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特開2024-120887相溶化剤用組成物及びそれを含むリサイクルフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120887
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】相溶化剤用組成物及びそれを含むリサイクルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20240829BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240829BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08L23/26 ZAB
C08L23/00
C08L77/00
C08L67/00
C08L23/08
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025566
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2023027201
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】松本 惇
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK46A
4F100AK46B
4F100AK62A
4F100AK69A
4F100AK69B
4F100AL05A
4F100AL06A
4F100BA02
4F100BA15
4F100JL16A
4F100YY00A
4J002BB03Y
4J002BB05Y
4J002BB20W
4J002BB20X
4J002BB21W
4J002BB21X
4J002BB22Z
4J002CF03Z
4J002CF04Z
4J002CF06Z
4J002CF07Z
4J002CL01Z
4J002CL03Z
4J002FD20W
4J002FD20X
4J002GF00
(57)【要約】
【課題】 ポリオレフィンと混合しても白化の問題が発生しない、リサイクル性の高い多層フィルムに適した材料を提供する。
【解決手段】 密度が0.86~0.98g/cmであり、温度190℃、荷重21.6kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が10~110g/分であるエチレン-α-オレフィンコポリマーが極性基含有モノマーによりグラフト変性された変性ポリオレフィン50~95質量%と、密度が0.86~0.98g/cmであり、温度190℃、荷重21.6kgで測定されるMFRが0.1g/分以上10g/分未満であるエチレン-α-オレフィンコポリマーが極性基含有モノマーによりグラフト変性された変性ポリオレフィン50~5質量%を含む、相溶化剤用組成物、並びにそれを用いた樹脂組成物である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.86~0.98g/cmであり、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が10~110g/分であるエチレン-α-オレフィンコポリマー(1)が極性基含有モノマーによってグラフト変性された変性ポリオレフィン(1-g) 20~95質量%と、
密度が0.86~0.98g/cmであり、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるMFRが0.1g/分以上10g/分未満であるエチレン-α-オレフィンコポリマー(2)が極性基含有モノマーによってグラフト変性された変性ポリオレフィン(2-g) 80~5質量%
を含む、相溶化剤用組成物。
【請求項2】
MFRが2~40g/分である、請求項1記載の相溶化剤用組成物。
【請求項3】
極性基含有モノマーが、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマー、エステル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シラン基含有モノマー、又はグリシジル基含有モノマーである、請求項1記載の相溶化剤用組成物。
【請求項4】
極性基含有モノマーが、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマーである、請求項1記載の相溶化剤用組成物。
【請求項5】
(A)請求項1記載の相溶化剤用組成物 0.1~30質量%、
(B)ポリオレフィン 94.9~20質量%、及び
(C)前記変性ポリオレフィン(1―g)、前記変性ポリオレフィン(2―g)、前記(B)のいずれにも該当しないポリマー 5.0~79質量%
が混練されてなる、樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)がポリアミド、ポリエステル及びエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる群から選ばれる1種以上である、請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A)請求項1記載の相溶化剤用組成物 30~0.1質量%、
(D)ポリオレフィン 50~95質量%とポリアミド、ポリエステル及びEVOHからなる群から選ばれる1種以上 50~5質量%を含む成形品屑 70~99.9質量%、並びに
任意選択的に、(B’)成形品屑に由来しないポリオレフィン 前記相溶化剤用組成物及び前記成形品屑の合計100質量部に対して0質量部~95質量部
が混練されてなる、樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7記載の樹脂組成物を用いて成形されたリサイクルフィルム。
【請求項9】
請求項7記載の樹脂組成物からなる層(I)及び、ポリアミド、ポリエステル及びエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる群から選ばれる1種以上のポリマーからなる層(II)を少なくとも含む、多層フィルム。
【請求項10】
(A)請求項1記載の相溶化剤用組成物 0.1~30質量%、
(B)ポリオレフィン 94.9~20質量%、及び
(C)前記変性ポリオレフィン(1―g)、前記変性ポリオレフィン(2―g)、前記(B)のいずれにも該当しないポリマー 5.0~79質量%
を溶融混練する工程を含むリサイクルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相溶化剤用組成物及びそれを含むリサイクルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミドなどの樹脂は成形が容易であり、樹脂ごとに様々な特長を有しているため、様々な生活資材や産業用資材として広く利用されている。特にポリエチレンやエチレン-α-オレフィンコポリマーのようなポリオレフィンは、コモノマーの組合せによる設計や官能基を有する化合物での変性により物性の細かな制御が可能であり、樹脂成形品の材料として広く利用されている(特許文献1、2)。
【0003】
樹脂は概して加熱することにより溶融し、所望の形への成形が容易である。この性質から、薄く引き伸ばしたフィルム状として、包装材などの用途で樹脂を利用することができる。加えて、光沢、剛性、ヒートシール性、易引裂き性など、樹脂ごとの特長を組み合わせて用いることが可能であるため、種々の樹脂を積層させた多層フィルムとして用いられる。多層フィルムにおける各層は異なる素材でできているので、複数種の樹脂間での均一性を高めるために、必要に応じて接着材が加えられる。
【0004】
樹脂を利用した製品は、利用を排除することが難しいほど生活に密接に関わってきているが、近年の環境意識への高まりに伴い、樹脂による成形品はリサイクル特性を有することが求められている。樹脂は大部分が炭素原子であり、カーボンニュートラルの観点からも、リサイクル可能な樹脂の産業上の重要性は非常に高い(特許文献3)。特に、大量に生産され消費されている包装材をリサイクルフィルムとして活用できるようにすることは重要である。市販される樹脂製品には多様な物性を求められることから複数の成分を含むことが多く、そのような成形品からのリサイクル方法の開発が求められている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平8-509772号公報
【特許文献2】特開2018-119101号公報
【特許文献3】特開2002-201292号公報
【特許文献4】特開2018-502743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多層フィルムの再利用は、市場からの回収品を再利用することと、成形品の製造工程で生じる端材を再利用することにより行われる。しかしながら、多層フィルムの場合少なくとも2種類以上の樹脂が用いられているので、混合されている物質によってはリサイクル性に悪影響を及ぼすことがある。例えばガスバリア性を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)や、光沢、強度、耐ピンホール性に優れるナイロンは包装材用の多層フィルムとして有用な材料であるが、EVOHやポリアミドが含まれているとフィルムの再利用時に白化することがある。特に透明性を求められる用途では、これらの樹脂を含む多層フィルムはリサイクル性に問題を抱えることになる。樹脂と添加剤などの他の成分を分離する技術のようなリサイクルのための手法も開発されているが、リサイクル性の高い樹脂に対する需要は常に存在する。この背景を鑑み本発明は、ポリアミド、EVOHを含有する多層フィルムの端材をポリオレフィンと混合しても白化の問題が発生しない、多層フィルムのリサイクル性を高める材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、相溶化剤の設計により上記課題を解決できることを見出した。具体的には、2種類のエチレン-α-オレフィンコポリマーを各々極性基含有モノマーによりグラフト変性した樹脂を相溶化剤用組成物として用いることで、リサイクル性の高い樹脂組成物を得ることが出来ることを見出した。相溶化剤は、異種の素材どうしを混ぜ合わせるための添加剤である。本発明者らは、相溶化剤の設計により、多層フィルムをリサイクル原料としながら白化の問題が発生せず、さらには物性面でも優れたリサイクル材料の提供を可能とすることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、以下の各項目で特定される相溶化剤用組成物、及び樹脂組成物に関する。
[1]密度が0.86~0.98g/cmであり、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が10~110g/分であるエチレン-α-オレフィンコポリマー(1)が極性基含有モノマーによってグラフト変性された変性ポリオレフィン(1-g) 20~95質量%と、
密度が0.86~0.98g/cmであり、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるMFRが0.1g/分以上10g/分未満であるエチレン-α-オレフィンコポリマー(2)が極性基含有モノマーによってグラフト変性された変性ポリオレフィン(2-g) 80~5質量%
を含む、相溶化剤用組成物。
[2]MFRが2~40g/分である、前記[1]の相溶化剤用組成物。
[3]極性基含有モノマーが、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマー、エステル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シラン基含有モノマー、又はグリシジル基含有モノマーである、前記[1]又は[2]の相溶化剤用組成物。
[4]極性基含有モノマーが、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマーである、前記[1]~[3]のいずれかの相溶化剤用組成物。
[5](A)前記[1]~[4]のいずれかの相溶化剤用組成物 0.1~50質量%、
(B)ポリオレフィン 94.9~20質量%、及び
(C)前記変性ポリオレフィン(1-g)、前記変性ポリオレフィン(2-g)、前記(B)のいずれにも該当しないポリマー 5.0~79質量%
が混練されてなる、樹脂組成物。
[6]前記(C)がポリアミド、ポリエステル及びエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる群から選ばれる1種以上である、前記[5]の樹脂組成物。
[7](A)前記[1]~[4]のいずれかの相溶化剤用組成物 30~0.1質量%、
(D)ポリオレフィン 50~95質量%とポリアミド、ポリエステル及びEVOHからなる群から選ばれる1種以上 50~5質量%を含む成形品屑 70~99.9質量%、並びに
任意選択的に、(B’)成形品屑に由来しないポリオレフィン 前記相溶化剤用組成物及び前記成形品屑の合計100質量部に対して0質量部~95質量部
が混練されてなる、樹脂組成物。
[8]前記[7]の樹脂組成物を用いて成形されたリサイクルフィルム。
[9]前記[7]の樹脂組成物からなる層(I)及び、ポリアミド、ポリエステル及びエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる群から選ばれる1種以上のポリマーからなる層(II)を少なくとも含む、多層フィルム。
[10](A)前記[1]~[4]のいずれかの相溶化剤用組成物 0.1~30質量%、
(B)ポリオレフィン 94.9~20質量%、及び
(C)前記変性ポリオレフィン(1―g)、前記変性ポリオレフィン(2―g)、前記(B)のいずれにも該当しないポリマー 5.0~79質量%
を溶融混練する工程を含むリサイクルフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、多層フィルムをリサイクル原料として使用しつつも白化の問題が発生しない相溶化剤用組成物と樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の樹脂について、項目毎に詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本明細書において、共重合体(コポリマー)とは、少なくとも一種の単位(A)と、少なくとも一種の単位(B)とを含む、二元系以上の共重合体を意味する。
【0011】
(1)エチレン-α-オレフィンコポリマー
本発明の相溶化剤用組成物は、主成分として用いられるエチレン-α-オレフィンコポリマー(以下、「コポリマー(1)」ということがある)が極性基含有モノマーによってグラフト変性された変性ポリオレフィン(1-g)と、もう1種類のエチレン-α-オレフィンコポリマー(以下、「コポリマー(2)」ということがある)が極性基含有モノマーによってグラフト変性された変性ポリオレフィン(2-g)とを含むものであり、これらを互いに混練することによって得ることができる。コポリマー(1)及びコポリマー(2)としては、下記条件を満たすものを選択、又は設計して重合反応により得ることが出来る。
【0012】
エチレン-α-オレフィンコポリマーは、エチレンに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位とを有する共重合体であり、一般的にエチレンとα-オレフィンとの共重合により得られる。エチレン-α-オレフィンコポリマーは極性基を含有しない。エチレンとしては、石油原料由来の他、植物原料由来等の非石油原料由来のエチレンを用いることができる。α-オレフィンは構造式:CH=CHRで表される、炭素数3~20のα-オレフィンである(Rは炭素数1~18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)。α-オレフィンの炭素数は、より好ましくは、3~12である。
【0013】
α-オレフィンの具体例として、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、及び4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
エチレン-α-オレフィンの例としては、例えば、エチレン-プロピレン、エチレン-1-ブテン、エチレン-1-ヘキセン、エチレン-1-オクテン、プロピレン-1-ブテン、プロピレン-1-ヘキセン、及びプロピレン-1-オクテン等が挙げられる。また、α-オレフィンは2種類以上を組合せて用いてもよい。この場合の組み合わせとしては、例えば、エチレン-プロピレン-1-ブテン、エチレン-プロピレン-1-ヘキセン、エチレン-プロピレン-1-オクテン、プロピレン-1-ブテン-ヘキセン、及びプロピレン-1-ブテン-1-オクテン等が挙げられる。コポリマー(1)及びコポリマー(2)には、これらのエチレン又はα-オレフィンを、特に制限されることなく使用することができる。
【0014】
エチレン-α-オレフィンコポリマーの組成比率は特に限定されないものの、エチレンの量が、共重合体の全molに対して、50~100mol%であってもよく、70~100mol%であってもよく、90~100mol%であってもよい。また、エチレンとα-オレフィンとは、ランダムに重合したランダムコポリマーであってもよく、各々のモノマーが重合した部分が結合した状態であるブロックコポリマーであってもよい。
【0015】
エチレン-α-オレフィンコポリマーは、ポリマーの分子鎖中に分岐を有する構造であってもよく、分岐が少ない又は分岐の無い直鎖状の構造であってもよい。ここで「直鎖状」の構造とは、その分子構造は直鎖状の構造であって、長鎖分岐を全く含まない構造か、機械的強度に影響を与えない程度の少量の長鎖分岐を含む構造であることを示す。ポリマー分子が直鎖状であるかどうかは、例えば、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δが40度以上であることによって判定することができる。位相角δを測定するための具体的手段としては、特開2019-099798号公報に記載の方法により測定することができる。また、このようなコポリマーとして、日本ポリエチレン株式会社製ノバテック(登録商標)シリーズのような市販品を用いることができる。
【0016】
コポリマー(1)は、その密度が0.860~0.980g/cmの範囲である。好ましくは0.865~0.960g/cm、より好ましくは0.870~0.950g/cmの範囲である。密度が0.860g/cmを下回ると、剛性や耐薬品性、耐燃料油性の低下につながり、0.980g/cmを超えると耐衝撃性や耐クリープ性能といった機械特性が不十分となることがある。
【0017】
コポリマー(1)はそのメルトフローレート(MFR)が測定温度190℃、荷重2.16kgにおいて10g/分以上110g/分以下である。好ましくは15g/分以上、より好ましくは20g/分以上であり、好ましくは80g/分以下、より好ましくは60g/分以下である。MFRが110g/分を超える場合、低粘度のためペレット状に加工することが困難であったり、耐衝撃性や耐クリープ性能といった機械特性が不十分となることがある。
【0018】
コポリマー(1)は分子量において特に制限はされないが、好ましくは、重量平均分子量(Mw)として、500~1,000,000であり、より好ましくは1,000~500,000であり、さらに好ましくは10,000~300,000である。分子量がこの範囲であれば、十分な相溶性を発揮し、物性低下を起こす恐れも小さい。
【0019】
コポリマー(1)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、好ましくは1.5~4.0、より好ましくは1.6~3.3、更に好ましくは1.7~3.0の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では成形性を始めとして各種加工性が充分でなくなる場合があり、4.0を超えると機械物性が劣るものとなる場合がある。なお、本開示においては(Mw/Mn)を分子量分布パラメーターと表現することがある。重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnを算出するものである。GPCの測定は、市販の装置、測定条件を用いて測定することができる。具体的な方法としては、特開2020-117712号公報に記載の方法を用いることができる。
【0020】
本発明の相溶化剤用組成物は、上記コポリマー(1)とは異なるエチレン-α-オレフィンコポリマー(以下「コポリマー(2)」ということがある)を含む。コポリマー(2)に用いられる原料、製造方法、密度等の諸パラメーターの範囲は、以下に示すMFRの範囲を除き、コポリマー(1)と共通である。
【0021】
コポリマー(2)はそのメルトフローレート(MFR)が測定温度190℃、荷重2.16kgにおいて0.1g/分以上10g/分未満である。好ましくは0.5g/分以上、より好ましくは1.0g/分以上であり、好ましくは8g/分以下、より好ましくは6g/分以下である。MFRが0.1g/分を下回る場合、成形時に流動性が不足する可能性があり、成形安定性が損なわれる恐れがある。
【0022】
相溶化剤用組成物におけるコポリマー(1)の量は、コポリマー(1)とコポリマー(2)の合計を100質量%としたときに20~95質量%の範囲である。50~90質量%の範囲であることが好ましく、60~85質量%の範囲であることがより好ましい。コポリマー(1)にコポリマー(2)を添加することで相溶化剤としての機能を発現しつつ加工性を付与できる。コポリマー(2)の量は、コポリマー(1)とコポリマー(2)の合計を100質量%としたときに5~80質量%の範囲である。10~45質量%の範囲であることが好ましく、15~40質量%の範囲であることがより好ましい。
【0023】
エチレン-α-オレフィンコポリマーの製造方法は特に限定されないが、例えば、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用いた高中低圧法、メタロセン系触媒を用いた高中低圧法及びその他の公知の方法を例示する事ができる。製造方法としては、例えば、特開2015-180714号公報又は同公報に引用された文献に記載された各種の製造方法によって製造する事が可能である。
【0024】
コポリマー(1)及びコポリマー(2)は、混合物として極性基含有モノマーによりグラフト変性することができる。混合の方法は均一な混合を達成することができるものであれば特に制限されず、当業者に公知の方法によって行われる。具体的には、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、往復式混練機(BUSS KNEADER)等が一般的に用いられ、その中でも単軸押出機、二軸押出機が生産性の面からより好適に用いられる。
【0025】
(2)極性基含有モノマー
本発明の相溶化剤用組成物は、上記コポリマー(1)及びコポリマー(2)を各々極性基含有モノマーによりグラフト変性した変性ポリオレフィンを含む組成物である。以下、コポリマー(1)をグラフト変性した変性ポリオレフィンを(1-g)、コポリマー(2)をグラフト変性した変性ポリオレフィンを(2-g)ということがある。ポリオレフィン樹脂に対し極性基含有モノマーをグラフト変性させる方法は、例えば、特開昭50-4144号公報に開示された方法等の当業者に公知の方法を適宜使用することができる。グラフト変性した変性ポリオレフィンを含む相溶化剤用組成物を用いることで、光学特性、グロスやヘイズの値、透明性に優れたフィルムを与える樹脂組成物を得ることができ、高いリサイクル性を達成することができる。
【0026】
変性ポリオレフィン(1-g)及び(2-g)に含有される極性基は、公知の極性基を制限無く適用できるが、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基、アミノ基、エステル基、シラノール基、グリシジル基等が好ましい例として挙げられ、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基をより好ましく用いる事ができる。
【0027】
グラフト変性の方法は限定されないが、例えば、押出機等によって溶融状態としたポリエチレン樹脂に、反応開始剤を用いて極性基含有モノマーを反応させる溶融法、ポリエチレン樹脂を溶媒に溶解し、反応開始剤を用いて極性基含有モノマーを反応させる溶液法等が知られており、いずれも好適に用いる事ができるが、生産コストや環境負荷の面から溶融法がより好適に選択される。
【0028】
(2-1)溶融法
グラフト変性方法のうち、溶融法の一例を以下に示す。
グラフト変性を実施する溶融混練装置は限定されないが、コポリマー(1)及びコポリマー(2)の混練に使用することができる装置を利用することができる。
【0029】
(2-2)反応開始剤
グラフト変性に用いられる反応開始剤としては、加熱等によって分解しラジカルを発生させるラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤としては、有機過酸化物、ジヒドロ芳香族化合物、ジクミル化合物等が挙げられる。該有機過酸化物としては、例えば、ヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジアルキル(アリル)パーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、ジプロピオニルパーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パーオキシ琥珀酸、パーオキシケタール、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等が好適に用いられる。
【0030】
ジヒドロ芳香族化合物としては、ジヒドロキノリン又はその誘導体、ジヒドロフラン、1,2-ジヒドロベンゼン、1,2-ジヒドロナフタレン、9,10-ジヒドロフェナントレン等が挙げられる。
ジクミル化合物としては、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジ(p-メチルフェニル)ブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジ(p-ブロモフェニル)ブタン等が例示され、特に2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタンが好ましく用いられる。
【0031】
(2-3)極性基含有モノマー
グラフト変性に用いられる極性基含有モノマーとしては、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマー(a)、エステル基含有モノマー(b)、アミノ基含有モノマー(c)、シラン基含有モノマー(d)、グリシジル基含有モノマー(e)等が例示され、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマー(a)がより好ましく、その中でも酸無水物基含有モノマーが好適に用いられる。極性基含有モノマーは1種類でもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0032】
カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマー(a)としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、2,7-オクタジエン-1-イルコハク酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸などの不飽和ジカルボン酸又はこれらの無水物、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、酢酸ビニル、ペンテン酸などの不飽和モノカルボン酸が挙げられ、無水マレイン酸、2,7-オクタジエン-1-イルコハク酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。無水マレイン酸はビニル基を有しておりポリオレフィンに導入しやすいこと、共重合・グラフト変性いずれも可能で反応性が高く、異種材料と化学反応して接着剤や相溶化剤として使用できるため、好ましい。
【0033】
エステル基含有モノマー(b)としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられるが、特に好ましいものとしてはアクリル酸メチルを挙げることができる。
【0034】
アミノ基含有モノマー(c)としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0035】
シラン基含有モノマー(d)としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセチルシラン、ビニルトリクロロシランなどの不飽和シラン化合物が挙げられる。
【0036】
グリシジル基含有モノマー(e)としては、1,2-エポキシ-9-デセン、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0037】
(2-4)グラフト変性の処理温度
グラフト変性の処理温度は、ポリエチレン樹脂の劣化、極性基含有モノマーの分解、使用する過酸化物の分解温度などを考慮して適宜選択されるが、前記の溶融混練法を例に挙げると、通常190~350℃であり、とりわけ200~300℃が好適である。
【0038】
上記に例示した溶融混練法によって、ポリオレフィン樹脂に極性基含有モノマーをグラフト変性させる場合、溶融混練時の樹脂温度を250℃以上とすることで、モノマーの高付加率を実現する事ができる。また、樹脂温度が310℃を超えるとポリエチレン自体の劣化が加速されるため、ゲルや樹脂焼けなどが激増し、品質を低下させる。
また、このような高温で反応を行なうため、押出機や反応器などの内部への空気の混入はできるだけ抑える必要があり、また溶融混練では、押出機内などでの樹脂の長時間滞留も避けなければならない。このため、原料樹脂投入口付近での窒素フィードを行なうことが、極めて好ましい。
【0039】
本発明の相溶化剤用組成物をグラフト変性によって製造するにあたり、一般に使用されている酸化防止剤などの添加剤を添加することは好ましくない。例えば、フェノール類などのポリオレフィン用酸化防止剤の添加は、酸化防止剤と反応開始剤が拮抗し、未反応の極性基含有モノマーを増加させる可能性がある。
【0040】
(3)相溶化剤用組成物
本発明の相溶化剤用組成物は、上記コポリマー(1)が極性基含有モノマーによってグラフト変性された変性ポリオレフィン(1-g)及びコポリマー(2)が極性基含有モノマーによってグラフト変性された変性ポリオレフィン(2-g)を含むものである。相溶化剤用組成物の有する物性や相溶化剤用組成物に含まれる極性基の導入量は、上記各成分のグラフト変性の結果として得られるものであれば特に制限されないが、例えば極性基が酸無水物基の場合、相溶化剤用組成物に含まれる酸無水物基の量として以下の計算方法により算出したC=O値が、一般的には0.001~10.0の範囲、より好ましくは0.01~5.0の範囲、0.02~3.0の範囲であるとさらに好適である。相溶化剤用組成物に含まれる酸無水物基の導入量が0.001より低いと異種材料との相溶性が十分ではなくなることがあり、10.0を超えると、ポリエチレン樹脂との相溶性、樹脂組成物としての機械物性が低下することがある。C=O値の計算はフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)での測定に基づいて行われる。具体的な計算としてはまず、FT-IR測定により、4250cm-1、1790cm-1、1710cm-1の吸光度をそれぞれ求める。4250cm-1の吸収はメチレン鎖(-CH-)に、1790cm-1、及び1710cm-1の吸収は酸無水物基内のカルボニル基にそれぞれ対応する。4250cm-1の吸光度をI0、1790cm-1の吸光度をI1、1710cm-1の吸光度をI2として、(I1+I2)/I0の値をC=O値とする。
【0041】
相溶化剤用組成物は、樹脂組成物に配合した際の成形性の観点から、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるMFRが2~40g/分であることが好ましく、5~20g/分であることがより好ましい。MFRが2g/10分未満では、樹脂組成物の流動性を低下させて成形が難しくなるおそれがあり、30g/10分を超えると、低粘度のためペレット状に加工することが困難であったり、樹脂組成物の耐衝撃性又は耐久性が低下するおそれがある。
【0042】
(4)樹脂組成物
本発明の一態様は、(A)0.1~50質量%の上記相溶化剤用組成物、(B)94.9~20質量%のポリオレフィン及び(C)5~79質量%の、前記変性ポリオレフィン(1-g)、前記変性ポリオレフィン(2-g)、前記(B)のいずれにも該当しないポリマーからなる群から選ばれる1種以上が混練されてなる、樹脂組成物に関する。本発明の相溶化剤用組成物以外の極性基含有ポリオレフィンを含んでいても構わない。樹脂組成物における(A)上記相溶化剤用組成物の量は、上記(A)~(C)の合計100質量%に対してより好ましくは1~40質量%であり、さらに好ましくは2~35質量%である。
【0043】
相溶化剤用組成物に混合して用いることができる(B)ポリオレフィンとしては、エチレン又はα-オレフィンの重合体、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、エチレンとノルボルネンなどのオレフィンとの共重合体、極性基含有のエチレン又はα-オレフィンの重合体、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、エチレンとノルボルネンなどのオレフィンとの共重合体等が挙げられ、成形の用途に応じて適宜選択することができ、1種でも2種以上でも構わない。ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィンとの共重合体が好ましい例として挙げられる。
【0044】
樹脂組成物における(B)ポリオレフィンの量は、上記(A)~(C)の合計100質量%に対して94.9~20質量%の範囲で、成形の用途、対象に合わせて適宜設定することができる。好ましい範囲としては85~40質量%であり、より好ましくは80~40質量%である。
【0045】
相溶化剤用組成物に混合して用いることができる、前記変性ポリオレフィン(1-g)、前記変性ポリオレフィン(2-g)、前記(B)のいずれにも該当しないポリマー(C)としては、樹脂フィルムの原料として用いられるポリマーであれば特に制限はされず、主鎖又は側鎖に官能基を有するポリマーを用いることができる。官能基としては、酸素、窒素、硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子を有する官能基、側鎖の場合は芳香環又はハロゲン原子が例として挙げられる。(C)の具体的な例としては、ポリアミド、ポリエステル、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル樹脂、及びポリフェニレンエーテル等が挙げられる。中でもポリアミド、ポリエステル、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。相溶化剤用組成物に混合して用いることができるポリアミドとしては、ポリカプラミド(6-ナイロン)、ポリヘキサメチレンアジポアミド(6,6-ナイロン)、ポリヘキサメチレンセバカミド(6,10-ナイロン)、ポリウンデカンアミド(11-ナイロン)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(7-ナイロン)及びポリ-ω-アミノノナン酸(9-ナイロン)等が挙げられる。
【0046】
相溶化剤用組成物に混合して用いることができるポリエステルとしては、芳香環含有ポリエステル及び脂肪族ポリエステルが挙げられる。ここで、芳香環含有ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリアルキレン(C2~24)テレフタレート;ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート等のポリアルキレン(C2~24)イソフタレート;ポリ-p-フェニレンマロネート、ポリ-p-フェニレンアジペート、ポリ-p-フェニレンテレフタレート等のポリ-p-フェニレンエステル等が挙がられ、脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0047】
相溶化剤用組成物に混合して用いることができるエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、分子量、エチレン含有量、密度等の諸物性によっては特に制限されず、任意のものを用いることができる。
これらのポリアミド、ポリエステル、EVOHは、それ自体既知の通常用いられるものであり、必要に応じて、市販品を購入して使用することができる。
【0048】
上記ポリアミド、ポリエステル、EVOHの量は、これらの合計が上記(A)~(C)の合計100質量%に対して5~79質量%の範囲で、成形の用途、対象に合わせて適宜設定することができる。好ましい範囲としては5~75質量%であり、より好ましくは5~70質量%である。樹脂組成物がポリアミド、ポリエステル、EVOHのうち2種類以上を含む場合は、これら各々の比率は、任意の範囲であることができる。
【0049】
本発明の別の一態様は、上記相溶化剤用組成物と成形品屑が混練されてなる樹脂組成物に関する。本発明の相溶化剤用組成物は、樹脂の白化を抑えることができるためリサイクル性の向上をもたらすことができる。ここで本明細書における「リサイクル」とは、成形品の少なくとも一部に成形品屑のような少なくとも一度成形工程に付された樹脂を利用することを指す。
【0050】
樹脂を用いたフィルム等の成形では、必要な部分以外の端材が生じる。このような成形時の端材や利用された後で回収された成形品はリサイクルされることになるが、成形時に押出機内で少なくとも一度溶融状態になることを経ている等の事情で物性に変化が生じていることがある。特に多層フィルムの場合は複数の材料を用いることから物性の変化が懸念され、ポリアミドやEVOHのような白化の原因となるものもある。本発明は、上記相溶化剤用組成物を用いることにより、そのような変化を抑え、高いリサイクル性を達成可能としている。
【0051】
成形品屑は、一度以上成形の操作に付されて回収された物品由来の樹脂組成物であれば特に制限されず、成形品の製造過程で生じる端材、製品として流通した後リサイクル品として回収された製品をともに含むことができる。端材、リサイクル品ともに、二度以上リサイクルされたものを含んでいてもよい。成形品屑として、具体的には、(d1)ポリオレフィンと(d2)ポリアミド、ポリエステル及びEVOHからなる群から選ばれる1種以上を含む混合物が用いられる。(d1)と(d2)の量比は、回収された成形品屑がどのような成形品に由来するかによっても変動するが、例えば、(d1)ポリオレフィン 50~95質量%と(d2)ポリアミド、ポリエステル及びEVOHからなる群から選ばれる1種以上 5~50質量%の割合とすることができる。成形品屑がポリアミド、ポリエステル、EVOHのうち2種類以上を含む場合は、これら各々の比率は、任意の範囲であることができる。
【0052】
リサイクルされる樹脂を含む樹脂組成物としては、上記成形品屑と、相溶化剤とが混練されてなる樹脂組成物を用いることができる。成形品屑と相溶化剤との混合割合は、成形品屑と相溶化剤との合計を100質量%としたときに、例えば成形品屑70~99.9質量%に対して相溶化剤30~0.1質量%の割合とすることができる。
【0053】
さらに、樹脂組成物には、成形品屑に由来しないポリオレフィン(バージン材)を混合して用いることができる。成形品屑に由来しないポリオレフィンとしては、エチレン又はα-オレフィンの重合体、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、エチレンとノルボルネンなどのオレフィンとの共重合体、極性基含有のエチレン又はα-オレフィンの重合体、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、エチレンとノルボルネンなどのオレフィンとの共重合体等が挙げられ、成形の用途に応じて適宜選択することができ、1種でも2種以上でも構わない。ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィンとの共重合体が好ましい例として挙げられ、中でもLDPE、LLDPEが好ましい。
成形品屑に由来しないポリオレフィンを用いるときは、成形品屑と相溶化剤との合計を100質量部としたときに、0質量部超~95質量部の量で用いることができ、物性を良好に保つために50質量部以上が好ましく70質量部以上がさらに好ましく、リサイクル性の観点においては50質量部以下が好ましく30質量部以上がさらに好ましい。
【0054】
本発明の樹脂組成物の製造方法に特に制限はなく、それ自体既知の方法で製造することができる。すなわち、樹脂組成物の用途に応じた組成となるように、上記した各成分を、適当な機器により、溶融混練することにより製造できる。
【0055】
各成分は、必要に応じて、またその物性に応じて、任意の形態で配合することができる。たとえば、固体で配合してもよいし、溶剤に溶解した溶液として、あるいは、溶剤に分散させたスラリーとして配合してもよい。
【0056】
溶融混練機としては、一軸押出機、二軸押出機、コニカル押出機、ストレート押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ヘンシェルミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー、コニーダー等の、樹脂組成物の製造に通常用いられるものが挙げられる。
【0057】
溶融混練に際して、各成分の分散を良好にすることができる混練方法を選択することが好ましく、通常は一軸押出機、二軸押出機、コニカル押出機やブラベンダープラストグラフを用いるのが好ましい。これらの機器を使用する混練では、各成分の配合物を同時に混練しても、各成分を分割して混練してもよい。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、それ自体既知の各種方法により成形し、各種用途の成形体とすることができる。成形方法としては、例えば、射出成形(ガス射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、中空成形、カレンダー成形、インフレーション成形、一軸延伸フィルム成形、二軸延伸フィルム成形等が挙がられる。このうち、押出成形、インフレーション成形がより好ましい。したがって本発明の一態様は、前記樹脂組成物を用いて成形された、リサイクルフィルムに関する。本発明のリサイクルフィルムは、樹脂の機械的な物性を維持しつつも白化することを防ぐことができ、リサイクル性に優れている。
【0059】
本発明の樹脂組成物は、それ単独で成形を行い単層のフィルムにすることもできるが、特に多層フィルムの成形に用いることができる。多層フィルムの例は、前記樹脂組成物からなる層(I)及び、ポリアミド、ポリエステル及びエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる群から選ばれる1種以上のポリマーからなる層(II)を少なくとも含む、多層フィルムである。層(II)におけるポリアミド、ポリエステル及びEVOHは、先に例示したものを用いることができる。多層フィルムが3層以上の層を有するものである場合には、層(I)又は層(II)に該当する層を2つ以上有していてもよく、さらに異なる1以上の層(III)を含んでいてもよい。多層フィルムにおける層(III)の配置は特に制限されず、どの位置の層を構成していてもよく、層(I)及び層(II)の間に配置されていてもよい。上記層(III)に用いる樹脂の種類は特に限定されないが、層間の接着層としての樹脂や、バリア層としての樹脂など、層(III)の役割に応じて適切な樹脂を選択することができる。例えば接着層用の樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、硫黄元素を含有するポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0060】
単層又は多層のリサイクルフィルムの製造方法は、(A)前記相溶化剤用組成物 0.1~30質量%、(B)ポリオレフィン 94.9~20質量%、及び(C)前記変性ポリオレフィン(1―g)、前記変性ポリオレフィン(2―g)、前記(B)のいずれにも該当しないポリマー 5.0~79質量%を溶融混練する工程を含む。溶融混練された樹脂をフィルム状の成形体とする方法は上記のとおりである。多層フィルムの場合、共押出多層Tダイ法のような多層押し出し法で複数の異なる層を有するフィルムを一段階工程で作ってもよいし、インフレーション法、単層押し出し法等で作られた各々の層に対応する単層のフィルムを接着剤や熱溶着によって張り合わせる等の手法によって作ってもよい。
【実施例0061】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における物性の測定と評価は、以下に示す方法によって実施した。
【0062】
相溶化剤用組成物及びそれを用いた樹脂組成物の各種物性は、以下のようにして測定した。
(1)MFR
メルトフローレイト(MFR)は、JIS K7210:2014に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定した。
(2)密度
JIS K7112:1999に準拠し、D法で測定した。
(3)酸無水物基含有量(C=O値)
以下条件にてプレスシートを作製し赤外吸収スペクトルを測定した。赤外吸収スペクトルの結果から、合計のC=O値を算出した。
(プレスシート作製)
加熱条件:温度180℃、時間1min
(赤外吸収スペクトル測定)
測定装置:FT-IR6100(日本分光株式会社製)
測定法:透過法
合計のC=O値:以下の式より算出した。
合計のC=O値=(I1+I2)/I0
I1:1790cm-1の吸収のピーク高さ
I2:1710cm-1の吸収のピーク高さ
I0:4250cm-1の吸収のピーク高さ
【0063】
実施例及び比較例における樹脂組成物の特性は、以下のようにして測定した。
(1)引張破壊応力、引張破壊呼びひずみ、引張弾性率
・引張破壊応力、引張破壊呼びひずみ:JISK7127に基づき、以下の装置を用いて評価した。
装置:テンシロン万能試験機(株式会社オリエンテック製)
試験片:JISK7127 タイプ5
チャック間距離:65mm
引張速度:500mm/min
測定環境:温度23℃、湿度50%
・引張弾性率:JIS K7127に基づき、以下の装置を用いて引張弾性率を評価した。
装置:テンシロン万能試験機(株式会社オリエンテック製)
試験片幅:10mm
チャック間距離:100mm
引張速度:25mm/min
測定環境:温度23℃、湿度50%
(2)エルメンドルフ引裂強度
JIS K7128-2に基づき、以下の装置を用いてエルメンドルフ引裂強度を評価した。なお、測定方向はフィルムの流れ方向に対するその垂直方向(TD)及び水平方向(MD)の値である。
装置:デジタルエルメンドルフ引裂試験機 型式SA(株式会社東洋精機製作所製)
測定環境:温度23℃、湿度50%
(3)フィルムインパクト値
東洋精機製作所製フィルムインパクトテスター(FILM・IMPACT・TESTER:以下、単に「試験機」という)を用い、単位フィルム厚みあたりの貫通破壊に要した仕事量を測定した。具体的には、試験フィルムを23℃-50%の雰囲気に保存し、状態調節を行った後、試験機に試験フィルムを直径50mmのホルダーにて固定し、1インチ(25.4mm)の半球型金属を試験フィルムの内層面から貫通部で打撃させ、貫通破壊に要した仕事量を測定した。その時、荷重は除去し、最大目盛り(仕事量)が1.5Jとなるようにした。そして、仕事量をフィルム厚みで除した値を、フィルムインパクト値とした。
(4)ダートドロップインパクト強度
JIS K7124に基づき、A法で測定した。
測定環境:温度23℃、湿度50%
(5)ヘイズ(%)
厚さ100μmのプレスシートを用い、JIS-K7136-2000に準拠してHazeを測定し、その測定値(外部ヘイズ)によって透明性を評価した。並行して、測定値へのシート表面の影響を除去する為、流動パラフィンを満たした石英セルにプレスシートを浸漬した状態でのHaze、すなわち内部ヘイズ(%)を測定した。
【0064】
実施例1
[PE-1の製造]
1.触媒調製
触媒の調製は、特表平7-508545号公報に記載された方法で実施した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
2.重合
内容積1.5リットルの攪拌式オートクレーブ型連続反応器を反応器内の圧力を130MPaに保ち、エチレンと1-ヘキセンとの混合物を1-ヘキセンの組成が67重量%となるように40kg/時の割合で原料ガスを連続的に供給した。また、上記触媒溶液を連続的に供給し、重合温度が166℃を維持するようにその供給量を調整した。1時間当たりのポリマー生産量は約4.4kgであった。反応終了後、1-ヘキセン含有量=16重量%、MFR=47.0g/10分、密度0.896g/cm、Mw/Mn=2.7であるエチレン・1-ヘキセン共重合体(PE-1)を得た。
【0065】
[PE-2の製造]
1.触媒調製
PE-1の製造と同様にして調製した。
2.重合
内容積1.5リットルの攪拌式オートクレーブ型連続反応器を反応器内の圧力を130MPaに保ち、エチレンと1-ヘキセンとの混合物を1-ヘキセンの組成が64重量%となるように40kg/時の割合で原料ガスを連続的に供給した。また、上記触媒溶液を連続的に供給し、重合温度が140℃を維持するようにその供給量を調整した。1時間当たりのポリマー生産量は約2.0kgであった。反応終了後、1-ヘキセン含有量=15重量%、MFR=2.2g/10分、密度0.898g/cm、Mw/Mn=2.3であるエチレン・1-ヘキセン共重合体(PE-2)を得た。
【0066】
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)としてのPE-1を80重量部とコポリマー(2)としてのPE-2を20重量部に無水マレイン酸0.8重量部及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン0.016重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで十分混合した後、58mm二軸押出機を用いて溶融混練し、MFR12.0g/10min、密度0.888g/cm、C=O値2.1のペレット状の実施例1の相溶化剤用組成物を得た。
【0067】
[樹脂組成物の製造]
直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名:ノバテックLL、グレード:UF843)50重量部、ポリアミド6(東レ社製、製品名:アミラン、グレード:CM1017)30重量部、極性基含有ポリエチレン(三菱ケミカル社製、製品名:モディック、グレード:M522)20重量部に相溶化剤用組成物30重量部を添加し、二軸押出機で混練して実施例1の樹脂組成物を得た。
【0068】
[樹脂組成物の成形]
実施例1の樹脂組成物をフィルム成形機で押出、厚み70μmのフィルムを得た。
【0069】
実施例2
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)としてのPE-1を70重量部とコポリマー(2)としてのPE-2を30重量部にした以外は実施例1と同様にして、MFR7.8g/10min、密度0.897g/cm、C=O値2.0のペレット状の実施例2の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0070】
実施例3
相溶化剤用組成物を5重量部((A)相溶化剤、(B)ポリオレフィン、(C)PE-1、PE-2、ポリオレフィンのいずれとも異なる樹脂の合計を100質量%とした場合の4.8質量%)とした以外は実施例1と同様にして実施例3の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0071】
実施例4
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)としてのPE-1の使用量を95重量部とコポリマー(2)としてのPE-2の使用量を5重量部にした以外は実施例1と同様にして、MFR22.2g/10min、密度0.897g/cm、C=O値1.8のペレット状の実施例4の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0072】
実施例5
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)としてのPE-1の使用量を90重量部とコポリマー(2)としてのPE-2の使用量を10重量部にした以外は実施例1と同様にして、MFR19.0g/10min、密度0.897g/cm、C=O値1.8のペレット状の実施例5の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0073】
実施例6
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)としてのPE-1の使用量を55重量部とコポリマー(2)としてのPE-2の使用量を45重量部にした以外は実施例1と同様にして、MFR5.6g/10min、密度0.896g/cm、C=O値2.4のペレット状の実施例6の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0074】
実施例7
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)としてのPE-1の使用量を30重量部とコポリマー(2)としてのPE-2の使用量を70重量部にした以外は実施例1と同様にして、MFR3.0g/10min、密度0.897g/cm、C=O値2.7のペレット状の実施例7の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0075】
実施例8
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)をエチレン-プロピレン-ヘキセンコポリマー(日本ポリエチレン社製、製品名:カーネル、グレード:KJ640T、MFR:30.0g/10min、密度:0.880g/cm)に変更した以外は実施例2と同様にして、MFR9.3g/10min、密度0.889g/cm、C=O値2.4のペレット状の実施例8の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0076】
実施例9
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)を直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名:ノバテックLL、グレード:UJ890、MFR:105.0g/10min、密度:0.931g/cm)に変更した以外は実施例2と同様にして、MFR18.6g/10min、密度0.921g/cm、C=O値1.7のペレット状の実施例9の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0077】
実施例10
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)を高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名:ノバテックHD、グレード:HJ590N、MFR:40.0g/10min、密度:0.960g/cm)に変更した以外は実施例2と同様にして、MFR11.4g/10min、密度0.941g/cm、C=O値2.0のペレット状の実施例10の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0078】
実施例11
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)を直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名:ノバテックLL、グレード:US370GN、MFR:16.0g/10min、密度:0.921g/cm)に変更した以外は実施例2と同様にして、MFR6.75g/10min、密度0.915g/cm、C=O値2.1のペレット状の実施例11の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0079】
実施例12
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(2)をエチレン-プロピレン-ヘキセンコポリマー(日本ポリエチレン社製、製品名:カーネル、グレード:KM340T、MFR:3.5g/10min、密度:0.880g/cm)に変更した以外は実施例2と同様にして、MFR9.90g/10min、密度0.894g/cm、C=O値2.1のペレット状の実施例12の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0080】
実施例13
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(2)を直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名:ノバテックLL、グレード:F30HG、MFR:2.0g/10min、密度:0.922g/cm)に変更した以外は実施例2と同様にして、MFR10.2g/10min、密度0.904g/cm、C=O値2.1のペレット状の実施例13の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0081】
実施例14
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(2)を直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名:ノバテックLL、グレード:SF8402G、MFR:2.9g/10min、密度:0.930g/cm)に変更し、無水マレイン酸の使用量を1.6重量部に変更した以外は実施例2と同様にして、MFR8.5g/10min、密度0.910g/cm、C=O値3.2のペレット状の実施例14の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0082】
実施例15
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(2)をエチレン-プロピレンコポリマー(日本ポリエチレン社製、製品名:カーネル、グレード:KS550、MFR:8.0g/10min、密度:0.886g/cm)に変更した以外は実施例2と同様にして、MFR15.8g/10min、密度0.895g/cm、C=O値2.2のペレット状の実施例15の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0083】
実施例16
[樹脂組成物の製造]
直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名:ノバテックLL、グレード:UF843)の使用量を70重量部、ポリアミド6(東レ社製、製品名:アミラン、グレード:CM1017)の使用量を30重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、ペレット状の実施例16の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0084】
実施例17
相溶化剤用組成物の使用量を7重量部((A)相溶化剤、(B)ポリオレフィン、(C)PE-1、PE-2、ポリオレフィンのいずれとも異なる樹脂の合計を100質量%とした場合の6.5質量%)とした以外は実施例1と同様にしてペレット状の実施例17の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0085】
実施例18
相溶化剤用組成物の使用量を10重量部((A)相溶化剤、(B)ポリオレフィン、(C)PE-1、PE-2、ポリオレフィンのいずれとも異なる樹脂の合計を100質量%とした場合の9.1質量%)とした以外は実施例1と同様にしてペレット状の実施例18の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0086】
実施例19
相溶化剤用組成物の使用量を15重量部((A)相溶化剤、(B)ポリオレフィン、(C)PE-1、PE-2、ポリオレフィンのいずれとも異なる樹脂の合計を100質量%とした場合の13.0質量%)とした以外は実施例1と同様にしてペレット状の実施例19の相溶化剤用組成物、樹脂組成物及びフィルムを得た。
【0087】
比較例1
[相溶化剤用組成物の製造]
コポリマー(1)としてのPE-1を100重量部に無水マレイン酸0.8重量部及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン0.016重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで十分混合した後、58mm二軸押出機を用いて溶融混練したが、コポリマー(2)を含まないため、高いMFR、低粘度であるためペレタイズが困難であり、ペレット状の相溶化剤用組成物を得ることができなかった。
【0088】
比較例2
直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名:ノバテックLL、グレード:UF843)50重量部、ポリアミド6(東レ社製、製品名:アミラン、グレード:CM1017)30重量部、極性基含有ポリエチレン(三菱ケミカル社製、製品名:モディック、グレード:M522)20重量部を二軸押出機で混練して比較例2の樹脂組成物を得た。
【0089】
[樹脂組成物の成形]
樹脂組成物をフィルム成形機で押出したが、フィルムに穴あきが発生し、所定のフィルムを得ることができなかった。比較例2は相溶化剤用組成物が含まれていないため、ポリエチレンとポリアミドが均一に混ざらずフィルム内の組成や厚みが安定せず穴あきが生じたと考えられる。
【0090】
実施例、比較例で用いた相溶化剤用組成物の組成、並びに実施例1~19及び比較例1、2の樹脂組成物から得られたフィルムの特性を表1にまとめた。本発明に係る組成によりペレット状の相溶化剤用組成物を得ることができ、かつ他の樹脂と混合してフィルムを形成することのできる、リサイクル性の高い樹脂組成物が得られた。また、本発明の相溶化剤用組成物の添加により内部ヘイズが良好な値になり、高い透明性を維持することが可能であることを見出した。
【0091】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明により、機械的な物性を維持しつつも白化することを防ぎリサイクル性に優れた樹脂組成物を与えることのできる相溶化剤用組成物が提供される。本発明の相溶化剤用組成物を用いた樹脂組成物はリサイクル性に優れているため、リサイクルして用いられる各種成形品、特に多層フィルム用の樹脂として用いることができる。