(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120964
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/42 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
F04D29/42 A
F04D29/42 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106550
(22)【出願日】2024-07-02
(62)【分割の表示】P 2020018337の分割
【原出願日】2020-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】葛山 達夫
(57)【要約】
【課題】メンテナンス性が向上する遠心ポンプを提供する。
【解決手段】インペラ10と、インペラ10を収容するケーシング2と、を備える遠心ポンプ1であって、ケーシング2は、インペラ10の駆動軸3の軸方向から見た形状が円形もしくは楕円形を有するとともに、ケーシング2の中心CL2が、インペラ10の駆動軸3の中心CL1と非同軸になっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラと、該インペラを収容するケーシングと、を備える遠心ポンプであって、
前記ケーシングは、前記インペラの駆動軸と直交する面に沿って二分割された前面側のフロントケーシングと背面側のバックケーシングとを有するとともに、前記インペラの駆動軸の軸方向から見た形状が円形もしくは楕円形に形成され且つ該円形もしくは楕円形の中心が、前記インペラの駆動軸と非同軸になっていることを特徴とする遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接液部にライナ構造を有する遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプのうち、高濃度の固形物を液体中に含むスラリを移送するスラリーポンプは、ケーシングの接液部内面が、スラリとの接触によって摩耗・腐食するため部品交換の頻度が高い。そのため、接液部にライナ構造を設けることにより、ランニングコストの低減および省資源化が図られている。
より具体的には、この種の遠心ポンプは、複数の羽根を有するインペラと、フロントケーシングおよびバックケーシングを有するケーシングと、を備える。インペラは、フロントケーシングとバックケーシングとによって画成された空間に収容される。ケーシング内面には、耐摩耗に優れたライナが設けられる。
【0003】
インペラは、ケーシング内の画成空間に設けられるため、ライナやケーシングは、複数の部品に分割された分割構造とされる。特に、複数に分割形成されるライナは、フロントケーシングの吸込口となるフロントライナを含んで構成される。これにより、ケーシングの内側に、耐摩耗に優れたライナが配置されるので、ライナのみを交換して遠心ポンプを長期的に運用できる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数に分割されたライナは、耐摩耗に優れた硬い材料から形成されるので、ライナへのねじ加工の難易度が高く、分割されたライナをケーシング内部に固定するために、ライナにネジを設けることは品質やコストの面から望ましくない。そのため、複数に分割されたライナは、ライナ自体にはネジを設けずに、組立てられた状態で、ライナを囲繞するケーシングによって保持される構造になっている。
【0006】
しかし、この種の遠心ポンプは、複雑なライナ構造を接液部に有するので、分解・組立作業の時間短縮がメンテナンス性に大きく影響する。また、スラリーポンプに限らず、従来の遠心ポンプの多くは、
図5に示す遠心ポンプ200のように、ケーシング202の分割面をボルト・ナット241,242で締結する構造になっている。また、ケーシング202の吸込口204および吐出口205について同様である。
【0007】
これに対し、クランプ式の締結構造を有する例を
図6に示す。同図に示す遠心ポンプ100のように、ケーシング102に対し、クランプ式の締結構造141、142、143、144を採用しているものが存在する。
この遠心ポンプ100は、駆動軸103を回転自在に支持するハウジング(軸受箱)107がベース120上に設けられ、ハウジング107の前方には、クランプ式の締結構造141、142、143、144によってケーシング102が着脱可能に装備されている。
このような構成であれば、ケーシング102の分解・組立作業の時間を短縮できるためメンテナンス性が向上するものの、同図に示すケーシング102の接液部は、ライナ構造を有しないシングルケーシングなので、接液部にライナ構造を有する遠心ポンプに適用する上では検討の余地がある。
【0008】
ここで、
図5(b)に示すように、複数のライナ231,232,233を有するライナ構造230を接液部に備えるケーシング202に対して、メンテナンス性を向上させるべく、クランプ式の締結構造を採用する場合、従来のケーシング202は、同図(a)の斜視図に示すように、単純な渦巻き形状なので、ケーシング202の接液部へのライナ231,232,233の組み込みを考えると、水漏れが発生しないようにクランプ式の締結構造を備えるケーシングおよびパッキンを製作するのは極めて困難である。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ケーシングの接液部にライナ構造を有する遠心ポンプにおいて、ケーシングの分解・組立作業をより安全に且つスムーズに行い得る、メンテナンス性を向上させた遠心ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る遠心ポンプは、インペラと、該インペラを収容するケーシングと、を備える遠心ポンプであって、前記ケーシングは、前記インペラの駆動軸と直交する面に沿って二分割された前面側のフロントケーシングと背面側のバックケーシングとを有するとともに、前記インペラの駆動軸の軸方向から見た形状が円形もしくは楕円形に形成され且つ該円形もしくは楕円形の中心が、前記インペラの駆動軸と非同軸になっていることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る遠心ポンプによれば、ケーシングの中心が、インペラの駆動軸と非同軸になっているので、ケーシングの吸込口若しくは吐出口およびインペラの吸込み部を、駆動軸の軸方向に対向する位置に設けることが可能となる。そのため、ライナ構造を有する遠心ポンプに適用する場合においても、クランプ式の締結構造を採用できるため、メンテナンス性が向上する。
【0012】
ここで、本発明の一態様に係る遠心ポンプにおいて、前記ケーシングは、前記フロントケーシングと前記バックケーシングとの分割面、吸込口の接続部または吐出口の接続部がクランプ式の締結構造になっていることは好ましい。このような構成であれば、ライナ構造を有する遠心ポンプにおいて、メンテナンス性を向上させる上で好適である。
【0013】
また、本発明の一態様に係る遠心ポンプにおいて、前記ケーシングは、前記ケーシング内面の接液部に、ライナを有する二重ケーシング構造を有することは好ましい。このような構成であれば、ライナ構造を有する遠心ポンプにおいて、メンテナンス性を向上させる上で好適である。
【0014】
また、本発明の一態様に係る遠心ポンプにおいて、前記ケーシングの吸込口若しくは吐出口および前記インペラの吸込部が、前記駆動軸の軸方向に対向する位置に設けられていることは好ましい。このような構成であれば、クランプ式の締結構造を採用して、メンテナンス性を向上させる上でより好適である。
【発明の効果】
【0015】
上述のように、本発明によれば、メンテナンス性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一態様に係る遠心ポンプの一実施形態を説明する模式的平面図である。
【
図2】
図1の遠心ポンプのケーシング部分を説明する図であり、同図では、軸線に沿った断面(
図1のY-Y断面)を示している。
【
図3】
図2のケーシング部分のX-X断面図である。
【
図4】本発明の一態様に係る遠心ポンプのケーシング部分の変形例を説明する図((a)~(c))であり、同図(a)は、背面吸込且つ背面吐出型の例、(b)は、前面吸込且つ背面吐出型の例、(c)は、前面吸込且つ前面吐出型の例である。
【
図5】従来の締結構造およびライナを有する遠心ポンプの一例を説明する図であり、同図(a)は斜視図、(b)は駆動軸の軸線に沿った断面図である。
【
図6】接液部にライナを有しない、従来のクランプ式締結構造のケーシングを有する遠心ポンプの一例を説明する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0018】
図1から
図3に、本発明に係る遠心ポンプの一実施形態を示す。本実施形態の遠心ポンプは、接液部にライナ構造を有するとともにクランプ式締結構造のケーシングを備えている。
図1に示すように、本実施形態の渦巻きポンプ1は、駆動軸3を回転自在に支持するハウジング(軸受箱)7と、吸込みカバー6と、ケーシング2と、を有する。駆動軸3は、ハウジング7の後端から後方に突設されており、この突設部が、ベルト伝達機構22を介してモータ23の出力軸24に駆動力を伝達可能に連結されている。
【0019】
図2にケーシング2の部分の縦断面を示すように、本実施形態の渦巻きポンプ1は、分割型のライナ30が接液部として内面に設けられたケーシング2を備える。
ケーシング2は、駆動軸3と直交する面に沿って二分割され、軸方向の前面側(同図の左側)のフロントケーシング8と、軸方向の背面側(同図の右側)のバックケーシング9と、を有する。フロントケーシング8とバックケーシング9とは、分割面の周囲が、クランプ式の締結構造(例えばワンタッチ式のクランプ機構(例えばヘルールクランプ))を用いて着脱可能に固定される。
【0020】
駆動軸3の先端3sは、バックケーシング9の中央からケーシング2の内部に張り出している。この駆動軸3の先端3sにインペラ10が片持ち支持されている。駆動軸3の先端3sの周囲の部分がインペラ10の吸込部10aになっている。インペラ10の吸込部10aは、駆動軸3の軸方向に対向する位置に設けられる。
インペラ10の軸方向の背面側には、バックケーシング9とハウジング20との間に、軸封装置21が駆動軸3を囲繞するように配されている。バックケーシング9の中央には、バックケーシング9の後面側に張り出すようにチーズ型の吸込みカバー6が設けられている。
【0021】
吸込みカバー6には、吸込口4が、インペラ10の駆動軸3の軸線CL1と同じ高さに且つ駆動軸3と直交する方向に突出するように設けられている。また、インペラ10の軸方向の前面側には、フロントケーシング8の径方向の上部中央に、円筒状内面を有する吐出口5が、その軸線CL3を駆動軸3の軸線CL1と並行に、駆動軸3の軸方向に対向する位置に開口して形成されている。
吸込みカバー6の背面側には、ハウジング7がベースフレーム20の上に載置固定されている。バックケーシング9の背面が、吸込みカバー6の前側面に固定されている。ハウジング7内には、駆動軸3が不図示の軸受けによって軸線を水平に支持されている。
【0022】
本実施形態の渦巻きポンプ1は、モータ23の駆動によりベルト伝達機構22を介して駆動軸3が駆動されてインペラ10が所期の方向に回転することにより、吸込口4からスラリ等の流体を吸い込んでその流体を吐出口5から吐出可能になっている。
分割型のライナ30は、耐摩耗に優れた素材から形成されており、フロントケーシング8の内面の接液部であって、ケーシング2の前面側の接液部を覆うフロントライナ31と、バックケーシング9の内面の接液部であって、ケーシング2の背面側の接液部を覆うバックライナ32と、を有する。フロントライナ31およびバックライナ32は、駆動軸3の軸線方向に沿って着脱可能になっている。
【0023】
吸込みカバー6には、その内周面の接液部を覆うようにゴム製のカバー部ライニング33がライニングされている。なお、フロントライナ31の吐出口5の接続部には、円環状のゴムパッキン35が介装される。また、バックライナ32の吸込口4側の接続部には、円環状のゴムパッキン36が介装される。
複数に分割されたライナ30は、ライナ自体にはネジを設けずに、
図2に示すように組立てられた状態で、ライナ30を囲繞するケーシング2および吸込みカバー6によって保持される構造になっている。カバー部ライニング33の前後も、その周囲がワンタッチ式のクランプ機構(例えばヘルールクランプ)41,42を用いて固定される。
【0024】
ここで、本実施形態に係る遠心ポンプ1には、以下の構造的特徴がある。
ケーシング2を正面(インペラ10の駆動軸3の軸方向)から見て、第一に、通常の遠心ポンプは、
図5(a)に示したような渦巻き形状のケーシングである。これに対し、本実施形態の遠心ポンプ1は、
図3に示すように、ケーシング2を正面(インペラ10の駆動軸3の軸方向)から見た形状が単純な円形(若しくは楕円形)である。
【0025】
そして、第二に、本実施形態の遠心ポンプ1は、駆動軸3の中心CL1に対して円形のケーシング2の中心CL2が偏心しており、ケーシング2の中心CL2とインペラ10の駆動軸3の中心CL1とが非同軸の位置にある非同軸型である。なお、同図に示すように、本実施形態では、非同軸型の遠心ポンプとしつつも、滑らかなインボリュート曲線を描くように被送流体の流路が形成されている。
また、第三に、本実施形態に係る遠心ポンプ1は、側面(インペラ10の駆動軸3の軸線CL1とは直交方向)から見て、
図2に示すように、ケーシング2を二分割する面(駆動軸3の軸線CL1と直交する面)から、フロントライナ31およびバックライナ32を軸方向に沿ってそれぞれ抜き差しできる。
【0026】
第四に、
図5に示した通常の遠心ポンプ200のように、従来、インペラ210の駆動軸203に対して吐出口205の軸線が垂直に向いているところ、本実施形態の遠心ポンプ1では、インペラ10の駆動軸3の軸線CL1と吐出口5の軸線CL3とが平行になっている。
第五に、本実施形態の遠心ポンプ1では、ケーシング2の吸込口4およびインペラ10の吸込部10aが駆動軸3側にある。本実施形態の遠心ポンプ1では、これらの構造的特徴を組み合わせることにより、クランプ式の締結構造とライナ構造とを両立できる。
【0027】
なお、本発明に係る遠心ポンプは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態の遠心ポンプ1は、ケーシング2を正面(インペラ10の駆動軸3の軸方向)から見た形状が単純な円形の例を示したが、これに限定されず、ケーシングを正面(インペラ10の駆動軸3の軸方向)から見た形状が楕円形であってもよい。
【0028】
また、上記実施形態の遠心ポンプ1は、ケーシング2の吸込口4および吐出口5の位置が、背面吸込且つ前面吐出型の例を示したが、これに限らず、例えば、
図4(a)に示すように、吸込口4および吐出口5の位置を、背面吸込且つ背面吐出型とすることができ、また、同図(b)に示すように、前面吸込且つ背面吐出型とすることができ、また、同図(c)に示すように、前面吸込且つ前面吐出型とすることができる。
【0029】
上記実施形態およびこれら変形例に示す非同軸型の遠心ポンプによっても、メンテナンス性が向上する。特に、本発明に係る非同軸型の遠心ポンプは、上記実施形態および変形例に示したようにコンパクトな構成により、多様な態様が採用可能であり、ライナ型に好適であるものの、ライナ型には限定されず、軸方向分解性が大幅に向上することから、例えばインラインポンプとして、配管の途中部分に介装するような用途(例えばブーストポンプ)に好適である。
【符号の説明】
【0030】
1 遠心ポンプ
2 ケーシング
3 駆動軸
4 吸込口
5 吐出口
6 吸込みカバー
7 ハウジング(軸受箱)
8 フロントケーシング
9 バックケーシング
10 インペラ(羽根車)
11 主羽根(羽根)
20 ベースフレーム
21 軸封装置
22 ベルト伝達機構
23 モータ
24 出力軸
30 ライナ
31 フロントライナ
32 バックライナ
33 カバー部ライニング
40 ワンタッチクランプ
CL1 インペラの駆動軸の軸線
CL2 ケーシングの中心の軸線
CL3 吐出口の中心の軸線
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラと、該インペラを収容するケーシングと、を備える遠心ポンプであって、
前記ケーシングは、前記ケーシング内面の接液部に、接液するライナが交換可能に内装される二重ケーシング構造を有し、さらに、前記インペラの駆動軸と直交する面に沿って二分割された前面側のフロントケーシングと背面側のバックケーシングとを有し、且つ前記ライナは前記フロントケーシングに内装されるフロントライナと前記バックケーシングに内装されるバックライナとに分かれているとともに、前記フロントライナ及び前記バックライナは前記フロントケーシング及び前記バックケーシングに対して着脱可能になっており、前記インペラの駆動軸の軸方向から見た形状が円形もしくは楕円形に形成され且つ該円形もしくは楕円形の中心が、前記インペラの駆動軸と非同軸になっていることを特徴とする遠心ポンプ。