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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120883
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】軽量の液冷式パワー電子ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20240829BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01F27/28 176
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025081
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】23382172
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520161894
【氏名又は名称】プレモ,エスアー.
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【弁理士】
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】カネテ カベツァ クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ロハス クエバス,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ナバッロ ペレス,フランシスコ エツェクイエル
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ムニン ラクエル
(72)【発明者】
【氏名】ブランコ オルティス ホアン
【テーマコード(参考)】
5E043
5E322
【Fターム(参考)】
5E043AA02
5E043DA06
5E043DB09
5E322AA01
5E322DA01
5E322DA04
5E322EA11
5E322FA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気自動車やハイブリッド車用のオンボードの電力変換器に適合する軽量の液冷式パワー電子ユニットを提供する。
【解決手段】液冷式パワー電子ユニットは、電磁要素10と、冷却回路と、第1壁31と、を有する。電磁要素10は、コアと、コアの周囲に巻かれたコイルと、コア11とコイルの間に配置されたボビンと、を有する。冷却回路は、流体入口24と流体出口25と中間冷却領域と、を有する。中間冷却領域は、電磁要素10の1つと近接し、電磁要素10と中間冷却領域との間の熱伝達が可能となる。第1壁31は、第1枝管21を含む。中間冷却領域は、ボビン内に規定され、第1枝管21は、電磁要素10の方向を向いた第1接続開口41になり、中間冷却領域は、第1枝管21に第1接続開口41を介して、連結されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液冷式パワー電子ユニットにおいて、
複数の電磁要素(10)と、冷却回路(20)と、第1壁(31)とを有し、
前記電磁要素(10)の各々は、磁気コア(以下単に「コア」と称する)(11)と、前記コア(11)の周囲に巻かれた導電性コイル(以下単に「コイル」と称する)(12)と、前記コア(11)とコイル(12)の間に配置されたボビン(13)を有し、
前記冷却回路(20)は、流体入口(24)と、流体出口(25)と、前記流体入口(24)と流体出口(25)との間にある複数の中間冷却領域(23)とを有し、前記中間冷却領域(23)は、前記電磁要素(10)の1つに近接し、これにより、前記電磁要素(10)と中間冷却領域(23)との間の熱伝達が可能となり、
前記第1壁(31)は、前記冷却回路(20)の一部である第1枝管(21)を含み、 前記中間冷却領域(23)は、前記電磁要素(10)のボビン(13)内に規定され、
前記第1枝管(21)は、前記電磁要素(10)の方向を向いた第1接続開口(41)を有し、
前記中間冷却領域(23)は、前記第1枝管(21)に前記第1接続開口(41)を介して、連結されており、これは、前記第1枝管(21)を前記第1壁(31)の面に直交して適合することにより行われる
ことを特徴とする液冷式パワー電子ユニット。
【請求項2】
前記電磁要素(10)は、前記第1壁(31)の第1面の方向を向いており、
前記第1壁(31)に並列配置された回路基板(50)は、前記第1壁(31)の第2面に取り付けられ、前記第2面は第1面の裏側であり、前記コイル(12)は、前記回路基板(50)に、前記第1壁(31)の貫通孔を介して接続される
ことを特徴とする請求項1記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項3】
前記コイル(12)は、前記第1壁(31)に並列配置された回路基板(50)に接続され、
前記電磁要素(10)は、前記第1壁(31)と回路基板(50)との間に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項4】
前記コイル(12)は、前記第1壁(31)に並列配置された回路基板(50)に接続され、
前記回路基板(50)は、前記第1壁(31)と電磁要素(10)との間に配置され、
前記中間冷却領域(23)は、前記回路基板(50)を貫通する
ことを特徴とする請求項1記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項5】
前記電磁要素(10)又は回路基板(50)の少なくとも一方は、前記第1壁(31)と接触し、熱伝達により前記第1壁(31)方向へ放熱が可能となる
ことを特徴とする請求項1-4のいずれか1項記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項6】
前記第1壁(31)は、第2枝管(22)を内蔵し、
前記第2枝管(22)は、前記第1枝管(21)とは離れており、前記冷却回路(20)の別の部分を構成し、
前記第2枝管(22)は、前記電磁要素(10)の方向を向いた第2接続開口(42)を有し、
前記中間冷却領域(23)の各々は、前記第2枝管(22)に、前記第1壁(31)に直交して適合することにより、前記第2接続開口(42)を介して接続される
ことを特徴とする請求項1-4のいずれか1項記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項7】
前記第1壁(31)に並列配置された第2壁(32)を更に有し、
前記第2壁(32)は、前記冷却回路(20)の第2枝管(22)を有し、
前記第2枝管(22)は、前記電磁要素(10)の方向を向いた第2接続開口(42)を有し、
前記中間冷却領域(23)の各々は、前記第2枝管(22)に、前記第2壁(32)に直交して適合することにより、前記第2接続開口(42)を介して接続される
ことを特徴とする請求項1-4のいずれか1項記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項8】
前記第1壁(31)と第2壁(32)は、連結接続され、その間に電磁要素(10)を保持する
ことを特徴とする請求項7記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項9】
前記電磁要素(10)と回路基板(50)の少なくとも一方は、前記第2壁(32)に近接し、熱伝達により、前記第2壁(32)方向への放熱が可能となる
ことを特徴とする請求項7記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項10】
前記第1壁(31)又は第2壁(32)の各々は、互いに水密に接続される2枚の重なり合った板であり、前記板の一方は、表面に凹部又は溝を有し、前記板の他方と重なり合った時に、前記第1枝管(21)又は第2枝管(22)を形成する
ことを特徴とする請求項1-4のいずれか1項記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項11】
前記パワー電子ユニットは、包囲体(30)内に収納され、前記第1壁(31)又は第1と第2の壁(31,32)は、前記包囲体(30)の側壁である
ことを特徴とする請求項1-4のいずれか1項記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項12】
前記パワー電子ユニットは、包囲体(30)内に収納され、
前記包囲体(30)は、前記第1壁(31)により分離された第1包囲体と第2包囲体により形成され、
前記第1壁(31)は、前記第1包囲体と第2包囲体の両方の側壁であり、
前記電磁要素(10)は、前記第1包囲体内に収納され、
前記回路基板(50)は、前記第2包囲体内に収納される
ことを特徴とする請求項11記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項13】
前記包囲体の前記第1壁(31)以外の部分又は前記第1と第2の壁(31,32)以外の部分は、剛性プラチック製組成物製、オーバーモールドした組成物製又は伝熱性組成物製のいずれかであり、前記組成物材料は、シリコン樹脂と第1充填材と第2充填材を含み、
前記第1充填材は、天然鉱物製充填材を含み、
前記第2充填材は、水酸化アルミを含む
ことを特徴とする請求項11記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項14】
前記包囲体(30)の一部又は全ては、伝熱性組成物又は合成伝熱性組成物で充填されており、
前記合成伝熱性組成物は、シリコン樹脂と第1充填材と第2充填材を含み、
前記第1充填材は、天然鉱物製充填材を含み、
前記第2充填材は、水酸化アルミを含む
ことを特徴とする請求項11記載の液冷式パワー電子ユニット。
【請求項15】
前記冷却回路(20)とは別の追加の冷却回路を更に含み、
前記追加の冷却回路は、
前記第1壁又は第2壁内に規定された第3枝管と第4枝管と、
前記包囲体(30)内又はその一部内に規定された中空内側容積と
を有し、
前記第3枝管と第4枝管は中空内側容積を介して連通している
ことを特徴とする請求項11記載の液冷式パワー電子ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量の液冷式パワー電子ユニットに関し、特に、例えば、電気自動車やハイブリッド車用のオンボードの電力変換器に関する。本発明のパワー電子要素は、電力を処理する複数の電磁要素とこの電磁要素での発熱を効率的に放散する冷却回路を含む。
【背景技術】
【0002】
液冷式パワー電子ユニットは、電気自動車やハイブリッド車用のオンボードの電力変換器であり、特注の電磁要素を用いて、パワー電子要素の電力密度を大きくしている。
【0003】
電力密度は、この種の電力変換器の重要な要素である。削減した重量のグラムレベルの分まで、バッテリーの重量を更には車両の重量を追加する(増やす)ことができるからである。同じことが、バッテリーの占める体積/容積(以下「容積」と総称する)についても当てはまり、電力変換器の容積が減ると、バッテリー用の容積が増えることになる。
【0004】
電力密度が増えるということは、電磁要素の同じ占有容積においては、電流の密度を高めることができることを意味する。この電流は、電磁要素内で磁気フラックスに変換され、その後、電気エネルギーに変換器又は蓄電器の端部で変換される。これは、電磁要素が誘導器、変圧器又はフィルター・チョークであるかによる。
【0005】
電気エネルギーを磁気エネルギーに変換している間、損失は熱の形で伝わる。単位容積あたりのパワー(W/m)を増加させるために、磁気要素においては、エネルギーは、大部分が負荷(動力)に変換される。効率は、(PoutーPin)/Pinで表され、通常95%以上である。その結果、エネルギー損失は、小さな容積に集中し、装置の温度が上昇することになる。パワー密度が増加すると、これらの損失は、同じ大きさでは益々大きくなる。それ故、特に重要なことは、損失からの発熱を、できるだけ速やかに、電磁要素から効率的に除くことである。
【0006】
放熱に関し非効率な設計により、電磁要素は極限の温度に達する、更には電磁要素を定常温度に安定化することができなくなる。ヒートフラックスは、安定状態では、適正に放熱できなくなる。電磁要素に悪影響を及ぼし電磁要素が破損する極限温度は、短絡を引き起こすか絶縁不良を起こす。コアが強磁性機能を維持できなくなる温度(即ちキュリー温度)に達することにより、極限温度になる。これは過電流や短絡現象を引き起こす。それ故に、一定の効率で単位容積あたりのパワーを最大にする主要な限界ファクタは、次の限界ファクタ(コアの飽和誘導(Bsat))に達するまでの温度である。
【0007】
それ故、電磁要素の電流密度を増やすためには、軽量化は必須であり、冷却回路の効率を上げ、過熱の悪影響を阻止し、効率的な放熱を確保する必要がある。冷却回路の効率的な設計により、冷却媒体をあまり使わずに良好な冷却が可能となるが、これは、冷却回路を短くし、電磁要素の軽量化により、達成される。
【0008】
液冷式パワー電子ユニットは既に公知である。一例として、冷却媒体が循環する第1枝管を内臓する第1壁を使用することは知られている。この公知例において、電磁要素は、第1壁に近接し、第1壁を介した熱伝達/熱伝導(以下「熱伝達」と総称する)により放熱している。この解決法は、電磁要素の一側面に対してのみ冷却効果を奏するだけであり、効率的な冷却方法ではない。
【0009】
他の公知例では、各電磁要素は、外から覆われ、冷却回路の一部と接触している。この解決法は、個別の各電磁要素の外部からの冷却を増やすことはできるが、その中心部は冷却されず、製造が難しくなり、製造価格が高くなる。本発明は上記の問題点を解決する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、請求項1に記載の液冷式パワー電子ユニットである。例えば、電気自動車やハイブリッド車用のオンボードの電力変換器である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液冷式パワー電子ユニットは、従来公知のように、複数の電磁要素と、冷却回路と、第1壁とを有する。電磁要素の各々は、磁気コア(以下単に「コア」と称する)と、磁気コアの周囲に巻かれた導電性コイル(以下単に「コイル」と称する)と、コアとコイルの間に配置されたボビンを有する。冷却回路は、流体入口と流体出口と複数の中間冷却領域とを有する。各中間冷却領域は、電磁要素の1つと近接し、電磁要素と中間冷却領域との間の伝熱が可能となる。第1壁は、前記冷却回路の一部である(一部を構成する)第1マニフォールド(以下「枝管」と称する)を有する。
【0012】
上記によれば、本発明の液冷式パワー電子ユニットは、第1壁と、この第1壁に向かい合う複数の電磁要素を有する。この電磁要素は、パワー電子要素の組立用の支持構造として用いられる。冷却回路も、パワー電子ユニットに含まれ、使用中の熱発生源である電磁要素を冷却する。
【0013】
各電磁要素はコアとコイルを有する。コイルは、コアの周囲に巻かれ、挿入されたボビン上に支持される。電磁要素の一例は、誘導器、変圧器、フィルタリング・チョークである。
【0014】
冷却回路は冷却媒体が循環する回路である。冷却媒体は、冷却回路内に流体入口から第1温度で供給され、冷却回路全体を循環した後、流体出口から第2温度で出て、パワー電子ユニットから熱を取り出す。第2温度は第1温度より高い。
【0015】
冷却媒体は、冷却回路から熱を取り出した後、ヒートシンクを介して第1温度に戻され、流体入口に戻される。通常これは流体ポンプで行われる。
【0016】
冷却回路は、流体入口と流体出口の間に、複数の中間冷却領域を有する。各中間冷却領域は、複数の電磁要素の1つを熱伝達を介して冷却する。それ故に、各中間冷却領域は、複数の電磁要素の1つに近接している。
【0017】
本発明の実施例において、「近接」とは、間に空隙のない固体材料を介しての接触を意味する。通常10mm以下又は5mm以下の距離を意味する。
【0018】
本発明の冷却回路は、第1壁の中空内部内に規定(形成)された第1枝管を含む。
【0019】
第1枝管の長方形の断面は、第1枝管を内蔵する第1壁の厚さ以下の高さとこの高さより広い幅を有する。この構造により、冷却媒体と第1壁の第1面との間の熱伝達を最大にし、内蔵する第1枝管の部品の製造と搭載を容易にする。
【0020】
更に本発明は、新規な特徴を有する。冷却回路20の中間冷却領域23は、複数の電磁要素の内の1つ電磁要素のボビン内に規定される。第1枝管21は、電磁要素10の方向を向いた第1接続開口41を有する(になる)。中間冷却領域23は、前記第1枝管21に前記第1接続開口41を介して、前記第1壁31の第1面に直交して適合することにより、連結されている。
【0021】
上記によれば、中間冷却領域23は、電磁要素に一体にされたボビン13内に形成される。各ボビン13は、コア11と周囲のコイル12の間に配置されているので、対応する中間冷却領域23も、コア11とコイル12の間に配置されることになる。好ましくは、各中間冷却領域23は、対応するコア11を包囲する。この構成により、電磁要素10の冷却回路20により提供される冷却機能は最大になり、冷却媒体は少なくて済み、電磁要素10の電流密度を上げ、容積と重量を減らす(軽量化)ことができる。
【0022】
ボビン13は、連続する内壁と連続する外壁を有する管形状の壁を有する。内壁はコア11の一部を緊密に包囲し、外壁はコイル12を支持する。管形状の壁は、円形状断面又は矩形断面を有するが、コア11の一部を緊密に包囲するものならば、いかなる形状でもよい。
【0023】
各中間冷却領域23は、ボビン13を構成する管形状の壁の肉厚内に埋設される。
【0024】
液冷式パワー電子ユニットの製造組立を簡単にしその製造コストを押さえる為に、各中間冷却領域23を第1枝管21に、第1接続開口41を介して、連結することもできる。
【0025】
第1接続開口41は、第1壁31に孔を開けることにより形成される。この孔は、第1壁31の第1面に直交する方向に進み、第1枝管21に達する。
【0026】
ボビン13内の各中間冷却領域23は、第1壁31の第1面に直交する方向を向いた適合開口を有する。その結果、中間冷却領域23と第1枝管21との間の連結が、対応する電磁要素10を第1壁31の上に配置し、適合開口を第1接続開口41に合わせることにより、容易かつ安くできるようになる。
【0027】
第1壁31は、2つ対向する面を有する。これらの面は平坦で互いに並行である即ち並列している。第1面に直交する方向は、これらの面の一方の面の大部分を構成する平坦な領域に直交する方向である。
【0028】
適合開口は、回路の2つの同軸部分の間に、水密/気密の連結を提供する。これは、一方の回路の2つの同軸部分を他方のそれにに押しつけることにより、例えば、相互に挿入することにより可能となる。
【0029】
本明細書において、用語「並行」「並列」「直交」とは、理論値から±5°までのずれは許容されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施例の液冷式パワー電子ユニット(包囲体30は省いている)の展開図。同図において、第1壁31には第1枝管21と第2枝管22が形成されている。回路基板50は、電磁要素10の方向を向いた第1壁31の第2面に取り付けられている。
図2】本発明の電磁要素の展開図。この電磁要素は、冷却回路の中間冷却領域を有するボビン13と、このボビン13の周囲に巻回されるコイル12と、ボビン13の中央ある貫通孔に一部挿入されるコア11と有する。
図3図2のボビン13の透視図。同図は、中に形成された曲がりくねった形状の冷却チャネルを示す。この冷却チャネルは、ボビン13の円筒状の壁の内側に規定された中間冷却領域23の1つである。
図4図3の中間冷却領域23を平面状に展開した図。
図5】本発明の一実施例の液冷式パワー電子ユニットの断面図(第2壁32は省いている)。同図では、第1壁31には第1枝管21と第2枝管22(両方とも電磁要素に接続されいる)が形成されている。回路基板50が第1壁31と電磁要素10の間に配置されている。包囲体30が第1壁31に取り付けられた剛性プラチック製のシェルを含む。
図6図5の実施例に類似する本発明の別の実施例の断面図。回路基板50は第1壁31から離れている。電磁要素10は回路基板50と第1壁31との間にある。
図7図5の実施例に類似する本発明の別の実施例の断面図。回路基板50は第1壁31の第2面(第1面の反対側である)に取り付けられている。回路基板50と電磁要素10との間の電気的接続は、第1壁31に開けられた貫通孔を介して行われる。包囲体30は、第1壁31に形成(支持)されたオーバーモールドされた伝熱性組成物を含む。この伝熱性組成物は、電磁要素10と回路基板50を収納する。
図8図5の実施例に類似する本発明の別の実施例の断面図。第2枝管22は、第1壁31に並列配置された第2壁32に含まれる。電磁要素10と回路基板50は、第1壁31と第2壁32の間に配置される。
図9図8の実施例に類似する本発明の別の実施例の断面図。回路基板50は、第2壁32に取り付けられる。電磁要素10は、回路基板50と第1壁31の間に配置される。
図10図8の実施例に類似する本発明の別の実施例の断面図。回路基板50は第1壁31の第2面に取り付けられている。回路基板50と電磁要素10との間の電気的接続は第1壁31の貫通孔を介して行われる。第1壁31は、電磁要素10の中空内部に接続された第3と第4の枝管を有し、中空の包囲体30は冷却媒体(水、空気)で充填される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1において、本発明の液冷式パワー電子ユニットは、複数(図では8個)の電磁要素10と、第1壁(2枚の板から構成されている)31と、冷却回路20を有する。冷却回路20は、流体入口24,流体出口25,その間に形成された複数の中間冷却領域を有する。各中間冷却領域は、複数の電磁要素10の内の1つに近接している。これにより、電磁要素10と中間冷却領域との間の熱伝達が可能になる。冷却回路20は、第1壁31内に含まれる平坦な形状をした第1枝管21と第2枝管22を有する。
【0032】
本発明の一実施例によれば、電磁要素10は、第1壁31の第1面に配置され、それに取り付けられている。その結果、第1壁31は、パワー電子ユニットの構成要素用の支持フレームを構成する。
【0033】
図2において、各電磁要素は、磁気コア(以下単に「コア」と称する)11と、コア11の周りに巻回された電導コイル(以下単に「コイル」と称する)12と、コア11とコイル12の間に配置された絶縁性ボビン(以下単に「ボビン」と称する)13を有する。
【0034】
図5-7において、冷却回路20の各中間冷却領域23は、複数の電磁要素10の1つの電磁要素10のボビン13内に規定される。ボビン13はコア11とコイル12の間にある。
【0035】
図1において、本発明によれば、第1壁31は、第1接続開口41を有する、この第1接続開口41は、一方の口は、電磁要素10の方向を向き電磁要素10内の各中間冷却領域23に連結し、他方の口は、第1枝管21に連結している。
【0036】
第1壁31は、2枚の板(プレート)を水密方式で重ねて接着して形成される(図1)。一方の板は、凹部又は溝(以下「溝」と称する)をその一面に有し、他方の板を重ねると、第1枝管21が構成される。これにより、各板は、互いに向き合い、接触面を介して接触し接着される。少なくとも一方の板には、その接触面に溝が形成され、他方の板を重ね合わせ接着する(取り付ける)と、2枚の板の間に第1枝管21が形成される。
【0037】
一実施例(図5-7)によれば、板の一方は、第1枝管21と電磁要素10との間に配置され、第1枝管21に一致した場所に孔が開けられる。この各孔は、第1壁31の第1面に直交し、第1接続開口41を規定する。
【0038】
冷却回路20の各中間冷却領域23は、第1枝管21に、第1接続開口41を介して気密/水密に連結されている。これは、第1接続開口41を第1壁31の第1面に直交して当てることにより行われる。この構成により、簡単に安価で信頼性の高いパワー電子ユニットの製造が可能となる。
【0039】
ボビン13は、中間冷却領域23を内蔵しているが、閉鎖外形を規定するボビン壁を有する、このボビン壁には、第1外側表面と第1内側表面(両者は同心状である)がある。第1外側表面は、コイル12を支持する閉鎖外形を形成する。第1内側表面は、中にコア11を収納する収納領域を形成する。中間冷却領域23は、第1外側表面と第1内側表面の間に含まれる。ボビン13は、流体入口と流体出口を含む。これら入口と出口は中間冷却領域23に連結されている。これにより、中間冷却領域23を冷却回路20に連結できる。
【0040】
中間冷却領域23は、ボビン13の閉鎖外形の大部分に延びる。
【0041】
本発明の第1態様(図3)によれば、中間冷却領域23は、複数の仕切りを含むチャンバー(以下「室」と称する)であり、第1外側表面と第1内側表面を連結する。仕切りの壁は、室内に分散しており、曲がりくねった形状の中間冷却領域23を規定する。
【0042】
図3によれば、ボビン13は、モノリシックな一枚の部品で、その中に中間冷却領域23が埋設されている。
【0043】
図4において、ボビンは、接着面で互いに接着された複数の部分片からなる。中間冷却領域23は、1つの開放室と1つの閉鎖体(開放室を閉鎖する)で形成される。開放室は複数の部分片の1つの内に完全に含まれる。閉鎖体は複数の部分片の別の1つで形成される。或いは、それぞれが部分片の1つ内に完全に含まれる複数の開放室で形成される。複数の開放室は、接着面の縁で包囲された連結機構を介して互いに連結されている。
【0044】
本発明によれば、ボビン全体又はその一部は、薄い重なり合った並列の層から形成される。この層は、添加材料製で3Dプリンターで形成される。この実施例において、ボビン13は、統一/均質の特性を有する。複数の部品、結合部分、溶接部分が無いからである。これらが有ると特性の劣化や変動をもたらす。
【0045】
添加材料製の重なり合った並列の層は、連続的に相互接続され、直線状のセグメントを横断し、曲がりくねった形状の中間冷却領域23を形成する。
【0046】
本発明の第1態様(図1)によれば、電磁要素10は、全て第1壁31の第1面に配置されている。図5を参照すると、回路基板50は、第1壁31に並列配置されているが、第1壁31の第1面に取り付けられている。電磁要素10のコイル12は、回路基板50に、第1壁31の貫通孔を介して、連結(接続)されている。貫通孔は、第1壁31に含まれる冷却回路20に影響を及ぼさない。
【0047】
貫通孔は、第1壁31の貫通可能領域に開けられている。貫通可能領域は、冷却回路20の第1枝管21も他の領域も含まない。
【0048】
図7の構造により、回路基板50の冷却が、第1壁31の第2面との接触を介して可能となる。この第2面は、中に含まれる第1枝管21で冷却される。また、回路基板50と電磁要素10の両方へのアクセスと保守が可能となる。電磁要素10は、第1壁31の第1面との接触を介して冷却してもよい。
【0049】
本発明の他の実施例(図6)によれば、電磁要素10のコイル12は、第1壁31に並列配置された回路基板50に接続される。電磁要素10は、第1壁31と回路基板50の間に配置される。パワー電子ユニットのこの積層構造は、導電性要素と回路基板50の間の電気接続を、中間冷却領域23と冷却回路20の一部(第1壁31に含まれる)の間の冷却媒体連結構成から、切り離す。これにより、電気接続の為に第1壁31に孔を開ける必要がなくなる。この場合、第1壁31は、パワー電子ユニットを包囲するケースの一部として機能する。
【0050】
本発明の他の実施例(図5,8)によれば、電磁要素10のコイル12は、第1壁31に並列配置された回路基板50に接続される。回路基板50は、第1壁31と電磁要素10の間に収納される。冷却回路20の中間冷却領域23は、回路基板50を貫通する。
【0051】
この実施例(図8)によれば、回路基板50は、貫通孔である第1接続開口41を有する。この貫通孔を介して、中間冷却領域23は、第1壁31内に形成された冷却回路20の一部である第1枝管21に接続される。この構成により、回路基板50は、第1壁31の第1面との接触を介して冷却される。電磁要素10は、冷却回路20の中間冷却領域23により冷却される。この構成により、第1壁31は、パワー電子ユニットを保護する包囲体30の一部として機能する。
【0052】
電磁要素10と回路基板50の少なくとも一方は、第1壁31に近接している。熱は、熱伝達により、第1壁31の方向に放散する。
【0053】
図5-7の構成によれば、第1壁31は中に平坦な第2枝管22を有する。第2枝管22は、第1枝管21とは別個のものであり、冷却回路20の別の部分を構成する。第2枝管22と第1枝管21の構造は同一である。即ち、一方の板の面に形成された溝が別の板で水密方式に覆われ、同時に第1枝管21と第2枝管22を形成する。2つの枝管21,22は、第1壁31内では交差しないのが好ましい。
【0054】
第2枝管22は、第2接続開口42を有する。第2接続開口42は、電磁要素10の方向を向いている。各中間冷却領域23は、第2枝管22に、第2接続開口42を介して気密に連結される。これは、第2接続開口42を第1壁31に直交して適合することにより行われる。
【0055】
図5-7の構成によれば、中間冷却領域23は、2つの端部を有する。一方の端部は、第1枝管21に第1接続開口41を介して連結され、他方の端部は、第2枝管22に第2接続開口42を介して連結される。冷却媒体は、第1枝管21から第2枝管22に中間冷却領域23を介して流れる。
【0056】
別の構成(図8-10)として、パワー電子ユニットは、第1壁31に並列配置された第2壁32を有する。電磁要素10は、第1壁31と第2壁32との間に配置される。第2壁32は、冷却回路20の別の部分を構成する第2枝管22を有する。第2枝管22は、電磁要素10の方向を向いている第2接続開口42を有する。
【0057】
第1壁31と同様な方法で、第2壁32は、2枚の板(プレート)を水密方式で重ねて接着して形成される。一方の板は、溝をその一面に有し、他方の板をその上に重ね合わせると、第2枝管22が構成される。
【0058】
中間冷却領域23は、第2枝管22に第2接続開口42を介して連結されるが、これは、第2接続開口42を第2壁32に直交して適合することにより行われる。同様に、中間冷却領域23は第1枝管21に連結されている。
【0059】
第2壁32は、回路基板50を様々な部分に含む実施例のパワー電子ユニットに追加できる。
【0060】
第1壁31と第2壁32は、互いに接続され、その間に電磁要素10を保持する。例えば、第1壁31の第1面と第2壁32の第1面に直交するネジで保持される。
【0061】
このネジは、保持力を与え、第1接続開口41と第2接続開口42を介して水密の連結状態を確保する。
【0062】
図9の構成においては、回路基板50は、第2壁32に近接し、熱伝達により第2壁32の方向に放熱ができるようになる。
【0063】
パワー電子ユニットは、包囲体30内に収納される。第1壁31(図5-7)又は第1と第2の壁31,32(図8-10)は、包囲体30の側壁である。これによれば、第1壁31又は第1と第2の壁31,32は、包囲体30の一部でもあり、パワー電子ユニットを保護する。
【0064】
図10によれば、包囲体30は、第1壁31で隔てられた第1と第2の包囲体30に分けられる。第1壁31は第1の包囲体30の側壁と第2の包囲体30の側壁の両方を構成する。回路基板50と電磁要素10が、第1壁31を挟んで反対側に配置されると、電磁要素10は第1の包囲体30内に、回路基板50は第2の包囲体30内に配置される。
【0065】
本発明の一実施例によれば、包囲体の一部は、第1壁31とは別物、又は第1と第2の壁31,32とは別物であり、剛性プラスチック材料製で、オーバーモールドされた組成物又は伝熱性の組成物で構成される。これらの組成物は、シリコン樹脂と第1充填材(天然鉱物充填材を含む)を含む。更には、水酸化アルミ(aluminium hydroxide)を含む第2充填材を含んでもよい。
【0066】
上記によれば、パワー電子ユニットが第1壁31のみを含む場合(図5-7)は、包囲体は、第1壁31と剛性プラスチック材料(包囲体の残り部分を構成する)で形成される。例えば、パワー電子ユニットの全ての構成部品をカバーするシェルで形成され、シェルのエッジが第1壁31にネジ又は接着材で取り付けられる。
【0067】
別の構成として、包囲体の残りの部分は、電磁要素10と回路基板50を内蔵するオーバーモールドされた組成物で形成される。この組成物は、好ましくは伝熱性組成物である。例えば、シリコン樹脂と第1天然鉱物充填材の混合物を含む。更に伝熱性を改善する為に、水酸化アルミを含む第2充填材を含んでもよい。
【0068】
パワー電子ユニットが互いに並列な第1壁31と第2壁32を有する場合(図8-10)は、包囲体の残りの部分(壁の間の部分)は、剛性プラスチックで形成される。この剛性プラスチックは、複数の周辺壁を形成する。通常この周辺壁は、第1壁31と第2壁32の面に直交し、第1壁31と第2壁32の間にあるパワー電子ユニットの構成要素10,50を包囲する。
【0069】
選択的事項として、第1壁31と第2壁32の間の空間は、オーバーモールドされた組成物で、例えば伝熱性組成物で、充填される。
【0070】
オーバーモールドされた伝熱性組成物は、電磁要素10と回路基板50を囲み、第1壁31(図5-7)、又は第1と第2の壁31,32(図8-10)に近接している。これにより、発熱する構成要素(電磁要素10と回路基板50)と冷却回路20との間の熱伝達が可能になる。
【0071】
上記の解決方法/手段にいずれかにより、本発明のパワー電子ユニットの包囲体の重量は、従来の厚いアルミダイキャスト製の包囲体のそれと比較して、軽くなっている。
【0072】
選択的事項として、包囲体がオーバーモールドで形成されず、中空の包囲体の場合は、包囲体の一部或いは全部は、オーバーモールドされた組成物又は伝熱性組成物で充填される。この場合、包囲体は、部分的に剛性プラスチックで形成され、これは、パワー電子ユニットの構成要素をオーバーモールドする間、鋳型として機能する。
【0073】
選択的事項として、パワー電子ユニットは、冷却回路20とは別の追加の冷却回路を有してもよい。追加の冷却回路は、第3の枝管(第1壁31又は第2壁32内に形成される)又は、第4の枝管(包囲体30又はその一部の中空の内部空間、第1壁31又は第2壁32内に形成される)を有してもよい。第3と第4の枝管は、包囲体の中空の内部空間を介して連通してもよい。
【0074】
上記によれば、第3の枝管から供給された冷却媒体が、包囲体の内部空間を充填し、冷却媒体に接する電磁要素10又は回路基板50を冷却する。冷却媒体は、第4の枝管から、ヒートシンクに流され、第3の枝管を通して戻される。
【0075】
冷却媒体に接触している構成要素は、絶縁されているのが好ましい。第3と第4の枝管,の構造は、第1と第2の枝管21,22のそれと同じである。
【0076】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない(特許法施行規則24条の4及び様式29の2の「備考」14のロ)。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。明細書において、「少なくとも1つ或いは複数」、「と/又は」は、それらの内の1つに限定されない。例えば「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は「A」、「B」、「C」単独のみならず「A,B或いはB,C更には又A,B,C」のように複数のものを含んでもよい。「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は、A,B,C単独のみならずA,Bの組合せA,B,Cの組合せでもよい。「A,Bと/又はC」は、A,B,C単独のみならず、A,Bの2つ、或いはA,B,Cの全部を含んでもよい。本明細書において「Aを含む」「Aを有する」は、A以外のものを含んでもよい。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0077】
10:電磁要素
11:コア
12:コイル
13:ボビン
20:冷却回路
21:第1枝管
22:第2枝管
23:中間冷却領域
24:流体入口
25:流体出口
30:包囲体
31:第1壁
32:第2壁
41:第1接続開口
42:第2接続開口
50:回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10