(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012099
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】防振部材及び天井構造
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240118BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20240118BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F15/04 A
F16F15/02 N
E04H9/02 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094428
(22)【出願日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022113261
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国土交通省、建設技術研究開発助成制度「政策課題解決型技術開発」(研究開発課題名:コンクリート床スラブの厚さを半減する環境配慮型床振動>遮断メタマテリアルの開発)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】519321683
【氏名又は名称】株式会社3D Printing Corporation
(71)【出願人】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 仁士
(72)【発明者】
【氏名】松永 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恭章
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 竜太
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】水上 孝一
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC26
2E139BA24
2E139BA44
3J048AA01
3J048AD07
3J048BC04
3J048BC05
3J048BD01
3J048BD04
3J048BD06
3J048BD07
3J048BF05
3J048CB24
3J048DA07
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】所望の振動数の振動を遮断又は減衰して伝達する。
【解決手段】防振部材100は、軸方向の一方側に上側凸部210が設けられた筒体110と、筒体110内に軸方向に沿って設けられた軸体120と、筒体110の内壁112と軸体120とに接合された板バネ部130、140材と、筒体110内に設けられた複数の質量体部150と、内壁112と質量体部150とに第一連結部160を介して接続された第一バネ部162と、質量体部150と軸体120とに第二連結部170を介して接続された第二バネ部162と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一方側に第一接続部が設けられた筒体と、
前記筒体内に軸方向に沿って設けられ、前記軸方向の他方側の端部に第二接続部が設けられた軸体と、
前記筒体と前記軸体とに接合された弾性部材と、
前記筒体に接続された第一バネ部と、
前記軸体に接続された第二バネ部と、
前記第一バネ部と前記第二バネ部とに接続された質量体部と、
を備えた防振部材。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記筒体の内壁と前記軸体とに接合され、
前記質量体部は、前記筒体内に設けられ、
前記第一バネ部は、前記内壁と前記質量体部とを接続する、
請求項1に記載の防振部材。
【請求項3】
前記質量体部は複数設けられ、
反共振振動数の異なる前記質量体部を有している、
請求項1に記載の防振部材。
【請求項4】
少なくとも前記弾性部材と前記第一接続部と前記第二接続部は、金属材料で構成されている、
請求項1に記載の防振部材。
【請求項5】
前記質量体部の全部又は一部は、他の構成部とは比重の異なる材料で構成されている、
請求項1に記載の防振部材。
【請求項6】
前記質量体部には、収容部が形成され、
前記収容部には、前記質量体部とは比重の異なる材料で構成された錘部材が収容されている、
請求項1に記載の防振部材。
【請求項7】
単一の材料で構成されている、
請求項1に記載の防振部材。
【請求項8】
少なくとも前記第一接続部及び前記第二接続部は不燃性の材料で構成され、
不燃性の材料で構成され可撓性を有する連結材で前記第一接続部と前記第二接続部とが繋がっている、
請求項1に記載の防振部材。
【請求項9】
前記第一接続部は、前記筒体にねじ込まれた第一口径変換アダプターと、前記第一口径変換アダプターにねじ込まれた第二口径変換アダプターとで構成され、
前記第二接続部は、前記軸体にねじ込まれた第三口径変換アダプターと、前記第三口径変換アダプターにねじ込まれた第四口径変換アダプターとで構成され、
前記連結材の一方の端部が前記第一口径変換アダプターと前記第二口径変換アダプターとの間に挟まれて取り付けられ、
前記連結材の他方の端部が前記第三口径変換アダプターと前記第四口径変換アダプターとの間に挟まれて取り付けられている、
請求項8に記載の防振部材。
【請求項10】
スラブの下面に吊られた上側吊材と、
前記上側吊材に第一接続部又は第二接続部の一方が接続された請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の防振部材と、
前記防振部材の前記第一接続部又は前記第二接続部の他方に接続され、天井材を吊る下側吊材と、
を備えた天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振部材及び天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マスダンパーを利用した防振(減振)装置に関する技術が開示されている。この先行技術は、基礎の上に防振ばねを介して架台を載置し、この架台の上に加振源体を設置して成る大型機械基礎などの防振装置である。そして、架台上にばねを介して質量可変型のマスダンパーを設置している。
【0003】
特許文献2には、自動車用補機類や精密機器等を防振支持するために用いられる防振グロメットに関する技術が開示されている。この先行技術では、防振グロメットは、ゴム状弾性材料で成形され、軸方向所定位置が支持側及び被支持側のうちの一方の部材に拘束されると共に軸方向端部が支持側及び被支持側のうちの他方の部材に拘束される筒状本体と、この筒状本体に埋設された重量体からなる。そして、筒状本体と重量体によるばね-マス系振動体が入力振動と逆位相で共振することにより入力振動を動的に吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-216932号公報
【特許文献2】特開2014-20427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、鉄筋コンクリート造のスラブに天井材が吊部材で吊られた天井構造が知られている。また、集合住宅等では階下に伝わる床衝撃音の一つとして重量床衝撃音が知られている。重量床衝撃音が上階から下階に伝わる経路は複数想定されるが、その一つとして、スラブで生じた振動が吊部材を介して天井材に伝搬し、下階に放射される経路がある。
【0006】
ここで、重量床衝撃音の評価を決定する振動数帯域は63Hz帯域であることが多い。よって、吊部材を介して天井材に伝搬する経路において、63Hz帯域の振動を遮断又は減衰させることができれば、重量床衝撃音に対して高い防音効果が得られると考えられる。
【0007】
このように所望の振動数の振動を遮断又は減衰して伝達することができれば有用であると考えられる。
【0008】
本発明は、上記事実を鑑み、所望の振動数の振動を遮断又は減衰して伝達することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一態様は、軸方向の一方側に第一接続部が設けられた筒体と、前記筒体内に軸方向に沿って設けられ、前記軸方向の他方側の端部に第二接続部が設けられた軸体と、前記筒体と前記軸体とに接合された弾性部材と、前記筒体に接続された第一バネ部と、前記軸体に接続された第二バネ部と、前記第一バネ部と前記第二バネ部とに接続された質量体部と、を備えた防振部材である。
【0010】
第一態様の防振部材では、第一接続部と第二接続部との間を伝搬する軸方向の振動によって弾性部材が軸方向に弾性変形することで軸体が軸方向に振動する。また、第一バネ部及び第二バネ部を介して筒体と軸体とに接続された質量体部が振動する。質量体部は、伝搬する振動に対して反共振振動数では逆位相で振動する。よって、反共振振動数の帯域の振動は遮断又は減衰して伝達される。
【0011】
したがって、質量体部の反共振振動数を遮断又は減衰させたい所望の振動数に設定した防振部材を、振動が伝達される経路に設けることで、所望の振動数の振動が遮断又は減衰して伝達される。
【0012】
第二態様は、前記弾性部材は、前記筒体の内壁と前記軸体とに接合され、前記質量体部は、前記筒体内に設けられ、前記第一バネ部は、前記内壁と前記質量体部とを接続する、第一態様に記載の防振部材である。
【0013】
第二態様の防振部材では、第一バネ部及び第二バネ部を介して筒体の内壁と軸体とに接続された質量体部が振動する。したがって、質量体部の反共振振動数を遮断又は減衰させたい所望の振動数に設定した防振部材を、振動が伝達される経路に設けることで、所望の振動数の振動が遮断又は減衰して伝達される。
【0014】
第三態様は、前記質量体部は複数設けられ、反共振振動数の異なる前記質量体部を有している、第一態様又は第二態様に記載の防振部材である。
【0015】
第三態様の防振部材では、反共振振動数が異なる質量体部を有しているので、防振部材を振動が伝達される経路に設けることで、複数の振動数の振動が遮断又は減衰して伝達される。
【0016】
第四態様は、少なくとも前記弾性部材と前記第一接続部と前記第二接続部は、金属材料で構成されている、第一態様~第三態様のいずれか一態様に記載の防振部材である。
【0017】
第四態様の防振部材では、振動時に大きな応力が作用する弾性部材と第一接続部と第二接続部とが金属材料で構成されているので、耐久性が向上する。
【0018】
第五態様は、前記質量体部の全部又は一部は、他の構成部とは比重の異なる材料で構成されている、第一態様~第四態様のいずれか一態様に記載の防振部材である。
【0019】
第五態様の防振部材では、質量体部の全部又は一部を他の構成部とは比重の異なる材料で構成することで、質量体部の単位体積当たりの質量を調整できる。よって、例えば、質量体部の全部又は一部を比重の大きな材料とすることで、質量体部の大きくすることなく質量体部の質量を大きくしたり、質量体部の質量を変えることなく大きさを小さくしたりすることができる。
【0020】
第六態様は、前記質量体部には、収容部が形成され、前記収容部には、前記質量体部とは比重の異なる材料で構成された錘部材が収容されている、第一態様~第五態様のいずれか一態様に記載の防振部材である。
【0021】
第六態様の防振部材では、錘部材の比重を変えることで、質量体部の反共振振動数を調整できる。
【0022】
第七態様は、単一の材料で構成されている、第一態様~第六態様のいずれか一態様に記載の防振部材である。
【0023】
第七態様の防振部材では、単一の材料で構成されているので、3Dプリンターでの製造が容易であり、複雑な形状とすることが容易である。
【0024】
第八態様は、少なくとも前記第一接続部及び前記第二接続部は不燃性の材料で構成され、不燃性の材料で構成され可撓性を有する連結材で前記第一接続部と前記第二接続部とが繋がっている、第一態様~第七態様のいずれか一態様に記載の防振部材である。
【0025】
第八態様の防振部材では、不燃性の第一接続部と二接続部とが不燃性で可撓性を有する連結材で繋がっているので、防振部材における第一接続部と二接続部の間の部位が火災時に切断しても不燃性の第一接続部と二接続部とは不燃性の連結材が繋がれている。
【0026】
第九態様は、前記第一接続部は、前記筒体にねじ込まれた第一口径変換アダプターと、前記第一口径変換アダプターにねじ込まれた第二口径変換アダプターとで構成され、前記第二接続部は、前記軸体にねじ込まれた第三口径変換アダプターと、前記第三口径変換アダプターにねじ込まれた第四口径変換アダプターとで構成され、前記連結材の一方の端部が前記第一口径変換アダプターと前記第二口径変換アダプターとの間に挟まれて取り付けられ、前記連結材の他方の端部が前記第三口径変換アダプターと前記第四口径変換アダプターとの間に挟まれて取り付けられている、第八態様に記載の防振部材である。
【0027】
第九態様の防振部材では、例えば、連結材の端部が挟まれた第一口径変換アダプター及び第二口径変換アダプターと、第三径変換アダプター及び第四口径変換アダプターと、を、それぞれ筒体と軸体とにねじ込むことで、第一接続部と第二接続部とを連結材で容易に繋げることができる。
【0028】
第十態様は、スラブの下面に吊られた上側吊材と、前記上側吊材に第一接続部又は第二接続部の一方が接続された第一態様~第九態様のいずれか一態様に記載の防振部材と、前記防振部材の前記第一接続部又は前記第二接続部の他方に接続され、天井材を吊る下側吊材と、を備えた天井構造である。
【0029】
第十態様の天井構造では、スラブで生じた床衝撃音等の振動が上側吊材、防振部材及び下側吊材を伝搬して天井材に伝達される。このとき、反共振振動数帯域の振動が遮断又は減衰して伝搬される。
【0030】
また、例えば、防振部材の反共振振動数を重量床衝撃音として問題となることが多い63Hz帯域の振動数に設定することで、上階のスラブの重量床衝撃音の下階への伝搬が効果的に抑制される。
【0031】
また、第八態様又は第九態様の防振部材を用いた場合では、防振部材における第一接続部と第二接続部の間の部位が、何らかの原因、例えば火災熱によって切断しても不燃性の第一接続部と二接続部とが不燃性の連結材が繋がれているので、天井材の落下が防止される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、所望の振動数帯の振動を遮断又は減衰して伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第一実施形態の吊部材を用いた天井構造の正面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態の吊部材の防振部材の斜視図である。
【
図3】
図2の防振部材の軸方向に沿った断面図である。
【
図4】
図2の防振部材の軸方向に沿った断面から見た断面斜視図である。
【
図5】
図2の防振部材の筒体内の内部構造部分の斜視図である。
【
図6】
図4の内部構造部分の板バネ部がない状態の斜視図である。
【
図8】
図1の天井構造をモデル化したモデル図である。
【
図9】
図2の防振部材の振動伝達率の数式をグラフ化したグラフである。
【
図10】
図2の防振部材をFEM解析した解析結果のグラフである。
【
図11】
図2の防振部材の防振特性を示すグラフである。
【
図12】本発明の第二実施形態の防振装置の上に設備機器を固定した正面図である。
【
図14】第一変形例の防振部材の軸方向に沿った
図3に対応する断面図である。
【
図15】第二変形例の防振部材の要部のみを図示した斜視図である。
【
図16】
図12の防振装置の防振部材の軸方向に沿った
図3に対応する断面図である。
【
図17】
図14の第一変形例の防振部材を用いた天井構造をモデル化したモデル図である。
【
図18】第三変形例の防振部材の軸方向に沿った
図3に対応する断面図である。
【
図19】第四変形例の防振部材の軸方向に沿った
図3に対応する断面図であり、(A)は質量体部を筒体内に挿入する前の状態の図であり、(B)は質量体部を筒体内に挿入した後の状態の図である。
【
図20】
図19の第四変形例の防振部材の質量体部の図であり、(A)は質量体部の底面図であり、(B)は質量体部をX方向から見た側面図であり、(C)は質量体部をY方向から見た側面図である。
【
図21】(A)は錘を挿入する前の状態の第五変形例の防振部材の軸方向に沿った
図3に対応する断面図であり、(B)は錘を挿入した後の状態の図であり、(C)は錘が挿入された質量体部の上面図である。
【
図23】第六変形例の防振部材の軸方向に沿った
図3に対応する断面図である。
【
図24】第七変形例の防振部材の落下防止部材の分解斜視図である。
【
図25】第七変形例の防振部材の軸方向に沿った
図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第一実施形態>
【0035】
本発明の第一実施形態の防振構造の一例としての天井構造について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向として、矢印Zで示す。
【0036】
なお、以下の説明に用いる図面においては、各要素の寸法及び比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない場合がある。複数の図面の相互間において各要素の寸法及び比率等は必ずしも一致していない場合がある。明細書中に特段の断りが無い限り、各要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0037】
[天井構造]
本実施形態の天井構造について説明する。
【0038】
図1に示す天井構造11が適用された吊り天井10は、複数の吊部材50と、スラブ20に吊部材50で吊られた天井材30と、を有して構成されている。天井材30は、下地枠34と天井ボード32とを有して構成されている。下地枠34は、平面視格子状に組まれ、吊部材50が接続されている。天井ボード32は、下地枠34に接合されている。なお、吊り天井10の構造は、一例であってこれに限定されるものではない。また、本実施形態のスラブ20は、鉄筋コンクリート造であるが、これに限定されるものではない。
【0039】
スラブ20の上には、二重床40が設けられている。二重床40は、複数の束材42と床材44と有している。束材42は、スラブ20の上面22に立てられている。また、束材42の下端部には防振ゴム41が設けられている。床材44は、束材42に支持され、スラブ20と間隔をあけて設けられている。床材44は、下地材43と仕上材45とが積層されて構成されている。
【0040】
なお、二重床40の構造は一例であって、これに限定されるものではない。また、二重床構造でなく、例えば、床材等をスラブ20に直貼りした構造であってもよい。
【0041】
図1及び
図2に示すように、複数の吊部材50は、それぞれ上側吊材52及び下側吊材53と、防振部材100と、を有して構成されている。上側吊材52、下側吊材53及び防振部材100は軸心が一致、すなわち同軸上に設けられている。本実施形態における軸方向は鉛直方向(Z方向)である。
【0042】
本実施形態における上側吊材52及び下側吊材53は、同じ太さの鋼製の棒材とされている。上側吊材52は、上端部がスラブ20(
図1参照)の上面24に固定されると共に下端部54が防振部材100に接合されている。下側吊材53は、上端部55が防振部材100に接合されると共に下端部が下地枠34に連結されている。
【0043】
[防振部材]
次に、防振部材100の構造について説明する。なお、防振部材100の上下を説明する場合は、吊部材50に設けられた状態における上下方向で説明する。
【0044】
図3は防振部材100の軸方向に沿った縦断面図であり、
図4は防振部材100の軸方向に沿った断面から見た断面斜視図である。また、
図5は防振部材の内部構造部分の斜視図であり、
図6は後述する上下の板バネ部130、140が無い状態の内部構造部分の斜視図である。
図7は、本実施形態の防振部材100の構造を判り易く図示した概略構成図である。
【0045】
図3及び
図4に示すように、防振部材100は、筒体110と、軸体120と、弾性部材の一例としての板バネ部130、140と、質量体部150と、第一バネ部162と、第二バネ部172と、を備えている(
図5、
図6及び
図7も参照)。本実施形態の防振部材100は、単一の材料、具体的には、合成樹脂で構成されている。そして、防振部材100は、粉末焼結積層造形方式の3Dプリンターで製造され、各部材が一体となって構成されている。
【0046】
本実施形態では、筒体110は円筒形であり、軸体120は円柱状であるが、これに限定されるものではない。例えば、筒体は角筒形で、軸部は角柱状であってもよい。
【0047】
筒体110の上部には、天井部200が設けられている。天井部200には、ネジ穴212が形成された突出部210が軸心上に形成されている。軸体120は、筒体110内に軸方向に沿って設けられている。軸体120の下端の軸端部128には軸方向に沿ってネジ穴222が形成されている。
【0048】
図3に示すように、上側吊材52の下端部54にはネジが切られており、防振部材100の突出部210のネジ穴212に捻じ込むことで、上側吊材52が防振部材100の筒体110と接合されている(
図2も参照)。同様に、下側吊材53の上端部55にはネジが切られており、防振部材100における軸体120の軸端部128のネジ穴222に捻じ込むことで、下側吊材53が防振部材100の軸体120と接合されている(
図2も参照)。
【0049】
なお、上側吊材52及び下側吊材53と、防振部材100との接合構造は一例であってこれに限定されるものではない。また、ネジ穴212が形成された突出部210が第一接続部の一例であり、軸体120におけるネジ穴222が形成された軸端部128が第二接続部の一例である。
【0050】
本実施形態の板バネ部130、140は円板状とされ、筒体110内に軸方向に間隔をあけて複数、本実施形態では、二枚設けられている(
図5及び
図7も参照)。板バネ部130、140の板厚方向は軸方向である(
図5も参照)。板バネ部130、140の径方向外側は筒体110の内壁112に接合され、中心部は軸体120の周面122に接合されている。別の観点から説明すると、板バネ部130、140は、軸心部分に軸体120が貫通するように接合されると共に外縁部が筒体110の内壁112に接合されている(
図5及び
図7も参照)。
【0051】
ここで、
図5に示すように、本実施形態の板バネ部130、140には、それぞれ複数の扇状の開口部132、142が形成されている(
図3及び
図4も参照)。前述したように、本実施形態の防振部材100は、粉末焼結積層造形方式の3Dプリンターで製造されている。そして、板バネ部130、140の開口部132、142は、製造後に不要な粉末を排出するためのものである。
【0052】
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、質量体部150は、筒体110内の二枚の板バネ部130と板バネ部140との間に設けられている(
図5、
図6及び
図7も参照)。
図4及び
図6に示すように、本実施形態の質量体部150は、軸方向から見みた形状が略扇状とされ、軸体120の径方向外側に周方向に間隔をあけて設けられている。本実施形態では、質量体部150は三つ設けられているが、これに限定されるものではない。
【0053】
図3及び
図4に示すように、各質量体部150のそれぞれの上面の軸体120側には接続凹部152が形成されている(
図6も参照)。更に接続凹部152の軸体120側の壁面部から上方に突出した後、軸体120側に屈曲したL字状の接続壁部154が形成されている(
図6も参照)。
【0054】
複数、本実施形態では三つの質量体部150は、それぞれ第一連結部160及び第一バネ部162を介して筒体110の内壁112に接続されている。また、質量体部150は、それぞれ第二連結部170及び第二バネ部172を介して軸体120と接続されている(
図7も参照)。
【0055】
別の観点から説明すると、第一バネ部162は、一端側が筒体110の内壁に第一連結部160を介して接続され、他端側が質量体部150の接続凹部152の底面に接続されている。また、第二バネ部172は、一端側が軸体120の周面122に第二連結部170を介して接続され、他端側が質量体部150の接続壁部154の上端に接続されている(
図7も参照)。
【0056】
第一連結部160は、筒体110の内壁112から径方向内側に突出した後、下側に屈曲したL字状とされ、そこから延びる肉薄部分が第一バネ部162である。そして、第一バネ部162の先端部が質量体部150の接続凹部152の底面に接続されている。本実施形態の第一バネ部162は、軸方向と直交する径方向を板厚方向とする板バネである。
【0057】
第二連結部170は、軸体120の周面から径方向外側に突出し、そこからL字状に上側に屈曲した肉薄部分が第二バネ部172である。そして、第二バネ部172の先端部が質量体部150の接続壁部154の先端に接続されている。本実施形態の第二バネ部172は、軸方向と直交する径方向を板厚方向とする板バネである。
【0058】
ここで、
図7は、防振部材100の構成を判り易くする図示した概略構成図である。そして、前述の防振部材100における質量体部150、第一連結部160、第一バネ部162、第二連結部170及び第二バネ部172等の形状及び構造は、
図7の構成を実現するための一例であって、このような構造に限定されるものではない。
【0059】
[振動伝達率]
次に、
図1に示す天井構造11におけるスラブ20から防振部材100が組み込まれた吊部材50を介して天井材30に伝達される振動の振動数と振動伝達率との関係について説明する。
【0060】
図8は、天井構造11をバネ-質点系で考えてモデル化したモデル図である。m1は防振部材100の質量体部150の質量であり、m2は天井材30の質量であり、k1は第一バネ部162のバネ定数であり、k2は第二バネ部172のバネ定数であり、k3は板バネ部130、140のバネ定数である。
【0061】
なお、天井材30は複数本の吊部材50で吊られている(
図1参照)。よって、m2は吊部材50一本、つまり防振部材100一個が負担する質量である。言い換えると、m2は、天井材30の全質量を吊部材50の本数で割った値である。
【0062】
質量体部150は、複数、本実施形態では三つ設けられているが、各質量体部150の質量は同じであり、m1は質量体部150の一つの質量である。
【0063】
第一バネ部162及び第二バネ部172は、複数、本実施形態では三つの質量体部150毎に設けられているので、第一バネ部162及び第二バネ部172はそれぞれ三つ設けられている。三つの第一バネ部162は同じバネ定数k1であり、三つの第二バネ部172は同じバネ定数k2である。
【0064】
板バネ部130及び板バネ部140は、それぞれ筒体110と軸体120とに接合され、筒体110及び軸体120に対して並列に連結されている。よって、バネ定数k3は、板バネ部130のバネ定数と板バネ部140のバネ定数との合計、つまり合成バネ定数である。
【0065】
X0はスラブ20の振動による軸方向(鉛直方向)の変位であり、X1はスラブ20から伝達した防振部材100の質量体部150の軸方向(鉛直方向)の変位であり、X2は吊部材50を介して伝達された天井材30の振動による軸方向(鉛直方向)の変位である。
【0066】
この
図8のモデル図をもとに作成した運動方程式が数[1]である。そして、運動方程式の数[1]から求めた理論解の振動伝達率が数[2]である。振動伝達率とは、スラブ20の振動による軸方向(鉛直方向)の振動が吊部材50(防振部材100)を介して天井材30に伝達される率であり、変位X2を変位X0で除した値である。
【0067】
【0068】
【0069】
図9は、この振動伝達率の数[2]をグラフ化したものである。この振動伝達率が極大となる振動数fp1及び振動数fp3が、数[3]で算出されるスラブ20の振動と質量体部150とが同位相で振動する共振振動数である。また、この振動伝達率が極小となる振動数fp2が、数[4]で算出されるスラブ20の振動と質量体部150とが逆位相で振動する反共振振動数である。
【0070】
【0071】
【0072】
振動伝達率が極小となる反共振振動数fp2の式[4]には、天井材30の質量m2の項がない。つまり、反共振振動数fp2は、計算上は、天井材30の質量m2によることなく、防振部材100の質量体部150の質量m1、第一バネ部162のバネ定数k1、第二バネ部172のバネ定数k2及び板バネ部130、140のバネ定数k3を調整することで設定できる。
【0073】
[防振部材の諸元の設定]
図1に示すスラブ20から吊部材50を介して天井材30に伝達される振動数のうち、遮断又は減衰させたい振動数が反共振振動数fp2になるように、防振部材100における質量体部150の質量m1、第一バネ部162のバネ定数k2、第二バネ部172のバネ定数k2及び板バネ部130、140のバネ定数k3を設定する。
【0074】
ここで、集合住宅等では階下に伝わる床衝撃音の一つとして重量床衝撃音が知られている。重量床衝撃音の評価を決定する振動数帯域は63Hz帯域であることが多い。別の観点から説明すると、重量床衝撃音の評価において、63Hz帯域が遮音等級の決定要因となりやすい。よって、本実施形態では、防振部材100の反共振振動数fp2を63Hz帯域に設定する。
【0075】
[作用及び効果]
次に本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0076】
天井構造11では、スラブ20から天井材30に吊部材50を介して伝達する軸方向の振動によって防振部材100の板バネ部130、140が軸方向に弾性変形することで軸体120が軸方向(上下方向)に振動する。また、第一バネ部162及び第二バネ部172を介して筒体110の内壁112と軸体120とに接続された質量体部150が振動する。
【0077】
ここで、本実施形態では、質量体部150は、板バネ部130、140による軸体120の軸方向の振動によって、質量体部150全体が軸方向に振動すると共に第一バネ部162及び第二バネ部172によって質量体部150の径方向外側が軸方向に振動(
図1の矢印Sを参照)する。
【0078】
そして、質量体部150は、伝搬する振動に対して反共振振動数fp2では逆位相で振動する。よって、反共振振動数fp2の帯域の振動は遮断又は減衰してスラブ20から天井材30に吊部材50を介して伝達される。
【0079】
本実施形態では、反共振振動数fp2を63Hz帯域に設定している。よって、スラブ20から天井材30に吊部材50を介して伝達する振動数のうち、63Hz帯域の振動が遮断又は減衰して伝達される。したがって、スラブ20の階下に響く重量床衝撃音が効果的に防音される。
【0080】
また、軸体120は、筒体110内に軸方向に間隔をあけて配置され筒体110の内壁112と軸体120とに接合された複数、本実施形態では二枚の板バネ部130、140に接合されている。板バネ部130、140は、軸方向には弾性変形するが、軸方向と直交する方向に対しては抵抗要素となる。そして、前述したように、板バネ部130、140は、筒体110内に軸方向に間隔をあけて配置され、軸体120の上端部と下端部とが板バネ部130、140によって固定されている。したがって、軸体120の軸方向に対して直交する方向及び曲げ方向の変位が小さくなり、軸体120は軸方向に沿って主に振動する。よって、地震時の天井材30の横揺れが小さくなる。
【0081】
また、本実施形態の防振部材100は、単一の材料、具体的には、合成樹脂で構成され、粉末焼結積層造形方式の3Dプリンターで製造されている。したがって、本実施形態の防振部材100のような複雑な形状であっても容易に製造することができる。
【0082】
[実験及びFEM解析]
次に、70Hzが反共振振動数となるように設定した防振部材100を3Dプリンターで製造した試作品を用いて実験した結果と、この試作品をFEMモデル化してFEM解析した解析結果について説明する。なお、FEMは、Finite Element Method、すなわち有限要素法の略称である。
【0083】
・FEM解析
図10は、FEM解析の解析結果のグラフである。なお、天井材30に相当する質量m2(
図8参照)は、2kg、5kg及び10kgの三種類で解析した。グラフにおけるJ1が2kgで、J2が5kgで、J3が10kgである。
図10のグラフを見ると判るように、共振振動数fp1は天井材30に相当する質量m2によって変化するが、反共振振動数fp2は質量m2によることなく一定(70Hz)である。よって、前述の数[4]の理論式が正しいことが判る。
【0084】
また、防振部材100の反共振振動数fp2を70Hzに設定することで、スラブ20から伝達される振動のうち重量床衝撃音の63Hz帯域の振動が防振部材100によって、遮断又は減衰させてスラブ20から天井材30に伝達させることが可能であることが確認された。
【0085】
・実験
図11は、防振部材100を用いた吊部材50の上端部を固定し、下端部に質量m2(
図8参照)に相当する錘をぶら下げて振動試験を行った結果のグラフである。具体的には、上側吊材52から防振部材100に入力される振動の大きさと、防振部材100から下側吊材53に透過していく振動の大きさと、の比を計測した結果のグラフである。質量m2(
図8参照)に相当する錘は、2kg、5kg及び10kgの三種類である。グラフにおけるJ1が2kgで、J2が5kgで、J3が10kgである。
【0086】
図11のグラフを見ると判るように、共振振動数fp1及びfp3は質量m2によって変化するが、反共振振動数fp2は質量m2によることなく略一定である。よって、前述の数[4]の理論式が正しいことが判る。
【0087】
また、防振部材100の反共振振動数fp2を70Hzに設定することで、スラブ20から伝達される振動のうち重量床衝撃音の63Hz帯域の振動が防振部材100によって、遮断又は減衰されてスラブ20から天井材30に伝達させることが確認された。
【0088】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態の防振装置70について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0089】
[防振装置]
まず、防振装置の構造について説明する。
【0090】
図12に示すように、振動源となるモーター等の設備機器82が、スラブ80の上に設置された防振装置70の上に固定されている。
【0091】
防振装置70は、複数の防振部材300(
図16参照)、ボルト74、上側架台72及び下側架台73で構成されている。上側架台72及び下側架台73は、それぞれ鉄骨材が平面視で矩形枠状に組まれて構成されている(
図13も参照)。本実施形態では、これら矩形枠状の上側架台72及び下側架台73の角部の間に、それぞれ防振部材300が設けられている。
【0092】
[防振部材]
次に、防振部材について説明する。
【0093】
図16に示すように、本実施形態の防振部材300は、第一実施形態の防振部材100(
図1参照)の上下に上側固定部360及び下側固定部370が設けられた構成となっている。具体的には、第一実施形態の防振部材100(
図1参照)の天井部200の上に上側固定部360が設けられ、軸体120の下に下側固定部370が設けられた構造である。上側固定部360は第一接続部の一例であり、下側固定部370は第二接続部の一例である。
【0094】
上側固定部360は、平面視矩形状の板状の部材で各角部にネジ穴(図示略)が形成されている。同様に下側固定部370は、平面視矩形状の板状の部材で各角部にネジ穴(図示略)が形成されている。これら以外は、本実施形態の防振部材300は、第一実施形態の防振部材100(
図1参照)と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0095】
図12に示すように、上側架台72は防振部材300の上側固定部360の角部のネジ穴(図示略)にボルト74を捻じ込ませることで防振部材300と接合されている。同様に、下側架台73は防振部材300の下側固定部370の角部のネジ穴(図示略)にボルト74を捻じ込ませることで防振部材300と接合されている。
【0096】
[防振部材の諸元の設定]
図12に示す設備機器82から防振装置70を介してスラブ80に伝達される振動数のうち、遮断又は減衰させたい振動数が反共振振動数fp2(式[4]及び
図9参照)になるように、防振部材100における質量体部150の質量m1、第一バネ部162のバネ定数k1、第二バネ部172のバネ定数k2及び板バネ部130、140のバネ定数k3を設定する。
【0097】
本実施形態では、設備機器82の主要な振動数が反共振振動数fp2(数[4]及び
図9参照)となるように設定する。なお、「設備機器82の主要な振動数」とは、例えば水系ポンプの稼働により発生する振動であれば50Hz、送風機であれば30Hzや40Hzなどである。
【0098】
[作用及び効果]
次に本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0099】
設備機器82から防振装置70を介してスラブ80に伝達する軸方向の振動によって防振部材100の板バネ部130、140が軸方向に弾性変形することで軸体120が上下方向に振動する。また、第一バネ部162及び第二バネ部172を介して筒体110の内壁112と軸体120とに接続された質量体部150が振動する。質量体部150は、伝搬する振動に対して反共振振動数fp2では逆位相で振動する。よって、反共振振動数fp2の帯域の振動は遮断又は減衰して設備機器82からスラブ80に防振装置70を介して伝達される。
【0100】
本実施形態では、反共振振動数fp2(式[4]及び
図9参照)が設備機器82の主要な振動数、例えば50Hzとなるように設定されている。したがって、設備機器82からスラブ80に伝達される振動が効果的に低減される。
【0101】
また、軸体120は、筒体110内に軸方向に間隔をあけて配置され筒体110の内壁112と軸体120とに接合された複数、本実施形態では二枚の板バネ部130、140に接合されている。板バネ部130、140は、軸方向には弾性変形するが、軸と直交する方向に対して抵抗要素となる。そして、前述したように、板バネ部130、140は、筒体110内に軸方向に間隔をあけて配置され、軸体120の上端部と下端部とが板バネ部130、140によって固定されている。したがって、軸体120の軸方向に対して直交する方向及び曲げ方向の変位が小さくなり、軸体120は軸方向に沿って主に振動する。よって、設備機器82の横揺れが小さくなる。
【0102】
<変形例>
次に防振部材の変形例について説明する。前述したように、防振部材100(
図1等参照)と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。但し、同一の符号を付している部材でも同じ大きさ及び形状であるとは限らない。すなわち、実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0103】
[第一変形例]
まず、第一変形例の防振部材について説明する。
【0104】
図14に示す第一変形例の防振部材500は、前述の防振部材100(
図1参照)と防振部材101とを軸方向に接合した構造である。
【0105】
防振部材101は、質量体部150と異なる質量の質量体部550が設けられている以外は、防振部材100と同じ構造である。防振部材100と防振部材101とは全ネジボルト520で接合されている。具体的には、防振部材100における軸体120の軸端部128のネジ穴222と、防振部材101の突出部210のネジ穴212と、に全ネジボルト520を捻じ込むことで、両者が接合されている。なお、防振部材100の軸体120の軸端部128の下端面と、防振部材101の突出部210の上端面とは、
図14のように接触していてもよいし、間隔があいていてもよい。
【0106】
[防振部材の諸元の設定]
防振部材100の質量体部150と第一バネ部162と第二バネ部172とで構成された振動系を第一振動系502とし、防振部材101の質量体部550と第一バネ部162と第二バネ部172とで構成された振動系を第二振動系504とする。第一振動系502の質量体部150の反共振振動数と第二振動系504の質量体部550の反共振振動数とは異なる。
【0107】
図17は、本変形例の防振部材500を用いた場合の天井構造をバネ-質点系で考えてモデル化したモデル図である。m1は防振部材100の質量体部150の質量であり、m2は天井材30の質量であり、m3は防振部材101の質量体部550の質量である。X0はスラブ20の振動による軸方向(鉛直方向)の変位であり、X1は防振部材100の質量体部150の軸方向(鉛直方向)の変位であり、X2は防振部材101の質量体部550の軸方向(鉛直方向)の変位であり、X3は天井材30の振動による軸方向(鉛直方向)の変位である。
【0108】
k1は防振部材100の第一バネ部162のバネ定数であり、k2は防振部材100の第二バネ部172のバネ定数であり、k3は防振部材100の板バネ部130、140のバネ定数である。同様に、k4は防振部材101の第一バネ部162のバネ定数であり、k5は防振部材101の第二バネ部172のバネ定数であり、k6は防振部材101の板バネ部130、140のバネ定数である。なお、本変形例では、k1とk4は同じであり、k2とk5は同じであり、k3とk6は同じであるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
符号510は、質量の無い剛体である。この剛体510は、防振部材101における筒体110と天井部200に相当し、実際には質量を持っている。しかし、理論モデルとしては質量の無い剛体510となる。
【0110】
[作用及び効果]
次に本変形例の作用及び効果について説明する。
【0111】
本変形では、第一振動系502の質量体部150の反共振振動数と第二振動系504の質量体部550の反共振振動数とは異なる。よって、防振部材500(防振部材100と防振部材101)を振動が伝達される経路に設けることで、二つの異なる振動数帯域の振動が遮断又は減衰して伝達される。或いは、広い振動数帯域の振動が遮断又は減衰して伝達される。
【0112】
ここで、二つの異なる振動数帯の振動を遮断又は減衰して伝達させる場合の例について説明する。
【0113】
例えば、第一実施形態のような天井材を吊る吊部材に防振部材500を組み込んだ場合、第一振動系502の反共振振動数を重量床衝撃音の振動数帯域に設定し、第二振動系504の反共振振動数を軽量床衝撃音の振動数帯域に設定することで、重量床衝撃音と軽量床衝撃音の両方を遮断又は減衰して伝達する。
【0114】
或いは、例えば、第二実施形態のような防振装置に防振部材500を組み込んだ場合、第一振動系502の反共振振動数を設備機器などの機械における主要な振動数に設定し、第二振動系504の反共振振動数を主要な振動数の整数倍の振動(倍長波振動)と設定することで、主要な振動数の振動及びその整数倍の振動(倍長波振動)の両方を遮断又は減衰して伝達する。
【0115】
次に、設備機器などの機械における主要な振動数の振動及びその整数倍の振動(倍長波振動)について詳しく説明する。
【0116】
設備機器などの機械が発生させる振動では、通常、一つの主な振動数の振動とその整数倍の振動(倍長波振動)が発生する。例えば、主にf(Hz)の振動を発生する機械が稼働すると、2f(Hz)、3f(Hz)、4f(Hz)・・・のfとその整数倍の振動数の振動が同時に発生する。これは、振動源である機械の発生する振動が、厳密な正弦波ではないことに起因している。
【0117】
そして、このような振動に対して、複数の受振側(例えば、建築構造体と天井面等の仕上げ材、デスク等の什器など)でそれぞれの固有振動数に応じて共振が生じることで、複数の振動数の振動が問題となることがある。よって、このような場合、本変形例の防振部材500を用いて主要な振動数の振動及び倍長波振動の両方を遮断又は減衰して伝達するが好適である。
【0118】
[第二変形例]
次に、第二変形例の防振部材について説明する。
【0119】
図15に示す第二変形例の防振部材600は、前述の防振部材100の板バネ部130、140(
図1参照)が棒状のバネ部材630、640に替えた構造である。なお、
図15で判り易くするため、軸体120とバネ部材630、640以外の図示を省略している。実際には、筒体110、質量体部150、第一バネ部162及び第二バネ部172等を備えている(
図1参照)。
【0120】
複数の棒状のバネ部材630、640は、平面視において、軸体120を中心に放射状に配置されている。一方の四つのバネ部材630は軸方向の同じ位置に配置され、他方の四つのバネ部材640は軸方向の同じ位置に配置されている。バネ部材630とバネ部材640とは筒体110内に軸方向に間隔をあけて設けられている。バネ部材630、640の径方向外側の一端部は筒体110の内壁112に接合され、径方向内側の他端部は軸体120の周面122に接合されている。
【0121】
バネ部材630、640は、径方向に長い棒状とされ、軸方向に沿った断面の形状は、軸方向に沿った(本例はZ方向)の板厚が、それと直交する幅方向よりも薄い。よって、バネ部材630、640は軸方向に撓んで弾性変形する。
【0122】
また、軸体120は、筒体110内に軸方向に間隔をあけて配置され筒体110の内壁112と軸体120とに接合されたバネ部材630、640に接合されている。前述のようにバネ部材630、640は、軸方向には弾性変形するが、軸と直交する方向に対して抵抗要素となる。そして、軸体120の上端部と下端部とがバネ部材630、640によって固定されている。したがって、軸体120の軸方向に対して直交する方向及び曲げ方向の変位が小さくなり、軸体120は軸方向に沿って主に振動する。
【0123】
なお、防振部材600の使用方法及び反共振振動数の設定は、前述の防振部材100(
図1及び
図2等を参照)及び防振部材500(
図12及び
図13等を参照)と同様である。よって、説明を省略する。また、本変形例でも第一変形例のように、反共振振動数が異なる第一振動系と第二振動系とを有する構成にしてもよい。
【0124】
[第三変形例]
次に、第三変形例の防振部材について説明する。
【0125】
図18に示す第三変形例の防振部材102は、
図3等に示す防振部材100と形状は同一である。しかし、突出部210が形成された天井部200と、上側の板バネ部130と、筒体110の上端部と、軸体120の上端部と、下側の板バネ部143と、筒体110の下端部と、軸端部128を含む軸体120の下部129と、が金属材料で構成され、その他は樹脂材料で構成されている。
【0126】
すなわち、防振部材102は、上側の板バネ部130、筒体110の上端部及び軸体120の上部127で構成された金属製の第一部材102Aと、下側の板バネ部143、筒体110の下端部及び軸体120の下部129とで構成された金属製の第二部材102Bと、第一部材102Aと第二部材102Bとの間の樹脂製の第三部材102Cと、で構成されている。
【0127】
第一部材102Aと第三部材102Cとの接合方法及び第二部材102Bと第三部材102Cとの接合方法は、どのような方法であってもよい。例えば、接着剤による接合であってもよいし、ねじによる接合であってもよい。
【0128】
[作用及び効果]
次に、本変形例の作用及び効果について説明する。
【0129】
防振部材102の使用方法及び反共振振動数の設定は、前述の防振部材100(
図1及び
図2等を参照)と同様である。よって、説明を省略する。また、本変形例でも第一変形例のように、反共振振動数が異なる第一振動系と第二振動系とを有する構成にしてもよい。
【0130】
地震時において、防振部材102の板バネ部130、140は天井材30(
図1参照)の荷重が作用すると共に軸方向に弾性変形するので他の部位よりも大きな応力が作用する。
【0131】
しかし、板バネ部130、140は金属材料で構成されているので、これらが樹脂材料で構成されている場合と比較し、耐久性が向上し、その結果当該部位の破損による天井材30(
図1参照)の落下が防止又は抑制される。
【0132】
また、防振部材102の突出部210及び軸端部128に上側吊材52及び下側吊材53(
図1参照)が接合されている。地震時において、天井材30(
図1参照)の横方向の揺れにより、突出部210及び軸端部128から上側吊材52及び下側吊材53(
図1参照)が引き抜かれる方向に力が作用する。
【0133】
しかし、突出部210が形成された天井部200及び軸端部128を含む軸体120の下部129は金属材料で構成されているので、これらが樹脂材料で構成されている場合と比較し、耐久性が向上する。よって、突出部210又は軸端部128のねじ穴のねじ山が破損して上側吊材52又は下側吊材53が引き抜かれることによる天井材30(
図1参照)の落下が防止又は抑制される。
【0134】
なお、弾性部材の一例としての板バネ部130、140と第一接続部の一例としての突出部210と第二接続部の一例としての軸端部128とが少なくとも金属材料で構成されていればよい。
【0135】
[第四変形例]
次に、第四変形例の防振部材について説明する。
【0136】
図19(A)及び
図19(B)に示す第四変形例の防振部材103は、
図1に示す防振部材100と形状は略同一であるが、質量体部が異なっている。また、
図19(A)及び
図19(B)に示す防振部材103は、
図1に示す防振部材100とは上下逆に配置され、
図19(A)及び
図19(B)に示すように防振部材103の突出部210に下側吊材53(
図1参照)が接合され、軸端部128に上側吊材52が接合されている。よって、板バネ部130が下側で板バネ部140が上側に配置されている。そして、上側の板バネ部140に開口部142(
図4)よりも大きな開口部143が形成されている。
【0137】
図20(A)、
図20(B)及び
図20(C)に示すように、質量体部250は直方体とされ、底面部252と側面部254との開口する接合穴256が形成されている。接合穴256は、底面部252側から見ると側面部254側が上底側の台形状となっている。なお、側面部254の開口は台形の上底部分である。また、本実施形態では、質量体部250は金属材料で構成されており、樹脂製の他の構成部よりも比重が大きい。
【0138】
図19(A)及び
図19(B)に示すように、筒体110内には、第一バネ部162及び第二バネ部172と繋がっている接合部260が設けられている。接合部260は、軸方向の断面が接合穴256と略同じ大きさ又は若干小さい台形状である。
【0139】
図19(A)に示すように、接合穴256に接着剤(図示略)を塗布した質量体部250を前述の開口部143から筒体110内に挿入し、
図19(B)に示すように接合部260の接合穴256に接合部260を挿入することで両者が接合され一体化する。
【0140】
[作用及び効果]
次に、本変形例の作用及び効果について説明する。
【0141】
防振部材103の使用方法及び反共振振動数の設定は、前述の防振部材100(
図1及び
図2等を参照)と同様である。よって、説明を省略する。また、本変形例でも第一変形例のように、反共振振動数が異なる第一振動系と第二振動系とを有する構成にしてもよい。
【0142】
第四変形例の防振部材103は、質量体部250は、他の樹脂製の構成部よりも比重が大きい金属材料で構成されている。よって、質量体部250が樹脂製である場合よりも単位体積当たりの質量が大きくなる。したがって、例えば、質量体部が樹脂製の場合と比較し、同じ体積で質量を大きくできる。つまり、質量体部が樹脂製の場合と大きさを変えることなく反共振周波数を変更できる。或いは、質量体部が樹脂製の場合と比較し、同じ質量で体積を小さくすることができる。つまり、質量体部が樹脂製の場合とよりも小型化できる。
【0143】
なお、質量体部250は、他の構成部よりも比重が小さい材料、例えば発泡スチロール及び木材で構成されていてもよい。この場合、質量体部は単位体積当たりの質量が小さくなる。また、質量体部の一部が他の構成部と異なる比重の材料で構成されていてもよい。
【0144】
また、各質量体部250でそれぞれ比重を異ならせることで、各質量体部250のそれぞれ大きさを変えることなく、質量を変える、すなわち反共振周波数をかえることができる。
【0145】
[第五変形例]
次に、第五変形例の防振部材について説明する。
【0146】
図21(A)及び
図21(B)に示す第五変形例の防振部材104は、
図1に示す防振部材100と形状は略同一であるが、質量体部等が異なっている。また、
図21(A)及び
図21(B)に示す防振部材104は、
図1に示す防振部材100とは上下逆に配置され、
図21(A)及び
図21(B)に示すように防振部材104の突出部210に下側吊材53(
図1参照)が接合され、軸端部128に上側吊材52が接合されている。よって、板バネ部130が下側で板バネ部140が上側に配置されている。そして、上側の板バネ部140に開口部142(
図4)よりも大きな開口部143が形成されている。
【0147】
図21(A)、
図21(B)及び
図21(C)に示すように、質量体部270は軸方向形状が略扇状とされ(
図21(C))とされ、上面部271に収容部の一例としての収容穴272が形成されている。そして、この収容穴272には、錘278が挿入されて接合されている。錘278は、他の構成部の樹脂よりも比重が大きい金属材料で構成されている。
【0148】
本実施形態では、
図21(A)に示すように、収容穴272に接着剤273を塗布した状態で、錘278を前述の開口部143から筒体110内に挿入し、
図21(B)に示すように収容穴272に錘278を挿入する。これにより錘278が接着剤273で接合され一体化する。
【0149】
[作用及び効果]
次に、本変形例の作用及び効果について説明する。
【0150】
防振部材104の使用方法及び反共振振動数の設定は、前述の防振部材100(
図1及び
図2等を参照)と同様である。よって、説明を省略する。また、本変形例でも第一変形例のように、反共振振動数が異なる第一振動系と第二振動系とを有する構成にしてもよい。
【0151】
第五変形例の防振部材104は、質量体部270の一部は、他の樹脂製の構成部よりも比重が大きい金属材料で構成された錘278で構成されている。よって、質量体部270は、全部が樹脂製である場合より単位体積当たりの質量を大きくできる。よって、例えば、金属製の錘278を樹脂製の質量体部270に挿入することで、外形を変えることなく反共振周波数を変更できる。或いは、金属製の錘278を樹脂製の質量体部270に挿入することで、同じ質量で外形を小さくすることができる。
【0152】
なお、錘278は、他の構成部よりも比重が小さい材料、例えば発泡スチロール及び木材で構成されていてもよい。
【0153】
また、錘278の比重を異ならせることで、各反共振周波数を調整することができる。或いは、各質量体部270でそれぞれ錘278の比重を異ならせることで、各質量体部250のそれぞれ大きさを変えることなく、質量を変える、すなわち反共振周波数をかえることができる。
【0154】
[第六変形例]
次に、第六変形例の防振部材について説明する。
【0155】
図22及び
図23に示すように、防振部材700は、樹脂製の防振部材本体702と、防振部材本体702よりも比重が大きい金属製の質量体部750と、を有して構成されている。樹脂製の防振部材本体702は、3Dプリンターで製造されている。
図23に示すように、防振部材本体702は、円筒形の筒体710と、軸体120と、板バネ部130、140と、接続部760と、第一バネ部162と、第二バネ部172と、を備えている。
【0156】
図22に示すように、質量体部750は、軸方向から見みた形状が略扇状とされ、筒体710の径方向外側に周方向に間隔をあけて設けられている。各質量体部750の径方向内側端部に接続部760が接続されている。
【0157】
図23に示すように、接続部760は、筒体710内に設けられ、先端部762が筒体710の開口部713から外側に突出している(
図22も参照)。質量体部750の内側下部端部は切り欠かれ軸方向に長い矩形状の切欠凹部752が形成されている。そして、質量体部750の切欠凹部752を接続部760の先端部762に挿入し接着剤で接合することで、両者が一体化している(
図23の想像線(二点鎖線)で図示した質量体部750と矢印を参照)。
【0158】
接続部760は、上面の軸体120側には接続凹部152が形成されている。更に接続凹部152の軸体120側の壁面部から上方に突出した後、軸体120側に屈曲したL字状の接続壁部154が形成されている。
【0159】
各質量体部750は、それぞれ接続部760、第一連結部160及び第一バネ部162を介して筒体710の内壁112に接続されている。また、各質量体部750は、それぞれ接続部760、第二連結部170及び第二バネ部172を介して軸体120と接続されている。
【0160】
別の観点から説明すると、第一バネ部162は、一端側が筒体710の内壁に第一連結部160を介して接続され、他端側が接続部760の接続凹部152の底面に接続されている。また、第二バネ部172は、一端側が軸体120の周面122に第二連結部170を介して接続され、他端側が接続部の接続壁部154の上端に接続されている。
【0161】
第一連結部160は、筒体710の内壁712から径方向内側に突出した後、下側に屈曲したL字状とされ、そこから延びる肉薄部分が第一バネ部162である。そして、第一バネ部162の先端部が接続部760の接続凹部152の底面に接続されている。
【0162】
第二連結部170は、軸体120の周面から径方向外側に突出し、そこからL字状に上側に屈曲した肉薄部分が第二バネ部172である。そして、第二バネ部172の先端部が接続部760の接続壁部154の先端に接続されている。
【0163】
[作用及び効果]
次に、本変形例の作用及び効果について説明する。
【0164】
防振部材700の使用方法及び反共振振動数の設定は、前述の防振部材100(
図1及び
図2等を参照)と同様である。よって、説明を省略する。また、本変形例でも第一変形例のように、反共振振動数が異なる第一振動系と第二振動系とを有する構成にしてもよい。
【0165】
第六変形例の防振部材700は、前述の第四変形例の防振部材101同様に、質量体部750は、樹脂製の防振部材本体702よりも比重が大きい金属材料で構成されている。よって、質量体部750が樹脂製である場合よりも単位体積当たりの質量が大きくなる。したがって、例えば、質量体部が樹脂製の場合と比較し、同じ体積で質量を大きくできる。つまり、質量体部が樹脂製の場合と大きさを変えることなく反共振周波数を変更できる。或いは、質量体部が樹脂製の場合と比較し、同じ質量で体積を小さくすることができる。つまり、質量体部が樹脂製の場合とよりも小型化できる。
【0166】
また、質量体部750は、樹脂製の防振部材本体702よりも比重が小さい材料、例えば発泡スチロール及び木材で構成されていてもよい。この場合、質量体部は単位体積当たりの質量が小さくなる。また、質量体部の一部が他の構成部と異なる比重の材料で構成されていてもよい。
【0167】
また、各質量体部750でそれぞれ比重を異ならせることで、各質量体部750のそれぞれ大きさを変えることなく、質量を変える、すなわち反共振周波数をかえることができる。
【0168】
また、本変形例の防振部材700では、筒体710の外側に質量体部750が配置されている。よって、筒体の中に質量体部がある場合と比較し、小型化することができる。特に、樹脂製の防振部材本体702を3Dプリンターで製造する場合、防振部材本体702小型化されることによる製造効率の向上効果が大きい。
【0169】
[第七変形例]
次に、第七変形例の防振部材について説明する。
【0170】
図25の本変形例の防振部材109は、
図3に示す防振部材100に落下防止部材800(
図24参照)が取り付けられたものである。なお、本変形例の防振部材100の天井部200の突出部210のネジ穴219は、ネジ穴212(
図3参照)よりも径が大きい。同様に、軸体120の下端の軸端部128のネジ穴229は、ネジ穴222(
図3参照)よりも径が大きい。
【0171】
図24に示すように、落下防止部材800は、帯状の可撓性を有する連結材802と、第一口径変換アダプター810と、第二口径変換アダプター820と、第三口径変換アダプター830と、第四口径変換アダプター840と、を含んで構成されている。連結材802の端部806、807には連結孔804、805が形成されている。なお、落下防止部材800を構成するこれらの各部材は金属製であり不燃である。
【0172】
図25に示すように、防振部材100の天井部200の突出部210にネジ穴219に第一口径変換アダプター810のネジ部813がねじ込まれ、この第一口径変換アダプター810のネジ穴812に、連結材802の一方の連結孔804(
図24参照)に挿通された第二口径変換アダプター820のネジ部823がねじ込まれている。
【0173】
同様に、防振部材100の軸体120の下端の軸端部128のネジ穴229に第三口径変換アダプター830のネジ部833がねじ込まれ、第三口径変換アダプター830のネジ穴832に、連結材802の一方の連結孔805(
図24参照)に挿通させた第四口径変換アダプター840のネジ部843がねじ込まれている。
【0174】
つまり、連結材802の一方の端部806が第一口径変換アダプター810と第二口径変換アダプター820との間に挟まれて取り付けられ、連結材802の他方の端部807が第三口径変換アダプター830と第四口径変換アダプター840との間に挟まれて取り付けられている。
【0175】
また、第二口径変換アダプター820のネジ穴822(
図24参照)に上側吊材52の下端部54がねじ込まれて接合され、第四口径変換アダプター840のネジ穴842(
図24参照)に下側吊材53の上端部55がねじ込まれて接合されている。
【0176】
なお、第一口径変換アダプター810と第二口径変換アダプター820とで第一接続部811を構成し、第三口径変換アダプター830と第四口径変換アダプター840とで第二接続部831を構成する。
【0177】
ここで、連結材802は、防振部材100に取り付けた状態では、防振部材100の防振機能に影響しない長さ及び可撓性を有している。
【0178】
[作用及び効果]
次に、本変形例の作用及び効果について説明する。
【0179】
防振部材100における第一接続部811と第二接続部831の間の部位が、何らかの原因、例えば火災熱によって切断しても金属製で不燃性の第一接続部811と第二接続部831とが、金属製で不燃性の連結材802が繋がれているので、天井材30の落下が防止される。
【0180】
なお、落下防止部材800は本構成に限定されるものではない。少なくとも第一接続部及び二接続部が不燃性の材料で構成され、これら第一接続部と第二接続部とが不燃性の材料で構成され可撓性を有する連結材で繋がっていればよい。また、連結材は、帯状でなく、例えば線状であってもよい。更に、落下防止部材800は、金属材料以外の不燃材料で構成されていてもよい。
【0181】
<その他>
【0182】
尚、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されない。
【0183】
例えば、上記実施形態の第一変形例の防振部材500では、第一振動系502の質量体部150と第二振動系504の質量体部550とは、反共振振動数が異なっていたが、これに限定されるものではない。第一振動系502の質量体部150と第二振動系504の質量体部550とは、同じ反共振振動数であってもよい。なお、両者の反共振振動数が同じ場合は、
図8のモデル図と同様の構成になる。
【0184】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、第一バネ部162は、軸方向と直交する径方向を板厚方向とする板バネであり、第一連結部160を介して筒体110、710の内壁112、712に接続されていたが、これに限定されるものではない。同様に、第二バネ部172は、軸方向と直交する径方向を板厚方向とする板バネであり、第二連結部170を介して軸体120に接続されていたが、これに限定されるものではない。
【0185】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、筒体110、710の内壁112、712と軸体120とに接合された弾性部材は、板バネ部130、140又は棒状のバネ部材630、640であったが、これに限定されるものではない。弾性部材は、軸体120を軸方向に変位可能に弾性変形する部材であればよい。
【0186】
要は、
図8及び
図17に示すバネ-質点系のモデル図と同等になれば、どのような構造の防振部材であってもよい。また、反共振振動数が異なる三以上の振動系を有する防振部材であってもよい。
【0187】
また、例えば、上記実施形態及び変形例の防振部材100、300、500、600は、合成樹脂製とされ、粉末焼結積層造形方式の3Dプリンターで製造され、各部材が一体となって構成されていたが、これに限定されるものではない。粉末焼結積層造形方式以外の3Dプリンターで製造されていてもよい。あるいは、型成型して制作した複数の部品を接着して構成された防振部材であってもよい。あるいは、合成樹脂製以外、例えば、金属製の防振部材であってもよいし、金属製の部品と合成樹脂製の部品とで構成されていてもよい。
【0188】
また、例えば、上記実施形態及び変形例の防振部材100、101、102、109、300、500、600、700では、天井部200側を鉛直方向上側に設置したが、これに限定されるものではない。天井部200側を鉛直方向下側に設置してもよい。また、変形例の防振部材103、104は、天井部200側を鉛直方向下側に設置したが、これに限定されるものではない。天井部200側を鉛直方向上側に設置してもよい。
【0189】
また、例えば、上記変形例の防振部材109の落下防止部材800を防振部材101、102、103、104、500、600、700に適用してもよい。
【0190】
また、例えば、上記実施形態及び変形例の防振部材101、102、103、104、109、400、500、700は、吊り天井に用いたがこれに限定されるものではない。防振部材300のように防振装置に用いてもよい。
【0191】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、防振部材100、101、102、103、104、109、300、500、600、700は、吊り天井又は防振装置に用いたがこれに限定されるものではない。例えば、防音室の横揺れを抑制するために本発明が適用された防振部材を用いてもよい。具体的には、入れ子構造の外側の部屋の壁と内側の部屋の壁との間に防振部材を設けてもよい。
【0192】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0193】
11 天井構造
20 スラブ
24 下面
30 天井材
50 吊部材
52 上側吊材
53 下側吊材
100 防振部材
101 防振部材
102 防振部材
103 防振部材
104 防振部材
109 防振部材
110 筒体
112 内壁
120 軸体
122 周面
128 軸端部(第二接続部の一例)
130 板バネ部(弾性部材の一例)
140 板バネ部(弾性部材の一例)
150 質量体部
162 第一バネ部
172 第二バネ部
210 突出部(第一接続部の一例)
250 質量体部
270 質量体部
272 収容穴(収容部の一例)
278 錘
300 防振部材
360 上側固定部(第一接続部の一例)
370 下側固定部(第二接続部の一例)
500 防振部材
502 第一振動系
504 第二振動系
540 板バネ部
550 質量体部
562 第一バネ部
572 第二バネ部
600 防振部材
630 バネ部材(弾性部材の一例)
640 バネ部材(弾性部材の一例)
700 防振部材
710 筒体
750 質量体部
800 落下防止部材
802 連結材
806 端部
807 端部
810 第一口径変換アダプター
811 第一接続部
820 第二口径変換アダプター
830 第三口径変換アダプター
831 第二接続部
840 第四口径変換アダプター
fp2 反共振振動数