(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120888
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】アンテナ構造による通信および位置検索のためのMIMOベースのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20240829BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20240829BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20240829BHJP
H01P 5/10 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
H01Q21/24
H01Q13/08
H01P5/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025782
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】63/448,040
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/430,813
(32)【優先日】2024-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】アーメッド オズマン
(72)【発明者】
【氏名】リー ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ゴルシュ カイル
(72)【発明者】
【氏名】ルイーズ ジャック
(72)【発明者】
【氏名】スケントス ポール
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
5J062
【Fターム(参考)】
5J021AA01
5J021AB06
5J021CA03
5J021FA31
5J021HA06
5J021JA05
5J021JA06
5J021JA07
5J045AB05
5J045CA01
5J045CA04
5J045DA10
5J045HA03
5J045NA06
5J062BB01
5J062BB05
5J062CC12
5J062CC14
5J062CC18
5J062GG02
(57)【要約】
【課題】アンテナの帯域幅、効率、またはコンパクトさを改善すること。
【解決手段】システムは、アンテナのスペクトル性能に実質的な影響を与えることなく小型化をサポートするため、より高い誘電率を有するアンテナ構造を備えている。例えばシステムは、対象物に対するポータブルデバイスの位置を特定するためのシステムであって、無線通信の送信及び受信の少なくとも何れか一方を実施可能なアンテナと、アンテナと結合された誘電体を備える。アンテナと結合された誘電体は、3から40までの範囲の誘電率を備え、アンテナのサイズを実質的に低減し且つアンテナのスペクトル性能へ影響を与えることを実質的に制限するように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対するポータブルデバイスの位置を特定するためのシステムであって、
無線通信の送信及び受信の少なくとも何れか一方を実施可能なアンテナと、
前記アンテナと結合されてあって、3から40までの範囲の誘電率を備え、前記アンテナのサイズを実質的に低減し且つ前記アンテナのスペクトル性能へ影響を与えることを実質的に制限するように構成されている誘電体と、を備えるシステム。
【請求項2】
前記アンテナは、偏波ダイバーシティを提供するように独立して動作可能である複数の給電点を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の給電点のうちの1つ以上を組み合わせることができる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記アンテナのための給電構成に基づいてアンテナタイプが可変である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記アンテナタイプは、直線偏波、円偏波、右旋円偏波、及び左旋円偏波のいずれか1つに対応する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記アンテナの給電点に結合された、非終端構成よりも広い帯域幅の構成を提供するための終端素子を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記終端素子は、50オームの終端器である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記アンテナは、帯域幅を広げるために複数のバランを含むことができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数のバランの1つは、不平衡バラン又は平衡バランである、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記アンテナで受信される前記無線通信に関して感知された信号特性に基づいて前記ポータブルデバイスの位置を特定するように構成されているコントローラを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
対象物に対するポータブルデバイスの位置を特定するためのシステムであって、
前記対象物の上に設けられた、前記ポータブルデバイスから送信される第1の通信を受信するように構成されている第1のアンテナを含む第1の装置と、
前記第1のアンテナで受信される前記第1の通信に関連する第1の信号特性に基づいて前記対象物に対する前記ポータブルデバイスの位置を特定するように構成されているコントローラと、を備え、
前記第1の装置は、前記ポータブルデバイスによって送信され、前記第1のアンテナで受信される前記第1の通信に関連する前記第1の信号特性を感知するように構成されており、
前記第1のアンテナは、10から40までの範囲内の誘電率を有し、前記第1のアンテナのスペクトル性能に実質的に影響を与えないように構成されている第1の誘電体と結合されているシステム。
【請求項12】
前記第1のアンテナは、偏波ダイバーシティを提供するように独立して動作可能である複数の給電点を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の給電点のうちの1つ以上を組み合わせることができる、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のアンテナのための給電構成に基づいてアンテナタイプが可変である、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記アンテナタイプは、直線偏波、円偏波、右旋円偏波、及び左旋円偏波のいずれか1つに対応する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のアンテナの給電点に結合された、非終端構成よりも広い帯域幅の構成を提供するための終端素子を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記終端素子は、50オームの終端器である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のアンテナは、帯域幅を広げるために複数のバランを含むことができる、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数のバランの1つは、不平衡バラン又は平衡バランである、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記対象物の上に設けられた、前記ポータブルデバイスから送信される第2の通信を受信するように構成されている第2のアンテナを含む第2の装置をさらに備え、
前記第2の装置は、前記ポータブルデバイスによって送信され、前記第2のアンテナで受信される前記第2の通信に関連する第2の信号特性を感知するように構成されており、
前記第2のアンテナは、3から40までの範囲内の誘電率を有し、前記第2のアンテナのスペクトル性能に実質的に影響を与えないように構成されている第2の誘電体と結合されており、
前記コントローラは、前記第1の信号特性と前記第2の信号特性に基づいて前記対象物に対する前記ポータブルデバイスの位置を特定するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両などの物体の通信および定位のためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、車両などの物体に搭載可能な他の送受信機に対するリモートデバイスの距離、位置および方向を特定するための通信に関する。
【背景技術】
【0002】
リアルタイムに物体の位置を特定することは、幅広い用途でますます普及している。リアルタイム測位システム(RTLS)は、例えば自動車、倉庫、小売、認証のためのセキュリティアクセス、認可のためのセキュリティアクセスなどといった多くの領域において、ポータブルデバイスなどの物体を追跡するために使用され、且つ信頼されている。
【0003】
RTLSに関連するダイバーシティを実現するために開発された従来のアンテナタイプは、マルチパス環境に対応可能なダイバーシティアンテナを実現するための目標仕様に対して、十分な帯域幅、効率、またはコンパクトさを備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
概略的に、本開示に記載されている主題の1つの革新的な側面は、対象物に対するポータブルデバイスの相対位置を特定するように動作可能なシステムとして具現化されてよい。上記のシステムは、無線通信の送信及び受信の少なくとも一方を行うように動作可能なアンテナと、当該アンテナに結合された誘電体とを含むことができる。上記の誘電体は、3から40までの範囲の誘電率を備え、アンテナのサイズを制限し、アンテナのスペクトル性能に実質的に影響を与えないように構成されていてよい。
【0006】
前述の実施形態および他の実施形態はそれぞれ、単独でまたは組み合わせて、以下の特徴の1つ以上を任意に含むことができる。特に、或る1つの実施形態は、以下の特徴をすべて組み合わせて含んでいてよい。
【0007】
いくつかの実施形態においては、アンテナは、偏波ダイバーシティを提供するために独立して動作可能な複数の給電点を含んでいてよい。
【0008】
いくつかの実施形態においては、複数の給電点が組み合わせられていてよい。
【0009】
いくつかの実施形態においては、アンテナタイプはアンテナの給電構成に基づいて可変である。
【0010】
いくつかの実施形態においては、アンテナタイプは、直線偏波、円偏波、右旋円偏波、及び左旋円偏波のいずれかに対応する。
【0011】
いくつかの実施形態においては、システムは、非終端構成よりも広い帯域幅の構成を提供するために、アンテナの給電点に結合された終端素子を含むことができる。
【0012】
いくつか実施形態においては、上記の終端素子は50Ω終端器であってよい。
【0013】
いくつかの実施形態においては、上記のアンテナは、帯域幅を広げるために複数のバランを含んでいて良い。
【0014】
いくつかの実施形態において、複数のバランの1つは、不平衡バランまたは平衡バランのいずれかであってよい。
【0015】
概略的に、本明細書で説明する主題の1つの革新的な側面は、対象物に対するポータブルデバイスの位置を特定するためのシステムとして具現化可能である。上記のシステムは、対象物上に配された第1の装置を含んでいて良い。第1の装置は、ポータブルデバイスから送信される第1の通信を受信するように構成された第1のアンテナを含むことができ、また、第1の装置は、第1のアンテナによって受信される、ポータブルデバイスから送信された第1の通信に関する第1の信号特性を感知するように構成されていてよい。上記の第1のアンテナは、3から40までの範囲内の第1の誘電率を有する第1の誘電体に結合されていてもよく、第1のアンテナのスペクトル性能に影響を与えることを実質的に制限するように構成されていてよい。上記のシステムは、第1のアンテナによって受信された第1の通信に関して感知された第1の信号特性に基づいて、対象物に対するポータブルデバイスの位置を決定するように構成されたコントローラを含んでいてよい。
【0016】
前述の実施形態および他の実施形態はそれぞれ、単独でまたは組み合わせて、以下の特徴の1つ以上を任意に含むことができる。特に、1つの実施形態は、以下の特徴をすべて組み合わせて含んでいる。
【0017】
いくつかの実施形態においては、第1のアンテナは、偏波ダイバーシティを提供するために独立して動作可能な複数の給電点を含んでいてよい。
【0018】
いくつかの実施形態においては、複数の給電点のうちの1つ以上はともに組み合わせることができる。
【0019】
いくつかの実施形態においては、アンテナタイプは、第1のアンテナの給電構成に基づいて可変であってよい。
【0020】
いくつかの実施形態においては、アンテナタイプは、直線偏波、円偏波、右旋円偏波、及び左旋円偏波のいずれかに対応してよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記のシステムは、非終端構成よりも広い帯域幅を有する構成を提供するために第1のアンテナの1つの給電点に結合された終端素子を含んでいてよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記の終端素子は50Ωの終端器であってよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、第1のアンテナは、帯域幅を広げるために、複数のバランを備えていて良い。
【0024】
いくつかの実施形態において、複数のバランのうちの1つは、不平衡バラン又は平衡バランであってよい。
【0025】
いくつかの実施形態においては、上記のシステムは、対象物上に配置された第2の装置を含んでいてよい。第2の装置は、ポータブルデバイスから送信される第2の通信を受信するように構成された第2のアンテナを含んでいて良い。第2の装置は、第2のアンテナによって受信される、ポータブルデバイスから送信された第2の通信に関する第2の信号特性を感知するように構成されていてよい。上記の第2のアンテナは、10から40までの範囲内の第2の誘電率を有し、且つ第2のアンテナのスペクトル性能に影響を与えることを実質的に制限するように構成された第2の誘電体に結合されていてもよい。上記のコントローラは、第1の信号特性と第2の信号特性に基づいて、対象物に対するポータブルデバイスの位置を決定するように構成されていてよい。
【0026】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載された、または図面に図示された、動作の詳細、構造の詳細、及び構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、様々な他の実施形態で実現されてよく、また、本明細書で明示的に開示されていない代替方法で実施または実行されてよい。本明細書で使用される言い回しや用語は、説明のためのものであり、限定的な記載とみなされるべきではないことを理解されたい。「を含む」、「を備える」およびそれらの変形を使用することは、その後に列挙した項目とそれらの等価物、並びに、追加的の項目とそれらの等価物を包含することを意味する。さらに、様々な実施形態の説明において、列挙が使用されてよい。特に明示しない限り、列挙の使用は、本発明に係る構成要素を特定の順序または数に限定するものとして解釈されるべきではない。また、列挙の使用は、列挙されたステップまたは構成要素と組み合わされる可能性のある追加のステップまたは構成要素を、本発明の範囲から除外するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は1つの実施形態によるシステムを示す。
【0028】
【
図2】
図2は1つの実施形態によるシステムを示す。
【0029】
【
図3】
図3は1つの実施形態における対象装置を示す。
【0030】
【
図4】
図4は1つの実施形態におけるアンテナアセンブリを示す。
【0031】
【
図5】
図5は1つの実施形態における支線カプラを示す。
【0032】
【
図6】
図6は1つの実施形態におけるアンテナを示す。
【0033】
【
図7】
図7は1つの実施形態におけるアンテナを示す。
【0034】
【
図8】
図8は1つの実施形態におけるアンテナを示す。
【0035】
【
図9】
図9は1つの実施形態におけるアンテナを示す。
【0036】
【
図10】
図10は1つの実施形態におけるRFスイッチとRF回路を含むアンテナアセンブリを示す。
【0037】
【
図11】
図11は1つの実施形態におけるRFスイッチとRF回路を含むアンテナアセンブリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
1つの実施形態においては、第1の装置とリモートデバイスとの間で送信される通信の特性に基づいて、第1の装置(例えば、第1の対象装置)とリモートデバイスとの間の距離および方向を特定するように動作可能なシステム内のデバイス同士が通信するためのシステムおよび方法が提供される。1つの実施形態においては、第1の装置は、対象物上に設けられており、デバイスシグナリングプロトコルに従ってリモートデバイスから無線通信信号を受信するように構成されていてよい。また、第1の装置は、物理媒体を介して通信信号を送受信するように動作可能な第1の通信インターフェースを含むことができる。当該第1の通信インターフェースは、無線通信用のデバイスシグナリングプロトコルと同じ又は異なるシグナリングプロトコルに従って、物理媒体を介して通信するように構成されている。
【0039】
第2の装置は、対象物上に設けられてあって、前述のデバイスシグナリングプロトコルに従ってリモートデバイスからの無線通信信号を受信可能に構成されていてよい。第2の装置は、物理媒体を介して第1の対象装置と通信信号を送受信するように動作可能な第2の通信インターフェースを含んでもよい。第2の通信インターフェースは、無線通信用のデバイスシグナリングプロトコルと異なっていてもよいシグナリングプロトコルに従って物理媒体を介して通信するように構成されていてよい。
【0040】
第1の装置と第2の装置との通信は物理媒体を介して実施されるものとここでは説明されている。しかしながら、本開示はそれに限定されない。第1の装置と第2の装置との通信は、リモートデバイスとの無線通信と同様に、無線通信を介して確立されてもよい。
【0041】
無線通信は、1つ又は複数のアンテナを介して送信及び受信されてよい。本開示に含まれる1つの実施形態におけるアンテナは、3から40までの誘電率を有し、且つ、アンテナのスペクトル性能に影響を与えることを実質的に制限するように構成された誘電体に結合されていてよい。
【0042】
1つの実施形態において、リモートデバイスから受信する無線信号に係る信号情報を取得するための制御システムが提供されてよい。上記の制御システムは、信号情報に基づいて、対象物に対するリモートデバイスの距離を決定してもよい。当該信号情報は、デバイスシグナリングプロトコルに従って、物理媒体を介して第2の対象装置から第1の対象装置に送信される。
I.測位システムの概要
【0043】
1つの実施形態におけるシステムが、
図1の実施形態において概略的に100で指し示されている。上記システム100は、本明細書にて概説する1つ又は複数のシステム構成要素を含んでいて良い。システム構成要素は、ユーザまたは電子的なシステム部品であってよく、リモートデバイス20、センサー40(40A、40B、40C、40D、40E、40Fとも記載)、または対象装置50、あるいは、これらの装置の1つ以上を含む構成要素であってよい。リモートデバイス20、センサー40、対象装置50のいくつかの態様は類似していてよい。対象装置とセンサーとの主な違いは、システム100内での装置の役割に関係する。例えば対象装置50は、通信リンク130を介してセンサー40からデータを受信したり、センサー40へデータを送信したりしてよい。対象装置50は、センサー40にデータを送信することにより、センサー40の動作を指示してよい。対象装置50は、通信リンク130を介して、センサー40および/または対象物10に対するリモートデバイス20の相対位置を示す情報をセンサー40から取得することができる。図示の実施形態でセンサー40に関連して説明した1つまたは複数またはすべての機能は、リモートデバイス20に組み込まれてもよい。
【0044】
1つの実施形態においては、センサー40と対象装置50は、車両や建物などといった対象物10上に配されたシステム100の少なくとも一部を形成することができる。対象物10の動作の制御、対象物10の1つ以上のシステムへの情報送信、又は、対象物10の1つ以上のシステムから情報の受信、あるいは、それらの組み合わせのために、対象装置50は対象物10が備える1つ以上のシステムと通信可能に結合されていてよい。例えば、対象物10は、対象物10の動作を制御可能に構成されている対象制御部52を含んでいて良い。対象物10は、対象制御部52と対象装置50との間の通信を可能/容易にする、有線または無線の、1つまたは複数の通信ネットワーク54を備えていて良い。対象装置50と対象制御部52との間の通信を可能/容易にするための通信ネットワーク54は、CAN(登録商標)バスであってもよいが、通信ネットワークは特に限定されないことを理解されたい。通信ネットワークは、有線又は無線ネットワークを含む任意のタイプのネットワークであってよく、また、2種類以上のネットワークが組み合わさったものであってもよい。
【0045】
1つまたは複数のセンサー40は、本明細書で説明する位置など、対象物10の様々な位置に配置されてよい。例えば、ドアパネルに1つまたは複数のセンサー40が配置されてもよいし、Bピラーに1つまたは複数の他のセンサーが配置されても良い。
【0046】
対象装置50と1つ又は複数のセンサー40は、電源バス120および電源110を介して給電されてよい。電源バス120は、
図2の図示された実施形態に描かれているように、ある装置から次の装置へとデイジーチェーン接続されていてよい。あるいは、電源バス120は、電力が1つの場所から別々の接続を介して複数の場所に供給される、スター接続の形で実現されていてもよい。電力供給とアーキテクチャは、任意の1つのタイプに限定されない。例えば、電源はデイジーチェーンとスター接続の両方の構成を用いて分配されてもよい。
【0047】
図示された実施形態のシステム100は、リモートデバイス20に関する位置情報をリアルタイムに特定するように構成されていても良い。
図1に示される実施形態において、ユーザはリモートデバイス20(例えばスマートフォン)を携帯していてよい。システム100は、対象物10へのアクセスまたは対象物10への指示が許可されるべき場所にユーザが位置しているかを特定するのに十分な精度で、対象物10(例えば、車両)に対するリモートデバイス20の位置をリアルタイムで特定することを可能にしてよい。
【0048】
例えば、対象物10が車両である実施形態では、システム100は、リモートデバイス20が車両の外側において、運転席側ドアから5フィート以内、3フィート以内、または2フィート以内などといった、至近距離にあるかどうかの判定を可能にしてよい。この判定は、システム100が車両を開錠すべきかを特定するための基礎となってよい。一方、リモートデバイス20が車外にあり、且つ、運転席側ドアに近接していない(例えば、2フィート、3フィート、または5フィートの範囲外)であるとシステム100が判断した場合、システム100は運転席側ドアをロックすると判断してよい。他の例として、リモートデバイス20は運転席側ドアに近接しているものの助手席又は後部座席には近接していないとシステム100が判断した場合、システム100は車両の駆動を有効化することを決定してよい。逆に、リモートデバイス20が運転席付近にないと判断した場合、システム100は、車両を動かなくすること、または車両の停止状態を維持することを決定してよい。
【0049】
対象物10は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、アンテナアセンブリ220に結合された対象装置50及びセンサー40などといった、複数の対象装置50又はその変形を含んでいてよい。対象装置50又はセンサー40あるいはその両方は、1つ又は複数のアンテナアセンブリを含むことができ、無線通信を可能にするために様々な方法で構成されていて良い。アンテナアセンブリ220の例示的な実施形態が、
図4に図示された実施形態に描かれている。
【0050】
1つの実施形態において、対象装置50は、通信リンク130を介して1つまたは複数のセンサー40と直接通信するように構成されていてよい。通信リンク130は、本明細書で説明する通り、高周波(HF)インターフェース232とシリアルインターフェース230の両方などのように、1つまたは複数のインターフェースを含んでいてよい。1つまたは複数のインターフェースは、1つまたは複数の物理媒体を介して確立することができる。例えば、
図3に描かれているようにHFインターフェース232とシリアルインターフェース230の両方を含む場合、HFインターフェース232は、同軸またはツイストペア導体の形態の物理媒体を介して確立することができ、シリアルインターフェース230は、ツイストペア導体の形態の物理媒体を介して確立することができる。他の例として、HFインターフェース232とシリアルインターフェース230の両方は、同じ物理媒体を介して確立されてよい。当該同じ物理媒体は、ツイストペア導体であってよい。HFインターフェース232、又はシリアルインターフェース230、あるいはその両方は、無線通信を利用しても良い。
【0051】
図2に図示された実施形態においては、通信リンク130は、ある装置から別の装置へ分配され、両端に終端装置132を含む。装置間の通信リンク130は、共有リンクであってもよいし、装置ごとに個別のリンクであってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。例えば、通信リンク130は、図示されているように、2つ以上の装置間で共有されていてもよく、追加的または代替的に、通信リンク130は、1つの装置から別の装置へ個別に確立されていてもよい。1つの装置は、複数の別個の通信リンク130を介して通信可能であってよく、1つの通信リンク130から別の通信リンク130に通信を中継するように構成されていてよい。
【0052】
本明細書で説明する1つ以上の測位技術に加えて、またはそれに代えて、リモートデバイス20の詳細位置は、全地球測位システムから得られる情報、リモートデバイス20からの通信の1つ以上の信号特性、および1つ以上のセンサー(例えば、近接センサー、リミットスイッチ、または視覚センサー)、またはそれらの組み合わせを使用するなど、多様な方法で特定されてよい。システム100に適用可能なマイクロロケーション技術の一例は、2017年4月14日にRaymond Michael Stittらによって出願された米国非仮特許出願第15/488,136号(表題はSYSTEM AND METHOD FOR ESTABLISHING REAL-TIME LOCATION)に開示されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
図1~
図3の図示された実施形態においては、対象装置50(例えば、システム制御モジュール(SCM))および複数のセンサー40(それぞれ
図3に示されるようにアンテナアセンブリ220に結合されたもの)は、対象物10上または対象物10に対して一定となる位置に配置されていてよい。対象物10の例としては、先に例示した車両のほか、対象装置50によってアクセスが制御される建物などが挙げられる。
【0054】
リモートデバイス20は、通信リンク140を介して、対象装置50と無線通信可能であってよい。通信リンク140は、Bluetooth(登録商標)通信リンク(例えば標準Bluetooth,Bluetooth Low Energy(BTLE)、又はBTLE高精度距離測定(BTLE-HADM))、BTLEチャネルサウンディング(BTLE-CS)、又は超広帯域(UWB)通信リンクなどであってよい。複数のセンサー40は、想像線142に示すように、リモートデバイス20と対象装置50との間の通信リンク140の通信をスニッフィングするように構成されていてもよい。スニッフィングされた通信または送信は、対象装置50とリモートデバイス20との間のトーン交換(一方向または双方向)に対応していてよい。スニッフィングされた通信に基づいて、センサー40は、通信の位相特性を含む、本明細書で説明する通信の1つ以上の信号特性を特定することができる。追加的または代替的な信号特性には、信号強度、到達時間、飛行時間、到達角度、またはそれらの組み合わせが含まれる。特定された信号特性は、そのまま又は分析された後に、リモートデバイス20と対象装置50との間の通信リンク140とは別の通信リンク130を介して対象装置50に伝達されてよい。
【0055】
追加的に、または代替的に、リモートデバイス20は、複数のセンサー40のうちの1つ以上と直接通信リンクを確立してもよく、1つ以上の信号特性は、この直接通信リンクに基づいて決定されてもよい。例えば、リモートデバイス20と或るセンサー40は、当該センサー40とリモートデバイス20との間の距離を特定するための基礎として、トーン交換を実行してよい。トーン交換は通信における位相差の解析の基礎を形成しうるものであり、この位相差は、飛行時間、ひいてはリモートデバイス20の距離を特定するための基礎となりうる。
【0056】
本明細書で議論するように、測位システムは、アプリケーションごとに異なる1つ以上の入力を受信することがある。入力の例には、信号強度(RSSI)、到来角(AOA)、飛行時間(TOF)、到達時間、位相特性、BLEチャネルサウンディング(CS)の位相ベースの測距手順、BLE-CSの位相ベースの測距手順の速度推定値、BLE-CSのラウンドトリップタイム(RTT)手順の距離推定値などといった、通信の1つまたは複数の信号特性が含まれる。1つ以上の信号特性は、対象物10、対象物10の一側面、または対象装置50、あるいはそれらの組み合わせに対するリモートデバイス20の位置情報を特定するために解析されて良い。
【0057】
例えば、トーン送信の位相回転、およびオプションの再送信、または位相回転を示す位相特性は、対象装置50またはセンサー40とリモートデバイス20との間の距離を決定するための基礎となってよい。トーン送信は、複数の周波数に従って複数の送信が行われるトーン交換の一部であってよい。このような複数の送信に関する位相回転は、対象装置50とリモートデバイス20に関する距離特定の基礎となり得る。トーン交換は、デバイス間(例えば、対象装置50とポータブルデバイス20との間)の範囲または距離を決定するためのチャネルサウンディングアプローチ(例えば、BLEチャネルサウンディング(CS))として説明されてよい。
【0058】
特定の媒体(例えば空気)中を光速で進む電磁波に関し、位相回転量は、距離又は時間に換算できる。1つの実施形態において、位相特性または時間特性の計測を介して、リモートデバイス20といった装置への送信及び当該装置からの送信に関連するRTTが特定されてよい。言い換えれば、リモートデバイス20との間の双方向通信は往復時間を決定するために解析されてよい。往復時間は、飛行時間に換算することができる。
【0059】
高周波送信の波長は、測定の目標距離に対して短いことがある。そのため、総距離として具現化される総位相回転がRF回路の入力段の位相から(例えばミキサー段から)直接測定されないように、複数の送信は、全ての位相回転を包含又は網羅する。例えば、キャリア周波数が2.4GHzの場合、位相回転は12cmで2πを1周する。位相測定値は、0~2πの範囲内の位相を示しうるが、位相測定値は位相回転のラップ数を直接示すものではない。
【0060】
より長い距離を明確に測定することを目的として、2つの異なる位相回転を計算するために、2つの異なる周波数(f0,f1)が時間(i0,i1)の2つの異なる瞬間iで使用されてよい。2つの異なる位相回転は、距離の測定に使用することができる。位相ベースの距離特定は、2つの異なる周波数を用いて説明されているが、距離の推定精度を高めるために、複数の周波数(3以上の周波数を含む)での位相測定値が使用されてもよいことを理解されたい。位相分析に複数の周波数を使用することは、装置間の距離を特定するためのチャンネルサウンディングアプローチの一種と解されて良い。1つの実施形態におけるロケータは、多様な方法で、リモートデバイス20または対象装置50から得られる信号特性を距離メトリックまたは他のパラメータに変換してよい。多様な方法としては、例えば、固定位置デバイスごと又は固定位置デバイスの種類ごとの変換テーブル、フィンガープリンティング、または他のヒューリスティック(例えば、機械学習された変換器)を用いる方法がある。そのような変換の追加の例は、Smithによって発明され2019年10月23日に出願された米国特許出願公開第2020/0137817号明細書(表題はSYSTEM AND METHOD OF DETERMINING REAL-TIME LOCATION)に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0061】
1つの実施形態において、直接通信リンクは、BTLEプロトコルに従って確立され得るが、本開示はそれに限定されるものではない。直接通信リンクは、UWBまたはBTLE-HADMを含む任意のタイプの1つ又は複数のリンクであってよい。
【0062】
車両などの対象物10は、
図1および
図2の実施形態に示される数より多くても少なくてもよい数のセンサー40を含んでもよいことを理解されたい。実施形態によっては、いくつかの数のセンサー40が車両に統合されてもよい。
【0063】
本明細書で説明するように、位相特性、信号強度、到達時間、飛行時間、および到達角度などの、1つまたは複数の信号特性が解析されることにより、対象物10、対象物10の側面、または対象装置50、あるいはそれらの組み合わせに対するリモートデバイス20の位置情報が決定されてよい。例えば、トーン送信の位相回転、およびオプションの再送信、または位相回転を示す位相特性は、対象装置50またはセンサー40とリモートデバイス20との間の距離を特定するための基礎を形成することができる。信号特性の追加例には、センサー40と対象装置50の間における、到着時間差、または到着角度、あるいはそれらの両方が含まれてよく、これらの信号特性は、リモートデバイス20の相対位置を決定するために処理されてよい。リモートデバイス20の相対位置をアンテナアセンブリ220および対象装置50に対する絶対位置に変換できるように、1つまたは複数のアンテナアセンブリ220の対象装置50に対する位置は既知であってもよい。
【0064】
距離関数、三角測量関数、ラテレーション関数、マルチラテレーション関数、フィンガープリンティング関数、微分関数、飛行時間関数、到着時間関数、到着時間差関数、出発角度関数、幾何学的関数、またはそれらの任意の組み合わせを含む、1つ以上のアルゴリズムに従って位置を特定しやすくするために、追加または代替の種類の信号特性が取得されてよい。
II.システムデバイスの概要
【0065】
図3に図示された実施形態において、対象装置50がさらに詳細に示されている。対象装置50の構造および構成はセンサー40に組み込まれてもよいため、センサー40もまた、図示されている実施形態において対象装置50として参照される。
【0066】
図3に図示の実施形態における対象装置50は、いくつかの構成要素を含み、そのうちの1つ以上が市販の製品で実現されてもよい。対象装置50は、場合によっては、対象物10上に配置されたアンカーと表現されることがある。
【0067】
対象装置50は、HF信号の送信及び受信を制御するように動作可能なRF回路204を含んでいて良い。RF回路204は、アンテナアセンブリ220と動作可能に結合されていてよい。アンテナアセンブリ220は、1つ以上のアンテナを含んでいてよい。アンテナアセンブリ220の構成の一例は、
図4に図示されている実施形態に描かれている。オプションとして、複数のアンテナアセンブリ220が同じ波を受信しないように使用されることで、空間ダイバーシティが実現されてもよい。例えば、複数のアンテナのそれぞれは、空間ダイバーシティを実現するために、異なる位置に配置されてもよい。別の例として、複数のアンテナは、異なる傾斜偏波(例えば、他のアンテナに対してリードまたはラグのある円偏波)を有していてよい。
【0068】
RF回路204は、HFスイッチ208を介して、アンテナアセンブリ220から高周波信号を受信したり、アンテナアセンブリ220へ高周波信号を供給したりするように構成されていてよい。本明細書で説明するように、アンテナアセンブリ220は、アンテナアセンブリ220を駆動するためにRF回路204から出力される信号を調整するフィルタ回路を含んでいてよい。逆に、フィルタ回路は、RF回路204による処理のために、アンテナアセンブリ220から受信した信号を調整してよい。HFスイッチ208は、アンテナアセンブリ220から受信した信号及びアンテナアセンブリ220へ供給する信号を含む、HF(高周波)信号の入出力を選択的に指示してよい。
【0069】
1つの実施形態においては、RF回路204は、通信リンク130のHFインターフェース232を介して信号を送受信するように1つの実施形態に従って構成されていてよい。1つの実施形態におけるHF信号の送受信は、RF回路204内のアンテナアセンブリ220が使用するプロトコルと異なるか、同じか、または類似する通信プロトコルに従って、対象装置50が物理媒体を介して通信することを可能にしてよい。例えば、対象装置50は、BTLE通信に対応するHFインターフェース232によって定まる物理媒体を介して通信を送受信する一方で、BTLE通信に対応するアンテナアセンブリ220を介しても通信を送受信して良い。
【0070】
HFスイッチ208は、RF回路204からの出力を通信リンク130のHFインターフェース232に選択的に向けることができ、且つ、通信リンク130のHFインターフェース232からの入力をRF回路204に選択的に向けることができる。1つの実施形態において、HFインターフェース232は、同軸導体構造といった、シングルエンド型の構成であってよい。あるいは、HFインターフェース232は差動型であってもよく、オプションとして、HFスイッチ208からのシングルエンド出力とHFインターフェース232の差動出力との間を変換するための調整回路214、216(例えば、バランおよび/またはインピーダンス変換器)を含んでいてよい。
【0071】
図示されている実施形態においては、対象装置50は、別々の通信リンク130によって提供される別々のHFインターフェース232を介して通信を送受信するように構成されている。換言すれば、図示の実施形態における2つの通信リンク130は、一方の通信リンク130上で受信された通信が他方の通信リンク130上で本質的に送信されたり見られたりしないように、互いに絶縁されている。本明細書で論じられるように、対象装置50は、通信リンク130の一方から通信リンク130の他方へ通信を中継するように構成されていてよい。例えば、或るHFインターフェースを介して受信した通信は、RF回路204に向けて出力され、RF回路204を介して別のHFインターフェースに中継されて良い。HFスイッチ208は、そのような通信の中継を可能/容易にするために、或る状態から別の状態へと遷移するように構成されていて良い。しかしながら、本明細書に記載の1つ以上の実施形態において、1つの通信リンク130を介して送信された通信は、他の通信リンク130へと本質的に通過してよいことを理解されたい。
【0072】
対象装置50は、メインコントローラ200を含んでいてよく、本明細書で説明するように、RF回路204の動作を指示するように構成されていてよい。1つの実施形態においては、メインコントローラ200は、リモートデバイス20との通信を制御し、オプションとして、リモートデバイス20の測距の基礎として使用される、上記通信に関する1つまたは複数の感知特性を取得してよい。対象装置50は、追加的にまたは代替的に、センサー40とリモートデバイス20との間の通信をスニッフィングし、スニッフィングされた通信に関する1つまたは複数の感知特性を取得して良い。
【0073】
メインコントローラ200は、1つまたは複数の通信リンク130のHFインターフェース232を介した通信の送受信をさらに管理することができる。一例として、メインコントローラ200は、通信リンク130のHFインターフェース232を介してBTLE通信の送受信を管理して良い。通信リンク130のHFインターフェース232を介して送信される情報は、アンテナアセンブリ220を介して受信および/または送信される通信に関して得られる1つまたは複数の信号特性に関連していてよい。一例として、通信リンク130を介して送信される情報は、アンテナアセンブリ220を介して受信および/または送信される通信に関して特定される、感知特性を示すものであってよい。
【0074】
追加的にまたは代替的に、メインコントローラ200は、時間同期を目的として、通信リンク130のHFインターフェースを利用してもよい。通信の感知特性は、少なくとも部分的に、装置の時間基準に基づくことがある。また、電磁波に関して時間は距離に(逆に距離は時間に)変換可能であるため、センサー40の基準時間を制御することで、リモートデバイス20と対象装置50との間の距離の特定に関する精度を高められる場合がある。
【0075】
対象装置50は、センサー40の発振器を動作させるクロックであって、メインコントローラ200およびRF回路204を含む対象装置50の一部を動作させるための1つ以上のタイミング信号を生成するクロック202を含んでいてよい。
【0076】
1つの実施形態において、メインコントローラ200は、通信リンク130のHFインターフェースを介して受信される同期関連通信に基づいて、クロック202によって提供される1つ以上のタイミング信号を最初に同期させるように構成されていてよい。一例を挙げると、センサー40がメインコントローラ200およびクロック202を含んでいる前提において、対象装置50は、対象装置50とセンサー40との間のタイミング信号の実質的な同期を実現するために、同期関連通信をセンサー40に送信することができる。このようにして、センサー40と対象装置50によって特定される感知特性は、実質的に同じ時間基準に対して、互いに比較または関連付けられてよい。
【0077】
図示の実施形態において、対象装置50は、それぞれ異なる通信リンク130のシリアルインターフェースに結合されている第1および第2のトランシーバ210、212を含んでいてよい。トランシーバ210、212は、CANトランシーバであってよいが、本開示はそれに限定されない。トランシーバ210,212は、RS-485、LIN、ビークルエリアネットワーク(VAN)、FireWire(登録商標)、I2C、RS-232、RS-485、ユニバーサルシリアルバス(USB)などといった、通信リンク130を介した任意のタイプのシリアルまたは非シリアル通信を可能にしてよい。シリアルまたは非シリアル通信は、上記の例示に限定されない。
【0078】
第1および第2のトランシーバ210、212は、時間の影響を受けにくい情報に関する、装置間の通信(例えば対象装置50とセンサー40との通信)を可能にすることができる。例えば、対象装置50は、通信リンク130のシリアルインターフェースを介して、センサー40に通信リンク140の接続パラメータを送信し、センサー40が対象装置50とリモートデバイス20との間の通信をスニッフィングまたは監視できるようにしてよい。センサー40は、第1のトランシーバ210を介してそのような通信を受信し、第2のトランシーバ212を介して別の装置(例えば別のセンサー40)にその通信を中継しても良い。
【0079】
オプションとして、対象装置50は、シリアルインターフェースを含み且つHFインターフェースを含まない構成を有する通信リンク130、または、シリアルインターフェースを含まず且つHFインターフェースを含む構成を有する通信リンク130を含んでいてよい。本明細書にて一方のインターフェースに関して説明し、且つ、他方のインターフェースに関して説明しない通信は、通信リンク130が備えるインターフェースを用いて実施されてよい。例えば、通信リンク130は、HFインターフェースを備える一方、シリアルインターフェースを備えていなくてもよく、その場合、シリアルインターフェースに関連して以上で説明された通信は、HFインターフェースを介して送信されてもよい。
【0080】
メインコントローラ200は、本明細書で説明される機能及び方法を実行するための電気回路及び構成要素を備えていて良い。一般的に言えば、メインコントローラ200は、本明細書で説明する機能を実行するようにプログラムされた1つ以上のマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、および/または他のプログラム可能な電子機器を含んでいてよい。メインコントローラ200は、追加的または代替的に、本明細書で説明する機能を実行するようにプログラムされている他の電子部品、又は、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、および/または他の電子機器をサポートする他の電子部品を含んでいてよい。他の電子部品には、1つ以上のFPGA(field programmable gate arrays)、システムオンチップ、揮発性または不揮発性メモリ、ディスクリート回路、集積回路、ASIC(application specific integrated circuits)、および/またはその他のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアが含まれるが、これらに限定されない。このような部品は、1つまたは複数の回路基板に取り付けるなど、任意の適切な方法で物理的に構成されていてよく、また、1つのユニットにまとめるか、複数のユニットに分散させるかに関わらず、他の方法で配置されていてよい。このような部品は、対象装置50内の異なる位置に物理的に分散して配置されていてもよいし、対象装置50内の共通の位置に配置されていてもよい。構成要素が物理的に分散されている場合、それらは、CAN、LIN、ビークルエリアネットワーク(VAN)、FireWire、I2C、RS-232、RS-485、ユニバーサルシリアルバス(USB)などといった、任意の適切なシリアルまたはパラレル通信プロトコルを使用して通信してよい。通信方法は以上で例示にしたものに限定されない。
【0081】
本明細書で説明するように、メインコントローラ200は、対象物10に対するポータブルデバイス20の位置または距離を特定するように構成されていてよい。メインコントローラ200は、1つまたは複数の信号特性に基づいてポータブルデバイスの位置または距離を特定するように動作可能な、ロケータ、モジュール、モデル、またはジェネレータ、あるいはそれらの組み合わせを含んでいてよい。例えば、1つの実施形態においては、距離または位置を決定するためのモデルは、1つ以上のコア関数と、1つ以上のコア関数の出力に影響を与える1つ以上のパラメータとを含んでいてよい。モデルの一部は、メインコントローラ200のメモリに格納されてもよく、また、1つ以上の入力を受信して変換し、1つ以上の出力を出力するように動作するように構成されたメインコントローラ200の一部であるように、モデルはコントローラ構成の一部を形成してもよい。同様に、モジュールまたはジェネレータは、モジュールまたはジェネレータに関連して記述された入力を受信し、且つモジュールまたはジェネレータに関連付けられたアルゴリズムに対応する出力を提供するように構成されているメインコントローラ200の一部である。
【0082】
図3の図示された実施形態における対象装置50のメインコントローラ200は、1つ以上のアプリケーション(ソフトウェアおよび/またはファームウェアを含む)を実行する1つ以上のプロセッサと、1つ以上のメモリユニット(例えば、RAMおよび/またはROM)と、他の電子ハードウェアとの1つ以上の通信インターフェースと、を含んでいてよい。対象装置50は、通信インターフェースを介して下位デバイス/電子機器へのアクセスを制御するオペレーティングシステムを備えていてもよいし、備えていなくとも良い。対象装置50は、ハードウェアベースの暗号化ユニットを備えていても、備えていなくてもよい。ハードウェアベースの暗号化ユニットがない場合、暗号化機能はソフトウェアで実行されてよい。対象装置50は、例えばセキュアエレメントまたはハードウェアセキュリティモジュール(HSM)といった、セキュアメモリユニット(にアクセスする権限/機能)を備えていても、備えていなくてもよい。
【0083】
図3の図示された実施形態におけるメインコントローラ200は、いずれの構成要素におけるセキュアメモリユニットの存在にも依存しない。セキュアメモリユニットがある場合において当該セキュアメモリユニットに保存される可能性があるデータ(例えば、秘密鍵および/または秘密鍵)は、セキュアメモリユニットがない場合においては、休止時に暗号化されてよい。このようなデータへのアクセスを実質的に防止し、さらに、システムコンポーネント全体の侵害を実質的に防止または検出、あるいはその両方を行うために、ソフトウェアベースとハードウェアベースの両方の緩和策が利用されてよい。緩和策の例としては、物理的な障害物やシールドの実装、JTAGやその他のポートの無効化、攻撃ベクトルを排除するためのソフトウェアインターフェースの硬化、信頼された実行環境(ハードウェアまたはソフトウェア、あるいはその両方など)の使用、オペレーティングシステムのルートアクセス又は侵害の検出などが挙げられる。
【0084】
開示の目的において、セキュアであることは、一般的に、機密性(暗号化)、認証、及び完全性検証を備えているとみなされる。しかしながら、本開示はそこまで限定されるものではなく、「安全な」という用語は、これらの一部のサブセットであってもよいし、データセキュリティに関連する追加の性質を含んでもよいことを理解されたい。
【0085】
メインコントローラ200の通信インターフェースは、有線または無線を含む、本明細書で説明する任意のタイプの通信リンクを含む、任意のタイプの通信リンクを可能にしてよい。上記通信インターフェースは、内部通信、又は外部通信、あるいはその両方を可能にして良い。例えば、通信インターフェースは、RF回路204に結合されて、通信リンク130のアンテナアセンブリ220およびHFインターフェース232のうちの1つ以上を介した通信を可能にしてよい。
【0086】
別の例として、メインコントローラ200の通信インターフェースは、WiFi規格またはUWBによる無線通信、あるいはそれらの任意の組み合わせなど、リモートデバイス20の形態の他のシステム構成要素との無線通信リンクを可能にしてもよい。別の例として、メインコントローラ200の通信インターフェースは、ユーザに情報を伝達し、および/またはユーザから情報を受信するためのディスプレイおよび/または入力インターフェースを含んでいてよい。
【0087】
1つの実施形態において、対象装置50は、リモートデバイス20やセンサー40とは異なるタイプの1つ以上の補助装置と通信するように構成されていてもよい。言い換えれば、補助装置は対象装置50とは異なる構成であってよい。例えば、補助装置はプロセッサを含まなくてもよく、その代わりに、対象装置50との情報の送信または受信あるいはその両方のための、少なくとも1つの直接接続および/または通信インターフェースを含んでいてよい。補助装置は、対象装置50からの入力を受け入れるソレノイドであってもよいし、補助装置は、対象装置50にアナログおよび/またはデジタルフィードバックを提供するセンサー(例えば、近接センサー)であってもよい。
III.アンテナアセンブリ
【0088】
1つの実施形態におけるアンテナアセンブリ220(例えば複合アンテナ)は
図4に示されており、誘電体320に結合されたアンテナ310を含む。アンテナ310は、図示の実施形態においてはパッチアンテナであるが、アンテナ310は用途に応じて異なる構成であってもよい。例えば、アンテナ310は誘電体共振器アンテナであってもよい。アンテナアセンブリ310は、本明細書で説明するように、BLE、UWB、及びチャネルサウンディングを含む、多様な無線通信システムと組み合わせて使用されてよい。
【0089】
任意の要素として、アンテナアセンブリ220は、誘電体320に結合された金属層319(
図4は想像線で示す)を含んでいて良い。金属層319は、アプリケーションに応じた多様な方法で、誘電体320に接着されていて良い。
【0090】
追加的にまたは代替的に、アンテナアセンブリ310は、対象装置50、センサー40、またはリモートデバイス20、あるいはそれらの組み合わせによって実装される超広帯域(UWB)通信システムと共に使用されてよい。一例として、アンテナアセンブリ310は、複数の送受信機とともに2つの送受信チップと同じチップが用いられる場合、子供検出を含む様々な関連アプリケーションのキーシステムとして、携帯電話におけるUWBのダイバーシティをサポートしてよい。アンテナアセンブリ220は、HFスイッチ208(例えばRFスイッチ)が1回ずつアンテナを切り替える時分割多重化と組み合わせて使用されても良い。
【0091】
図示されている実施形態におけるアンテナ310は、4つの給電点312-1、312-2、312-3、312-4(本明細書では312とも記載)を備える。複数の給電点312は、互いに90°ずれていて良い。複数の給電点312は、偏波ダイバーシティを実現するために独立して使用されて良い。例えば、1つの給電点312の組み合わせは、アンテナの特性を向上させるために一緒に組み合わせられていてよい。特定の給電構成によって任意のアンテナタイプが形成されてよい。そのようなアンテナタイプは、直線偏波、円偏波、右旋円偏波、及び左旋円偏波を含んでいてよく、また、これらに限定されない。
【0092】
終端素子が、1つ以上の給電点312に対して導入されて良い。例えば、反対側の給電点312を終端させることにより、帯域幅を広げることができる。終端素子は、50Ωの終端器であってよいが、アプリケーションごとに異なっていても良い。
【0093】
図10に示された実施形態に移れば、アンテナアセンブリ220は、RFスイッチ(例えばHFスイッチ208)とRF回路204と共に示されている。図示されている実施形態におけるアンテナアセンブリ220は、直線偏波のために構成された第1、第2の支線カプラを備えている。第1、第2の支線カプラ340は、別々に、アンテナ310及び誘電体320(
図4にてアンテナ310とともに図示)と接続されていてよい。図示の実施形態においては、第1および第2の支線カプラ340は、HFスイッチ208を介して選択的に指示されるRF回路204の出力によって駆動されてよい。
【0094】
アンテナアセンブリの代替的な実施形態が
図11に示されており、概略的に220’で指し示している。アンテナアセンブリ220’は、第1および第2の支線カプラ340’が円偏波用に構成されていることを除いて、アンテナアセンブリ220と同様である。図示されている実施形態におけるRF回路204は、第1および第2の支線カプラ340’に向けて別々に供給され得る第1および第2の出力を含み、アンテナ310に対する円偏波を可能にする。
【0095】
1つの実施形態における支線カプラ340は
図5に描かれており、給電ポート342、絶縁ポート344、第1ポート346、及び第2ポート348を含む。第1ポート346は位相が0°であり、第2ポート348の位相は180°であってよい。
【0096】
アンテナ310といくつかの点で類似するアンテナの様々な代替的な構造が、
図6~
図9に図示された実施形態に描かれており、それぞれ610、710、810、910で指し示されている。アンテナ610、710、810、910は、図示の実施形態ではバラン(不平衡から平衡へ)と共に描かれている。図示された実施形態から分かるように、アンテナ310、610、710、810、910の形状は、用途に応じて変更可能である。形状の例としては、円形、長方形、楕円形などがある。
【0097】
「垂直」、「水平」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「内側」、「内側へ」、「外側」および「外側へ」などの方向を示す用語が、図示された実施形態の方向に基づいて本発明を説明するのを助けるために使用される。方向を示す用語の使用が、本発明をいずれかの特定の方向に限定すると解釈されるべきではない。
【0098】
以上の説明は、本発明の現在の実施形態に関するものである。添付の特許請求の範囲に定義された本発明の精神および広範な態様から逸脱することなく、様々な変更および変化が実施されてよく、これらは均等論を含む特許法の原則に従って解釈される。本開示は、例示を目的として提示されたものであり、本発明のすべての実施形態の網羅的な説明として解釈されるべきではなく、また、これらの実施形態に関連して図示または説明された特定の要素に特許請求の範囲を限定するものでもない。例えば、限定するものではないが、記載された発明の任意の個々の要素は、実質的に同様の機能を提供するか、さもなければ適切な動作を提供する代替要素によって置き換えることができる。これには、例えば、当業者に現在知られているような、現在知られている代替要素、および開発時に当業者が代替要素として認識するような、将来的に開発される代替要素が含まれる。さらに、開示された実施形態は、共に説明され、協力して利点の集まりを提供する複数の特徴を含む。本発明は、発行された特許請求の範囲に明示的に記載されている場合を除き、これらの特徴の全てを含む、または、記載された全ての利点を提供する実施形態のみに限定されない。例えば、冠詞「a」、「an」、「the」または「said」が使用される、単数形での請求項要素を参照することは、その要素を単数に限定するものとして解釈されるべきではない。「X、YおよびZのうちの少なくとも1つ」としての請求項要素に対する言及は、個々にX、YまたはZのいずれか1つ、並びに、X、YおよびZの任意の組み合わせ、例えばX、Y、Z;X、Y;X、Z:Y、Zを含むことを意味する。
【符号の説明】
【0099】
10:対象物、20:リモートデバイス、40:センサー、50:対象装置、120:電源バス、130:通信リンク、132:終端装置、140:通信リンク、214:調整回路、216:調整回路、310:アンテナ、312:給電点、319:金属層、320:誘電体