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特開2024-120867GLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120867
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】GLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240829BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/61
A61P43/00 105
A61P3/10
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022363
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2023027422
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500081990
【氏名又は名称】ビーエイチエヌ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】須崎 昌代
(72)【発明者】
【氏名】野崎 勉
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋一
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD15
4B018MD19
4B018MD48
4B018MD61
4B018MD76
4B018ME03
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4C088AB57
4C088AC05
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA06
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZC01
4C088ZC20
4C088ZC35
(57)【要約】
【課題】
GLP-1分泌促進、DPP-4阻害、α-グルコシダーゼ阻害及び血糖値の調整をするための、安全かつ安定な新規素材を開発するとともに、これを産業上有効活用できる態様の組成物を提供する。
【解決手段】
フトモモ科ギョリュウバイ属(Leptospermum)に属するマヌカ(Leptospermum scoparium)の葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤とその製造方法、更には前期剤を含有してなる飲食品等の経口組成物。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フトモモ科ギョリュウバイ属に属するマヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするGLP-1分泌促進剤。
【請求項2】
フトモモ科ギョリュウバイ属に属するマヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするDPP-4阻害剤。
【請求項3】
フトモモ科ギョリュウバイ属に属するマヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするα-グルコシダーゼ阻害剤。
【請求項4】
抽出物がマヌカの葉及び/又は樹皮の水及び/又は低級アルコールによる抽出物である請求項1~3のいずれかに記載の剤。
【請求項5】
請求項4に記載の剤を含有してなる血糖値上昇抑制のための経口組成物。
【請求項6】
飲食品である請求項5に記載の経口組成物。
【請求項7】
マヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有せしめることを特徴とするGLP-1分泌促進剤の製造方法。
【請求項8】
マヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有せしめることを特徴とするDPP-4阻害剤の製造方法。
【請求項9】
マヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有せしめることを特徴とするα-グルコシダーゼ阻害剤の製造方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれかに記載の製造方法により得られる剤を配合してなる血糖値上昇抑制のための経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の植物を原料として使用したGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤に関するものである。より詳細には、フトモモ科ギョリュウバイ属に属するマヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤と、その製造方法、更には前記剤を含有してなることを特徴とする経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
平成28年「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる者」及び「糖尿病を否定できない者(予備軍)」が合わせて約2,000万人と推計されている。糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンが十分に働かないために、血液中の糖が増加する病気である。高血糖が維持されたままの状態が続くと、血管が傷つき、血管の硬化や狭窄の原因となるため、失明、腎不全、足病変、脳卒中、心疾患等の原因となる。そのため、血糖値が上昇しすぎないようコントロールすることは高血糖や糖尿病、これらに伴う疾病の予防に極めて重要である。
【0003】
GLP-1は消化管から分泌されるインクレチンホルモンの一種であり、食事により血糖値が上昇すると血中に移行して膵β細胞に作用し、インスリン分泌を促すことが知られている(非特許文献1)。血糖値が正常範囲内の場合には必要以上に分泌されることはなく、低血糖となるリスクがないことから、内因性のインスリン分泌が残っている2型糖尿病の治療にはGLP-1受容体作動薬が使用されている。一方、GLP-1は外部から投与してもDPP-4という酵素によって速やかに分解されてしまうため、活性を保ったまま生体に留めることは難しい。そのため、内因性のGLP-1分泌を促進することは血糖値降下作用や血糖値の調節にとって極めて重要である。GLP-1分泌促進作用を有する食品成分についてもこれまで研究されており、マンニトール(特許文献1)、ラクトバチルス・パラカゼイN34株(特許文献2)、ホップ酸化反応産物(特許文献3)、ミセラカゼイン及びその加水分解物(特許文献4)、シカカイ(特許文献5)等が提案されている。
【0004】
前述した通り、DPP-4はGLP-1を分解し、不活性化する酵素である。そのため、医薬品としてシタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、テネリグリプチン等が使用されている。DPP-4阻害薬は比較的副作用が少ない薬剤ではあるが、便秘、胃部不快感、吐き気、下痢、類天疱瘡等の副作用が報告されており、医師の指導による厳密な服薬管理が必要になるため、より安全に糖尿病やこれに関連する各種疾病を予防又は改善する方法を開発することが求められている。DPP-4阻害作用を有する食品成分についてもこれまで研究されており、トリペプチド(特許文献6)、ボタンボウフウ(特許文献7)、白子由来タンパク源の加水分解物(特許文献8)、環状リン酸化合物(特許文献9)等が提案されている。
【0005】
α―グルコシダーゼは、麦芽糖、ショ糖、乳糖などの二糖類を単糖類に分解する酵素である。α-グルコシダーゼの働きによって単糖へ分解された糖は小腸上皮膜から吸収されて血管中へ移行し、その結果、血糖値を上昇させる。そのため、α-グルコシダーゼの阻害は、糖の吸収を緩和・遅延させ、食後の急激な血糖値の上昇を抑え、糖尿病やこれに関する各種疾病の発症を予防することが可能になると考えられている。α-グルコシダーゼ阻害作用を有する食品成分についてもこれまで研究されており、茶水溶液多糖成分のテアラクトンを有効成分とする血糖値降下剤(特許文献10)、バナバ葉の熱水抽出画分を有効成分とする抗糖尿病剤(特許文献11)、センブリより抽出単離したキサントン類の血糖降下剤(特許文献12)、ローヤルゼリーに含まれるトランス‐10‐ヒドロキシデセン酸を有効成分とするインスリン様作用剤(特許文献13)等が提案されている。
【0006】
後述するマヌカについては次のようなことが知られている。すなわち、マヌカ(学名:フトモモ科ギョリュウバイ属(Leptospermum)に属するマヌカ(Leptospermum scoparium))は古くからニュージーランドの先住民マオリ族によって珍重されてきた薬木であり、その種子、樹皮、葉などは生薬として多岐にわたり利用されてきた(非特許文献2)。又、マヌカの花の蜜から採取されたマヌカハニーには、メチルグリオキサールが含まれ、抗菌作用があることが報告されている(非特許文献3)。その他にも、歯周炎治療用剤(特許文献14)、一酸化窒素産生促進剤(特許文献15)が提案されている。しかしながら、マヌカの葉に含まれる成分を経口的に摂取することによる、GLP-1分泌促進作用、DPP-4阻害作用及びα-グルコシダーゼ阻害作用に関する知見は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-161070
【特許文献2】特開2020-150872
【特許文献3】特開2018-199639
【特許文献4】再表2018-159546
【特許文献5】特開2017-48251
【特許文献6】特開2017-214334
【特許文献7】特開2016-027042
【特許文献8】再表2014/199780
【特許文献9】特開2014-019657
【特許文献10】特開平4-124139
【特許文献11】特開平7‐228539
【特許文献12】特開平7‐206673
【特許文献13】特開平9‐067252
【特許文献14】特開2007-277210
【特許文献15】特開2021-136983
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Drucker DJ、“The biology of incretin hormones”(アメリカ)、2006年、Cell Metab.、第3巻、第3号、第153頁~第165頁
【非特許文献2】Stanley Brooker等、“New Zealand Medicinal Plants”(ニュージーランド)、1997年、Raupo Publishing Ltd; 3rd Revised版
【非特許文献3】Johnston M等、“Antibacterial activity of Manuka honey and its components: An overview”(アメリカ)、2018年、AIMS Microbiol.、第4巻、第4号、第655頁~第664頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる現状に鑑み、本発明は、GLP-1分泌を促進し、DPP-4活性を阻害し、α-グルコシダーゼ活性を阻害するための、安全かつ安定な新規素材を開発するとともに、これを産業上有効活用できる態様の組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明者らは、GLP-1分泌を促進し、DPP-4活性を阻害し、α-グルコシダーゼ活性を阻害するための素材について鋭意検討を重ねた結果、意外にもマヌカの葉及び/又は樹皮が極めて有効であり、この植物には顕著なGLP-1分泌促進作用、DPP-4阻害作用及びα-グルコシダーゼ阻害作用が認められ、更に、これを飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の分野において有効利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、フトモモ科ギョリュウバイ属(Leptospermum)に属するマヌカ(Leptospermum scoparium)の葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤が提供される。この抽出物は、前記マヌカの葉及び/又は樹皮を水及び/又は低級アルコールで抽出処理して得られる抽出物であることが望ましい。
【0012】
本発明の前記GLP-1分泌促進剤は、GLP-1分泌を促進し、DPP-4活性を阻害し、α-グルコシダーゼ活性を阻害するものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の特徴は、前記のGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤を含有してなる経口組成物が提供される点にある。この経口組成物の態様は飲食品であることが望ましい。
【0014】
又、本発明によれば、前記GLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤を含有してなることを特徴とする血糖値コントロールのための経口組成物あるいは飲食品が提供される。
【0015】
本発明のさらなる他の特徴は、フトモモ科ギョリュウバイ属に属するマヌカの葉及び/又は樹皮を水及び/又は低級アルコールで抽出したエキスを有効成分として含有せしめるGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤の製造方法にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るマヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物は、品質安定性に優れ、GLP-1分泌を促進し、DPP-4活性を阻害し、α-グルコシダーゼ活性を阻害することにより、食後高血糖、糖尿病、高インスリン血症、肥満、動脈硬化、生体内糖化、血管脆弱化、皮膚障害、動脈硬化、骨粗鬆症、白内障等の症状を予防及び/又は改善する効果を奏する。かかる効果は、前記加工物を有効成分として含有してなるGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤を経口的に摂取又は投与することによって顕著に発現される。したがって、本発明によれば、マヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有してなる経口用組成物が提供され、これを高血糖及び/又は糖代謝異常により引き起こされる諸症状を予防及び/又は改善するための飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等として有効利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を詳細に説明する。まず、本発明のGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤は、ヒトや動物のGLP-1分泌を促進し、DPP-4活性を阻害し、α-グルコシダーゼ活性を阻害する機能を有するものであり、フトモモ科ギョリュウバイ属(Leptospermum)に属するマヌカ(Leptospermum scoparium)の葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とする。
【0018】
前記マヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物は任意の方法で製造することができるが、水及び/又は低級アルコールを用いて抽出処理するのが好ましい。低級アルコールは、その炭素数が大きくなるとマヌカの葉及び/又は樹皮の油性物質が抽出される傾向が大きくなるため、炭素数が5程度までのものが望ましく、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール等を例示できる。炭素数が大きい低級アルコールを使用する場合は、マヌカの葉及び/又は樹皮の油性成分の抽出を抑制するために含水率を高めるのがよい。例えば、n-プロパノールの場合の含水率は約20質量%~約50質量%とし、n-ブタノールの場合の含水率は約40質量%~約70質量%とする。望ましい抽出溶媒は水、メタノール及びエタノール、及び、これらの含水アルコール(含水率:0~100質量%)である。
【0019】
マヌカの葉及び/又は樹皮を抽出するには、マヌカの葉及び/又は樹皮1質量部に対して前記抽出溶媒を約1質量倍~約30質量倍加え、常圧下又は1~5気圧の加圧下、常温ないしは加熱状態で、約10分~約6時間、必要に応じて撹拌して混合後、常温に冷却して濾過し、濾液を減圧乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等の適当な手段により濃縮、乾燥する。尚、乾燥物は適宜に粉砕処理してもよい。このようにして本発明に係るマヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物である淡黄色ないし黄赤色の固体を得ることができる。前記抽出方法は、一旦抽出処理した抽出残渣を繰り返し抽出処理したり、1~3気圧の加圧下、約100℃~約130℃で行うことが望ましい。これにより本発明に係る抽出物の収量が増える。
【0020】
前述のように処理して得られる抽出物は、量的な差はあるものの多種多様な成分を含有する複雑な組成物であり、レプトスペリン、β-triketone、terpinen-4-ol、1,8-cineole、pteridinedione、3,6,7-trimethyllumazine、ポリフェノール類、サポニン類、各種水溶性成分(多糖、オリゴ糖、単糖、蛋白、ペプチド、アミノ酸、これらの複合体など)を含んでいる。また、同時にその他成分や未知成分も含まれているが、これらの含有成分を解明し本発明に係る活性成分をここに特定することは、極めて高度な熟練技術、新たな解析方法の開発等の長時間にわたる労力、多大なるコストを要するため、現実的ではない。
【0021】
本発明の剤は、その有効成分としての前記抽出物を固体状、ペースト状又は液体状の形態となし、これをそのままGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤及び血糖低下剤としてよいが、必要に応じて本発明のGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤が利用される用途における公知の添加物を併用して、常法により含有せしめて組成物として調製することもできる。ここで、公知の添加物は経口摂取するために通常利用されるものが望ましく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、湿潤剤、流動化剤、保存剤、界面活性剤、安定剤、希釈剤、溶解剤、等張化剤、殺菌剤、防腐剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤、香料等の添加物質を使用でき、又、GLP-1分泌促進効果、DPP-4阻害効果及びα-グルコシダーゼ阻害効果を有する既知成分やその含有素材を併用してもよい。
【0022】
GLP-1分泌促進作用が既知の成分や素材としては、前記のもののほか分岐鎖アミノ酸、グルタミン、茶花サポニン、大豆ペプチド、小麦ペプチド、トウモロコシZein加水分解物、海藻由来多糖体、プロシアニジン、クルクミン、カシス抽出物、茶カテキン、めかぶ、ボタンボウフウ葉等を例示できる。尚、本発明はこれらの例示によって何ら限定されるものではない。
【0023】
DPP-4阻害剤が既知の成分や素材としては、前記のもののほかツルアラメ由来ポリフェノール類、茶殻加水分解物に含まれるペプチド、米由来ペプチド、きのこ発酵乳、醤油麹菌、コラーゲンペプチド等を例示できる。尚、本発明はこれらの例示によって何ら限定されるものではない。
【0024】
α-グルコシダーゼ阻害剤が既知の成分や素材としては、前記のもののほかキノコ抽出物、豆類ポリフェノール、グァバ葉ポリフェノール、ギンナリン、サラシノール、ネオコタラノール、韃靼そば、アカショウマ、桑葉、カヌカ葉等を例示できる。尚、本発明はこれらの例示によって何ら限定されるものではない。
【0025】
本発明においては、前述したGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤をそのままの形態で飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料、その他産業分野の様々な製品として利用することができ、あるいは該各種製品の配合原料の一部として使用する態様でも利用できる。とりわけGLP-1分泌を促進し、DPP-4活性を阻害し、α-グルコシダーゼ活性を阻害するための経口組成物となすことが好ましく、この経口組成物の最も好適な態様は飲食品である。この例を以下に述べるが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0026】
本発明の剤を経口組成物とする場合の形態は、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等の経口用製剤となすことが可能である。かかる製剤組成物における前記マヌカ由来抽出物の含有量は、併用原料の種類や含有量等により一律に規定し難いが、各々概ね0.001質量%~90質量%程度、より望ましくは約0.01質量%~約70質量%である。前記含有量が約0.001質量%を下回ると本発明の所望効果が認められなくなり、約90質量%を超えると実用的な製剤組成物を調製することが難しくなる。本発明のGLP-1分泌促進剤は、これを望ましくは経口的に摂取又は投与する態様で使用する。経口摂取又は投与する場合の本発明の剤の好適な量の目安は、該剤に含まれる前記水性成分ベースあるいは前記抽出物ベースで、ヒト成人1日あたり約10mg~約1,000mg、望ましくは約30mg~約500mg、更に望ましくは約100mg~約300mgである。
【0027】
本発明の剤は、これ自体を飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料その他産業分野の様々な形態の製品とすることができ、あるいは、かかる製品の配合原料の一部とする態様でも利用することができる。実用的な用途としては飲食品がよい。
【0028】
飲食品の具体例として、野菜ジュース、果汁飲料、清涼飲料、茶等の飲料類、即席麺、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、ふりかけ、味噌、醤油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、植物性クリーム、焼肉用たれや麺つゆ等の調味料、麺類、うどん、蕎麦、スパゲッティ、ハムやソーセージ等の畜肉魚肉加工食品、ハンバーグ、コロッケ、ふりかけ、佃煮、ジャム、牛乳、クリーム、バター、スプレッドやチーズ等の粉末状、固形状又は液状の乳製品、マーガリン、パン、ケーキ、クッキー、チョコレート、キャンディー、グミ、ガム、ゼリー等の各種一般加工食品のほか、粉末状、顆粒状、丸剤状、錠剤状、ソフトカプセル状、ハードカプセル状、ペースト状又は液体状の栄養補助食品、特定保健用食品、機能性表示食品、健康食品、濃厚流動食や嚥下障害用食品の治療食等を挙げることができる。
【0029】
尚、本発明の飲食品においては、これがマヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有してなる旨、GLP-1分泌を促進し、DPP-4活性を阻害し、α-グルコシダーゼ活性を阻害するためのものである旨のうち少なくとも1つの表示を付した態様とすることができる。
【0030】
これらの飲食品を製造するには、本発明の剤と公知の原材料を用い、あるいは公知の原材料の一部を前記のGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤で置き換え、常法によって製造すればよい。例えば、本発明の剤を、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉又はその加工物、セルロース粉末等の賦形剤、ビタミン、ミネラル、動植物や魚介類の油脂、たん白(動植物や酵母由来の蛋白質、その加水分解物等を含む)、糖質、色素、香料、酸化防止剤、界面活性剤、その他の食用添加物、各種栄養機能成分を含む粉末やエキス類等の食用素材とともに混合して粉末、顆粒、ペレット、錠剤等の形状に加工したり、常法により前記例の一般加工食品に加工処理したり、これらを混合した液状物をゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等の被覆剤で被覆してカプセルに成形したり、飲料(ドリンク類)の形態に加工して、栄養補助食品や健康食品として利用することは好適である。とりわけ錠剤、カプセル剤やドリンク剤が望ましい。
【0031】
かかる飲食品に配合する本発明の剤の比率は、飲食品の形態、本発明の剤の前記抽出物(マヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物)の含量、他の配合原料の種類や成分や配合量等の違いにより一律に規定しがたいが、飲食品中の前記抽出物の含量が約0.01質量%~約90質量%、より望ましくは約1質量%~約50質量%となるように、本発明の剤をその他の飲食品製造用公知原料と適宜に組み合わせて処方を設計し、常法に従い目的とする飲食品を調製すればよい。本発明の飲食品は、ヒト成人の場合1日あたりの前記水性成分の摂取量の目安を約10mg~約1,000mg、望ましくは約50mg~約500mg、更に望ましくは約100mg~約300mgとして任意の方法、例えば、食事の摂取と同時又は前後に、経口摂取、経管投与等の方法で体内に取り込むことができる。
【0032】
本発明の剤を用いる医薬品又は医薬部外品は、前記のGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤に本発明の趣旨に反しない公知の賦形剤や添加物を適宜に加え、常法により加工して錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等の製剤となすことができる。経口あるいは経腸投与して、GLP-1分泌促進、DPP-4阻害及びα-グルコシダーゼ阻害あるいは前記諸症状の予防又は治療のために適用する。本発明の剤の配合量はその形態や前記医薬製剤の種類、形態、用法及び用量等により一律に設定し難いが、前記抽出物の含量として概ね0.001質量%~50質量%である。経口投与する場合の摂取量はとくに限定されるものではないが、例えば、前記抽出物をベースにして、ヒト成人1日あたり約1mg~約1,000mg、望ましくは約10mg~約500mg、更に望ましくは約50mg~約300mgである。
【0033】
又、本発明の剤をペットフードや家畜用飼料に適用するには、前記飲食品の場合と同様に、公知の各種飼料や飲用水に配合したり、公知の原材料、添加物とともに錠剤状、顆粒状、カプセル状等の製剤形態のものに加工することができる。これらの場合、本発明の剤の配合量及び摂取量は、前記抽出物の含量として約0.01質量%~約90質量%、より望ましくは約1質量%~約50質量%であり、1日あたりの摂取量の目安は、前記抽出物を基準として、適用動物の体重(kg)あたり約0.1mg~約100mg、より望ましくは約0.5mg~約50mgである。
【実施例0034】
製造例1
ニュージーランド産マヌカ(Leptospermum scoparium)の乾燥葉を粗粉砕した。このマヌカ乾燥葉1Kgをステンレス製抽出釜に仕込み、水9Lを加え、適宜に撹拌しながら70℃で6時間抽出処理した。この後、不溶の残渣を濾別してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮、凍結乾燥及び粉砕処理に供して茶褐色のエキス末(試料M1)を得た。
【0035】
製造例2
マヌカ乾燥葉1Kgをステンレス製抽出釜に仕込み、含水率50%の含水エタノール9Lを加え、適宜に撹拌しながら70℃で6時間抽出処理した。この後、不溶の残渣を濾別してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮、凍結乾燥及び粉砕処理に供して赤褐色のエキス末(試料M2)を得た。
【0036】
製造例3
マヌカ乾燥葉1Kgをステンレス製抽出釜に仕込み、含水率30%の含水エタノール9Lを加え、適宜に撹拌しながら70℃で6時間抽出処理した。この後、不溶の残渣を濾別してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮、凍結乾燥及び粉砕処理に供して赤褐色のエキス末(試料M3)を得た。
【0037】
製造例4
マヌカ乾燥葉1Kgをステンレス製抽出釜に仕込み、エタノール9Lを加え、適宜に撹拌しながら70℃で6時間抽出処理した。この後、不溶の残渣を濾別してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮、凍結乾燥及び粉砕処理に供して赤褐色のエキス末(試料M4)を得た。
【0038】
製造例5
マヌカ乾燥葉1Kgに水10Lを加え、121℃にて1時間加圧(2気圧)下で抽出処理した。この後、不溶の残渣を濾別してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮、凍結乾燥及び粉砕処理に供して赤褐色のエキス末(試料M5)を得た。
【0039】
製造例6
ニュージーランド産マヌカ(Leptospermum scoparium)の乾燥樹皮を粗粉砕した。マヌカ乾燥樹皮50gに水600mLを加え、121℃にて1時間加圧下で抽出処理した後、室温まで冷却し、濾過して濾液を分離した。この濾過残渣に再度水400mLを加えて同様に加熱し、冷却後、濾過してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮、凍結乾燥及び粉砕処理に供して赤褐色のエキス末(試料M6)を得た。
【0040】
製造例7
マヌカ乾燥樹皮50gに含水率50%の含水エタノール600mLを加え、121℃にて1時間加圧下で抽出処理した後、室温まで冷却し、濾過して濾液を分離した。この濾過残渣に再度含水率50%の含水エタノール400mLを加えて同様に加熱し、冷却後、濾過してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮、凍結乾燥及び粉砕処理に供して赤褐色のエキス末(試料M7)を得た。
【0041】
製造例8
マヌカ乾燥樹皮50gに含水率30%の含水エタノール600mLを加え、121℃にて1時間加圧下で抽出処理した後、室温まで冷却し、濾過して濾液を分離した。この濾過残渣に再度含水率30%の含水エタノール400mLを加えて同様に加熱し、冷却後、濾過してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮、凍結乾燥及び粉砕処理に供して赤褐色のエキス末(試料M8)を得た。
【0042】
製造例9
製造例6で調製したマヌカ乾燥樹皮50gにエタノール600mLを加え、121℃にて1時間加圧下で抽出処理した後、室温まで冷却し、濾過して濾液を分離した。この濾過残渣に再度エタノール400mLを加えて同様に加熱し、冷却後、濾過してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮、凍結乾燥及び粉砕処理に供して赤褐色のエキス末(試料M9)を得た。
【0043】
試験例
前記製造例で得た各試料のGLP-1分泌促進作用、DPP-4阻害作用、α-グルコシダーゼ阻害作用について以下に述べる方法で調べた。
【0044】
試験例1:マヌカの葉及び/又は樹皮由来抽出物によるGLP-1産生細胞のGLP-1分泌促進作用
GLP-1分泌促進作用を以下の方法で調べた。すなわち、ヒト結腸由来細胞(NCI-H716株)を10%FBS含有RPMI1640培地で前培養した。その後、Poly-D-Lysine 96 well plateに1×10個/wellになるよう播種し、10%FBS含有DMEM high glucose培地で2日間培養した。Hanks 緩衝液に置換し、Hanks緩衝液に溶解したサンプルを添加した。添加4時間後、培養上清を回収し遠心分離を行い、上清を用いてTotal GLP-1濃度を測定した。対照群のGLP-1分泌量を100としたときの相対値として、平均値±標準偏差(n=3)で表わした。又、比較試料として、GLP-1分泌促進作用が知られているアスコフィランHS(林兼産業株式会社、比較試料A)、クルクミン(関東化学株式会社、比較試料C)を用いた。
【0045】
この結果を表1に示す。同表のデータから、本発明に係るマヌカの葉及び/又は樹皮由来抽出物はGLP-1分泌を増加させる作用を有することを確認した。更にその効果は、エタノール抽出物よりも水の比率を高めた方が強かった。又、比較試料と比べて、試料M1のGLP-1分泌促進効果が最も強いことが示された。
【0046】
表1 ヒト腸細胞株NCI-H716からのGLP-1分泌量
【0047】
試験例2:マヌカの葉及び/又は樹皮由来抽出物によるGLP-1産生細胞のGLP-1分泌促進作用
GLP-1分泌促進作用を試験例1と同様の方法を用いて調べた。尚、Hanks緩衝液にマヌカの葉及び/又は樹皮由来抽出物を10、20、40、50、100、200μg/mLの濃度で溶解したサンプルを添加した。添加4時間後、培養上清を回収し遠心分離を行い、上清を用いて総GLP-1濃度を測定した。対照群の総GLP-1分泌量を100としたときの相対値として、平均値±標準偏差(n=3)で表わした。
【0048】
この結果を表2に示す。表2のデータから、本発明に係るマヌカの葉及び/又は樹皮由来抽出物は濃度依存的にGLP-1分泌を増加させる作用を有することが確認された。
【0049】
表2 ヒト腸細胞株NCI-H716からの総GLP-1分泌量
【0050】
試験例3:マヌカの葉及び/又は樹皮由来抽出物によるDPP-4活性阻害作用
DPP-4活性阻害作用を以下の方法で調べた。すなわち、各試料を0.25、0.5、1mg/mL(終濃度)となるようにDMSO水溶液で希釈し、各試料溶液10μL、DPP-4液40μLをアッセイプレートに添加した。次いで、基質溶液(H-Gly-Pro-AMC)50μLを加えて混合し、遮光し、室温で30分間インキュベートした後、励起波長:354nm、蛍光波長:442nmにおける蛍光強度を測定した。試料を添加しない対照の蛍光強度に対する検体の蛍光強度からDPP-4阻害率を算出した。DPP-4阻害率は次の計算式から求めた。
DPP-4阻害率(%)={1-(対照-試料)/(対照-ブランク)}×100
阻害率は、平均値±標準偏差(n=3)で表わした。又、比較試料として、DPP-4活性阻害作用が知られているP32/98(Focus Biomolecules製、比較試料P)を用いた。
【0051】
表3 DPP-4活性阻害率
【0052】
この結果を表3に示す。表3のデータから、本発明に係るマヌカの葉及び/又は樹皮由来抽出物は濃度依存的にDPP-4活性を阻害させる作用を有することが確認された。
【0053】
試験例4:マヌカの葉及び/又は樹皮由来抽出物によるα―グルコシダーゼ活性阻害作用
α―グルコシダーゼ活性阻害作用を以下の方法で調べた。すなわち、各試料を12.5、25、50μg/mL(終濃度)となるように20%DMSO水溶液で希釈し、各試料溶液50μL、脱イオン水200μL、4%マルトース溶液200μLを添加し、37℃で5分間インキュベートした。次いで、0.5Uα―グルコシダーゼ溶液(オリエンタル酵母工業株式会社製)50μLを加えて混合し、遮光下で37℃で30分間インキュベートした後、0.2Mトリス塩酸緩衝液500μLを加え反応を停止した。その溶液10μLをアッセイプレートに添加し、グルコースCIIーテストワコー溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)200μLを加え、37℃で5分間インキュベートした後、505nmの吸光度を測定した。試料を添加しない対照の吸光度に対する検体の吸光度からα―グルコシダーゼ活性阻害率を算出した。阻害率は、平均値±標準偏差(n=3)で表わした。又、比較試料として、α―グルコシダーゼ活性阻害作用が知られているサラシアオブロンガ・エキスB(株式会社タカマ製、比較試料S)を用いた。
【0054】
表4 α―グルコシダーゼ活性阻害率

【0055】
この結果を表4に示す。表4のデータから、本発明に係るマヌカの葉及び/又は樹皮由来抽出物は濃度依存的にα―グルコシダーゼ活性を阻害させる作用を有することが確認された。
【0056】
試験例5:マヌカの葉由来抽出物によるラットのGLP-1分泌促進作用
GLP-1分泌促進作用がどのように生じるか調べるため、ラットを用いて検討を行った。すなわち、6週齢SD系雄ラット(日本エスエルシー株式会社)に共通飼料(ラボMRストック、日本農産工業株式会社)を自由摂取させ、1週間予備飼育した。その後、門脈カニュレーション手術を行い、術後2日後に、対照群、100 mg/kg、300 mg/kgマヌカリーフ群に群分け(n=6)を行った。各サンプルを経口投与し、15分後に20%グルコース液(10 mL/kg)を腹腔内投与した。サンプル投与前(0分)、グルコース投与15、30、60分後に門脈から採血を行った。遠心分離を行い、血漿を用いて総GLP-1濃度及び活性型GLP-1濃度を測定した。結果は平均値±標準偏差(n=3)で表わした。
【0057】
この結果を表5、6に示す。表5、6の結果から、本発明に係るマヌカの葉由来抽出物はラットの血漿GLP-1濃度を顕著に高めることが示された。このことから、本発明に係るマヌカの葉由来抽出物は動物においてもGLP-1分泌を高めることが明らかとなった。
【0058】
表5 ラット血漿における総GLP-1濃度及びAUC
【0059】
表6 ラット血漿における活性型GLP-1濃度及びAUC
【0060】
試験例6:マヌカの葉由来抽出物によるヒトの血糖値上昇抑制作用
試験に参加することに同意が得られた健常男女10名(22歳~55歳、平均年齢:36.5歳)を対象に、単回摂取による試験を実施した。被験者は測定の前日22時以降に水以外の飲食を控え、測定日の朝(8時30分)に空腹時血糖値を測定した。試験1回目は水のみを摂取し(プラセボ群)、試験2回目はゼラチン被覆ハードカプセル製剤に充填した試料M1 300 mgを水とともに摂取した。水と試料を摂取した5~10分後に、市販包装米飯「サトウのごはん」(佐藤食品工業社製)200 gを少量の水とともに摂取させ、米飯摂取30分、60分、90分、120分後に血糖値を測定し、マヌカの葉由来抽出物の食後血糖値に及ぼす影響を評価した。なお、血糖値の測定は血糖自己測定器(ロシュ・ダイアグノスティックス社製、「アキュチェックアビバ」(登録商標))を用いた。評価はマヌカの葉由来抽出物の摂取時又は非摂取時の血糖値対時間の変化図を描いて、この変化図における血中濃度曲線下面積(AUC)を算出した。
【0061】
この結果を表7に示す。表7のデータから、本発明に係るマヌカの葉由来抽出物は、ヒトにおいて食後血糖値の上昇を抑制することが明らかとなった。なお、前記試験においては、食後30分後の血糖値(最高血糖値)の差がコントロール群と比べて最も顕著に低い値を示した(プラセボ群:135.3±16.2 mg/dL、M1群:120.7±13.9 mg/dL)。
【0062】
表7 血糖値AUC(ヒト)
【0063】
試作例1
本発明の剤としての試料M1~10をカプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が200mgのゼラチン被覆ハードカプセル製剤を試作した。これらのカプセル製剤は経口摂取が可能な栄養補助食品、医薬品等として使用することができる。
【0064】
試作例2
本発明の剤として試料M1~10:150部(質量基準。以下同様)、ミツロウ:40部及び月見草油(英国エファモール社製):80部を約50℃に加熱混合して均質にした後、カプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が200mgのゼラチン被覆ソフトカプセル製剤を試作した。これらのカプセル製剤は経口摂取可能な栄養補助食品として使用することができる。
【0065】
試作例3
本発明の剤として試料M1~10:30部、緑茶抽出物(ビーエイチエヌ株式会社製):0.5部、コーンスターチ(日本コーンスターチ株式会社製):105部、リン酸三カルシウム(米山化学工業株式会社製):50部及びリボフラビン(DSMニュートリション・ジャパン株式会社製):7部を混合機に仕込み、10分間攪拌混合した。この混合物を直打式打錠機に供して直径7mm、高さ4mm、質量150mg/個の素錠を作成し、ついでコーティング機でシェラック被膜を形成させて錠剤形状の食品を試作した。
【0066】
試作例4
市販の栄養ドリンク100mLに本発明の剤として試料M1~10:200mg加えて十分に混合し飲料を試作した。これは冷蔵庫で1年間保存しても外観及び風味に異状及び違和感は認められなかった。尚、本品は、GLP-1分泌促進、血糖降下のために使用することができる。
【0067】
試作例5
本発明の剤として試料M1~10を1 g、バリンを200 mg、ロイシンを400 mg、イソロイシンを200 mg、アルギニンを300 mgとし、これらを混合、篩過した粉末を包装充填し、栄養補助食品を試作した。これは常温で1年間保存しても外観及び風味に異状及び違和感は認められなかった。尚、本品は、GLP-1分泌促進、血糖降下のために使用することができる。
【0068】
試作例6
即席麺の製造工程において、公知の原料に本発明の剤として試料M1~10を200mg加えて即席麺を試作した。これは常温で6ヵ月間保存しても外観及び風味に異状及び違和感は認められなかった。尚、本品は、GLP-1分泌促進、DPP-4阻害、α-グルコシダーゼ阻害及び血糖降下のために使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の、フトモモ科ギョリュウバイ属に属するマヌカの葉及び/又は樹皮の抽出物を有効成分として含有してなるGLP-1分泌促進剤、DPP-4阻害剤及びα-グルコシダーゼ阻害剤は、これを経口摂取することによりGLP-1分泌を促進し、DPP-4活性を阻害し、α-グルコシダーゼ活性を阻害する作用を有するため、高血糖に起因する症状を改善するための飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等に有効利用することができる。