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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120911
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】好中球性病態の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240829BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P37/06
A61P29/00
A61P35/00
A61P9/10
A61P19/02
A61P27/02
A61P25/00
A61P11/00
A61P11/06
A61P17/06
A61P17/00
C07K16/28 ZNA
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024091723
(22)【出願日】2024-06-05
(62)【分割の表示】P 2021531855の分割
【原出願日】2019-12-04
(31)【優先権主張番号】62/774,974
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/885,373
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/897,487
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521239819
【氏名又は名称】シーエスエル イノベーション プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】カレン リサ イングアンティ
(72)【発明者】
【氏名】ジョランタ エイリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャグデブ シドヒュー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル トートリッチ
(72)【発明者】
【氏名】テリーサ ユラスゼク
(57)【要約】
【課題】本開示は、持続したグレード3又はグレード4の好中球減少症を引き起こすことなく、対象において循環好中球を減少する方法に関する。
【解決手段】本開示はまた、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体により好中球性病態を治療する方法にも関する。特に、本開示は、化膿性汗腺炎(HS)及び掌蹠膿疱症(PPP)などの、好中球性皮膚症を治療する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
7連続日より長く持続したグレード3又はグレード4の好中球減少症を引き起こすことなく、ヒト対象において循環好中球を減少する方法であって、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体の0.1mg/kg~1.0mg/kgの投与量を、該対象へ投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記対象が、好中球媒介性病態を罹患している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
好中球媒介性病態を治療する方法であって、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体の0.1mg/kg~1.0mg/kgの投与量を、好中球媒介性病態に罹患した対象へ投与する投与することを含む、方法。
【請求項4】
前記抗体の投与が、7連続日よりも長く対象において持続したグレード3又はグレード4好中球減少症を引き起こすことがない、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記抗体の投与が、グレード4好中球減少症を誘導しない、請求項1~4記載の方法。
【請求項6】
前記抗体の投与が、好中球減少症を誘導しないか、又は該抗体が、2連続日以下のグレード2又はグレード3好中球減少症を誘導する、請求項1~4記載の方法。
【請求項7】
前記抗体の投与が、2連続日より長く又は1日より長く好中球減少症を誘導しない、請求項1~4記載の方法。
【請求項8】
前記好中球減少症が、発熱に関連していない、請求項1~4記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が、0.1mg/kg~0.6mg/kgの投与量で投与される、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、0.1mg/kg又は0.3mg/kg又は0.6mg/kgの投与量で投与される、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、複数回投与され、ここで該抗体が、14~28日毎に1回投与される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、複数回投与され、ここで該抗体が、21日毎に1回投与される、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、G-CSFRに結合し、且つG-CSFシグナル伝達を阻害する、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、顆粒球-コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)へ結合するか又は特異的に結合し、且つ配列番号:4に示された配列を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号:5に示された配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体C1.2Gの、G-CSFRへの結合を競合的に阻害する、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、配列番号:1の111-115、170-176、218-234及び/又は286-300から選択された、1又は2又は3又は4つの領域内の残基を含むエピトープに結合する、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が:
(i)配列番号:4に示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号:5に示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(ii)配列番号:2に示されたアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号:3に示されたアミノ酸配列を含むVL
(iii)配列番号:4に示されたアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVH、及び配列番号:5に示されたアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVL;又は
(iv)配列番号:2に示されたアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVH、及び配列番号:3に示されたアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVL:を含む、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が:
(i)配列番号:14に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖;又は
(ii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖:を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記好中球媒介性病態が、自己免疫疾患、炎症疾患、癌又は虚血再灌流障害である、請求項2~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記自己免疫疾患又は炎症疾患が、関節炎、ブドウ膜炎、多発性硬化症、肺炎症、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、又は重度の喘息である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記好中球媒介性病態が、好中球性皮膚症又は好中球性皮膚病変である、請求項2~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記好中球性皮膚症が、折り目の無菌性膿疱症(APF);局面型乾癬;CARD14-媒介型膿疱性乾癬(CAMPS);クリオピリン関連周期性症候群(CAPS);インターロイキン-1受容体欠損症(DIRA);インターロイキン-36受容体アンタゴニスト欠損症(DIRTA);化膿性汗腺炎(HS);掌蹠膿疱症;化膿性関節炎;壊疽性膿皮症及び座瘡(PAPA);壊疽性膿皮症、座瘡及び化膿性汗腺炎(PASH);壊疽性膿皮症(PG);ベーチェット病の皮膚病変;スティル病;スイート症候群;角層下膿疱症(スネッドン-ウィルキンソン);膿疱性乾癬;掌蹠膿疱症;急性全身性発疹性膿疱症;乳児肢先端膿疱症;滑膜炎、座瘡、膿疱症;骨化過剰症及び骨炎(SAPHO)症候群;腸管関連皮膚病-関節炎症候群(BADAS);手背好中球性皮膚症;好中球性エクリン汗腺炎;持久性隆起性紅斑;並びに、壊疽性膿皮症からなる群から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記好中球性皮膚症が、化膿性汗腺炎(HS)又は掌蹠膿疱症(PPP)である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
好中球性皮膚症を治療する方法であって、ここで好中球性皮膚症に罹患した対象へ、顆粒球-コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)へ結合するか又は特異的に結合する抗体の0.1mg/kg~1mg/kgの投与量を投与することを含み、ここで該抗体が、21日毎に1回、複数回投与され、且つ該抗体が:
(i)配列番号:14に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖;又は
(ii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖:を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のデータ
本出願は、2018年12月4日に出願され「好中球性病態の治療方法」と題する米国特許出願第62/774,974号、2019年8月12日に出願され「好中球性病態の治療方法」と題する米国特許出願第62/885,373号、及び2019年9月9日に出願され「好中球性病態の治療方法」と題する米国特許出願第62/897,487号の優先権を主張するものである。これらの出願の全内容は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0002】
分野
本開示は、顆粒球-コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)に結合する抗体により、好中球性病態を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)は、顆粒球生成の主要な調節因子である。G-CSFは、骨髄間質細胞、内皮細胞、マクロファージ、及び線維芽細胞により生成され、且つ生成は、炎症刺激により誘導される。G-CSFは、G-CSF受容体(G-CSFR)を介して作用し、これは、初期骨髄性前駆細胞、成熟した好中球、単球/マクロファージ、T及びBリンパ球並びに内皮細胞上に発現される。G-CSF又はG-CSFRを欠損したマウスは、顕著な好中球減少症を示し、このことは定常状態の果粒球形成におけるG-CSFの重要性を明らかにしている。G-CSFは、好中球の生成及び放出を増大し、造血幹細胞及び前駆細胞を動員し、且つ成熟好中球の分化、寿命、及びエフェクター機能を調節する。G-CSFはまた、単球/マクロファージ数の拡大、貪食機能の増強、及び炎症性サイトカイン及びケモカインの生成の調節を含む、マクロファージに対する効果を発揮することもできる。G-CSFはまた内皮前駆細胞を動員し、且つ血管新生を誘導又は促進することも示されている。
【0004】
G-CSFは、例えば好中球減少症を治療するため及び/又は造血幹細胞を動員するためなど、治療に使用されるが、これはまた、例えば炎症状態及び/又は癌など、いくつかの病態における負の作用も有する。例えば、G-CSFの投与は、関節リウマチ(RA)、マウスのコラーゲン-誘導した関節炎(CIA)及びラットにおけるCIAの受動伝達モデルを増悪する。G-CSFは、RA患者の血清及び滑液中に認められる。更に、インターロイキン(IL)-1及び腫瘍壊死因子α(TNFα)は、RAに罹患した患者において増大したレベルで認められるが、これらはヒト滑膜線維芽細胞及び軟骨細胞におけるG-CSFの生成を誘導する。G-CSF欠損マウスは、急性及び慢性炎症性関節炎の誘導に抵抗性がある。
【0005】
G-CSFはまた、多発性硬化症(MS)において役割を果たすことも示されている。例えば、G-CSFは、インターフェロンγ及びTNFαと同程度有効に、細胞外マトリクスに対するMSの自己反応性のT細胞株モデルの接着を増強し、このことはMS症状を増悪することがわかっている。更に、G-CSF欠損マウスは、実験的自己免疫型脳脊髄炎(EAE)の発生に対し抵抗性がある。
【0006】
G-CSF及びG-CSFRはまた、癌にも結びつけられており、複数の研究が、このシグナル伝達経路は、様々な癌の化学療法抵抗性、成長、生存、侵襲及び転移に寄与することを示している。更にG-CSFは、固形腫瘍の発達において重要なプロセスである、血管新生を誘導することが示されている。
【0007】
吸着性の顆粒球及び単球アフェレーシス(GMA)を使用する、好中球及び単球/マクロファージを含む骨髄細胞の除去もまた、多くの病態の治療において有用であることが示されている。GMAは、対象の血液を、酢酸セルロースビーズのカラムを通してポンプで送り、骨髄細胞を除去する、体外治療である。現在日本において、GMAは、潰瘍性大腸炎、クローン病及び膿疱性乾癬の治療について承認されている。臨床有効性は、皮膚疾患(例えば、壊疽性膿皮症、ベーチェット病、汎発性膿疱性乾癬、乾癬、スティル病、スイート症候群、皮膚アレルギー性血管炎及び全身性紅斑性狼瘡など)、並びに関節炎及び乾癬性関節炎などの他の病態についても報告されている(例えば、Kanekura, J. Dermatol., 45: 943-950, 2018参照)。GMAの欠点は、対象は、病院へ行かねばならず、そこで1週間に1又は2回、5~10分間の白血球除去輸血のセッションを受け、各セッションには約1時間かかることである。そのような治療は、時間がかかり、患者にとって快適ではなく、且つ投与のための特別な装置及び訓練を受けたスタッフが必要である。
【0008】
前述のことから、好中球減少症を誘導することなく、G-CSFRを通じてG-CSFのシグナル伝達を減少する方法が、当該技術分野において必要であることは、当業者には明らかであろう。
【発明の概要】
【0009】
要約
本開示に至る研究において、本発明者らは、重度の好中球減少症を誘導することなく、又は長期間にわたり重度の好中球減少症を誘導することなく、対象において循環好中球の数を減少することができる抗G-CSFR抗体の用量を確定することを求めた。循環好中球の数を減少することにより、本発明者らは、好中球媒介性病態を治療することができる。しかし本発明者らはまた、例えば感染症などのリスクに対象を曝すことを避けるために、長期間にわたり重度の好中球減少症を誘導しないことの重要性も認めた。本発明者らは、循環好中球の数を減少するが、長期間にわたり対象において重度の好中球減少症を引き起こさない、抗体の投与量を確定している。
【0010】
本発明者らの知見に基づき、本開示は、2連続日より長く、グレード3好中球減少症又はグレード4好中球減少症(又は重度の好中球減少症)を引き起こすことなく、対象における循環好中球を減少する方法であって、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物、例えばタンパク質-ベースのインヒビター、例としてG-CSFRに結合し且つG-CSFシグナル伝達を阻害する抗体のような、抗体のFc領域を含むタンパク質の0.1mg/kg~1.0mg/kgの投与量を、該対象へ投与することを含む方法を提供する。
【0011】
一例において、この抗体の投与は、3連続日よりも長く対象においてグレード3好中球減少症又はグレード4好中球減少症(又は重度の好中球減少症)を引き起こさない。
【0012】
一例において、この抗体の投与は、4又は5又は6連続日より長く対象においてグレード3好中球減少症又はグレード4好中球減少症(又は重度の好中球減少症)を引き起こさない。
【0013】
一例において、この抗体の投与は、7連続日より長く対象においてグレード3好中球減少症又はグレード4好中球減少症(又は重度の好中球減少症)を引き起こさない。
【0014】
一例において、本開示は、7連続日より長く持続型グレード3又はグレード4の好中球減少症を引き起こすことなく、ヒト対象において循環好中球を減少する方法であって、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体の0.1mg/kg~1.0mg/kgの投与量を、該対象へ投与することを含む方法を提供する。
【0015】
一例において、本化合物は、G-CSFに結合し、且つG-CSFシグナル伝達を阻害する抗体である。一例において、本化合物は、G-CSFRに結合し、且つG-CSFシグナル伝達を阻害する抗体である。例えば本抗体は、G-CSFRに結合するか又は特異的に結合し、且つ配列番号:4に示された配列を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号:5に示された配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体C1.2G(本明細書においてCSL324とも称される)のG-CSFRへの結合を競合的に阻害する。
【0016】
一例において、この対象は、好中球媒介性病態に罹患している。従って本開示はまた、好中球媒介性病態を治療する方法であって、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物(先に及び本明細書において考察したような)、例えばG-CSF又はG-CSFRに結合し且つG-CSFシグナル伝達を阻害する抗体の0.1mg/kg~1.0mg/kgの投与量を好中球媒介性病態に罹患した対象へ投与することを含む方法も提供する。一例において、本抗体は、G-CSFRへ結合するか又は特異的に結合し、且つ配列番号:4に示された配列を含むVH及び配列番号:5に示された配列を含む軽鎖可変領域VLを含む抗体C1.2GのG-CSFRへの結合を競合的に阻害する。
【0017】
一例において、本抗体の投与は、2連続日より長く対象においてグレード3好中球減少症又はグレード4好中球減少症(又は重度の好中球減少症)を引き起こさない。
【0018】
一例において、本抗体の投与は、3連続日より長く対象においてグレード3好中球減少症又はグレード4好中球減少症(又は重度の好中球減少症)を引き起こさない。
【0019】
一例において、本抗体の投与は、4又は5又は6連続日より長く対象においてグレード3好中球減少症又はグレード4好中球減少症(又は重度の好中球減少症)を引き起こさない。
【0020】
一例において、本抗体の投与は、7連続日より長く対象においてグレード3好中球減少症又はグレード4好中球減少症(又は重度の好中球減少症)を引き起こさない。
【0021】
一例において、本抗体の投与は、7連続日より長く対象においてグレード3又はグレード4好中球減少症を引き起こさない。
【0022】
一例において、本化合物又は抗体の投与は、グレード4好中球減少症を誘導しない。別の例において、本化合物又は抗体の投与は、それが投与される対象集団の10%未満において、3連続日よりも長く、グレード4好中球減少症を誘導する。
【0023】
一例において、本化合物又は抗体の投与は、感染症、例えば結核感染症などの、重篤な感染症に関連しない。
【0024】
一例において、本化合物又は抗体の投与は、好中球減少症を誘導しないか、又は2連続日未満にわたりグレード2もしくはグレード3好中球減少症を誘導する。例えば本抗体の投与は、36時間以下、例えば24時間以下にわたり、グレード2又はグレード3好中球減少症を誘導する。
【0025】
一例において、本化合物又は抗体の投与は、好中球減少症を誘導しない。従って一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物又は抗体による治療時に、対象の絶対好中球カウント(ANC)は、約2×109/Lを上回り続ける。
【0026】
一例において、この好中球減少症は、発熱に関連しない。
【0027】
一例において、この好中球減少症は、治療せずに回復する。
【0028】
一例において、この好中球減少症は、感染症、例えば結核感染症などの重篤な感染症に関連しない。
【0029】
一例において、本化合物又は抗体の投与は、単回投与後に、グレード4好中球減少症を誘導しない。別の例において、本化合物・抗体の投与は、複数回投与、例えば2回投与又は3回投与又は4回投与又は5回投与又は6回投与後に、グレード4好中球減少症を誘導しない。一例において、本化合物又は抗体の投与は、少なくとも3回投与後に、グレード4好中球減少症を誘導しない。
【0030】
一例において、本化合物又は抗体の投与は、単回投与後に、2連続日未満にわたりグレード2又はグレード3好中球減少症を誘導する。別の例において、本化合物又は抗体の投与は、複数回投与、例えば2回もしくは3回投与、又は4回投与又は5回投与又は6回投与後、2連続日未満にわたりグレード2又はグレード3好中球減少症を誘導する。一例において、本化合物又は抗体の投与は、少なくとも3回投与後に、2連続日未満にわたりグレード2又はグレード3好中球減少症を誘導する。
【0031】
一例において、本化合物又は抗体は、0.1mg/kg~1mg/kgの投与量で投与される。例えば本化合物又は抗体は、0.1mg/kg~0.9mg/kg、例えば0.1mg/kg~0.8mg/kg、例えば0.1mg/kg~0.8mg/kgの投与量で投与される。一例において、本化合物又は抗体は、0.1mg/kg~0.6mg/kgの投与量で投与される。一例において、本化合物又は抗体は、0.3mg/kg~0.6mg/kgの投与量で投与される。
【0032】
一例において、本化合物又は抗体は、約0.1mg/kgの投与量で投与される。
【0033】
一例において、本化合物又は抗体は、約0.3mg/kgの投与量で投与される。
【0034】
一例において、本化合物又は抗体は、約0.6mg/kgの投与量で投与される。
【0035】
一例において、本化合物又は抗体は、複数回投与される。例えば本化合物又は抗体は、7~35日毎に1回投与される。例えば本化合物又は抗体は、14~28日毎に投与される。例えば本化合物又は抗体は、20~25日毎に投与される。例えば本化合物又は抗体は、複数回投与され、ここで本化合物又は抗体は、21日毎に1回投与される。これに関して、「21日毎」(又は任意の他の数値)は、後続の投与が、直前の投与後第21日目に行われることを意味することは、当業者には理解されるであろう。
【0036】
本化合物又は抗体は、長期的に、例えば数ヶ月又は数年投与されることができ、且つ本開示は、別に言及しない限りは、特定の期間に限定されない。
【0037】
一例において、本化合物又は抗体は、病態又は病態の症状が、回復又は管理されるまで、投与される。
【0038】
一例において、本化合物又は抗体は、病態の寛解を誘導するために投与される。別の例において、本化合物は、病態の寛解を維持するために投与される。
【0039】
一例において、本化合物の1回以上の負荷投与量が、それに続けて1回以上の維持投与量が投与される。一般に、負荷投与量は、維持投与量よりもより高いか、又は維持投与量の間よりも短い期間で投与される。
【0040】
一例において、本化合物又は抗体は、配列番号:1の111-115、170-176、218-234及び/又は286-300から選択される1又は2又は3又は4つの領域内の残基を含むエピトープに結合する。
【0041】
一例において、本抗体は:
(i)配列番号:4に示されたアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号:5に示されたアミノ酸配列を含むVL
(ii)配列番号:2に示されたアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号:3に示されたアミノ酸配列を含むVL
(iii)配列番号:4に示されたアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVH、及び配列番号:5に示されたアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVL;又は
(iv)配列番号:2に示されたアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVH、及び配列番号:3に示されたアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVL:を含む。
【0042】
一例において、本抗体は:
(i)配列番号:14に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖;又は
(ii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖:を含む。
【0043】
一例において、本抗体は、配列番号:14に示された配列を含む1本の重鎖、及び配列番号:16に示された配列を含む1本の重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む2本の軽鎖を含む。
【0044】
一例において、本抗体は:
(i)配列番号:14に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖を含む抗体;
(ii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖を含む抗体;並びに
(iii)配列番号:14に示された配列を含む1本の重鎖、及び配列番号:16に示された配列を含む1本の重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む2本の軽鎖を含む抗体:の混合物を含有する組成物で、投与される。
【0045】
一部の例において、好中球媒介性病態は、自己免疫疾患、炎症疾患、癌又は虚血再灌流障害である。
【0046】
自己免疫病態の例は、自己免疫性腸管障害(クローン病及び潰瘍性大腸炎など)、関節炎(関節リウマチ、乾癬性関節炎及び特発性関節炎、例えば若年性特発性関節炎など)、又は乾癬を含む。
【0047】
炎症状態の例は、炎症性神経学的病態(例えば、デビック病、脳のウイルス感染症、多発性硬化症及び視神経脊髄炎など)、炎症性肺疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患[COPD]もしくは喘息など)、又は炎症性眼病(例えば、ブドウ膜炎など)を含む。
【0048】
一例において、好中球媒介性病態は、虚血再灌流障害である。例えば虚血再灌流障害は、組織又は臓器移植(例えば、腎臓移植など)に起因するか又は関連している。例えば本抗体は、例えば臓器摘出前に組織もしくは臓器移植レシピエントへ、及び/又は移植前の組織もしくは臓器へ投与されるか、又はエクスビボにおいて収集された組織又は臓器へ投与される。
【0049】
一部の例において、好中球媒介性病態は、乾癬である。一例において、好中球媒介性病態は、局面型乾癬(当該技術分野において「尋常性乾癬」又は「汎発型(common)乾癬」としても公知)である。
【0050】
一例において、好中球媒介性病態は、好中球性皮膚症又は好中球性皮膚病変である。例えば、好中球性皮膚症は、膿疱性乾癬である。
【0051】
一例において、好中球性皮膚症は、折り目の無菌性膿疱症(APF);局面型乾癬;CARD14-媒介型膿疱性乾癬(CAMPS);クリオピリン関連周期性症候群(CAPS);インターロイキン-1受容体欠損症(DIRA);インターロイキン-36受容体アンタゴニスト欠損症(DIRTA);化膿性汗腺炎(HS);掌蹠膿疱症;化膿性関節炎;壊疽性膿皮症及び座瘡(PAPA);壊疽性膿皮症、座瘡及び化膿性汗腺炎(PASH);壊疽性膿皮症(PG);ベーチェット病の皮膚病変;スティル病;スイート症候群;角層下膿疱症(スネッドン・ウィルキンソン病);膿疱性乾癬;掌蹠膿疱症;急性全身性発疹性膿疱症;乳児肢先端膿疱症;滑膜炎、座瘡、膿疱症;骨化過剰症及び骨炎(SAPHO)症候群;腸管関連皮膚病-関節炎症候群(BADAS);手背好中球性皮膚症;好中球性エクリン汗腺炎;持久性隆起性紅斑;並びに、壊疽性膿皮症からなる群から選択される。一例において、好中球性皮膚症は、化膿性汗腺炎(HS)又は掌蹠膿疱症(PPP)である。
【0052】
一例において、好中球性皮膚症は、化膿性汗腺炎(HS)である。実施例において示したように、G-CSFシグナル伝達の阻害は、CXCR1に関連した好中球遊走を有意に減少し、CXCR1は遊走性ケモカイン受容体であり、その発現は、HS疾患重症度に相関していることがわかった。
【0053】
一例において、好中球性皮膚症は、掌蹠膿疱症(PPP)である。実施例5に示したように、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体によるPPPの治療は、安全且つ有効であることがわかった。
【0054】
PPPの治療の有効性は、当該技術分野において公知のいずれかの測定を用いて決定することができる。例えば一部の例において、本明細書に開示されたような抗体の投与は、ppPASIスコアを低下する。ppPASIは、慢性局面型乾癬の重症度の評価に広範に使用されている、乾癬面積及び重症度指数(PASI)を基にした評価ツールである。重症度、紅斑、膿疱及び落屑の総数を含むパラメータは、1-4スケールでスコア化され、次に面積及び関連した部位(掌又は足裏)について補正される。4つの値の合計は、最終ppPASIを生じ、これは0(PPPなし)と72(最も重度のPPP)の間の範囲である。ppPASIは、治療の有効性を評価するために、スクリーニング時、本明細書に開示された抗体の投与前、投与時、及び/又は投与後に評価することができる。例えば、抗体の投与前と比べ、投与後のより低いppPASIスコアは、PPPの効果的治療の証拠である。
【0055】
PPPの治療の有効性を評価するための別の測定は、掌-足裏の医師による総合評価(PGA)である。一例において、本明細書に開示されたような抗体の投与は、掌-足裏の医師による総合評価(PGA)スコアを減少する。PGAは、紅斑、鱗屑、及び硬結を基にした全ての乾癬病変の平均評価である。PGAは、治療の有効性を評価するために、スクリーニング時、本明細書に開示された抗体の投与前、投与時、及び/又は投与後に評価することができる。例えば、抗体の投与前と比べ、投与後のより低いPGAスコアスコアは、PPPの効果的治療の証拠である。PPPなどの好中球性皮膚症の治療の有効性評価のための他の好適な測定は、本明細書に記載されている。
【0056】
一部の例において、この対象は、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体による治療の少なくとも1年、又は少なくとも2年、又は少なくとも3年、又は少なくとも4年前に、PPPと診断された。
【0057】
一部の例において、PPPの対象は、先にPPP治療を受けている。一部の例において、この対象は、以下の療法のいずれか1以上により、先に治療されている:
(i)メトトレキセート;
(ii)アシトレチン;
(iii)タクロリムス;
(iv)コルチコステロイド;並びに
(v)ビタミンD及びコルチコステロイド。
【0058】
一部の例において、PPPの対象は、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体による治療前に、掌蹠膿疱症の乾癬面積及び重症度指数(ppPASI)の少なくとも11、又は少なくとも16、又は少なくとも21、又は少なくとも26、又は少なくとも31を有する。従って一部の例において、PPPは、中等度又は重度のPPPである。一部の例において、PPPは、重度のPPP(すなわち、ppPASIが少なくとも16)である。
【0059】
一部の例において、PPPの対象は、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体による治療前に、PPP-医師による総合評価(PPP-PGA)スコアの3(すなわち「中等度」)又は4(すなわち「重度」)を有する。
【0060】
一例において、本開示は、好中球性皮膚症を治療する方法であって、ここで好中球性皮膚症に罹患した対象へ、顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)へ結合するか又は特異的に結合する抗体の0.1~1mg/kgの投与量を投与することを含み、ここで該抗体が、21日毎に1回、複数回投与され、且つ抗体が:
(i) 配列番号:14に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖;又は
(ii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖:を含む、方法を提供する。
【0061】
一例において、本開示は、好中球性皮膚症を治療する方法であって、ここで好中球性皮膚症に罹患した対象へ、顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)へ結合するか又は特異的に結合する抗体の0.1~1mg/kgの投与量を投与することを含み、ここで該抗体が、21日毎に1回、複数回投与され、且つ抗体が:
(i)配列番号:14に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖;又は
(ii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖:を含む、方法を提供する。
【0062】
一例において、本開示は、HSを治療する方法であって、ここで好中球性皮膚症に罹患した対象へ、顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)へ結合するか又は特異的に結合する抗体の0.1~1mg/kgの投与量を投与することを含み、ここで該抗体が、21日毎に1回、複数回投与され、且つ抗体が:
(i) 配列番号:14に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖;又は
(ii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖:を含む、方法を提供する。
【0063】
一例において、本開示は、PPPを治療する方法であって、ここで好中球性皮膚症に罹患した対象へ、顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)へ結合するか又は特異的に結合する抗体の0.1~1mg/kgの投与量を投与することを含み、ここで該抗体が、21日毎に1回、複数回投与され、且つ抗体が:
(i)配列番号:14に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖;又は
(ii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖、及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖:を含む、方法を提供する。
【0064】
本開示は、本明細書記載の方法における使用に関する使用説明書と共に包装された本明細書記載の抗体を梱包したキットを追加的に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は、実施例1に説明したように、単回投与量0.1、0.3、0.6、0.8、及び1.0mg/kgのC1.2Gが投与された、健常対象における経時的な平均血清CSL324濃度を図示するグラフである。
【0066】
図2図2は、実施例1に説明したように、単回投与量0.1、0.3、0.6、0.8、及び1.0mg/kgのCSL324が投与された、健常対象における経時的な標的受容体(G-CSFR)占有率(%)を図示するグラフである。
【0067】
図3図3は、実施例2に説明したような、好中球性皮膚症の治療のために、CSL324が投与された対象の各コホートのスクリーニング時、治療期間及び経過観察期間を詳述する概略図である。
【0068】
図4図4は、実施例2に説明したような、好中球性皮膚症の治療のために、CSL324が投与された対象に関する、コホート#1に関する導入(lead in)及びコホート#2の遅れた開始(delayed start)を詳述する概略である。
【0069】
図5図5は、実施例1に説明したように、単回投与量0.1、0.3、0.6、0.8、及び1.0mg/kgのCSL324が投与された、健常対象における、好中球減少症毒性グレード(すなわち、グレード1、2、3、及び4)に従う絶対好中球カウント(ANC)を示している、色分け図である。
【0070】
図6図6は、実施例1に説明したように、0.6mg/kgのCSL324の3回投与量が投与された、健常対象における、好中球減少症毒性グレード(すなわち、グレード1、2、3、及び4)に従う絶対好中球カウント(ANC)を示している、色分け図である。
【0071】
図7図7は、HS患者由来の好中球上の、細胞遊走に関連したケモカイン受容体である、CXCR1の発現を図示するグラフを示す。図7Aは、CXCR1発現は、健常対照と比較して、HS患者試料の好中球では有意に高かったことを示す。図7Bは、HS患者の膿瘍及び小結節の数とHS患者における好中球上のCXCR1発現の相関を示す。
【0072】
図8図8は、CSL324の、G-CSF-誘導されたCXCR1(図8A)及びCXCR2(図8B)の好中球上の発現に対する作用を図示するグラフを示す。CSL324(灰色)は、G-CSFの存在しない、培地単独と比べ、CXCR1又はCXCR2のいずれの発現も変更しなかった。G-CSFのみの存在下での好中球の培養(黒色)は、培地単独と比べ、CXCR1及びCXCR2の細胞表面発現を増大した。CSL324とのプレインキュベーション(灰色)は、CXCR1及びCXCR2発現のG-CSF誘導したアップレギュレーションを減少することができた。
【0073】
図9図9は、CSL324の、G-CSF-誘導された好中球遊走に対する作用を図示するグラフを示す。G-CSF単独の存在下でのプレインキュベーションは、MIP-2への好中球の遊走を誘導し(図9A;黒色バー)、これはCSL324により、培地単独対照と同じレベルまで減少された(図9A;灰色バー)。G-CSFとのプレインキュベーションは、CXCR1及びCXCR2のアップレギュレーションを生じ、これはMIP-2への好中球の増加した遊走と相関していた(図9B及び9C)。
【0074】
図10図10は、乾癬患者における、好中球カウント並びに細胞遊走マーカー、CXCR1及びCXCR2の発現を図示するグラフを示す。乾癬患者の末梢血中の好中球カウント(図10A)は、罹患していない対照と比べ、有意に増加した。PASIスコアにより評価した乾癬の重症度を基にした層化は、好中球カウントは、PASIスコア10以上の個体において、有意に上昇したことを示した。好中球:リンパ球比(NLR)は、PASIスコア10以上の個体において、PASIスコア10未満の個体と比べ、有意に上昇した(図10B)。CXCR2の発現は、軽度(PASI<10)及び重度(PASI>10)の両方の乾癬において、好中球の表面上で有意に上昇した(図10C)。ケモカイン受容体CXCR1のレベルにおいては、統計学的に有意な変化は、検出されなかった(図10D)。ns=有意性なし
【0075】
図11図11は、21日毎のCSL324の5回IV注入により治療された掌蹠膿疱症(PPP)のヒト対象の掌蹠膿疱症の乾癬面積及び重症度指数(ppPASI)を示すグラフである。
【0076】
図12図12は、21日毎のCSL324の5回IV注入により治療された掌蹠膿疱症(PPP)のヒト対象の絶対好中球カウント(ANC)を示すグラフである。垂直の点線は、CSL324投与を示す。正常ANC範囲の下限及び上限は、各々、「LLN」及び「ULN」により示した。
【発明を実施するための形態】
【0077】
配列表の凡例
配列番号:1-C-末端ポリヒスチジンタグを持つホモ・サピエンス G-CSFR(hG-CSFR)のアミノ酸25-335
配列番号:2-C1.2のVH
配列番号:3-C1.2のVL
配列番号:4-C1.2GのVH
配列番号:5-C1.2GのVL
配列番号:6-C1.2のHCDR1
配列番号:7-C1.2のHCDR2
配列番号:8-C1.2のHCDR3
配列番号:9-C1.2のLCDR1
配列番号:10-C1.2のLCDR2
配列番号:11-C1.2のLCDR3
配列番号:12-C1.2のHCDR3のコンセンサス配列
配列番号:13-C1.2のLCDR3のコンセンサス配列
配列番号:14-安定化されたIgG4定常領域を伴うC1.2Gの重鎖
配列番号:15-カッパ定常領域を伴うC1.2Gの軽鎖
配列番号:16-安定化されたIgG4定常領域を伴い且つC-末端リジンを欠いているC1.2Gの重鎖。
【0078】
実施態様の説明
全般
本明細書を通じて、別に具体的に言及するか又は別に文脈が必要としない限りは、単独の工程、物質組成物(composition of matter)、工程の群又は物質組成物の群の言及は、1つ又は複数(すなわち、1以上)のそれらの工程、物質組成物、工程群又は物質組成物群を包含するものとする。
【0079】
当業者は、本開示は、具体的に説明されたもの以外の変動及び修飾を受けやすいことを理解するであろう。本開示は、そのような変動及び修飾を全て含むことは理解されるべきである。本開示はまた、個別に又は集合的に、本明細書において言及されたか又は指摘された全ての工程、特徴、組成物及び化合物、並びに任意の及び全ての組合せ、又は該工程又は特徴のいずれか2種以上を含む。
【0080】
本開示は、例証のみを目的とすることが意図される、本明細書記載の具体的例による範囲に限定されない。機能的に同等の生成物、組成物及び方法は、明確に本開示の範囲内である。
【0081】
本明細書の開示の例は、別に具体的に言及されない限りは、本開示の任意の他の例に、変更すべき所は変更して、適用されるものとする。
【0082】
別に具体的に規定されない限りは、全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学など)の業者により通常理解される意味と同じ意味を有するものとする。
【0083】
別に指摘しない限りは、本開示において利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学の技術は、当業者に周知の、標準手順である。そのような技術は、以下のような情報源の文献を通じて説明及び解釈されている:J. Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley and Sons (1984)、J. Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989)、T.A. Brown(編集者)、Essential Molecular Biology: A Practical Approach、第1及び2巻、IRL Press (1991)、D.M. Glover及びB.D. Hames(編集者)、DNA Cloning: A Practical Approach、第1-4巻、IRL Press (1995及び1996)、並びにF.M. Ausubelら(編集者)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988、現在までの全ての改訂版を含む)、Ed Harlow及びDavid Lane (編集者)、Antibody: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory, (1988)、並びにJ.E. Coliganら(編集者)、Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons (現在までの全ての改訂版を含む)。
【0084】
本明細書における可変領域及びその一部分、免疫グロブリン、抗体及びその断片の説明及び定義は、以下における考察により更に明確化されてよい:Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest、National Institutes of Health、Bethesda, Md., 1987及び1991、Borkら、J Mol. Biol. 242, 309-320, 1994、Chothia及びLesk、J. Mol Biol. 196:901 -917, 1987、Chothiaら、Nature 342, 877-883, 1989、及び/又は Al-Lazikaniら、J Mol Biol 273, 927-948, 1997。
【0085】
用語「及び/又は」、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解されるものとし、並びに両方の意味又はいずれかの意味について明確な裏付けを提供するものとする。
【0086】
本明細書を通じて、語句「含んでなる」、又は「含む」もしくは「含んでいる」などの変形は、一つの言及された要素、整数もしくは工程、又は要素、整数もしくは工程の群の包含を暗示するが、任意の他の要素、整数もしくは工程、又は要素、整数もしくは工程の群の排除ではないことが理解されるであろう。
【0087】
本明細書において使用される用語「から導かれた」は、特定された整数は、必ずしも特定の給源から直接ではないが、その給源から得ることができることを指摘するものとする。
【0088】
選択された定義
本明細書の「顆粒球コロニー-刺激因子」(G-CSF)の言及は、G-CSFの未変性の形状、その変異体の形状、例えばフィルグラスチム、並びにG-CSF又はフィルグラスチムのペグ化の形状を含む。この用語はまた、G-CSFR(例えば、ヒトG-CSFR)へ結合し、且つシグナル伝達を誘導する活性を保持しているG-CSFの変異体の形状も包含している。
【0089】
G-CSFは、顆粒球生成の主要な調節因子である。G-CSFは、骨髄間質細胞、内皮細胞、マクロファージ、及び線維芽細胞により生成され、且つ生成は、炎症刺激により誘導される。G-CSFは、G-CSF受容体(G-CSFR)を介して作用し、これは、初期骨髄性前駆細胞、成熟した好中球、単球/マクロファージ、T及びBリンパ球並びに内皮細胞上に発現される。
【0090】
限定ではなく単に命名を目的とし、ヒトG-CSFRの例証的配列は、NCBI参照配列:NP_000751.1に示される(及び配列番号:16において示される)。他の種由来のG-CSFRの配列は、本明細書に提供されるか及び/もしくは公に入手可能なデータベースの配列を用いて決定することができるか、並びに/又は標準技術(例えば、Ausubelら(編集者)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての改訂版を含む)、又はSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に説明されたような)を用いて決定されてよい。ヒトG-CSFRの言及は、hG-CSFRと略記され、且つカニクイザルG-CSFRの言及は、cynoG-CSFRと略記される。可溶性G-CSFRの言及は、G-CSFRのリガンド結合領域を含むポリペプチドを指す。G-CSFRのIg及びCRHドメインは、リガンド結合及び受容体二量体化に関与している(Laytonら、J. Biol Chem., 272: 29735-29741, 1997、及びFukunagaら、EMBO J. 10: 2855-2865, 1991)。この受容体のこれらの部分を含むG-CSFRの可溶性型は、受容体の様々な研究において使用されており、この受容体の位置78、163、及び228の遊離システインの変異は、リガンド結合に影響を及ぼすことなく、可溶性受容体ポリペプチドの発現及び単離を補助する(Mineら、Biochem., 43: 2458-2464 2004)。
【0091】
本明細書において使用される用語「好中球媒介性病態」は、治療的恩恵が循環好中球の除去又は数の減少により達成される、好中球の活性により引き起こされるあらゆる有害な病態又は疾患を包含すると理解されるであろう。
【0092】
本明細書において使用される用語「好中球減少症」は、正常範囲の下限を下回る絶対好中球カウント(ANC)、例えば、2000細胞/μL血液未満、又は1500細胞/μL血液未満、又は1000細胞/μL血液未満、例えば、500細胞/μL血液未満のANCを指すように使用される(Sibilleら、2010 Br J Clin Pharmacol 70(5): 736-748参照)。一部の例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体は、重度の好中球減少症を引き起こさない量で投与される。本明細書において使用される用語「重度の好中球減少症」は、1000細胞/μL血液未満の絶対好中球カウント(ANC)を指すように使用される。本開示の目的のためには、以下が、好中球減少症のグレードの規定に使用される:
・グレード1:<2.0×109/L(<2000/mm3)かつ>1.1×109/L(>1500/mm3
・グレード2:<1.5×109/L(<1500/mm3)かつ>1.0×109/L(>1000/mm3
・グレード3:<1.0×109/L(<1000/mm3)かつ>0.5×109/L(>500/mm3
・グレード4:<0.5×109/L(<500/mm3)。
【0093】
本明細書において使用される用語「予防している」、「予防する」又は「予防」は、本開示の抗体を投与し、これにより病態の少なくとも1種の症状の発生を停止又は妨害することを含む。この用語はまた、再発を予防又は妨害するための寛解状態の対象の治療も包含している。例えば、再発-寛解する多発性硬化症に罹患している対象は、寛解時に治療され、これにより再発を予防する。
【0094】
本明細書において使用される用語「治療している」、「治療する」又は「治療」は、本明細書記載の抗体を投与し、これにより特定された疾患又は病態の少なくとも1種の症状を軽減又は除去することを含む。
【0095】
本明細書において使用される用語「対象」は、ヒトを含む任意の動物、例えば哺乳動物を意味するものとする。例証的対象は、ヒト及び非ヒト霊長類を含むが、これらに限定されるものではない。例えば、対象はヒトである。
【0096】
当業者は、「抗体」は一般に、複数のポリペプチド鎖、例えばVLを含むポリペプチド及びVHを含むポリペプチドで作製された可変領域を含む抗体であると考えられることを知っているであろう。抗体はまた一般に、定常ドメインを含み、その一部は、定常領域に配置されることができ、これは重鎖の場合、定常断片又は結晶化可能断片(Fc)を含む。VH及びVLは、相互作用し、1又は少数の密に関連した抗原に特異的に結合することが可能である抗原結合領域を含むFvを形成する。一般に哺乳動物由来の軽鎖は、κ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかであり、哺乳動物由来の重鎖は、α、δ、ε、γ、又はμである。抗体は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであることができる。用語「抗体」はまた、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体及びキメラ抗体も包含している。
【0097】
用語「完全長抗体」、「インタクト抗体」又は「全抗体」は、抗体の抗原結合断片の対語として、その実質的にインタクトな形状の抗体を指すように、互換的に使用される。具体的には、全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を伴うものを含む。定常ドメインは、野生型の配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変種であってよい。
【0098】
本明細書において使用されるように、「可変領域」は、抗原に特異的に結合することが可能である本明細書に規定されたような抗体の軽鎖及び/又は重鎖の部分を指し、並びに相補性決定領域(CDR);すなわち、CDRl、CDR2、及びCDR3、並びにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む。可変領域の例は、3又は4のFR(例えば、FR1、FR2、FR3及び任意にFR4)を、3つのCDRと一緒に含む。VHは、重鎖の可変領域を指す。VLは、軽鎖の可変領域を指す。
【0099】
本明細書において使用される用語「相補性決定領域」(同義語CDR;すなわち、CDRl、CDR2、及びCDR3)は、その存在が抗原結合に必須である抗体可変領域のアミノ酸残基を指す。各可変領域は、典型的には、CDRl、CDR2及びCDR3として確定された、3つのCDR領域を有する。CDR及びFRに割当てられたアミノ酸位置は、タンパク質のKabat(Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987及び1991)、又はこの開示の実施における他の番号付けシステム、例えば、Chothia及びLesk、J. Mol Biol. 196: 901-917, 1987;Chothiaら、Nature 342, 877-883, 1989;及び/又は、Al-Lazikaniら、J Mol Biol 273: 927-948, 1997の基準の番号付けシステム;Lefrancら、Devel. And Compar. Immunol., 27: 55-77, 2003のIMGT番号付けシステム;又は、Honnegher及びPlukthun、J. Mol. Biol., 309: 657-670, 2001のAHO番号付けシステムに従い確定することができる。例えば、Kabatの番号付けシステムに従い、VHフレームワーク領域(FR)及びCDRは、以下のように位置づけられる:残基1-30(FRl)、31-35(CDR1)、36-49(FR2)、50-65(CDR2)、66-94(FR3)、95-102(CDR3)及び103-113(FR4)。Kabatの番号付けシステムに従い、VL FR及びCDRは、以下のように位置づけられる:残基1-23(FRl)、24-34(CDR1)、35-49(FR2)、50-56(CDR2)、57-88(FR3)、89-97(CDR3)及び98-107(FR4)。本開示は、Kabat番号付けシステムにより規定されたFR及びCDRに限定されないが、先に考察したものを含む、全ての番号付けシステムを含む。一例において、CDR(又はFR)の本明細書における言及は、Kabat番号付けシステムに従うそれらの領域に関する。
【0100】
抗体又はそれらの抗原結合部位の抗原との相互作用に関して、本明細書において使用される用語「結合する」は、その相互作用は、抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在によって決まることを意味する。例えば抗体は、全般的にタンパク質をというよりもむしろ、特異的タンパク質構造を認識し且つ結合する。抗体がエピトープ「A」に結合する場合、標識された「A」及びタンパク質を含有する反応物中の、エピトープ「A」(又は遊離の、標識されない「A」)を含む分子の存在は、抗体に結合した標識された「A」の量を減少するであろう。
【0101】
本明細書において使用される用語「特異的結合する」又は「特異的に結合する」は、本開示の抗体は、特定の抗原又はそれを発現している細胞と、別の抗原又は細胞と反応又は会合するよりも、より頻繁に、より迅速に、より長い期間及び/又はより大きい親和性で、反応又は会合することを意味するものとする。例えば、抗体は、G-CSFR(例えば、hG-CSFR)へ、他のサイトカイン受容体へ又は多反応性天然(polyreactive natural)抗体により(すなわち、ヒトにおいて天然に認められる様々な抗原に結合することが分かっている天然の抗体により)通常認められる抗原へ結合するよりも、実質的により大きい親和性(例えば、20倍又は40倍又は60倍又は80倍から100倍又は150倍又は200倍)で結合する。一般に、しかし必ずしもではなく、結合の言及は、特異的結合を意味し、且つ各用語は、他の用語についての明確な裏付けを提供すると理解されるものとする。
【0102】
本明細書において使用される用語「エピトープ」(同義語「抗原決定基」)は、それに抗体が結合するhG-CSFRの領域を意味すると理解されるものとする。この用語は、それに抗体が接触される特定の残基又は構造に、必ずしも限定されない。例えば、この用語は、タンパク質により接触された領域に広がるアミノ酸及び/又はこの領域の外側の5-10もしくは2-5もしくは1-3のアミノ酸を含む。一部の例において、エピトープは、hG-CSFRがフォールディングされた場合に、互いに密に配置される、一連の不連続アミノ酸、すなわち「立体構造エピトープ」を含む。例えば、立体構造エピトープは、配列番号:1の111-115、170-176、218-234及び/又は286-300に対応する1以上又は2以上又は全ての領域のアミノ酸を含む。当業者はまた、用語「エピトープ」は、ペプチド又はポリペプチドに限定されないことを知っている。例えば、用語「エピトープ」は、糖側鎖、ホスホリル側鎖、又はスルホニル側鎖などの、分子の化学的活性表面基(groupings)を含み、並びにある種の例において、特定の三次元構造の特徴、及び/又は特定の帯電特徴を有し得る。
【0103】
用語「競合的に阻害する」は、本開示の抗体(又はその抗原結合部位)は、別の抗体の、G-CSFRへの、例えばhG-CSFRへの結合を減少又は妨げることを意味すると理解されるものとする。これは、抗体(又は抗原結合部位)及び同じ又は重複するエピトープに結合する他方の抗体に起因し得る。前述のことから、この抗体は、他方の抗体の結合を完全に阻害する必要はなく、むしろこれは、統計学的に有意な量だけ、例えば、少なくとも約10%又は20%又は30%又は40%又は50%又は60%又は70%又は80%又は90%又は95%だけ、結合を減少することのみ必要であることは明らかであろう。好ましくは、この抗体は、少なくとも約30%だけ、より好ましくは少なくとも約50%だけ、より好ましくは少なくとも約70%だけ、またより好ましくは少なくとも約75%だけ、更により好ましくは少なくとも約80%もしくは85%だけ、及び更により好ましくは少なくとも約90%だけ、抗体の結合を減少する。結合の競合的阻害を決定する方法は、当該技術分野において公知であるか及び/又は本明細書に記載されている。例えば、本抗体は、G-CSFRへ、抗体の存在下又は非存在下のいずれかで曝露される。抗体の存在下で、抗体の非存在下よりもより少ない抗体が結合する場合、この抗体は、抗体の結合を競合的に阻害すると考えられる。一例において、競合的阻害は、立体障害に起因しない。
【0104】
2つのエピトープの文脈において「重複する」とは、1つのエピトープに結合する抗体(又はその抗原結合部位)が、他方のエピトープに結合する抗体(又は抗原結合部位)の結合を競合的に阻害することを可能にするのに十分な数のアミノ酸残基を、2つのエピトープが、共有することを意味するものとする。例えば「重複する」エピトープは、少なくとも1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は20個のアミノ酸を共有する。
【0105】
本明細書において使用される用語「中和する」は、抗体は、G-CSFRを介して細胞におけるG-CSF-媒介したシグナル伝達をブロック、減少、又は妨げることが可能であることを意味するものとする。中和を決定する方法は、当該技術分野において公知であるか及び/又は本明細書に記載されている。
【0106】
好中球媒介性病態の治療
一部の例において、好中球媒介性病態は、自己免疫疾患、炎症疾患、癌又は虚血再灌流障害である。
【0107】
自己免疫病態の例は、自己免疫性腸管障害(クローン病及び潰瘍性大腸炎など)、関節炎(関節リウマチ、乾癬性関節炎及びもしくは特発性関節炎、例えば若年性特発性関節炎など)、又は乾癬を含む。
【0108】
炎症状態の例は、炎症性神経学的病態(例えば、デビック病、脳のウイルス感染症、多発性硬化症及び視神経脊髄炎など)、炎症性肺疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患[COPD]もしくは喘息など)、又は炎症性眼病(例えば、ブドウ膜炎など)を含む。
【0109】
一例において、好中球媒介性病態は、虚血再灌流障害である。例えば虚血再灌流障害は、組織又は臓器移植(例えば腎臓移植など)に起因するか又は関連している。例えば本抗体は、例えば臓器摘出前に組織もしくは臓器移植レシピエントへ、及び/又は移植前の組織もしくは臓器へ投与されるか、又はエクスビボにおいて収集された組織又は臓器へ投与される。
【0110】
一例において、好中球媒介性病態は、好中球性皮膚症又は好中球性皮膚病変である。
【0111】
例証的自己免疫病態
一例において、好中球媒介性病態は、関節リウマチ(RA)である。RAのある種の亜型は、本開示に従い治療され得る。一つの場合において、中等度から重度のRAは、本明細書で開示された抗体を投与することにより治療される。一例において、対象は、確定された中等度から重度のRA、例えば多関節のRAを有する。
【0112】
本開示はまた、治療が特に困難であるようなRA患者のある亜集団を治療する方法も提供する。例えば一つの場合において、本開示は、それらのRAの治療のためのメトトレキセート又は腫瘍壊死因子の阻害剤に対し無反応であるか又は不耐性である患者など、療法に対し治療レベル以下の反応を有する患者を治療する方法を提供する。
【0113】
本開示はまた、疾患の状態を測定するために使用される指標を基にした、対象におけるRA症状を改善する方法も提供する。本明細書に開示された抗体を使用するRAの治療もまた、当該技術分野において公知の測定を用いて決定されてよい。
【0114】
RAの重症度を測定する方法は、当業者には明らかであろう。例えば、ベースラインと治療時の様々な時点の間での圧痛(tender)及び腫脹のある関節の数の比較は、関節状態及び治療に対する反応を評価する代表的様式である。米国リウマチ学会(ACR)のRAに関する関節カウント(Felsonら、Arthiritis & Rheumatology 38: 727-735, 1995)において、68の関節が圧痛について、且つ66が腫脹について評価された(股関節(hip)は、腫脹について評価されなかった)。欧州において主として利用された疾患活動性スコア(DAS)において、44-又は28-関節カウントのいずれかが、RAにおいて使用される。この関節カウントに加え、ACR評価基準は、複合スコアを含むために、以下の要素を含む:患者による総合状態(又は視覚的アナログスケール[VAS])、患者の疼痛、医師による総合状態、健康状態評価の問診票(HAQ;機能の測定)、及び急性相反応体(C-反応性タンパク質又は沈降速度のいずれか)。ACR20反応は、圧痛及び腫脹の関節カウントの20%の改善並びに複合基準におけるその他の5要素のうちの少なくとも3つの20%の改善に寄与するであろう。ACR50及び70反応は、これらの要素の少なくとも50%及び70%の改善を表す。ACRシステムは、変化を表すのみであるのに対し、DASシステムは、疾患活動性の現在の状態及び変化の両方を表す。DASスコア化システムは、RAの臨床試験から誘導された、加重した数式を使用する。例えばDAS28は、0.56(T28)+0.28(SW28)+0.70(Ln ESR)+0.014 GHであり、式中、Tは、圧痛関節数を表し、SWは、腫脹関節数であり、ESRは、赤血球沈降速度であり、並びにGHは、全般的健康状態である。DASの様々な値は、高い又は低い疾患活動性に加え、寛解を表し、並びに変化及びエンドポイントスコアは、反応の程度(なし、中程度、良好)別の患者のカテゴリー化を生じる。
【0115】
一例において、好中球媒介性病態は、乾癬である。本明細書において使用される用語「乾癬」は、局面型、滴状、インバース、膿疱性、及び紅皮性を含む、乾癬の全ての亜型を包含している。一例において、好中球媒介性病態は、局面型乾癬である(当該技術分野において「尋常性乾癬」又は「汎発型乾癬」としても公知)。ある種の乾癬亜型は、本開示に従い治療されてよい。一つの場合において、中等度から重度の乾癬は、本明細書において開示された抗体を投与することにより、治療される。一例において、対象は、確定された中等度から重度の乾癬、例えば慢性の中等度から重度の乾癬を有する。
【0116】
本開示はまた、治療が特に困難であり得る乾癬患者のある亜集団を治療する方法も提供する。例えば一つの場合において、本開示は、療法に対し治療レベル以下の反応を有する患者、例えば患者の乾癬の治療のための局所コルチコステロイド又は腫瘍壊死因子の阻害剤に対し無反応であるか又は不耐性である患者を治療する方法を提供する。
【0117】
本開示はまた、疾患の状態を測定するために使用した指標を基に対象における乾癬症状を改善する方法も提供する。本明細書において開示された抗体を使用する乾癬の治療はまた、当該技術分野において公知の測定を使用し、決定されてよい。
【0118】
乾癬の重症度を測定する方法は、当業者には明らかであろう。例えば、乾癬面積及び重症度指標(PASI)は、乾癬の疾患強度を評価するために皮膚科医により使用される。この指標は、関与する皮膚表面積と組合せた、3種の乾癬の病変の典型的徴候:紅斑、浸潤、及び落屑の定量的評価を基にしている。1978年のその開発以来、このツールは、臨床研究者により世界中で使用されている(Fredriksson T, Petersson U: Dermatologica 1978; 157: 238-41)。PASIは、PASI50(PASIのベースラインからの50%改善)、PASI75(PASIのベースラインからの75%改善)、PASI90(PASIのベースラインからの90%改善)、及びPASI100(PASIのベースラインからの100%改善)として指摘される。
【0119】
医師による総合評価(PGA)を使用し、乾癬の活動性及びその後の治療に対する臨床反応を評価する。これは、ベースライン評価に比べた全体の質(紅斑、鱗屑及び肥厚)並びに局面の程度をまとめる6ポイントスコアである。患者の反応は、悪い、不良(0-24%)、相応(25-49%)、良好(50-74%)、優秀(75-99%)、又はクリア(100%)として等級化される(van der Kerkhof P. Br J Dermatol 137:661-662, 1997)。乾癬を有する対象の疾患の状態の改善の他の測定は、以下により詳細に説明される、皮膚疾患に特化した生活の質の指標(DLQI)及び臨床的意義のある最小差(MCID)などの、臨床反応を含む。
【0120】
(喘息)
一例において、好中球媒介性病態は、喘息、例えば重度の喘息である。喘息の状況において、用語「治療している」又は「治療する」は、少なくとも1つの症状の発生又は増悪を減少、除去、又は防止するために、本明細書記載の抗体を投与することを指す。例えば本明細書記載の抗体は、喘息の発作を防止するために投与することができる。あるいは、又は加えて、抗体は、喘鳴、息切れ、胸部圧迫、及び/又は咳などの、喘息の症状を緩和するために、投与することができる。
【0121】
一例において、喘息は、アレルギー喘息である。本明細書において使用される用語「アレルギー喘息」(「急性喘息」とも称される)は、下気道の粘膜の下側に位置したマスト細胞を活性化するアレルゲン(例えばイエダニ又は花粉)により引き起こされる喘息を指す。マスト細胞の活性化は、鼻上皮を刺激する顆粒の放出の引き金をひき、粘液を生じ、及びそれに続けて気道内の平滑筋を収縮する。この平滑筋の収縮は、気道を収縮させ、喘息の症状を引き起こす。
【0122】
一例において、喘息は、好中球性喘息である。本明細書において使用される用語「好中球性喘息」は、対象の気道内の好中球の量の増加により特徴付けられる、喘息のサブセットを指す。好中球性喘息は、喀痰中の高い好中球カウント、例えば喀痰細胞の40%より多い又は60%より多いことによりカテゴリー化される。コルチコステロイドによる好中球性喘息の治療に対する反応は、多くは、好酸球型喘息の患者に比べ、有効ではないことがわかっている。好中球性喘息はまた、気道内のIL-8、IL-17、及びIFN-γのアップレギュレートされた発現に関連している。対照的に、気道内の好酸球のレベルの増加により特徴付けられる「好酸球型喘息」は、IL-5発現の増加及びTh2-ドミナントな炎症反応に関連づけられる。
【0123】
一例において、喘息は、混合型顆粒球性喘息である。本明細書において使用される用語「混合型顆粒球性喘息」は、対象の気道内の好中球及び好酸球の両方の量の増加により特徴付けられる喘息を指す。
【0124】
一例において、喘息は、重度の喘息である。本明細書において使用される用語「重度の喘息」は、標準療法による集中治療にもかかわらず、症状が、部分的にのみ管理されるか又は管理さえされない喘息を指す。重度の喘息は、重度の喘息の定義、評価及び治療に関する国際ERS/ATSガイドラインに従い定義され得る(Chungら、Eur Respir J. 2014; 43(2):343-73)。ERS/ATSガイドラインに従い、重度の喘息は、管理されなくなり始めるか又は治療にもかかわらず管理されない状態であり続けることを防ぐために、高投与量の吸入コルチコステロイド(ICS)と第二のコントローラー(例えば持続作用型β2アゴニスト、モンテルカスト、又はテオフィリン)の組合せによる治療及び/又は全身性コルチコステロイドによる治療を必要とする喘息として定義される。
【0125】
一例において、喘息は、中等度の喘息である。一例において、喘息は、中等度又は重度の喘息である。喘息は、症状が毎日生じる、症状が頻繁に及び通常数日続けて増悪する場合には、「中等度」として分類される。咳及び喘鳴は、正常な日常活動を破壊し、睡眠を困難にする。夜間の症状の増悪は、週に2回以上生じる。中等度の喘息において、肺機能は、治療しないと、おおまかに正常の60%~80%の間である。国際的な喘息対策の専門委員会(GINA)のガイドラインは、中等度の喘息を含む、喘息の重症度を分類するために使用することができる。
【0126】
一例において、喘息は、管理がうまくいかないか又は管理されない喘息である。重症度とは対照的に、喘息管理のレベルは、例えば、Juniperら、(1999) Eur Respir J 14:902-907、Juniperら、Respiratory Medicine (2006) 100:616-621、及びJuniperら、Respiratory Medicine (2005) 99:553-558に説明されているような喘息管理質問票(ACQ)を用いて決定することができる。
【0127】
一例において、喘息は、難治性喘息である。本明細書において使用される用語「難治性喘息」は、「致命的」又は「ほぼ致命的」喘息、並びに「重度の喘息」及び「ステロイド-非依存性及び/又は抵抗性喘息」、「管理が困難な喘息」、「管理がうまくいかない喘息」、「ブリットル喘息」又は「不可逆性喘息」などの喘息亜群を伴う患者を含む。難治性喘息は、米国胸部学会(ATS)ガイドラインに従い、以下に説明する一方又は両方の主要基準及び2つの副次的基準が満たされる場合に、定義することができる。主要基準は:軽度-中等度持続性喘息のレベルまでの管理を達成するための:(1)連続又はほぼ連続(一年の≧50%)の経口コルチコステロイドによる治療、(2)高-投与量吸入コルチコステロイドによる治療の必要要件である。副次的基準は:(1)例えば、LABA、テオフィリンもしくはロイコトリエンアンタゴニストなどの、吸入コルチコステロイドに加えた、コントローラ投薬による毎日の治療の必要要件、(2)毎日又はほぼ毎日ベースの短期作用型β-アゴニストの使用を必要とする喘息症状、(3)持続型気道閉塞(FEV1<80%と推定される;昼間の最大呼気速度(PEF)の変動>20%)、(4)1年に1回以上の喘息のための緊急来院、(5)1年に3回以上の経口ステロイド「バースト」、(6)経口又は吸入コルチコステロイド投与量の≦25%減少を伴う急激な増悪、(7)過去のほぼ致命的喘息事象である。難治性喘息を規定する目的のための、薬物(μg/日)及び投与量(パフ/日)は、以下である:(a)ジプロピオン酸ベクロメタゾン>1,260>40パフ(42μg/吸入)、>20パフ(84μg/吸入);(b)ブデソニド>1,200>6パフ;(c)フルニソリド>2,000>8パフ;(d)プロピオン酸フルチカゾン>880>8パフ(110μg)、>4パフ(220μg);(e)トリアムシノロンアセトニド>2,000>20パフ。
【0128】
「慢性喘息」は、アレルゲンによっては引き起こされず、むしろ急性喘息から得られた炎症の結果である。急性喘息は、慢性炎症を引き起こし、これは粘膜上皮が環境反応に対し過敏になり始める原因である。そのような単純な環境物質、例えば喫煙は、過敏な上皮が、大量の粘液を生じ且つ収縮するように刺激し得る。
【0129】
一例において、本抗体は、肺機能を増強するのに十分な量で投与される。肺機能は、例えばスパイロメトリーにより評価することができる。一例において、本抗体は、FEV1(努力肺活量の1秒量)を増加するのに十分な量で投与される。一例において、本抗体は、FVC(努力肺活量)を増加するのに十分な量で投与される。FEV1は、最大吸気で開始された最大呼気位の最初の1秒に吐かれる容積であり、且つ肺機能の1つの測定である。FVCは、試験期間中に呼出し得る空気の最大容積である。
【0130】
一例において、本抗体は、気道過敏症(AHR)を減少又は防止するのに十分な量で投与される。AHRは、吸入された収縮性アゴニストに対する気道の増大した感度、投与量-反応曲線の急な勾配、及びこのアゴニストに対するより大きい最大反応である。AHRは一般に、比較的低い肺機能及び喘息の症状に関連している。AHRは、例えば気管支チャレンジ試験により、評価することができる。これは最も頻繁には、メタコリン又はヒスタミンのような、収縮性アゴニストを使用する。これらの化学物質は、非喘息対象においてもまた気管支痙攣の引き金を引くが、AHR対象は、収縮性アゴニストに対するより低い反応閾値を有する。好適な方法は、文献(FitzPatrickら、Sci Rep, 2016 6:22751)に説明されている。
【0131】
(例証的好中球性皮膚症)
一例において、好中球媒介性病態は、HSである。HSは、アポクリン腺(体の一定の部位に認められる汗腺)及び毛包の皮膚障害であり、そこでは鼠径部及び時には腕の下側及び乳房の下側において、腫脹し、疼痛のある、炎症性病変又はしこりが発生している。HSは、アポクリン腺の出口が、発汗によりブロックされ始めたか、又は不完全な腺発達のために正常に排液できない場合に、生じる。腺中に閉じ込められた分泌物は、周囲組織への発汗及び細菌を推し進め、皮下硬結、炎症、及び感染を引き起こす。HSは、アポクリン腺を含む体の領域に限定される。これらの領域は、腋窩、乳輪、鼠径部、会陰、肛門周囲(circumanal)、及び臍周囲の領域である。
【0132】
HSのある亜型は、本開示に従い治療されてよい。一つの場合において、中等度から重度のHSは、本明細書において開示された抗体を投与することにより治療される。一例において、慢性HS、例えば中等度から重度の慢性HSは、本明細書において開示された抗体を投与することにより治療される。一例において、対象は、確定された中等度から重度のHS、例えば確定された慢性の中等度から重度のHSを有する。
【0133】
本開示はまた、治療が特に困難である、HS患者のある亜集団を治療する方法を提供する。例えば一つの場合において、本開示は、患者のHS治療に関して、経口抗生物質に対し無反応又は不耐性である患者など、療法に対し治療レベル以下の反応を有する患者を治療する方法を提供する。
【0134】
本開示はまた、疾患の状態を測定するために使用される指標を基に対象においてHS症状を改善する方法も提供する。
【0135】
本明細書において開示された抗体を使用するHSの治療はまた、当該技術分野において公知の測定を用いて決定されてもよい。HSの治療は、例えばHurley病気分類又はSartoriusスケールにおける改善、又は当業者に公知の任意の測定など、当該技術分野において公知のいずれかを用いて決定されてよい。
【0136】
例えば一つの場合において、HSを有する対象のHurleyステージ、又は本明細書記載のいずれかの測定の改善は、有効なHS治療の証拠である。一つの場合において、HSの重症度は、Hurley病期分類システムに従い決定される。Hurley病期分類は、HSを有する対象を、疾患レベルに応じた3つの異なる「ステージ」の1つに割り当てることを基にしている。より具体的には、ステージIは、洞管及び瘢痕化を伴わない、単独又は複数の膿瘍形成を指し;ステージIIは、管形成及び瘢痕化を伴う再発性膿瘍に加え、単独又は複数の広範に分離された病変を指し;並びに、ステージIIIは、広範もしくはほぼ広範に及ぶ、又は全領域にわたる複数の交通のある管及び膿瘍を指す。HurleyステージIIIは、最も重度の形状である。一つの場合において、HSを有する対象は、その一つは少なくともHurleyステージIIである、少なくとも2つの異なる解剖学的領域(例えば、左及び右の腋窩;又は、左腋窩及び左鼠径-大腿部襞(inguinal-crural fold))に存在するHS病変を有する。別の例において、治療される対象は、少なくともHurleyステージIIである少なくとも一つの病変を有する。
【0137】
一つの場合において、本明細書において開示された抗体によるHSの治療は、所定のベースライン、例えばTNFαインヒビターによる治療前の対象のHurleyステージと比べ改善されたHurleyスコアにより決定される。一つの場合において、Hurleyスコアの改善は、対象のHurleyスコアは、抗体による治療後改善されたか又は維持されているかのいずれかであることを指摘している。
【0138】
HSの重症度は、標準の臨床定義に従い決定されてよい。例えば、HSに関するHurley病期分類{III対(I又はII)}を参照されたい(Poli F、Jemec GBE、Revuz J.、Clinical Presentation. In: Jemec GBE, Revuz J, Leyden JJ編集者、Hidradenitis、Springer, New York, 2006, pp 11-24)。HurleyステージIII疾患は、化膿性汗腺炎の最も重度のステージであり、これは広範又はほぼ広範に及ぶ罹患した領域を反映している。
【0139】
一例において、Sartoriusスケールは、抗体の有効性を測定するための指標として使用されてよい。Sartoriusスケールは、Sartoriusらにより文献(British Journal of Dermatology, 149: 211-213)において説明されている。簡単に述べると、以下の転帰の変数は、Sartoriusスケールを基にした報告において明確に言及されている:(1)関与する解剖学的領域(腋窩、鼠径部、臀部又は他の領域又は左及び/もしくは右の炎症領域:関与した1領域当たり3ポイント);(2)病変の数及びスコア(膿瘍、小結節、瘻孔、瘢痕:関与した全ての領域の1病変当たりのポイント:小結節2;瘻孔4;瘢痕1;その他1);(3)各領域における2つの関連病変、すなわち小結節と瘻孔の間の最長距離、又は1病変のみの場合はサイズ(<5cm、2;<10cm、4;>10cm、8);並びに、(4)全ての病変は、正常な皮膚により明らかに分離されているかどうか?各領域において(イエス0/ノー6)。これらの変数に数値スコアを割り当てることにより、疾患強度は、上限がないスケールで、より臨床上意義のある様式で定量化することができる。総スコア並びに外科的又は他の介入のために選択された選択領域のスコアを、計算し、且つ経時的に追跡することができる。
【0140】
一例において、本明細書において開示された抗体によるHSの治療は、治療される対象のHiSCR(化膿性汗腺炎臨床反応)の達成に従い決定される。HisSCRは、ベースラインに比べた、対象における総炎症病変(膿瘍及び炎症性小結節)カウント(ANカウント)の少なくとも50%減少として規定され、膿瘍カウントの増加はなく及び排液性瘻孔カウントの増加もない。一つの場合において、対象におけるHSの治療は、炎症病変(膿瘍及び小結節)カウントの少なくとも50%減少として規定される。HiSCRスコア化システムは、治療前及び後に、罹患した対象における化膿性汗腺炎の活動性を評価するためにデザインされた。
【0141】
別の実施例において、本明細書において開示された抗体によるHSの治療は、任意に治療期間の最終時(16週目など)での、少なくとも1グレード又は2グレードのベースラインPGAスコアからの改善(すなわち減少)を伴う、クリア(0)、最小(1)、又は軽度(2)の、以下に規定したような医師による総合評価(PGA)スコアを達成することにより規定される。ベースラインPGAスコアは、治療の開始直前に測定されたPGAスコアであり、これは治療期間後に得られたPGAスコアと比較される。
【0142】
【化1】
【0143】
一つの場合において、本開示は、HSを罹患した対象のDLQIスコアを改善する方法を提供する。一つの場合において、DLQIスコアは、対象における疾患の状態の「なし」又は「小さい影響」と相関している、スコア、例えば統計学的に有意なスコアを達成することにより決定される。
【0144】
別の実施例において、本明細書において開示された抗体によるHSの治療は、国際化膿性汗腺炎重症度スコアシステム(IHS4)を達成することとして規定される。IHS4は、HSの動的(dynamic)重症度評価のためのバリデートされたツールであり(Zouboulisら、Br J Dermatol, 177: 1401-09, 2017)、且つこれは、断面的疾患重症度よりも、治療反応性を評価するように設計されている(Kimballら、Br J Dermatol, 171: 1434-42, 2014)ので、HiSCR評価を改善している。IHS4スコア(ポイント)=(小結節の数×1)+(膿瘍の数×2)+[排液性トンネル(瘻孔/膿瘻)の数×4]。3以下のスコアは、軽度のHSを意味し、4-10のスコアは、中等度HSを意味し、11以上のスコアは、重度のHSを意味する(Zouboulisら、Br J Dermatol, 177: 1401-09, 2017)。一例において、対象は、治療前にIHS4スコア≧4を有する。
【0145】
一例において、本開示は、HSを有する対象において炎症病変の数(ANカウント)を減少する方法を提供し、該方法は、本明細書において開示された抗体を対象へ、全身的に投与することを含み、その結果ANカウントは低下される。ANカウントの低下は、10%より大きいものであってよく、例えばANカウントは、ベースラインANカウントに比べ、対象において少なくとも50%だけ減少されてよい。対象はまた、本明細書において開示された抗体による治療後、HSの他の改善を示してもよく、例えば対象は、抗体の投与後、膿瘍カウントが増加しない及び/又は排液性瘻孔カウントが増加しない。
【0146】
一例において、一例において、好中球媒介性病態は、PPPである。PPPは、手及び/又は足の裏が罹患する慢性膿疱性病態である。PPPは、乾癬を伴うか又はあらゆる皮膚疾患を伴わずに発生し得る。PPPは、掌及び足底上に最も一般的であるエクリン汗腺に影響を及ぼす。PPPは、掌及び/又は足底上に痒い又は痛い膿疱の一団(crop)として存在する。PPPは、一方又は両方の手及び/又は脚に生じ得る。鱗状の紅斑(red patch)も、膿疱に関連して認められ得る。この疾患のより慢性的ステージにおいて、皮膚は、乾燥し、且つ深い裂け目(皮膚の亀裂)を伴い肥厚し得る。通常正常皮膚領域と罹患した皮膚領域の間には明確な境界が存在する。PPPは、重症度が変動し、且つ何年も続くことがある。不快感はかなりであり、仕事を妨げ、生活の質に影響を及ぼす。指先に影響を及ぼすPPPの形は、アロポー稽留性肢端皮膚炎又は肢端膿疱症と称される。これは、罹患した指の爪の破壊に繋がり得る。
【0147】
PPPのある亜型は、本開示に従い治療され得る。一つの場合において、中等度から重度のPPPは、本明細書において開示された抗体を投与することにより治療される。一例において、慢性PPP、例えば中等度から重度の慢性PPPは、本明細書において開示された抗体を投与することにより治療される。一例において、対象は、確定された中等度から重度のPPP、例えば確定された慢性の中等度から重度のPPPを有する。
【0148】
本開示はまた、特に治療が困難であるPPP患者のある亜集団を治療する方法も提供する。例えば一つの場合において、本開示は、局所コルチコステロイド、ビタミンD3アナログ、エトレチナート、及び患者のPPPの治療のための光療法に反応しない患者など、療法に対し治療レベル以下の反応を有する患者を治療する方法を提供する。
【0149】
本開示はまた、疾患の状態の測定に使用される指標を基に対象におけるPPP症状を改善する方法も提供する。
【0150】
本明細書において開示された抗体を使用するPPPの治療はまた、当該技術分野において公知の測定を使用し決定されてよい。PPPの治療は、例えば、ppPASIの改善、又は当業者に公知の任意の測定など、当該技術分野において公知の測定のいずれかを使用し決定されてよい。
【0151】
ppPASIは、慢性局面型乾癬の重症度の評価に広範に使用される、乾癬面積及び重症度指数を基にした評価ツールである。重症度、紅斑、膿疱及び落屑の総数を含むパラメータは、1-4のスケール上にスコア化され、その後関与する面積及び部位(掌又は足底)について補正される。4つの値の合計は、最終ppPASIを生じ、これは0(PPPなし)から72(最も重度のPPP)までの範囲である(Bhushanら、Br J Dermatol, 145: 546-53, 2001)。ppPASIは、スクリーニング時、投与前に評価することができる。一例において、本明細書に開示されたような抗体の投与は、ppPASIスコアを減少する。一例において、対象は、本明細書記載のような治療の開始前に、ppPASIスコア≧12を有する。一例において、対象は、本明細書記載のような治療の開始後に、ppPASIスコア<12を有する。
【0152】
一例において、本明細書に開示されたような抗体の投与は、PPPに罹患した対象において、掌-足底の医師による総合評価(PGA)スコアを減少する。PGAは、紅斑、鱗屑、及び硬結を基にした全ての乾癬の病変の平均評価である(Robinson, 2011)。PGAは、本抗体の投与前に評価され得る。
【0153】
PPPの他の反応指標は、以下を含む:PASIスコア化システム、治験責任医師による総合評価mod2011(IGA mod2011)、皮膚疾患に特化した生活の質の指標(DLQI)、及び対象による総合評価(SGA)、作業生産性及び活動の機能障害に関する問診票-乾癬(WPAI-PSO)、手掌-膿疱の生活の質に関する指標(ppQoL-Index)。
【0154】
抗体
例証的抗体は、G-CSFRに結合し且つG-CSFシグナル伝達を阻害する。そのような抗体は、WO2012/171057に説明されている。
【0155】
例証的抗体は、G-CSFに結合し且つG-CSFシグナル伝達を阻害する。そのような抗体は、WO2018/145206に説明されている。
【0156】
抗体を産生する方法は、当該技術分野において公知であり、及び/又はHarlow及びLane(編集者)、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)に説明されている。一般に、そのような方法において、G-CSFR又はG-CSF(例えば、hG-CSFR又はhG-CSF)又はそれらの領域(例えば、細胞外ドメイン)又はそれらの免疫原性断片もしくはエピトープ又はそれらを発現及び展示している細胞(すなわち免疫原)は、任意に、いずれかの好適なもしくは所望の担体、アジュバント、又は医薬として許容し得る賦形剤と共に製剤化され、これが、非ヒト動物、例えば、マウス、ニワトリ、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギ又はブタなどへ投与される。この免疫原は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、又は他の公知の経路により投与されてよい。
【0157】
モノクローナル抗体は、本開示により企図される抗体の一つの例証的形状である。用語「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、同じ抗原(複数可)へ、例えば、抗原内の同じエピトープへ、結合することが可能である均一な抗体集団を指す。この用語は、抗体の給源又はそれの製造方法に関して限定されることを意図しない。
【0158】
mAbの作製のために、例えば、US4196265において又は前掲のHarlow及びLaneの文献(1988)に例示された手順など、数多くの公知の技術のいずれか一つを使用することができる。
【0159】
あるいは、ABL-MYC技術(NeoClone, Madison WI 53713, USA)は、MAbを分泌する細胞株を作製するために使用される(例えば、Largaespadaら、J. Immunol. Methods. 197: 85-95, 1996に記載されたように)。
【0160】
抗体はまた、例としてUS6300064及び/又はUS5885793に説明されたような、例えばファージディスプレイライブラリーなどのディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより、作製又は単離されることもできる。例えば本発明者らは、ファージディスプレイライブラリーから完全ヒト抗体を単離している。
【0161】
本開示の抗体は、合成抗体であってよい。例えば本抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体又は脱免疫化(de-immunized)抗体である。
【0162】
一例において、本明細書記載の抗体は、キメラ抗体である。用語「キメラ抗体」とは、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種(例えば、マウスなどマウス種)由来の抗体における対応する配列と同一又は相同であるか、又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属するが、一方でその鎖(複数可)の残りは、別の種(例えばヒトなどの霊長類)由来の抗体における対応する配列と同一又は相同であるか、もしくは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属するような、抗体を指す。キメラ抗体の作製方法は、例えば、US4816567;及び、US5807715に説明されている。
【0163】
本開示の抗体は、ヒト化又はヒトであってよい。
【0164】
用語「ヒト化抗体」は、非ヒト種からの抗体由来の抗原結合部位又は可変領域を有し、残りの抗体構造は、ヒト抗体の構造及び/又は配列を基にしているキメラ抗体のサブクラスを指すと理解されるものとする。ヒト化抗体において、抗原結合部位は、一般に、ヒト抗体の可変領域内の好適なFRの上にグラフトされた非ヒト抗体からの相補性決定領域(CDR)、並びにヒト抗体からの残りの領域を含む。抗原結合部位は、野生型(すなわち、非ヒト抗体のそれと同一)であるか、又は1以上のアミノ酸置換により修飾されてよい。一部の場合において、ヒト抗体のFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。
【0165】
非ヒト抗体又はその一部(例えば可変領域)をヒト化する方法は、当該技術分野において公知である。ヒト化は、US5225539、又はUS5585089の方法に従い実行されることができる。抗体をヒト化する他の方法は、排除されない。G-CSFに結合し且つG-CSFシグナル伝達を阻害するヒト化抗体の例は、WO2018/145206に説明されている。
【0166】
本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、可変領域(例えば、VH、VL)、及び任意にヒトにおいて、例えばヒト生殖細胞もしくは体細胞において、認められる配列に由来する又は対応する定常領域を有する抗体を指す。
【0167】
例証的ヒト抗体は、本明細書に説明されており、且つC1.2及びC1.2G及び/又はそれらの可変領域を含む。これらのヒト抗体は、非ヒト抗体と比べ、ヒトにおける低下された免疫原性の利点を提供する。例証的抗体は、WO2012/171057に説明されており、これは引用により本明細書中に組み込まれている。
【0168】
G-CSFシグナル伝達を阻害する追加の化合物
一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物は、G-CSF又はG-CSFRに結合する。一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物は、G-CSFに結合する。一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物は、G-CSFRに結合する。
【0169】
一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物は、タンパク質である。
【0170】
一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物は、G-CSFRへ結合するか又は特異的に結合し、且つG-CSFシグナル伝達を中和する抗体可変領域を含むタンパク質である。G-CSFRに「結合する」タンパク質又は抗体の本明細書の言及は、G-CSFRへ「特異的に結合する」タンパク質又は抗体に関する文字通りの裏付けを提供する。
【0171】
一部の例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物は、Fvを含むタンパク質である。一部の例において、このタンパク質は、以下からなる群から選択される:
(i)単鎖Fv断片(scFv);
(ii)二量体scFv(di-scFv);又は
(iv)ダイアボディ;
(v)トリアボディ;
(vi)テトラボディ;
(vii)Fab;
(viii)F(ab’)2
(ix)Fv;
(x)抗体の定常領域Fc又は重鎖定常ドメイン(CH)2及び/もしくはCH3に連結された(i)から(ix)の一種;又は
(xi)アルブミン、その機能性断片もしくは変種、又はアルブミンに結合するタンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合断片)に連結された(i)から(ix)の一種。
【0172】
一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物は、抗体のFc領域を含むタンパク質である。
【0173】
一例において、このタンパク質は、細胞の表面上に発現されたhG-CSFRへ、少なくとも約5nMの親和性で結合する抗体である。一例において、このタンパク質は、細胞の表面上に発現されたhG-CSFRへ、少なくとも約4nMの親和性で結合する抗体である。一例において、このタンパク質は、細胞の表面上に発現されたhG-CSFRへ、少なくとも約3nMの親和性で結合する抗体である。一例において、このタンパク質は、細胞の表面上に発現されたhG-CSFRへ、少なくとも約2nMの親和性で結合する抗体である。一例において、このタンパク質は、細胞の表面上に発現されたhG-CSFRへ、少なくとも約1nMの親和性で結合する抗体である。
【0174】
一例において、このタンパク質は、hG-CSFRを発現しているBaF3細胞のG-CSF-誘導された増殖を、少なくとも約5nMのIC50で阻害する抗体である。一例において、このタンパク質は、hG-CSFRを発現しているBaF3細胞のG-CSF-誘導された増殖を、少なくとも約4nMのIC50で阻害する抗体である。一例において、このタンパク質は、hG-CSFRを発現しているBaF3細胞のG-CSF-誘導された増殖を、少なくとも約3nMのIC50で阻害する抗体である。一例において、このタンパク質は、hG-CSFRを発現しているBaF3細胞のG-CSF-誘導された増殖を、少なくとも約2nMのIC50で阻害する抗体である。一例において、このタンパク質は、hG-CSFRを発現しているBaF3細胞のG-CSF-誘導された増殖を、少なくとも約1nMのIC50で阻害する抗体である。一例において、このタンパク質は、hG-CSFRを発現しているBaF3細胞のG-CSF-誘導された増殖を、少なくとも約0.5nMのIC50で阻害する抗体である。
【0175】
(単一ドメイン抗体)
一部の例において、本開示の化合物は、単一ドメイン抗体(これは用語「ドメイン抗体」又は「dAb」と互換的に使用される)であるか又はこれを含むタンパク質である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変領域の全て又は一部を含む1本のポリペプチド鎖である。ある例において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、US6248516参照)。
【0176】
(ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)
一部の例において、本開示のタンパク質は、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又はWO98/044001及び/もしくはWO94/007921に説明されたものなどのより高次のタンパク質複合体であるか又はこれらを含む。
【0177】
(1本鎖Fv(scFv))
当業者は、scFvは、1本鎖ポリペプチド中のVH領域及びVL領域、並びにscFvが抗原結合にとって望ましい構造(すなわち、互いに会合してFvを形成する1本鎖ポリペプチドのVH及びVL)を形成することができるようにするVHとVLの間のポリペプチドリンカーを含むことを知っているであろう。例えば、このリンカーは、scFvについてより好ましいリンカーの一つである(Gly4Ser)3を含む12個を超えるアミノ酸残基を含む。
【0178】
(重鎖抗体)
重鎖抗体は、これらが重鎖を含むが、軽鎖は含まない限りにおいて、多くの他の抗体の形と構造的に異なる。従ってこれらの抗体はまた、「重鎖のみ抗体」と称される。重鎖抗体は、例えばラクダ科の動物及び軟骨魚類において認められる(IgNARとも称される)。
【0179】
ラクダ科の動物由来の重鎖抗体及びそれらの可変領域の全般的説明、並びにそれらの製造及び/又は単離及び/又は使用の方法は、とりわけ以下の参考文献において認められる:WO94/04678、WO97/49805及びWO97/49805。
【0180】
軟骨魚類由来の重鎖抗体及びそれらの可変領域の全般的説明、並びにそれらの製造及び/又は単離及び/又は使用の方法は、とりわけWO2005/118629において認められる。
【0181】
(他の抗体及び抗体断片)
本開示はまた、例えば以下のような、他の抗体及び抗体断片も企図している:
(i)US5,731,168に説明されたような、「キー・ホール」二重特異性タンパク質;
(ii)例えばUS4,676,980に説明されたような、ヘテロコンジュゲートタンパク質;
(iii)例えば、US4,676,980に説明されたような、化学架橋物質を用いて作製されたヘテロコンジュゲートタンパク質;並びに
(iv)Fab3(例えば、EP19930302894に説明されたようなものなど)。
【0182】
(V-様タンパク質)
本開示の化合物の例は、T細胞受容体である。T細胞受容体は、抗体のFvモジュールに類似した構造へ組合せられる、2つのV-ドメインを有する。Novotnyら、Proc Natl Acad Sci USA 88: 8646-8650, 1991は、どのようにしてT細胞受容体の2つのV-ドメイン(α及びβと称される)が、融合され、1本鎖ポリペプチドとして発現されるか、更には抗体scFvに直接類似しているように疎水性を低下するためにどのようにして表面残基を変更するかを説明している。1本鎖T細胞受容体又は2つのV-α及びV-βドメインを含む多量体T細胞受容体の製造を説明する他の刊行物は、WO1999/045110又はWO2011/107595を含む。
【0183】
抗原結合ドメインを含むその他の非-抗体タンパク質は、V-様ドメインを伴うタンパク質を含み、これは一般に単量体である。そのようなV-様ドメインを含むタンパク質の例は、CTLA-4、CD28及びICOSを含む。そのようなV-様ドメインを含むタンパク質の更なる開示は、WO1999/045110に含まれる。
【0184】
(アドネクチン)
一例において、本開示の化合物は、アドネクチンである。アドネクチンは、ループ領域が抗原結合を付与するように変更されている、ヒトフィブロネクチンの10番目のフィブロネクチンIII型(10Fn3)ドメインを基にしている。例えば、10Fn3ドメインのβ-サンドイッチの一方の末端の3つのループは、アドネクチンが抗原を特異的に認識することができるように、操作され得る。更なる詳細については、US20080139791又はWO2005/056764を参照されたい。
【0185】
(アンチカリン)
更なる例において、本開示の化合物は、アンチカリンである。アンチカリンは、リポカインに由来し、これは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質などの小型の疎水性分子を輸送する細胞外タンパク質ファミリーである。リポカリンは、抗原に結合するように操作され得る、円錐構造の開放端に複数のループを伴う強固なβ-シート二次構造を有する。そのように操作されたリポカリンは、アンチカリンとして公知である。アンチカリンの更なる説明については、US7250297B1又はUS20070224633を参照されたい。
【0186】
(アフィボディ)
更なる例において、本開示の化合物は、アフィボディである。アフィボディは、抗原に結合するように操作され得る、ブドウ球菌のプロテインAのZドメイン(抗原結合ドメイン)由来のスカフォールドである。このZドメインは、およそ58個のアミノ酸の3つのヘリックス束からなる。ライブラリーが、表面残基の無作為化により作製された。更なる詳細については、EP1641818を参照されたい。
【0187】
(アビマー)
更なる例において、本開示の化合物は、アビマーである。アビマーは、A-ドメイン足場ファミリー由来のマルチドメインタンパク質である。およそ35個のアミノ酸の未変性のドメインは、限定されたジスルフィド結合された構造を採用する。多様性は、A-ドメインのファミリーにより示された天然の変動のシャッフリングにより作製される。更なる詳細については、WO2002088171を参照されたい。
【0188】
(DARPin)
更なる例において、本開示の化合物は、デザインされたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)である。DARPinは、内在性膜タンパク質の細胞骨格への連結を媒介するタンパク質ファミリーであるアンキリンに由来している。単独のアンキリンリピートは、2つのα-ヘリックス及びβ-ターンからなる、33残基モチーフである。これらは、各リピートの最初のα-ヘリックス及びβ-ターン中の残基を無秩序化することにより、異なる標的抗原に結合するように操作され得る。それらの結合面を、モジュールの数を増加することにより、増加させることができる(親和性成熟法)。更なる詳細については、US20040132028を参照されたい。
【0189】
(可溶性G-CSFR)
本開示はまた、G-CSF相互作用に関して天然の膜-会合したG-CSFRと競合する、G-CSFRの可溶型も企図している。当業者は、この受容体の可溶型を容易に調製することができ、例えば、米国特許第5,589,456号、及びHonjoら、Acta Crystallograph Sect F Struct Biol Cryst Commun. 61(Pt 8):788-790, 2005を参照されたい。
【0190】
定常領域
本開示の化合物及び抗体において有用な定常領域の配列は、多くの様々な給源から得ることができる。一部の例において、本抗体の定常領域又はその一部は、ヒト抗体に由来する。この定常領域又はその一部は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む任意の抗体クラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意の抗体アイソタイプに由来してよい。一例において、この定常領域は、ヒトアイソタイプIgG4又は安定化されたIgG4定常領域である。
【0191】
一例において、定常領域のFc領域は、例えば、未変性又は野生型ヒトIgG1又はIgG3のFc領域と比べ、エフェクター機能を誘導する低下した能力を有する。一例において、このエフェクター機能は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/又は抗体依存性貪食(ADCP)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)である。Fc領域を含むタンパク質のエフェクター機能のレベルを評価する方法は、当該技術分野において公知であり及び/又は本明細書において説明されている。
【0192】
一例において、このFc領域は、IgG4 Fc領域(すなわち、IgG4定常領域由来)、例えばヒトIgG4 Fc領域である。好適なIgG4 Fc領域の配列は、当業者には明らかであり、及び/又は公に利用可能なデータベースにおいて入手可能であろう(例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)から入手可能)。
【0193】
一例において、この定常領域は、安定化されたIgG4定常領域である。用語「安定化されたIgG4定常領域」は、Fabアーム交換もしくはFabアーム交換を受ける性向、又は半抗体の形成もしくは半抗体を形成する性向を減少するように修飾されたIgG4定常領域を意味することが理解されるであろう。「Fabアーム交換」は、ヒトIgG4に関するタンパク質修飾の種類を指し、ここでIgG4重鎖及び連結した軽鎖(半分子)は、別のIgG4分子からの重鎖-軽鎖対とスワップされる。従ってIgG4分子は、2つの異なる抗原を認識する、2つの異なるFabアームを獲得する(二重特異性分子を生じる)。Fabアーム交換は、インビボにおいて天然に生じ、且つ精製された血液細胞又は還元されたグルタチオンなどの還元剤により、インビトロにおいて誘導され得る。「半抗体」は、IgG4抗体が解離し、各々、1本重鎖及び1本軽鎖を含む2つの分子を形成する場合に、生じる。
【0194】
一例において、安定化されたIgG4定常領域は、Kabatシステムに従うヒンジ領域の241位にプロリンを含む(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC、米国保健社会保障省(DHHS)、1987及び/又は1991)。この位置は、EU番号付けシステムに従うヒンジ領域の228位に対応している(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC、US DHHS、2001、及びEdelmanら、Proc. Natl. Acad. USA, 63, 78-85, 1969)。ヒトIgG4において、この残基は一般に、セリンである。セリンのプロリンとの置換後、IgG4ヒンジ領域は、配列CPPCを含む。これに関して、当業者は、この「ヒンジ領域」は、抗体の2本のFabアームに可動性を付与するFc領域及びFab領域を連結する抗体重鎖定常領域のプロリン-リッチ部分であることを知っているであろう。このヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド結合に関与しているシステイン残基を含む。これは一般に、Kabat番号付けシステムに従い、ヒトIgG1のGlu226からPro243までの区間として規定される。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、同じ位置に、重鎖間ジスルフィド(S-S)結合を形成する最初及び最後のシステイン残基を配置することにより、IgG1配列と整列される(例えば、WO2010/080538参照)。
【0195】
安定化されたIgG4抗体の追加例は、ヒトIgG4の重鎖定常領域内の409位のアルギニン(EU番号付けシステムに従う)が、リジン、トレオニン、メチオニン、又はロイシンにより置換されている抗体である(例えば、WO2006/033386に説明されている)。この定常領域のFc領域は、追加して又は代わりに、405位に対応する位置に(EU番号付けシステムに従う)、アラニン、バリン、グリシン、イソロイシン及びロイシンからなる群から選択される残基を含む。任意に、ヒンジ領域は、241位にプロリン(すなわち、CPPC配列)を含む(先に説明されているように)。
【0196】
別の例において、Fc領域は、低下されたエフェクター機能を有するように修飾された領域、すなわち「非免疫賦活性Fc領域」である。例えば、このFc領域は、268、309、330及び331からなる群から選択される1以上の位置に置換を含むIgG1 Fc領域である。別の例において、このFc領域は、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失の変化の1以上、並びに/又はA327G、A330S及びP331Sの変化の1以上を含むIgG1 Fc領域である(Armourら、Eur J Immunol. 29:2613-2624, 1999;Shieldsら、J Biol Chem. 276(9):6591-604, 2001)。非-免疫賦活性Fc領域の追加例は、例えば、Dall'Acquaら、J Immunol. 177 : 1129-1138 2006;及び/又は、Hezareh J Virol ;75: 12161-12168, 2001に説明されている。
【0197】
別の例において、このFc領域は、例えばIgG4抗体由来の少なくとも1つのCH2ドメイン及びIgG1抗体由来の少なくとも1つのCH3ドメインを含む、キメラFc領域であり、ここでFc領域は、以下からなる群から選択される1以上のアミノ酸位置に置換を含む:240、262、264、266、297、299、307、309、323、399、409及び427(EU番号付け)(例えば、WO2010/085682において説明されたように)。例証的置換は、240F、262L、264T、266F、297Q、299A、299K、307P、309K、309M、309P、323F、399S、及び427Fを含む。
【0198】
タンパク質生成
一例において、任意の例に従う本明細書記載の抗体は、組換え体である。
【0199】
組換え抗体の場合において、同じものをコードしている核酸は、発現構築体又はベクターへクローニングされることができ、これは次に、大腸菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎(HEK)細胞、又はそうでなければその抗体を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞へ、形質移入される。抗体の発現に使用される例証的細胞は、CHO細胞、骨髄腫細胞又はHEK細胞である。これらの目的を達成するための分子クローニング技術は、当該技術分野において公知であり、且つ例えば、Ausubelら(編集者)、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988、現在までの改訂版を含む)、又はSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に説明されている。多種多様なクローニング法及びインビトロ増幅法が、組換え核酸の構築に適している。組換え抗体を作製する方法は、当該技術分野において公知であり、例えばUS4816567又はUS5530101を参照されたい。
【0200】
単離後、核酸は、更なるクローニングのため(DNAの増幅)又は無細胞システムもしくは細胞における発現のために、発現構築体又は発現ベクター中のプロモーターへ機能的に連結され挿入される。
【0201】
本明細書において使用される用語「プロモーター」は、その最も広汎な状況とみなされ、且つ正確な転写開始に必要とされるTATAボックス又は開始エレメントを含むゲノム遺伝子の転写制御配列を、例えば発生刺激及び/もしくは外部刺激に反応するか又は組織特異的様式などで、核酸の発現を変更する追加の調節エレメント(例えば、上流活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー及びサイレンサーなど)を伴って又は伴わずに、含む。本状況において、用語「プロモーター」はまた、組換え、合成もしくは融合核酸、又はそれに機能的に連結される核酸の発現を付与、活性化もしくは増強する誘導体を説明するためにも使用される。例証的プロモーターは、更に発現を増強するか、並びに/又は該核酸の空間発現及び/もしくは一時的発現を変更するための、1以上の特定の調節エレメントの追加コピーを含むことができる。
【0202】
本明細書において使用される用語「機能的に連結される」は、核酸の発現がプロモーターにより制御されるように、核酸に対しプロモーターを配置することを意味する。
【0203】
細胞における発現のために多くのベクターが、利用可能である。これらのベクター成分は一般に、以下の1以上を含むが、これらに限定されるものではない:シグナル配列、(例えば、本明細書に提供される情報に由来する)抗体をコードしている配列、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。当業者は、抗体の発現に適した配列を知っているであろう。例証的シグナル配列は、原核生物分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は熱安定性エンテロトキシンII)、酵母分泌シグナル(例えば、インベルターゼリーダー、α因子リーダー、又は酸性ホスファターゼリーダー)又は哺乳動物分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)。
【0204】
哺乳動物細胞において活性がある例証的プロモーターは、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1αプロモーター(EF1)、核内低分子RNAプロモーター(U1a及びU1b)、α-ミオシン重鎖プロモーター、サルウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要後期プロモーター、β-アクチンプロモーター;CMVエンハンサー/β-アクチンプロモーターを含むハイブリッド調節エレメント、又は免疫グロブリンプロモーター又はそれらの断片を含む。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL1651);ヒト胎児腎株(293細胞又は懸濁培養での成長のために継代された293細胞);ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL10);又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)である。
【0205】
酵母細胞、例えば、ピキア・パストリス、サッカロミセス・セレビシアエ及びS.ポンベからなる群から選択される酵母細胞における発現に適した代表的プロモーターは、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、又はTEF1プロモーターを含むが、これらに限定されるものではない。
【0206】
発現のために単離された核酸又はこれを含む発現構築体を細胞へ導入するための手段は、当業者に公知である。所定の細胞のために使用される技術は、既知の成功している技術によって左右される。組換えDNAの細胞への導入のための手段は、とりわけ、微量注入、DEAE-デキストランにより媒介されたトランスフェクション、リポフェクタミン(Gibco, MD, USA)及び/又はセルフェクチン(Gibco, MD, USA)を使用するなどの、リポソームにより媒介されたトランスフェクション、PEG-媒介したDNA取込み、電気穿孔法、並びにDNA-コートされたタングステン粒子もしくは金粒子を使用するなどの微粒子銃(Agracetus Inc., WI, USA)を含む。
【0207】
抗体を産生する為に使用される宿主細胞は、使用される細胞の種類に応じて、様々な培地中で培養されてよい。ハムFl0(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMl-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、哺乳動物細胞の培養に適している。本明細書において考察される他の細胞種類を培養するための培地は、当該技術分野において公知である。
【0208】
(タンパク質単離)
抗体を単離する方法は、当該技術分野において公知であり及び/又は本明細書において考察されている。
【0209】
抗体が培養培地へ分泌される場合、そのような発現システムからの上清は、最初に例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットなどの、市販のタンパク質濃縮フィルターを使用し濃縮されることができる。PMSFなどのプロテアーゼインヒビターは、タンパク質分解を阻害するために、前述の工程のいずれかに含まれてよく、並びに抗生物質は、偶発的夾雑物の成長を防止するために含まれてよい。あるいは、又は加えて、上清は、濾過されるか、及び/又は例えば連続遠心分離を用い、抗体を発現している細胞から、分離され得る。
【0210】
細胞から調製された抗体は、例えば、イオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティクロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティクロマトグラフィー又はプロテインGクロマトグラフィー)、又は前述の任意の組合せを用いて、精製され得る。これらの方法は、当該技術分野において公知であり、且つ例えば、WO99/57134又はEd Harlow及びDavid Lane(編集者)、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)において説明されている。
【0211】
抗体活性のアッセイ
(G-CSFR及びそれらの変異体への結合)
当業者には本明細書の開示から、本開示の化合物又は抗体は、hG-CSFRのリガンド結合ドメインへ及びhG-CSFRのリガンド結合ドメインの特異的変異体型(例えば、ある種の点変異を伴わない又は伴う配列番号:1)へ結合するか、並びに/又はヒト及びカニクイザルの両方のG-CSFRへ結合することは明らかであろう。化合物又は抗体への結合を評価する方法は、当該技術分野において公知であり、例えばScopesの文献(Protein purification: principles and practice, 第3版, Springer Verlag, 1994)に説明されている。そのような方法は一般に、本化合物又は抗体を標識し、並びにこれを固定されたG-CSFRと接触させることに関与している。非特異的に結合した化合物又は抗体を除去するために洗浄した後、標識物、及び結果として結合した化合物又は抗体が、検出される。当然、本化合物又は抗体は、固定され、且つG-CSFRシグナル伝達が標識されることができる。パンニング型アッセイも、使用することができる。代わりに、又は加えて、表面プラズモン共鳴アッセイを使用することができる。
【0212】
一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の167位でアラニンがリジンと置換され及び/又は配列番号:1に結合するのと実質的に同じレベル(例えば、10%又は5%又は1%以内)で、配列番号:1の168位でアラニンがヒスチジンと置換されている、配列番号:1のポリペプチドへ結合する。
【0213】
一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の287位のアルギニンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約100倍又は150倍又は160倍又は200倍低いレベルで結合する。一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の287位のアルギニンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約160倍低いレベルで結合する。
【0214】
一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の237位のヒスチジンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約20倍又は40倍又は50倍又は60倍低いレベルで結合する。一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の237位のヒスチジンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約50倍低いレベルで結合する。
【0215】
一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の198位のメチオニンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約20倍又は40倍又は60倍又は70倍低いレベルで結合する。一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の198位のメチオニンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約40倍低いレベルで結合する。
【0216】
一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の172位のチロシンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約20倍又は30倍又は40倍低いレベルで結合する。一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の172位のチロシンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約40倍低いレベルで結合する。
【0217】
一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の171位のロイシンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約100倍又は120倍又は130倍又は140倍低いレベルで結合する。一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の171位のロイシンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約140倍低いレベルで結合する。
【0218】
一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の111位のロイシンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約20倍又は40倍又は60倍又は70倍低いレベルで結合する。一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の111位のロイシンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約60倍低いレベルで結合する。
【0219】
一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の168位のヒスチジンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも5倍又は4倍又は3倍又は2倍又は1倍だけ低いレベルで結合する。
【0220】
一例において、本開示の化合物又は抗体は、配列番号:1の167位のリジンがアラニンと置換されている配列番号:1のポリペプチドへ、それが配列番号:1のポリペプチドに結合するよりも5倍又は4倍又は3倍又は2倍又は1倍だけ低いレベルで結合する。
【0221】
この結合のレベルは、好都合なことにバイオセンサーを用いて決定される。
【0222】
本開示は、前述の特徴の任意の組合せを企図している。一例において、本明細書記載の抗体は、先の7段落に示された結合の特徴の全てを有する。
【0223】
(エピトープマッピング)
別の例において、本明細書記載の化合物又は抗体により結合されたエピトープは、マッピングされる。エピトープマッピング法は、当業者には明らかであろう。例えば、関心対象のエピトープを含むhG-CSFR配列又はその領域に広がる一連の重複ペプチド、例えば10~15アミノ酸を含むペプチドが、作製される。本化合物又は抗体は次に、各ペプチドと接触され、それが結合するペプチド(複数可)が決定される。これは、それに抗体が結合するエピトープを含むペプチド(複数可)の決定を可能にする。複数の非-近接ペプチドがこのタンパク質により結合される場合、抗体は、立体構造エピトープへ結合してよい。
【0224】
代わりに、又は加えて、hG-CSFR内のアミノ酸残基は、例えばアラニンス系統的変異導入により、変異され、並びにタンパク質結合を減少もしくは防止する変異が決定される。本化合物又は抗体の結合を減少又は防止するあらゆる変異は、恐らくこのタンパク質により結合されるエピトープ内であろう。
【0225】
更なる方法は、本明細書において例示され、且つ本開示の固定された化合物又は抗体へのhG-CSFR又はその領域の結合、及び生じた複合体のプロテアーゼによる消化を含む。固定されたタンパク質へ結合され続けたペプチドは、次に単離され、且つ例えば質量分析を用いて分析され、それらの配列を決定する。
【0226】
(競合的結合の決定)
モノクローナル抗体C1.2又はC1.2Gの結合を競合的に阻害する化合物又は抗体を決定するアッセイは、当業者には明らかであろう。例えば、C1.2又はC1.2Gは、例えば蛍光標識又は放射性標識など、検出可能な標識と複合される。標識された抗体及び被験化合物もしくは抗体は次に、hG-CSFRもしくはその領域(例えば配列番号:1を含むポリペプチド)又はそれを発現している細胞と混合及び接触される。標識されたC1.2又はC1.2Gのレベルが次に決定され、且つ標識された化合物又は抗体が、被験抗体の非存在下で、hG-CSFR、領域又は細胞と接触された場合に決定されたレベルと比較される。標識されたC1.2又はC1.2Gのレベルが、被験化合物又は抗体の存在下で、抗体の非存在下と比べ減少した場合、この抗体は、C1.2又はC1.2GのhG-CSFRへの結合を競合的に阻害すると考えられる。
【0227】
任意に、被験化合物又は抗体は、C1.2又はC1.2Gとは異なる標識へ複合される。この交互の標識は、被験抗体のhG-CSFR又はその領域又は細胞への結合のレベルの検出を可能にする。
【0228】
別の例において、本化合物又は抗体は、hG-CSFR、領域又は細胞をC1.2又はC1.2Gと接触させる前に、hG-CSFR又はその領域(例えば配列番号:1を含むポリペプチド)又はそれを発現している細胞へ結合することを可能にする。本化合物又は抗体の非存在下と比べた、本化合物又は抗体の存在下での結合したC1.2又はC1.2Gの量の減少は、本タンパク質は、hG-CSFRへのC1.2又はC1.2Gの結合を競合的に阻害することを、指摘している。反復アッセイはまた、標識された化合物又は抗体を使用し、且つ最初にC1.2又はC1.2GをG-CSFRに結合させて行うことができる。この場合、C1.2又はC1.2Gの非存在下と比べた、C1.2又はC1.2Gの存在下でのhG-CSFRへ結合された標識された化合物又は抗体の量の減少は、本化合物又は抗体は、C1.2又はC1.2GのhG-CSFRへの結合を競合的に阻害することを指摘している。
【0229】
前述のアッセイのいずれも、hG-CSFR及び/もしくは配列番号:1の変異体型、並びに/又は例えば本願明細書に説明したように、C1.2又はC1.2Gが結合するhG-CSFRのリガンド結合領域で行うことができる。
【0230】
(中和の決定)
本開示の一部の例において、化合物又は抗体は、hG-CSFRシグナル伝達を中和することが可能である。
【0231】
化合物又は抗体の、受容体を介したリガンドのシグナル伝達を中和する能力を評価する様々なアッセイが、当該技術分野において公知である。
【0232】
一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物又は抗体は、hG-CSFRへのG-CSF結合を減少又は防止する。これらのアッセイは、標識されたG-CSF及び/又は標識されたタンパク質を用い、本明細書記載の競合的結合アッセイとして行うことができる。
【0233】
別の例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物又は抗体は、CD34+骨髄細胞がG-CSFの存在下で培養される場合に、CFU-Gの形成を減少する。そのようなアッセイにおいて、CD34+骨髄細胞は、半固形細胞培養培地において、被験化合物の存在又は非存在下で、G-CSF(例えば、約10ng/ml細胞培養培地)及び任意に幹細胞因子(例えば約10ng/ml細胞培養培地)の存在下で培養される。顆粒球クローン(CFU-G)が形成されるのに十分な時間の後、クローン又はコロニーの数が決定される。G-CSFシグナル伝達を阻害する本化合物又は抗体の非存在下と比べて、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体の存在下でのコロニー数の減少は、G-CSFシグナル伝達を阻害する本化合物又は抗体は、G-CSFシグナル伝達を中和することを指摘している。G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体の複数の濃度で試験することにより、IC50、すなわちCFU-G形成の最大阻害の50%が生じる濃度が決定される。一例において、このIC50は、0.2nM以下、例えば0.1nM以下、例えば、0.09nM今、又は0.08nM以下、又は0.07nM以下、又は0.06nM以下又は0.05nM以下である。一例において、このIC50は、0.04nM以下である。別の例において、このIC50は、0.02nM以下である。前述のIC50は、本明細書記載の任意のCFU-Gアッセイに関連している。
【0234】
更なる例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物又は抗体は、G-CSFの存在下で培養されるhG-CSFRを発現する細胞(例えばBaF3細胞)の増殖を減少する。細胞は、G-CSF(例えば0.5ng/ml)の存在下、及び被験化合物又は抗体の存在又は非存在下で培養される。細胞増殖を評価する方法は、当該技術分野において公知であり、且つ例えば、MTT還元及びチミジン取込みを含む。本化合物又は抗体の非存在下で認められるレベルと比べて、増殖のレベルを減少する化合物又は抗体は、G-CSFシグナル伝達を中和すると考えられる。本化合物又は抗体の複数の濃度を試験することにより、IC50、すなわち細胞増殖の最大阻害の50%が生じる濃度が決定される。一例において、IC50は、6nM以下、例えば5.9nM以下である。別の例において、IC50は、2nM以下、又は1nM以下、又は0.7nM以下(cell)又は0.6nM以下、又は0.5nM以下である。前述のIC50は、本明細書記載の任意の細胞増殖アッセイに関連している。
【0235】
更なる例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物又は抗体は、G-CSF投与後のインビボにおいて造血幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の遊走を減少するか、並びに/又は例えばG-CSF投与後(しかしこれは必須ではない)、インビボにおいて好中球の数を減少する。例えば、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物又は抗体は、任意にG-CSF又はそれらの修飾型(例えば、ペグ化されたG-CSF又はフィルグラスチム)の投与前、投与時又は投与後に投与される。造血幹細胞(例えば、CD34及び/もしくはThy1を発現している)並びに/又は内皮前駆細胞(例えばCD34及びVEGFR2を発現している)並びに/又は好中球(形態学的に同定され、並びに/又は例えばCD10、CD14、CD31及び/もしくはCD88を発現している)の数が、評価される。抗体が非存在下で認められるレベルと比べて、細胞(複数可)のレベルを減少する化合物又は抗体は、G-CSFシグナル伝達を中和すると考えられる。一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する化合物又は抗体は、好中球減少症を誘発することなく、好中球の数を減少する。
【0236】
G-CSFシグナル伝達の中和を評価する他の方法は、本開示により企図されている。
【0237】
組成物
本開示の化合物又は抗体の組成物は、静脈内又は皮下に投与される。一例において、本抗体/組成物は、静脈内に投与される。
【0238】
投与に適した形状(例えば医薬組成物)に化合物又は抗体を調製する方法は、当該技術分野において公知であり、且つ例えば、レミントン薬科学(18版、Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)及び米国薬局方:国民医薬品集(Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1984)に記載された方法を含む。
【0239】
本開示の医薬組成物は、静脈内投与又は皮下投与などの、非経口的投与に特に有用である。投与するための組成物は、医薬として許容し得る担体、例えば水性担体の中に溶解された抗体の溶液を通常含有するであろう。様々な水性担体、例えば緩衝された食塩水などを使用することができる。これらの組成物は、pH調節及び緩衝剤、毒性調節剤など、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを、生理的状態を適切にするために必要に応じ、医薬として許容し得る補助物質を含有してよい。これらの製剤中の本開示の化合物の濃度は、広範に変動することができ、且つ選択された特定の投与様式及び患者の必要性に応じて、主に液体容積、粘度、体重などをを基に選択されるであろう。担体の例は、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液を含む。例えば緩衝液及び保存剤などの、等張性及び化学安定性を増強する添加剤などの、非水性ビヒクルが、使用されてよい。
【0240】
組合せ療法
一例において、本開示の化合物又は抗体は、組合せた又は追加の治療工程として、あるいは治療的製剤の追加成分としてのいずれかで、本明細書記載の疾患又は病態を治療するのに有用な他の化合物と組合せて投与される。
【0241】
例えば、他の化合物は、抗炎症化合物、例えばメトトレキセート又は非ステロイド系抗炎症化合物である。代わりに、又は加えて、他の化合物は、免疫抑制薬である。代わりに、又は加えて、他の化合物は、コルチコステロイド、例えばプレドニソン及び/又はプレドニソロンである。一例において、他の化合物は、メトトレキセートである。代わりに、又は加えて、他の化合物は、シクロホスファミドである。
【0242】
一例において、本化合物又は抗体は、他の化合物と同時に投与される。一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体は、他の化合物の前に投与される。一例において、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体は、他の化合物の後に投与される。
【0243】
一部の例において、本化合物又は抗体は、細胞と組合せて投与される。一部の例において、この細胞は、幹細胞、例えば間葉系幹細胞である。
【0244】
一部の例において、本化合物又は抗体は、遺伝子治療と組合せて投与される。
【0245】
一部の例において、本化合物又は抗体は、非医薬介入、例えば、血漿アフェレーシス、細胞アフェレーシス、白血球アフェレーシス、顆粒球及び/又は単球アフェレーシスなどのアフェレーシスと組合せて投与される。この状況において、本化合物又は抗体は、非医薬介入が実施される期間に投与され得、且つ非医薬介入と「組合せられる」と考えられる。例えば非医薬介入は、顆粒球及び/又は単球アフェレーシスであり、これは5週間にわたり毎週1回行われ、且つ本抗体又は化合物は、この期間にわたり投与され得る。一例において、本抗体又は化合物は、非医薬介入の前に投与される。一例において、本抗体又は化合物は、非医薬介入の後に投与される。
【0246】
別の非医薬介入は、光療法である。光療法は、一部の好中球性皮膚症を治療するために使用される。
【0247】
投薬
一例において、本化合物又は抗体は、0.1mg/kg~1mg/kgの投与量で投与される。例えば、本化合物又は抗体は、0.1mg/kg~0.9mg/kgの投与量で投与される。
【0248】
一例において、本化合物又は抗体は、0.1mg/kg~0.8mg/kgの投与量で投与される。
【0249】
一例において、本化合物又は抗体は、0.1mg/kg~0.6mg/kgの投与量で投与される。
【0250】
一例において、本化合物又は抗体は、0.3mg/kg~0.6mg/kgの投与量で投与される。
【0251】
一例において、本化合物又は抗体は、0.1mg/kg~0.3mg/kgの投与量で投与される。
【0252】
一例において、本化合物又は抗体は、約0.1mg/kgの投与量で投与される。一例において、本化合物又は抗体は、0.1mg/kgの投与量で投与される。
【0253】
一例において、本化合物又は抗体は、約0.3mg/kgの投与量で投与される。一例において、本化合物又は抗体は、0.3mg/kgの投与量で投与される。
【0254】
一例において、本化合物又は抗体は、約0.6mg/kgの投与量で投与される。一例において、本化合物又は抗体は、0.6mg/kgの投与量で投与される。
【0255】
一例において、本化合物又は抗体は、複数回投与される。例えば、本化合物又は抗体は、5~40日毎に1回投与される。一部の例において、本化合物又は抗体は、連続日に又は同じ週内には投与されない。
【0256】
例えば、本化合物又は抗体は、14~28日毎に投与される。例えば、本化合物又は抗体は、20~25日毎に投与される。
【0257】
例えば、本化合物は、7日又は8日又は9日又は10日又は11日又は12日又は13日又は14日又は15日又は16日又は17日又は18日又は19日又は20日又は21日又は22日又は23日又は24日又は25日又は26日又は27日又は28日毎に投与される。
【0258】
一例において、本化合物は、2週毎又は3週毎又は4週毎に投与される。
【0259】
例えば、本化合物又は抗体は。複数回投与され、ここで本化合物又は抗体は、21日毎に1回投与される。これに関して「21日毎」(又は任意の他の数)は、後続の投与が、直前の投与後21日目に行われることを意味することは、当業者に理解されるであろう。
【0260】
一例において、本開示の方法は、顆粒球-コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)に結合するか又は特異的に結合する抗体を投与することを含み、ここで抗体は、21日毎に1回、複数回投与され、ここで抗体は:
(i)配列番号:14に示された配列を含む重鎖及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖;又は
(ii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖:
を含む。
【0261】
一例において、本開示の方法は、顆粒球-コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)に結合するか又は特異的に結合する抗体を含有する組成物を投与することを含み、ここで抗体は、21日毎に1回、複数回投与され、ここで組成物は:
(i)配列番号:14に示された配列を含む重鎖及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖を含む抗体;
(ii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖及び配列番号:15に示された配列を含む軽鎖を含む抗体;及び/又は
(iii)配列番号:16に示された配列を含む重鎖及び配列番号:14に示された配列を含む重鎖並びに配列番号:15に示された配列を含む2本の軽鎖を含む抗体:
の少なくとも2種又は3種全てを含む。
【0262】
一例において、本化合物又は抗体は、設定された期間又は投与量の回数で投与される。例えば、本化合物又は抗体は、1ヶ月又は3ヶ月又は6ヶ月又は12ヶ月間投与される。別の例において、本抗体又は化合物の5又は10又は15又は20回の投与量が投与される。
【0263】
別の例において、本化合物又は抗体は、慢性的に又は継続進行中を基に、例えば数ヶ月又は数年間投与され、且つ本開示は、別に言及されない限りは特定の期間に限定されない。
【0264】
一例において、本化合物又は抗体、病態又は病態の症状が、回復又は管理されるまで投与される。例えば、病態が「活動」型の場合、本化合物又は抗体は、病態が最早活動とは考えられなくなるまで、投与される。
【0265】
HS又はPPPの症例において、本化合物又は抗体は、対象が最早目視できる病変又は膿疱を有さなくなるまで、投与される。
【0266】
一例において、本化合物又は抗体は、病態の寛解を誘導するために投与される。別の例において、本化合物は、病態の寛解を維持するために投与される。
【0267】
一例において、本化合物の1回以上の負荷投与量が、その後1回以上の維持投与量が投与される。一般に、負荷投与量は、維持投与量よりもより高いか、又はより短いそれらの間の期間で投与される。
【0268】
例えば、本抗体又は化合物の1又は2又は3回又はそれよりも多い負荷投与量が、対象へ、例えば寛解を誘導するために投与され、その後継続進行中の維持投与量が、投与される。これらの維持投与量は、無期限に、あるいは対象が有害反応に冒されるまで又は病態がその時1回以上の負荷投与量が必要とされるように戻るかもしくは悪化するまで、継続されてよい。
【0269】
一部の例において、負荷投与量は、維持投与量よりも、1.5倍又は2倍又は3倍より高い。例として、負荷投与量(lose)は0.9mg/kgであることができ、及び維持投与量は0.3mg/kgであることができるか、又は負荷投与量は0.3mg/kgであることができ、及び維持投与量は0.1mg/kgであることができるか、又は負荷投与量は0.6mg/kgであることができ、及び維持投与量は0.1mg/kgであることができる。
【0270】
一部の症例において、負荷投与量は、維持投与量よりもより頻繁に投与される。例えば、負荷投与量は、1週間又は2週間に1回投与され、及び維持投与量は、21日毎に投与される。この場合、負荷投与量及び維持投与量の用法は、同じ又は異なることができる。
【0271】
治療に適切に反応しない対象の症例において、より頻繁又はより高い投与量が、投与されてよい。
【0272】
別の例において、有害反応を経験している対象については、投与量は、1週間中数日にわたって又は数日の連続日にわたって、分割することができる。
【0273】
一例において、有害反応として好中球減少症を経験している対象については、診療担当者は、治療の中止を指導されてよい。例えば、対象が2連続日又は3連続日より長く好中球減少症を経験する場合、治療は中止されてよい。
【0274】
一例において、有害反応として好中球減少症を経験している対象については、診療担当者は、次回の投与量を飛ばすよう指導されてよい。例えば、対象が2連続日又は3連続日より長く好中球減少症を経験する場合、次回の投与量は飛ばされてよい。
【0275】
任意に、好中球減少症に罹患している対象は、好中球減少症を治療するためにG-CSF又はGM-CSFにより治療されてよい。
【0276】
本開示の広い全体の範囲から逸脱しない限りは、前述の実施態様に多くの変更及び/又は修飾が行われてよいことは、当業者には理解されるであろう。従って本実施態様は、全ての点で制限ではなく例証とみなされる。
【実施例0277】
実施例1-健常成人対象へ投与されるG-CSFRに結合する抗体であるC1.2Gの安全性、薬物動態(PK)及び薬力学(PD)
第1相臨床試験は、健常対象における、CSL324(本明細書においてC1.2Gとも称される)の単回漸増投与量(パートA及びB)及び反復(パートC)静脈内(IV)注入の、安全性及び忍容性を評価するために行った。
【0278】
方法
本知見は、健常ヒト対象におけるCSL324のIVでの単回漸増投与量及び反復投与量の安全性、忍容性、PK、及び薬力学(PD)を評価する、第一次ヒト(first-in-human)単一施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験であった。本試験は、パートA、B、及びCの3つのパートからなる。安全性、忍容性、PK、及び選択されたPDデータの通常の盲検化された検証は、投与量選択を導くために、安全性検証委員会(SRC)により実施された。この治験は、オーストラリア・ニュージーランド臨床試験登録(ANZCTR)の登録番号ACTRN12616000846426、表題「健常成人におけるCSL324の安全性及び忍容性を評価するための投与量漸増プラセボ対照第1相試験」で説明されている。
【0279】
(パートA:単回漸増投与量)
パートAは、5つの逐次的コホート(コホートA1からA5)へ投与されたCSL324の単回漸増投与量を評価した。各コホートは、1日目にCSL324(n=4)又はプラセボ(n=2)のいずれかを受け取るように無作為化された6名の対象を含んだ。CSL324の単回漸増投与量0.1、0.3、1.0、3.0、及び10mg/kgが、5つの逐次的コホートについて計画された。SRCの推奨で、投与される最高投与量は、CSL324の1.0mg/kg(コホートA3)であり;コホートA4及びA5は、各々、CSL324の0.6及び0.8mg/kgの中間投与量を受け取った。対象は、85日目まで経過観察された。
【0280】
(パートB-G-CSFチャレンジを伴う単回漸増投与量)
パートBは、G-CSFチャレンジ時のCSL324の単回投与量を評価した。コホートB1、B2、及びB3は各々、1日目にCSL324(n=3)又はプラセボ(n=1)のいずれかを受け取るよう無作為化された4名の対象を含んだ。コホートB1は、SRCの推奨で、CSL324の0.1mg/kgを受け取り、並びにコホートB2及びB3は、各々、CSL324の0.3及び0.8mg/kgを受け取った。対象は、CSL324の前後に(-3、-2、-1、1、2及び3日目に)、G-CSFチャレンジ(5μg/kgフィルグラスチム)が投与された。コホートB4は、1日目にCSL324(n=4)又はプラセボ(n=2)のいずれかを受け取るように無作為化された6名の対象を含んだ。対象は、CSL324の0.8mg/kgを受け取り、且つCSL324後のみ(2、3、及び4日目に)、G-CSFチャレンジ(5μg/kgフィルグラスチム)が投与された。対象は、85日目まで経過観察された。
【0281】
(パートC-反復投与量)
パートCは、21日間隔で(1、22、及び43日目に)投与されたCSL324の3回の反復投与量を評価した。10名の対象が、CSL324(n=6)又はプラセボ(n=4)のいずれかを受け取るように無作為化された。対象は、SRCの推奨で、CSL324の0.6mg/kgが投与された。対象は、126日目まで経過観察された。
【0282】
(安全性、薬物動態(PK)、及び薬力学(PD)の評価)
全ての試験部分において、安全性評価は、有害事象(AE)、起立性チャレンジを含む生命兆候、身体所見及び神経学的検査、12誘導心電図(ECG)、ECGテレメトリーを使用する心臓モニタリング、臨床検査室試験(血液学的、血液化学、凝固、及び尿検査)、視覚的アナログスケール上で測定された疲労、及びCSL324免疫原性を含んだ。
【0283】
CSL324は、血清中(全てのコホート)及び脳脊髄液中(コホートA5のみ)で測定した。
【0284】
PD評価は、好中球機能特質(貪食活性、酸化的バースト活性、G-CSF受容体リン酸化シグナルトランスデューサー及び転写アクチベーター-3[pSTAT-3]シグナル伝達[パートAのみ]、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子[GM-CSF]受容体pSTAT-3シグナル伝達[パートA及びCのみ]);好中球G-CSF受容体占有/飽和(パートA及びCのみ);並びに、血清G-CSF、サイトカイン、及びケモカインを含んだ。
【0285】
診断及び主要選択基準
健常な男性又は女性対象で、年齢18~55歳、体格指標18.5~32.0kg/m2(含む)並びに体重≧50kgかつ<100kgであり、書面によりインフォームドコンセントを提出した。女性対象は、妊娠の可能性がなく;男性対象及び彼等の妊娠の可能性のある女性配偶者/パートナーは、スクリーニング時から最終IV注入後90日目まで、効果の高い避妊法を2種類使用した。
【0286】
対象が、治験責任医師の判断で、何らかの臨床的に有意な心臓血管系、消化管、内分泌系、血液学的、肝臓、免疫学的、代謝、泌尿器系、肺、神経系、皮膚系、精神病理的、腎及び/又はその他の主要疾患又は悪性腫瘍の既往歴又は証拠;静脈血栓症、多血症、又は血栓性静脈炎の既往歴;自己免疫疾患の既往歴;周期性好中球減少症又はスクリーニング時の絶対好中球カウント(ANC)<2.0×109/L;スクリーニング又は入院時に確定された任意の臨床的に有意な異常;スクリーニング又は入院時の心拍数<40又は1分あたりの脈拍>100、平均収縮期血圧>145mmHg、又は平均拡張期血圧>90mmHg;スクリーニング時の平均のFridericia式の補正QT間隔>450msec;あるいは、パラセタモル(最大2g/日)の不定期の使用を除く、IV注入前10日間の何らかの処方薬又は非処方薬の使用を有した場合は、それらの対象は除外した。パートA及びBについてのみ、対象が、刺青又は損なわれた皮膚の健康、又はケロイド形成、肥厚性瘢痕、もしくはリンパ管炎の既往歴を有した場合は、それらの対象は除外した。
【0287】
CSL324抗体投与量及び投与様式
CSL324は、10mLバイアル中の注射用無菌溶液として提供された。CSL324は、1日目の対象の体重及びコホート投与量により決定された容積で、IV投与された。
【0288】
プラセボである0.9%塩化ナトリウムは、1日目の対象の体重及びコホート投与量に従うCSL324と同じ容積でIV投与された。
【0289】
全てのCSL324注入は、シリンジポンプを用い、前腕静脈に、60±5分間にわたり与えられることとした(投与量≦1.0mg/kg)。
【0290】
治療期間
パートA又はBの対象は、1日目に単回投与量としてCSL324又はプラセボを受け取り、並びに85日目まで経過観察した。パートCの対象は、1、22、及び43日目に21日間隔で、CSL324又はプラセボの3回投与量を受け取り、126日目まで経過観察された。
【0291】
評価基準:
主要エンドポイント:本試験期間中のAEの発生率、因果関係、及び重症度。
副次的エンドポイント:
・血清中のCSL324の薬物動態パラメータ:
パートA及びB:
AUC0-inf-0時から無限時まで外挿した濃度-時間曲線下面積
AUC0-t-0時から採取時tまでの濃度-時間曲線下面積
max-最大濃度
CLtot-IV投薬後の全身クリアランス
max-最大濃度到達時間
1/2-消失半減期
z-消失相IV投薬後の分布容積。
パートC:
AUC0-t-0時から採取時tまでの濃度-時間曲線下面積
AUC0-tau-定常状態での投薬間隔時間の濃度-時間曲線下面積
min,ss-定常状態での最小(トラフ)濃度
max,ss-定常状態での最大濃度
max,ss-定常状態での最大濃度到達時点
1/2,ss-定常状態での消失半減期
CLtot,ss-IV投薬後の定常状態での全身クリアランス
z,ss-消失相IV投薬後の定常状態での分布容積
・脳脊髄液中のCSL324及びG-CSF濃度(コホートA5のみ)
・血清中抗-CSL324抗体の存在
・CSL324又はプラセボ投薬に続くG-CSFチャレンジ後の、1日目からのANCの最大効果(Emax)、及びANCに関する0時から24時の効果曲線下面積(AUEC0-24,ANC)を含む、ANCに関するノンコンパートメントPDパラメータ(パートBのみ)。
【0292】
統計的方法
(解析集団)
フルアナリシスセット(FAS)は、書面によるインフォームドコンセントを提供し、且つスクリーニング後に本試験の包含に適格であった、全ての対象で構成された。FASは、患者背景、ベースライン特徴、及び免疫原性のために使用した。
【0293】
安全性集団は、CSL324の少なくとも1回投与量を受け取った全ての対象で構成され、投与量及び受け取った薬物療法に従い分析され、並びに全ての安全性分析に使用された。
【0294】
PK集団は、CSL324の少なくとも1回投与量を受け取り且つ少なくとも1つの測定されたPK濃度を有した全ての対象で構成され、並びに全てのPK分析に使用された。
【0295】
PD集団は、CSL324の少なくとも1回投与量を受け取り、並びにCSL324注入前及びCSL324注入後の少なくとも1時点で、PDデータが入手された、全ての対象で構成された。PD集団は、全てのPD分析に使用された。
【0296】
(全般的考察)
全てのデータは、対象別に列挙した。要約統計は、記述統計を用いて表した。全ての統計検定は、別に指定しない限りは、両側性であり、且つ5%有意レベルで行った。
【0297】
(薬物動態(PK)解析)
PKパラメータは、実際のサンプリング時点を使用し、標準ノンコンパートメント解析により、血清CSL324濃度から誘導した。投与量の比例性は、個別に、パートA及びパートBの単回投与量コホートに関して、PKパラメータのCmax、AUC0-t、及びAUC0-infについて評価した。投与量の比例性は、独立変数として対数変換された(loge-transformed)体重-調節された投与量レベルを含んだ、パワーモデルを用いて、解析した。90%信頼区間(CI)が、0.85から1.15のクリティカル区間(critical interval)の内側である場合に、PKパラメータと投与量の間は線形比例性と見なすことができた。PKパラメータのCmax、AUC0-t、及びAUC0-infと、総投与量(mg)及び体重調節した投与量(mg/kg)の相関関係は、ピアソン相関解析を用い、パートA及びパートBについて調べた。
【0298】
G-CSFの同時投与を伴わない(パートA)及び伴う(パートB)CSL324の相対生物学的利用能は、混合効果モデル(母数効果として治療及び変量効果として対象)並びに対数変換されたPKパラメータCmax、AUC0-t、及びAUC0-infを用いて評価した。G-CSFの同時投与を伴わない(パートA)及び伴う(パートB)CSL324の投与は、幾何平均比の90%CIが、任意の比較について、80%と125%の間である場合に、同等であると考えられた。
【0299】
21日毎のCSL324の3回投与量(パートC)の後の定常状態の到達は、最小トラフ濃度(Cmin)の反復測定の分散分析(ANOVA)により評価した。最初の有意でない比較は、定常状態に到達した時点での投薬間隔であった。
【0300】
(薬力学(PD)解析)
PDパラメータは、標準ノンコンパートメント解析を使用し誘導した。パートAの血清サイトカイン及びケモカイン濃度、好中球貪食活性及び酸化的バースト活性、G-CSF受容体占有、及びpSTAT-3シグナル伝達に関するPDパラメータは、ANOVAにより、パートAにおける各CSL324投与量と、パートAに関するプールされたプラセボ群の間で比較した。
【0301】
PDパラメータのCSL324総投与量(mg)及び体重調節した投与量(mg/kg)との相関関係は、ピアソン相関解析を用いて調べた。
【0302】
(安全性解析)
治療下で発現したAE(TEAE)は、「ICH国際医薬用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)」(MedDRA;第20.1版)を用いてコード化した。Club第1相基準を使用し等級化された異常なANC値のTEAEを除いて、各TEAEの重症度は、治験責任医師により、「米国立癌研究所:有害事象共通用語集(NCICTDA)」第4版を用いて、評価した。累積する陽性及び陰性の免疫原性結果を伴う対象間のボックスプロット比較は、CSL324クリアランス(CLtot又はCLtot,ss)及び選択されたPDパラメータ(ANC及びG-CSF濃度)について行った。
【0303】
結果
(対象の内訳)
合計58名の対象が、インフォームドコンセントを提出し、且つ本試験に無作為化された。パートA(n=30)においては、5コホート(コホートA1からA5)の各々において、4名の対象がCSL324を受け取り、及び2名の対象がプラセボを受け取った。パートB(n=18)においては、コホートB1からB3の各々において、3名の対象がCSL324を受け取り、及び1名の対象がプラセボを受け取り、並びにコホートB4において、4名の対象がCSL324を受け取り、及び2名の対象がプラセボを受け取った。パートC(n=10)においては、6名の対象がCSL324を受け取り、及び4名の対象がプラセボを受け取った。
【0304】
全体として、55名の対象(94.8%)が本試験を完了し;1名のプラセボ-治療した対象は、コンセントの取り下げにより、パートA(コホートA5)を中止し、並びに2名の対象(1名のCSL324-治療及び1名のプラセボ-治療)は、他の理由で、パートCにおける3回投与量の完了後に中止した。本試験のパートCを完了した2名の対象は、SRCの推奨により、CSL324の3回目投与量を受け取らなかった。
【0305】
(患者背景)
試験対象は、男性(100%)で主に白人(65.5%)であり、平均年齢30.3歳(範囲:19~54歳)であった。パートA、B、又はCの対象間で、患者背景の特徴において大きな差異は存在しなかった。全般的に、対象の内科的及び外科的既応歴は、健常志願者集団と一致した。
【0306】
(薬物動態(PK))
CSL324の単回IV投与量後、平均血清CSL324濃度は、注入終了時にピークを示し、Cmaxは、CSL324投与量に対し線形比例性を示した(図1)。AUC0-t及びAUC0-infとして測定したCSL324への曝露は、より高いCSL324投与量で増大したが、投与量との線形性は示さず、両方のパラメータの信頼限界は、クリティカル区間0.85から1.15の外側であった(推定された勾配は、AUC0-tについて1.68[90%CI:1.58-1.79]及びAUC0-infについて1.67[90%CI:1.56-1.78])。CSL324の平均CLtotは、試験した投与量範囲にわたり、一定ではなく、CSL324投与量の10倍の増加により80%だけ減少した。
【0307】
単回IV投与量後、平均t1/2は、0.1mg/kgのCSL324での40.5時間から1.0mg/kgのCSL324での206時間の範囲であった。21日間隔で投与された0.6mg/kgのCSL324の3回投与量後、平均t1/2は、251時間であった。
【0308】
CSL324注入の前後のG-CSFの投与は、AUC0-inf及びAUC0-tとして測定した、単回CSL324投与量の相対生物学的利用能を低下し、並びにCmaxに対する最小効果を有した。G-CSFによるCSL324の曝露の減少は、G-CSFがCSL324投薬の前後に投与される場合に、CSL324投薬後のみと比べ、より大きかった。
【0309】
定常状態は、トラフ濃度を基に、21日間隔で投与された0.6mg/kgのCSL324の3回の投与量後には、達成されなかった。ピークの平均血清CSL324濃度は、1回目投与量及び3回目投与量の後で類似していた。
【0310】
CSL324は、単回0.8mg/kgのCSL324投与量の後、脳脊髄液中では検出されなかった。
【0311】
(薬力学)
平均ANCは、G-CSFチャレンジを伴わずに投与された、単回及び反復CSL324投与量後には、プラセボと比べて、減少した。単回CSL324投与量にわたって、平均ANC最小効果(Emin)は、1.0mg/kgのCSL324投与量で最低(1.3×109/L)であり、並びにプラセボで最高(2.49×109/L)であった。平均ANC Eminは、反復CSL324投薬後に1×109/Lまで減少し、Eminは、3回目投与量後に生じた(ほぼ48日目)。
【0312】
より高い投与量のCSL324(0.3及び0.8mg/kg)は、上昇したANCのG-CSF媒介性刺激を阻害し;G-CSFチャレンジに対するANC反応は、0.1mg/kgのCSL324とプラセボで類似していた。ANCは、AUC0-tを基に、CSL324投与量及びCSL324曝露とは、負の相関関係であった。
【0313】
CSL324は、好中球貪食活性及び酸化的バースト活性としてエクスビボにおいて測定した場合に、好中球機能に対する明らかな効果を有さなかった。より高い単回投与量のCSL324(0.3から1.0mg/kg)は、プラセボと比べて、好中球pSTAT-3シグナル伝達のエクスビボにおける刺激について、G-CSF半値効果濃度(EC50)を増加したが;しかし、このアッセイデータは、大きな変動を示し、解釈は限定された。GM-CSF刺激、対、非刺激された好中球pSTAT-3シグナル伝達の比について、CSL324の一貫した効果は、認められなかった。
【0314】
好中球G-CSF受容体飽和は、0.1~1.0mg/kgの単回CSL324投与量で、迅速に達成された。CSL324投与量の増加と共に、およそ100%受容体占有の期間は増大し、0.1mg/kgのCSL324では3日目まで、及び0.8及び1.0mg/kgのCSL324では29日目まで継続した(図2)。
【0315】
単回CSL324投与量は、ピークの血清G-CSF濃度及び曝露を、プラセボと比べて増加し、G-CSFのAUEC0-t及びAUEC0-24は、CSL324全身曝露及び投与量と正の相関関係を示した。反復CSL324投与量は、血清G-CSFの持続した増加を生じ、ピーク濃度は、各投与量の後2日で生じた。G-CSFは、単回0.8mg/kgのCSL324投与量後には、脳脊髄液中では検出されなかった。
【0316】
サイトカイン及びケモカインの血清濃度は、CSL324投薬後、プラセボと比べ、経時的に明らかなパターンを示さなかった。血清インターロイキン(IL)-8濃度は、CSL324及びプラセボにより、小さい増加を示し、このことはIV注入の効果を示唆している。血清IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)レベルは、G-CSFチャレンジ後に増加し、その後より高いCSL324投与量(0.3~1.0mg/kg)の投与後に減少した。
【0317】
(安全性)
全般的に、TEAEの頻度は、CSL324(82.1%)及びプラセボ(94.7%)で類似していた。治療に関連したTEAEは、CSL324群全体において対象の64.1%で、及びプラセボ群において57.9%で生じた。プラセボよりもCSL324によりより頻繁に生じるTEAEは、好中球減少症(19.2%、対、0対象)、注入部位疼痛(7.7%、対0対象)、及び鼻詰まり(7.7%、対0対象)であった。TEAEは、重篤でも致命的でもなかった。2名の対象は、SRCの推奨により、3回目投与量を受け取らなかった。
【0318】
投与量コホートにわたる全般的TEAE頻度において、CSL324投与量に依存した傾向は存在しなかった。全ての対象(100%)は、CSL324又はプラセボの反復投薬後、TEAEを経験した。
【0319】
大半のTEAEは、グレード1又は2であった。継続進行中のグレード2の紅斑の1例のTEAEを除いて、CSL324治療後の全ての治療が関連したTEAEは、安全性経過観察来院までに回復した。
【0320】
CSL324は、最大グレード3重症度の好中球減少症により特徴付けられる、ANCを投与量依存様式で減少し、これは後日自然に回復した(図5及び図6)。
【0321】
1名の対象は、1.0mg/kgのCSL324の単回投与量後4日目に、グレード3好中球減少症のTEAEを有し(図5)、及び4名の対象は、0.6mg/kgのCSL324反復投与量により、7例のグレード3好中球減少症のTEAEを有した(図6)。グレード3好中球減少症の2以上の事象を経験した2名の対象は、入手可能な安全性、忍容性、PK、及び選択されたPDデータの検証後、SRCの推奨により、パートCにおいて、CSL324の3回目投与量を受け取らなかった。グレード3好中球減少症の全てのTEAEは、翌日までに治療せずに自然に回復した。
【0322】
好中球減少症グレード2又は3の基準に合致するANCは、単回CSL324投与量で治療した20名の対象中6名が経験し、CSL324投薬後1~4日以内に生じる傾向があった。反復CSL324投与量を受け取った6名の対象中5名が、好中球減少症グレード2又は3の基準に合致するANCを有し、これは3回目投与量の後に生じる傾向があった。
【0323】
注入反応又は局所的忍容性反応は、認められなかった。注入部位疼痛、穿刺部位紅斑、及び穿刺部位疼痛のTEAEは、CSL324-治療した対象の≦5%が経験し、プラセボ-治療した対象は経験しなかった。
【0324】
安全性シグナルは、臨床検査パラメータ、起立性チャレンジを含む生命兆候、ECG、身体所見、又は疲労度スコアからは確定されなかった。
【0325】
対象は、単回及び反復IV投薬後に、抗-CSL324抗体を生じなかった。
【0326】
結論
CSL324は、最大0.8mg/kgの単回投与量又は21日間隔の0.6mg/kgの反復投与量で投与された場合に、安全で且つ忍容性が良かった。CSL324は、ANCレベルを投与量依存様式で減少し、これは翌日までに治療せずに自然に回復する最大グレード3の重症度の好中球減少症で特徴付けられる。全身のCSL324曝露は、投与量の増加につれて増大し、Cmaxは、CSL324投与量と線形の比例性を示した。より高いCSL324投与量は、より長いt1/2及びより遅いCLtotを有した。CSL324は、迅速なG-CSF受容体飽和を示し、且つより高い投与量でANCのG-CSF-媒介した刺激を阻害し、炎症メディエーターに対する最小効果を伴った。
【0327】
実施例2-G-CSFRに結合する抗体であるCSL324による好中球性皮膚症の治療
試験デザイン
多施設オープンラベル2レジメン反復投与量試験を、HS及びPPP対象において、静脈内に投与される、CSL324の反復投与量の安全性及びPKを調べるために使用する。本試験はまた、HS及びPPPの対象におけるCSL324の予備的有効性も調べる。
【0328】
本試験は、28日のスクリーニング期間、15週の治療期間、及び9週の経過観察期間からなる。本試験は、2つのコホートを有する。各コホートは、HS(n=10)又はPPP(n=10)の対象20名からなる(図3)。CSL324は、最初に、コホート#1に登録された対象に、21日間隔で、1、22、43、64、及び85日目に、CSL324の0.3 mg/kgの60分かけたIV注入として投与される。コホート#1においてCSL324が投与された最初の5名の対象が、15週の治療期間を完了した時点で、CSL324は、コホート#2の対象へ投与される。コホート#2の最も安全なCSL324投与量(≧0.1かつ≦0.6mg/kg)は、PK/ANCシミュレーションモデリングにより決定され、これは最初の5名のコホート#1対象から15週の治療期間を完了するまでのPK及びANCデータにより更新される(図4)。
【0329】
投薬の日、対象は、安全性観察、並びに血清中のPK、血液学、生化学及びサイトカイン/ケモカイン濃度及び他の選択されたバイオマーカーの血液採取ために、注入の終了後少なくとも3時間は試験施設に留まる。臨床有効性は、治療期間及び経過観察期間を通じて評価され、並びに組織生検は、開始時(1日目のCSL324投与前)及び治療期間の最後(5回全てのCSL324投与量が投与される場合105日目、又は早期の治療中止については最終投与量の3週間後)に採取される。
【0330】
(CSL324抗体)
【化2】
【0331】
投薬レジメンの正当化
可能性のあるPK/PD(ANC)関係を調べるために、2投与量が、HS又はPPPの患者へ投与される。コホート#1において本試験において試験される出発投与量レジメンは、21日毎の0.3mg/kgの合計5投与量である。この出発投与量レジメンは、実施例1に説明された第1相試験において得られた安全性、PK及びPDデータを基に選択される。カニクイザルにおける前臨床結果もまた、21日毎に投与される合計5投与量を裏付けると考えられた。
【0332】
実施例1からの結果は、CSL324は、最大0.8mg/kgの単回投与量として又は21日間隔の0.6mg/kgの反復投与量として投与される場合、安全であり、且つ良く忍容されたことを示した。CSL324の最小蓄積は、0.6mg/kgの3回の複数の投与量後に認められ、平均(SD)消失半減期は251(55.2)時間であった。
【0333】
0.3及び0.8mg/kgの単回CSL324投与量は、G-CSFによるANCレベルの刺激を阻害し、これは作用機序を確認し;最小効果は、CSL324投与量0.1mg/kgで認められた。CSL324の単回又は複数回投与量後、G-CSF受容体占有(RO)が迅速に発生し、且つ試験した最低投与量(0.1mg/kg)であっても~100%占有に達し、且つ投与量が増加するにつれより長い期間、このレベルが持続された。更に受容体占有は、0.6mg/kgの3回目の投与量の投与後最大27日間は~100%であり、これは、3回投与量後21日の投薬間隔について、完全な受容体占有を示している。
【0334】
CSL324は安全で忍容性が良いが、一過性グレード3好中球減少症が、1mg/kgの単回投与量後に1名の対象(1事象)、及び0.6mg/kgの3回の反復投与量後に4名の対象(7事象)において認められた。コホート#2に関する最も安全なCSL324投与量(≧0.1かつ≦0.6mg/kg)は、PK/ANCシミュレーションモデリングにより決定され、且つカニクイザルにおけるGLP毒性試験と比べた、曝露安全域により裏付けられる。このGLP毒性試験(APQ0045)において、CSL324は、12週間にわたる緩徐なボーラス注入により、毎週1回投与された。CSL324は、カニクイザル(雄及び雌の両方)において良好に忍容され、且つ試験物質に関する毒性知見は認められず、結果的に使用された最高投与量のNOAELの100mg/kgを生じた。現在の試験において提唱された投与量レジメンに関する安全域は、AUC及びCmaxに関して、各々、およそ122及び231であった。
【0335】
試験の選択及び除外基準
【化3】
【0336】
【化4】
【0337】
安全性評価
安全性の評価に関連した、本試験時に実行される臨床手順は、下記表4に提供される。
【0338】
【化5】
【0339】
(絶対好中球カウント(ANC)及び体温モニタリング)
各対象のANCは、スケジュールされた時点で、本試験を通じてモニタリングされる。
【0340】
対象が、投与量投与の前日にグレード3又はグレード4好中球減少症を記録した場合、ANC再評価が、24時間以内に実行され、且つCSL324の投与量が投与されることを可能にするには、2回のANC値の平均は、≧800/mm3でなければならない。2回のANC値の平均が<800/mm3である場合、この対象は、更なる投薬を受け取ってはならない。投薬前日に、ANC再測定がグレード3又はグレード4のいずれかの好中球減少症に反応して行われることを可能にするために、投与量は、許容される投薬ウインドウ(+3日間)以内で遅延される。
【0341】
対象が、投薬前日以外の別の日にグレード3(Gr3)好中球減少症を記録した場合、対象は、この1回のGr3のANC値が、一回の鼓膜温度>38.3℃もしくは1時間以上続く>38.0℃及び/又は感染症の臨床的に有意な徴候もしくは症状と組み合わされない限りは、本試験を継続してよい。対象が、治療期間又は経過観察期間中のいずれか他の時点でグレード3好中球減少症を有する場合、スケジュール外のANC測定が行われ、できる限り実現可能なものに近いように、対象のANCレベルをモニタリングする。
【0342】
対象が、投薬前日以外の別の日にグレード4好中球減少症を記録した場合、ANC再評価が、24時間以内に実行されなければならず、且つ対象の再度のANC値が≧500/mm3である場合は、対象は本試験を継続することができる。再度のANC値が<500/mm3である場合は、対象は、更なる投薬を受け取ってはならない。
【0343】
グレード3又は4好中球減少症の対象は、体温上昇を含む、感染症の何らかの徴候及び/又は症状に気を配り且つ直ちに報告することが求められる。全ての試験対象は、体温計を備え、且つ毎日一定の時間に口腔温度をモニタリングするように依頼される。対象の口腔温度測定が37.2℃を超える場合、対象は、直ちに施設と連絡をとるよう依頼され、且つ臨床評価のためにスケージュール外の来院をするよう依頼される。
【0344】
有効性評価
(化膿性汗腺炎)
(総膿瘍及び炎症性小結節カウント(ANカウント)):小結節(炎症性小結節)は、直径>10mmの、隆起した三次元の円形の浸潤性病変である。膿瘍は、直径>10mmの、圧痛があり揺らぐ(fluctuating)塊であり、紅斑領域により取り囲まれており;膿瘍の中心は、膿を含む。排液性トンネル/瘻孔は、様々な長さ及び深さの、皮膚表面に達し、時には体液が滲出する、隆起した圧痛のある揺らぐ長めの塊である(Lipskerら、2016, Dermatology 232; 137-42)。以下を含むHSの動的変化を評価するための様々なスコアについて、ANカウントは、排液性トンネル/瘻孔の評価と組合され、スクリーニング時、1、22、43、64及び85日目の投薬前、並びに105、126、147及び168日目(EOSV)に、評価される:
【0345】
(化膿性汗腺炎臨床反応(HiSCR)):HiSCRは、感度、測定の一貫性及び使用の容易さを改善するように、2014年に開発され且つバリデートされた(Kimballら、2014, Br J Dermatol 171: 1434-42)。HiSCRは、臨床研究及び日々の実践に採用され得るHSの炎症出現の妥当な、反応性で有意義な臨床エンドポイントである。これは、膿瘍又は排液性瘻孔カウントの増加を伴わない、総ANカウントのベースラインからの50%低下として規定される。この測定は、いくつかの第2相HS試験において(Kimball, Sobellら、2016, J Eur Acad Dermatol Venereol 30: 989-94;Kanniら、2018, J Invest Dermatol 138: 795-801;Tzanetakouら、2016, N Engl J Med 320: 365-76)、並びにPIONEER HS第3相臨床試験において(Kimball, Okunら、2016, N Engl J Med 375: 422-34)使用されている。
【0346】
(国際化膿性汗腺炎重症度スコアシステム(IHS4)):IHS4は、HSの動的重症度評価のためにバリデートされたツールであり(Zouboulisら、2017, Br J Dermatol 177: 1401-09)、且つこれは横断的な疾患重症度よりもむしろ治療反応を評価するようにデザインされているので、HiSCR評価(Kimballら、2014, Br J Dermatol 171: 1434-42)を改善する。IHS4スコア(ポイント)=(小結節数×1)+(膿瘍数×2)+[排液性トンネル(瘻孔/膿瘻)の数×4]。3以下のスコアは軽度HSを意味し、4-10のスコアは中等度HSを意味し、及び11以上のスコアは重度HSを意味する(Zouboulisら、2017, Br J Dermatol 177: 1401-09)。
【0347】
(化膿性汗腺炎の医師による総合評価(HS-PGA)):臨床試験において6ポイントHS-PGAを使用し、炎症性小結節、膿瘍及び排液性瘻孔の臨床の改善を測定する。これは、クリア(スコア0)から非常に重度(スコア5)までの範囲である。これは、疾患重症度のスコア化に関する明快な指針を有し、且つ使用が比較的容易である(Kimbalら、2014, Br J Dermatol 171: 1434-42)。HS-PGAは、投薬日(1、22、43、64及び85日目)の投薬前、105、126、147及び168日目(EOSV)に評価されるであろう。
【0348】
(掌蹠膿疱症)
(掌蹠膿疱症の乾癬面積及び重症度指数(ppPASI)):ppPASIは、慢性局面型乾癬の重症度を評価するために広範に使用されている、乾癬面積及び重症度指数を基にした評価ツールである。重症度、紅斑、膿疱及び落屑の総数を含むパラメータは、スケール1-4でスコア化され、次に面積及び関与した部位(手掌又は足底)について補正される。これら4つの値の和は、0(PPPなし)と72(最も重度のPPP)の間の範囲である、最終ppPASIを生じる(Bhishmanら、2001, Br J Dermatol 145: 546-53)。ppPASIは、スクリーニング時、1、22、43、64及び85日目の投薬前、並びに105、126、147及び168日目(EOSV)に評価される。
【0349】
(掌蹠の医師による総合評価(PGA)スコア):PGAは、紅斑、鱗屑、及び硬結を基にした、全ての乾癬病変の平均評価である(Robinson, 2011)。PGAは、投薬日(1、22、43、64及び85日目)の投薬前、105、126、147及び168日目(EOSV)に評価される。
【0350】
薬物動態(PK)評価
初回及び最終回の注入後、CSL324の血清濃度の決定のためのPK試料が、各注入前及び注入の終了時、並びに注入終了後3時間、4日間、1週間、2週間及び3週間に、静脈穿刺により対側腕から収集される(注入のためのi.v.ラインについて)。最終投与量後6週間、9週間及び12週間で追加のPK試料が、収集される。
【0351】
この血清濃度は、時点別に列挙され、且つ記述的にまとめられる。ノンコンパートメント法により誘導された、反復投与量投与後のCSL324のPKパラメータのグラフ表示は、投与量コホート及び適応症群別に記述的にまとめられる。
【0352】
薬力学(PD)評価
血液及び組織試料は、様々な評価のために収集される。血液評価は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:連続ANC測定、血清サイトカイン及びケモカイン(例えば、G-CSF、GM-CSF)、疾患に関連した前炎症性マーカー(例えば、CRP、ESR、C3a、C5a)、炎症性遺伝子署名(複数可)(例えば、好中球/G-CSF署名)並びに末梢血塗沫を基にした好中球プロファイルシフト。研究解析のための余分の採血は、それらの収集のために必要とされる特別な承認により、インフォームドコンセントフォーム(ICF)において明確に言及されている。
【0353】
(皮膚生検収集)
組織試料は、パンチ生検により、ベースライン時及び最終投与量の3週間後に収集され、非限定的に好中球浸潤を含む、細胞浸潤が評価される。この分析は、組織学的評価(Immunohistochemisty, H&E)及びRNA評価により実施される。
【0354】
2×3mm生検標本は、1日目(ベースライン時)及び治療期間の終了時(CSL324の5回投与量全てが投与される場合は、105日目、又は早期治療中止については最終投与量後3週間)の各々に収集される。生検標本は、投薬及び血液収集前、並びに生命兆候、体温及び臨床エンドポイントの評価後に収集される。試験治療の最後の生検標本は、病変が部分的又は完全にクリアになった場合であっても、1日目の生検部位のできる限り近くで採取される。HSに関して、ベースライン生検標本は、可能であるならば、小結節の中心を避けて、小結節>1cm(できる限り最大の小結節)から直接収集される。PPPに関して、ベースライン生検標本は、手の掌又は踝近くの足底上の炎症を起こしている皮膚の領域から収集されるが、膿疱は含まない。
【0355】
患者が報告した転帰評価
(全疾患:)
(皮膚疾患に特化した生活の質の質問票(DLQI)スコア):DLQIは、80以上の国々において、40以上の様々な皮膚状態において使用されており、且つ90以上の言語で入手可能である、簡単な10項目の質問のバリデートされた質問票である。その使用は、多くの多国籍研究を含む、1000以上の刊行物において説明されている。各質問は、1週間の回収期間を伴い、0(全くない)から3(非常に多い)まででスコア化される。合計30ポイントが最大スコアであり、ここで0-1は患者の生活に対する作用なし、2-5は作用が小さい、6-10は中程度、11-20は非常に大きい、並びに21-30は極めて大きいとみなされる(Hongboら、2005, J Invest Dermatol 125: 659-64)。DLQIは、1、22、43、64及び85日目の投薬前、並びに105、126、147及び168日目(EOSV)に評価される。
【0356】
(化膿性汗腺炎:)
(数値化スケール(NRS)疼痛スコア):疼痛に関するNRSは、皮膚状態に関連した慢性疼痛を伴う成人を含む、成人における疼痛強度の一次元測定である(Kimball、Okunら、2016, N Engl J Med, 375: 422-34)。NRSは、反応者が、最後の24時間に渡る自身の疼痛の強度を最も反映している、全体の数値(0-10の整数)を選択する、視覚的アナログスケール(VAS)のセグメント化された数値バージョンである(Rodriguez、2001, Pain Mang Nurs, 2: 38-46)。共通のフォーマットは、水平のバー又はラインであり、疼痛重症度の極値を説明する用語とつながれている(Hawkerら、2011, Arthritis Care Res (Hoboken), 63 Suppl 11: S240-52)。NRS疼痛スコアは、電子手帳を使用し、毎日収集され、毎週平均値が誘導される。
【0357】
他の評価
経時的に写真が捕らえる病変変化は、参加している対象に関する任意の評価である。これらの写真は、ベースライン時、並びにCSL324治療による病変を捕らえるための本試験の経過にわたり様々な時点(3、6、9、12、15週目及び経過観察)に撮影される。これらの写真は、内部及び外部の発表、報告及び刊行物を含む、様々な状況及び文書において使用されてよい。
【0358】
中止ルール
(試験中止基準)
本試験は、以下の場合には、直ちに中止される:
・1名の対象が、死に至るか、並びに治験責任医師及び/又は治験依頼者によりCSL324の投与に関連していると考えられる、重篤なAE(SAE)を発生している。以下の事象のいずれかが、本試験期間中に起こり、且つこれらの事象がCSL324の投与に関連していると考えられる場合、募集は中止され、且つその事象が調べられ、本試験を中止するか、本試験の再開前にプロトコールを変更するか、又は本試験を再開するかを推奨することが決定される:
・いずれかのコホート中止基準が、より低い投与量コホートに合致する場合、
・本試験において他の対象へ許容しがたいリスクをもたらすと判断される何らかの他の事象を発生する対象が1名以上。
【0359】
(コホート中止基準)
本試験中に、安全性に関連したコホート中止基準は、全ての適応について設置される。コホート中止基準が、より高い投薬コホートに合致する場合、より低い投与量コホートは、SRCが試験の中止を推奨しない限りは、継続することができる。
【0360】
以下の場合、個別のコホート内の全ての対象の投薬は直ちに中止される:
・1つのコホート内の3名の対象が、CSL324投与に関連したグレード4好中球減少症の単独の事象(およそ24時間後の再測定時に確認された1つの測定と規定される)を有する。
・以下の事象のいずれかが、1つのコホート内の対象において本試験中に生じ、及びこれらの事象が、CSL324の投薬に関連していると考えられる場合、この事象が調べられ、影響を受けたコホートについての更なる投薬及び募集を可能にする推奨を提供する。また、下記基準に合致せず且つそれらの治療期間を通じて分かれる同じコホート内の試験対象の投薬を継続するかどうか、あるいは全コホートに関するCSL324の全ての投薬を中止し、並びにコホート対象は全員、治療終了時及び経過観察の評価を受け、臨床診療/SoCに戻されるかどうかも決定される。
・1名の対象が、感染症の何らかの臨床兆候又は症状の存在下で、グレード4好中球減少症の単独の事象(およそ24時間後の再測定時に確認された1つの測定と規定される)を有する。
・1名の対象が、IV抗生物質を必要とする、確定された好中球減少性敗血症を有する(敗血症TBDを規定するための基準)。
・コホート中の他の対象へ許容しがたいリスクをもたらすと判断される何らかの他の事象。
【0361】
(対象中止基準)
本試験期間中、安全性に関連した対象中止基準は、全ての適応について設置される。対象が試験中に以下の事象のいずれかを発生し、且つこれらの事象(複数可)がCSL324に関連していると考えられる場合、この対象はCSL324の残りの投与量は投与されない。
・重篤有害事象(SAE)、
・対象が、注入速度の緩徐化及び/又は経口抗-ヒスタミンの投与を含む管理にもかかわらず、グレード3又は4の注入反応(CTCAE等級化に従う)の長期の症状を経験する場合、
・臨床上有意と考えられる重度であるが重篤でないAE(感染症を含む)、
・対象が、本試験の治療期間中任意のステージで、グレード4好中球減少症の単独の事象(およそ24時間後の再測定時に確認された1つの測定と規定される)を経験する、
・対象が、投与量投与の前日にグレード3又はグレード4好中球減少症を記録し、及びANC再評価(およそ24時間後の再測定時に確認された)の平均<800/mm3を伴う場合、
・一回の鼓膜温度>38.3℃又は1時間以上の>38.0℃の持続、及び/又は感染症の臨床上有意な兆候もしくは症状と組合せられた、CTCAEに従うグレード3好中球減少症。
【0362】
対象が、CSL324の完全投薬レジメンの自身に関する全てを受け取っていない事象において、対象は、臨床診療に戻り、最終の治療評価(最終投与量後3週間)及び経過観察評価を受ける。
【0363】
実施例3-CSL324は、HS患者においてアップレギュレートされるマーカーであるCXCR1発現に関連した好中球遊走を減少する
HS患者におけるCXCR1発現
化膿性汗腺炎患者(HS;n=15)からの全血試料を使用し、フローサイトメトリーにより、年齢及び性別が合致した健常対照の全血試料由来の好中球と比較し、好中球の表面上の細胞遊走マーカーであるCXCR1のレベル(高側方散乱光(SSC)、CD11b+CD49-により規定)を評価した。
【0364】
図7Aに示したように、CXCR1発現は、HS患者試料の好中球において、健常対照(n=15)と比べ、有意に高かった。更なる分析は、HS患者膿瘍及び小結節カウント、疾患活動性評価の形状、及びHS患者(n=14)における好中球上のCXCR1発現の間に相関が認められることを明らかにした(図7B;r2=0.3532、p=0.0250)。
【0365】
CSL324は、G-CSFにより誘導されたCXCR1及びCXCR2の発現を減少する
健常ヒトドナーから得られた全血試料を使用し、好中球上のケモカイン受容体CXCR1及びCXCR2の発現を評価し、並びにG-CSFの存在又は非存在下でのこれらの遊走性受容体のレベルに対するCSL324の効果を評価した。試料は、1mg/mLのCSL324と共に30分間プレインキュベーションし、その後これらの細胞を組換えヒトG-CSF(30ng/mL;n=11)又は組換えヒトGM-CSF(30ng/mL;n=4)により刺激し、37℃、5%CO2で、20時間培養した。好中球は、高側方散乱光(SSC)及びCD11b+CD49d-表現型により確定した。CXCR1又はCXCR2へ複合された抗体の平均蛍光強度は、培地単独中で培養した細胞に対して規準化した。
【0366】
図8に示したように、G-CSF単独との好中球の培養(黒色)は、CXCR1及びCXCR2の細胞表面発現を、培地単独と比べ増大した。CSL324とのプレインキュベーション(灰色)は、CXCR1及びCXCR2のG-CSF誘導されたアップレギュレーションの減少を引き起こし、CXCR1又はCXCR2染色の平均蛍光強度(MFI)は、好中球が細胞培養培地単独中でインキュベーションされる場合において認められるものと同等であった。GM-CSFの存在下での細胞の培養は、表面マーカーのレベルを有意に変更せず、更に試料のCSL324とのプレインキュベーションにより変更されなかった。
【0367】
CSL324は、G-CSFにより誘導された細胞遊走を減少する
細胞遊走アッセイを使用し、CSL324の、MIP-2へのG-CSF媒介された好中球遊走を阻害する能力を評価した。具体的には、精製された好中球を単離し(純度>95%)、1μg/mL CSL324と共に又は伴わずに30分間プレ培養し、その後30ng/mLヒトG-CSF又は30ng/mLヒトGM-CSFにより一晩刺激した。MIP-2(500ng/mL)への走化性を、トランスウェルインサート(細孔5μm)を使用し測定した。
【0368】
図9に示したように、G-CSFとのプレインキュベーションは、好中球のMIP-2への増大した遊走を生じ、これはCSL324とのプレインキュベーションにより培地単独条件と同じレベルまで減少した(図9A;灰色バー)。GM-CSFの遊走促進(pro-migratory)効果は、CSL324とのプレインキュベーションにより阻害されず、このことはG-CSF受容体を結合する(engage)効果の特異性を指摘している。G-CSFとのプレインキュベーションは、CXCR1及びCXCR2のアップレギュレーションを生じ、これはMIP-2への好中球の遊走の増加に相関していた(図9B及び9C)。
【0369】
まとめると、これらのデータは、以下を明らかにしている:
・CXCR1は、HS患者の好中球上に、健常個体と比べ、有意に高いレベルで発現される(図7A);
・CXCR1発現は、HS疾患の重症度(膿瘍及び小結節カウントにより測定;図7B)と正の相関がある;
・CXCR1(及びCXCR2)発現は、好中球遊走と正の相関がある(図9B及び9C);
・CSL324は、好中球上のG-CSF-誘導したCXCR1(及びCXCR2)発現を阻害し(図8A及び8B)、並びにG-CSF-誘導した好中球遊走を阻害する(図9A)。
【0370】
実施例4-好中球数及び遊走マーカー発現は、乾癬患者においてアップレギュレーションされる
G-CSFRに結合する抗体による治療を評価するために、乾癬患者を、全血中のそれらの好中球数並びに細胞遊走マーカーCXCR1及びCXCR2の発現について評価した。
【0371】
合計21名の局面型乾癬の個体(「尋常性乾癬」又は「通常の乾癬」としても公知)並びに21名の年齢及び性別がマッチした非罹患の個体を、血液及び皮膚組織試料の収集のために募集した。新鮮な全血試料中の好中球は、フローサイトメトリーを用いて表現型決定した。
【0372】
図10に示したように、好中球カウント(図10A)は、乾癬のヒトの末梢血中で、非罹患対照と比べ、有意に増加した。PASIスコアにより評価した乾癬の重症度を基にした統計は、好中球カウントは、PASIスコアが10以上の個体において、有意に上昇したことを示した。更に好中球:リンパ球比(NLR)は、PASIスコアが10以上の個体において、PASIスコアが10未満の個体と比べ、有意に上昇した(図10B)。
【0373】
活性化及び遊走の細胞表面マーカーCXCR1及びCXCR2の発現は、フローサイトメトリーにより、乾癬のヒトの末梢血好中球について、非罹患対照と比べ、評価した。ケモカイン受容体CXCR2は、軽度(PASI<10)及び重度(PASI>10)の両方の乾癬において、好中球の表面上で有意に上昇した(図10C)。ケモカイン受容体CXCR1のレベルにおける有意な変化は、検出されなかった(図10D)。G-CSFRに結合する抗体であるCSL324は、好中球カウントを減少し(実施例1参照)並びにCXCR1及びCXCR2の発現を減少する(実施例3参照)ことが本明細書において明らかにされていることを考慮すると、これらのデータは、そのような抗体は、乾癬の治療の実行可能な治療の選択肢であり得るという証拠を提供する。
【0374】
実施例5-CSL324による掌蹠膿疱症(PPP)の治療は、安全且つ有効である
対象00360098-0001
この対象は、4年間にわたる掌蹠膿疱症(PPP)、肥満症(129kg)、及び喫煙(30年以上にわたる)の既往歴のある、52歳の白人男性であった。この患者は、PPPについて先に以下の薬物療法により治療された:
・メトトレキセート毎週10mgをおよそ1年間;
・アシトレチン毎日50mgをおよそ4ヶ月間;
・タクロリムス(局所)のおよそ3年間;
・コルチコステロイド(局所)のおよそ3年間;及び
・ビタミンD+コルチコステロイド(局所)のおよそ3年間。
【0375】
この対象は、実施例2に説明された試験CSL324_1002に登録し、1日目にCSL324の投与量0.3mg/kgの初回注入を受け、その後21日毎に、22、43、64、及び85日目に、4回の後続注入を受け取った。
【0376】
有効性結果
掌蹠膿疱症の乾癬面積及び重症度指数(ppPASI)により測定した、この対象のベースラインPPPの重症度は、スクリーニング時に34.2(重度)、及びCSL324の初回投与前に26.9(重度)であった。加えて、CSL324の初回投与前に、PPP-医師による総合評価(PPP-PGA)は、重度であった。有効性の結果は、126日間を通じて測定し、且つ表5及び図11に表した。
【0377】
【化6】
【0378】
表5及び図11に表されたデータは、CSL324による治療は、ppPASI又はPPP-PGAにより測定された、PPPの重症度をうまく低下したことを明らかにしている。下記表6は、これらの結果を解釈するためのガイドラインを提供する。
【0379】
【化7】
【0380】
安全性結果
(有害事象)
この対象は、3つの有害事象を経験し、全て重篤ではなく且つCSL324に関連していないと考えられた。
最初のAEである下部腰痛は、67日目に生じ、これはNSAID非ステロイド性抗炎症薬により治療され、1日で回復した。第二のAEである糖尿病は、食事の変更にも関わらず変化しなかった、試験スクリーニングからの上昇したグルコースを有した後、CSL324の最終投与量の日に診断された。高血糖症は、CSL324による治療時に増悪しなかった。最後のAEである嗜眠は、最終投与量後その日に生じ、同日に回復した。
【0381】
(絶対好中球カウント)
この対象は、CSL324の初回投与前に、絶対好中球カウント(ANC)4.9×109/L及び6.3×109/Lを有した。ANCは、図12及び下記表7に示したように、本試験を通じて正常範囲で有り続けた。
【0382】
【化8】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2024120911000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
7連続日より長く持続したグレード3又はグレード4の好中球減少症を引き起こすことなく、ヒト対象において循環好中球を減少する方法であって、G-CSFシグナル伝達を阻害する抗体の0.1mg/kg~1.0mg/kgの投与量を、該対象へ投与することを含む、方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024120911000001.xml
【外国語明細書】