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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121008
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】工業用織物
(51)【国際特許分類】
   D21F 1/10 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
D21F1/10
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107733
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2021120829の分割
【原出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229818
【氏名又は名称】日本フイルコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】上田 郁夫
(57)【要約】
【課題】接結力を確保しつつ、表面性および通気性の低下を抑える工業用織物を提供する。
【解決手段】上面側織物と下面側織物とが接結された工業用織物は、上面側織物および下面側織物は、経糸および緯糸を織り込まれて構成される。緯糸は、上面側織物と下面側織物とを接結する接結緯糸と、上面側織物の一部を構成する上面側緯糸と、下面側織物の一部を構成する下面側緯糸と、を含む。経糸は、上面側織物と下面側織物とを接結する接結経糸と、下面側緯糸を織り込まず上面側緯糸を織り込んで上面側織物の一部を構成する上面側経糸と、上面側緯糸を織り込まず下面側緯糸を織り込んで下面側織物の一部を構成する下面側経糸と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側織物と下面側織物とが接結された工業用織物であって、
前記上面側織物および前記下面側織物は、経糸および緯糸を織り込まれて構成されており、
前記緯糸は、
前記上面側織物と前記下面側織物とを接結する接結緯糸と、
前記上面側織物の一部を構成する上面側緯糸と、
前記下面側織物の一部を構成する下面側緯糸と、を含み、
前記経糸は、
前記上面側織物と前記下面側織物とを接結する接結経糸と、
前記下面側緯糸を織り込まず前記上面側緯糸を織り込んで前記上面側織物の一部を構成する上面側経糸と、
前記上面側緯糸を織り込まず前記下面側緯糸を織り込んで前記下面側織物の一部を構成する下面側経糸と、を含むことを特徴とする工業用織物。
【請求項2】
前記接結経糸および前記接結経糸と上下に配置された前記経糸の組は、互いに補完し合って上面側経糸1本分の織り込みパターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の工業用織物。
【請求項3】
前記接結経糸および前記接結経糸と上下に配置された前記経糸の組は、互いに補完し合って下面側経糸1本分の織り込みパターンを形成することを特徴とする請求項1または2に記載の工業用織物。
【請求項4】
前記接結緯糸は、経方向に隣接しないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項5】
前記接結緯糸は、連続して2本以下の前記上面側経糸の上側を通るナックルを形成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項6】
前記接結経糸は、上下に組をなして配置される第1接結経糸および第2接結経糸を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項7】
前記接結緯糸は、組をなして隣接配置される第1接結緯糸および第2接結緯糸を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項8】
隣接する前記第1接結緯糸および前記第2接結緯糸の組は、互いに補完し合って上面側緯糸1本分の織り込みパターンを前記上面側織物の表面に形成することを特徴とする請求項7に記載の工業用織物。
【請求項9】
前記上面側経糸は、上面側崩し糸を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項10】
前記上面側崩し糸は、前記接結経糸と上下に組をなすことを特徴とする請求項9に記載の工業用織物。
【請求項11】
前記上面側崩し糸は、前記接結経糸が前記上面側緯糸にナックルを形成する位置で、前記上面側緯糸の下側を通って上面側表面組織の一部を崩すことを特徴とする請求項10に記載の工業用織物。
【請求項12】
前記接結緯糸は、前記下面側緯糸よりも小さい線径を有することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項13】
前記上面側経糸および前記接結経糸の線径は、同じであることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項14】
前記接結緯糸は、連続して2本以下の前記下面側経糸の下側を通るナックルを形成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の工業用織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機に用いられる工業用織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抄紙機に用いられる工業用織物として、経糸と緯糸を製織した抄紙網が広く使われている。抄紙網に求められる特性は様々であるが、例えば、特許文献1には、上層面側経糸と上層面側緯糸とからなる上層面側織物と、下層面側経糸と下層面側緯糸とからなる下層面側織物と、接結糸として機能する上層面側経糸と、接結糸として機能する下層面側経糸とからなる工業用織物が開示される。接結糸として機能する上層面側経糸と、接結糸として機能する下層面側経糸とは、上下に組となって設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-342889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接結糸を増やすことで上面側織物および下面側織物を接結する接結力を高めることができるが、経糸のみの接結糸を増やした場合、表面性の低下や通気性の低下を引き起こすおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、接結力を確保しつつ、表面性および通気性の低下を抑える工業用織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、上面側織物と下面側織物とが接結された工業用織物であって、上面側織物および下面側織物は、経糸および緯糸を織り込まれて構成されており、緯糸は、上面側織物と下面側織物とを接結する接結緯糸と、上面側織物の一部を構成する上面側緯糸と、下面側織物の一部を構成する下面側緯糸と、を含む。経糸は、上面側織物と下面側織物とを接結する接結経糸と、下面側緯糸を織り込まず上面側緯糸を織り込んで上面側織物の一部を構成する上面側経糸と、上面側緯糸を織り込まず下面側緯糸を織り込んで下面側織物の一部を構成する下面側経糸と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接結力を確保しつつ、表面性および通気性の低下を抑える工業用織物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
図2図1に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
図3図1に示す意匠図における緯糸に沿った緯方向の断面図である。
図4】第2実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
図5図4に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
図6図4に示す意匠図における緯糸に沿った緯方向の断面図である。
図7】第3実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
図8】第4実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
図9】第5実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
図10図9に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
図11図9に示す意匠図における緯糸に沿った緯方向の断面図である。
図12】第6実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
図13図12に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
図14図12に示す意匠図における緯糸に沿った緯方向の断面図である。
図15】第7実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
図16図15に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
図17図15に示す意匠図における緯糸に沿った緯方向の断面図である。
図18】第8実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、「経糸」とは、製紙用の多層織物をループ状のベルトとした場合に、ウェブの搬送方向に沿って伸びている糸であり、「緯糸」とは、経糸に対して交差する方向に伸びている糸である。また、「上面側織物」とは、多層織物を抄紙網として利用する場合に、抄紙網の両面のうちウェブが搬送される表面側に位置する織物であり、「下面側織物」とは、抄紙用ベルトの両面のうち主として駆動ローラが当接する裏面側に位置する織物である。なお、単に「表面」とは、上面側織物や下面側織物の露出している側の面であり、上面側織物の「表面」とは、抄紙網における表面側に相当するが、下面側織物の「表面」とは、抄紙網における裏面側に相当する。
【0010】
また、「意匠図」とは織物組織の最小の繰り返し単位であって織物の完全組織に相当する。つまり、「完全組織」が前後左右に繰り返されて「織物」が形成される。また、「ナックル」とは経糸が1本又は複数本の緯糸の上、又は下を通って表面に露出した部分をいう。
【0011】
また、「接結経糸」とは、上面側織物および下面側織物を構成する経糸の少なくとも一部の経糸であって、本来ならば上面側織物(又は下面側織物)の緯糸のみを織り込むべき経糸が、下面側織物(又は上面側織物)の緯糸を裏面側(又は表面側)から織り込むことで、上面側織物と下面側織物を接結する糸である。また、「接結緯糸」とは、上面側織物および下面側織物を構成する緯糸の少なくとも一部の緯糸であって、本来ならば上面側織物(又は下面側織物)の経糸のみを織り込むべき緯糸が、下面側織物(又は上面側織物)の経糸を裏面側(又は表面側)から織り込むことで、上面側織物と下面側織物を接結する糸である。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る工業用織物10の完全組織を示す意匠図である。図2は、図1に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。図3は、図1に示す意匠図における緯糸に沿った緯方向の断面図である。
【0013】
意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3・・・で示す。緯糸は、ダッシュを付したアラビア数字、例えば1'、2'、3'・・・で示す。上面側糸はUを付した数字、下面側糸はLを付した数字、例えば1'U、2'L等で示す。また、上面側織物と下面側織物とを接結する接結経糸はBを付した数字で示し、第1接結経糸はBf、第2接結経糸はBsと示す。また、上面側織物と下面側織物とを接結する接結緯糸もBを付した数字で示し、第1接結緯糸はBf、第2接結緯糸はBsと示す。
【0014】
また、意匠図において、△印は、第1接結経糸が下面側緯糸の下に配置されていることを示し、▲印は、第2接結経糸が上面側緯糸の上に配置されていることを示し、×印は、上面側経糸および第1接結経糸が上面側緯糸の上に配置されていることを示し、○印は、下面側経糸および第2接結経糸が下面側緯糸の下に配置されていることを示し、□印は、接結緯糸が下面側経糸または接結経糸の下に配置されていることを示し、■印は、接結緯糸が上面側経糸または接結経糸の上に配置されていることを示している。△印、▲印、×印、○印、□印および■印はナックルを示す。これらの表記は、図4以降でも同様に用いられる。
【0015】
図1に示す第1実施形態に係る工業用織物10は、上面側経糸(1U~8U)と上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)と下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)を含んで構成される下面側織物とが、接結経糸(4B,8B)および接結緯糸(5’B,10’B)によって接結されたものである。
【0016】
上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)は、上面側織物の一部を構成する。下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)は、下面側織物の一部を構成する。接結経糸(4B,8B)は、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側織物および下面側織物の一部をそれぞれ構成する。接結緯糸(5’B,10’B)は、上面側織物と下面側織物とを接結するが、上面側経糸および接結経糸の織り込みパターンには含まれない。
【0017】
次に、工業用織物10における各経糸と各緯糸との織り方について図2(a)および図2(b)と、図3(a)および図3(b)とを参照して説明する。図2(a)および図2(b)に示す上面側緯糸、下面側緯糸および接結緯糸の配置は同じである。
【0018】
図2(a)は、上面側経糸1Uと下面側経糸1Lの組が上面側緯糸と下面側緯糸と接結緯糸に織り込まれた形態を示す。図2(a)に示すように、上面側経糸1Uが上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)に対して1本ずつ上下に織り込まれ、上面側緯糸(2’U,4’U,7’U,9’U)の上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,3’U,6’U,8’U)の下側を通る。また、上面側経糸1Uが上面側緯糸に対して1本ずつ上下に織り込まれる織り込みパターンに接結緯糸は含まれないが、上面側経糸1Uは、接結緯糸(5’B,10’B)の上側を通る。
【0019】
上面側経糸(3U,5U,7U)は、上面側経糸1Uと同じように、上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)に織り込まれる。また、上面側経糸(2U,6U)は、上面側経糸1Uと同様に上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)に1本ずつ上下に織り込まれるものの、織り込み位置が上面側経糸1Uと比べて経方向に1つずれている。このように、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、同じ織り込みパターンを有し、上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)に対して一定の間隔でナックルを形成し、表面組織を崩すことなく交互に織り込まれる。上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)を織り込まず、上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)および接結緯糸(5’B,10’B)のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する。
【0020】
下面側経糸1Lは、下面側緯糸1’Lの下側を通ってナックルを形成し、3本の下面側緯糸(3’L,6’L,8’L)の上側を通る。また、下面側経糸1Lが1本の下面側緯糸の下側を通り、3本の下面側緯糸の上側を通る織り込みパターンに接結緯糸は含まれないが、下面側経糸1Lは、接結緯糸(5’B,10’B)の下側を通る。下面側経糸(2L,3L,5L~7L)は、下面側経糸1Lと織り込み位置が経方向にずれているものを含むものの、下面側経糸1Lと同様の織り込みパターンを有し、1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を通って織り込まれる。このように、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)は、上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)を織り込まず、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)および接結緯糸(5’B,10’B)のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0021】
上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、接結緯糸(5’B,10’B)を除いた共通の織り込みパターンを有している。つまり、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、接結緯糸(5’B,10’B)を除けば、上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)に1本ずつ上下に織り込まれる織り込みパターンをそれぞれ有している。
【0022】
また、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)も、接結緯糸(5’B,10’B)を除いた共通の織り込みパターンを有しており、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)に対して1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を通って織り込まれた織り込みパターンを有する。このように、接結緯糸(5’B,10’B)は、上面側経糸および下面側経糸の織り込みパターンに含まれない。
【0023】
図2(b)は、上面側経糸4Uと接結経糸4Bとの組が上面側緯糸と下面側緯糸と接結緯糸に織り込まれた形態を示す。上面側経糸4Uと接結経糸4Bは、上下に対向して組をなし、接結経糸4Bによる接結のため交差する。
【0024】
上面側経糸4Uは、上面側緯糸(3’U,6’U,8’U)の上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,2’U,4’U,7’U,9’U)の下側を通る。また、上面側経糸4Uは、接結緯糸(5’B,10’B)の上側を通る。
【0025】
接結経糸4Bは、下面側緯糸6’Lの下側を通ってナックルを形成し、上面側緯糸1’Uの上側を通るナックルN1を形成する。接結経糸4Bは、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)に対して1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を通り、下面側織物に対して一定の間隔でナックルを形成し、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。接結経糸4Bは、接結緯糸(5’B,10’B)の下側を通る。
【0026】
接結経糸4Bは、上面側織物に対して、接結のために上面側緯糸1’Uの上側を通り、1つだけ表面側にナックルN1を形成し、上面側緯糸(2’U~4’U,6’U~9’U)の下側を通る。
【0027】
上面側経糸4Uと接結経糸4Bとの組は、接結緯糸(5’B,10’B)を除いて、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)および下面側経糸(1L~3L,5L~7L)と共通の織り込みパターンを有している。つまり、上面側経糸4Uと接結経糸4Bとの組は、接結緯糸(5’B,10’B)を除けば、上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)に対して、1本ずつ上下に織り込まれる織り込みパターンを有し、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)に対して1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を通って織り込まれた織り込みパターンを有する。上面側経糸8Uと接結経糸8Bとの組は、織り込み位置が経方向にずれているものの、上面側経糸4Uと接結経糸4Bとの組と同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。
【0028】
接結経糸4Bが表面側にナックルN1を形成する位置で、上面側経糸4Uが、上面側緯糸1’Uの下側を通って表面側にナックルを形成せず、上面側表面組織の一部を崩す上面側崩し糸4Uとして機能する。
【0029】
上面側経糸4Uおよび接結経糸4Bが、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側経糸4U(上面側崩し糸)以外の上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同様の表面組織を形成し、上面側崩し糸4U以外の上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同じ数のナックルを上面側表面組織に形成する。このように、上面側経糸4Uおよび接結経糸4Bの組は、互いに補完し合って上面側経糸1本分と下面側経糸1本分の織り込みパターンをそれぞれ形成する。なお、上面側経糸4Uおよび接結経糸4Bの織り込みパターンには、接結緯糸(5’B,10’B)が含まれていない。これにより、接結経糸4Bによって上面側織物の表面性が低下することを抑えられる。また、上面側崩し糸4Uと接結経糸4Bとの組によって接結をすることで、上下に接結経糸の組を設ける場合と比べて、表面性の低下を抑えられる。
【0030】
上面側経糸(1U~8U)および接結経糸(4B,8B)は、上面側緯糸(1’U~4’U,6’U~9’U)を織り込んで、経糸列毎に所定の織り込みパターンで形成した上面側織物を構成する。つまり、上面側経糸(1U~8U)および接結経糸(4B,8B)は、一定間隔で離れたナックルを上面側織物に形成する。これにより、上面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0031】
下面側経糸(1L~3L,5L~7L)および接結経糸(4B,8B)は、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)を織り込んで、経糸列毎に所定の織り込みパターンで形成した下面側織物を構成する。つまり、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)および接結経糸(4B,8B)は、一定間隔で離れたナックルを下面側織物に形成する。これにより、下面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0032】
上面側経糸(1U~8U)および接結経糸(4B,8B)は、同じ線径で形成されるが、別の態様では異なる線径で形成されてよい。接結経糸(4B,8B)は上面側表面にも表れるため、上面側経糸(1U~8U)と同一線径にすることで表面性の低下を抑えることができる。下面側経糸の線径は、上面側経糸の線径よりも大きくてもよい。下面側経糸の線径を上面側経糸の線径よりも大きくすることで、工業用織物10の剛性および経方向の伸び特性を向上できる。
【0033】
図3(a)は、上面側緯糸3’Uと下面側緯糸3’Lの組が上面側経糸と下面側経糸と接結経糸とに織り込まれた形態を示す。図3(a)に示すように、上面側緯糸3’Uが上面側経糸(1U~8U)に対して1本ずつ上下に織り込まれ、上面側経糸(2U,4U,6U,8U)の上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、上面側経糸(1U,3U,5U,7U)の下側を通る。上面側緯糸(2’U,4’U,7’U~9’U)は、上面側緯糸3’Uと同様の織り込みパターンを有し、上面側経糸(1U~8U)に1本ずつ上下に織り込まれる。また、上面側緯糸(1’U,6’U)は、上面側緯糸3’Uと同様の織り込みパターンを有するものの、織り込み対象が上面側経糸(1U~8U)と接結経糸とを含んでいる。
【0034】
下面側緯糸3’Lは、6本の下面側に位置する経糸(1L~3L,4B,5L,8B)の下側を通って長いナックルを形成し、2本の下面側経糸(6L,7L)の上側を通る。下面側に位置する経糸には、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)だけでなく接結経糸(4B,8B)も含まれる。下面側緯糸(1’L,6’L,8’L)は、下面側緯糸3’Lと比べて織り込み位置が緯方向にずれているものを含むが、下面側緯糸3’Lと同様の織り込みパターンを有し、6本の下面側に位置する経糸の下側を通って長いナックルを形成し、2本の下面側に位置する経糸の上側を通る。
【0035】
図3(b)は、接結緯糸5’Bが上面側経糸と下面側経糸に織り込まれた形態を示す。接結緯糸5’Bは、6本の下面側に位置する経糸(1L,4B,5L~7L,8B)の上側を通り、2本の下面側に位置する経糸(2L,3L)の下側を通ってナックルを形成する。接結緯糸5’Bは、上面側経糸6Uの上側を通ってナックルを形成し、それ以外の上面側経糸(1U~5U,7U,8U)の下側を通る。つまり、接結緯糸5’Bは、上面側表面組織に1つのナックルを形成し、下面側表面組織に1つのナックルを形成する。
【0036】
接結緯糸5’Bは、上面側経糸(1U~8U)のうち、2本以下の上面側経糸6Uの上側を通るナックルN2を形成する。すなわち、接結緯糸5’Bは、上面側経糸(1U~8U)のうち、連続して3本以上の上面側経糸の上側を通るナックルを形成することはない。接結緯糸5’Bが上面側に形成するナックルN2は、1本の上面側経糸6Uの上側を通る。これにより、接結緯糸5’Bが上面側表面に露出する部分を少なくして、接結緯糸5’Bの耐久性を向上でき、抄紙機に設置された高圧洗浄シャワー等による接結緯糸5’Bの損傷を抑制できる。また、接結緯糸5’Bが裏面側表面に露出する部分を少なくすることで、抄紙機の駆動ロール等やサクションボックスによる接結糸の摩耗を抑制できる。また、接結緯糸5’Bは、下面側経糸および接結経糸、すなわち下面側に位置する経糸(1L~3L,4B,5L~7L,8B)のうち、2本以下の下面側に位置する経糸(2L,3L)の下側を通るナックルを形成する。これにより、接結緯糸5’Bが下面側表面に露出する部分を少なくできる。なお、接結緯糸10’Bは、接結緯糸5’Bと比べて織り込み位置が緯方向にずれているものの、同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。
【0037】
工業用織物10は、経方向に離間して配置される接結緯糸(5’B,10’B)と、接結経糸(4B,8B)および上面側経糸の組とによって接結されるため、上面側織物および下面側織物の内部摩耗を抑えることができる適度な接結力で接結できる。接結経糸での接結に加えて、織り込みパターンに組み込まれない接結緯糸で接結することで、接結経糸の本数を単に増やすよりも、適度な接結力の設定が可能となり、表面性および通気性の低下を抑えることができる。
【0038】
接結緯糸(5’B,10’B)は、経方向に隣接しないよう配置される。これによって、接結位置を分散して、接結による脱水阻害を抑え、通気性を向上できる。
【0039】
接結緯糸(5’B,10’B)の線径は、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)の線径よりも小さく、例えば2分の1以下の大きさに設定される。これによって、接結緯糸(5’B,10’B)を各経糸の所定の織り込みパターンに含めずとも、所定の織り込みパターンのずれを抑えることができる。
【0040】
また、接結緯糸(5’B,10’B)は、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)よりも表面への露出を少なくなるように構成される。接結緯糸(5’B,10’B)は,下面側に位置する経糸(1L,4B,5L~7L,8B)のうち、2本の経糸の下側を通って下面側表面に露出するのに対し、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L)は、下面側に位置する経糸(1L,4B,5L~7L,8B)のうち6本の経糸の下側を通って下面側表面に露出する。これにより、線径の小さい接結緯糸(5’B,10’B)が摩耗することを抑えることができる。
【0041】
完全組織を構成する全ての経糸(1U~8U,1L~3L,4B,5L~7L,8B)の本数が4の倍数である。これにより、平織り、綾織り、2本ずつ交互に織り込む2/2織り、1/2織り、1/4織り等の織り方に対応可能となる。
【0042】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る工業用織物20の完全組織を示す意匠図である。図5は、図4に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。図6は、図4に示す意匠図における緯糸に沿った緯方向の断面図である。
【0043】
図4に示す第2実施形態に係る工業用織物20は、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と上面側緯糸(1’U~3’U,5’U~8’U,10’U~13’U,15’U~18’U,20’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)と下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L,11’L,13’L,16’L,18’L)を含んで構成される下面側織物とが、第1接結経糸(4Bf,8Bf)、第2接結経糸(4Bs,8Bs)および接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)によって接結されたものである。第1接結経糸(4Bf,8Bf)および第2接結経糸(4Bs,8Bs)を区別しない場合、単に接結経糸という。
【0044】
上面側緯糸(1’U~3’U,5’U~8’U,10’U~13’U,15’U~18’U,20’U)は、上面側織物の一部を構成する。下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L,11’L,13’L,16’L,18’L)は、下面側織物の一部を構成する。接結経糸(4Bf,4Bs,8Bf,8Bs)は、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側織物および下面側織物の一部をそれぞれ構成する。接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)は、上面側織物と下面側織物とを接結するが、上面側経糸および接結経糸の織り込みパターンには含まれない。
【0045】
図5(a)は、上面側経糸1Uと下面側経糸1Lの組が上面側緯糸と下面側緯糸と接結緯糸に織り込まれた形態を示す。図5(a)に示すように、上面側経糸1Uが上面側緯糸(1’U~3’U,5’U~8’U,10’U~13’U,15’U~18’U,20’U)に対して1本の上面側緯糸の上側を通ってナックルを形成し、3本の上面側緯糸の下側を通って、それらを交互に繰り返して織り込まれる。また、上面側経糸1Uが上面側緯糸に対して織り込まれる織り込みパターンに接結緯糸は含まれないが、上面側経糸1Uは、接結緯糸(4’B,9’B,19’B)の上側を通り、接結緯糸14’Bの下側を通る。
【0046】
上面側経糸5Uは、上面側経糸1Uと同じ織り込みパターンを有し、1本の上面側緯糸の上側と、3本の上面側緯糸の下側を交互に上下する織り込みパターンを有する。上面側経糸(2U,3U,6U,7U)は、織り込み位置が上面側経糸1Uと比べて経方向にずれているものの、上面側経糸1Uと同じ織り込みパターンを有し、1本の上面側緯糸の上側と、3本の上面側緯糸の下側を交互に上下する織り込みパターンを有する。
【0047】
このように、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)を除いて同じ織り込みパターンを有し、上面側緯糸(1’U~3’U,5’U~8’U,10’U~13’U,15’U~18’U,20’U)に対して一定の間隔でナックルを形成し、表面組織を崩すことなく織り込まれる。上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、下面側緯糸を織り込まず、上面側緯糸および接結緯糸のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する。上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、緯糸に対して接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)を除いた共通の織り込みパターンを有している。
【0048】
下面側経糸1Lは、下面側緯糸(6’L,13’L)の下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、それらのナックルの間で2本の下面側緯糸(8’L,11’L)の上側と、4本の下面側緯糸(1’L,3’L,16’L,18’L)の上側を通る。また、下面側経糸1Lは、接結緯糸(9’B,14’B,19’B)の下側を通り、接結緯糸4’Bの上側を通る。下面側経糸(2L,3L,5L~7L)は、下面側経糸1Lと同様の織り込みパターンを有し、1本の下面側緯糸の下側と、2本の下面側緯糸の上側と、1本の下面側緯糸の下側と、4本の下面側緯糸の上側を通って織り込まれる。このように、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)は、上面側緯糸を織り込まず、下面側緯糸および接結緯糸のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0049】
また、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)も、接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)を除いた共通の織り込みパターンを有しており、1本の下面側緯糸の下側と、2本の下面側緯糸の上側と、1本の下面側緯糸の下側と、4本の下面側緯糸の上側を通って織り込まれた織り込みパターンを有する。このように、接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)は、上面側経糸および下面側経糸の織り込みパターンに含まれない。
【0050】
図5(b)は、第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組が上面側緯糸と下面側緯糸と接結緯糸に織り込まれた形態を示す。第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsは、上下に対向して組をなし、接結のため交差する。図5(b)に示す上面側緯糸、下面側緯糸および接結緯糸の配置は、図5(a)に示す緯糸の配置と同じである。
【0051】
第1接結経糸4Bfは、上面側緯糸(3’U,13’U,18’U)の上側を通って3つのナックルを形成し、上面側緯糸(1’U,2’U,5’U~8’U,10’U~12’U,15’U~17’U,20’U)の下側を通る。また、第1接結経糸4Bfは、接結緯糸(4’B,14’B,19’B)の上側を通り、接結緯糸9’Bの下側を通る。第1接結経糸4Bfは、下面側緯糸8’Lの下側を通って1つのナックルを形成し、下面側緯糸8’L以外の下面側緯糸の上側を通る。
【0052】
第2接結経糸4Bsは、上面側緯糸8’Uの上側を通って1つのナックルを形成し、下面側緯糸16’Lの下側を通って1つのナックルを形成する。また、第2接結経糸4Bsは、上面側緯糸8’U以外の上面側緯糸の下側を通り、下面側緯糸16’L以外の下面側緯糸の上側を通る。第2接結経糸4Bsは、接結緯糸(4’B,14’B,19’B)の下側を通り、接結緯糸9’Bの上側を通る。
【0053】
第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組は、接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)を除けば、上面側緯糸(1’U~3’U,5’U~8’U,10’U~13’U,15’U~18’U,20’U)に対して、1本の上面側緯糸の上側と3本の上面側緯糸の下側を交互に通って織り込まれた織り込みパターンを有する。第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組は、接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)を除けば、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L,11’L,13’L,16’L,18’L)に対して、1本の下面側緯糸の下側と、2本の下面側緯糸の上側と、1本の下面側緯糸の下側と、4本の下面側緯糸の上側を通って織り込まれた織り込みパターンを有する。
【0054】
このように、第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組は、接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)を除いて、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)および下面側経糸(1L~3L,5L~7L)と共通の織り込みパターンを有している。これにより、上面側織物および下面側織物の表面性を向上できる。なお、第1接結経糸8Bfと第2接結経糸8Bsとの組は、織り込み位置が経方向にずれているものの、第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組と同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。
【0055】
第1接結経糸(4Bf,8Bf)と第2接結経糸(4Bs,8Bs)との組は、上面側緯糸を織り込んで、経糸列毎に所定の織り込みパターンで形成した上面側織物を構成する。つまり、上面側経糸、第1接結経糸および第2接結経糸は、一定間隔で離れたナックルを上面側織物に形成する。これにより、上面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0056】
第1接結経糸(4Bf,8Bf)と第2接結経糸(4Bs,8Bs)との組は、下面側緯糸を織り込んで、経糸列毎に所定の織り込みパターンで形成した下面側織物を構成する。つまり、下面側経糸、第1接結経糸および第2接結経糸は、一定間隔で離れたナックルを下面側織物に形成する。これにより、下面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0057】
上面側経糸(1U~3U,5U~7U)、第1接結経糸(4Bf,8Bf)および第2接結経糸(4Bs,8Bs)は、同じ線径で形成されるが、別の態様では異なる線径で形成されてよい。第1接結経糸(4Bf,8Bf)および第2接結経糸(4Bs,8Bs)は上面側表面にも表れるため、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同一線径にすることで表面性の低下を抑えることができる。下面側経糸の線径は、上面側経糸の線径よりも大きくてもよい。下面側経糸の線径を上面側経糸の線径よりも大きくすることで、工業用織物10の剛性および経方向の伸び特性を向上できる。
【0058】
図1に示す工業用織物10では、接結経糸および上面側経糸の組で接結をしていたが、図4に示す工業用織物20では、第1接結経糸および第2接結経糸の組で接結している。第1接結経糸および第2接結経糸の組で上下に接結することで接結力を高めることができる。いずれの実施形態であっても、接結経糸が、上下に配置された2本の経糸のうち少なくとも一方を構成する。
【0059】
図6(a)は、上面側緯糸1’Uと下面側緯糸1’Lの組が上面側経糸と下面側経糸に織り込まれた形態を示す。図6(a)に示すように、上面側緯糸1’Uが上面側に位置する経糸(1U~3U,4Bf,5U~7U,8Bf)に対して1本の経糸の上側と3本の経糸の下側とを交互に織り込まれ、上面側経糸(3U,7U)の上側を通って2つのナックルをそれぞれ形成し、上面側経糸(1U,2U,5U,6U)および第1接結経糸(4Bf,8Bf)の下側を通る。他の上面側緯糸(2’U,3’U,5’U~8’U,10’U~13’U,15’U~18’U,20’U)は、上面側緯糸1’Uと同様の織り込みパターンを有し、上面側経糸および第1接結経糸に対して上面側に位置する経糸(1U~3U,4Bf,5U~7U,8Bf)に対して1本の経糸の上側と3本の経糸の下側とを交互に織り込まれ、上面側経糸の上側を通って2つのナックルをそれぞれ形成する。
【0060】
下面側緯糸1’Lは、連続する6本の下面側に位置する経糸(1L,4Bs,5L~7L,8Bs)の下側を通って長いナックルを形成し、連続する2本の下面側経糸(2L,3L)の上側を通る。下面側緯糸(3’L,6’L,8’L,11’L,13’L,16’L,18’L)は、下面側緯糸1’Lと比べて織り込み位置が緯方向にずれているものがあるが、下面側緯糸1’Lと同様の織り込みパターンを有し、6本の下面側に位置する経糸の下側を通って長いナックルを形成し、2本の下面側に位置する経糸の上側を通る。
【0061】
図6(b)は、接結緯糸9’Bが上面側経糸と下面側経糸と接結経糸とに織り込まれた形態を示す。なお、図6(b)に示す上面側経糸、下面側経糸、第1接結経糸および第2接結経糸の配置は、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsが上下逆になっているものの、それ以外は同じである。
【0062】
接結緯糸9’Bは、6本の下面側に位置する経糸(1L~3L,4Bf,5L,8Bs)の上側を通り、2本の下面側に位置する経糸(6L,7L)の下側を通ってナックルを形成する。接結緯糸9’Bは、上面側経糸3Uの上側を通ってナックルを形成し、それ以外の上面側経糸(1U,2U,4Bs,5U~7U,8Bf)の下側を通る。つまり、接結緯糸9’Bは、上面側表面組織に1つのナックルを形成し、下面側表面組織に1つのナックルを形成する。
【0063】
接結緯糸9’Bは、上面側に位置する経糸(1U~3U,4Bs,5U~7U,8Bf)のうち、2本以下の上面側経糸3Uの上側を通るナックルN2を形成する。すなわち、接結緯糸9’Bは、上面側に位置する経糸(1U~3U,4Bs,5U~7U,8Bf)のうち、連続して3本以上の経糸の上側を通るナックルを形成することはない。接結緯糸9’Bが上面側に形成するナックルN2は、1本の上面側経糸3Uの上側を通る。これにより、接結緯糸9’Bが上面側表面に露出する部分を少なくして、接結緯糸9’Bの耐久性を向上できる。なお、接結緯糸(4’B,14’B,19’B)は、接結緯糸9’Bと比べて織り込み位置が緯方向にずれているものの、同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。
【0064】
工業用織物20は、経方向に離間して配置される接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)と、第1接結経糸(4Bf,8Bf)および第2接結経糸(4Bs,8Bs)の組とによって接結されるため、上面側織物および下面側織物の内部摩耗を抑えることができる適度な接結力で接結できる。接結経糸での接結に加えて、織り込みパターンに組み込まれない接結緯糸で接結することで、接結経糸の本数を単に増やすよりも、適度な接結力の設定が可能となる。
【0065】
接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)は、経方向に隣接しないよう配置される。これによって、接結位置を分散して、接結による脱水阻害を抑え、通気性を向上できる。
【0066】
接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)の線径は、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L,11’L,13’L,16’L,18’L)の線径よりも小さく、例えば2分の1以下の大きさに設定される。これによって、接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)を各経糸の所定の織り込みパターンに含めずとも、所定の織り込みパターンのずれを抑えることができる。
【0067】
また、接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)は、下面側緯糸(1’L,3’L,6’L,8’L,11’L,13’L,16’L,18’L)よりも表面への露出を少なくなるように構成される。これにより、線径の小さい接結緯糸(4’B,9’B,14’B,19’B)が摩耗することを抑えることができる。
【0068】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態に係る工業用織物30の完全組織を示す意匠図である。第3実施形態に係る工業用織物30は、図1に示す工業用織物10と比べて、緯糸の本数が多く、24本の緯糸列を有する点で異なる。また、図1に示す工業用織物10の接結緯糸が、連続する4本の上面側緯糸を間に挟んで配置されのに対し、工業用織物30の接結緯糸は、連続する2本の上面側緯糸を間に挟んで配置される点が異なる。接結緯糸の本数を増やしたことで接結力を向上できる。
【0069】
一方で、工業用織物30は、上面側崩し糸および接結経糸の組と、接結緯糸によって上面側織物および下面側織物を接結する点は、図1に示す工業用織物10と同じである。
【0070】
[第4実施形態]
図8は、第4実施形態に係る工業用織物40の完全組織を示す意匠図である。第4実施形態に係る工業用織物40は、図1に示す工業用織物10と比べて、緯糸の本数が多く、12本の緯糸列を有する点で異なる。また、図1に示す工業用織物10の接結緯糸が、連続する4本の上面側緯糸を間に挟んで配置されのに対し、工業用織物40の接結緯糸は、連続する2本の上面側緯糸を間に挟んで配置される点が異なる。
【0071】
一方で、工業用織物40は、上面側崩し糸および接結経糸の組と、接結緯糸によって上面側織物および下面側織物を接結する点は、図1に示す工業用織物10と同じである。
【0072】
[第5実施形態]
図9は、第5実施形態に係る工業用織物50の完全組織を示す意匠図である。図10は、図9に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。図11は、図9に示す意匠図における緯糸に沿った緯方向の断面図である。
【0073】
図9に示す第5実施形態に係る工業用織物50は、上面側経糸(1U~12U)と上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(1L,2L,5L,6L,9L,10L)と下面側緯糸(1’L,2’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L,17’L,18’L,21’L,22’L)を含んで構成される下面側織物とが、接結経糸(3B,4B,7B,8B,11B,12B)、第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)によって接結されたものである。第1接結緯糸および第2接結緯糸を区別しない場合、単に接結緯糸という。
【0074】
上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)は、上面側織物の一部を構成する。下面側緯糸(1’L,2’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L,17’L,18’L,21’L,22’L)は、下面側織物の一部を構成する。接結経糸(3B,4B,7B,8B,11B,12B)は、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側織物および下面側織物の一部をそれぞれ構成する。第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)は、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側緯糸の1本分の織り込みパターンを形成するため、第1実施例から第4実施例の工業用織物と異なり、上面側経糸および接結経糸の織り込みパターンには含まれる。
【0075】
図10(a)は、上面側経糸1Uと下面側経糸1Lの組が上面側緯糸と下面側緯糸と接結緯糸に織り込まれた形態を示す。図10(a)および図10(b)に示す上面側緯糸、下面側緯糸および接結緯糸の配置は同じである。上面側経糸1Uと下面側経糸1Lは、上下に対向して配置される。
【0076】
図10(a)に示すように、上面側経糸1Uが上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)、第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)を含む上面側に位置する緯糸に対して、1本ずつ上下に織り込まれ、上面側緯糸(2’U,5’U,10’U,13’U,18’U,21’U)および接結緯糸(4’Bs,7’Bf,8’Bs,11’Bf,15’Bf,16’Bs,20’Bs,23’Bf,24’Bs)の上側を通り、上面側緯糸(1’U,6’U,9’U,14’U,17’U,22’U)および接結緯糸(3’Bf,12’Bs,19’Bf)の下側を通る。上面側経糸1Uは、上面側緯糸(2’U,5’U,10’U,13’U,18’U,21’U)および接結緯糸(7’Bf,16’Bs,23’Bf)の上側を通ってナックルを形成する。
【0077】
上面側経糸(2U,5U,6U,9U,10U)は、上面側経糸1Uと比べて織り込み位置が経方向にずれたものが含まれるが、上面側経糸1Uと同様の織り込みパターンを有し、上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)、第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)を含む上面側に位置する緯糸に対して1本ずつ上下に織り込まれる。このように、上面側経糸(1U,2U,5U,6U,9U,10U)は、同じ織り込みパターンを有し、上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)、第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)に対して一定の間隔でナックルを形成し、表面組織を崩すことなく交互に織り込まれる。上面側経糸は、下面側緯糸を織り込まず、上面側緯糸および接結緯糸のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する。
【0078】
下面側経糸1Lは、下面側緯糸(1’L,6’L,13’L,18’L)および接結緯糸(3’Bf,7’Bf,8’Bs,11’Bf,12’Bs,16’Bs,19’Bf,20’Bs,23’Bf,24’Bs)の下側を通り、下面側緯糸(2’L,5’L,9’L,10’L,14’L,17’L,21’L,22’L)および接結緯糸(4’Bs,15’Bf,)の上側を通る。下面側経糸1Lは、1本の下面側緯糸の下側と、2本の下面側緯糸の上側を交互に通って織り込まれる。
【0079】
下面側経糸(2L,5L,6L,9L,10L)は、下面側経糸1Lと織り込み位置が経方向にずれているものを含むが、下面側経糸1Lと同様の織り込みパターンを有し、1本の下面側緯糸の下側と、2本の下面側緯糸の上側を交互に通って織り込まれる。このように、下面側経糸(1L,2L,5L,6L,9L,10L)は、全ての上面側緯糸を織り込まず、下面側緯糸および接結緯糸のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0080】
上面側経糸(1U,2U,5U,6U,9U,10U)は、上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)だけでなく、第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)を含む上面側に位置する緯糸に対して、1本ずつ上下に織り込まれる共通の織り込みパターンを有している。
【0081】
また、下面側経糸(1L,2L,5L,6L,9L,10L)も、下面側に位置する緯糸に対して、1本の下面側に位置する緯糸の下側と、2本の下面側に位置する緯糸の上側を交互に通って織り込まれた共通の織り込みパターンを有している。
【0082】
図10(b)は、上面側経糸4Uと接結経糸4Bとの組が上面側緯糸と下面側緯糸と接結緯糸に織り込まれた形態を示す。上面側経糸4Uと接結経糸4Bは、上下に対向して組をなし、接結経糸4Bによる接結のため交差する。
【0083】
上面側経糸4Uは、上面側緯糸(1’U,9’U,14’U,17’U,22’U)および接結緯糸(3’Bf,4’Bs,8’Bs,11’Bf,12’Bs,16’Bs,19’Bf,20’Bs,23’Bf)の上側を通り、上面側緯糸(2’U,5’U,6’U,10’U,13’U,18’U,21’U)および接結緯糸(7’Bf,15’Bf,24’Bs)の下側を通る。
【0084】
接結経糸4Bは、下面側緯糸(2’L,9’L,14’L,21’L)および接結緯糸(3’Bf,4’Bs,7’Bf,8’Bs,11’Bf,15’Bf,16’Bs,19’Bf,20’Bs,24’Bs)の下側を通り、上面側緯糸6’Uの上側を通るナックルN1を形成する。接結経糸4Bは、下面側緯糸(1’L,2’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L,17’L,18’L,21’L,22’L)に対して1本の下面側緯糸の下側と2本の下面側緯糸の上側を交互に通り、下面側緯糸に対して一定の間隔でナックルを形成し、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。接結経糸4Bは、接結緯糸(12’Bs,23’Bf)の上側を通る。
【0085】
接結経糸4Bは、上面側織物に対して、接結のために上面側緯糸6’Uの上側を通り、1つだけ表面側にナックルN1を形成し、上面側緯糸6’U以外の上面側緯糸の下側を通る。
【0086】
上面側経糸4Uと接結経糸4Bとの組は、上面側経糸(1U,2U,5U,6U,9U,10U)および下面側経糸(1L,2L,5L,6L,9L,10L)と共通の織り込みパターンを有している。つまり、上面側経糸4Uと接結経糸4Bとの組は、上面側緯糸、第1接結緯糸および第2接結緯糸を含む上面側に位置する緯糸に対して、1本ずつ上下に織り込まれた織り込みパターンを有する。上面側経糸(3U,7U,8U,11U,12U)と接結経糸(3B,7B,8B,11B,12B)との組は、織り込み位置が経方向にずれているものの、上面側経糸4Uと接結経糸4Bとの組と同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。
【0087】
接結経糸4Bが表面側にナックルN1を形成する位置で、上面側経糸4Uが、上面側緯糸6’Uの下側を通って表面側にナックルを形成せず、上面側表面組織の一部を崩す上面側崩し糸4Uとして機能する。
【0088】
上面側経糸4U(上面側崩し糸)および接結経糸4Bが、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側崩し糸4U以外の上面側経糸と同様の表面組織を形成し、上面側崩し糸4U以外の上面側経糸と同じ本数の上面側緯糸にナックルを形成する。このように、上面側経糸4Uおよび接結経糸4Bの組は、互いに補完し合って上面側経糸(1U,2U,5U,6U,9U,10U)1本分と下面側経糸(1L,2L,5L,6L,9L,10L)1本分の織り込みパターンをそれぞれ形成する。これにより、接結経糸4Bによって上面側織物の表面性が低下することを抑えられる。また、上面側崩し糸4Uと接結経糸4Bとの組によって接結をすることで、上下に接結経糸の組を設ける場合と比べて、表面性の低下を抑えられる。
【0089】
上面側経糸(1U~12U)および接結経糸(3B,4B,7B,8B,11B,12B)は、上面側緯糸、第1接結緯糸および第2接結緯糸を含む上面側に位置する緯糸を織り込んで、経糸列毎に所定の織り込みパターンで形成した上面側織物を構成する。つまり、上面側経糸(1U~12U)および接結経糸(3B,4B,7B,8B,11B,12B)は、一定間隔で離れたナックルを上面側織物に形成する。これにより、上面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0090】
下面側経糸(1L,2L,5L,6L,9L,10L)および接結経糸(3B,4B,7B,8B,11B,12B)は、下面側緯糸、第1接結緯糸および第2接結緯糸を含む下面側に位置する緯糸を織り込んで、経糸列毎に所定の織り込みパターンで形成した下面側織物を構成する。つまり、下面側経糸(1L,2L,5L,6L,9L,10L)および接結経糸(3B,4B,7B,8B,11B,12B)は、一定間隔で離れたナックルを下面側織物に形成する。これにより、下面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0091】
上面側経糸(1U~12U)および接結経糸(3B,4B,7B,8B,11B,12B)は、同じ線径で形成されるが、別の態様では異なる線径で形成されてよい。接結経糸は上面側表面にも表れるため、上面側経糸と同一線径にすることで表面性の低下を抑えることができる。下面側経糸の線径は、上面側経糸の線径よりも大きくてもよい。下面側経糸の線径を上面側経糸の線径よりも大きくすることで、工業用織物10の剛性および経方向の伸び特性を向上できる。
【0092】
上面側経糸3Uおよび接結経糸3Bの組は、上面側経糸4Uおよび接結経糸4Bの組と緯方向に隣接する。これによって、上面側織物および下面側織物の接結力を高めることができる。
【0093】
図11(a)は、上面側緯糸2’Uと下面側緯糸2’Lの組が上面側経糸と下面側経糸と接結経糸とに織り込まれた形態を示す。図11(a)に示すように、上面側緯糸2’Uが上面側経糸(1U~12U)に対して1本ずつ上下に織り込まれ、上面側経糸(1U,3U,5U,7U,9U,11U)の上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、上面側経糸(2U,4U,6U,8U,10U,12U)の下側を通る。他の上面側緯糸(1’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)は、上面側緯糸2’Uと同様の織り込みパターンを有し、上面側経糸(1U~12U)および接結経糸に1本ずつ上下に織り込まれる。上面側緯糸によっては、上面側織物の接結対象が上面側経糸だけでなく接結経糸を含んでいる。
【0094】
下面側緯糸2’Lは、4本の下面側に位置する経糸(6L,7B,8B,9L)および経糸(1L,2L,3B,12B)の下側を通って2つのナックルを形成し、2本の下面側に位置する経糸(4B,5L)および経糸(10L,11B)の上側を通る。下面側に位置する経糸には、下面側経糸だけでなく接結経糸も含まれる。他の下面側緯糸(1’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L,17’L,18’L,21’L,22’L)は、下面側緯糸2’Lと比べて織り込み位置が緯方向にずれているものを含むが、下面側緯糸2’Lと同様の織り込みパターンを有し、4本の下面側に位置する経糸の下側と、2本の下面側に位置する経糸の上側とを交互に通る。
【0095】
図11(b)は、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが上面側経糸と下面側経糸と接結経糸とに織り込まれた形態を示す。第1接結緯糸3’Bfは、上面側経糸(1U,3U,11U)の上側を通ってナックルN2をそれぞれ形成し、それ以外の上面側経糸(2U,4U~10U,12U)の下側を通る。また、第1接結緯糸3’Bfは、2本の下面側に位置する経糸(6L,7B)の下側を通ってナックルN4を形成し、それら以外の下面側に位置する経糸(1L,2L,3B,4B,5L,8B,9L,10L,11B,12B)の上側を通る。つまり、第1接結緯糸3’Bfは、上面側表面組織に3つのナックルを形成し、下面側表面組織に1つのナックルを形成する。
【0096】
第2接結緯糸4’Bsは、上面側経糸(5U,7U,9U)の上側を通ってナックルN3をそれぞれ形成し、それ以外の上面側経糸(1U~4U,6U,8U,10U~12U)の下側を通る。また、第2接結緯糸4’Bsは、2本の下面側に位置する経糸(1L,12B)の下側を通ってナックルN5を形成し、それら以外の下面側に位置する経糸(2L,3B,4B,5L,6L,7B,8B,9L,10L,11B)の上側を通る。つまり、第2接結緯糸4’Bsは、第1接結緯糸3’Bfと同様に、上面側表面組織に3つのナックルを形成し、下面側表面組織に1つのナックルを形成する。
【0097】
第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、上面側経糸(1U~12U)のうち、連続して2本以下の上面側経糸の上側を通るナックル(N2,N3)を形成する。すなわち、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、上面側経糸(1U~12U)のうち、連続して3本以上の上面側経糸の上側を通るナックルを形成することはない。第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが上面側に形成する各ナックル(N2,N3)は、1本だけの上面側経糸の上側を通ってそれぞれ形成される。これにより、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが上面側表面に長いナックルを形成することを避けることができる。抄紙機で使用される際に、工業用織物が各ロールや脱水機器と接触することで表面を摩耗するが、接結糸のナックルが長くなることを避けることで、摩耗による接結糸の損傷を抑えることができる。
【0098】
第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、下面側経糸のうち、連続して2本以下の下面側経糸の下側を通るナックル(N4,N5)を形成する。すなわち、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、下面側経糸のうち、連続して3本以上の下面側経糸の下側を通るナックルを形成することはない。第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが下面側に形成する各ナックル(N4,N5)は、連続した2本の下面側経糸の下側を通ってそれぞれ形成される。これにより、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが露出する部分を少なくして、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsの耐久性を向上できる。なお、他の第1接結緯糸(7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)は、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsと比べて織り込み位置が緯方向にずれているものの、同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。
【0099】
第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)は、経方向に隣接して組をなして配置される。これによって、上面側織物および下面側織物を接結する接結力を高めることができる。
【0100】
隣接する第1接結緯糸および第2接結緯糸の組は、上面側緯糸の1本分のナックルを上面側織物の表面に形成する。つまり、隣接する第1接結緯糸および第2接結緯糸の組が、上面側織物の表面に形成するナックルの数と、1本の上面側緯糸が上面側緯糸の表面に形成するナックルの数が同じである。これにより、上面側織物の表面性の低下を抑えることができる。隣接する第1接結緯糸および第2接結緯糸の組は、上面側緯糸の1本分の織り込みパターンを上面側織物の表面に形成する
【0101】
工業用織物50は、第1接結緯糸および第2接結緯糸の組と、接結経糸および上面側経糸の組とによって接結されるため、上面側織物および下面側織物の内部摩耗を抑えることができる適度な接結力で接結できる。接結経糸での接結に加えて、接結緯糸で接結することで、接結経糸の本数を単に増やすよりも、適度な接結力の設定が可能となる。
【0102】
第1接結緯糸および第2接結緯糸の線径は、下面側緯糸の線径よりも小さく、例えば2分の1以下の大きさに設定される。これによって、第1接結緯糸および第2接結緯糸を各経糸の所定の織り込みパターンに含めずとも、所定の織り込みパターンのずれを抑えることができる。また、第1接結緯糸および第2接結緯糸の線径は、上面側緯糸の線径と同じか、または小さくてもよい。
【0103】
また、第1接結緯糸および第2接結緯糸の組は、下面側緯糸よりも下面側表面への露出を少なくなるように構成される。第1接結緯糸および第2接結緯糸の組は,下面側に位置する経糸のうち、連続する2本の経糸の下側を通って下面側表面に露出するのに対し、下面側緯糸は、下面側に位置する経糸のうち連続する4本の経糸の下側を通って下面側表面に露出する。これにより、線径の小さい第1接結緯糸および第2接結緯糸が摩耗することを抑えることができる。
【0104】
[第6実施形態]
図12は、第6実施形態に係る工業用織物60の完全組織を示す意匠図である。図13は、図12に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。図14は、図12に示す意匠図における緯糸に沿った緯方向の断面図である。
【0105】
図12に示す第6実施形態に係る工業用織物60は、上面側経糸(1U,2U,4U~6U,8U~10U,12U)と上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(1L,2L,4L~6L,8L~10L,12L)と下面側緯糸(1’L,2’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L,17’L,18’L,21’L,22’L)を含んで構成される下面側織物とが、第1接結経糸(3Bf,7Bf,11Bf)、第2接結経糸(3Bs,7Bs,11Bs)、第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)によって接結されたものである。第1接結経糸および第2接結経糸を区別しない場合、単に接結経糸といい、第1接結緯糸および第2接結緯糸を区別しない場合、単に接結緯糸という。
【0106】
第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)は、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側緯糸の1本分の織り込みパターンを形成するため、上面側経糸および接結経糸の織り込みパターンに含まれる。
【0107】
図13(a)は、上面側経糸1Uと下面側経糸1Lの組が上面側緯糸と下面側緯糸と接結緯糸に織り込まれた形態を示す。図13(a)および図13(b)に示す上面側緯糸、下面側緯糸および接結緯糸の配置は同じである。上面側経糸1Uと下面側経糸1Lは、上下に対向して配置される。
【0108】
図13(a)に示すように、上面側経糸1Uが上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)、第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)に対して1本ずつ上下に織り込まれ、上面側緯糸(2’U,5’U,10’U,13’U,18’U,21’U)および接結緯糸(7’Bf,16’Bs,23’Bf)の上側を通ってナックルを形成し、上面側緯糸(1’U,6’U,9’U,14’U,17’U,22’U)および接結緯糸(3’Bf,12’Bs,19’Bf)の下側を通る。また、上面側経糸1Uが上面側緯糸および接結緯糸に対して1本ずつ上下に織り込まれる織り込みパターンに接結緯糸が含まれている。上面側経糸1Uは、接結緯糸(4’Bs,7’Bf,8’Bs,11’Bf,15’Bf,16’Bs,20’Bs,23’Bf,24’Bs)の上側を通り、接結緯糸(3’Bf,12’Bs,19’Bf)の下側を通る。
【0109】
上面側経糸(2U,4U~6U,8U~10U,12U)は、上面側経糸1Uと比べて織り込み位置が経方向にずれたものが含まれるが、上面側経糸1Uと同様の織り込みパターンを有し、上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)、1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)に対して1本ずつ上下に織り込まれる。このように、上面側経糸(1U,2U,4U~6U,8U~10U,12U)は、同じ織り込みパターンを有し、上面側緯糸および接結緯糸に対して一定の間隔でナックルを形成し、表面組織を崩すことなく交互に織り込まれる。上面側経糸は、下面側緯糸を織り込まず、上面側緯糸および接結緯糸のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する。
【0110】
下面側経糸1Lは、下面側緯糸(1’L,6’L,13’L,18’L)の下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、下面側緯糸(2’L,5’L,9’L,10’L,14’L,17’L,21’L,22’L)の上側を通る。下面側経糸1Lは、1本の下面側緯糸の下側と、2本の下面側緯糸の上側を交互に通って織り込まれる。また、下面側経糸1Lは、接結緯糸(3’Bf,7’Bf,8’Bs,11’Bf,12’Bs,16’Bs,19’Bf,20’Bs,23’Bf,24’Bs)の下側を通り、接結緯糸(4’Bs,15’Bf)の上側を通る。
【0111】
下面側経糸(2L,4L~6L,8L~10L,12L)は、下面側経糸1Lと比べて織り込み位置が経方向にずれているものを含むが、下面側経糸1Lと同様の織り込みパターンを有し、1本の下面側緯糸の下側と、2本の下面側緯糸の上側を交互に通って織り込まれる。このように、下面側経糸(1L,2L,4L~6L,8L~10L,12L)は、全ての上面側緯糸を織り込まず、下面側緯糸および接結緯糸のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0112】
上面側経糸(1U,2U,4U~6U,8U~10U,12U)は、上面側緯糸、第1接結緯糸および第2接結緯糸を含む上面側に位置する緯糸に対して共通の織り込みパターンを有している。つまり、上面側経糸は、上面側に位置する緯糸に1本ずつ上下に織り込まれる織り込みパターンをそれぞれ有している。
【0113】
また、下面側経糸(1L,2L,5L,6L,9L,10L)も、共通の織り込みパターンを有しており、下面側緯糸(1’L,2’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L,17’L,18’L,21’L,22’L)に対して1本の下面側緯糸の下側と、2本の下面側緯糸の上側を交互に通って織り込まれた織り込みパターンを有する。
【0114】
図13(b)は、第1接結経糸3Bfと第2接結経糸3Bsとの組が上面側緯糸と下面側緯糸と接結緯糸に織り込まれた形態を示す。第1接結経糸3Bfと第2接結経糸3Bsは、上下に対向して組をなし、接結のため交差する。
【0115】
第1接結経糸3Bfは、上面側緯糸(2’U,18’U,21’U)および接結緯糸(15’Bf,23’Bf)の上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,22’U)および接結緯糸(3’Bf,4’Bs,7’Bf,11’Bf,12’Bs,16’Bs,19’Bf)の下側を通る。第1接結経糸3Bfは、下面側緯糸(17’L,22’L)の下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、下面側緯糸(1’L,2’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L,18’L,21’L)および接結緯糸(8’Bs,20’Bs,23’Bf,24’Bs)の上側を通る。第1接結経糸3Bfは、下面側緯糸(17’L,22’L)の下側を通って2つのナックルを形成し、上面側に位置する緯糸(2’U,15’Bf,18’U,21’U,23’Bf)の上側を通って5つのナックルを形成する。
【0116】
第2接結経糸3Bsは、上面側緯糸(5’U,10’U,13’U)および接結緯糸(7’Bf)の上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,2’U,6’U,9’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)および接結緯糸(3’Bf,11’Bf,15’Bf,16’Bs,19’Bf,23’Bf,24’Bs)の下側を通る。第2接結経糸3Bsは、下面側緯糸(5’L,10’L)の下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、下面側緯糸(1’L,2’L,6’L,9’L,13’L,14’L,17’L,18’L,21’L,22’L)および接結緯糸(4’Bs,7’Bf,8’Bs,12’Bs,20’Bs)の上側を通る。第2接結経糸3Bsは、下面側緯糸(17’L,22’L)の下側を通って2つのナックルを形成し、上面側に位置する緯糸(5’U,7’Bf,10’U,13’U)の上側を通って4つのナックルを形成する。
【0117】
第1接結経糸3Bfと第2接結経糸3Bsとの組は、上面側緯糸、第1接結緯糸および第2接結緯糸を含む上面側に位置する緯糸に対して、1本ずつ上下に通って織り込まれた織り込みパターンを有する。第1接結経糸3Bfと第2接結経糸3Bsとの組は、第1接結緯糸および第2接結緯糸を除けば、下面側緯糸に対して、1本の下面側緯糸の下側と2本の下面側緯糸の上側とを交互に通って織り込まれた織り込みパターンを有する。
【0118】
このように、第1接結経糸3Bfと第2接結経糸3Bsとの組は、上面側経糸および下面側経糸と共通の織り込みパターンを有している。これにより、上面側織物および下面側織物の表面性を向上できる。なお、第1接結経糸(7Bf,11Bf)と第2接結経糸(7Bs,11Bs)との組は、織り込み位置が経方向にずれているものの、第1接結経糸3Bfと第2接結経糸3Bsとの組と同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。
【0119】
第1接結経糸(3Bf,7Bf,11Bf)と第2接結経糸(3Bs,7Bs,11Bs)との組は、上面側に位置する緯糸を織り込んで、経糸列毎に所定の織り込みパターンで形成した上面側織物を構成する。つまり、上面側経糸、第1接結経糸および第2接結経糸は、一定の間隔で離れたナックルを上面側織物に形成する。これにより、上面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0120】
第1接結経糸(3Bf,7Bf,11Bf)と第2接結経糸(3Bs,7Bs,11Bs)との組は、下面側緯糸を織り込んで、経糸列毎に所定の織り込みパターンで形成した下面側織物を構成する。つまり、下面側経糸、第1接結経糸および第2接結経糸は、一定間隔で離れたナックルを下面側織物に形成する。これにより、下面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0121】
上面側経糸、第1接結経糸および第2接結経糸は、同じ線径で形成されるが、別の態様では異なる線径で形成されてよい。第1接結経糸および第2接結経糸は上面側表面にも表れるため、上面側経糸と同一線径にすることで表面性の低下を抑えることができる。下面側経糸の線径は、上面側経糸の線径よりも大きくてもよい。下面側経糸の線径を上面側経糸の線径よりも大きくすることで、工業用織物10の剛性および経方向の伸び特性を向上できる。
【0122】
図9に示す工業用織物50では、接結経糸および上面側経糸の組で接結をしていたが、図12に示す工業用織物60では、第1接結経糸および第2接結経糸の組で接結している。第1接結経糸および第2接結経糸の組で上下に接結することで接結力を高めることができる。いずれの実施形態であっても、接結経糸が、上下に配置された2本の経糸のうち少なくとも一方を構成する。
【0123】
図14(a)は、上面側緯糸2’Uと下面側緯糸2’Lの組が上面側経糸と下面側経糸と接結経糸とに織り込まれた形態を示す。図14(a)に示すように、上面側緯糸2’Uが上面側経糸(1U,2U,4U~6U,8U~10U,12U)および接結経糸(3Bf,7Bf,11Bs)に対して1本ずつ上下に織り込まれ、上面側経糸(1U,3Bf,5U,7Bf,9U,11Bs)の上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、上面側経糸(2U,4U,6U,8U,10U,12U)の下側を通る。他の上面側緯糸(1’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U,17’U,18’U,21’U,22’U)は、上面側緯糸2’Uと同様の織り込みパターンを有し、上面側経糸および接結経糸の経糸列において1本ずつ上下に織り込まれる。
【0124】
下面側緯糸2’Lは、4本の下面側に位置する経糸(6L,7Bs,8L,9L)および4本の下面側に位置する経糸(1L,2L,3Bs,12L)の下側を通って2つのナックルを形成し、2本の下面側に位置する経糸(4L,5L)および2本の下面側に位置する経糸(10L,11Bf)の上側を通る。下面側に位置する経糸には、下面側経糸だけでなく第1接結経糸および第2接結経糸も含まれる。他の下面側緯糸(1’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L,17’L,18’L,21’L,22’L)は、下面側緯糸2’Lと比べて織り込み位置が緯方向にずれているものを含むが、下面側緯糸2’Lと同様の織り込みパターンを有し、4本の下面側に位置する経糸の下側と、2本の下面側に位置する経糸の上側とを交互に通る。
【0125】
図14(b)は、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが上面側経糸と下面側経糸と接結経糸とに織り込まれた形態を示す。なお、図14(b)では、図14(a)に示す経糸と比べて、第1接結経糸11Bfおよび第2接結経糸11Bsが上下逆であるが、それ以外の経糸の配置は同じである。
【0126】
第1接結緯糸3’Bfは、上面側に位置する経糸(1U,3Bf,11Bs)の上側を通ってナックルN2をそれぞれ形成し、それ以外の上面側に位置する経糸(2U,4U~6U,7Bs,8U~10U,12U)の下側を通る。また、第1接結緯糸3’Bfは、2本の下面側に位置する経糸(6L,7Bs)の下側を通ってナックルを形成し、それら以外の下面側に位置する経糸(1L,2L,3Bs,4L,5L,8L~10L,11Bf,12L)の上側を通る。つまり、第1接結緯糸3’Bfは、上面側表面組織に3つのナックルを形成し、下面側表面組織に1つのナックルを形成する。
【0127】
第2接結緯糸4’Bsは、上面側に位置する経糸(5U,7Bf,9U)の上側を通ってナックルN3をそれぞれ形成し、それ以外の上面側に位置する経糸(1U,2U,3Bf,4U,6U,8U,10U,11Bs,12U)の下側を通る。また、第2接結緯糸4’Bsは、2本の下面側に位置する経糸(1L,12L)の下側を通ってナックルを形成し、それら以外の下面側に位置する経糸(2L,3Bs,4L~6L,7Bs,8L~10L,11Bf)の上側を通る。つまり、第2接結緯糸4’Bsは、第1接結緯糸3’Bfと同様に、上面側表面組織に3つのナックルを形成し、下面側表面組織に1つのナックルを形成する。
【0128】
第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、上面側に位置する経糸のうち、連続して2本以下の上面側経糸の上側を通るナックルを形成する。すなわち、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、上面側経糸のうち、連続して3本以上の上面側経糸の上側を通るナックルを形成することはない。第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが上面側に形成する各ナックルは、1本だけの上面側経糸の上側を通ってそれぞれ形成される。
【0129】
第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、下面側経糸および接結経糸を含む下面側に位置する経糸のうち、連続して2本以下の下面側に位置する経糸の下側を通るナックルを形成する。すなわち、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、下面側に位置する経糸のうち、連続して3本以上の下面側に位置する経糸の下側を通るナックルを形成することはない。第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが下面側に形成する各ナックルは、連続した2本の下面側に位置する経糸の下側を通ってそれぞれ形成される。これにより、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが露出する部分を少なくして、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsの耐久性を向上できる。なお、他の第1接結緯糸(7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)は、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsと比べて織り込み位置が緯方向にずれているものを含むが、同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。
【0130】
第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf,19’Bf,23’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs,20’Bs,24’Bs)は、経方向に隣接して組をなして配置される。これによって、上面側織物および下面側織物を接結する接結力を高めることができる。
【0131】
隣接する第1接結緯糸および第2接結緯糸の組は、上面側緯糸の1本分のナックルを上面側織物の表面に形成する。つまり、隣接する第1接結緯糸および第2接結緯糸の組が、上面側織物の表面に形成するナックルの数と、1本の上面側緯糸が上面側織物の表面に形成するナックルの数が同じである。これにより、上面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0132】
工業用織物60は、第1接結緯糸および第2接結緯糸の組と、第1接結経糸および第2経糸の組とによって接結されるため、上面側織物および下面側織物の内部摩耗を抑えることができる適度な接結力で接結できる。接結経糸での接結に加えて、接結緯糸で接結することで、接結経糸の本数を単に増やすよりも、適度な接結力の設定が可能となる。
【0133】
[第7実施形態]
図15は、第7実施形態に係る工業用織物70の完全組織を示す意匠図である。図16は、図15に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。図17は、図15に示す意匠図における緯糸に沿った緯方向の断面図である。
【0134】
図15に示す第7実施形態に係る工業用織物70は、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)と下面側緯糸(1’L,2’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L)を含んで構成される下面側織物とが、第1接結経糸(4Bf,8Bf)、第2接結経糸(4Bs,8Bs)、第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs)によって接結されたものである。第1接結緯糸および第2接結緯糸を区別しない場合、単に接結緯糸という。
【0135】
第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs)は、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側緯糸の1本分の織り込みパターンを形成するため、上面側経糸および接結経糸の織り込みパターンには含まれる。
【0136】
図16(a)は、上面側経糸1Uと下面側経糸1Lの組が上面側緯糸と下面側緯糸と接結緯糸に織り込まれた形態を示す。図10(a)および図10(b)に示す上面側緯糸、下面側緯糸および接結緯糸の配置は同じである。上面側経糸1Uと下面側経糸1Lは、上下に対向して配置される。
【0137】
図16(a)に示すように、上面側経糸1Uが上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U)、第1接結緯糸(3’Bf,7’Bf,11’Bf,15’Bf)および第2接結緯糸(4’Bs,8’Bs,12’Bs,16’Bs)を含む上面側に位置する緯糸に対して、1本ずつ上下に織り込まれる。上面側経糸1Uは、上面側緯糸(2’U,5’U,10’U,13’U)および接結緯糸(7’Bf,16’Bs)の上側を通ってナックルを形成し、上面側緯糸(1’U,6’U,9’U,14’U)および接結緯糸(3’Bf,12’Bs)の下側を通る。上面側経糸1Uは、接結緯糸(4’Bs,7’Bf,8’Bs,11’Bf,15’Bf,16’Bs)の上側を通り、接結緯糸(3’Bf,12’Bs)の下側を通る。
【0138】
上面側経糸(2U,3U,5U~7U)は、上面側経糸1Uと比べて織り込み位置が経方向にずれたものが含まれるが、上面側経糸1Uと同様の織り込みパターンを有し、上面側に位置する緯糸に対して1本ずつ上下に織り込まれる。このように、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、同じ織り込みパターンを有し、上面側に位置する緯糸に対して一定の間隔でナックルを形成し、表面組織を崩すことなく交互に織り込まれる。上面側経糸は、下面側緯糸を織り込まず、上面側緯糸および接結緯糸のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する。
【0139】
下面側経糸1Lは、下面側緯糸(6’L,14’L)の下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、下面側緯糸(1’L,2’L,5’L,9’L,10’L,13’L)の上側を通る。下面側経糸1Lは、1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を交互に通って織り込まれる。また、下面側経糸1Lは、接結緯糸(3’Bf,4’Bs,7’Bf,11’Bf,12’Bs,16’Bs)の下側を通り、接結緯糸(8’Bs,15’Bf,)の上側を通る。
【0140】
下面側経糸(2L,3L,5L~7L)は、下面側経糸1Lと織り込み位置が経方向にずれているものを含むが、下面側経糸1Lと同様の織り込みパターンを有し、1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を交互に通って織り込まれる。このように、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)は、全ての上面側緯糸を織り込まず、下面側緯糸および接結緯糸のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0141】
上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、上面側に位置する緯糸を1本ずつ上下に織り込んだ共通の織り込みパターンを有している。
【0142】
また、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)も、共通の織り込みパターンをそれぞれ有しており、下面側緯糸(1’L,2’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L)に対して1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を交互に通って織り込まれた織り込みパターンを有する。
【0143】
図16(b)は、第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組が上面側緯糸と下面側緯糸と接結緯糸に織り込まれた形態を示す。第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsは、上下に対向して組をなし、接結のため交差する。
【0144】
第1接結経糸4Bfは、上面側緯糸(1’U,6’U)および接結緯糸3’Bfの上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(2’U,5’U,9’U,10’U,13’U,14’U)および接結緯糸(8’Bs,15’Bf)の下側を通る。第1接結経糸4Bfは、下面側緯糸13’Lの下側を通ってナックルを形成し、それ以外の下面側緯糸(1’L,2’L,5’L,6’L,9’L,10’L,14’L)および接結緯糸(3’Bf,4’Bs,7’Bf,11’Bf,12’Bs,16’Bs)の上側を通る。第1接結経糸4Bfは、下面側緯糸13’Lの下側を通って1つのナックルを形成し、上面側に位置する緯糸(1’U,3’Bf,6’U)の上側を通って3つのナックルを形成する。
【0145】
第2接結経糸4Bsは、上面側緯糸(9’U,14’U)および接結緯糸11’Bfの上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、それ以外の上面側緯糸(1’U,2’U,5’U,6’U,10’U,13’U)および接結緯糸(3’Bf,4’Bs,7’Bf,8’Bs,15’Bf)の下側を通る。第2接結経糸4Bsは、下面側緯糸5’Lの下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、それ以外の下面側緯糸(1’L,2’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L)および接結緯糸(11’Bf,12’Bs,16’Bs)の上側を通る。第2接結経糸4Bsは、下面側緯糸5’Lの下側を通って1つのナックルを形成し、上面側に位置する緯糸(9’U,11’Bf,14’U)の上側を通って2つのナックルを形成する。
【0146】
第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組は、上面側緯糸、第1接結緯糸および第2接結緯糸を含む上面側に位置する緯糸に対して、1本ずつ上下に織り込まれた織り込みパターンを有する。第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組は、下面側緯糸に対して、1本の下面側緯糸の下側と3本の下面側緯糸の上側とを交互に通って織り込まれた織り込みパターンを有する。
【0147】
このように、第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組は、上面側経糸および下面側経糸と共通の織り込みパターンを有している。なお、第1接結経糸8Bfと第2接結経糸8Bsとの組は、織り込み位置が経方向にずれているものの、第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組と同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。
【0148】
第1接結経糸(4Bf,8Bf)と第2接結経糸(4Bs,8Bs)との組は、上面側緯糸を織り込んで、経糸列毎に所定の織り込みパターンで形成した上面側織物を構成する。つまり、上面側経糸、第1接結経糸および第2接結経糸は、一定の間隔で離れたナックルを上面側織物に形成する。これにより、上面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0149】
第1接結経糸(4Bf,8Bf)と第2接結経糸(4Bs,8Bs)との組は、下面側緯糸を織り込んで、経糸列毎に所定の織り込みパターンで形成した下面側織物を構成する。つまり、下面側経糸、第1接結経糸および第2接結経糸は、一定間隔で離れたナックルを下面側織物に形成する。これにより、下面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0150】
図17(a)は、上面側緯糸2’Uと下面側緯糸2’Lの組が上面側経糸と下面側経糸と接結経糸とに織り込まれた形態を示す。図17(a)に示すように、上面側緯糸2’Uが上面側の位置する経糸(1U~3U,4Bs,5U~7U,8Bf)に対して1本ずつ上下に織り込まれ、上面側に位置する経糸(2U,4Bs,6U,8Bf)の上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、上面側に位置する経糸(1U,3U,5U,7U)の下側を通る。他の上面側緯糸(1’U,5’U,6’U,9’U,10’U,13’U,14’U)は、上面側緯糸2’Uと同様の織り込みパターンを有し、上面側に位置する経糸に1本ずつ上下に織り込まれる。
【0151】
下面側緯糸2’Lは、6本の下面側に位置する経糸(1L~3L,4Bf,7L,8Bs)の下側を通って長いナックルを形成し、2本の下面側経糸(5L,6L)の上側を通る。他の下面側緯糸(1’L,5’L,6’L,9’L,10’L,13’L,14’L)は、下面側緯糸2’Lと比べて織り込み位置が緯方向にずれているものを含むが、下面側緯糸2’Lと同様の織り込みパターンを有し、6本の下面側に位置する経糸の下側を通って長いナックルを形成し、2本の下面側に位置する経糸の上側を通る。
【0152】
図17(b)は、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが上面側経糸と下面側経糸と接結経糸とに織り込まれた形態を示す。なお、図17(b)では、図17(a)に示す経糸の配置と同じである。
【0153】
第1接結緯糸3’Bfは、上面側経糸(1U,3U)の上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、それ以外の上面側に位置する経糸(2U,4Bs,5U~7U,8Bf)の下側を通る。また、第1接結緯糸3’Bfは、1本の下面側に位置する経糸6Lの下側を通ってナックルを形成し、それら以外の下面側に位置する経糸(1L~3L,4Bf,5L,7L,8Bs)の上側を通る。つまり、第1接結緯糸3’Bfは、上面側表面組織に2つのナックルを形成し、下面側表面組織に1つのナックルを形成する。
【0154】
第2接結緯糸4’Bsは、上面側経糸(5U,7U)の上側を通ってナックルをそれぞれ形成し、それ以外の上面側に位置する経糸(1U~3U,4Bs,6U,8Bf)の下側を通る。また、第2接結緯糸4’Bsは、下面側に位置する経糸2Lの下側を通ってナックルを形成し、それら以外の下面側に位置する経糸(1L,3L,4Bf,5L~7L,8Bs)の上側を通る。つまり、第2接結緯糸4’Bsは、第1接結緯糸3’Bfと同様に、上面側表面組織に2つのナックルを形成し、下面側表面組織に1つのナックルを形成する。
【0155】
第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、上面側に位置する経糸のうち、連続して2本以下の上面側経糸の上側を通るナックルを形成する。すなわち、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、上面側経糸のうち、連続して3本以上の上面側経糸の上側を通るナックルを形成することはない。第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが上面側に形成する各ナックルは、1本だけの上面側経糸の上側を通ってそれぞれ形成される。
【0156】
第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、下面側経糸のうち、連続して2本以下の下面側経糸の下側を通るナックルを形成する。すなわち、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsは、下面側経糸のうち、連続して3本以上の下面側経糸の下側を通るナックルを形成することはない。第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが下面側に形成する各ナックルは、1本の下面側経糸の下側を通ってそれぞれ形成される。これにより、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsが露出する部分を少なくして摩耗を抑え、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsの耐久性を向上できる。なお、他の第1接結緯糸(7’Bf,11’Bf,15’Bf)および第2接結緯糸(8’Bs,12’Bs,16’Bs)は、第1接結緯糸3’Bfおよび第2接結緯糸4’Bsと比べて織り込み位置が緯方向にずれているものの、同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。
【0157】
第1接結緯糸および第2接結緯糸は、経方向に隣接して組をなして配置される。隣接する第1接結緯糸および第2接結緯糸の組は、上面側緯糸の1本分のナックルを上面側織物の表面に形成する。つまり、隣接する第1接結緯糸および第2接結緯糸の組が、上面側織物の表面に形成するナックルの数と、1本の上面側緯糸が上面側織物の表面に形成するナックルの数が同じである。これにより、上面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0158】
[第8実施形態]
図18は、第8実施形態に係る工業用織物80の完全組織を示す意匠図である。図12に示す工業用織物60と比べて、第1接結経糸および第2接結経糸の組の数が多く、図12に示す工業用織物60では第1接結経糸および第2接結経糸の組が隣接していないのに対し、第1接結経糸および第2接結経糸の組が隣接している点で異なる。これによって、上面側織物および下面側織物を接結する接結力を高めることができる。
【0159】
上述の各実施形態に係る工業用織物は、以下の加工を施してもよい。例えば、表面の平滑性を向上させるために、工業用織物の表面側が0.02~0.05mmの範囲で研磨加工が施されていてもよい。特に表面側が0.02mm又は0.03mm研磨加工されているとよい。
【0160】
また、網(工業用織物)端部の糸がほつれるのを抑制するために、網端部から5mm~30mmの範囲(特に5mm、10mm、20mmまでの範囲)をポリウレタン樹脂でコーティングすることにより、補強されていてもよい。網端部のコーティングは片側でも両側でもよい。樹脂はホットメルトのポリウレタンであってもよい。
【0161】
網端部の耐摩耗性を向上させるために、網端部から20mm~500mm離れた範囲(特に25,50,75,100,150,250,300,350,400mm離れた範囲)を、巾が7mm程度の3本~16本(特に3,4,7,8,10,12,15,16本)の帯状の樹脂により全長さに亘ってコーティングしてもよい。前述の複数本のポリウレタン樹脂は網の両端部に塗布されていてもよく、片側のみでもよい。樹脂はホットメルトのポリウレタンであってもよい。
【0162】
また、防汚性を向上させるために、網全体に樹脂によるコーティングがなされていてもよい。また、網端部付近で紙の抄造巾をトリミングできるように、網端部から10mm~500mm離れた範囲(特に10,15,20,25,30,40,50,75,100,150,200,250,300,350,400mm)を、巾が3,5,7,10,15,20mm程度の1本の帯状の樹脂により全長さに亘ってコーティングしていてもよい。前述の樹脂は網の両端部に塗布されていてもよく、片側のみでもよい。樹脂はポリウレタンであってよく、ホットメルトでもよい。また、使用中に網の筋曲がりが分かるように、全巾に亘って巾25mm又は50mm程度の線が網にひかれていてもよい。
【0163】
工業用織物の好ましい要素の範囲について列挙する。経糸(経糸は、上面側経糸、下面側経糸、第1接結経糸、第2接結経糸および第3接結経糸を含む。)の線径は0.10~1.0mmが好ましく、0.1~0.5mmが更に好ましく、特に0.11~0.35mmが好ましい。下面側経糸の線径は、上面側経糸の線径と同じであってよく、上面側経糸の線径の1.1倍から1.2倍の大きさで設定されてもよい。また、緯糸の線径は、0.10~1.0mmが好ましく、0.12~0.6mmが更に好ましく、特に0.12~0.55mmが好ましい。下面側緯糸の線径は、上面側緯糸の線径よりも大きいことが望ましく、上面側緯糸の線径の1.1倍から3.0倍の大きさであってよく、より好ましくは1.2倍から2.0倍の大きさであってよい。
【0164】
上面側緯糸は、PET線のみ、ポリアミド線のみ、又はPET線とポリアミド線を交互に織り込んだものであってもよい。下面側緯糸は、PET線のみ、ポリアミド線のみであってよく、PET線とポリアミド線を交互に織り込んだものであってもよい。また、機械の駆動負荷を低減するために、低摩擦糸を下面側緯糸に織り込んでもよい。
【0165】
上面側緯糸本数と下面側緯糸本数の比率は、1:1,2:1,3:1,4:1,3:2,4:3,5:2,5:3,5:4であってよい。通気度は、100cm3/cm2/s~600cm3/cm2/sが好ましく、120cm3/cm2/s~300cm3/cm2/sが更に好ましい。
【0166】
網厚は0.3mm~3.0mmが好ましく、0.5mm~2.5mmが更に好ましく、0.5mm~1.0mmが特に好ましい。使用用途としては、主に抄紙用や不織布用ベルトとして使用され、特に抄紙用脱水ベルト、スパンボンド不織布搬送用ベルトとして使用されてよい。
【0167】
上述の各実施の形態に係る経糸や緯糸の断面形状は円形に限らず、四角形状や星型等の糸や、楕円形状、中空、芯鞘構造等の糸が使用できる。特に下経糸の断面形状を正方形又は長方形又は楕円形状にすることで、糸の断面積が増加し、伸び耐性や剛性を向上できる。
【0168】
また、糸の材質としても、目的の特性を満たす範囲で自由に選択でき、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、綿、ウール、金属、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマー等が使用できる。もちろん、共重合体やこれらの材質に目的に応じて様々な物質をブレンドしたり含有させた糸を使用したりしてもよい。一般的に工業用織物を構成する糸には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。
【0169】
経糸のシャフト数は、4シャフトから8シャフト、10シャフト、12シャフト、14シャフト、15シャフト、16シャフト、18シャフト、20シャフト、24シャフト、28シャフト、30シャフト、32シャフト、36シャフト、40シャフト、44シャフト、48シャフトが好ましい。経糸のシャフト数は、特に4の倍数、5の倍数、7の倍数のシャフト数が好ましい。また、緯糸のシャフト数は、4シャフトから8シャフト、10シャフト、12シャフト、14シャフト、15シャフト、16シャフト、18シャフト、20シャフト、24シャフト、28シャフト、30シャフト、32シャフト、36シャフト、40シャフト、44シャフト、48シャフトが好ましい。緯糸のシャフト数は、特に、2の倍数、5の倍数、7の倍数のシャフト数が好ましい。
【0170】
表面の経糸組織は、平織、綾織、サテン織、崩しサテン織、朱子織、2/2織、杉綾(へリンボーン)模様織であってよい。また、裏面の経糸組織は、平織、綾織、サテン織、崩しサテン織、朱子織、2/2織、杉綾(へリンボーン)模様織であってもよい。また、畝織、1/2・1/4織のように2本の経糸が同じ位置で下緯糸の下側にナックルを形成する組織であってもよい。
【符号の説明】
【0171】
1’L 下面側緯糸、 1’U 上面側緯糸、 1L 下面側経糸、 1U 上面側経糸、 10 工業用織物。
図1
図2
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【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側織物と下面側織物とが接結された工業用織物であって、
前記上面側織物および前記下面側織物は、経糸および緯糸を織り込まれて構成されており、
前記緯糸は、
前記上面側織物と前記下面側織物とを接結する接結緯糸と、
前記上面側織物の一部を構成する上面側緯糸と、
前記下面側織物の一部を構成する下面側緯糸と、を含み、
前記経糸は、
前記上面側織物と前記下面側織物とを接結する接結経糸と、
前記下面側緯糸を織り込まず前記上面側緯糸を織り込んで前記上面側織物の一部を構成する上面側経糸と、
前記上面側緯糸を織り込まず前記下面側緯糸を織り込んで前記下面側織物の一部を構成する下面側経糸と、を含むことを特徴とする工業用織物。
【請求項2】
前記接結経糸および前記接結経糸と上下に配置された前記経糸の組は、互いに補完し合って上面側経糸1本分の織り込みパターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の工業用織物。
【請求項3】
前記接結経糸および前記接結経糸と上下に配置された前記経糸の組は、互いに補完し合って下面側経糸1本分の織り込みパターンを形成することを特徴とする請求項1または2に記載の工業用織物。
【請求項4】
前記接結緯糸は、経方向に隣接しないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項5】
前記接結緯糸は、連続して2本以下の前記上面側経糸の上側を通るナックルを形成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項6】
前記接結経糸は、上下に組をなして配置される第1接結経糸および第2接結経糸を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項7】
前記接結緯糸は、組をなして隣接配置される第1接結緯糸および第2接結緯糸を有することを特徴とする請求項1から3,5および6のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項8】
隣接する前記第1接結緯糸および前記第2接結緯糸の組は、互いに補完し合って上面側緯糸1本分の織り込みパターンを前記上面側織物の表面に形成することを特徴とする請求項7に記載の工業用織物。
【請求項9】
前記上面側経糸は、上面側崩し糸を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項10】
前記上面側崩し糸は、前記接結経糸と上下に組をなすことを特徴とする請求項9に記載の工業用織物。
【請求項11】
前記上面側崩し糸は、前記接結経糸が前記上面側緯糸にナックルを形成する位置で、前記上面側緯糸の下側を通って上面側表面組織の一部を崩すことを特徴とする請求項10に記載の工業用織物。
【請求項12】
前記接結緯糸は、前記下面側緯糸よりも小さい線径を有することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項13】
前記上面側経糸および前記接結経糸の線径は、同じであることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項14】
前記接結緯糸は、連続して2本以下の前記下面側経糸の下側を通るナックルを形成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の工業用織物。