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特開2024-120920一官能性ビニルモノマーの添加を含む重合プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120920
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】一官能性ビニルモノマーの添加を含む重合プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/18 20060101AFI20240829BHJP
   C08F 212/00 20060101ALI20240829BHJP
   C08F 12/00 20060101ALI20240829BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08F2/18
C08F212/00
C08F12/00 510
C08F4/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098903
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2020525895の分割
【原出願日】2018-10-24
(31)【優先権主張番号】62/584,219
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】520082968
【氏名又は名称】ディーディーピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス エイト,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】サヴォ、アンドリュー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】オストランダー、マイケル
(57)【要約】
【課題】良好な方法を提供すること。
【解決手段】
ポリマービーズの集合体の製造方法であって、前記ビーズが、
(i)ビーズの重量を基準として、75~99.7重量%の一官能性ビニルモノマーの重合単位と、
(ii)ビーズの重量を基準として、0.3~25重量%の多官能性ビニルモノマーの重合単位とを含み;
本方法が、
(a)開始剤、多官能性ビニルモノマー、及び一官能性ビニルモノマーを含むモノマー油滴の水性懸濁液を提供する工程;
(b)モノマー油滴中のモノマーの重合を開始させる工程;
(c)モノマー油滴中のモノマーの重合が起こっている間に、モノマー供給溶液を懸濁液に添加する工程を含む方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマービーズの集合体の製造方法であって、前記ビーズが、
(i)前記ビーズの重量を基準として、75~99.7重量%の一官能性ビニルモノマーの重合単位と、
(ii)前記ビーズの重量を基準として、0.3~25重量%の多官能性ビニルモノマーの重合単位と
を含み;
前記方法が、
(a)開始剤、前記多官能性ビニルモノマー、及び前記一官能性ビニルモノマーを含むモノマー油滴の水性懸濁液を提供する工程;
(b)前記モノマー油滴中の前記モノマーの重合を開始させる工程;
(c)前記モノマー油滴中の前記モノマーの前記重合が起こっている間に、モノマー供給溶液を前記懸濁液に添加する工程であって、
前記添加する工程が、前記モノマー油滴中のモノマーの重合度(EXTSTART)が0%~50%である時点で始まり、及び
前記添加する工程が、EXTSTART後に前記モノマー油滴中のモノマーの重合度(EXTSTOP)が5%~100%である時点で終わり;
前記供給溶液が、前記供給溶液の重量を基準として重量で、90%~100%の量でモノマーを含み;
前記供給溶液が、前記供給溶液の重量を基準として重量で、50%~100%の量で前記一官能性ビニルモノマーを含む
工程
を含む、方法。
【請求項2】
量EXTDIF=EXTSTOP-EXTSTARTが5%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一官能性ビニルモノマーがスチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多官能性ビニルモノマーがジビニルベンゼンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記供給溶液中の多官能性ビニルモノマー対一官能性ビニルモノマーの重量比が、前記モノマー油滴中の多官能性ビニルモノマー対一官能性ビニルモノマーの重量比よりも低い、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリマービーズの有用な製造方法は、モノマー油滴が水性媒体中に懸濁させられ、次に油滴中のモノマーがポリマービーズを形成するために重合させられるプロセスである、懸濁重合である。モノマーの混合物がモノマー油滴中に存在する場合、モノマーは、異なる速度で反応し、こうして不均一なポリマービーズを形成し得ると考えられる。例えば、油滴内の1つ以上の領域は、全体油滴中のモノマーの混合物中に存在するより反応性の高いモノマーの平均割合よりも高い、より反応性の高いモノマーの重合単位の割合を有するコポリマーを形成し得ると考えられる。それ故、また、油滴内の1つ以上の領域は、全体油滴中のモノマーの混合物中に存在するより反応性の高いモノマーの平均割合よりも低い、より反応性の高いモノマーの重合単位の割合を有するコポリマーを形成し得ると考えられる。一般に、ビーズにおけるいくらかの不均一性は多くの場合モノマーの異なる反応性のために生じると予期される。
【0002】
モノマーの混合物の重合を含む、且つ、結果として生じるポリマービーズにおいて生成する均一性又は不均一性のタイプに対していくらかの統制力を発揮することができるポリマービーズの製造方法を提供することが望ましい。
【0003】
多くのポリマービーズは、スルホン酸基、カルボキシル基、第三級アミン基、又は第四級アミン基などの共有結合したイオン交換基を有する。イオン交換基を有するそのようなポリマービーズは、イオン交換樹脂として知られている。多くの場合に、イオン交換樹脂を製造するために、イオン交換基を欠くモノマーが、イオン交換官能基を欠くポリマービーズを形成するために重合させられ、それらのポリマービーズは、所望のイオン交換基又は複数の基を結合させるために1つ以上の化学反応にかけられる。イオン交換樹脂の重要な特性は、保水容量(MHC)である。MHCは、イオン交換樹脂を100%湿度での空気と平衡に達しさせ、次にポリマービーズによって吸着された水の量を測定することによって測定される。特定の目的のために使用されることを意図される多くのイオン交換樹脂について、具体的な所望の標的範囲のMHC値が存在し、その標的範囲のMHCを有するイオン交換樹脂が、その意図される目的にとりわけ好適であると考えられる。
【0004】
イオン交換基を欠く多くのポリマービーズは、1種以上の一官能性ビニルモノマーと1種以上の多官能性ビニルモノマーとのコポリマーである。そのようなポリマービーズの別の重要な特性は、多官能性ビニルモノマーの重合単位の量である。過去に、イオン交換樹脂のMHC値は、多官能性ビニルモノマーの重合単位の量によって大きく決定されることが多くの場合分かっていた。例えば、いくつかの場合には、所望のMHC値を達成するために、不必要に大量の多官能性ビニルモノマーを使用することが必要であった。
【0005】
所望の標的MHC値を有する、且つ、以前に必要であったものよりも低い量の多官能性ビニルモノマーの重合単位を有するイオン交換樹脂を製造することが望ましい。多官能性ビニルモノマーは、通常、他のモノマーよりも高価であり、そのため、多官能性ビニルモノマーの量を減らすことは、通常、ポリマービーズの製造コストを削減するであろう。イオン交換基を欠く、且つ、そのような望ましいイオン交換樹脂へ変換することができるポリマービーズを製造することがまた望ましい。
【0006】
米国特許第3,792,029号明細書は、モノマー混合物の懸濁重合中に、重合が起こっている間により反応性の高いモノマーを含有するエマルジョンが懸濁液に添加される懸濁重合プロセスを記載している。また、米国特許第3,792,029号明細書のプロセスにおいて、添加されるモノマーは、出発モノマーの量に対してかなりの量であり、供給モノマー中の多官能性ビニルモノマーの濃度は、出発モノマー中よりも高い。米国特許第3,792,029号明細書のプロセスは、重合中にモノマーを供給することなしに行われるプロセスと比べて異なるポリマー組成プロファイルをもたらすであろうと考えられる。米国特許第3,792,029号明細書のプロセスは、イオン交換樹脂性能にかなりの影響を及ぼし得る相互侵入ポリマーネットワーク構造をもたらすであろうと更に考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下の特徴の1つ以上を持ったプロセスを提供することが望ましい:ニートモノマーが懸濁重合プロセスに添加される;重合中に供給されるモノマーの量が、重合の開始前に存在したモノマーの量未満である;供給物中の多官能性ビニルモノマー対一官能性ビニルモノマーの比が、重合の開始前に存在した多官能性ビニルモノマー対一官能性ビニルモノマーの比よりも低い;及び/又はモノマー油滴中へ供給されているモノマーのモノマーの物質移動の一貫性及び/又は効率の改善。これらの特徴は、米国特許第3,792,029号明細書のプロセスよりも行うのがより簡単であるプロセスを提供すると考えられる。これらの特徴は、米国特許第3,792,029号明細書のプロセスよりも相互侵入ネットワーク構造を生み出す傾向が少ないプロセスを提供するであろうとまた考えられる。イオン交換樹脂への変換後に、以前に必要とされたものよりも低いレベルの多官能性ビニルモノマーの重合単位で標的MHCレベルを有するポリマービーズを提供することがまた望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下は、本発明のステートメントである。
【0009】
本発明の第1態様は、ポリマービーズの集合体の製造方法であって、本ビーズが、
(i)ビーズの重量を基準として、75~99.7重量%の一官能性ビニルモノマーの重合単位と、
(ii)ビーズの重量を基準として、0.3~25重量%の多官能性ビニルモノマーの重合単位と
を含み、
本方法が、
(a)開始剤と、多官能性ビニルモノマーと、一官能性ビニルモノマーとを含むモノマー油滴の水性懸濁液を提供する工程;
(b)モノマー油滴中のモノマーの重合を開始させる工程;
(c)モノマー油滴中のモノマーの重合が起こっている間に、モノマー供給溶液を懸濁液に添加する工程であって、
この添加が、モノマー油滴中のモノマーの重合度(EXTSTART)が0%~50%である時点で始まり、
この添加が、EXTSTART後のモノマー油滴中のモノマーの重合度(EXTSTOP)が5%~100%である時点で終わり;
この供給溶液が、供給溶液の重量を基準として重量で、90%~100%の量でモノマーを含み;
この供給溶液が、供給溶液の重量を基準として重量で、50%~100%の量で一官能性ビニルモノマーを含む
工程
を含む方法である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0011】
本明細書で用いるところでは、以下の用語は、文脈がそうではないと明らかに示していない限り、指定された定義を有する。
【0012】
「ポリマー」は、本明細書で用いるところでは、より小さい化学繰り返し単位の反応生成物から構成される比較的大きい分子である。ポリマーは、線状、分岐状、星形、ループ状、超分岐状、架橋、又はそれらの組み合わせである構造を有し得;ポリマーは、単一タイプの繰り返し単位を有し得る(「ホモポリマー」)、又はそれらは、2つ以上のタイプの繰り返し単位を有し得る(「コポリマー」)。コポリマーは、ランダムに、順序正しく、ブロックで、他の配列で、又はそれらの任意の混合若しくは組み合わせで配列された、様々なタイプの繰り返し単位を有し得る。
【0013】
互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、「モノマー」として本明細書では知られている。そのようにして形成された繰り返し単位は、モノマーの「重合単位」として本明細書では理解される。
【0014】
ビニルモノマーは、構造:
【化1】
(式中、R、R、R、及びRのそれぞれは、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基などの)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、他の置換若しくは非置換有機基、又はそれらの任意の組み合わせである)
を有する。ビニルモノマーは、フリーラジカル重合してポリマーを形成することができる。いくつかのビニルモノマーは、R、R、R、及びRの1つ以上に組み込まれた1つ以上の重合性炭素-炭素二重結合を有し;そのようなビニルモノマーは、多官能性ビニルモノマーとして本明細書では知られている。厳密に1つの重合性炭素-炭素二重結合を持ったビニルモノマーは、一官能性ビニルモノマーとして本明細書では知られている。
【0015】
スチレン系モノマーは、R及びRのそれぞれが水素であり、Rが水素又はアルキルであり、
-R4が、
構造
【化2】
(式中、R、R、R、R、及びRのそれぞれは、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基又はビニル基などの)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、他の置換若しくは非置換有機基、又はそれらの任意の組み合わせである)
を有するビニルモノマーである。
【0016】
1種以上のポリマーを形成するためのモノマー間の反応は、重合プロセスと本明細書では言われる。
【0017】
本明細書で用いるところでは、開始剤は、周囲条件で安定であるが、フリーラジカルを有する1つ以上のフラグメントを特定の条件下で生成することができる分子であり、そのフラグメントは、モノマーと相互作用してフリーラジカル重合プロセスを開始することができる。フリーラジカルを有するフラグメントを生成させる条件としては、例えば、高温、酸化還元反応への関与、紫外線及び/若しくは電離放射線への暴露、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
本明細書で用いるところでは、語句「全モノマー」は、重合の開始が始まるときに存在するモノマー及び重合プロセス中に添加され得るものの全てを含めて、ポリマーを製造するのに使用されるモノマーの全てを言う。
【0019】
ポリマーは、ポリマーを製造するのに使用されたモノマーの重合単位を、たとえ、それらの重合単位のいくらか又は全てが、重合後に、1種以上の官能基の追加によって変えられていても、含有すると本明細書では言われる。例えば、90:10のスチレン:DVBの重量比でのスチレンとDVBとから製造されるコポリマーは、90重量%のスチレンの重合単位を有すると言われる。そのコポリマーが、次に、芳香環上の水素原子のいくつかをスルホン酸基で置き換えるために硫酸との反応によって変えられる場合に、結果として生じた官能化ポリマーは、90重量%のスチレンの重合単位を有すると依然として言われるであろう。
【0020】
本明細書で用いるところでは、防止剤は、ビニルモノマーラジカルと又は成長中のビニルポリマー鎖上のラジカルと反応して、ビニル重合に関与しない新しいラジカルを形成するか又はビニル重合に関与しない化学種を形成する分子である。
【0021】
ポロゲンは、本発明の実施において使用されるモノマー又はモノマーの混合物に可溶である化合物である。すなわち、25℃において、100グラム以上のポロゲンが、本発明の実施において使用される100グラムのモノマー又はモノマーの混合物に溶解するであろう。ポリマーは、大量のポロゲンを吸収しない。すなわち、25℃において、本発明の実施において形成されたポリマーは、ポリマーの100グラム当たり5グラム以下のポロゲンを吸収する。
【0022】
マクロ多孔性ポリマービーズは、20nm以上の平均細孔径を持った多孔性構造を有する。細孔径は、窒素ガスを使用するブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)法を用いて測定される。マクロ多孔性ポリマービーズは、通常、ポロゲンをモノマー油滴中へ組み込むことによって製造される。ポロゲンはモノマーに可溶であるが、ポリマーはポロゲンに溶けず、その結果、ポリマーが生成するにつれて、ポロゲンの相分離ドメインが残る。重合後に、ポロゲンは、蒸発によって又は溶剤での洗浄によって除去される。ポリマービーズの多孔性構造は、ポロゲンがその相分離ドメインから除去されるときに残る空の空間である。
【0023】
ゲル型ポリマービーズは、ポロゲンの使用なしに製造される。ゲル型ポリマービーズ中の細孔は、ポリマービーズの絡まった、たぶん架橋したポリマー鎖中の原子間の自由体積である。ゲル型ポリマービーズ中の細孔は、20nmよりも小さい。いくつかの場合には、ゲル型樹脂中の細孔は、小さすぎてBET法を用いて検出できない。
【0024】
本明細書で用いるところでは、イオン交換は、溶液がイオン交換樹脂と接触するプロセスである。溶液との接触の前に、イオン交換樹脂は、ある種の電荷の官能基を有し、その官能基と関係した反対電荷のイオンを有する。溶液がイオン交換樹脂と接触する場合、溶液中のいくつかのイオンは、イオン交換樹脂上の官能基と関係していた同じ電荷のイオンと場所交換することによってイオン交換樹脂に結合する。
【0025】
5グラム以上の化合物が25℃で100mlの水中で安定した溶液を形成する場合、化合物は水溶性であると本明細書では言われる。いくつかの水溶性ポリマーの場合には、水は、ポリマーを溶解させるために25℃よりも上に加熱される必要があり得るが、25℃に冷却した後に、その溶液は25℃で保持される場合に安定である。
【0026】
懸濁液は、液体媒体の至る所に分布した1つの物質の粒子を有する組成物である。分布粒子は、液体であっても固体であってもよく;分布液体粒子は、油滴と呼ばれる。媒体の重量を基準として、90重量%以上の水を媒体が含有する場合、媒体は「水性」である。懸濁液は、安定である場合も安定でない場合もあり得る。すなわち、分布粒子は、容器の底部に沈降する又は容器の最上部に浮遊する傾向を有するかも有さないかもしれず、粒子を媒体中に分布した状態に保つために機械的かき混ぜが必要であるかも必要でないかもしれない。
【0027】
ポリマービーズは、粒子の重量を基準として、90重量%以上の有機ポリマーを含有する粒子である。ポリマービーズは、球形又はほぼ球形である。ポリマービーズは、その半径で特徴付けられる。ビーズが球形でない場合、ビーズの半径は、ビーズと同じ体積を有する想像上の球形である、「参照球」の半径であると本明細書では解釈される。粒子が球形であるかどうかは、ギリシャ文字Ψで表される、「球形度」によって評価される。体積VP、並びに長さa(長い)、b(中間の)及びc(短い)の主軸を有する粒子について、球形度は、
【数1】
である。
【0028】
本明細書で用いるところでは、「周囲温度」は、「室温」と同じ意味であり、およそ23℃である。
【0029】
粒子の集合体は、以下の通り定義される調和平均径(HMD):
【数2】
(ここで、nは、粒子の数であり、dは、i番目の粒子の直径である)
を有する。
【0030】
本明細書で用いるところでは、懸濁重合プロセスは、モノマー油滴が、油滴の重量を基準として80重量%以上のモノマーを含有する;モノマー油滴が重合を受けていない;及びモノマー油滴が、油滴の重量を基準として1重量%以上の量でポリマーを含有する状態(S1)をプロセスが含む場合には「シード」プロセスである。シードプロセスにおいて、状態(S1)後に、モノマー油滴中のモノマーの重合が開始される。典型的なシードプロセスにおいて、ポリマー粒子の懸濁液が提供され、次にモノマーが懸濁液に添加され、モノマーはポリマー粒子中へ吸収され、次にモノマーの重合が開始される。
【0031】
比は、本明細書では以下の通り特徴付けられる。例えば、比が5:1以上であると言われる場合、その比は、5:1又は6:1又は100:1であり得るが、4:1であり得ないことを意味する。一般的にこの特徴付けを述べると、比がX:1以上であると言われる場合、その比はY:1(ここで、YはX以上である)である。同様に、例えば、比が2:1以下であると言われる場合、その比は、2:1又は1:1又は0.001:1であり得るが、3:1であり得ないことを意味する。一般的にこの特徴付けを述べると、比がZ:1以下であると言われる場合、その比はW:1(ここで、WはZ以下である)である。
【0032】
本発明の方法は、ビニルモノマー及び開始剤を含有するモノマー油滴を含む。以下は、重合の開始前にそれらが存在するようなモノマー油滴の説明である。
【0033】
モノマー油滴は、任意選択的に、ポロゲンを更に含有する。モノマーの量プラスポロゲンの量の合計を、モノマー油滴の重量を基準とする重量百分率として特徴付けることは有用である。好ましくは、その合計は、95%以上;より好ましくは97%以上;より好ましくは99%以上である。
【0034】
好ましくは、ポロゲンは、不在であるか、存在する場合、比較的少量で存在するかのどちらかである。ポロゲンがモノマー油滴中に存在する場合、好ましくは、ポロゲンの量は、モノマー油滴の重量を基準として重量で、10%以下;より好ましくは3%以下;より好ましくは1%以下;より好ましくは0.3%以下の量に制限される。より好ましくは、ポロゲンは、モノマー油滴中に全く存在しない。
【0035】
以下は、重合の開始前にそれらが存在するようなモノマー油滴の説明である。
【0036】
好ましくは、モノマー油滴中のモノマーの量は、油滴の重量を基準として重量で、95%以上;より好ましくは97%以上;より好ましくは99%以上である。
【0037】
好ましいビニルモノマーは、スチレン系モノマー、アクリルモノマー、及びそれらの混合物である。好ましくは、使用されるモノマーは、全て、スチレン系モノマー、アクリルモノマー、及びそれらの混合物から選択される。より好ましくは、使用されるモノマーは、全て、スチレン系モノマーから選択される。ビニルモノマーは、1種以上の一官能性ビニルモノマーを含む。好ましい一官能性ビニルモノマーは、アクリル及びスチレン系一官能性モノマーであり;一官能性スチレン系モノマーがより好ましく;スチレンがより好ましい。ビニルモノマーは、また、1種以上の多官能性ビニルモノマーを含む。好ましい多官能性ビニルモノマーは、多官能性スチレン系モノマーであり;ジビニルベンゼンがより好ましい。本明細書で用いるところでは、用語「ジビニルベンゼン」又は「DVB」は、たぶん他の化学品が合計で1重量%以下の総量で、およそ63重量%純度の化学的DVBとおよそ37重量%のエチルビニルベンゼン(EVB)とを含有する混合物を言う。それ故、例えば、4%のDVBを含有すると言われる組成物は、4%のDVBに加えて、およそ2.35%のEVBを含有するであろう。好ましくは、塩化ビニルの量は、全モノマーの総重量を基準として重量で、0~0.1%、より好ましくは0~0.01%;より好ましくは0%である。
【0038】
好ましくは、重合の開始前の油滴中のスチレン系モノマーの量は、油滴中の全モノマーの重量を基準として重量で、50%以上;より好ましくは75%以上;より好ましくは88%以上;より好ましくは94%以上;より好ましくは97%以上;より好ましくは100%である。
【0039】
重合の開始前の油滴中にある一官能性ビニルモノマーは、MONO1と表示される。好ましくは、MONO1の量は、油滴中の全モノマーの重量を基準として重量で、75%以上;より好ましくは85%以上:より好ましくは90%以上;より好ましくは94%以上である。好ましくは、MONO1の量は、油滴中の全モノマーの重量を基準として重量で、99.5%以下;より好ましくは99%以下;より好ましくは98.5%以下である。
【0040】
好ましくは、重合の開始前の油滴中の多官能性ビニルモノマーの量は、油滴中の全モノマーの重量を基準として重量で、0.5%以上;より好ましくは1%以上;より好ましくは1.5%以上である。好ましくは、油滴中の多官能性ビニルモノマーの量は、油滴中の全モノマーの重量を基準として重量で、25%以下;より好ましくは15%以下;より好ましくは10%以下;より好ましくは6%以下である。
【0041】

MONORATIO=100*(WMONOTOTAL-WMONO1)/WMONOTOTAL
(ここで、WMONO1は、MONO1(重合の開始前に存在する一官能性ビニルモノマー)の重量であり;WMONOTOTALは、開始前に存在する一官能性ビニルモノマー及び開始後に添加される一官能性ビニルモノマーを含めて、全体重合プロセスに使用される一官能性ビニルモノマーの総重量である)
を特徴付けることは有用である。好ましくは、MONORATIOは、0.05%以上;より好ましくは0.1%以上;より好ましくは0.2%以上;より好ましくは0.4%以上である。好ましくは、MONORATIOは、30%以下;より好ましくは25%以下;より好ましくは20%以下;より好ましくは15%以下である。好ましくは、MONORATIOは、2%以上;より好ましくは4%以上;より好ましくは6%以上;より好ましくは8%以上である。
【0042】
本発明の方法は、重合の開始前に、水性媒体中のモノマー油滴の懸濁液を含む。好ましくは、重合の開始前のモノマーの総量は、重合の開始前の、懸濁液の全体積を基準として体積で、15%以上;より好ましくは20%以上;より好ましくは25%以上;より好ましくは30%以上である。好ましくは、重合の開始前のモノマーの総量は、懸濁液の全体積を基準として体積で、55%以下;より好ましくは50%以下;より好ましくは45%以下である。
【0043】
重合の完了後に、懸濁液中のポリマービーズの量は、懸濁液の全体積を基準として体積で、18%以上;より好ましくは23%以上;より好ましくは28%以上である。重合の完了後に、懸濁液中のポリマービーズの量は、懸濁液の全体積を基準として体積で、58%以下;より好ましくは53%以下;より好ましくは48%以下である。
【0044】
水性媒体は、任意選択的に、1種以上の溶解した亜硝酸塩、その亜硝酸塩の誘導体、又はそれらの組み合わせを含有する。亜硝酸塩は、式M(NO(式中、Mは、アンモニウムカチオン又はアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類カチオンであり;及び式中、vは、Mがアンモニウムカチオン又はアルカリ金属カチオンの場合には1であり、vは、Mがアルカリ土類カチオンの場合には2である)を有する。亜硝酸塩が水に溶解する場合、亜硝酸イオンは、化学反応を受けて、例えば、亜硝酸及び/又は式Nの化合物などの誘導体を形成すると考えられる。これらの誘導体の量は、溶解塩の量プラス水性媒体中に存在する誘導体の量を生み出すために溶解させられなければならないであろう塩の量で特徴付けられる。亜硝酸塩及びその誘導体の好ましい量は、水性媒体の重量を基準として重量で、0.005%以上;より好ましくは0.008%以上;より好ましくは0.011%以上;より好ましくは0.014%以上である。亜硝酸塩及びその誘導体の好ましい量は、水性媒体の重量を基準として重量で、0.5%以下;より好ましくは0.4%以下;より好ましくは0.3%以下;より好ましくは0.2%以下である。
【0045】
好ましい亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウムである。好ましくは、亜硝酸塩の誘導体は、亜硝酸ナトリウムの誘導体である。
【0046】
モノマー油滴は、好ましくは、1種以上の開始剤を含有する。好ましい開始剤は、25℃での100mLの水への1グラム以下;より好ましくは0.5グラム以下;より好ましくは0.2グラム以下;より好ましくは0.1グラム以下の溶解度を有する。過酸化物及びヒドロペルオキシド開始剤が好ましく;過酸化物開始剤がより好ましく;ベンゾイルペルオキシド及びそれの誘導体がより好ましく;ベンゾイルペルオキシドがより好ましい。好ましくは、開始剤対全モノマーの重量比は、0.0005:1以上;より好ましくは0.002:1以上;より好ましくは0.005:1以上である。好ましくは、開始剤対全モノマーの重量比は、0.02:1以下;より好ましくは0.01:1以下;より好ましくは0.007:1以下である。
【0047】
モノマー油滴は、任意選択的に、1種以上のポロゲンを含有する。好ましくは、ほとんど又は全くポロゲンは存在しない。すなわち、好ましくは、ポロゲンは不在であるか或いは、存在する場合、ポロゲンの量は、モノマー油滴の重量を基準として重量で、1%以下;より好ましくは0.1%以下である。より好ましくは、ポロゲンは、モノマー油滴中に全く存在しない。
【0048】
製造業者によって通常供給されるような、モノマーは、貯蔵中に予想外の重合を防ぐために、比較的少量の防止剤を含有する。一般的な防止剤は、キノン(例えば、1,4-ベンゾキノン)及びヒンダードフェノール(例えば、4-t-ブチルカテコールとも呼ばれる、4-tert-ブチルピロカテコール)である。
【0049】
好ましくは、重合の開始前に、モノマー油滴は、いかなる種類のポリマーも全く含有しないか或いは任意の種類の少量のポリマーを含有するかのどちらかである。すなわち、任意のポリマーがモノマー油滴中に存在する場合、ポリマーの総量は、好ましくは、モノマー油滴の重量を基準として重量で、0.1%以下;より好ましくはゼロである。
【0050】
水性媒体は、好ましくは、1種以上の水溶性ポリマーを含有する。好ましい水溶性ポリマーは、水溶性ポリビニルアルコールポリマー、セルロースの水溶性誘導体、第四級アンモニウムポリマー、ゼラチン、及びそれらの混合物である。より好ましい水溶性ポリマーは、水溶性ポリビニルアルコールポリマー、セルロースの水溶性誘導体、及びそれらの混合物である。第四級アンモニウムポリマーの中で、ジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)のポリマーが好ましい。セルロースの水溶性誘導体の中で、カルボキシメチルメチルセルロースが好ましい。ポリビニルアルコールポリマーの中で、80%~90%の加水分解度のものが好ましい。好ましくは、水性媒体は、1種以上の水溶性ポリビニルアルコールポリマーと1種以上のセルロースの水溶性誘導体とを含有する。
【0051】
1種以上の水溶性ポリマーが使用される場合、好ましくは、水溶性ポリマーの総量は、水性媒体の重量を基準として重量で、0.02%以上;より好ましくは0.05%以上;より好ましくは0.1%以上である。1種以上の水溶性ポリマーが使用される場合、好ましくは、水溶性ポリマーの総量は、水の重量を基準として重量で、1%以下;より好ましくは0.5%以下である。
【0052】
1種以上の水溶性ポリマーの代わりに又は1種以上の水溶性ポリマーに加えて使用され得る、モノマー油滴を安定化させる他の方法もまた好適である。例えば、モノマー油滴よりも小さい固体粒子は、油滴の表面に存在し、油滴を安定化させ得る。そのような固体粒子の一例は、コロイド状シリカ粒子である。
【0053】
モノマー油滴の水性懸濁液は、任意選択的に、1種以上の懸濁助剤を含有する。懸濁助剤は、モノマー油滴を安定化させると考えられる。懸濁助剤は、それらを水相に添加することによって、若しくはそれらをモノマー油滴に添加することによって、又はそれらの組み合わせによって導入され得る。懸濁助剤が導入される方法にかかわらず、懸濁助剤の好ましい量は、モノマー油滴の重量を基準として重量で、0.001%~0.1%である。好ましい懸濁助剤は、4-ビニルフェニルボロン酸である。
【0054】
ゼラチンは、懸濁液中に存在しても存在しなくてもよい。ゼラチンが存在する場合、その量は、水の重量を基準として重量で、2%以下;又は1%以下;又は0.5%以下である。好ましい実施形態は、ゼラチンをほとんど又は全く有さない。好ましくは、ゼラチンの量は、ゼラチンの量が、水の重量を基準として重量で、0~0.01%;より好ましくは0~0.001%であるのに十分に低い。より好ましくは、ゼラチンの量はゼロである。
【0055】
重合を開始させる工程の性質は、使用される開始剤の性質にある程度依存する。例えば、熱開始剤が使用される場合、開始条件は、開始剤分子のかなりの部分が分解してフリーラジカルを形成するために十分に高い25℃よりも上の温度を確立することを含む。もう一つの例を挙げると、光開始剤が使用される場合、開始条件は、開始剤分子のかなりの部分が分解してフリーラジカルを形成するために十分に低い波長の及び十分に高い強度の放射線に開始剤を暴露することを含む。もう一つの例を挙げると、開始剤がレドックス開始剤である場合、開始条件は、かなりの数のフリーラジカルが生成するように十分に高い濃度の酸化剤及び還元剤の両方の存在を含む。好ましくは、熱開始剤が使用される。好ましくは、開始条件は、65℃以上、より好ましくは70℃以上の温度を含む。すなわち、好ましくは、懸濁液は、40℃よりも下の温度で提供され、存在する開始剤は、その温度で有意な数のフリーラジカルを生成しない。次に、好ましくは、工程(b)は、開始条件へ温度を上げることを含む。
【0056】
工程(b)後で、重合が起こっている間に、いかなる瞬間にも、懸濁液を含有する容器中のフリーラジカル重合度は、以下の通り特徴付けられ得る。
重合度=100*PM/TM
式中、PMは、フリーラジカル重合プロセスによって形成されたポリマーの質量であり、TMは、重合前の油滴中のモノマー及びその瞬間までモノマー供給溶液において添加されたモノマーを含めて、その瞬間までに容器に添加されたモノマーの全質量である。
【0057】
重合プロセスの開始前に、油滴は、懸濁液中に存在し、油滴は、ビニルモノマー及び開始剤を含有する。好ましくは、油滴は、水性媒体の全体にわたって分布している。好ましくは、水性媒体の組成物は、水性媒体の重量を基準として重量で、90%以上;より好ましくは95%以上;より好ましくは98%以上の量で水を含有する。水に溶解した化合物は、連続液体媒体の一部であると考えられる。好ましくは、油滴の体積平均粒径は、50μm~1,500μmである。
【0058】
本発明の方法において、モノマー油滴における重合が始まってしまうとすぐに、供給溶液が懸濁液に添加される。重合が始まった後にモノマーを懸濁液に添加する行動は、「漸次添加」、又はGAとして本明細書では知られている。供給溶液は、任意の速度で添加され得る。供給溶液の添加速度は、一定であってもよいし、又はあるときには他のときよりも速くてもよい。供給溶液の添加は、(迅速に又はゆっくりと行われ得る)単一連続添加で成し遂げられてもよいし、又は供給溶液の添加は、1回以上中断されてもよい。
【0059】
供給溶液の添加は、反応進行度が、「EXTSTART」と本明細書では表示される時点にあるときに始められる。EXTSTARTは、両端を含めて、0%~50%である。好ましくは、EXTSTARTは、40%以下;より好ましくは30%以下;より好ましくは20%以下;より好ましくは10%以下である。
【0060】
反応進行度「EXTSTOP」は、供給溶液の最後が懸濁液に添加される反応進行度である。供給溶液は、EXTSTOP後には懸濁液に全く添加されない。EXTSTOPは5%~100%である。好ましくは、EXTSTOPは85%以下である。好ましくは、量
EXTDIFF=EXTSTOP-EXTSTART
は、5%以上;より好ましくは20%以上;より好ましくは50%以上;より好ましくは60%以上である。
【0061】
好ましくは、供給溶液は、供給溶液の重量を基準として重量で、75%以上;より好ましくは85%以上;より好ましくは95%以上;より好ましくは99%以上の量で全てのタイプの全ビニルモノマーを含有する。
【0062】
供給溶液中の一官能性モノマーの量は、好ましくは、供給溶液の重量を基準として重量で、50%以上;好ましくは60%以上;より好ましくは70%以上;より好ましくは80%以上;より好ましくは90%以上;より好ましくは95%以上;より好ましくは99%以上である。
【0063】
供給溶液での使用のために、好ましい一官能性ビニルモノマーは、モノマー油滴での使用に好ましいとして上に記載されたものと同じものである。多官能性ビニルモノマーが供給溶液中に存在する場合、好ましい多官能性ビニルモノマーは、モノマー油滴での使用に好ましいとして上に記載されたものと同じものである。
【0064】
多官能性ビニルモノマー対一官能性ビニルモノマーの割合を特徴付けること、及び油滴におけるその割合を供給溶液における同じ割合と比較することは有用である。WMONO1は、油滴における一官能性ビニルモノマーの総重量であり;WMULTI1は、油滴における多官能性ビニルモノマーの総重量であり;WMONO2は、供給溶液における一官能性ビニルモノマーの総重量であり;WMULTI2は、供給溶液における多官能性ビニルモノマーの総重量である。比較比COMPRATIOは、(WMULTI2/WMONO2)対(WMULTI1/WMONO1)の比と定義される。好ましくは、COMPRATIOは、1:1未満;より好ましくは0.1:1以下;より好ましくは0.01:1以下;より好ましくは0:1である。
【0065】
好ましくは、供給溶液は、開始剤を全く含有しないか或いは、重量で百万当たりの部で、100ppm以下;より好ましくは10ppm以下;より好ましくは1ppm以下の量で開始剤を含有するかのどちらかである。
【0066】
好ましくは、供給溶液は、水を全く含有しないか、供給溶液の重量を基準として重量で、70%以下;より好ましくは20%以下;より好ましくは10%以下;より好ましくは3%以下;より好ましくは1%以下;より好ましくは0.3%以下;より好ましくは0.1%以下の量で水を含有するかのどちらかである。
【0067】
本発明の方法の全体にわたって使用される総量供給溶液を特徴付けることもまた有用である。反応容器に添加される供給溶液の全てにおける全モノマーの総重量は、WFEEDである。重合の開始前のモノマー油滴中の全モノマーの総重量は、WDROPである。量%FEEDは、
%FEED=100×WFEED/WDROP
と定義される。
【0068】
好ましくは、%FEEDは、5%以上;より好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上である。好ましくは、%FEEDは、25%以下;より好ましくは20%以下;より好ましくは15%以下である。
【0069】
好ましくは、本方法はシードプロセスではない。
【0070】
水性媒体中のモノマー油滴の分散系である供給組成物で供給溶液が置き換えられる実施形態(「分散系供給」実施形態)もまた想像される。そのような分散系は、例えば、懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、又はナノエマルジョンなどの、任意のタイプの分散系であり得る。そのような分散系は、任意選択的に、上に記載されたような1種以上の水溶性ポリマー、1種以上の界面活性剤、1種以上の分散剤、又はそれらの混合物を含有する。分散系供給実施形態の中で、エマルジョンが好ましい。エマルジョンの中で、1種以上のアニオン界面活性剤を含有するものが好ましい。
【0071】
分散系供給実施形態において、供給組成物中のモノマーの総量は、供給組成物の重量を基準として重量で、5%以上;より好ましくは10%以上;より好ましくは20%以上;より好ましくは40$以上である。分散系供給実施形態において、供給組成物中のモノマーの総量は、供給組成物の重量を基準として重量で、60%以下;より好ましくは55%以下である。
【0072】
分散系供給実施形態において、一官能性ビニルモノマーの量を、供給組成物のモノマー含有量の重量百分率として特徴付けることが有用である。分散系実施形態において、好ましくは、一官能性ビニルモノマーの量は、供給組成物中のモノマーの総重量を基準として重量で、98%~100%;より好ましくは99%~100%である。
【0073】
分散系供給実施形態において、重合中の供給のための好適な及び好ましい条件(反応進行度等)は、上に記載されたものと同じものである。
【0074】
本発明はまた、ポリマービーズの集合体を含む。ポリマービーズの集合体は、好ましくは、本発明の方法によって製造される。ポリマービーズは、ポリマーを含有する。ポリマービーズは、25℃で固体である、且つ、ポリマー粒子の重量を基準として重量で、90%以上;より好ましくは95%以上の量でポリマーを含有する粒子である。
【0075】
ポリマービーズは、マクロ多孔性ビーズ又はゲルビーズであり得る。ゲルビーズが好ましい。
【0076】
好ましくは、ポリマービーズは、50μm以上;より好ましくは100μm以上;より好ましくは200μm以上;より好ましくは400μm以上の体積平均粒径を有する。好ましくは、ポリマービーズは、1,500μm以下;より好ましくは1,000μm以下の体積平均粒径を有する。
【0077】
ポリマー粒子中の好ましいポリマーは、上に記載された好ましいビニルモノマーのフリーラジカル重合によって形成されたポリマーである。好ましくは、ポリマーは、ポリマーの重量を基準として重量で、5%以上;より好ましくは25%以上;より好ましくは50%以上;より好ましくは75%以上;より好ましくは85%以上;より好ましくは95%以上の量でスチレン系モノマーの重合単位を含有する。ポリマーの重合単位として好ましいモノマーのタイプは、重合プロセスでの使用に好ましいとして上に記載されたものと同じものである。
【0078】
好ましいポリマーは、ポリマーの重量を基準として重量で、0.3%以上;より好ましくは0.5%以上;より好ましくは1%以上;より好ましくは1.5%以上の量で多官能性ビニルモノマーの重合単位を有する。好ましいポリマーは、ポリマーの重量を基準として重量で、25%以下;より好ましくは15%以下;より好ましくは11%以下;より好ましくは6%以下の量で多官能性ビニルモノマーの重合単位を有する。
【0079】
好ましいポリマーは、ポリマーの重量を基準として重量で、99.7重量%以下;より好ましくは99.5重量%以下;より好ましくは99重量%以下;より好ましくは98.5重量%以下の量で一官能性ビニルモノマーの重合単位を有する。好ましいポリマーは、ポリマーの重量を基準として重量で、75%以上;より好ましくは85%以上;より好ましくは89%以上;より好ましくは94%以上の量で一官能性ビニルモノマーの重合単位を有する。
【0080】
ポリマービーズは、好ましくは、0.8以上;より好ましくは0.85以上;より好ましくは0.9以上;より好ましくは0.95以上の平均球形度を有する。
【0081】
本発明のフリーラジカル重合プロセスで製造されたポリマーの好ましい使用は、イオン交換樹脂を製造するための変換プロセスに使用されることである。イオン交換樹脂は、以下のカテゴリーに入る。弱塩基性アニオン交換樹脂は、第一級、第二級、又は第三級であるペンダントアミノ基を有する。強塩基性アニオン交換樹脂は、ペンダント第四級アミノ基を有する。弱酸性カチオン交換樹脂は、ペンダントカルボン酸基を有する。強酸性カチオン交換樹脂は、ペンダントスルホン酸基を有する。これらのペンダント官能基のいずれかがポリマービーズに結合させられた場合に、ビーズは、「官能化樹脂」と言われる。
【0082】
典型的には、架橋ポリスチレンビーズなどのポリマービーズからの弱塩基性アニオン交換樹脂の調製において、ビーズは、有利には、ハロアルキル化され、好ましくはハロメチル化され、最も好ましくはクロロメチル化され、イオン活性交換基がその後ハロアルキル化コポリマーに結合させられる。典型的には、ハロアルキル化反応は、架橋付加コポリマーをハロアルキル化剤、好ましくはブロモメチルメチルエーテル、クロロメチルメチルエーテル、又はホルムアルデヒドと塩酸との混合物、最も好ましくはクロロメチルメチルエーテルで膨潤させる工程と、次に、塩化亜鉛、塩化鉄、又は塩化アルミニウムなどのフリーデル-クラフツ(Friedel-Craft)触媒の存在下でコポリマーとハロアルキル化剤とを反応させる工程とからなる。典型的には、弱塩基性アニオン交換樹脂は、ハロアルキル化コポリマーをアンモニア、第一級アミン、又は第二級アミンと反応させることによって調製される。典型的には、強塩基性アニオン交換樹脂は、ハロアルキル化コポリマーを第三級アミンと反応させることによって調製される。
【0083】
典型的には、架橋ポリスチレンビーズなどのポリマービーズからの強酸性カチオン交換樹脂の調製において、ビーズは有利にはスルホン化される。一般に、ビーズは、好適な膨潤剤を使用して膨潤させられ、膨潤したビーズは、硫酸若しくはクロロスルホン酸若しくは三酸化硫黄又はそれらの混合物などのスルホン化剤と反応させられる。
【0084】
本発明のポリマービーズは、様々な目的のために有用であろうと考えられる。官能化ポリマービーズは、イオン交換樹脂が有用である多くの目的のために有用であろう。例えば、本発明の官能化ポリマービーズは、水精製樹脂として又は触媒として有用であろうと予期される。
【0085】
本発明から期待される便益のいくつかは、以下の通り説明される。懸濁重合の歴史的プロセス(すなわち、本発明の前に公知であった及び本発明において記載されるような重合プロセス中のモノマーの供給を含まなかったプロセス)においては、多官能性ビニルモノマーの量が、MHC及び他の樹脂特性の両方を決定した。標的MHC値を達成するために、十分な量の多官能性ビニルモノマーが使用されたし、そして多官能性ビニルモノマーのその量が、他の樹脂特性の劣化を引き起こす場合、その劣化は避けられないものと受諾されなければならなかった。対照的に、本発明の実施においては、より少ない量の多官能性ビニルモノマーが、以前は、より多い量のDVBを使って得ることができるにすぎなかったMHCをもたらす。それ故、本発明を用いることによって、高レベルの多官能性ビニルモノマーによって引き起こされ得る特性の劣化のリスクを減らしながら、標的MHCに達することができる。このように、本発明の方法は、低減した量の多官能性ビニルモノマーを使用しながら標的特性に達することを可能にすることによって、最終ビーズ中に存在する多官能性ビニルモノマーのより効率的な使用を行うと考えることができる。
【実施例0086】
以下は、本発明の実施例である。
【0087】
以下の用語、省略形、及び原材料を使用した:
ジェッティング=モノマー油滴を、米国特許第4,444,960号明細書及び米国特許第4,623,706号明細書に記載されているジェッティング手順を用いて水性媒体中へ導入すること
tBC=4-t-ブチルカテコール、それは、使用されたグレードのDVB中に存在する。
DVB=ジビニルベンゼン。使用されたグレードのDVBは、Dow Chemical Companyによって製造され、重量で63%の純ジビニルベンゼンとおよそ37%のエチルビニルベンゼン(EVB)とを含有する混合物であった。本明細書で示されるDVBの百分率は、純DVBの量に言及する。EVBは、およそ63:37のDVB:EVBの重量比で、また存在するであろうと想定される。
CMMC=The Dow Chemical Companyによって製造される、カルボキシメチルメチルセルロース
PVOH=Sekisui Specialty Chemicals製の、SELVOLTM523ポリビニルアルコール
SBA=強塩基性アニオン交換樹脂;第四級アンモニウム基で官能化されたスチレン/DVBのコポリマー
SAC=強酸性カチオン交換樹脂;スルホン酸基で官能化された、スチレン/DVBのコポリマー
Tris(トリス)=トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、水中の20重量%溶液
VPBA=4-ビニルフェニルボロン酸
BPO=ベンゾイルペルオキシド、重量で純度75%
DI水=脱イオン水
GA=漸次添加
MHC=保水容量
周囲温度=およそ23℃
【0088】
下に記載される油滴混合物又は水性媒体の調製において、いくつかの部分混合物は、時には25℃よりも上に加熱して良好な混合を達成した。しかしながら、油滴が水性媒体中で形成され、懸濁される時に、成分は全て周囲温度にあった。
【0089】
コポリマーがSAC樹脂に変換される場合、硫酸を使用する、標準スルホン化プロセスによって変換を行って、一官能性ビニルモノマーの重合単位の95モル%以上の芳香環がスルホネート基を有するような置換度を達成した。
【0090】
保水容量(MHC)は、以下の通り測定した。簡潔に言えば、湿った空気下で余分な水を樹脂から除去して、脱水されているが湿っている樹脂を生成した。湿っている樹脂を秤量し、乾燥させ、再度秤量した。乾燥時の相対的な重量損失が保水容量である。詳細には、50mLの樹脂粒子の集合体を50mLの脱イオン(DI)水と混合した。混合物を真空フラスコ上のブフナー(Buchner)漏斗に入れ、重力下で水を試料から排出させた。試料を、加湿塔からの100%の相対湿度を有する空気を供給するホースに接続されたゴム栓で蓋をした。真空フラスコを真空にして、5分間4.0L/分の空気流を提供した。結果として、脱水された湿った樹脂が得られる。次に、4~5gの樹脂を秤量し(Wm)、次に105℃のオーブンで18時間乾燥させ、次に再度秤量した(Wd)。保水容量(MHC)は、
MHC(%)=100*(Wm-Wd)/Wm
によって与えられた。
【0091】
全ての実施例において、油滴成分対水相成分の重量比は、0.61:1であった。油滴は、上に定義されたようなジェッティングによって形成した。
【0092】
比較A-1Comp及び実施例A-2d。
油滴は、ジェッティングによって形成した。以下の実施例における油滴の組成は、以下の通りであった。量は、モノマー油滴の重量を基準とする重量%である。各モノマー油滴組成物の総重量は、100%であった。接尾辞「Comp」付きの試料は、比較方法において使用される。全ての場合に、安定剤の水相濃度は、0.8以上の球形度を有するビーズの数百分率が、ビーズの総数を基準として、99%以上であるようなものであった。全ての場合に、安定剤助剤の水相又はモノマー相濃度は、0.8以上の球形度を有するビーズの数百分率が、ビーズの総数を基準として、99%以上であるようなものであった。全ての場合に、ラテックスインヒビターの水相濃度は、反応の終わりでのエマルジョンポリマーの重量百分率が、ポリマービーズの総重量を基準として、0.5%未満であるようなものであった。全ての場合に、最終ポリマー粒子の調和平均サイズは、430~470ミクロンであった。
【0093】
【表1】
【0094】
以下の実施例における水性媒体の組成物は、以下の通りであった。
【0095】
【表2】
【0096】
水性懸濁重合を、以下の通り懸濁液に関して行った。
【0097】
A-1Compについては、水性懸濁重合を、以下の通り反応混合物に関して行った。反応温度とBPO濃度との組み合わせを、330~390分内に80~85%の転化度をもたらすように選択した。ポリマーへの転化率が80~85%範囲になるとすぐに、最終pHが8~9範囲にあるように反応器へのTris添加によってpHを調整した。反応系を97℃に加熱した。97℃で1時間後に、系を周囲温度に冷却し、ビーズを脱水し、水で洗浄し、周囲温度で乾燥させた。2つの同一の重合を行った。
【0098】
実施例A-2dについては、水性懸濁重合を、以下の通り反応混合物に関して行った。反応温度とBPO濃度との組み合わせを、390~550分内に80~85%の転化度をもたらすように選択した。反応温度に達するとすぐに、反応器へのスチレンの連続供給を開始し、0%転化度~56%転化度に維持した。スチレン供給速度を時間とともに変えた。
【0099】
ポリマーへの転化率が60~75%範囲になるとすぐに、最終pHが8~9範囲にあるように、Trisを反応器に添加した。Tris添加の60分内に、反応系を97℃に加熱した。1時間後に、系を周囲温度に冷却し、ビーズを脱水し、水で洗浄し、周囲温度で乾燥させた。
【0100】
スルホン化樹脂の保水容量(MHC)は、以下の通りであった:
【0101】
【表3】
【0102】
MHC値は、2つの試料について実質的に同じものであったが、比較例が4.65%のDVBを有したのに、実施例A-2dは、4.1%のDVBを有したにすぎなかった。このように、実施例は、12%少ないDVBで同じMHCを有した。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
MHC値は、2つの試料について実質的に同じものであったが、比較例が4.65%のDVBを有したのに、実施例A-2dは、4.1%のDVBを有したにすぎなかった。このように、実施例は、12%少ないDVBで同じMHCを有した。
(態様)
(態様1)
ポリマービーズの集合体の製造方法であって、前記ビーズが、
(i)前記ビーズの重量を基準として、75~99.7重量%の一官能性ビニルモノマーの重合単位と、
(ii)前記ビーズの重量を基準として、0.3~25重量%の多官能性ビニルモノマーの重合単位と
を含み;
前記方法が、
(a)開始剤、前記多官能性ビニルモノマー、及び前記一官能性ビニルモノマーを含むモノマー油滴の水性懸濁液を提供する工程;
(b)前記モノマー油滴中の前記モノマーの重合を開始させる工程;
(c)前記モノマー油滴中の前記モノマーの前記重合が起こっている間に、モノマー供給溶液を前記懸濁液に添加する工程であって、
前記添加する工程が、前記モノマー油滴中のモノマーの重合度(EXTSTART)が0%~50%である時点で始まり、及び
前記添加する工程が、EXTSTART後に前記モノマー油滴中のモノマーの重合度(EXTSTOP)が5%~100%である時点で終わり;
前記供給溶液が、前記供給溶液の重量を基準として重量で、90%~100%の量でモノマーを含み;
前記供給溶液が、前記供給溶液の重量を基準として重量で、50%~100%の量で前記一官能性ビニルモノマーを含む
工程
を含む、方法。
(態様2)
量EXTDIF=EXTSTOP-EXTSTARTが5%以上である、態様1に記載の方法。
態様3)
前記一官能性ビニルモノマーがスチレンを含む、態様1に記載の方法。
(態様4)
前記多官能性ビニルモノマーがジビニルベンゼンを含む、態様1に記載の方法。
(態様5)
前記供給溶液中の多官能性ビニルモノマー対一官能性ビニルモノマーの重量比が、前記モノマー油滴中の多官能性ビニルモノマー対一官能性ビニルモノマーの重量比よりも低い、態様1に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマービーズの集合体の製造方法であって、前記ビーズが、
(i)前記ビーズの重量を基準として、75~99.7重量%の一官能性ビニルモノマーの重合単位と、
(ii)前記ビーズの重量を基準として、0.3~25重量%の多官能性ビニルモノマーの重合単位と
を含み;
前記方法が、
(a)開始剤、前記多官能性ビニルモノマー、及び前記一官能性ビニルモノマーを含むモノマー油滴の水性懸濁液を提供する工程;
(b)前記モノマー油滴中の前記モノマーの重合を開始させる工程;
(c)前記モノマー油滴中の前記モノマーの前記重合が起こっている間に、モノマー供給溶液を前記懸濁液に添加する工程であって、
前記添加する工程が、前記モノマー油滴中のモノマーの重合度(EXTSTART)が0%~50%である時点で始まり、及び
前記添加する工程が、EXTSTART後に前記モノマー油滴中のモノマーの重合度(EXTSTOP)が5%~100%である時点で終わり;
前記供給溶液が、前記供給溶液の重量を基準として重量で、90%~100%の量でモノマーを含み;
前記供給溶液が、前記供給溶液の重量を基準として重量で、50%~100%の量で前記一官能性ビニルモノマーを含む
工程
を含む、方法。
【外国語明細書】