IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光学積層体 図1
  • 特開-光学積層体 図2
  • 特開-光学積層体 図3
  • 特開-光学積層体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120950
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240829BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20240829BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240829BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B17/10
B32B7/12
B32B27/38
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103534
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2021501978の分割
【原出願日】2020-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019036551
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 淳一
(72)【発明者】
【氏名】村重 毅
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敏広
(57)【要約】
【課題】ディスプレイ等の光デバイスに用いた際に、光学的な欠点が生じ難い光学積層体を提供する。
【解決手段】光学積層体101は、厚み150μm以下の可撓性を有するガラスフィルム10と、樹脂フィルム20とを有する。ガラスフィルム10は、第一主面と第二主面を有する。ガラスフィルム10の第一主面上に、接着剤層50を介して樹脂フィルム20が貼り合わせられている。接着剤層50の樹脂フィルム20側の表面からの突出部の傾斜角が10°以上の異物の数が、10個/m以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み150μm以下の可撓性を有するガラスフィルムと、樹脂フィルムとが積層された光学積層体であって、
前記ガラスフィルムは第一主面と第二主面を有し、
前記ガラスフィルムの第一主面上に、接着剤層を介して前記樹脂フィルムが貼り合わせられており、
前記接着剤層の樹脂フィルム側の表面からの突出部の傾斜角が10°以上の異物の数が、10個/m以下である光学積層体。
【請求項2】
前記接着剤層における最大径100μm以上の異物の数が10個/m以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記接着剤層における最大径5μm以上100μm未満の異物の数が1300個/m以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記接着剤層における最大径100μm以上の異物の中で、接着剤層との屈折率差が0.02を超える異物の数が、5個/m以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記接着剤層の樹脂フィルム側の表面からの突出部の高さが7μm以上の異物の数が、10個/m以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記ガラスフィルムの第一主面上に、前記接着剤層を介して透明樹脂フィルムが貼り合わせられており、前記透明樹脂フィルム上に偏光子が貼り合わせられている、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記接着剤層を構成する接着剤が、エポキシ系樹脂を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性のガラスフィルムと樹脂フィルムとが積層された光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置、照明装置、太陽電池等の光デバイスは、軽量、薄型化が進んでいる。これらの要求を満たすために、ガラス材料からプラスチック材料への置き換えも進んでいるが、プラスチック材料は、ガラスのような高い耐衝撃性および光沢性(グレア感)を実現することは困難である。
【0003】
そこで、ガラスの利点を活かしつつ、デバイスの軽量化および薄型化を図るために、可撓性を有する薄ガラスフィルムを用いることが提案されている。特許文献1では、ガラスフィルムと偏光板とを接着剤層を介して貼り合わせた光学積層体が提案されている。可撓性を有するガラスフィルムを用いた光学積層体は、ロールトゥーロールプロセスにも適用可能であるため、デバイスの薄型化および軽量化に加えて、デバイスやその構成部材の生産性向上や低コスト化も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-24177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラスフィルムを用いた光学積層体は、ラボレベルでは実用化されているが、ロールトゥーロールプロセスによる量産品の実用化には至っておらず、量産上の課題は明らかとなっていない。本発明者らが上記特許文献1に記載の光学積層体をロールトゥーロールプロセスにより作製し、表示装置に適用したところ、光学的な欠点が多数存在することが判明した。
【0006】
上記に鑑み、本発明は光学的な欠点の少ない光学積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学積層体は、厚み150μm以下の可撓性を有するガラスフィルムと、ガラスフィルムの第一主面上に接着剤層を介して貼り合わせられた樹脂フィルムとを備える。光学積層体は、樹脂フィルムとして偏光子を含んでいてもよい。
【0008】
光学積層体の一形態では、接着剤層における100μm以上の異物の数が10個/m以下である。接着剤層における5μm以上100μm未満の異物の数は1300個/m以下が好ましい。
【0009】
接着剤層における異物は、接着剤層との屈折率差が小さいことが好ましい。接着剤層における100μm以上の異物の中で、接着剤層との屈折率差が0.02を超える異物の数は、5個/m以下が好ましい。
【0010】
光学積層体の他の形態では、樹脂フィルムの表面において、接着剤層中の異物に起因して形成された凸部の高さおよび/または傾斜角が小さいことが好ましい。樹脂フィルム表面の凸部の高さおよび/または傾斜角を小さくするためには、接着剤層の樹脂フィルム側表面に突出している異物の突出高さおよび突出部の傾斜角が小さいことが好ましい。
【0011】
接着剤層の樹脂フィルム側の表面からの突出部の高さが7μm以上の異物の数は、10個/m以下が好ましい。より好ましくは、接着剤層の樹脂フィルム側の表面の突出部の高さが5μm以上の異物の数は10個/m以下である。
【0012】
接着剤層の樹脂フィルム側の表面からの突出部の傾斜角が10°以上の異物の数は、10個/m以下が好ましい。より好ましくは、接着剤層の樹脂フィルム側の表面の突出部の傾斜角が3°以上の異物の数は10個/m以下である。
【0013】
接着剤層の樹脂フィルム側の表面からの突出部の高さが7μm以上または傾斜角が10°以上の異物の数は、10個/m以下が好ましい。より好ましくは、接着剤層の樹脂フィルム側の表面からの突出部の高さが5μm以上または傾斜角が3°以上の異物の数は10個/m以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学積層体は、ガラスフィルムと樹脂フィルムとの間の異物欠陥が少ない。そのため、光学的な欠点が少なく、光デバイス等の形成に使用した際に、高い歩留まりを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】光学積層体の積層構成例を示す断面図である。
図2】接着剤層中の異物に起因して樹脂フィルムの表面に形成された凸部を示す模式図である。
図3】突出部の傾斜角θの算出方法の説明図である。
図4】Aは接着剤層に含まれる異物の光学顕微鏡写真であり、Bは接着剤層の表面から突出した異物およびその近傍の三次元表面形状である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の光学積層体は、ガラスフィルムの一方の面に、樹脂フィルムを備える。ガラスフィルムと樹脂フィルムとは、接着剤層を介して貼り合わせられている。
【0017】
図1は、光学積層体の積層構成例を示す断面図であり、ガラスフィルム10の一方の面(第一主面)に、接着剤層50を介して透明樹脂フィルム20が貼り合わせられ、透明樹脂フィルム20に偏光子30が貼り合わせられている。透明樹脂フィルム20および偏光子30は、いずれも樹脂フィルムに該当する。図1に示す光学積層体101は、偏光子30上に粘着剤層80を備え、粘着剤層80の表面にはセパレーター91が仮着されている。ガラスフィルム10の他方の面(第二主面)には表面保護フィルム92が仮着されている。
【0018】
<ガラスフィルム>
ガラスフィルム10は、可撓性を有するシート状のガラス材料である。ガラスフィルム10を構成するガラス材料としては、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。ガラス材料のアルカリ金属成分(例えば、NaO、KO、LiO)の含有量は、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0019】
可撓性を持たせるために、ガラスフィルム10の厚みは150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。強度を持たせるために、ガラスフィルムの厚みは10μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましく、50μm以上が特に好ましい。ガラスフィルムの波長550nmにおける光透過率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。ガラスフィルム10の密度は、一般的なガラス材料と同様、2.3~3g/cm程度である。
【0020】
ガラスフィルム10の形成方法は特に限定されず、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400~1600℃の温度で溶融し、シート状に成形した後、冷却することにより、ガラスフィルムが作製される。ガラスをシート状に成形する方法としては、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。
【0021】
ガラスフィルム10は、枚葉でもよく長尺状でもよい。ロールトゥーロールプロセスへの適用が可能であり、デバイスやその構成部材(例えば後述の光学積層体)の生産性を向上する観点から、ガラスフィルムは、長尺状であることが好ましい。ガラスフィルムは可撓性を有しているため、長尺状のガラスフィルムは、ロール状の巻回体として提供される。長尺状のガラスフィルムの長さは、100m以上が好ましく、300m以上がより好ましく、500m以上がさらに好ましい。長尺状のガラスフィルムの幅は、例えば50~3000mmであり、好ましくは100~2000mmである。
【0022】
ガラスフィルム10として、市販の薄ガラスを用いてもよい。市販の薄ガラスとしては、コーニング社製「7059」、「1737」または「EAGLE2000」、旭硝子社製「AN100」、NHテクノグラス社製「NA-35」、日本電気硝子社製「OA-10」、ショット社製「D263」または「AF45」等が挙げられる。
【0023】
<樹脂フィルム>
ガラスフィルム10の一方の主面には、接着剤層50を介して樹脂フィルムが設けられている。図1に示す光学積層体101では、樹脂フィルムとして、透明樹脂フィルム20が設けられ、その上に偏光子30が設けられている。ガラスフィルム10と偏光子30との間に透明樹脂フィルム20を配置することにより、偏光子30の耐久性が向上する傾向がある。また、ガラスフィルム10と偏光子30との間に透明樹脂フィルム20を配置することにより、ガラスフィルム10の表面からの衝撃に対する耐久性が向上する傾向がある。
【0024】
透明樹脂フィルム20の材料は特に限定されない。偏光子への耐久性付与や、光学積層体の耐衝撃性向上等の観点から、透明樹脂フィルムの材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性および水分遮断性等に優れる熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。このような樹脂材料の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
透明樹脂フィルム20の厚みは、5~100μmが好ましく、10~60μmがより好ましく、20~50μmがさらに好ましい。透明樹脂フィルム20は光学等方性フィルムであってもよく、光学異方性フィルムであってもよい。
【0026】
透明樹脂フィルム20の23℃におけるヤング率は、1.5~10GPaが好ましく、1.8~9GPaがより好ましい。透明樹脂フィルムの厚みおよびヤング率が上記範囲内であれば、光学積層体の耐衝撃性が向上する傾向がある。透明樹脂フィルム20の25℃における破壊靭性値は、1.5~10MPa・m1/2が好ましく、2~6MPa・m1/2がより好ましい。破壊靭性値が上記範囲内である透明樹脂フィルムは、十分な粘り強さを有するため、ガラスフィルムを補強して、ガラスフィルムの割れやクラックの抑制に寄与し得る。
【0027】
偏光子30としては、可視光領域のいずれかの波長で吸収二色性を示すフィルムが用いられる。偏光子30の単体透過率は、40%以上が好ましく、41%以上がより好ましく、42%以上がさらに好ましく、43%以上が特に好ましい。偏光子30の偏光度は、99.8%以上が好ましく、99.9%以上がより好ましく、99.95%以上がさらに好ましい。
【0028】
偏光子30としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。また、米国特許5,523,863号等に開示されている二色性物質と液晶性化合物とを含む液晶性組成物を一定方向に配向させたゲスト・ホストタイプの偏光子や、米国特許6,049,428号等に開示されているリオトロピック液晶を一定方向に配向させたE型偏光子等も用いることができる。
【0029】
これらの偏光子の中でも、高い偏光度を有することから、ポリビニルアルコールや、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて所定方向に配向させたポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が好ましく用いられる。例えば、PVA系フィルムに、ヨウ素染色および延伸を施すことにより、PVA系偏光子が得られる。
【0030】
偏光子30の厚みは、例えば、1~80μm程度である。偏光子30の厚みは3μm以上または5μm以上であってもよい。偏光子30として、厚みが25μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型偏光子を用いることにより、薄型の光学積層体が得られる。
【0031】
<接着剤層>
ガラスフィルム10と透明樹脂フィルム20とは接着剤層50を介して貼り合わせられる。接着剤は、熱エネルギーや光エネルギー等により硬化する硬化型の接着剤でもよく、粘着剤(感圧接着剤)でもよい。
【0032】
硬化型の接着剤を構成する材料としては、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。このような樹脂の具体例としては、エポキシ系、シリコーン、アクリル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。接着剤には、重合開始剤、架橋剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等が含まれていてもよい。
【0033】
小さな厚みで高い接着性を実現するために、接着剤層50を構成する接着剤は、熱硬化型または活性エネルギー線硬化型の接着剤であることが好ましく、中でもエポキシ系樹脂を含むものが好ましい。エポキシ系樹脂を含む接着剤を介してガラスフィルムと樹脂フィルムとを貼り合わせることにより、ガラスフィルムが破損し難く、耐衝撃性により優れる光学積層体が得られる。
【0034】
接着剤層50の厚みは、10μm以下が好ましく、0.05~8μmがより好ましく、0.1~7μmがさらに好ましい。ガラスフィルムと透明フィルムとの貼り合わせに用いられる接着剤層50の厚みが上記範囲であれば、ガラスフィルムの破損が抑制され、耐衝撃性に優れる光学積層体が得られる。
【0035】
接着剤の硬化方法は、接着剤の種類に応じて適切に選択され得る。接着剤が光硬化性接着剤である場合には、紫外線照射により硬化が行われる。紫外線の照射条件は、接着剤の種類、接着剤組成物の組成等に応じて適切に選択され得る。積算光量は、例えば100~2000mJ/cmである。接着剤が熱硬化型接着剤である場合には、加熱により硬化が行われる。加熱条件は、接着剤の種類、接着剤組成物の組成等に応じて適切に選択され得る。加熱条件は、例えば、温度が50℃~200℃、加熱時間が30秒~30分程度である。
【0036】
<接着剤層中の異物>
ガラスフィルムと樹脂フィルムとを接着剤層を介して貼り合わせた光学積層体においては、接着剤層中に異物が存在する場合がある。接着剤層中の異物は、光学的な欠点となり得る。例えば、接着剤層中に大きな異物が含まれていると、透過光や反射光が異物により屈折・散乱・反射するため、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画素不良の原因となり得る。また、照明やスマートウィンドウ等の用途においても、目視により視認可能な異物は光学的な欠点となる。また、図2に示すように、接着剤層50中に存在する異物xのサイズが大きい場合は、異物xが接着剤層50の表層から突出した状態となるため、樹脂フィルム20の表面が変形して、凸部29が形成される。このような凸部が形成されると、光の屈折・散乱・反射により、表示装置の視認性の悪化や、照明の明暗ムラが生じる場合がある。
【0037】
第一の観点において、本発明の光学積層体は、接着剤層50に含まれる100μm以上の異物数が10個/m以下である。異物の有無は、光学積層体の目視観察により確認する。目視により確認された異物を光学顕微鏡により観察し、異物の最大径が100μm以上であるものの数を、100μm以上の異物数とする。
【0038】
接着剤層50に混入している100μm以上の異物は、光学的な欠点として視認されるため、100μm以上の異物の数はできる限り少ないことが好ましい。100μm以上の異物数は、7個/m以下が好ましく、5個/m以下がより好ましく、3個/m以下がさらに好ましく、2個/m以下が特に好ましい。100μm以上の異物数は理想的には1個/m未満である。150μm以上の異物数は、理想的には0個/mである。
【0039】
前述のように、接着剤層中に異物が含まれていると、異物と接着剤との界面で、光が屈折・散乱・反射するため、光学的な欠点として視認される。異物と接着剤の屈折率差が小さい場合は、界面での光の屈折・散乱・反射が小さい。そのため、接着剤層中に異物が含まれていても、異物と接着剤の屈折率差が小さければ、光学的な欠点として視認され難い。接着剤層中に含まれる異物と接着剤との屈折率差は0.02以下が好ましい。
【0040】
接着剤層における100μm以上の異物の中で、接着剤層との屈折率差が0.02を超える異物の数は、5個/m以下が好ましく、3個/m以下がより好ましく、2個/m以下がさらに好ましい。100μm以上でかつ接着剤との屈折率差が0.02を超える異物数は理想的には1個/m未満である。屈折率は、波長590nmにおける測定値である。接着剤層中の異物の屈折率は、顕微赤外分光法等により異物を構成する物質を特定し、既知の物質の屈折率を当てはめることにより特定すればよい。
【0041】
接着剤層50中の100μm未満の異物数は特に限定されない。ただし、100μm未満の異物数が多くなると、100μm以上の粗大な異物の数も大きくなる傾向がある。100μm以上の異物数を前述の範囲内とするためには、5μm以上の異物数は、1300個/m以下が好ましく、1000個/m以下がより好ましく、800個/m以下がさらに好ましく、600個/m以下が特に好ましい。また、100μm以下の異物であっても、存在密度が高い場合は、光学的な欠点となり得ることからも、異物数は上記範囲内であることが好ましい。
【0042】
5μm以上100μm未満の異物の中でも、50μmを超え100μm未満の異物は、表示装置等の用途においては、光学的な欠点として視認される場合がある。そのため、接着剤層50中の50μmを超え100μm未満の異物数は、300個/m以下が好ましく、200個/m以下がより好ましく、150個/m以下がさらに好ましい。
【0043】
第二の観点において、本発明の光学積層体は、接着剤層50に含まれる異物に起因して、樹脂フィルムの表面に形成された凸部の数が少ないことが好ましい。図2に示すように、接着剤層50中の異物xが接着剤層50の表層から突出していると、樹脂フィルム20の表面が変形して、凸部29が形成される。樹脂フィルム20の表面に形成された凸部はレンズのように作用して光を屈折させるため、視認不良の原因となりやすく、凸部の高さが大きいほど視認不良が生じやすい。
【0044】
接着剤層50の表面から突出している異物の高さHが大きいほど、樹脂フィルム20の表面の凸部の高さも大きくなる傾向があり、特に、接着剤層の表面から突出している異物の突出高さHが7μm以上である場合に、視認不良が生じやすい。そのため、接着剤層の表面からの突出高さHが7μm以上の異物xの数は、10個/m以下が好ましい。突出高さHが7μm以上の異物の数は、7個/m以下がより好ましく、5個/m以下がさらに好ましく、3個/m以下が特に好ましく、2個/m以下が最も好ましい。突出高さHが7μm以上の異物の数は、理想的には1個/m未満である。
【0045】
液晶表示装置や有機EL表示装置等のディスプレイにおいては、より小さな凸部による光の屈折も光学的な欠点として視認される傾向がある。そのため、光学積層体がディスプレイ用途に用いられる場合には、接着剤層50の表面からの突出高さHが5μm以上の異物の数が、10個/m以下であることが好ましく、7個/m以下がより好ましく、5個/m以下がさらに好ましく、3個/m以下が特に好ましく、2個/m以下が最も好ましい。突出高さHが5μm以上の異物の数は、理想的には1個/m未満である。
【0046】
接着剤層50の表面からの異物の突出高さHは、垂直走査型低コヒーレンス干渉法(ISO25178)により測定した接着剤層の三次元表面形状に基づいて求められる(図4B参照)。接着剤層の三次元表面形状の測定においては、水への浸漬あるいは加温等により、接着剤層50と樹脂フィルム20の界面で剥離して樹脂フィルム20を除去した試料を用いる。
【0047】
接着剤層50から突出した異物の形状は、突出部の傾斜角に基づいて評価することもできる。接着剤層50の表面から突出した異物の傾斜角θが大きいほど、接着剤層上に設けられた樹脂フィルム20の表面に形成される凸部29の傾斜角も大きくなり、光学的な欠点として視認されやすい。特に、突出異物の傾斜角θが10°以上である場合に、視認不良が生じやすい。そのため、接着剤層50表面からの突出部の傾斜角θが10°以上の異物の数は、10個/m以下が好ましい。傾斜角θが10°以上の異物の数は、7個/m以下がより好ましく、5個/m以下がさらに好ましく、3個/m以下が特に好ましく、2個/m以下が最も好ましい。突出部の傾斜角θが10°以上の異物の数は、理想的には1個/m未満である。
【0048】
液晶表示装置や有機EL表示装置等のディスプレイにおいては、より傾斜角の小さい凸部による光の屈折も視認される傾向がある。そのため、光学積層体がディスプレイ用途に用いられる場合には、接着剤層50の表面からの突出部の傾斜角が3°以上の異物の数が、10個/m以下であることが好ましく、7個/m以下がより好ましく、5個/m以下がさらに好ましく、3個/m以下が特に好ましく、2個/m以下が最も好ましい。突出部の傾斜角θが3°以上の異物の数は、理想的には1個/m未満である。
【0049】
異物の突出部の傾斜角θは、図3に示すように、突出部の断面形状を、底辺の長さがφ、高さHの二等辺三角形に近似することにより算出される。突出部の傾斜角θ(二等辺三角形の底角)は、arctan(2H/φ)で表される。底辺の長さφは、異物の大きさ(最大径)に等しく、光学積層体の光学顕微鏡観察により求められる。
【0050】
接着剤層50中の異物に起因して樹脂フィルム20の表面に凸部が形成される場合、凸部に起因する光学的な欠点の発生を抑制する観点からは、凸部形成の原因となる異物xの突出高さHが小さく、かつ突出部の傾斜角θが小さいことが好ましい。接着剤層50中の異物xの突出部は、高さHが7μm以下、かつ傾斜角θが10°以下であることが好ましい。そのため、接着剤層50の表面からの突出部の高さHが7μm以上または傾斜角θが10°以上のいずれか一方または両方を満たす異物の数は、10個/m以下が好ましく、7個/m以下がより好ましく、5個/m以下がさらに好ましく、3個/m以下が特に好ましく、2個/m以下が最も好ましい。突出部の高さHが7μm以上または傾斜角θが10°以上のいずれか一方または両方を満たす異物の数は、理想的には1個/m未満である。
【0051】
液晶表示装置や有機EL表示装置等のディスプレイにおいては、高さが小さい凸部や、傾斜角の小さい凸部による光の屈折も視認される傾向がある。そのため、光学積層体がディスプレイ用途に用いられる場合には、粘着剤層50の表面からの突出部の高さHが5μm以上または傾斜角θが3°以上のいずれか一方または両方を満たす異物の数は、10個/m以下が好ましく、7個/m以下がより好ましく、5個/m以下がさらに好ましく、3個/m以下が特に好ましく、2個/m以下が最も好ましい。突出部の高さHが5μm以上または傾斜角θが3°以上のいずれか一方または両方を満たす異物の数は、理想的には1個/m未満である。
【0052】
<接着剤層中の異物数の制御>
ガラスフィルム上に接着剤層を介して樹脂フィルムが貼り合わせられた光学積層体において、接着剤層中の異物の大半は、ガラスフィルム表面の付着異物に由来するものである。ガラスフィルムの製造は、表示装置等の光デバイスの製造や、光デバイス用部材の製造に比べて清浄度の低い環境で行われる場合が多い。そのため、製造直後のガラスフィルムには多数の異物が付着している。接着剤層中の異物数を低減するためには、クリーン環境でガラスフィルムの洗浄を行い、洗浄後のガラスフィルムの表面に、樹脂フィルムを積層することが好ましい。
【0053】
ガラスフィルムの洗浄方法は、付着異物数を上記範囲に低減可能であれば特に限定されず、乾式法および湿式法のいずれでもよい。乾式法としては、エアの吹き付け、UVやオゾン等の照射による異物の分解、粘着ロールや粘着シートによる異物の除去、ブラシ洗浄、ブラスト洗浄等が挙げられる。ウェット洗浄としては、純水、酸もしくはアルカリ、または有機溶媒等の洗浄液による洗浄、洗浄液等の液体をガラスフィルムの表面に付着させた状態、またはガラスフィルムを液体に浸漬した状態でのブラシもしくはスポンジによる洗浄、超音波洗浄、二流体洗浄等が挙げられる。
【0054】
ガラスは表面自由エネルギーが高く、付着異物の密着性が高いため、液体との接触のみでは異物が十分に除去できない場合がある。また、ガラスフィルムの製造環境に起因する付着異物には、多種多様な物質が含まれているため、有機溶媒等により異物を溶解させる方法でも異物を十分に除去できない場合がある。表示装置用のガラス板の洗浄においては、強アルカリによりガラスの表層を溶解することにより、付着異物を除去する方法が知られている。この方法は、異物の除去効果が大きいものの、ガラスフィルムに適用した場合は、ガラスフィルムの厚みの減少による強度低下の原因となり得る。
【0055】
ガラスフィルムはプラスチックフィルムに比べて硬度が高く、傷が生じ難いため、ガラスフィルムの洗浄には物理的な衝撃力により付着異物を除去する方法を適用できる。中でも、付着異物を適度に除去可能であることから、ドライ洗浄としてはブラシ洗浄またはブラスト洗浄が好ましく、ウェット洗浄としては二流体洗浄が好ましい。
【0056】
ブラシ洗浄には、回転ブラシを備える接触式ウェブクリーナー等が用いられる。ガラスフィルムをロールトゥーロール搬送しながら連続的に表面洗浄を行う場合は、洗浄品質を一定に保つ観点から、吸引方式等によりブラシに付着した異物を除去するための機構を備えていることが好ましい。
【0057】
ブラスト洗浄としてはドライアイスブラストが好ましい。ドライアイスブラストでは、ガラスフィルムに高速でドライアイスペレットを吹き付ける。ガラスフィルムと付着異物との間にドライアイスが入り込んで急激に気化すると、体積が急激に膨張し、この体積変化によって、付着した異物を剥離除去できる。また、ドライアイスは気化するため、ブラスト粒が異物として残存することはない。
【0058】
二流体洗浄は、気体と液体を混合した混合流体を、二流体ノズルからガラスフィルムの表面に供給する処理である。混合流体中の液滴がガラスフィルムの表面に衝突し、その衝撃によってガラスフィルムの表面に付着した異物を除去できる。二流体洗浄の液体および気体としては、一般に、水および空気が用いられる。気体(キャリアガス)として、窒素、酸素、二酸化炭素、水素、オゾン、アルゴン等を用いてもよい。二流体ノズルのキャリアガス圧は0.1~0.6MPa程度、液圧は0.05~0.5MPa程度が好ましい。
【0059】
洗浄は、ガラスフィルムをロールトゥーロールで搬送しながら連続的に行うことが好ましい。洗浄は、ガラスフィルムの片面のみに対して実施してもよく、ガラスフィルムの両面を洗浄してもよい。片面のみを洗浄する場合は、樹脂フィルムを積層する面(第一主面)を洗浄すればよい。ガラスフィルムの両面を洗浄する場合、一方の面の洗浄方法と他方の面の洗浄方法は、同一でも異なっていてもよい。
【0060】
ロールトゥーロールにより洗浄を行う場合、洗浄はオフラインで行ってもよく、インラインで行ってもよい。インライン洗浄では、ガラスフィルムを洗浄後、ロール状に巻き取るまでの間に、洗浄後のガラスフィルムの表面に、接着剤層を介して樹脂フィルムが積層される。オフライン洗浄では、洗浄後のガラスフィルムを一旦ロール状に巻き取る。洗浄後のガラスフィルムをロール状に巻き取る前に、洗浄面への異物の再付着防止等を目的として、保護フィルムを仮着してもよい。
【0061】
<ガラスフィルムと樹脂フィルムの積層>
洗浄後のガラスフィルム10上に、接着剤層50を介して樹脂フィルムを積層することにより、光学積層体が得られる。ガラスフィルム10が長尺状である場合、ロールトゥーロールによりガラスフィルム搬送しながら、積層を行うことが好ましい。
【0062】
ガラスフィルム10の第一主面上に複数の樹脂フィルムが設けられる場合、光学積層体を形成する際の積層順序は特に限定されない。例えば、ガラスフィルム10上に、透明樹脂フィルム20および偏光子30等を順に積層してもよく、予め複数の樹脂フィルムを積層した積層フィルム(例えば、透明樹脂フィルム20と偏光子30との積層体)とガラスフィルム10とを積層してもよい。透明樹脂フィルム20と偏光子30とは、接着剤層(不図示)を介して積層することが好ましい。透明樹脂フィルムと偏光子30との間に設けられる接着剤として、接着剤層50を構成する接着剤として先に例示した接着剤を用いてもよい。
【0063】
<付加層>
光学積層体は、ガラスフィルム10、接着剤層50および樹脂フィルム20,30以外の付加的な層を備えていてもよい。例えば、光学積層体101は、デバイスを構成する他の部材と貼り合わせるための粘着剤層80を備えていてもよい。例えば、粘着剤層80を介して、光学積層体101を有機ELセルや液晶セル等の画像表示セルと貼り合わせることができる。粘着剤層80を構成する粘着剤は特に制限されず、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤等の、透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性を示し、耐候性や耐熱性等に優れる粘着剤が好ましい。
【0064】
粘着剤層80は2層以上を積層したものでもよい。粘着剤層80の厚みは、例えば1~300μm程度であり、5~50μmが好ましく、10~30μmがより好ましい。
【0065】
粘着剤層80の表面には、セパレーター91が仮着されていることが好ましい。セパレーター91は、光学積層体を他の部材と貼り合わせるまでの間、粘着剤層80の表面を保護する。セパレーター91の構成材料としては、アクリル、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等のプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0066】
セパレーター91の厚みは、通常5~200μm程度であり、10~60μmが好ましく、15~40μmがより好ましく、20~30μmがさらに好ましい。セパレーター91の表面には、離型処理が施されていることが好ましい。離型剤としては、シリコーン系材料、フッ素系材料、長鎖アルキル系材料、脂肪酸アミド系材料等が挙げられる。粘着剤層80の形成用基材として用いたフィルムを、そのままセパレーターとしてもよい。
【0067】
図1に示すように、ガラスフィルム10の第二主面には、表面保護フィルム92が仮着されていてもよい。表面保護フィルム92は、光学積層体が使用に供されるまでの間、ガラスフィルム等を保護する。ガラスフィルム10の表面に表面保護フィルム92が仮着されていることにより、例えば、先端の尖った落下物に対してもキズ、穴等の発生を防止することができる。
【0068】
表面保護フィルム92の材料としては、上述のセパレーター91と同様のプラスチック材料が好ましく用いられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が挙げられる。表面保護フィルム92は、ガラスフィルムの付設面に粘着層を有していることが好ましい。表面保護フィルム92として、フィルムを構成する樹脂層と粘着層とを共押出により積層した自己粘着フィルムを用いてもよい。表面保護フィルム92の厚みは、例えば20μm~1000μm程度であり、30~500μmが好ましく、40~200μmがより好ましく、50~150μmがさらに好ましい。
【0069】
図1では、ガラスフィルム10の第一主面に、樹脂フィルムとして透明樹脂フィルム20および偏光子30が積層された光学積層体101が示されているが、樹脂フィルムは1層のみでもよい。例えば、ガラスフィルムの第一主面に、接着剤層を介して偏光子が貼り合わせられていてもよい。また、ガラスフィルムの第一主面に透明樹脂フィルムのみが積層されていてもよい。
【0070】
光学積層体は、偏光子30と粘着剤層80との間に、他の樹脂フィルム等を備えていてもよい。偏光子30と粘着剤層80との間に透明フィルムが設けられることにより、偏光子の耐久性をさらに向上できる。偏光子30と粘着剤層80との間に配置される透明フィルムの材料、厚み、光学特性等は、偏光子30とガラスフィルム10との間に配置される透明樹脂フィルム20と同様であってもよい。透明フィルムは、光学等方性フィルムでもよく、光学異方性フィルムでもよい。偏光子30と粘着剤層80との間に光学異方性フィルムを用いることにより、様々な機能を発現できる。
【0071】
例えば、有機ELセルの表面に光学積層体が貼り合わせられる場合は、透明フィルムと偏光子30とが円偏光板を構成することにより、有機EL素子のセルの金属電極等による外光の反射を遮蔽して、表示の視認性を向上できる。透明フィルムとして、斜め延伸フィルムを用いてもよい。
【0072】
液晶セルの表面に光学積層体が貼り合わせられる場合は、光学異方性フィルムにより各種の光学補償を行い得る。光学補償に用いられる光学異方性フィルムの種類は、液晶セルの方式等に応じて適宜に選択すればよい。
【0073】
光学積層体は、上記以外の各種の機能性付与層を有していてもよい。機能性付与層としては、例えば、反射防止層、防汚層、光拡散層、易接着層、帯電防止層等が挙げられる。
【0074】
ガラスフィルムには加飾印刷が施されていてもよい。加飾印刷の印刷厚みは、例えば5~100μm程度である。加飾印刷は、ガラスフィルムのいずれの面に施されていてもよい。また、ガラスフィルム以外の光学積層体の構成部材に加飾印刷が施されてもよい。例えば、偏光子30や透明樹脂フィルム20に加飾印刷を施してもよい。加飾印刷部が設けられた透明フィルム(加飾印刷フィルム)を、光学積層体の構成部材とロールトゥーロール方式で積層することにより、加飾印刷部を有する光学積層体を得ることもできる。
【0075】
ガラスフィルム10の第一主面に樹脂フィルムが積層された光学積層体は、ガラスフィルムを備えるため、硬度が高い。また、光学積層体は、ガラスフィルム10の第一主面に樹脂フィルムが積層されているため、ガラスフィルム10の破損が防止され、耐衝撃性に優れる。これは、ガラスフィルムの第二主面に与えられた衝撃を、第一主面側に有効に逃がすことができるためと考えられる。特に、ガラスフィルム10の第一主面上に、透明樹脂フィルム20を介して偏光子30が設けられている場合に、耐衝撃性が顕著に向上する。ガラスフィルムが破損し難いため、ガラスフィルムの厚みを小さくすることが可能であり、これに伴って光学積層体を軽量化できる。
【0076】
さらに、ガラス材料は、水分やガスの遮蔽性が高く、有機溶媒、酸、アルカリ等に対する耐久性が高く、かつ耐熱性に優れるため、ガラスフィルム10が表面に配置されることにより、樹脂フィルム20のみを有する場合に比べて、偏光子30に対する保護性能が向上し、偏光子の劣化を防止できる。
【0077】
本発明の光学積層体は、枚葉でもよく長尺状でもよい。ロールトゥーロールプロセスへの適用が可能であり、デバイスの生産性を向上する観点から、光学積層体は長尺状であることが好ましい。ガラスフィルムが可撓性を有しているため、光学積層体も可撓性を有している。そのため、長尺状の光学積層体は、ロール状の巻回体として提供される。長尺状の光学積層体の長さは、100m以上が好ましく、300m以上がより好ましく、500m以上がさらに好ましい。長尺状の光学積層体の幅は、例えば50~3000mmであり、好ましくは100~2000mmである。
【0078】
本発明の光学積層体は、半導体素子等の基板材料や、表示装置、照明装置、スマートウィンドウ、太陽電池等の光デバイス等に適用できる。光デバイスにおいて、ガラスフィルムは、素子等を形成するための基板材料として利用してもよく、デバイスの表面を保護するためのカバーガラスとして利用することもできる。
【0079】
ガラス材料は表面光沢を有するため、ガラスフィルムが画像表示装置等のデバイスの表面に配置されることにより、美しいグレア感が得られる。また、ガラス材料は光学等方性であるため、反射光の色付きが生じ難く、高い視認性を実現できる。さらに、ガラスフィルムは表面硬度が高く、耐衝撃性に優れる。そのため、光学積層体を、ガラスフィルムが視認側表面となるように配置した画像表示装置では、ガラスフィルムがフロントウインドウとしての機能を有するため、別途ウインドウ層を設ける必要がない。したがって、画像表示装置の製造工程を簡略化できるとともに、構成部材数の低減により、デバイスの薄型化および軽量化が可能となる。
【0080】
また、本発明においては、ガラスフィルムと樹脂フィルムとの間に設けられる接着剤層中の異物数が少なく、異物に起因する樹脂フィルム表面の変形(凸部の形成)が抑制されているため、光デバイスにおける光学的な欠点が生じ難い。そのため、本発明の光学積層体を用いることにより、視認性に優れる光デバイスが得られる。また、接着剤層中の粗大な異物や、異物に起因する樹脂フィルム表面の凸部の数密度が小さいため、デバイスのサイズ(例えばディスプレイの画面サイズ)に加工した際に、異物に起因する欠点を含む製品を不良品として排除しても、十分な歩留まりを確保できる。
【実施例0081】
以下に、具体例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。
【0082】
[評価1:ガラスフィルムの洗浄による付着異物数の低減効果]
<比較例1>
厚み100μmのガラスフィルムのロール状巻回体から、100mm×100mmの試料を切り出して、表面を光学顕微鏡により観察し、観察範囲における5μm以上の付着異物の総数をカウントした。また、付着異物の中で大きさが100μm以上のものの数をカウントした。この作業を100枚の試料(合計面積:1m)について行い、異物数の合計を求めた。
【0083】
<実施例1~3および比較例2,3>
ガラスフィルムのロール状巻回体からガラスフィルムを巻き出し、搬送速度5m/分で一方向に搬送しながら、ガラスフィルム表面の洗浄を行った。洗浄後のガラスフィルムは一旦ロール状に巻き取った後、上記の比較例1と同様に、光学顕微鏡観察により、1mあたりの異物数を求めた。
【0084】
<実施例1:ブラシ洗浄>
回転ブラシとバキュームクリーナーを備えるウェブクリーナー(伸興製「TURBO-SS」)によりガラスフィルム表面の洗浄を行った。運転条件は以下の通りであった。
ブラシ:ナイロン製、長さ20mm、太さ75μm
ブラシ回転数:500rpm(ガラスフィルム搬送方向に対して逆回転)
ブラシとガラスフィルムの距離:1mm
ブロア運転条件:-3kPa
【0085】
<実施例2:ドライアイスブラスト洗浄>
幅方向(搬送方向と直交する方向)に複数のノズルを備えるドライアイスブラスト装置(エア・ウォーター製「QuickSnow」)により、ガラスフィルム表面の洗浄を行った。運転条件は以下の通りであった。
ドライアイス粒径:100μmφ
エア圧力:0.4MPa
ノズルとガラスフィルムの距離:20cm
【0086】
<実施例3:二流体洗浄>
幅方向に複数の二流体ノズル(スプレーイングシステムジャパン製)を備える二流体洗浄装置により、ガラスフィルム表面の洗浄を行った。運転条件は以下の通りであった。
液体:水
気体:圧縮空気
水圧:0.2MPa
エア圧:0.2MPa
ノズルとガラスフィルムの距離:1cm
【0087】
<比較例2:超音波洗浄>
超音波洗浄装置(ブランソン製「8510J-MTH」)を用いて、常温の水中で10分間洗浄を行った。
【0088】
<比較例3:粘着ロール>
粘着ロール(明和ゴム工業製「ベタロン」)をラミ圧0.2MPaでガラスフィルムの表面に押し当て、ガラスフィルム表面の洗浄を行った。
【0089】
<製品歩留まりの評価>
上記のガラスフィルムに樹脂フィルムを貼り合わせた光学積層体を画面サイズ15インチ(332mm×187mm)のディスプレイに使用する場合に、面内に100μm以上の異物が存在せず、正常品として利用できる割合(=製品歩留まり)を、1mあたりの異物数に基づいて算出した。実施例1~3および比較例1~3のガラスフィルムの異物数、ならびに歩留まりの計算結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示すように、未洗浄のガラスフィルム(比較例1)には、100μm以上の異物が多数付着しており、15インチサイズにおいて、100μm以上の異物が1個以上存在するため、製品歩留まりの計算値は0となる。超音波洗浄を行った比較例2および粘着ロールにより付着異物の除去を行った比較例3では、比較例1に比べると付着異物数は減少していた。しかし、異物の除去効果が十分ではなく、15インチサイズの製品における歩留まりの計算値は参考例と同様0であった。実施例1~3では、100μm以上の付着異物が適切に除去されているため、100μm以上の異物を含むものを不良品とした場合でも、高い歩留まりを確保できることが分かる。
【0092】
[評価2:接着剤層表面の異物の形状]
未洗浄のガラスフィルム上に、エポキシ系の接着剤を介して、厚み40μmのアクリル系透明フィルムを貼り合わせて光学積層体を得た。得られた光学積層体の目視観察にて異物の存在が確認された観察箇所1~5について、以下の3つの基準で評価した。
〇:ディスプレイ用途にて使用可能(目視では欠点として認識できない)
△:欠点が目視にて確認できるが、照明用としては使用可能
×:ディスプレイ用、照明用のいずれにおいても使用不可
【0093】
光学積層体を水中に浸漬して加温し、接着剤層とアクリル系透明フィルムとの界面で剥離して、評価用試料を作製した。上記の観察箇所1~5のそれぞれについて、異物の大きさφ、および突出高さHを求め、φおよびHから傾斜角θを算出した。突出部の高さHは、コヒーレンス走査型干渉計(Zygo NewView 7300)により、対物レンズ:10倍、ズームレンズ20倍、測定範囲:0.35mm×0.26mmの条件で測定した接着剤層表面の三次元表面形状から算出した。解析に際しては、装置付属のプログラムにより、下記の条件で補正を行った。
Removed: None
Filter: High Pass
Filter Type: Gauss Spline
Low wavelength: 300μm
Remove spikes: on
Spike Height (xRMS): 2.5
【0094】
観察箇所1~5の異物のサイズ、突出部の高さHおよび角度θ、ならびに目視での評価結果を表2に示す。なお、観察箇所5では、異物が接着剤層中に舞設しており、突出部が確認されなかった。
【0095】
【表2】
【0096】
観察箇所1では、異物のサイズφは観察箇所2~4よりも小さかったが、目視評価では、光学的な欠点として目立っていた。一方、観察箇所5では、異物の存在が確認されたが、接着剤の表面から異物が突出していなかったため、光学積層体の目視観察においては光学的な欠点としては認識されなかった。
【0097】
表2に示す結果から、ガラスフィルムの表面に設けられた接着剤層中に存在する異物のサイズが小さい場合でも、接着剤層表面からの突出高さが大きく突出部の傾斜角度が大きい場合は、光学的な欠点として認識されやすいことが分かる。逆に、異物が存在する場合でも、接着剤層表面からの突出が小さい(突出がない)場合は光学的な欠点として認識され難いことが分かる。
【符号の説明】
【0098】
10 ガラスフィルム
20 樹脂フィルム
30 偏光子
50 接着剤層
80 粘着剤層
91 セパレーター
92 表面保護フィルム
101 光学積層体
図1
図2
図3
図4