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▶ リテルフューズ、インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012086
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】能動/受動ヒューズモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01H 39/00 20060101AFI20240118BHJP
   H01H 37/76 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01H39/00 C
H01H37/76 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023083297
(22)【出願日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/389,154
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519226506
【氏名又は名称】リテルフューズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルバート ヘッツマンシダー
(72)【発明者】
【氏名】デレク ラシーニ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アーサー バーンズ
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502BA02
5G502BB03
5G502BE03
5G502KK10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自動車用途など特定の用途に対して、受動的及び能動的な回路保護素子を両方とも実装するヒューズモジュールを提供する。
【解決手段】能動/受動ヒューズモジュールは、ヒューズ本体の内部に配置されて可溶性要素を取り囲むアーク消去材料を有するヒューズを含み、ヒューズ本体に結合された火工式電流遮断器(PI)をさらに含み、ここでPIは、シャフトを画定するハウジング、シャフトの内部に配置されたピストン、ピストンからヒューズ本体へと延在する駆動ピン、ここで駆動ピンは可溶性要素に隣接して配置されたカッタで終端する、及びコントローラから起動信号を受信すると爆発するように構成された、ピストンの上でシャフトの内部に配置された火工式点火器、これによりピストン及び駆動ピンはシャフトを通って強制的に駆動されて、カッタに可溶性要素を分離させる、を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性のヒューズ本体;
前記ヒューズ本体の両端部に配置された第1の端部キャップ及び第2の端部キャップ;
前記第1の端部キャップ及び前記第2の端部キャップの間で前記ヒューズ本体を通って延在する可溶性要素;及び
前記ヒューズ本体の内部に配置されて前記可溶性要素を取り囲むアーク消去材料;
を有するヒューズ、及び
前記ヒューズ本体に結合された火工式電流遮断器(PI)、ここで前記PIは、
シャフトを画定するハウジング;
前記シャフトの内部に配置されたピストン;
前記ピストンから前記ヒューズ本体へと延在する駆動ピン、ここで前記駆動ピンは、前記可溶性要素に隣接して配置されたカッタで終端する;及び
コントローラから起動信号を受信すると起爆するように構成された、前記ピストンの上で前記シャフトの内部に配置された火工式点火器、これにより前記ピストン及び前記駆動ピンは前記シャフトを通って強制的に駆動されて、前記カッタに前記可溶性要素を分離させる
を有する
を備える、能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項2】
前記可溶性要素が、前記可溶性要素の周囲の部分よりも機械的に脆弱なブリッジ部分を含み、ここで前記カッタが、前記ブリッジ部分と位置合わせされ、前記PIの起爆に際して前記ブリッジ部分を直接通過するように構成されている、請求項1に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項3】
前記カッタの先端が尖っている、請求項2に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項4】
前記可溶性要素が、第1のブリッジ部分及び第2のブリッジ部分の間にまたがる中間部分を含み、ここで前記第1のブリッジ部分及び前記第2のブリッジ部分が前記中間部分よりも機械的に脆弱であり、ここで前記カッタが、前記中間部分と位置合わせされ、前記PIの起爆に際して前記中間部分と直接係合して前記第1のブリッジ部分及び前記第2のブリッジ部分において前記可溶性要素を分離させるように構成されている、請求項1に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項5】
前記カッタの先端が鈍い、請求項4に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項6】
前記カッタが誘電材料で形成されている、請求項1に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項7】
前記カッタが導電性材料で形成されている、請求項1に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項8】
前記PIの前記ハウジングが前記ヒューズの前記ヒューズ本体にクランプされている、請求項1に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項9】
前記カッタの先端が、前記可溶性要素に対する前記カッタの位置を固定するために前記可溶性要素に締結されている、請求項1に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項10】
前記可溶性要素の下に配置され、前記カッタと位置合わせされたクラッシュリブをさらに備え、ここで前記クラッシュリブが、前記カッタ及び前記可溶性要素の直下の空間を少なくとも部分的に充填して前記アーク消去材料が前記空間に収まることを妨げ、ここで前記クラッシュリブが、前記アーク消去材料よりも低い機械抵抗を有する媒体であって、前記PIが起爆したときに前記カッタが通過することができる媒体を提供する、請求項1から9のいずれか一項に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項11】
前記クラッシュリブがシリコーン発泡体で形成されている、請求項10に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項12】
電気絶縁性のヒューズ本体;
前記ヒューズ本体の両端部に配置された第1の端部キャップ及び第2の端部キャップ;
前記第1の端部キャップ及び前記第2の端部キャップの間で前記ヒューズ本体を通って延在する複数の可溶性要素;
を有するヒューズ、及び
前記ヒューズ本体に結合された火工式電流遮断器(PI)、ここで前記PIは、
シャフトを画定するハウジング;
前記シャフトの内部に配置されたピストン;
前記ピストンから前記ヒューズ本体へと延在する駆動ピン、ここで前記駆動ピンはカッタで終端し、ここで前記複数の可溶性要素のうちの少なくとも1つは、前記カッタ内の各貫通孔を通って延在し、ここで前記カッタの下縁部は、前記複数の可溶性要素のうちの少なくとも別の1つの上に配置されている;及び
コントローラから起動信号を受信すると起爆するように構成された、前記ピストンの上で前記シャフトの内部に配置された火工式点火器、これにより前記ピストン及び前記駆動ピンは前記シャフトを通って強制的に駆動されて、前記カッタに前記複数の可溶性要素を分離させる
を有する
を備える、能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項13】
前記複数の可溶性要素のそれぞれが、互いに対して平行であり前記複数の可溶性要素の周囲の部分よりも機械的に脆弱である複数のブリッジ区間を有し、ここで前記カッタが、前記複数のブリッジ区間と位置合わせされ、前記PIの起爆に際して前記複数のブリッジ区間を直接通過するように構成されている、請求項12に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項14】
前記カッタが誘電材料で形成されている、請求項12に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項15】
前記カッタが導電性材料で形成されている、請求項12に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項16】
前記カッタが、前記複数の可溶性要素に対する前記カッタの位置を固定するために前記複数の可溶性要素のうちの少なくとも1つに締結されている、請求項12に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項17】
前記ヒューズ本体の内部に配置され、前記複数の可溶性要素を取り囲むアーク消去材料をさらに備える、請求項12に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項18】
前記複数の可溶性要素の下に配置され、前記カッタと位置合わせされたクラッシュリブをさらに備え、ここで前記クラッシュリブが、前記カッタ及び前記複数の可溶性要素の直下の空間を少なくとも部分的に充填して前記アーク消去材料が前記空間に収まることを妨げ、ここで前記クラッシュリブが、前記アーク消去材料よりも低い機械抵抗を有する媒体であって、前記PIが起爆したときに前記カッタが通過することができる媒体を提供する、請求項17に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項19】
前記クラッシュリブがシリコーン発泡体で形成されている、請求項18に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【請求項20】
前記カッタが、前記複数の可溶性要素の長さに沿って互いから間隔を開けて配置された複数のカッタを含み、ここで前記複数のカッタが、前記PIが起爆したときに前記複数の可溶性要素の前記長さに沿った様々なポイントにおいて前記複数の可溶性要素を分離するように構成されている、請求項12から19のいずれか一項に記載の能動/受動ヒューズモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2022年7月14日出願の米国仮特許出願第63/389,154号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は概して回路保護デバイスの分野に関し、より具体的には、受動的及び能動的な回路保護素子の両方を含む能動/受動ヒューズモジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
ヒューズは通常、過電流保護を提供するために電気的システムに実装されている。ほとんどのヒューズは、通常動作において定格電流量を流すように構成されているヒューズ素子を含む「受動的な」デバイスである。ヒューズ素子を流れる電流がヒューズ素子の定格電流値を超えた場合、ヒューズ素子は溶ける、分解する、又はその他の方法で分離し、それにより電流を阻止して、接続されている電気部品への損傷を防止又は軽減する。
【0004】
自動車用途などのいくつかの場合には、回路を流れる電流量にかかわらず、電気回路に物理的オープン状態を「能動的に」作り出すことが望ましいことがある。例えば、自動車が衝突に巻き込まれた場合、自動車の電気回路を物理的にオープン状態にして、接続されている電気部品の電源を遮断し、衝突に続いて発生する火災及び/又は感電の危険を軽減するのを確実とすることが望ましい場合がある。そのために、いわゆる火工式電流遮断器(PI)が開発されており、これは、特定のイベントが発生した際に選択的に作動して、回路を流れる電流を遮断することができる。例えば、自動車が衝突した場合に、コントローラ(例えば、エアバッグ制御ユニット、バッテリ管理システムなど)が起動信号をPIに送信し、PI内の火工式点火器を起爆させてよい。結果としてPI内の圧力が増加すると、ピストン又はブレードにより、PIを通って延在する導体(例えばバスバー)が直ちに断ち切られる。それによりPIを流れる電流が遮断され、誘電材料で形成されたピストンは、導体の分離した部分の間に電気絶縁性のバリアを提供して、それらの間に電気アークが発生するのを防止する。
【0005】
特定の用途では、受動的及び能動的な回路保護素子を両方とも実装するのが望ましいことがある。さらに、簡便な取り付けを容易にする小型の省スペースフォームファクタにそのような素子を実装するのが望ましいことがある。
【0006】
この改善が役立ち得るということが、これらの及び他の考慮事項に関連している。
【発明の概要】
【0007】
この概要は、詳細な説明において以下でさらに説明される概念から選択したものを、簡易的な形式で紹介するために提供される。この概要は、請求される主題の重要な特徴又は不可欠な特徴を特定することが意図されているわけでもなく、この概要は、請求される主題の範囲を決定する際の補助として意図されているわけでもない。
【0008】
本開示の非限定的な実施形態による能動/受動ヒューズモジュールは、電気絶縁性のヒューズ本体、ヒューズ本体の両端部に配置された第1の端部キャップ及び第2の端部キャップ、第1の端部キャップ及び第2の端部キャップの間でヒューズ本体を通って延在する可溶性要素、及びヒューズ本体の内部に配置されて可溶性要素を取り囲むアーク消去材料を有するヒューズを含むことができる。ヒューズモジュールは、ヒューズ本体に結合された火工式電流遮断器(PI)をさらに含むことができ、ここでPIは、シャフトを画定するハウジング、シャフトの内部に配置されたピストン、ピストンからヒューズ本体へと延在する駆動ピン、ここで駆動ピンは、可溶性要素に隣接して配置されたカッタで終端する、及びコントローラから起動信号を受信すると起爆するように構成された、ピストンの上でシャフトの内部に配置された火工式点火器、これによりピストン及び駆動ピンはシャフトを通って強制的に駆動されて、カッタに可溶性要素を分離させる、を有する。
【0009】
本開示の非限定的な実施形態による別の能動/受動ヒューズモジュールは、電気絶縁性のヒューズ本体、ヒューズ本体の両端部に配置された第1の端部キャップ及び第2の端部キャップ、及び第1の端部キャップ及び第2の端部キャップの間でヒューズ本体を通って延在する複数の可溶性要素を有するヒューズを含むことができる。ヒューズモジュールは、ヒューズ本体に結合された火工式電流遮断器(PI)をさらに含むことができ、ここでPIは、シャフトを画定するハウジング、シャフトの内部に配置されたピストン、ピストンからヒューズ本体へと延在する駆動ピン、ここで駆動ピンはカッタで終端し、ここで複数の可溶性要素のうちの少なくとも1つは、カッタ内の各貫通孔を通って延在し、ここでカッタの下縁部は、複数の可溶性要素のうちの少なくとも別の1つの上に配置されている、及びコントローラから起動信号を受信すると起爆するように構成された、ピストンの上でシャフトの内部に配置された火工式点火器、これによりピストン及び駆動ピンはシャフトを通って強制的に駆動されて、カッタに複数の可溶性要素を分離させる、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】非作動状態における、本開示による能動/受動ヒューズモジュールの実施形態を示す切欠き側面図である。
【0011】
図1B図1Aに示されている能動/受動ヒューズモジュールを示す、端部を正面にした断面図である。
【0012】
図2】作動状態における図1A及び1Bに示されている能動/受動ヒューズモジュールを示す切欠き側面図である。
【0013】
図3A】本開示による能動/受動ヒューズモジュールの別の実施形態を示す切欠き側面図である。
【0014】
図3B】作動状態における図3Aに示されている能動/受動ヒューズモジュールを示す切欠き側面図である。
【0015】
図4A】本開示による能動/受動ヒューズモジュールの別の実施形態を示す切欠き側面図である。
【0016】
図4B】作動状態における図4Aに示されている能動/受動ヒューズモジュールを示す切欠き側面図である。
【0017】
図5A】本開示による能動/受動ヒューズモジュールの別の実施形態を示す切欠き側面図である。
【0018】
図5B図5Aに示されている能動/受動ヒューズモジュールを示す、端部を正面にした断面図である。
【0019】
図6】本開示による能動/受動ヒューズモジュールの別の実施形態を示す切欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示による能動/受動ヒューズモジュールが、ここで、添付図面を参照してより十分に説明される。添付図面には、能動/受動ヒューズモジュールの好ましい実施形態が示されている。しかし、能動/受動ヒューズモジュールは、多数の異なる形態で具現化されてよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではないことが理解されよう。むしろ、これらの実施形態は、本開示が能動/受動ヒューズモジュールの特定の例示的な態様を当業者に伝えるように提供されている。
【0021】
図1A及び1Bを参照すると、本開示の例示的で非限定的な実施形態による能動/受動ヒューズモジュール10(以後「ヒューズモジュール10」)を示す、切欠き側面図及び端部を正面にした断面図がそれぞれ示されている。便宜及び明確さのため、ヒューズモジュール10の様々な構成要素の相対的な配置及び配向を説明するために、「前方」、「後方」、「上部」、「下部」、「上」、「下」、「鉛直」、「水平」、「横方向」、及び「長手方向」などの用語が本明細書で使用される場合があり、そのそれぞれは、図1A及び1Bに見られるときのヒューズモジュール10の幾何形状及び配向に関する。上記用語には、具体的に言及された単語、その派生語、及び同義語が含まれることになる。
【0022】
以下でさらに説明するように、ヒューズモジュール10は、互いに結合されたヒューズ12及び火工式電流遮断器(PI)13を概して含むことができる。様々な実施形態では、ヒューズ12は管状のヒューズ本体14を有するカートリッジヒューズであってよい。本開示は、この点に関して限定されない。様々な代替的実施形態において、ヒューズ12は、表面実装ヒューズ、又は概して中空のヒューズ本体を通って延在する可溶性要素を有する他のタイプのヒューズであり得る。ヒューズ本体14は、電気絶縁性であり好ましくは耐熱性の材料で形成され得る。こうした材料の例は、セラミック及びガラスを含むが、これらに限定されない。
【0023】
第1の端部キャップ18及び第2の端部キャップ20がヒューズ本体14の両端部に配置され得る。可溶性要素24は、第1の端部キャップ18及び第2の端部キャップ20の間でヒューズ本体14の中空の内部を通って延在することができる。様々な実施形態では、端部キャップ18、20は導電性材料(例えば銅、錫、様々な合金など)で形成されてもよく、可溶性要素24ははんだなどによって端部キャップ18、20に接続されてもよい。したがって、第1の端部キャップ及び第2の端部キャップにより、回路内でのヒューズモジュール10の電気的接続が容易になり得る。あるいは、第1の端部キャップ18及び第2の端部キャップ20は誘電材料(例えばプラスチック)で形成されてもよく、可溶性要素24は、(図1Aに示されているように)第1の端部キャップ18及び第2の端部キャップ20を通って延在し且つそこから突出し、可溶性要素24の突出する端部により、回路内でのヒューズモジュール10の電気的接続が容易にされてもよい。可溶性要素24は、錫又は銅を含むがこれらに限定されない導電性材料で形成されてよく、予め定められた最大値を超える電流量が可溶性要素24を通って流れる過電流状態などの予め決められた障害状態の発生時に、溶けて分離するように構成されてよい。この最大値は通常、ヒューズ12の「定格電流」と呼ばれる。様々な実施形態では、可溶性要素24は30アンペア及び1000アンペアの間の範囲の定格電流を容易にするように構成され得る。本開示は、この点に関して限定されない。
【0024】
可溶性要素24は、ワイヤ、ストリップ、絶縁性コアの周囲に巻かれたワイヤなどを含むがこれらに限定されない、所望の用途に適した任意のタイプの可溶性要素であってよい。様々な実施形態では、以後「ブリッジ部分25」と呼ばれる可溶性要素24の中央部分は、ヒューズ定格を超えたときに可溶性要素24がブリッジ部分25で分離するのを確実とするために、可溶性要素24の他の部分に比べて薄くされ、細くされ、穿孔され、又はその他の方法で脆弱にされ得る。本開示は、この点に関して限定されない。
【0025】
ヒューズ本体14の内部は、可溶性要素24を取り囲むことができるアーク消去材料又は「ヒューズフィラー」26で部分的に又は全体的に充填され得る。アーク消去材料26は、可溶性要素24が分離した後に(例えばヒューズ12での過電流状態の発生に際して)可溶性要素24の分離した部分にまたがる電気アークを軽減するために提供されてもよく、それによりヒューズ12の遮断容量をさらに高めることができる。以下でさらに説明するように、アーク消去材料26は、可溶性要素24に機械的支持を追加的に提供することができる。ヒューズ12で使用され得るアーク消去材料は、砂、シリカなどを含むが、これらに限定されない。
【0026】
PI13は、プラスチック、ポリマー、セラミックなどのような電気絶縁性の材料で形成されたハウジング30を含むことができる。ハウジング30は、遮断器組立体34を収容する上部分32、及びヒューズ12のヒューズ本体14にクランプされる下部分36を有することができる。例えば、図1Bに最もよく示されているように、ハウジング30の下部分36は、概して半円形の上半分38及び概して半円形の下半分40を含むことができる。半円形の上半分38及び概して半円形の下半分40は、機械的締結具は、示されているように、下部分36の上半分38及び下半分40から延在するフランジを通って延在することにより、機械的締結具(例えばねじ)などによって互いに締結され得る。本開示は、この点に関して限定されない。このように締結されると、ヒューズ本体14の外径とほぼ等しいがヒューズ本体14の外径よりわずかに大きい内径を有することができる下部分36は、ヒューズ本体14を、ヒューズ本体14との半径方向の隙間がほとんどない関係でクランプすることができ、ヒューズ本体14を取り囲むことができる。
【0027】
遮断器組立体34は、ヒューズ本体14の上に位置付けられた鉛直に延在する中空シャフト44の内部に配置された可動ピストン42を含むことができる。遮断器組立体34は、ピストン42の上でシャフト44の内部に配置された火工式点火器46、及びピストン42の下部から延在する駆動ピン48をさらに含むことができる。駆動ピン48は貫通孔49を介してヒューズ本体14へと延在することができ、可溶性要素24の直上に位置付けられたカッタ50で終端することができる。駆動ピン48は、鋼又は他の同様に硬質で頑丈な材料で形成され得る。様々な実施形態では、カッタ50はセラミック、又はアークトラッキングが少ない他の同様に硬質で頑丈な誘電材料で形成され得る。あるいは、カッタ50は金属などの導電性材料で形成されてもよい。本開示はこの点に関して限定されない。カッタ50の先端は、図1Aに示されているように尖っていてもよいが、これは不可欠ではない。様々な実施形態では、カッタ50の先端は、可溶性要素24に対するカッタ50の位置を固定するために、(例えば接着剤、圧入、戻り止めなどによって)可溶性要素24に取り付けられるか又は固定されてもよい。本開示は、この点に関して限定されない。ピストン42の下縁部は凹型でもよく、図1Bに示されているようにヒューズ本体14の外部の曲率半径と実質的に等しい曲率半径を有してもよいが、これも不可欠ではない。
【0028】
火工式点火器46は、コントローラ52(例えば自動車のエアバッグ制御ユニット、バッテリ管理システムなど)に結合されてもよい。自動車の衝突などの予め定められたイベントが発生すると(すなわち、ヒューズモジュール10が自動車に実装されている場合)、コントローラ52は火工式点火器46に起動信号を送信して、火工式点火器46を起爆させることができる。図2に示されているように、結果としてピストン42の上のシャフト44内で圧力が増加すると、ピストン42及び駆動ピン48がシャフト44を通って直ちに下向きに押し込まれて、カッタ50に可溶性要素24を切断させる。それにより、可溶性要素24に流れる電流が遮断される。カッタが誘電材料で形成されている場合、カッタ50は可溶性要素24の分離した部分の間に電気絶縁性のバリアを提供して、それらの間の電気アークを防止することができる。また、カッタ50によって可溶性要素24が切断されると、既に開始しているがまだ自己消滅していないアークを伸長させ、それによりアーク電圧を上昇させてより迅速な遮断を容易にすることができる。あるいは、カッタ50が導電性材料で形成されている場合、カッタ50は既に開始しているアークを分割するように機能し、それにより全体的なアーク電圧を増加させてアークのより迅速な遮断に寄与することができる。
【0029】
可溶性要素24を取り囲むアーク消去材料26(例えば砂)は可溶性要素24に機械的支持を提供することができ、それがカッタ50と係合したときに可溶性要素24を定位置にしっかりと保持することができるので有利である。これにより、可溶性要素24をすっぱりと完全に切断するのを容易にすることができるが、一方で可溶性要素24が単に空気によって取り囲まれていた場合、可溶性要素24はカッタ50によって脇に押され、部分的に切断され、又は単に曲げられる傾向にあるはずである。これにより、従来のパイロヒューズモジュールで見られることがある、可溶性要素24を支持するためにヒューズ本体14から延在する特別な構造的特徴の必要性がなくなる。
【0030】
上記の説明に鑑みると、本開示のヒューズモジュールにより、「能動的」(すなわち衝突が発生した際などにコントローラ52が火工式点火器46に起動信号を送信することによる)トリガ、及び「受動的」(すなわちヒューズ12の定格電流を超える電流にさらされたときに可溶性要素24が溶け/分離することによる)トリガの両方が容易になることが理解されよう。これにより多数の利点が提供される。例えば、可溶性要素24を取り囲むアーク消去材料26により、ヒューズモジュール10は破壊されることなしに、又は許容できない持続時間の電気アークを生じさせることなしに、(例えば20kAよりも大きい)非常に大きな電流を受動的に遮断することができる。追加的に、PI13は、ヒューズモジュール10に流れる電流量にかかわらず、いつでも回路を遮断するように作動され得る。例えば車両が駐車されている間に衝突を経験した場合、例えばヒューズモジュール10の電流がゼロである場合でも、火工式点火器46は自動車のバッテリを自動車の電気システムから接続解除するように作動されることがある。追加的に、ヒューズ12が受動的に回路を切り開くのがあまりに緩慢になることがある中程度から高程度の電流で動作している場合、回路をはるかに迅速に切り開くために火工式点火器46が作動されることがある。さらに、過電流状態の発生に際して可溶性要素24が溶け/分離した後(すなわちヒューズモジュール10の受動的なトリガの後)でも、火工式点火器46は可溶性要素24での完全な分離及びガルバニック絶縁を改善し/確実とするために作動され、それにより開状態での抵抗を増加させ、リーク電流を低減又は除去することができる。
【0031】
ヒューズモジュール10は可溶性要素24のブリッジ部分25を直接切断するように構成されたカッタ50を有するように上に示され、説明されてきた。一方で、カッタ50が複数のブリッジ部分において可溶性要素24を間接的に分離させるように適合された、ヒューズモジュール10の代替的な実施形態が企図される。例えば、図3Aを参照すると、可溶性要素24は、それらの間にまたがる中間部分27によって分離された第1のブリッジ部分25a及び第2のブリッジ部分25bを含むことができる。第1のブリッジ部分25a及び第2のブリッジ部分25bは、中間部分27よりも細く、薄く、又はその他の方法で機械的に脆弱になっていてもよい。中間部分はカッタ50と位置合わせされ(例えばカッタ50の直下に位置付けられ)てもよく、第1のブリッジ部分25a及び第2のブリッジ部分25bはカッタ50からオフセットされ(例えばカッタ50の両側に位置付けられ)てもよい。図3Bに示されているように火工式点火器46が起爆させられたとき、カッタ50は中間部分27へと駆動されて中間部分27を下向きに押し込み、こうした力は、機械的により脆弱なブリッジ部分25a、25bにおいて可溶性要素24を引き裂き、破壊し、又はその他の方法で分離させることができる。つまり、カッタ50と直接係合する中間部分27は(示されているように変形する可能性はあるが)破壊されないままである。一方で、ブリッジ部分25a、25bは、引き裂かれ、破壊され、又はその他の方法で分離させられる。上に説明したように、可溶性要素24に流れる電流はそれにより遮断される。図3A及び3Bの実施形態では、カッタ50が中間部分27を切断し又は分離させることは必要でないか又は望ましくないので、カッタ50の先端は丸くされ、四角にされ、又はその他の方法で鈍くされることが望ましい場合がある。
【0032】
図4Aを参照すると、上に説明したヒューズモジュール10のさらに別の実施形態が示されている。図4Aの実施形態は図1A及び1Bの実施形態と実質的に同一でもよいが、クラッシュリブ54をさらに含むことができる。クラッシュリブ54は、カッタ50と位置合わせされて可溶性要素24の下部からヒューズ本体14の内側表面へと、又はその近くへと延在する、比較的低密度の材料(例えばシリコーン発泡体又は類似の材料)で形成された柱又は支柱でもよい。クラッシュリブ54の目的は、カッタ50及び可溶性要素24の直下の空間を部分的に又は全体的に充填してアーク消去材料26がこの空間に収まるのを妨げることである。したがって、クラッシュリブ54は、アーク消去材料よりも低い機械抵抗を有する媒体であって、図4Bに示されているように火工式点火器46が起爆したときにカッタ50が通過することができる媒体を提供する。したがって、カッタ50が著しい妨害なしにすっぱりと直ちに可溶性要素24を分離し得ることが確実となる。
【0033】
図5A及び5Bを参照すると、本開示の例示的で非限定的な実施形態による別の能動/受動ヒューズモジュール100(以後「ヒューズモジュール100」)を示す、切欠き側面図及び端部を正面にした断面図がそれぞれ示されている。ヒューズモジュール100は上に説明したヒューズモジュール10と実質的に類似していてもよいが、鉛直方向に間隔を開けて配置された複数の可溶性要素124a、124bを含むことができる。2つの可溶性要素124a、124b(以後「第1の可溶性要素124a」及び「第2の可溶性要素124b」)が描かれているが、本開示の範囲から逸脱することなしに、より多い数の可溶性要素が実装される場合もある。より多い数の可溶性要素は、ヒューズモジュール100により大きい電流処理性能を提供することができる。また、可溶性要素124a、124bは互いに平行に配向されているように示されている。一方で、これは不可欠ではない。図5Bに示されているように、第1の可溶性要素124a及び第2の可溶性要素124bのそれぞれは、間隙によって分離された複数のブリッジ区間127、129を含むことができる。ブリッジ区間127、129は第1の可溶性要素124a及び第2の可溶性要素124bの他の部分よりも比較的薄くてもよく、したがってヒューズモジュール100での過電流状態の発生に際して溶けて分離するように適合され得る。第1の可溶性要素124a及び第2の可溶性要素124bのそれぞれは4つのブリッジ区間127、129を有するように描かれているが、これは限定的であることを意図されていない。本開示から逸脱することなしに、より多いか又は少ない数のブリッジ区間を有する可溶性要素が実装される場合もある。
【0034】
ヒューズモジュール100は、そこに形成された貫通孔151を有する多重レベルカッタ150を含むことができる。第1の可溶性要素124aは貫通孔151を通って延在することができる。貫通孔151の上縁部は、第1の可溶性要素124aの上に配置された第1のブレード153aを画定することができる。カッタ150の下縁部は、第2の可溶性要素124bの上に配置された第2のブレード153bを画定することができる。したがって、火工式点火器146が作動させられたとき、カッタ150は第1の可溶性要素124a及び第2の可溶性要素124bを同時に切断及び分離することができる。図5A及び5Bには示されていないが、ヒューズモジュール100は、第2の可溶性要素124bの下に配置されてカッタ150と位置合わせされた(上に説明したクラッシュリブ54に類似した)クラッシュリブを追加的に含んでもよいことが理解されよう。本開示は、この点に関して限定されない。
【0035】
図6を参照すると、本開示の例示的で非限定的な実施形態による別の能動/受動ヒューズモジュール200(以後ヒューズモジュール200)を示す切欠き側面図が示されている。ヒューズモジュール200は上に説明したヒューズモジュール100に実質的に類似していてもよいが、平行な、水平に間隔を開けて配置された複数のカッタ250a、250b、250cを含むことができる。カッタ250a、250b、250cは上に説明したカッタ150と実質的に同一でもよく、それらの長さに沿った多数の場所において可溶性要素224a、224bを同時に切断するように適合され得る。3つのカッタ250a、250b、250cが描かれているが、本開示の範囲から逸脱することなしに、より多いか又は少ない数の平行なカッタが実装される場合もある。より多い数のカッタは、ヒューズモジュール200により大きい遮断容量を提供することができる。
【0036】
本明細書において使用するとき、単数形で記載されていて、「a」又は「an」という単語の後にある要素又は段階は、複数の要素又は段階を除外しないものとして理解されるべきである。ただし、そのような除外が明示的に記載されている場合を除く。さらに、本開示の「一実施形態」の参照は、記載された特徴を同様に組み込む追加の実施形態の存在を除外すると解釈されることを意図するものではない。
【0037】
本開示は特定の実施形態を参照している。一方で、添付の特許請求の範囲で定義される本開示の領域及び範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に対して多数の修正、改変、及び変更を行うことが可能である。したがって、本開示は、説明した実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の文言及びその均等物により定義される完全な範囲を有することが意図されている。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
【外国語明細書】