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特開2024-120942非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の処置のための抗C5抗体の投薬量及び投与
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120942
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の処置のための抗C5抗体の投薬量及び投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240829BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240829BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P13/02
A61P37/06
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
C07K16/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102181
(22)【出願日】2024-06-25
(62)【分割の表示】P 2021542397の分割
【原出願日】2020-01-24
(31)【優先権主張番号】62/796,953
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ロリ ペイトン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ミックス
(72)【発明者】
【氏名】ラジェンドラ プラダーン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ダモコシュ
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン スコット スウェンソン
(72)【発明者】
【氏名】シャン ガオ
(57)【要約】
【課題】非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の処置のための抗C5抗体の投薬量及び投与の提供。
【解決手段】抗C5抗体またはその抗原結合性断片を使用した非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の臨床処置のための方法が提供される。ヒト患者(例えば、18歳以上の成人患者)においてaHUSを処置するための組成物及び方法であって、患者に、抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、特定の臨床的投薬量レジメンに従って(すなわち、特定の用量で、具体的な投薬スケジュールに従って)投与される(または投与のためのものである)、組成物及び方法が、本明細書で提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
補体系は、細胞及びウイルス病原体の侵入に対して防御するために、身体の他の免疫学的系と協同して作用する。血漿タンパク質及び膜補因子の複雑な収集物として見出される、少なくとも25種の補体タンパク質が存在する。血漿タンパク質は、脊椎動物血清中のグロブリンの約10%を構成している。補体成分は、一連の複雑であるが正確な酵素的切断及び膜結合事象において相互作用することによって、それらの免疫防御機能を達成する。結果として生じた補体カスケードは、オプソニン、免疫調節及び溶解の機能を有する生成物の産生をもたらす。補体活性化と関連する生物活性の簡潔な要約は、例えば、The
Merck Manual,16th Edition中に提供されている。
【0002】
適切に機能している補体系は、感染性微生物に対するロバストな防御を提供するが、補体経路の不適切な調節または活性化は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を含む種々の障害の病因に関与している。aHUSは、慢性の制御されない補体活性化によって駆動される極めて希少な障害である。結果として生じた炎症及び細胞損傷は、これらの疾患の壊滅的な臨床的症状発現をもたらす。
【0003】
溶血性尿毒症症候群(HUS)は、血小板減少症、細血管異常性溶血性貧血及び急性腎不全によって特徴付けられる。HUSは、以下の2つの型の1つとして分類される:下痢関連(D+HUS;志賀毒素産生性E.coli(STEC)-HUSまたは典型HUSとも呼ばれる)及び非下痢または非典型HUS(aHUS)。D+HUSは、症例の90%よりも多くを占める最も一般的な形態であり、志賀様毒素産生性細菌、例えば、E.coli O157:H7による先行する疾病によって引き起こされる。
【0004】
aHUSは、遺伝性、後天性または特発性であり得る。aHUSの遺伝性の形態は、例えば、補体H因子(CFH)、膜補因子タンパク質(MCP)、補体I因子(CFI)、C4b結合タンパク質(C4BP)、補体B因子(CFB)及び補体成分3(C3)を含むいくつかのヒト補体成分における変異と関連し得る。例えば、Caprioli et
al.(2006)Blood 108:1267-1279を参照されたい。CD55をコードする遺伝子中のある特定の変異は、aHUSとは未だ関連付けられていないものの、aHUSの重症度と関連する。例えば、Esparza-Gordillo et
al.(2005)Hum Mol Genet 14:703-712を参照されたい。
【0005】
aHUSは稀であり、最大で25%の死亡率を有する。この疾患を有する多くの患者は、永久的な神経学的または腎障害を維持し、例えば、aHUS患者の少なくとも50%は、末期腎不全(ESRF)に進行する。例えば、Kavanagh et al.(2006)British Medical Bulletin 77 and 78:5-22を参照されたい。最近まで、aHUSを有する患者にとっての処置選択肢は限定的であり、血漿注入または血漿交換をしばしば含んだ。一部の症例では、aHUS患者は、片側性または両側性の腎摘出術または腎移植を受ける(Artz et al.(2003)Transplantation 76:821-826を参照されたい)。しかしながら、処置された患者における疾患の再発は、一般的である。
aHUSを有する患者は、実質的な病的状態及び死亡のリスクがある。従って、本発明の目的は、aHUSを有する患者を処置するための改善された方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Caprioli et al.(2006)Blood 108:1267-1279
【非特許文献2】Esparza-Gordillo et al.(2005)Hum Mol Genet 14:703-712
【非特許文献3】Kavanagh et al.(2006)British Medical Bulletin 77 and 78:5-22
【非特許文献4】Artz et al.(2003)Transplantation 76:821-826
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ヒト患者(例えば、18歳以上の成人患者)においてaHUSを処置するための組成物及び方法であって、患者に、抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、特定の臨床的投薬量レジメンに従って(すなわち、特定の用量で、具体的な投薬スケジュールに従って)投与される(または投与のためのものである)、組成物及び方法が、本明細書で提供される。
【0008】
任意の適切な抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書に記載される方法において使用され得る。例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号14及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含むラブリズマブ(Ultomiris(登録商標)、ALXN1210及び抗体BNJ441としても公知)、またはその抗原結合性断片及びバリアントである。他の実施形態では、抗体は、ラブリズマブの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)または可変領域(VR)を含む。従って、一実施形態では、抗体は、配列番号12に示される配列を有するラブリズマブの重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有するラブリズマブの軽鎖可変(VL)領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列を含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号13に示される重鎖定常領域を含む。
【0009】
別の実施形態では、抗体は、ヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0010】
別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列、並びにヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0011】
別の実施形態では、抗体は、pH7.4及び25℃で、0.1nM~1nMの範囲にある親和性解離定数(K)でヒトC5に結合する。別の実施形態では、抗体は、pH6.0及び25℃で、K≧10nMでヒトC5に結合する。さらに別の実施形態では、抗体の[(pH6.0及び25℃におけるヒトC5に対する抗体またはその抗原結合性断片のK)/(pH7.4及び25℃におけるヒトC5に対する抗体またはその抗原結合性断片のK)]は、25よりも大きい。
【0012】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号及び同第8,883,158号に記載される7086抗体である。一実施形態では、抗体は、7086抗体の重鎖及び軽鎖CDRまたは可変領域を含む(米国特許第8,241,628号及び同第8,883,158号を参照されたい)。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ配列番号21、22及び23に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号24、25及び26に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号27に示される配列を有する7086抗体のVH領域及び配列番号28に示される配列を有する7086抗体のVL領域を含む。
【0013】
別の例示的な抗C5抗体は、これもまた米国特許第8,241,628号及び同第8,883,158号に記載される8110抗体である。一実施形態では、抗体は、8110抗体の重鎖及び軽鎖CDRまたは可変領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ配列番号29、30及び31に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号32、33及び34に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号35に示される配列を有する8110抗体のVH領域及び配列番号36に示される配列を有する8110抗体のVL領域を含む。
【0014】
別の例示的な抗C5抗体は、US2016/0176954A1に記載される305LO5抗体である。一実施形態では、抗体は、305LO5抗体の重鎖及び軽鎖CDRまたは可変領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ配列番号37、38及び39に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号40、41及び42に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号43に示される配列を有する305LO5抗体のVH領域及び配列番号44に示される配列を有する305LO5抗体のVL領域を含む。
【0015】
別の例示的な抗C5抗体は、Fukuzawa T.,et al.,Rep.2017 Apr 24;7(1):1080に記載されるSKY59抗体である。一実施形態では、抗体は、SKY59抗体の重鎖及び軽鎖CDRまたは可変領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号45を含む重鎖及び配列番号46を含む軽鎖を含む。
【0016】
別の例示的な抗C5抗体は、US20170355757に記載されるREGN3918抗体(H4H12166PPとしても公知)である。一実施形態では、抗体は、配列番号47を含む重鎖可変領域及び配列番号48を含む軽鎖可変領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号49を含む重鎖及び配列番号50を含む軽鎖を含む。
【0017】
別の実施形態では、抗体は、上述の抗体(例えば、エクリズマブ、ラブリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体またはREGN3918抗体)と、C5上の同じエピトープとの結合について競合する及び/またはC5上の同じエピトープに結合する。別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と、少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の可変領域同一性)を有する。
【0018】
一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の用量は、患者の体重に基づく。例えば、一実施形態では、2400mgまたは3000mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、≧40~<60kgの体重の患者に投与される。別の実施形態では、2700mgまたは3300mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、≧60~<100kgの体重の患者に投与される。別の実施形態では、3000mgまたは3600mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、≧100kgの体重の患者に投与される。ある特定の実施形態では、投薬量レジメンは、最適な所望の奏効(例えば、有効な奏効)を提供するために調整される。
【0019】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、1回または複数の投与サイクルで投与される。一実施形態では、投与サイクルは、26週間である。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、投与サイクルの1日目に1回、投与サイクルの15日目に1回、及びその後8週間毎に投与される。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、投与サイクルの後に、最長2年間の延長期間、8週間毎に(例えば、3000mg、3300mgまたは3600mgの用量で)投与される。
【0020】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、1回または複数の投与サイクルで投与される。一実施形態では、投与サイクルは、26週間である。別の実施形態では、処置は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11サイクルを含む。別の実施形態では、処置は、ヒト患者の生涯にわたって継続される。
【0021】
別の実施形態では、aHUSを有するヒト患者を処置する方法であって、(例えば、投与サイクルの間に)患者に、有効量の、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、
(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、または≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、または≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与される、方法が提供される。
【0022】
別の実施形態では、aHUSを有するヒト患者を処置する方法であって、(例えば、投与サイクルの間に)患者に、有効量の、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列、それぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列、並びにヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含み、バリアントヒトFc CH3定常領域が、各々EU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、
(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、または≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、または≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与される、方法が提供される。
【0023】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、≧40~<60kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、2400mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3000mgの用量で
投与される。
【0024】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、≧60~<100kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、2700mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3300mgの用量で
投与される。
【0025】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、≧100kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、3000mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3600mgの用量で
投与される。
【0026】
一部の実施形態では、患者は、補体阻害剤で以前に処置されたことがない(例えば、患者は、補体阻害剤処置未経験な患者である)。
【0027】
他の実施形態では、患者は、1つの抗C5抗体またはその抗原結合性断片で以前に処置されたことがあり、処置の過程の間に別の抗C5抗体に切り替えられる。例えば、ある特定の実施形態では、異なる抗C5抗体が、処置の過程の間に投与される。一実施形態では、異なる抗C5抗体は、別々の処置及び延長期間の間に投与される。例えば、一実施形態では、患者は、処置期間の間(例えば、26週間)、エクリズマブで処置され、その後、例えば、延長期間の間、別の抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体またはREGN3918抗体)で処置される。別の実施形態では、エクリズマブは、誘導期の間、投与サイクルの1、8、15及び22日目に600mgの用量で患者に投与され、その後、投与サイクルの19日目、及びその後2週間毎に(例えば、合計で26週間)、900mgの維持用量のエクリズマブが投与され、その後、最長2年間の延長期間、ラブリズマブによる処置が続く。別の実施形態では、患者は、ラブリズマブで(例えば、26週間)処置され、その後、例えば延長期間の間、別の抗C5抗体(例えば、エクリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体またはREGN3918抗体)で処置される。
【0028】
例示的な代替的抗C5抗体には、(i)ラブリズマブ、(ii)それぞれ配列番号21、22及び23を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号24、25及び26を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗体またはその抗原結合性断片、(iii)配列番号27を含む重鎖可変領域及び配列番号28を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片、(iv)それぞれ配列番号29、30及び31を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号32、33及び34を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗体またはその抗原結合性断片、(v)配列番号35を含む重鎖可変領域及び配列番号36を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片、(vi)それぞれ配列番号37、38及び39を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号40、41及び42を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗体またはその抗原結合性断片、(vii)配列番号43を含む重鎖可変領域及び配列番号44を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片、(viii)配列番号45を含む重鎖及び配列番号46を含む軽鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片、(ix)配列番号47を含む重鎖可変領域及び配列番号48を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片、並びに(x)配列番号49を含む重鎖及び配列番号50を含む軽鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
一部の実施形態では、患者は、別の抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、ラブリズマブ)に切り替える前に、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月または少なくとも24ヶ月間、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、エクリズマブ)で以前に処置されたことがある。特定の実施形態では、患者は、少なくとも6ヶ月間エクリズマブで以前に処置されたことがある。
【0030】
別の実施形態では、患者(例えば、aHUS患者)が、第1の抗C5抗体で処置され、次いで第2の異なる抗C5抗体による処置に切り替えられる場合、特に、第2の異なる抗C5抗体が、第1の抗C5抗体とは異なるC5上のエピトープに結合する場合、投与スケジュールは、第1の抗C5抗体の半減期を考慮する。例えば、第2の(異なる)抗C5抗体が投与される前に、第1の抗C5抗体が患者から除去される(例えば、「洗い流される」)ことを確実にするために(例えば、凝集、免疫複合体形成などと関連する問題を回避するために)、第1の抗C5抗体の半減期が考慮される。一実施形態では、第2の(異なる)抗C5抗体は、第1の抗C5抗体の最終投与の後に、第1の抗C5抗体の半減期の2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7または7.5倍に相当する期間が経過するまで投与されない。
【0031】
別の実施形態では、患者は、エクリズマブで以前に処置されたことがあり、次いで、第2の(異なる)抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体またはREGN3918抗体)による処置に切り替えられる。エクリズマブが最初に投与される抗体である一実施形態では、第2の(異なる)抗C5抗体は、エクリズマブの最終投与の後に、例えば、少なくとも36、45、54、63、72、81、90、99、108、117または126日が経過するまで投与されない。
【0032】
別の実施形態では、患者は、ラブリズマブで以前に処置されたことがあり、次いで、異なる抗C5抗体(例えば、エクリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体またはREGN3918抗体)による処置に切り替えられる。ラブリズマブが最初に投与される抗体である一実施形態では、第2の(異なる)抗C5抗体は、例えば、ラブリズマブの最終投与の後に、少なくとも100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、375または400日が経過するまで、投与されない。
【0033】
さらにまたはあるいは、第2の(異なる)抗C5抗体による処置に切り替える前に、第1の抗C5抗体を除去するまたはそのクリアランスを増強するための技術が使用される。例示的な技術には、血漿搬出または輸血が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、第1の抗C5抗体に対する抗体(例えば、抗エクリズマブ抗体、抗ラブリズマブ抗体、抗7086抗体、抗8110抗体、抗305LO5抗体、抗SKY59抗体または抗REGN3918抗体)が、第2の(異なる)抗C5抗体が投与される前に、第1の抗C5抗体を除去するまたはそのクリアランスを増強するために投与される。
【0034】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、ラブリズマブ)が患者に投与され、投与サイクルは、患者の最後の用量のエクリズマブの少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間または少なくとも約8週間後に開始する。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、ラブリズマブ)が患者に投与され、投与サイクルは、患者の最後の用量のエクリズマブの少なくとも2週間後に開始する。
【0035】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置される患者は、処置を開始する前3年以内に、または処置を開始する時点で、髄膜炎菌感染に対してワクチン接種されている。一実施形態では、髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間経たずに処置を受けた患者は、ワクチン接種の2週間後まで、適切な予防用抗生物質でも処置される。別の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置される患者は、髄膜炎菌血清型A、C、Y、W135及び/またはBに対してワクチン接種される。
【0036】
別の態様では、記載される処置レジメンは、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の特定の血清トラフ濃度を維持するのに十分である。例えば、一実施形態では、処置は、処置中に、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、215、220、225、230、240、245、250、255、260、265、270、280、290、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395もしくは400μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。一実施形態では、処置は、100μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、150μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、200μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、250μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、300μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、100μg/ml~200μg/mlの間の抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、約175μg/mlの抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。
【0037】
別の実施形態では、有効な奏効を得るために、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μgまたは260μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり50μg~250μgの間の抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり100μg~200μgの間の抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり約175μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。
【0038】
別の実施形態では、有効な奏効を得るために、抗C5抗体は、最小遊離C5濃度を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。例えば、一実施形態では、抗C5抗体は、0.2μg/mL、0.3μg/mL、0.4μg/mL、0.5μg/mLまたはそれ未満の遊離C5濃度を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、0.309~0.5μg/mLまたはそれ未満の遊離C5濃度を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載される処置は、処置期間全体を通して、遊離C5濃度を99%よりも大きく低減させる。別の実施形態では、処置は、処置期間全体を通して、遊離C5濃度を99.5%よりも大きく低減させる。
【0039】
抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、任意の適切な手段によって患者に投与され得る。一実施形態では、抗体は、静脈内投与のために製剤化される。
【0040】
本明細書で提供される処置方法の有効性は、任意の適切な手段を使用して評価され得る。別の実施形態では、aHUS患者のために、処置は、重症高血圧症、タンパク尿症、尿毒症、嗜眠/疲労、易刺激性、血小板減少症、細血管異常性溶血性貧血及び腎機能障害(例えば、急性腎不全)における低減または停止からなる群より選択される少なくとも1つの治療効果を生じる。
【0041】
他の実施形態では、処置は、終末補体阻害を結果としてもたらす。
【0042】
他の実施形態では、処置は、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群より選択される溶血関連の血液学的バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じる。
【0043】
別の実施形態では、処置は、ヘモグロビン安定化における患者の処置前ベースラインからの増加を生じる。別の実施形態では、処置は、ヘモグロビンにおける≧20g/dLの増加を結果としてもたらす。別の実施形態では、処置は、ベースラインから183日目まで、輸血の非存在下で、ヘモグロビンレベルにおけるベースラインからの≧2g/dLの減少の回避を結果としてもたらす。
【0044】
他の実施形態では、処置は、血小板正常化(≧150×10/L)を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、少なくとも28日(例えば、少なくとも28日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または2年)間、血小板正常化(≧150×10/L)を結果としてもたらす。
【0045】
他の実施形態では、処置は、LDH正常化(≦246U/L)を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、少なくとも28日(例えば、少なくとも28日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または2年)間、LDH正常化(≦246U/L)を結果としてもたらす。
【0046】
他の実施形態では、処置は、血清クレアチニンにおけるベースラインからの≧25%の改善を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、少なくとも28日(例えば、少なくとも28日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または2年)間、血清クレアチニンにおけるベースラインからの≧25%の改善を結果としてもたらす。
【0047】
他の実施形態では、処置は、完全なTMA奏効(すなわち、血小板正常化(≧150×10/L)、LDH正常化(≦246U/L)、及び血清クレアチニンにおけるベースラインからの≧25%の改善)を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、少なくとも28日(例えば、少なくとも28日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または2年)間、完全なTMA奏効を結果としてもたらす。
【0048】
他の実施形態では、処置は、改変された完全なTMA奏効(すなわち、血小板正常化(≧150×10/L)、LDH正常化(≦246U/L)、及び患者がベースラインで透析している場合には、透析を中止しているかまたはベースラインで透析を中止している患者に対する血清クレアチニンにおけるベースラインからの≧25%の改善)を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、少なくとも28日(例えば、少なくとも28日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または2年)間、改変された完全なTMA奏効を結果としてもたらす。
【0049】
他の実施形態では、処置は、輸血の必要性における低減を生じる。別の実施形態では、処置は、輸血回避における70%よりも大きい増加を生じる。別の実施形態では、処置は、ベースラインから183日目まで、輸血回避を結果としてもたらす。
【0050】
他の実施形態では、処置は、処置期間の間に、ブレイクスルー溶血の消失を結果としてもたらす。別の実施形態では、処置は、ブレイクスルー溶血の処置前ベースライン量と比較して、ブレイクスルー溶血の低減を結果としてもたらす。
【0051】
他の実施形態では、処置は、主要な血管系有害事象(MAVE)における低減を生じる。
【0052】
他の実施形態では、処置は、慢性疾患治療の機能的評価(FACIT)-疲労スケール(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy(FACIT)-Fatigue Scale)、バージョン4及び欧州がん研究治療機関の生活の質アンケート-コア30スケール(European Organisation for Research and Treatment of Cancer,Quality of Life Questionnaire-Core 30 Scale)を介して評価される、生活の質におけるベースラインからの変化を生じる。一実施形態では、処置は、1つまたは複数(例えば、1、2、または3)のポイントの、FACIT-疲労スケールを介して評価される、生活の質におけるベースラインからの変化を生じる。別の実施形態では、処置は、処置を開始した150日またはそれ以上(例えば、150日、151日、152日、153日、154日、155日、156日、157日、158日、159日、160日、161日、162日、163日、164日、165日、166日、167日、168日、169日、170日、171日、172日、173日、174日、175日、176日、177日、178日、179日、180日、181日、182日、183日、184日、185日、186日、187日、188日、189日、190日、191日、192日、193日、194日、195日、196日、197日、198日、199日、200日、205日、210日、215日、220日、または225日)後に、3ポイントの、FACIT-疲労スケールを介して評価される、生活の質におけるベースラインからの変化を生じる。
【0053】
慢性腎疾患(CKD)ステージは、米国国立腎財団の慢性腎疾患ステージに基づいて分類される。CKDのステージ及び対応する推定糸球体濾過量(eGFR)値は、以下の通りである:ステージ1:eGFR>=90(正常)、ステージ2:eGFR 60~89、ステージ3A:eGFR 45~59、ステージ3B:eGFR 30~44、ステージ4:eGFR 15~29、及びステージ5:eGFR<15(透析:終末期を含む)。ステージ1は、最高のカテゴリーと見なされる。ステージ5は、最悪のカテゴリーと見なされる。eGFRの改善(例えば、>15)は、CKDステージの改善(例えば、より低いCKDステージ)に相当する。従って、他の実施形態では、患者の慢性腎疾患(CKD)は、処置開始後に、1つまたは複数のステージまで改善する。例えば、患者のCKDは、1、2、3、4または5つのステージまで改善する。別の実施形態では、患者のCKDは、処置を開始した150日またはそれ以上(例えば、150日、151日、152日、153日、154日、155日、156日、157日、158日、159日、160日、161日、162日、163日、164日、165日、166日、167日、168日、169日、170日、171日、172日、173日、174日、175日、176日、177日、178日、179日、180日、181日、182日、183日、184日、185日、186日、187日、188日、189日、190日、191日、192日、193日、194日、195日、196日、197日、198日、199日、200日、205日、210日、215日、220日、または225日)後に、1つまたは複数のステージまで改善する。
【0054】
他の実施形態では、処置は、ベースラインと比べて、eGFRの増加を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、eGFRの正常レベルに向かうシフト(例えば、≧90)を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、ベースラインと比べて、eGFRの増加を結果としてもたらし、患者のCKDは、1つまたは複数のステージまで改善する。他の実施形態では、処置は、ベースラインと比べて、eGFRの正常レベルに向かうシフト(例えば、≧90)を結果としてもたらし、患者のCKDは、1つまたは複数のステージまで改善する。
【0055】
他の実施形態では、処置は、>0.94のEQ-5D-3L米国時間トレードオフ値セット(US TTO)を結果としてもたらす。
【0056】
別の態様では、aHUSを有する患者への、
(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、または≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、または≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与するための、配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片が提供される。
【0057】
一実施形態では、抗体は、aHUS患者における使用のための複数のIV用量の後に、安全で耐容され十分に非免疫原性であることが決定される。
【0058】
本明細書に記載される方法における使用のために適応された治療有効量で、抗C5抗体またはその抗原結合性断片、例えば、抗体ラブリズマブ、及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を含むキットが、さらに提供される。一実施形態では、キットは、
(a)ある用量の、配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片;並びに
(b)本明細書に記載される方法において抗C5抗体またはその抗原結合性断片を使用するための指示
を含む。
【0059】
一実施形態では、2400mgまたは3000mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、≧40~<60kgの体重の患者に投与される。別の実施形態では、2700mgまたは3300mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、≧60~<100kgの体重の患者に投与される。別の実施形態では、3000mgまたは3600mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、≧100kgの体重の患者に投与される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を有するヒト患者を処置する方法であって、前記患者に、有効量の、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含み、前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、
(a)1日目に1回、≧40kg~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60kg~<100kgの体重の患者に対して2700mg、または≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;及び
(b)15日目、及びその後8週間毎に、≧40kg~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60kg~<100kgの体重の患者に対して3300mg、または≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与される、前記方法。
(項目2)
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を有するヒト患者を処置する方法であって、前記患者に、有効量の、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列、それぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列、並びにヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含み、前記バリアントヒトFc CH3定常領域が、各々EU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含み、前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、
(a)1日目に1回、≧40kg~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60kg~<100kgの体重の患者に対して2700mg、または≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;及び
(b)15日目、及びその後8週間毎に、≧40kg~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60kg~<100kgの体重の患者に対して3300mg、または≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与される、前記方法。
(項目3)
前記患者が、エクリズマブで以前に処置されたことがある、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記処置が、前記患者の最後の用量のエクリズマブの少なくとも2週間後に開始する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記患者が、前記処置の1日目の前に少なくとも6ヶ月間エクリズマブで処置されたことがある、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記患者が、2週間毎に900mgの用量のエクリズマブで以前に処置されたことがある、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記抗C5抗体が、配列番号12に示される重鎖可変領域及び配列番号8に示される軽鎖可変領域を含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記抗C5抗体が、配列番号13に示される重鎖定常領域をさらに含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記抗体が、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記抗C5抗体が、pH7.4及び25℃で、0.1nM~1nMの範囲にある親和性解離定数(K)でヒトC5に結合する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記抗C5抗体が、pH6.0及び25℃で、K≧10nMでヒトC5に結合する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記抗C5抗体が、≧40kg~<60kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、2400mgの用量で;及び
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3000mgの用量で
投与される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記抗C5抗体が、≧60kg~<100kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、2700mgの用量で;及び
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3300mgの用量で
投与される、項目1から11のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記抗C5抗体が、≧100kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、3000mgの用量で;及び
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3600mgの用量で
投与される、項目1から11のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記処置が、前記処置の間、100μg/mlまたはそれよりも高い前記抗C5抗体の血清トラフ濃度を維持する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記処置が、前記処置の間、200μg/mlまたはそれよりも高い前記抗C5抗体の血清トラフ濃度を維持する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記処置が、0.309μg/mL~0.5μg/mLまたはそれ未満の遊離C5濃度を維持する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記処置が、処置期間全体を通して、遊離C5濃度を99%よりも大きく低減させる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記処置が、処置期間全体を通して、遊離C5濃度を99.5%よりも大きく低減させる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記抗C5抗体が、前記処置の後に、最長2年間、8週間毎に3000mg、3300mgまたは3600mgの用量で投与される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記抗C5抗体が、静脈内投与のために製剤化される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記処置が、合計で26週間の処置である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記処置が、終末補体阻害を結果としてもたらす、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
前記処置が、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルによって評価されるベースラインと比べて、溶血の低減を結果としてもたらす、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
前記処置が、LDHレベルの正常化を結果としてもたらす、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記処置が、処置期間の間に、ブレイクスルー溶血の消失を結果としてもたらす、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記処置が、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群より選択される溶血関連の血液学的バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記処置が、ベースラインと比べて、重症高血圧症、タンパク尿症、尿毒症、嗜眠、疲労、易刺激性、血小板減少症、細血管異常性溶血性貧血及び腎機能障害における低減または停止からなる群より選択される少なくとも1つの治療効果を生じる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記処置が、Ba因子、可溶性腫瘍壊死因子受容体1[sTNFR1])、可溶性血管接着分子1[sVCAM1]、トロンボモジュリン、D-ダイマー及びシスタチンCの正常レベルに向かうシフトを生じる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記処置が、ベースラインと比べて、ヘモグロビン安定化における増加を生じる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記処置が、ベースラインと比べて、輸血の必要性における低減を生じる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記処置が、主要な血管系有害事象(MAVE)における低減を生じる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記処置が、慢性疾患治療の機能的評価(FACIT)-疲労スケール、バージョン4及び欧州がん研究治療機関の生活の質アンケート-コア30スケールを介して評価される、生活の質におけるベースラインからの変化を生じる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記処置が、血小板正常化を結果としてもたらす、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記処置が、血清クレアチニンにおけるベースラインからの≧25%の改善を結果としてもたらす、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記処置が、完全なTMA奏効を結果としてもたらす、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記処置が、改変された完全なTMA奏効を結果としてもたらす、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記患者の慢性腎疾患(CKD)が、処置の開始後に、1つまたは複数のステージまで改善する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記処置が、eGFRの正常レベルに向かうシフトを結果としてもたらす、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記処置が、>0.94のEQ-5D-3L米国時間トレードオフ値セット(US TTO)を結果としてもたらす、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目41)
ヒト患者においてaHUSを処置するためのキットであって、
(a)ある用量の、配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗C5抗体;並びに
(b)先行項目のいずれか1項に記載の方法において前記抗C5抗体を使用するための指示
を含む、前記キット。
(項目42)
前記抗C5抗体が、≧40kg~<60kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、2400mgの用量で;及び
(b)15日目に
投与される、項目41に記載のキット。
(項目43)
前記抗C5抗体が、≧60kg~<100kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、2700mgの用量で;及び
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3300mgの用量で
投与される、項目41に記載のキット。
(項目44)
前記抗C5抗体が、≧100kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、3000mgの用量で;及び
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3600mgの用量で
投与される、項目41に記載のキット。
(項目45)
配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片であって、
(a)1日目に1回、≧40kg~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60kg~<100kgの体重の患者に対して2700mg、または≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;及び
(b)15日目、及びその後8週間毎に、≧40kg~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60kg~<100kgの体重の患者に対して3300mg、または≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与される、前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】ALXN1210-aHUS-311の試験デザインを示す。
図2】ALXN1210-aHUS-311の主要、副次的及び安全性評価項目をまとめる。
図3】ALXN1210-aHUS-311の組み入れ及び除外基準をまとめる。
図4】ALXN1210-aHUS-311の患者の内訳を示す。
図5】確認された完全なTMA奏効による派生例の第4のデータを設定する。
図6】主要評価期間の間、主要な完全なTMA奏効に関する重要な有効性データを示すベン図である。
図7】完全なTMA奏効までの時間を示すグラフである。
図8】平均血清濃度(μg/mL)対時間(線形目盛)を示すグラフである。体重に基づく投薬は、予測された通りの最大の定常状態及びトラフ暴露を結果としてもたらし、予期しない薬物動態学的所見はなかった。
図9】主要評価期間の間及びデータカットを通じて、主要な完全なTMA奏効に関する重要な有効性データを示す一連の棒グラフである。95%信頼区間は、各棒の上部のラインによって表される。
図10】完全なTMA奏効全体、及び初期26週間の評価期間の間のサブグループごとの完全なTMA奏効を示す。
図11】血小板数正常化(白三角)、血液学的正常化(+)、血清クレアチニンにおけるベースラインからの25%改善(白四角)及びLDH正常化(X)を含む、経時的な完全なTMA奏効状況(白丸)の重要な有効性結果を示す。
図12】ベースラインからの平均eGFR変化(mL/分/1.73m)及び95%信頼区間を経時的に示す。
図13】ベースラインから183日目までの慢性腎疾患(CKD)ステージシフトを示す。
図14】血小板(10/L)におけるベースラインからの観察された及びモデルベースの平均変化及び95%信頼区間を経時的に示す。
図15】観察された平均の血小板(10/L)及び95%信頼区間を経時的に示す。
図16】LDH(U/L)におけるベースラインからの観察された及びモデルベースの平均変化及び95%信頼区間を経時的に示す。
図17】観察された平均のLDH(U/L)及び95%信頼区間を経時的に示す。
図18】ヘモグロビン(HGB)(g/L)におけるベースラインからの観察された及びモデルベースの平均変化及び95%信頼区間を経時的に示す。
図19】観察された平均のHGB(g/L)及び95%信頼区間を経時的に示す。
図20】ベースラインからの平均のFACIT疲労変化及び95%信頼区間を経時的に示す。FACITスコアは、0~52の範囲であり、高いスコアは、疲労の低さを示す。
図21】ベースラインからの平均EQ-5D-3L変化及び95%信頼区間を経時的に示す。
図22】ベースラインから183日目までの血清遊離補体C5濃度(μg/L)を経時的に示す。
図23】試験ALXN1210-aHUS-311とエクリズマブ成人試験(C10-004)との間の試験集団及び結果を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0061】
I.抗C5抗体
本明細書に記載される抗C5抗体は、補体成分C5(例えば、ヒトC5)に結合し、断片C5a及びC5bへのC5の切断を阻害する。上記のように、かかる抗体は、治療目的で使用される他の抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)と比べて、例えば、改善された薬物動態学的特性もまた有する。
【0062】
用語「抗体」は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位(例えば、VH/VL領域すなわちFv、またはCDR)を含むポリペプチドを記述する。抗体には、公知の形態の抗体が含まれる。例えば、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二特異性抗体またはキメラ抗体であり得る。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody(登録商標)、ナノボディまたはドメイン抗体でもあり得る。抗体はまた、以下のアイソタイプ:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD及びIgEのいずれかのものであり得る。抗体は、天然に存在する抗体であり得、またはタンパク質操作技術によって(例えば、変異、欠失、置換、非抗体部分へのコンジュゲーションによって)変更された抗体であり得る。例えば、抗体は、(天然に存在する抗体と比較して、)抗体の特性(例えば、機能的特性)を変化させる1つまたは複数のバリアントアミノ酸を含み得る。例えば、例えば、患者における半減期、エフェクター機能、及び/または抗体に対する免疫奏効に影響を与える多数のかかる変更が、当該技術分野で公知である。抗体という用語は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位を含む人工のまたは操作されたポリペプチド構築物もまた含む。
【0063】
本発明での使用に適切な抗C5抗体(またはそれに由来するVH/VLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。あるいは、当該技術分野で認識された抗C5抗体が使用され得る。C5への結合について、これら当該技術分野で認識された抗体のいずれかと競合する抗体もまた、使用され得る。
【0064】
エクリズマブ(Soliris(登録商標)としても公知)は、それぞれ配列番号1、2及び3に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗C5抗体である。エクリズマブは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。エクリズマブの可変領域は、PCT/US1995/005688及び米国特許第6,355,245号に記載されており、それらの教示は、参照により本明細書に組み込まれる。エクリズマブは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。エクリズマブの完全重鎖及び軽鎖は、PCT/US2007/006606に記載されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号14及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含むラブリズマブ、またはその抗原結合性断片及びバリアントである。ラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標)、BNJ441及びALXN1210としても公知)は、PCT/US2015/019225及び米国特許第9,079,949号に記載されており、それらの教示は、参照により本明細書に組み込まれる。ラブリズマブ、BNJ441及びALXN1210という用語は、本文書を通じて相互交換可能に使用され得るが、全て同じ抗体を指す。ラブリズマブは、ヒト補体タンパク質C5に選択的に結合し、補体活性化の間の、C5a及びC5bへのその切断を阻害する。この阻害は、微生物のオプソニン化及び免疫複合体のクリアランスにとって重要な補体活性化の近位または初期成分(例えば、C3及びC3b)を保全しつつ、炎症促進性メディエーターC5aの放出及び細胞溶解性ポア形成性膜侵襲複合体(MAC)C5b-9の形成を防止する。
【0066】
他の実施形態では、抗体は、ラブリズマブの重鎖及び軽鎖CDRまたは可変領域を含む。例えば、一実施形態では、抗体は、配列番号12に示される配列を有するラブリズマブのVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有するラブリズマブのVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18及び3に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0067】
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号20及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む抗体BNJ421、またはその抗原結合性断片及びバリアントである。BNJ421(ALXN1211としても公知)は、PCT/US2015/019225及び米国特許第9,079,949号に記載されており、それらの教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
他の実施形態では、抗体は、BNJ421の重鎖及び軽鎖CDRまたは可変領域を含む。従って、一実施形態では、抗体は、配列番号12に示される配列を有するBNJ421のVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有するBNJ421のVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18及び3に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。
【0069】
CDRの正確な境界は、異なる方法に従って異なって定義されてきた。一部の実施形態では、軽鎖または重鎖可変ドメイン内のCDRまたはフレームワーク領域の位置は、Kabat et al.[(1991)「Sequences of Proteins of Immunological Interest.」 NIH Publication No.91-3242,U.S.Department of Health and Human Services,Bethesda,MD]によって定義される通りであり得る。かかる場合には、CDRは、「Kabat CDR」と呼ばれ得る(例えば、「Kabat LCDR2」または「Kabat HCDR1」)。一部の実施形態では、軽鎖または重鎖可変領域のCDRの位置は、Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883によって定義される通りであり得る。従って、これらの領域は、「Chothia CDR」と呼ばれ得る(例えば、「Chothia LCDR2」または「Chothia HCDR3」)。一部の実施形態では、軽鎖及び重鎖可変領域のCDRの位置は、Kabat-Chothia組合せ定義によって定義される通りであり得る。かかる実施形態では、これらの領域は、「組合せKabat-Chothia CDR」と呼ばれ得る。Thomas et al.[(1996)Mol Immunol 33(17/18):1389-1401]は、Kabat及びChothiaの定義に従うCDR境界の同定を例示している。
【0070】
別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号13に示される重鎖定常領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号14に示される重鎖ポリペプチド及び配列番号11に示される軽鎖ポリペプチドを含む。別の実施形態では、抗体は、ヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EU番号付けで、ネイティブヒトIgG
Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0071】
別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列、並びにヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0072】
別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:GHIFSNYWIQ(配列番号19)を含むまたはそれからなる重鎖CDR1を含む。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:EILPGSGHTEYTENFKD(配列番号18)を含むまたはそれからなる重鎖CDR2を含む。
【0073】
別の実施形態では、抗体は、pH7.4及び25℃で、0.1nM~1nMの範囲にある親和性解離定数(K)でヒトC5に結合する。別の実施形態では、抗体は、pH6.0及び25℃で、K≧10nMでヒトC5に結合する。さらに別の実施形態では、抗体の[(pH6.0及び25℃におけるヒトC5に対する抗体またはその抗原結合性断片のK)/(pH7.4及び25℃におけるヒトC5に対する抗体またはその抗原結合性断片のK)]は、25よりも大きい。
【0074】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号及び同第8,883,158号に記載される7086抗体である。一実施形態では、抗体は、7086抗体の重鎖及び軽鎖CDRまたは可変領域を含む(米国特許第8,241,628号及び同第8,883,158号を参照されたい)。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ配列番号21、22及び23に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号24、25及び26に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号27に示される配列を有する7086抗体のVH領域及び配列番号28に示される配列を有する7086抗体のVL領域を含む。
【0075】
別の例示的な抗C5抗体は、これもまた米国特許第8,241,628号及び同第8,883,158号に記載される8110抗体である。一実施形態では、抗体は、8110抗体の重鎖及び軽鎖CDRまたは可変領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ配列番号29、30及び31に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号32、33及び34に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号35に示される配列を有する8110抗体のVH領域及び配列番号36に示される配列を有する8110抗体のVL領域を含む。
【0076】
別の例示的な抗C5抗体は、US2016/0176954A1に記載される305LO5抗体である。一実施形態では、抗体は、305LO5抗体の重鎖及び軽鎖CDRまたは可変領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ配列番号37、38及び39に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号40、41及び42に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号43に示される配列を有する305LO5抗体のVH領域及び配列番号44に示される配列を有する305LO5抗体のVL領域を含む。
【0077】
別の例示的な抗C5抗体は、Fukuzawa T.,et al.,Rep.2017 Apr 24;7(1):1080に記載されるSKY59抗体である。一実施形態では、抗体は、SKY59抗体の重鎖及び軽鎖CDRまたは可変領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号45を含む重鎖及び配列番号46を含む軽鎖を含む。
【0078】
別の例示的な抗C5抗体は、US20170355757に記載されるREGN3918抗体(H4H12166PPとしても公知)である。一実施形態では、抗体は、配列番号47を含む重鎖可変領域及び配列番号48を含む軽鎖可変領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号49を含む重鎖及び配列番号50を含む軽鎖を含む。
【0079】
別の実施形態では、抗体は、上述の抗体(例えば、エクリズマブ、ラブリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体またはREGN3918抗体)と、C5上の同じエピトープとの結合について競合する及び/またはC5上の同じエピトープに結合する。別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と、少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の可変領域同一性)を有する。
【0080】
本明細書に記載される抗C5抗体は、一部の実施形態では、バリアントヒトFc定常領域が由来したネイティブヒトFc定常領域の親和性よりも高い親和性でヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み得る。例えば、Fc定常領域は、バリアントヒトFc定常領域が由来したネイティブヒトFc定常領域と比べて、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7もしくは8つまたはそれよりも多くの)アミノ酸置換を含み得る。置換は、相互作用のpH依存性を維持しつつ、pH6.0における、FcRnに対する、バリアントFc定常領域を含有するIgG抗体の結合親和性を増加させ得る。抗体のFc定常領域中の1つまたは複数の置換が、(相互作用のpH依存性を維持しつつ)pH6.0においてFcRnに対するFc定常領域の親和性を増加させるかどうかを試験するための方法は、当該技術分野で公知であり、実施例に例示されている。例えば、PCT/US2015/019225及び米国特許第9,079,949号を参照されたい。これらの各々の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
FcRnに対する抗体Fc定常領域の結合親和性を増強する置換は、当該技術分野で公知であり、これには、例えば、(1)Dall’Acqua et al.(2006)J Biol Chem 281:23514-23524によって記載されるM252Y/S254T/T256E三重置換;(2)Hinton et al.(2004)J Biol Chem 279:6213-6216及びHinton et al.(2006)J Immunol 176:346-356に記載されるM428LまたはT250Q/M428L置換;並びに(3)Petkova et al.(2006)Int Immunol 18(12):1759-69に記載されるN434AまたはT307/E380A/N434A置換が含まれる。さらなる置換対合:P257I/Q311I、P257I/N434H及びD376V/N434Hが、例えば、Datta-Mannan et al.(2007)J Biol Chem 282(3):1709-1717に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
一部の実施形態では、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基255においてバリンへの置換を有する。一部の実施形態では、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基309においてアスパラギンへの置換を有する。一部の実施形態では、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基312においてイソロイシンへの置換を有する。一部の実施形態では、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基386において置換を有する。
【0083】
一部の実施形態では、バリアントFc定常領域は、それが由来したネイティブ定常領域と比べて、30以下(例えば、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2以下)のアミノ酸置換、挿入または欠失を含む。一部の実施形態では、バリアントFc定常領域は、M252Y、S254T、T256E、N434S、M428L、V259I、T250I及びV308Fからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、バリアントヒトFc定常領域は、各々EU番号付けで、428位におけるメチオニン及び434位におけるアスパラギンを含む。一部の実施形態では、バリアントFc定常領域は、例えば、米国特許第8.088,376号に記載される428L/434S二重置換を含む。
【0084】
一部の実施形態では、これらの変異の正確な場所は、抗体操作に起因して、ネイティブヒトFc定常領域の位置からシフトされ得る。例えば、428L/434S二重置換は、IgG2/4キメラFcにおいて使用される場合、米国特許第9,079,949号に記載されるBNJ441(ラブリズマブ)において見出されるM429L及びN435Sバリアントのように、429L及び435Sに対応し得、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
一部の実施形態では、バリアント定常領域は、ネイティブヒトFc定常領域と比べて、アミノ酸237、238、239、248、250、252、254、255、256、257、258、265、270、286、289、297、298、303、305、307、308、309、311、312、314、315、317、325、332、334、360、376、380、382、384、385、386、387、389、424、428、433、434または436位(EU番号付け)において置換を含む。一部の実施形態では、置換は、全てEU番号付けで、237位におけるグリシンからメチオニンへ;238位におけるプロリンからアラニンへ;239位におけるセリンからリシンへ;248位におけるリシンからイソロイシンへ;250位におけるスレオニンからアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、メチオニン、グルタミン、セリン、バリン、トリプトファンまたはチロシンへ;252位におけるメチオニンからフェニルアラニン、トリプトファンまたはチロシンへ;254位におけるセリンからスレオニンへ;255位におけるアルギニンからグルタミン酸へ;256位におけるスレオニンからアスパラギン酸、グルタミン酸またはグルタミンへ;257位におけるプロリンからアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、セリン、スレオニンまたはバリンへ;258位におけるグルタミン酸からヒスチジンへ;265位におけるアスパラギン酸からアラニンへ;270位におけるアスパラギン酸からフェニルアラニンへ;286位におけるアスパラギンからアラニンまたはグルタミン酸へ;289位におけるスレオニンからヒスチジンへ;297位におけるアスパラギンからアラニンへ;298位におけるセリンからグリシンへ;303位におけるバリンからアラニンへ;305位におけるバリンからアラニンへ;307位におけるスレオニンからアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファンまたはチロシンへ;308位におけるバリンからアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、グルタミンまたはスレオニンへ;309位におけるロイシンまたはバリンからアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリンまたはアルギニンへ;311位におけるグルタミンからアラニン、ヒスチジンまたはイソロイシンへ;312位におけるアスパラギン酸からアラニンまたはヒスチジンへ;314位におけるロイシンからリシンまたはアルギニンへ;315位におけるアスパラギンからアラニンまたはヒスチジンへ;317位におけるリシンからアラニンへ;325位におけるアスパラギンからグリシンへ;332位におけるイソロイシンからバリンへ;334位におけるリシンからロイシンへ;360位におけるリシンからヒスチジンへ;376位におけるアスパラギン酸からアラニンへ;380位におけるグルタミン酸からアラニンへ;382位におけるグルタミン酸からアラニンへ;384位におけるアスパラギンまたはセリンからアラニンへ;385位におけるグリシンからアスパラギン酸またはヒスチジンへ;386位におけるグルタミンからプロリンへ;387位におけるプロリンからグルタミン酸へ;389位におけるアスパラギンからアラニンまたはセリンへ;424位におけるセリンからアラニンへ;428位におけるメチオニンからアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファンまたはチロシンへ;433位におけるヒスチジンからリシンへ;434位におけるアスパラギンからアラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、セリン、トリプトファンまたはチロシンへ;及び436位におけるチロシンまたはフェニルアラニンからヒスチジンへからなる群より選択される。
【0086】
本明細書に記載される方法における使用に適切な抗C5抗体は、一部の実施形態では、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び/または配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。あるいは、本明細書に記載される方法における使用のための抗C5抗体は、一部の実施形態では、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び/または配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。
【0087】
一実施形態では、抗体は、pH7.4及び25℃で(及びさもなければ、生理的条件下で)、少なくとも0.1(例えば、少なくとも0.15、0.175、0.2、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95または0.975)nMである親和性解離定数(K)でC5に結合する。一部の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片のKは、1以下(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3または0.2以下)のnMである。
【0088】
他の実施形態では、[(pH6.0で25℃におけるC5に対する抗体のK)/(pH7.4で25℃におけるC5に対する抗体のK)]は、21よりも大きい(例えば、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500または8000よりも大きい)。
【0089】
抗体がタンパク質抗原に結合するかどうか、及び/またはタンパク質抗原に対する抗体の親和性を決定するための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、タンパク質抗原への抗体の結合は、これらに限定されないが、ウエスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴(SPR)法(例えば、BIAcore system;Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden及びPiscataway、N.J.)または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などの種々の技術を使用して、検出及び/または定量され得る。例えば、Benny K.C.Lo(2004)「Antibody Engineering:Methods and Protocols,」 Humana Press(ISBN:1588290921);Johne et al.(1993)J Immunol Meth 160:191-198;Jonsson et al.(1993)Ann Biol Clin 51:19-26;及びJonsson et al.(1991)Biotechniques
11:620-627を参照されたい。さらに、親和性(例えば、解離及び会合定数)を測定するための方法は、実施例に示される。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「k」は、抗原への抗体の会合についての速度定数を指す。用語「k」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての速度定数を指す。用語「K」は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。平衡解離定数は、動態速度定数の比K=k/kから推測される。かかる決定は、好ましくは、25℃または37℃において測定される(実施例を参照されたい)。例えば、ヒトC5への抗体結合の動態は、抗体を固定化するための抗Fc捕捉法を使用して、BIAcore 3000機器での表面プラズモン共鳴(SPR)を介して、pH8.0、7.4、7.0、6.5及び6.0において決定され得る。
【0091】
一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、C5タンパク質(例えば、ヒトC5タンパク質)のC5a及び/またはC5b活性断片の生成または活性を遮断する。この遮断効果を介して、抗体は、例えば、C5aの炎症促進効果及び細胞の表面におけるC5b-9膜侵襲複合体(MAC)の生成を阻害する。
【0092】
本明細書に記載される特定の抗体がC5切断を阻害するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で公知である。ヒト補体成分C5の阻害は、対象の体液中の補体の細胞溶解能を低減させることができる。体液(複数可)中に存在する補体の細胞溶解能のかかる低減は、当該技術分野で周知の方法によって、例えば、従来の溶血アッセイ、例えば、Kabat and Mayer(eds.),「Experimental Immunochemistry,2nd Edition,」 135-240,Springfield,IL,CC Thomas(1961),pages 135-139によって記載される溶血アッセイ、またはそのアッセイの従来の変形形態、例えば、Hillmen et al.(2004)N Engl J Med 350(6):552などに記載されるニワトリ赤血球溶血法などによって、測定され得る。候補化合物が、形態C5a及びC5bへのヒトC5の切断を阻害するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で公知であり、Evans et al.(1995)Mol Immunol
32(16):1183-95に記載されている。例えば、体液中のC5a及びC5bの濃度及び/または生理活性は、当該技術分野で周知の方法によって測定され得る。C5bについて、本明細書で議論される溶血アッセイまたは可溶性C5b-9についてのアッセイが使用され得る。当該技術分野で公知の他のアッセイもまた使用され得る。これらまたは他の適切な型のアッセイを使用して、ヒト補体成分C5を阻害することが可能な候補薬剤がスクリーニングされ得る。
【0093】
これに限定されないが、ELISAなどの免疫学的技術が、生物学的に活性な生成物へのC5の変換を阻害する抗C5抗体またはその抗原結合性断片の能力を決定するために、C5及び/またはその開裂生成物のタンパク質濃度を測定するために使用され得る。一部の実施形態では、C5a生成が測定される。一部の実施形態では、C5b-9ネオエピトープ特異的抗体が、終末補体の形成を検出するために使用される。
【0094】
溶血アッセイは、補体活性化に対する抗C5抗体またはその抗原結合性断片の阻害活性を決定するために使用され得る。血清試験溶液におけるインビトロの古典的補体経路媒介性溶血に対する抗C5抗体またはその抗原結合性断片の効果を決定するために、例えば、溶血素でコーティングされたヒツジ赤血球または抗ニワトリ赤血球抗体で感作されたニワトリ赤血球が、標的細胞として使用される。溶解のパーセンテージは、阻害剤の非存在下で生じる溶解と等しい溶解を100%とみなすことによって正規化される。一部の実施形態では、古典的補体経路は、例えば、Wieslab(登録商標)Classical Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標)COMPL CP310、Euro-Diagnostica、Sweden)において利用されるようなヒトIgM抗体によって活性化される。簡潔に述べると、試験血清は、ヒトIgM抗体の存在下で、抗C5抗体またはその抗原結合性断片と共にインキュベートされる。生成されるC5b-9の量は、混合物を、酵素コンジュゲートした抗C5b-9抗体及び蛍光原基質と接触させ、適切な波長における吸光度を測定することによって、測定される。対照として、試験血清は、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の非存在下でインキュベートされる。一部の実施形態では、試験血清は、C5ポリペプチドで再構成されたC5欠損血清である。
【0095】
代替経路媒介性溶血に対する抗C5抗体またはその抗原結合性断片の効果を決定するために、未感作のウサギまたはモルモット赤血球が、標的細胞として使用され得る。一部の実施形態では、血清試験溶液は、C5ポリペプチドで再構成されたC5欠損血清である。溶解のパーセンテージは、阻害剤の非存在下で生じる溶解と等しい溶解を100%とみなすことによって正規化される。一部の実施形態では、代替補体経路は、例えば、Wieslab(登録商標)Alternative Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標)COMPL AP330、Euro-Diagnostica、Sweden)において利用されるようなリポポリサッカリド分子によって活性化される。簡潔に述べると、試験血清は、リポポリサッカリドの存在下で、抗C5抗体またはその抗原結合性断片と共にインキュベートされる。生成されるC5b-9の量は、混合物を、酵素コンジュゲートした抗C5b-9抗体及び蛍光原基質と接触させ、適切な波長における蛍光を測定することによって、測定される。対照として、試験血清は、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の非存在下でインキュベートされる。
【0096】
一部の実施形態では、C5活性またはその阻害は、CH50eqアッセイを使用して定量される。CH50eqアッセイは、血清中の総古典的補体活性を測定するための方法である。この試験は、50%溶解を得るために必要な量(CH50)を決定するために、古典的補体経路の活性化因子として、抗体感作された赤血球を使用し、試験血清の種々の希釈を使用する溶解アッセイである。パーセント溶血は、例えば、分光光度計を使用して決定され得る。CH50eqアッセイは、終末補体複合体(TCC)形成の間接的尺度を提供するが、それは、TCC自体が、測定される溶血を直接担うからである。
【0097】
アッセイは周知であり、当業者によって一般に実施される。簡潔に述べると、古典的補体経路を活性化するために、未希釈の血清試料(例えば、再構成されたヒト血清試料)が、抗体感作された赤血球を含有するマイクロアッセイウェルに添加され、それによって、TCCが生成される。次に、活性化された血清は、捕捉試薬(例えば、TCCの1つまたは複数の成分に結合する抗体)でコーティングされたマイクロアッセイウェル中で希釈される。活性化された試料中に存在するTCCは、マイクロアッセイウェルの表面をコーティングするモノクローナル抗体に結合する。ウェルは洗浄され、各ウェルに、検出可能に標識された、結合したTCCを認識する検出試薬が添加される。検出可能な標識は、例えば、蛍光標識または酵素標識であり得る。アッセイ結果は、1ミリリットル当たりのCH50単位当量(CH50 U Eq/mL)で表される。
【0098】
阻害は、例えば、終末補体活性に関する場合、類似の条件下及び等モル濃度における対照抗体(またはその抗原結合性断片)の効果と比較した、例えば、溶血アッセイまたはCH50eqアッセイにおける、終末補体の活性における少なくとも5(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60)%の減少を含む。実質的な阻害は、本明細書で使用される場合、少なくとも40(例えば、少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90もしくは95またはそれより高い)%の、所与の活性(例えば、終末補体活性)の阻害を指す。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、エクリズマブのCDR(すなわち、配列番号1~6)と比べて1つまたは複数のアミノ酸置換を含有するが、溶血アッセイまたはCH50eqアッセイにおいて、エクリズマブの補体阻害活性の少なくとも30(例えば、少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95)%を依然として保持する。
【0099】
本明細書に記載される抗C5抗体は、少なくとも20(例えば、少なくとも21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54または55)日である、ヒトにおける血清半減期を有する。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、少なくとも40日であるヒトにおける血清半減期を有する。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、およそ43日であるヒトにおける血清半減期を有する。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、39~48日の間であるヒトにおける血清半減期を有する。抗体の血清半減期を測定するための方法は、当該技術分野で公知である。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、実施例に記載されるマウスモデル系の1つ(例えば、C5欠損/NOD/scidマウスまたはhFcRnトランスジェニックマウスモデル系)において測定した場合、エクリズマブの血清半減期よりも、少なくとも20(例えば、少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、400、500)%長い血清半減期を有する。
【0100】
一実施形態では、抗体は、本明細書に記載される抗体と、C5上の同じエピトープとの結合について競合する及び/またはC5上の同じエピトープに結合する。2つまたはそれよりも多くの抗体に言及して、「同じエピトープに結合する」という用語は、抗体が、所与の方法によって決定した場合に、アミノ酸残基の同じセグメントに結合することを意味する。抗体が、本明細書に記載される抗体と、「C5上の同じエピトープ」に結合するかどうかを決定するための技術には、例えば、エピトープマッピング法、例えば、エピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体の結晶のx線分析、及び水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)が含まれる。他の方法が、ペプチド抗原断片または変異した変形形態の抗原への抗体の結合をモニタリングし、このとき、抗原配列内のアミノ酸残基の改変に起因する結合の喪失は、エピトープ構成成分の指標とみなされる場合が多い。さらに、エピトープマッピングのためのコンビナトリアル計算法もまた使用され得る。これらの方法は、特定の短いペプチドをコンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから親和性単離する、目的の抗体の能力に依存する。同じVH及びVLまたは同じCDR1、2及び3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合すると予測される。
【0101】
「標的への結合について別の抗体と競合する」抗体は、標的への他の抗体の結合を(部分的または完全に)阻害する抗体を指す。2つの抗体が標的への結合について互いに競合するかどうか、すなわち、一方の抗体が標的への他方の抗体の結合を阻害するかどうか及びどの程度まで阻害するかは、公知の競合実験を使用して決定され得る。ある特定の実施形態では、抗体は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%、標的への結合について別の抗体と競合し、標的への別の抗体の結合を阻害する。阻害または競合のレベルは、どちらの抗体が「遮断性抗体」(すなわち、標的と最初にインキュベートされるコールドな(cold)抗体)であるかに依存して異なり得る。競合する抗体は、(例えば、立体障害によって明らかなように)同じエピトープ、重複するエピトープまたは隣接エピトープに結合する。
【0102】
本明細書に記載される方法において使用される、本明細書に記載される抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、種々の当該技術分野で認識された技術を使用して生成され得る。モノクローナル抗体は、当業者に知られた種々の技術によって得られ得る。簡潔に述べると、所望の抗原で免疫化された動物由来の脾臓細胞は、一般的には骨髄腫細胞との融合によって、不死化される(Kohler & Milstein,Eur.J.Immunol.6:511-519(1976)を参照されたい)。不死化の代替的方法には、エプスタイン・バーウイルス、がん遺伝子もしくはレトロウイルスによる形質転換、または当該技術分野で周知の他の方法が含まれる。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原に対する所望の特異性及び親和性を有する抗体の産生についてスクリーニングされ、かかる細胞によって産生されたモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹腔中への注射を含む種々の技術によって増強され得る。あるいは、Huse,et al.,Science 246:1275-1281(1989)によって概説された一般的なプロトコールに従って、ヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはその結合性断片をコードするDNA配列を単離し得る。
【0103】
II.組成物
また、抗C5抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物が、本明細書で提供される。一実施形態では、組成物は、配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域中のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域中のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗C5抗体を含む。別の実施形態では、抗C5抗体は、それぞれ配列番号14及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む。別の実施形態では、抗C5抗体は、それぞれ配列番号20及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む。
【0104】
組成物は、例えば、補体関連障害、例えば、aHUSの処置または予防のための対象への投与のために、薬学的溶液として製剤化され得る。医薬組成物は一般に、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性である、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを指し、これらを含む。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば、酸付加塩もしくは塩基付加塩、糖、炭水化物、ポリオール及び/または張度改変剤を含み得る。
【0105】
組成物は、標準的な方法に従って製剤化され得る。薬学的製剤化は、十分確立された技術分野であり、例えば、Gennaro(2000)「Remington:The Science and Practice of Pharmacy,」 20th Edition,Lippincott,Williams & Wilkins(ISBN:0683306472);Ansel et al.(1999)「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,」 7th Edition,Lippincott Williams
& Wilkins Publishers(ISBN:0683305727);及びKibbe(2000)「Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,」 3rd Edition(ISBN:091733096X)にさらに記載されている。一部の実施形態では、組成物は、例えば、適切な濃度の、2~8℃(例えば、4℃)における貯蔵に適切な緩衝溶液として、製剤化され得る。一部の実施形態では、組成物は、0℃未満の温度(例えば、-20℃または-80℃)における貯蔵のために製剤化され得る。一部の実施形態では、組成物は、2~8℃(例えば、4℃)における最長2年間(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、1年半または2年)の貯蔵のために製剤化され得る。従って、一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、2~8℃(例えば、4℃)における少なくとも1年間の貯蔵において安定である。
【0106】
医薬組成物は、種々の形態であり得る。これらの形態には、例えば、液体、半固体及び固体の剤形、例えば、液体液剤(例えば、注射可能な及び注入可能な液剤)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム及び坐剤が含まれる。好ましい形態は、投与の意図した様式及び治療適用に一部依存する。例えば、全身または局所送達のために意図された組成物を含有する組成物は、注射可能なまたは注入可能な溶液の形態であり得る。従って、組成物は、非経口様式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射)による投与のために製剤化され得る。「非経口投与」、「非経口投与される」及び他の文法的に等価な語句は、本明細書で使用される場合、経腸及び外用投与以外の、通常は注射による投与の様式を指し、これには、限定なしに、静脈内、鼻腔内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内及び胸骨内の注射及び注入が含まれる。
【0107】
一実施形態では、組成物は、注射のためのラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標)、抗体BNJ441またはALXN1210としても公知)を含む。一実施形態では、注射は、静脈内使用のための、無菌の、透明から半透明の、わずかに白っぽい色の、防腐剤なしの溶液である。別の実施形態では、各単一用量バイアルは、7.0のpHで10mg/mLの濃度の、注射のための300mgのラブリズマブを含有する。別の実施形態では、注射のためのラブリズマブは、5mg/mLの最終濃度への希釈を必要とする。別の実施形態では、各1mLは、ポリソルベート80(0.2mg)(植物起源)、塩化ナトリウム(8.77mg)、リン酸一水素ナトリウム(1.78mg)、リン酸二水素ナトリウム(0.46mg)、及び注射用蒸留水をさらに含む。
【0108】
III.処置の方法
ヒト患者においてaHUSを処置するための方法であって、患者に、抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、特定の臨床的投薬量レジメンに従って(すなわち、特定の用量で、具体的な投薬スケジュールに従って)投与される(または投与のためのものである)、方法が、本明細書で提供される。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「誘導」及び「誘導期」は、相互交換可能に使用され、臨床試験における処置の第1期を指す。
【0110】
本明細書で使用される場合、用語「維持」及び「維持期」は、相互交換可能に使用され、臨床試験における処置の第2期を指す。ある特定の実施形態では、処置は、臨床的利益が観察される限り、または管理不能な毒性もしくは疾患進行が生じるまで、継続される。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、ヒト患者(例えば、補体関連状態を有する患者)である。一実施形態では、補体関連状態は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)である。aHUSを有する患者の病理及び臨床像もまた、終末補体活性化によって駆動される。より具体的には、C5の活性化及び補体活性化の調節不全は、内皮損傷、血小板消費、並びに血小板減少症、機械的血管内溶血及び腎臓傷害によって特徴付けられる血栓性微小血管障害(TMA)事象をもたらす。重要なことに、患者のおよそ20%は、中枢神経系、心、胃腸、遠位四肢及び重症全身臓器障害を含む、疾患の腎外症状発現も同様に経験する(Loirat,et al.,Orphanet.J.Rare Dis.2011;6:60)。aHUSの症状は、希少疾患または腎臓疾患医療の技術分野の当業者に周知であり、これには、例えば、重症高血圧症、タンパク尿症、尿毒症、嗜眠/疲労、易刺激性、血小板減少症、細血管異常性溶血性貧血及び腎機能障害(例えば、急性腎不全)が含まれる。
【0112】
aHUSは、遺伝性、後天性または特発性であり得る。aHUSは、同じ家族の2人もしくはそれよりも多くの(例えば、3、4、5もしくは6人またはそれよりも多くの)成員が、少なくとも6ヶ月離れて疾患に罹患し、かつ共通の誘発剤への曝露が排除されている場合、または1つもしくは複数のaHUS関連遺伝子変異(例えば、CFH、MCP/CD46、CFBまたはCFIにおける1つまたは複数の変異)が対象において同定される場合、遺伝性とみなされ得る。例えば、対象は、CFH関連aHUS、CFB関連aHUS、CFI関連aHUSまたはMCP関連aHUSを有し得る。遺伝性aHUSの最大30%が、CFHにおける変異と、12%が、MCPにおける変異と、5~10%が、CFIにおける変異と、2%未満が、CFBにおける変異と関連する。遺伝性aHUSは、多発性(multiplex)(すなわち、家族性;2人またはそれよりも多くの罹患した家族成員)または単発性(simplex)(すなわち、家族で単一の出現)であり得る。aHUSは、根底にある環境因子(例えば、薬物、全身疾患、または志賀様外毒素を結果としてもたらさないウイルスもしくは細菌性作用物質)またはトリガーが同定できる場合、後天性とみなされ得る。aHUSは、トリガー(遺伝性または環境性)が明らかでない場合、特発性とみなされ得る。
【0113】
ヒト対象が血小板減少症、細血管異常性溶血性貧血または急性腎機能不全症を有するかどうかを決定するために、実験室試験が実施され得る。血小板減少症は、医療従事者によって、(i)150,000/mm3未満(例えば、60,000/mm3未満)の血小板数;(ii)循環における血小板破壊の増強を反映して低減される、血小板生存時間における低減;並びに(iii)血小板新生の二次的活性化と一致する、末梢スメアにおいて観察される巨大血小板の1つまたは複数として診断され得る。細血管異常性溶血性貧血は、医療従事者によって、(i)10mg/dL未満(例えば、6.5mg/dL未満)のヘモグロビン濃度;(ii)増加した血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)濃度(>460U/L);(iii)高ビリルビン血症、網赤血球増加症、循環遊離ヘモグロビン、及び低いまたは検出不能なハプトグロビン濃度;並びに(iv)陰性クームス試験と併せた、末梢スメアにおけるイカ状赤血球またはヘルメット細胞の典型的態様を有する断片化された赤血球(分裂赤血球)の検出の1つまたは複数として診断され得る。例えば、Kaplan et al.(1992)「Hemolytic Uremic Syndrome and Thrombotic Thrombocytopenic Purpura,」Informa Health Care(ISBN 0824786637)及びZipfel(2005)「Complement and Kidney Disease,」Springer(ISBN 3764371668)を参照されたい。C3及びC4の血中濃度もまた、補体活性化または調節不全の尺度として使用され得る。さらに、対象の状態は、CFI、CFB、CFHまたはMCPなどのaHUSと関連する遺伝子中に1つまたは複数の変異を有すると対象を同定することによって、さらに特徴付けられ得る(上記)。遺伝子中の変異を検出するために適切な方法には、例えば、DNA配列決定及び核酸アレイ技術が含まれる。例えば、Breslin et al.(2006)Clin Am Soc Nephrol 1:88-99及びGoicoechea de Jorge et al.(2007)Proc Natl Acad Sci USA 104:240-245を参照されたい。
【0114】
本明細書で使用される場合、「有効な処置」は、有益な効果、例えば、疾患または障害の少なくとも1つの症状の好転(amelioration)を生じる処置を指す。有益な効果は、ベースラインを超える改善、すなわち、方法に従う治療の開始前に行われた測定または観察を超える改善の形態をとり得る。例えば、PNHの状況では、有効な処置は、疲労、腹部疼痛、呼吸困難、嚥下障害、胸部疼痛及び/または勃起機能不全からなる群より選択される1つまたは複数の症状の軽減を指し得る。例えば、aHUSの状況では、有効な処置は、重症高血圧症、タンパク尿症、尿毒症、嗜眠/疲労、易刺激性、血小板減少症、細血管異常性溶血性貧血及び/または腎機能障害(例えば、急性腎不全)からなる群より選択される1つまたは複数の症状の軽減を指し得る。
【0115】
用語「有効量」は、所望の生物学的、治療的及び/または予防的結果を提供する、薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状もしくは原因のうちの1つまたは複数の、低減、好転、緩和、低下、遅延及び/または軽減、あるいは生物システムの任意の他の所望の変更であり得る。一例では、「有効量」は、aHUSの少なくとも1つの症状(例えば、重症高血圧症、タンパク尿症、尿毒症、嗜眠/疲労、易刺激性、血小板減少症、細血管異常性溶血性貧血及び腎機能障害(例えば、急性腎不全))を軽減することが臨床的に証明された、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の量である。有効量は、1回または複数の投与で投与され得る。
【0116】
一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の用量は、患者の体重に基づく。例えば、一実施形態では、2400mgまたは3000mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、≧40~<60kgの体重の患者に投与される。別の実施形態では、2700mgまたは3300mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、≧60~<100kgの体重の患者に投与される。別の実施形態では、3000mgまたは3600mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、≧100kgの体重の患者に投与される。ある特定の実施形態では、投薬量レジメンは、最適な所望の奏効(例えば、有効な奏効)を提供するために調整される。
【0117】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、1回または複数の投与サイクルで投与される。一実施形態では、投与サイクルは、26週間である。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、投与サイクルの1日目に1回、投与サイクルの15日目に1回、及びその後8週間毎に投与される。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、投与サイクルの後に、最長2年間の延長期間、8週間毎に(例えば、3000mg、3300mgまたは3600mgの用量で)投与される。
【0118】
別の実施形態では、aHUSを有するヒト患者を処置する方法であって、投与サイクルの間に、患者に、有効量の、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、
(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、または≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、または≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与される、方法が提供される。
【0119】
別の実施形態では、aHUSを有するヒト患者を処置する方法であって、投与サイクルの間に、患者に、有効量の、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列、それぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列、並びにヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含み、バリアントヒトFc CH3定常領域が、各々EU番号付けで、ネイティブヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、
(a)1日目に1回、≧40~<60kgの体重の患者に対して2400mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して2700mg、または≧100kgの体重の患者に対して3000mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、≧40~<60kgの体重の患者に対して3000mg、≧60~<100kgの体重の患者に対して3300mg、または≧100kgの体重の患者に対して3600mgの用量で
投与される、方法が提供される。
【0120】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、≧40~<60kgの体重の患者に、
(a)投与サイクルの1日目に1回、2400mgの用量で;
(b)投与サイクルの15日目、及びその後8週間毎に、3000mgの用量で
投与される。
【0121】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、≧60~<100kgの体重の患者に、
(a)投与サイクルの1日目に1回、2700mgの用量で;
(b)投与サイクルの15日目、及びその後8週間毎に、3300mgの用量で
投与される。
【0122】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、≧100kgの体重の患者に、
(a)投与サイクルの1日目に1回、3000mgの用量で;
(b)投与サイクルの15日目、及びその後8週間毎に、3600mgの用量で
投与される。
【0123】
一部の実施形態では、患者は、補体阻害剤で以前に処置されたことがない(例えば、患者は、補体阻害剤処置未経験の患者である)。
【0124】
他の実施形態では、患者は、1つの抗C5抗体またはその抗原結合性断片で以前に処置されたことがあり、処置の過程の間に別の抗C5抗体に切り替えられる。例えば、ある特定の実施形態では、異なる抗C5抗体が、処置の過程の間に投与される。一実施形態では、異なる抗C5抗体は、別々の処置及び延長期間の間に投与される。例えば、一実施形態では、患者は、処置期間の間(例えば、26週間)、エクリズマブで処置され、その後、例えば延長期間の間、別の抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体またはREGN3918抗体)で処置される。別の実施形態では、エクリズマブは、誘導期の間、投与サイクルの1、8、15及び22日目に600mgの用量で患者に投与され、その後、投与サイクルの19日目、及びその後2週間毎に(例えば、合計で26週間)、900mgの維持用量のエクリズマブが投与され、その後、最長2年間の延長期間、ラブリズマブによる処置が続く。別の実施形態では、患者は、ラブリズマブで(例えば、26週間)処置され、その後、例えば延長期間の間、別の抗C5抗体(例えば、エクリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体またはREGN3918抗体)で処置される。
【0125】
例示的な代替的抗C5抗体には、(i)ラブリズマブ、(ii)それぞれ配列番号21、22及び23を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号24、25及び26を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗体またはその抗原結合性断片、(iii)配列番号27を含む重鎖可変領域及び配列番号28を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片、(iv)それぞれ配列番号29、30及び31を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号32、33及び34を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗体またはその抗原結合性断片、(v)配列番号35を含む重鎖可変領域及び配列番号36を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片、(vi)それぞれ配列番号37、38及び39を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号40、41及び42を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗体またはその抗原結合性断片、(vii)配列番号43を含む重鎖可変領域及び配列番号44を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片、(viii)配列番号45を含む重鎖及び配列番号46を含む軽鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片、(ix)配列番号47を含む重鎖可変領域及び配列番号48を含む軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片、並びに(x)配列番号49を含む重鎖及び配列番号50を含む軽鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
一部の実施形態では、患者は、別の抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、ラブリズマブ)に切り替える前に、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月または少なくとも24ヶ月間、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、エクリズマブ)で以前に処置されたことがある。特定の実施形態では、患者は、少なくとも6ヶ月間エクリズマブで以前に処置されたことがある。
【0127】
別の実施形態では、患者(例えば、aHUS患者)が、第1の抗C5抗体で処置され、次いで第2の異なる抗C5抗体による処置に切り替えられる場合、特に、第2の異なる抗C5抗体が、第1の抗C5抗体とは異なるC5上のエピトープに結合する場合、投与スケジュールは、第1の抗C5抗体の半減期を考慮する。例えば、第2の(異なる)抗C5抗体が投与される前に、第1の抗C5抗体が患者から除去される(例えば、「洗い流される」)ことを確実にするために(例えば、凝集、免疫複合体形成などと関連する問題を回避するために)、第1の抗C5抗体の半減期が考慮される。一実施形態では、第2の(異なる)抗C5抗体は、第1の抗C5抗体の最終投与の後に、第1の抗C5抗体の半減期の2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7または7.5倍に相当する期間が経過するまで、投与されない。
【0128】
別の実施形態では、患者は、エクリズマブで以前に処置されたことがあり、次いで、第2の(異なる)抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体またはREGN3918抗体)による処置に切り替えられる。エクリズマブが最初に投与される抗体である一実施形態では、第2の(異なる)抗C5抗体は、エクリズマブの最終投与の後に、例えば、少なくとも36、45、54、63、72、81、90、99、108、117または126日が経過するまで投与されない。
【0129】
別の実施形態では、患者は、ラブリズマブで以前に処置されたことがあり、次いで、異なる抗C5抗体(例えば、エクリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体またはREGN3918抗体)による処置に切り替えられる。ラブリズマブが最初に投与される抗体である一実施形態では、第2の(異なる)抗C5抗体は、例えば、ラブリズマブの最終投与の後に、少なくとも100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、375または400日が経過するまで投与されない。
【0130】
さらにまたはあるいは、第2の(異なる)抗C5抗体による処置に切り替える前に、第1の抗C5抗体を除去するまたはそのクリアランスを増強するための技術が使用される。例示的な技術には、血漿搬出または輸血が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、第1の抗C5抗体に対する抗体が、第2の(異なる)抗C5抗体が投与される前に、第1の抗C5抗体(例えば、抗エクリズマブ抗体、抗ラブリズマブ抗体、抗7086抗体、抗8110抗体、抗305LO5抗体、抗SKY59抗体または抗REGN3918抗体)を除去するまたはそのクリアランスを増強するために投与される。
【0131】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、ラブリズマブ)が患者に投与され、投与サイクルは、患者の最後の用量のエクリズマブの少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間または少なくとも約8週間後に開始する。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、ラブリズマブ)が患者に投与され、投与サイクルは、患者の最後の用量のエクリズマブの少なくとも2週間後に開始する。
【0132】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置される患者は、処置を開始する前3年以内に、または処置を開始する時点で、髄膜炎菌感染に対してワクチン接種されている。一実施形態では、髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間経たずに処置を受けた患者は、ワクチン接種の2週間後まで、適切な予防用抗生物質でも処置される。別の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置される患者は、髄膜炎菌血清型A、C、Y、W135及び/またはBに対してワクチン接種される。
【0133】
本明細書で使用される場合、用語「血清トラフレベル」は、薬剤(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合性断片)または薬が血清中に存在する、最も低いレベルを指す。対照的に、「ピーク血清レベル」は、血清中の薬剤の最も高いレベルを指す。「平均血清レベル」は、経時的な血清中の薬剤の平均レベルを指す。
【0134】
一実施形態では、記載される処置レジメンは、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の特定の血清トラフ濃度を維持するのに十分である。例えば、一実施形態では、処置は、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、215、220、225、230、240、245、250、255、260、265、270、280、290、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395もしくは400μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。一実施形態では、処置は、100μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、150μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、200μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、250μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、300μg/mlまたはそれよりも高い抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、100μg/ml~200μg/mlの間の抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、処置は、約175μg/mlの抗C5抗体またはその抗原結合性断片の血清トラフ濃度を維持する。
【0135】
別の実施形態では、有効な奏効を得るために、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μgまたは260μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり50μg~250μgの間の抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり100μg~200μgの間の抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり約175μgの抗体を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。
【0136】
別の実施形態では、有効な奏効を得るために、抗C5抗体は、最小遊離C5濃度を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。例えば、一実施形態では、抗C5抗体は、0.2μg/mL、0.3μg/mL、0.4μg/mL、0.5μg/mLまたはそれ未満の遊離C5濃度を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、0.309~0.5μg/mLまたはそれ未満の遊離C5濃度を維持するための量及び頻度で、患者に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載される処置は、処置期間全体を通して、遊離C5濃度を99%よりも大きく低減させる。別の実施形態では、処置は、処置期間全体を通して、遊離C5濃度を99.5%よりも大きく低減させる。
【0137】
IV.転帰
患者においてaHUSを処置するための方法であって、患者に、抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法が、本明細書で提供される。
【0138】
aHUSの症状には、重症高血圧症、タンパク尿症、尿毒症、嗜眠/疲労、易刺激性、血小板減少症、細血管異常性溶血性貧血及び腎機能障害(例えば、急性腎不全)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に開示される方法に従って処置される患者は、好ましくは、aHUSの少なくとも1つの徴候における改善を経験する。
【0139】
他の実施形態では、処置は、終末補体阻害を結果としてもたらす。
【0140】
他の実施形態では、処置は、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群より選択される溶血関連の血液学的バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトを生じる。
【0141】
別の実施形態では、処置は、ヘモグロビン安定化における患者の処置前ベースラインからの増加を生じる。別の実施形態では、処置は、ヘモグロビンにおける≧20g/dLの増加を結果としてもたらす。別の実施形態では、処置は、ベースラインから183日目まで、輸血の非存在下で、ヘモグロビンレベルにおけるベースラインからの≧2g/dLの減少の回避を結果としてもたらす。
【0142】
他の実施形態では、処置は、血小板正常化(≧150×10/L)を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、少なくとも28日(例えば、少なくとも28日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または2年)間、血小板正常化(≧150×10/L)を結果としてもたらす。
【0143】
他の実施形態では、処置は、LDH正常化(≦246U/L)を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、少なくとも28日(例えば、少なくとも28日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または2年)間、LDH正常化(≦246U/L)を結果としてもたらす。
【0144】
他の実施形態では、処置は、血清クレアチニンにおけるベースラインからの≧25%の改善を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、少なくとも28日(例えば、少なくとも28日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または2年)間、血清クレアチニンにおけるベースラインからの≧25%の改善を結果としてもたらす。
【0145】
他の実施形態では、処置は、完全なTMA奏効(すなわち、血小板正常化(≧150×10/L)、LDH正常化(≦246U/L)、及び血清クレアチニンにおけるベースラインからの≧25%の改善)を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、少なくとも28日(例えば、少なくとも28日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または2年)間、完全なTMA奏効を結果としてもたらす。
【0146】
他の実施形態では、処置は、改変された完全なTMA奏効(すなわち、血小板正常化(≧150×10/L)、LDH正常化(≦246U/L)、及び患者がベースラインで透析している場合には、透析を中止しているかまたはベースラインで透析を中止している患者に対する血清クレアチニンにおけるベースラインからの≧25%の改善)を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、少なくとも28日(例えば、少なくとも28日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または2年)間、改変された完全なTMA奏効を結果としてもたらす。
【0147】
他の実施形態では、処置は、輸血の必要性における低減を生じる。別の実施形態では、処置は、輸血回避における70%よりも大きい増加を生じる。別の実施形態では、処置は、ベースラインから183日目まで、輸血回避を結果としてもたらす。
【0148】
他の実施形態では、処置は、処置期間の間に、ブレイクスルー溶血の消失を結果としてもたらす。別の実施形態では、処置は、ブレイクスルー溶血の処置前ベースライン量と比較して、ブレイクスルー溶血の低減を結果としてもたらす。
【0149】
他の実施形態では、処置は、主要な血管系有害事象(MAVE)における低減を生じる。
【0150】
他の実施形態では、処置は、慢性疾患治療の機能的評価(FACIT)-疲労スケール、バージョン4及び欧州がん研究治療機関の生活の質アンケート-コア30スケールを介して評価される、生活の質におけるベースラインからの変化を生じる。一実施形態では、処置は、1つまたは複数(例えば、1、2、または3)のポイントの、FACIT-疲労スケールを介して評価される、生活の質におけるベースラインからの変化を生じる。別の実施形態では、処置は、処置を開始した150日またはそれ以上(例えば、150日、151日、152日、153日、154日、155日、156日、157日、158日、159日、160日、161日、162日、163日、164日、165日、166日、167日、168日、169日、170日、171日、172日、173日、174日、175日、176日、177日、178日、179日、180日、181日、182日、183日、184日、185日、186日、187日、188日、189日、190日、191日、192日、193日、194日、195日、196日、197日、198日、199日、200日、205日、210日、215日、220日、または225日)後に、3ポイントの、FACIT-疲労スケールを介して評価される、生活の質におけるベースラインからの変化を生じる。
【0151】
慢性腎疾患(CKD)ステージは、米国国立腎財団の慢性腎疾患ステージに基づいて分類される。CKDのステージ及び対応する推定糸球体濾過量(eGFR)値は、以下の通りである:ステージ1:eGFR>=90(正常)、ステージ2:eGFR 60~89、ステージ3A:eGFR 45~59、ステージ3B:eGFR 30~44、ステージ4:eGFR 15~29、及びステージ5:eGFR<15(透析:終末期を含む)。ステージ1は、最高のカテゴリーと見なされる。ステージ5は、最悪のカテゴリーと見なされる。eGFRの改善(例えば、>15)は、CKDステージの改善(例えば、より低いCKDステージ)に相当する。従って、他の実施形態では、患者の慢性腎疾患(CKD)は、処置開始後に、1つまたは複数のステージまで改善する。例えば、患者のCKDは、1、2、3、4または5つのステージまで改善する。別の実施形態では、患者のCKDは、処置を開始した150日またはそれ以上(例えば、150日、151日、152日、153日、154日、155日、156日、157日、158日、159日、160日、161日、162日、163日、164日、165日、166日、167日、168日、169日、170日、171日、172日、173日、174日、175日、176日、177日、178日、179日、180日、181日、182日、183日、184日、185日、186日、187日、188日、189日、190日、191日、192日、193日、194日、195日、196日、197日、198日、199日、200日、205日、210日、215日、220日、または225日)後に、1つまたは複数のステージまで改善する。
【0152】
他の実施形態では、処置は、ベースラインと比べて、eGFRの増加を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、eGFRの正常レベルに向かうシフト(例えば、≧90)を結果としてもたらす。他の実施形態では、処置は、ベースラインと比べて、eGFRの増加を結果としてもたらし、患者のCKDは、1つまたは複数のステージまで改善する。他の実施形態では、処置は、ベースラインと比べて、eGFRの正常レベルに向かうシフト(例えば、≧90)を結果としてもたらし、患者のCKDは、1つまたは複数のステージまで改善する。
【0153】
他の実施形態では、処置は、>0.94のEQ-5D-3L米国時間トレードオフ値セット(US TTO)を結果としてもたらす。
【0154】
V.キット及び単位剤形
本明細書に記載される方法における使用のために適応された治療有効量で、抗C5抗体またはその抗原結合性断片、例えばラブリズマブ、及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を含むキットもまた、本明細書で提供される。キットは、必要に応じて、aHUSを有する患者に組成物を投与するために、その中に含有される組成物を実務者(例えば、医師、看護師または患者)が投与するのを可能にするための、例えば、投与スケジュールを含む指示もまた含み得る。キットは、シリンジもまた含み得る。
【0155】
必要に応じて、キットは、上に提供される方法に従う単回投与のための、有効量の抗C5抗体またはその抗原結合性断片を各々が含有する単一用量医薬組成物の複数のパッケージを含む。医薬組成物(複数可)を投与するために必要な機器またはデバイスもまた、キット中に含まれ得る。例えば、キットは、ある量の抗C5抗体またはその抗原結合性断片を含有する、1つまたは複数の予め充填されたシリンジを提供し得る。
【0156】
一実施形態では、本発明は、ヒト患者においてaHUSを処置するためのキットであって、
(a)ある用量の、配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片;並びに
(b)本明細書に記載される方法のいずれかに従って抗C5抗体またはその抗原結合性断片を使用するための指示
を含むキットを提供する。
【0157】
一実施形態では、キットは、ある用量の抗C5抗体またはその抗原結合性断片を含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、≧40~<60kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、2400mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3000mgの用量で
投与される。
【0158】
別の実施形態では、キットは、ある用量の抗C5抗体またはその抗原結合性断片を含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、≧60~<100kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、2700mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3300mgの用量で
投与される。
【0159】
別の実施形態では、キットは、ある用量の抗C5抗体またはその抗原結合性断片を含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、≧100kgの体重の患者に、
(a)1日目に1回、3000mgの用量で;
(b)15日目、及びその後8週間毎に、3600mgの用量で
投与される。
【0160】
多くの変形形態及び等価物は、本開示を読めば当業者に明らかになるので、以下の実施例は、単なる例示であり、本開示の範囲を限定すると決して解釈すべきではない。
【0161】
本出願を通じて引用される全ての参考文献、Genbankエントリー、特許及び公開された特許出願の内容は、明示的に参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0162】
実施例1:非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を有する補体阻害剤未経験の成人患者におけるラブリズマブ(ALXN1210)の第III相単一アーム多施設試験
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を有する補体阻害剤による処置未経験の成人及び青年患者におけるラブリズマブの単一アーム試験(ALXN1210 aHUS 311)を行う。図1に試験デザインが例示されている。
【0163】
aHUSは、血栓性微小血管症(TMA)、補体の副経路(APC)に関与するタンパク質をコードする遺伝子の変異によって、またはAPC調節タンパク質に対する自己抗体によって引き起こされることが多い(Noris,et al.,Clin.J.Am.Soc.Nephrol.2010;5:1844-59)。aHUSを有する患者は、血小板減少症、血管内溶血、急性腎不全、及び腎外組織損傷を含めた内皮損傷に起因する疾患の生命を脅かす症状発現のリスクがある。重要なことに、患者のおよそ20%で中枢神経系、心臓、GI、遠位四肢、及び重症全身臓器障害を含めた疾患の腎外症状発現が生じる(Loirat,et al.,Orphanet J.Rare Dis.2011;6:60及びBrodsky,Blood.2015;126:2459-65)。エクリズマブが利用可能になる前に、aHUSを有する患者の死亡率は、疾患の急性進行期中に15%という高さである(Noris,et al.,Clin.J.Am.Soc.Nephrol.2010;5:1844-59)及びSellier-Leclerc,J.Am.Soc.Nephrol.2007;18:2392-2400)。患者の50%に至るまでで多くの場合に疾患の発症から1年以内に末期腎疾患(ESKD)に進行し、生命を維持するために透析または腎移植が必要になる。慢性の制御されていない終末補体活性化、具体的には、補体成分5(C5)の活性化及び補体活性の調節不全がaHUSの病因及びこの疾患の破壊的な症状発現の中核をなす。結果として、C5a及びC5b-9の生成の選択的阻害を用いたC5の標的化遮断は、処置の重要な治療機構を表す。
【0164】
1.目的
本試験の主目的は、補体阻害剤による処置未経験のaHUSを有する青年及び成人患者における、血小板減少症、溶血、及び腎障害を特徴とする補体媒介性TMAを阻害するためのラブリズマブの有効性を評価することである。
【0165】
本試験の副次目的は、(1)この患者集団におけるラブリズマブの安全性及び忍容性を特徴付けること、(2)ラブリズマブの有効性を追加的な評価基準(例えば、透析が必要な状態かどうか、完全なTMA奏効までの時間、経時的な完全なTMA奏効の状態、推定糸球体濾過量(eGFR)の観察値及びベースラインからの変化、慢性腎疾患(CKD)のステージ(選択標的日に評価され、ベースラインと比較して改善された、安定している(変化なし)、または悪化したに分類される)、血液パラメーター(血小板、LDH、ヘモグロビン)の観察値及びベースラインからの変化、ヘモグロビンのベースラインから20g/L以上の増加(少なくとも4週間空けて得られた少なくとも2つの連続した測定値にわたって持続したもの)、生活の質(QoL)のベースラインからの変化(EuroQol 5 dimensions 3 level(EQ-5D-3L;全患者)アンケート、慢性疾患治療の機能的評価(FACIT)疲労バージョン4アンケート(18歳未満の患者)、及び小児FACIT疲労アンケート(18歳未満の患者)によって測定される)によって評価すること、(3)ラブリズマブのPK/薬力学(PD)を経時的な血清ラブリズマブ濃度の変化及び経時的な遊離C5濃度の変化によって特徴付けること、並びに(4)ラブリズマブの長期間の安全性及び有効性を評価することである。
【0166】
2.評価項目
本試験の主要、副次的及び安全性評価項目を図2にまとめる。主要有効性評価項目は、血液学的パラメーター(血小板数及びLDH)の正常化並びに血清クレアチニンのベースラインから25%以上の改善によって証明され、少なくとも4週間空けて得た2つの連続した測定値によって確認される、26週間の初期評価期間中の完全なTMA奏効である。
【0167】
本試験の副次的有効性評価項目は以下の通りである:
A.透析が必要な状態かどうか;
B.完全なTMA奏効までの時間;
C.経時的な完全なTMA奏効の状態;
D.eGFRの観察値及びベースラインからの変化;
E.選択標的日に試験責任医師によって評価され、ベースラインと比較して改善された、安定している(変化なし)、または悪化したに分類されるCKDのステージ;
F.血液パラメーター(血小板、LDH、ヘモグロビン)の観察値及びベースラインからの変化;
G.少なくとも4週間空けて得た少なくとも2つの連続した測定値にわたって持続した、ヘモグロビンのベースラインから20g/L以上の増加;
H.EQ-5D-3Lアンケート(全患者)、FACIT疲労バージョン4アンケート(18歳以上の患者)、及び小児FACIT疲労アンケート(18歳未満の患者)によって測定される、QoLのベースラインからの変化。
【0168】
本試験の薬物動態(PK)及び薬力学(PD)評価項目は、経時的な血清ラブリズマブ濃度の変化及び経時的な遊離C5濃度の変化である。
【0169】
ラブリズマブの安全性及び忍容性を、身体検査、バイタルサイン、心電図(ECG)、検査室評価、及びAE及びSAEの発生率によって評価する。抗薬物抗体(ADA)が生じた患者の割合も評価する。
【0170】
PD効果の探索的バイオマーカーとして、これだけに限定されないが、補体調節不全のマーカー(例えば、Ba因子)、血管炎症のマーカー(例えば、可溶性腫瘍壊死因子受容体1[sTNFR1])、内皮活性化/損傷のマーカー(例えば、可溶性血管接着分子1[sVCAM1]、トロンボモジュリン)、凝固のマーカー(例えば、D-ダイマー)、及び腎傷害のマーカー(例えば、シスタチンC)のレベルのベースラインからの変化が挙げられる。追加的な評価は、尿中へのラブリズマブ排泄、ニワトリ赤血球(cRBC)溶血、総C5、補体タンパク質に対する自己抗体(例えば、抗H因子)及びAPC活性(例えば、改変ハム試験、補体沈着アッセイ)の測定を含み得る。
【0171】
aHUSに関連することが分かっている遺伝子の遺伝的バリアントを調査するため、並びにaHUS、補体調節不全、またはラブリズマブの代謝もしくは有効性に関連する新規の遺伝的バリアントを同定するために、探索的遺伝学を実施することができる。患者は探索的遺伝学のための試料の提供から離脱することができ、それでもなお本試験に参加することができる。
【0172】
3.試験デザインの要約
ALXN1210-aHUS-311試験は、aHUSを有する青年(12歳~18歳未満)及び成人(18歳以上)患者に静脈内(IV)注入によって投与されるラブリズマブの安全性及び有効性を評価するための第III相、非盲検、単一アーム、多施設試験である。本試験では、ラブリズマブを受けるおよそ55名の患者を登録する。図1に試験デザインが例示されている。全患者が補体阻害剤による処置未経験であり、以前に腎移植を受けている少なくとも6名かつ最大で10名の青年(スクリーニング時に12歳~18歳未満)患者及び少なくとも10名かつ最大で25名の患者を含む。
【0173】
本試験は、最大で7日間のスクリーニング期間、26週間の初期評価期間、及び最長2年間の延長期間からなる。投薬量は、患者の最後に記録された試験来院時の体重に基づく(表5)。患者は、合計26週間の処置にわたり、1日目に負荷用量のラブリズマブ IV(体重40kg以上60kg未満の患者に対しては2400mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対しては2700mg、体重100kg以上の患者に対しては3000mg)、その後、15日目及びそれ以降8週間毎に(q8w)、維持用量のラブリズマブ IV(体重40kg以上60kg未満の患者に対しては3000mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対しては3300mg、体重100kg以上の患者に対しては3600mg)を受ける。初期評価期間後、患者は延長期間に入り、ラブリズマブを、当該製品が登録もしくは承認されるまで(国固有の規制に従って)または最長2年間のいずれか最初に起こるまで受ける。試験の終了は、最後の患者の最終来院と定義される。
【0174】
この第III相、非盲検、単一アーム試験では、ラブリズマブを用いた処置の安全性及び有効性を評価する。本試験に関しては正式な比較分析は計画されていないが、ラブリズマブ処置を受けた患者からの結果を、歴史的対照群であるエクリズマブを用いて処置された患者において観察された結果に対して評価する。歴史的対照群は、効果量に影響を及ぼす可能性がある試験デザイン及び目的の実施特徴が本試験と同様であったC08-002A/B、C10-003及びC10-004前向き登録試験においてエクリズマブを用いて処置された、aHUSを有する患者で構成される。さらに、対照群は、本試験についての適格性基準とさらに整合させるために、12歳以上であり、エクリズマブによる処置前の4週間またはそれ未満PE/PI下にあった患者に限られている。
【0175】
スクリーニングのための評価及び初期評価期間のスケジュールを表1に示す。延長期間についての評価のスケジュールを表2に示す。規定された来院以外の追加的な(不定期の)来院が試験責任医師の自由裁量で許可された。手順、試験、及び評価は試験責任医師の自由裁量で実施される。不定期来院時に行われるあらゆる試験、手順、または評価を電子症例報告書(eCRF)に記録する。不定期来院での試験には各施設検査室または中央検査機関での分析を使用する。しかしながら、各施設検査室での検査を使用すべきであり、不定期来院時に中央検査機関での試験のために2連の試料を採取する。
【0176】
表1:試験来院及び評価のスケジュール:初期評価期間の終わりまでのスクリーニング
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
略語:ADA=抗薬物抗体;ADAMTS13=トロンボスポンジン1型モチーフを有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ、メンバー13;aHUS=非典型溶血性尿毒症症候群;APC=補体の副経路;ECG=心電図;EQ-5D-3L=EuroQol5 dimensions 3 level;ET=早期中止;FACIT=慢性疾患治療の機能的評価;HUS=溶血性尿毒症症候群;LDH=乳酸脱水素酵素;N/A=該当なし;PD=薬力学;PK=薬物動態;QoL=生活の質;ST-HUS=志賀毒素関連溶血性尿毒症症候群。
全患者が、髄膜炎菌感染に対するワクチン接種を試験薬開始前3年以内または試験薬開始時に受けている。髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間経たずに試験薬による処置が開始される患者は、適切な予防用抗生物質を用いた処置をワクチン接種の2週間後まで受ける。ラブリズマブによる処置の開始前にワクチン接種を受けていない患者は、髄膜炎菌ワクチン接種を受ける前及び受けた後少なくとも2週間にわたって予防用抗生物質を受ける。ヒト免疫不全ウイルス1型及びヒト免疫不全ウイルス2型スクリーニング。
志賀毒素酵素イムノアッセイ用の便試料。
妊娠可能な女性の患者のみ。スクリーニング時及び183日目に血清妊娠検査;全ての他の必要時点で尿妊娠検査。妊娠可能な女性の患者に可能性のある試験来院時に試験薬を投与する前に尿検査の結果が陰性であることが必要である。
18歳以上の患者に対してはスクリーニング時にFACIT疲労バージョン4を使用する。18歳未満の患者に対してはスクリーニング時に小児FACIT疲労を使用する。
投薬日には、投薬前に患者申告の評価を行う。
簡易身体検査は、試験責任医師(または被指名人)による判断及び患者の症状に基づく身体系関連検査からなる。簡易検査では少なくとも1つの身体系を検査する。
バイタルサイン測定値は患者が少なくとも5分間安静にした後に取得し、これは、収縮期及び拡張期BP(ミリメートル水銀柱[mmHg])、パルスオキシメトリー、心拍数(回/分)、呼吸数(呼吸/分)、及び口腔温度または鼓膜温度(摂氏温度[℃]または華氏温度[°F])を含む。投薬日には、投薬前にバイタルサインを取得する。
単一12誘導ECGはスクリーニング時、57日目、及び183日目の投薬前に採取する。患者は、ECG収集前におよそ5~10分間仰臥位でいて、ECG収集中には仰臥位のままであるが覚醒している。
臨床的な安全性検査測定値は投薬日の投薬前に採取する。適格性についてのLDHは化学的評価から決定される。卵胞刺激ホルモンレベルは、閉経後の状態であることを確認するためだけにスクリーニング中に測定される。
LDHアイソザイム試験用の血清試料は、試料試験の利用可能性に応じて、選択された施設においてのみ、ラブリズマブ投薬前の任意の/全ての時点で採取される。
安全性、並びに主要評価項目及び副次的評価項目についての評価。
PK/PD解析用の血清試料は、1日目、15日目、71日目、及び127日目の投薬前(注入開始前0.5時間以内)及び注入終了時(EOI)(EOI後0.5時間以内);並びに29日目、43日目、57日目、85日目、99日目、113日目、141日目、155日目、及び169日目の任意の時点;並びに183日目の投薬前に採取する(延長期間の一部として183日目にPK/PD用の追加的な試料を採取することに留意する)。注入終了時の試料は患者の反対側の注入されていない腕から採取する。全ての採取時間をeCRFに記録する。
薬物測定用の尿試料は1日目、15日目、及び71日目の注入終了時(EOI)(EOI後0.5時間以内);並びに29日目の任意の時点に採取する。
血清試料の採取は、投薬日には投薬前及び投薬しない日については任意の時刻に行う。全ての採取時間をeCRFに記録する。
探索的バイオマーカー分析用の血清、血漿及び尿の採取は、ベースライン時及びラブリズマブ投薬の直前の処置後の時点に行う。
遺伝子検査に同意した患者からの単回全血採取は試験中いつでも行うことができる。
ADA血清試料は1日目、71日目、及び127日目の投薬前に採取する。183日目の採取は延長期間の初回投薬前に行う。全ての採取時間をeCRFに記録する。試験の結果が陽性の場合、測定された力価及び安全性評価に基づいて結果が陰性になるかまたは安定化するまで試験を3カ月毎に繰り返す。
併用薬は全ての試験来院時に収集し、禁止薬剤一覧に照らして確認しなければならない。
ラブリズマブの用量は、患者の最後に記録された試験来院時の体重に基づく。
スクリーニング時に適格性を決定するために各施設検査室または中央検査機関での分析を使用することができる。しかしながら、各施設検査室での検査を使用する場合、その来院時にLDH、血小板数、ヘモグロビン、及び血清クレアチニンについて2連の試料を中央検査機関での試験のために採取する。
主要有効性評価項目の評価は183日目の投薬前に行う。183日目の投薬は、延長期間の開始である。
【0177】
表2:試験来院及び評価のスケジュール:延長期間
【表2-1】
【表2-2】
略語:ADA=抗薬物抗体;aHUS=非典型溶血性尿毒症症候群;ECG=心電図;EOS=試験終了;EQ-5D=EuroQol 5 dimensions;ET=早期中止;FACIT=慢性疾患治療の機能的評価;PD=薬力学;PK=薬物動態;QoL=生活の質
妊娠可能な女性の患者のみ。血清妊娠検査はET時のみ;全ての他の必要時点で尿妊娠検査。示されている試験来院時に妊娠可能な女性の患者にラブリズマブを投与する前に尿検査の結果が陰性であることが必要である。
18歳以上の患者に対してはスクリーニング時にFACIT疲労バージョン4を使用する。18歳未満の患者に対してはスクリーニング時に小児FACIT疲労を使用する。
投薬日には、投薬前に患者申告の評価を行う。
簡易身体検査は、試験責任医師の判断及び患者の症状に基づく身体系関連検査からなる。
バイタルサイン測定値は患者が少なくとも5分間安静にした後に取得し、これは、収縮期及び拡張期BP(ミリメートル水銀柱[mmHg])、パルスオキシメトリー、心拍数(回/分)、呼吸数(呼吸/分)、及び口腔温度または鼓膜温度(摂氏温度[℃]または華氏温度[°F])を含む。投薬日には、投薬前にバイタルサインを取得する。
単一12誘導ECGを911日目またはET時に採取する。患者は、ECG収集前におよそ5~10分にわたって仰臥位でいなければならず、ECG収集中は仰臥位のままであるが覚醒していなければならない。
安全性、並びに主要評価項目及び副次的評価項目についての評価。
PK/PD解析用の血清試料は、351日目、575日目、及び743日目の投薬前(注入開始前0.5時間以内)及びEOI(EOI後0.5時間以内);183日目のEOI(EOI後0.5時間以内);並びに911日目の任意の時点またはET時に採取する。注入終了時の試料は、患者の反対側の注入されていない腕から採取する。全ての採取時間をeCRFに記録する。
探索的バイオマーカー分析用の血清、血漿及び尿は、示されている時点のラブリズマブ投薬の直前;及び911日目の任意の時点またはET時に採取する。全ての採取時間をeCRFに記録する。
投薬前血清試料を351日目、575日目、及び743日目に採取する。血清試料を911日目の任意の時点またはET時にも採取する。全ての採取時間をeCRFに記録する。試験の結果が陽性の場合、測定された力価及び安全性評価に基づいて結果が陰性になるかまたは安定化するまで試験を3カ月毎に繰り返す。
併用薬を全ての試験来院時に収集し、禁止薬剤一覧に照らして確認する。
延長期間は、183日目の投薬の開始時から始まる。ラブリズマブの用量は、患者の最後に記録された試験来院時の体重に基づく。
【0178】
4.試験集団
合計およそ55名の、記録されたaHUSを有する患者を登録し、世界中のおよそ200カ所の研究実施施設におけるラブリズマブを用いた処置に割り当てる。本試験には、以前に腎移植を受けている少なくとも6名かつ最大で10名の青年(スクリーニング時に12歳~18歳未満)患者及び少なくとも10名かつ最大で25名の患者が登録される。
【0179】
本試験への参加基準を満たさない個体(スクリーニング不合格)を再スクリーニングすることができる。患者を最大で2回再スクリーニングすることができる。プロトコール放棄または免除としても公知である、募集及び登録基準に対するプロトコール逸脱の将来の承認は許可されない。
【0180】
組み入れ及び除外基準の概要は、図3に示される。患者は、以下の基準の全てを満たし、かつ除外基準のいずれにも該当しない場合、本試験への登録に適格となる:
【0181】
同意時に12歳以上かつ40kg以上である男性または女性の患者。
・以下のスクリーニング来院検査所見に基づく血小板減少症、溶血のエビデンス、及び腎機能不全を含めたTMAのエビデンス:血小板数が150,000/マイクロリットル(μL)未満、かつLDHが1.5×正常値上限(ULN)以上、かつヘモグロビンが年齢及び性別ごとの正常値下限(LLN)以下、かつ血清クレアチニンレベルが成人(18歳以上)ではULN以上または青年(12歳~18歳未満)ではスクリーニング時の年齢ごとの97.5パーセンタイル以上(急性腎傷害のために透析が必要な患者も適格となる)。
・腎移植を受けている患者の中で:現在の腎移植前の既知のaHUS歴、または既知のaHUS歴がないこと、及びカルシニューリン阻害剤([CNI];例えば、シクロスポリン、タクロリムス)またはラパマイシンの哺乳動物標的の阻害剤([mTORi];例えば、シロリムス、エベロリムス)の投薬を一時的に中止した後の最短で4日間最長で7日間のTMAの持続性エビデンス。
・分娩後TMAが発症した患者の中で、分娩日から>3日間にわたるTMAの持続性エビデンス。
・髄膜炎菌感染(Neisseria meningitidis)のリスクを低減するために、全患者が試験薬開始前3年以内または試験薬開始時に髄膜炎菌感染に対するワクチン接種を受けている。髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間経たずにラブリズマブによる処置が開始される患者は、適正な予防用抗生物質を用いた処置をワクチン接種の2週間後まで受ける。ラブリズマブによる処置の開始前にワクチン接種を受けていない患者は、髄膜炎菌ワクチン接種を受ける前及び受けた後少なくとも2週間にわたって予防用抗生物質を受ける。
・18歳未満の患者は、国及び各実施施設のワクチン接種スケジュールガイドラインに従ってHaemophilus influenzae type b(Hib)及びStreptococcus pneumoniaeに対してワクチン接種を受けていなければならない。
・妊娠可能な女性の患者及び妊娠可能な女性パートナーをもつ男性の患者は、処置を受けている間及び試験薬の最後の用量後8カ月にわたって妊娠を回避するためにプロトコールに規定されたガイダンスに従わなければならない。
・書面のインフォームドコンセントを提出し、かつ試験来院スケジュールに応じる意志があり、それらを行うことができる。18歳未満の患者に関しては、患者の法的な保護者が書面のインフォームドコンセントを提出する意志があり、それを行うことができなければならず、かつ患者は、書面のインフォームドコンセントを提出する意志がなければならない。
【0182】
スクリーニング時に採取された試料は、各実施施設または中央検査機関のいずれかで試験することができる。LDH、血小板数、ヘモグロビン、及び血清クレアチニンについて各実施施設での試験を使用する場合、解析用のベースライン及びベースライン後測定値が中央検査機関に由来することを確実にするために、中央検査機関での試験用に2連の試料を採取する。適格性の評価をはかどらせるために各実施施設の検査結果を使用することができるが、これらの組み入れ基準の最終的な決定は、中央検査機関での結果に基づく。
【0183】
患者が以下の基準のいずれかに該当した場合、その患者は試験登録から除外する:
A.既知の「トロンボスポンジン1型モチーフを有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ、メンバー13」(ADAMTS13)欠損(活性<5%)。
B.志賀毒素関連溶血性尿毒症症候群(ST-HUS)。
C.直接クームス試験陽性及びStreptococcus pneumoniaeによる感染(例えば、培養、抗原試験)によって証明されるStreptococcus pneumoniae関連溶血性尿毒症症候群(HUS)。
D.既知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染。
E.消散していない全身性髄膜炎菌性疾患。
F.スクリーニングの開始前7日以内に血液培養陽性であり、抗生物質を用いた処置を受けていないと定義される、継続中の敗血症の確定診断を受けている患者。
G.試験責任医師の意見によると、aHUSの正確な診断に交絡を生じさせるまたはaHUS疾患を管理する能力を妨害する可能性がある活動性の処置されていない全身性細菌感染の存在または疑い。
H.妊娠または授乳。
I.心臓移植、肺移植、小腸移植、または肝移植。
J.腎移植を受けている患者の中で、以下のいずれか:
a.Banff 2013基準に従った急性抗体媒介性拒絶反応(AMR)の診断と一致する、移植から4週間以内の急性腎機能不全、または
b.急性AMRの臨床的診断と一致する、移植から4週間以内の急性腎機能不全及びドナー特異的抗体(DSA)の上昇。
c.多嚢胞性腎疾患歴。
K.収縮期血圧(SBP)≧170mmHgを示している18歳以上の患者、または高血圧の臨床的診断を示している12歳~18歳未満の患者の中で、以下のいずれか:
a.≦140mmHgまで血圧(BP)が低下した後4日未満のTMA(組み入れ基準番号2)の持続性のエビデンス。
b.既知の左室肥大。
c.超音波での既知の小さな高エコー腎臓。
L.同定された薬物曝露関連HUS。
M.現在のTMAについて、スクリーニングの開始前に28日間またはそれよりも長くPE/PIを受けていること。
N.処置され、再発の証拠がない非黒色腫皮膚癌または子宮頸部の上皮内癌を例外として、スクリーニングの5年以内の悪性疾患歴。
O.スクリーニングの開始前90日以内の骨髄移植(BMT)/造血幹細胞移植(HSCT)。
P.ビタミンB12欠乏に関連するHUS。
Q.既知の全身性硬化症(強皮症)、全身性エリテマトーデス(SLE)、または抗リン脂質抗体陽性または症候群。
R.慢性透析(ESKDに対する腎代替療法としての定期的な透析と定義される)。
S.スクリーニングの開始前8週間以内に、無関係の医学的状態(例えば、低ガンマグロブリン血症)に対するものを除いて、慢性静脈内免疫グロブリン(IVIg)を受けている患者;またはスクリーニングの開始前12週間以内に慢性リツキシマブ治療を受けている患者。
T.ステロイド、mTORi(例えば、シロリムス、エベロリムス)、CNI(例えば、シクロスポリンまたはタクロリムス)などの他の免疫抑制療法を受けている患者は除外されるが、以下の場合は除く:a)確立された移植後抗拒絶反応レジメンの一部、またはb)患者が、免疫抑制療法が必要になる確認された抗補体因子抗体を有する、またはc)aHUS以外の状態(例えば、喘息)に対してステロイドが使用されている。
U.本試験において1日目に試験薬を開始する前30日以内または治験製品の半減期の5倍の期間内(いずれか長い方)における、別の介入処置試験の参加または任意の実験的治療の使用
V.エクリズマブまたは他の補体阻害剤の以前の使用。
W.マウスタンパク質に対するまたは賦形剤の1つに対する過敏症。
X.試験責任医師の意見によると、試験に参加することにより患者のリスクが増大するまたは試験の転帰に交絡を生じさせる可能性があるあらゆる医学的または心理学的状態。
Y.スクリーニングの開始前1年以内の薬物またはアルコールの乱用または依存歴が分かっているまたはその疑いがあること。
【0184】
除外基準番号1についての検査結果は、初回投薬前には入手可能でない場合がある。除外基準番号Aについての後の結果により、中止及び患者の補充が導かれる可能性がある。
【0185】
患者は、任意の時点で試験から離脱する権利を有する。患者が同意を撤回する場合、早期中止(ET)来院に関して規定された評価を実施する。試験から離脱する患者は補充しない。患者は、試験責任医師または試験依頼者が、処置を停止することが患者の最善の利益であると考える理由がある場合、試験薬を中止することができる。
【0186】
AMRが発生しており(C4d陽性腎臓生検)、以前に腎移植を受けており、リツキシマブが適正な治療であるとみなされる患者は、試験を離脱し、標準治療による治療を受けなければならない。中止の主な理由及び他のあらゆる理由(複数可)をeCRFに記録する。
【0187】
患者が、現在進行しているAE、または、有意に基準範囲外であり、臨床的に有意である未解決の検査結果を有したまま試験を中止する場合、試験責任医師は、検査結果または有害事象の十分な臨床的解決が達成されるまで追跡を提供するよう試みる。
【0188】
試験依頼者または監督当局は、試験を妥当な理由で終結させることができる。試験の終結が正当化される条件としては、これだけに限定されないが、(1)試験に登録された患者に対する予想外の、重篤な、または許容されないリスクの発見、(2)試験薬の試験、評価、または開発を一時的に中止するまたは中止するという試験依頼者による決定、(3)試験責任医師が承認されたプロトコール、関係するガイドライン、及び/または規制に従うことができないこと、並びに(4)試験責任医師から試験依頼者及び/または規制当局に故意に誤った情報が提出されたことが挙げられる。
【0189】
少なくとも1用量の治験製品を受けた後に患者のスクリーニングデータが以下の組み入れ/除外基準(組み入れ基準番号2または除外基準番号1)の1つまたは複数に合致しないことがいずれかの時点で決定された場合(例えば、適格性基準を確認するために使用された患者の各施設検査室でのデータが、その後に中央検査機関により、もはや適格性基準を満たさないことが決定された場合)、その患者は、試験を中止し、補充を行うことができる。早期に終結する患者に対しては早期中止手順を実施し、患者の試験薬の最後の用量の60日後まで全てのAEを収集する。
【0190】
試験の終了は、延長期間中、最後の患者の最終来院の日と定義される。
【0191】
5.試験処置
2つの448アミノ酸の重鎖と2つの214アミノ酸の軽鎖で構成されるヒト化抗C5モノクローナル抗体であるラブリズマブは、ヒト定常領域並びにヒトフレームワーク軽鎖及び重鎖可変領域に移植されたマウス相補性決定領域からなるIgG2/4カッパ免疫グロブリンである。ラブリズマブ及びエクリズマブは、99%超の一次アミノ酸配列同一性を共有し、非常に類似した薬理学を有する。
【0192】
ラブリズマブ製剤は、臨床試験のために、使い捨てバイアル中の滅菌された保存剤を含まない10mg/mL溶液として供給され、IV注入による投与用の市販の生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム注射液;国固有の薬局方)に希釈することによる注入のために設計された。表3及び現行のIBにより追加的な情報がもたらされる。
【0193】
表3:試験薬
【表3】
【0194】
ラブリズマブは、米国薬局方(USP)/欧州連合薬局方(EP)1型ホウケイ酸ガラスバイアルに詰め、アルミニウムオーバーシール及びフリップオフキャップを有するブチルゴム栓で栓をした。試験薬はキットとして供給される。適用可能な規制に基づいて要求される全ての必須文書を受け取ったら、ラブリズマブを各試験実施施設に向けてリリースする。
【0195】
試験実施施設に試験薬キットが到着したら、薬剤師(または訓練された被指名人)が即座に試験薬キットを配送用クーラーから取り出し、それらを元の箱に入った状態で2℃~8℃(35°F~47°F)の冷蔵条件下で保管し、光から保護する。ラブリズマブは凍結させない。試験薬を安全な、出入りが制限された保管領域に保管し、温度を毎日モニタリングする。
【0196】
製剤は投与前に室温にする。材料は周囲空気温度によるもの以外で(例えば、マイクロ波または他の熱源を使用することによって)は加熱しない。
【0197】
ラブリズマブはIVプッシュ注射またはボーラス注射としては投与しなかった。試験薬の注入は無菌技法を使用して調製する。患者に必要な用量のラブリズマブを市販の生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム;国固有の薬局方)中に、表26において指定されている体積でさらに希釈する。希釈剤中ラブリズマブ溶液を患者に、IVチューブ投与セットを使用して注入ポンプを介して投与する。注入用のインラインフィルターの使用が必要である。
【0198】
表4:ラブリズマブ用量調製のための投薬参照チャート
【表4-1】
【表4-2】
追加的な用量調製指示に関してはPharmacy Manualを参照されたい。
最後の試験来院時に記録された体重。
【0199】
試験薬の用量は、薬剤師または医学的に資格のあるスタッフメンバーだけが調製し、投薬する。試験薬は、本試験への参加に適格となることが確認された登録患者だけに投薬する。試験薬を患者に対して調製したら、その患者だけに投与する。試験薬のバイアルは、1回限りの使用のためのものであり、バイアル中に残った製剤は一切別の患者に使用しない。注入チューブまたは注入バッグ中に残った薬物は一切別の患者に使用しない。
【0200】
全ての臨床試験材料を安全な場所で保管し、適切に訓練された人が割り当て、投薬する。受け取った、投薬した、及び破棄した治験製品の量の詳細な記録を維持する。特に通知のない限り、空のバイアル及び材料が残留しているバイアルを、本試験のモニタリングによる検査及び説明責任のために残しておき、その後、それらを各実施施設の臨床試験薬の薬剤標準操作手順(SOP)に従って破壊するまたは取り扱う。薬物説明責任に関する規制要件を満たすために、本試験の最後に残っているラブリズマブの在庫目録の全てを照合確認し、適用可能な規制に従って破棄するまたはAlexionに返却する。
【0201】
患者は、ラブリズマブを26週間にわたって受ける。ラブリズマブは、緩徐なIV注入としておよそ2時間にわたって投与する。ラブリズマブは、IVプッシュ注射またはボーラス注射としては投与しない。
【0202】
初期評価期間中のラブリズマブの用量レジメンは、患者の最後に記録された試験来院時の体重に基づく(表5)。患者は、1日目に負荷用量のラブリズマブ IVを受け、その後、15日目及びそれ以降はq8wで(8週間毎に)維持用量のラブリズマブ IVを受ける。
【0203】
表5:負荷及び維持処置レジメン
【表5】
最後の試験来院時に記録された体重。
【0204】
初期評価期間後、全患者が最長2年間の延長期間に繰り越され、延長期間中は全患者がラブリズマブをq8wで(8週間毎に)受ける。全ての用量投与の実際の時間を患者のeCRFに記録する。
【0205】
これは非盲検試験である。登録の基準を全て満たす患者をベースライン来院時(1日目)にラブリズマブを用いた試験処置に割り当てる。双方向音声またはウェブ奏効システム(IxRS)を使用してラブリズマブを含有するバイアルを各患者に割り当てる。
【0206】
他のモノクローナル抗体の注入には、一般には注入中または注入完了直後に発症するインフュージョンリアクションが伴っている。
【0207】
患者が、スクリーニングの開始前28日以内(または髄膜炎菌ワクチン接種の記録については3年以内)からラブリズマブの初回投薬までに摂取したまたは受けた、除外基準及び手順において考察されているもの(外科手術/生検または理学療法などのあらゆる治療介入)を含めた以前の薬剤(ビタミン及び生薬製剤を含む)を患者のeCRFに記録した。
【0208】
分析目的では、最初のラブリズマブ投薬の直後14日の期間内の透析はいずれも「新規透析」とはみなされない。
【0209】
試験中に行われた全ての薬剤の使用及び手順を患者の原文書/カルテ及びeCRFに記録する。この記録は、全ての処方薬、生薬製品、ビタミン、無機物、市販薬、及び現行の薬剤を含む。併用薬を試験薬の最初の注入から患者の試験薬の最後の用量の56日後まで記録する。併用薬のあらゆる変化もまた患者の原文書/カルテ及びeCRFに記録する。試験中の患者の標準治療のために、または何らかのAEを処置するために必要であるとみなされた併用薬はいずれも、試験責任医師の自由裁量で、下記の許容される薬剤と一緒に提供される。しかしながら、試験責任医師には、全ての薬剤に関する詳細が患者の原文書/カルテ及びeCRFに完全に記録されることを確実にする責任がある。
【0210】
患者は、試験薬の初回投薬後のあらゆる時点で以下の薬剤のいずれか及び手順を受けることが禁止される:エクリズマブまたは他の補体阻害剤、臨床試験の一部としてのあらゆる他の試験薬またはデバイスの使用、IVIg(無関係の医学的必要性、例えば、低ガンマグロブリン血症に対するものを除く)、リツキシマブ、初回投薬後のPE/PI、及び、(1)利尿薬に不奏効性の循環血液量過多症、(2)不応性電解質不均衡、または(3)尿毒症性脳障害の新規発症によって評価される説得力のある医学的必要性がある場合を除いた、ラブリズマブの初回投薬後最初の48時間の期間での新規透析。例外は透析の施行前に個々の場合に応じて試験依頼者によって承認されなければならない。
【0211】
以下の併用薬及び手順はある特定の状況下で認められ、以下の制限を有する:スクリーニング前または試験中の他の免疫抑制療法(例えば、ステロイド、mTORi[例えば、シロリムス、エベロリムス]、CNI[例えば、シクロスポリンまたはタクロリムス]など)の使用は、a)確立された移植後抗拒絶反応レジメンの一部である場合、またはb)患者が、免疫抑制療法を必要とする確認された抗補体因子抗体抗体を有する場合、またはc)aHUS以外の状態(例えば、喘息)に対してステロイドが使用されている場合を除き、認められない。
【0212】
試験薬の初回投薬後に他の補体阻害剤(エクリズマブを含む)を受けているまたはPE/PIが進行している患者はいずれも本試験から離脱する。
【0213】
ラブリズマブの使用により、その作用機構に起因して、患者の感染に対する易罹患性が増大する。感染のリスクを低減するために、全患者が、N.meningitidis、Hib、及びStreptococcus pneumoniaeに対するワクチン接種を受ける。
【0214】
患者は、ラブリズマブの初回投薬前の3年以内に、または初回投薬時にN.meningitidisに対するワクチン接種を受ける。髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間経たずに薬物で処置される患者は、適正な予防用抗生物質を用いた処置をワクチン接種の2週間後まで受ける。一般的な病原性髄膜炎菌血清型を防止するために、入手可能な場合、血清型A、C、Y、W135、及びBに対するワクチンが推奨される。患者は、補体阻害剤(例えば、エクリズマブ)を伴うワクチン接種の使用に関する現行の国のワクチン接種ガイドラインまたは現地の慣行に従ってワクチン接種を受けるまたは再度ワクチン接種を受ける。
【0215】
ラブリズマブの初回投薬を受ける前3年以内にN.meningiditisに対するワクチン接種を受けていない一部の患者が初回投薬時にワクチン接種を受けることができない可能性があることが理解される。ラブリズマブによる処置の開始前にワクチン接種を受けていない患者は、髄膜炎菌ワクチン接種を受ける前及び受けた後少なくとも2週間にわたって予防用抗生物質を受ける。
【0216】
ワクチン接種は髄膜炎菌感染を防止するために十分でない可能性がある。抗細菌剤の適正使用について公式ガイダンス及び現地の慣行に従って考慮すべきである。全患者を髄膜炎菌感染の初期徴候についてモニタリングし、感染が疑われる場合には直ちに評価し、必要であれば適正な抗生物質を用いて処置する。
【0217】
リスク認識を増大させ、試験の過程中に患者が経験した感染のあらゆる潜在的徴候または症状の迅速な開示を促進するために、患者は、常に携帯するよう安全性カードを提供される。潜在的なリスク、徴候、及び症状の追加的な考察及び説明は患者の安全性カードについての審査の一部として特定の時点で、評価のスケジュールに記載されている通り試験全体を通して行う(表1及び表2)。
【0218】
患者は、ラブリズマブの初回投薬を受ける前、または初回投薬時にHaemophilus influenzae type b(Hib)及びStreptococcus
pneumoniaeに対するワクチン接種を国及び各実施施設のワクチン接種スケジュールガイドラインに従って受ける。N.meningitidis、Hib、及びS.pnemoniaeに対するワクチン接種の状態を患者のeCRFに記録する。
【0219】
患者には、試験責任医師または被指名人の監督の下で管理された状況で試験薬を投与し、それにより、試験薬投与の順守を確実にする。試験責任医師または被指名人は、全患者が本試験のプロトコールを順守することが求められる特定の投薬レジメンを適切に通知されることを確実にし、患者が試験中の規定された時点で適正な用量を受けること、及び注入中に適切な安全性モニタリングが行われることを確実にする。
【0220】
試験薬を受ける前、閉経後であると自身で考えている女性の患者は、少なくとも1年にわたって無月経であることと、血清卵胞刺激ホルモン(FSH)レベルが上昇していること(>30IU/L)(例えば、ホルモン補充療法、食事性植物エストロゲンの不在下で)の組合せに基づく閉経のエビデンスを提出しなければならない。
【0221】
妊娠可能な女性の患者は、高度に有効な避妊方法(下で定義される通り)を、スクリーニング時から使用し始め、試験薬の最後の用量後少なくとも8カ月にわたって継続する。高度に有効な避妊方法*としては、排卵の阻害を伴うホルモン避妊、子宮内デバイス、子宮内ホルモン放出系、両側卵管閉塞、パートナーの精管切除(パートナーが患者の唯一の性的パートナーであるという条件で)、禁欲(試験薬による処置に付随するリスクがある全期間中、異性との性交を絶つことと定義される;禁欲の信頼度を、臨床試験の持続時間と患者が好む通常の生活様式との関連で評価する必要がある)、男性コンドームと、殺精子剤を有するキャップ、避妊ペッサリー、またはスポンジのいずれかの組合せ(二重障壁方法)が挙げられる。出産可能性のある女性の配偶者/パートナーまたは妊娠中もしくは授乳中の配偶者またはパートナーを有する男性の患者は、処置を受けている間及び試験薬の最後の用量後少なくとも8カ月にわたって、二重障壁避妊(男性コンドームプラス女性パートナーの適正な障壁方法)に同意する。精管切除術の外科的成功に関する文書により証明された医学的評価があったとしても二重障壁避妊が必要である。
【0222】
男性の患者は、処置を受けている間及び試験薬の最後の用量後少なくとも8カ月にわたって精子を供与しない。
【0223】
6.有効性評価
主要な有効性評価は、26週間の初期評価期間中の完全なTMA奏効である。完全なTMA奏効の基準は、(1)血小板数の正常化、(2)LDHの正常化、及び(3)血清クレアチニンのベースラインから25%以上の改善である。
【0224】
少なくとも4週間空けて得た2つの連続した測定値によって確認される、完全なTMA奏効基準の全てを満たす患者は、主要有効性評価項目を満たしたとして分類される。
【0225】
以下の副次有効性評価を試験中に測定する:
A.透析が必要な状態かどうか
B.完全なTMA奏効までの時間
C.経時的な完全なTMA奏効の状態
D.eGFRの観察値及びベースラインからの変化
E.選択標的日に試験責任医師によって評価され、ベースラインと比較して改善された、安定している(変化なし)、または悪化したに分類されるCKDのステージ
F.血液パラメーター(血小板、LDH、ヘモグロビン)の観察値及びベースラインからの変化
G.少なくとも4週間空けて得られた少なくとも2つの連続した測定値にわたって持続した、ヘモグロビンのベースラインから20g/L以上の増加
H.EQ-5D-3Lアンケート(全患者)、FACIT疲労バージョン4アンケート(18歳以上の患者)、及び小児FACIT疲労アンケート(18歳未満の患者)によって測定される、QoLのベースラインからの変化。
【0226】
7.安全性評価
ラブリズマブの潜在的な安全性リスクを考察するため、及び試験責任医師に患者の試験に関する安全性の懸念に対処する機会をもたらすために、試験責任医師または患者の被指名人が患者と面会する。
【0227】
AEの収集を、インフォームドコンセントを得た時から試験完了までモニタリングする。試験責任医師は、あらゆるAEをそれらの結末(消散または安定化)まで追跡する。患者が試験から離脱した場合には、AEモニタリングを可能であれば最後の患者の最後の試験来院まで継続する。臨床評価及び検査室評価のタイミングは、評価のスケジュール(表1及び2)に従って実施する。あらゆる臨床的に意義のある異常な結果を消散または安定化まで追跡する。
【0228】
年齢、性別、人種、及び民族性を含めた人口統計パラメーターについての調査を行う。完全な病歴を取得し、記録する。体重及び身長を記録する。身長はスクリーニング時にのみ測定する。
【0229】
患者の、最初のaHUS症状の発症及び診断日を含めたaHUS歴をスクリーニング来院時に記録する。
【0230】
以前の及び併発している状態/障害を含めた患者の病歴をスクリーニング来院時に記録する。髄膜炎菌ワクチン接種に加えて、スクリーニングの開始前28日間(または髄膜炎菌ワクチン接種の記録については3年)にわたる薬剤(ビタミン及び/または生薬補給剤を含めた処方薬または市販薬)の使用も記録する。
【0231】
身体検査は、以下の評価を含む:全身外観;皮膚;頭部、耳、眼、鼻、及びのど;頸部;リンパ節;胸部;心臓;腹腔;肢;中枢神経系;並びに筋骨格系。簡易身体検査は、試験責任医師の判断及び患者の症状に基づく身体系関連検査からなる。バイタルサイン測定値は患者が少なくとも5分安静にした後取得し、これらは、収縮期及び拡張期BP(ミリメートル水銀柱[mmHg])、パルスオキシメトリー、心拍数(回/分)、呼吸数(呼吸/分)、及び口腔温度または鼓膜温度(摂氏温度[℃]または華氏温度[°F])を含む。
【0232】
血清妊娠、血液学、化学、凝固、及び尿検査のための試料は評価のスケジュール(表1及び2)の規定された時点で行う。検査室評価のための試料は各試験薬投与前に採取する。
【0233】
スクリーニング時に採取された試料は、各実施施設または中央検査機関のいずれかで試験することができる。LDH、血小板数、ヘモグロビン、及び血清クレアチニンについて各実施施設での試験を使用する場合、解析用のベースライン及びベースライン後の測定値が中央検査機関からのものであることを確実にするために、中央検査機関での試験用に2連の試料を採取する。2連の試料が各実施施設及び中央検査機関に由来する場合には、中央検査機関での結果を解析に使用する。
【0234】
基礎疾患に起因していくつかの検査値が正常値範囲を外れることが予測される。試験責任医師は、これらの値の臨床的意義を評価する際に医学的判断を使用すべきである。臨床的意義は、医学的関連性を有し、診療の変化を生じさせる検査測定値のあらゆる変動と定義される。ベースライン値からの臨床的に意義のある検査的変化が認められた場合、その変化をAEとしてAE eCRFに記録する。試験責任医師は、臨床的に意義のある範囲外値全てについて試験処置との関係を評価する。試験責任医師は、患者を、(1)値が正常範囲もしくはベースラインレベルに戻るまで、または(2)試験責任医師の判断で、正常範囲から外れた値が試験薬の投与または他のプロトコールに特有の手順に関連しなくなるまで、追加的な検査室評価によって継続してモニタリングする。
【0235】
妊娠可能性のある女性に関しては、血清または尿妊娠検査(すなわち、ベータ-ヒト絨毛膜ゴナドトロピン[β-hCG])を評価のスケジュール(表1及び2)に従って実施する。血液試料を血液学パラメーターについて分析する。
【0236】
血液試料を血清化学的パラメーターについて分析する。間接ビリルビンは総ビリルビン値及び直接ビリルビン値から算出される;したがって、直接ビリルビンが定量限界を下回る場合には、間接ビリルビンの結果は入手不可能である。閉経後の女性の患者に関しては閉経後の状態であることを確認するために血清FSHレベルをスクリーニング中に測定する。
【0237】
化学的評価を評価のスケジュール(表1及び2)に規定された時点で実施する。血清化学を収集する来院時の全てで、eGFRを、18歳以上の患者における腎疾患における食事の変更式及び18歳未満の患者における腎疾患における食事の変更シュワルツ式を使用して算出する。
【0238】
血液試料を凝固パラメーターについて分析する。
【0239】
尿試料を分析する。肉眼での分析の結果が異常である場合には尿試料の顕微鏡検査を実施する。尿中総タンパク質量:クレアチニン比を算出するために、タンパク質及びクレアチニンを測定するためにも尿試料を分析する。
【0240】
各患者について、単一12誘導デジタルECGを評価のスケジュール(表1及び2)に従って収集する。患者は、ECG収集前におよそ5~10分にわたって仰臥位でいなければならず、ECG収集中は仰臥位のままであるが覚醒していなければならない。試験責任医師または被指名人は、ECGが正常範囲内であるかどうかを評価するため、及び結果の臨床的意義を決定するためにECGを精査する責任がある。これらの評価をCRFに示す。
【0241】
評価のスケジュールに示されている通り、試験薬投与前の血清中のラブリズマブに対するADAの存在及び力価を試験するために血液試料を採取した(表1及び2を参照されたい)。試験の結果が陽性であった場合、測定された力価及び安全性評価に基づいて、結果が陰性になるかまたは安定化するまで、3カ月毎に検査を繰り返すことができる。必要に応じて、結合性及び中和抗体、PK/PD、安全性、並びにラブリズマブの活性を含めた抗体奏効のさらなる特徴付けを行うことができる。
【0242】
AEとは、医薬製品を投与された患者に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごとであり、必ずしも当該処置との因果関係(causal relationship)を有するものではない。したがって、AEは、医薬品に関連するとみなされるかどうかにかかわらず、医薬品の使用に時間的に関連するあらゆる好ましくないまたは意図しない徴候(例えば、異常な検査所見)、症状、または疾患であり得る。
【0243】
好ましくない医療上のできごとが起こらない状況(例えば、試験の開始前に計画されていた場合の待機的手術のための入院、社会的理由または便宜上の入院)、及び悪化しない、試験開始時に存在するまたは検出された既存の疾患(複数可)または状態(複数可)の予測される日々の変動はAEではない。
【0244】
臨床試験の目的は薬物の効果を確立することであるので、薬物の効果がないことは、臨床試験においてはAEではない。
【0245】
薬物適用の誤り(製品の意図的な誤用、乱用、及び過量投薬を含む)またはプロトコールにおいて定義されているもの以外の使用は、薬物適用の誤りの結果として好ましくない医療上のできごとが存在しない限り、AEとはみなされない。
【0246】
治験製品への母系または父系曝露中に妊娠が生じた場合は、試験責任医師/施設が認識してから24時間以内に報告すべきである。胎児転帰及び授乳に関するデータを規制報告及び安全性評価のために採取する。
【0247】
有害事象を同意署名時から記録する。インフォームドコンセント後であるが試験薬投与前に報告されたAEは処置前AEとみなされる。
【0248】
以下の事象は、本試験における重要な同定されたリスクである:髄膜炎菌感染。
【0249】
有害事象共通用語基準(CTCAE)バージョン4.03またはそれ以降のものを使用してAEの重症度に類別する。各AE用語に関して類別(重症度)スケールが提供される。各CTCAE用語は、医薬品規制用語集(MedDRA(登録商標))に従った下層語(LLT)である。各LLTがMedDRA優先用語にコード化される。グレードとは、AEの重症度を指す。CTCAEでは、グレード1~5が、各AEについて重症度の独特の臨床的説明と共に割り当てられる(表6)。
【0250】
表6:有害事象重症度類別スケール
【表6】
略語:ADL=日常生活動作;AE=有害事象
手段的ADLとは、食事の準備、日用品や衣服の買い物、電話の使用、金銭の管理などを指す
身の回りのADLとは、入浴、着衣及び脱衣、食事の摂取、トイレの使用、薬の内服、及び寝たきりでないことを指す。
【0251】
AEの重症度のあらゆる変化をeCRF完成ガイドライン内の特有のガイドラインに基づいて記録する。重症度と重篤度は区別される:重症度はAEの強さを説明するものであり、一方、重篤度という用語は、重篤な有害事象(SAE)に関する特有の基準に合致したAEを指す。
【0252】
試験責任医師は、全てのAE(重篤なもの及び重篤でないもののどちらも)について、試験責任医師の医学的判断及び観察された事象に関連する症状に基づいて因果関係(causality)評価(なし、おそらくなし、可能性あり、おそらくあり、明らかにあり)を提示しなければならない(表7)。この評価をeCRF及び必要に応じて任意の追加的なフォームに記録する。
【0253】
表7:因果関係(causality)評価の説明
【表7-1】
【表7-2】
【0254】
重篤な有害事象(SAE)は、以下のあらゆる好ましくない医療上のできごとである:・死に至る
・生命を脅かす(すなわち、患者が、事象が生じた時に死亡のリスクがあった)
・入院患者としての入院または現在の入院の延長が必要になる
・持続性のまたは著しい能力障害/無能に至る
・先天性異常/先天性欠損である
【0255】
死亡に至らない可能性がある、ただちに生命を脅かすものではない可能性がある、または入院が必要にならない可能性がある重要な医療上の事象は、適正な医学的判断に基づいて、患者が危険にさらされるまたは上に列挙されている転帰のうちの1つを防止するために介入が必要になる可能性がある場合、重篤な有害事象とみなされ得る。
【0256】
予測できない重篤な有害反応の疑い(SUSAR)は、IBには列挙されておらず、試験責任医師により治験製品または手順に関連するものと同定される重篤な事象である。United States Title 21 Code of Federal Regulations(CFR)312.32及びEuropean Union Clinical Trial Directive 2001/20/EC及び付随する詳細なガイダンスまたは参加国の国の規制要件でSUSARの報告が求められている。
【0257】
ETの患者については試験薬の最後の用量から60日後までまたは試験を完了した患者については試験薬の最後の用量から56日後まで、ICFの徴候から全てのAE(重篤なもの及び重篤でないもの)を収集した。全てのAEが、試験責任医師または患者の職員がそれらの発生に気づいたらeCRFに記録される。
【0258】
因果関係(causality)に関する試験責任医師の評価にかかわらず全てのSAEを記録する。試験薬と因果関係があると思われるSAEの報告期限はない。試験責任医師はSAEを任意の時点で因果関係(causality)とは無関係に自由に報告する。
【0259】
全てのSAEについて、試験責任医師は以下を提示しなければならない:適正かつ必要な追跡情報、SAE(複数可)の因果関係(causality)、SAE(複数可)に対する処置/介入、SAE(複数可)の転帰、及び診療記録及び検査/診断情報の裏付け。
【0260】
全患者及び男性の患者の女性の配偶者/パートナーについて本試験中に妊娠データを収集する。妊娠中の曝露(子宮内曝露とも称される)は、母系曝露または父系曝露後の精液を介した製剤の伝達のいずれかの結果であり得る。妊娠自体は、治験製品が避妊薬の効果に干渉した可能性があるという疑いがなければ、AEとはみなされない。しかしながら、妊娠の合併症及び妊娠の異常な転帰はAEであり、SAEについての基準に合致し得る(例えば、子宮外妊娠、自然流産、子宮内胎児死亡、新生児死亡、または先天性異常)。合併症を伴わない人工妊娠中絶はAEとして報告すべきでない。
【0261】
8.薬物動態及び薬力学評価
血清薬物濃度の決定及びPD評価用の血液試料を評価のスケジュール(表1及び2を参照されたい)に示されている時点で試験薬の投与の前後に採取する。各試料採取の実際の日時(24時間での時刻)を記録する。任意の所与の患者についてのPK試料採取時点の数は、現在計画されている時点の数を超えない。
【0262】
PK及びPD評価のための血液試料を薬物の注入に使用した腕とは反対の腕から採取する。PK/PDの評価は、以下の通りである:(1)経時的な血清ラブリズマブ濃度の変化及び(2)遊離C5濃度の変化。
【0263】
9.探索的評価
探索的バイオマーカー分析のために、ベースラインからの実際の変化及びパーセンテージの変化について統計値の要約を示す。
【0264】
ラブリズマブ濃度と探索的バイオマーカーの関係または臨床的利益と重要な探索的バイオマーカーの相関を図式表示によって評価することができる。臨床転帰、PK/PD、遺伝子プロファイル、及びバイオマーカーレベルの探索的分析及びそれらの間の潜在的な関係を実施することができる。APC活性及び自己抗体の結果を評価する場合には要約する。
【0265】
aHUSに関連することが分かっている遺伝子の遺伝的バリアントを調査するため、並びにaHUS、補体調節不全、またはラブリズマブの代謝もしくは有効性に関連する新規の遺伝的バリアントを同定するために、探索的遺伝学を実施することができる。
【0266】
aHUSに関する既知の臨床的関連性の遺伝的変異は試験責任医師から適正な遺伝相談と共に患者または患者の保護者に伝えられる。臨床的意義が分かっていない遺伝的バリアントは、患者または試験責任医師には伝えられない。
【0267】
資源利用に関する患者アンケート及び患者申告のaHUS症状アンケートを使用して、aHUSの追加的な徴候または症状を評価する。
【0268】
バイタルサイン及び臨床検査を含めたaHUSの腎外徴候または症状の構成成分をベースライン時及びベースライン後の時点で及びベースラインからの変化について説明的に要約することができる。患者ごとの一覧表を提示することができる。
【0269】
徴候、総体症状、及び資源利用の分析は、転帰を反復測定を用いてまたは用いずにカテゴリー化するための標準の手法を含み得る。
【0270】
1日目の評価が欠損した場合、スクリーニング評価をベースライン評価として使用する。
【0271】
26週間の初期評価期間中の完全なTMA奏効(主要評価項目)を評価するために、完全なTMA奏効の定義の一部である有効性評価が欠損しているがなお試験下にある患者は、最終観察繰越(last observation carried forward)(LOCF)を有する。26週目よりも前に試験を中止した患者については、中止時点までのデータを使用して完全なTMA奏効を評価する。
【0272】
QoL計器の欠損データは、各計器についての指示に指定されている通り取り扱う。
【0273】
本試験について、全患者が26週間の初期評価期間を完了したまたはそれから離脱した後、26週間の初期評価期間の最後に暫定解析が計画される。さらに、長期間にわたる有効性、安全性、及びPKパラメーターを要約するための第2の解析を2年間の延長期間の最後に実施する。
【0274】
実施例2:非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を有する補体阻害剤未経験の成人患者におけるラブリズマブ(ALXN1210)の第III相単一アーム多施設試験のデータ
以下は、実施例1において上述されたプロトコールに実質的に従って実施された、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を有する補体阻害剤処置未経験の患者におけるラブリズマブ(ALXN1210 aHUS 311)の単一アーム試験からのデータの概要である。初期評価期間は、26週間であり、最長2年間の延長期間が続いた。試験デザインを図1に示す。
【0275】
本試験の目的は、補体阻害剤による処置未経験のaHUSを有する成人患者における、血小板減少症、溶血、及び腎障害を特徴とする補体媒介性血栓性微小血管症(TMA)を阻害するためのラブリズマブの有効性を評価することであった。主要評価項目は、26週間の初期評価期間中の完全なTMA奏効であった。本試験の主要、副次的及び安全性評価項目を図2にまとめる。組み入れ及び除外基準の概要を図3に示す。
【0276】
登録要件は、(1)少なくとも6名の青年(ALXN1210-aHUS-312に据え置いた)、(2)腎移植前の少なくとも10名の患者(8名を登録)、及び(3)中央検査の結果に基づいて、1日目にTMA検査基準を満たす少なくとも30名の患者(32名を登録)であった。
【0277】
データカットは、全患者の初期評価期間からのデータ、さらに、最長2019年10月までの任意の利用可能な延長期間データを含む。
【0278】
58名(58)の対象を登録して少なくとも1回の投薬(安全性解析対象集団に含んだ)を受け、2名の対象を登録して置き換え(初回投与後に不適格と見なされ、プロトコールにおいて事前に指定された通りに中止した)、56名(56)の対象は、最大の解析対象集団であり、11名(11)の対象は、処置を中止し、9名(9)の対象は、試験を中止した。患者の内訳の概略図を図4に示す。処置順守は、100%であった。ベースライン人口統計を表8に示し、ベースライン疾患特徴を表9に示し、ベースライン実験値を表10に示す。
【0279】
表8:ベースライン人口統計
【表8-1】
【表8-2】
【0280】
表9:ベースライン疾患の特徴
【表9】
【0281】
表10:ベースライン実験値
【表10】
TMA基準:血小板数<150×10/L、LDH≧1.5×正常の上限(ULN)、ヘモグロビン≦正常の下限(LLN)、及び血清クレアチニンレベル≧ULN。
【0282】
TMA奏効定義を表11に示す。奏効は、全ての基準を同時に満たし、かつ、各基準を少なくとも28日間満たした場合に達成した。血小板の輸血の日から輸血3日後を通じで得られた血小板値は、全ての解析から除外した。患者を透析している間に得られた全ての血清クレアチニン値は、全ての解析から除外した。患者がベースラインで透析していた場合には、ベースライン値として用いた最初の有効なクレアチニン値は、透析後6日またはそれ以降の最初の評価であった。患者が26週間全体の初期評価期間中に透析している場合には、ベースラインクレアチニンは算出しなかった。
【0283】
表11:完全なTMA奏効定義
【表11】
【0284】
重要な有効性結果を表12~14に示す。図5は、112日間の血小板正常化、35日間のLDH正常化、及び70日間のクレアチニン改善≧25%を含む、57日目の確認された完全なTMA奏効の結果を示す派生例である。
【0285】
完全なTMA奏効の基準は、全ての基準を同時に満たし、かつ、各基準を少なくとも28日間満たした場合に満たした。完全なTMA奏効の成分、並びに他の副次的な有効性評価項目は、処置に対する一貫した奏効を示す。図9に示すように、患者の53.6%(30/56)は、初期評価期間の間に完全なTMA奏効を達成した。患者の33.9%(19/56)は、部分奏効を有した。
【0286】
血管学的正常化は、血小板数とLDHの同時正常化を含む。各基準は、少なくとも28日間満たした。対象の73.2%(41/56)は、初期評価期間の間に血液学的正常化を達成した(表12を参照されたい)。対象の83.9%(47/56)は、初期評価期間の間に血小板数正常化を達成した(表12、図10図14及び図15を参照されたい)。
【0287】
対象の76.8%(43/56)は、初期評価期間の間にLDH正常化を達成した(表12、図10図16及び図17を参照されたい)。
【0288】
表12:重要な有効性結果:主要な評価期間の間の主要な完全なTMA奏効
【表12】
【0289】
図6に示すように、30名(30)の完全なTMA奏効者が存在した。56名(56)の対象のうちの40名(40)(71.4%)が、ヘモグロビン(HGB)奏効(≧20g/Lの増加)を達成した。30名(30)の完全なTMA奏効者のうち、4名(4)は、ヘモグロビン(HGB)奏効を有さなかった。図10は、26週間の初期評価期間の間のサブグループごとに分類した完全なTMA奏効全体を示す。
【0290】
図7は、完全なTMA奏効までの時間を示す。完全なTMA奏効までの中央値時間は、86日であった。奏効を有さなかった患者は、最終来院日または試験中止日に打ち切った。
【0291】
図11は、血小板数正常化(白三角)、血液学的正常化(+)、血清クレアチニンにおけるベースラインからの25%改善(白四角)及びLDH正常化(X)を含む、経時的な完全なTMA奏効状況(白丸)を示す。
【0292】
7名(7)の非奏効者が存在した。非奏効者のデータを表13に示す。
【0293】
表13:重要な有効性結果:主要な評価期間の間の非奏効者(0/3成分)
【表13-1】
【表13-2】
【0294】
表14に示すように、ベースラインで透析していた患者の58.6%(17/29)は、最後の利用可能な追跡によって止めた。ベースラインで透析を中止していた27名の患者のうち、21名(78%)は、最後の追跡で透析を中止したままであった。
【0295】
表14:重要な有効性結果:経時的透析状況
【表14】
【0296】
薬物動態/薬力学に関して、最初の投薬から初期評価期間を通じて得られた全ての遊離C5結果の99.53%は、終末補体阻害の規定閾値である0.5mg/mL以下であった(図22を参照されたい)。体重に基づく投薬は、予測された通りの最大の定常状態及びトラフ暴露を結果としてもたらし、予期しない薬物動態学的所見はなかった(図8を参照されたい)。
【0297】
重要な安全性結果の概要を表15に示す。安全性について評価した患者には、試験薬の1回以上の投薬を受けた全患者(N=58)が含まれる。これらの患者の2名は、不適格によりプロトコールごとの有効性解析から除外した(STEC-HUSの同定)。
【0298】
表15:重要な安全性結果:重要な安全性の概要
【表15-1】
【表15-2】
(1)全体として、4名の死亡が観察された:1名は、処置前AE(大脳動脈血栓症)による、3名は、非関連処置中に発生したAEによる、そのうち、2名は、敗血症性ショック、1名は、頭蓋内出血)
【0299】
4名死亡した:1名は、処置前有害事象(大脳動脈血栓症)による、3名は、非関連処置中に発生した有害事象(2名敗血症性ショック、1名頭蓋内出血)によるものだった。最小量のラブリズマブ1回投薬を受けた患者における死亡の概要を表16に示す。
【0300】
表16:最小量のラブリズマブ1回投薬を受けた患者における死亡の概要
【表16-1】
【表16-2】
【0301】
表17に示すように、最も頻繁な有害事象は、頭痛(N=21)、下痢(N=18)、嘔吐(N=15)、悪心(N=13)、及び高血圧(N=13)であった。表18に示すように、最も一般的な重篤有害事象は、肺炎(N=3)であった。3名の対象は、有害事象により試験を中止した。髄膜炎菌のケースはなかった。
【0302】
表17:重要な安全性結果:重要な安全性の概要[AEは、少なくとも4名の患者に存在する]
【表17-1】
【表17-2】
【0303】
表18:重要な安全性結果:重要な安全性の概要[SAEは、少なくとも2名の患者に存在する]
【表18-1】
【表18-2】
【0304】
対象の71.4%(40/56)は、初期評価期間の間にヘモグロビン(HGB)奏効を達成した(表19及び図6を参照されたい)。図18は、HGBにおけるベースラインからの観察された及びモデルベースの平均変化及び95%信頼区間を経時的に示す。図19は、観察された平均のHGB及び95%信頼区間を経時的に示す。
【0305】
表19:重要な有効性結果:HGB奏効(HGBのベースラインからの増加≧確認結果付き)
【表19】
【0306】
慢性腎疾患(CKD)ステージは、米国国立腎財団の慢性腎疾患ステージに基づいて分類される。CKDのステージ及び対応する推定糸球体濾過量(eGFR)値は、以下の通りである:ステージ1:eGFR>=90(正常)、ステージ2:eGFR 60~89、ステージ3A:eGFR 45~59、ステージ3B:eGFR 30~44、ステージ4:eGFR 15~29、及びステージ5:eGFR<15(透析:終末期を含む)。ステージ1は、最高のカテゴリーと見なされる。ステージ5は、最悪のカテゴリーと見なされる。eGFRの改善(例えば、>15)は、CKDステージの改善(例えば、より低いCKDステージ)に相当する。
【0307】
図12は、ベースラインからの平均eGFR及び95%信頼区間を示す。図13は、ベースラインから183日目までのCKD/eGFRカテゴリーのシフトを示す。データは、n(%)として提示する。eGFRカテゴリーは、mL/min/1.73mで示す。ベースラインは、処置開始前の最後の利用可能なeGFRに基づいて導出される。下の三角(斜めの黒線で示す)は、ベースラインから183日目までの改善を表し、上の三角(点で示す)は、悪化を表し、白血球は、変化なしを表す。
【0308】
さらに、表20及び図13に示すように、47名(47)の対象のうちの32名(32)は、ベースラインから183日目まで、CKDステージ変化が改善した(6名は、5ステージ、7名は、4ステージ、5名は、3ステージ、4名は、2ステージ、及び10名は、1ステージ)。47名(47)の対象のうちの13名(13)は、同じままであった。13名(13)のうちの2名(2)は、悪化した。
【0309】
表20:重要な安全性結果:副次的なCKDシフト
【表20】
(a)ベースラインでCKDステージと比較した。
(b)改善できなかったため、ベースラインでステージ1のものを除外した。
(c)悪化できなかったため、ベースラインでステージ5のものを除外した。
(d)割合の95%信頼区間(95%CI)は、Clopper-Pearson法を用いた正確な信頼限界に基づいた。
【0310】
表21及び図20は、経時的な疲労の変化を示す。図20のデータは、平均(エラーバー、95%CI)として示す。疲労の急速な改善が観察された、すなわち、8日目までに中央値9ポイント改善。疲労の臨床的に意味のある改善(≧3ポイント)は、183日目に患者の84.1%(37/44)で観察された。増加の中央値は、ベースラインから183日目までに20ポイントであった。
【0311】
表21:重要な安全性結果:FACIT-ベースラインから3ポイント改善
【表21-1】
【表21-2】
【0312】
EQ-5D-3Lは、米国時間トレードオフ値セット(US TTO)に従って採点された指標、並びに視覚的アナログ尺度(VAS)の質問に対する反応を用いて評価する。US TTO>0.94は、完全な健康を示す。ベースラインは、1日目の値からである。図21は、平均EQ-5D-3L及び95%信頼区間を示す。免疫原性に関して、1名の患者には、抗薬物抗体(ADA)に対する処置中に発生した陽性結果が観察され、中和抗体及び薬物動態/薬力学に対する明確な作用は観察されなかった(表22を参照されたい)。
【0313】
表22:重要な安全性結果:安全性の概要:免疫原性抗薬物抗体
【表22】
【0314】
図22は、経時的な血清遊離補体C5濃度を示す(片対数スケール)。破線の水平線は、0.5μg/mLの血清遊離C5濃度を示し、終末補体の完全な阻害は、0.5μg/mL以下の血清遊離C5濃度として定義した。以下の1日目の遊離C5試料は、生物学的に受け入れがたいと見なしたため除外した。PK及び遊離C5試料は同じ採血から収集したため、除外は、対PKデータにより裏付けられた。[N=2、1日目の投薬前試料/N=1、1日目の試料の注入終了]。図22から明らかなように、ラブリズマブは、8週間の投与間隔にわたって、即時で完全かつ持続的な終末補体阻害を示した。
【0315】
最終的に、ラブリズマブ(ALXN1210-aHUS-311)による本試験とエクリズマブ成人試験(C10-004)の間の試験集団は、183日目に同様であった。しかしながら、図23に示すように、ラブリズマブは、以下の副次的な臨床パラメーターに関して、エクリズマブと比較して、改善された読み出しが結果として生じた:a)eGFRカテゴリー/慢性腎疾患(CKD)ステージ及び(b)推定糸球体濾過量(eGFR)増加。具体的には、本試験においてラブリズマブで処置した患者のうち、68%は、少なくとも1つのステージのeGFRカテゴリー/CKDステージの改善を達成し、35±35のeGFRの平均増加があった。これに対し、試験C10-004においてエクリズマブで処置した患者のうち、たった63%が、少なくとも1つのステージのeGFRカテゴリー/CKDステージの改善を達成し、29±24のeGFRの平均増加があった。本試験における「完全なTMA奏効」は、C10-004における「改変された完全なTMA奏効」と等価である。
【0316】
要約すると、ラブリズマブは、8週間の投与間隔にわたって維持された、C5の即時かつ完全な阻害をもたらした。完全なTMA奏効は、患者の54%で達成され、エクリズマブのデータと類似である(試験C10-004において56%)。血小板数の急速な改善があった。さらに、腎機能が実質的に改善された。具体的には、ベースラインで透析している患者の58.6%は、本試験終了時に透析を必要としなかった。さらに、予期しない安全性への懸念は同定されなかった。従って、本試験からの結果は、補体媒介性TMAを有する成人患者において、8週間の投与間隔でのラブリズマブの使用を支持する。
【0317】
配列概要
【表23-1】
【表23-2】
【表23-3】
【表23-4】
【表23-5】
【表23-6】
【表23-7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23