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  • 特開-螺旋水車 図1
  • 特開-螺旋水車 図2
  • 特開-螺旋水車 図3
  • 特開-螺旋水車 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120821
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】螺旋水車
(51)【国際特許分類】
   F03B 3/12 20060101AFI20240829BHJP
   F03B 7/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F03B3/12
F03B7/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023098813
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2023040126
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507092344
【氏名又は名称】大原 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】大原 幸雄
【テーマコード(参考)】
3H072
【Fターム(参考)】
3H072AA12
3H072BB31
3H072CC01
3H072CC42
(57)【要約】
【課題】 流入側から流入する水を流出側の羽根にも当てるように構成して、効率をさらに高めることができる螺旋水車を提供する。
【解決手段】 螺旋水車1は、シャフト2の周囲に螺旋状の羽根3を配設し、羽根3は、2シャフトに対する傾斜角を流入側では小さく形成し、流出側に至るに従って大きく形成するとともに、シャフト2に対する各羽根3の間隔を流入側では大きく形成し、流出側に至るに従って小さく形成し、かつ、羽根3の径を流入側では小さく、流出側に至るに従って大きく形成して、羽根による外接形状を略円錐台形に形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの周囲に螺旋状の羽根を配設した螺旋水車であって、
前記羽根は、前記シャフトに対する傾斜角を流入側では小さく形成し、流出側に至るに従って大きく形成するとともに、前記シャフトに対する各前記羽根の間隔を流入側では大きく形成し、流出側に至るに従って小さく形成し、
かつ、前記羽根の径を流入側では小さく、流出側に至るに従って大きく形成して、前記羽根による外接形状を略円錐台形に形成したことを特徴とする螺旋水車。
【請求項2】
前記螺旋水車は、水を流通させる円筒状の圧力管の内部に配設され、前記圧力管の内面と前記羽根の周縁との距離を、流入側では大きくし、流出側に至るに従って小さくした請求項1に記載の螺旋水車。
【請求項3】
前記羽根により形成される螺旋状流路には前記圧力管内の前記水を流通させるとともに、前記羽根の外周側に前記圧力管の内壁側を流通する前記水を当てる請求項2に記載の螺旋水車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトの周囲に螺旋状の羽根を配設した螺旋水車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特に落差が小さい用水路に用いられる小形水力発電装置には、シャフトの周囲に螺旋状の羽根を設けた螺旋水車が採用されていた。螺旋水車は、例えば、特開2013-174198号公報(特許文献1)に示されるように、中空円筒形の回転胴と、この回転胴の外周面には螺旋状の回転羽根が設けられている。回転羽根は、回転胴の外周面から径方向外方に向けて延在し、上方の始端から下方の終端にかけて全体的に螺旋の傾斜角度は同じであり、また、始端から終端にかけて回転羽根は同じ螺旋ピッチで設けられている。この螺旋水車は、斜面とされた水路上へ斜め横置きに設置し、回転羽根が斜面の上方から流れてくる流水圧を受けることで、螺旋水車が回転する構成となっている。
【0003】
一般には、このような螺旋水車が実用に供されている。ところが、この螺旋水車は、水が流入口から流入すると最初の回転羽根にぶつかって回転力を発生させるが、それ以降では、螺旋状の水路によって方向転換することから、螺旋水車の回転に対するは寄与が減少し、逆にブレーキ力が増大する。このため、水の運動エネルギーが無駄に消費されることから、効率が悪くなる問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、特開2007-154862号公報(特許文献2)には、回転軸に対する羽根の勾配を、流入口では小さく、流出口に向かって徐々に大きくするように構成し、水の運動エネルギーを流入口から流出口まで均等に回転エネルギーに変換することによって、流速が早くても遅くても効率良く回転させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-174198号公報
【特許文献2】特開2007-154862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2(特開2007-154862号公報)に開示された螺旋水車は、水が羽根の各点に集中してぶつかるものとして、流入口から流入口までの各点において、水が羽根を垂直に押す力、水が羽根を回転軸に垂直方向に押す力から、計算によって回転軸に対する羽根の勾配を導き出して、羽根が最適な値となるように構成している。これにより、螺旋水車を効率良く回転させることができるとしている。
【0007】
ところが、特許文献2に図示された螺旋水車は、周囲が開放されていることから、流入口から流入した水が外方に飛び出してしまうため、実際には、開示された計算式のような理論値にはならない。一方、特許文献2に示された螺旋水車を特許文献1に示されたフレーム(円筒管)に配置することを想定した場合には、流入口から流入した水が最初の回転羽根にぶつかり、その後は、回転羽根による螺旋状の水路を流通することになる。しかしながら、回転軸に対する羽根の勾配を、流入口では小さくていることから、最初の回転羽根にぶつかった後の水の減速が小さいことから、特許文献1に示された螺旋水車よりも効率は良くなるものの、計算式により導いた理論的な効率を得ることはできない。
【0008】
そこで、本発明の課題は、流入側から流入する水を流出側の羽根にも当てるように構成して、効率をさらに高めることができる螺旋水車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による螺旋水車は、シャフトの周囲に螺旋状の羽根を配設し、前記羽根は、前記シャフトに対する傾斜角を流入側では小さく形成し、流出側に至るに従って大きく形成するとともに、前記シャフトに対する各前記羽根の間隔を流入側では大きく形成し、流出側に至るに従って小さく形成し、かつ、前記羽根の径を流入側では小さく、流出側に至るに従って大きく形成して、前記羽根による外接形状を略円錐台形に形成したことを要旨としている。
【0010】
また、前記螺旋水車は、水を流通させる円筒状の圧力管の内部に配設され、前記圧力管の内面と前記羽根の周縁との距離を、流入側では大きくし、流出側に至るに従って小さくしている。
【0011】
さらに、前記羽根により形成される螺旋状流路には前記圧力管内の前記水を流通させるとともに、前記羽根の外周側に前記圧力管の内壁側を流通する前記水を当てるようにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の螺旋水車によれば、羽根のシャフトに対する傾斜角を流入側では小さく、流出側に至るに従って大きく形成し、羽根の間隔を流入側では大きく、流出側に至るに従って小さく形成し、羽根の径を流入側では小さく、流出側に至るに従って大きく形成し、羽根による外接形状を略円錐台形に形成することにより、螺旋水車の回転効率を一層高めることが可能となる。すなわち、羽根の傾斜角を流入側から流出側に至るに従って小さく、形成し、羽根の間隔を流入側では大きく、流出側に至るに従って小さくしているので、螺旋水車によって形成された螺旋流路を流通する水勢に応じて水車を回転付勢することができる。さらに、羽根の径を流入側では小さく、流出側に至るに従って大きく形成して、外接形状を略円錐台形に形成しているので、流入側の羽根の外周を流通する水を流出側の羽根の外周側で受けることから、水車を効率よく回転付勢することができる。
【0013】
また、水を流通させる円筒状の圧力管の内部に螺旋水車を配設することにより、圧力管の内面と羽根の周縁との距離が、流入側では大きく、流出側に至るに従って小さくなって隙間が生ずる。この隙間に水が流通することにより、羽根の外周側で水を受けることができるので、水車を効率よく回転付勢することができる。
【0014】
さらに、圧力管内部の水を、羽根により形成される螺旋状流路と、羽根の外周側の圧力管の内壁側の2つの流路で流通させて水車を回転付勢するので、効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の螺旋水車の実施例を示す側面図である。
図2図1に示す螺旋水車の正面図である。
図3】圧力管内に配設した螺旋水車への水の流路を示す説明図である。
図4】螺旋水車を小形水力発電用水車装置に設置した形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による螺旋水車は、シャフトの周囲に螺旋状の羽根を配設し、前記羽根は、前記シャフトに対する傾斜角を流入側では小さく形成し、流出側に至るに従って大きく形成するとともに、前記シャフトに対する各前記羽根の間隔を流入側では大きく形成し、流出側に至るに従って小さく形成し、かつ、前記羽根の径を流入側では小さく、流出側に至るに従って大きく形成して、前記羽根による外接形状を略円錐台形に形成している。
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施例について説明する。図1図2は、本発明による螺旋水車を示している。螺旋水車1は、シャフト2の周囲に螺旋状の羽根3が配設されている。シャフト2は、図示しない周知の軸受によって回転自在に支持されている。
【0018】
螺旋状の羽根3は、シャフト2の軸方向に対する傾斜角を、図示右方の流入側では小さく形成し、図示右方の流出側に至るに従って大きくなるように形成している。すなわち、図1に示すように、側面方向から見た流入側の第1の傾斜角度θ1は小さく、流出側に至るに従って傾斜角度θ2、θ3、θ4、θ5を順次大きくしている。ちなみに、第1の傾斜角度θ1を15度とした場合、傾斜角度θ2を20度、θ3を25度、θ4を30度、θ5を35度と、5度づつ大きくしている。なお、傾斜角度は、10度から60度の範囲に設定することが好ましい。また、図1に示す羽根3は、二重螺旋としているが、一重または複数の螺旋に形成しても良い。
【0019】
さらに、シャフト2に対する羽根3の間隔を流入側では大きく形成し、流出側に至るに従って小さく形成している。すなわち、図1に示すように、側面方向から見た流入側の第1、第2の間隔P1は大きく、流出側に至るに従って間隔P2、P3、P4を順次大きくしている。また、羽根の径を流入側では小さく、流出側に至るに従って大きくなるように形成している。このため、螺旋状の羽根3による外接形状は、略円錐台形に形成される。
【0020】
また、螺旋水車1は、水を流通させる圧力管4の内部に配設されている。圧力管4は、円筒状に形成され、内径は螺旋水車1の最大径よりも大きく形成されている。この圧力管4には、内部に水を充満させた状態で流通させる。そして、この圧力管4の内部に螺旋水車1を配設すると、圧力管4の内面と羽根3の周縁との距離が、図示のように、流入側では距離G1が大きく、流出側に至るに従って、距離G2、G3、G4、G5が順次小さくなる隙間が形成される。
【0021】
このように、圧力管4の内部に螺旋水車1を配設すると、流通する水は、羽根3によって形成される螺旋状流路を通る流路と、羽根3の外周側と圧力管4の内壁側を流通する流路が形成される。
【0022】
次に、圧力管4の内部を流通する水の流路について、図3により説明する。圧力管4の内部に水を充満させた状態させた状態で、図示右方から流通させると、水は、右方に位置する水車3に当たった後、螺旋状の流路を通りながら水車3を回転付勢し、やがて、図示左方の流出側から流出する。一方、流入側から流入して水車3に当らない水は、圧力管4の内面と羽根3の周縁との間の隙間を矢示のように流通する。このとき、水車3の外径が大きくなるとともに、圧力管4の内面との距離が小さくなることから、流通する水は流出側の羽根の外縁側に順次当たることから、螺旋状流路を流通する水と協働して水車3を回転付勢する。
【0023】
図4は、螺旋水車1を小形水力発電用装置に設置した例を示している。前述した圧力管4は、例えば、塩化ビニール製または鉄製の長さが概ね1m~4mの円筒状のパイプであり、図示右方の一端側には、流入口4aが形成されている。この流入口4aは、図示のように、開口面の切り口が下側に向かうように傾斜させて形成され、開口が楕円形に形成されていて、この流入口4aの開口面積Mは、圧力管4自体の径よりも大きくなっている。流入口4aの傾斜角は、圧力管4の上面に対して、概ね30度から60度としているが、螺旋水車1に取り付けられるシャフト2が導出されるような角度に設定している。
【0024】
この圧力管4の内部には、前述したように、螺旋水車1が回転自在に配設され、流入口4aから延出されたシャフト2には発電機5が連結されている。発電機5は、螺旋水車1の回転によってシャフト2を介して回転駆動されることにより発電が行われる。なお、圧力管4の流入口1aの前方には、図示しない取水桝を設置することが望ましく、この取水桝を介して流入口1aに水が流入される。小形水力発電用装置を例えば、用水路のような川6に設置した場合、浮遊物や小石が圧力管4の内部に流入して、螺旋水車1の回転を阻害することを未然に防止することが可能となる。
【0025】
用水路のような川6に流れる水は、の圧力管4の流入口4aに流入する。このとき、図4に示すように、圧力管4の流入口4aは川6に浸漬しているので、水面6aには大気圧により押圧される一方、水には反力としての浮力が生ずる。圧力管4の流入口4aは、図示のように、開口面の切り口が下側に向かうように傾斜させた開口面積Mを有していることから、流入口4aの垂直方向の開口には、浮力が生じた水が、矢示のように、流入口4aの内面上部に上昇する。この現象は、従来一般に知られたサイフォン式水力発電装置におけるサイフォン管の最高部の空気瑠を排気することと同じであり、流入口4aを傾斜させているので、サイフォン現象により、開口面積Mの開口の上部には空気が排除された真空状態になる。このとき、流入口4aの開口以外の場所では、点線で示す矢示のように、圧力管4の周面により水の上昇は阻止される。この結果、圧力管4の流入口4aが真空状態となっていることから、川6の水が勢いを増して流入する。
【0026】
圧力管4に勢いを増して流入した水は、螺旋水車1に流入する。水は、螺旋水車1の内部に流入することにより、前述したように、螺旋状の流路を通りながら水車3を回転付勢する一方、圧力管4の内面と羽根3の周縁との間の隙間を流通し、順次羽根3の外縁側に順次当たることにより、螺旋状流路を流通する水と協働して水車3を回転付勢する。このように、螺旋水車1の回転によって、シャフト2を介して発電機5が回転駆動される。
【0027】
以上の実施例は、水が水平に流れる用水路のような川6に圧力管4を横向きに浸漬し、螺旋水車1を回転させる例を示したが、圧力管4を垂直または数十度以上の角度に設置して、上方の流入口から水を流入して落下させ、螺旋水車1を回転させる落差を使用する形式の小形水力発電用装置に使用することが可能である。また、半円形の雨樋形に形成した圧力管に螺旋水車を設置し、傾斜させた圧力管に水を流通させて螺旋水車を回転駆動することも可能である。
【0028】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることはいうまでもない。螺旋水車の直径、全長は、設置する場所、水量、及び発電量などに応じて、数十センチから数メートルにしても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 螺旋水車
2 シャフト
3 羽根
4 圧力管
θ 傾斜角
P 間隔
G 距離
図1
図2
図3
図4