(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120838
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】鳥獣害対策システム、装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A01M 29/16 20110101AFI20240829BHJP
【FI】
A01M29/16
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196319
(22)【出願日】2023-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2023027779
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年11月22日に、茨城協同食肉株式会社(茨城県土浦市中626)において、全国農業協同組合連合会が、株式会社防除研究所に、嶋亮一が発明した鳥獣害対策システムを卸した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年12月27日に、ロジスティード株式会社大山崎AE営業所(京都府乙訓郡大山崎町字大山崎小字鏡田38)において全国農業協同組合連合会が、株式会社防除研究所に、嶋亮一が発明した鳥獣害対策システムを卸した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年11月22日に、カルビー株式会社各務原工場(岐阜県各務原市上戸町7丁目7番地)において、全国農業協同組合連合会が、株式会社防除研究所に、嶋亮一が発明した鳥獣害対策システムを卸した。
(71)【出願人】
【識別番号】000201641
【氏名又は名称】全国農業協同組合連合会
(74)【代理人】
【識別番号】100120581
【弁理士】
【氏名又は名称】市原 政喜
(72)【発明者】
【氏名】嶋 亮一
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121DA57
2B121DA58
2B121DA62
2B121DA63
2B121EA26
2B121FA13
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】 長期にわたり継続して、有害鳥獣を駆逐すること。
【解決手段】 カメラなど撮影が可能な装置111、112を用いて所定の位置から観察可能な一定の領域を撮影し、得られたその領域の画像から対象となる鳥獣、本実施形態ではカラスの画像を抽出し、何羽のカラスが画像中に存在するかを特定し、所定のタイミングで忌避装置121、122により忌避刺激を発生させるというものである。本実施形態では、カメラ111、112および忌避装置121、122は、無線通信ネットワーク103で個々にAIボックス101に接続されており、画像から対象となる鳥獣を特定するAIボックス101の制御によりカメラ111、112は撮影を実行し、および忌避装置121、122は忌避刺激を発生させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画角および所定の解像度を有する撮影装置により取得した画像から、該撮影装置から所定の距離以内であって、所定の撮影面内に、対象となる鳥獣が存在するか否かを特定する画像特定手段と、
前記画像特定手段により、前記対象となる鳥獣が存在することが特定されると、所定のタイミングで前記鳥獣が忌避する忌避刺激を発生させるように忌避刺激発生装置を制御する忌避刺激処理手段と
を備えることを特徴とする鳥獣害対策システム。
【請求項2】
前記所定の画角は、120°~150°であることを特徴とする請求項1に記載の鳥獣害対策システム。
【請求項3】
前記画像特定手段は、所定の時間間隔で前記画像を取得することを特徴とする請求項1に記載の鳥獣害対策システム。
【請求項4】
前記所定の時間間隔は、1秒間に1~10回であることを特徴とする請求項3に記載の鳥獣害対策システム。
【請求項5】
前記撮影装置から所定の距離は、20m~30mであることを特徴とする請求項1に記載の鳥獣害対策システム。
【請求項6】
前記所定のタイミングは、1時間に1~10回の所定の時間間隔ごとであることを特徴とする請求項1に記載の鳥獣害対策システム。
【請求項7】
前記忌避刺激は、忌避音であることを特徴とする請求項1に記載の鳥獣害対策システム。
【請求項8】
前記鳥獣は、カラスであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の鳥獣害対策システム。
【請求項9】
対象となる鳥獣を忌避する鳥獣害対策方法であって、
所定の画角および所定の解像度を有する撮影装置により取得した画像から、該撮影装置から所定の距離以内であって、所定の撮影面内に、対象となる鳥獣が存在するか否かを特定する画像特定ステップと、
前記画像特定ステップにより、前記対象となる鳥獣が存在することが特定されると、所定のタイミングで前記鳥獣が忌避する忌避刺激を発生させるように忌避刺激発生装置を制御する忌避刺激処理ステップと
を備えることを特徴とする鳥獣害対策方法。
【請求項10】
コンピュータに対象となる鳥獣を忌避する鳥獣害対策方法を実行させるプログラムであって、該方法は、
所定の画角および所定の解像度を有する撮影装置により取得した画像から、該撮影装置から所定の距離以内であって、所定の撮影面内に、対象となる鳥獣が存在するか否かを特定する画像特定ステップと、
前記画像特定ステップにより、前記対象となる鳥獣が存在することが特定されると、所定のタイミングで前記鳥獣が忌避する忌避刺激を発生させるように忌避刺激発生装置を制御する忌避刺激処理ステップと
を備えることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
所定の画角および所定の解像度を有する撮影手段と、
対象となる鳥獣が忌避する忌避刺激を発生させる忌避刺激効果発生手段と、
前記撮影装置により取得した画像から、該撮影装置から所定の距離以内であって、所定の撮影面内に、対象となる鳥獣が存在するか否かを特定し、前記対象となる鳥獣が存在することが特定されると、前記忌避刺激発生装置を制御して、所定のタイミングで前記忌避刺激を発生させる制御手段と
を備えることを特徴とする鳥獣害対策装置。
【請求項12】
請求項11に記載の鳥獣害対策装置を所定の場所に設置する鳥害対策装置設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥獣害対策システム、装置、方法およびプログラムに関し、より具体的には、特定の鳥獣を対象として画像からその有無を判定し、対象の鳥獣に対し音声や光などを使用して駆逐する鳥獣害対策システム、装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、野生の鳥獣により、農家や酪農家への直接的な、また交通や公共施設への間接的な様々な形態の被害が発生しており、対策が要望されている。一例として、増殖するカラスによる被害は、特に都市部で顕著であり、ごみ荒らしに加え、直接人間が襲われるなどの被害も発生しているが、一方で、郊外や農村部においてもその影響は少なくなく、家畜や農作物への被害も増大している。このような鳥獣の被害に対応するために、様々な装置やシステムも提案されている。例えば、人にとって有害な野生動物の住宅地への侵入を早期に発見して、侵入してきたことを近隣、住民に警報などで連絡するとともに、自治体にも連絡し、専門家による対応を迅速に求めることを目的とし、熊や猪や犬や猿など、認識しようとする物体の特徴を示すパターンを、物体毎に、データベース化しカメラ画像から抽出された物体が人でないと判断したのち、検出したい物体群のデータベースを検索し、一致するパターンを見つけ、そのパターンの動物と判定する物体認識装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、有害鳥獣が近付いた時を狙って、発砲音を鳴らしたり、レーザー光線を照射したりして効果的、効率的に威嚇し追い払う装置の提供することを目的とし、有害鳥獣が出没する地域全体を見渡せる位置にカメラ1を設置し、決められた時間帯に出没する鳥獣や人間の映像を記録し、映像記録を有害鳥獣の生態情報を搭載した人工知能2に送りつづけ、前記映像記録が送られた人工知能2では映像記録が有害鳥獣か否かを判断し有害鳥獣と認識された場合、発砲音、レーザー光線、猛獣の鳴声等の威嚇刺激を有する威嚇装置3に発動を司令し有害鳥獣を追い払う有害鳥獣追い払い装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-91537号公報
【特許文献2】実用新案登録第3213836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された物体認識装置は、広範に対象となる鳥獣を特定することができるが、その情報は住民等に通知されるだけであり、被害低減に寄与しないという問題がある。また、特許文献2に開示された有害鳥獣追い払い装置は、鳥獣を認識して一時的に有害鳥獣を追い払うことが可能ではあるが、対象の鳥獣に適合した方法ではないので、特にカラスなどの知能の高い鳥獣に対しては、一時的な効果しか奏しないという問題がある。
【0006】
本発明は、対象となる鳥獣に合わせた対象特定および忌避手法を採用することにより、例えばカラスについて所定の領域内の数に応じて、所定のタイミングで忌避刺激を与えることにより、長期にわたり継続して有害鳥獣を駆逐することが可能な鳥獣害対策システム、装置、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、鳥獣害対策システムであって、所定の画角および所定の解像度を有する撮影装置により取得した画像から、撮影装置から所定の距離以内であって、所定の撮影面内に、対象となる鳥獣が存在するか否かを特定する画像特定手段と、画像特定手段により、対象となる鳥獣が存在することが特定されると、所定のタイミングで鳥獣が忌避する忌避刺激を発生させるように忌避刺激発生装置を制御する忌避刺激処理手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鳥獣害対策システムにおいて、所定の画角は、120°~150°であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の鳥獣害対策システムにおいて、画像特定手段は、所定の時間間隔で画像を取得することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の鳥獣害対策システムにおいて、所定の時間間隔は、1秒間に1~10回であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の鳥獣害対策システムにおいて、撮影装置から所定の距離は、20m~30mであることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の鳥獣害対策システムにおいて、所定のタイミングは、1時間に1~10回の所定の時間間隔ごとであることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の鳥獣害対策システムにおいて、忌避刺激は、忌避音であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の鳥獣害対策システムにおいて、鳥獣は、カラスであることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、対象となる鳥獣を忌避する鳥獣害対策方法であって、所定の画角および所定の解像度を有する撮影装置により取得した画像から、撮影装置から所定の距離以内であって、所定の撮影面内に、対象となる鳥獣が存在するか否かを特定する画像特定ステップと、画像特定ステップにより、対象となる鳥獣が存在することが特定されると、所定のタイミングで鳥獣が忌避する忌避刺激を発生させるように忌避刺激発生装置を制御する忌避刺激処理ステップとを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、コンピュータに対象となる鳥獣を忌避する鳥獣害対策方法を実行させるプログラムであって、方法は、所定の画角および所定の解像度を有する撮影装置により取得した画像から、撮影装置から所定の距離以内であって、所定の撮影面内に、対象となる鳥獣が存在するか否かを特定する画像特定ステップと、画像特定ステップにより、対象となる鳥獣が存在することが特定されると、所定のタイミングで鳥獣が忌避する忌避刺激を発生させるように忌避刺激発生装置を制御する忌避刺激処理ステップとを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、所定の画角および所定の解像度を有する撮影手段と、対象となる鳥獣が忌避する忌避刺激を発生させる忌避刺激効果発生手段と、撮影装置により取得した画像から、撮影装置から所定の距離以内であって、所定の撮影面内に、対象となる鳥獣が存在するか否かを特定し、対象となる鳥獣が存在することが特定されると、忌避刺激発生装置を制御して、所定のタイミングで忌避刺激を発生させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、鳥害対策装置設置方法であって、請求項11に記載の鳥獣害対策装置を所定の場所に設置する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、所定の画角および所定の解像度を有する撮影装置により取得した画像から、撮影装置から所定の距離以内であって、所定の撮影面内に、対象となる鳥獣が存在するか否かを特定する画像特定手段と、画像特定手段により、対象となる鳥獣が存在することが特定されると、所定のタイミングで鳥獣が忌避する忌避刺激を発生させるように忌避刺激発生装置を制御する忌避刺激処理手段とを備えるので、長期にわたり継続して有害鳥獣を駆逐することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムの処理を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムの機能ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態の鳥獣害対策処理の全体のフローチャートの一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムにおいて取得される画像を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムにおいて取得されるカラスを含む画像を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムのカメラの画角について説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムにおいて得られる効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の鳥獣害対策システム、装置、方法およびプログラムの一実施形態について図面を参照して説明する。なお、異なる図面でも、同一の処理、構成を示すときは同一の符号を用いる。
【0022】
有害鳥獣による被害に対する対策は、従来から様々行われており、大きく分けて捕獲して処分するなど直接数を減少させる駆除処理と、音声や光などの何らかの刺激を付与することによって追い払う忌避処理とに分けることができるが、一般的に忌避処理は、対象の鳥獣の数自体を減少させるわけではないので、多くの場合効果が期待される忌避処理であっても時間が経過すると、次第に元の状態に戻り効果が持続しない。これは、野生動物はその種類により様々な特性を持っており、対象鳥獣の特定処理や忌避装置の制御を、その対象に合わせた適切な処理としないためであると考えられる。例えば、カラスについて考察すると、カラスは、ヒト、イルカ、チンパンジーの次に知能が高く、忌避機材への慣れ、対応が速いので、単に音や光で脅かしてもすぐに慣れてしまい効果が持続しない。これは、どのような種類の忌避刺激を用いても、その刺激に対して最初は警戒するが、結局それ以上に生存の脅威になるものではないと認識することにより、時間経過とともに学習して警戒対象と認知されなくなるからと考えられる。そこで出願人は様々な検証を行ったところ、カラスについては知能の高さを逆に利用して、カラスを所定の精度で特定するカラス検知AIを装備し、カラス飛来をピンポイントで検知しつつ、カラスに対し「自分が威嚇されている」ことを確実に認知させ、有効性の高い忌避音を採用して、所定のタイミングで複数音声のランダム発音とするといった一連の処理が、鳥獣害対策処理に慣れさせないことに有効であるとの知見が得られた。すなわち、所定の精度で所定の対象領域内のカラスを特定し、所定のタイミングで忌避刺激を発生させることにより、カラスはこれらの刺激が何らかの単調な規則に従って発生しているわけではなく、あたかも人間が見ていて忌避されていると認知することから、忌避刺激を受ける領域(カメラで画像を撮影する領域)には継続して近づかなくなるようになると考えられる。この効果は、対象領域、すなわちカメラからの一定の距離以内であってその画角で特定される領域を広げるとむしろ薄れ、一定の範囲を超えると、持続的忌避効果は得られない。これは、一定以上の広範囲の領域で忌避刺激を発生させると、カラスがその位置にいることと忌避刺激との関係を認知することができなくなるからであると考えられる。後述するように、本実施形態ではこのようなカラスの特性を活かして装置を制御することにより継続して忌避効果を維持することが可能となったが、カラスに限らず対象となる鳥獣に適合して様々に制御することにより、同様の効果を奏することができる。
【0023】
(システム構成)
図1は、本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムのシステム構成の一例を示す図である。本実施形態は、例えば、
図1に示すように、カメラなど撮影が可能な装置111、112を用いて所定の位置から観察可能な一定の領域を撮影し、得られたその領域の画像から対象となる鳥獣、本実施形態ではカラスの画像を抽出し、何羽のカラスが画像中に存在するかを特定し、所定のタイミングで忌避装置121、122により忌避刺激を発生させるというものである。本実施形態では、カメラ111、112および忌避装置121、122は、無線通信ネットワーク103で個々にAIボックス101に接続されており、画像から対象となる鳥獣を特定するAIボックス101の制御によりカメラ111、112は撮影を実行し、および忌避装置121、122は忌避刺激を発生させる。ここで、本実施形態でネットワーク103との接続は、携帯電話の回線や、Wi-fi、BLUETOOTH(登録商標)等の無線ネットワークにより行うことができる。ここで、カメラ111、112および忌避装置121、122は、それぞれ関連付けて制御される。すなわち、カメラ111で撮影される領域に対して忌避刺激を適用する忌避装置121が関連付けられており、AIボックス101は、どのカメラ111、112が、どの忌避装置121、122に関連付けられているかをIDなどで認識して制御を行う。また、AIボックス101、カメラ111、112および忌避装置121、122は、無線ネットワークのほか、本技術分野で知られたいずれかの有線通信で接続することができる。この場合、カメラ111およびこれに接続された忌避装置121とAIボックス101とを優先で接続することもできる。
【0024】
AIボックス101は、基本的にネットワークを介してカメラ111、112および忌避装置121、122と通信することができれば、タブレット端末のほか、モバイルあるいはデスクトップのパソコン、専用端末などいずれの装置を用いることもできる。また、本実施形態の鳥獣害対策システムに関する処理を主に実行する装置としては、AIボックス101のみで処理を行うようにしているが、これに限られず複数の装置に分けて、機能分担させることもできる。さらに、AIボックス101は、外部ネットワーク介したサーバあるいはクラウド104に接続して、データのアップロード、制御データの更新や必要な情報の収集など本技術分野で知られたいずれかの処理を行うことができる。さらに、
図1においては、カメラおよび忌避装置は2つしか示していないが、これに限られずシステムで定まる任意の数とすることができる。
【0025】
図2ないし4を参照して、本実施形態の全体の処理を説明する。
図2は、本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムの処理を模式的に示す図であり、
図3は、本実施形態の鳥獣害対策システムの機能ブロック図である。
図4は、本発明の一実施形態の鳥獣害対策処理の全体のフローチャートの一例を示す図である。本実施形態では、基本的に、
図2に示すように、カメラ203により撮影された画像からカラスの検知を行って201、カラスが検知されると忌避装置204により忌避音等により追い払う202。
【0026】
AIボックス101は、
図3に示すように、カメラ111から撮影されたデータを受信して、画像を取得する画像取得モジュール301、取得した画像から対象となる鳥獣を検索し、その数を特定する対象鳥獣特定モジュール302、忌避装置121を制御して所定のタイミングで忌避刺激を発生させる忌避刺激発生管理モジュール303、および鳥獣害対策処理の実行に伴う種々の通信を行う通信モジュール304を備える。
【0027】
具体的には、カラスが頻繁に出没する領域に向けてカメラを設置し、その画像をカメラ111、112に撮影させ、画像取得モジュール301により所定の時間間隔でその領域の画像を取得する(ステップS401)。後述するように、本実施形態では、カメラの画角、および解像度を含む認識精度を調整することにより、カラスを認識する領域、つまり撮影面積および奥行きを所定の範囲内とすることにより、持続的な忌避効果を奏することができる。この際、対象となる領域は、通常より高い密度あるいは頻度でカラスが存在する領域に合わせてカメラの位置および方向を設定するが、このようにすることで、この領域では長期にわたり継続してカラスを忌避することが可能となる。一方、実際の検証によると、この鳥獣害対策装置を設置した場所の近辺の領域においても、広くカラスが忌避することが確認されており、一定の領域で鳥獣害対策装置によりカラスを遠ざけることができると、その周辺のカラスの動向にも影響を与えることが確認された。複数のカメラを使用する場合も、同様に、網羅的に全範囲をカバーするというよりもピンポイントで設定するのが好ましい。
【0028】
本実施形態では、画像を取得するごとに、あるいは所定のタイミングで、対象鳥獣特定モジュール302により対象鳥獣がその画像内に存在するか否かをAI等により認識し、何羽認識されるかを特定する(ステップS402)。画像処理の結果、1羽以上または所定の数以上対象鳥獣が特定さると(ステップS403のYes)、所定のタイミング、例えば、特定が行われるごと、あるいは一定回数特定されるごとに、またはランダムに忌避刺激発生管理モジュール303により忌避装置121が制御され忌避刺激、たとえば特定の忌避音が発生させられる(ステップS404)。処理の記録を取得し(ステップS405)、必要であれば通信モジュール304により、サーバ104等にデータ送信され、今後の対応のために統計処理することができる。
(本実施形態の対象鳥獣認識処理)
本実施形態では、上述の通り所定の位置および方向に設定されたカメラにより取得した画像から、対象となる鳥獣を認識するための処理を実行して対象鳥獣の存在の有無を判定する。以下、
図5ないし7を参照して、本認定処理を説明する。
図5は、本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムにおいて取得される画像を模式的に示す図であり、
図6は、本実施形態の鳥獣害対策システムにおいて取得されるカラスを含む画像を模式的に示す図である。
図7は、本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムのカメラの画角について説明するための図である。例えば、牧場に設置されたカメラで
図5のような画像501を取得することができる。画像501は、対象となるカラスが存在しない画像であるが、ある時点において、カラスが衆参してきて
図6に示すような画像が取得された場合、AIボックス101は、
図6に示すカラスの画像601から、そこに現れた像がカラスであることを本技術分野で知られたいずれかの認識手法により認識する。例えば、カラスの頭部の画像を切り出すことにより、他の鳥類の頭部とは異なる特徴を抽出し比較する等、本技術分野で知られたいずれかの手法を用いることができる。
【0029】
ここで、本実施形態のカメラ111は、
図7に示すように所定の画角θおよび所定の解像度を有しており、取得された画像の中で一定の距離にあるカラスのみを認識することができるようになっている。すなわち、一般にカメラの解像度に応じて、カメラと被写体との距離lが一定以上になると、認識しようとする対象の像が荒くなり認識できなくなる。一方、一定以上の解像度の像が得られても認識処理において認識精度を下げることにより、距離lが一定以上になると認識できないようにすることもでき、またカラスの実際の大きさからカラスの位置までの距離が一定以上である場合にはカラスが存在しないように判定し、画像内にカラスの像があったとしても、一定以上の距離にある場合はカラスが特定されなかったとすることもできる。以上のように、カメラの画角、解像度、認識制度等を調整することにより、所定の距離l内であって所定の面積の撮影面701で特定される領域に含まれるカラスのみを判定することができる。本実施形態では、カラスに対し「自分が威嚇されている」ことを確実に認知させるため、カメラに撮影された映像に基づいて、カメラから一定距離以内の所定の対象領域内のカラスのみを特定し、さらに特定された際も所定の忌避音を所定のタイミングで発し効果的にカラスを忌避させる。ここで忌避音は、所定のパルス音とし、カラスが特定された場合でも毎回ではなく、所定のタイミング、例えばランダムに発生させることにより、装置が機械的に忌避音を発生しているのではなく背後に人間が存在してると認識させ、持続的にカラスを忌避することができる。
【0030】
具体的には、本実施形態では、カメラの画角は80°~150°、所定の距離lは20m~30m、解像度は50~300万画素、および撮影面について取得画像の領域の幅wは40~200mとする。また、カラスが画像内に存在するか否かの判定は、1秒間に1~10回程度行う。以上のような条件でカラスを特定し、忌避刺激を発生させる所定のタイミングは1時間に1~10回とすることができる。以上により、カラスはこれらの刺激が何らかの規則に従っているわけではなく、あたかも人間が見ていて忌避されていると認知することから、忌避刺激を受ける領域(カメラで画像を撮影する領域)には継続して近づかなくなるようになる。
【0031】
以上のように、カラスの特性に合わせて適切な処理を行うことにより、
図8に示すように、継続的にカラスを忌避させることができる。
図8は、本発明の一実施形態の鳥獣害対策システムにおいて得られる効果を説明するための図である。
図8に示すグラフは縦軸がカラスの検出数であり、横軸が時間軸である。エリア801は本実施形態の鳥獣害対策システム設置前の状況であり、エリア802は設置後の状況を示している。
【0032】
さらに、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0033】
101 AIボックス
103 無線ネットワーク
104 外部ネットワーク
111 カメラ
121 忌避装置