(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012085
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】高分子化合物、樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
C08F 8/30 20060101AFI20240118BHJP
C08F 22/06 20060101ALI20240118BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20240118BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240118BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20240118BHJP
B32B 15/14 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C08F8/30
C08F22/06
C08L35/00
C08J5/24 CER
B32B5/28
B32B15/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083072
(22)【出願日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2022112329
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】392036094
【氏名又は名称】株式会社岐阜セラツク製造所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】土門 大将
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳裕
(72)【発明者】
【氏名】澤田 英之
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 遥
(72)【発明者】
【氏名】高登 公一
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 浩
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F072AD03
4F072AD28
4F072AD45
4F072AE02
4F072AF24
4F072AG03
4F072AL13
4F100AB01
4F100AB01B
4F100AB33
4F100AB33B
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK49
4F100AK49A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DH01
4F100DH01A
4F100GB43
4J002BK00W
4J002CD05X
4J002GF00
4J002GQ01
4J100AA15R
4J100AB02Q
4J100AE09R
4J100AJ09P
4J100AR09R
4J100AR10R
4J100AR11R
4J100AR22R
4J100BC04R
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100HA44
4J100HA62
4J100HC50
4J100HE05
4J100HE14
4J100JA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低誘電率性、溶剤溶解性、及び耐熱性に優れる高分子化合物、樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。(一般式(1)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
(一般式(1)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【化1】
【請求項2】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
(一般式(2)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【化2】
【請求項3】
下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
(一般式(3)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【化3】
【請求項4】
下記一般式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
(一般式(4)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【化4】
【請求項5】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位、下記一般式(2)で表される繰り返し単位、下記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位から成る群から選択される1種以上の繰り返し単位を含む高分子化合物。
(一般式(1)~(4)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の高分子化合物であって、
下記一般式(5)で表される繰り返し単位をさらに含む高分子化合物。
(一般式(5)において、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。)
【化5】
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の高分子化合物であって、
下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される繰り返し単位をさらに含む高分子化合物。
(一般式(6)において、R
2は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキル基、若しくはハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。aは0~6の整数である。
一般式(7)において、R
3は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキル基、若しくはハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。bは0~4の整数である。)
【化6】
【化7】
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の高分子化合物であって、
α-オレフィン単位、シクロオレフィン単位、及び、ビニルエーテル単位から成る群から選ばれる1種以上の繰り返し単位をさらに含む高分子化合物。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の高分子化合物であって、
前記Xが、下記一般式(8-1)~(8-21)のいずれかで表される2価の有機基である高分子化合物。
【化8】
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の高分子化合物であって、
前記Xが下記一般式(19)で表されるものである高分子化合物。
【化19】
(一般式(19)において、置換基が結合していない結合手は、一般式(1)~(4)のいずれかで表される繰り返し単位の中の窒素原子、又は、一般式(13)~(14)のいずれかで表される化合物の中の窒素原子と結合するものである。nは1~100のうちのいずれかの自然数である。Aは独立して環状構造を含む4価の有機基である。B及びQはそれぞれ独立して2価の有機基である。BとQは同じであっても、異なっていてもよい。)
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化13】
【化14】
(一般式(1)~(4)、(13)~(14)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の高分子化合物を含む樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂組成物であって、
アミン化合物又は過酸化物をさらに含む樹脂組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の樹脂組成物を用いて形成される樹脂フィルム。
【請求項14】
請求項11に記載の樹脂組成物を含むプリプレグ。
【請求項15】
請求項14に記載のプリプレグと金属箔とを含む積層板。
【請求項16】
請求項14に記載のプリプレグを含むプリント配線板。
【請求項17】
請求項15に記載の積層板を含むプリント配線板。
【請求項18】
請求項16に記載のプリント配線板と、
前記プリント配線板に搭載された半導体素子と
を備える半導体パッケージ。
【請求項19】
請求項17に記載のプリント配線板と、
前記プリント配線板に搭載された半導体素子と、
を備える半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高分子化合物、樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンに代表される通信端末のデータ通信量は増加の一途を辿っている。大量のデータの伝送を短時間で行うために、通信周波数の高周波数化が進んでいる。通信周波数を高くするためには伝送損失を抑制する必要がある。伝送損失を抑制するために、低誘電率である材料が必要とされている。低誘電率である材料として、多孔質ポリイミド膜、シアナト基を有する樹脂、マレイミド基を有する樹脂等が提案されている。多孔質ポリイミド膜は特許文献1に開示されている。シアナト基を有する樹脂は特許文献2に開示されている。マレイミド基を有する樹脂は特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-042718号公報
【特許文献2】特開2015-106628号公報
【特許文献3】特許5030297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
材料の用途によっては、誘電率の低さに加えて、溶剤溶解性、及び耐熱性が要求されることがある。特許文献1~3に開示された材料では、低誘電率性、溶剤溶解性、及び耐熱性を同時に充足することは困難であった。低誘電率性とは、誘電率が低い特性である。
【0005】
本開示の1つの局面では、低誘電率性、溶剤溶解性、及び耐熱性に優れる高分子化合物、樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である。(一般式(1)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【0007】
【0008】
本開示の高分子化合物は、低誘電率性、溶剤溶解性、及び耐熱性に優れる。
本開示の別の局面は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である。(一般式(2)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【0009】
【0010】
本開示の高分子化合物は、低誘電率性、溶剤溶解性、及び耐熱性に優れる。
本開示の別の局面は、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である。(一般式(3)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
本開示の高分子化合物は、低誘電率性、溶剤溶解性、及び耐熱性に優れる。
【0011】
【0012】
本開示の別の局面は、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である。(一般式(4)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【0013】
【0014】
本開示の高分子化合物は、低誘電率性、溶剤溶解性、及び耐熱性に優れる。
本開示の別の局面は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位、下記一般式(2)で表される繰り返し単位、下記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位から成る群から選択される1種以上の繰り返し単位を含む高分子化合物である。(一般式(1)~(4)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
本開示の高分子化合物は、低誘電率性、溶剤溶解性、及び耐熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】高分子化合物を製造する方法を表す説明図である。
【
図2】高分子化合物を製造する方法を表す説明図である。
【
図3】マレアミック酸1の合成で生じる化学反応を示す説明図である。
【
図4】マレイミド樹脂1を合成する工程を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.高分子化合物の構成
本開示の高分子化合物として、高分子化合物P1~P5がある。高分子化合物P1は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む。一般式(1)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。
【0022】
【0023】
高分子化合物P2は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む。一般式(2)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。
【0024】
【0025】
高分子化合物P3は、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む。一般式(3)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。
【0026】
【0027】
高分子化合物P4は、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を含む。一般式(4)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。
【0028】
【0029】
高分子化合物P5は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位、前記一般式(2)で表される繰り返し単位、前記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び前記一般式(4)で表される繰り返し単位から成る群から選択される1種以上の繰り返し単位を含む。
【0030】
一般式(1)~(4)、及び後述する一般式(13)~(14)中のXは下記の構造式(8-1)~(8-21)のいずれかで表されるものであることが好ましい。
【0031】
【0032】
構造式(8-1)~(8-21)において、置換基が結合していない結合手は、一般式(1)~(4)、又は一般式(13)~(14)中の窒素原子と結合するものである。
高分子化合物P1~P5に必要とされる物性に応じて適宜、構造式(8-1)~(8-21)で表される置換基の中から、Xを選択することができる。
【0033】
Xが、構造式(8-8)又は構造式(8-9)で表される置換基である場合、高分子化合物P1~P5のいずれかを用いて作成した硬化物フィルムは可撓性、柔軟性に富み、低誘電率性にも優れることから、絶縁フィルムや接着シートに用いる材料として特に有用である。
【0034】
一般式(1)~(4)、及び後述する一般式(13)~(14)中のXは下記の一般式(19)で表されるものであってもよい。
【0035】
【0036】
一般式(19)において、置換基が結合していない結合手は、一般式(1)~(4)のいずれかで表される繰り返し単位の中の窒素原子、又は、一般式(13)~(14)のいずれかで表される化合物の中の窒素原子と結合するものである。nは1~100のうちのいずれかの自然数である。Aは独立して環状構造を含む4価の有機基である。B及びQはそれぞれ独立して2価の有機基である。BとQは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
Aは、下記の構造式(20-1)~(20-18)及び構造式(21-1)~(21-8)のいずれかで表されるものであることが好ましい。
【0038】
【0039】
構造式(20-1)~(20-18)及び構造式(21-1)~(21-8)において、置換基が結合していない結合手は、一般式(19)において環状イミド構造を形成するカルボニル炭素と結合するものである。構造式(21-2)におけるX1は、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、又は、炭素数1~3の2価の有機基である。構造式(21―3)におけるX2は、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、炭素数1~3の2価の有機基、又は、アリーレン基である。Aは、構造式(21-2)により表されるものと基本的には同じであるが、X1を備えず、構造式(21-2)においてX1が結合している2つの炭素原子同士が直接結合しているものであってもよい。Aは、構造式(21-3)により表されるものと基本的には同じであるが、X2を備えず、構造式(21-3)においてX2が結合している2つの炭素原子同士が直接結合しているものであってもよい。
【0040】
一般式(19)におけるB、Qは、それぞれ、上記の構造式(8-1)~(8-21)のいずれかで表されるものであることが好ましい。
構造式(8-1)~(8-21)において、置換基が結合していない結合手は、一般式(1)~(4)のいずれかで表される繰り返し単位の中の窒素原子、又は、一般式(13)~(14)のいずれかで表される化合物の中の窒素原子と結合するものである。
【0041】
一般式(19)におけるB、Qとして、それぞれ、以下の構造式(22-1)~(22-6)のいずれかで表わされるものが挙げられる。
【0042】
【0043】
一般式(19)で表される化合物が持つポリイミド構造は、可撓性、柔軟性に富む。そのため、Xが一般式(19)で表されるものである場合、高分子化合物P1~P5のいずれかを用いて作成した硬化物フィルムも可撓性、柔軟性に富むフィルムとなる。Xが一般式(19)で表されるものである場合、高分子化合物P1~P5のいずれかを用いて作成した硬化物フィルムは、絶縁フィルムや接着シートに用いる材料として好ましい。
【0044】
一般式(19)におけるB、Qが、構造式(8-8)又は構造式(8-9)で表される置換基である場合、高分子化合物P1~P5のいずれかを用いて作成した硬化物フィルムは可撓性、柔軟性に富むだけでなく、低誘電率性にも優れることから、絶縁フィルムや接着シートに用いる材料として特に好ましい。
【0045】
高分子化合物P1~P5は、例えば、下記一般式(5)で表される繰り返し単位をさらに含む。
【0046】
【0047】
一般式(5)において、R1は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。
【0048】
一般式(5)で表される繰り返し単位として、例えば、下記の構造式(9-1)~(9-43)のいずれかで表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
【0050】
高分子化合物P1~P5は、例えば、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される繰り返し単位をさらに含む。
【0051】
【0052】
【0053】
一般式(6)において、R2は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキル基、若しくはハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。aは0~6の整数である。
【0054】
一般式(7)において、R3は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキル基、若しくはハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。bは0~4の整数である。
【0055】
一般式(6)で表される繰り返し単位として、例えば、下記の構造式(10-1)~(10-5)のいずれかで表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
【0057】
一般式(7)で表される繰り返し単位として、例えば、下記の構造式(11-1)~(11-13)のいずれかで表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
【0059】
高分子化合物P1~P5が、共重合単位として、一般式(5)~(7)のいずれかで表される繰り返し単位をさらに含む場合、高分子化合物P1~P5の低誘電率性、溶剤溶解性、及び耐熱性が一層向上する。
【0060】
高分子化合物P1~P5は、一般式(5)で表される繰り返し単位、一般式(6)で表される繰り返し単位、及び一般式(7)で表される繰り返し単位のうちの1種を含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0061】
高分子化合物P1~P5において、一般式(1)~(4)のいずれかで表される繰り返し単位のmol%比率をmaとする。高分子化合物P1~P5において、一般式(5)~(7)のいずれかで表される繰り返し単位のmol%比率をmbとする。
【0062】
好ましくは、1<ma<99、1<mb<99である。より好ましくは、5<ma<95、5<mb<95である。さらに好ましくは、10<ma<90、10<mb<90である。ma、mbがこのような比率である場合、高分子化合物P1~P5の低誘電率性、及び耐熱性が一層向上する。
【0063】
高分子化合物P1~P5の質量平均分子量は特に制限されない。高分子化合物P1~P5の質量平均分子量は、好ましくは、500~50000、より好ましくは、700~30,000、更に好ましくは、1,000~20,000である。高分子化合物P1~P5の質量平均分子量がこの範囲である場合、高分子化合物P1~P5を含む樹脂組成物の粘度が過度に高くなることを抑制でき、樹脂組成物の硬化物が高い強度を有し、耐熱性にも優れる。
【0064】
高分子化合物P1~P5は、例えば、α-オレフィン単位、シクロオレフィン単位、及び、ビニルエーテル単位から成る群から選択される1種以上の繰り返し単位をさらに含む。
【0065】
α-オレフィン単位とは、炭素-炭素二重結合が末端にあるアルケンである。α-オレフィン単位は、直鎖α-オレフィン、分岐α-オレフィン及び環状α-オレフィンから成る群から選択される1種以上であることが好ましく、直鎖α-オレフィンであることがより好ましい。
【0066】
α-オレフィン単位の炭素数は、好ましくは2以上であり、より好ましくは6以上50以下であり、特に好ましくは10以上30以下である。α-オレフィン単位として、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
【0067】
シクロオレフィン単位として、例えば、ノルボルネン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブチルノルボルネン等のノルボルネン化合物が挙げられる。
【0068】
また、シクロオレフィン単位として、例えば、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン化合物も挙げられる。
【0069】
さらに、シクロオレフィン単位として、例えば、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン、ジメチルシクロテトラドデセン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン等も挙げられる。
【0070】
上記単環式の環状オレフィンは特に限定されない。単環式の環状オレフィンとして、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロドデカトリエン等が挙げられる。
【0071】
これらの中でも、原料モノマーの入手容易性、及び耐熱性を向上し易い観点から、ノルボルネンが好ましい。
【0072】
ビニルエーテル単位として、例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類が挙げられる。
【0073】
高分子化合物P1~P5が、共重合単位として、α-オレフィン単位、シクロオレフィン単位、及び、ビニルエーテル単位から成る群から選択される1種以上の繰り返し単位をさらに含む場合、高分子化合物P1~P5の柔軟性や流動性が一層向上し、樹脂組成物が低粘度となり、低粘度の樹脂組成物の製造の際に有利となる。また、樹脂組成物を用いて作成した樹脂フィルムの柔軟性や靭性が一層向上する。
【0074】
高分子化合物P1~P5は、α-オレフィン単位、シクロオレフィン単位、及び、ビニルエーテル単位から成る群から選択される1種の繰り返し単位を含んでいてもよいし、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0075】
高分子化合物P1~P5において、一般式(1)~(4)のいずれかで表される繰り返し単位のmol%比率をmaとする。高分子化合物P1~P5において、α-オレフィン単位、シクロオレフィン単位、及び、ビニルエーテル単位から成る群から選択される1種以上の繰り返し単位のmol%比率をmbとする。
【0076】
好ましくは、1<ma<99、1<mb<99である。より好ましくは、5<ma<95、5<mb<95である。特に好ましくは、10<ma<90、10<mb<90である。ma、mbがこのような比率である場合、高分子化合物P1~P5の低誘電率性、及び耐熱性が一層向上し、それを用いた樹脂フィルムの柔軟性や靭性も一層向上する。
【0077】
高分子化合物P1~P5の質量平均分子量は特に制限されない。高分子化合物P1~P5の質量平均分子量は、好ましくは、500~50000、より好ましくは、700~30,000、特に好ましくは、1,000~20,000である。高分子化合物P1~P5の質量平均分子量がこの範囲である場合、高分子化合物P1~P5を含む樹脂組成物の粘度が過度に高くなることを抑制でき、樹脂組成物の硬化物が高い強度を有し、耐熱性にも優れる。
【0078】
2.高分子化合物の製造方法
高分子化合物P1~P5は、例えば、
図1に示す方法で製造できる。
図1における工程(1)は、一般式(0)で表される無水マレイン酸単位を含む樹脂(以下では前駆体樹脂とする)と、一般式(13)で表される化合物とを反応させ、高分子化合物P2を得る工程である。一般式(13)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。
【0079】
【0080】
高分子化合物P2は、一般式(2)で表される繰り返し単位を含む。
工程(1)の反応は、溶剤中で行うことができる。工程(1)の反応では、必要に応じて加熱、冷却を行ってもよい。工程(1)の反応に用いることができる溶剤として、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル類、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)等の非プロトン性極性溶剤類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶剤等が挙げられる。
【0081】
これらの溶剤は、反応条件により適宜選択して用いればよく、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
工程(1)での反応温度は、-20~150℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。工程(1)での反応時間は5分~24時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。
【0082】
一般式(13)で表される化合物の量は、前駆体樹脂中の無水マレイン酸単位の量に対して、0.1~5当量が好ましく、0.2~3当量がより好ましく、0.5~2.5当量がさらに好ましい。
【0083】
工程(1)の反応後は、特に精製工程を経ずに、工程(2)に進んでもよいが、次工程における望まない副反応を避けるために、精製工程を経ることが望ましい。
工程(1)の反応混合液を、有機化合物の公知の分離手段によって分離することにより、高分子化合物P2が得られる。例えば、高分子化合物P2が形成された反応混合液を水中へ流し込むことによって固体を析出させ、該固体をろ取し、適宜乾燥させることによって、高分子化合物P2を得ることができる。
【0084】
このようにして得られた高分子化合物P2に対し、必要に応じて、さらに、有機化合物の公知の精製手段によって精製することで、高分子化合物P2の純度を高めることができる。
【0085】
工程(2)は、工程(1)で得られた高分子化合物P2を脱水閉環させる工程である。工程(2)の反応は溶剤中で行うことができる。工程(2)において、必要に応じて加熱、冷却を行ってもよい。また、工程(2)において、反応中に副生してくる水を溶剤との共沸により系外に排出してもよい。
【0086】
工程(2)の反応に用いることができる溶剤として、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル類、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)等の非プロトン性極性溶剤類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶剤等が挙げられる。
【0087】
また、工程(2)において、触媒として酸または塩基を使用して脱水反応を促進させてもよい。また、工程(2)の反応で使用する酸性触媒は特に限定されない。工程(2)の反応で使用する酸性触媒として、例えば、p-トルエンスルホン酸、ヒドロキシ-p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。酸触媒の使用量は、高分子化合物P2の質量に対して、通常0.1~50質量%、好ましくは1~25質量%である。
【0088】
工程(2)の反応混合液を、有機化合物の公知の分離手段によって分離することにより、高分子化合物P1が得られる。例えば、高分子化合物P1が形成された反応混合液を水中へ流し込むことによって固体を析出させ、該固体をろ取し、適宜乾燥させることによって、高分子化合物P1を得ることができる。このようにして得られた高分子化合物P1に対し、必要に応じて、さらに、有機化合物の公知の精製手段によって精製することで、高分子化合物P1の純度を高めることができる。
【0089】
工程(2)において、必要に応じて、反応温度、反応時間、及び触媒量のうちのいずれかを調整することで、高分子化合物P2が有するアミック酸の閉環を完全には進行させず、一部をアミック酸のままにしておいてもよい。そうすることで、工程(2)により、高分子化合物P3~P5のいずれかが得られる。工程(2)の反応性生物を、高分子化合物P1、P3~P5の中から選択することで、工程(2)の反応性生物の物性を調節することができる。調節する物性として、例えば、誘電特性、耐熱性等が挙げられる。
【0090】
高分子化合物P1~P5は、例えば、
図2に示す方法で製造できる。
図2に示す工程(3)は工程(1)と同様の条件で行うことができる。ただし、工程(3)では、前駆体樹脂と、一般式(14)で表される化合物とを反応させる。一般式(14)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。
【0091】
【0092】
工程(3)の反応生成物は高分子化合物P3である。工程(4)は工程(2)と同様の条件で行うことができる。
工程(4)において、必要に応じて、反応温度、反応時間、及び触媒量のうちのいずれかを調整することで、高分子化合物P3が有するアミック酸の閉環を完全には進行させず、一部をアミック酸のままにしておいてもよい。そうすることで、工程(4)により、高分子化合物P1、P3、P5のいずれかが得られる。工程(4)の反応性生物を、高分子化合物P1、P3、P5の中から選択することで、工程(4)の反応性生物の物性を調節することができる。調節する物性として、例えば、誘電特性、耐熱性等が挙げられる。
【0093】
前駆体樹脂を合成する方法として、無水マレイン酸と共重合するモノマーとを有機溶剤中に溶解させ、ラジカル重合開始剤を加え、加熱重合を行い、前駆体樹脂を得る方法がある。
【0094】
前記の合成方法で使用する有機溶剤として、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イプゾール100(出光興産株式会社製)等が挙げられる。
【0095】
前記の合成方法で使用するラジカル重合開始剤として、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が挙げられる。
【0096】
前記の合成方法における重合温度は、好ましくは、50~250℃である。前記の合成方法における反応時間は、好ましくは、2~100時間であり、更に好ましくは、3~20時間である。
【0097】
重合反応終了後は、有機溶剤を留去させながら、熱溶融させた前駆体樹脂を固形状として取り出すことができる。また、ヘキサン等の貧溶媒に重合液を投入し、析出した前駆体樹脂をろ過乾燥する方法によって、前駆体樹脂を取り出してもよい。
【0098】
前駆体樹脂は、例えば、共重合するモノマーとして、一般式(5)~(7)のいずれかで表される繰り返し単位をさらに含む。この場合、前駆体樹脂から製造される高分子化合物P1~P5も、一般式(5)~(7)のいずれかで表される繰り返し単位をさらに含む。
【0099】
前駆体樹脂は、例えば、共重合するモノマーとして、α-オレフィン単位、シクロオレフィン単位、及び、ビニルエーテル単位から成る群から選択される1種以上の繰り返し単位をさらに含む。この場合、前駆体樹脂から製造される高分子化合物P1~P5も、α-オレフィン単位、シクロオレフィン単位、及び、ビニルエーテル単位から成る群から選択されるいずれかで表される繰り返し単位をさらに含む。
【0100】
3.高分子化合物が奏する効果
高分子化合物P1~P5は、低誘電率性、溶剤溶解性、及び耐熱性に優れる。高分子化合物P1~P5を含む樹脂組成物を製造することができる。そのような樹脂組成物の硬化物は、低誘電率及び低誘電正接を有し、耐熱性にも優れる。
【0101】
高分子化合物P1~P5を用いて、樹脂フィルム、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを製造することができる。その場合、樹脂フィルム、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージは、低誘電率性、及び耐熱性に優れる。
【0102】
高分子化合物P1~P5は溶剤溶解性に優れるため、高分子化合物P1~P5を用いて樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを製造する際に、高分子化合物P1~P5のハンドリングが容易である。
【0103】
4.樹脂組成物
本開示の樹脂組成物は、高分子化合物P1~P5のいずれかを含む。そのため、本開示の樹脂組成物の硬化物の誘電率は低い。本開示の樹脂組成物は、高分子化合物P1~P5のいずれかをそのままの状態で含んでいてもよいし、高分子化合物P1~P5から変化した物質を含んでいてもよい。高分子化合物P1~P5から変化した物質とは、例えば、高分子化合物P1~P5のいずれかが化学反応を起こし、生成した物質である。
【0104】
本開示の樹脂組成物は、アミン化合物をさらに含むことが好ましい。アミン化合物として、第一級アミノ基を有するアミン化合物が好ましい。アミン化合物として、モノアミン化合物及びジアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0105】
アミン化合物は、脂肪族アミンであってもよいし、芳香族アミンであってもよい。脂肪族アミンは、脂環式アミンを含む。脂肪族アミンは、その構造中に芳香族環を有さない限り特に制限はない。脂肪族アミンとして、例えば、脂肪族モノアミン、脂肪族ジアミン、脂環式モノアミン、脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0106】
脂肪族モノアミン及び脂肪族ジアミン中の脂肪族基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。脂肪族モノアミンとして、ジアリルアミン等が挙げられる。脂肪族ジアミンとして、例えば、ヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0107】
芳香族アミンは、その構造中のどこかに芳香族環を有している限り特に制限はない。芳香族アミンは、一部に脂肪族炭化水素基を有していてもよい。芳香族アミンとして、例えば、芳香族モノアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0108】
芳香族モノアミンとして、下記一般式(X1)で示される芳香族モノアミンが挙げられる。
【0109】
【0110】
一般式(X1)において、R11は、水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基から選択される酸性置換基である。R12は、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。tは1以上の整数である。uは0~4の整数である。t、uは、1≦t+u≦5を満たす。但し、tが2~5の整数の場合、複数のR11は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、uが2~4の整数の場合、複数のR12は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0111】
R11は、溶解性及び反応性の観点から、好ましくは水酸基、又はカルボキシ基である。耐熱性も考慮すると、R11は、より好ましくは水酸基である。tは1~5の整数であることが好ましい。低誘電率化の観点から、tは、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1又は2であり、さらに好ましくは1である。
【0112】
R12が示すアルキルとして、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ペンチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。R12が示すアルキルは、好ましくは、炭素数1~3のアルキル基である。
【0113】
R12が示すハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。uは、好ましくは、0又は1、より好ましくは0である。
芳香族モノアミン化合物の具体例として、例えば、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、3,5-ジヒドロキシアニリン、3,5-ジカルボキシアニリン等が挙げられる。
【0114】
芳香族ジアミンは、下記一般式(X2)で示される芳香族ジアミンであってもよい。
【0115】
【0116】
一般式(X2)において、Xは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又はそれらを組み合わせた基、若しくは、-O-である。R13及びR14は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基である。v及びwは、各々独立に、0~4の整数である。vが2~4の整数の場合、複数のR13は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、wが2~4の整数の場合、複数のR14は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0117】
Xが表す脂肪族炭化水素基として、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン等が挙げられる。脂肪族炭化水素基として、メチレン基、イソプロピリデン基が好ましい。
【0118】
Xが表す芳香族炭化水素基として、例えば、フェニレン基、ビフェニリレン基等が挙げられる。Xが表す、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とを組み合わせた基として、例えば、下記構造式(12-1)~(12-5)のいずれかで表される基が挙げられる。構造式(12-1)~(12-5)において、*は結合部位である。
【0119】
【0120】
R13及びR14が示す炭素数1~5のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。R13及びR14が示すアルキル基は、好ましくは、炭素数1~3のアルキル基である。
【0121】
v及びwは、それぞれ独立に、好ましくは、0~2の整数であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
芳香族ジアミンの具体例として、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス[1-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,4-ビス[1-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0122】
本開示の樹脂組成物は、耐熱性及び難燃性等の観点から、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤は特に限定されない。硬化促進剤として、例えば、p-トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン化合物;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、イソシアネートマスクイミダゾール(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物等)等のイミダゾール化合物;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン等のリン系化合物;ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物;マンガン、コバルト、亜鉛等の金属のカルボン酸塩などが挙げられる。
【0123】
これらの中でも、耐熱性、ガラス転移温度及び保存安定性の観点から、イミダゾール化合物、有機過酸化物、カルボン酸塩が好ましく、有機過酸化物がより好ましい。有機過酸化物として、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジクミルパーオキサイド、ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0124】
樹脂組成物における硬化促進剤の含有量は特に限定されない。樹脂組成物に含まれる硬化促進剤の質量は、樹脂組成物に含まれる全樹脂成分の質量に対して、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましく、0.1~3質量%であることが特に好ましい。樹脂組成物に含まれる全樹脂成分とは、樹脂組成物から無機充填材及び有機溶剤を除いた成分である。硬化促進剤の含有量をこのような範囲にすることで、樹脂組成物の硬化性及び保存安定性が一層良好となる。
【0125】
また、本開示の樹脂組成物は、例えば、プリント配線板用の成分をさらに含む。プリント配線板用の成分とは、通常の電子機器のプリント配線板用の絶縁樹脂組成物が含む成分である。プリント配線板用の成分として、例えば、熱硬化性樹脂、エラストマー、無機充填材、有機充填材、難燃剤、機能性樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、密着性向上剤、有機溶剤等が挙げられる。本開示の樹脂組成物は、これらのプリント配線板用の成分のうちの1種を含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0126】
熱硬化性樹脂として、例えば、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。本開示の樹脂組成物は、これらのうち1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0127】
エラストマーとして、例えば、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン、カルボキシ変性アクリロニトリル等が挙げられる。
【0128】
無機充填材は特に限定されない。無機充填剤として、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、マイカ、カオリン、ベーマイト、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、ガラス短繊維、ガラス粉、中空ガラスビーズ等が挙げられる。本開示の樹脂組成物は、これらのうち1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0129】
有機充填材として、例えば、有機物粉末等が挙げられる。有機物粉末として、例えば、シリコーンパウダー、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、並びにポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0130】
難燃剤として、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、ホスファゼン、赤リン等のリン系難燃剤;三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機難燃助剤;等が挙げられる。
【0131】
機能性樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、密着性向上剤及び有機溶剤等として、通常の電子機器のプリント配線板用の絶縁樹脂組成物に配合し得るものを使用できる。
【0132】
5.樹脂フィルム及びプリプレグ
本開示の樹脂フィルムは、本開示の樹脂組成物を用いて形成される。樹脂フィルムの製造方法として、例えば、樹脂組成物を離型フィルムに塗布した後、加熱等により半硬化させ、フィルム状に形成する方法がある。半硬化は、例えば、Bステージ化である。
【0133】
本開示のプリプレグは、本開示の樹脂組成物を含む。プリプレグの製造方法は特に制限されない。公知のプリプレグの製造方法を用いて、プリプレグを製造することができる。例えば、本開示の樹脂組成物を繊維基材に含浸又は塗布した後、加熱等により半硬化させる方法で、プリプレグを製造することができる。半硬化は、例えば、Bステージ化である。また、本開示の樹脂フィルムを繊維基材にラミネートすることにより、プリプレグを製造することができる。
【0134】
樹脂組成物を半硬化させる際の加熱温度は、有機溶剤の沸点以上の温度が好ましい。加熱温度が有機溶剤の沸点以上の温度である場合、樹脂組成物の半硬化とともに、有機溶剤を効率的に除去することができる。半硬化させる際の加熱温度は、好ましくは、80~200℃であり、より好ましくは、140~180℃である。
【0135】
プリプレグ全体の厚さは、内層回路の厚さ等に応じて適宜調整することができる。プリプレグ全体の厚さは、成形性及び作業性の観点から、10~700μmであることが好ましく、10~500μmであることがより好ましく、10~250μmであることがさらに好ましく、10~150μmであることが特に好ましい。
【0136】
6.積層板
本開示の積層板は、本開示のプリプレグと金属箔とを含む。積層板は、例えば、プリプレグと、その両面に設置された回路形成用の金属箔とを含む。本開示の積層板は、金属張積層板である。
【0137】
金属箔に含まれる金属として、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金であることが好ましい。
【0138】
合金として、銅系合金、アルミニウム系合金、鉄系合金が好ましい。銅系合金として、銅-ニッケル合金等が挙げられる。鉄系合金として、鉄-ニッケル合金等が挙げられる。鉄-ニッケル合金として、例えば、42アロイが挙げられる。これらの中でも、金属として、銅、ニッケル、42アロイがより好ましく、入手容易性及びコストの観点から、銅がさらに好ましい。金属箔の厚みは特に制限されない。金属箔の厚みは、例えば、3~210μmであり、好ましくは、5~140μmである。
【0139】
7.プリント配線板
本開示のプリント配線板は、本開示のプリプレグ、又は本開示の積層板を含む。本開示のプリント配線板は、例えば、本開示の金属張積層板に配線パターンを形成することによって、製造することができる。配線パターンの形成方法は特に限定されない。配線パターンの形成方法として、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)又はモディファイドセミアディティブ法(m-SAP:modified Semi Additive Process)等の公知の方法が挙げられる。
【0140】
8.半導体パッケージ
本開示の半導体パッケージは、本開示のプリント配線板と、そのプリント配線板に搭載された半導体素子とを備える。本開示の半導体パッケージは、プリント配線板の所定の位置に、半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載することで、製造することができる。
【0141】
9.実施例
(9-1)マレアミック酸の合成
(i)マレアミック酸1の合成
1,4-フェニレンジアミン143gをTHF2457gに溶解し、第1溶液を調製した。また、無水マレイン酸130gをTHF197gに溶解し、第2溶液を調製した。室温下、第2溶液を第1溶液に1時間かけて滴下した。次に、1時間撹拌し、析出した固体をろ取した。次に、ろ取した固体をTHFで洗浄し、減圧下室温で乾燥させて、マレアミック酸1を得た。マレアミック酸1の収率は97%であった。マレアミック酸1は、一般式(13)で表される化合物であって、Xが構造式(8-10)で表される化合物である。マレアミック酸1の合成で生じる化学反応は
図3に示す反応である。
【0142】
(ii)マレアミック酸2の合成
基本的にはマレアミック酸1の合成と同様にして、マレアミック酸2を合成した。ただし、1,4-フェニレンジアミンの代わりに、同量の4,4'-オキシジアニリンを使用した。マレアミック酸2は、構造式(17)に示すものである。マレアミック酸2は、一般式(13)で表される化合物であって、Xが構造式(8-18)で表される化合物である。
【0143】
【0144】
(iii)マレアミック酸3の合成
基本的にはマレアミック酸1の合成と同様にして、マレアミック酸3を合成した。ただし、1,4-フェニレンジアミンの代わりに、同量のプリアミン1075(クローダジャパン(株)製)を使用した。また、反応終了後にヘキサンを入れ、結晶化を促進させる操作を追加した。マレアミック酸3は、構造式(18)に示すものである。マレアミック酸3は、一般式(13)で表される化合物であって、Xが構造式(8-9)で表される化合物である。
【0145】
【化18】
(9-2)マレイミド樹脂の合成
(i)マレイミド樹脂1の合成
【0146】
攪拌装置、還流管、温度計をつけたフラスコ中に、反応溶媒であるN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)を50.2g、マレアミック酸1を5.6g、無水マレイン酸単位を含むラジカル重合樹脂SM-1を28.1g仕込み、窒素雰囲気の下、75℃で6時間攪拌した。ラジカル重合樹脂SM-1は、80質量部のスチレンと20質量部の無水マレイン酸とを含んでいた。ラジカル重合樹脂SM-1の質量平均分子量は6000であった。ラジカル重合樹脂SM-1は、前駆体樹脂に対応する。スチレンは、一般式(5)で表される繰り返し単位に対応する。
【0147】
放冷後、反応液に水308.0g、及び塩酸35.4gを仕込み、結晶水洗させて、析出した固体を濾過で濾別し、70℃で真空乾燥させることによりアミック酸樹脂38.9gを得た。アミック酸樹脂の収率は99%であった。アミック酸樹脂は高分子化合物P2に対応する。アミック酸樹脂を合成する工程は
図4の工程(1)である。アミック酸樹脂は、一般式(2)で表され、Xが構造式(8-10)で表される繰り返し単位を含む。アミック酸樹脂は、一般式(5)で表される繰り返し単位であるスチレンをさらに含む。
【0148】
次に、攪拌装置、還流管、温度計をつけたフラスコ中に、反応溶媒であるN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)76.2g及びトルエン25.4g、アミック酸樹脂34.3g、酸性触媒であるp-トルエンスルホン酸4.2g、重合禁止剤であるメトキノン0.02gを仕込み、窒素雰囲気の下、110℃の温度で6時間攪拌した。
【0149】
放冷後、反応液を水0.5L中に注ぎ、沈殿した固体を濾過で濾別し、70℃で真空乾燥させることによりNAPMI-SMA樹脂27.2gを得た。NAPMI-SMA樹脂の収率は80%であった。得られたNAPMI-SMA樹脂をマレイミド樹脂1とする。
【0150】
マレイミド樹脂1は高分子化合物P1に対応する。マレイミド樹脂1を合成する工程は
図4の工程(2)である。マレイミド樹脂1は、一般式(1)で表され、Xが構造式(8-10)で表される繰り返し単位を含む。マレイミド樹脂1は、一般式(5)で表される繰り返し単位であるスチレンをさらに含む。
(ii)マレイミド樹脂2~4の合成
基本的にはマレイミド樹脂1の合成と同様にして、マレイミド樹脂2~4を合成した。ただし、前駆体樹脂として、表1に示すSM-2~SM-4を用いた。
【0151】
【0152】
前駆体樹脂SM-2~SM-4の質量平均分子量Mwは表1に示すとおりである。また、前駆体樹脂SM-2~SM-4を構成するスチレンと無水マレイン酸との組成比は表1の「前駆体樹脂組成比」の列に示すとおりである。組成比は質量比を意味する。マレイミド樹脂2~4は、マレイミド樹脂1と比べて、スチレンの含有量が異なる。表1における「酸価」とは、JIS K―0070:1992に準拠した方法で測定した値である。
(iii) マレイミド樹脂5~6の合成
基本的にはマレイミド樹脂1の合成と同様にして、マレイミド樹脂5~6を合成した。ただし、マレイミド樹脂5の合成では、マレアミック酸1に代えて、同モル量のマレアミック酸2を使用した。また、マレイミド樹脂6の合成では、マレアミック酸1に代えて、同モル量のマレアミック酸3を使用した。マレイミド樹脂5~6は、高分子化合物P1に対応する。
【0153】
マレイミド樹脂5~6は、マレイミド樹脂1と比べて、以下の点で異なる。マレイミド樹脂5では、一般式(1)に含まれるXは、構造式(8-18)で表されるものである。マレイミド樹脂6では、一般式(1)に含まれるXは、構造式(8-9)で表されるものである。
(iv)マレイミド樹脂7~10の合成
基本的にはマレイミド樹脂1の合成と同様にして、マレイミド樹脂7~10を合成した。ただし、マレイミド樹脂7~10の合成では、前駆体樹脂として、表1に示すSM-5~SM-6を用いた。前駆体樹脂SM-5~SM-6の質量平均分子量Mwは表1に示すとおりである。また、前駆体樹脂SM-5~SM-6を構成する繰り返し単位の種類と組成比とは表1の「前駆体樹脂組成比」の列に示すとおりである。インデンは、一般式(7)で表される繰り返し単位に対応する。アセナフチレンは、一般式(6)で表される繰り返し単位に対応する。
【0154】
また、マレイミド樹脂9の合成では、マレアミック酸1に代えて、同モル量のマレアミック酸2を使用した。また、マレイミド樹脂10の合成では、マレアミック酸1に代えて、同モル量のマレアミック酸3を使用した。マレイミド樹脂7~10は、高分子化合物P1に対応する。
【0155】
マレイミド樹脂7~10は、マレイミド樹脂1と比べて、以下の点で異なる。マレイミド樹脂7、9は、一般式(1)で表される繰り返し単位の他に、スチレン及びアセナフチレンをさらに含む。マレイミド樹脂8、10は、一般式(1)で表される繰り返し単位の他に、スチレン及びインデンをさらに含む。
【0156】
マレイミド樹脂9では、一般式(1)に含まれるXは、構造式(8-18)で表されるものである。マレイミド樹脂10では、一般式(1)に含まれるXは、構造式(8-9)で表されるものである。
【0157】
(v)マレイミド樹脂11、16、21の合成
基本的にはマレイミド樹脂1の合成と同様にして、マレイミド樹脂11、16、21を合成した。ただし、マレイミド樹脂11、16、21の合成では、前駆体樹脂として、表1に示すSM-7、12、17をそれぞれ用いた。前駆体樹脂SM-7、12、17の質量平均分子量Mwは表1に示すとおりである。また、前駆体樹脂SM-7、12、17を構成する繰り返し単位の種類と組成比とは表1の「前駆体樹脂組成比」の列に示すとおりである。
【0158】
(vi)マレイミド樹脂12の合成
攪拌装置、還流管、温度計をつけたフラスコ中に、反応溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)を486.4g、マレアミック酸3を57.7g、無水マレイン酸単位を含むラジカル重合樹脂SM-8を35.6g仕込み、窒素雰囲気の下、40℃で4時間攪拌した。その後、プロピレングリコールモノメチルエテールアセテート(PGMEA)62.2g、無水酢酸23.3g、パラトルエンスルホン酸23.3gを仕込み、窒素雰囲気の下、130℃で3時間攪拌した。放冷後、メタノール746.4gを加えたのち、析出した個体を濾別し、40℃で減圧乾燥させることによりマレイミド樹脂12を52.0g得た。ラジカル重合樹脂SM-8は、70質量部のスチレンと20質量部の無水マレイン酸と10質量部の1-デセンとを含んでいた。ラジカル重合樹脂SM-8の質量平均分子量は3000であった。
【0159】
(vii)マレイミド樹脂13~15、17~20、22~27の合成
基本的にはマレイミド樹脂12の合成と同様にして、マレイミド樹脂13~15、17~20、22~27を合成した。ただし、マレイミド樹脂13~15、17~20、22~27の合成では、前駆体樹脂として、表1に示すSM-9~11、13~16、18~23それぞれ用いた。前駆体樹脂SM-9~11、13~16、18~23の質量平均分子量Mwは表1に示すとおりである。また、前駆体樹脂SM-9~11、13~16、18~23を構成する繰り返し単位の種類と組成比とは表1の「前駆体樹脂組成比」の列に示すとおりである。
【0160】
(viii)マレイミド樹脂28の合成
攪拌装置、還流管、温度計をつけたフラスコ中に、反応溶媒であるトルエンを68.4g、無水マレイン酸単位を含むラジカル重合樹脂SM-8を40.0g、priamine1075を62.6g、パラトルエンスルホン酸を25.7g仕込み、窒素雰囲気の下、110℃で4時間攪拌した。その後、無水マレイン酸22.9g、トルエン15.2g、パラトルエンスルホン酸5.7gを仕込み、窒素雰囲気の下、110℃で4時間攪拌した。放冷後、メタノールを1000g加えたのち、析出した個体を濾別し、40℃で減圧乾燥させることによりマレイミド樹脂28を56.5g得た。マレイミド樹脂28は、製造方法において、マレイミド樹脂12と相違する。
【0161】
(ix)マレイミド樹脂29の合成
攪拌装置、還流管、温度計をつけたフラスコ中に、反応溶媒であるメシチレンを50.5g、エタノールを11.4g、無水ピロメリット酸を7.6g仕込み、窒素雰囲気下、80℃まで昇温させ、25.2gのpriamine1075と、30.0gのTHFとを、80℃で30分かけて滴下した。その後、窒素雰囲気化の下、80℃で30分攪拌した。その後、80℃で無水ピロメリット酸を加えたのち昇温し、窒素雰囲気下、160℃で1時間攪拌した。その後、80℃まで放冷し、窒素雰囲気下、無水マレイン酸2.0g、THF25gを80℃で15分かけて滴下した。その後、窒素雰囲気下、80℃で1時間反応させることにより、マレアミック酸4のメシチレン溶液を得た。マレアミック酸4は、一般式(13)で表され、かつ、Xが一般式(19)で表されるものである。一般式(19)中のAはベンゼンの1、2、4、5位から水素原子を取り除いた残基である。一般式(19)中のB、Qは構造式(8-8)で表される化合物である。
【0162】
得られたマレアミック酸4の溶液に対し、80℃でSM-1を7.8g、THFを15.0g仕込み、窒素雰囲気化の下、80℃で2時間攪拌した。その後、無水酢酸11.0g、パラトルエンスルホン酸11.0gを仕込み、窒素雰囲気の下、130℃で4時間攪拌した。放冷後、メタノールを360g加えたのち、析出した個体をメタノール360gで洗浄、濾別し、40℃で減圧乾燥させることによりマレイミド樹脂29を34.9g得た。
【0163】
(x)マレイミド樹脂30の合成
基本的にはマレイミド樹脂29と同様にして、マレイミド樹脂30を合成した。ただし、マレイミド樹脂30の合成では、priamine1075を単独で用いることに代えて、priamine1075とイソホロンジアミンとの混合物を用いた。priamine1075とイソホロンジアミンとのモル比は1:1であった。priamine1075とイソホロンジアミンとの合計モル量は、マレイミド樹脂29の合成で用いたpriamine1075のモル量と同じであった。
【0164】
マレイミド樹脂30の合成では、マレアミック酸5を中間体として合成した。マレアミック酸5は、一般式(13)で表され、かつ、Xが一般式(19)で表されるものである。一般式(19)中のAはベンゼンの1、2、4、5位から水素原子を取り除いた残基である。一般式(19)中のBは構造式(22-3)で表される化合物である。一般式(19)中のQは構造式(8-8)で表される化合物である。
【0165】
(xi) アミック酸基含有樹脂1の合成
基本的にはマレイミド樹脂1の合成と同様にして、アミック酸基含有樹脂1を合成した。ただし、マレイミド樹脂1の合成では、工程(2)において、110℃の温度で6時間撹拌したが、アミック酸基含有樹脂1の合成では、工程(2)において、90℃の温度で1時間撹拌した。アミック酸基含有樹脂1は、高分子化合物P5に対応する。
【0166】
アミック酸基含有樹脂1は、一般式(1)で表される繰り返し単位に加えて、一般式(2)で表される繰り返し単位、一般式(3)で表される繰り返し単位、及び一般式(4)で表される繰り返し単位を含んでおり、一般式(1)~(4)におけるXが構造式(8-10)で表される点で、マレイミド樹脂1と相違する。
【0167】
(xii) アミック酸基含有樹脂2の合成
攪拌装置、還流管、温度計をつけたフラスコ中に、反応溶媒であるN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)を50.2g、マレアミック酸1を5.6g、無水マレイン酸単位を含むラジカル重合樹脂SM-1を28.1g仕込み、窒素雰囲気下、75℃で6時間攪拌した。
【0168】
放冷後、反応液に水308.0g、及び塩酸35.4gを仕込み、結晶水洗させて、析出した固体を濾過で濾別し、70℃で真空乾燥させることによりアミック酸基含有樹脂2を38.9g得た。アミック酸基含有樹脂2の収率は99%であった。アミック酸基含有樹脂1は、高分子化合物P2に対応する。
【0169】
アミック酸基含有樹脂2は、一般式(1)で表される繰り返し単位に代えて、一般式(2)で表され、Xが構造式(8-10)で表される繰り返し単位を含む点で、マレイミド樹脂1と相違する。アミック酸基含有樹脂2は、マレイミド樹脂1と同様に、一般式(5)で表される繰り返し単位であるスチレンをさらに含む。
(9-3)樹脂組成物の製造
表2、表3、表4に示す各成分を110℃の温度において加熱下撹拌し、30分撹拌することで、実施例1~37及び比較例1~4の樹脂組成物を得た。表2、表3、表4における成分の量の単位は質量部である。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
実施例1~12及び比較例1~2の樹脂組成物を、シリコーン型を用いて注型し、200℃で3時間硬化させ硬化物を得た。得られた硬化物から長さ50mm、幅10mm、厚さ3mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定用のサンプルとした。また、長さ80mm、1.5mm四方の角柱状試験片を切り出し、誘電率測定用のサンプルとした。
【0174】
なお、樹脂組成物の製造に使用した表2、表3、表4中の化合物の略称は、それぞれ以下を意味する。
DGEBA・・・ビスフェノールAジグリシジルエーテル
MCHAah・・・4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物
MIR-3000・・・日本化薬(株)製、ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂
BMI-1000・・・4,4‘-ジフェニルメタンビスマレイミド
(9-4)誘電特性、耐熱性の評価
実施例1~12及び比較例1~2の試験片を用いて以下の様に評価した。
(i)比誘電率・誘電正接
(株)関東電子応用開発製の10GHz空洞共振器を用いて、空洞共振器摂動法にてテストを行った。測定結果を表2に示す。
(ii)ガラス転移温度
動的粘弾性試験機により測定した。tanδが最大値のときの温度をガラス転移温度とした。測定条件は以下のとおりであった。測定結果を表2に示す。表2におけるガラス転移温度の単位は℃である。
【0175】
動的粘弾性測定器:TA-instruments製DMA-800
昇温速度:4℃/分
表2に示すように、実施例1~12の樹脂組成物の誘電率、誘電正接は、比較例1~2の樹脂組成物の比誘電率、誘電正接よりも小さかった。
(9-5)溶剤溶解性の評価
マレイミド樹脂1~4、11、15、17、20、23、26と、BMI-1000とを試料とした。試料とメチルエチルケトンとを3:2の質量比で混合後、1時間撹拌した。メチルエチルケトンは溶剤に対応する。
【0176】
攪拌後、透明な溶液が作成できた場合は、試料の溶剤溶解性が良好であると評価した。また、攪拌後、試料の溶け残りがあった場合は、試料の溶剤溶解性を不良とした。評価結果を表5に示す。表5における「○」は溶剤溶解性が良好であることを意味し、「×」は溶剤溶解性が不良であることを意味する。
【0177】
【表5】
(9-6)フィルム状硬化物の誘電特性評価
【0178】
実施例11~37及び比較例3~4の樹脂組成物を試料とした。試料100質量部に対してDCPOを1質量部加え、溶剤としてメチルエチルケトンを使用し、固形分濃度50%の溶液を調製した。離形処理されたPETフィルムに、バーコーターを用い、上記のように調製した溶液を塗布した。その後、80℃で溶液中の溶剤を乾燥させ、200℃で2時間加熱した。室温まで冷却した後、PETフィルムを剥離し、誘電特性測定用のサンプルを作成した。誘電特性測定用のサンプルの形態はフィルム状であった。
【0179】
以下の基準によりフィルム成形能を評価した。なお、〇は×よりも優れた評価結果を意味する。評価結果を表3、表4に示す。実施例11~37の樹脂組成物は、フィルム成形能において優れていた。
【0180】
〇:上記の操作によりフィルム状の誘電特性測定用のサンプルを作成できた。
×:上記の操作によりフィルム状の誘電特性測定用のサンプルを作成できなかった。
比誘電率、誘電正接の値は、(株)関東電子応用開発製の10GHz空洞共振器を用いて、空洞共振器摂動法にて測定した。測定結果を表4、表5に示す。
表3、表4に示すように、マレイミド樹脂2~7、11~30から作成した硬化フィルムは、比較例3、4の樹脂組成物から作成した硬化物と比較して比誘電率、誘電正接の値が低いことが確認できた。なお、比較例3、4の樹脂組成物では、実施例11~37の樹脂組成物と同様の方法ではフィルムを作成することができなかったため、200℃、60分、1.0MPaのプレス条件で成型した硬化物から、長さ80mm、1.5mm四方の角柱状試験片を切り出し、誘電率測定用のサンプルとした。
【0181】
10.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0182】
(1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0183】
(2)上述した高分子化合物の他、当該高分子化合物を構成要素とする製品、高分子化合物の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
(一般式(1)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【0184】
【0185】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
(一般式(2)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【0186】
【0187】
下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
(一般式(3)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【0188】
【0189】
下記一般式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
(一般式(4)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【0190】
【0191】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位、下記一般式(2)で表される繰り返し単位、下記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位から成る群から選択される1種以上の繰り返し単位を含む高分子化合物。
(一般式(1)~(4)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
項目1~5のいずれか1項目に記載の高分子化合物であって、
下記一般式(5)で表される繰り返し単位をさらに含む高分子化合物。
(一般式(5)において、R1は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。)
【0197】
【0198】
項目1~6のいずれか1項目に記載の高分子化合物であって、
下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される繰り返し単位をさらに含む高分子化合物。
(一般式(6)において、R2は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキル基、若しくはハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。aは0~6の整数である。)
(一般式(7)において、R3は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキル基、若しくはハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。bは0~4の整数である。)
【0199】
【0200】
【0201】
項目1~5のいずれか1項目に記載の高分子化合物であって、
α-オレフィン単位、シクロオレフィン単位、及び、ビニルエーテル単位から成る群から選ばれる1種以上の繰り返し単位をさらに含む高分子化合物。
[項目9]
項目1~8のいずれか1項目に記載の高分子化合物であって、
前記Xが、下記一般式(8-1)~(8-21)のいずれかで表される2価の有機基である高分子化合物。
【0202】
【0203】
項目1~8のいずれか1項目に記載の高分子化合物であって、
前記Xが下記一般式(19)で表されるものである高分子化合物。
【0204】
【0205】
(一般式(19)において、置換基が結合していない結合手は、一般式(1)~(4)のいずれかで表される繰り返し単位の中の窒素原子、又は、一般式(13)~(14)のいずれかで表される化合物の中の窒素原子と結合するものである。nは1~100のうちのいずれかの自然数である。Aは独立して環状構造を含む4価の有機基である。B及びQはそれぞれ独立して2価の有機基である。BとQは同じであっても、異なっていてもよい。)
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【化14】
(一般式(1)~(4)、(13)~(14)においてXは2価の有機基である。破線は結合手である。)
[項目11]
【0212】
項目1~10のいずれか1項目に記載の高分子化合物を含む樹脂組成物。
[項目12]
項目11に記載の樹脂組成物であって、
アミン化合物又は過酸化物をさらに含む樹脂組成物。
[項目13]
項目11又は12に記載の樹脂組成物を用いて形成される樹脂フィルム。
[項目14]
項目11又は12に記載の樹脂組成物を含むプリプレグ。
[項目15]
項目14に記載のプリプレグと金属箔とを含む積層板。
[項目16]
項目14に記載のプリプレグを含むプリント配線板。
[項目17]
項目15に記載の積層板を含むプリント配線板。
[項目18]
項目16に記載のプリント配線板と、
前記プリント配線板に搭載された半導体素子と
を備える半導体パッケージ。
[項目19]
項目17に記載のプリント配線板と、
前記プリント配線板に搭載された半導体素子と
を備える半導体パッケージ。