので、これも成形体の外観への影響はすくない。ガスベント部材をこのような構成とすることで、金型への着脱が容易で、金型のメンテナンスの作業性が向上する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の部材に、厚さ方向に貫通し、幅が20~40μmのスリットが少なくとも一つ設けられてなるガス透過プレートが、表面に複数箇に配され、反対側の面にガス吸引手段が設けれてなることを特徴とする、ガスベント部材。
【請求項2】
前記表面が、キャビティの表面の少なくとも一部を形成する状態で、前記ガスベント部材が、取り付けられてなることを特徴とする、射出成形用金型。
【請求項3】
前記ガスベント部材における、前記キャビティの表面の少なくとも一部を形成する面に設けられてなる、座ぐり穴を有する貫通孔と、前記射出成型用金型の前記貫通孔が配される部位に、予め設けられてなる第一の雌ネジに、頭部の中心から軸方向に第二の雌ネジが設けられてなるボルトを、前記貫通孔を介して螺合してなる射出成形用金型において、前記座ぐり穴の深さが前記ボルトの頭部の厚さよりも大きく、前記第二の雌ネジに螺合する雄ネジを有し、前記座繰り穴の前記ボルト頭部と前記キャビティ表面との間の段差を解消する閉塞部材を有することを特徴とする、請求項2に記載の射出成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形やトランスファーモールドなどのような、加熱により溶融した高分子材料を金型内のキャビティと称される空間に充填して成形を行う際に、キャビティ内の空気や溶融材料から発生するガスを排出するガスベント、特に自動車のバンパーのような、大型の成形体の製造工程で有用なガスベントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形は、高分子材料の成形体を大量生産する方法として、広汎に行われている。その工程は、加熱装置を備えたシリンダーの内部に、材料の混練と射出を行う機能を有するスクリューを装着し、シリンダー先端のノズルから、金型内に設けられた材料の流路である、スプル、ランナー、ゲートを経由して、キャビティ内に、溶融した材料を圧入するというものである。
【0003】
溶融した高分子材料をキャビティに充填する際は、キャビティ内に残存する空気や、高分子の加熱に伴って生じる熱分解ガスを、速やかに外部に排出する必要があり、金型の固定側と可動側が接触する面に、ガスが透過し、溶融した高分子材料が侵入しない程度のガスベントと称する空隙を設けて対処するのが一般的である。
【0004】
しかし、ガスベントを設ける際は、実際の成形工程の状態に合わせて、空隙の幅を調整することになり、予め設計するのが困難で、近年活用されている、金型内の材料の流動のシミュレーションのパラメーターとすることも、実質的に不可能である。
【0005】
このような課題に対処するために、本発明者らは、特許文献1に、射出成形の金型を構成する部材の中の、キャビティを形成するスリーブ、スプルーロック、エジェクターピンのいずれかに、複数のスリットからなるガスベントを設けることにより、射出成形で発生するガスを排出するガス抜き部材であって、前記ガスベントは金型のキャビティ側の端面から一定の長さを有し、断面積が前記ガスベントよりも大きく、かつキャビティ側とは反対側の端面まで伸びた孔からなるガスニゲに連通し、前記ガスベント入り口から前記ガスニゲとの接合箇所までは、ガスの排出をする為の勾配が設けられたことを特徴とする、ガス抜き部材を開示している。
【0006】
また、同じく本発明者らは、特許文献2に、金属粉末と熱可塑性高分子材料を含むバインダーとの混和物を用いて、一対の面を有し、前記一対の面の一方の面に開口部を有し、前記一対の面の他方の面まで0.1mm以上隔てた位置に尖端部を有するテーパ構造の少なくとも一つの溝を有する、成形体を成形する成形工程と、前記成形体に脱バインダー及び焼結を施して焼結体を得る熱処理工程と、前記焼結体の前記他方の面を前記尖端部が露出するまで研磨する研磨工程を有することを特徴とする、射出成形またはトランスファーモールドで発生するガスを金型の外部に排出するベント部材の製造方法を開示している。
【0007】
しかし、ここに開示されているガス抜き部材、ガスベントは、例えば自動車のバンパーのような大型の成形体の製造工程では、キャビティの容積への対応という観点から改善すべき課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許登録第4678616号公報
【特許文献2】特許登録第7967188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、射出成形において、大型の成形体にも対応し得る、ガスベント部材を提供することである。
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、従来のガスベントのように、金型の固定側と可動側の接合面ではなく、キャビティの壁面からガスを排出する構造、ガスの排出に真空ポンプが使用可能な構造、さらには金型のメンテナンスの際に簡単に着脱可能な構造を有するガスベント部材を鋭意検討した結果、本発明をなしたものである。
【0011】
上記課題を解決するための、本発明の一態様に係るガスベント部材は、板状の部材に、厚さ方向に貫通し、幅が20~40μmのスリットが少なくとも一つ設けられてなるガス透過プレートが、表面に複数箇に配され、反対側の面にガス吸引手段が設けれてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る射出成形用金型は、前記表面が、キャビティの表面の少なくとも一部を形成する状態で、前記ガスベント部材が、取り付けられてなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様に係る射出成用金は、前記ガスベント部材における、前記キャビティの表面の少なくとも一部を形成する面に設けられてなる、座ぐり穴を有する貫通孔と、前記射出成型用金型の前記貫通孔が配される部位に、予め設けられてなる第一の雌ネジに、頭部の中心から軸方向に第二の雌ネジが設けられてなるボルトを、前記貫通孔を介して螺合してなる射出成形用金型において、前記座ぐり穴の深さが前記ボルトの頭部の厚さよりも大きく、前記第二の雌ネジに螺合する雄ネジを有し、前記座ぐり穴の前記ボルト頭部と前記キャビティ表面との間の段差を解消する閉塞部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る射出成形用金型は、キャビティ壁に、真空引き手段を有するガスベント部材を具備しているので、金型の固定側と可動側の境界となるパーティング面に、ガスベントを有する通常の金型より、ガスの排出効果が大きく、成形体の品質向上への寄与が極めて大きい。しかも、ガスを透過するスリットの総面積が予め設計されているので、キャビティ内の材料の流動のシミュレーションも可能である。なお、ガスベントを構成するガス透過部材に設けられているスリットの幅は、ガスを透過するが、溶融した高分子材料が侵入しないように設定されているので、成形体表面の外観には影響を及ぼさない。
【0015】
また、本発明に係るガスベント部材は、ボルトで金型に取り付けるので、着脱が容易で、定期的なメンテナンスの作業性向上に寄与するが、ボルトを挿通するための座ぐり穴は、閉塞部材により閉塞されるの成形体の表面形状を損なうことがない、そして、閉塞部材は、ガスベント部材を取り付けるためのボルトの頭部に、予め設けられた雌ネジを用いて取り付けるので、螺合の際に強く締め付ける必要がなく、ドライバーで締めるだけなので、ドライバーのための溝が成形体表面にリブ状に形成されるのみである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】 本発明に係る射出成形用金型に、本発明に係るガスベント部材を取り付けた部分の一例を示す断面図
図2】 発明に係るガス透過部材の一例を示す斜視図
図3】 本発明に係るガスベント部材の金型への取付手段の一例を示す図
図4】 本発明に用いる六角穴付きボルトと閉塞部材の構造の一例を示す図
図5】 本発明に係るガスベント部材の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について、図を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る射出成形用金型に、本発明に係るガスベント部材4を取り付けた部分の一例を示す断面図である。また、図2は本発明に係るガス透過部材の一例を示す斜視図である。ここに示した例では、金型の可動側1のキャビティ3を構成する面にガスベント部材4が配され、キャビティ側には、スリット5aが設けられたガス透過部材5が配されている。真空引きアタッチメント6は、真空ポンプ接続管7を介して、ガス透過部材5のスリット5aと、図示していない真空ポンプとを連通する機能を有する。
【0019】
図1に示したガスベント部材4は、キャビティ3の側の面、即ち、図における下面が平坦であるが、成形体は平坦な面だけで構成されることは少ない。本発明に係るガスベント部材は、キャビティ壁を構成する面を、成形体の曲面に合わせて研削・研磨を施すことで対応可能である。また、その際は、ガス透過部材や閉塞部材のキャビティ側の面も同様にも、加工を施す必要があるのは勿論である。
【0020】
図3は、本発明に係るガスベント部材4の金型への取付手段8の一例、つまり、図1におけるA部の詳細を示す図である。また。図4は、図3に示した、六角穴付きボルト9と閉塞部材10の構造に一例を示す図で、図4(a)は六角穴付きボルト9、図4(b)は閉塞部材10である。ここに例示した取付手段8により、金型の可動側1に設けた第一の雌ネジ8aに六角穴付きボルト9を螺合し、可動側1にガスベント部材4が取り付けられている。そして、六角穴付きボルト9には、中心位置に頭部から第二の雌ネジ9aが設けられ、閉塞部材10の雄ネジを螺合できる構成となっている。
【0021】
閉塞部材10には、ドライバー用の溝10aが設けられているが、この溝は、成形体表面にリブ状に現れるのみであるのは、前述のとおりである。
【0022】
図5は、本発明に係るガスベント部材4の一例を示す図で、図5(a)は正面の断面図、図5(b)は底面図である。この図に示したように、本発明に係るガスベント部材4は、ガス透過部材取り付け部11を有し、ガス透過部材5が篏合され、ボルトの頭部を配するための座ぐり穴13を有する。
【0023】
以上に説明したように、本発明によれば、大型の成形体に対応する、射出成形用のガスベント部材とそれを用いた射出成形用金型を提供することができ、射出成形の生産性向上に寄与できる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・可動側 2・・・固定側 3・・・キャビティ
4・・・ガスベント部材 5・・・ガス透過部材
5a・・・スリット 6・・・真空引きアタッチメント
7・・・真空ポンプ接続管
8・・・取付手段 8a・・・第一の雌ネジ
9・・・六角穴付きボルト 9a・・・第二の雌ネジ
10・・・閉塞部材 10a・・・ドライバー用の溝
11・・・ガス透過部材取付部 12・・・真空引き連通孔
13・・・座ぐり穴
図1
図2
図3
図4
図5