(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120954
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】断熱反応ゾーン内におけるハロオレフィンの生成
(51)【国際特許分類】
C07C 17/25 20060101AFI20240829BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20240829BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C07C17/25
C07C21/18
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024104084
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2021502849の分割
【原出願日】2019-07-18
(31)【優先権主張番号】62/699,968
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カール アール.クラウス
(72)【発明者】
【氏名】コンセッタ ラ マルカ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジョセフ ナッパ
(72)【発明者】
【氏名】シュエフイ スン
(57)【要約】
【課題】脱ハロゲン化水素反応の特性は、プロセス設計及び反応ゾーン内に対応する必要がある。
【解決手段】ヒドロハロアルカンの脱ハロゲン化水素による、少なくとも1つのハロオレフィンの生成方法。脱ハロゲン化水素プロセスは、液相又は気相中で、触媒の存在下又は不在下で、断熱反応ゾーン内でのヒドロハロアルカンのハロオレフィン(ハロアルケン)への変換を行うのに十分な温度で実施される。具体的には、断熱反応ゾーンは、少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱反応ゾーン内でのヒドロハロアルカンの脱ハロゲン化水素のためのプロセスであって、(a)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、(b)ヒドロハロアルカンを含む出発材料を、前記直列接続された反応器のうちの第1の断熱反応器内に導入して、反応生成物を生成する工程と、(c)前記反応生成物を、先行する反応器から熱交換器に通過させて、中間生成物を生成する工程と、(d)前記中間生成物を、前記熱交換器から後続する断熱反応器に導入して、反応生成物を生成する工程と、(e)任意選択的に、工程(c)及び(d)を、順番に1回以上繰り返す工程と、(f)ハロオレフィンを含む最終生成物を回収する工程と、を含み、前記最終生成物が、最終断熱反応器内で生成された前記反応生成物であり、前記最終断熱反応器が、前記最終断熱反応器から下流の前記断熱反応ゾーン内に後続する断熱反応器を有しない後続する断熱反応器である、プロセス。
【請求項2】
前記ヒドロハロアルカンが、式Y1Y2CH-CXY3Y4を有し、式中、Xは、F、Cl、Br、又はIであり、Yiの各々は、独立して、H、F、Cl、Br、又はI、アルキル基、又はハロアルキル基であり、式中、iは、1、2、3、及び4であり、ハロは、F、Cl、Br、又はIであるが、ただし、少なくとも1つのYiは、Hではないか、又は少なくとも1つのYiは、ハロアルキル基である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ヒドロハロアルカンが、ヒドロハロエタンである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ヒドロハロアルカンが、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(CF2ClCH3)である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ヒドロハロアルカンが、ヒドロハロプロパンであり、前記ハロオレフィンが、ハロプロペンである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ヒドロハロプロパンが、CF3CFClCH3、CF3CHFCH2Cl、CF3CHClCH2F、CF3CH2CHFCl、CF3CHFCH2Cl、CF3CHClCH3、CF3CHFCH2F、CF3CH2CF2H、CF3CF2CH3、CF3CFClCH2F、CF3CHFCHFCl、CF3CHClCHF2、CF3CH2CF2Cl、CF3CHClCH2Cl、CCl3CH2CHCl2、CF3CH2CH2Cl、CF3CHClCH3、CCl3CHClCH2Cl、CCl3CH2CH2Cl、CH2ClCCl2CHCl2、及びこれらの2つ以上の混合物から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ヒドロハロプロパンが、ヒドロクロロフルオロプロパンを含み、前記ハロプロペンが、ヒドロフルオロプロペンを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ヒドロハロプロパンが、CF3CFClCH3であり、前記ハロプロペンが、CF3CF=CH2である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ヒドロハロプロパンが、CF3CHFCH2Clであり、前記ハロプロペンが、CF3CF=CH2である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ヒドロハロプロパンが、CF3CFClCH3であり、前記ハロプロペンが、E-及び/又はZ-CF3CH=CHFを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ヒドロハロプロパンが、CF3CHFCH2Clであり、前記ハロプロペンが、E-及び/又はZ-CF3CH=CHFを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ヒドロハロプロパンが、CF3CFClCH2Fであり、前記ハロプロペンが、E-及び/又はZ-CF3CF=CHFを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ヒドロハロプロパンが、CF3CHFCHFClであり、前記ハロプロペンが、E-及び/又はZ-CF3CF=CHFを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ヒドロハロプロパンが、CF3CHClCHF2であり、前記ハロプロペンが、CF3CH=CF2である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ヒドロハロプロパンが、CF3CHFCHFClであり、前記ハロプロペンが、CF3CH=CF2である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項16】
前記断熱反応ゾーンが、第1の断熱反応器及び最終断熱反応器からなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記断熱反応ゾーンが、少なくとも3つの断熱反応器を備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
少なくとも1つの断熱反応器が、熱分解反応器として動作する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記プロセスが、工程(b)の前に、ヒドロハロアルカンを含む出発材料を、前記第1の断熱反応器の上流の前記断熱反応ゾーン内の熱交換器内に導入して、加熱された出発物質を生成する工程(a’)を更に含み、工程(a’)からの前記加熱された出発物質が、工程(b)での前記第1の断熱反応器に導入される前記出発物質である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
不活性希釈ガスが、前記ヒドロクロロフルオロプロパン用のキャリアガスとして使用される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項21】
前記プロセスが、脱塩化水素プロセスであり、少なくとも1つの断熱反応器が、熱分解反応器として動作し、前記熱分解反応器が、約300℃~約700℃の温度で動作する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項22】
少なくとも1つの断熱反応器が、断熱触媒反応器として動作し、前記断熱触媒反応器が、触媒で充填される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
前記触媒が、金属ハロゲン化物、金属酸化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(若しくはゼロ酸化状態)金属若しくは金属合金、又はバルク若しくは担持形態の炭素から選択される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記触媒が、金属ハロゲン化物、又は金属酸化物、又は金属オキシハライド触媒から選択される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記触媒が、アルミナ、フッ化アルミナ、フッ化アルミニウム、アルミニウムクロロフルオライド;アルミナ、フッ化アルミナ、フッ化アルミニウム、又はアルミニウムクロロフルオライド上に担持された金属化合物;酸化クロム(Cr2O3)、フッ化クロム酸化物、及び立方晶三フッ化クロム;マグネシウム、亜鉛、及びマグネシウムと亜鉛及び/又はアルミニウムとの混合物の酸化物、フッ化物、及びオキシフッ化物;酸化ランタン、及びフッ化ランタン酸化物、又はこれらの混合物から選択される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項26】
前記触媒が、中性金属、金属合金、又はこれらの混合物から選択される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項27】
前記触媒が、Pd、Pt、Rh、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、及び合金又は混合物としてのこれらの組み合わせを含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項28】
前記触媒が、担持されている、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記触媒が、担持されていない、請求項27に記載のプロセス。
【請求項30】
前記触媒が、ステンレス鋼、オーステナイトニッケル系合金などから選択される合金である、請求項27に記載のプロセス。
【請求項31】
前記触媒が、酸洗浄炭素、活性炭、及び三次元マトリックス炭素質材料から選択される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項32】
前記触媒反応器が、約150℃~約550℃の温度で動作し、好適な反応圧力が、約0~約150psigの範囲であり得る、請求項22に記載のプロセス。
【請求項33】
前記最終生成物が、CF3CF=CH2、E-CF3CH=CHF、Z-CF3CH=CHF、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項34】
前記出発材料が、CCl3CH2CH2Cl、CF3CH2CH2Cl、CF3CFClCH3、CF3CHFCH2Cl、CF3CHClCH2F、CF3CH2CHFCl、CF3CHFCH2F、CF3CH2CF2H、CF3CF2CH3、又はこれらの2つ以上の混合物から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項35】
前記出発物質が、CF3CFClCH3を含み、前記最終生成物が、CF3CF=CH2を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項36】
前記出発物質が、CF3CH2CHF2、CF3CH2CHFCl、CF3CHClCH2F、又はこれらの2つ以上の混合物を含み、前記最終生成物が、CF3CH=CHFを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項37】
1234yfの調製のためのプロセスであって、以下の工程:(v)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、(w)1,1,2,3-テトラクロロプロペン(1230xa)を含む組成物を提供する工程と、(x)1230xaを含む前記組成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、1233xfを含む生成物を生成する工程と、(y)1233xfを含む生成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、液相又は気相反応器内で、244bbを含む生成物を生成する工程と、(z)244bbを含む生成物を、脱塩化水素して、前記断熱反応ゾーン内で、1234yfを含む生成物を生成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項38】
1234yfの調製のためのプロセスであって、以下の工程:(v’)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、(w’)243dbを含む組成物を提供する工程と、(x’)243dbを含む前記組成物を、脱ハロゲン化水素剤又は脱ハロゲン化水素触媒と接触させて、1233xfを含む生成物を生成する工程と、(y’)1233xfを含む生成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、液相又は気相反応器内で、244bbを含む生成物を生成する工程と、(z’)244bbを含む生成物を、脱塩化水素して、前記断熱反応ゾーン内で、1234yfを含む生成物を生成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項39】
工程(v’)の前に、(t’)1243zfを含む生成物を生成する条件下で、250fbを、HF及び触媒と接触させる工程と、(u’)1243zfを含む生成物を塩素化して、触媒の存在下又は不在下で、1243zfを塩素と接触させることによって、243dbを含む生成物を生成する工程と、を更に含む、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
1234yfの調製のためのプロセスであって、以下の工程:(v’’)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、(w’’)243dbを含む組成物を提供する工程と、(x’’)243dbを含む前記組成物を、脱ハロゲン化水素剤又は脱ハロゲン化水素触媒と接触させて、前記断熱反応ゾーン内で、1233xfを含む生成物を生成する工程と、(y’’)1233xfを含む生成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、液相又は気相反応器内で、244bbを含む生成物を生成する工程と、(z’’)244bbを含む生成物を、脱塩化水素して、1234yfを含む生成物を生成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項41】
工程(v’’)の前に、(t’’)1243zfを含む生成物を生成する条件下で、250fbを、HF及び触媒と接触させる工程と、(u’’)1243zfを含む生成物を塩素化して、触媒の存在下又は不在下で、1243zfを塩素と接触させることによって、243dbを含む生成物を生成する工程と、を更に含む、請求項40に記載のプロセス。
【請求項42】
1233xfを含む前記生成物を処理して、1233xfを含む前記生成物から1233xfを分離することを更に含む、請求項37、38、39、40、及び41に記載のプロセス。
【請求項43】
244bbを含む前記生成物を処理して、244bbを含む前記生成物から244bbを分離することを更に含む、請求項37、38、39、40、及び41に記載のプロセス。
【請求項44】
(a)出発材料源と流体連通している前記第1の断熱反応器であって、前記第1の断熱反応器を通してヒドロハロアルカンを含む出発材料を前記第1の断熱反応器に流し、前記出発材料が反応生成物に変換される、第1の断熱反応器と、(b)前記第1の断熱反応器と流体連通し、かつ前記第1の断熱反応器の下流にあり、かつ前記反応生成物を流す熱交換器であって、反応生成物が加熱されて、中間生成物をもたらす、熱交換器と、(c)前記熱交換器と流体連通し、かつ前記熱交換器の下流にあり、かつ前記中間生成物を前記熱交換器から流す、後続する断熱反応器であって、前記中間生成物が反応して、反応生成物を形成する、後続する断熱反応器と、任意選択的に、(d)直列で、(c)の前記後続する断熱反応器と流体連通している、熱交換器と後続する反応器との1つ以上の組み合わせであって、各熱交換器に関して、反応生成物が加熱されて、中間生成物を形成し、各断熱反応器に関して、前記中間生成物が反応して、反応生成物を形成する、熱交換器と後続する反応器との1つ以上の組み合わせと、を備える、反応ゾーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱反応ゾーン内でのフルオロプロペンなどのハロオレフィンを生成するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロクロロカーボン(hydrochlorocarbon、HCC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(hydrochlorofluorocarbon、HCFC)、及びクロロフルオロカーボン(chlorofluorocarbon、CFC)は、多目的の化合物であり、エアゾール噴射剤、冷媒、洗浄剤、熱可塑性及び熱硬化性発泡体用の膨張剤、伝熱媒体、気体誘電体、消火剤及び抑火剤、動力サイクル作動流体、重合媒体、微粒子除去流体、キャリア流体、バフ磨き研磨剤、並びに置換乾燥剤としての使用を含む、幅広い用途において用いられてきた。業界では、より低いオゾン層破壊の可能性及び他の環境上の利益を有する、HCC、HCFC、及びCFCの代替物を見出すために、過去数十年にわたって取り組んできた。HCC、CFC、及びHCFCに取って代わるための探索において、多くの業界でヒドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon、HFC)の使用が注目されている。
【0003】
HFCは、成層圏オゾン層の破壊の一因とはならないが、「温室効果」の一因となる、すなわち地球温暖化の一因となるので懸念されている。地球温暖化の一因となる結果として、HFCにも厳しい視線が注がれるようになっており、その広範な使用は、CFC及びHCFCで起きたように将来的には制限され得る。したがって、低いオゾン層破壊の可能性(ozone depleting potential、ODP)及び低い地球温暖化の可能性(global warming potential、GWP)の両方を有する化学化合物の必要性が存在する。
【0004】
特定のヒドロフルオロオレフィン(hydrofluoroolefin、HFO)は、低いODP及び低いGWPの両方を有するものとして識別されている。いずれもゼロオゾン層破壊の可能性及び低い地球温暖化の可能性を有する、CF3CF=CH2(HFO-1234yf)及びCF3CH=CHF(HFO-1234ze)が、潜在的な冷媒として識別されている。CF3CH=CHCF3(HFO-1336mzz)及びヒドロ(フルオロ)クロロオレフィンCF3-CH=CHCl(HCFO-1233zd)などの他のヒドロフルオロオレフィンが、発泡剤として識別されている。他のHFOもまた、他の用途での代替物としての価値を有する。
【0005】
ヒドロフルオロオレフィンを生成するためのヒドロフルオロオレフィン及び中間体は、ヒドロクロロアルカン、ヒドロクロロフルオロアルカン、又はヒドロフルオロアルカン、集合的に「ヒドロハロアルカン」の脱ハロゲン化水素によって生成され得る。
【0006】
クロロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、及びフルオロオレフィン、集合的に「ハロオレフィン」は全て、例えば、低いオゾン層破壊の可能性(ODP)及び低い地球温暖化の可能性(GWP)の両方を有する、所望の化学化合物を生成するための中間体として使用するための、所望の生成物であり得る。例えば、クロロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、及びフルオロオレフィンは全て、HFO-1234yf、又はHFO-1234ze、又はHFO-1336mzz、又はHCFO-1233zdを生成するために使用される中間体であり得る。
【0007】
脱ハロゲン化水素反応は、腐食性HCl又はHFを生成する。脱ハロゲン化水素反応は、触媒性又は熱分解性であり得る。そのような反応は、比較的高温(例えば、触媒反応については180℃超、又は熱分解反応については350℃超)で実施され得る。脱ハロゲン化水素反応はまた吸熱性でもあり、したがって、反応速度は、温度/熱供給に非常に敏感である。
【0008】
上記の脱ハロゲン化水素反応の特性は、プロセス設計及び反応ゾーン内に対応する必要がある。典型的な脱ハロゲン化水素プロセスでは、単一のマルチチューブ式反応器が使用されて、熱伝達を促進し、吸熱反応の温度を維持する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、ヒドロハロアルカンの脱ハロゲン化水素による、少なくとも1つのハロオレフィン(ハロアルケン)を含む生成物の生成のためのプロセスに関する。したがって、プロセスは、脱ハロゲン化水素プロセスである。プロセスは、液相中又は気相中で、触媒の存在下又は不在下で、断熱反応ゾーン内でのヒドロハロアルカンのハロオレフィンへの変換を行うのに十分な温度で実施される。具体的には、断熱反応ゾーンは、少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する。言い換えれば、反応ゾーンは、少なくとも2つの反応器を備え、各反応器は、断熱的に動作し、直列に配設され、熱交換器は、2つの反応器間に直列に配設される。プロセスは、反応ゾーンからハロオレフィンを含む生成物を回収する工程を更に含む。
【0010】
したがって、本開示の一態様によれば、断熱反応ゾーン内でのヒドロハロアルカンの脱ハロゲン化水素のためのプロセスが提供され、このプロセスは、
(a)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、
(b)ヒドロハロアルカンを含む出発材料を、直列接続された反応器のうちの第1の断熱反応器内に導入して、反応生成物を生成する工程と、
(c)反応生成物を、先行する反応器から熱交換器に通過させて、中間生成物を生成する工程と、
(d)中間生成物を、熱交換器から後続する断熱反応器に導入して、反応生成物を生成する工程と、
(e)任意選択的に、工程(c)及び(d)を、順番に1回以上繰り返す工程と、
(f)最終生成物を回収する工程と、を含み、最終生成物は、最終断熱反応器内で生成された反応生成物であり、最終断熱反応器は、最終断熱反応器の下流の断熱反応ゾーン内に後続する断熱反応器を有しない後続する断熱反応器である。最終生成物は、ハロオレフィンを含む。
【0011】
本明細書に開示されるプロセスでは、少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を含む断熱反応ゾーンが提供される(工程(a))。ヒドロハロアルカンを含む出発材料が、断熱反応ゾーン内の第1の断熱反応器に導入される(工程(b))。
【0012】
任意選択的に、プロセスは、工程(b)の前に、ヒドロハロアルカンを含む出発材料を、第1の断熱反応器の上流の断熱反応ゾーン内の熱交換器内に導入して、加熱された出発材料を生成する工程(a’)を更に含む。工程(a’)からの加熱された出発材料は、工程(b)での第1の断熱反応器に導入される出発材料である。
【0013】
任意選択的に、出発材料は、他の成分を含み得る。代替的に、他の成分は、出発材料とは別に第1の断熱反応器に導入され得る。
【0014】
その後、第1の断熱反応器からの反応生成物は、熱交換器を通過して、中間生成物を提供する(工程(c))。次いで、中間生成物は、後続する断熱反応器に導入されて(工程(d))、反応生成物を生成し、プロセスは継続されて、ヒドロハロアルカンの所望の変換又は他の所望の結果を達成する。
【0015】
任意選択的に、本明細書に開示されるプロセスは、工程(c)及び(d)を1回以上繰り返すことを含む。一実施形態では、工程(c)及び(d)は、1~9回実施され、すなわち、工程(c)及び(d)は、0~8回繰り返され、その結果、断熱反応ゾーンは、直列に接続された合計2~10個の断熱反応器を有する。工程(c)及び(d)が、1回繰り返される場合、反応ゾーンは、第1の断熱反応器、第2の断熱反応器、及び最終断熱反応器の合計3つの反応器を有する。したがって、第2及び最終断熱反応器は各々、工程(d)での後続する反応器である。
【0016】
本明細書に開示されるプロセスの1つの選択肢では、工程(c)及び(d)は繰り返されず、断熱反応ゾーンは、2つの断熱反応器(第1の断熱反応器及び最終(後続する)断熱反応器)からなる。
【0017】
プロセスは、最終生成物を回収する工程を更に含み、最終生成物は、最終断熱反応器内で生成される反応生成物である。
【0018】
本明細書に記載されるように、断熱反応器は、断熱反応ゾーン内の2つの直列接続された反応器間に配置された熱交換器と直列に配設される。したがって、断熱反応ゾーンにおいて、第1の断熱反応器は、先行する反応器を有しておらず、最終断熱反応器は、後続する反応器を有していない。同様に、断熱反応ゾーンは、少なくとも第1の断熱反応器及び最終断熱反応器、又は言い換えれば、少なくとも1つの先行する反応器(第1の断熱反応器)及び少なくとも1つの後続する反応器(最終断熱反応器)を含有する。熱交換器は、各後続する反応器の上流にあり、各後続する反応器と流体連通している。
【0019】
ヒドロハロアルカンは、式Y1Y2CH-CXY3Y4を有し、式中、Xは、ハロであり、iが1、2、3、及び4である各Yiは、独立して、H、ハロ、アルキル、又はハロアルキルであり、ハロは、F、Cl、Br、又はIであるが、ただし、少なくとも1つのYiは、ハロ又はハロアルキルである。ハロオレフィンは、式Y1Y2C=CY3Y4を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】反応ゾーンが、等温的に動作する単一のマルチチューブ式反応器を有する、先行技術の脱ハロゲン化水素プロセスを示すフロー図である。
【
図2】断熱反応ゾーンが、各後続する断熱反応器の上流に配設され、各後続する断熱反応器と流体連通している熱交換器と共に、3つの断熱反応器を有する、本開示の脱ハロゲン化水素プロセスの一実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用するとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素に必ずしも限定されるものではなく、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に対して明示的に記載されていない、又はこれらに固有のものではない、他の要素も含む場合がある。
【0022】
量、濃度、又は他の値若しくはパラメータが、ある範囲、好ましい範囲、又は好ましい上方値及び/若しくは好ましい下方値のリストのいずれかとして与えられている場合に、これらは、範囲が別個に開示されているかに関わらず、任意の範囲上限値又は好ましい上方値及び任意の範囲下限値又は好ましい下方値の任意の対から形成される全ての範囲を、具体的に開示するものとして、理解されるものとする。本明細書に数値範囲が記述されている場合、特に指示しない限り、この範囲は、その端点を包含し、かつその範囲内の全ての整数及び分数を包含することが意図される。
【0023】
以下に記載される実施形態の詳細に言及する前に、いくつかの用語を定義又は明確化する。
【0024】
「ハロオレフィン」という用語は、本明細書で使用される場合、炭素、フッ素、及び/又は塩素、及び/又は臭素、及び/又はヨウ素、並びに炭素-炭素二重結合を含有する分子を意味する。実施例は、本明細書全体にわたって記載される。
【0025】
「ヒドロハロオレフィン」という用語は、本明細書で使用される場合、水素、炭素、フッ素、及び/又は塩素、及び/又は臭素、及び/又はヨウ素、並びに炭素-炭素二重結合を含有する分子を意味する(ハロ=フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)。実施例は、本明細書全体にわたって記載される。ヒドロフルオロオレフィンは、「HFO」として指定され得る。ヒドロクロロフルオロオレフィンは、「HCFO」として指定され得る。
【0026】
特定のハロオレフィン及び特定のヒドロハロオレフィンが、立体配置(E-及びZ-)異性体を有することを、当業者は認識する必要がある。したがって、本明細書で生成される生成物は、立体配置異性体のうちの一方又は両方を含有し得る。立体配置異性体の相対量は、反応条件に応じて変動し得る。
【0027】
「ヒドロハロアルカン」という用語は、本明細書で使用される場合、水素、炭素、フッ素、及び/又は塩素、及び/又は臭素、及び/又はヨウ素を含有し、炭素-炭素二重結合を有しない分子を意味する(ハロ=フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)。実施例は、本明細書全体にわたって記載される。
【0028】
「脱ハロゲン化水素」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒドロハロアルカンからのHXの損失を意味し、式中、X=F、Cl、Br、Iであり、H及びXは、ヒドロハロアルカン中の隣接する炭素上にある。例えば、「脱フッ化水素」、「脱フッ化水素する」、又は「脱フッ化水素された」という用語は、本明細書で使用される場合、その間に、分子中の隣接する炭素上の水素及びフッ素が除去されるプロセスを意味する。「脱塩化水素」、「脱塩化水素する」、又は「脱塩化水素された」という用語は、本明細書で使用される場合、その間に、分子中の隣接する炭素上の水素及び塩素が除去されるプロセスを意味する。
【0029】
「断熱の」という用語は、本明細書で使用される場合、熱が反応ゾーンから意図的に加えられない又は除去されない反応ゾーン内の反応器、又はプロセス、又は条件に関連する、又は示すことを意味する。最良の断熱であっても、周囲温度を上回って動作する反応ゾーンからいくらかの熱が失われ得ること(又は逆に周囲温度を下回って動作する反応ゾーンで得られる)は、当業者には理解されるであろう。
【0030】
「先行する断熱反応器」又は「先行する反応器」という用語は、本明細書で使用される場合、断熱反応ゾーン内のこの反応器の上流に断熱反応器を有しない断熱反応器を意味する。「後続する断熱反応器」又は「後続する反応器」という用語は、本明細書で使用される場合、断熱反応ゾーン内のこの反応器の上流に少なくとも1つの断熱反応器を有する断熱反応器を意味する。「最終断熱反応器」又は「最終断熱反応器」という用語は、本明細書で使用される場合、断熱反応ゾーン内のこの反応器の下流に断熱反応器を有しない断熱反応器を意味する。上記にも関わらず、断熱反応ゾーン内の断熱反応器の上流又は下流に、1つ以上の反応器が存在し得、先行する断熱反応器、後続する断熱反応器、及び最終断熱反応器の定義が、各断熱反応ゾーン内の断熱反応器にのみ適用される、複数の断熱反応ゾーンが存在し得る。
【0031】
本開示で言及される化合物は、フルオロケミカル命名規則、化学構造、及び/又は化学名に基づいて、コードによって参照され得る。利便性及び参照のために、コード、構造、及び化学名を有する選択された化合物が表1に提供される。
【0032】
【0033】
【0034】
本開示は、ヒドロハロアルカンの脱ハロゲン化水素のためのプロセスを提供し、このプロセスは、(a)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、(b)ヒドロハロアルカンを含む出発材料を、直列接続された反応器のうちの第1の断熱反応器内に導入して、反応生成物を生成する工程と、(c)反応生成物を、先行する断熱反応器から熱交換器に通過させて、中間生成物を生成する工程と、(d)中間生成物を、熱交換器から後続する断熱反応器に導入して、反応生成物を生成する工程と、任意選択的に、工程(c)及び(d)を、1回以上繰り返す工程と、(e)最終生成物を回収する工程と、を含み、最終生成物は、最終断熱反応器内で生成された反応生成物であり、最終断熱反応器は、最終断熱反応器の下流の断熱反応ゾーン内に後続する断熱反応器を有しない後続する断熱反応器である。工程(c)では、熱交換器は、先行する断熱反応器の下流にあり、先行する断熱反応器と流体連通している。
【0035】
本開示は、ヒドロハロアルカンを含む出発材料を脱ハロゲン化水素して、ハロオレフィンを含む最終生成物を生成するためのプロセスを提供する。
【0036】
ヒドロハロアルカンは、式Y1Y2CH-CXY3Y4を有し、式中、Xは、F、Cl、Br、又はIであり、iが1、2、3、及び4であるYiの各々は、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル基、又はハロアルキル基から選択されるが、ただし、少なくとも1つのYiは、Hではないか、又は少なくとも1つのYiは、ハロアルキル基であり、ハロアルキルは、フルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、又はヨードアルキルであり、すなわち、ハロ=フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードである。いくつかの実施形態では、アルキル基は、C1~C3アルキル基である。いくつかの実施形態では、ハロアルキル基は、C1~C3ハロアルキル基である。対応するハロオレフィンは、式Y1Y2C=CY3Y4を有する。
【0037】
ヒドロハロアルカンは、(H、Cl、及びCを含有する)ヒドロクロロアルカンであり得るか、又は(H、Cl、及びCを含有する)ヒドロクロロアルカンを含み得る。ヒドロハロアルカンは、(H、F、Cl、及びCを含有する)ヒドロフルオロクロロアルカンであり得るか、又は(H、Cl、F、及びCを含有する)ヒドロフルオロクロロアルカンを含み得る。ヒドロハロアルカンは、(H、F、及びCを含有する)ヒドロフルオロアルカンであり得るか、又は(H、F、及びCを含有する)ヒドロフルオロアルカンを含み得る。ブロモ及びヨード含有ヒドロハロアルカンもまた、本明細書で企図される。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒドロハロエタンを含む出発材料から、少なくとも1つのハロエテン(ハロエチレン)生成物を作製するためのプロセスを提供する。ヒドロハロエタンは、式Y1Y2CH-CXY3Y4を有し得、式中、Xは、ハロであり、各Yi(iは、1、2、3、及び4)は、独立して、H又はハロであり、ハロは、F、Cl、Br、Iであるが、ただし、少なくとも1つのYiは、ハロである。ヒドロハロエタンの例は、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(CF2ClCH3)であり、ハロエチレンの例は、フッ化ビニリデン(CF2=CH2)である。ヒドロハロエタンの第2の例は、1,1-ジフルオロエタン(CHF2CH3)であり、ハロエチレンの例は、フッ化ビニル(CHF=CH2)である。
【0039】
本開示は、ヒドロハロプロパンを含む出発材料から、少なくとも1つのハロプロペン生成物を作製するためのプロセスを提供する。ヒドロハロプロパンは、式Y1Y2CH-CXY3Y4を有し、式中、Xは、ハロであり、3つのYi(iは、1、2、3、及び4)は、独立して、H又はハロであり、他のYiは、C1アルキル又はC1ハロアルキルであり、ハロは、F、Cl、Br、又はIであるが、ただし更に、少なくとも1つのYiは、ハロ又はハロアルキルである。
【0040】
代表的なヒドロハロプロパンとしては、CF3CFClCH3、CF3CHFCH2Cl、CF3CHClCH2F、CF3CH2CHFCl、CF3CHFCH2F、CF3CH2CHF2、CF3CF2CH3、CF3CFClCH2F、CF3CHFCHFCl、CF3CHClCHF2、CF3CH2CF2Cl、CF3CHClCH3、CF3CHClCH2Cl、CF3CH2CH2Cl、CCl3CH2CHCl2、CCl3CHClCH2Cl、CCl3CH2CH2Cl、CH2ClCCl2CHCl2、及びこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0041】
ヒドロハロプロパンは、ヒドロクロロプロパンであり得るか、又はヒドロクロロプロパンを含み得る。ヒドロクロロプロパンは、CCl3CHClCH2Cl、CCl3CH2CHCl2、CCl3CH2CH2Cl、及びこれらの2つ以上の混合物であり得るか、又はこれらを含み得る。
【0042】
ヒドロハロプロパンは、ヒドロクロロフルオロプロパンであり得るか、又はヒドロクロロフルオロプロパンを含み得る。ヒドロクロロフルオロプロパンは、CF3CHClCCl3、CF3CFClCHCl2、CF3CF2CHCl2、CF3CHFCHCl2、CF3CFClCH2Cl、CF3CF2CH2Cl、CF3CHFCHFCl、CF3CHClCHF2、CF3CH2CF2Cl、CF3CCl2CH3、CF3CHClCH2Cl、CF3CH2CHCl2、CF2ClCH2CHFCl、CF3CFClCH3、CF3CHClCH2F、CF3CHFCH2Cl、CF3CH2CHFCl、CF3CHClCH3、CF3CH2CH2Cl、若しくはこれらの2つ以上の混合物であり得るか、又はこれらを含み得る。一実施形態では、ヒドロクロロフルオロプロパンは、CF3CFClCH3である。
【0043】
ヒドロハロプロパンは、ヒドロフルオロプロパンであり得るか、又はヒドロフルオロプロパンを含み得る。ヒドロフルオロプロパンは、CF3CF2CH2F、CF3CHFCHF2、CF3CF2CH3、CF3CHFCH2F、CF3CH2CHF2、CF3CH2CH2F、若しくはこれらの2つ以上の混合物であり得るか、又はこれらを含み得る。ヒドロハロプロパンは、ヒドロフルオロプロパンであり得る。ヒドロフルオロプロパンは、CF3CHFCH2F、若しくはCF3CH2CHF2、若しくはCF3CF2CH3、又はこれらの2つ以上の混合物であり得る。
【0044】
一実施形態では、出発材料は、式CF3CFQCH3を有するヒドロハロプロパンを含み、式中、Qは、Cl又はFである。出発材料は、CF3CF2CH3を含み得る。出発材料は、CF3CFClCH3を含み得る。CF3CFClCH3の脱ハロゲン化水素は、CF3CF=CH2を含む生成物を生成する。CF3CFClCH3の脱ハロゲン化水素は、CF3CF=CH2及びE-CF3CH=CHF及びZ-CF3CH=CHFの混合物を含む生成物を生成し得る。
【0045】
一実施形態では、ヒドロハロプロパンの脱ハロゲン化水素は、ハロプロペンを含む生成物を生成する。特定の実施形態では、生成物は、クロロプロペンを含む。別の実施形態では、生成物は、フルオロクロロプロペンを含む。別の実施形態では、生成物は、フルオロプロペンを含む。
【0046】
一実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CH2ClCHClCCl3であるか、又はCH2ClCHClCCl3を含み、クロロプロペンは、CH2ClCCl=Cl2(240db→1230xa)であるか、又はCH2ClCCl=Cl2(240db→1230xa)を含む。
【0047】
一実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CFClCH3であるか、又はCF3CFClCH3を含み、ヒドロフルオロプロペンは、CF3CF=CH2(244bb→1234yf)であるか、又はCF3CF=CH2(244bb→1234yf)を含む。
【0048】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CHFCH2Clであるか、又はCF3CHFCH2Clを含み、ハロプロペンは、CF3CF=CH2(244eb→1234yf)であるか、又はCF3CF=CH2(244eb→1234yf)を含む。
【0049】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CHClCH2Fであるか、又はCF3CHClCH2Fを含み、ハロプロペンは、E-及び/若しくはZ-CF3CH=CHF(244db→1234ze)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CH=CHF(244db→1234ze)を含む。
【0050】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CH2CHFClであるか、又はCF3CH2CHFClを含み、ハロプロペンは、E-及び/若しくはZ-CF3CH=CHF(244fa→1234ze)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CH=CHF(244fa→1234ze)を含む。
【0051】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CFClCH2Fであるか、又はCF3CFClCH2Fを含み、ハロプロペンは、E-及び/若しくはZ-CF3CF=CHF(235bb→1225ye)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CF=CHF(235bb→1225ye)を含む。
【0052】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CF2CH2Clであるか、又はCF3CF2CH2Clを含み、ハロプロペンは、E-及び/若しくはZ-CF3CF=CHCl(235cb→1224yd)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CF=CHCl(235cb→1224yd)を含む。
【0053】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CHClCHF2であるか、又はCF3CHClCHF2を含み、ハロプロペンは、CF3CH=CF2(235da→1225zc)であるか、又はCF3CH=CF2(235da→1225zc)を含む。
【0054】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CH2CF2Clであるか、又はCF3CH2CF2Clを含み、ハロプロペンは、CF3CH=CF2(235fa→1225zc)であるか、又はCF3CH=CF2(235fa→1225zc)を含む。
【0055】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CHClCCl3であるか、又はCF3CHClCCl3を含み、ハロプロペンは、CF3CCl=CCl2(223db→1213xa)であるか、又はCF3CCl=CCl2(223db→1213xa)を含む。
【0056】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CHClCH2Clであるか、又はCF3CHClCH2Clを含み、ハロプロペンは、CCl=CH2(243db→1233xf)であるか、又はCCl=CH2(243db→1233xf)を含む。
【0057】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CH2CHCl2であるか、又はCF3CH2CHCl2を含み、ハロプロペンは、E-及び/若しくはZ-CF3CH=CHCl(243fa→1233zd)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CH=CHCl(243fa→1233zd)を含む。
【0058】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CH2CH2Clであるか、又はCF3CH2CH2Clを含み、ハロプロペンは、CF3CH=CH2(253fb→1243zf)であるか、又はCF3CH=CH2(253fb→1243zf)を含む。
【0059】
特定の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CF2CH2Fであるか、又はCF3CF2CH2Fを含み、ハロプロペンは、E-及び/若しくはZ-CF3CF=CHF(236cb→1225ye)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CF=CHF(236cb→1225ye)を含む。
【0060】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CHFCHF2であるか、又はCF3CHFCHF2を含み、ハロプロペンは、E-及び/若しくはZ-CF3CF=CHF(236ea→1225ye)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CF=CHF(236ea→1225ye)を含む。
【0061】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CF2CH3であるか、又はCF3CF2CH3を含み、ハロプロペンは、CF3CH=CH2(245cb→1234yf)であるか、又はCF3CH=CH2(245cb→1234yf)を含む。
【0062】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CHFCH2Fであるか、又はCF3CHFCH2Fを含み、ハロプロペンは、CF3CH=CH2(245eb→1234yf)であるか、又はCF3CH=CH2(245eb→1234yf)を含む。
【0063】
別の実施形態では、ヒドロハロプロパンは、CF3CH2CHF2であるか、又はCF3CH2CHF2を含み、ハロプロペンは、E-及び/若しくはZ-CF3CH=CHF(245fa→1234ze)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CH=CHF(245fa→1234ze)を含む。
【0064】
一実施形態では、ヒドロハロアルカンは、ヒドロクロロプロパンであるか、又はヒドロクロロプロパンを含み、それは、HF及び触媒の存在下で、フッ化水素処理及び脱ハロゲン化水素を受け、フルオロ(クロロ)プロペンを形成する。特定の実施形態では、ヒドロクロロプロパンは、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(250fb)であるか、又は1,1,1,3-テトラクロロプロパン(250fb)を含み、脱ハロゲン化水素からの生成物は、3,3,3-トリフルオロプロペン(1243zf)を含む。
【0065】
ハロオレフィンが、1243zfである場合、プロセスは、任意選択的に、1243zfを塩素化して、243dbを含む生成物を生成する工程と、243dbを脱塩化水素して、1233xfを含む生成物を生成する工程と、1233xfをフッ化水素処理して、244bbを含む生成物を生成する工程と、244bbを脱塩化水素して、1234yfを含む生成物を生成する工程と、を更に含む。任意選択的に、プロセスは、各生成物を精製する工程を更に含む。したがって、この例では、プロセスは、1243zfを含む生成物、243dbを含む生成物、1233xfを含む生成物、244bbを含む生成物、1234yfを含む生成物、又は生成物のうちの2つ以上を精製する工程を更に含み得る。
【0066】
ハロオレフィンが、1225yeである場合、プロセスは、任意選択的に、1225yeを水素化して、245ebを含む生成物を生成する工程と、245ebを脱フッ化水素して、1234yfを含む生成物を生成する工程と、を更に含む。任意選択的に、プロセスは、1225yeを含む生成物、及び/又は245ebを含む生成物を精製する工程を更に含む。
【0067】
ハロオレフィンが、1225zcである場合、プロセスは、任意選択的に、1225zcを水素化して、245faを含む生成物を生成する工程と、245faを脱フッ化水素して、E-及び/又はZ-1234zeを含む生成物を生成する工程と、を更に含む。任意選択的に、プロセスは、245faを含む生成物、並びに/又はE-及び/若しくはZ-1234zeを含む生成物を精製する工程を更に含む。
【0068】
ハロオレフィンが、1233xfである場合、プロセスは、任意選択的に、1233xfをフッ化水素処理して、244bbを含む生成物を生成する工程と、244bbを脱塩化水素して、1234yfを含む生成物を生成する工程と、を更に含む。任意選択的に、プロセスは、1233xfを含む生成物を精製する工程、及び/又は244bbを含む生成物を精製する工程、及び/又は1234yfを含む生成物を精製する工程、を更に含む。
【0069】
1234yfを含む生成物が生成される場合、プロセスは、任意選択的に、1234yfを含む生成物を精製する工程を更に含む。
【0070】
本開示は、ヒドロハロブタンを含む出発材料から、少なくとも1つのヒドロハロブテン生成物を作製するためのプロセスを提供する。ヒドロハロブタンは、式Y1Y2CH-CXY3Y4を有し得、式中、Xは、ハロであり、2つのYi(iは、1、2、3、及び4)は、C1アルキル若しくはC1ハロアルキルであり、残りの2つのYiは、独立して、H若しくはハロであるか、又は1つのYiは、C2アルキル若しくはC2ハロアルキルであり、残りの3つのYiは、各々独立して、H若しくはハロであり、ハロは、F、Cl、Br、又はIであるが、ただし、少なくとも1つのYiは、ハロ又はハロアルキルである。
【0071】
代表的なヒドロハロブタンとしては、CF3CHClCHClCF3、CF3CCl2CH2CF3、CF3CH2CHClCF3、及びこれらの混合物が挙げられる。ハロブテンの例としては、CF3CCl=CHCF3、並びにE-及び/又はZ-CF3CH=CHCF3が挙げられる。
【0072】
ヒドロハロブタンの脱ハロゲン化水素は、ハロブテンを含む生成物を生成する。一実施形態では、ヒドロハロブタンは、ヒドロクロロフルオロブタンであるか、又はヒドロクロロフルオロブタンを含み、ハロブテンは、フルオロブテンであるか、又はフルオロブテンを含む。
【0073】
特定の実施形態では、ハロブタンは、CF3CHClCHClCF3であるか、又はCF3CHClCHClCF3を含み、ハロブテンは、E-及び/若しくはZ-CF3CCl=CHCF3(336mdd→1326mxz)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CCl=CHCF3(336mdd→1326mxz)を含む。
【0074】
別の実施形態では、ハロブタンは、CF3CCl2CH2CF3であるか、又はCF3CCl2CH2CF3を含み、ハロブテンは、E-及び/若しくはZ-CF3CCl=CHCF3(336mfa→1326mxz)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CCl=CHCF3(336mfa→1326mxz)を含む。
【0075】
一実施形態では、ハロブタンは、CF3CHClCH2CF3であるか、又はCF3CHClCH2CF3を含み、ハロブテンは、E-及び/若しくはZ-CF3CH=CHCF3(346mdf→1336mzz)であるか、又はE-及び/若しくはZ-CF3CH=CHCF3(346mdf→1336mzz)を含む。
【0076】
本開示は、ヒドロハロペンタンを含む出発材料から、少なくとも1つのヒドロハロペンテン生成物を作製するためのプロセスを提供する。ヒドロハロペンタンは、式Y1Y2CH-CXY3Y4を有し得、式中、Xは、ハロであり、3つのYiは、C1アルキル若しくはC1ハロアルキル基であり、残りのYiは、H若しくはハロであるか、又は1つのYiは、C2アルキル若しくはC2ハロアルキル基であり、1つのYiは、C1アルキル若しくはC1ハロアルキル基であり、残りのYiは、H若しくはハロであるか、又は1つのYi(iは、1、2、3、及び4)は、C3アルキル若しくはC3ハロアルキル基であり、残りのYiは、H若しくはハロであり、ハロは、F、Cl、Br、又はIであるが、ただし、少なくとも1つのYiは、ハロ又はハロアルキルである。
【0077】
ヒドロハロペンタンは、CF3CCl2CH2C2F5、CF3CHClCHClC2F5、CF3CHClCH2C2F5、CF3CF(CF3)CFClCH3、及びこれらの混合物から選択され得る。ハロペンテンの例としては、CF3CCl=CHC2F5、CF3CH=CHC2F5、及びCF3CF(CF3)CF=CH2が挙げられる。
【0078】
より高級なハロアルケンもまた、本明細書に開示されるプロセスを使用して、生成され得る。
【0079】
脱ハロゲン化水素工程は、断熱反応ゾーン内で実施される。断熱反応ゾーンは、少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ直列の各2つの反応器間に配置され、流体連通している熱交換器を有する。
【0080】
断熱反応ゾーンは、第1の断熱反応器及び最終断熱反応器を備える。第1の断熱反応器は、断熱反応ゾーン内の第1の断熱反応器の下流の任意の断熱反応器又は熱交換器に対して先行する断熱反応器である。最終断熱反応器は、断熱反応ゾーン内の最終断熱反応器の上流の任意の断熱反応器又は熱交換器に対して後続する断熱反応器である。
【0081】
第1の断熱反応器は、熱交換器の上流にあり、熱交換器と流体連通している。熱交換器は、後続する断熱反応器と流体連通し、後続する断熱反応器の上流にある。
【0082】
一実施形態では、断熱反応ゾーンは、2つの反応器(第1の断熱反応器及び最終断熱反応器)からなる。この実施形態では、熱交換器は、第1の断熱反応器の下流にあり、最終断熱反応器の上流にある。
【0083】
当業者は、先行する(上流の)反応器を有しない第1の断熱反応器と、少なくとも1つの先行する反応器を有する後続する反応器と、後続する(下流の)反応器を有さず、工程(c)における後続する反応器である最終反応器との間の関係を理解するであろう。断熱反応ゾーン内の断熱反応器は、熱交換器と流体連通しており、熱交換器は、2つの反応器間に配置される。
【0084】
一実施形態では、断熱反応ゾーンは、第1の断熱反応器、(後続する断熱反応器とも称され得る)第2断熱反応器、及び本明細書に開示されるプロセスの工程(d)による後続する断熱反応器でもある、最終断熱反応器からなり、したがって、合計3つの反応器であり、各反応器は断熱的に動作し、熱交換器は、第1の断熱反応器と第2の断熱反応器との間に配設され、熱交換器は、第2の断熱反応器と最終断熱反応器との間に配設される。したがって、工程(c)及び(d)は、1回繰り返される。当業者は、工程(c)及び(d)を2回又は3回以上繰り返すなど、3つを超える反応器を使用することを企図し得る。
【0085】
熱交換器が断熱反応ゾーン内の2つの反応器間に配置される、断熱反応器及び熱交換器の数の上限は、コスト及び複雑性を制御することなどの実用的な理由に基づき得るか、又は出発材料の変換若しくは特定の生成物の形成などの特定の目標を達成することに基づき得る。2つ以上の断熱反応器は、断熱反応ゾーン内、例えば2~10個の反応器(工程(c)及び(d)の繰り返し、0~8回)、又は2~4個の反応器(工程(c)及び(d)の繰り返し、0~2回)で使用される。
【0086】
断熱反応器は、本明細書に開示されるような脱ハロゲン化水素プロセスを実施することに資する任意の形状であり得る。特定の実施形態では、各反応器は、円筒状のチューブ又はパイプであり、これは、直線状又はコイル状であり得る。プラグフロー設計は、より低い全体的な変換率をもたらす逆混合を最小限に抑えるので好ましい。
【0087】
本明細書に記載される脱ハロゲン化水素プロセスの腐食性質に起因して、本明細書に開示される断熱反応ゾーン内で使用する断熱反応器は、腐食に耐性を有する材料から構成される。そのような材料としては、ステンレス鋼、具体的には、オーステナイト型、又は銅被覆鋼、又はニッケル系合金、又は金、又は金張り、又は石英が挙げられる。ニッケル系合金は、市販されており、例えば、Monel(商標)ニッケル-銅合金、Hastelloy(商標)ニッケル系合金、及びInconel(商標)ニッケル-クロム合金などの高ニッケル合金が挙げられる。一実施形態では、反応器は、ニッケル系合金から構成される。断熱反応器は、フルオロポリマーが温度と適合性があるという条件で、フルオロポリマーで裏打ちされ得る。他の材料としては、耐腐食性のためのSiC又はグラファイトが挙げられ得る。
【0088】
本明細書に開示される断熱反応ゾーンの断熱反応器に加えて、熱交換器、流出物ライン、物質移動に関連するユニット、接触容器(プレミキサ)、蒸留カラム、並びに、本明細書に開示される実施形態のプロセスにおいて使用される反応器、熱交換器、容器、カラム、及びユニットに関連する供給物及び材料移送ラインは、上記のものなどの腐食に耐性を有する材料から構成されるべきである。
【0089】
本開示は、断熱反応ゾーンを提供する。断熱反応ゾーンは、少なくとも2つの断熱反応器を備える。熱交換器は、各2つの反応器間に配設される(以下、
図2の考察も参照されたい)。本明細書で開示されるプロセスの一実施形態では、プロセスは、少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、ヒドロハロアルカンを含む出発材料を、断熱反応ゾーンに導入することであって、第1の反応生成物が、第1の断熱反応器内で生成される、断熱反応ゾーンに導入する工程と、第1の断熱反応器からの第1の反応生成物を、熱交換器に通過させて、中間生成物を生成する工程と、次いで、中間生成物を、熱交換器から後続する断熱反応器に導入することであって、第2の反応生成物が生成される、導入する工程と、任意選択的に、第2の反応生成物を、第3の断熱反応器内(存在する場合)などに導入する前に、後続する断熱反応器からの第2の反応生成物を、熱交換器に通過させる工程と、を含む。
【0090】
上記にも関わらず、他のプロセス工程は、断熱反応ゾーンの上流で行われ得る。上流プロセス工程は、例えば、本明細書に記載される脱ハロゲン化水素プロセスにおいて使用するヒドロハロアルカンを調製するプロセス、又は第1の断熱反応器に供給される出発材料の気化を伴い得る。上流プロセス工程は、1つ以上の反応器内で実施され得る。明確にするために、1つ以上の反応器が、脱ハロゲン化水素プロセスの上流に存在する場合であっても、本明細書で言及される「第1の断熱反応器」は、脱ハロゲン化水素プロセスが実施される一連の断熱反応器内の第1の断熱反応器を指し、熱交換器は、直列の第1の断熱反応器と直列の第2の(後続する)断熱反応器との間に位置する。したがって、断熱反応ゾーンの上流、及びしたがってこのように定義された第1の断熱反応器の上流の、プロセス工程が実施される任意の反応器は、「第1の断熱反応器」とみなされ得ない。
【0091】
本明細書に記載される断熱反応ゾーン内で、脱ハロゲン化水素プロセスの下流に発生する他の反応(プロセス及び反応ゾーン)が存在し得る。
【0092】
熱交換器は、本開示のプロセス及び断熱反応ゾーン内で使用される。熱交換器は、直列の2つの断熱反応器間に配設される。脱ハロゲン化水素は、吸熱プロセスであるため、熱交換器は、反応によって使用される熱を交換する。本明細書で使用される熱交換器は、シェル及びチューブ熱交換器であり得る。熱交換器は、中でも、フィン及びチューブ熱交換器、マイクロチャネル熱交換器、及び垂直又は水平の単一パスチューブ又はプレート型熱交換器、電気ヒータを用いることができる。熱交換器は、電気加熱によって熱を提供し得る。熱交換器は、熱交換流体としてプロセス流を使用し得る。反応成分の温度及び腐食性質を含む、プロセスの物理的及び化学的要件に適合する他の設計が使用され得る。
【0093】
各熱交換器は、複数の熱交換器を順番に表すことができ、複数とは、2つ以上の熱交換器を意味する。複数の熱源が利用可能である場合、複数の熱交換器が使用され得るが、特定の熱源(蒸気など)は、熱分解又は断熱反応のために所望の温度まで加熱し得ない場合がある。
【0094】
一実施形態では、各熱交換器は、断熱反応ゾーン内の他の熱交換器とは独立して動作し得る。各熱交換器は、断熱反応ゾーン内の別の熱交換器を出る中間生成物と同じ温度を有する、中間生成物を提供するように動作し得る。
【0095】
別の実施形態では、各熱交換器は、断熱反応ゾーン内の他の熱交換器を出る中間生成物に対して異なる温度を有する、中間生成物を提供するように動作し得る。
【0096】
一実施形態では、反応ゾーン内の各断熱反応器は、同じ温度で動作する。別の実施形態では、断熱反応ゾーン内の少なくとも1つの断熱反応器は、断熱反応ゾーン内の他の断熱反応器(複数可)とは異なる温度で動作する。断熱反応ゾーンが、2つの断熱反応器からなる場合、各反応器は、同じ温度又は異なる温度で動作し得、断熱反応ゾーンが、3つ以上の断熱反応器からなる場合、各反応器は、断熱反応ゾーン内の互いの反応器と同じ又は異なる温度で独立して動作し得ることを理解されたい。
【0097】
一実施形態では、断熱反応ゾーン内の断熱反応器は、異なる温度で動作する。例えば、第1の断熱反応器は、後続する断熱反応器よりも高い温度で動作し得る。驚くべきことに、第1の断熱反応器を、後続する断熱反応器とは異なる温度で動作させることによって、生成物のプロファイルが変動することが見出された。したがって、特定の二次生成物が、他の二次生成物よりも何らかの理由(例えば、他の理由の中で、主生成物からの分離の容易さ、二次生成物の商業価値など)でより望ましい場合、断熱反応器は、異なる温度で動作し得る。一実施形態では、第1又は先行する断熱反応器は、後続する断熱反応器よりも高い温度で動作し、断熱反応ゾーン内の2つ以上の断熱反応器を企図する。
【0098】
一実施形態では、各熱交換器は、先行する又は後続する断熱反応器を有する容器内で独立して配置され得る。別の実施形態では、各熱交換器は、先行する又は後続する断熱反応器とは別個の容器内で独立して配置され得る。流体連通は、先に記載されるように、熱交換器を介して後続する断熱反応器間で維持される。
【0099】
任意選択的に、熱交換器を使用して、断熱反応ゾーン内又は断熱反応ゾーンの外部のいずれかにおいて、第1の断熱反応器の上流の所望の反応温度に出発材料を加熱することも可能である。一実施形態では、熱交換器は、断熱反応ゾーン内の第1の断熱反応器の上流にある。このような実施形態において、プロセスは、ヒドロハロアルカンを含む出発材料を、第1の断熱反応器の上流の断熱反応ゾーン内の熱交換器内に導入して、加熱された出発材料を生成する工程(a’)を含む。工程(a’)からの加熱された出発材料は、工程(b)での第1の断熱反応器に導入される出発材料である。
【0100】
本明細書に開示されるプロセス及び断熱反応ゾーンは、比較的遅い脱ハロゲン化水素反応に対応するために、より大きな反応器容積を提供する。総反応器容積は、吸熱プロセスの温度を制御しながら、複雑さを伴わずに、マルチチューブ式反応器に対して増加する。
【0101】
本明細書に開示されるプロセスは、反応ゾーン中のヒドロハロアルカンのハロオレフィン(ハロアルケン)への変換を行うのに十分な温度で、添加された触媒の存在下(触媒プロセス)又は不在下(熱分解プロセス)で、気相中で実施される。
【0102】
本明細書に開示される断熱反応ゾーンの断熱反応器の各々は、独立して、触媒性又は熱分解性断熱反応器として動作し得る。すなわち、各反応器は触媒性であり得るか、又は各反応器は熱分解性であり得るか、又は触媒性若しくは熱分解性反応器の組み合わせが使用され得る。熱分解プロセスの選択肢及び触媒プロセスのための好適な触媒に関して、より多くの具体性が以下に提供される。
【0103】
いくつかの実施形態では、触媒プロセス又は熱分解プロセスに関わらず、不活性希釈ガス(任意選択的な成分)が、ヒドロ(クロロ)フルオロプロパン用のキャリアガスとして使用される。一実施形態では、キャリアガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、又は二酸化炭素から選択される。加えて、キャリアガスは、第1の断熱反応器以外の反応器内で、未変換の出発材料、中でも、再循環生成物、HF、HClを含み得る。キャリアガスは、プロセス化学に悪影響を及ぼさない有機材料を含み得る。
【0104】
一実施形態では、少なくとも1つの断熱反応器は、熱分解反応器として動作する。すなわち、断熱反応ゾーンは、熱分解反応器として動作する1つ以上の断熱反応器を備える。そのような実施形態では、プロセスは、出発材料を熱分解(熱脱ハロゲン化水素)して、ヒドロフルオロオレフィン生成物を生成すること、すなわち熱分解によって実施される。「熱分解する」又は「熱分解」という用語は、本明細書で使用される場合、添加された触媒の不在下で加熱することによって引き起こされる化学変化を意味する。「添加された触媒の不在」とは、脱ハロゲン化水素プロセスの活性化エネルギーを低減することによって、反応速度を意図的に増加させるために、断熱反応器に材料を添加しないことを意味する。上記にも関わらず、断熱反応器の表面は、いくらかの触媒特性を有し得る。
【0105】
脱ハロゲン化水素プロセスが熱分解プロセスである場合、熱分解反応器を通るガスの流動は、例えば、プラグ流動に近づく均一な流動分布を生成するように、穿孔されたバッフルを通って反応器内に入ることができる。逆混合が変換を低減するため、プラグ流動が所望される。
【0106】
他の実施形態では、断熱熱分解反応器は、実質的に空であり、これは、断熱反応ゾーンの自由容積が、少なくとも約80%であり、別の実施形態では、少なくとも約90%、別の実施形態では、少なくとも約95%であることを意味する。自由容積は、反応器充填を構成する材料の容積を引いた反応ゾーンの容積であり、自由容積は、反応器の時間100の総容積に対する自由容積の比としてパーセント(%)として表され得る。
【0107】
本開示の脱ハロゲン化水素プロセスとしては、出発材料及び対応するフルオロオレフィン生成物に応じて、脱フッ化水素プロセス、又は脱塩化水素プロセス、又は脱フッ化水素プロセス及び脱塩化水素プロセスの両方が挙げられ得る。例えば、ヒドロハロアルカンが、244bbである場合、脱塩化水素は、1234yfを生成する。しかしながら、反応条件はまた、いくつかの1233xfへの脱フッ化水素をもたらし得る。
【0108】
典型的には、脱フッ化水素のための熱分解温度は、脱塩化水素のための熱分解温度よりも高い。特定の実施形態では、プロセスは、脱フッ化水素プロセスであり、熱分解反応器は、約500℃~約900℃の温度で動作する。特定の実施形態では、プロセスは、脱塩化水素プロセスであり、断熱熱分解反応器は、約300℃~約700℃の温度で動作する。熱分解プロセスはまた、例えば、米国特許第7,833,434号、同第8,203,022号、及び同第8,445,735号にも開示されている。
【0109】
本開示の脱ハロゲン化水素プロセスは、準大気圧、大気圧、又は超大気圧である反応圧力を有し得る。一実施形態では、プロセスは、約0psig~約200psigの圧力で実施される。一実施形態では、反応は、10psig~約150psigの圧力で実施される。別の実施形態では、反応は、20psig~約100psigの圧力で実施される。
【0110】
一実施形態では、各断熱反応器は、断熱熱分解反応器として動作する。
【0111】
一実施形態では、断熱反応ゾーン内の少なくとも1つの断熱反応器は、断熱触媒反応器として動作する。すなわち、断熱反応ゾーンは、断熱触媒反応器として動作する1つ以上の断熱反応器を備える。そのような実施形態では、この触媒断熱反応器は、触媒で充填されて、ヒドロフルオロオレフィン生成物を生成する。任意の脱ハロゲン化水素触媒が使用され得る。
【0112】
例えば、脱ハロゲン化水素触媒は、金属ハロゲン化物、金属酸化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(若しくはゼロ酸化状態)金属若しくは金属合金、又はバルク若しくは担持形態の炭素から選択され得る。
【0113】
脱ハロゲン化水素触媒は、金属ハロゲン化物、又は金属酸化物、又は金属オキシハライド触媒から選択され得、脱ハロゲン化水素触媒としては、一価、二価、及び三価の金属ハロゲン化物、金属酸化物、金属オキシハライド、並びにこれらの2つ以上の組み合わせ、より好ましくは、一価、二価、及び三価の金属ハロゲン化物、並びにこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
金属としては、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられる。金属ハロゲン化物、又は金属酸化物、又は金属オキシハライドは、担持されても、担持されなくてもよい。金属ハロゲン化物、又は金属酸化物、又は金属オキシハライドは、炭素、アルカリ土類金属ハロゲン化物、又はアルカリ土類金属酸化物上に担持され得る。
【0115】
本明細書の脱ハロゲン化水素触媒に使用するのに好適な金属の例としては、Cr3+、Fe3+、Ca2+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li+、Na+、K+、及びCs+が挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化物成分としては、F-、Cl-、Br-、及びI-が挙げられるが、これらに限定されない。有用な一価、又は二価、又は三価の金属ハロゲン化物の例としては、LiF、NaF、KF、CsF、MgF2、CaF2、LiCl、NaCl、KCl、CsCl、CrCl3、及びFeCl3が挙げられるが、これらに限定されない。担持された金属ハロゲン化物触媒としては、フッ化CsCl/MgO、CsCl/MgF2などが挙げられる。
【0116】
脱ハロゲン化水素触媒は、中性(すなわち、ゼロ価)金属、これらの混合物の金属合金から選択され得る。有用な金属としては、Pd、Pt、Rh、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、及び合金又は混合物としての上記の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。中性金属触媒は、担持されても、担持されなくてもよい。金属合金の有用な例としては、ステンレス鋼(例えば、SS316)、オーステナイトニッケル系合金(例えば、Inconel 625、Inconel 660、Inconel 825、Monel 400)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書に開示される脱ハロゲン化水素プロセスのための他の好適な脱ハロゲン化水素触媒としては、酸洗浄炭素、活性炭、及び三次元マトリックス炭素質材料から選択され得る炭素触媒が挙げられる。
【0118】
脱ハロゲン化水素触媒は、アルミナ、フッ化アルミナ、フッ化アルミニウム、アルミニウムクロロフルオライド;アルミナ、フッ化アルミナ、フッ化アルミニウム、又はアルミニウムクロロフルオライド上に担持された金属化合物;酸化クロム(Cr2O3)、フッ化クロム酸化物、及び立方晶三フッ化クロム;マグネシウム、亜鉛、及びマグネシウムと亜鉛及び/又はアルミニウムとの混合物の酸化物、フッ化物、及びオキシフッ化物;酸化ランタン、フッ化ランタン酸化物、又はこれらの混合物から代替的に選択され得る。
【0119】
フッ化触媒若しくはフッ素含有触媒は、触媒反応器に充填され得るか、又はフッ化触媒若しくはフッ素含有触媒の前駆体は、反応器にHFを導入することによって、触媒反応器内でその場で形成され得る。
【0120】
上記の好適な脱ハロゲン化水素触媒の詳述は、例示目的のためのものであり、包括的であることを意図するものではない。当業者は、本明細書に具体的に詳述されていない他の脱ハロゲン化水素触媒が使用され得ることを理解するであろう。
【0121】
触媒性脱ハロゲン化水素プロセスでは、断熱触媒反応器は、約150~約550℃の温度、及び約0~約200psig、又は10~150psig、又は20~100psigの圧力で好適に動作し得る。
【0122】
一実施形態では、各断熱反応器は、断熱触媒反応器として動作する。
【0123】
本明細書に開示される脱ハロゲン化水素プロセスは、ハロオレフィンを含む生成物を生成する。副生成物HF又はHClは、蒸留若しくは水を用いて洗浄して、HF若しくはHCl水溶液を生成するか、又は酸を多量に含む相を濃縮、デカンテーションするか、又は塩基でスクラブして、酸を含まない有機生成物を生成するなどの多くの方法によって除去され得、これは、任意選択的に、当該技術分野において既知である精製技術の1つ又は任意の組み合わせを使用して更に精製され得る。
【0124】
本開示によれば、プロセスは、出発材料、ヒドロハロアルカンを精製する工程を含み得る。本開示のプロセスに従って生成されたハロオレフィンが、後続する反応(複数可)のための中間体である場合、プロセスは、後続する反応(複数可)の前に、中間ハロオレフィン生成物を精製する工程を更に含み得る。
【0125】
本明細書に開示されるプロセスは、任意選択的に、最終生成物からハロオレフィンを回収する工程を更に含む。ハロオレフィンは、当業者に既知のプロセスを使用して、本開示に記載される実施例を用いて回収され得る。本明細書に開示されるプロセスは、任意選択的に、ハロオレフィンを精製する工程を更に含む。ハロオレフィンを回収及び/又は精製するためのプロセスとしては、蒸留、濃縮、デカンテーション、水への吸収、塩基を用いるスクラブ、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられ得る。
【0126】
特定の実施形態では、ヒドロフルオロプロペン生成物を含む様々な共沸組成物又は共沸混合物様(すなわち、近共沸混合物)組成物は、ハロオレフィン又は中間生成物を回収及び/又は精製するプロセスにおいて利用され得る。
【0127】
一実施形態では、HFは、1234yfを含む生成物に添加され得る。一実施形態では、HFは、1234yfを含む生成物に存在し得る。いずれかの実施形態では、1234yf及びHFが組み合わされて、1234yf及びHFの共沸混合物又は近共沸混合物を形成する。HF及び1234yfの共沸混合物又は近共沸混合物はまた、HF及び1234yfの非共沸混合物が供給物中に存在する、蒸留カラムからの留出物としても形成され得る。1234yfの分離としては、1234yf及びHFの共沸混合物又は近共沸混合物の単離、並びに1234yf及びHFの共沸混合物又は近共沸混合物を、更なる処理に供して、米国特許第7,897,823号に開示されているものと同様の手順を使用することによって、HFを含まない1234yfを生成することが挙げられる。HFO-1234yf及びHFの共沸混合物組成物又は近共沸混合物組成物は、米国特許第7,476,771号に開示されており、その中に記載されているプロセスはまた、ヒドロフルオロオレフィン生成物を回収するためにも利用され得る。
【0128】
別の実施形態では、HFは、E-及び/又はZ-1234zeを含む生成物に添加されて、E-及び/又はZ-1234ze並びにHFを含む共沸組成物又は近共沸組成物を生成し得る。E-及び/又はZ-1234ze並びにHFを含む共沸組成物又は近共沸組成物は、例えば、他の生成物からの分離のための蒸留によって単離され得る。
【0129】
E-及び/又はZ-1234ze並びにHFの共沸組成物又は近共沸組成物は、更なる処理に供されて、米国特許第7,897,823号に開示されているものと同様の手順を使用して、HFを含まないE-及び/又はZ-1234zeを生成する。
【0130】
加えて、米国特許第7,423,188号及び米国特許第8,377,327号に適用されている技術は、本明細書に開示されるプロセスに従って生成されるHFを含まないE-及び/又はZ-1234zeを回収するのに利用され得る。米国特許第7,423,188号は、1234ze及びHFのE-異性体の共沸混合物組成物又は近共沸混合物組成物を開示している。米国特許第8,377,327号は、1234ze及びHFのZ-異性体の共沸混合物組成物又は近共沸混合物組成物を開示している。
【0131】
本開示はまた、1234yfの調製のためのプロセスであって、以下の工程:(v)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、(w)1230xaを含む組成物を提供する工程と、(x)1230xaを含む組成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、1233xfを含む生成物を生成する工程と、(y)1233xfを含む生成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、液相又は気相反応器内で、244bbを含む生成物を生成する工程と、(z)244bbを含む生成物を、脱塩化水素して、断熱反応ゾーン内で、1234yfを含む生成物を生成する工程と、を含む、プロセスも提供する。
【0132】
1234yfの調製のためのプロセスであって、以下の工程:(v’)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、(w’)243dbを含む組成物を提供する工程と、(x’)243dbを含む組成物を、脱ハロゲン化水素剤又は脱ハロゲン化水素触媒と接触させて、1233xfを含む生成物を生成する工程と、(y’)1233xfを含む生成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、液相又は気相反応器内で、244bbを含む生成物を生成する工程と、(z’)244bbを含む生成物を、脱塩化水素して、断熱反応ゾーン内で、1234yfを含む生成物を生成する工程と、を含む、プロセスも提供される。
【0133】
本開示はまた、1234yfの調製のためのプロセスであって、以下の工程:(v’’)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、(w’’)243dbを含む組成物を提供する工程と、(x’’)243dbを含む組成物を、脱ハロゲン化水素剤又は脱ハロゲン化水素触媒と接触させて、断熱反応ゾーン内で、1233xfを含む生成物を生成する工程と、(y’’)1233xfを含む生成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、液相又は気相反応器内で、244bbを含む生成物を生成する工程と、(z’’)244bbを含む生成物を、脱塩化水素して、1234yfを含む生成物を生成する工程と、を含み得る、プロセスも提供する。
【0134】
脱塩化水素工程(z)及び(z’)は、本明細書に開示されるように実施され、これは、(aa)244bbを含む生成物を含む出発材料を、直列接続された反応器のうちの第1の断熱反応器内に導入して、反応生成物を生成する工程と、(bb)反応生成物を、先行する断熱反応器から熱交換器に通過させて、中間生成物を生成する工程と、(cc)中間生成物を、熱交換器から後続する断熱反応器に導入して、反応生成物を生成する工程と、(dd)任意選択的に、工程(bb)及び(cc)を、順番に1回以上繰り返す工程と、(ee)ハロオレフィンを含む最終生成物を回収する工程と、を含み、最終生成物は、最終断熱反応器内で生成された反応生成物である。任意選択的に、工程(z’’)はまた、工程(z)及び(z’)について上記のように実施される。
【0135】
同様に、脱塩化水素工程(x’’)は、本明細書に開示されるように、断熱反応ゾーン内で実施され、これは、(aa’)243dbを含む出発材料を、直列接続された反応器のうちの第1の断熱反応器内に導入して、反応生成物を生成する工程と、(bb’)反応生成物を、先行する断熱反応器から熱交換器に通過させて、中間生成物を生成する工程と、(cc’)中間生成物を、熱交換器から後続する断熱反応器に導入して、反応生成物を生成する工程と、(dd’)任意選択的に、工程(bb’)及び(cc’)を、順番に1回以上繰り返す工程と、(ee’)ハロオレフィンを含む最終生成物を回収する工程と、を含み、最終生成物は、最終断熱反応器内で生成された反応生成物である。工程(ee’)のハロオレフィンは、1233xfを含む。工程(x’’)に、工程(y’’)及び(z’’)が続く。
【0136】
工程(w)~(y)、(w’)~(y’)、(w’’)、(y’’)、(z’’)は、それらの付随する全ての変動を用いて既知の方法を使用して実施され得、そのような方法は、簡潔にするために、本明細書では再現されない。例えば、工程(z’’)では、244bbは、熱分解的又は触媒的に脱塩化水素されて、反応器流出物の成分として所望の生成物1234yfを含む生成物を生成する。
【0137】
上記の工程(z)、(z’)、及び(z’’)に記載される反応は、約200℃~約800℃、約300℃~約600℃、又は約400℃~約500℃の温度範囲で実施され得る。好適な反応器圧力は、約0psig~約200psig、約10psig~約150psig、又は約20~約100psig、又は約40psig~約80psigの範囲である。
【0138】
工程(v)~(z)、(v’)-(z’)、及び(v’’)-(z’’)に記載されているプロセスは、任意選択的に、工程(y)、(y’)、及び(y’’)において1233xfを含む処理された生成物を使用する前に、工程(x)、(x’)、及び(x’’)において生成された1233xfを含む生成物をそれぞれ処理することを更に含む。本明細書では、「処理する」とは、工程(x)、(x’)、及び(x’’)で生成された生成物から1233xfを分離して、かつ/又は1233xfを含む生成物から1233xfを精製して、1233xfを含む処理された生成物を提供することを意味する。明確にするために、工程(y)、(y’)、又は(y’’)における「1233xfを含む生成物」は、本明細書に記載されるような、それぞれ工程(x)、(x’)、若しくは(x’’)からの生成物であり得るか、又はそれぞれ工程(x)、(x’)、若しくは(x’’)からの生成物を処理した後の生成物であり得る。
【0139】
工程(v)~(z)、(w’)-(z’)、及び(v’’)-(z’’)に記載されているプロセスは、任意選択的に、工程(z)、(z’)、及び(z’’)において244bbを含む処理された生成物を使用する前に、工程(y)、(y’)、及び(y’’)において生成された244bbを含む生成物をそれぞれ処理することを更に含む。本明細書では、「処理する」とは、工程(y)、(y’)、及び(y’’)で生成された生成物から244bbを分離して、かつ/又は244bbを含む生成物から244bbを精製して、244bbを含む処理された生成物を提供することを意味する。明確にするために、工程(z)、(z’)、又は(z’’)における「244bbを含む生成物」は、本明細書に記載されるような、それぞれ工程(y)、(y’)、若しくは(y’’)からの生成物であり得るか、又はそれぞれ工程(y)、(y’)、若しくは(y’’)からの生成物を処理した後の生成物であり得る。
【0140】
プロセス工程(x)では、1230xaを含む組成物は、フッ素化触媒の存在下でフッ素化剤と接触して、1233xfを含む生成物混合物を生成する。一実施形態では、工程(x)は、フッ素化触媒を用いて気相中で実施される。気相フッ素化触媒は、金属酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、オキシハライド、これらの無機塩、及びこれらの混合物から選択され得、これらのいずれかは、任意選択的に、ハロゲン化され得、金属としては、クロム、アルミニウム、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、工程(x)は、フッ素化触媒を用いて液相中で実施される。液相フッ素化触媒は、SbCl5、SbCl3、SbF5、SnCl4、TiCl4、FeCl3、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない金属塩化物及び金属フッ化物から選択され得る。
【0141】
プロセス工程(x’)又はプロセス工程(x’’)では、243dbは、脱塩化水素されて、1233xfを含む生成物混合物を生成する。この工程では、脱塩化水素は、脱塩化水素触媒を用いて気相中で、又は脱塩化水素剤、例えば、塩基を用いて液相中で実施され得る。例えば、国際公開第2012/115934号は、243dbと炭素触媒との気相反応を開示している。国際公開第2012/115938号は、オキシフッ化クロム触媒を用いる243dbの気相反応を開示している。国際公開第2017/044719号は、フッ素化触媒の存在下で、1233xfを生成するための、243dbとフッ化アルカンとの反応、並びに1234yfを生成するのに有用な他の化合物を開示している。国際公開第2017/044724号は、苛性を用いる243dbの液相反応を開示している。当業者に既知となるように、式(III)を有する化合物から出発する場合、他の方法が使用され得る。
【0142】
工程(x’’)は、本明細書に提供される本開示に従って断熱反応ゾーン内で実施され得る脱塩化水素工程である。
【0143】
プロセスは、工程(v’)の前又は工程(v’’)の前に、1つ以上の工程を更に含み得る。一実施形態では、工程(v’)の前、又は工程(v’’)の前に、工程(t’)及び(u’)、並びに工程(t’’)及び(u’’)をそれぞれ含むプロセスが実施され、プロセスは、(t’)又は(t”)1243zfを含む生成物を生成する条件下で、250fbを、HF及び触媒と接触させる工程と、(u’)又は(u’’)1243zfを含む生成物を、243dbを含む生成物を生成する触媒の存在下又は不在化で、塩素と接触させる工程と、を含む。
【0144】
工程(t’)又は(t’’)の生成物は、工程(u’)又は(u’’)において生成物を使用する前に、分離及び/又は精製を受ける場合がある。工程(u’)又は(u’’)の生成物は、工程(v’)又は(v’’)において生成物を使用する前に、分離及び/又は精製を受ける場合がある。明確にするために、工程(u’)又は(u’’)における「1243zfを含む生成物」は、本明細書に記載されるような、それぞれ工程(t’)若しくは(t’’)からの生成物であり得るか、又はそれぞれ工程(t’)若しくは(t’’)からの生成物を処理した後の生成物であり得る。
【0145】
工程(z)、工程(z’)、又は工程(z’’)に続いて、1234yfの調製のためのプロセスは、生成物中に存在する他の成分からの1234yfの所望の分離度を達成するための分離工程、及び/又は所望の純度を達成するための他の処理を更に含み得る。例えば、1234yfを含む工程(z)、又は工程(z’)、又は工程(z’’)からの生成物は、HCl、HF、未変換の244bb、3,3,3-トリフルオロプロピン、245cb、及び1233xfのうちの1つ以上を更に含み得る(後者は、前の工程(y)、又は工程(y’)、又は工程(y’’)から、それぞれ主に引き継がれる)。
【0146】
HClは、任意選択的に、脱塩化水素化反応の結果から回収され得る。HClの回収は、留出物から除去される従来の蒸留によって実施され得る。代替的に、HClは、水又は苛性スクラバを使用して除去又は回収され得る。水スクラバが使用される場合、HClは、水溶液として除去される。苛性スクラバが使用される場合、HClは、水溶液中の塩化物塩として反応ゾーンから除去される。
【0147】
HClの回収又は除去後、脱塩化水素化工程からの生成物の残部は、分離のために蒸留カラムに移送され得る。例えば、1234yfは、カラムのオーバーヘッドから収集され得、任意選択的に、収集された1234yfは、更なる精製のために別のカラムに移送され得る。オーバーヘッドから収集されない残りの材料のうち、画分は、リボイラ内に蓄積し得る。例えば、この画分は、1233xf及び244bbを含み得る。画分から分離すると、244bbは、脱塩化水素工程(z)、又は工程(z’)、又は工程(z’’)への再循環として戻され得る。
【0148】
本開示はまた、本明細書に開示される脱ハロゲン化水素プロセスのための断熱反応ゾーンも提供する。少なくとも2つの反応器を含む反応ゾーンが提供され、各反応器は、断熱的に動作し、熱交換器は、少なくとも2つの反応器間に配設される。
【0149】
本開示の断熱反応ゾーンは、(a)出発材料源と流体連通している第1の断熱反応器であって、第1の断熱反応器を通してヒドロハロアルカンを含む出発材料を、第1の断熱反応器に流し、出発材料が、反応生成物に変換される、第1の断熱反応器と、(b)第1の断熱反応器と流体連通し、かつ第1の断熱反応器の下流にあり、かつ反応生成物を流す熱交換器であって、反応生成物が加熱されて、中間生成物をもたらす、熱交換器と、(c)熱交換器と流体連通し、かつ熱交換器の下流にあり、かつ中間生成物を熱交換器から流す、後続する断熱反応器であって、中間生成物が反応して、反応生成物を形成する、後続する断熱反応器と、任意選択的に、(d)直列で、(c)の後続する断熱反応器と流体連通している、熱交換器と後続する反応器との1つ以上の組み合わせであって、各熱交換器に関して、反応生成物が加熱されて、中間生成物を形成し、各断熱反応器に関して、中間生成物が反応して、反応生成物を形成する、熱交換器と後続する反応器との1つ以上の組み合わせと、を備える。任意選択的に、断熱反応ゾーンは、第1の断熱反応器の上流の、第1の断熱反応器と流体連通している熱交換器を更に備える。
【0150】
断熱反応ゾーンは、2つ以上の後続する断熱反応器を備え得る。上記のように、断熱反応ゾーンは、第1の断熱反応器及び後続する断熱反応器を備える。一実施形態では、断熱反応ゾーンは、少なくとも3つの断熱反応器を備える。したがって、そのような反応ゾーンは、第1の断熱反応器、第2の断熱反応器、及び第3の断熱反応器を備え、第2及び第3の断熱反応器の各々は、後続する断熱反応器であり、第3の断熱反応器はまた、最終断熱反応器でもある。
【0151】
反応システムは、本明細書に開示されるような断熱反応ゾーン、並びに断熱反応ゾーンの下流の、断熱反応ゾーンと流体連通している分離システム及び/又は精製システムを備え得る。
【0152】
反応システムは、出発材料を予熱するための手段を含む、断熱反応ゾーンの上流の、かつ断熱反応ゾーンと流体連通している操作を含み得る。一実施形態では、反応システムは、出発材料を予熱するために反応ゾーンの上流の、反応ゾーンと流体連通している熱交換器を備える。一実施形態では、反応システムは、出発材料を気化させる蒸発器を備え、蒸発器は、断熱反応ゾーンと流体連通している。
【0153】
図面の詳細な説明
図1は、脱ハロゲン化水素プロセスの先行技術の反応システムを示すフロー図であり、反応システム100は、単一のマルチチューブ式反応器105を有し、複数のチューブは、反応器内の複数のラインで示されている。反応ゾーン101は、反応器105からなり、点線で囲まれた影付き領域によって識別される。ヒドロハロアルカンを含む出発材料110は、蒸発器115に入り、そこで、出発材料は、気化した出発材料120になり、それは、熱交換機125を通過して、加熱された出発材料130を生成する。熱交換器125から、加熱された出発材料130は、過熱器135を通過し、そこから過熱された出発材料140。過熱された出発材料140は、マルチチューブ式反応器105に導入される。反応器105から、反応生成物145が、熱交換器125を通過して、冷却された反応生成物150をもたらす。次いで、冷却された反応生成物150は、熱交換器155を通過することによって更に冷却されて、生成物160をもたらす。
【0154】
図2は、反応システム200が、直列の3つの断熱反応器からなる断熱反応ゾーン205を含む、本開示の脱ハロゲン化水素プロセスを示すフロー図である。断熱反応ゾーン205は、断熱反応器260、261、及び262、並びに熱交換器250、280、及び281からなり、点線で囲まれた影付き領域によって識別される(工程(a))。ヒドロハロアルカンを含む出発材料210は、蒸発器215に入り、そこで、出発材料は気化した出発材料220になり、それは、熱交換機225を通過して、加熱された出発材料230を生成する。熱交換器225から、加熱された出発材料230は、過熱器235を通過し、過熱された出発材料240を生成する。過熱された出発材料240は、断熱反応ゾーン205に入り、熱交換器250を通過して、第1の断熱反応器260の出発材料251を生成する(工程(a’))。出発材料251は、第1の断熱反応器260に導入される(工程(b))。第1の断熱反応器260から、反応生成物270は、熱交換器280を通過し、そこで、反応生成物270は、加熱され、中間生成物271として出る(工程(c))。中間生成物271は、後続する(第2の)断熱反応器261に導入され、そこで、反応生成物272が生成される(工程(d))。第2の断熱反応器261から、反応生成物272は、熱交換器281を通過し、そこで、反応生成物272は、加熱され、中間生成物273として出る(工程(e)、繰り返し工程(c))。中間生成物273は、後続する(第3の、かつ最終)断熱反応器262に導入され、そこで、反応生成物274が生成される(工程(e)、繰り返し工程(d))。第3の反応器262から、反応生成物274が、熱交換器225を通過して、冷却された反応生成物275をもたらす。次いで、冷却された反応生成物275は、熱交換器255を通過することによって更に冷却されて、回収され得る生成物276をもたらす(工程(e))。
【0155】
図2は、気化した出発材料220と反応生成物274との間で熱が交換される際の、熱交換流体としてのプロセス流(反応生成物274)の使用を示す。
【0156】
選択された実施形態
実施形態(1)は、断熱反応ゾーン内でのヒドロハロアルカンの脱ハロゲン化水素のためのプロセスを提供し、プロセスは、(a)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、(b)ヒドロハロアルカンを含む出発材料を、直列接続された反応器のうちの第1の断熱反応器内に導入して、反応生成物を生成する工程と、(c)反応生成物を、先行する反応器から熱交換器に通過させて、中間生成物を生成する工程と、(d)中間生成物を、熱交換器から後続する断熱反応器に導入して、反応生成物を生成する工程と、(e)任意選択的に、工程(c)及び(d)を、順番に1回以上繰り返す工程と、(f)ハロオレフィンを含む最終生成物を回収する工程と、を含み、最終生成物は、最終断熱反応器内で生成された反応生成物であり、最終断熱反応器は、最終断熱反応器の下流の断熱反応ゾーン内に後続する断熱反応器を有しない後続する断熱反応器である。
【0157】
実施形態(2)は、ヒドロハロアルカンが、式Y1Y2CH-CXY3Y4を有し、式中、Xは、F、Cl、Br、又はIであり、Yiの各々は、独立して、H、F、Cl、Br、又はI、アルキル基、又はハロアルキル基であり、式中、iは、1、2、3、及び4であり、ハロは、F、Cl、Br、又はIであるが、ただし、少なくとも1つのYiは、Hではないか、又は少なくとも1つのYiは、ハロアルキル基である、実施例(1)に記載のプロセスである。
【0158】
実施形態(3)は、ヒドロハロアルカンが、ヒドロハロエタンである、実施形態(2)に記載のプロセスである。
【0159】
実施形態(4)は、ヒドロハロアルカンが、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(CF2ClCH3)である、実施形態(2)に記載のプロセスである。
【0160】
実施形態(5)は、ヒドロハロアルカンが、ヒドロハロプロパンであり、ハロオレフィンが、ハロプロペンである、実施形態(2)に記載のプロセスである。
【0161】
実施形態(6)は、ヒドロハロプロパンが、CF3CFClCH3、CF3CHFCH2Cl、CF3CHClCH2F、CF3CH2CHFCl、CF3CHFCH2Cl、CF3CHClCH3、CF3CHFCH2F、CF3CH2CF2H、CF3CF2CH3、CF3CFClCH2F、CF3CHFCHFCl、CF3CHClCHF2、CF3CH2CF2Cl、CF3CHClCH2Cl、CCl3CH2CHCl2、CF3CH2CH2Cl、CF3CHClCH3、CCl3CHClCH2Cl、CCl3CH2CH2Cl、CH2ClCCl2CHCl2、及びこれらの2つ以上の混合物から選択される、実施形態(2)に記載のプロセスである。
【0162】
実施形態(7)は、ヒドロハロプロパンが、ヒドロクロロフルオロプロパンを含み、ハロプロペンが、ヒドロフルオロプロペンを含む、実施形態(5)に記載のプロセスである。
【0163】
実施形態(8)は、ヒドロハロプロパンが、CF3CFClCH3であり、ハロプロペンが、CF3CF=CH2である、実施形態(5)に記載のプロセスである。
【0164】
実施形態(9)は、工程(b)の上流に、以下の工程:(w)1,1,2,3-テトラクロロプロペン(1230xa)を含む組成物を提供する工程と、(x)1230xaを含む組成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、1233xfを含む生成物を生成する工程と、(y)1233xfを含む生成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、液相又は気相反応器内で、244bbを含む生成物を生成する工程と、任意選択的に、(z)工程(y)の生成物から244bbを分離する工程と、を更に含み、工程(y)の生成物、又は任意選択的な工程(z)が実施される場合、工程(z)の生成物は、工程(b)において出発材料である、実施形態(8)に記載のプロセスである。
【0165】
実施形態(10)は、工程(b)の上流に、以下の工程:(w’)CF3CHClCH2Cl(243db)を含む組成物を提供する工程と、(x’)243dbを含む組成物を、脱ハロゲン化水素剤又は脱ハロゲン化水素触媒と接触させて、CF3CCl=CH2(1233xf)を含む生成物を生成する工程と、(y’)1233xfを含む生成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、液相又は気相反応器内で、CF3CFClCH3(244bb)を含む生成物を生成する工程と、任意選択的に、(z’)工程(y’)の生成物から244bbを分離する工程と、を更に含み、工程(y’)の生成物、又は任意選択的な工程(z’)が実施される場合、工程(z’)の生成物は、工程(b)における出発材料である、実施形態(8)に記載のプロセスである。
【0166】
実施形態(11)は、工程(w’)の前に、(t’)CF3CH=CH2(1243zf)を含む生成物を生成する条件下で、CCl3CH2CH2Cl(250fb)を、HF及び触媒と接触させる工程と、(u’)1243zfを含む生成物を塩素化して、触媒の存在下又は不在下で、1243zfを塩素と接触させることによって、CF3CHClCH2Cl(243db)を含む生成物を生成する工程と、を更に含む、実施形態(10)に記載のプロセスである。
【0167】
実施形態(12)は、工程(b)の上流に、以下の工程:(w’’)CF3CHClCH2Cl(243db)を含む組成物を提供する工程と、(x’’)243dbを含む組成物を、脱ハロゲン化水素剤又は脱ハロゲン化水素触媒と接触させて、断熱反応ゾーン内で、CF3CCl=CH2(1233xf)を含む生成物を生成する工程と、(y’’)1233xfを含む生成物を、HFなどのフッ素化剤と接触させて、液相又は気相反応器内で、CF3CFClCH3(244bb)を含む生成物を生成する工程と、任意選択的に、(z’’)工程(y’’)の生成物から244bbを分離する工程と、を更に含み、工程(y’’)の生成物、又は任意選択的な工程(z’’)が実施される場合、工程(z’’)の生成物は、工程(b)における出発材料である、実施形態(8)に記載のプロセスである。
【0168】
実施形態(13)は、工程(w’’)の前に、(t’’)CF3CH=CH2(1243zf)を含む生成物を生成する条件下で、CCl3CH2CH2Cl(250fb)を、HF及び触媒と接触させる工程と、(u’’)1243zfを含む生成物を塩素化して、触媒の存在下又は不在下で、1243zfを塩素と接触させることによって、CF3CHClCH2Cl(243db)を含む生成物を生成する工程と、を更に含む、実施形態(12)に記載のプロセスである。
【0169】
実施形態(14)は、CF3CCl=CH2(1233xf)を含む生成物を処理して、1233xfを含む生成物から1233xfを分離することを更に含む、実施形態(9)、(10)、(11)、(12)、又は(13)のいずれかに記載のプロセスである。
【0170】
実施形態(15)は、CF3CFClCH3(244bb)を含む生成物を処理して、244bbを含む生成物から244bbを分離することを更に含む、実施形態(9)、(10)、(11)、(12)、又は(13)のいずれかに記載のプロセスである。
【0171】
実施形態(17)は、CF3CFClCH3(244bb)を含む生成物を処理して、244bbを含む生成物から244bbを分離することを更に含む、実施形態(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、又は(14)のいずれかに記載のプロセスである。
【0172】
実施形態(18)は、CF3CCl=CH2(1233xf)を含む生成物を処理して、1233xfを含む生成物から1233xfを分離することを更に含む、実施形態(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、又は(15)のいずれかに記載のプロセスである。
【0173】
上記に数多くの態様及び実施形態が記述されているが、これらは単に例示であり、限定するものではない。本明細書を読んだ後、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の態様及び実施形態が可能であることを理解するであろう。
【実施例0174】
比較例
この比較例では、単一の反応器を、480℃の温度及び70psigの圧力で等温操作する。反応器は、吸熱反応によって消費されるエネルギーを伝達するために、反応器を取り囲むシェルを通って流動する熱伝導流体を有する複数の空チューブを有する。反応器は、耐腐食性を提供するために、Inconel 600で作製されている。244bb出発材料の連続流動を反応器に供給する。反応生成物は、1時間後に分析され、244bbの1234yfへの変換を、(生成された1234yfのモル数)/(供給された244bbのモル数)として定義される、16.3%として測定される。(1234yf生成率)/(総反応器容積)として定義される、単一の等温反応器の生産性は、実施例1及び2と比較するために、100の値が与えられる。Aspen In-Plant Cost Estimator(商標)8.8版(Aspen Technology,Inc.、Newtown、PAから入手可能)を使用して設計された商業規模の反応器のInconel 600の重量及び製作コストも、実施例1及び2と比較するために100に設定される。
【0175】
(実施例1)
この実施例1では、断熱反応ゾーンは、断熱的に直列に動作する等しい容積の2つの反応器からなる。第1の断熱反応器への入口温度は、480℃であり、圧力は、70psigである。断熱反応器は、Inconel 600で作製された空パイプを含む。244bb出発材料の連続流動を、比較例にあるように、同じ供給速度で第1の断熱反応器に導入する。第1の断熱反応器からの反応生成物を、第2の断熱反応器に入る前に、熱交換器内で480℃に加熱する。第2の断熱反応器からの反応生成物は、1時間後に分析され、244bbの1234yfへの変換は、16.3%として測定される。直列の2つの断熱反応器の生産性は、単一の等温反応器と比較して39である。両方の反応器に対するInconel 600の総重量は、比較例で必要とされる重量の50%である。総製作コストは、比較例で使用される単一の等温反応器のコストの41%である。
【0176】
(実施例2)
この実施例2では、断熱反応ゾーンは、断熱的に直列に動作する等しい容積の3つの反応器からなる。第1の断熱反応器への入口温度は、480℃であり、圧力は、70psigである。反応器は、実施例1で使用されたものと同じ直径であり、空のInconel 600パイプから作製される。244bb出発材料の連続流動を、比較例及び実施例1にあるように、同じ供給速度で第1の断熱反応器に導入する。第1及び第2の断熱反応器からの反応生成物を、第2及び第3の断熱反応器にそれぞれ入る前に、熱交換器内で480℃に加熱する。第3の断熱反応器からの反応生成物は、1時間後に分析され、244bbの1234yfへの変換を、16.3%として測定される。直列の3つの断熱反応器の生産性は、単一の等温反応器と比較して55である。両方の反応器に対するInconel 600の総重量は、比較例で必要とされる重量の35%である。総製作コストは、比較例で使用される単一の等温反応器のコストの28%である。
断熱反応ゾーン内でのヒドロハロアルカンの脱ハロゲン化水素のためのプロセスであって、(a)少なくとも2つの直列接続された断熱反応器を備え、かつ順番に配置されて、直列の各2つの反応器間で流体連通している熱交換器を有する、断熱反応ゾーンを提供する工程と、(b)ヒドロハロアルカンを含む出発材料を、前記直列接続された反応器のうちの第1の断熱反応器内に導入して、反応生成物を生成する工程と、(c)前記反応生成物を、先行する反応器から熱交換器に通過させて、所望の変換を達成するための中間生成物を生成する工程と、(d)前記中間生成物を、前記熱交換器から後続する断熱反応器に導入して、反応生成物を生成する工程と、(e)任意選択的に、工程(c)及び(d)を、順番に1回以上繰り返す工程と、(f)ハロオレフィンを含む最終生成物を回収する工程と、を含み、前記最終生成物が、最終断熱反応器内で生成された前記反応生成物であり、前記最終断熱反応器が、前記最終断熱反応器から下流の前記断熱反応ゾーン内に後続する断熱反応器を有しない後続する断熱反応器であり、前記ヒドロハロアルカンが、ヒドロハロプロパンであり、前記ハロオレフィンが、ハロプロペンであり、前記ヒドロハロプロパンが、CF3CFClCH3であり、前記ハロプロペンが、CF3CF=CH2である、プロセス。
少なくとも1つの断熱反応器が、断熱触媒反応器として動作し、前記断熱触媒反応器が、金属ハロゲン化物、金属酸化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(若しくはゼロ酸化状態)金属若しくは金属合金、又はバルク若しくは担持形態の炭素から選択される触媒で充填される、請求項1に記載のプロセス。
(a)出発材料源と流体連通している前記第1の断熱反応器であって、前記出発材料源からヒドロハロアルカンを含む出発材料を前記第1の断熱反応器に流し、前記出発材料が反応生成物に変換される、第1の断熱反応器と、(b)前記第1の断熱反応器と流体連通し、かつ前記第1の断熱反応器の下流にあり、かつ前記反応生成物を流す熱交換器であって、反応生成物が加熱されて、中間生成物をもたらす、熱交換器と、(c)前記熱交換器と流体連通し、かつ前記熱交換器の下流にあり、かつ前記中間生成物を前記熱交換器から流す、後続する断熱反応器であって、前記中間生成物が反応して、反応生成物を形成する、後続する断熱反応器と、任意選択的に、(d)直列で、(c)の前記後続する断熱反応器と流体連通している、熱交換器と後続する反応器との1つ以上の組み合わせであって、各熱交換器に関して、反応生成物が加熱されて、中間生成物を形成し、各断熱反応器に関して、前記中間生成物が反応して、反応生成物を形成する、熱交換器と後続する反応器との1つ以上の組み合わせと、を備える、反応ゾーン。