(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120962
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ミラースキャナ
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240829BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240829BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
B81B3/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106161
(22)【出願日】2024-07-01
(62)【分割の表示】P 2020062201の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 清朗
(72)【発明者】
【氏名】矢部 友崇
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 新吾
(57)【要約】
【課題】
回路規模及びコストを抑えたミラースキャナを提供する。
【解決手段】
本発明のミラースキャナは、光を反射する第1の面を有し、所定の角度で交わる第1軸及び第2軸廻りに揺動可能なミラーと、前記ミラーの前記第1の面とは反対側の面である第2の面に配された永久磁石と、前記ミラーの前記第2の面に対向しかつ前記永久磁石を挟むように配された一対の端部を有するヨーク及び前記ヨークに巻き付けられたコイルを有する駆動部と、を有し、前記一対の端部は当該端部同士を結ぶ直線が前記第1軸及び前記第2軸に交差するように配されていることを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射する第1の面を有し、所定の角度で交わる第1軸及び第2軸廻りに揺動可能なミラーと、
前記ミラーの前記第1の面とは反対側の面である第2の面に配された永久磁石と、
前記ミラーの前記第2の面に対向しかつ前記永久磁石を挟むように配された一対の端部を有するヨーク及び前記ヨークに巻き付けられたコイルを有する駆動部と、
を有し、
前記一対の端部は当該端部同士を結ぶ直線が前記第1軸及び前記第2軸に交差するように配されていることを特徴とするミラースキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラースキャナに関し、特に、2軸周りでミラーを揺動させるミラースキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
光を偏向しつつ所定の領域に向けて出射し、当該所定の領域から戻ってきた光を検出することによって、当該所定の領域内に位置する物体に関する種々の情報を得る走査装置が知られている。このような走査装置において、光を偏向する部分として、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー等の可動式のミラーが設けられている。可動式のミラーを有する光走査装置として、ミラー振動子及び永久磁石が上下カバーにより包囲された光走査装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような光走査装置では、可動式ミラーの可動部分に対して磁気等により外部から力を加え、揺動運動や往復運動等を行わせる。例えば、ラスタスキャンを行う一般的な2軸駆動の可動式ミラーは、共振駆動による高速軸周りの揺動と、非共振駆動による低速軸周りの揺動とを組み合わせて可動式ミラーの揺動が行われる。
【0005】
非共振駆動は、共振現象を利用しない駆動方法であるため、共振駆動を行う場合よりもより大きなパワーを必要とする。このため、低速軸用の磁気回路は、高速軸用の磁気回路と比べて回路規模が大きい。従って、低速軸用の磁気回路を備えた光走査装置は、当該磁気回路の回路規模にひきずられて、デバイス全体のサイズが大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
また、従来の2軸駆動の可動式ミラーは、それぞれ独立し且つ専用設計された高速軸周りの揺動を行うヨーク及びコイルと低速軸周りの揺動を行うヨーク及びコイルを必要とした。そのため、2軸駆動のミラースキャナは、サイズ、重量及びコストも大きくなってしまう。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、サイズ、重量及びコストを抑えたミラースキャナを提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、光を反射する第1の面を有し、所定の角度で交わる第1軸及び第2軸廻りに揺動可能なミラーと、前記ミラーの前記第1の面とは反対側の面である第2の面に配された永久磁石と、前記ミラーの前記第2の面に対向しかつ前記永久磁石を挟むように配された一対の端部を有するヨーク及び前記ヨークに巻き付けられたコイルを有する駆動部と、を有し、前記一対の端部は当該端部同士を結ぶ直線が前記第1軸及び前記第2軸に交差するように配されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係るミラースキャナの全体構成を示す図である。
【
図4】実施例1に係るミラースキャナの上面図である。
【
図5】コイルのヨークへの巻き付けられ方の態様を模式的に示す図である。
【
図6】ヨークの傾斜角に対するミラーにかかる軸トルクを示す図である。
【
図10】駆動信号の印加時に発生する磁界の磁極を模式的に示す図である。
【
図11】駆動信号の印加時に発生する磁界の磁束を模式的に示す図である。
【
図12】合成した磁束を第1軸方向及び第2軸方向に分解した成分を模式的に示す図である。
【
図13】駆動信号の印加により磁気回路に交番に磁界が発生することを示す図である。
【
図14】駆動信号の印加により磁気回路に交番に磁界が発生することを示す図である。
【
図15】コイルのヨークへの巻き付けられ方についての第1の変形例を模式的に示す図である。
【
図16】コイルのヨークへの巻き付けられ方についての第2の変形例を模式的に示す図である。
【
図17】コイルのヨークへの巻き付けられ方についての第3の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0011】
図1は、本実施例に係るミラースキャナ100の全体構成を示す斜視図である。ミラースキャナ100は、可動式のミラーを周期的に揺動することで光の偏向動作を行う光走査装置である。
【0012】
ミラースキャナ100は、光偏向を行う光偏向子10と、光偏向子10を揺動させるための磁界を発生させる磁界発生源である磁気回路20と、を有する。
【0013】
本実施例のミラースキャナ100では、磁気回路20によって発生した磁界が光偏向子10に印加されることで、光偏向子10が揺動する。ミラースキャナ100は、例えば磁界の変化によって光偏向子10が動作する磁気駆動型のMEMS(Micro Electro Mechanical System)装置である。
【0014】
磁気回路20は、軟質磁性体材料、例えば、電磁鋼板からなるヨーク21を有する。ヨーク21は、例えば、一対のコア部21Aと、一対のコア部21Aを連結する連結部21Bと、一対の端部21Cと、からなるC字型又はU字型の形状を有する。一対の端部21Cは、一対のコア部21Aの連結部21Bに接続された部分とは反対側に位置している。
【0015】
また、磁気回路20は、ヨーク21の連結部21Bに巻き付けられたコイル23を有する。コイル23は、例えば、連続した鋼線を用いて連結部21Bに巻き付けられている。
【0016】
また、磁気回路20は、コイル23に駆動信号として電流を印加することでヨーク21から磁界を発生させる駆動回路25を有する。本実施例においては、駆動回路25は、コイルに対し、交流電流を駆動信号として印加する。これによって、ヨーク21の一対の端部21Cから、それぞれ交流磁界が発生する。すなわち、ヨーク21の一対の端部21Cは、磁界を発生させる磁界発生端としての性質を有する。
【0017】
本実施例においては、ヨーク21は、駆動回路25によってコイル23に電流が印加されることにより、電磁石として機能する。すなわち、本実施例の磁気回路20は、交流磁界を発生させる電磁石を有する。
【0018】
図2は、光偏向子10の平面図である。また、
図3は、光偏向子10の断面図であり、
図2における3-3線に沿った断面図である。
図2及び
図3を用いて、光偏向子10の構成について説明する。
【0019】
本実施例においては、光偏向子10は、所定の光に対して反射性を有するミラーである光反射面10Sを有する。すなわち、光偏向子10は、光反射面10Sが第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYの周りに揺動するMEMSミラーである。
【0020】
光偏向子10は、支持部11と、支持部11によって揺動可能に支持された可動部12と、永久磁石13と、を含む。永久磁石13は、磁界の変化に応じて可動部12を揺動させる。
【0021】
可動部12は、第1の揺動軸AYの周りに揺動可能な状態で支持部11に支持された可動枠12Aを有する。本実施例においては、可動枠12Aは、環状の枠体であり、第2の揺動軸AXに沿って延びるトーションバー11Xによって支持部11に接続及び支持されている。
【0022】
また、可動部12は、可動枠12Aの内側に配置され、第2の揺動軸AYの周りに揺動可能な状態で可動枠12Aに支持された可動板12Bを有する。本実施例においては、可動板12Bは、平板状の部材であり、その面の一方が光反射面10Sとして機能する。また、可動板12Bは、第2の揺動軸AYに沿って延びるトーションバー12Yによって可動枠12Aに接続及び支持されている。
【0023】
トーションバー11Xがその周方向にねじれるように永久磁石13に磁界が印加されると、可動枠12A及び可動板12Bは、支持部11に支持されつつ第1の揺動軸AXの周りに揺動する。また、トーションバー11X及び12Yがその周方向にねじれるように永久磁石13に磁界が印加されると、可動枠12Aが第1の揺動軸AXの周りに揺動し、かつ可動板12Bが第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYの周りに揺動する。
【0024】
また、本実施例においては、永久磁石13は、可動板12Bにおける他方の面(光反射面10Sとして機能する面とは反対側の面)上に固定されている。また、例えば、光偏向子10における支持部11及び可動部12は、半導体材料からなり、例えば半導体ウェハを加工することで形成することができる。
【0025】
図4は、本実施例に係るミラースキャナ100の光反射面10Sに垂直な方向から見た上面図である。なお、ここではヨーク21の連結部21B及びコイル23については図示を省略している。
【0026】
ヨーク21は、一対の端部21Cの各々が光偏向子10の可動板12Bの第2の面に対向し、且つ一対の端部21Cの中心同士を結ぶ直線である直線A1が第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYとそれぞれ所定の角度として、例えば、第2の揺動軸AYに対して角度θ<45°の角度で傾斜するように配置されている。
【0027】
なお、ヨーク21は、直線A1が、光偏向子10の光反射面10Sに垂直な方向において第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYの交点に重なる位置となるように配置されている。第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYの交点に相当する位置の光偏向子10の可動板12Bの第2の面上には、永久磁石13が配置されている。
【0028】
また、ヨーク21は、一対の端部21Cが永久磁石13の配置位置を中心として直線A1上において対称な位置関係となるように配置されている。すなわち、ヨーク21は、ヨーク21の一対の端部21Cが永久磁石13の配置位置を挟むように配置されている。
【0029】
換言すれば、ミラースキャナ100は、光を反射する光反射面10Sを有し、所定の角度で交わる第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AY廻りに揺動可能なミラーと、光偏向子10の光反射面10Sとは反対側の面である第2の面に配された永久磁石13と、光偏向子10の第2の面に対向しかつ永久磁石13を挟むように配された一対の端部21Cを有するヨーク21及びヨーク21に巻き付けられたコイル23を有する磁気回路20と、を有し、一対の端部21Cは当該端部同士を結ぶ直線が第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYに交差するように配されている。
【0030】
また、永久磁石13は、光偏向子10の第2の面上の第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYを含む平面に垂直な方向から見て第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYの交点と重なる位置に配され、一対の端部21Cの各々は、永久磁石13と対向するように配されている。
【0031】
図5は、ヨーク21におけるコイル23の態様を模式的に示す図である。コイル23は、例えば、共通の巻き線を用いてヨーク21の連結部21Bに連続して同じ方向に巻き付けられている。このようにコイル23が巻き付けられることにより、コイル23に所定の方向(例えば、
図5に矢印で示す方向)に交流電流Iを流した際、ヨーク21の一対の端部21Cの一方がN極となり、他方がS極となるように交流磁界が発生する。
【0032】
再び
図4を参照すると、本実施例のミラースキャナ100は、光偏向子10を第2の揺動軸AYの周りに高速で揺動するように共振動作させるとともに、第1の揺動軸AXの周りに低速で揺動するように非共振動作させるべく、交流磁界を発生させる。すなわち、本実施例では第2の揺動軸AYが高速軸、第1の揺動軸AXが低速軸となる。従って、光偏向子10の光反射面10Sに光を入射することにより、光反射面10Sが光を反射すると共に反射光を第2の揺動軸AYの方向に高速に走査しつつ第1の揺動軸AXの方向に低速に走査する。これにより、反射光を光偏向子10の光反射面10Sでラスタスキャンさせることが可能となる。
【0033】
駆動回路25は、駆動信号DSをコイル23に印加する。
【0034】
駆動信号DSは、第1の信号である低速軸駆動用の鋸歯状波に第2の信号である鋸歯状波よりも振幅が小さく且つ周波数が大きい高速軸駆動用の第2の正弦波を重畳した電流波形を有する。
【0035】
図6は、本実施例に係るミラースキャナ100のヨーク21の所定の傾斜角度θにおける第1及び第2の揺動軸AX及びAYにかかる軸トルクを示す図である。
【0036】
横軸は、永久磁石13と永久磁石13に対向するヨーク21の一対の端部の各々との距離を示す。また、縦軸は、各々の揺動軸に係る軸トルクを示す。
【0037】
図中の曲線の各々は、ヨーク21の一対の端部21Cの中心同士を結ぶ直線A1と第2の揺動軸AYとの傾斜角θがそれぞれ0°(並行)、5°及び10°の場合について示す。また、図中の実線は非共振動作をする第1の揺動軸AXにかかる軸トルクであり、破線は共存動作をする第2の揺動軸AYにかかる軸トルクである。
【0038】
低速軸である第1の揺動軸AXにかかる軸トルクは、傾斜角θを0~10°まで変化させても、傾斜角θによる軸トルクの変化はほとんど影響を受けないことがわかる。また、永久磁石13と一対の端部21Cが離れるにつれていずれの傾斜角θにおいても距離に対して反比例的に軸トルクの減少がみられるが、いずれの距離においても傾斜角θによる影響はみられない。
【0039】
一方、高速軸である第2の揺動軸AYにかかる軸トルクは、傾斜角θを0°、5°、10°と変化させるごとに軸トルクの上昇がみられる。
【0040】
前述の通り、共振動作をする高速軸は、非共振動作をする低速軸に比べ、小さな軸トルクで駆動が可能である。すなわち、ヨーク21を傾斜角θで傾けることで非共振動作に必要な軸トルクに影響を及ぼさずに共振動作に必要な軸トルクを得ることが可能となる。
【0041】
図7は、駆動信号DSの電流波形を示す波形図である。また、
図8は、第1の信号である低速軸駆動用の鋸歯状波を示している。また、
図9は、第2の信号である高速軸駆動用の正弦波を示している。また、振幅AMLは、低速軸駆動用の鋸歯状波に相当する低速軸用振幅を示している。また、振幅AMHは、高速軸駆動用の正弦波に相当する高速軸用振幅を示している。
【0042】
図8に示す第1の信号である鋸歯状波は、第1の揺動軸AXをラスタスキャンにおける低速走査方向に光を走査させるための信号である。本実施例においては、第1の信号は、低速走査方向を1の方向に走査させるものであり、走査開始位置に光反射面を移動させる急峻な傾きを有する区間と、走査開始位置から走査終了位置まで所定の速度で操作させる区間と、を有する。
【0043】
また、
図9に示す第2の信号である正弦波は、第2の揺動軸AYをラスタスキャンにおける高速走査方向に光を走査させるための信号である。尚、光偏向子10の第2の揺動軸AYは共振駆動である故、正弦波は、第2の揺動軸AYの共振周波数に合わせた周波数を有する。また、共振駆動は非共振駆動に比べて大きなパワーを必要としない故、第2の信号である正弦波は、第1の信号による第1の揺動軸AXの駆動に影響を及ぼさないように振幅を小さくすることができる。
【0044】
また、前述の通り、駆動信号DSは第1の信号である低速軸駆動用の鋸歯状波と第2の信号である高速軸駆動用の正弦波を重畳した
図7に示すような信号波形を有する。
【0045】
換言すれば、第1の信号は、前記第2の信号よりも振幅が大きくかつ周波数が小さい。
【0046】
また、第1の信号は、鋸歯状波であり、第2の信号は、正弦波である。
【0047】
図10は、駆動信号DSの印加によって磁界が発生した際に、ヨーク21の一対の端部21Cに生じる磁極を模式的に示す図である。
【0048】
駆動信号DSの印加により第1のコイル23に電流が流れ、ヨーク21の一対の端部21Cの一方がN極、他方がS極となるように磁界が発生する。
図10では、ヨーク21の一対の端部21Cのうち、図中上方の側に示した端部である一方の端部21CがN極(図中、Naとして示す)、図中下方の側に示した端部である他方の端部21CがS極(図中、Saとして示す)となった場合を示している。
【0049】
図11は、駆動信号DSの印加によって発生する磁界の磁束を、ベクトルを用いて模式的に示す図である。駆動信号DSの印加により、磁極Naから磁極Saに向かう方向にベクトルS1として示す磁束が発生する。
【0050】
なお、ベクトルS1は、ヨーク21が第2の揺動軸AY対して傾斜して配された傾斜角θの角度で形成される。
【0051】
図12は、
図11に示すベクトルS1の磁束を第2の揺動AYの方向(以下、Y方向と称する)及び第1の揺動軸AXの方向(以下、X方向と称する)に分解した成分を、ベクトルを用いて模式的に示す図である。磁束のY方向の成分SYは、ベクトルS1のY方向の成分に相当するベクトル成分となる。一方、磁束のX方向の成分SXは、ベクトルS1のX方向の成分に相当するベクトル成分となる。
【0052】
このように、駆動信号DSをコイル23に印加することにより、Y方向の磁束成分が大きく、X方向の磁束成分が小さい磁界が発生する。従って、かかる磁界を永久磁石13に印加することにより、比較的大きなパワーを必要とする非共振駆動(低速駆動)で光偏向子10を第1の揺動軸AXの周りに揺動させ、大きなパワーを必要としない共振駆動(高速駆動)で光偏向子10を第2の揺動軸AYの周りに揺動させることができる。
【0053】
図13及び
図14は、
図7に示すような信号波形の駆動信号DSを印加することにより、磁気回路20に交番に磁界が発生することを示す図である。
図13は
図7に示す時刻Aにおいてヨーク21の一対の端部21Cで発生する磁極、
図14は
図7に示す時刻Bにおいてヨーク21の一対の端部21Cで発生する磁極を示している。
【0054】
時刻Aでは、ヨーク21が配された所定の角度の傾斜角θにより、磁極Naから磁極Saに向けて磁束が流れる。そして、時刻Bではこれらの関係が反転した状態となる。
【0055】
また、前述の通り、コイル23に入力される駆動信号DSは第1の信号である低速軸駆動用の鋸歯状波と第2の信号である高速軸駆動用の正弦波とが重畳した波形となる。従って、時刻A近傍及び時刻B近傍のそれぞれにおいて、一対の端部21Cは、永久磁石13に対して第2の揺動軸AY周りに第2の信号の正弦波の周波数で引力又は斥力が印可され、可動板12Bの共振駆動力源となる。また、一対の端部21Cは、永久磁石13に対して第1の揺動軸AX周りに鋸歯状波に応じた引力又は斥力が印可され、可動枠12Aの非共振駆動力源となる。これにより、光偏向子10は、駆動信号DSがコイル23に入力されることで、光偏向子10を第2の揺動軸AXの方向に非共振駆動させ且つ、光偏向子10を第1の揺動軸AYの方向に共振駆動させることが可能となる。従って、全体として所望の回転動作(すなわち、揺動動作)を実現することができる。
【0056】
換言すれば、一対の端部21C同士を結ぶ直線A1と第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYとがなす角度は、一対の端部21C同士を結ぶ直線A1と第1の揺動軸AXとがなす角度よりも一対の端部21C同士を結ぶ直線A1と第2の揺動軸AYとがなす角度の方が小さく、コイル23には、光偏向子10を第1の揺動軸AX回りに駆動する第1の信号に光偏向子10を第2の揺動軸AY回りに駆動する第2の信号を重畳した駆動信号DSが入力されることで光偏向子10が揺動する。
【0057】
以上のように、本実施例のミラースキャナ100では、ヨーク21の一対の端部21Cの中心同士を結ぶ直線が光偏向子10の揺動軸である第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYと所定の角度をなすように配された1のヨーク21を用いて磁気回路20を構成している。そして、低速軸用の鋸歯状波に高速軸用の正弦波を重畳した駆動信号DSをコイル23に印加して交番磁界を発生させる。これにより、本実施例によるミラースキャナ100は、光偏向子10を第2の揺動軸AYの周りに高速で揺動させ、第1の揺動軸AXの周りに低速で揺動させるラスタスキャンをすることが可能となる。
【0058】
本実施例のミラースキャナ100によれば、高速軸用の共振駆動及び低速軸用の非共振駆動を1つのヨークを用いて実現することができるため、ミラースキャナのサイズ、重量及びコストを抑えることが可能となる。
【0059】
尚、上記実施例では、駆動信号として低速軸用の鋸歯状波に高速軸用の正弦波を重畳した信号を用いる例について説明したが、これに限られず、第1の揺動軸AX及び第2の揺動軸AYの周りに光偏向子10を揺動させることが可能な駆動信号を用いるものであればよい。
【0060】
また、上記実施例では、低速軸である第1の揺動軸AXを1の方向に走査させる第1の信号として鋸歯状波を入力する場合について説明した。しかしながら、第1の揺動軸AXの操作方向は1の方向に限定されない。例えば、第1の揺動軸AXの往路及び復路の双方向の揺動を利用するために、高速軸用の第2の信号よりも周波数が小さく且つ振幅の大きい正弦波を入力することで、第1の揺動軸AXの往路及び復路の双方向の揺動を利用したラスタスキャンが可能となる。
【0061】
また、上記実施例では、コイル23がヨーク21の連結部に鋼線を用いて巻き付けられている例について説明した。しかし、コイルの各々の構成はこれに限られない。
【0062】
例えば、
図15に示すように、共通の鋼線を用いて連続して巻き付けられた第1のコイル23A及び第2のコイル23Bから構成されていてもよい。すなわち、第1コイル23A及び第2コイル23Bの各々は、上記実施例のように分離されていない1つのコイルではなく、一対のコア部に分離して巻き付けられた一対のコイルによって構成することが可能である。
【0063】
また、
図16に示すように、コイル23は、ヨーク21の一対のコア部21Aに巻き付けられた第1のコイル23A及び第2のコイル23Bと、連結部21Bに巻き付けられたコイル23Cと、から構成されていてもよい。すなわち、第1コイル部及び第2コイル部の各々は、ヨークの一対のコア部及び連結部にそれぞれ分離して巻き付けられた3つのコイルによって構成することが可能である。
【0064】
また、
図17に示すように、コイル23は、
図16に示した3つのコイル(23A、23B及び23C)を足し合わせた長さを有する一連のコイル23Dから構成されていてもよい。すなわち、第1コイル部及び第2コイル部の各々は、ヨークの一対のコア部及び連結部に亘って巻き付けられた一連のコイルから構成されていてもよい。
【0065】
尚、上記の
図15~17に示した変形例では、複数の部分に跨って巻き付けられたコイル23A~23Cが共通の鋼線を用いて連続して巻き付けられている例について説明した。しかし、第1、第2及び第3のコイル23A、23B及び23Cは、それぞれ独立した鋼線を用いてヨーク21の一対のコア部21Aの各々又は連結部21Bに巻き付けられていてもよい。すなわち、第1、第2及び第3のコイル23A、23B及び23Cは、駆動信号DSの印加を受けた際にヨーク21の一対の端部21Cの一方がN極、他方がS極となるように巻き付けられていればよい。
【0066】
換言すれば、コイル23は、駆動信号DSの入力を受けた際に、一対の端部21Cの各々が互いに逆極性となるように構成されている。
【0067】
また、上記実施例で説明した一連の処理は、例えばROMなどの記録媒体に格納されたプログラムに従ったコンピュータ処理により行うことができる。