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特開2024-120900精製された間葉系幹細胞エキソソームおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120900
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】精製された間葉系幹細胞エキソソームおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20240829BHJP
【FI】
C12N5/0775
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024060949
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2020509033の分割
【原出願日】2018-08-15
(31)【優先権主張番号】62/545,610
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミツィアリス,エス.,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】コーレンバナス,ステラ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】      (修正有)
【課題】治療上有効な間葉系幹細胞エキソソームを提供する。
【解決手段】本明細書に提供されるのは、間葉系幹細胞(MSC)から単離されたエキソソームである。かかる単離されたエキソソームは、夾雑物を実質的に含まず、様々な疾患(例えば、BPDなどの肺疾患)の処置において治療的に活性である。単離されたMSCエキソソームは、本明細書に記載の1以上のタンパク質マーカーによって同定される。かかるMSCエキソソームを精製する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された間葉系幹細胞(MCS)エキソソームであって、
(i)単離されたMSCエキソソームは、FLT1、PLAUR、MME、CDH2、SLC16A3、CDH13、ITGB5、ITGA11、APP、GPC6、IGSF8、IRP2、TSPAN9、DAG1、SLC38A2、SLC12A8、GJA1、ITGA1、PLXNB2、SLC16A1、およびPROCRからなる群から選択される1以上のマーカーを含む;
(ii)単離されたMSCエキソソームは、線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上のマーカーを含み、該1以上のマーカーは、PTk7、CD109、SLC1A5、ITGA3、ITGA2、BSG、DPP4、ATP1A1、FAP、VASN、IGF2R、およびCD82からなる群から選択される;および/または
(iii)単離されたMSCエキソソームは、線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上のマーカーを含み、該1以上のマーカーは、RCN1、RAP1B、GDF15、FLT1、OLFML3、PLOD2、PSMA4、PAPPA、INHBA、SPOCK1、HSPB1、LOXL4、POLD3、CALU、IGFBP4、C4B、TINAGL1、SULF1、TPM3、AHNAK、CALR、RRAS2、PFKP、およびCOL16A1からなる群から選択される、
前記MCSエキソソーム。
【請求項2】
FLT1、PLAUR、MME、CDH2、SLC16A3、CDH13、ITGB5、ITGA11、APP、GPC6、IGSF8、IRP2、TSPAN9、DAG1、SLC38A2、SLC12A8、GJA1、ITGA1、PLXNB2、SLC16A1、およびPROCRからなる群から選択される1以上のマーカーを含む、請求項1に記載のMSCエキソソーム。
【請求項3】
線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上のマーカーを含み、該1以上のマーカーが、PTk7、CD109、SLC1A5、IGTA3、ITGA2、BSG、DPP4、ATP1A1、FAP、VASN、IGF2R、およびCD82からなる群から選択される、請求項1に記載のMSCエキソソーム。
【請求項4】
線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上のマーカーを含み、該1以上のマーカーが、RCN1、RAP1B、GDF15、FLT1、OLFML3、PLOD2、PSMA4、PAPPA、INHBA、SPOCK1、HSPB1、LOXL4、POLD3、CALU、IGFBP4、C4B、TINAGL1、SULF1、TPM3、AHNAK、CALR、RRAS2、PFKPおよびCOL16A1からなる群から選択される、請求項1に記載のMSCエキソソーム。
【請求項5】
FLOT1、CD9、およびCD63からなる群から選択される1以上のマーカーをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の単離されたMSCエキソソーム。
【請求項6】
MSC馴化培地から単離されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離されたMSCエキソソーム。
【請求項7】
MSCが、ホウォートンゼリーまたは骨髄からのものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離されたMCSエキソソーム。
【請求項8】
非エキソソームタンパク質夾雑物を実質的に含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の単離されたMSCエキソソーム。
【請求項9】
約30~150nmの直径を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離されたMSCエキソソーム。
【請求項10】
免疫調節活性を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離されたMSCエキソソーム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の単離されたMSCエキソソームを含む、医薬組成物。
【請求項12】
二次薬剤をさらに含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
二次薬剤が、肺サーファクタント、ステロイド、抗酸化剤、または吸入された一酸化窒素である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
有効量の請求項1~9のいずれか一項に記載の単離された間葉系幹細胞(MSC)エキソソーム、または請求項10~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む、肺疾患を処置する方法。
【請求項16】
対象がヒト対象である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ヒト対象が、妊娠37週前に生まれている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ヒト対象が、妊娠26週前に生まれている、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
対象が、過酸素症に誘発された肺損傷を有する、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
対象に酸素が投与されていたか、または対象に人工呼吸器が取り付けられていた、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
対象が、気管支肺異形成症(BPD)を発症しているか、または発症するリスクがある、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
対象が、過酸素症に誘発された肺高血圧症を有する、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
対象が、末梢肺動脈リモデリングを示す、請求項15~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
対象が、肺において炎症を有する、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
対象が、4週齢未満である、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
対象が、4週齢~3歳である、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
対象が、3~18歳である、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
対象が成人である、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
単離されたMSCエキソソームが、ボーラス用量で対象に投与される、請求項15~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
単離されたMSCエキソソームが、対象に繰り返し投与される、請求項15~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
単離されたMSCエキソソームが、肺機能を改善する、請求項15~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
単離されたMSCエキソソームが、肺構造を回復する、請求項15~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
単離されたMSCエキソソームが、肺線維症を低減する、請求項15~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
単離されたMSCエキソソームが、肺における炎症を低減する、請求項15~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
単離されたMSCエキソソームが、末梢肺動脈リモデリングを低減する、請求項15~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
単離されたMSCエキソソームが、生後1時間以内に投与される、請求項15~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
単離されたMSCエキソソームが、生後1ヶ月以内に投与される、請求項15~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
単離されたMSCエキソソームが、静脈内または鼻腔内に投与される、請求項15~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
単離されたMSCエキソソームが、対象の肺または気管に投与される、請求項15~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
単離されたMSCエキソソームが、吸入によって投与される、請求項15~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
単離されたMSCエキソソームが、エアロゾルで投与される、請求項15~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
単離されたMSCエキソソームが、ネブライザーを使用して投与される、請求項15~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
単離されたMSCエキソソームが、気管内チューブを使用して投与される、請求項15~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
対象が哺乳動物である、請求項15~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
哺乳動物がヒトである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物が齧歯類の動物である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
齧歯類の動物がマウスまたはラットである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
肺疾患を処置するための医薬の製造における使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離された間葉系幹細胞(MSC)エキソソーム、または請求項10~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
イオジキサノール(IDX)クッション勾配を使用してMSC馴化培地を分画すること、および、非エキソソームタンパク質夾雑物を実質的に含まない画分を収集することを含む、間葉系幹細胞(MSC)エキソソームを単離する方法。
【請求項50】
MSC馴化培地が、分画前に濃縮される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
MSC馴化培地が、タンジェント流濾過を介して濃縮される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
分画することが、IDXクッション勾配のMSC馴化培地で浮遊させることおよび超遠心分離を含む、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
請求項49~52のいずれか一項に記載の方法を使用して単離されたMSCエキソソーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年8月15日に出願された米国仮出願番号62/545,610に対して35 U.S.C.§119(e)下の利益を主張する。該出願は「精製された間葉系幹細胞エキソソームおよびその使用」と題され、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
政府の支援
本発明は、NIHによって授与された助成金番号RO1 HL085446、RO1 HL055454、およびT32 HD007466の下で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
背景
種々の臓器(例えば、肺)における間葉系幹/間質細胞(MSC)の治療能力は、それらのセクレトーム(例えば、それらが放出するエキソソーム)に含まれることが示されている。MSCエキソソーム処置の有益な特性は、心筋梗塞、腎障害、アレルギーと同様の免疫調節状態、神経保護を含む、多くの疾患モデルでも報告されている。しかしながら、粗いエキソソーム単離技術は、分析の特性解析が不十分であるため、MSCエキソソームの治療効果が低下し、バイオアベイラビリティが低下し、調製物が非エキソソーム材料で汚染されることがよくある。
【発明の概要】
【0003】
概要
本明細書に提供されるのは、精製されたMSCエキソソーム(例えば、ヒト臍帯ホウォートンゼリーまたは骨髄由来)の特性解析である。本明細書に記載の精製方法を使用して、肺疾患(例えば、気管支肺異形成症(BPD))に治療的な有効性をもたらすMSCエキソソームが単離され、かかる精製されたMCSエキソソームに関連するマーカーが同定される。さらに本明細書に提供されるのは、精製されたMSCエキソソームを使用して肺疾患(例えば、BPD)を処置する方法である。いくつかの態様において、MSCエキソソームのボーラス用量は、肺疾患(例えば、BPD)の重症度を低減するのに有効である。
【0004】
したがって、本開示のいくつかの側面は、単離された間葉系幹細胞(MCS)エキソソームを提供し、ここで、(i)単離されたMSCエキソソームは、FLT1、PLAUR、MME、CDH2、SLC16A3、CDH13、ITGB5、ITGA11、APP、GPC6、IGSF8、IRP2、TSPAN9、DAG1、SLC38A2、SLC12A8、GJA1、ITGA1、PLXNB2、SLC16A1、およびPROCRからなる群から選択される1以上のマーカーを含む;(ii)単離されたMSCエキソソームは、線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上のマーカーを含み、該1以上のマーカーは、PTk7、CD109、SLC1A5、ITGA3、ITGA2、BSG、DPP4、ATP1A1、FAP、VASN、IGF2R、およびCD82からなる群から選択される;および/または(iii)単離されたMSCエキソソームは線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上のマーカーを含み、該1以上のマーカーは、RCN1、RAP1B、GDF15、FLT1、OLFML3、PLOD2、PSMA4、PAPPA、INHBA、SPOCK1、HSPB1、LOXL4、POLD3、CALU、IGFBP4、C4B、TINAGL1、SULF1、TPM3、AHNAK、CALR、RRAS2、PFKP、およびCOL16A1からなる群から選択される。
【0005】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、FLT1、PLAUR、MME、CDH2、SLC16A3、CDH13、ITGB5、ITGA11、APP、GPC6、IGSF8、IRP2、TSPAN9、DAG1、SLC38A2、SLC12A8、GJA1、ITGA1、PLXNB2、SLC16A1、およびPROCRからなる群から選択される1以上のマーカーを含む。
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上のマーカーを含み、該1以上のマーカーは、PTk7、CD109、SLC1A5、IGTA3、ITGA2、BSG、DPP4、ATP1A1、FAP、VASN、IGF2R、およびCD82からなる群から選択される。
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上のマーカーを含み、該1以上のマーカーは、RCN1、RAP1B、GDF15、FLT1、OLFML3、PLOD2、PSMA4、PAPPA、INHBA、SPOCK1、HSPB1、LOXL4、POLD3、CALU、IGFBP4、C4B、TINAGL1、SULF1、TPM3、AHNAK、CALR、RRAS2、PFKPおよびCOL16A1からなる群から選択される。
【0006】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、FLOT1、CD9、およびCD63からなる群から選択される1以上のマーカーをさらに含む。
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、MSC馴化培地から単離されている。いくつかの態様において、MSCは、ホウォートンゼリーまたは骨髄からのものである。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、非エキソソームタンパク質夾雑物を実質的に含まない。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、約30~150nmの直径を有する。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは免疫調節活性を有する。
さらに本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の単離されたMSCエキソソームを含む医薬組成物である。いくつかの態様において、医薬組成物は二次薬剤をさらに含む。いくつかの態様において、二次薬剤は、肺サーファクタント、ステロイド、抗酸化剤、または吸入された一酸化窒素である。いくつかの態様において、医薬組成物は薬学的に許容し得る担体をさらに含む。
【0007】
本開示の他の側面は、肺疾患を処置する方法を提供し、該方法は、有効量の単離された間葉系幹細胞(MSC)エキソソームまたは本明細書に記載の医薬組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む。
いくつかの態様において、対象はヒト対象である。いくつかの態様において、ヒト対象は妊娠37週前に生まれている。いくつかの態様において、ヒト対象は妊娠26週前に生まれている。いくつかの態様において、対象は過酸素症に誘発された肺損傷を有する。いくつかの態様において、対象には酸素が投与されていたか、または対象に人工呼吸器が取り付けられていた。いくつかの態様において、対象は気管支肺異形成症(BPD)を発症しているか、または発症するリスクがある。いくつかの態様において、対象は過酸素症に誘発された肺高血圧症を有する。いくつかの態様において、対象は末梢肺動脈リモデリングを示す。いくつかの態様において、対象は肺において炎症を有する。
【0008】
いくつかの態様において、対象は4週齢未満である。いくつかの態様において、対象は3~18歳である。いくつかの態様において、対象は成人である。
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、ボーラス用量で対象に投与される。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、繰り返し対象に投与される。
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、肺機能を改善する。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、肺構造を回復する。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、肺線維症を低減する。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、肺における炎症を低減する。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、末梢肺動脈リモデリングを低減する。
【0009】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、生後1時間以内に投与される。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、生後1月以内に投与される。
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、静脈内または鼻腔内に投与される。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、対象の肺または気管に投与される。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、吸入によって投与される。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、エアロゾルで投与される。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、ネブライザーを使用して投与される。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、気管内チューブを使用して投与される。
いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、哺乳動物はヒトである。いくつかの態様において、哺乳動物は齧歯類の動物である。いくつかの態様において、齧歯類の動物はマウスまたはラットである。
【0010】
単離された間葉系幹細胞(MSC)エキソソームおよび本明細書に記載の医薬組成物は、肺疾患を処置するための医薬の製造においても使用され得る。
本開示の他の側面は、間葉系幹細胞(MSC) エキソソームを単離する方法を提供し、該方法は、イオジキサノール(IDX)クッション勾配を使用してMSC馴化培地を分画すること、および、非エキソソームタンパク質夾雑物を実質的に含まない画分を収集することを含む。いくつかの態様において、MSC馴化培地は、分画前に濃縮される。いくつかの態様において、MSC馴化培地は、タンジェント流濾過を介して濃縮される。いくつかの態様において、分画することは、MSC馴化培地をIDX クッション勾配上で浮遊させることおよび超遠心分離することを含む。
本明細書に記載の単離の方法を使用して単離されたMSCエキソソームもまた提供される。
上記の概要は、本明細書に開示された技術の態様、利点、特徴、および使用のいくつかを非限定的に例示することを意図している。 本明細書に開示される技術の他の態様、利点、特徴、および使用は、詳細な説明、図面、例、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0011】
図面の簡単な説明
添付の図面は縮尺通りに描かれることを意図したものではない。図面において、様々な図に示される同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表されている。明確にするために、すべての構成要素がすべての図面で標識されているわけではない。特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1の図面を含む。カラー図面(単数または複数)を有するこの特許または特許出願の刊行物のコピーは、請求および必要な料金の支払いに応じて庁によって提供される。図面内:
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A-B】図1A~1F。エキソソーム(EV)の精製、単離、および特性解析。(図1A)WJMSC、BMSC、およびHDFは、タンジェント流濾過を介して結合および濃縮された連続差動遠心分離によって単離され得る異種EVを分泌する。(図1B)濃縮(50x)馴化培地(CM)をイオジキサノール(IDX)クッション勾配に浮遊させて、EV集団(画分9、密度約1.18g/ml)を精製および単離した。
図1C】(図1C)ナノ粒子追跡分析(NTA)とタンパク質濃度を使用して、IDXクッション(12×1ml画分)におけるEV濃度と粒子:タンパク質比をそれぞれ評価した。線はタンパク質濃度を示し、棒グラフはNTAによるナノ粒子濃度を反映している。画分密度はg/mlで表される。
図1D】(図1D)対応する画分9勾配から単離されたWJMSC-EV、BMSC-EV、およびHDF-EVの代表的なサイズ分布。
図1E-F】(図1E)異種EV形態を示す透過型電子顕微鏡(TEM)画像(高倍率、×30,000、スケールバー=100nm)。(図1F)IDXクッション勾配画分は、エキソソームマーカーであるフロチリン(FLOT-1)およびテトラスパニンCD63およびCD9を表すタンパク質に対する抗体を使用して、ウエスタンブロット(画分1-6および7-12、並列)によって分析された。レーンごとに同等の体積の各画分がロードされ、代表的な画像が示されている。
【0013】
図2図2A~2B。MSC-EV処置は、短期間の肺構造の転帰を改善する。新生児FVBマウスはHYRX(75%O)に7日間暴露された。HYRX暴露マウスはNRMX(室内空気)にとどまったマウスと比較された。EV処置はPN4で静脈内(IV)送達された。PN14で短期転帰が評価された(図2Aに示された概略図)。(図2B)収集された肺切片はヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色された。挿入物は200×の倍率で撮影された。HYRX-対照およびHDF-EV処置マウスは、大きな空域と不完全な肺胞形成を特徴とする顕著な肺胞単純化を示した。WJMSC-EVまたはBMSC-EVのいずれかのボーラス用量を受けたHYRX暴露動物は、HYRX対照マウスの肺気腫様の外観と比較して、著しく改善された肺胞形成を有した。平均線形切片の定量化(MLI、μm)は、平均空域直径のサロゲートを表す。データは、3つの個別の研究の結果を表す。平均±SEM、n=1群あたり5~15、**p<0.01、***p<0.001。スケールバー=100μm。
【0014】
図3図3。MSC-EV処置は肺の構造を改善し、HYRX誘発線維症を低減する。長期転帰については、PN42でマウスを評価した(6週間)。肺切片をH&Eおよびマッソントリクロームで染色して、それぞれ肺胞の単純化および線維症の程度を評価した。Nikon Eclipse 80i顕微鏡を使用して100×(H&E)および200×(マッソントリクローム)の倍率で切片を撮影し、肺胞の単純化と中隔野のコラーゲン沈着を示す中程度の肺線維症を示した。HYRX対照動物の肺気腫様外観と比較して、WJMSC-EVまたはBMSC-EVを受けたマウスは、NRMX対照(H&E染色)に似た修復された肺胞発達を示した。コラーゲン沈着を評価すると、矢印で強調されているように、NRMX対照と比較すると、HYRX対照は中隔コラーゲン沈着のわずかではあるが有意な増加を有した(マッソントリクローム染色)。WJMSC-EVまたはBMSC-EVのいずれかを受けたHYRX暴露マウスのNRMX対照のレベルが回復した。平均線形切片(MLI、μm)を測定することにより、肺胞単純化の定量化が行われた。コラーゲン沈着は線維症のサロゲートとして使用され、中隔野の%として報告された。平均±SEM、n=1群あたり4~5、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。H&Eスケールバー=100μm。マッソントリクロームスケールバー=50μm。
【0015】
図4A-F】図4A~4F。MSC-EV投与は、肺高血圧症を改善し、末梢肺動脈リモデリングを救済し、過酸素症に誘発された肺損傷後の肺機能を改善する。WJMSC-exoとBMSC-exo処置の間の違いを示唆する最小限の証拠により、長期の肺構造、線維症および肺血管系に対する有益な効果に関して、我々のエキソソーム処置(WJMSC-EVとBMSC-EV)が一緒にプロットされ、MSC-EVと称された。HYRX誘発末梢肺血管リモデリングに対するMSC-EVの潜在的な影響を評価するために、PN42で収集されたマウスの肺切片はα平滑筋アクチン(α-SMA)で染色された。(図4A)HYRX対照では、それらのNRMXの対応物と比較して増加した肺血管リモデリングが明らかであり、MSC-EV処置は肺血管リモデリングのHYRXに誘発された増加を鈍化させた。挿入物は200×の倍率で撮影された。(図4B)内壁厚指数=100×(面積[ext]-面積[int])/面積[ext])。面積[ext]および面積[int]は、それぞれα-SMA層の外部および内部境界内の面積を示す。平均±SEM、n=1群あたり4~5。スケールバー=50μm。(図4C)肺高血圧症の程度を定量化するために、直接RVSP測定が行われた。(図4D)右心室と体重(RV:BW)の比率の評価。平均±SEM、n=1群あたり6~12。(図4E~4F)出生後42日目に肺機能試験が行われた。(図4E)全肺容量は、MSC-EV処置により大幅に改善された。(図4F)圧力-体積(PV)の関係は、代表的なPVループを示し、HYRX対照動物の上方および左方への有意なシフトを示す。これは、NRMX対照と比較した場合の肺疾患および空気捕捉の肺気腫様の特徴を示す。単回用量のMSC-EVを受けたHYRX暴露動物は、PVループの下方および右方への有意なシフトを示した(図4F)。平均±SEM、n=1群あたり5~8、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0016】
図4G-H】(図4G)MSC-exoは、末梢微小血管系のHYRXによって誘発された血管の喪失を防ぐ。PN42で収集されたマウスで、フォンウィルブランド因子(vWF)の肺切片が染色された。外径25と150μmとの間のvWF陽性血管を、8~12のランダムビューで100×の倍率でカウントした。代表的な免疫蛍光染色は、NRMX対照マウスと比較してHYRX暴露で小さな血管(直径<50μm)の著しい喪失、および、小さい(<50μm)血管の数がMSC-exoの保護効果を示す。平均±SEM、n=1群あたり5~10。スケールバー=100μm。矢印はvWFで染色された肺血管を強調している。(図4H図4Gで得られた結果の定量化。
【0017】
図5A図5A~5B。WJMSC-EV処置は、過酸素症肺トランスクリプトームを調節し、HYRX誘発炎症を鈍化させる。PN7での全マウス肺mRNAのポリA捕捉RNAseqは、NRMX対照(n=3)、HYRX対照動物(n=2)、およびWJMSC-EV処置動物(n=3)のサブセットで行われた。(図5A)PN7で調整されたp値でランク付けされた上位50の差次的に発現した遺伝子をカタログ化したヒートマップ。
図5B】(図5B)別の実験でRT-qPCRによって評価された、MSC-EV処置による炎症促進性マーカーの抑制を示す選択遺伝子プロファイルの検証。ここでは、エキソソーム処置の結果(WJMSCエキソソームとBMSCエキソソーム)が一緒にプロットされ、MSC-EVと称された。箱ひげ図は中央値(最小-最大)を表し、n=1群あたり3~8、p<0.05。
【0018】
図6A-B】図6A~6D。MSC-EVの免疫調節能力:マクロファージ極性化能アッセイ。マクロファージの極性化は、発達中の肺の免疫応答と炎症の調節に重要な役割を果たす。(図6A)炎症促進性M1表現型に極性化したマウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)または肺胞マクロファージ(MH-S細胞)にWJMSC-EVを追加すると、Il6、Ccl5、およびTNFαなどのマーカーのmRNA誘導が減少した。(図6B)別の(M2)極性化マクロファージへのWJMSC-EVの追加は、アルギナーゼ-1(Arg-1)mRNAをさらに誘発し、レジスチン様アルファ(Retnla)およびCd206誘導を調節した。フローサイトメトリーを使用して、肺マクロファージ(Cd45+ve、Cd11b-ve、Cd11c+ve、Cd64+ve)の表現型が評価された。
図6C-D】(図6C)M1マーカーCd40とCd86ならびにM2マーカーCd206がPN7とPN14で評価された。蛍光強度中央値(MFI)が記録された。(図6D)Cd40、Cd86、およびCd206の代表的なヒストグラム(図6D)。平均±SEM、n=1群あたり4~8、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0019】
図7A図7A~7B。細胞表面マーカーのサイトメトリー分析。4継代目の細胞のサイトメトリー分析からの代表的なヒストグラム。ヒト臍帯WJMSC(図7A)およびヒト皮膚線維芽細胞(HDF)(図7B)の両方は、CD105、CD90、CD73およびCD44を発現するが、CD11b、CD31、CD34およびCD45の発現を欠く。染色されていない対照はより淡い灰色のヒストグラムで、結合抗体染色された細胞はより濃い灰色で示されている。
図7B図7A~7B。細胞表面マーカーのサイトメトリー分析。4継代目の細胞のサイトメトリー分析からの代表的なヒストグラム。ヒト臍帯WJMSC(図7A)およびヒト皮膚線維芽細胞(HDF)(図7B)の両方は、CD105、CD90、CD73およびCD44を発現するが、CD11b、CD31、CD34およびCD45の発現を欠く。染色されていない対照はより淡い灰色のヒストグラムで、結合抗体染色された細胞はより濃い灰色で示されている。
【0020】
図8図8。間葉系幹細胞の分化能力。骨細胞、脂肪細胞、および軟骨細胞系統に対するWJMSCおよびHDF培養のin vitro分化能が、市販のキットを使用して評価された。HDFとは対照的に、WJMSCは、それぞれの分化培地に供されたときに、カルシウム沈着(アリザリンレッドS染色を使用して視覚化)、脂肪滴(脂肪形成、その後オイルレッドを使用して染色)、および正の軟骨細胞形成(アルシアンブルー染色)を示した。
【0021】
図9A-B】図9A~9F。PN7およびPN14のマウス肺からのmRNA配列決定データのグローバル分析。(図9A)PN7またはPN14のマウス肺から抽出されたRNAから得られた遺伝子発現プロファイルの主構成要素分析(PCA)。(図9B)NRMXマウス対HYRX暴露マウス、およびNRMX対PN7およびPN14のMSC-EVで処置したHYRX暴露マウスのMAプロット。MAプロットは、平均発現(正規化されたカウント)と比較したmRNA発現の対数変化を示す。DESeq2を使用して、赤でマークされた差次的に発現される転写産物(padj<0.1)を決定した。
図9C-E】(図9C)HYRXおよびNRMX対照と比較して、MSC-EV処置によって独自に上方調節された遺伝子(PN7)の遺伝子オントロジー(GO)濃縮分析(生物学的プロセス)の上位10カテゴリー。(図9D)NRMXマウスと比較してHYRX群で上昇した遺伝子。(図9E)HYRX対照マウスと比較してMSC-EV処置によって有意に抑制された遺伝子のGO濃縮分析(生物学的プロセス)の上位10カテゴリー。
図9F】(図9F)PN14でのMSC-EV処置によって有意に調節される遺伝子を強調するヒートマップ。
【0022】
図10A図10A~10B。肺胞マクロファージとWJMSC-EVの相互作用。(図10A)蛍光顕微鏡を使用して、WJMSC-EVが肺胞マクロファージ(MH-S細胞)と容易に相互作用することが観察された。スケールバー=20μm。
図10B】(図10B)用量依存的な方法で、MH-S細胞にWJMSC-EVを追加すると、Ccl5およびTNFαなどの古典的に活性化された(M1)マクロファージマーカーのmRNA誘導が減少したが、WJMSC-EVを代わりに極性化(M2)マクロファージに用量依存的に追加すると、Arg-1mRNAの誘導を増加させた。+0.05~0.5×10は、MSC-EV(細胞当量)用量を指す。平均±SEM、n=1群あたり3~5、p<0.05、**p<0.01。
【0023】
図11図11。代表的なin vivo肺マクロファージゲーティング戦略。マウス肺の肺マクロファージ細胞集団を同定するために使用される代表的なゲーティング戦略。細胞は、酵素で消化されたマウス肺から単離された。細胞凝集体および細胞破片(前方および側方散乱パラメータに基づく)を除き、免疫細胞はCd45染色により同定された。シーケンシャルゲーティング戦略を使用して、特定のマーカー(Cd45+ve、Cd11b-ve、Cd11c+ve、Cd64+ve)を発現している肺マクロファージ集団を同定した。肺マクロファージの同定後、陽性マクロファージ表現型マーカー(Cd40、Cd86、およびCd206(上記で選択)は、適切な蛍光マイナス-1対照と比較することにより評価された。左ヒストグラム:(Cd45+ve、Cd11b-ve、Cd11c+ve、Cd64+veおよびCd206-ve)。右ヒストグラム:(Cd45+ve、Cd11b-ve、Cd11c+ve、Cd64+veおよびCd206+ve)。
【0024】
図12図12。WJMSC-exo投与は、損傷していない肺には影響しない。NRMX対照動物は、PN4でWJMSC-exoの単回静脈内(IV)用量を受けた(「方法」で説明)。PN14での肺構造の評価では、NRMX対照マウスとWJMSC-exoで処置したNRMXマウスの間に違いは見つからなかった(p=0.9)。MLI:平均線形切片。
【0025】
図13A-B】図13A~13D。WJMSC-exoおよびBMSC-exo処置は、肺高血圧症の改善において同様の傾向を示し、過酸素症に誘発された微小血管系の喪失を防ぎ、末梢肺動脈リモデリングを救済する。(図13A)HYRX誘発末梢肺血管リモデリングに対するMSC-exo処置の潜在的影響を評価するため、PN42で収集されたマウスの肺切片がα平滑筋アクチン(α-SMA)で染色された。内壁厚指数=100×(面積[ext]-面積[int])/面積[ext])。面積[ext]および面積[int]は、それぞれα-SMA層の外部および内部境界内の面積を示す。NRMXおよびHYRX対照と比較した2つのMSC-exo群(WJMSC-exoおよびBMSC-exo)について内壁厚の値が示されている。n=1群あたり4~5。(図13B)MSC-exoは、末梢血管の過酸素症に誘発された血管の喪失を防ぐ。PN42で収集されたマウスで、フォンウィルブランド因子(vWF)について肺切片が染色された。
図13C-D】1群あたりn=5。肺高血圧症の程度を定量化するために、我々は、PN42のマウスでRVSPの直接測定を行い(図13C)、フルトン指数を評価した(図13D)。n=1群あたり6~12。平均±SEM。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、¶p=0.06対HYRX。
【0026】
図14図14。WJMSC-exoおよびBMSC-exoは肺トランスクリプトームを変化させる。選択された全肺RNA-seqデータの検証とWJMSC-exoおよびBMSC-exo処置による候補炎症促進性マーカーの抑制は、別々の実験でRT-qPCRによって評価された。平均値±SEM、n=1群あたり3~4、p<0.05対HYRX対照。
【0027】
特定の態様の詳細な記載
本開示は、少なくとも部分的に、間葉系幹細胞エキソソーム(MSCエキソソーム)が異種であり、全MSCエキソソームの亜集団が肺疾患、例えば気管支肺異形成症(BPD)の処置におけるMSCエキソソームの治療的な有効性をもたらすという驚くべき発見に基づいている。MSCエキソソームの精製画分は、エキソソーム含有量が高く、タンパク質夾雑物が少ない。MSCエキソソームの他の画分または他の細胞型に由来するエクソームと比較して、MSCエキソソームの精製画分に差次的に表されるタンパク質マーカーが同定される。精製されたMSCエキソソームは、免疫調節活性を有することがわかり、様々な障害(例えば肺疾患)の処置に有効である。エキソソームの亜集団を精製する方法も提供される。
【0028】
したがって、本開示のいくつかの側面は、単離されたMSCエキソソームに関する。「エキソソーム」は、細胞(例えば、任意の真核細胞)から放出される膜(例えば、脂質二重層)ベシクルである。エキソソームは、血液、尿、および細胞培養の培養培地を含む真核生物の液体に含まれている。本開示のエキソソームは、間葉系幹細胞(MSC)から放出され、「間葉系幹細胞エキソソーム」または「MSCエキソソーム」と互換的に称される。同様に、線維芽細胞から放出されるエキソソームは、本明細書では「線維芽細胞エキソソーム」と称される。驚くべきことに、他の細胞型、例えば線維芽細胞から放出されたエキソソームは、MSCエキソソームと同じ特性(例えば、タンパク質マーカーおよび生物活性)を有しないことが本明細書で発見された。
【0029】
「間葉系幹細胞(MSC)」は、神経細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、筋細胞、心臓組織、および他の内皮細胞または上皮細胞に分化する能力を有する前駆細胞である。(例えば、Wang, Stem Cells 2004;22(7);1330-7; McElreavey;1991 Biochem Soc Trans (1);29s; Takechi, Placenta 1993 March/April; 14 (2); 235-45; Takechi, 1993; Kobayashi; Early Human Development;1998; July 10; 51 (3); 223-33; Yen; Stem Cells; 2005; 23 (1) 3-9. を参照。)これらの細胞は、遺伝子またはタンパク質発現によって表現型的に定義され得る。これらの細胞は、CD13、CD29、CD44、CD49a、b、c、e、f、CD51、CD54、CD58、CD71、CD73、CD90、CD102、CD105、CD106、CDw119、CD120a、CD120b、CD123、CD124、CD126、CD127、CD140a、CD166、P75、TGF-bIR、TGF-bIIR、HLA-A、B、C、SSEA-3、SSEA-4、D7およびPD-L1の1以上を発現する(したがって陽性である)ことを特徴としている。これらの細胞は、CD3、CD5、CD6、CD9、CD10、CD11a、CD14、CD15、CD18、CD21、CD25、CD31、CD34、CD36、CD38、CD45、CD49d、CD50、CD62E、L、S、CD80、CD86、CD95、CD117、CD133、SSEA-1、およびABOを発現していない(したがって陰性である)としても特徴付けられている。よって、MSCは、分化の可能性に従って表現型的および/または機能的に特徴付けられ得る。
【0030】
MSCは、骨髄、血液、骨膜、真皮、臍帯血および/またはマトリックス(例えば、ホウォートンゼリー)、および胎盤を含むが、これらに限定されない多くの供給源から収集され得る。MSCを収集するための方法は、当該技術分野、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許番号5486359に記載されている。
MSCは、組織培養プラスチックへの付着に基づいて、複数の供給源、例えば骨髄単核細胞、臍帯血、脂肪組織、胎盤組織から単離され得る。例えば、MSCは市販の骨髄吸引液から単離され得る。細胞集団内のMSCの濃縮は、蛍光活性化細胞選別(FACS)を含むがこれに限定されない当該技術分野において知られている方法を使用して達成され得る。
【0031】
MSCの成長、培養、および維持には、市販の培地が使用され得る。かかる培地は、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)を含むが、これに限定されない。MSC、線維芽細胞、およびマクロファージの成長、培養、および維持に有用であるかかる培地の構成要素は、アミノ酸、ビタミン、炭素供給源(天然および非天然)、塩、糖、植物由来の加水分解物、ピルビン酸ナトリウム、サーファクタント、アンモニア、脂質、ホルモンまたは成長因子、バッファー、非天然アミノ酸、糖前駆体、指示薬、ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチド、酪酸または有機物、DMSO、動物由来産物、遺伝子誘導物質、非天然糖、細胞内pHの調節剤、ベタインまたは浸透圧保護剤、微量元素、ミネラル、非天然ビタミンを含むが、これらに限定されない。市販の組織培養培地を補充するために使用され得る追加の構成要素は、例えば、動物血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ胎仔血清(FCS)、ウマ血清(HS))、抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、硫酸ネオマイシン、アンホテリシンB、ブラストサイジン、クロラムフェニコール、アモキシシリン、バシトラシン、ブレオマイシン、セファロスポリン、クロルテトラサイクリン、ゼオシン、およびピューロマイシン)、およびグルタミン(例えば、L-グルタミン)を含む。間葉系幹細胞の生存と成長は、適切な好気性環境、pH、および温度の維持にも依存する。MSCは、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPittenger et al., Science, 284:143-147 (1999)に記載されるように、当該技術分野において知られている方法を使用して維持され得る。
【0032】
線維芽細胞は、細胞外マトリックスとコラーゲン、動物組織の構造的フレームワーク(例えば、間質)を合成する細胞の一種であり、創傷治癒に重要な役割を果たす。線維芽細胞は、動物の結合組織の最も一般的な細胞である。線維芽細胞は、典型的には、2以上の核小体を有する楕円形の斑点状核を取り囲む分枝の細胞質を有する。活性な線維芽細胞は、豊富な粗面小胞体によって認識され得る。線維細胞(fibrocyte)とも呼ばれる非活性の線維芽細胞は、より小さく紡錘形である。それらは低減された粗面小胞体を有する。
線維芽細胞の供給源は、緩い、密な、弾性のある、網状の、および脂肪の結合組織などの結合組織を含む。さらに、胚性結合組織だけでなく、骨、軟骨、および血液を含む特殊な結合組織もある。他の供給源は皮膚を含む。線維芽細胞を単離および培養する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、以下を参照:Weber et al., “Isolation and Culture of Fibroblasts, Vascular Smooth Muscle, and Endothelial Cells From the Fetal Rat Ductus Arteriosus.” Pediatric Research. 2011; 70, 236-241; Huschtscha et al., “Enhanced isolation of fibroblasts from human skin explants.” Biotechniques. 2012;53(4):239-44;これらの全体の内容は参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0033】
本開示のいくつかの側面は、単離されたエキソソームに関する。本明細書で使用される場合、「単離されたエキソソーム」は、その天然の環境から物理的に分離されているエキソソームである。単離されたエキソソームは、MSC、線維芽細胞、およびマクロファージを含む、それが天然に存在する組織または細胞から、全体的または部分的に物理的に分離されていてもよい。いくつかの態様において、単離されたエキソソームは、単離されたMSCエキソソームである。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、ヒト骨髄または臍帯ホウォートンゼリーからのMSCの培養培地から単離される。かかる培養培地は、本明細書では「MSC馴化培地」と呼ばれる。いくつかの態様において、単離されたエキソソームは、MSCなどの細胞を含まなくてもよく、または馴化培地を含まないかまたは実質的に含まなくてもよく、またはタンパク質などの生物学的夾雑物を含まなくてもよい。典型的には、単離されたエキソソームは、操作されていない馴化培地中に存在するエキソソームよりも高い濃度で提供される。
【0034】
本開示の単離されたMSCエキソソームは、他の細胞型(例えば、線維芽細胞)に由来するエキソソーム、または精製プロセスから生じる他の画分に比べて存在または濃縮されるマーカー(例えば、タンパク質)について特徴付けられる。本明細書で使用される「マーカー」は、MSCエキソソームに関連し、本明細書に記載される精製方法においてMSCエキソソームと同時精製される分子(例えば、タンパク質)を指す。MSCエキソソームに関連付けられているマーカーは、MSCエキソソームの脂質膜に結合し得るか(例えば、外表面に結合する、または脂質膜に挿入される)、MSCエキソソームによってカプセル化され得る。エキソソーム中の特定のマーカーを検出する方法、例えば、ウエスタンブロッティング、免疫染色、または質量分析は、当業者に知られている。
【0035】
いくつかの態様において、本開示の単離されたMSCエキソソームは、以下からなる群から選択されるマーカーの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21)を含む:FLT1(血管内皮成長因子受容体1、Uniprot ID P17948)、PLAUR(ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター表面受容体、Uniprot ID Q03405)、MME(ネプリライシン、Uniprot ID P08473)、CDH2(カドヘリン2、P19022)、SLC16A3(モノカルボキシラートトランスポーター4、Uniprot ID: O15427)、CDH13(カドヘリン13、Uniprot ID: P55290)、ITGB5(インテグリンベータ5、Uniprot ID: P18084)、ITGA11(インテグリンアルファ11、Uniprot ID: Q9UKX5)、APP(アミロイドベータA4タンパク質、Uniprot ID: P05067)、GPC6(グリピカン6、Uniprot ID: Q9Y625)、IGSF8(免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8、Uniprot ID: Q969P0)、IRP2(鉄応答要素結合タンパク質2(IREB2としても知られる)、uniprot ID: P48200)、TSPAN9(テトラスパニン9、Uniprot ID: O75954)、DAG1(ジストログリカン、Uniprot ID: Q14118)、SLC38A2(ナトリウム結合中性アミノ酸トランスポーター2、Uniprot ID: Q96QD8)、SLC12A8(溶質担体ファミリー12メンバー8、Uniprot ID: A0AV02)、GJA1(ギャップジャンクションアルファ1タンパク質、Uniprot ID: P17302)、ITGA1(インテグリンアルファ1、Uniprot ID: P56199)、PLXNB2(プレキシンB2、Uniprot ID: O15031)、SLC16A1(モノカルボキシラートトランスポーター1、Umiprot ID: P53985)、およびPROCR(内皮タンパク質C受容体、Uniprot ID: Q9UNN8)。単離されたMSCエキソソームが「マーカーを含む」とは、マーカーが、例えばウエスタンブロッティング、免疫染色、または質量分析によって、単離されたエキソソーム中で検出可能であることを意味する。いくつかの態様において、マーカーは、MSC以外の細胞型、例えば線維芽細胞に由来するエキソソーム中に存在しない(例えば、検出不可能)。
【0036】
いくつかの態様において、本開示の単離されたMSCエキソソームは、線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12)のマーカーを含み、該1以上のマーカーは以下からなる群から選択される:PTk7(非活性チロシンタンパク質キナーゼ7、Uniprot ID: Q13308)、CD109(CD109抗原、Uniprot ID: Q6YHK3)、SLC1A5(中性アミノ酸トランスポーターB(0)、Uniprot ID: Q15758)、ITGA3(インテグリンアルファ3、Uniprot ID: P26006)、ITGA2(インテグリンアルファ2、Uniprot ID: P17301)、BSG(バシギン、Uniprot ID: P35613)、DPP4(ジペプチジルペプチダーゼ4、Uniprot ID: P27487)、ATP1A1(ナトリウム/カリウム輸送ATPaseサブユニットアルファ1、Uniprot ID: P05023)、FAP(プロリルエンドペプチダーゼFAP、Uniprot ID: Q12884)、VASN(バソリン、Uniprot ID: Q6EMK4)、IGF2R(カチオン非依存性マンノース6リン酸受容体、Uniprot ID: P11717)、およびCD82(CD82抗原、Uniprot ID: P27701)。
【0037】
いくつかの態様において、本開示の単離されたMSCエキソソームは、線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24)のマーカーを含み、該1以上のマーカーは以下からなる群から選択される:RCN1(レチクロカルビン1、Uniprot ID: Q15293)、RAP1B(Ras関連タンパク質Rap-1b、Uniprot ID: P61224)、GDF15(成長/分化因子15、Uniprot ID: Q99988)、FLT1(血管内皮成長因子受容体1、Uniprot ID: P17948)、OLFML3(オルファクトメジン様タンパク質3、Uniprot ID: Q9NRN5)、PLOD2(プロコラーゲンリシン,2オキソグルタル酸5ジオキシゲナーゼ2、Uniprot ID: O00469)、PSMA4(プロテアソームサブユニットアルファタイプ4、Uniprot ID: P25789)、PAPPA(パパリシン1、Uniprot ID: Q13219)、INHBA(インヒビンベータA鎖、Uniprot ID: P08476)、SPOCK1(テスティカン1、Uniprot ID: Q08629)、HSPB1(熱ショックタンパク質ベータ1、Uniprot ID: P04792)、LOXL4(リシルオキシダーゼホモログ4、Uniprot ID: Q96JB6)、POLD3(DNAポリメラーゼデルタサブユニット3、Uniprot ID: Q15054)、CALU(カルメニン、Uniprot ID: O43852)、IGFBP4(インスリン様成長因子結合タンパク質4、Uniprot ID: P22692)、C4B(補体C4-B、Uniprot ID: P0C0L5)、TINAGL1(尿細管間質性腎炎抗原様、Uniprot ID: Q9GZM7)、SULF1(細胞外スルファターゼSulf-1、Uniprot ID: Q8IWU6)、TPM3(トロポミオシンアルファ3鎖、Uniprot ID: P06753)、AHNAK(神経芽細胞分化関連タンパク質AHNAK、Uniprot ID: Q09666)、CALR(カルレティキュリン、Uniprot ID: P27797)、RRAS2(Ras関連タンパク質R-Ras2、Uniprot ID: P62070)、PFKP(ATP依存性6ホスホフルクトキナーゼ、血小板型、Uniprot ID: Q01813)、およびCOL16A1(コラーゲンアルファ1(XVI)鎖、Uniprot ID: Q07092)。
【0038】
単離されたMSCエキソソームにおいてマーカーが「濃縮」されていることは、マーカーが単離されたMSCエキソソームに以下のレベルで存在することを意味する:少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、または少なくとも100倍以上、他の細胞型(例えば、線維芽細胞)に由来するエキソソーム中のマーカーのレベル超。いくつかの態様において、マーカーは、単離されたMSCエキソソームに以下のレベルで存在する:20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍以上、他の細胞型に由来するエキソソーム(例えば、線維芽細胞エキソソーム)中のマーカーのレベル超。
【0039】
いくつかの態様において、本明細書に記載される単離されたMSCエキソソームは、1以上(例えば、1、2、3、4、または5以上)の既知のエキソソームマーカーを含む。いくつかの態様において、既知のエキソソームマーカーは、以下からなる群から選択される:FLOT1(フロチリン1、Uniprot ID: O75955)、CD9(CD9抗原、Uniprot ID: P21926)、およびCD63(CD63抗原、Uniprot ID: P08962)。
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、夾雑物(例えば、タンパク質夾雑物)を実質的に含まない。単離されたMSCエキソソームの調製物が任意の他の物質(例えば、タンパク質)を20%、15%、10%、5%、2%、1%、または1%未満含む場合、単離されたMSCエキソソームは「実質的に夾雑物を含まない」。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームの調製物が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%の純度である場合、夾雑物(例えば、タンパク質)に関して、単離されたMSCは「実質的に夾雑物を含まない」。
【0040】
「タンパク質夾雑物」は、単離されたエキソソームに関連しておらず、エキソソームの生物活性に寄与しないタンパク質を指す。タンパク質夾雑物は、本明細書では「非エキソソームタンパク質夾雑物」とも呼ばれる。
本明細書に記載される単離されたMSCエキソソームは、約30~150nmの直径を有する。例えば、単離されたMSCエキソソームは、以下の直径を有し得る:30~150、30~140、30~130、30~120、30~110、30~100、30~90、30~80、30~70、30~60、30~50、30~40、40~150、40~140、40~130、40~120、40~110、40~100、40~90、40~80、40~70、40~60、40~50、50~150nm、50~140nm、50~130nm、50~120nm、50~110nm、50~100nm、50~90nm、50~80nm、50~70nm、50~60nm、60~150nm、60~140nm、60~130nm、60~120nm、60~110nm、60~100nm、60~90nm、60~80nm、60~70nm、70~150nm、70~140nm、70~130nm、70~120nm、70~110nm、70~100nm、70~90nm、70~80nm、80~150nm、80~140nm、80~130nm、80~120nm、80~110nm、80~100nm、80~90nm、90~150nm、90~140nm、90~130nm、90~120nm、90~110nm、90~100nm、100~150nm、100~140nm、100~130nm、100~120nm、100~110nm、110~150nm、110~140nm、110~130nm、110~120nm、120~150nm、120~140nm、120~130nm、130~150nm、130~140nm、または140~150nm。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、約50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、または150nmの直径を有し得る。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは両凹の形態を示す。
【0041】
本明細書に記載されるように、単離されたMSCエキソソームは生物学的に活性であり、肺疾患の処置におけるMSCエキソソームの治療的な有効性は、この単離された(精製された)画分に起因し得る。したがって、単離されたMSCエキソソームは、疾患(例えば、肺疾患)の処置において、または疾患(例えば、肺疾患)を処置する医薬の製造において使用され得る。
本開示のいくつかの側面は、本明細書に記載されている単離されたMSCエキソソームを含む医薬組成物に関する。いくつかの態様において、かかる医薬組成物は、薬学的に許容し得る濃度の塩、バッファー剤、防腐剤、適合性担体、および/または他の(すなわち、二次)治療剤をさらに含む。
【0042】
薬学的に許容し得る担体は、予防的または治療的に活性な薬剤の運搬または輸送に関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料などの薬学的に許容し得る材料、組成物またはビヒクルである。各担体は、製剤の他の成分と適合し、対象に害を及ぼさないという意味で「許容し得る」ものでなければならない。薬学的に許容し得る担体として役立ち得る材料のいくつかの例は、以下を含む:ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどのバッファー剤;発熱物質を含まない水;等張生理食塩水;リンガー液;エチルアルコール;リン酸バッファー液;および医薬製剤に使用される他の非毒性適合性物質。
【0043】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームを含む医薬組成物は、肺疾患の処置のために処方される。したがって、医薬組成物は、肺疾患の処置に使用できる他の治療薬(二次薬剤)をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、治療剤は、本明細書で論じられるものなどの肺疾患の予防、処置および/または管理に使用できる任意の薬剤を指す。これらは、サーファクタント、吸入した一酸化窒素、ビスメシレートアルミトリン、免疫調節物質、および抗酸化剤を含むが、これらに限定されない。免疫調節剤の例は、メチルプレドニゾロンなどであるがこれらに限定されない、ステロイドおよびコルチコステロイドを含む。抗酸化剤の例は、スーパーオキシドジスムターゼを含むが、これに限定されない。
【0044】
肺高血圧症を含むがこれに限定されない特定の肺および他の疾患の処置または管理に使用される特定の二次治療剤は、以下を含む:酸素、ワルファリン(クマジン)などの抗凝固剤;フロセミド(Lasix(登録商標))またはスピロナラクトン(Aldactone(登録商標))などの利尿薬;カルシウムチャネル遮断薬;K-dur(登録商標)などのカリウム;ジゴキシンなどの変力剤;ニフェジピン(Procardia(登録商標))またはジルチアゼム(Cardizem(登録商標))などの血管拡張薬;ボセンタン(Tracleer(登録商標))およびアンブリセンタン(Letairis(登録商標))などのエンドセリン受容体アンタゴニスト;エポプロステノール(Flolan(登録商標))、トレプロスチニルナトリウム(Remodulin(登録商標)、Tyvaso(登録商標))、およびイロプロスト(Ventavis(登録商標))などのプロスタサイクリン類似体;およびシルデナフィル(Revatio(登録商標))およびタダラフィル(Adcirca(登録商標))などのPDE-5インヒビター。
【0045】
いくつかの態様において、肺疾患の処置のために、第2の薬剤は肺サーファクタントである。「肺サーファクタント」は、(例えば、肺胞壁が互いに付着するのを防ぐことにより)肺気道を開いた状態に保つのに有用なリポタンパク質混合物である。肺サーファクタントは以下で構成され得る:ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ホスホチジルコリン(PC)、ホスホチジルグリセロール(PG)などのリン脂質;コレステロール;およびSP-A、B、CおよびDなどのタンパク質。肺サーファクタントは、ウシまたはブタの肺組織などの天然の供給源に由来し得る。例は、Alveofact(商標)(ウシの肺洗浄から)、Curosurf(商標)(ミンチした豚の肺から)、Infasurf(商標)(子ウシの肺洗浄から)、およびSurvanta(商標)(ミンチしたウシの肺から、DPPC、パルミチン酸、およびトリパルミチンを含む追加の構成要素を含む)を含む。肺サーファクタントもまた合成であり得る。例は、Exosurf(商標)(ヘキサデカノールおよびチロキサポールを含むDPPCで構成)、Pumactant(商標)または人工肺拡張化合物(ALEC)(DPPCおよびPGで構成)、KL-4(DPPC、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリココール、パルミチン酸、およびSP-Bを模倣する合成ペプチドで構成)、Venticute(商標)(DPPC、PG、パルミチン酸、および組み換えSP-Cで構成)を含む。肺サーファクタントは、商業的供給業者から入手することができる。
【0046】
本開示の他の側面は、肺疾患を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に記載の単離されたMSCエキソソームまたはかかる単離されたMSCエキソソームを含む医薬組成物の有効量を、これを必要とする対象に投与することを含む。本明細書に記載の方法を使用して処置され得る肺疾患は、肺動脈高血圧症(PAH)とも呼ばれる肺高血圧症(PH)、喘息、気管支肺異形成症(BPD)、アレルギー、サルコイドーシス、および特発性肺線維症を含むが、これらに限定されない。これらの疾患は、炎症性の構成要素を有し得ない肺血管疾患も含む。本開示に従って処置され得るさらなる他の肺の状態は、敗血症または人口呼吸に関連し得る急性肺損傷を含む。この後者の状態の例は、年長の子供および成人に生じる急性呼吸窮迫症候群である。
【0047】
いくつかの態様において、本明細書に記載される方法は、気管支肺異形成症(BPD)を処置するために使用される。BPDは、酸素を与えられた、または人工呼吸器が取り付けられた新生児、または早産で生まれた新生児、特に極端に早産で生まれた新生児(例えば、妊娠32週前に生まれた新生児)に影響を与える状態である。新生児慢性肺疾患とも呼ばれる。BPDの原因は、例えば人工呼吸の結果としての機械的損傷、例えば酸素治療の結果としての酸素毒性、および感染症を含む。疾患は時間とともに非炎症性から炎症性に進行し得る。症状は、青みがかった皮膚、慢性的な咳、急速な呼吸、および息切れを含む。BPDを有する対象は、呼吸器合胞体ウイルス感染症などの感染症にかかりやすくなる。BPDを有する対象は、肺高血圧症を発症し得る。BPDを有する対象は肺にも炎症を有し得、末梢肺動脈リモデリングおよび肺線維症を示す。本開示は、対象における気管支肺異形成症(BPD)を処置する方法を提供する。本明細書に示されるように、単離されたMSCエキソソームのボーラス用量は、BPDに関連する短期的および長期的症状を改善するのに有効である。本明細書に提供される方法を使用して処置され得る対象は、BPDに罹患している、または罹患した新生児、または子供、または成人であり得る。
【0048】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、肺高血圧症を処置するために使用される。肺高血圧症は、正常レベルを超える肺動脈の血圧を特徴とする肺疾患である。症状は、息切れ、特に身体活動中の胸の痛み、脱力感、疲労、失神、特に運動中の立ちくらみ、めまい、異常な心音および雑音、頸静脈の充血、腹部、脚および足首の水分貯留、および爪床の青みがかった色を含む。いくつかの態様において、過酸素状態(例えば、対象に酸素が投与されたとき)は、肺高血圧症(過酸素症に誘発された肺高血圧症)を誘発し得る。
【0049】
いくつかの態様において、本明細書に記載される方法は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置するために使用される。ARDSは、呼吸窮迫症候群(RDS)、または肺への損傷または急性疾患の結果として生じる状態である成人の呼吸窮迫症候群としても知られている。肺への損傷は、人工呼吸、外傷、火傷、および/または誤嚥の結果であり得る。急性疾患は感染性肺炎または敗血症であり得る。それは急性肺損傷の重篤な形態と考えられており、しばしば致命的である。それは、肺の炎症、気体交換の障害、および炎症性メディエーターの放出、低酸素血症、および多臓器不全を特徴とする。ARDSは、胸部X線上の両側浸潤の存在下での200mmHg未満の吸気酸素(FiO2)の割合としての動脈部分酸素分圧(PaO2)の比率としても定義され得る。PaO2/FiO2比が両側浸潤で300mmHg未満の場合、急性肺障害を示し、これはしばしばARDSの前兆である。ARDSの症状は、息切れ、頻呼吸、および低酸素レベルによる精神錯乱を含む。
【0050】
いくつかの態様において、本明細書に記載される方法は、特発性肺線維症を処置するために使用される。特発性肺線維症は、原因不明の肺の瘢痕化または肥厚を特徴とする。それは50~70歳の人に最も頻繁に生じる。その症状は、息切れ定期的な咳(典型的には乾いた咳)、胸の痛み、および減少した活動レベルを含む。
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、アレルギーを処置するために使用される。アレルギーは免疫系の過敏性障害であり、赤目、かゆみ、鼻水、湿疹、じんましん、または喘息発作を含む症状がある。アレルギーは喘息などの症状に主要な役割を果たす。環境アレルゲンまたは食事アレルゲン、あるいは薬物に対する重度のアレルギーは、アナフィラキシーと呼ばれる生命を脅かす反応を引き起こし得る。アレルギー反応は、人の免疫系が環境中の通常は無害な物質であることが多いものに反応したときに生じ得る。アレルギーは、4つの形態の過敏症の1つであり、I型(または即時型)過敏症と呼ばれることもある。免疫グロブリンE(IgE)による特定の白血球(マスト細胞および好塩基球)の過剰な活性化のため、アレルギー反応は独特である。この反応は炎症反応をもたらし、軽度の不快感から危険な状態までの範囲に及び得る。アレルギー状態を診断するための様々な試験が存在する。試験は、可能性のあるアレルゲンを皮膚に置き、アレルゲン特異的IgEを探すための腫れおよび血液試験などの反応を探すことを含む。
【0051】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、低酸素症によって誘発された肺の炎症を処置するために使用される。低酸素症によって誘発された肺の炎症は、急性肺損傷および/またはARDSからしばしば生じる状態であり、それにより、炎症反応は低酸素状態への長期の曝露から生じる。かかる炎症反応は、低圧低酸素に曝されたヒトの気管支肺胞洗浄液における、マクロファージ、好中球、およびIL-1β、IL-6、IL-8、およびTNF-αを含む炎症性サイトカインの増加を含む。
「有効量」は、望ましい転帰を達成する薬剤の量である。絶対量は、投与のために選択された材料、投与が単回または複数回の用量か、年齢、体調、サイズ、体重、および疾患の段階を含む個々の患者パラメーターを含む、様々な因子に依存するであろう。これらの因子は当業者によく知られており、通常の実験で対処され得る。
【0052】
いくつかの態様において、有効量は、対象に毒性を引き起こさない薬剤の投薬量である。いくつかの態様において、有効量は、対象への毒性の低減を引き起こす薬剤の投薬量である。毒性を測定する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、肝臓、脾臓、および/または腎臓の生検/組織学;肝臓毒性についてのアラニントランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼおよびビリルビンアッセイ;および腎臓毒性についてのクレアチニンレベル)。
「処置する」または「処置」は、肺疾患の発症の予防、低減、または停止、肺疾患の症状の低減または排除、または肺疾患の予防を含むが、これらに限定されない。
対象は、ヒトまたは脊椎動物または哺乳動物を意味するものとし、これは、齧歯類の動物(例えば、ラットまたはマウス)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シチメンチョウ、ニワトリおよび霊長目の動物(例えば、サル)を含むが、これらに限定されない。本開示の方法は、これを必要とする対象を処置するために有用である。これを必要とする対象は、(すなわち、遺伝子試験を介して)肺疾患を発症するリスクを有する対象、または肺疾患を有する対象であり得る。
【0053】
対象は、本開示に記載のエキソソームを使用した処置に適している、本明細書に記載の疾患(または状態)を有するものであり得、またはかかる疾患(または状態)を発症するリスクがあるものであり得る。かかる対象は、新生児、特に低在胎齢で生まれた新生児を含む。本明細書で使用される場合、ヒト新生児は、出生時から約4週齢までのヒトを指す。本明細書で使用される場合、ヒト幼児は、約4週齢から約3歳までのヒトを指す。本明細書で使用される場合、低在胎齢は、所与の種の通常の在胎期間の前に生じる出産(または分娩)を指す。ヒトでは、妊娠期間全体は約40週間で、37週間から40週間超の範囲であり得る。ヒトの低妊娠期間は、早産に類似しており、妊娠37週の前に生じる出産と定義される。したがって、本開示は、さらに短い在胎期間(例えば、妊娠36週前、35週前、34週前、33週前、32週前、31週前、30週前、29週前、28週前、27週前、26週前、または25週前)で生まれたものを含む、妊娠37週前に生まれた対象の予防および/または処置を企図している。いくつかの態様において、対象は酸素を投与されている。いくつかの態様において、対象は、外因性酸素投与の有無に関わらず人工呼吸などの機械的介入を受けている。いくつかの態様において、対象は、過酸素症に誘発された肺損傷を有する。いくつかの態様において、対象は、BPDを発症したか、発症するリスクがある。
【0054】
乳児または新生児の場合、本開示は、新生児期を超えて、小児期および/または成人期へのそれらの処置を企図する。例えば、いくつかの態様において、本開示の方法を使用して処置される対象は、3~18歳である。いくつかの態様において、本開示の方法を使用して処置される対象は以下であり得る:3~18、3~17、3~16、3~15、3~14、3~13、3~12、3~11、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~18、4~17、4~16、4~15、4~14、4~13、4~12、4~11、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~18、5~17、5~16、5~15、5~14、5~13、5~12、5~11、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~18、6~17、6~16、6~15、6~14、6~13、6~12、6~11、6~10、6~9、6~8、6~7、7~18、7~17、7~16、7~15、7~14、7~13、7~12、7~11、7~10、7~9、7~8、8~18、8~17、8~16、8~15、8~14、8~13、8~12、8~11、8~10、8~9、9~18、9~17、9~16、9~15、9~14、9~13、9~12、9~11、9~10、10~18、10~17、10~16、10~15、10~14、10~13、10~12、10~11、11~18、11~17、11~16、11~15、11~14、11~13、11~12、12~18、12~17、12~16、12~15、12~14、12~13、13~18、13~17、13~16、13~15、13~14、14~18、14~17、14~16、14~15、15~18、15~17、15~16、16~18、16~17、または17~18歳。いくつかの態様において、対象は、例えば18歳または18歳超の成人である。
特定の対象は、例えば肺高血圧症など、本明細書に記載される疾患(または状態)の特定の形態に対する遺伝的素因を有し得、それらの対象も本開示に従って処置され得る。
【0055】
新生児、特に妊娠期間の短い新生児に関して、本開示は、生後1年、11月、10月、9月、8月、7月、6月、5月、4月、3月、2月、1月、4週、3週、2週、1週、6日、5日、4日、3日、2日、1日、12時間、6時間、3時間、または1時間以内の単離されたMSCエキソソームの投与を企図する。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、生後1時間以内(例えば、1時間以内、55分以内、50分以内、45分以内、40分以内、35分以内、30分以内、25分以内、20分以内、15分以内、10分以内、5分以内、または1分以内)に投与される。
【0056】
本開示はさらに、本明細書に記載の疾患または障害を示す症状がなくても、単離されたMSCエキソソームの投与を企図する。
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームまたは単離されたエキソソームを含む組成物は、ボーラス用量で対象(例えば、新生児)に投与される。「ボーラス用量」は、治療的に有効なレベルを達成するための、個別の量の薬品、薬物または他の化合物の単回投与を指す。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームの2回、3回、4回、または5回以上の投与を含む、単離されたMSCエキソソームの反復投与が企図される。いくつかの例において、単離されたMSCエキソソームは連続的に投与され得る。反復投与または連続投与は、処置される状態の重症度に応じて、数時間(例えば、1~2、1~3、1~6、1~12、1~18、または1~24時間)、数日(例えば、1~2、1~3、1~4、1~5、1~6日、または1~7日)または数週(例えば、1~2週、1~3週、または1~4週)にわたって行われる場合がある。投与が繰り返されるが連続的でない場合、投与間の時間は、数時間(例えば、4時間、6時間、または12時間)、数日(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、または6日)、または数週間(例えば、1週間、2週間、3週間、または4週間)であり得る。投与間の時間は同じであっても、異なっていてもよい。例として、疾患の症状が悪化しているように見える場合、a型エキソソームがより頻繁に投与され、その後症状が安定するかまたは減少すると、a型エキソソームはより少ない頻度で投与され得る。
【0057】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、生後24時間以内に少なくとも1回、次いで生後1週間以内に少なくとももう1回投与される。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、生後1時間以内に少なくとも1回、次いで生後3~4日以内に少なくとももう1回投与される。
単離されたMSCエキソソームは、肺または他の組織への送達をもたらす任意の経路によって投与され得る。静脈内ボーラス注射または持続注入などの全身投与経路が好適である。鼻腔内投与、気管内投与(例えば、挿管による)、および吸入(例えば、口または鼻を介したエアロゾルによる)などのより直接的な経路も本開示により企図され、場合によっては、特に、迅速な作用が必要である場合により適切であり得る。本明細書で使用されるとき、エアロゾルは、気体中に小さな粒子として分散した液体の懸濁液であり、それは、かかる粒子を含む微細なミストまたはスプレーを含む。本明細書で使用されるとき、エアロゾル化は、液体懸濁液を小さな粒子または液滴に変換することによってエアロゾルを生成するプロセスである。これは、加圧パックまたはネブライザーなどのエアロゾル送達システムを使用してなされ得る。ネブライザーは、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適な気体などであるがこれらに限定されない好適な推進剤を使用する、エアジェット(すなわち、空気圧式)、超音波、および振動メッシュネブライザーを含む。ネブライザーに加えて、肺送達のための他のデバイスは、定量吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器(DPI)を含むが、これらに限定されない。吸入器または注入器で使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、凍結乾燥されたエキソソームおよびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤を含有して処方され得る。
【0058】
単離されたMSCエキソソームは、それらを全身的に送達することが望ましい場合、例えばボーラス注射または連続注入を含む、注射による非経口投与のために処方され得る。注射用の製剤は、添加された防腐剤の有無に関わらず、例えばアンプルまたは複数回用量容器の単位剤形で提供され得る。
組成物は、油性または水性ビヒクル中の水溶性懸濁液、溶液またはエマルションなどの形態をとることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含み得る。好適な親油性溶媒またはビヒクルは、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルを含む。水性注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含み得る。任意に、懸濁液はまた、溶解度を増加させる好適な安定剤または薬剤を含み得る。代わりに、エキソソームは、使用前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌された発熱物質を含まない水で構成するために、凍結乾燥または他の粉末または固体の形態であり得る。
本開示に従って処置されている対象に投与される他の薬剤は、経口投与、鼻腔内投与、気管内投与、吸入、静脈内投与などを含む任意の好適な経路によって投与され得ることが理解されるべきである。当業者は、かかる二次薬剤の通常の投与経路を知るであろう。
【0059】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む医薬組成物は、対象に投与されると、肺機能を改善する。本明細書では、肺機能は、例えば当業者に既知の任意の方法により測定される肺の機能性が、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して少なくとも20%改善された場合、「改善された」と見なされる。例えば、肺機能は、例えば当業者に知られている任意の方法により測定される肺の機能性が、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍以上改善された場合に改善されたと見なされ得る。いくつかの態様において、肺機能は、例えば当業者に知られている任意の方法によって測定された肺機能が、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、50倍、または100倍以上改善された場合に改善されたと見なされる。
【0060】
肺機能を評価する方法は、当業者に知られている。かかる方法の非限定的な例は、肺活量測定(空気の流量を測定し、肺のサイズを推定する)、肺容量試験(肺が保持できる空気の量を測定する)、肺拡散能力(酸素が吸入された空気からどれだけ血液に入るかを評価する)、パルスオキシメトリー(血中の酸素レベルを推定)、動脈血気体試験(血液中の酸素および二酸化炭素などの気体のレベルを直接測定)、および呼気一酸化窒素試験(呼気中の一酸化窒素の量を測定)を含む。
【0061】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む医薬組成物は、対象に投与されると、肺構造を回復させる。本明細書では、肺構造(例えば正常な(例えば、健康な対象の)構造形態の肺胞のパーセンテージによって示される)が、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%増加した場合に「回復」すると見なされる。例えば、肺構造は、肺構造(例えば正常な(例えば、健康な対象の)構造形態の肺胞のパーセンテージによって示される)が、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍以上改善された場合に「回復した」と見なされ得る。いくつかの態様において、肺構造は、肺構造(例えば正常な(例えば、健康な対象の)構造形態の肺胞のパーセンテージによって示される)が、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、50倍、または100倍以上改善された場合に「回復した」と見なされ得る。当業者は、肺構造を評価する方法に精通している。
【0062】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む医薬組成物は、対象に投与されると、肺線維症を低減する。「肺線維症」は、肺組織が損傷および瘢痕化し、肺組織の肥厚および硬直を引き起こし、肺機能を低下させる状態を指す。肺線維症は様々な原因を有する。肺線維症は典型的には、BPDの対象に見られる。本明細書において、肺線維症は、肺線維症の程度(例えば、肺組織へのコラーゲン沈着によって示される)が、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%低減された場合に「低減した」と見なされる。例えば、肺線維症は、肺線維症の程度(例えば、肺組織へのコラーゲン沈着によって示される)が、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%低減された場合に低減したと見なされ得る。いくつかの態様において、肺線維症は、肺線維症の程度(例えば、肺組織へのコラーゲン沈着によって示される)が、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%低減された場合に低減したと見なされる。
【0063】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む医薬組成物は、対象に投与されると、肺の炎症を低減する。当業者は、例えば、肺または血液中の炎症のバイオマーカーのレベルを測定することにより、肺における炎症の程度を評価する方法に精通している。いくつかの態様において、肺における炎症は、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%低減される。例えば、炎症は、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%低減され得る。いくつかの態様において、炎症は、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%低減される。科学的な理論に束縛されることを望まないが、本明細書に記載される単離されたMSCエキソソームは、おそらく免疫応答および炎症に関与する遺伝子の発現の調節および/またはマクロファージ極性化の調節を介して免疫調節活性を有することが示される。「免疫調節活性」は、免疫応答および/または炎症反応の調節(例えば、増強または低減)に説明される単離されたMSCエキソソームの活性を指す。本明細書に記載されるように、単離されたMSCエキソソームは、様々な炎症促進性遺伝子の発現を下方調節する(例えば、図9E)。
【0064】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む医薬組成物は、対象に投与されると、末梢肺動脈リモデリングを低減させる。「末梢肺動脈リモデリング」は、肺動脈高血圧症(PAH)の重要な病理学的特徴であり、肺血管平滑筋細胞(SMC)および/または内皮細胞(EC)の著しい増殖を伴う、肺血管抵抗の増加とコンプライアンスの低下につながり、その結果、抵抗性肺動脈の血流が妨げられる。特定の形態の肺動脈リモデリングは可逆的である。肺動脈リモデリングの「低減」は、新しいリモデリングを予防するか、または古いリモデリングを逆転させることによって達成され得る。当業者は、肺動脈リモデリングの程度を評価する方法に精通している。いくつかの態様において、肺動脈リモデリングは、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%低減される。例えば、肺動脈リモデリングは、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%低減され得る。いくつかの態様において、肺動脈リモデリングは、単離されたMSCエキソソームを投与された対象において、単離されたMSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%低減される。
【0065】
本開示の他の側面は、本明細書に記載されているMSCエキソソームを単離する方法を提供する。単離されたMSCエキソソームは、他の物質、例えばタンパク質夾雑物を実質的に含まず、MSCエキソソームの治療的な有効性を保持する。本明細書(例えば、図1Aおよび1B)に記載されるように、MSC(例えば、ホウォートンゼリーまたは骨髄からのMSC)の培養培地は、(例えば、タンジェント流濾過を介して)濃縮され、10%~55%勾配のイオジキサノール(IDX)クッションによる分画に供される。分画は、濃縮された培地をIDXクッションの上に浮遊させ、混合物を超遠心分離することによって達成される。図1Bに示されているように画分が収集され、画分9は本明細書に記載の単離されたMSCエキソソームを含む。画分9のMSCエキソソームは、タンパク質含量が低く、MSCエキソソーム含量が高い。いくつかの態様において、画分9中のMSCエキソソームは、非エキソソームタンパク質夾雑物を実質的に含まない。
【0066】
単離されたMSCエキソソーム(画分9)はすぐに(例えば、本明細書に記載の方法で)使用され得る。または代わりに、単離されたMSCエキソソームは、例えば、使用前に低温保存状態で、短期および/または長期保存され得る。プロテイナーゼインヒビターは、長期保存中にエキソソームの完全性を提供するため、典型的には、凍結培地に含まれる。-20℃での凍結は、エキソソーム活性の喪失の増加に関連するため、好ましくない。活性を維持するため、-80℃での急速凍結がより好ましい。(例えば、Kidney International (2006) 69, 1471-1476を参照。)エキソソームの生物学的活性の保持を高めるために、凍結培地への添加剤が使用され得る。かかる添加剤は、インタクトの細胞の凍結保存に使用されるものと同様であり、DMSO、グリセロール、およびポリエチレングリコールを含み得るが、これらに限定されない。
本明細書に開示される技術の態様、利点、特徴、および使用のいくつかは、以下の例からより完全に理解されるであろう。例は、本開示のいくつかの利点を例示し、特定の態様を説明することを意図しているが、本開示の全範囲を例示することを意図しておらず、したがって、本開示の範囲を限定しない。
【0067】

例1:幹細胞エキソソームは、気管支肺異形成症を改善し、マクロファージの免疫調節により肺機能を回復させる。
気管支肺異形成症(BPD)は、機械的人口呼吸および酸素療法を必要とする早産児にほぼ排他的に生じる慢性肺疾患である。それは、制限された肺の成長(組織の単純化)、抑制された肺胞および血管の発達、および肺機能の障害を特徴とする。いくつかのBPDの転帰は、異常な肺機能の試験結果、気道過敏性の変化、中等度から重度の症例では二次性肺高血圧症(PH)など、長期の肺合併症に関連している(1~5)。発達性肺損傷を予防または処置するための有効な単一治療法がないため、極度の早産に関連するかかる生涯にわたる合併症の負担を処置および低減する新しいツールの必要性が急務である。
【0068】
肺の発達が制限されていることに加えて、数人の研究者は、観察された組織の単純化の根底にあるかもしれない幹細胞/前駆細胞の集団の喪失に注目している(6~8)。かかる発見は、早産に関連する肺損傷を改善するための幹細胞ベースの治療の適用のためのプラットフォームを提供している。間葉系幹細胞(MSC)(9~11)、内皮結腸形成細胞(ECFC)(12)、ヒト羊膜上皮細胞(hAEC)(13)などの異なる幹細胞/前駆細胞型の投与は、BPDおよび未熟児の他の主要な後遺症の予防および/または処置のための前臨床モデルで有望であることが示されている(14、15)。
【0069】
MSC療法後のレシピエント肺の実質的な生理学的改善にもかかわらず、いくつかの前臨床研究では、肺にドナー細胞の有意な生着がないことが指摘されており、作用の治療メカニズムはパラクリンまたは間接的であり得ることが示唆されている(16、17)。実際、以前の研究(9、18、19、および20)では、MSCの無細胞馴化培地(CM)が、肺の構造を維持し、前臨床BPDモデルの肺胞喪失を防ぐ上でMSC自体よりも優れた保護を提供することを実証した。間葉系幹細胞(MSC)療法は、BPDの前臨床モデルで有望であり、最近の研究により、MSCの主要な治療ベクターの1つがセクレトームに含まれ、エキソソーム(細胞外ベシクル;EV)によって表され、特にエキソソームと呼ばれるエンドサイトーシス経路を介して生成されたより小さな(直径150nm未満)亜集団であることが確立された(19)。
【0070】
肺のMSCの治療能力はセクレトームに含まれることに留意して、以前の研究では、治療用ベクターが放出するEVによって表されることが示されている(21~23)。MSC-EV処置の有益な特性は、心筋梗塞(24、25)、腎障害(26、27)、免疫応答の調節(28、29)および神経保護(30、31)を含む数多の疾患モデルについて報告されており、最近のレビューについては(32)を参照されたい。しかし、多くの場合、粗いEV単離技術と不十分な分析特性により、MSC-EVの治療効果がわかりにくくなり、バイオアベイラビリティが損なわれ、非EV材料で調製物が汚染される。ここでは、ヒト臍帯ホウォートンゼリー(WJMSC)と骨髄MSC(BMSC)の両方から精製されたMSC-EVの詳細な特性解析について説明する。さらに、BPDの実験モデルにおけるMSC-EV処置の有効性が調査されている。本明細書で概説する結果は、精製MSC-EVのボーラス用量が肺形態および肺発達を有意に改善し、肺線維症を減少させ、BPDの過酸素症に誘発されたモデルにおける肺血管リモデリングを改善することを示す。さらに、MSC-EV処置は肺機能試験の結果を改善し、関連する肺高血圧症を緩和することが示されている。さらに、この研究は、MSC-EV処置が過酸素症に誘発された炎症を鈍化することを実証している。これは、部分的に、肺マクロファージの極性化の変調を介した効果である。
【0071】
本明細書では、エキソソーム(直径30~150nm、マーカーCD9、CD63およびフロチリン-1を発現し、~1.18g/mlの密度で浮遊しているEV)を無血清培地(SFM)で36時間インキュベートした後、細胞培養上清(CM)から単離した。細胞の破片と関連するアポトーシスの破片を明確にするための差動遠心分離後、CMを濾過により濃縮し、OptiPrep(商標)(イオジキサノール;IDX)クッションでの浮遊によりエキソソームを単離し、さらに特性解析した。詳細については、オンラインのデータ補足を参照されたい。
分散分析後にボンフェローニ多重比較検定(GraphPad、v 6.0、CA、US)を統計分析に使用した。ピアソン相関係数を使用して、免疫組織化学血管リモデリングパラメーターとPHの生理学的指数との間の関係の強さを調べた。フローサイトメトリーのデータ分析では、FlowJoソフトウェアv10.2(TreeStar、OR、US)を使用した。炎症マーカーのmRNAレベルをRT-qPCRによって評価し、同種のNRMX対照群の平均レベルと比較して表した。有意性をp<0.05で考慮した。
in vivo研究では、試料サイズの計算は以前の研究に基づいており(14)、5%のαレベル、>90%の出力での肺構造の15%の改善の検出(平均線形切片;MLIで評価)には、群ごとに最低5匹の動物が必要であることが示唆された。
研究者は、組織学的分析および生理学的測定のために実験群に対して盲検化された。
【0072】
MSC-EVの精製、単離、および特性解析
ヒトMSCは多様なベシクル集団を分泌する。多くのEV単離方法は、しばしばタンパク質でEV調製物を汚染し、EVのバイオアベイラビリティを低下させ、凝集体を促進する(33)。したがって、目的は、従来のEV単離技術の前述の制限を克服するために、イオジキサノール密度勾配によって濃縮MSC-CMからEVを単離および精製することであった(図1Aおよび1B)。IDXクッションでのWJMSC、BMSC、またはヒト皮膚線維芽細胞(HDF)培養からのCMの浮遊により、勾配の画分9でEVを抽出できた。透過型電子顕微鏡(TEM)とナノ粒子追跡分析(NTA)によって画分6~10の間で評価されたベシクルを比較すると、画分9は優れたタンパク質:粒子の比(~1.18g/mlの密度に対応した)を誇った(図1C)。
画分9のTEMおよびNTA分析により、50~150nmの典型的な直径を占め、タンパク質夾雑物が最小限で、EVの明確な両凹の形態学的特徴を示す、WJMSC-EV、BMSC-EV、およびHDF-EV試料の異種EV集団が明らかになった(図1Dおよび1E)。IDXクッション勾配のイムノブロットにより、すべての細胞型の画分9がCD9、CD63、およびフロチリン-1に陽性であることが明らかになった(Flot-1、図1F)。
【0073】
短期評価(PN14):MSC-EV処置の単回用量は肺構造を回復させる
新生児マウスをHYRX(75%O)に7日間(生後日(PN)1~7)暴露した後、さらに7日間室内空気に戻した。HYRX暴露マウスをNRMX(室内空気)にとどまったマウスと比較した。PN4でHYRX暴露が開始された後、処置群はWJMSC-EV、BMSC-EV、またはHDF-EVの単回静脈内(IV)用量を受けた(図2Aに概略図を示す)。NRMX対照マウスと比較して、HYRX暴露マウスは、肺胞成長の重度の障害、大きな空域、および不完全な肺胞中隔を特徴とする、ヒトBPDを思わせる組織学的パターンを示した(図2B)。PN14では、NRMX群と比較した場合、HYRX対照マウスで平均線形切片(MLI)値が上昇した(それぞれ38.7±1対25.1±1、p<0.0001)。MSC-EVで処置した動物は、HYRX対照群と比較して、肺胞形成が劇的に改善し、肺構造がほぼ完全に回復した。この改善はMSCの起源に依存せず、WJMSC-EV(29.8±1、p<0.001)とBMSC-EV(31.6±2、p<0.001)のいずれかの処置で観察された。HDF-EVは、生物学的およびビヒクルの対照として機能し、PN14で有意な保護効果を示さなかったため(34.24±2μm、p>0.05)、長期効果を評価する実験には利用しなかった。NRMX対照動物と正常酸素下でWJMSC-exoで処置した動物を比較しても差は見られなかった(図E1、p>0.05)。
【0074】
長期評価(PN42):MSC-EV処置の単回用量は肺の発達を改善し、中隔線維症を改善する
長期エンドポイントを評価するために、PN42で肺の構造とコラーゲン沈着を評価した(図3)。HYRX対照マウスは、NRMX対照群と比較して、肺胞構造の持続的な破壊、大きな空域、および有意な肺胞の単純化を示した(MLI=26.7±0.7対18.8±0.5μm、p<0.0001)。繰り返しになるが、WJMSC-EVまたはBMSC-EVのいずれかで処置した動物は、HYRX対照マウスと比較して、劇的に改善された肺胞および肺構造の確固たる回復を示した(WJMSC-EV:MLI=21.6±0.9μm、p<0.01;BMSC-EV:MLI=22.7±0.4μm、p<0.01)。
【0075】
PN42でコラーゲン沈着(マッソントリクローム染色)を評価して、肺線維症の程度を測定した。動物がHYRXに14日間暴露された場合のより重度のBPDモデルと比較して、このBPDモデルのすべての群でわずかなコラーゲン沈着を記録した(全中隔野の<1%)(18)。しかしながら、HYRX対照マウスは、NRMX対照マウスと比較して、微妙ではあるが有意に高いコラーゲン沈着量を有した(0.22±0.06対0.08±0.01μm、それぞれp<0.01)。WJMSC-EVまたはBMSC-EVのいずれかで処置したHYRX暴露マウスでは、コラーゲン沈着が大幅に減少した(0.1±0.02および0.13±0.01μm、それぞれp<0.01、p<0.05、図3)。
【0076】
MSC-EV処置は、末梢肺血管の過酸素症に誘発された喪失と末梢肺動脈リモデリングを救済する
HYRX誘発末梢肺血管リモデリングに対するMSC-EVの潜在的な影響を調べるために、PN42で収集したマウスの肺切片をα平滑筋アクチンで染色した(α-SMA、図4A)。HYRX暴露動物は、NRMX対照動物(20.23±2.2MTI、p<0.01)と比較して、より大きな末梢肺血管筋形成(36.55±2.7内壁厚指数(MTI))を示した。長期的な肺構造の改善と線維症の低減に関して、WJMSC-EVとBMSC-EVとの間の違いを示唆する証拠はほとんどないため、MSC-EV群を組わ合わせた。MSC-EV処置により、HYRX誘発血管筋形成が改善された(26.8±1.3MTI、p<0.01、図4B)。WJMSC-exoおよびBMSC-exo処置は、HYRX誘発血管筋形成を改善した(それぞれ26.3±1.1MTI、p<0.05および27.22±2.3MTI、p<0.05、図13A)。
【0077】
HYRX誘発PHの程度を定量化するために、直接的な右室収縮期圧(RVSP)測定、右心室と体重の比(RV:BW)およびフルトン指数を評価した。NRMX対照と比較して、RVSPはHYRX対照動物でわずかに上昇することがわかった(それぞれ22.38±0.68対30.8±0.85mmHg、p<0.001)。MSC-EV処置により、このRVSPのわずかな上昇が改善された(26.85±0.83mmHg、p<0.05、図4Cおよび図13C)。同じ傾向が、NRMXの対応物と比較して、HYRX対照マウスが上昇したRV:BW比(それぞれ7.7±0.01×10-4対8.5±0.02×10-4、p<0.05)およびフルトン指数(それぞれ、0.22±0.007対0.26±0.015、p<0.05、図13D)を示した場合に、RV:BW比とフルトン指数の評価で再現された。MSC-EV処置は、RV:BW比(7.7±0.01×10-4、p<0.05、図4D)およびフルトン指数(0.23±0.027、p<0.05)のわずかな増加を改善したが、フルトン指数の傾向は重要性に達しなかった(表示なし)。すべての実験群にわたって、血管リモデリングの程度(α-SMA染色)は、RV:BW(p=0.002、r=0.807)、フルトン指数(p=0.001、r=0.69)およびRVSP(p=0.002、r=0.806)に有意に相関した。
【0078】
肺血管数に対するHYRX曝露の効果を判断するために、PN42のマウスの肺切片におけるフォンウィルブランド因子(vWF)染色を評価した。NRMX対照マウスと比較して、HYRX曝露により、直径<50μmの小さな(末梢)血管が著しく失われたが(それぞれ4.4±0.3対2.9±0.2血管/フィールド(VPF)、p<0.01)、WJMSC-exoまたはBMSC-exo処置によりこれらの血管は回復した(それぞれ3.9±0.4および4.4±0.6VPF、p=0.06、p<0.01(図4Hおよび図13B))。直径>150μmの血管の数に群間で有意差はなかった(表示なし)。
【0079】
MSC-EV処置は、過酸素症に誘発された肺損傷後の肺機能を改善する
組織構造と線維症の変化の機能的影響を判断するために、次に、PN42で実験群(具体的にはNRMX対照、HYRX対照、およびWJMSC-EVで処置したHYRX暴露マウス)で肺機能試験を行った。すべての動物を3cm HOの終末呼気陽圧(PEEP)で人口呼吸させた。肺の組織学(肺疾患の肺胞の単純化と肺気腫様の特徴の単純化)に従って、HYRX暴露マウスは、NRMX対照群と比較して、変化した圧力-体積(PV)ループを示した。HYRX対照群のPVループは、肺疾患と空気捕捉の肺気腫様の特徴を示す上向きおよび左にシフトした(34)。HYRX対照マウスの全肺容量は増加しており(TLC、1.36±0.04ml)、NRMX対照群(0.77±0.04ml、p<0.0001)と比較して、WJMSC-EV処置により改善された(1.18±0.02ml、p<0.01、図4E)。MSC-EV処置はHYRX誘発気腫性変化を改善し、PVループを大幅に右下にシフトした(図4F)。ベースライン測定により、気道抵抗は3つの群間で差がないことが明らかになった。しかしながら、HYRX対照群のベースラインコンプライアンス測定値は高く、MSC-EV処置の影響を受けなかった。
【0080】
MSC-EVは肺トランスクリプトームを調節し、過酸素症に誘発された炎症を鈍化する
全臓器RNA配列決定を使用して、MSC-EVが肺トランスクリプトームに及ぼす影響の公平な概要を生成した(図9A~9F)。WJMSC-EV処置からの全肺RNAをNRMXおよびHYRX対照群と比較した。PN7では、HYRXに暴露された動物は、それらのNRMXの対応物と比較して、2561個の有意に濃縮されたmRNAを、2344個の抑制されたmRNAを有した。WJMSC-EV処置は、HYRX誘発遺伝子のサブセット(117個のmRNA)を有意に抑制し、HYRX曝露によって抑制された83個の遺伝子を有意に上方調節し、全体の遺伝子発現プロファイルをそれらのNRMXの対応物にシフトした(図5A)。興味深いことに、41個の遺伝子がHYRXではなくWJMSC-EV処置によって特異的に誘発された。遺伝子オントロジー(GO)分析は、これらの遺伝子が細胞外マトリックスおよび構造組織、心血管発達/形態形成、および核へのSMADタンパク質の輸入に関与している傾向があることを示した(図9C)。F9画分の血漿メンバー関連タンパク質の表を表1および2に示す。GO分類は以下のとおりである:膜のインテグラル構成要素(GO:0016021)および膜のアンカー構成要素(GO:0031225)。
【0081】
表1:MEX固有の膜タンパク質:精製MSCエキソソームに存在し、皮膚線維芽細胞エキソソームには非存在。

【表1】
【0082】
表2:皮膚線維芽細胞エキソソームと比較して、精製MSCエキソソームで>4倍濃縮された膜タンパク質。
【表2】
【0083】
表3:MEX固有の膜タンパク質:精製MSCエキソソームに存在し、皮膚線維芽細胞エキソソームに非存在
【表3】
【0084】
GO分析を使用すると、HYRX暴露が、適応免疫応答、炎症応答、および白血球媒介免疫に関与する遺伝子を上方調節することがわかった(図9D)。WJMSC-EV処置により、炎症促進性HYRX応答遺伝子の誘導が鈍化され、炎症、適応免疫応答、IFN-γを介したシグナル伝達、顆粒球産生、白血球の走化性およびサイトカイン産生に関与する遺伝子が抑制された(図9E)。PN7とは対照的に、肺mRNAプロファイルの変化はPN14でほとんど検出されなかった(図9B)。HYRX対照マウスは、それらのNRMXの対応物と比較して、356個の有意に濃縮されたmRNA、282個の抑制されたmRNAを有した。WJMSC-EV処置マウスは、HYRX調節不全遺伝子のサブセットのレベルを有意に調整し続けた(図9F)。
【0085】
選択した全肺RNA-seqデータの検証は、RT-qPCRによって評価した。したがって、PN7では、Ccl2、Ccl7、Il6などの古典的に活性化されたM1マクロファージの炎症促進性マーカーと指数は、NRMX対照マウスと比較してHYRX対照群で上昇し、MSC-EV処置によって有意に抑制された(図5B)。さらに、アルギナーゼ-1(Arg1)、Cd206、Ccl17などの抗炎症M2様極性化に関連する遺伝子もHYRX対照群で調節不全であり、MSC-EV処置により有効に調節された(図5B)。WJMSC-exoまたはBMSC-exo調製物の効果を示すグラフは図14に見出すことができる。
【0086】
MSC-EVはin vitroおよびin vivoでマクロファージ表現型の免疫調節により炎症を抑制する
マクロファージの極性化は、発達中の肺の免疫応答と炎症の調節に重要な役割を果たす(35)。全肺RNA分析は、MSC-EVがHYRX誘発炎症遺伝子の発現を調節することを示しており、EVが免疫細胞機能を調節することによりBPDに治療的利益をもたらす可能性があることを示唆している。EVが免疫機能を直接調節できるかどうかを試験するために、次に、EVがin vitroでマクロファージ表現型を調節する能力を評価した。蛍光顕微鏡を使用して、肺胞マクロファージによってWJMSC-EVが容易に取り込まれることが観察された(図10A)。次いで、WJMSC-EVがRT-qPCRによって主要なマクロファージ遺伝子を調節できるかどうかを判断した。用量依存的に、古典的に活性化された(M1)マクロファージにWJMSC-EVを追加すると、TNFα、Il6、Ccl5などの確立された炎症促進性M1マーカーのmRNAレベルが有意に減少した(p<0.05)(図6Aおよび10B)。WJMSC-EVをM2極性化マクロファージに追加すると、RetnlaおよびCd206の誘導が有意に抑制され(それぞれp<0.001およびp<0.01、図6B)、最も重要なこととして、マクロファージArg1発現レベルが大幅に向上した。これは、MSC-EVの抗炎症作用を直接反映したものである。iNOS基質であるアルギニンが枯渇すると、マクロファージのM1機能が有効に減少し、M2様状態が強化されるためである。HDF-EVは、ビヒクルおよび生物学的対照として使用され、最小限の効果を示した。
【0087】
本明細書で説明するHYRX誘発BPDモデルでは、フローサイトメトリーを使用して、PN7およびPN14でのin vivoでの肺マクロファージ(Cd45+ve、Cd11b-ve、Cd11c+ve、Cd64+ve)表現型を評価した(図6C、6D、および11)。Cd40とCd86を炎症促進性M1マーカーとして使用し、Cd206を代わりに活性化された(M2様)マクロファージを同定するために使用した。in vitro実験およびin vivo肺mRNAレベルと同様に、WJMSC-EVはPN7(p<0.05)でHYRXが誘発するCd206レベルの増加を有意に抑制し、この傾向はPN14(p<0.01)に続いた。PN7およびPN14では、NRMXの対応物と比較して、HYRX暴露マウスでCd40レベルが上昇した。この増加はPN14でWJMSC-EV処置によって抑制されたが、PN7でも同様の傾向が観察され、これは有意ではなかった。PN7とPN14の両方で、すべての群でCd86レベルに違いは見られなかった。
【0088】
考察
いくつかの動物モデルが開発され、洗練され続け、BPDのヒト新生児の肺に見られる病理学的肺の特徴を再現することを目指している。BPDのすべての前臨床モデルには独自の利点と制限があるが、おそらくBPDはマウスで最も一般的にモデル化されている。この理由は多様であり、比較的短い妊娠期間が含まれ、肺の発達に関する適切な研究を可能にしている。重要なことに、マウス肺の発達の嚢状の段階はE17.5とPN5の間で発達する。したがって、満期マウスの肺は、妊娠24週と28週との間のヒトの早産児に似た発達段階を示す。これは、発達性肺損傷の優れたモデルであり、最近(27)でレビューされた。この研究で使用されるモデルは、「新しい」BPDのヒト表現型に非常に似た、二次PHの指数の有意な肺胞単純化と微妙な上昇を示す。
【0089】
本明細書に記載の研究は、損傷が始まった後でも、精製されたヒトMSC-EVのボーラス用量がHYRX誘発BPDのコアの特色を有効に低減および救済することを示す。具体的には、本明細書に記載の研究は、MSC-EV処置が根本的に肺の形態と肺の発達を改善し、肺線維症を減少させ、肺血管系の喪失を救済し、肺血管リモデリングを改善したことを示す最初の研究である。これらの観察は、MSC-EVの細胞保護作用が、肺機能試験結果の改善および関連するPHの改善などの望ましい機能的転帰をもたらすことを示すために拡張された。さらに、MSC-EVは、部分的には肺マクロファージ表現型の調節を介し得るHYRX誘発炎症促進性シグナル伝達および免疫応答を鈍化させることがわかった。
【0090】
これまでの研究では、MSCセクレトームの投与により、実質線維症および末梢肺動脈血管新生の部分的な予防および/または逆転、肺胞形成の改善、BPDの実験モデルにおける肺機能試験結果の改善が示された(18、20)。しかしながら、MSCセクレトームの原因となる生物学的メディエーターはとらえどころのないままであった。したがって、このデータは、MSC-CM内の治療ベクターがEVによって利用され、MSC-EVの単回用量がHYRX誘発肺胞の単純化を改善し、血管リモデリング、肺血管喪失を改善し、肺線維症を鈍化することができることを示すために、知見を支持および拡張する。以前の研究では、BPDの乳児は肺機能の異常を示し、乳児期に始まり、多くの場合、小児期を通して、さらに思春期初期まで持続することが明らかになっている。その結果、元BPDの乳児だった成人は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症するリスクが高くなる可能性がある(36)。ほぼ完全に回復した肺の構造、血管のリモデリング、および血行動態の組織学的知見を補完することにより、この研究もまた、MSC-EV処置が肺力学に有意な長期機能的利益をもたらし、PVループを改善し、TLCを低下させたことを示す。
【0091】
好中球の活性化は肺の炎症の重要な原因であるが(37)、マクロファージは新生児の肺の免疫応答の重要なメディエーターであり、炎症の開始と消散の両方を促進する(38、39)。MSC-EVは免疫疾患のモデルで免疫調節性であり、マクロファージ表現型を調節することが示された(28、29、40)。マクロファージ表現型は多様であり、多次元ネットワークが発達、活性化、および機能的多様性に与える影響を表している(37、38)。従来のM1/M2バイナリパラダイムは時代遅れと考えられ(39)、実際、前臨床モデルの最近のエレガントな研究は、肺マクロファージの可塑性に対する微小環境の影響を強調し、肺の恒常性と疾患に関連する時間的およびコンパートメントのマクロファージ表現型の多様性に取り組んでいる(35、36、40)。
【0092】
MSC-マクロファージ共培養を使用すると、MSCセクレトームがM1からM2へのシフトにおける主要なパラクリンメディエーターであることが示された。特に、慢性M2活性化は、増幅された組織のリモデリングが最適な修復を妨げる可能性のある線維症の有害な状態を触媒する可能性があった(38、41)。したがって、Siccoと同僚は、マクロファージへのMSC-EVの追加により、炎症促進性M1表現型からM2様状態への切り替えが誘発され、MSC-EVが心毒素誘発筋肉損傷モデルにおいてM1およびM2マーカーの組織mRNAレベルを調節したことを報告した(42)。
【0093】
この研究からの観察は、MSC-EVがM1/M2表現型支点を調節し、炎症促進性M1状態を抑制し、in vitroおよびin vivoで抗炎症M2様極性化を調節するという証拠を提供する。MSC-EVの抗炎症および免疫調節能力に直接関係するMSC-EV処置は、新生児肺の発達停止の根底にあり得るHYRX誘発シグナル伝達のすべてではなく、ほとんどを集合的に調節する多面発現効果を有していた。以前、HYRX誘発新生児肺損傷の前臨床モデル(43)および臨床研究(44)は、炎症経路がBPDで調節不全であることを示した。具体的には、1067人の超低出生体重児を対象とした研究では、IL-1β、-6、-8、-10、およびIFN-γの濃度が高いほど、BPDと乳児死亡が関連付けられることがわかった(45)。総合すると、肺全体のトランスクリプトーム分析とin vitroおよびin vivoでのマクロファージ極性化の評価は、MSC-EVが強力な免疫調節能力を発揮し、過酸素障害時に炎症状態のピークで作用できることを示している。PN14では、暴露した動物が1週間室内空気に戻った後、HYRXが誘発する遺伝子発現の調節不全のすべてではないが、ある程度の回復と正常化を示唆する証拠があった。したがって、HYRX誘発炎症プロセスの早期介入と鈍化は、肺の発達を維持するために重要であるように見える。PN14では、暴露動物がすでに1週間室内空気に戻されていた場合、肺遺伝子発現の過酸素症に誘発された調節不全の大部分(すべてではないが)が正常に戻っていたため、早期の介入と初期の過酸素症に誘発された炎症フェーズの鈍化が、適切な肺の発達を維持するために重要であることが示唆された。
【0094】
MSC-EV処置後、確固たる生理学的変化を観察した。MSC-EVに基づく用量は、低酸素誘発性PHの成体マウスモデルでMSC-EVを使用した先行文献で推定された(21)。今後の研究では、用量応答と種々の投与経路がさらに調査されるであろう。
要約すると、慢性新生児肺疾患の発生率が上昇し続けているため、EV治療薬が新生児の疾患の主要なパラダイムを表している可能性があることは明らかである。この研究では、ヒトWJMSC、BMSC、およびHDF-EVに由来するEVが単離、同定、および包括的に特徴付けられた。さらに、本明細書では、MSF-EVとHDFに由来するベシクルに特有の確固たる治療効果が実証されている。重要なことに、これは、精製されたMSC-EVが肺のMSC作用の主要なパラクリン抗炎症および治療メディエーターであることが初めて示されたものであり、これらは少なくとも部分的には肺マクロファージ表現型の調節を通じて作用し、肺炎症および免疫応答を抑制して組織の発達を促進し得る。MSC-EVの多面的効果が認められていることを考えると(46)、神経障害を含む他の未熟児関連の病態は、エキソソームベースの治療の標的になる可能性がある。
【0095】
方法
動物モデルと実験計画
過酸素症に誘発されたBPDモデル、実験計画、および標準分析法の詳細な説明は、補足の方法に記載されている。すべての動物実験は、ボストン小児病院の動物管理使用委員会によって承認された。
【0096】
エキソソームの単離、精製、および特性解析
EVを細胞培養上清から直接単離した。FBSからのEV汚染を避けるため、無血清培地(SFM)で36時間インキュベートした後、細胞培養培地を収集した。細胞培養培地を300×gで10分間(懸濁液中の細胞を除去するため)、続いて3000×gで10分間、13,000×gで30分間の差動遠心分離にかけ、懸濁液中の細胞破片および大きなアポトーシス体を除去した(図1A)。MSC-CMは、300kDa MWカットオフの改質ポリエーテルスルホン(mPES)中空糸(Spectrum Labs、Irving TX)を使用したタンジェント流濾過(TFF)により50倍に濃縮した。EVをOPTIPREP(商標)(イオジキサノール;IDX)クッション密度の浮遊を使用してさらに精製した。3mlの55%w/v IDX溶液上に、NaCl(150mM)および25mM Tris:HCl(pH7.4)を含む3mlの10%w/v IDX溶液を浮遊させることにより、IDX勾配を慎重に調製した。濃縮CM(6ml)をIDXクッションの上に浮遊させ、100,000×gで3.5時間、SW40 Tiローターを使用して超遠心分離した(4℃、図1B)。すぐにEVの特性解析を行うために、勾配の上部から12の画分(各1ml)を収集するか、凍結(-1℃/分)して-80℃に保った。IDX画分密度を重量/体積比(g/ml)で評価した。
【0097】
統計
種々の群間のデータを分散分析で比較し、続いてGraphPad Prism(v6.0; GraphPad、CA、US)を使用したボンフェローニ多重比較検定を行った。ピアソン相関係数を使用して、免疫組織化学血管リモデリングパラメーターとPHの生理学的指標との関係の強さを調べた。FlowJoソフトウェアv10.2(TreeStar、OR、US)を使用して、フローサイトメトリーデータ分析を行った。特に明記しない限り、値は平均±SEMとして表される。RT-qPCRによる炎症マーカーmRNAレベルの評価は、同種のNRMX対照群と比較して表され、中央値±範囲として表される。特に明記しない限り、有意性はp<0.05で考慮した。in vivo研究では、試料サイズの計算は以前の研究に基づいており(18)、5%αレベル、>90%の出力で、肺構造の15%の改善(平均線形切片;MLIで評価)を検出するには、1群あたり最低5匹の動物が必要であることを示唆する。
【0098】
細胞の単離と培養
ヒト臍帯ホウォートンゼリー間葉系幹細胞(WJMSC)を、外植片法の改変を使用して単離した(47)。簡潔には、臍帯をダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(dPBS、Invitrogen、MA、US)で2回すすぎ、縦に切断し、動脈と静脈を除去した。軟らかいゲル組織を小片(約3~6mm)に細かく切開し、20%ウシ胎児血清(FBS、Invitrogen、MA、US)、2mM L-グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したα-Modified Eagle Medium(αMEM、Invitrogen、MA、US)を含む193mmの組織培養皿(24ウェルプレート)に個々に配置し、5%COの加湿雰囲気で、37℃で12日間インキュベートした。補充したαMEMを定期的に加えた後、臍帯組織を慎重に除去した。プレートを培地で3回洗浄した。プラスチック接着細胞コロニーをトリプシン処理し、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したαMEMの培養で維持した。4代継代で、WJMSCは6360cmの細胞増殖面積を占める10スタックのCorning CELLSTACK(登録商標)細胞培養チャンバー(Sigma、PA、US)に拡張した。いくつかの臍帯を使用し、それぞれが個々のMSCコロニーを生じさせた。すべてのクローンおよび対応するEVを以下のように特性解析した。
【0099】
ヒト骨髄間葉系幹細胞(BMSC)をRoosterBio(RoosterBio、MD、US)から得た。細胞は、hMSC高性能培地キット(RoosterBio、MD、US)を使用することを除いて、WJMSCと同様に培養および拡大させた。細胞は、37℃、5%COのインキュベーターで維持した。ヒトの包皮(皮膚)線維芽細胞(HDF)を、組織外植片法によって確立した(48)。新たに切除した組織をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回すすいだ。組織切片を、10%FBS、2mM L-グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したα-MEMで維持し、5%COの加湿雰囲気中、37℃で7日間インキュベートした。7日後、プラスチック接着細胞コロニーをトリプシン処理し、10%FBS、2mM L-グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したαMEMの培養で維持した。細胞を培養し、WJMSCと同様に拡大させた(上記のとおり)。トリパンブルー排除(1:1 v/v)を使用して細胞数を測定し、Cellometer Auto T4(Nexcelom Biosciences、MA、USA)を使用して分析した。
【0100】
MSC細胞表面の特性解析と分化
細胞表面プロファイルのサイトメトリー評価は、4継代目に行った。サイトメトリー分析に使用する抗体は、BioLegend、CA、USAおよびBD Biosciences、MA、USから得た。例えば以下の確立されたMSCマーカーの発現のために、WJMSCとHDFを選択した:蛍光結合抗体のセットを使用する、APC/FITC結合CD105、FITC結合CD90、PE結合CD44、およびAPC結合CD73、およびFITC結合CD11b、PE結合CD31、PE結合CD34、およびPE結合CD45の不在(図7)。フローサイトメトリーは、407nm、488nm、640nmレーザー、およびBD FACS Divaソフトウェア(v 5.0.3)を備えたBD(商標)LSR IIフローサイトメーターレーザーベンチトップフローサイトメーターを使用して行った。
WJMSCおよびHDF培養物の軟骨細胞、骨細胞、および脂肪細胞系統への分化能は、製造業者の指示に従って、それぞれSTEMPRO(登録商標)、軟骨形成、骨形成、および脂肪形成分化キット(ThermoFisher Scientific)を使用して評価した(図8)。
【0101】
透過型電子顕微鏡(TEM)
EVの視覚化と形態評価のために、EV調製物のアリコート(5~10μl)を15秒間フォームバー/炭素被覆グリッド(Electron Microscopy Sciences、PA、US)に吸着させた。余分な液体をWhatman Grade 1濾紙(Sigma)で除去した後、2%酢酸ウラニルで15秒間染色した。JEOL 1200EX透過型電子顕微鏡(TEM)で吸着したEVを検査し、AMT 2k CCDカメラで画像を記録した。
【0102】
ナノ粒子追跡分析
EVのサイズと濃度分布を、前述のように、ナノ粒子追跡分析(NTA、NanoSight LM10システム、Malvern instruments、MA、US)を使用して決定した(49)。NTAは、642nmレーザーと高感度デジタルカメラシステム(OrcaFlash2.8、Hamamatsu、NanoSight Ltd)を備えたレーザー照射顕微鏡技術であり、ナノ粒子のブラウン運動をリアルタイムで決定してサイズと濃度を評価する。試料は、NanoSightシリンジポンプとスクリプト制御システムを使用して、制御されたフローの下で管理および記録され、各試料について、60秒の持続時間の3つのビデオを記録した。NTAソフトウェア(バージョン3.0)を使用して、粒子の動きを分析した。カメラのシャッタースピードは30.01ms、カメラゲインは500に固定した。カメラの感度と検出閾値は、それぞれ(11~14)と(50~52)であった。EV試料は、EVを含まないdPBSで希釈した。試料は3回実行し、そこからEV分布、サイズ、および平均濃度を計算した。
【0103】
イムノブロッティング
EV調製物中のタンパク質を4~20%ポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad、Hercules、CA)で分離し、次いで0.45μmPVDF膜(Millipore、MA、US)に転写した。ウサギポリクローナル抗フロチリン-1および抗CD63抗体(Santa Cruz Biotech、CA、US)、およびマウスポリクローナルCD9抗体(Santa Cruz Biotech、CA、US)を、製造業者が推奨する希釈でのイムノブロッティングに使用した。
【0104】
実験計画
実験計画の概略図を図2Aに示す。新生児FVBマウスを過酸素症(HYRX、75%O)に7日間暴露し、MSC-EVの有無にかかわらず処置した。追加の対照として、NRMX対照動物は、WJMSC-exoの静脈内(IV)単回用量を受けた。HYRXに暴露した動物を、酸素正常状態のままのマウス(NRMX、室内空気)と比較した。PN7でマウスを犠牲死させ、フローサイトメトリー分析と全肺mRNAプロファイリングのために肺全体を収集した。2週齢(PN14)で、組織学、全肺mRNA分析、フローサイトメトリー、および免疫組織化学のために肺組織を収集した。PN42で長期転帰を評価した。ここでは、マウスは組織学、圧力測定、RV肥大、および肺機能試験のために犠牲死させた。動物実験は、ボストン小児病院の動物管理使用委員会によって承認された。
【0105】
EV投薬
PN4で、EV調製物(50μlのWJMSC-EV、BMSC-EV、またはHDF-EV)を浅側頭静脈から静脈内(IV)注射した。EV調製物をdPBSで適宜希釈し、0.5×10細胞当量に対応するEV用量を達成した。対応するNTAおよびタンパク質濃度値を記録した(表4)。
【0106】
表4:EV投薬。EVベースの治療薬のEV定量化のための「ゴールドスタンダード」方法は存在しない。PN4では、EV集団[対応する画分9]を適宜希釈して、36時間で0.5×10個の細胞に相当する単一ボーラス用量を達成した。エキソソーム調製物をPBSで希釈して、1匹の動物あたり50μlのこの標準的な投薬量を達成した。種々の細胞型からのエキソソーム調製物は、NTAによって評価される匹敵するナノ粒子数を含んでいたが、それらのタンパク質含有量は異なっていた。これは、我々の高度に精製された密度浮遊調製物に依然として存在する残留非エキソソームタンパク質夾雑物の存在によるものである。比較として、75分間の100,000xgでの差動遠心分離およびペレット化によるCMの収集により、タンパク質の最大95%がフィブロネクチン凝集体および他の細胞マトリックス破片を表す調製物が得られる(我々の未公開所見)。かかるペレットは、しばしばエキソソームまたは細胞外ベシクルと呼ばれるが、タンパク質濃度とナノ粒子数の間にはほとんど関係がない。
【0107】
【表4】
【0108】
過酸素症(HYRX)チャンバー
新生児の子をプールし、プレキシガラスチャンバー内の75%OまたはPN1で始まり7日間継続する(PN1-7)室内空気に暴露した。人口呼吸をOxycyclerコントローラー(Biospherix、NY、US)で調整し、COが5,000ppm(0.5%)を超えないようにCOを除去した。人口呼吸器と空気清浄機による木炭濾過によりアンモニアを除去した。成体マウスへの過剰なO毒性を防ぐため、48時間ごとに室内空気とHYRXチャンバーの間でダムを回転させた。
【0109】
肺組織灌流、解剖および組織学
60mg/kgのペントバルビタール(腹腔内(IP))による麻酔後、25cm HOの一定圧力で右心室(RV)を介して肺にPBSを灌流した。左肺を慎重に摘出し、-80℃で保存した。右肺は、in situで4%パラホルムアルデヒド(PFA)を使用して15~20cm HOの固定圧力まで膨張させ、4%PFAで終夜保存した。固定した肺組織を75%エタノール(EtOH)に移し、その後の処理と、4つの別個の右肺葉としての切片のパラフィン包埋を行った。
【0110】
肺実質、血管形態計測、免疫蛍光、および免疫組織化学
PFA(4%w/v)による肺固定後、肺切片を組織学的に分析した。肺切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)およびマッソントリクローム(コラーゲン沈着)で染色した。Nikon Eclipse 80i顕微鏡(Nikon、Tokyo、Japan)を使用して、厚さ5μmの肺切片から無作為に選択した領域(10~20個のフィールド)を100倍(H&E)および200倍(マッソントリクローム)の倍率で撮影した。画像のキャリブレーションは、同じ倍率を使用して標準的なマイクロメーター画像を取得することにより行った。肺の形態計測のために、大きな気道と血管を避けた。平均線形切片(MLI)を測定するために、次いで58μm間隔の平行線のグリッドを画像にオーバーレイし、肺胞壁の切片によって定義された各弦の長さをMetamorphソフトウェアv.6.2r(Universal Imaging、Downingtown、PA)を使用して記録した。コラーゲン沈着の程度を、Metamorphソフトウェアを使用して測定し、全中隔野あたりのコラーゲン沈着のパーセンテージとして表した。
【0111】
肺微小血管系の喪失は、Metamorphソフトウェアを使用して、直径(<50および50~150μm)で層別化された100×の倍率の8~12のランダム画像のフォンウィルブランド因子(vWF)陽性血管の数を数えることで決定した。組織切片を再水和し、10mMクエン酸バッファーでマスキングを解除し、次いで一次抗体(Dacko;ポリクローナルvWF Ab、1:200)とともにインキュベートした。その後、スライドを洗浄し、Alexa fluor 488結合ロバ抗ウサギ(1:500)抗体とともにインキュベートした。
【0112】
肺の血管新生を評価するために、アルファ平滑筋アクチン(α-SMA)の免疫組織化学(IHC)分析を行った。簡潔には、肺組織切片をキシレンで脱パラフィンし、再水和した。組織スライドをメタノール中の0.3%Hで処理して内因性ペルオキシダーゼを不活性化し、ウマ血清で20分間遮断した。1:125希釈のモノクローナル抗マウスα-SMA抗体(Sigma、MO、US)とインキュベートした後、二次抗体とペルオキシダーゼ染色を製造業者の指示に従って適用した(Vector Laboratories, CA, US)。血管壁厚は、200×の倍率で撮影された約15切片の直径<100μmの血管のα-SMA陽性染色を測定することで評価した。壁厚は、Metamorphソフトウェアを使用して測定し、以下の式を使用して群間で比較した:内壁厚指数(MTI)=100x(面積[ext]-面積[int])/面積[ext]。面積[ext]および面積[int]は、それぞれα-SMA層の外部および内部境界内の面積を示す。組織学的分析のために、研究者は実験群に対して盲検化された。
【0113】
肺機能試験
肺機能を評価するために、ケタミン(100mg/kg)、キシラジン(6.5mg/kg)、およびペントバルビタール(20mg/kg)のカクテルでマウスに麻酔をかけ、IP注射で投与した。気管切開後、コンピュータ制御の小動物用人工呼吸器(Scireq、モントリオール、カナダ)を使用して、マウスを150呼吸/分の速度、1回人口呼吸量10ml/kg、および終末呼気陽圧(PEEP)3cm HOで機械的に人口呼吸させた。前述のように、圧力-体積(PV)ループ、平均気道抵抗、および肺コンプライアンスを決定した(50)。
【0114】
右心室収縮期圧(RVSP)および右心室肥大(RVH)の測定
直接的な右心室収縮期圧(RVSP)を前述のように測定した(51)。簡潔には、100%O中のイソフルランでマウスを麻酔した。腹壁に小さな切開を行い、半透明の横隔膜を露出させた。圧力変換器に取り付けられたチューブ付きの23ゲージのバタフライ針をダイアフラムを通して右心室に挿入し、PowerLab(ADInstruments、CO、US)モニタリングハードウェアおよびソフトウェアで圧力測定を記録した。心拍数が1分あたり<300拍の動物を除外した。最初の10回の安定した心拍の平均RVSPを記録した。右心室肥大(RVH)の程度を定量化するために、心臓と肺血管系を右心室(RV)へのPBS注入でin situで灌流した。心臓を切除し、RVと体重(BW)の比率(RV:BW)を記録した。フルトン指数測定(左心室(LV)+中隔(S)重量に対するRV重量の比、RV/[LV+S])について、最初に心臓全体の重量を測定した後、RV壁を解剖して重量を測定し、その後、残っているLVと心室中隔を測定した。生理学的測定のために、研究者は実験群に対して盲検化された。
【0115】
肺RNA配列決定
肺RNA配列決定のために、PN7およびPN14でマウスを収集した。PBSでRVを介して灌流した後、左肺を除去し、大きな気道を末梢肺組織から切開した。全肺RNAを以前に記載されているように単離した(52)。RNAの質は、Advanced Analytical Fragment Analyzerを使用して確認した。ポリアデニル化mRNA(1μg)を、oligoDTベースの精製を使用して単離し、逆転写酵素反応のインプットとして使用した。次いで、TruSeq Stranded mRNAキット(Illumina、CA、US)を使用して、cDNAの配列決定ライブラリー調製を行った。ライブラリーのモル濃度を、Advanced Analytical Fragment Analyzerを使用して決定し、ライブラリーは等モル濃度でプールした。ライブラリーを、Hi-Seq 2500機器を使用して、高出力シングルリード50ベースフォーマットで配列決定した。Trimmomaticソフトウェアを使用して短い(<35塩基対)または低品質の読み取りを除去した後(53)、生RNAseqデータを、STARを使用してマウス参照ゲノム(mm10ビルド)にアライメントした(54)。UCSC Genome Browserから取得したマウス注釈付き遺伝子のカウントテーブルを、Feature Counts(55)を使用して生成し、次いで、配列決定の深度に基づいてデータセットを正規化し、RのDESeq2パッケージを使用してWald試験を実行した後、差次的に発現する遺伝子を同定した(56)。遺伝子オントロジー(GO)分析とIngenuity Pathway Analysis(IPA)を使用して、潜在的なmRNAネットワークと標的を調査した。RT-qPCRを使用して、配列決定結果の再現性と選択候補遺伝子のレベルを検証した(以下で説明)。
【0116】
MSC-EVの免疫調節効力:マクロファージ極性化アッセイ
初代マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、6~8週齢のFVBマウスの大腿骨と脛骨を洗い流し、30%v/v L929条件培地(マクロファージコロニー刺激因子の供給源として;M-CSF)を含む10%FBSを補充したDMEMで細胞を7日間培養することによって得た。肺胞マクロファージ(MH-S)細胞株をATCC(ATCC、US)から得た。MH-S細胞またはBMDMをin vitroでM1およびM2極性化状態に駆動した。簡潔には、M1極性化をリポ多糖(LPS)100ng/mlおよびインターフェロン-γ(IFNγ)20ng/ml刺激によって開始した。M2極性化状態をIL-4(20ng/ml)およびIL-13(20ng/ml)によって駆動した。WJMSC-EVの免疫調節機能を評価するために、WJMSC-EV調製物(0.05~1×10個の細胞当量)の存在下/非存在下で、マクロファージ極性化(0.5×10 BMDM)を開始した。HDF-EVは生物学的およびビヒクル対照として機能した。BMDM全RNAを単離し、補足的方法に記載されているようにRT-qPCRにより遺伝子発現レベルを評価した。すべてのサイトカインをPeprotech(Peprotech、NJ、US)から購入した。
【0117】
MSC-EVがマクロファージと相互作用することを証明するために、DiL標識EVは、8ml DiL(鮮やかなDiL標識溶液、Invitrogen、DMEMで1:1000に希釈)で37℃および5%COで30分間インキュベート処理したWJMSC(5×10)に由来した。インキュベーション後、2x10mlのPBS洗浄により遊離トレーサーを除去し、18mlのEVを含まないSFMで24時間維持した。24時間後、細胞培養上清を採取し、差動遠心分離ステップ(前述)を行った後、超遠心分離(100,000×g、70分間、4℃)を行った。ペレット化EVを、超遠心分離(100,000×g、70分間、4℃)で、PBSで洗浄した。最後の洗浄段階からの上清を保持し、対照として使用して、DiL汚染を除去した。次に、75%コンフルエンスまで増殖したMH-S細胞をDiL標識MSC-EVで3時間処理した(37℃および5%CO)。非接着MSC-EVを除去するために、3×10mlのPBS洗浄を行った。細胞および接着EVを、Nikon Eclipse 80i顕微鏡(Nikon、東京、日本)を使用して蛍光によって視覚化されるまで、増殖培地で維持した。
【0118】
マウス肺全体のサイトメトリー分析
前述のように(57)、フローサイトメトリーを使用して、肺細胞集団の濃度と肺マクロファージの表現型を評価した。マウスをPN7およびPN14で収集した。PBSでRVを介して灌流した後、左肺を除去し、大きな気道を末梢肺組織から切開した。肺組織を小片に切断し、ファルコンチューブ(Fisher Scientific、NH、US)に移し、RPMI-1640(Invitrogen、CA、US)、コラゲナーゼIV(1.6mg/ml)およびDNAse1(50単位/ml)(両方ともWorthington Biochemical Corp、NJ、USから)からなる5mlの消化バッファーで処理した。均質化した肺を40μmのセルストレーナー(Corning、MA、US)に通して、単一細胞懸濁液を得た。残りの赤血球を、赤血球溶解バッファー(Roche、IN、US)を使用して溶解した。細胞懸濁液を抗体(PE/Cy7結合Cd45、FITC結合Cd11b、PerCP Cy5.5結合Cd11c、およびPE結合Cd64)で染色した。マクロファージ表現型マーカーCd40、Cd86、およびCd206は、ブリリアントバイオレット421(BV421)に結合していた。すべての抗体をBiolegendまたはBD Biosciencesから得た。BD FACSDivaソフトウェア(BD Biosciences、MA、US)を使用して、BD LSR IIフローサイトメーターでデータを取得した。補償は適宜調整され、UltraComp ebeads(Affymetrix、CA、US)によって支持された。蛍光マイナス1対照を適宜使用した。連続ゲーティング戦略を使用して細胞集団を同定し、CountBright(商標)Absolute Counting Beads(ThermoFisher、MA、US)を使用して定量化し、絶対濃度または全細胞集団のパーセンテージとして記録した。マクロファージ活性化マーカーの発現は、蛍光強度中央値(MFI)として表される。
【0119】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応分析
肺のmRNA評価のために、滅菌PBSでRVを灌流した後、前述のように(51、52)、RNA抽出のために左肺を摘出し、その後RT-qPCRによるmRNA分析を行った。TRIZOL(ThermoFisher)を使用して、製造業者の指示に従ってBMDM全RNAを抽出した。TNFα、Ccl2、Ccl7、Il6、Il33、Cd206、Retnla、およびArg1を含むPCR反応で使用されるTAQMAN(登録商標)プライマーをInvitrogenから得た。Nup133は内部標準として機能した。倍率変化の分析を以前に説明されているように行った(51)。
【0120】
参考文献
【表5-1】
【0121】
【表5-2】
【0122】
【表5-3】
【0123】
【表5-4】
【0124】
【表5-5】
【0125】
【表5-6】
【0126】
例えば、背景、概要、詳細な説明、例、および/または参考文献のセクションで、本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、特許出願、刊行物、およびデータベースエントリ(例えば、配列データベースエントリ)は、個々の刊行物、特許、特許出願、刊行物、およびデータベースエントリが、参照により本明細書に具体的かつ個別に組み込まれたかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書の定義を含む本出願が支配するであろう。
【0127】
均等物と範囲
当業者は、本明細書に記載の態様の多くの均等物を認識し、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。本開示の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載されているものである。
「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、逆の指示がない限り、または文脈から明白でない限り、1以上を意味する場合がある。グループの2以上のメンバー間の「または」を含む請求項または説明は、反対の指示がない限り、または文脈から明白でない限り、1、複数、またはすべてのグループメンバーが存在する場合に満足されると考えられる。2以上のグループメンバー間に「または」を含むグループの開示は、グループのメンバーが1つだけ存在する態様、グループのメンバーが複数存在する態様、およびグループのメンバーのすべてが存在する態様を提供する。簡潔にするために、これらの態様は本明細書では個々に説明されていないが、これらの態様のそれぞれは本明細書に提供され、具体的に請求または放棄され得ることが理解される。
【0128】
本開示は、請求項の1以上から、または説明の1以上の関連部分からの1以上の限定、要素、条項、または説明用語が別の請求項に導入される、すべての変形、組み合わせ、および置換を包含することを理解されたい。例えば、別の請求項に従属する請求項を修正して、同じベースの請求項に従属する任意の他の請求項に見られる1以上の制限を含めることができる。さらに、特許請求の範囲に組成物が記載されている場合、本明細書に開示される作製または使用の方法のいずれか、またはもしあれば、当該技術分野において知られている方法に従って組成物の作製または使用の方法が(特に断りのない限り、または矛盾または矛盾が生じることが当業者に明らかである場合を除き)含まれることを理解されたい。
【0129】
要素がリストとして、例えばマーカッシュグループ形式で提示されている場合、要素のすべての可能なサブグループも開示されており、任意の要素または要素のサブグループはグループから除去できることを理解されたい。「含む」という用語は、オープンであることを意図しており、追加の要素またはステップの包含を許可することにも留意されたい。一般に、態様、物、または方法が特定の要素、特徴、またはステップを含むものとされる場合、かかる要素、特徴、またはステップからなるか、またはそれらから本質的になる態様、物、または方法も十分に提供されることが理解されるべきである。簡潔にするためにそれらの態様は本明細書では個々に説明されていないが、これらの態様のそれぞれは本明細書に提供され、具体的に請求または放棄され得ることが理解されるであろう。
【0130】
範囲が指定されている場合、エンドポイントが含まれる。さらに、特に断りのない限り、そうでなければ文脈および/または当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、いくつかの態様において述べられた範囲内の任意の特定の値(文脈で明確に指示されていない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで)をとり得ることを理解されたい。簡潔にするために、各範囲の値は本明細書中では個々に説明されていないが、これらの値のそれぞれは本明細書中で提供され、具体的に請求または放棄され得ることが理解されるであろう。また、特に断りのない限り、そうでなければ文脈および/または当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、所与の範囲内の任意の下位範囲をとり得ることを理解されたい(下位範囲のエンドポイントは範囲の下限の10分の1の単位と同じ精度で表される)。
【0131】
Webサイトが提供される場合、URLアドレスは、ブラウザで実行できないコードとして提供され、それぞれのWebアドレスの期間は括弧で囲まれる。実際のWebアドレスは括弧を含まない。
さらに、本開示の任意の特定の態様は、請求項のいずれか1以上から明示的に除外され得ることを理解されたい。範囲が指定されている場合、範囲内の任意の値は、1以上の請求項から明示的に除外され得る。本開示の組成物および/または方法の任意の態様、要素、特徴、用途、または側面は、任意の1以上の請求項から除外され得る。簡潔にするために、1以上の要素、特徴、目的、または側面が除外される態様のすべては、本明細書に明示的に記載されていない。
図1A-B】
図1C
図1D
図1E-F】
図2
図3
図4A-F】
図4G-H】
図5A
図5B
図6A-B】
図6C-D】
図7A
図7B
図8
図9A-B】
図9C-E】
図9F
図10A
図10B
図11
図12
図13A-B】
図13C-D】
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-05-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された間葉系幹細胞(MCS)エキソソームであって、
(i)単離されたMSCエキソソームは、FLT1、PLAUR、MME、CDH2、SLC16A3、CDH13、ITGB5、ITGA11、APP、GPC6、IGSF8、IRP2、TSPAN9、DAG1、SLC38A2、SLC12A8、GJA1、ITGA1、PLXNB2、SLC16A1、およびPROCRからなる群から選択される1以上のマーカーを含む;
(ii)単離されたMSCエキソソームは、線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上のマーカーを含み、該1以上のマーカーは、PTk7、CD109、SLC1A5、ITGA3、ITGA2、BSG、DPP4、ATP1A1、FAP、VASN、IGF2R、およびCD82からなる群から選択される;および/または
(iii)単離されたMSCエキソソームは、線維芽細胞エキソソームと比較して濃縮された1以上のマーカーを含み、該1以上のマーカーは、RCN1、RAP1B、GDF15、FLT1、OLFML3、PLOD2、PSMA4、PAPPA、INHBA、SPOCK1、HSPB1、LOXL4、POLD3、CALU、IGFBP4、C4B、TINAGL1、SULF1、TPM3、AHNAK、CALR、RRAS2、PFKP、およびCOL16A1からなる群から選択される、
前記MCSエキソソーム。
【外国語明細書】