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特開2024-120812模様付きアルミニウム素材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120812
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】模様付きアルミニウム素材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/16 20060101AFI20240829BHJP
   C23F 1/00 20060101ALI20240829BHJP
   C25D 11/04 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C25D11/16 301
C23F1/00 D
C25D11/04 310C
C25D11/04 310D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023040128
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】591064461
【氏名又は名称】エヌ・エス・ケー ニシダ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西田 康夫
(72)【発明者】
【氏名】鍵山 陽平
【テーマコード(参考)】
4K057
【Fターム(参考)】
4K057WA20
4K057WB05
4K057WE22
4K057WK05
4K057WK10
4K057WN05
4K057WN09
(57)【要約】
【課題】 簡単な作業で自然石のような風合いを有するアルミニウム製品を製造する方法を提供する。
【解決手段】 本開示による製造方法は、アルミニウム製品等の表面に腐食作用を有する液剤を噴霧あるいは刷毛塗等で部分的に塗布し、腐食された表面と腐食されていない表面の模様の違いを得る。腐食された表面と腐食されていない表面の模様の違いに加え、研磨による傷をつけることにより、自然な風合いが増し金属光沢が消えたアルミニウム表面を作り出す。模様を付けたアルミニウムを、それ以上酸化が進行することがないように陽極酸化処理を施し、製品として完成させる。または、模様を付けたアルミニウムに無色透明又は着色透明の塗料で塗装を施すことにより、その模様がついたまま塗装製品として完成させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム素材の表面に腐食作用を有する液剤を部分的に塗布することにより、腐食された表面と腐食されていない表面の模様の違いを得る腐食工程と、
前記腐食工程よりも後に、前記表面に陽極酸化処理を施す陽極酸化工程と、を備える模様付きアルミニウム素材の製造方法。
【請求項2】
前記陽極酸化工程は、前処理工程としてのエッチング処理を省く、請求項1に記載の模様付きアルミニウム素材の製造方法。
【請求項3】
前記陽極酸化工程より前に、研磨により前記表面を傷つける研磨工程を、更に備える、請求項1又は2のいずれかに記載の模様付きアルミニウム素材の製造方法。
【請求項4】
アルミニウム素材の表面に腐食作用を有する液剤を部分的に塗布することにより、腐食された表面と腐食されていない表面の模様の違いを得る腐食工程と、
前記腐食工程よりも後に、前記表面に無色透明又は着色透明の塗料により塗装処理を施す塗装工程と、を備える模様付きアルミニウム素材の製造方法。
【請求項5】
前記塗装工程より前に、研磨により前記表面を傷つける研磨工程を、更に備える、請求項4に記載の模様付きアルミニウム素材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物の内装や外装に用いられる模様付きアルミニウムの製造方法に関する。
なお。この明細書において、アルミニウムとはアルミニウム合金を含む意味において用い、その形状も板、パイプ等の型材を含む意味において用いる.
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような用途に用いられるアルミニウム表面の装飾用の模様を付す場合、アルミニウム表面を研磨する。あるいはエンボス加工する等実施されている。あるいは(特公平5-17320)の潤滑成分を含む皮膜の表面をブラシホイールで押し付け模様付を行う方法が知られている。
また(特公平7-107200)のアルミニウム板の製造段階で圧延前に腐食溶液でアルミニウムスラブ表面に模様を付したのち圧延をして所定の厚みの板を製造する方法が公開されている。
また、自然な風合いを得るために、溶融亜鉛メッキ鋼にリン酸塩処理を実施、その後黒染め剤で処理する方法(特許第4980607)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5-17320
【特許文献2】特公平7-107200
【特許文献3】特許第4980607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記、エンボス加工や、特公平5-17320あるいは特公平7-107200とも大掛かりな設備を必要とし、製造コストも高額になる。
また、その模様も木材のような模様を付与することを念頭に考えられたものである。
【0005】
上記特許第4980607は鉄の溶融亜鉛メッキを使用することに限られ、そのために重量が重くなり用途が限られていた。また高温での加工を伴うため、薄板等軽量な鉄製品には応用することがむつかしい技術である。
【0006】
上記方法は、一枚あるいは一本だけ等の小ロット、あるいは小サイズに加工するには、設備の規模、あるいはコストの制約があり難しい方法であった。
【0007】
研磨にて模様を付与する場合、一定の規則正しい模様となり、自然な風合いを得るには限界があった。本発明は簡単な作業で自然石のような風合いを有するアルミニウムを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の概略構成は、アルミニウム製品等の表面に腐食作用を有する液剤を噴霧あるいは刷毛塗等で部分的に塗布し、腐食された表面と腐食されていない表面の模様の違いを得る方法である。
【0009】
腐食された表面と腐食されていない表面の模様の違いに加え、研磨による傷をつけることにより、自然な風合いが増し金属光沢が消えたアルミニウム表面を作り出す。
【0010】
模様を付けたアルミニウムを、それ以上酸化が進行することがないように陽極酸化処理を施し、製品として完成させる。
【0011】
または、模様を付けたアルミニウムに無色透明又は着色透明の塗料で塗装を施すことにより、その模様がついたまま塗装製品として完成させる。
【0012】
本発明の一実施の形態は、アルミニウムの表面に腐食作用を有する液剤を一定パターンにならないように噴霧や刷毛塗等で部分的に塗布する。且つ研磨によりその表面を傷つけ、腐食された表面と腐食されていない表面の模様の違いを得たのち陽極酸化処理を施すことにより、自然石のような風合いを持つアルミニウム製品を製造する。
【0013】
本発明の別の実施の形態は、アルミニウムの表面に腐食作用を有する液剤を一定パターンにならないように噴霧や刷毛塗等で部分的に塗布する。且つ研磨によりその表面を傷つけ、腐食された表面と腐食されていない表面の模様の違いを得たのち、透明あるいは着色された透明塗料で塗装処理を行い、色のついた自然石の風合いを持つアルミニウム製品を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】自然石風模様付きアルミニウムの製造方法の実施例1
図2】自然石風模様付きアルミニウムの製造方法の実施例2
図3】アルミニウムの断面図
図4】アルミニウムに腐食性水溶性を塗布した状態図
図5】腐食性水溶液によりアルミニウムの腐食が進んだ模式図
図6】研磨により傷つけを行った模式図
図7】アルマイト処理後の陽極酸化被膜が付いた模式図
図8】研磨により傷つけを行った模式図
図9】研磨により傷つけ後、腐食性水溶性を塗布した模式図
図10】腐食性水溶液によりアルミニウムの腐食が進んだ模式図
図11】アルマイト処理後の酸化被膜が付いた模式図
図12】アルミニウム生地の表面写真
図13】アルミニウムに腐食性水溶性を塗布した表面写真
図14】研磨により傷つけを行った表面写真
図15】アルマイト処理後の酸化被膜が付いた表面写真
図16】研磨により傷つけを行った表面写真
図17】研磨により傷つけ後、腐食性水溶性を塗布した表面写真
図18】アルマイト処理後の酸化被膜が付いた表面写真
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施する工程は図1の方法と図2の方法がある。
2つの工程の違いは化学的腐食と機械的研磨の順序を入れ替えることによる。
【0016】
図1に沿ってその方法を説明する。アルミニウム(図3の11)の表面(図12)に水酸化ナトリウム等の腐食性水溶液(図4の12)を噴霧、刷毛塗等で無作為に塗布し、化学的腐食による模様(図-5の13)を形成する。(図1の2)、(図13
腐食の深さは、例えば20μm(マイクロメートル)以内である。
【0017】
また、化学的腐食による模様と機械的な研磨模様(図-6の14)とを組み合わせることにより(図1の3)、(図14)、より自然石のように見える意匠建材を製造する。
【0018】
アルマイト加工(図1の4、図7の15)を行って、石のように見える意匠性優れたアルミニウムを製造する。(図15
【0019】
機械的研磨により、アルミニウム表面に傷がつき、その傷が光のあたる方向により影が形成される。その効果により、アルミニウムを見る方向によって認識される風合いが異なり、より自然な雰囲気を得ることができるようになる。研磨の深さは、例えば20μm(マイクロメートル)以内である。
【0020】
化学的腐食による模様付けは、マスキングを使用したり全体を均一に腐食するのではなく、腐食液を噴霧器等で吹き付けたり、腐食液を刷毛等で塗布したり、飛び散らしたりして、自然な模様ができるように行う。したがって、1回ごとに模様が全く同じものができず、製品全体として、もともと自然界に存在していた物のように表現できる方法である。
【0021】
アルマイト加工を行うことによりアルミニウムのそれ以上の酸化を防ぎ、金属素材として一般に使用することができる。
【0022】
アルマイト加工とは、酸化被膜(図-7の15あるいは図-11の15)生成の加工や酸化被膜塗装複合被膜生成の加工あるいは染色法をいい、その加工方法により、アルミ本来の白色からブロンズ色、黒色あるいは、染色法によりあらゆる色の着色が可能である。
【0023】
一連のアルマイト加工工程の前処理であるエッチング処理を省略することにより、事前に形成された化学的腐食あるいは、化学的腐食と研磨模様との組み合わせ模様が鮮明に維持されることとなる。このエッチング処理は、表面の状態を均一化する目的で、表面全体に均一に行われる化学的腐食処理であり、アルマイト加工工程においては、前処理として行われるのが通例である。このエッチング処理の深さは、例えば5μm~30μm(マイクロメートル)である。本発明では、腐食処理により不均一な表面を作ることが目的であるので、アルマイト加工工程の前処理としてのエッチング処理は省略可能であるだけでなく、省略することによって、腐食あるいは研磨により形成された模様が、より鮮明に維持されることになる。
【0024】
酸化防止方法として、アルマイト加工は有効であるが、模様付けを行ったのち、透明な塗料で塗装を行うこともできる。その場合塗料に着色料を混入することにより多彩な色の自然石風の建材が製造される。
【0025】
機械的研磨3を省いて、化学的腐食2のみでも、アルミニウム素材11の表面に、自然石風の模様を、相応に形成することができる。
【0026】
次に、図2に沿って本発明を実施する方法を説明する。
アルミニウム(図3の11)の表面(図12)に機械的な研磨模様(図-8の14)を形成する。(図2の6)、(図16
【0027】
前記表面(図16)に 水酸化ナトリウム等の腐食性水溶液(図9の12)を噴霧、刷毛塗等で無作為に塗布し、化学的腐食による模様(図10の13)を形成する。(図2の7)、(図17
【0028】
機械的な研磨模様(図8の14)と化学的腐食による模様とを組み合わせることにより(図10の13)、(図17)、より自然石のように見える意匠建材を製造する。
【0029】
アルマイト加工(図2の4、図11の15)を行って、石のように見える意匠性優れたアルミニウムを製造する。(図15
(実施の形態の利点)
【0030】
製造方法が簡単であるため、小ロット製品の製造も可能であり、例えば特定の看板等、一つの製品にも利用することができ、その応用範囲は無限に存在する。
【0031】
アルミニウムを元素材としているため、重量の軽量化が図られ、建物の壁面等に利用した場合、石材や鉄製の自然な風合いを表現した製品を使用した場合より、必要とされる構造強度が低減できることにより、建物全体のコストを低めることができる。
【0032】
曲げ加工を行うことができ、石では製造できなかった製品も作ることができ、その応用範囲は無限に存在する。
【0033】
アルミニウムを元素材としているため、紙、木材や石材を使った意匠建材と違い、再利用が可能であり、再度新しいアルミニウムとして世の中に提供できるメリットがある。
【符号の説明】
【0034】
1 アルミニウム
2 化学的腐食(模様付け)工程
3 化学的腐食後機械的研磨(模様付け)工程
4 アルマイトあるいは塗装工程
5 製品
6 機械的研磨(模様付け)工程
7 機械的研磨後化学的腐食(模様付け)工程
11 アルミニウム素材
12 腐食性水溶液
13 腐食した部分
14 研磨によりできた傷
15 陽極酸化被膜層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16
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