(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120876
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】まばらに配置されたレーダターゲットシミュレータのアレイを用いる、空間的に分散した物体のエミュレーション
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20240829BHJP
H01Q 3/24 20060101ALI20240829BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G01S7/40 178
H01Q3/24
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024023637
(22)【出願日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】18/113,848
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Blu-ray
(71)【出願人】
【識別番号】514046574
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・ホルツィンガー
(72)【発明者】
【氏名】トム・ヴァンデプラス
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・エス・リー
(72)【発明者】
【氏名】カラム・ヌジェイム
【テーマコード(参考)】
5J021
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA08
5J021AA09
5J021AA11
5J021FA31
5J021HA04
5J021JA08
5J021JA09
5J021JA10
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AD05
5J070AD08
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自動車用レーダを試験する運転条件のエミュレーションシステムの費用を抑制する。
【解決手段】レーダの被試験デバイス(DUT)によって送信されたレーダ信号を受信するシステムは、行及び列のアレイで配置される複数のアンテナと、複数のレーダターゲットシミュレータ(RTS)であって、複数のRTSのうちの1つ以上は、複数のアンテナの行又は列のそれぞれに選択的に接続される、複数のRTSとを備える。複数のアンテナは、列又は行に接続された1つ以上のRTSからの信号を選択的に受信し、信号をDUTに送信するようになっている。当該システムは、複数のアンテナの列のそれぞれ又は行のそれぞれの中の選択されたアンテナを選択的にスイッチングして、時間分割方式で、複数のRTSのうちの選択されたそれぞれのRTSを、複数のアンテナのうちの選択されたアクティブアンテナに接続するようになっているスイッチングマトリクスを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダの被試験デバイス(DUT)によって送信されたレーダ信号を受信し、前記レーダ信号に応答して、エミュレートされたターゲットから反射したエミュレートされたエコー信号を前記レーダのDUTに送信するシステムであって、
行及び列のアレイで配置される複数のアンテナと、
複数のレーダターゲットシミュレータ(RTS)であって、前記複数のRTSのうちの1つ以上は、前記複数のアンテナの行又は列のそれぞれに選択的に接続され、前記複数のアンテナは、前記列又は前記行に接続された前記1つ以上のRTSからの信号を選択的に受信し、前記信号を前記DUTに送信するようになっているものである、複数のRTSと、
前記複数のアンテナの前記列のそれぞれ又は前記行のそれぞれの中の選択されたアンテナを選択的にスイッチングして、時間分割方式で、前記複数のRTSのうちの選択されたそれぞれのRTSを、前記複数のアンテナのうちの選択されたアクティブアンテナに接続するようになっているスイッチングマトリクスと
を備えるシステム。
【請求項2】
行又は列の前記複数のアンテナのうちの2つ以上は、一度に前記RTSのうちの1つのみにアクティブに接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数のアンテナのうちの2つ以上は、一度に前記RTSのうちの2つ以上にアクティブに接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数のRTSのそれぞれは、前記複数のアンテナのそれぞれに接続するようになっていない、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
行又は列にアクティブに接続されるRTSの数は、前記列又は前記行内の前記複数のアンテナの数よりも少ない、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記RTSのそれぞれは、前記アレイの全ての列ではなく前記アレイの単一の列、又は前記アレイの全ての行ではなく前記アレイの単一の行から信号を送信するようになっている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のRTSのそれぞれは、1つの時間間隔内で、前記複数のアンテナのうちの選択された1つ以上に信号を送信し、別の時間間隔内で、前記複数のアンテナのうちの別の選択された1つ以上に信号を送信するようになっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記信号を送信するように前記複数のRTSをアクティブ化し、前記スイッチングマトリクスに、前記複数のRTSのうちの前記選択されたRTSを前記複数のアンテナのうちの選択されたアンテナに選択的に接続させるようになっているコントローラを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、さらに、前記アクティブ化されたRTSの電力レベルを、前記DUTへの様々な程度の反射率をエミュレートするように設定するようになっている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記アレイの選択された数のアンテナは、前記スイッチングマトリクスによって選択され、前記複数のRTSのうちの選択されたものを接続して、経時的に前記選択された数のアンテナへのアクティブ接続を変更することによって、ターゲットをエミュレートする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
レーダの被試験デバイス(DUT)によって送信されたレーダ信号を受信し、前記レーダ信号に応答して、エミュレートされたターゲットから反射したエミュレートされたエコー信号を前記レーダのDUTに送信するシステムにおいて使用される命令を記憶する有形の非一時的コンピュータ可読媒体であって、
前記システムは、
行及び列のアレイで配置される複数のアンテナと、
複数のレーダターゲットシミュレータ(RTS)であって、前記複数のRTSのうちの1つ以上は、前記複数のアンテナの行又は列のそれぞれに選択的に接続され、前記複数のアンテナは、前記列又は前記行に接続された前記1つ以上のRTSからの信号を選択的に受信し、前記信号を前記DUTに送信するようになっているものである、複数のRTSと、
スイッチングマトリクスと
を備え、
前記命令は、前記スイッチングマトリクスに、
前記複数のアンテナの前記列のそれぞれ又は前記行のそれぞれの中の選択されたアンテナを選択的にスイッチングして、時間分割方式で、前記複数のRTSのうちの選択されたそれぞれのRTSを、前記複数のアンテナのうちの選択されたアンテナに接続させるように、前記プロセッサに行わせるものである、有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記命令は、さらに、行又は列の前記複数のアンテナのうちの2つ以上を、一度に前記RTSのうちの1つのみにアクティブに接続させる、請求項11に記載の有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記命令は、さらに、行又は列の前記複数のアンテナのうちの2つ以上を、一度に前記RTSのうちの2つ以上にアクティブに接続させる、請求項11に記載の有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記命令は、前記複数のRTSのそれぞれを、前記複数のアンテナのそれぞれに接続させない、請求項10に記載の有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
行又は列にアクティブに接続されるRTSの数は、前記列又は前記行内の前記複数のアンテナの数よりも少ない、請求項10に記載の有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
先進運転支援システム(ADAS:Advanced driver-assistance system)及び車両用の自律運転システム(autonomous driving system)は、例えば、ミリメートル波(millimeter wave)レーダ信号を含む検出及びレンジング(ranging:測距)電磁信号を使用する検出及び測距システムに依存している。レーダ信号は、前方衝突及び後方衝突を警告するために、例えば適応型クルーズコントロール(adaptive cruise control)及び自律駐車(autonomous parking)を実施するために、そして究極的には、街路及び幹線道路上で自律運転を実行するために使用される。ADASは、低コスト、及び夜間又は厳しい天候条件(例えば、霧、降雨、降雪、粉塵)において動作する能力のおかげで有望である。
【0002】
ミリメートル波は、30ギガヘルツ(GHz)~300ギガヘルツの周波数スペクトルにおける周波数での振動からもたらされる。ミリメートル波(mm波、或いは、ミリ波)の自動車用レーダは、既存の先進運転支援システム(ADAS)のための且つ計画された自律運転システムのための重要な技術である。ミリメートル波自動車用レーダの採用により、比較的長い波長(低い周波数)のシステムよりも優れた角度分解能が提供されることに加えて、ミリメートル波自動車用レーダを今では大量に配備することができる程度までコストが削減された。その結果、ミリメートル波自動車用レーダは、今では、先進運転支援システムにおいて長距離、中距離及び短距離の環境検知に広く使用されている。さらに、ミリメートル波自動車用レーダは、現時点で展開されている自律運転システムにおいて広く使用される可能性が高い。
【0003】
自動車用レーダが配備されうる実際の運転環境は大きく変動する可能性があり、多くのそのような運転環境は、複雑である場合がある。例えば、実際の運転環境は、多数の物体を含む場合があり、実際の運転環境において遭遇する物体の中には、エコー信号に影響を及ぼす複雑な反射及び回折特性を有するものもある。エコー信号を誤って検知及び/又は解釈する(つまり、検知する又は解釈するあるいはそれらの両方をする)直接の結果として、誤警告若しくは不適切な反応がトリガされるか、又はトリガされるべき警告若しくは反応がトリガされない場合があり、これにより、ひいては事故に至る可能性がある。
【0004】
したがって、自動車製造業者及び自動車用レーダ製造業者は、自動車用レーダシステムに最適に正確な性能を提供するように運転状態を電子的にエミュレートすることに意欲的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車用レーダシステムを試験する運転条件のエミュレーションにおいて或る特定の改善が実現されたが、より高価なシステムと比較して、少なくとも同等の性能を提供しながらも費用を抑えたシステムを提供する必要がある。
【0006】
したがって、必要なものは、少なくとも、上記で説明された既知のレーダエミュレータの欠点を克服する、レーダシステムが遭遇するターゲットをエミュレートするシステム及び方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的な実施形態は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明から最も深く理解される。様々な特徴は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを強調したい。実際には、検討を明確にするために、寸法が任意に拡大又は縮小される場合がある。適用可能で、実用的な場合にはいつでも、同じ参照番号が同じ要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】代表的な実施形態による、レーダの被試験デバイス(DUT:device under test)のエコー信号をエミュレートするシステムを示す簡略ブロック図である。
【
図2】代表的な実施形態による、レーダのDUTのエコー信号をエミュレートするシステムのアンテナアレイのアンテナの列と、複数のレーダターゲットシミュレータ(RTS:radar target simulator)と、アンテナにRTSを選択的に接続するようになっているスイッチングマトリクス(switching matrix)とを示す簡略ブロック図である。
【
図3】代表的な実施形態による、レーダのDUTのエコー信号をエミュレートするシステムのアンテナアレイと、複数のレーダターゲットシミュレータ(RTS)と、アンテナにRTSを選択的に接続するようになっているスイッチングマトリクスとの斜視図である。
【
図4】代表的な実施形態による、レーダのDUTのエコー信号をエミュレートするシステムのRF送受信機モジュールと、RTSベースバンドモジュールと、RF送受信機モジュールにRTSベースバンドモジュールを選択的に接続するようになっているベースバンドスイッチングマトリクスとの簡略斜視図である。
【
図5】代表的な実施形態による、エミュレートされたターゲット対時間のシミュレーションを示す図である。
【
図6】代表的な実施形態による、DUTから距離を置いた2つのターゲット間の物体のエミュレーションのシミュレーションを示す図である。
【
図7】代表的な実施形態による、自動車用レーダのDUTのシーンをエミュレートする方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、説明のためであり、限定はしないが、本教示による一実施形態を十分に理解してもらうために、具体的な詳細を開示する代表的な実施形態が記述される。代表的な実施形態の説明を不明瞭にするのを避けるために、既知のシステム、デバイス、材料、動作方法及び製造方法の説明は省略される場合がある。それにもかかわらず、当業者の理解の範囲内にあるシステム、デバイス、材料及び方法は、本教示の範囲内にあり、代表的な実施形態に従って使用される場合がある。本明細書において使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものでないことは理解されたい。定義される用語は、定義された用語の科学技術的な意味に加えて、本教示の技術分野において一般に理解され、受け入れられるような意味を有する。
【0010】
様々な要素又は構成要素を説明するために、本明細書において第1の、第2の、第3の等の用語が使用される場合があるが、これらの要素又は構成要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことは理解されたい。これらの用語は、或る要素又は構成要素を別の要素又は構成要素から区別するためにのみ使用される。したがって、以下に論じられる第1の要素又は構成要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素又は構成要素と呼ぶことができる。
【0011】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「一つの(a、an)」、及び「その(the)」又は「前記の(the)」という単数形の用語は、文脈上、他の意味として明確に指示される場合を除いて、単数形及び複数形の両方を含むことを意図している。さらに、「備える」又は「含む」(comprises及び/又はcomprising(つまり、comprises又はcomprisingあるいはそれらの両方))という用語及び/又は類似の用語は、本明細書において使用されるときに、言及される特徴、要素及び/又は構成要素(つまり、特徴、要素、又は構成要素、あるいはそれらの全て)の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、要素、構成要素及び/又はそのグループの存在又は追加を除外しない。本明細書において使用される場合、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連して列挙される項目のうちの1つ以上の項目のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0012】
別段の言及がない限り、或る要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「接続される(connected to)」、「結合される(coupled to)」又は「隣接する(adjacent to)」と言われるとき、その要素又は構成要素を当該別の要素又は構成要素に直接接続又は結合することができるか、又は介在する要素又は構成要素が存在する場合があることは理解されよう。すなわち、これらの用語及び類似の用語は、2つの要素又は構成要素を接続するために、1つ以上の中間にある要素又は構成要素が利用される場合がある事例を含む。しかしながら、或る要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「直接接続される(directly connected)」と言われるとき、これは、2つの要素又は構成要素が、任意の中間にある又は介在する要素又は構成要素を用いることなく、互いに接続される事例のみを含む。
【0013】
本開示は、それゆえ、その様々な態様、実施形態及び/又は具体的な特徴(つまり、態様、実施形態、又は具体的な特徴、あるいはそれらの全て)若しくはサブ構成要素のうちの1つ以上を通して、以下に具体的に言及されるような利点のうちの1つ以上を明らかにすることを意図している。説明のためであり、限定はしないが、本教示による一実施形態を十分に理解してもらうために、具体的な詳細を開示する例示的な実施形態が記述される。しかしながら、本明細書において開示される具体的な詳細から逸脱するが、本開示と矛盾しない他の実施形態も依然として、添付の特許請求の範囲内にある。さらに、例示的な実施形態の説明を不明瞭にしないように、既知の装置及び方法の説明は省略される場合がある。そのような方法及び装置は、本開示の範囲内にある。
【0014】
包括的には、本教示は、レイトレーシング技法を使用して、どのようにレーダが或る特定のシーンを知覚するかを判断するシーンシミュレーションに関する。この情報は、アクティブアンテナ(active antenna)からマッピングされた戻りエコー(return echo)を点が表す点群(point cloud)として表される。各点は、散乱中心であり、ミニチュアの点ターゲットとしてもみなされうる。これらの点に付随する情報は、(例えば、デカルト座標x,y,zを有する)空間内の点の位置であり、また、エミュレートされる要素は、異なる反射表面によって生じる反射強度差を考慮する強度値と、径方向速度を考慮するドップラシフトとを有する。本教示のシーンエミュレータにおいて、アンテナは、複数の列及び行のアレイで配置される。或る特定の既知のレーダ試験システムとは異なり、1つのレーダターゲットシミュレータ(RTS)と関連付けられる各アンテナではなく、或る瞬間にアクティブなアンテナのみ(より十分に後述する)が、シーン(scene:状況)をエミュレートするために使用される。そのため、RTSは、エミュレートされている点の距離、径方向速度、及び強度をエミュレートして、DUTについてターゲットの要素及びターゲット自体のより現実的なエミュレーションを提供する。さらに、より十分に後述するように、より遠方のターゲットの角度位置は、RTSによってアクティブ化されたアンテナに基づいて決定される。
【0015】
アクティブアンテナは、シーンをエミュレートするために使用されるピクセル(pixel)である。結果として、より十分に後述するように、より少数のRTSを使用してシーンをエミュレートする様々な代表的な実施形態の能力により、システムの全体的な複雑さ及びレーダを試験する費用が削減される。より十分に後述するように、各アンテナは、1つ以上のRTSと関連付けられる或る特定のセグメントと関連付けられ、シーンエミュレータがカバーしている視野は、そのようなセグメント(アクティブ化することができるアンテナの行及び列)に分割される。その結果、RTSの数は、シーンエミュレータがカバーするアクティブ化用にセグメント内で利用可能なアンテナの数よりも少ない。
【0016】
エミュレートされているシーン内の各点の位置情報から、この点をエミュレートするためにどのアンテナをアクティブ化する必要があるかが判断される。より十分に後述するように、プロセッサは、シミュレートされる各点の位置を決定し、各決定されたアクティブアンテナ/RTSのペアを割り当てて所望の点をエミュレートするコンピュータ実行可能命令を実行する。さらに、プロセッサは、選択されたRTSに、エミュレートされている特定の点の強度及び他の属性を提供するために、メモリに記憶された命令を実行する。フロントエンド(アンテナアレイ)とバックエンド(RTSアレイ)との間で、スイッチングマトリクス(switching matrix)が設けられ、アンテナアレイの所望のアンテナを特定のRTSと接続して、特定の瞬間におけるシーンのエミュレートされた要素をもたらす。
【0017】
本教示の1つの態様によれば、レーダの被試験デバイス(DUT:device under test)によって送信されたレーダ信号を受信するシステムは、行及び列のアレイで配置される複数のアンテナと、複数のレーダターゲットシミュレータ(RTS)であって、複数のRTSのうちの1つ以上は、複数のアンテナの行又は列のそれぞれに選択的に接続され、複数のアンテナは、列又は行に接続された1つ以上のRTSからの信号を選択的に受信し、信号をDUTに送信するようになっている、複数のRTSと、複数のアンテナの列のそれぞれ又は行のそれぞれの中の選択されたアンテナを選択的にスイッチングして、時間分割方式で、複数のRTSのうちの選択されたそれぞれのRTSを、複数のアンテナのうちの選択されたアクティブアンテナに接続するようになっているスイッチングマトリクスとを備える。
【0018】
本教示の別の態様によれば、有形の非一時的コンピュータ可読媒体は、レーダの被試験デバイス(DUT)によって送信されたレーダ信号を受信し、レーダ信号に応答して、エミュレートされたターゲットから反射したエミュレートされたエコー信号をレーダのDUTに送信するシステムにおいて使用される命令を記憶する。システムは、行及び列のアレイで配置される複数のアンテナと、複数のレーダターゲットシミュレータ(RTS)であって、複数のRTSのうちの1つ以上は、複数のアンテナの行又は列のそれぞれに選択的に接続される、複数のRTSとを備える。複数のアンテナは、列又は行に接続された1つ以上のRTSからの信号を選択的に受信し、信号をDUTに送信するようになっている。システムは、スイッチングマトリクスも備える。命令は、スイッチングマトリクスに、時間分割方式で、複数のアンテナの列のそれぞれ又は行のそれぞれの中の選択されたアンテナを選択的にスイッチングして、複数のRTSのうちの選択されたそれぞれのRTSを、複数のアンテナのうちの選択されたアンテナに接続させるように、プロセッサに行わせる。
【0019】
図1は、代表的な実施形態による、レーダのDUTのエコー信号をエミュレートするシステム100を示す簡略ブロック図である。本開示の利益を享受した当業者であれば理解するように、1つのありそうな(likely)車両用レーダは、現行の及び来たるべき自動車応用において様々な能力で使用される自動車用レーダである。しかしながら、ここで説明される車両用レーダを試験するシステム100は、自動車用レーダシステムに限定されず、バス、バイク、原動機付き自転車(motorized bicycle)(例えば、スクータ)、及び車両用レーダシステムを利用することができる他の車両を含む、他のタイプの車両に適用することができることが強調される。
【0020】
代表的な実施形態によれば、システム100は、レーダの被試験デバイス(DUT)102を試験するように配置される。システム100は、複数のアンテナを行及び列(
図1に示さず)で含むアンテナアレイ104を備える。
【0021】
また、システム100は、複数のRTS106と、複数のRTSとアンテナアレイ104との間に配置されるスイッチマトリクス(switch matrix)108とを備える。システム100は、メモリ116とプロセッサ118とを備えるコントローラ114も備える。
【0022】
スイッチマトリクス108は、例示的には、複数のRTSのうちの選択されたRTSへのアンテナアレイ104内の選択されたアンテナの選択的な接続を経時的にもたらす複数のスイッチを備えるハードウェアマトリクスである。より十分に後述するように、メモリ116は、プロセッサ118によって実行されると、本教示によるターゲットのエミュレーションを実施するためにアンテナ/RTSの組み合わせの接続及び接続解除をプロセッサに行わせる実行可能命令(コード)を記憶する。さらに、後述するように、エミュレートされている物体の位置に基づく点群は、メモリ116に記憶することができる。本説明を続けるうちにより明らかとなるように、これらの位置は、特定の瞬間のアンテナアレイのアンテナに整合されて、その瞬間の物体をエミュレートする。
【0023】
コントローラ114は、処理ユニットとして実施することができる。様々な実施形態において、コントローラ114の処理機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ハードワイヤド(hard-wired)論理回路、又はそれらの組み合わせのうちの任意の組み合わせを使用した、1つ以上のコンピュータプロセッサ(例えば、プロセッサ118)、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field-programmable gate array)、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、又はそれらの組み合わせを使用して実施することができる。コントローラ114は、本明細書に記載の様々な機能の実行を可能にするコンピュータ実行可能コード(例えば、ソフトウェア、ソフトウェアモジュール)を記憶する自身の処理メモリ(例えば、メモリ116)を備えることができる。例えば、メモリ116は、
図3及び
図4の代表的な実施形態に関連して記載するターゲットをエミュレートする方法の様々なステップを含む、本明細書に記載の方法のいくつかの又は全ての態様及び詳細を実行するためにプロセッサによって実行可能なソフトウェア命令/コンピュータ実行可能コードを記憶することができる。すなわち、命令/コンピュータ実行可能コードの実行により、概して、プロセッサ118及び/又はコントローラ114(つまり、プロセッサ118又はコントローラ114あるいはそれらの両方)は、レーダのDUT102によって送信されたレーダ信号に応答して、エミュレートされたレーダターゲットから反射したエコー信号をエミュレートする。メモリ116は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、電気的プログラム可能リードオンリメモリ(EPROM:electrically programmable read-only memory)、電気的消去可能及びプログラム可能リードオンリメモリ(EEPROM:electrically erasable and programmable read only memory)、レジスタ、ハードディスク、取り外し可能ディスク、テープ、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM:compact disk read only memory)、デジタルバーサタイルディスク(DVD:digital versatile disk)、レジスタ、ハードディスク、取り外し可能ディスク、テープ、フロッピディスク、blu-rayディスク、若しくはユニバーサルシリアルバス(USB:universal serial bus)ドライバ、又は、(例えば、一時的伝播信号と比較して)有形の非一時的コンピュータ可読記憶媒体である、当該技術分野において既知の他の任意の形態の記憶媒体とすることができる。メモリは、本教示の範囲から逸脱することなく、揮発性又は不揮発性とすることができ、セキュアであり及び/又は暗号化されたもの(つまり、セキュアである又は暗号化されたもの、あるいはそれらの両方のもの)とすることもできるし、非セキュアであり及び/又は暗号化されていないもの(つまり、非セキュアである又は暗号化されていないもの、あるいはそれらの両方のもの)とすることもできる。
【0024】
システム100は、コンピュータも備える。コンピュータは、例示的に、本明細書において説明されるコントローラ114を備える。本明細書において説明されるコントローラ114は、プロセッサ118と命令を記憶するメモリ116との組み合わせを含むことができる。プロセッサ118は、本明細書において記載されるプロセスを実施するために命令を実行する。このために、代表的な実施形態によれば、コンピュータは、レーダのDUT102の機能を制御することに加えて、再照射器(re-illuminator)101を制御するようになっている。より十分に以下で説明されるように、メモリ116に記憶された命令は、複数のRTS106から選択されたものの信号強度(及びそれゆえ、パワー(power:電力))を、コンピュータから複数のRTS106に対する駆動信号を調整することによって変更するように、プロセッサ118によって実行され、本教示により、駆動信号が弱いほど、比較的弱い応答エミュレーション信号が提供され、駆動信号が強いほど、比較的強い応答エミュレーション信号が提供される。しかしながら、とりわけ、或る特定の実施形態において、RTS106のエミュレーション強度(信号パワー(signal power:信号の電力))は、VGA(variable gain amprilier:可変利得増幅器)(図示せず)によって調整される。この手法は、(後述されるように)搬送波周波数を強化し、望ましくないゴースト信号をもたらす、I-Qミキサへの駆動信号を低下させることにより、所望の刺激信号の大きさを低下させるために好ましい。
【0025】
コントローラ114は、コンピュータ(図示せず)又は1つ以上のコンピューティングデバイスの別のアセンブリ等のワークステーション、ディスプレイ/モニタ、及びスタンドアロンコンピューティングシステムの形態の1つ以上の入力デバイス(例えば、キーボード、ジョイスティック及びマウス)、サーバシステムのクライアントコンピュータ、デスクトップ又はタブレット内に収容又はリンクさせることができる。「コントローラ(controller)」という用語は、本開示の当該技術分野において理解されるように、及び本開示において例示的に説明されるように、本開示において説明されるような様々な原理のアプリケーションを制御する特定用途向けメインボード又は特定用途向け集積回路の全ての構造的構成を広く包含する。コントローラの構造的構成は、プロセッサ(複数の場合もある)、コンピュータ使用可能/コンピュータ可読記憶媒体(複数の場合もある)、オペレーティングシステム、アプリケーションモジュール(複数の場合もある)、周辺デバイスコントローラ(複数の場合もある)、スロット(複数の場合もある)、及びポート(複数の場合もある)を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
さらに、コンピュータは、合わせてネットワーク接続された構成要素として示すことができるが、2つのこうした構成要素は、単一のシステムに統合することができる。例えば、コンピュータは、ディスプレイ(図示せず)及び/又はシステム100(つまり、ディスプレイ又はシステム100あるいはそれらの両方)と統合することができる。すなわち、いくつかの実施形態において、コンピュータに起因する機能は、システム100によって実施(例えば、実行)することができる。他方、コンピュータのネットワーク接続される構成要素は、異なる部屋又は異なる建物に分散させること等によって空間的に分散させることもでき、この場合、ネットワーク接続される構成要素は、データ接続を介して接続することができる。また別の実施形態において、コンピュータの構成要素のうちの1つ以上は、データ接続を介して他の構成要素に接続されず、代わりに、メモリスティック又は他の形式のメモリ等によって手動で入力及び/又は出力(つまり、入力又は出力あるいはそれらの両方)が与えられる。更に別の実施形態において、本明細書において説明される機能は、コンピュータの要素の機能に基づきながらも、システム100の外部で実行することができる。
【0027】
複数のRTS106は、或る数の既知のRTSのうちの1つ以上に基づくものと考えられ、個々のRTSの構成要素としての送信アンテナ(Tx)及び受信アンテナ(Rx)は省かれている。すなわち、上記で暗示したように、多くの既知のRTSは、エミュレートされたターゲット上の点として、又はエミュレートされた要素ターゲット自体として機能するようになっている。これには、Rxアンテナを使用してレーダのDUTからの信号を受信し、信号を処理した後に戻り信号をレーダのDUTに送信して、エミュレートされているターゲットの特定の点又は要素の特性をエミュレートすることが必要となる。したがって、各個々のRTSはピクセルとして機能する。上述したように、また、より十分に後述するように、RTSは、アンテナアレイ104の列又は行内の1つ以上のアンテナに選択的に接続され、RTSとペアリングされたアンテナによって送信された各信号は、特定の瞬間(例えば、1ms)におけるエミュレートされたターゲットのピクセルを表す。スイッチマトリクスは、その後、列又は行内のアクティブアンテナのうちの1つ以上を接続解除し、その列又は行内の別の1つ(又はそれ以上)のアクティブアンテナに係合する。複数のRTSを含むRTSの態様の更なる詳細は、本願と同一出願人が所有する米国特許第11,520,008号、米国特許第11,543,489号、米国特許出願公開第20220260674号、米国特許出願公開第20220171022号、米国特許出願公開第20220018934号、米国特許出願公開第20210406562号、及び国際特許出願公開第2022164434号に見出すことができる。これらの米国特許、米国特許出願公開及び国際特許出願公開の開示全体は、引用することにより具体的に本明細書の一部をなすものとする。
【0028】
システム100の様々な構成要素は、以下代表的な実施形態に関連してより詳細に説明されるが、ここでは、システム100の機能の簡単な説明が提示される。
図3~
図6に関連してより十分に後述するように、複数のRTS106は、時間分割方式で、アレイ内のアンテナに選択的に接続され、ターゲットをエミュレートする点群を経時的に提供し、隣接するアンテナを切り替えて遠方のターゲットをエミュレートする。スイッチマトリクス108によって提供される選択的な接続により、アンテナアレイ104の複数のアンテナの列又は行への1つ以上のRTSの選択的な接続及び接続解除が可能になる。なお、後述する或る特定の例は、時間分割方式でのRTS106の選択的な接続を例示するために提供されているが、これらは、どのようにこれを実施することができるかの例にすぎない。より一般的には、メモリ116に記憶された命令(コード)をプロセッサ118によって実行することにより、スイッチマトリクス108は、RTS106をアンテナアレイ104内のアンテナに選択的に接続し、ここで、スイッチ接続の変更は経時的に行われるため、時間分割方式で行われる。
【0029】
RTSに接続されたときのアンテナアレイ104のアンテナは、アクティブアンテナと称することができる。本説明を続けるうちにより明らかとなるように、アンテナアレイ104の列又は行のアンテナの選択的なオンオフにより、典型的には数百のチャープ(chirp)を含むとともに約20msの長さを有するフレーム(完全なコヒーレント処理間隔(CPI:coherent processing interval)と称される場合もある)にわたる点群の作成が可能になる。このために、代表的な実施形態によれば、アクティブアンテナは、フレームの継続時間よりも遥かに速い速度で選択的に係合される。これにより、比較的短く(例えば、1ms)、かつ、エミュレートされたターゲットが、仮に移動するにしても感知できるほどには移動しない或る数の時間スロットを使用して、選択されたターゲット(例えば、車の側面輪郭)のエミュレーションが可能になる。したがって、既知のレーダエミュレーションシステムにおいて行われるように、エミュレートされたターゲットの要素(ピクセル)ごとに単一のRTSを有するのではなく、本説明の代表的な実施形態は、アンテナアレイ104の列又は行内の、それぞれの1つ以上のRTSに接続されたアンテナに選択的に接続及び接続解除されるRTSを使用して、アンテナの選択的なアクティブ化及びアクティブ化解除によってターゲットを経時的にエミュレートする。したがって、経時的に、アンテナとRTSとの組み合わせは、点群の生成によってターゲットのエミュレーションをもたらすように変更される。加えて、より遠方のターゲットを、代表的な実施形態に従って、特定のデューティサイクルにて行又は列内の選択されたアンテナの選択的なアクティブ化及びアクティブ化解除を行って選択されたアンテナ間の点をエミュレートすることによってより良好な角分解能でエミュレートすることができる。単なる例として、
図6に関連してより十分に後述するように、アンテナアレイ104の行内の2つの隣り合うアンテナは、行内の2つの隣り合うアンテナ間に位置するターゲットをエミュレートするために、経時的に交替方式でアクティブ化及びアクティブ化解除することができる。
【0030】
動作時、
図1を参照すると、レーダのDUT102は、RTS106のアレイに入射する信号(例示的に、ミリメートル波信号)を放出する。本明細書においてより十分に説明されるように、レーダのDUT102からの信号は、各RTS106とレーダのDUT102との間の方位角(azimuth)(
図1の座標系において±x方向)と仰角(elevation)(
図1の座標系において±y方向)との両方において、距離をエミュレートするようになっているタイミング及びパワーレベルで、選択的に反射される。とりわけ、受信アンテナ(図示せず)のうちの各1つにおけるそれぞれの集束点(focal point)(代替的に、焦点(foci))は、システム100によってエミュレートされるターゲットを表す。
【0031】
レーダのDUT102から信号を受信するRTS106からの再照射された信号は、RTS106によって選択的に変更され、レーダのDUT102に戻るように送信される。より十分に以下で説明されるように、再照射器101の特定のRTS106からの再照射された信号は、ターゲットからのエミュレートされた反射信号としてレーダのDUT102において受信される。コントローラ114は、レーダのDUT102の精度を更に分析するために、レーダのDUT102から信号を受信する。代表的な実施形態に関連して説明されるRTS106の態様及び詳細は、上記で説明されたRTS106及び遅延電子回路と共通しているものとすることができるが、それらは繰り返されない場合がある。さらに、(MRD、CMT及びピクセルと称される場合がある)RTS106の様々な態様及び詳細は、2021年1月25日に出願された、本願と同一出願人が所有する米国特許出願第17/157,160号に記載されているものと同様とすることができる。米国特許出願第17/157,160号の開示全体は、特に、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。とりわけ、RTS106のいくつかの態様及び詳細は、2019年10月9日に出願された、本願と同一出願人が所有する米国仮特許出願第62/912,442号、2020年5月20日に出願された、本願と同一出願人が所有する米国特許出願第16/867,804号、2020年6月30日に出願された、本願と同一出願人が所有する米国仮特許出願第63/046,301号、2021年1月29日に出願された、本願と同一出願人が所有する国際出願PCT/US21/15483号に記載されているものとも同様とすることができる。米国仮特許出願第62/912,442号、米国特許出願第16/867,804号、米国仮特許出願第63/046,301号及び本願と同一出願人が所有する国際出願PCT/US21/15483号の開示全体は、特に、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。本説明を続けるうちにより明らかとなるように、サーキュレータの使用及び機能に関連する上記で援用した特許出願の態様及び詳細と、RTSにおける(信号の受信及び送信の両方のための)単一のアンテナとは、本教示に直接関係しない。
【0032】
図2は、代表的な実施形態による、アンテナアレイのアンテナ204の列と、複数のRTS206と、レーダのDUTのエコー信号をエミュレートするシステムのアンテナにRTS206を選択的に接続するようになっているスイッチングマトリクス208とを備える、レーダデバイスを試験するシステム200の構成要素の簡略ブロック図である。
図2のシステムの様々な態様及び詳細は、上述したものと共通であり、本説明の代表的な実施形態を不明瞭にすることを回避するために繰り返さない場合がある。
【0033】
なお、アンテナ204の列は、アンテナアレイの要素であり、アンテナアレイは、ページの平面内に延在するアンテナの多くの列(
図2の側面図に示さず)を備えることができる。したがって、ページの平面内に延在する列が存在するだけでなく、ページの平面内に延在するアンテナの複数の行も存在する。理解されるように、本教示は、或る数のRTSを行に割り当てるようにもなっており、ここでも、RTSの特定の行に割り当てられるRTSの数は、アンテナアレイ内のアンテナの数よりも少ない。本明細書に記載の、選択された瞬間についての行のアンテナの選択的なアクティブ化も考えられる。
【0034】
コントローラ(
図2に示さず)からの制御信号に基づいて、スイッチングマトリクス208は、上述したように、アンテナ204の列のアンテナにRTS206を選択的に接続するようになっている。この代表的な実施形態において、3つのRTS206が、アンテナ204の列の14個のアンテナと関連付けられ、上述したように、RTSの数は、シーンエミュレータがカバーするアクティブ化用にセグメント内で利用可能なアンテナの数よりも少ない。アンテナ204の列によってエミュレートされているシーン内の点の位置情報は、特定の瞬間におけるこの点をエミュレートするためにいずれのアンテナをアクティブ化する必要があるかを判断するために使用される。より十分に後述するように、プロセッサ(
図2に示さず)は、シミュレートされる各点の位置を決定し、決定されたアクティブアンテナ/RTSのペアのそれぞれを割り当てて所望の点を経時的にエミュレートする、メモリ(
図2に示さず)に記憶されたコンピュータ実行可能命令を実行する。上述したように、アンテナの列のアクティブアンテナは、アンテナアレイのアンテナ204の列によってエミュレートされているシーンの部分のエミュレーションをもたらすように経時的に変更されるようになっている。
【0035】
図3は、代表的な実施形態による、レーダデバイスを試験するシステム300の斜視図である。
図3のシステムの様々な態様及び詳細は、上述したものと共通であり、本説明の代表的な実施形態を不明瞭にすることを回避するために繰り返さない場合がある。
【0036】
システムは、代表的な実施形態によれば、レーダのDUTのエコー信号をエミュレートするシステムのアンテナアレイ304と、複数のレーダターゲットシミュレータ(RTS)306と、アンテナにRTSを選択的に接続するようになっているスイッチングマトリクス308とを備える。
【0037】
アンテナアレイ304は、アンテナアレイ304の一方の側からもう一方に横方向に延在する行310と、アンテナアレイの頂部から底部に延在する列312とを備える。上述したように、コントローラ(
図3に示さず)は、或る数のRTSを行310のそれぞれに割り当てるようになっており、ここでも、RTSの特定の行に割り当てられるRTSの数は、アンテナアレイ内のアンテナの数よりも少ない。したがって、メモリ(
図3に示さず)に記憶された命令がプロセッサ(
図3に示さず)によって実行されると、本明細書における行のアンテナの選択的なアクティブ化が、ターゲットの点をエミュレートするために選択された瞬間についてもたらされる。
【0038】
コントローラ(
図3に示さず)からの制御信号に基づいて、スイッチングマトリクス308は、上述したように、アンテナの列312のアンテナにRTS306を選択的に接続するようになっている。或る特定の代表的な実施形態において、或る数のRTSが各列312又は各行310に割り当てられ、列312又は行310のアンテナを選択的にアクティブ化して、エミュレートされているターゲット(
図3に示さず)の点をエミュレートする。有利には、各列312又は各行310に割り当てられるRTSの数は、シーンエミュレータがカバーするアクティブ化用に列312又は行310内で利用可能なアンテナの数よりも少ない。アンテナアレイ304の列/行によってエミュレートされているシーン内の点の位置情報は、特定の瞬間におけるこの点をエミュレートするためにいずれのアンテナをアクティブ化する必要があるかを判断するために使用される。より十分に後述するように、プロセッサ(
図3に示さず)は、シミュレートされる各点の位置を決定し、各決定されたアクティブアンテナ/RTSのペアを割り当てて所望の点を経時的にエミュレートする、メモリ(
図3に示さず)に記憶されたコンピュータ実行可能命令を実行する。上述したように、アンテナの列のアクティブアンテナは、アンテナアレイのアンテナ204の列によってエミュレートされているシーンの部分のエミュレーションをもたらすように経時的に変更されるようになっている。
【0039】
図4は、代表的な実施形態による、自動車用レーダを試験するシステム400の簡略ブロック図である。
図4のシステムの様々な態様及び詳細は、上述したものと共通であり、本説明の代表的な実施形態を不明瞭にすることを回避するために繰り返さない場合がある。
【0040】
システム400は、代表的な実施形態によれば、レーダのDUT(
図4に示さず)のエコー信号をエミュレートするシステムのRF送受信機モジュール(RF transceiver module)404と、RTSベースバンドモジュール406と、RF送受信機モジュールにRTSベースバンドモジュールを選択的に接続するようになっているベースバンドスイッチングマトリクス408とを備える。なお、
図4は、1つのRF送受信機モジュール404の、このRF送受信機モジュール404に割り当てられたRTS(
図4に示さず)へのスイッチングマトリクスを介した接続を示している。RF送受信機モジュール404は、上述したアンテナアレイの1つの構成要素を備えることができる。したがって、DUTのターゲット/シーンをエミュレートするために使用されるアンテナのアレイではなく、RF送受信機モジュールのアレイは、行及び列で配置される複数のRF送受信機モジュール404を含む。
【0041】
RF送受信機モジュール404は、レーダのDUTからのレーダ信号を受信するようになっている受信アンテナ410と、1つ以上の専用RTSによってRTSベースバンドモジュール内で処理された信号を送信して、エミュレートされた点をDUTに返すようになっている送信アンテナ412とを備える。代替的には、送受信機モジュールは、送受信機能用に単一のアンテナ(図示せず)を備えることができる。受信モードにおいては、単一のアンテナは、到来するレーダ信号を受信するようになっており、周波数ダウンコンバータ(後述する)に接続され、送信モードにおいては、単一のアンテナは、発信するレーダ信号(この場合はエコー信号)を送信するようになっており、周波数アップコンバータ(後述する)に接続される。
【0042】
受信アンテナ410は、周波数ダウンコンバータ414に接続され、周波数ダウンコンバータ414は、比較的高周波数(例えば、77GHz)のレーダからの入力信号を、受信信号をベースバンドスイッチングマトリクス408に送信する前に、より低い(ベースバンド)周波数(例えば、DC~5GHz)にダウンコンバートするようになっている。理解されるように、比較的高い周波数でレーダのDUTからのスイッチマトリクスを実装することは非効率的であり、許容できない電力損失をもたらす。そのため、より低い周波数へのダウンコンバージョンにより、RF送受信機モジュール404からのダウンコンバートされた信号を、ベースバンドスイッチングネットワークとRTSベースバンドモジュール内の1つ以上の割り当てられたRTSとに効率的に送信して、本明細書に記載するように、距離及び径方向速度をエミュレートするように受信信号の強度、タイミング及びドップラシフトを変更する処理を行うことが可能になる。
【0043】
受信信号がエミュレートされたターゲットの特定の点について処理された後、ベースバンドスイッチングネットワークは、処理した信号を割り当てられた1つ以上のRTSからRF送受信機モジュール404に送信する。周波数アップコンバータ416によってレーダのDUTの動作周波数にアップコンバートした後、DUTへ返送される。このシーケンスは、エミュレートされている所望の数の点をエミュレートするために必要に応じて全てのRF送受信機モジュールについて実施される。
【0044】
図5は、代表的な実施形態による、エミュレートされたターゲット対時間のシミュレーション500である。
図5の代表的な実施形態は、時間分割方式での動作を記載するために例示目的で提供されている。本説明の代表的な実施形態が単なる例示であり、本教示に一致する他の実施形態が考えられることを強調しておく。
【0045】
図5のシミュレーションの様々な態様及び詳細は、上述したものと共通であり、本説明の代表的な実施形態を不明瞭にすることを回避するために繰り返さない場合がある。
【0046】
図示のように、第1の瞬間502、第2の瞬間504、第3の瞬間506、及び第4の瞬間508が捕捉されている。各瞬間は、約1msだけ分離されている。図示の瞬間のそれぞれは、上記で論じた様々な代表的な実施形態によるアンテナアレイのアンテナの11個の列を表す。なお、
図4に関連して上記で論じたように、11個の行の各正方形は、上記で論じたような受信アンテナ、周波数ダウンコンバータ、送信アンテナ及び周波数アップコンバータ(
図5に示さず)をそれぞれ備える個々のRF送受信機モジュール404であると考えられる。
【0047】
第1の瞬間502において、アクティブアンテナは、斜線付き円510~519によって表され、ここで、各アクティブアンテナは、スイッチマトリクス(
図5に示さず)内のスイッチを通じてRTS(
図5に示さず)と接続されている。したがって、各列において、捕捉された瞬間では1つのアンテナがアクティブである。特定の瞬間における各列内の選択されたアンテナ要素の位置は、ターゲット(この場合は車)のエミュレーションをもたらす、メモリに記憶された命令に基づいてプロセッサによって決定される。例えば、第1の時点502において、斜線付き円510~519は、10個のアクティブアンテナに対応し、各列は、1つの瞬間に1つのアクティブアンテナとするようになっている。いくらか違う表現をすると、第1の瞬間502において、各列において、1つのアクティブアンテナが存在する。これは、第2の瞬間504~第4の瞬間508についても当てはまり、各特定の瞬間において、各列は、各列に1つのアクティブアンテナを有する。なお、1つの瞬間/1つのアクティブアンテナ/1つの列の組み合わせは単なる例示であり、本教示は、メモリに記憶された命令をプロセッサによって実行することに基づいて、列内の2つ以上のアンテナへのRTSの選択的な接続によって、特定の瞬間におけるアンテナアレイの各列内の2つ以上のアクティブアンテナを提供することを想定している。
【0048】
第1の捕捉された瞬間502、第2の捕捉された瞬間504、第3の捕捉された瞬間506、及び第4の捕捉された瞬間508にわたって、経時的にアクティブアンテナを提供するように異なるアンテナを選択的にスイッチングすることによって、車が表示される。単なる例として、メモリに記憶されたルックアップテーブル内のエミュレートされる車の各位置の座標、メモリに記憶された命令(コンピュータ実行可能コード)のプロセッサによる実行により、各点/瞬間の組み合わせにおける選択されたアンテナをアクティブ化して、レーダのDUT(例えば、DUT102)に戻るエコー信号をエミュレートする信号によってエミュレートされている物体(この場合は車)を提供する。したがって、
図5に関連して記載の物体(車)のエミュレーションは、時間分割方式で、複数のRTSのうちの選択されたそれぞれのRTSを、複数のアンテナのうちの選択されたアクティブアンテナに接続して、DUTに対して物体をエミュレートする別の例である。
【0049】
上述したように、特定の瞬間における各列内の各アクティブアンテナでの接続は、上述したように、また、後述する方法に従って、コントローラによってスイッチマトリクスに提供される制御信号に基づいて、11個の列アレイの各列内の1つのアンテナを特定の瞬間におけるそれぞれの1つのRTSとペアリング/接続することによって実施される。また、当然ながら、コントローラは、特定の瞬間におけるエミュレートされたターゲットの指定された点をエミュレートするために、DUTに返送される信号の所望の強度、ドップラシフト及び遅延を提供するように各RTSを設定する。
【0050】
例示として、メモリに記憶された命令、及びメモリに(例えば、ルックアップテーブルに)記憶された位置に基づく点群により、プロセッサは、第1の列内のアンテナを第2の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円510のアンテナをアクティブ化することと、第3の列内のアンテナを第3の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円511のアンテナをアクティブ化することと、第4の列内のアンテナを第4の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円512のアンテナをアクティブ化することと、第5の列内のアンテナを第5の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円513のアンテナをアクティブ化することと、第6の列内のアンテナを第6の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円514のアンテナをアクティブ化することと、第7の列内のアンテナを第7の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円515のアンテナをアクティブ化することと、第8の列内のアンテナを第8の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円516のアンテナをアクティブ化することと、第9の列内のアンテナを第9の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円517のアンテナをアクティブ化することと、第10の列内のアンテナを第10の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円518のアンテナをアクティブ化することと、第11の列内のアンテナを第11の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円519のアンテナをアクティブ化することとを行うことになる。なお、特定の瞬間における各列のアンテナ要素と単一のRTSとのペアリングは単なる例示であり、ターゲットのエミュレーションをもたらすために、より多くのRTSを各列と関連付けることができる。
【0051】
第2の瞬間504において、アクティブアンテナは、斜線付き円520~529によって表される。メモリに記憶された命令、及びメモリに(例えば、ルックアップテーブルに)記憶された位置に基づく点群により、プロセッサは、第1の列内のアンテナを第2の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円520のアンテナをアクティブ化することと、第3の列内のアンテナを第3の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円521のアンテナをアクティブ化することと、第4の列内のアンテナを第4の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円522のアンテナをアクティブ化することと、第5の列内のアンテナを第5の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円523のアンテナをアクティブ化することと、第6の列内のアンテナを第6の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円524のアンテナをアクティブ化することと、第7の列内のアンテナを第7の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円525のアンテナをアクティブ化することと、第8の列内のアンテナを第8の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円526のアンテナをアクティブ化することと、第9の列内のアンテナを第9の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円527のアンテナをアクティブ化することと、第10の列内のアンテナを第10の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円528のアンテナをアクティブ化することと、第11の列内のアンテナを第11の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円529のアンテナをアクティブ化することとを行うことになる。なお、特定の瞬間における各列のアンテナ要素と単一のRTSとのペアリングは単なる例示であり、ターゲットのエミュレーションをもたらすために、より多くのRTSを各列と関連付けることができる。
【0052】
同様に、第3の瞬間506において、アクティブアンテナは、斜線付き円530~539によって表される。メモリに記憶された命令、及びメモリに(例えば、ルックアップテーブルに)記憶された位置に基づく点群により、プロセッサは、第1の列内のアンテナを第2の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円530のアンテナをアクティブ化することと、第3の列内のアンテナを第3の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円531のアンテナをアクティブ化することと、第4の列内のアンテナを第4の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円532のアンテナをアクティブ化することと、第5の列内のアンテナを第5の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円533のアンテナをアクティブ化することと、第6の列内のアンテナを第6の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円534のアンテナをアクティブ化することと、第7の列内のアンテナを第7の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円535のアンテナをアクティブ化することと、第8の列内のアンテナを第8の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円536のアンテナをアクティブ化することと、第9の列内のアンテナを第9の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円537のアンテナをアクティブ化することと、第10の列内のアンテナを第10の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円538のアンテナをアクティブ化することと、第11の列内のアンテナを第11の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円539のアンテナをアクティブ化することとを行うことになる。なお、特定の瞬間における各列のアンテナ要素と単一のRTSとのペアリングは単なる例示であり、ターゲットのエミュレーションをもたらすために、より多くのRTSを各列と関連付けることができる。
【0053】
同様に、第4の瞬間508において、及び第4の瞬間において、アクティブアンテナは、斜線付き円540~549によって表される。メモリに記憶された命令、及びメモリに(例えば、ルックアップテーブルに)記憶された位置に基づく点群により、プロセッサは、第1の列内のアンテナを第2の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円540のアンテナをアクティブ化することと、第3の列内のアンテナを第3の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円541のアンテナをアクティブ化することと、第4の列内のアンテナを第4の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円542のアンテナをアクティブ化することと、第5の列内のアンテナを第5の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円543のアンテナをアクティブ化することと、第6の列内のアンテナを第6の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円544のアンテナをアクティブ化することと、第7の列内のアンテナを第7の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円545のアンテナをアクティブ化することと、第8の列内のアンテナを第8の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円546のアンテナをアクティブ化することと、第9の列内のアンテナを第9の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円547のアンテナをアクティブ化することと、第10の列内のアンテナを第10の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円548のアンテナをアクティブ化することと、第11の列内のアンテナを第11の列に割り当てられたRTSとペアリングして、斜線付き円549のアンテナをアクティブ化することとを行うことになる。なお、特定の瞬間における各列のアンテナ要素と単一のRTSとのペアリングは単なる例示であり、ターゲットのエミュレーションをもたらすために、より多くのRTSを各列と関連付けることができる。
【0054】
理解されるように、11個の列内のアクティブアンテナの経時的なスイッチングにより、4ms間隔にわたるターゲット全体のエミュレーションが可能になる。なお、例示しやすくなるように、本説明の例示的な実施形態は、物体(車)が移動物体ではないと仮定する。しかしながら、運動中の物体のエミュレーションは、特定の時間におけるアクティブアンテナ/物体の構成要素の位置の適切な組み合わせによって実施することができる。
【0055】
理解されるように、
図5においてエミュレートされたターゲットの4msの継続時間中、ターゲットは知覚できるほどには移動しないと仮定される。
図5に示すシーケンスは、アンテナアレイ104の列又は行のアンテナを選択的にオン及びオフして、フレーム/CPIにわたって点群を作成し、エミュレートされているターゲット(及びもしあればその移動)をエミュレートすることによって繰り返される。
【0056】
図6は、代表的な実施形態による、DUTから距離を置いた2つのアンテナ間の物体のエミュレーションのシミュレーションを示す図である。
図6の代表的な実施形態は、時間分割方式での別の動作を記載するために例示目的で提供されている。本説明の代表的な実施形態が単なる例示であり、本教示に一致する他の実施形態が考えられることを強調しておく。
【0057】
図6の物体のエミュレーションの様々な態様及び詳細は、上述したものと共通であり、本説明の代表的な実施形態を不明瞭にすることを回避するために繰り返さない場合がある。
【0058】
図6は、第1の瞬間602における第1の位置610及び第2の位置611を示している。第1の位置及び第2の位置は、例示的には、上述したようなアンテナ又はRF送受信機モジュールである。第1の位置610及び第2の位置611は、レーダのDUTからかなりの距離にある物体をエミュレートするようになっている。
【0059】
第1の瞬間602において、第1の位置610は照射(illuminate)されており、したがって、空間内でその位置と関連付けられるアンテナ/RF送受信機モジュールはアクティブである。この瞬間において、第2の位置は照射されておらず、空間内でその位置と関連付けられるアンテナ/RF送受信機モジュールはアクティブでない。
【0060】
第2の瞬間604において、第2の位置611は照射されており、したがって、空間内でその位置と関連付けられるアンテナ/RF送受信機モジュールはアクティブである。この瞬間において、第1の位置は照射されておらず、空間内でその位置と関連付けられるアンテナ/RF送受信機モジュールはアクティブでない。
【0061】
第3の瞬間606において、第1の位置610は照射されており、したがって、空間内でその位置と関連付けられるアンテナ/RF送受信機モジュールはアクティブである。この瞬間において、第2の位置は照射されておらず、空間内でその位置と関連付けられるアンテナ/RF送受信機モジュールはアクティブでない。
【0062】
第1の位置610と第2の位置612とを時間的に交替で照射されるように切り替えることにより、第1の位置と第2の位置との間に配置された第3の位置611のエミュレーションがもたらされる。これにより、第3の位置にある物体のエミュレーションがもたらされる。代表的な実施形態において、切り替えのデューティサイクルは50%であり、第3の位置611は、第1の位置610及び第2の位置612から等距離に配置される。1つの位置の1つのアンテナ/RF送受信機モジュールがより高い周波数で又はより長い期間でアクティブとなるようにデューティサイクルを変更することにより、よりアクティブな方である第1の位置610又は第2の位置612により近い第3の位置611のエミュレーションがもたらされる。さらに、第1の位置610と第2の位置612との切り替え(ひいては、時間依存方式(time dependent manner)で第1の位置及び第2の位置においてアクティブアンテナを提供するように経時的に選択的な接続を行うことによって)がCPI中に複数回行われることから、DUTは、経時的なターゲットの平均角度位置を知覚する。これにより、デューティサイクルによって制御されているアンテナ間の位置(例えば、第3の位置)がもたらされる。さらに、この切り替え(及び結果として生じるディザリング)は、時間分割方式で、複数のRTSのうちの選択されたそれぞれのRTSを複数のアンテナのうちの選択されたアクティブアンテナに接続する別の例である。
【0063】
図7は、代表的な実施形態による、自動車用レーダのDUTのシーンをエミュレートする方法700のフローチャートである。
図7の方法の様々な態様及び詳細は、上述したものと共通であり、本説明の代表的な実施形態を不明瞭にすることを回避するために繰り返さない場合がある。
【0064】
なお、コントローラ114のメモリ116は、プロセッサ118によって実行されると、上述したシステムにおいて方法700を実施する命令(コンピュータ実行可能コード)を記憶する。
【0065】
702において、本方法は、点群の各点をアクティブ化されるアンテナに関連付けることから開始する。なお、エミュレートされている物体又はその構成要素の位置ごとに、物体又は構成要素の位置は、その位置にあるアンテナ/RF送受信機モジュールのうちの一方に整合される。
【0066】
704において、方法700は、続いて、RTSのうちの1つ以上を、アクティブ化する必要がある各アンテナ/RF送受信機モジュールと関連付ける。このペアリングは、特定の瞬間における全ての必要なアンテナ/RF送受信機モジュールに対して行われ、特定の瞬間における物体又はその一部をエミュレートするために必要なペアリングされたアンテナ/RF送受信機モジュール間のスイッチマトリクス108のスイッチを接続する命令をプロセッサ118によって実行することによって実施される。単なる例として、再び
図5を参照すると、プロセッサ118は、メモリ116に記憶された命令によって、ペアリングされたアンテナ/RF送受信機モジュール間のスイッチマトリクス108の必要なスイッチを接続して、斜線付き円511を提供するために必要なペアリングされたアンテナ/RF送受信機モジュールをアクティブ化することを行うことになる。
【0067】
706において、方法700は、特定の瞬間における物体又は物体の一部をエミュレートするために必要な各特定のアンテナ/RF送受信機モジュールをアクティブ化するために、強度値及び遅延値をRTSに割り当てることを含む。エミュレートされている特定の物体又は物体の構成要素をエミュレートするために必要な強度及び遅延の選択は、メモリ108に記憶された命令をプロセッサ118によって実行することによって実施される。
【0068】
708において、スイッチングマトリクス内でスイッチが係合して、各選択されたRTS/アンテナ(又はRF送受信機モジュール)のペアを接続し、その瞬間におけるエミュレートされる物体の特定の点又は物体をエミュレートする。
【0069】
本方法は、再び702において、次の特定の瞬間におけるエミュレートされる他の点/物体をエミュレートすることを開始する。
【0070】
本発明は、図面及び上記説明に詳細に図示及び説明されてきたが、そのような説明図及び説明は、例示又は模範とみなされるべきであり、限定とみなされるべきではなく、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、請求項に係る発明を実施する際に、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討により、開示される実施形態に対する他の変形形態を理解し、それを行うことができる。特許請求の範囲において、「を備える」又は「を含む」(comprising)という単語は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「一つの("a"又は"an")」は複数形を排除しない。或る特定の手段が互いに異なる複数の従属請求項に列挙されているだけであれば、それらの手段を組み合わせて有利に使用することができないことは示されていないものとする。
【0071】
本教示の態様及び詳細は、装置、方法又はコンピュータプログラム製品として具現化することができる。したがって、本発明の態様及び詳細は、全体がハードウェアの実施形態、全体がソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)、又はソフトウェアの態様及びハードウェアの態様及び詳細を組み合わせた実施形態の形を取ることができる。これらは全て、本明細書において、「回路」、「モジュール」又は「システム」と総称される場合がある。さらに、本発明の態様及び詳細は、コンピュータ実行可能コードが具現化された1つ以上のコンピュータ可読媒体に具現化されるコンピュータプログラム製品の形を取ることができる。
【0072】
代表的な実施形態が本明細書に開示されているが、当業者であれば、本教示に従った多くの変形形態が可能であり、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが分かる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを除いて限定されるものではない。
【外国語明細書】