(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120909
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】急性骨髄性白血病を治療するためのFLT3 CAR-T細胞及びFLT3阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P35/02 ZNA
A61P35/02
A61K45/06 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024091613
(22)【出願日】2024-06-05
(62)【分割の表示】P 2020505434の分割
【原出願日】2018-08-01
(31)【優先権主張番号】17184277.6
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518098047
【氏名又は名称】ユリウス-マクシミリアン-ウニヴェルシテート・ヴュルツブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・フデチェク
(72)【発明者】
【氏名】ハーディクマール・ジェタニ
(57)【要約】
【課題】FLT3標的化薬剤及びキナーゼ阻害剤を用いたがんの治療を提供すること。
【解決手段】FLT3標的化薬剤及びキナーゼ阻害剤を用いたがんの治療を提供する。特に、FMS様チロシンキナーゼ(FLT3)に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)改変T細胞をFLT3阻害剤と併用する急性骨髄性白血病(AML)の養子免疫療法にを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるがんを治療するための方法において使用するための組成物であって、
(a)キナーゼ阻害剤、及び
(b)FLT3標的化薬剤
を含み、
前記方法において患者に投与される、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、FLT3標的化薬剤及びキナーゼ阻害剤を用いたがんの治療に関する。特に、本発明は、FMS様チロシンキナーゼ(FLT3)に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)改変T細胞をFLT3阻害剤と併用する急性骨髄性白血病(AML)の養子免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)は、正常な造血において重要な役割を果たし、ヒトでは正常な造血幹細胞(HSC)、並びにリンパ系前駆細胞、骨髄系前駆細胞及び顆粒球/マクロファージ前駆細胞で生理的に発現されるI型膜貫通タンパク質である1~4。成熟造血細胞では、樹状細胞及びナチュラルキラー細胞のサブセットにおいてFLT3発現が報告されている5~7。FLT3はまた、急性骨髄性白血病(AML)において悪性芽細胞上に均一に存在し、それにより、抗体及び細胞免疫療法の標的がもたらされる1、4、8~11。AML芽細胞の細胞表面上のFLT3タンパク質の抗原密度は、細胞当たり数百から数千個の分子の範囲内であり、これは、合成キメラ抗原受容体(CAR)を備えた工学的に操作されたT細胞による認識に最適である12、13。
【0003】
分子レベルでは、FLT3転写物はAML芽細胞において普遍的に検出可能であり、発現レベルが別個のFAB(French-American-British)亜型で等級付けられる9、14。FLT3転写レベルが高いことは、FLT3突然変異の存在とは無関係に、白血球数が多いこと及び白血病細胞による骨髄浸潤の程度が高いことと相関する11。FLT3は、AML芽細胞の生存及び増殖に重要であり、FLT3細胞内ドメインに活性化突然変異を有するAML症例において特定の病態生理学的関連性がある1、11。これらのうち、膜近傍ドメイン内の遺伝子内縦列重複(ITD)及び細胞内チロシンキナーゼドメイン(TKD)の突然変異は、集合的にAML症例のおよそ30%において生じる最も一般的な異常である1、11、14、15。どちらの異常もリガンドに依存しない様式で構成的FLT3活性化を引き起こし、悪性疾患の持続に寄与する機能獲得「ドライバー突然変異」としての機能を果たす16~18。これらの特質により、FLT3-ITD+AMLが特に抗FLT3免疫療法の影響を受けやすく、また、FLT3-/low抗原欠損AML芽細胞バリアントが生じるリスクは低いと予測されるので実際に好ましいAMLサブセットであることが示唆される。実際に、FLT3-ITDの存在は、誘導/強化化学療法及び同種造血幹細胞移植(HSCT)後の臨床転帰が劣ることに関連し、新規の革新的な治療戦略を必要とする高リスクAML患者のサブセットを定義するものになる19、20。
【0004】
FLT3は、チロシンキナーゼ阻害剤の標的として追及されており、多数の物質が臨床開発の進んだ段階にある。しかし、「第1世代」FLT3阻害剤を用いた単剤療法の臨床的有効性は、FLT3細胞内ドメインにおける新規の突然変異による抵抗性の発生、又はAML芽細胞におけるFLT3過剰発現に少なくとも一部起因して相当に限られている21~25。
【0005】
TKIを使用した単剤療法により、末梢血(PB)芽細胞及び骨髄(BM)芽細胞の有意な減少を含めた測定可能な臨床応答がもたらされ得る。しかし、ほとんどの場合、患者は、一過性の応答後に抵抗性になり、これは、二次抵抗性発生として公知である。TKIを用いた治療後のチロシンキナーゼ及び/又は膜近傍ドメインの新規の突然変異の出現(一次抵抗性)が頻繁に観察されており、これにより、不応性及び再燃AML患者における単剤療法としてのTKIの臨床的活性が限定される。
【0006】
ミドスタウリンは、「第1世代」FLT3阻害剤であり、アルカロイドであるスタウロスポリンの誘導体であり、多標的キナーゼ阻害剤である。ミドスタウリンは、FLT3、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)アルファ及びベータ、サイクリン依存性キナーゼ1(cdk1)、src、Fgr、Syk(脾臓チロシンキナーゼ)、c-kit、並びに主要な血管内皮増殖因子(VEGF)受容体であるKDRを阻害する。ミドスタウリンは、II型FLT3阻害剤であり、in vitro及びin vivoにおいて突然変異体FLT3に対する活性が示されている(参考文献番号21~23)。
【0007】
キザルチニブ(AC220)は、FLT3に特異的に設計された「第1世代」FLT3阻害薬である。キザルチニブは、II型FLT3阻害剤であり、FLT3-ITD+AMLに対する活性が示されている。キザルチニブにより幹細胞移植後又はサルベージ化学療法の失敗後に再燃したFLT3-ITD+AML患者における全生存が有意に改善されることが示されている(参考文献21)。
【0008】
クレノラニブは、活性なFLT3キナーゼコンフォメーションを標的とする特異的なI型阻害剤であり、不活性なキナーゼコンフォメーションを標的とするII型阻害剤、例えばミドスタウリン及びキザルチニブに対する抵抗性が付与されるITD突然変異及びTKD突然変異を有するFLT3に対して有効である26、27。クレノラニブは、血小板由来増殖因子受容体アルファ/ベータに対しても活性であり、消化管間質腫瘍及び神経膠腫を有する患者において評価されている28、29。AMLでは、FLT3-ITD及びTKD突然変異を伴う再燃/不応性AMLにクレノラニブが有効であることが証明されており、最近報告されたフェーズII臨床試験における奏効率は注目すべきものである30、31。したがって、有効性を増強するために、クレノラニブ及び他のTKIが併用レジメンで調査されている。
【0009】
FLT3は、AML芽細胞上のFLT3の抗原密度は例えばリンパ腫細胞上のCD20と比較してはるかに低く、強力な抗体媒介性エフェクター機能を誘導するために最適なものではないと推定されるにもかかわらず、抗体免疫療法の標的としても探求されている12。マウス抗ヒトFLT3モノクローナル抗体(mAb)4G8は、AML芽細胞に特異的に結合し、正常なHSCにはより低い程度に結合し、Fc-最適化後の前臨床モデルにおいてFLT3抗原密度が高いAML芽細胞に対する特異的な反応性を付与することが示されている14。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、4G8 mAbに由来する標的化ドメインを有するFLT3特異的CARを発現するようにT細胞を工学的に操作し、FLT3 CAR-T細胞のFLT3野生型細胞及びFLT3-ITD+AML細胞に対する抗白血病反応性を、単独で、並びにFLT3阻害剤であるミドスタウリン、キザルチニブ及びクレノラニブと組み合わせて分析する。更に、本発明者らは、同種異系HSCTとの関連でFLT3 CAR-T細胞を用いた養子免疫療法に関する臨床的状況を同定するために、FLT3を有効に標的化することの予測される副作用として正常なHSCの認識を評価する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一般に、FLT3標的化薬剤、特に、免疫療法標的化薬剤及びキナーゼ阻害剤を用いたがんの治療に関する。特に、本発明は、急性骨髄性白血病(AML)の、好ましくはFLT3特異的キメラ抗原受容体(CAR)とFLT3阻害剤を組み合わせて発現するように遺伝子導入によって改変されたT細胞を用いた治療に関する。本発明では、AML芽細胞をFLT3阻害剤で処理することにより、AML芽細胞の細胞表面上のFLT3分子の発現の有意な増大が導かれ、その結果として、FLT3 CAR-T細胞による認識及び排除の有意な増大が導かれることを実証する。FLT3標的化薬剤、具体的にはCAR-T細胞とキナーゼ阻害剤、具体的にはFLT3阻害剤とを用いたAMLの併用治療は高度に相乗的であり、FLT3阻害剤又はFLT3 CAR-T細胞のいずれかを単独で用いた単剤療法よりも優れている。
【0012】
本発明を以下の好ましい実施形態により例示する:
1.患者におけるがんを治療するための方法において使用するための組成物であって、
(a)キナーゼ阻害剤、及び
(b)FLT3標的化薬剤
を含み、
当該方法において
患者に投与される、組成物。
2.方法が、養子免疫療法を含む方法である、項目1に規定の使用のための項目1に記載の組成物。
3.FLT3標的化薬剤が、FLT3の細胞外ドメインに結合することができる、項目1又は2に規定の使用のための項目1又は2に記載の組成物。
4.FLT3標的化薬剤が、FLT3を発現する細胞の成長を阻害する、項目1から3のいずれか一項に規定の使用のための項目1から3のいずれか一項に記載の組成物。
5.FLT3標的化薬剤が、FLT3を標的とする細胞を含むものである、項目1から4のいずれか一項に規定の使用のための項目1から4のいずれか一項に記載の組成物。
6.細胞が、キメラ抗原受容体を発現する細胞である、項目5に規定の使用のための項目5に記載の組成物。
7.キメラ抗原受容体が、FLT3に結合することができる、項目6に規定の使用のための項目6に記載の組成物。
8.細胞が、T細胞、NK細胞、及びB細胞の群から選択される細胞である、項目5から7のいずれか一項に規定の使用のための項目5から7のいずれか一項に記載の組成物。
9.細胞がT細胞である、項目5から8のいずれか一項に規定の使用のための項目5から8のいずれか一項に記載の組成物。
10.キメラ抗原受容体が、配列番号2の配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含むか、又はキメラ抗原受容体が、配列番号4の配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目6から9のいずれか一項に規定の使用のための項目6から9のいずれか一項に記載の組成物。
11.キメラ抗原受容体が、配列番号2の配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目10に規定の使用のための項目10に記載の組成物。
12.キメラ抗原受容体が、配列番号4の配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目10に規定の使用のための項目10に記載の組成物。
13.キメラ抗原受容体が、配列番号5の重鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含むか、又はキメラ抗原受容体が、配列番号7の重鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目6から12のいずれか一項に規定の使用のための項目6から12のいずれか一項に記載の組成物。
14.前記キメラ抗原受容体が、配列番号5の重鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目13に規定の使用のための項目13に記載の組成物。
15.前記キメラ抗原受容体が、配列番号7の重鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目13に規定の使用のための項目13に記載の組成物。
16.FLT3標的化薬剤が、タンパク質を含む、項目1から4のいずれか一項に規定の使用のための項目1から4のいずれか一項に記載の組成物。
17.前記タンパク質が、FLT3に結合することができる抗体又はその断片である、項目16に規定の使用のための項目16に記載の組成物。
18.抗体又はその断片が、配列番号5の重鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含むか、又は抗体又はその断片が、配列番号7の重鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目17に規定の使用のための項目17に記載の組成物。
19.抗体が、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体である、項目18に規定の使用のための項目18に記載の組成物。
20.抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体である、項目18に規定の使用のための項目18に記載の組成物。
21.キナーゼ阻害剤が、多標的キナーゼ阻害剤である、項目1から20のいずれか一項に規定の使用のための項目1から20のいずれか一項に記載の組成物。
22.キナーゼ阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、項目1から21のいずれか一項に規定の使用のための項目1から21のいずれか一項に記載の組成物。
23.キナーゼ阻害剤が、FLT3阻害剤である、項目1から22のいずれか一項に規定の使用のための項目1から22のいずれか一項に記載の組成物。
24.キナーゼ阻害剤が、前記がんにおいてFLT3の上方制御を引き起こすことができるキナーゼ阻害剤である、項目1から23のいずれか一項に規定の使用のための項目1から23のいずれか一項に記載の組成物。
25.キナーゼ阻害剤が、前記がんにおいてFLT3細胞表面発現の上方制御を引き起こすことができるキナーゼ阻害剤である、項目1から24のいずれか一項に規定の使用のための項目1から24のいずれか一項に記載の組成物。
26.キナーゼ阻害剤が、前記がんにおける突然変異FLT3の上方制御を引き起こすことができるキナーゼ阻害剤である、項目1から25のいずれか一項に規定の使用のための項目1から25のいずれか一項に記載の組成物。
27.キナーゼ阻害剤が、前記がんにおける野生型FLT3の上方制御を引き起こさないものである、項目1から26のいずれか一項に規定の使用のための項目1から26のいずれか一項に記載の組成物。
28.突然変異FLT3が、突然変異チロシンキナーゼドメインを含み、且つ/又は突然変異FLT3が、遺伝子内縦列重複を含む、項目26に規定の使用のための項目26に記載の組成物。
29.突然変異FLT3が、遺伝子内縦列重複を含む、項目28に規定の使用のための項目28に記載の組成物。
30.突然変異FLT3が、突然変異チロシンキナーゼドメインを含む、項目28に規定の使用のための項目28に記載の組成物。
31.キナーゼ阻害剤が、キメラ抗原受容体を発現するT細胞は阻害しない、項目1から30のいずれか一項に規定の使用のための項目1から30のいずれか一項に記載の組成物。
32.キナーゼ阻害剤が、I型又はII型FLT3阻害剤である、項目1から31のいずれか一項に規定の使用のための項目1から31のいずれか一項に記載の組成物。
33.キナーゼ阻害剤が、I型FLT3阻害剤である、項目32に規定の使用のための項目32に記載の組成物。
34.キナーゼ阻害剤が、II型FLT3阻害剤である、項目32に規定の使用のための項目32に記載の組成物。
35.キナーゼ阻害剤が、クレノラニブ、ミドスタウリン、及びキザルチニブからなる群から選択される、項目1から32のいずれか一項に規定の使用のための項目1から32のいずれか一項に記載の組成物。
36.キナーゼ阻害剤が、クレノラニブである、項目35に規定の使用のための項目35に記載の組成物。
37.キナーゼ阻害剤が、キザルチニブである、項目35に規定の使用のための項目35に記載の組成物。
38.キナーゼ阻害剤が、ミドスタウリンである、項目35に規定の使用のための項目35に記載の組成物。
39.前記がんの治療が、前記FLT3標的化薬剤又は前記キナーゼ阻害剤のいずれかを単独で用いた単剤療法による治療と比較して改善された臨床転帰を有する、項目1から38のいずれか一項に規定の使用のための項目1から38のいずれか一項に記載の組成物。
40.FLT3標的化薬剤及びキナーゼ阻害剤により、患者の無増悪生存期間が前記FLT3標的化薬剤又は前記キナーゼ阻害剤のいずれかを単独で用いた単剤療法と比較して延長される、項目1から39のいずれか一項に規定の使用のための項目1から39のいずれか一項に記載の組成物。
41.患者に投与されると、細胞がエフェクターサイトカインを産生する、項目5から40のいずれか一項に規定の使用のための項目5から40のいずれか一項に記載の組成物。
42.サイトカインが、IFN-ガンマ及びIL-2である、項目41に規定の使用のための項目41に記載の組成物。
43.前記がんが、白血病又はリンパ腫である、項目1から42のいずれか一項に規定の使用のための項目1から42のいずれか一項に記載の組成物。
44.前記がんが、白血病である、項目43に規定の使用のための項目43に記載の組成物。
45.前記白血病が、混合型白血病又は急性リンパ芽球性白血病である、項目44に規定の使用のための項目44に記載の組成物。
46.前記白血病が、急性骨髄性白血病である、項目44に規定の使用のための項目44に記載の組成物。
47.方法が、細胞表面上のFLT3分子の数を増加させる、好ましくはがん細胞の細胞表面上のFLT3分子の数を増加させる方法である、項目1から46のいずれか一項に規定の使用のための項目1から46のいずれか一項に記載の組成物。
48.FLT3上方制御が、前記キナーゼ阻害剤を用いた治療によって引き起こされる、項目47に規定の使用のための項目47に記載の組成物。
49.がんが、前記キナーゼ阻害剤を用いた単剤療法による治療に対する抵抗性を獲得しているか、又はがんが、前記キナーゼ阻害剤を用いた単剤療法による治療と化学療法の組合せに対する抵抗性を獲得している、項目48に規定の使用のための項目48に記載の組成物。
50.がんが、野生型FLT3を発現する、項目1から49のいずれか一項に規定の使用のための項目1から49のいずれか一項に記載の組成物。
51.がんが、突然変異FLT3を発現する、項目1から49のいずれか一項に規定の使用のための項目1から49のいずれか一項に記載の組成物。
52.突然変異FLT3が、突然変異により活性化されている、項目51に規定の使用のための項目51に記載の組成物。
53.突然変異FLT3が、チロシンキナーゼドメインにおいて突然変異している、項目51又は52のいずれか一項に規定の使用のための項目51又は52に記載の組成物。
54.突然変異FLT3が、遺伝子内縦列重複を含む、項目51から53のいずれか一項に規定の使用のための項目51から53のいずれか一項に記載の組成物。
55.治療が、第一選択療法である、項目1から54のいずれか一項に規定の使用のための項目1から54のいずれか一項に記載の組成物。
56.治療が、第二選択療法、第三選択療法、又は第四選択療法である、項目1から54のいずれか一項に規定の使用のための項目1から54のいずれか一項に記載の組成物。
57.FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体。
58.IgG4-Fcヒンジスペーサー、CD28膜貫通及び共刺激ドメイン、並びにCD3zシグナル伝達ドメインを含む、項目57に記載のキメラ抗原受容体。
59.配列番号2の配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含むか、又は配列番号4の配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目57又は58のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
60.配列番号2の配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目59に記載のキメラ抗原受容体。
61.配列番号4の配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目59に記載のキメラ抗原受容体。
62.配列番号5の重鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含むか、又は配列番号7の重鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目57又は58のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
63.配列番号5の重鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列及び配列番号6の軽鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目62に記載のキメラ抗原受容体。
64.配列番号7の重鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列及び配列番号8の軽鎖可変ドメイン配列又はその配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目62に記載のキメラ抗原受容体。
65.項目57から64のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体を含む細胞。
66.キメラ抗原受容体を発現する細胞が、キメラ抗原受容体を安定な遺伝子移入を通じて発現させることによって入手可能である、項目65に記載の細胞。
67.キメラ抗原受容体を発現する細胞が、キメラ抗原受容体を一過性の遺伝子移入を通じて発現させることによって入手可能である、項目65に記載の細胞。
68.T細胞、NK細胞、及びB細胞の群から選択される細胞である、項目65から67までのいずれか一項に記載の細胞。
69.T細胞である、項目68に記載の細胞。
70.CD8陽性である、項目65から69までのいずれか一項に記載の細胞。
71.CD4陽性である、項目65から70までのいずれか一項に記載の細胞。
72.がんを治療する方法における使用のための、FLT3標的化薬剤。
73.がんを治療する方法が、キナーゼ阻害剤を用いてがんを治療する方法である、項目72に規定の使用のための項目72に記載のFLT3標的化薬剤。
74.FLT3標的化薬剤が、項目3から20のいずれか一項に規定のFLT3標的化薬剤である、項目72又は73のいずれか一項に規定の使用のための項目72又は73のいずれか一項に記載のFLT3標的化薬剤。
75.キナーゼ阻害剤が、項目21から38のいずれか一項に規定のキナーゼ阻害剤である、項目72から74のいずれか一項に規定の使用のための項目72から74のいずれか一項に記載のFLT3標的化薬剤。
76.がんが、項目43から54のいずれか一項に規定のがんである、項目72から75のいずれか一項に規定の使用のための項目72から75のいずれか一項に記載のFLT3標的化薬剤。
77.使用が、項目1から56のいずれか一項に規定の使用である、項目72から76のいずれか一項に規定の使用のための項目72から76のいずれか一項に記載のFLT3標的化薬剤。
78.キナーゼ阻害剤が、FLT3標的化薬剤の投与の前、FLT3標的化薬剤の投与と同時に、又はFLT3標的化薬剤の投与の後に少なくとも1回又は複数回投与される、項目72から77のいずれか一項に規定の使用のための項目72から77のいずれか一項に記載のFLT3標的化薬剤。
79.キナーゼ阻害剤が、FLT3標的化薬剤の投与の前に少なくとも1回又は複数回投与される、項目78に規定の使用のための項目78に記載のFLT3標的化薬剤。
80.キナーゼ阻害剤が、FLT3標的化薬剤の投与と同時に少なくとも1回又は複数回投与される、項目78に規定の使用のための項目78に記載のFLT3標的化薬剤。
81.キナーゼ阻害剤が、FLT3標的化薬剤の投与の後に少なくとも1回又は複数回投与される、項目78に規定の使用のための項目78に記載のFLT3標的化薬剤。
82.FLT3標的化薬剤及びキナーゼ阻害剤を含むキット。
83.FLT3標的化薬剤が、項目3から20のいずれか一項に規定のFLT3標的化薬剤である、項目82に記載のキット。
84.キナーゼ阻害剤が、項目21から38のいずれか一項に規定のキナーゼ阻害剤である、項目82又は83のいずれか一項に記載のキット。
85.前記FLT3標的化薬剤が、薬学的に許容される担体を更に含む、項目82から84のいずれか一項に記載のキット。
86.前記キナーゼ阻害剤が、薬学的に許容される担体を更に含む、項目82から85のいずれか一項に記載のキット。
87.
(a)キナーゼ阻害剤、及び
(b)FLT3標的化薬剤
を含む組成物。
88.FLT3標的化薬剤が、項目3から20のいずれか一項に規定のFLT3標的化薬剤である、項目87に記載の組成物。
89.キナーゼ阻害剤が、項目21から38のいずれか一項に規定のキナーゼ阻害剤である、項目87又は88のいずれか一項に記載の組成物。
90.薬学的に許容される担体を更に含む、項目87から89のいずれか一項に記載の組成物。
91.組成物が、がんの治療に適している、項目87から90のいずれか一項に記載の組成物。
92.がんが、項目43から54のいずれか一項に規定のがんである、項目91に記載の組成物。
93.項目72に記載のFLT3標的化薬剤とキナーゼ阻害剤の組合せ。
94.患者におけるがんを治療するための方法における使用のための項目93に記載の組合せ。
95.FLT3標的化薬剤が、項目3から20のいずれか一項に規定のFLT3標的化薬剤である、項目93に記載の組合せ又は項目94に規定の使用のための組合せ。
96.キナーゼ阻害剤が、項目21から38のいずれか一項に規定のキナーゼ阻害剤である、項目93に記載の組合せ又は項目94から95のいずれか一項に規定の使用のための組合せ。
97.がんが、項目43から54のいずれか一項に規定のがんである、項目93に記載の組合せ又は項目94から96のいずれか一項に規定の使用のための組合せ。
98.使用が、項目1から56のいずれか一項に規定の使用である項目93に記載の組合せ又は項目94から97のいずれか一項に規定の使用のための組合せ。
99.がんを治療するための方法における使用のためのFLT3 CAR-T細胞とキナーゼ阻害剤の組合せであって、がんを処置するために同種造血幹細胞移植の前に又はその後に投与される、組合せ。
100.FLT3 CAR-T細胞が、自己FLT3 CAR-T細胞である、項目99に規定の使用のための組合せ。
101.FLT3 CAR-T細胞が、同種異系FLT3 CAR-T細胞である、項目99に規定の使用のための組合せ。
102.がんが、項目43から54のいずれか一項に規定のがんである、項目99から101までのいずれか一項に規定の使用のための組合せ。
103.がんが、FLT3-ITD+AMLである、項目99から102までのいずれか一項に規定の使用のための組合せ。
104.キナーゼ阻害剤が、項目21から38のいずれか一項に規定のものである、項目99から103までのいずれか一項に規定の使用のための組合せ。
105.キナーゼ阻害剤が、クレノラニブである、項目99から104までのいずれか一項に規定の使用のための組合せ。
【0013】
好ましい実施形態では、本発明によるキメラ抗原受容体は、免疫細胞に対する共刺激を媒介することができる共刺激ドメインを含む。
【0014】
共刺激ドメインは、4-1BB、CD28、Ox40、ICOS又はDAP10に由来するものであることが好ましい。
【0015】
本発明によるキメラ抗原受容体は、CD4、CD8又はCD28に由来する膜貫通ドメインであることが好ましい膜貫通ドメインを更に含む。
【0016】
本発明によるキメラ抗原受容体は、CARスペーサードメインを更に含むことが好ましく、前記CARスペーサードメインは、CD4、CD8、FC-受容体、免疫グロブリン、又は抗体に由来するものであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】FLT3 CAR構築物を示す図である。試験に使用したFLT3 CAR、CD19 CAR及びCD123 CARの構築。単鎖可変断片(scFv)抗原結合性ドメインをmAbs 4G8及びBV10(FLT3 CAR)、FMC63(CD19 CAR)、及び32716(CD123 CAR)から得た。scFvドメインをIgG4ヒンジスペーサー及びCD28膜貫通ドメインを介して細胞内ドメインと連結した。CD28及びCD3zをそれぞれ共刺激ドメイン及びシグナル伝達ドメインとして組み入れた。短縮型上皮増殖因子受容体(tEGFR)(T2Aリボソームスキップ配列によってCAR導入遺伝子と隔てられている)をCAR陽性細胞の検出及び富化のために組み入れた。
【
図2】FLT3 CAR-T細胞の表現型を示す図である。健康なドナー又はAML患者の末梢血単核細胞から単離されたT細胞をCD3/CD28ビーズで刺激し、CAR導入遺伝子にレンチウイルスにより形質導入し、ビオチン化抗tEGFR抗体、その後、抗ビオチン磁気ビーズ染色で染色し(8~10日後)、磁気活性化細胞選別(MACS)を使用して選別した。MACS選別後のCD8
+T細胞及びCD4
+T細胞によるCAR発現のフローサイトメトリー解析。
【
図3】FLT3 CAR-T細胞が、FLT3が形質導入されたK562腫瘍細胞に特異的に認識することを示すグラフである。K562/FLT3を、全長ヒトFLT3遺伝子を用いたレトロウイルスによる形質導入によって生成した。(a)K562ネイティブ細胞及びK562/FLT3細胞によるFLT3発現のフローサイトメトリー解析。(b)生物発光に基づく細胞傷害性アッセイにおいて4時間後に分析されたCD8
+FLT3 CAR-T細胞の特異的な細胞溶解活性。値は平均値+s.d.として示されている。右側のグラフは、3つの異なるT細胞ドナーから調製されたCAR T細胞の細胞溶解活性を示す。
【
図4】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてFLT3野生型細胞及びFLT3-ITD
+AML細胞株及び初代AML細胞を認識し、排除することを示す図である。(a)AML細胞株(MOLM-13、THP-1、MV4;11)及び初代AML芽細胞(pt#1及び#2)におけるFLT3発現のフローサイトメトリー解析。ヒストグラムは、抗FLT3 mAb(4G8)を用いた染色(実線)及びアイソタイプ対照抗体を用いた染色(縞の線)を示す。ΔMFI(平均蛍光強度の差異)値は、抗FLT3 mAbで染色された細胞のMFIとアイソタイプ対照で染色された細胞のMFIを表す。(b)生物発光に基づく細胞傷害性アッセイにおいて4時間後に分析された、AML細胞株に対するCD8
+FLT3 CAR-T細胞CD19 CAR-T細胞又は形質導入されていないT細胞(UTD)の特異的な細胞溶解活性。3連のウェルにおいて、ウェル当たり5,000個の標的細胞を用い、示されているエフェクター対標的細胞比でアッセイを実施した。値は平均値+s.d.として示されている。(c)4時間のフローサイトメトリーに基づく細胞傷害性アッセイにおいて分析された、初代AML芽細胞に対するCD8
+FLT3 CAR-T細胞及びCD8
+CD123 CAR-T細胞の特異的な細胞溶解活性。3連のウェルにおいて、ウェル当たり10,000個の標的細胞を用い、示されているエフェクター対標的細胞比でアッセイを実施した。ビーズの計数を使用して、共培養の最後に残留する生存初代AML芽細胞の数を定量化し、特異的な溶解を算出した。
【
図5】FLT3 CAR-T細胞がMOLM-13 AML細胞を用いた刺激後にエフェクターサイトカインを産生し、増殖することを示すグラフである。(a)CD4
+FLT3 CAR-T細胞及びCD8
+FLT3 CAR-T細胞とMOLM-13標的細胞のE:T比2:1での24時間の共培養から得た上清中のIFN-γ及びIL-2を検出するための酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)。値は平均値±s.d.として示されている。(b)MOLM-13標的細胞とE:T比2:1で72時間共培養した後にカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)色素希釈によって調査したFLT3 CAR-T細胞の増殖。ヒストグラムは、生存(7-AAD
-)CD4
+T細胞又はCD8
+T細胞の増殖を示す。アッセイ培地に外因性サイトカインは添加しなかった。示されているデータは、少なくともn=5のドナーから調製されたFLT3 CAR改変T細胞株及び対照T細胞株から得た結果の代表である。
【
図6】FLT3 CAR-T細胞がTHP-1 AML細胞を用いた刺激後にエフェクターサイトカインを産生し、増殖することを示すグラフである。(a)CD4
+FLT3 CAR-T細胞及びCD8
+FLT3 CAR-T細胞とMOLM-13標的細胞のE:T比2:1での24時間の共培養から得た上清中のIFN-γ及びIL-2を検出するための酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)。値は平均値±s.d.として示されている。(b)MOLM-13標的細胞とE:T比2:1で72時間共培養した後にカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)色素希釈によって調査したFLT3 CAR-T細胞の増殖。ヒストグラムは、生存(7-AAD
-)CD4
+T細胞又はCD8
+T細胞の増殖を示す。アッセイ培地に外因性サイトカインは添加しなかった。示されているデータは、少なくともn=5のドナーから調製されたFLT3 CAR改変T細胞株及び対照T細胞株から得た結果の代表である。
【
図7】FLT3 CAR-T細胞が、免疫不全マウスにおけるAMLの異種移植モデルにおいてin vivoで強力な抗白血病活性を付与することを示す図である。6~8週齢の雌NSGマウスにMOLM-13 AML細胞[ホタルルシフェラーゼ(ffluc)
+/緑色蛍光タンパク質(GFP)
+]1×10
6個を接種し、7日目にCAR改変T細胞若しくはUTD T細胞5×10
6個で処置したか、又は無処置のままにした。(a)各処置群における白血病の増悪及び退縮を評価するための段階的な生物発光イメージング(BLI)。目盛り(右側)は各分析時点での上下のBL閾値を示すことに留意されたい。(b)T細胞移入後1日目の末梢血のフローサイトメトリー解析(すなわち、白血病接種後10日目)。データは、処置群のそれぞれにおける移入されたT細胞(CD45
+/CD3
+)の頻度を生存(7-AAD
-)細胞のパーセンテージとして示す。
【
図8】FLT3 CAR-T細胞が免疫不全マウスにおけるAMLの異種移植モデルにおいてin vivoで強力な抗白血病活性を付与することを示すグラフである。(a)各マウスにおける実験エンドポイント時の末梢血(PB)、脾臓(Sp)及び骨髄(BM)のフローサイトメトリー解析。ドットプロットは、群当たり1匹の代表マウスにおける白血病細胞(GFP
+/FLT3
+)の頻度を生存(7-AAD
-)細胞のパーセンテージとして示す。図表は、白血病細胞(GFP
+/FLT3
+)の頻度を生存(7-AAD
-)細胞のパーセンテージとして示す。p<.05(スチューデントのt検定)。(b)実験の7日目から14日目の間に各マウスから得た絶対的な生物発光値のΔ(増加/減少)[すなわち(腫瘍接種後14日目)-(腫瘍接種後7日目)、すなわち(T細胞移入後7日目)-(T細胞移入前)]を示すウォーターフォールプロット。生物発光値を各マウスの全身を包含する対象領域における光子/秒/cm
2/srとして得た。
【
図9】FLT3 CAR-T細胞が養子移入後に長期間持続を示し、NSG/MOLM-13マウスの生存の改善をもたらすことを示すグラフである。(a)各処置群からの代表マウスの骨髄、脾臓及び末梢血からのフローサイトメトリードットプロット。右側の図は、UTD又はFLT3 CAR T細胞で処置したマウスにおけるCD8
+T細胞のパーセンテージを表す。値は平均値±s.d.として示されている。(b)処置群のそれぞれにおける生存のカプラン・マイヤー分析。プロトコールの通り、実験エンドポイントを体重及び総生物発光値の相対的な(%)減少によって定義した。p<.05(ログランク検定)。示されているデータは、n=3のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。
【
図10】ミドスタウリン処理により、AML細胞におけるFLT3発現の増強が導かれる。(a) 10nMで15日間、その後、3カ月の終わりまでに50nMの濃度まで段階的に上昇させたミドスタウリンの存在下培養したMOLM-13細胞、MV4;11細胞、THP-1細胞、K562細胞におけるFLT3発現のフローサイトメトリー解析。ヒストグラムは、アイソタイプ(黒色のヒストグラム)と比較した、抗FLT3 mAb(4G8)を用いた染色(灰色のヒストグラム)を示す。ΔMFI(平均蛍光強度の差異)値は、無処理の細胞のMFIと50nMのミドスタウリンで処理した細胞のMFIの絶対的な差異[すなわち(50nMのミドスタウリンによる処理のMFI)-(無処理のMFI)]を表す。(b)フローヒストグラムは、10nMで2~3週間、その後、次の8~10週間で50nMの濃度まで段階的に上昇させたミドスタウリンの存在下で培養したMOLM-13細胞におけるFLT3発現を示す。(c)フローヒストグラムは、50nMのミドスタウリンへの曝露後(曝露)、その後の薬物停止の2日後(停止)、及び50nMのクレノラニブへの再曝露の7日後(再曝露)のMOLM-13細胞におけるFLT3発現を示す。
【
図11】MOLM-13
midoがin vitroにおいてより低いCD33発現及びCD123発現を示したことを示すグラフである。(a)MOLM-13
native細胞(濃い灰色)及びMOLM-13
mido細胞(薄い灰色)におけるCD33発現及びCD123発現のフローサイトメトリー解析。n=2の独立した実験からの代表データ。
【
図12】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
midoに対して増強された細胞傷害性を発揮することを示すグラフである。(a)FLT3 CAR-T細胞によるMOLM-13
midoAML細胞及びMOLM-13
nativeAML細胞の認識。50nMのミドスタウリンを含有する培地中、MOLM-13
midoを用いたアッセイを実施した。生物発光に基づく細胞傷害性アッセイ(ウェル当たり5,000個の標的細胞を用い、E:T比10:1で4時間インキュベーション)における細胞溶解活性。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。**p<.005、***p<.0005(スチューデントのt検定)。
【
図13】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
midoに対して増強されたサイトカイン産生及び増殖を示すことを示すグラフである。(a)IFN-γELISA及びIL-2 ELISA(ウェル当たり50,000個のT細胞を用い、E:T比4:1で24時間インキュベーション)。(b)CFSE色素希釈(ウェル当たり50,000個のT細胞と12,500個の標的細胞を72時間共培養)によって評価したCD4
+FLT3 CAR-T細胞の増殖。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。****p<.0001(スチューデントのt検定)。
【
図14】クレノラニブ処理により、AML細胞におけるFLT3発現の増強が導かれることを示すグラフである。(a)無処理の細胞と比較した、10nMのクレノラニブの存在下で7日間培養したMOLM-13細胞、MV4;11細胞、THP-1細胞、K562細胞におけるFLT3発現のフローサイトメトリー解析。ヒストグラムは、アイソタイプ(黒色のヒストグラム)と比較した、抗FLT3 mAb(4G8)を用いた染色(灰色のヒストグラム)を示す。ΔMFI(平均蛍光強度の差異)値は、無処理の細胞のMFIと10nMのクレノラニブで処理した細胞のMFIの絶対的な差異[すなわち(10nMのクレノラニブによる処理のMFI)-(無処理のMFI)]を表す。(b)フローヒストグラムは、10nMのクレノラニブへの曝露の7日後(曝露)、その後の薬物停止の2日後(停止)、及び10nMのクレノラニブへの再曝露の7日後(再曝露)のMOLM-13細胞におけるFLT3発現を示す。
【
図15】クレノラニブ処理によりMOLM-13におけるFLT3発現の増強が導かれることを示すグラフである。0日目に、efluro 670色素標識したMOLM-13細胞1×10
6個を、48ウェルプレート、10nMのクレノラニブを伴う又は伴わない培養培地1mLにプレーティングした(3連のウェルで)。(a)5日後及び10日後、細胞を洗浄し、抗FLT3 mAbを使用してFLT3発現について染色した。efluro 647色素標識を使用して増殖を追跡した。実線は無処理のMOLM-13細胞(0nM)を示し、縞の線は10nMのクレノラニブ処理したMOLM-13細胞を示す。n=2の独立した実験からの代表データ。(b)0nMのクレノラニブ処理後及び10nMのクレノラニブ処理後のMOLM-13死細胞(7-AAD
+細胞)のパーセンテージ。黒色の矢印は、新鮮な薬物の補充を伴う培地の交換。データは、n=2の独立した実験からの平均値+s.dを表す。
【
図16】CD33発現及びCD123発現がMOLM-13
crenoにおいて変更されないことを示すグラフである。(a)MOLM-13
native細胞(濃い灰色)及びMOLM-13
creno細胞(薄い灰色)におけるCD33発現及びCD123発現のフローサイトメトリー解析。n=2の独立した実験からの代表データ。
【
図17】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
crenoに対して増強された細胞傷害性を発揮することを示すグラフである。(a)FLT3 CAR-T細胞によるMOLM-13
crenoAML細胞及びMOLM-13
nativeAML細胞の認識。10nMのクレノラニブを含有する培地中、MOLM-13
crenoを用いたアッセイを実施した。生物発光に基づく細胞傷害性アッセイ(ウェル当たり5,000個の標的細胞を用い、E:T比10:1で4時間インキュベーション)における細胞溶解活性。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。*p<.05、**p<.005(スチューデントのt検定)。
【
図18】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
crenoに対して増強されたサイトカイン産生及び増殖を示すことを示すグラフである。(a)IFN-γELISA及びIL-2 ELISA(ウェル当たり50,000個のT細胞を用い、E:T比4:1で24時間インキュベーション)。(b)CD4
+FLT3 CAR-T細胞の増殖をCFSE色素希釈(ウェル当たり50,000個のT細胞と12,500個の標的細胞を72時間共培養)によって評価した。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。*p<.05、***p<.0005(スチューデントのt検定)。
【
図19】キザルチニブ処理により、AML細胞におけるFLT3発現の増強が導かれることを示すグラフである。(a)無処処理の細胞と比較した、1nMのキザルチニブ7日間の存在下で培養したMOLM-13細胞、MV4;11細胞、THP-1細胞、K562細胞におけるFLT3発現のフローサイトメトリー解析。ヒストグラムは、アイソタイプ(黒色のヒストグラム)と比較した、抗FLT3 mAb(4G8)を用いた染色(灰色のヒストグラム)を示す。ΔMFI(平均蛍光強度の差異)値は、無処理の細胞のMFIと1nMのキザルチニブで処理した細胞のMFIの絶対的な差異を表す[すなわち(1nMのキザルチニブによる処理のMFI)-(無処理のMFI)]。(b)フローヒストグラムは、1nMのキザルチニブへの曝露の7日後(曝露)、その後の薬物停止の2日後(停止)、及び1nMのキザルチニブ(再曝露)への再曝露の7日後のMOLM-13細胞におけるFLT3発現を示す。
【
図20】CD33発現及びCD123発現がMOLM-13
quizaにおいて変更されないことを示すグラフである。(a)MOLM-13
native細胞(濃い灰色)及びMOLM-13
quiza細胞(薄い灰色)におけるCD33発現及びCD123発現のフローサイトメトリー解析。n=2の独立した実験からの代表データ。
【
図21】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
quizaに対して増強された細胞傷害性を示すことを示すグラフである。(a)FLT3 CAR-T細胞によるMOLM-13
quizaAML細胞及びMOLM-13
nativeAML細胞の認識。1nMのキザルチニブを含有する培地中、MOLM-13
quizaを用いたアッセイを実施した。生物発光に基づく細胞傷害性アッセイ(ウェル当たり5,000個の標的細胞を用い、E:T比10:1で4時間インキュベーション)における細胞溶解活性。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。*p<.05、**p<.005(スチューデントのt検定)。
【
図22】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
quizaに対して増強されたサイトカイン産生及び増殖を示すグラフである。(a)IFN-γELISA及びIL-2 ELISA(ウェル当たり50,000個のT細胞を用い、E:T比4:1で24時間インキュベーション)。(b)CD4
+FLT3 CAR-T細胞の増殖をCFSE色素希釈(ウェル当たり50,000個のT細胞と12,500個の標的細胞を72時間共培養)によって評価した。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。**p<.005、***p<.0005(スチューデントのt検定)。
【
図23】クレノラニブが、FLT3 CAR-T細胞と相乗的に作用し、in vivoにおけるFLT3 CAR-T細胞の抗白血病有効性を増強することを示す図である。生後6~8週間の雌NSGマウスにMOLM-13細胞(ffluc
+GFP
+)1×10
6個を接種し、7日目に5×10
6個のFLT3 CAR T細胞単独、クレノラニブ単独(体重1kg当たり15mg、i.p.注射)又はその両方で処置した又は無処置のままにした。7日目に第1の用量のクレノラニブを与え、マウスは、連続した3週間にわたって(月曜~金曜)15回の投薬を受けた。(a)各処置群における白血病の増悪及び退縮を評価するための段階的な生物発光イメージング。目盛り(右側)は各分析時点での上下のBL閾値を示すことに留意されたい。(b) FLT3 CAR T細胞のみ又はクレノラニブとFLT3 CAR T細胞を受けたマウスの末梢血中の生存(7-AAD
-)T細胞(CD45
+CD3
+)のパーセンテージ(T細胞の注射後4日目、すなわち、5回のクレノラニブの投薬後) (上の図)。未処置群及びクレノラニブのみでの処置群からのマウスを骨髄由来の生存(7-AAD
-)白血病細胞(GFP+CD45
+)におけるFLT3発現について分析した(5回クレノラニブの投薬の後)(下の図)。スチューデントのt検定を使用してデータを解析した(*p<.05、**p<.005)。
【
図24】クレノラニブが、FLT3 CAR-T細胞と相乗的に作用し、in vivoにおけるFLT3 CAR-T細胞の抗白血病有効性を増強することを示すグラフである。(a)腫瘍接種後7日目から14日目の間に各マウスから得た絶対的な生物発光値の差異[すなわち(腫瘍接種後14日目)-(腫瘍接種後7日目)、すなわち(T細胞移入後7日目)-(T細胞移入前)]を示すウォーターフォールプロット。生物発光値を各マウスの全身を包含する対象領域における光子/秒/cm
2/srとして得た。(b)処置群のそれぞれにおける生存のカプラン・マイヤー分析。プロトコールの通り、実験エンドポイントを体重及び総生物発光値の相対的な(%)減少によって定義した。*p<.05(ログランク検定)。
【
図25】クレノラニブとFLT3 CAR-T細胞の併用治療により単剤療法と比較して有意に増強されたNSG/MOLM-13マウスの生存が導かれることを示すグラフである。(a)クレノラニブで処置したか又は処置していないマウスの末梢血から得たMOLM-13細胞におけるFLT3の発現を解析した。*p<.05(スチューデントのt検定)。(b)図表は、骨髄、脾臓及び末梢血から得た白血病細胞(GFP
+/CD45
+)の頻度を生存(7-AAD
-)細胞のパーセンテージとして示す。*p<.05、**p<.005(スチューデントのt検定)。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。
【
図26】EGFRt富化後のCAR T細胞の表現型を示すグラフである。健康なドナー又はAML患者の末梢血単核細胞から単離されたT細胞をCD3/CD28ビーズで刺激し、CAR導入遺伝子をレンチウイルスにより形質導入し、ビオチン化抗tEGFR抗体で染色(8~10日後)し、その後、抗ビオチン磁気ビーズ染色及び磁気活性化細胞選別(MACS)を使用して選別した。MACS選別後のCD8
+T細胞及びCD4
+T細胞によるCAR発現のフローサイトメトリー解析。
【
図27】FLT3 CAR-T細胞がFLT3
+K562腫瘍細胞を特異的に認識することを示すグラフである。K562/FLT3を、全長ヒトFLT3遺伝子を用いたレトロウイルスによる形質導入によって生成した。(a)K562ネイティブ細胞及びK562/FLT3細胞によるFLT3発現のフローサイトメトリー解析。(b)生物発光に基づく細胞傷害性アッセイにおいて4時間後に分析されたCD8
+FLT3 CAR-T細胞の特異的な細胞溶解活性。値は平均値+s.d.として示されている。右側のグラフは、3つの異なるT細胞ドナーから調製されたCAR T細胞の細胞溶解活性を示す。
【
図28】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてFLT3野生型細胞及びFLT3-ITD
+AML細胞株及び初代AML細胞を認識し、排除することを示すグラフである。(a)AML細胞株(MOLM-13、THP-1、MV4;11)及び初代AML芽細胞(pt#1及び#2)におけるFLT3発現のフローサイトメトリー解析。ヒストグラムは、抗FLT3 mAb(4G8)を用いた染色(実線)及びアイソタイプ対照抗体を用いた染色(縞の線)を示す。ΔMFI(平均蛍光強度の差異)値は、抗FLT3 mAbで染色された細胞のMFIとアイソタイプ対照で染色された細胞のMFIを表す。(b)生物発光に基づく細胞傷害性アッセイにおいて4時間後に分析された、AML細胞株に対するCD8
+FLT3 CAR-T細胞CD19 CAR-T細胞又は形質導入されていないT細胞(UTD)の特異的な細胞溶解活性。3連のウェルにおいて、ウェル当たり5,000個の標的細胞を用い、示されているエフェクター対標的細胞比でアッセイを実施した。値は平均値+s.d.として示されている。(c)4時間のフローサイトメトリーに基づく細胞傷害性アッセイにおいて分析された、初代AML芽細胞に対するCD8
+FLT3 CAR-T細胞及びCD8
+CD123 CAR-T細胞の特異的な細胞溶解活性。3連のウェルにおいて、ウェル当たり10,000個の標的細胞を用い、示されているエフェクター対標的細胞比でアッセイを実施した。ビーズの計数を使用して、共培養の最後に残留する生存初代AML芽細胞の数を定量化し、特異的な溶解を算出した。
【
図29】FLT3 CAR-T細胞がMOLM-13 AML細胞に対してエフェクターサイトカインを産生し、増殖することを示すグラフである。(a)CD4
+FLT3 CAR-T細胞及びCD8
+FLT3 CAR-T細胞とMOLM-13標的細胞のE:T比2:1での24時間の共培養から得た上清中のIFN-γ及びIL-2を検出するための酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)。値は平均値±s.d.として示されている。(b)MOLM-13標的細胞とE:T比2:1で72時間共培養した後にカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)色素希釈によって調査したFLT3 CAR-T細胞の増殖。ヒストグラムは、生存(7-AAD
-)CD4
+T細胞又はCD8
+T細胞の増殖を示す。アッセイ培地に外因性サイトカインは添加しなかった。示されているデータは、少なくともn=5のドナーから調製されたFLT3 CAR改変T細胞株及び対照T細胞株から得た結果の代表である。
【
図30】FLT3 CAR-T細胞がTHP-1 AML細胞に対してエフェクターサイトカインを産生し、増殖することを示すグラフである。(a)CD4
+FLT3 CAR-T細胞及びCD8
+FLT3 CAR-T細胞とMOLM-13標的細胞のE:T比2:1での24時間の共培養から得た上清中のIFN-γ及びIL-2を検出するための酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)。値は平均値±s.d.として示されている。(b)MOLM-13標的細胞とE:T比2:1で72時間共培養した後にカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)色素希釈によって調査したFLT3 CAR-T細胞の増殖。ヒストグラムは、生存(7-AAD
-)CD4
+T細胞又はCD8
+T細胞の増殖を示す。アッセイ培地に外因性サイトカインは添加しなかった。示されているデータは、少なくともn=5のドナーから調製されたFLT3 CAR改変T細胞株及び対照T細胞株から得た結果の代表である。
【
図31】FLT3 CAR-T細胞が免疫不全マウスにおけるAMLの異種移植モデルにおいてin vivoで強力な抗白血病活性を付与することを示す図である。6~8週齢の雌NSGマウスにMOLM-13 AML細胞[ホタルルシフェラーゼ(ffluc)
+/緑色蛍光タンパク質(GFP)
+]1×10
6個を接種し、7日目にCAR改変T細胞若しくはUTD T細胞5×10
6個で処置したか、又は無処置のままにした。(a)各処置群における白血病の増悪及び退縮を評価するための段階的な生物発光イメージング(BLI)。目盛り(右側)は各分析時点での上下のBL閾値を示すことに留意されたい。(b)T細胞移入後1日目の末梢血のフローサイトメトリー解析(すなわち、白血病接種後10日目)。データは、処置群のそれぞれにおける移入されたT細胞(CD45
+/CD3
+)の頻度を生存(7-AAD
-)細胞のパーセンテージとして示す。
【
図32】FLT3 CAR -T細胞により、免疫不全マウスにおけるAMLの異種移植モデルにおいてin vivoで白血病負荷量が低減し、生存が改善されることを示すグラフである。(a)実験の7日目から14日目の間に各マウスから得た絶対的な生物発光値のΔ(増加/減少)[すなわち(腫瘍接種後14日目)-(腫瘍接種後7日目)、すなわち(T細胞移入後7日目)-(T細胞移入前)]を示すウォーターフォールプロット。生物発光値を各マウスの全身を包含する対象領域における光子/秒/cm
2/srとして得た。(b)処置群のそれぞれにおける生存のカプラン・マイヤー分析。プロトコールの通り、実験エンドポイントを体重及び総生物発光値の相対的な(%)減少によって定義した。p<.05(ログランク検定)。示されているデータは、n=3のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。
【
図33】FLT3 CAR-T細胞により、in vivoで骨髄、脾臓及び末梢血からAMLが排除されることを示すグラフである。(a)各処置群からの代表マウスの骨髄、脾臓及び末梢血からのフローサイトメトリー解析。値は平均値±s.d.として示されている。
【
図34】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
midoに対して増強された細胞傷害性を発揮することを示すグラフである。(a)FLT3 CAR-T細胞によるMOLM-13
midoAML細胞及びMOLM-13
nativeAML細胞の認識。50nMのミドスタウリンを含有する培地中、MOLM-13
midoを用いたアッセイを実施した。生物発光に基づく細胞傷害性アッセイ(ウェル当たり5,000個の標的細胞を用い、異なるE:T比で4時間インキュベーション)における細胞溶解活性。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。*p<.05、**p<.005(スチューデントのt検定)。
【
図35】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
midoに対して増強されたサイトカイン産生及び増殖を示すことを示すグラフである。(a)IFN-γELISA及びIL-2 ELISA(ウェル当たり50,000個のT細胞を用い、E:T比4:1で24時間インキュベーション)。(b)CD4
+FLT3 CAR-T細胞の増殖をCFSE色素希釈(ウェル当たり50,000個のT細胞と12,500個の標的細胞を72時間共培養)によって評価した。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。***p<.0005(スチューデントのt検定)。
【
図36】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
crenoに対して増強された細胞傷害性を発揮することを示すグラフである。(a)FLT3 CAR-T細胞によるMOLM-13
crenoAML細胞及びMOLM-13
nativeAML細胞の認識。10nMのミドスタウリンを含有する培地中、MOLM-13
crenoを用いたアッセイを実施した。生物発光に基づく細胞傷害性アッセイ(ウェル当たり5,000個の標的細胞を用い、E:T比10:1で4時間インキュベーション)における細胞溶解活性。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。*p<.05、**p<.005(スチューデントのt検定)。
【
図37】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
crenoに対して増強されたサイトカイン産生及び増殖を示すことを示すグラフである。(a)IFN-γELISA及びIL-2 ELISA(ウェル当たり50,000個のT細胞を用い、E:T比4:1で24時間インキュベーション)。(b)CFSE色素希釈(ウェル当たり50,000個のT細胞と12,500個の標的細胞を72時間共培養)によって評価したCD4
+FLT3 CAR-T細胞の増殖。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。*p<.05、**p<.005(スチューデントのt検定)。
【
図38】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
quizaに対して増強された細胞傷害性を発揮することを示すグラフである。(a)FLT3 CAR-T細胞によるMOLM-13
quizaAML細胞及びMOLM-13
nativeAML細胞の認識。1nMのミドスタウリンを含有する培地中、MOLM-13
quizaを用いたアッセイを実施した。生物発光に基づく細胞傷害性アッセイ(ウェル当たり5,000個の標的細胞を用い、E:T比10:1で4時間インキュベーション)における細胞溶解活性。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。*p<.05、**p<.005(スチューデントのt検定)。
【
図39】FLT3 CAR-T細胞がin vitroにおいてMOLM-13
quizaに対して増強されたサイトカイン産生及び増殖を示すことを示すグラフである。(a)IFN-γELISA及びIL-2 ELISA(ウェル当たり50,000個のT細胞を用い、E:T比4:1で24時間インキュベーション)。(b)CD4
+FLT3 CAR-T細胞の増殖をCFSE色素希釈(ウェル当たり50,000個のT細胞と12,500個の標的細胞を72時間共培養)によって評価した。示されているデータは、n=2のドナーから調製したFLT3 CAR-T細胞株を用いた独立した実験から得た結果の代表である。**p<.005、***p<.0005(スチューデントのt検定)。
【
図40】ミドスタウリンがin vivoにおいてFLT3 CAR-T細胞と相乗的に作用し、FLT3 CAR-T細胞の抗白血病活性を増強することを示す図である。6~8週齢の雌NSG免疫不全マウスに、0日目に1×10
6個のffluc
+GFP
+MOLM-13細胞を注射した。7日目に、マウスを、FLT3 CAR-T細胞単独(5×10
6個の細胞、CD4+:CD8+比=1:1)、ミドスタウリン単独(体重1kg当たり1mg、i.p.注射)、若しくはその両方(組合せ)の単回投薬で処置したか、又は無処置のままにした。FLT3 CAR+初期mido群のマウスは、ミドスタウリンを3日目、4日目、5日目に受け、7日目に開始して追加的なミドスタウリンの投薬を12回受けた。FLT3 CAR+ミドスタウリン群のマウスは、ミドスタウリンの最初の投薬を7日目(すなわち、T細胞注射と同じ日)に受け、連続した3週間にわたって(月曜~金曜)合計15回のミドスタウリンの投薬を受けた。(a)各処置群における白血病の増悪/退縮を評価するための段階的な生物発光(BL)イメージング。目盛り(右側)は各分析時点での上下のBL閾値を示すことに留意されたい。(b)腫瘍接種後7日目と11日目の間のBL値の倍率変化を表すウォーターフォールプロット。BL値を光子/秒/cm
2/srとして得た。
【
図41】in vivoにおけるミドスタウリン処置後のFLT3 CAR-T細胞増大及びMOLM-13細胞におけるFLT3発現を示すグラフである。(a)FLT3 CAR-T細胞を単独で用いて、又はミドスタウリンと併用して処置したマウスの末梢血分析(腫瘍接種後11日目)。図表は、末梢血中の生存(7-AAD
-)T細胞(CD45
+CD3
+)のパーセンテージを示す。*p<0.05、**p<0.005(スチューデントのt検定)。(b)MOLM-13細胞におけるFLT3発現のフローサイトメトリー解析を無処置のマウス、及びミドスタウリンで処置したマウス(ミドスタウリンを5回投薬後)の骨髄から得た細胞に対して実施した。図表は、FLT3の平均蛍光強度(MFI)を示す。
【
図42】キザルチニブがin vivoにおいてFLT3 CAR-T細胞と相乗的に作用し、FLT3 CAR-T細胞の抗白血病活性を増強することを示す図である。雌NSG免疫不全マウス(6~8週齢)に、0日目にffluc
+GFP
+MOLM-13細胞1×10
6個を接種した。7日目に、マウスをFLT3 CAR-T細胞単独(5×10
6個の細胞、CD4+:CD8+比=1:1)、キザルチニブ単独(体重1kg当たり1mg、i.p.注射)、若しくはその両方(組合せ)の単回投薬で処置したか、又は無処置のままにした。FLT3 CAR+キザルチニブ群のマウスは、キザルチニブの最初の投薬を7日目(すなわち、T細胞注射と同じ日)に受け、マウスは、連続した3週間にわたって(月曜~金曜)合計15回のキザルチニブの投薬を受けた。(a)各処置群における白血病の増悪/退縮を評価するための段階的な生物発光(BL)イメージング。(b)ウォーターフォールプロットは、腫瘍接種後7日目と10日目の間のBL値の倍率変化を表す。BL値を光子/秒/cm
2/srとして得た。
【
図43】in vivoにおけるキザルチニブ処置後のFLT3 CAR-T細胞増大及びMOLM-13細胞におけるFLT3発現の分析を示すグラフである。(a)FLT3 CAR-T細胞を単独で用いて、又はキザルチニブと併用して処置したマウスの末梢血分析(腫瘍接種後10日目)。図表は、末梢血中の生存(7-AAD-)T細胞(CD45
+CD3
+)のパーセンテージを示す。**p<0.005(スチューデントのt検定)。(b)MOLM-13細胞におけるFLT3発現のフローサイトメトリー解析を無処置のマウス、及びキザルチニブで処置したマウス(キザルチニブを5回投薬後)の骨髄から得た細胞に対して実施した。図表は、FLT3の平均蛍光強度(MFI)を示す。
【
図44】in vitroにおける急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び混合型白血病(MLL)細胞株におけるFLT3発現及びFLT3 CAR-T細胞によるそれらの認識を示すグラフである。(a)ALL(NALM-16)細胞及びMLL(KOPN-8及びSEM)細胞におけるFLT3発現のフローサイトメトリー解析。差し込まれた数字は、抗FLT3染色のMFIとアイソタイプ染色のMFIの絶対的な差異を表す。(b)FLT3 CAR-T細胞と、それに対してALL細胞株及びMLL細胞株を標的細胞として用いた4時間の細胞傷害性アッセイにおける特異的な細胞溶解活性。値は平均±s.d.を示す。
【
図45】ALL細胞株及びMLL細胞株に対してCD4
+FLT3 CAR-T細胞によって媒介されるIL-2産生及び増殖。(a)標的細胞とE:T比2:1(ウェル当たりT細胞50,000個)で24時間インキュベートした後にELISAによって測定した、FLT3 CAR-T細胞によるIL-2産生。(b)標的細胞と72時間共培養した後にCFSE色素希釈によって調査したFLT3 CAR-T細胞及び対照CD19 CAR-T細胞の増殖。n=2の異なるドナーから調製されたT細胞の代表データ。
【
図46】FLT3阻害剤を用いた処置後のALL細胞株及びMLL細胞株におけるFLT3発現を示すグラフである。(a)50nMのミドスタウリン、10nMのクレノラニブ又は1nMのキザルチニブの不在下又は存在下で1週間培養したALL細胞株及びMLL細胞株におけるFLT3発現のフローサイトメトリー解析。
【
図47】FLT3阻害剤で前処理したMV4;11 AML細胞及びFLT3阻害剤で前処理していないMV4;11 AML細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)を示すグラフである。MV4;11 AML細胞をFLT3阻害剤(10nMのクレノラニブ、1nMのキザルチニブ又は50nMのミドスタウリン)で7日間処理した。健康なドナー由来のPBMC(エフェクター/標的比50:1)及び対照IgG1抗体又は抗FLT3 BV10 mAbを5000ng/mLの濃度で添加した。MV4;11細胞にホタルルシフェラーゼを安定に発現させ、24時間共培養した後、ルシフェリン基質を添加した後に生物発光測定によって細胞生存能力を分析した。値は平均値±SDとして示されている。示されている群間のP値は、対応のないスチューデントのt検定を使用することによって算出した。*P<.05; **P<.005。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、一般に、FLT3標的化薬剤及びキナーゼ阻害剤を用いたがんの治療に関する。特に、本発明は、FLT3特異的キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子導入によって改変されたT細胞とFLT3阻害剤を併用する急性骨髄性白血病(AML)の治療に関する。本発明において、本発明者らは、AML芽細胞をFLT3阻害剤で処理することにより、AML芽細胞の細胞表面上のFLT3分子の発現の有意な増大が導かれ、その結果として、FLT3 CAR-T細胞による認識及び排除の有意な増大が導かれることを実証する。FLT3 CAR-T細胞及びFLT3阻害剤を用いたAMLの併用治療は高度に相乗的であり、FLT3阻害剤又はFLT3 CAR-T細胞のいずれかを単独で用いた単剤療法よりも優れている。
【0019】
最近の臨床試験により、B細胞系白血病及びリンパ腫におけるCD19 CAR-T細胞を用いた養子免疫療法;並びに多発性骨髄腫におけるBCMA(B細胞成熟化抗原)CAR-T細胞を用いた養子免疫療法が進行した血液悪性腫瘍に対して有効であり得ることが実証された。しかし、これらの臨床試験により、CD19 CAR(CD19陰性白血病バリアントの出現に起因した白血病の再燃、参考文献:Turtle et al J Clin Invest 2016, PMID: 27111235)及びBCMA CAR(BCMA陰性/低骨髄腫バリアントの出現に起因した骨髄腫の再燃、参考文献:Ali et al. Blood 2016, PMID: 27412889)の例で最近実証されたように、抗原欠損腫瘍バリアントの出現に起因して再燃する実質的なリスクがあることも実証された。なぜCAR-T細胞療法後に抗原欠損が生じるかについての説明は、i)CAR標的抗原が均一に発現しない又は十分に高いレベルで発現しないこと;ii)CAR標的抗原が腫瘍と病態生理学的に関連するものではなく、したがって、抗原の欠損が腫瘍細胞に許容される可能性があることを含め、いくつかある。これまで、CAR-T細胞の治療圧力下での抗原欠損腫瘍バリアントの発生を防止する方法は記載されていない。しかし、本発明者らは、腫瘍細胞にそれらの細胞表面上のCAR標的抗原の発現を強化させ、腫瘍細胞から抗原が欠損することを防止する手段があれば、CAR-T細胞療法がより有効になり、より大きなパーセンテージの患者において基礎をなす血液悪性腫瘍が治癒する可能性がより高くなると推論する。本発明者らは、本発明において、FLT3阻害剤を用いた治療によってAML芽細胞にFLT3分子の発現を強化させることが可能であることを実証する。結果として、in vitro及びin vivoにおけるFLT3 CAR-T細胞によるAML芽細胞の認識及び排除が有意に増強される。AML芽細胞をFLT3阻害剤で処理することにより、全てのAML芽細胞におけるFLT3分子の発現の増強が導かれるので、FLT3 CAR-T細胞で全てのAML芽細胞が排除される可能性が高くなり、且つ、AML芽細胞がFLT3 CAR-T細胞による排除を免れる可能性が低くなる。したがって、FLT3阻害剤を単独で又はFLT3 CAR-T細胞を単独で用いた治療と比較して、FLT3 CAR-T細胞及びFLT3阻害剤を用いた併用治療によってAMLが治癒する可能性が高い。
【0020】
FLT3阻害剤はAMLを治療するために使用されているが、単一の薬剤としては、臨床的有効性は低く、圧倒的に大多数の患者において疾患を治癒することはできていない。AML芽細胞におけるFLT3分子の発現に際してFLT3阻害剤を用いてAML芽細胞を標的化することの結果は予測不可能である:i)タンパク質合成及びターンオーバーを撹乱するFLT3阻害剤の直接的な毒作用に起因してFLT3の発現が低減する可能性がある;ii)AML芽細胞がFLT3阻害剤を無効にするFLT3分子の新規の突然変異を一般に獲得すること、又は代替の分子生存経路に切り換え、それを使用することに起因してFLT3の発現が変化しない可能性がある;iii)AML芽細胞におけるFLT3の発現が増大してFLT3阻害剤によって付与される阻害を相殺する可能性もある。
【0021】
本発明者らは、FLT3阻害剤であるミドスタウリン、キザルチニブ及びクレノラニブを用いたAML芽細胞の治療により、特にFLT3遺伝子内縦列重複(FLT3-ITD)を有するAML芽細胞におけるFLT3発現の有意な増大が導かれることを示す。AML芽細胞におけるFLT3発現の増大はFLT3阻害剤による治療の開始後に急速に起こり、FLT3 CAR-T細胞による認識の有意な増強(より強力且つ迅速な細胞溶解活性;IL-2を含めたサイトカインのより強力な分泌;より強力且つ迅速な増殖; AML芽細胞での刺激後の優れた生存能力及び生存)が導かれる。更に、FLT3 CAR-T細胞及びFLT3阻害剤を用いたAMLの併用治療により、AMLのマウスモデルにおいてin vivoでCAR-T細胞の持続性及び抗白血病機能有意な増強が導かれる。AML芽細胞におけるFLT3発現の増大は、FLT3阻害剤を用いた治療が終結するとモジュレートされ、急速にベースラインレベルまで戻り得る。驚いたことに、ミドスタウリン、キザルチニブ及びクレノラニブはそれぞれ多標的キナーゼ阻害剤であり、したがって、FLT3 CARのシグナル伝達及び機能に干渉し得るにもかかわらず、FLT3 CAR-T細胞の生存能力及び機能はこれらの物質による影響を受けない。
【0022】
定義及び実施形態
以下で特に定義されていなければ、本発明において使用される用語は、当業者に公知の一般的な意味に従って理解されるものとする。
【0023】
本明細書において引用されている刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献はそれぞれ、本発明と相反しない範囲でその全体が参照によって組み込まれる。参考文献は、それらの参考文献番号及び「参考文献」の節に提示されるそれらの対応する参考文献の詳細によって示される。
【0024】
「キナーゼ阻害剤」は、本明細書で言及される場合、1つ又は複数のキナーゼを、前記キナーゼに結合し、前記キナーゼに対するアンタゴニスト効果を発揮することによって阻害する分子化合物である。キナーゼ阻害剤は、1つ又は複数のキナーゼ種に結合することができ、キナーゼ阻害剤が結合すると、1つ又は複数のキナーゼのキナーゼ活性が低下する。本明細書に記載のキナーゼ阻害剤は、一般には小分子であり、小分子は、低分子量(一般には1kDa未満)及び小サイズ(一般には1nM未満)の分子化合物である。
【0025】
一実施形態では、キナーゼ阻害剤は、多標的キナーゼ阻害剤である。本明細書で使用される場合、「多標的キナーゼ阻害剤」は、1つよりも多くの型のキナーゼを阻害することができるキナーゼ阻害剤である。好ましい実施形態では、キナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤である。別の好ましい実施形態では、キナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤である。より好ましい実施形態では、キナーゼ阻害剤は、突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを阻害する。より好ましい実施形態では、キナーゼ阻害剤は、FLT3キナーゼ阻害剤であるクレノラニブ、ミドスタウリン、及びキザルチニブからなる群から選択される。非常に好ましい実施形態では、キナーゼ阻害剤は、FLT3キナーゼ阻害剤クレノラニブである。
【0026】
本明細書で使用される場合、「II型受容体チロシンキナーゼ阻害剤」は受容体チロシンキナーゼの不活性コンフォメーションを標的とし、一方、「I型受容体チロシンキナーゼ阻害剤」は、受容体チロシンキナーゼの活性コンフォメーションを標的とする。例示的なII型受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤キザルチニブである。例示的なI型受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤クレノラニブである。
【0027】
「KD」又は「KD値」という用語は、当技術分野で公知の平衡解離定数に関する。本発明に関しては、これらの用語は、標的化薬剤の特定の目的の抗原(例えば、FLT3)に対する平衡解離定数に関する。平衡解離定数は、複合体(例えば、抗原と標的化薬剤の複合体)がその成分(例えば、抗原と標的化薬剤)に可逆的に解離する傾向の尺度である。KD値を決定する方法は当技術分野で公知である。
【0028】
本明細書に記載の標的化薬剤は、一般的な医薬品とは反対に、その標的に特異的に結合することができる薬剤である。
本発明による標的化薬剤は、FLT3標的化薬剤である。本発明による好ましい標的化薬剤は、細胞表面上のFLT3、一般には膜貫通タンパク質FLT3の細胞外ドメインに結合することができる。
【0029】
本発明の一実施形態では、標的化薬剤は、腫瘍FLT3を発現する細胞に特異的に結合することができる。本発明の別の実施形態では、標的化薬剤は、FLT3を発現する造血細胞に特異的に結合することができる。本発明の別の実施形態では、標的化薬剤は、腫瘍FLT3を発現する造血細胞に特異的に結合することができる。本発明の好ましい実施形態では、標的化薬剤は、FLT3を発現する急性骨髄性白血病細胞に結合することができる。本発明の非常に好ましい実施形態では、標的化薬剤は、突然変異FLT3、好ましくはFLT3-ITDを発現する急性骨髄性白血病細胞に結合することができる。
【0030】
「細胞の成長阻害」等の用語は、本明細書で使用される場合、細胞数の減少を引き起こす効果を意味する。これは、壊死又はアポトーシスによる細胞傷害性によって引き起こされ得る、又はこれは、増殖の阻害又は停止によって引き起こされ得ることが好ましい。「成長阻害効果」とは、本明細書で使用される場合、物質、分子、化合物、組成物又は薬剤が、前記物質、分子、化合物、組成物、又は薬剤が存在しない状況と比較して、細胞に対する成長阻害効果を有することを意味する。細胞成長阻害は、当技術分野で公知の種々の一般的な方法及びアッセイによって測定することができる。
【0031】
本発明で(a)キナーゼ阻害剤及び(b)FLT3標的化薬剤に関する組成物、使用のための組成物、キット、使用方法、組合せ、使用のための組合せ等に言及する時はいつも、キナーゼ阻害剤はFLT3標的化薬剤とは異なるものであることが理解されるべきである。
【0032】
更に、「キナーゼ阻害剤」等の用語は、キナーゼ阻害剤の存在を指すが、追加的なキナーゼ阻害剤、例えば、1つ、2つ、3つ又はそれよりも多くの追加的なキナーゼ阻害剤が存在し得る可能性を排除するものではないことも理解される。本発明による一実施形態では、ただ1つのキナーゼ阻害剤が使用される。
【0033】
「FLT3標的化薬剤」等の用語は、FLT3標的化薬剤の存在を指すが、追加的なFLT3標的化薬剤、例えば、1つ、2つ、3つ又はそれよりも多くの追加的なFLT3標的化薬剤が存在し得る可能性を排除するものではないことも理解される。本発明による一実施形態では、ただ1つのFLT3標的化薬剤が使用される。
【0034】
一実施形態では、キメラ抗原受容体は、FLT3に結合することができる。好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体は、FLT3の細胞外ドメインに結合することができる。好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体を免疫細胞、好ましくはT細胞において発現させる。本発明の好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体をT細胞に発現させ、前記T細胞がFLT3を発現する急性骨髄性白血病細胞に特異的に高い特異性で結合して前記急性骨髄性白血病細胞に対する成長阻害効果、好ましくは細胞傷害効果を発揮することを可能にする。
【0035】
好ましい実施形態では、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体は、FLT3に結合することができるモノクローナル抗体の抗原結合性部分に由来するキメラ抗原受容体であり、キメラ抗原受容体は、配列番号2のアミノ酸配列又はそれと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である配列を含む。
【0036】
より好ましい実施形態では、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体はキメラ抗原受容体であり、その抗原結合性ドメインは配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
好ましい実施形態では、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体は、FLT3に結合することができるモノクローナル抗体の抗原結合性部分に由来するキメラ抗原受容体であり、キメラ抗原受容体は、配列番号4のアミノ酸配列又はそれと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である配列を含む。
【0037】
より好ましい実施形態では、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体はキメラ抗原受容体であり、その抗原結合性ドメインは配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0038】
本明細書に記載の「養子免疫療法」は、がんの標的化治療のために免疫細胞を患者に移入することを指す。細胞は、患者又は別の個体に由来するものであり得る。養子免疫療法では、免疫細胞、好ましくはT細胞を、個体から、好ましくは患者から一般には抽出し、遺伝子改変し、in vitroで培養し、及び患者に投与する。養子免疫療法は、従来の治療では生じる非腫瘍細胞に対する非標的化毒性を伴わない、標的化成長阻害性、好ましくは細胞傷害性の腫瘍細胞治療を可能にするという点で有利である。
【0039】
本発明による好ましい実施形態では、T細胞を、急性骨髄性白血病を有する患者から単離し、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体をコードする遺伝子導入ベクターで形質導入し、急性骨髄性白血病を治療するために患者に投与し、ここで、急性骨髄性白血病細胞が突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現することが好ましい。好ましい実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞又はCD4+T細胞である。
【0040】
抗体という用語は、本明細書で使用される場合、目的の抗原に特異的に結合することができる任意の機能性抗体を指す。特に限定することなく、抗体という用語は、ニワトリ等のトリ、並びにマウス、ヤギ、非ヒト霊長類及びヒト等の哺乳動物を含めた任意の適正な供給源種に由来する抗体を包含する。抗体はヒト化抗体であることが好ましい。ヒト化抗体は、ヒト配列、及び目的の抗原(例えば、ヒトFLT3)に対する結合特異性を付与する非ヒト配列の小部分を含有する抗体である。抗体は、当技術分野で周知の方法によって調製することができるモノクローナル抗体であることが好ましい。抗体という用語は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、若しくはIgG-4、IgE、IgA、IgM、又はIgDアイソタイプ抗体を包含する。抗体という用語は、単量体抗体(例えば、IgD、IgE、IgG等)又はオリゴマー抗体(例えば、IgA又はIgM等)を包含する。抗体という用語は、特に限定せずに、単離された抗体及び遺伝子操作された抗体、例えば、キメラ抗体又は二重特異性抗体等の改変された抗体も包含する。
【0041】
抗体断片又は抗体の断片とは、本明細書で使用される場合、抗原(例えば、ヒトFLT3)に特異的に結合する抗体の能力を保持する、抗体の一部を指す。この能力は、例えば、抗原への特異的な結合について抗体と競合する抗原結合性部分の能力を当技術分野で公知の方法によって決定することにより決定することができる。特に限定することなく、抗体断片は、組換えDNA法、及び抗体の化学的又は酵素的断片化による調製を含めた当技術分野で公知の任意の適切な方法によって作製することができる。抗体断片は、Fab断片、F(ab')断片、F(ab')2断片、単鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体、ダイアボディ(diabody)又は抗原に特異的に結合する抗体の能力を保持する任意の他の抗体の一部分であってよい。
【0042】
本明細書に記載の「抗体」(例えば、モノクローナル抗体)又は「その断片」は、誘導体化されたもの又は異なる分子と連結したものであってよい。例えば、抗体に連結することができる分子は、他のタンパク質(例えば、他の抗体)、分子標識(例えば、蛍光、発光、呈色又は放射性分子)、医薬品及び/又は毒性薬剤である。抗体又は抗原結合性部分は、直接連結することもでき(例えば、2つのタンパク質間の融合という形態で)、リンカー分子(例えば、当技術分野で公知の任意の適切な型の化学的リンカー)を介して連結することもできる。
【0043】
「遺伝子内縦列重複」(ITD)という用語は、FLT3と関連して本明細書で使用される場合、膜近傍領域又は細胞内ドメインの他の部分における1つ又は複数のインフレームトリヌクレオチド重複(FLT3-ITD)を導くFLT3の遺伝子突然変異を指す。これにより、一般には、FLT3の構成的な活性化がもたらされる。遺伝子内縦列重複は、3ヌクレオチドから100ヌクレオチドを超えるまでのサイズにわたり得る。FLT3-ITD突然変異は、急性骨髄性白血病において頻繁に生じ、従来の療法に対する抵抗性及び臨床転帰不良に関連付けられる。
【0044】
特に指定のない限り、本明細書に記載の「単剤療法」は、1種の薬学的に活性な物質、分子、化合物、組成物、又は薬剤を唯一の薬学的に活性な物質、分子、化合物、組成物、又は薬剤として投与する療法を意味する。単剤療法という用語は、本明細書で使用される場合、2種以上の薬学的に活性な物質、分子、化合物、組成物、又は薬剤の併用を包含しない。単剤療法という用語は、更に、2種以上の薬学的に活性な物質、分子、化合物、組成物、又は薬剤が同時には投与されないが1つの治療レジメン内で投与される場合の2種以上の薬学的に活性な物質、分子、化合物、組成物、又は薬剤の併用も包含しない。
【0045】
「がんの治療」又は「がんを治療すること」等の用語は、本発明によると、治療的処置を指す。治療的処置が功を奏するか否かの評価は、例えば、治療により、治療される患者におけるがんの成長が阻害されるかどうかを評価することによって行うことができる。阻害は、当技術分野で公知の適正な統計的検定によって評価して統計的に有意であることが好ましい。がんの成長の阻害は、本発明に従って治療される患者の群と無処置の患者の対照群におけるがんの成長を比較することによって、又は当技術分野の標準のがん治療とそれに加えて本発明に従った治療を受ける患者の群と当技術分野の標準のがん治療のみを受ける患者の対照群を比較することによって評価することができる。がんの成長の阻害を評価するためのそのような試験は、臨床試験に関する許容される標準、例えば、十分な統計学的検出力を有する二重盲検、ランダム化試験に従って設計される。「がんを治療すること」という用語は、がんの成長が部分的に阻害される(すなわち、患者におけるがんの成長が患者の対照群と比較して遅延する)がんの成長の阻害、がんの成長が完全に阻害される(すなわち、患者におけるがんの成長が止まる)阻害、及びがんの成長が逆転する(すなわち、がんが縮小する)阻害を含む。治療的処置が功を奏するか否かの評価は、公知のがん増悪の臨床指標に基づいて行うことができる。
【0046】
本発明に従ったがんの治療では、患者において追加的又は二次的な治療的利益も生じることは排除されない。例えば、追加的又は二次的な利益は、がんの治療の前、それと同時に、又はその後になされる移植された造血幹細胞の生着の増強であり得る。しかし、保護が探求される一次治療はがん自体を治療するためのものであり、いかなる二次的又は追加的な効果も、がん成長の治療の必要に応じた追加的な利点のみを反映することが理解される。
【0047】
本発明に従ったがんの治療は、第一選択療法、第二選択療法、第三選択療法、又は第四選択療法になり得る。治療はまた、第四選択療法をよりも後の療法にもなり得る。これらの用語の意味は当技術分野で公知であり、US National Cancer Instituteにより一般に使用される用語法に従う。
【0048】
「導入化学療法に対して不応性」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患が1サイクル又は2サイクルの導入化学療法に応答しなかった患者を指す。
【0049】
「結合することができる」という用語は、本明細書で使用される場合、結合される分子(例えば、FLT3)と複合体を形成する能力を指す。結合は、一般には、イオン結合、水素結合及びファンデルワールス力等の分子間力によって非共有結合的に起こり、一般には可逆的である。結合能を決定するための種々の方法及びアッセイが当技術分野で公知である。結合は、通常、親和性が高い結合であり、KD値で測定される親和性は、好ましくは1μM未満、より好ましくは100nM未満、なおより好ましくは10nM未満、なおより好ましくは1nM未満、なおより好ましくは100pM未満、なおより好ましくは10pM未満、なおより好ましくは1pM未満である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」等の用語の各出現は、必要に応じて「からなる」又は「からなる」で置換することができる。
【0051】
当技術分野で公知の通り任意の適切な希釈剤を含めた薬学的に許容される担体を本発明に使用することができる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、哺乳動物、より詳細にはヒトにおける使用に関して連邦若しくは州政府の規制当局に認可されている又は米国薬局方、欧州薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。薬学的に許容される担体としては、これだけに限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセロール、滅菌等張性水性緩衝剤、及びこれらの組合せが挙げられる。製剤を投与形式に合うように適切に適合させることが理解されよう。
【0052】
本発明による組成物及び製剤は、医薬組成物及び製剤を調製するための公知の標準に従って調製される。例えば、組成物及び製剤は、例えば、担体、賦形剤又は安定剤等の薬学的に許容される成分を使用することによって適切に保管し、投与することができるように調製される。そのような薬学的に許容される成分は、医薬組成物又は製剤を患者に投与する時に使用する量では毒性ではない。医薬組成物又は製剤に添加される薬学的に許容される成分は、組成物又は製剤中に存在する阻害剤及び標的化薬剤の化学的性質(標的化薬剤が、例えば、抗体又はその断片又はキメラ抗原受容体を発現する細胞であるかどうかに依存する)、医薬組成物の特定の意図された使用及び投与経路に依存し得る。
【0053】
本発明による好ましい実施形態では、組成物又は製剤はヒトへの投与に適しており、製剤は無菌且つ/又は非発熱性であることが好ましい。
【0054】
好ましい実施形態は、FLT3-ITD+AMLを治療するための、FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用である。
【0055】
別の有用な実施形態は、FLT3突然変異AML(FLT3-ITD以外のあらゆる突然変異)又はFLT3野生型AMLを治療するための、FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用である。
【0056】
別の有用な実施形態は、FLT3-ITD+AML、FLT3突然変異AML又はFLT3野生型AMLを治療するための、FLT3 CAR-T細胞とミドスタウリン、キザルチニブ、又は任意の他のFLT3阻害剤の併用である。
【0057】
別の有用な実施形態は、LT3-ITD+AML、FLT3突然変異AML又はFLT3野生型AMLを治療するための、FLT3 CAR-T細胞と1つ又はいくつかのFLT3阻害剤の併用である。
【0058】
別の有用な実施形態は、LT3-ITD+AML、FLT3突然変異AML又はFLT3野生型AMLを治療するための、FLT3 CAR-T細胞と1つ又はいくつかの多標的キナーゼ阻害剤の併用である。
【0059】
好ましい実施形態は、FLT3-ITD+AMLを治療するための、自己FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用である。
【0060】
別の有用な実施形態は、FLT3-ITD+AMLを治療するための、同種異系FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用である。
【0061】
好ましい実施形態では、FLT3-ITD+AMLを治療するために、同種造血幹細胞移植の前に自己FLT3 CAR-T細胞をクレノラニブと併用投与する。
【0062】
別の有用な実施形態では、FLT3-ITD+AMLを治療するために、同種造血幹細胞移植の後に自己FLT3 CAR-T細胞をクレノラニブと併用投与する。
【0063】
有用な実施形態では、FLT3-ITD+AMLを治療するために、同種造血幹細胞移植の前に同種異系FLT3 CAR-T細胞をクレノラニブと併用投与する。
【0064】
別の有用な実施形態では、FLT3-ITD+AMLを治療するために、同種造血幹細胞移植の後に同種異系FLT3 CAR-T細胞をクレノラニブと併用投与する。
【0065】
好ましい実施形態では、FLT3-ITD+AMLを治療するために、CD8+及びCD4+FLT3 CAR-T細胞をクレノラニブと併用投与する。
【0066】
別の有用な実施形態では、FLT3-ITD+AMLを治療するために、CD8+FLT3 CAR-T細胞のみをクレノラニブと併用投与する。
【0067】
別の有用な実施形態では、FLT3-ITD+AMLを治療するために、CD4+FLT3 CAR-T細胞のみをクレノラニブと併用投与する。
【0068】
他の有用な実施形態では、FLT3-ITD+AMLを治療するために、FLT3 CARを用いて改変された任意の他のT細胞(これだけに限定されないが、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、メモリーT幹細胞、ガンマデルタT細胞、サイトカイン誘導型キラー細胞、調節性T細胞を含む)、NK細胞又はB細胞をクレノラニブと併用する。
【0069】
好ましい実施形態では、FLT3 CARを安定な遺伝子移入によりCD8+T細胞及びCD4+T細胞において発現させ、ここで、安定な遺伝子移入は、ウイルスベクター又はウイルスによらない遺伝子移入によって実現される。
【0070】
別の好ましい実施形態では、FLT3 CARを一過性の遺伝子移入又はFLT3 CARタンパク質の一過性発現をもたらす任意の他の手段により、CD8+T細胞及びCD4+T細胞において発現させる。
【0071】
他の好ましい実施形態は、FLT3-ITD+AMLを治療するための、FLT3特異的抗体(これだけに限定されないが、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、抗体-薬物コンジュゲートを含む)とクレノラニブの併用を含む。
【0072】
別の有用な実施形態は、急性リンパ芽球性白血病を治療するための、FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用である。別の有用な実施形態は、混合型白血病、骨髄異形成症候群、又はFLT3を発現する任意の他のがんを治療するための、FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用である。
【0073】
別の有用な実施形態は、白血病幹/始原細胞を排除するための、FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用である。
【0074】
別の有用な実施形態は、造血幹細胞、造血前駆細胞、NK細胞、樹状細胞を排除するための、FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用である。
【0075】
本発明によるFLT3標的化薬剤及びそれらの使用
本発明によるFLT3標的化薬剤は、その標的に特異的に結合することができる任意の薬剤であり得、ここで、標的は、FLT3、好ましくは、細胞表面上にFLT3を発現する細胞であり、FLT3標的化薬剤により、他の細胞型に影響を及ぼすリスクを伴わずに、FLT3を発現する細胞型の標的化治療が促進される。
FLT3標的化薬剤の非限定的な例は、FLT3に特異的に結合することができ、したがって、FLT3を発現する急性骨髄性腫瘍細胞を標的化することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞(FLT3 CAR-T細胞)である。
【0076】
標的化薬剤がFLT3標的化薬剤であるか否かは、好ましい実施形態において詳述されている本明細書に開示される方法を使用することによって決定することができる。好ましい実施形態による好ましい方法は、実施例1及び2において使用されている方法である。
【0077】
一実施形態では、FLT3標的化薬剤は、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞(FLT3 CAR-T細胞)である。
【0078】
別の実施形態では、FLT3標的化薬剤は、FLT3 CAR-T細胞であり、前記FLT3 CAR-T細胞が、がんを治療するため、好ましくは白血病又はリンパ腫を治療するため、より好ましくは白血病を治療するため、最も好ましくは急性骨髄性白血病を治療するための方法において、それを必要とする患者に投与される。
【0079】
好ましい実施形態では、FLT3標的化薬剤は、FLT3 CAR-T細胞であり、前記FLT3 CAR-T細胞が、急性骨髄性白血病を治療するための方法であって、急性骨髄性白血病腫瘍細胞がFLT3、好ましくは突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現するものである方法において、それを必要とする患者に投与される。
【0080】
より好ましい実施形態では、FLT3標的化薬剤は、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞であって、前記キメラ抗原受容体が、抗原結合性ドメインが配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含むキメラ抗原受容体であるT細胞であり、急性骨髄性白血病を治療するための方法であって、急性骨髄性白血病腫瘍細胞がFLT3、好ましくは突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現するものである方法において、それを必要とする患者に投与される。
【0081】
より好ましい実施形態では、FLT3標的化薬剤は、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞であって、前記キメラ抗原受容体が、抗原結合性ドメインが配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含むキメラ抗原受容体であるT細胞であり、急性骨髄性白血病を治療するための方法であって、急性骨髄性白血病腫瘍細胞がFLT3、好ましくは突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現するものである方法において、それを必要とする患者に投与される。
【0082】
より好ましい実施形態では、FLT3標的化薬剤は、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞であって、前記キメラ抗原受容体が、配列番号2のアミノ酸配列又はそれと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である配列を含むキメラ抗原受容体であるT細胞であり、急性骨髄性白血病を治療するための方法であって、急性骨髄性白血病腫瘍細胞がFLT3、好ましくは突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現するものである方法において、それを必要とする患者に投与される。
【0083】
より好ましい実施形態では、FLT3標的化薬剤は、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞であって、前記キメラ抗原受容体が、配列番号4のアミノ酸配列又はそれと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である配列を含むキメラ抗原受容体であるT細胞であり、急性骨髄性白血病を治療するための方法であって、急性骨髄性白血病腫瘍細胞がFLT3、好ましくは突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現するものである方法において、それを必要とする患者に投与される。
【0084】
更に好ましい実施形態では、FLT3標的化薬剤は、FLT3に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞、好ましくはCD8+T細胞又はCD4+T細胞であって、前記キメラ抗原受容体が、配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号4を含むキメラ抗原受容体であるT細胞、好ましくはCD8+T細胞又はCD4+T細胞であり、急性骨髄性白血病を治療するための方法であって、急性骨髄性白血病腫瘍細胞がFLT3、好ましくは突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現するものである方法において、それを必要とする患者に投与される。
【0085】
一実施形態では、キナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、好ましくは受容体チロシンキナーゼ阻害剤、より好ましくはFLT3阻害剤である。本発明によるFLT3阻害剤は、I型FLT3阻害剤又はII型FLT3阻害剤であり得る。好ましい実施形態では、FLT3阻害剤は、II型FLT3阻害剤、好ましくはミドスタウリン又はキザルチニブである。より好ましい実施形態では、FLT3阻害剤は、I型FLT3阻害剤、好ましくはクレノラニブである。
【0086】
好ましい実施形態では、キナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤であり、急性骨髄性白血病を治療するための方法であって、急性骨髄性白血病細胞が、FLT3、好ましくは突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現するものである方法において、それを必要とする患者に投与される。
【0087】
より好ましい実施形態では、キナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤、好ましくはミドスタウリン又はキザルチニブ、より好ましくはクレノラニブであり、急性骨髄性白血病を治療するための方法であって、急性骨髄性白血病細胞が、FLT3、好ましくは突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現するものであり、前記FLT3阻害剤が投与されるとFLT3の発現が上方制御される方法において、それを必要とする患者に投与される。
【0088】
治療方法及びこれらの方法において使用するための製品
本発明は、FLT3標的化薬剤及びキナーゼ阻害剤及び上記の急性骨髄性白血病におけるそれらの使用に関する。
【0089】
これらのFLT3標的化薬剤及びそれらの使用に加えて、且つそれらに従って、本発明は、対応する治療方法にも関する。
【0090】
一実施形態では、本発明は、急性骨髄性白血病を治療するための方法において患者にFLT3標的化薬剤をキナーゼ阻害剤と併用投与する方法に関する。
【0091】
より好ましい実施形態では、本発明は、それを必要とするがんを有する患者にFLT3標的化薬剤をキナーゼ阻害剤と併用投与することに関し、ここで、FLT3標的化薬剤は、FLT3(FLT3 CAR-T細胞)に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞であり、キメラ抗原受容体は、配列番号5又は配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号6又は配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、キナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤、好ましくはキザルチニブ又はミドスタウリン、より好ましくはクレノラニブであり、がんは、急性骨髄性白血病であり、急性骨髄性白血病腫瘍細胞は、FLT3、好ましくは突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現する。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明は、それを必要とするがんを有する患者にFLT3標的化薬剤をキナーゼ阻害剤と併用投与することに関し、ここで、FLT3標的化薬剤は、FLT3(FLT3 CAR-T細胞)に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞であり、キナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤であり、がんは、急性骨髄性白血病であり、急性骨髄性白血病腫瘍細胞は、FLT3を発現する。
【0093】
より好ましい実施形態では、本発明は、それを必要とするがんを有する患者にFLT3標的化薬剤をキナーゼ阻害剤と併用投与することに関し、ここで、FLT3標的化薬剤は、FLT3(FLT3 CAR-T細胞)に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞であり、キメラ抗原受容体は、配列番号5又は配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号6又は配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、キナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤、好ましくはキザルチニブ又はミドスタウリン、より好ましくはクレノラニブであり、がんは、急性骨髄性白血病であり、急性骨髄性白血病腫瘍細胞は、FLT3を発現し、腫瘍細胞は、突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現することが好ましい。
【0094】
更に好ましい実施形態では、本発明は、それを必要とするがんを有する患者にキナーゼ阻害剤を投与することに関し、ここで、キナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤、好ましくはキザルチニブ又はミドスタウリン、より好ましくはクレノラニブであり、がんは、急性骨髄性白血病であり、急性骨髄性白血病腫瘍細胞は、FLT3、好ましくは突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現し、FLT3阻害剤は、FLT3標的化薬剤の投与の前、それと同時に、又はその後に投与され、それにより、腫瘍細胞表面上のFLT3発現の上方制御及び抗原密度の増大が引き起こされ、前記抗原は、FLT3細胞外ドメインの一部である。この実施形態では、FLT3阻害剤の投与の前、それと同時に、又はその後に投与されるFLT3標的化薬剤は、FLT3(FLT3 CAR-T細胞)に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するT細胞であり、キメラ抗原受容体は、配列番号5又は配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号6又は配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含むことが好ましく、FLT3 CAR-T細胞が結合する抗原は、FLT3阻害剤により急性骨髄性白血病腫瘍細胞における上方制御及び抗原密度の増大が引き起こされるFLT3細胞外ドメインの一部である。したがって、この実施形態によると、急性骨髄性腫瘍細胞の細胞表面上のFLT3の上方制御及びFLT3細胞外ドメインの抗原密度の増大を引き起こすFLT3阻害剤と、前記FLT3細胞外ドメインに結合するFLT3 CAR-T細胞であるFLT3標的化薬剤の併用投与により、FLT3阻害剤又はFLT3 CAR-T細胞のいずれかを単独で用いる単剤療法と比較して急性骨髄性白血病療法の改善を導くことができる。したがって、この実施形態によると、FLT3阻害剤とFLT3 CAR-T細胞であるFLT3標的化薬剤の併用投与により、急性骨髄性白血病の治療に改善をもたらす驚くべき予想外の相乗効果が実現される。
【0095】
別の実施形態では、本発明は、急性骨髄性白血病を有する患者にFLT3標的化薬剤をキナーゼ阻害剤と併用投与することに関し、FLT3標的化薬剤は、FLT3に結合することができる抗体又はその断片であり、キナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤であり、急性骨髄性白血病腫瘍細胞は、FLT3を発現する。
【0096】
より好ましい実施形態では、本発明は、急性骨髄性白血病を有する患者にFLT3標的化薬剤をキナーゼ阻害剤と併用投与することに関し、FLT3標的化薬剤は、抗体又はその断片であり、抗体又はその断片は、配列番号5又は配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号6又は配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、キナーゼ阻害剤は、FLT3阻害剤、好ましくはキザルチニブ又はミドスタウリン、より好ましくはクレノラニブであり、急性骨髄性白血病腫瘍細胞は、FLT3を発現し、好ましくは、腫瘍細胞は、突然変異FLT3、より好ましくはFLT3-ITDを発現する。
【0097】
本発明によるFLT3標的化薬剤及びそれらとキナーゼ阻害剤の併用
本発明は、ヒト患者におけるがんを治療する方法であって、FLT3標的化薬剤とキナーゼ阻害剤をヒト患者に併用投与する方法における使用のためのFLT3標的化薬剤とキナーゼ阻害剤の組合せを包含する。
【0098】
配列
本出願で言及されるアミノ酸配列は以下の通りである(N末端からC末端への順;1文字アミノ酸コードで表されている):
配列番号2(4G8 FLT3 CARの配列):
QVQLQQPGAELVKPGASLKLSCKSSGYTFTSYWMHWVRQRPGHGLEWIGEIDPSDSYKDYNQKFKDKATLTVDRSSNTAYMHLSSLTSDDSAVYYCARAITTTPFDFWGQGTTLTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIVLTQSPATLSVTPGDSVSLSCRASQSISNNLHWYQQKSHESPRLLIKYASQSISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVETEDFGVYFCQQSNTWPYTFGGGTKLEIKRESKYGPPCPPCPMFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRGGHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号4(BV10 FLT3 CARの配列):
QVQLKQSGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGLHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGSTDYNAAFISRLSISKDNSKSQVFFKMNSLQADDTAIYYCARKGGIYYANHYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYMAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDHSYPLTFGAGTKLELKRESKYGPPCPPCPMFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRGGHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号5(4G8重鎖可変ドメイン(VH)):
QVQLQQPGAELVKPGASLKLSCKSSGYTFTSYWMHWVRQRPGHGLEWIGEIDPSDSYKDYNQKFKDKATLTVDRSSNTAYMHLSSLTSDDSAVYYCARAITTTPFDFWGQGTTLTVSS
配列番号6(4G8軽鎖可変ドメイン(VH)):
DIVLTQSPATLSVTPGDSVSLSCRASQSISNNLHWYQQKSHESPRLLIKYASQSISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVETEDFGVYFCQQSNTWPYTFGGGTKLEIKR
配列番号7(BV10重鎖可変ドメイン(VH)):
QVQLKQSGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGLHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGSTDYNAAFISRLSISKDNSKSQVFFKMNSLQADDTAIYYCARKGGIYYANHYYAMDYWGQGTSVTVSS
配列番号8(BV10軽鎖可変ドメイン(VH)):
DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYMAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDHSYPLTFGAGTKLELKR
配列番号9(GMCSFシグナルペプチド):
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP
配列番号10(4(GS)×3リンカー):
GGGGSGGGGSGGGGS
配列番号11(IgG4ヒンジドメイン):
ESKYGPPCPPCP
配列番号12(CD28膜貫通ドメイン):
MFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV
配列番号13(CD28共刺激ドメイン):
RSKRSRGGHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS
配列番号14(CD3zシグナル伝達ドメイン):
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号15(T2Aリボソームスキッピング配列):
LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR
配列番号16(EGFRt):
RKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPSIATGMVGALLLLLVVALGIGLFM
【0099】
本出願で言及される核酸配列は以下の通りである(5'から3'への順; 標準の核酸コードに従って表されている):
配列番号1(4G8 FLT3 CARの配列):
CAGGTGCAGCTGCAGCAGCCTGGCGCCGAACTCGTGAAACCTGGCGCCTCTCTGAAGCTGAGCTGCAAGAGCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGCGCCAGAGGCCTGGCCACGGACTGGAATGGATCGGCGAGATCGACCCCAGCGACAGCTACAAGGACTACAACCAGAAGTTCAAGGACAAGGCCACCCTGACCGTGGACAGAAGCAGCAACACCGCCTACATGCACCTGTCCAGCCTGACCAGCGACGACAGCGCCGTGTACTACTGTGCCAGAGCCATCACAACCACCCCCTTCGATTTCTGGGGCCAGGGCACAACCCTGACAGTGTCTAGCGGAGGCGGAGGCTCCGGAGGGGGAGGATCTGGGGGAGGCGGAAGCGATATTGTGCTGACCCAGAGCCCTGCCACACTGAGCGTGACACCAGGCGATAGCGTGTCCCTGTCCTGCAGAGCCAGCCAGAGCATCTCCAACAACCTGCACTGGTATCAGCAGAAGTCCCACGAGAGCCCCAGACTGCTGATTAAGTACGCCAGCCAGTCCATCAGCGGCATCCCCAGCAGATTTTCCGGCAGCGGCTCCGGCACCGACTTCACCCTGAGCATCAACAGCGTGGAAACCGAGGACTTCGGCGTGTACTTCTGCCAGCAGAGCAACACCTGGCCTTACACCTTCGGCGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAGAGAGAGTCTAAGTACGGACCGCCCTGCCCCCCTTGCCCTATGTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTCGGAGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTCACCGTGGCCTTCATCATCTTTTGGGTCCGCAGCAAGCGGAGCAGAGGCGGCCACAGCGACTACATGAACATGACCCCTAGACGGCCTGGCCCCACCAGAAAGCACTACCAGCCCTACGCCCCTCCCCGGGACTTTGCCGCCTACAGAAGCCGGGTGAAGTTCAGCAGAAGCGCCGACGCCCCTGCCTACCAGCAGGGCCAGAATCAGCTGTACAACGAGCTGAACCTGGGCAGAAGGGAAGAGTACGACGTCCTGGATAAGCGGAGAGGCCGGGACCCTGAGATGGGCGGCAAGCCTCGGCGGAAGAACCCCCAGGAAGGCCTGTATAACGAACTGCAGAAAGACAAGATGGCCGAGGCCTACAGCGAGATCGGCATGAAGGGCGAGCGGAGGCGGGGCAAGGGCCACGACGGCCTGTATCAGGGCCTGTCCACCGCCACCAAGGATACCTACGACGCCCTGCACATGCAGGCCCTGCCCCCAAGG
配列番号3(BV10 FLT3 CARの配列):
CAGGTGCAGCTGAAGCAGAGCGGCCCTGGACTGGTGCAGCCTAGCCAGAGCCTGAGCATCACCTGTACCGTGTCCGGCTTCAGCCTGACCAACTACGGCCTGCATTGGGTGCGCCAGAGCCCTGGCAAAGGCCTGGAATGGCTGGGAGTGATTTGGAGCGGCGGCAGCACCGACTACAACGCCGCCTTCATCAGCAGACTGAGCATCTCCAAGGACAACAGCAAGAGCCAGGTGTTCTTCAAGATGAACTCCCTGCAGGCCGACGACACCGCCATCTACTACTGCGCCAGAAAGGGCGGCATCTACTATGCCAACCACTACTACGCTATGGACTACTGGGGCCAGGGCACCAGCGTGACAGTGTCTAGCGGAGGCGGAGGCTCCGGAGGGGGAGGATCTGGGGGAGGCGGATCTGACATCGTGATGACCCAGAGCCCCAGCAGCCTGTCTGTGTCTGCCGGCGAGAAAGTGACCATGAGCTGCAAGAGCAGCCAGTCCCTGCTGAACAGCGGCAACCAGAAAAACTACATGGCCTGGTATCAGCAGAAGCCCGGCCAGCCCCCTAAGCTGCTGATCTACGGCGCCAGCACCAGAGAAAGCGGCGTGCCCGATAGATTCACCGGCAGCGGCTCTGGCACCGACTTTACCCTGACCATCAGCAGCGTGCAGGCTGAGGACCTGGCCGTGTACTACTGCCAGAACGACCACAGCTACCCCCTGACCTTTGGAGCCGGCACCAAGCTGGAACTGAAGAGAGAGTCTAAGTACGGACCGCCCTGCCCCCCTTGCCCTATGTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTCGGAGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTCACCGTGGCCTTCATCATCTTTTGGGTCCGCAGCAAGCGGAGCAGAGGCGGCCACAGCGACTACATGAACATGACCCCTAGACGGCCTGGCCCCACCAGAAAGCACTACCAGCCCTACGCCCCTCCCCGGGACTTTGCCGCCTACAGAAGCCGGGTGAAGTTCAGCAGAAGCGCCGACGCCCCTGCCTACCAGCAGGGCCAGAATCAGCTGTACAACGAGCTGAACCTGGGCAGAAGGGAAGAGTACGACGTCCTGGATAAGCGGAGAGGCCGGGACCCTGAGATGGGCGGCAAGCCTCGGCGGAAGAACCCCCAGGAAGGCCTGTATAACGAACTGCAGAAAGACAAGATGGCCGAGGCCTACAGCGAGATCGGCATGAAGGGCGAGCGGAGGCGGGGCAAGGGCCACGACGGCCTGTATCAGGGCCTGTCCACCGCCACCAAGGATACCTACGACGCCCTGCACATGCAGGCCCTGCCCCCAAGG
【実施例0100】
本発明の追加的な態様及び詳細を以下の非限定的な実施例によって例示する。
【0101】
(実施例1)
材料及び方法
ヒト対象
健康なドナー及び成人AML患者から、参加施設のInstitutional Review Boardにより承認された研究プロトコールへの参加のための書面のインフォームドコンセントを得た後に末梢血を得た。
【0102】
初代AML細胞
初代AML細胞を、10%ヒト血清、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、並びにIL-4(1000IU/mL)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(10ng/mL)、幹細胞因子(5ng/mL)及び腫瘍壊死因子(TNF)-α(10ng/mL)を含むサイトカインカクテルを補充したRPMI-1640中で維持した。
【0103】
腫瘍細胞株
ヒト白血病細胞株MOLM-13(ACC 554)、THP-1(ACC 16)、MV4;11(ACC 102)、及びK562(ACC 10)をDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen、Braunschweig、Germany)から購入し、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMのグルタミン及び100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI-1640中で培養した。全ての細胞株に、フローサイトメトリー(GFP)及びマウスにおける生物発光イメージング(ffLuc)、及び生物発光に基づく細胞傷害性アッセイによる検出を可能にするために、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)_緑色蛍光タンパク質(GFP)導入遺伝子をコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。全長ヒトFLT3遺伝子を用いたレトロウイルスによる形質導入によってK562/FLT3を生成した。
【0104】
FLT3発現のフローサイトメトリー解析
細胞表面FLT3の発現(CD135)を、コンジュゲートしたマウス抗ヒトFLT3 mAb(クローン4G8、BD Pharmagin、BD Biosciences社、Germany)及びマウスIgG1アイソタイプ対照(BD Pharmagin)を使用して分析した。簡単に述べると、細胞1×106個を洗浄し、PBS/0.5%ウシ胎仔血清100μLに再懸濁させ、抗FLT3 mAb又はアイソタイプ5μLを用い、4℃で30分にわたって染色した。
【0105】
CAR構築
FLT3特異的4G8 mAb12のV
Hセグメント及びV
Lセグメントを含むコドン最適化された標的化ドメインを合成し(GeneArt、ThermoFisher社、Regensburg、Germany)、短いIgG4-Fcヒンジスペーサー、CD28膜貫通部分及び共刺激部分並びにCD3zを含むCAR骨格と、T2Aエレメント及びEGFRt形質導入マーカーとインフレームで融合した(
図1)
32~34。導入遺伝子全体をレンチウイルスベクターepHIV7にコードさせ、EF1/HTLVハイブリッドプロモーターの制御下で発現させた
34、35。同様に、CD19に特異的な標的化ドメイン(クローンFMC63)及びCD123に特異的な標的化ドメイン(クローン32716)を使用して、それぞれCD19 CAR及びCD123 CARを生成した
32、33、36、37。
【0106】
CAR改変T細胞のEGFR調製
CD3/28ビーズ(ThermoFisher社)で活性化したCD4+T細胞及びCD8+T細胞へのレンチウイルスによる遺伝子導入をビーズ刺激後1日目に感染効率(MOI)5で実施した。T細胞を、10%ヒト血清、グルタミン、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン及び50U/mLの組換えヒトインターロイキン(IL)-2(Proleukine、Novartis社、Basel、Switzerland)を補充したRPMI-1640中で培養した32。CARが形質導入されたT細胞を、ビオチン化抗EGFR mAb(ImClone Systems Inc.社)及び抗ビオチンビーズ(Miltenyi社)を使用して富化した後、迅速な増大プロトコール38を使用して、又はCD19 CAR-T細胞に関しては照射(80 Gy)CD19+フィーダー細胞を用いた抗原特異的刺激を使用して38増大させた。
【0107】
T細胞のフローサイトメトリー解析
初代AML及び末梢血単核細胞(PBMC)を以下のコンジュゲートしたmAbの1つ又は複数で染色した: CD3、CD19、CD34、CD38、CD33、CD45、CD123、CD135及び対応するアイソタイプ対照(Miltenyi社、Bergisch-Gladbach、Germany/BD、Heidelberg、Germany/Biolegend社、London、UK)。CARで改変されたT細胞及び形質導入されていないT細胞を生存/死細胞識別のために以下のコンジュゲートしたmAbの1つ又は複数で染色した: CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、CD62L、及び7-AAD(Miltenyi社/BD/Biolegend社)。CARが形質導入された(すなわち、EGFRt+)T細胞を、社内でビオチン化された抗EGFR抗体(EZ-Link(商標)Sulfo-NHS-SS-Biotin、Thermofisher Scientific社、IL、製造者の指示に従って)及びストレプトアビジン-PEで染色することによって検出した。フローサイトメトリー解析(flow analysis)をFACSCanto(BD社)で行い、FlowJoソフトウェアv9.0.2(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを解析した。
【0108】
in vitroにおけるCAR-T細胞機能の分析
機能分析を以前に記載されている通り実施した32、33、39~41。簡単に述べると、ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)を発現する標的細胞を、ウェル当たり細胞5×103個で、エフェクターT細胞と一緒に、種々のエフェクター対標的(E:T)比で、3連でインキュベートした。4時間インキュベートした後、ルシフェリン基質を共培養物に添加し、標的細胞及びT細胞を含有するウェル中の発光シグナルの低減を照度計(Tecan社、Mannedorf、Switzerland)を使用して測定し、標的細胞単独と比較した。特異的な溶解を、標準の式を使用して算出した42。サイトカイン分泌を分析するために、T細胞50×103個を3連のウェルに標的細胞と2:1の比でプレーティングし、24時間インキュベートした後に取り出した上清中のIFN-γ及びIL-2産生をELISA(Biolegend社)によって測定した。増殖を測定するために、T細胞50×103個を0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、ThermoFisher社)で標識し、洗浄し、3連のウェル中、外因性サイトカインを伴わない培地に標的細胞と2:1の比でプレーティングした。72時間インキュベートした後、細胞を、抗CD8/CD4 mAb及び7-AADで標識して死細胞を分析から排除した。試料をフローサイトメトリーによって解析し、生存T細胞の分裂をCFSE希釈によって評価した。CARで改変されたT細胞及び対照T細胞の初代AML細胞に対する細胞溶解活性をFACSに基づく細胞傷害性アッセイで分析した。T細胞及びAML細胞を、96ウェルプレートに、標的細胞をウェル当たり10×103個とし、20:1から1:1までにわたるエフェクター:標的(E:T)比で播種した。4~24時間後、培養物を吸引し、生存細胞と死細胞を識別するために7-AADを用いて、及びT細胞とAML細胞を区別するために抗CD3/抗CD33/抗CD45 mAbを用いて染色した。残留する生存AML細胞の数を定量化するために、123-counting beads(e-bioscience社、San Diego、CA)製造者の指示に従って使用した。フローサイトメトリー解析(flow analysis)をFACS Canto II(BD社)で行い、FlowJoソフトウェア(Treestar社)を使用してデータを解析した。
【0109】
in vivo実験
実験は全て参加施設のInstitutional Animal Care and Use Committeeにより承認されたものであった。NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウス(雌、6~8週齢)をCharles River社から購入した又は社内で飼育した。マウスに、0日目にffluc_GFP+MOLM-13 AML細胞1×106個を尾静脈注射によって接種し、7日目にT細胞5×106個(PBS/0.5%FCS 200μL中)を尾静脈注射によって単回投薬した。クレノラニブ[15mg/kg; 200μLの30%グリセロールホルマール(Sigma Aldrich社、Munich、Germany)]を連続した3週間にわたって月曜~金曜に腹腔内(i.p.)投与した。D-ルシフェリン基質(体重1g当たり0.3mg)(Biosynth社、Staad、Switzerland)をi.p.投与した後、AML増悪/退縮をIVIS Lumina imaging system(Perkin Elmer社、Waltham、Massachusetts)を使用して段階的な生物発光イメージングによって評価した。Living Imageソフトウェア(Perkin Elmer社)を使用してデータを解析した。
【0110】
MOLM-13 AML細胞のFLT3阻害剤による治療
MOLM-13を、10%ウシ胎仔血清、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、及び10nMのクレノラニブ又は1nMのキザルチニブ又は10nMのミドスタウリンを補充したRPMI-1640培地中で維持した。完全な培地交換を7日毎に行い、MOLM-13細胞を培地1mL当たり1×106個に調整し、この細胞懸濁液2mLを48ウェルプレート(Costar社、Corning、NJ)のウェル毎にプレーティングした。10nMのミドスタウリンと一緒に2~3週間培養した後、MOLM-13細胞を、次の8~10週間にわたり、ミドスタウリンに、ミドスタウリンの濃度を50nMのミドスタウリンに達するまで指数関数的に上昇させながら曝露させた。
【0111】
医薬品及び試薬
クレノラニブ、キザルチニブ(SelleckChemicals社、Houston、TX)、ミドスタウリン(Novartis社、Basel、Switzerland/SelleckChemicals社、Houston、TX/Sigma-Aldrich社、Steinheim、Germany)をジメチルスルホキシド(DMSO)中に再構成した後、培地又は30%グリセロールホルマール(Sigma Aldrich社、Munich、Germany)中に希釈し、それぞれin vitro実験又はin vivo実験に使用した。
【0112】
統計解析
Prismソフトウェアv6.07(GraphPad社)を使用して統計解析を実施した。in vitro実験で得られたデータの解析には対応のないスチューデントのt検定を使用した。in vivo実験において観察された生存の差異を解析するためにログランク(Mantel-Cox)検定を実施した。p値<.05の差異を統計的に有意であるとみなした。
【0113】
結果:
FLT3 CAR-T細胞はFLT3野生型細胞及びFLT3-ITD
+AML細胞を排除する
FLT3特異的mAb 4G8に由来する標的化ドメインを含むCAR導入遺伝子を構築し、健康なドナー及びAML患者(n=6)のCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞への遺伝子導入を実施した。FLT3 CARが形質導入されたT細胞を、EGFRt形質導入マーカーを使用して>90%の純度まで富化させた後、増大及び機能試験を行った(
図2)。まず、CD4
+FLT3 CAR-T細胞及びCD8
+FLT3 CAR-T細胞によるFLT3表面タンパク質の特異的認識を、ネイティブK562(表現型:FLT3
-)及び野生型FLTを安定に発現するように形質導入されたK562標的細胞(K562/FLT3)を使用して確認した(
図3)。次いで、AML細胞株THP-1(FLT3野生型)、MOLM-13(FLT3-ITD
+/-)及びMV4;11(FLT3-ITD
+/+)を本発明らの解析に含め、細胞株のそれぞれに対して、多数のエフェクター対標的細胞比(10:1~2.5:1にわたるE:T)でCD8
+FLT3 CAR-T細胞の特異的な高レベルの細胞溶解活性が確認された(
図4A、B)。更に、CD4
+FLT3 CAR-T細胞及びCD8
+FLT3 CAR-T細胞はIFN-γ及びIL-2を含めたエフェクターサイトカインを産生し、AML細胞株のそれぞれによる刺激後に生産的に増殖したが、同じそれぞれのドナーに由来する対照T細胞ではバックグラウンド 反応性しか示されなかった(
図5、6)。FLT3 CARはFLT3の細胞外ドメイン内のエピトープに結合するので、AML細胞の認識は細胞内チロシンキナーゼドメインの突然変異の状態とは無関係であり、そうではなく、平均蛍光強度(MFI)によって評価される標的細胞上のFLT3表面タンパク質の抗原密度と相関した(THP-1 ~ MOLM-13>MV4;11)(
図4A)。
【0114】
患者由来のFLT3 CAR-T細胞のFLT3-ITD
+初代AML細胞に対する強力な活性も確認され、強力な細胞溶解活性により、4時間以内の短さで>80%のAML芽細胞の根絶が導かれた(20:1~1:1にわたるE:T)(
図4A、B)。特に、初代AML芽細胞に対するFLT3 CAR-T細胞の抗白血病活性は、代替AML標的抗原CD123に特異的な類似設計されたCARを発現するT細胞と同等であった(
図4B)。
【0115】
FLT3 CAR-T細胞は異種移植モデルにおいてin vivoで長続きするAMLの寛解を誘導する
免疫不全NSGマウスにおけるAMLの異種移植モデルにおいてin vivoでのFLT3 CAR-T細胞の機能を分析するための実験を実施した。ffLuc_GFPを形質導入されたMOLM-13 AML細胞の接種後、マウスは末梢血中を循環する白血病細胞、並びに骨髄及び脾臓への浸潤を伴う全身性白血病を急速に発症した(
図7A)。白血病を有するマウスを、細胞産物が同等の割合のCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞からなる、FLT3 CARで改変されたT細胞又は形質導入されていないT細胞5×10
6個の単回投薬で処置したか、又は処置しなかった。FLT3 CAR-T細胞の生着を示した全てのマウスで強力な抗白血病効果が確認された。これらのマウスでは、FLT3 CAR-T細胞の数が抗白血病応答中に増加し、多数の時点で末梢血において;並びに実験の最後に骨髄及び脾臓において容易に検出することができ、これにより、養子移入後3週間を超える持続性が確認された(
図7B、8A)。段階的な生物発光イメージングにより、FLT3 CAR-T細胞が生着したマウスの全てにおいて強力な抗白血病活性が確認されたが、CAR-T細胞が生着できなかったマウス、対照T細胞で処置されたマウス、及び無処置のマウスでは迅速な白血病の増悪が示された(
図7A、8B)。さらなるフローサイトメトリー解析により、骨髄及び脾臓由来のAML細胞の持続的な完全寛解が確認された(
図9A)。カプラン・マイヤー分析により、FLT3 CAR-T細胞を用いた処置後に対照T細胞及び無処置と比較して有意に長い全生存が示された(p<.05)(
図9B)。FLT3 CAR-T細胞療法に応答した全てのマウスでは、NSGマウスモデルにおけるCAR-T細胞療法に関する以前の報告
37、43と一致して、骨髄外後期疾患の再発も観察されたことに注目すべきである(
図7A)。骨髄外後期疾患の顕在化に由来するAML細胞におけるFLT3の発現はネイティブMOLM-13細胞と同様のレベルで検出可能であった、すなわち、抗原欠損は生じなかった。全体として、本発明らのデータから、in vitro及びin vivoにおいてFLT3 CAR-T細胞によりFLT3野生型細胞及びFLT3-ITD
+AML細胞株及び初代AML細胞に対する強力な抗白血病活性が付与されることが示される。
【0116】
ミドスタウリンはFLT3-ITD
+AML細胞におけるFLT3表面タンパク質発現の増大を誘導する
FLT3-ITD
+AMLを有する患者における臨床試験からの知見は、FLT3阻害剤の効果を打ち消すためのAML芽細胞の代償機構としてのFLT3の上方制御であり、これは、本発明者らが、FLT3 CAR-T細胞の抗白血病有効性を増強するために活用することができるという仮説を立てた機構である
24、25。ネイティブMOLM-13 AML細胞(MOLM-13
Native)(FLT3-ITD
+/-)を、10nMの用量を使用したFLT3阻害剤ミドスタウリン(MOLM-13
mido)の存在下で培養した。薬物への曝露の2~3週間後にMOLM-13
midoにおけるFLT3発現をフローサイトメトリーによって分析し、MFIによって評価される通りMOLM-13
Native細胞と比較して有意に高いレベルのFLT3表面タンパク質が実際に観察された(n=2の実験、p<.05)(
図10A)。更に、次の8~10週間でミドスタウリン濃度を10nMから50nMまでゆっくりと上昇させ、FLT3発現のさらなる増大が観察された(
図10B)。興味深いことに、ミドスタウリンの停止により、2日以内にMOLM-13細胞におけるFLT3発現のベースライン又はベースラインをわずかに下回るレベルまでの低下が導かれたが、薬物への再曝露で再び上昇した(
図10C)。ミドスタウリンへの一次曝露後、およそ2週間にわたり、MOLM-13
Native細胞と比較してMOLM-13
mido細胞の中等度の細胞傷害効果及びより遅い増大が観察された。しかし、培養培地を補充し続けたにもかかわらず、ミドスタウリンの細胞傷害効果はその後なくなり、MOLM-13
mido細胞の増大が加速され、これにより、これらの細胞が獲得耐性を有していたことが示される。
【0117】
ミドスタウリンに曝露した際のFLT3発現の増大はMV4;11 AML細胞(FLT3-ITD
+/+)でも観察されたが、野生型FLT3を発現するいくつかの細胞株、すなわち、THP-1 AML細胞、K562赤骨髄性白血病では起こらず、これにより、ミドスタウリン処理に応答したFLT3発現の上方制御がFLT3-ITD
+AML細胞において特異的に起こることが示唆される(
図10A、B)。FLT3とは対照的に、MOLM-13におけるCD33発現はわずかに低減し、一方、CD123発現には有意な低減が観察された(
図11)。
【0118】
AML MOLM-13
mido細胞における高FLT3発現によりin vitroにおけるFLT3 CAR-T細胞の抗白血病反応性の増強が導かれる
MOLM-13
mido細胞における高FLT3発現によりFLT3 CAR-T細胞による認識が強化されると予測した。ミドスタウリンへの曝露及び曝露停止の際にFLT3発現が迅速に調節されるので、相乗的な抗白血病効果を最大にするためにFLT3 CAR-T細胞を薬物と同時に投与することが最良であると思われる。TKIはT細胞シグナル伝達に干渉し得ることが分かっており、したがって、ミドスタウリン自体はFLT3 CAR-T細胞の機能に影響を及ぼさないことが確認された。次いで、薬物の存在下の、ミドスタウリンで前処理したMOLM-13
midoに対するFLT3 CAR-T細胞の抗白血病反応性を評価した。実際に、E:T比10:1で、ネイティブMOLM-13
native細胞(80.3±2.0)と比較して、MOLM-13
midoに対するCD8+FLT3 CAR-T細胞の有意に高い細胞溶解活性が観察された(90.0±0.9)(p<0.05)(
図12)。更に、比較的低いE:T比で、CD8
+FLT3 CAR-T細胞の細胞溶解活性の1.4倍の増大(E:T比5:1で75.6±2.5対53.5±2.2)及び1.5倍の増大(E:T比2.5:1で50.6±1.3対33.0±3.4)が観察された(
図12)。次に、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較したMOLM-13
midoに対するFLT3 CAR-T細胞による特異的なサイトカイン産生を分析した。実際に、FLT3-CAR T細胞により、2.3倍のIFN-γ産生(MOLM-13
mido対MOLM-13
nattive、2934.0±26.0 pg/mL対1263.0±11.0pg/mL)及び12.4倍のIL-2産生(MOLM-13
mido対MOLM-13
nattive、434.0±23.0 pg/mL対35.0±6.0pg/mL)が観察された(
図13A)。FLT3 CAR T細胞は、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較してMOLM-13
midoに対して1.8倍(増殖指数)大きく増殖した(%増殖、MOLM-13
mido対MOLM-13
nattive、59.4対31.3)(
図13B)。MOLM-13
midoに対して少なくとも3倍及び少なくとも4倍増殖したT細胞のパーセンテージは23.9及び31.4であり、それと比較してMOLM-13
nativeに対してはそれぞれ10.5及び19.3であり(
図13B)、これにより、有意な機能獲得が実証される。
【0119】
クレノラニブはFLT3-ITD
+AML細胞におけるFLT3表面タンパク質発現の増大を誘導する
FLT3-ITD
+AMLを有する患者における臨床試験からの知見は、FLT3阻害剤の効果を打ち消すためのAML芽細胞の代償機構としてのFLT3の上方制御であり、これは、本発明者らが、FLT3 CAR-T細胞の抗白血病有効性を増強するために活用することができるという仮説を立てた機構である
24、25。ネイティブMOLM-13 AML細胞(MOLM-13
Native)(FLT3-ITD
+/-)を、臨床的に実現可能な血清中レベルである10nMの用量を使用したFLT3阻害剤クレノラニブ(MOLM-13
Creno)の存在下で培養した
27、44。薬物への曝露の5日後にフローサイトメトリーによってMOLM-13
CrenoにおけるFLT3発現を解析し、MFIによって評価される通りMOLM-13
Native細胞と比較して有意に高いレベルのFLT3表面タンパク質が実際に観察された(n=3の実験、p<.05)(
図14A)。興味深いことに、クレノラニブの停止により、2日以内にMOLM-13細胞におけるFLT3発現のベースラインレベルまでの低下が導かれたが、薬物への再曝露で再び上昇した(
図14B)。クレノラニブへの一次曝露後、およそ7日間にわたり、MOLM-13
Native細胞と比較してMOLM-13
Creno細胞の中等度の細胞傷害効果及びより遅い増大が観察された(
図15A、B)。しかし、培養培地を補充し続けたにもかかわらず、クレノラニブの細胞傷害効果はその後なくなり、MOLM-13
Creno細胞の増大が加速され、これにより、これらの細胞が獲得耐性を有していたことが示唆される。
【0120】
クレノラニブに曝露した際のFLT3発現の増大はMV4;11 AML細胞(FLT3-ITD
+/+)でも観察されたが、野生型FLT3を発現するいくつかの細胞株、すなわち、THP-1 AML細胞、JeKo-1マントル細胞リンパ腫、及びK562赤骨髄性白血病では起こらず、これにより、クレノラニブ処理に応答したFLT3発現の上方制御がFLT3-ITD
+AML細胞において特異的に起こることが示唆される(
図14A)。FLT3とは対照的に、MOLM-13及びMV4;11のどちらにおいてもCD33発現及びCD123発現はクレノラニブの影響を受けず、増大しなかった(
図16)。
【0121】
クレノラニブで処理したMOLM-13 AML細胞における高FLT3発現によりin vitroにおけるFLT3 CAR-T細胞の抗白血病反応性の増強が導かれる
MOLM-13
CrenoにおけるFLT3の抗原密度が高いことによりFLT3 CAR-T細胞による認識が増強されるかどうかを分析しようとした。本発明らの以前のデータでは、クレノラニブへの曝露及び曝露停止の際のFLT3発現の迅速なモジュレーションが示されており(
図15B)、これにより、MOLM-13
Crenoに対するFLT3 CAR-T細胞の最大の反応性が薬物の存在下で実現されることが示唆される。TKIはT細胞の活性化及び機能に干渉し得ることが分かっており
45、46、したがって、クレノラニブ自体はFLT3 CAR-T細胞のエフェクター機能に影響を及ぼさないことが確認された。
【0122】
実際に、E:T比10:1で、ネイティブMOLM-13
native細胞(68.0±0.9)と比較してMOLM-13
crenoに対してCD8
+FLT3 CAR-T細胞の優れた細胞溶解活性が観察された(74.7±0.8)(p<0.05)(
図17)。更に、比較的低いE:T比で、CD8
+FLT3 CAR-T細胞の細胞溶解活性の2倍の増大(E:T比5:1で、MOLM-13
creno対MOLM-13
native57.5±5.5対28.9±4.2)及び2.5倍の増大(E:T比2.5:1で、46.4±4.9対18.5±9.3)が観察された(
図17)。次に、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較したMOLM-13
crenoに対するFLT3 CAR-T細胞によるサイトカイン産生を分析した。実際に、FLT3-CAR T細胞により、1.4倍のIFN-γ産生(MOLM-13
creno対MOLM-13
native、2121.1±135.1pg/mL対1523.0±229.8pg/mL)及び3.9倍のIL-2産生(MOLM-13
creno対MOLM-13
native、135.8±16.5pg/mL対34.7±8.8pg/mL)が観察された(
図18A)。MOLM-13
crenoに対して少なくとも3倍及び少なくとも4倍増殖したT細胞のパーセンテージは39.2及び28.6であり、それと比較してMOLM-13
nativeに対してはそれぞれ29.0及び26.5であり(
図18B)、これにより、有意な機能獲得が実証される。
【0123】
キザルチニブはFLT3-ITD
+AML細胞におけるFLT3表面タンパク質発現の増大を誘導する
FLT3
-ITD
+AMLを有する患者における臨床試験からの知見は、FLT3阻害剤の効果を打ち消すためのAML芽細胞の代償機構としてのFLT3の上方制御であり、これは、本発明者らが、FLT3 CAR-T細胞の抗白血病有効性を増強するために活用することができるという仮説を立てた機構である
24、25。ネイティブMOLM-13 AML細胞(MOLM-13
Native)(FLT3-ITD
+/-)を臨床的に実現可能な血清中レベルである1nMの用量を使用したFLT3阻害剤キザルチニブの存在下で培養した(MOLM-13
Quiza)
27、44。MOLM-13
QuizaにおけるFLT3発現を薬物への曝露の5日後にフローサイトメトリーによって分析し、MFIによって評価される通りMOLM-13
Native細胞と比較して有意に高いレベルのFLT3表面タンパク質が実際に観察された(n=3の実験、p<.05)(
図19A)。興味深いことに、キザルチニブの停止により、2日以内にMOLM-13細胞におけるFLT3発現のベースラインレベルまでの低下が導かれたが、薬物への再曝露で再び上昇した(
図19B)。キザルチニブへの一次曝露後、およそ7日間にわたりMOLM-13
Native細胞と比較してMOLM-13
Quiza細胞の中等度の細胞傷害効果及びより遅い増大が観察された。しかし、培養培地を補充し続けたにもかかわらず、キザルチニブの細胞傷害効果はその後なくなり、MOLM-13
Quiza細胞の増大が加速され、これにより、これらの細胞が獲得耐性を有していたことが示唆される。
【0124】
キザルチニブに曝露した際のFLT3発現の増大はMV4;11 AML細胞(FLT3-ITD
+/+)でも観察されたが、野生型FLT3を発現するいくつかの細胞株、すなわち、THP-1 AML細胞、JeKo-1マントル細胞リンパ腫、及びK562赤骨髄性白血病では起こらず、これにより、キザルチニブ処理に応答したFLT3発現の上方制御がFLT3-ITD
+AML細胞において特異的に起こることが示唆される(
図19B)。FLT3とは対照的に、MOLM-13及びMV4;11のどちらにおいてもCD33発現及びCD123発現はキザルチニブの影響を受けず、増大しなかった(
図20)。
【0125】
AML MOLM-13quiza細胞における高FLT3発現によりin vitroにおけるFLT3 CAR-T細胞の抗白血病反応性の増強が導かれる
MOLM-13quiza細胞における高FLT3発現により、FLT3 CAR-T細胞による認識が強化されると予測した。キザルチニブへの曝露及び曝露停止の際にFLT3発現が迅速に調節されるので、相乗的な抗白血病効果を最大にするためにFLT3 CAR-T細胞を薬物と同時に投与することが最良であると思われる。次いで、薬物の存在下での、キザルチニブで前処理したMOLM-13quizaに対するFLT3 CAR-T細胞の抗白血病反応性を評価した。
【0126】
実際に、E:T比10:1で、ネイティブMOLM-13
native細胞(47.3±5.6)と比較してMOLM-13
quizaに対するCD8
+FLT3 CAR-T細胞の優れた細胞溶解活性が観察された(67.9±2.4)(p<0.05)(
図21)。更に、比較的低いE:T比で、CD8
+FLT3 CAR-T細胞の細胞溶解活性の1.6倍の増大(E:T比5:1で、MOLM-13
quiza対MOLM-13
nattive35.5±4.7対22.5±3.3)及び17.7倍の増大(E:T比2.5:1で、25.6±4.1対1.4±2.0)が観察された(
図21)。次に、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較してMOLM-13
quizaに対するFLT3 CAR-T細胞によるサイトカイン産生を分析した。実際に、FLT3-CAR T細胞により1.4倍のIFN-γ産生(MOLM-13
quiza対MOLM-13
nattive、1711.0±36.0pg/mL対1263.1±11.0pg/mL)及び1.9倍のIL-2産生(MOLM-13
quiza対MOLM-13
nattive、68.0±3.0pg/mL対35.0±6.0pg/mL)が観察された(
図22A)。MOLM-13
quizaに対して少なくとも3倍及び少なくとも4倍増殖したT細胞のパーセンテージは33.9及び28.7であり、これと比較してMOLM-13
nativeに対してそれぞれ29.0及び25.9であり(
図22B)、これにより、有意な機能獲得が実証される。
【0127】
FLT3 CAR-T細胞及びFLT3阻害剤クレノラニブはin vivoでAMLの退縮の媒介において相乗的に作用する
これにより、MOLM-13/NSG異種移植モデルにおけるFLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用の抗白血病効果を調査するよう促された。マウスに、0日目にMOLM-13
nativeAML細胞を接種し、7日目に、FLT3 CAR-T細胞単独、クレノラニブ単独(体重1kg当たり15mg、i.p.注射、qd)、FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用治療のいずれかで処置したか、又は処置しないままにした。FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブの併用治療を受けたマウスにおいて強力な抗白血病有効性が観察された(
図23A)。FLT3 CAR-T細胞とクレノラニブを併用されたマウスにおいて、それぞれFLT3 CAR-T細胞での単剤療法及びクレノラニブでの単剤療法、並びに処置なしと比較して、フローサイトメトリーによるFLT3 CAR-T細胞の優れた生着及びin vivo増大(
図23B)、より高い奏効率(併用: n=8/8、100%対FLT3 CAR-T細胞単独、n=6/8、75%対クレノラニブ単独、n=0/8、0%対処置なし、n=0/0、0%)、生物発光イメージングによって評価してより速くより深い寛解(
図23A、24A)、並びに全生存の改善が見られた(p<.05)(
図24B)。クレノラニブ単剤療法はほんの1分の抗白血病効果しかなく、実験エンドポイント時に末梢血及び骨髄から回収されたMOLM-13細胞ではFLT3が均一且つ強力に上方制御されており、これは本発明者らの以前のin vitroにおける観察と一致する(
図25A)。併用治療でも、マウスの骨髄外後期疾患が遅延した。実験エンドポイント時に、FLT3 CAR-T細胞/クレノラニブ併用処置を受けたマウス及びFLT3 CAR-T細胞単剤療法を受けたマウスにおける末梢血、骨髄及び脾臓にはAML細胞は含まれなかったが、クレノラニブ単剤療法を受けたマウス及び無処置のマウスでは高度の白血病浸潤が示された(
図25B)。集合的に、データから、FLT3 CAR-T細胞及びクレノラニブを併用療法で相乗的に使用して、in vitro及びin vivoにおいてFLT3-ITD
+AML細胞に対する強力な抗白血病効果を付与することができることが示される。
【0128】
(実施例2)
材料及び方法:
ヒト対象
健康なドナー及び成人AML患者から、参加施設のInstitutional Review Boardにより承認された研究プロトコールへの参加のための書面のインフォームドコンセントを得た後に末梢血を得た。
【0129】
初代AML細胞
初代AML細胞を、10%ヒト血清、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、並びにIL-4(1000 IU/mL)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(10ng/mL)、幹細胞因子(5ng/mL)及び腫瘍壊死因子(TNF)-α(10ng/mL)を含むサイトカインカクテルを補充したRPMI-1640中で維持した。
【0130】
腫瘍細胞株
ヒト白血病細胞株MOLM-13(ACC 554)、THP-1(ACC 16)、MV4;11(ACC 102)、及びK562(ACC 10)をDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen、Braunschweig、Germany)から購入し、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMのグルタミン及び100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI-1640中で培養した。全ての細胞株に、フローサイトメトリー(GFP)及びマウスにおける生物発光イメージング(ffLuc)、及び生物発光に基づく細胞傷害性アッセイによる検出を可能にするために、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)_緑色蛍光タンパク質(GFP)導入遺伝子をコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。全長ヒトFLT3遺伝子を用いたレトロウイルスによる形質導入によってK562/FLT3を生成した。
【0131】
FLT3発現のフローサイトメトリー解析
細胞表面FLT3の発現(CD135)を、コンジュゲートしたマウス抗ヒトFLT3 mAb(クローン4G8、BD Pharmagin、BD Biosciences社、Germany)及びマウスIgG1アイソタイプ対照(BD Pharmagin)を使用して分析した。簡単に述べると、細胞1×106個を洗浄し、PBS/0.5%ウシ胎仔血清100μLに再懸濁させ、抗FLT3 mAb又はアイソタイプ5μLを用い、4℃で30分にわたって染色した。
【0132】
CAR構築
FLT3特異的BV10 mAb
12のV
Hセグメント及びV
Lセグメントを含むコドン最適化された標的化ドメインを合成し(GeneArt、ThermoFisher社、Regensburg、Germany)、短いIgG4-Fcヒンジスペーサー、CD28膜貫通部分及び共刺激部分並びにCD3zを含むCAR骨格と、T2Aエレメント及びEGFRt形質導入マーカーとインフレームで融合した(
図1)
32~34。導入遺伝子全体をレンチウイルスベクターepHIV7にコードさせ、EF1/HTLVハイブリッドプロモーターの制御下で発現させた
34、35。同様に、CD19に特異的な標的化ドメイン(クローンFMC63)及びCD123に特異的な標的化ドメイン(クローン32716)を使用して、それぞれCD19 CAR及びCD123 CARを生成した
32、33、36、37。
【0133】
CAR改変T細胞の調製
CD3/28ビーズ(ThermoFisher社)で活性化したCD4+T細胞及びCD8+T細胞へのレンチウイルスによる遺伝子導入をビーズ刺激後1日目に感染効率(MOI)5で実施した。T細胞を、10%ヒト血清、グルタミン、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン及び50U/mLの組換えヒトインターロイキン(IL)-2(Proleukiine、Novartis社、Basel、Switzerland)を補充したRPMI-1640中で培養した32。CARが形質導入されたT細胞を、ビオチン化抗EGFR mAb(ImClone Systems Inc.社)及び抗ビオチンビーズ(Miltenyi社)を使用して富化した後、迅速な増大プロトコール38を使用して、又はCD19 CAR-T細胞に関しては照射(80 Gy)CD19+フィーダー細胞を用いた抗原特異的刺激を使用して38増大させた。
【0134】
T細胞のフローサイトメトリー解析
初代AML及び末梢血単核細胞(PBMC)を以下のコンジュゲートしたmAbの1つ又は複数で染色した: CD3、CD19、CD34、CD38、CD33、CD45、CD123、CD135及び対応するアイソタイプ対照(Miltenyi社、Bergisch-Gladbach、Germany/BD、Heidelberg、Germany/Biolegend社、London、UK)。CARで改変されたT細胞及び形質導入されていないT細胞を生存/死細胞識別のために以下のコンジュゲートしたmAbの1つ又は複数で染色した: CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、CD62L、及び7-AAD(Miltenyi社/BD/Biolegend社)。CARが形質導入された(すなわち、EGFRt+)T細胞を、社内でビオチン化された抗EGFR抗体(EZ-Link(商標)Sulfo-NHS-SS-Biotin、Thermofisher Scientific社、IL、製造者の指示に従って)及びストレプトアビジン-PEで染色することによって検出した。フローサイトメトリー解析(flow analysis)をFACSCanto(BD社)で行い、FlowJoソフトウェアv9.0.2(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを解析した。
【0135】
in vitroにおけるCAR-T細胞機能の分析
機能分析を以前に記載されている通り実施した32、33、39~41。簡単に述べると、ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)を発現する標的細胞を、ウェル当たり細胞5×103個で、エフェクターT細胞と一緒に、種々のエフェクター対標的(E:T)比で、3連でインキュベートした。4時間インキュベートした後、ルシフェリン基質を共培養物に添加し、標的細胞及びT細胞を含有するウェル中の発光シグナルの低減を照度計(Tecan社、Mannedorf、Switzerland)を使用して測定し、標的細胞単独と比較した。特異的な溶解を、標準の式を使用して算出した42。サイトカイン分泌を分析するために、T細胞50×103個を3連のウェルに標的細胞と2:1の比でプレーティングし、24時間インキュベートした後に取り出した上清中のIFN-γ及びIL-2産生をELISA(Biolegend社)によって測定した。増殖を測定するために、T細胞50×103個を0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、ThermoFisher社)で標識し、洗浄し、3連のウェル中、外因性サイトカインを伴わない培地に標的細胞と2:1の比でプレーティングした。72時間インキュベートした後、細胞を、抗CD8/CD4 mAb及び7-AADで標識して死細胞を分析から排除した。試料をフローサイトメトリーによって解析し、生存T細胞の分裂をCFSE希釈によって評価した。CARで改変されたT細胞及び対照T細胞の初代AML細胞に対する細胞溶解活性をFACSに基づく細胞傷害性アッセイで分析した。T細胞及びAML細胞を、96ウェルプレートに、標的細胞をウェル当たり10×103個とし、20:1から1:1までにわたるエフェクター:標的(E:T)比で播種した。4~24時間後、培養物を吸引し、生存細胞と死細胞を識別するために7-AADを用いて、及びT細胞とAML細胞を区別するために抗CD3/抗CD33/抗CD45 mAbを用いて染色した。残留する生存AML細胞の数を定量化するために、123-counting beads(e-bioscience社、San Diego、CA)製造者の指示に従って使用した。フローサイトメトリー解析(flow analysis)をFACS Canto II(BD社)で行い、FlowJoソフトウェア(Treestar社)を使用してデータを解析した。
【0136】
in vivo実験
実験は全て参加施設のInstitutional Animal Care and Use Committeeにより承認されたものであった。NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウス(雌、6~8週齢)をCharles River社から購入した又は社内で飼育した。マウスに、0日目にffluc_GFP+MOLM-13 AML細胞1×106個を尾静脈注射によって接種し、7日目にT細胞5×106個(PBS/0.5%FCS 200μL中)を尾静脈注射によって単回投薬した。クレノラニブ[15mg/kg; 200μLの30%グリセロールホルマール(Sigma Aldrich社、Munich、Germany)]を連続した3週間にわたって月曜~金曜に腹腔内(i.p.)投与した。D-ルシフェリン基質(体重1g当たり0.3mg)(Biosynth社、Staad、Switzerland)をi.p.投与した後、AML増悪/退縮をIVIS Lumina imaging system(Perkin Elmer社、Waltham、Massachusetts)を使用して段階的な生物発光イメージングによって評価した。Living Imageソフトウェア(Perkin Elmer社)を使用してデータを解析した。
【0137】
MOLM-13 AML細胞のFLT3阻害剤による治療
MOLM-13を、10%ウシ胎仔血清、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、及び10nMのクレノラニブ又は1nMのキザルチニブ又は10nMのミドスタウリンを補充したRPMI-1640培地中で維持した。完全な培地交換を7日毎に行い、MOLM-13細胞を培地1mL当たり1×106個に調整し、この細胞懸濁液2mLを48ウェルプレート(Costar社、Corning、NJ)のウェル毎にプレーティングした。10nMのミドスタウリンと一緒に2~3週間培養した後、MOLM-13細胞を、次の8~10週間にわたり、ミドスタウリンに、ミドスタウリンの濃度を50nMのミドスタウリンに達するまで指数関数的に上昇させながら曝露させた。
【0138】
医薬品及び試薬
クレノラニブ、キザルチニブ(SelleckChemicals社、Houston、TX)、ミドスタウリン(Novartis社、Basel、Switzerland/SelleckChemicals社、Houston、TX/Sigma-Aldrich社、Steinheim、Germany)をジメチルスルホキシド(DMSO)中に再構成した後、培地又は30%グリセロールホルマール(Sigma Aldrich社、Munich、Germany)中に希釈し、それぞれin vitro実験又はin vivo実験に使用した。
【0139】
統計解析
Prismソフトウェアv6.07(GraphPad社)を使用して統計解析を実施した。in vitro実験で得られたデータの解析には対応のないスチューデントのt検定を使用した。in vivo実験において観察された生存の差異を解析するためにログランク(Mantel-Cox)検定を実施した。p値<.05の差異を統計的に有意であるとみなした。
【0140】
結果:
FLT3 CAR-T細胞はFLT3野生型細胞及びFLT3-ITD
+AML細胞を排除する
FLT3特異的mAb BV10に由来する標的化ドメインを含むCAR導入遺伝子を構築し、健康なドナー及びAML患者(n=6)のCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞への遺伝子導入を実施した。FLT3 CARが形質導入されたT細胞を、EGFRt形質導入マーカーを使用して>90%の純度まで富化した後、増大及び機能試験を行った(
図26)。まず、ネイティブK562(表現型:FLT3
-)及び野生型FLTを安定に発現するように形質導入されたK562標的細胞3(K562/FLT3)を使用してCD4
+FLT3 CAR-T細胞及びCD8
+FLT3 CAR-T細胞によるFLT3表面タンパク質の特異的認識を確認した(
図27)。次いで、AML細胞株THP-1(FLT3野生型)、MOLM-13(FLT3-ITD
+/-)及びMV4;11(FLT3-ITD
+/+)を本発明らの解析に含め、細胞株のそれぞれに対して、多数のエフェクター対標的細胞比(10:1~2.5:1にわたるE:T)でCD8
+FLT3 CAR-T細胞の特異的な高レベルの細胞溶解活性が確認された(
図28A、B)。更に、CD4
+FLT3 CAR-T細胞及びCD8
+FLT3 CAR-T細胞はIFN-γ及びIL-2を含めたエフェクターサイトカインを産生し、AML細胞株のそれぞれによる刺激後に生産的に増殖したが、同じそれぞれのドナーに由来する対照T細胞ではバックグラウンド反応性しか示されなかった(
図29、30)。FLT3 CARはFLT3の細胞外ドメイン内のエピトープに結合するので、AML細胞の認識は細胞内チロシンキナーゼドメインの突然変異の状態とは無関係であり、そうではなく、平均蛍光強度(MFI)によって評価される標的細胞上のFLT3表面タンパク質の抗原密度と相関した(THP-1 ~ MOLM-13>MV4;11)(
図28A)。
【0141】
患者由来のFLT3 CAR-T細胞のFLT3-ITD
+初代AML細胞に対する強力な活性も確認され、強力な細胞溶解活性により、4時間以内の短さで>80%のAML芽細胞の根絶が導かれた(20:1~1:1にわたるE:T)(
図28A、B)。特に、初代AML芽細胞に対するFLT3 CAR-T細胞の抗白血病活性は、代替AML標的抗原CD123に特異的な類似設計されたCARを発現するT細胞と同等であった(
図28B)。
【0142】
FLT3 CAR-T細胞は異種移植モデルにおいてin vivoで長続きするAMLの寛解を誘導する
免疫不全NSGマウスにおけるAMLの異種移植モデルにおいてin vivoでのFLT3 CAR-T細胞の機能を分析するための実験を実施した。ffLuc_GFPを形質導入されたMOLM-13 AML細胞の接種後、マウスは末梢血中を循環する白血病細胞、並びに骨髄及び脾臓への浸潤を伴う全身性白血病を急速に発症した(
図31A)。白血病を有するマウスを、細胞産物が同等の割合のCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞からなる、FLT3 CARで改変されたT細胞又は形質導入されていないT細胞5×10
6個の単回投薬で処置したか、又は処置しなかった。FLT3 CAR-T細胞の生着を示した全てのマウスで強力な抗白血病効果が確認された。これらのマウスでは、FLT3 CAR-T細胞の数が抗白血病応答中に増加し、多数の時点で末梢血中に容易に検出することができ、これにより、養子移入後3週間を超える持続性が確認される(
図31B)。段階的な生物発光イメージングにより、FLT3 CAR-T細胞が生着したマウスの全てにおいて強力な抗白血病活性が確認されたが、CAR-T細胞が生着できなかったマウス、対照T細胞で処置されたマウス、及び無処置のマウスでは迅速な白血病の増悪が示された(
図31A、32A)。さらなるフローサイトメトリー解析により、骨髄及び脾臓由来のAML細胞の持続的な完全寛解が確認された(
図33A)。カプラン・マイヤー分析により、FLT3 CAR-T細胞を用いた処置後に対照T細胞及び無処置と比較して有意に長い全生存が示された(p<.05)(
図32B)。FLT3 CAR-T細胞療法に応答した全てのマウスでは、NSGマウスモデルにおけるCAR-T細胞療法に関する以前の報告
37、43と一致して、骨髄外後期疾患の再発も観察されたことに注目すべきである(
図31A)。骨髄外後期疾患の顕在化に由来するAML細胞におけるFLT3の発現はネイティブMOLM-13細胞と同様のレベルで検出可能であった、すなわち、抗原欠損は生じなかった。全体として、本発明らのデータから、in vitro及びin vivoにおいてFLT3 CAR-T細胞によりFLT3野生型細胞及びFLT3-ITD
+AML細胞株及び初代AML細胞に対する強力な抗白血病活性が付与されることが示される。
【0143】
ミドスタウリンはFLT3-ITD
+AML細胞におけるFLT3表面タンパク質発現の増大を誘導する
FLT3-ITD
+AMLを有する患者における臨床試験からの知見は、FLT3阻害剤の効果を打ち消すためのAML芽細胞の代償機構としてのFLT3の上方制御であり、これは、本発明者らが、FLT3 CAR-T細胞の抗白血病有効性を増強するために活用することができるという仮説を立てた機構である
24、25。ネイティブMOLM-13 AML細胞(MOLM-13
Native)(FLT3-ITD
+/-)を、10nMの用量を使用したFLT3阻害剤ミドスタウリン(MOLM-13
mido)の存在下で培養した。薬物への曝露の2~3週間後にMOLM-13
midoにおけるFLT3発現をフローサイトメトリーによって分析し、MFIによって評価される通りMOLM-13
native細胞と比較して有意に高いレベルのFLT3表面タンパク質が実際に観察された(n=2の実験、p<.05)(
図10A)。更に、次の8~10週間でミドスタウリン濃度を10nMから50nMまでゆっくりと上昇させ、FLT3発現のさらなる増大が観察された(
図10B)。興味深いことに、ミドスタウリンの停止により、2日以内にMOLM-13細胞におけるFLT3発現のベースライン又はベースラインをわずかに下回るレベルまでの低下が導かれたが、薬物への再曝露で再び上昇した(
図10C)。ミドスタウリンへの一次曝露後、およそ2週間にわたり、MOLM-13
native細胞と比較してMOLM-13
mido細胞の中等度の細胞傷害効果及びより遅い増大が観察された。しかし、培養培地を補充し続けたにもかかわらず、ミドスタウリンの細胞傷害効果はその後なくなり、MOLM-13
mido細胞の増大が加速され、これにより、MOLM-13
mido細胞が獲得耐性を有していたことが示される。
【0144】
ミドスタウリンに曝露した際のFLT3発現の増大はMV4;11 AML細胞(FLT3-ITD
+/+)でも観察されたが、野生型FLT3を発現するいくつかの細胞株、すなわち、THP-1 AML細胞、K562赤骨髄性白血病では起こらず、これにより、ミドスタウリン処理に応答したFLT3発現の上方制御がFLT3-ITD
+AML細胞において特異的に起こることが示唆される(
図10A、B)。
【0145】
AML MOLM-13
mido細胞における高FLT3発現によりin vitroにおけるFLT3 CAR-T細胞の抗白血病反応性の増強が導かれる
E:T比10:1で、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較して(79.4±2.9)、MOLM-13
midoに対して有意に高いCD8
+FLT3 CAR-T細胞の細胞溶解活性が観察された(90.3±1.9)(p<0.05)(
図34)。更に、生理的に関連性のあるE:T比で、CD8
+FLT3 CAR-T細胞の細胞溶解活性の1.3倍の増大(E:T比5:1で、84.5±1.8対64.6±4.1)及び1.6倍の増大(E:T比2.5:1で、59.1±5.5対36.1±2.3)が観察された(
図34)。次に、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較したMOLM-13
midoに対するFLT3 CAR-T細胞による特異的なサイトカイン産生を分析した。実際に、FLT3-CAR T細胞により2.1倍のIFN-γ産生(MOLM-13
mido対MOLM-13
native、3079.0±153.0pg/mL対1477.0±78.0pg/mL)及び6.6倍のIL-2産生(MOLM-13
mido対MOLM-13
native、1328.0±63.0pg/mL対202.0±41.0pg/mL)が観察された(
図35A)。FLT3 CAR T細胞は、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較して、MOLM-13
midoに対して1.8倍(増殖指数)大きく増殖した(%増殖、MOLM-13
mido対MOLM-13
native、75.1対41.2)(
図35B)。MOLM-13
midoでの刺激後に少なくとも4倍及び少なくとも5倍増殖したT細胞のパーセンテージは28.3及び32.9であり、これと比較してMOLM-13
nativeに対してそれぞれ13.4及び15.1である(
図35B)、これにより、有意な機能獲得が実証される。
【0146】
クレノラニブはFLT3-ITD
+AML細胞におけるFLT3表面タンパク質発現の増大を誘導する
FLT3-ITD
+AMLを有する患者における臨床試験からの知見は、FLT3阻害剤の効果を打ち消すためのAML芽細胞の代償機構としてのFLT3の上方制御であり、これは、本発明者らが、FLT3 CAR-T細胞の抗白血病有効性を増強するために活用することができるという仮説を立てた機構である
24、25。ネイティブMOLM-13 AML細胞(MOLM-13
native)(FLT3-ITD
+/-)を、臨床的に実現可能な血清中レベルである10nMの用量を使用したFLT3阻害剤クレノラニブ(MOLM-13
creno)の存在下で培養した
27、44。薬物への曝露の5日後にフローサイトメトリーによってMOLM-13
crenoにおけるFLT3発現を分析し、MFIによって評価される通りMOLM-13
native細胞と比較して有意に高いレベルのFLT3表面タンパク質が実際に観察された(n=3の実験、p<.05)(
図14A)。興味深いことに、クレノラニブの停止により、2日以内にMOLM-13細胞におけるFLT3発現のベースラインレベルまでの低下が導かれたが、薬物への再曝露で再び上昇した(
図14B)。クレノラニブへの一次曝露後、およそ7日間にわたり、MOLM-13
native細胞と比較してMOLM-13
creno細胞の中等度の細胞傷害効果及びより遅い増大が観察された。しかし、培養培地を補充し続けたにもかかわらず、クレノラニブの細胞傷害効果はその後なくなり、MOLM-13
creno細胞の増大が加速され、これにより、これらの細胞が獲得耐性を有していたことが示唆される。
【0147】
AML MOLM-13
creno細胞における高FLT3発現により、in vitroにおけるFLT3 CAR-T細胞の抗白血病反応性の増強が導かれる
E:T比10:1で、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較して(63.4±5.3)MOLM-13
crenoに対して有意に高いCD8
+FLT3 CAR-T細胞の細胞溶解活性が観察された(81.4±2.0)(p<0.05)(
図36)。更に、生理的に関連性のあるE:T比で、CD8
+FLT3 CAR-T細胞の細胞溶解活性の1.6倍の増大(E:T比5:1で67.0±2.4対41.9±9.0)及び1.8倍の増大(E:T比2.5:1で56.8±1.8対30.5±4.7)が観察された(
図36)。次に、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較してMOLM-13
crenoに対するFLT3 CAR-T細胞による特異的なサイトカイン産生を分析した。実際に、FLT3-CAR T細胞により、1.6倍のIFN-γ産生(MOLM-13
creno対MOLM-13
native、2413.5±79.3pg/mL対1477.1±110.4pg/mL)及び2.0倍のIL-2産生(MOLM-13
creno対MOLM-13
native、642.0±177.1pg/mL対317.6±105.7pg/mL)が観察された(
図37A)。FLT3 CAR T細胞は、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較してMOLM-13
crenoに対して1.3倍(増殖指数)大きく増殖した(%増殖、MOLM-13
creno対MOLM-13
native、73.0対56.5)(
図37B)。MOLM-13
crenoでの刺激後に少なくとも4倍及び少なくとも5倍に増殖したT細胞のパーセンテージは16.6及び25.2であり、これと比較してMOLM-13
nativeに対してそれぞれ9.5及び17.3であり(
図37B)、これにより、有意な機能獲得が実証される。
【0148】
キザルチニブミドスタウリンはFLT3-ITD
+AML細胞におけるFLT3表面タンパク質発現の増大を誘導する
FLT3-ITD
+AMLを有する患者における臨床試験からの知見は、FLT3阻害剤の効果を打ち消すためのAML芽細胞の代償機構としてのFLT3の上方制御であり、これは、本発明者らが、FLT3 CAR-T細胞の抗白血病有効性を増強するために活用することができるという仮説を立てた機構である
24、25。ネイティブMOLM-13 AML細胞(MOLM-13
native)(FLT3-ITD
+/-)を、臨床的に実現可能な血清中レベルである1nMの用量を使用したFLT3阻害剤キザルチニブ(MOLM-13
Quiza)の存在下で培養した
27、44。薬物への曝露の5日後にフローサイトメトリーによってMOLM-13
quizaにおけるFLT3発現を分析し、MFIによって評価される通りMOLM-13
native細胞と比較して有意に高いレベルのFLT3表面タンパク質が実際に観察された(n=3の実験、p<.05)(
図19A)。興味深いことに、キザルチニブの停止により、2日以内にMOLM-13細胞におけるFLT3発現のベースラインレベルまでの低下が導かれたが、薬物への再曝露で再び上昇した(
図19B)。キザルチニブへの一次曝露後、およそ7日間にわたり、MOLM-13
native細胞と比較してMOLM-13
quiza細胞の中等度の細胞傷害効果及びより遅い増大が観察された。しかし、培養培地を補充し続けたにもかかわらず、キザルチニブの細胞傷害効果はその後なくなり、MOLM-13
quiza細胞の増大が加速され、これにより、これらの細胞が獲得耐性を有していたことが示唆される。
【0149】
キザルチニブに曝露した際のFLT3発現の増大はMV4;11 AML細胞(FLT3-ITD
+/+)でも観察されたが、野生型FLT3を発現するいくつかの細胞株、すなわち、THP-1 AML細胞、JeKo-1マントル細胞リンパ腫、及びK562赤骨髄性白血病では起こらず、これにより、キザルチニブ処理に応答したFLT3発現の上方制御がFLT3-ITD
+AML細胞において特異的に起こることが示唆される(
図19B)。
【0150】
AML MOLM-13
quiza細胞における高FLT3発現により、in vitroにおけるFLT3 CAR-T細胞の抗白血病反応性の増強が導かれる
E:T比10:1で、ネイティブMOLM-13
native細胞(54.4±1.7)と比較してMOLM-13
quiza(72.4±3.9)に対して有意に高いCD8
+FLT3 CAR-T細胞の細胞溶解活性が観察された(p<0.05)(
図38)。更に、生理的に関連性のあるE:T比で、CD8
+FLT3 CAR-T細胞の細胞溶解活性の1.6倍の増大(E:T比5:1で42.6±3.9対27.0±5.6)及び3.8倍の増大(E:T比2.5:1で24.9±4.5対6.6±7.0)が観察された(
図38)。次に、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較してMOLM-13
quizaに対するFLT3 CAR-T細胞による特異的なサイトカイン産生を分析した。実際に、FLT3-CAR T細胞による1.2倍のIFN-γ産生(MOLM-13
quiza対MOLM-13
native、1839.0±11.0pg/mL対1477.0±78.0pg/mL)及び1.9倍のIL-2産生(MOLM-13
quiza対MOLM-13
native、376.0±10.0pg/mL対202.0±41.0pg/mL)が観察された(
図39A)。FLT3 CAR T細胞は、ネイティブMOLM-13
native細胞と比較してMOLM-13
quiza(%増殖、MOLM-13
quiza対MOLM-13
native、65.0対56.5)に対して1.2倍(増殖指数)大きく増殖した(
図39B)。MOLM-13
quizaでの刺激後に少なくとも4倍及び少なくとも5倍に増殖したT細胞のパーセンテージは14.2及び22.5であり、これと比較してMOLM-13
nativeに対してはそれぞれ9.5及び17.3であり(
図39B)、これにより、有意な機能獲得が実証される。
【0151】
(実施例3)
材料及び方法:
ヒト対象
健康なドナーから、WurzburgのInstitutional Review Boardにより承認された研究プロトコールへの参加のための書面のインフォームドコンセントを得た後に末梢血を得た。
【0152】
腫瘍細胞株
ヒト白血病細胞株MOLM-13(ACC 554)をDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen、Braunschweig、Germany)から購入し、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMのグルタミン及び100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI-1640中で培養した。MOLM-13細胞に、フローサイトメトリー(GFP)及びマウスにおける生物発光イメージング(ffLuc)、及び生物発光に基づく細胞傷害性アッセイによる検出を可能にするために、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)_緑色蛍光タンパク質(GFP)導入遺伝子をコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。
【0153】
FLT3発現のフローサイトメトリー解析
コンジュゲートしたマウス抗ヒトFLT3 mAb(クローン4G8、BD Biosciences社、Germany)及びマウスIgG1アイソタイプ対照(BD社)を使用して細胞表面FLT3の発現を解析した。簡単に述べると、細胞1×106個を洗浄し、PBS/0.5%ウシ胎仔血清100μLに再懸濁させ、抗FLT3 mAb又はアイソタイプ5μLを用い、4℃で30分にわたって染色した。
【0154】
CAR構築
FLT3特異的BV10 mAb
12のV
Hセグメント及びV
Lセグメントを含むコドン最適化された標的化ドメインを合成し(GeneArt、ThermoFisher社、Regensburg、Germany)、短いIgG4-Fcヒンジスペーサー、CD28膜貫通部分及び共刺激部分並びにCD3zを含むCAR骨格と、T2Aエレメント及びEGFRt形質導入マーカーとインフレームで融合した(
図1)
32~34。導入遺伝子全体をレンチウイルスベクターepHIV7にコードさせ、EF1/HTLVハイブリッドプロモーターの制御下で発現させた
34、35。
【0155】
CAR改変T細胞の調製
CD3/28ビーズ(ThermoFisher社)で活性化したCD4+T細胞及びCD8+T細胞へのレンチウイルスによる遺伝子導入をビーズ刺激後1日目にMOI 5で実施した。T細胞を、10%ヒト血清、グルタミン、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン及び50U/mLの組換えヒトインターロイキン(IL)-2(Proleukine、Novartis社、Basel、Switzerland)を補充したRPMI-1640中で培養した32。CARが形質導入されたT細胞を、ビオチン化抗EGFR mAb(ImClone Systems Inc.社)及び抗ビオチンビーズ(Miltenyi社)を使用して富化した後、迅速な増大プロトコールを使用して増大させた38。
【0156】
T細胞のフローサイトメトリー解析
CARで改変されたT細胞及び形質導入されていないT細胞を、以下のコンジュゲートしたmAbの1つ又は複数で染色した: CD3、CD4、CD8及び7-AAD生存/死細胞識別のために(Miltenyi社/BD/Biolegend社)。CARが形質導入された(すなわち、EGFRt+)T細胞を、社内でビオチン化された抗EGFR抗体(EZ-Link(商標)Sulfo-NHS-SS-Biotin、Thermofisher Scientific社、IL、製造者の指示に従って)及びストレプトアビジン-PEで染色することによって検出した。フローサイトメトリー解析(flow analysis)をFACSCanto(BD社)で行い、FlowJoソフトウェアv9.0.2(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを解析した。
【0157】
in vivo 実験
実験は全て参加施設のInstitutional Animal Care and Use Committeeにより承認されたものであった。NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウス(雌、6~8週齢)をCharles River社から購入した又は社内で飼育した。マウスに、0日目にffluc_GFP+MOLM-13 AML細胞1×106個を尾静脈注射によって接種し、7日目にT細胞5×106個(PBS/0.5%FCS 200μL中)を尾静脈注射によって単回投薬した。キザルチニブ[1mg/kg; 200μLの30%グリセロールホルマール]又はミドスタウリン[1mg/kg; 200μLの30%グリセロールホルマール]を連続した3週間にわたって月曜~金曜に腹腔内(i.p.)投与した(合計15回の投薬)。D-ルシフェリン基質(体重1g当たり0.3mg)(Biosynth社、Staad、Switzerland)をi.p.投与した後、AML増悪/退縮をIVIS Lumina imaging system(Perkin Elmer社、Waltham、Massachusetts)を使用して段階的な生物発光イメージングによって評価した。Living Imageソフトウェア(Perkin Elmer社)を使用してデータを解析した。
【0158】
医薬品及び試薬
キザルチニブ及びミドスタウリン(SelleckChemicals社、Houston、TX)をジメチルスルホキシド(DMSO)中に再構成した後、30%グリセロールホルマール(Sigma Aldrich社、Munich、Germany)中に希釈し、in vivo 実験に使用した希釈。
【0159】
統計解析
Prismソフトウェアv6.07(GraphPad社)を使用して統計解析を実施した。データの解析には対応のないスチューデントのt検定を使用した。in vivo 実験において観察された生存の差異を解析するためにログランク(Mantel-Cox)検定を実施した。p値<.05の差異を統計的に有意であるとみなした。
【0160】
結果:
ミドスタウリンはin vivo でFLT3 CAR-T細胞と相乗的に作用する
FLT3 CAR-T細胞とミドスタウリンの併用のin vivoにおける抗白血病効果を調査した。マウスにMOLM-13Native AML細胞を接種し、FLT3 CAR-T細胞単独、ミドスタウリン単独、FLT3 CAR-T細胞とミドスタウリンの併用治療で処置したか、又はマウスを無処置のままにした。併用治療は2つの異なるスケジュールで施行した:一方のマウス群は、ミドスタウリンを白血病接種後3日目からすでに受け(FLT3 CAR+初期ミドスタウリン、すなわち、ミドスタウリン投与をFLT3 CAR-T細胞移入の前であっても開始する)、他方のマウス群は、ミドスタウリンを白血病接種後7日目から受けた(FLT3 CAR+ミドスタウリン、すなわち、ミドスタウリン投与をFLT3 CAR-T細胞移入の日に開始した)。どちらの群においても、ミドスタウリンを合計15回投薬した。
【0161】
FLT3 CAR-T細胞とミドスタウリンの併用治療を受けたマウスでは強力な抗白血病有効性が観察された(
図40a、b)。FLT3 CAR-T細胞のみで処置されたマウスと比較して、併用療法を受けたマウスではFLT3 CAR-T細胞の優れた生着及びin vivo増大が観察された(
図41a)。FLT3 CAR-T細胞+ミドスタウリンを受けたマウスにおけるFLT3 CAR-T細胞の平均頻度はFLT3 CAR-T細胞を単独で受けたマウスと比較して2倍を超えた(>100%の増大)(p<0.05)。
【0162】
更に、併用療法で処置されたマウスでは、生物発光イメージングによって評価して、より速くより深い寛解が観察された(
図40b)。ミドスタウリンのみを受けたマウス群では、いずれのマウスにおいても白血病負荷量の低減は観察されなかった(奏効率: 0/4=0%)。FLT3 CAR-T細胞のみを受けたマウス群では、マウスの全てで白血病の軽減が観察された(4/4=100%)が、当該マウスのいずれでもBLシグナル(白血病退縮のマーカーとして)は50分の1よりも大きくは低減しなかった(0/4 マウス=0%)。FLT3 CAR-T細胞+初期ミドスタウリンを受けたマウス群では、マウスの全てで白血病の軽減が観察され(4/4=100%)、4匹中3匹=75%のマウスで白血病が50分の1よりも大きく退縮した。FLT3 CAR-T細胞+ミドスタウリンを受けたマウス群では、マウスの全てで白血病の軽減が観察され(4/4=100%)、4匹中4匹=100%のマウスで白血病が50分の1よりも大きく退縮した。最も強力な抗白血病応答はFLT3 CAR-T細胞+ミドスタウリンを受けたマウス群で観察された。
【0163】
骨髄から回収したMOLM-13細胞におけるFLT3発現を分析し、ミドスタウリンを受けたマウスではミドスタウリンを受けたマウスと比較してFLT3が強力に上方制御されたことが見いだされた(
図41b)。特に、FLT3発現のレベルが最も低いマウスにおけるMFIは、ミドスタウリンを受けたマウス群ではミドスタウリンを受けていないマウスと比較して30%高かった。
【0164】
要約すると、データから、ミドスタウリンがFLT3 CAR-T細胞との組合せで相乗的な抗白血病活性を発揮することが示される。
【0165】
キザルチニブはin vivo においてFLT3 CAR-T細胞と相乗的に作用する
NSG/MOLM-13異種移植モデルにおいてin vivo でのFLT3 CAR-T細胞とキザルチニブの併用の抗白血病効果を調査した。マウスにFLT3 CAR-T細胞単独、キザルチニブ単独(1mg/kg、i.p)、FLT3 CAR-T細胞とキザルチニブの併用治療を単回投薬したか、又は無処置のままにした。
【0166】
FLT3 CAR-T細胞とキザルチニブの併用治療を受けたマウスでは強力な抗白血病有効性が観察された(
図42a、b)。CAR-T細胞のみで処置されたマウスと比較して、キザルチニブとLT3 CAR-T細胞の併用療法で処置されたマウスではFLT3 CAR-T細胞の優れた生着及び有意に高いin vivo増大が観察された(
図43a)。FLT3 CAR-T細胞+キザルチニブを受けたマウスにおけるFLT3 CAR-T細胞の平均頻度はFLT3 CAR-T細胞単独を受けたマウスと比較してほぼ2倍であった(>85%の増大)(p<0.0001)。
【0167】
更に、併用療法で処置されたマウスでは、生物発光イメージングによって評価してより速くより深い寛解が観察された(
図42b)。キザルチニブのみを受けたマウス群では、マウスのいずれにおいても白血病負荷量の低減は観察されなかった(奏効率:0/4=0%)。FLT3 CAR-T細胞のみを受けたマウス群では、マウスの全てで白血病の軽減が観察された(6/6=100%)しかし、マウスのうち2匹でBLシグナル(白血病退縮のマーカーとして)が20分の1よりも大きく低減した(2/6のマウス=33%)。FLT3 CAR-T細胞+キザルチニブを受けたマウス群では、マウスの全てで白血病の軽減が観察され(6/6=100%)、6匹中5匹=83.3%のマウスで白血病が20分の1よりも大きく退縮した。最も強力な抗白血病応答はFLT3 CAR-T細胞+キザルチニブを受けたマウス群において観察された。
【0168】
骨髄から回収したMOLM-13細胞におけるFLT3発現を分析し、キザルチニブ処置後にFLT3発現の増大が観察された(
図43b)。特に、FLT3発現のレベルが最も低いマウスにおけるMFIはキザルチニブを受けたマウス群ではキザルチニブを受けていないマウスと比較しておよそ65%高かった。
【0169】
要約すると、データから、キザルチニブがFLT3 CAR-T細胞との組合せでin vivoにおける白血病の退縮の媒介において相乗的に作用することが示される。
【0170】
(実施例4)
ヒト対象
健康なドナーから、WurzburgのInstitutional Review Boardにより承認された研究プロトコールへの参加のための書面のインフォームドコンセントを得た後に末梢血を得た。
【0171】
腫瘍細胞株
ヒト白血病細胞株NALM-16(ACC 680)、KOPN-8(ACC 552)、SEM(ACC 546)をDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen、Braunschweig、Germany)から購入し、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMのグルタミン及び100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI-1640中で培養した。全ての細胞株に、フローサイトメトリー(GFP)及びマウスにおける生物発光イメージング(ffLuc)、及び生物発光に基づく細胞傷害性アッセイによる検出を可能にするために、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)_緑色蛍光タンパク質(GFP)導入遺伝子をコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。
【0172】
FLT3発現のフローサイトメトリー解析
細胞表面FLT3の発現(CD135)を、コンジュゲートしたマウス抗ヒトFLT3 mAb(クローン4G8、BD Biosciences社、Germany)及びマウスIgG1アイソタイプ対照(BD社)を使用して分析した。簡単に述べると、細胞1×106個を洗浄し、PBS/0.5%ウシ胎仔血清100μLに再懸濁させ、抗FLT3 mAb又はアイソタイプ5μLを用い、4℃で30分にわたって染色した。
【0173】
CAR構築
FLT3特異的BV10 mAb12のV
Hセグメント及びV
Lセグメントを含むコドン最適化された標的化ドメインを合成し(GeneArt、ThermoFisher社、Regensburg、Germany)、短いIgG4-Fcヒンジスペーサー、CD28膜貫通部分及び共刺激部分並びにCD3zを含むCAR骨格と、T2Aエレメント及びEGFRt形質導入マーカーとインフレームで融合した(
図1)
32~34。導入遺伝子全体をレンチウイルスベクターepHIV7にコードさせ、EF1/HTLVハイブリッドプロモーターの制御下で発現させた
34、35。同様に、CD19に特異的な標的化ドメイン(クローンFMC63)を使用してCD19を生成した
32、33、36、37。
【0174】
CAR改変T細胞の調製
CD3/28ビーズ(ThermoFisher社)で活性化したCD4+T細胞及びCD8+T細胞へのレンチウイルスによる遺伝子導入をビーズ刺激後1日目に感染効率(MOI)5で実施した。T細胞を、10%ヒト血清、グルタミン、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン及び50U/mLの組換えヒトインターロイキン(IL)-2(Proleukiine、Novartis社、Basel、Switzerland)を補充したRPMI-1640中で培養した32。CARが形質導入されたT細胞を、ビオチン化抗EGFR mAb(ImClone Systems Inc.社)及び抗ビオチンビーズ(Miltenyi社)を使用して富化した後、迅速な増大プロトコール38を使用して、又はCD19 CAR-T細胞に関しては照射(80 Gy)CD19+フィーダー細胞を用いた抗原特異的刺激を使用して増大させた38。
【0175】
T細胞のフローサイトメトリー解析
CARで改変されたT細胞及び形質導入されていないT細胞を、生存/死細胞識別のために以下のコンジュゲートしたmAbの1つ又は複数で染色した: CD3、CD4、CD8及び7-AAD(Miltenyi社/BD/Biolegend社)。CARが形質導入された(すなわち、EGFRt+)T細胞を、社内でビオチン化された抗EGFR抗体(EZ-Link(商標)Sulfo-NHS-SS-Biotin、Thermofisher Scientific社、IL、製造者の指示に従って)及びストレプトアビジン-PEで染色することによって検出した。フローサイトメトリー解析(flow analysis)をFACSCanto(BD社)で行い、FlowJoソフトウェアv9.0.2(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを解析した。
【0176】
in vitroにおけるCAR-T細胞機能の分析
機能分析を以前に記載されている通り実施した32、33、39~41。簡単に述べると、ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)を発現する標的細胞を、ウェル当たり細胞5×103個で、エフェクターT細胞と一緒に、種々のエフェクター対標的(E:T)比で、3連でインキュベートした。4時間インキュベートした後、ルシフェリン基質を共培養物に添加し、標的細胞及びT細胞を含有するウェル中の発光シグナルの低減を照度計(Tecan社、Mannedorf、Switzerland)を使用して測定し、標的細胞単独と比較した。特異的な溶解を、標準の式を使用して算出した42。サイトカイン分泌を分析するために、T細胞50×103個を3連のウェルに標的細胞と2:1の比でプレーティングし、24時間インキュベートした後に取り出した上清中のIFN-γ及びIL-2産生をELISA(Biolegend社)によって測定した。増殖を測定するために、T細胞50×103個を0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、ThermoFisher社)で標識し、洗浄し、3連のウェル中、外因性サイトカインを伴わない培地に標的細胞と2:1の比でプレーティングした。72時間インキュベートした後、細胞を、抗CD8/CD4 mAb及び7-AADで標識して死細胞を分析から排除した。試料をフローサイトメトリーによって解析し、生存T細胞の分裂をCFSE希釈によって評価した。
【0177】
白血病細胞のFLT3阻害剤による治療
急性リンパ芽球性白血病(NALM-16)及び混合型白血病(KOPN-8及びSEM)細胞を、10%ウシ胎仔血清、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、及び10nMのクレノラニブ又は1nMのキザルチニブ又は50nMのミドスタウリンを補充したRPMI-1640培地中で維持した。1mL当たり1×106個のNALM-16細胞懸濁液、KOPN-8細胞懸濁液及びSEM細胞懸濁液を24ウェルプレート(Costar社、Corning、NJ)のウェル毎にプレーティングした。10nMのクレノラニブ又は1nMのキザルチニブ又は50nMのミドスタウリンと共に1週間培養した後、細胞を抗FLT3 4G8 mAbで染色し、フローサイトメトリー解析を行った。
【0178】
医薬品及び試薬
クレノラニブ、キザルチニブ及びミドスタウリン(SelleckChemicals社、Houston、TX)をジメチルスルホキシド(DMSO)中に再構成した後、培地又は30%グリセロールホルマール(Sigma Aldrich社、Munich、Germany)中に希釈し、それぞれin vitro実験又はin vivo実験に使用した。
【0179】
統計解析
Prismソフトウェアv6.07(GraphPad社)を使用して統計解析を実施した。in vitro実験で得られたデータの解析には対応のないスチューデントのt検定を使用した。p値<.05の差異を統計的に有意であるとみなした。
【0180】
結果:
FLT3 CAR-T細胞はin vitroにおいてALL及びMLLに対する強力な抗白血病活性を媒介する
急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び混合型白血病(MLL)の患者においてFLT3発現が報告されている1、4、47。したがって、FLT3 CAR-T細胞がALL及びMLLを認識し、排除することができるかどうかの決定を試みた。
【0181】
FLT3 CAR-T細胞のALL細胞株及びMLL細胞株に対する反応性を評価するために、NALM-16(wt FLT3+、CD19+小児ALL)、KOPN-8(KMT2A-MLLT1融合遺伝子を伴うwt FLT3+、CD19+乳児MLL)及びSEM(KMT2A-AFF1融合遺伝子を伴うwt FLT3+、CD19+小児MLL)を本発明らの解析に含めた。まず、3つの細胞株全てのFLT3発現をフローサイトメトリーを使用して確認した(
図44a)。次いで、機能分析を行い、3つの細胞株全てに対して、多数のエフェクター対標的細胞比(範囲: 10:1~2.5:1)でCD8
+FLT3 CAR-T細胞の特異的な高レベルの細胞溶解活性が観察された(
図44b)。更に、CD4
+FLT3 CAR-T細胞及びCD19 CAR-T細胞は、3つ全ての標的細胞株での刺激後に有意な量のIL-2を産生し、抗原特異的に増殖したが、対照T細胞ではいかなる増殖も示されなかった(
図45a、b)。
【0182】
次に、ALL細胞及びMLL細胞におけるFLT3発現をFLT3阻害剤を用いた治療によって増強することができるかどうかを分析した。したがって、野生型FLT3を発現するALL細胞及びMLL細胞をFLT3阻害剤に7日間曝露させた。しかし、アッセイ期間内にこれらの細胞におけるFLT3発現の増大は観察されなかった(
図46a)。
【0183】
要約すると、結果から、FLT3 CAR-T細胞がFLT3陽性ALL及びMLLに対して特異的な抗白血病活性を発揮すること、並びにALL患者及びMLL患者の治療に活用できることが示される。
【0184】
試験したFLT3阻害剤での処置後、FLT3野生型細胞ではアッセイ期間内にFLT3発現の増大が観察されなかったという事実(
図46a)により、FLT3阻害剤を用いた長期間にわたる処置後にがんを発現する野生型FLT3においてFLT3発現の増大が起こる可能性は除外されない(CEP701で見られるように)
24。実際、野生型FLT3はいくつかのがんにおいて高度に発現することが分かっていることを考慮して、野生型FLT3を発現するがんをFLT3阻害剤で治療することにより、野生型FLT3発現を更に増大させることを含む機構によってFLT3阻害を打ち消すがん細胞の長期間適応(例えば、遺伝子選択による)が導かれることが予想される。本発明によると、FLT3標的化薬剤(例えば、CAR-T細胞等のCARで改変された細胞)を用いた治療は、野生型FLT3発現の(さらなる)増大を示すがんに特に有効である。したがって、本発明によるキナーゼ阻害剤(例えば、本発明によるFLT3阻害剤)と本発明によるFLT3標的化薬剤(例えば、CAR-T細胞等の本発明によるCARで改変された細胞)を用いた併用治療は、野生型FLT3を発現するがんにおいて有効であり、キナーゼ阻害剤とFLT3標的化薬剤の相乗効果を示すことが予測される。更に、前記本発明による併用治療が、野生型FLT3を発現するがんがFLT3阻害剤を用いた治療の過程中にFLT3突然変異を獲得する状況を予防する又は有効に治療する有効であることも予測される。
【0185】
したがって、本発明は、野生型FLT3及び/又は突然変異FLT3を発現するあらゆるがんを含めたがんに有利に適用することができる。
【0186】
(実施例5)
ヒト対象
健康なドナーから、WurzburgのInstitutional Review Boardにより承認された研究プロトコールへの参加のための書面のインフォームドコンセントを得た後に末梢血を得た。
【0187】
FLT3阻害剤によるMV4;11 AML細胞の治療
MV4;11細胞を、10%ウシ胎仔血清、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、及び10nMのクレノラニブ又は1nMのキザルチニブ又は50nMのミドスタウリンを補充したRPMI-1640培地中で維持した。MV4;11細胞を、24ウェルプレート(Costar社、Corning、NJ)のウェル毎に1mL中、1mL当たり1×106個の濃度でプレーティングした。
【0188】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイ
ホタルルシフェラーゼ(ffluc)を形質導入したMV4;11 AML細胞をADCCアッセイに利用した。MV4;11 AML細胞をFLT3阻害剤で7日間前処理したか又は無処理のままにした。標的細胞を健康なドナー由来のPBMCと、エフェクター対標的比50:1で、96ウェル平底プレートの3連のウェル、溶媒対照、IgG1アイソタイプ対照(5000ng/mL)又は抗FLT3 BV10 mAb(5000ng/mL)(Biolegend社、London、UK)の存在下で共インキュベートした。24時間後に生物発光に基づくアッセイにおいてADCCを決定した40。ルシフェリン基質を共培養物に添加し、照度計(Tecan社、Mannedorf、Switzerland)を使用して発光シグナルの低減を測定した。生存細胞のパーセンテージを、次式を使用して算出した:%生存能力=エフェクター細胞及びBV10 mAbの存在下での生物発光シグナル(FLT3阻害剤による前処理を伴う又は伴わない)×100/対照条件下での生物発光シグナル。
【0189】
医薬品及び試薬
クレノラニブ、キザルチニブ及びミドスタウリン(SelleckChemicals社、Houston、TX)をジメチルスルホキシド(DMSO)中に再構成した後、培地中に希釈し、in vitro実験に使用した。
【0190】
統計解析
Prismソフトウェアv6.07(GraphPad社)を使用して統計解析を実施した。in vitro実験で得られたデータの解析には対応のないスチューデントのt検定を使用した。p値<.05の差異を統計的に有意であるとみなした。
【0191】
結果:
FLT3阻害剤は抗FLT3 mAbと相乗的に作用する
FLT3阻害剤による処理後のAML細胞のFLT3抗原密度の増大により抗FLT3 mAbの優れた抗白血病活性が可能になるかどうかの決定を試みた。したがって、MV4;11 AML細胞をFLT3阻害剤(10nMのクレノラニブ、1nMのキザルチニブ又は50nMのミドスタウリン)で7日間処理した。次いで、抗FLT3 mAb BV10を使用してADCCアッセイを行った。対応するアイソタイプ抗体が対照としての機能を果たした。MV4;11標的細胞(無処理又はFLT3阻害剤処理したもの)と健康なドナー由来のPBMCをBV10 mAbの存在下又は不在下で共培養し、24時間後に生存可能なMV4;11細胞の減少を決定した。FLT3阻害剤で処理したMV4;11細胞に対して、無処理のMV4;11細胞と比較してADCCの有意な増大が観察された(
図47)。平均して、クレノラニブで処理したMV4;11細胞の39%、キザルチニブで処理したMV4;11細胞の46%及びミドスタウリンで処理したMV4;11細胞の26%が24時間のADCCアッセイ内にBV10 mAbによって排除されたが、FLT3阻害剤による前処理を伴わないMV4;11細胞は13%しか排除されなかった(p<0.05)(
図47)。これらのデータから、24時間のアッセイ期間内に排除されたMV4;11細胞のパーセンテージがクレノラニブによる前処理後には3倍になり(クレノラニブによる前処理では39%に対して前処理なしでは13%)、キザルチニブによる前処理後には3.5倍になり(キザルチニブによる前処理では46%に対して前処理なしでは13%)、ミドスタウリンによる前処理後には2倍になった(ミドスタウリンによる前処理では26%に対して前処理なしでは13%)ことが示される。要約すると、データから、FLT3阻害剤が抗FLT3 mAbとの組合せで相乗的な抗白血病活性を発揮することが示される。
本発明による阻害剤及び標的化薬剤、これらの組合せ、組成物及び製剤、並びにキットは、特許請求された方法及び使用のため(例えば、本明細書で定義されているがんの治療のため)に医薬製品の製造に関する公知の標準に従って産業的に製造し、製品として販売することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性を有する。