(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121033
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】作業用車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240830BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20240830BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240830BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240830BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20240830BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240830BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240830BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240830BHJP
【FI】
E02F9/00 C
B60K11/06
B60K1/04
H01M50/249
H01M50/244 Z
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/613
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027878
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 飛鷹
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3D038AA09
3D038AB09
3D038AC11
3D038AC14
3D038AC25
3D235AA19
3D235BB36
5H031KK08
5H040AA06
5H040AS06
(57)【要約】
【課題】冷却効率の向上を実現し得る作業用車両を提供する。
【解決手段】車体3の前部に設けられる第1機器室50と、車体3の後部に設けられる第2機器室52と、車体3の内部において第1機器室50を周囲から仕切る第1仕切部62と、車体3の内部において第2機器室52を周囲から仕切る第2仕切部92と、を備え、第1機器室50は、油圧ポンプ64、66と、電動モータ68、70と、インバータ72、74と、を含む熱を発生して相対的に高温になるもしくは耐熱性が相対的に高い機器を備え、第2機器室52は、車載充電器94と、バッテリパック96と、コンバータ98と、コントローラ100と、を含む熱を発生して相対的に高温にならないもしくは耐熱性が相対的に低い機器を備え、第1機器室50と第2機器室52とは、別個の冷却ファン84(86)と106(108)によって冷却されることを特徴とする作業用車両。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、走行装置と、油圧により作動する作業装置と、前記走行装置もしくは前記作業装置の駆動源となる電動モータと、を備える作業用車両であって、
前記車体の前部に設けられる第1機器室と、前記車体の後部に設けられる第2機器室と、前記車体の内部において前記第1機器室を周囲から仕切る第1仕切部と、前記車体の内部において前記第2機器室を周囲から仕切る第2仕切部と、を備え、
前記第1機器室は、前記走行装置もしくは前記作業装置に作動油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する前記電動モータと、前記電動モータの駆動電圧を制御するインバータと、を含む熱を発生して相対的に高温になるもしくは耐熱性が相対的に高い機器を備え、
前記第2機器室は、前記電動モータを駆動する電力を供給する車載充電器と、前記車載充電器から供給される電力を蓄える蓄電池を有するバッテリパックと、前記バッテリパックの出力電圧を変換するコンバータと、コントローラと、を含む熱を発生して相対的に高温にならないもしくは耐熱性が相対的に低い機器を備え、
前記第1機器室と前記第2機器室とは、別々の冷却ファンによって冷却されること
を特徴とする作業用車両。
【請求項2】
前記第1機器室は、前記車体の前部に第1吸気口を有し、前記車体の一方の側部に第1排気口を有すること
を特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項3】
前記第2機器室は、前記車体の他方の側部に第2吸気口を有し、前記一方の側部に第2排気口を有し、前記第2吸気口に対して近い位置に配置される前記車載充電器と、遠い位置に配置される前記バッテリパックと、を仕切る第3仕切部を備えること
を特徴とする請求項2に記載の作業用車両。
【請求項4】
前記車体は、前記後部に設けられて旋回時のバランスをとるカウンタウェイトを備え、
前記カウンタウェイトは、前記第2吸気口に近い位置に第3吸気口を有し、
前記バッテリパックは、主として前記第3吸気口から取込まれた外気によって冷却されること
を特徴とする請求項3に記載の作業用車両。
【請求項5】
前記第2機器室は、前記第2排気口に近接するオイルクーラを備え、
前記カウンタウェイトは、前記第2排気口に近い位置に第4吸気口を有し、
前記オイルクーラは、前記第2吸気口、前記第3吸気口、および前記第4吸気口から取込まれた外気によって冷却されること
を特徴とする請求項4に記載の作業用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧により作動する作業装置と、作業装置の駆動源となる電動モータと、電動モータに電力を供給するバッテリパックと、を備える作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業用車両の例として、走行用のクローラもしくはタイヤが取付けられた下部体と、下部体の上に配設された上部体と、下部体もしくは上部体に取付けられて油圧により作動する作業装置を備える油圧ショベル、トラックローダ等が従来より知られている。
【0003】
昨今では、従来のエンジンに代えて電動モータによって駆動される作業用車両が開発されている。作業用車両の電動化においては、搭載機器の熱制御が重要である(特許文献1:特許第7182748号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に例示される作業用車両は、車体内部を、電気機器が収容される電気機器室と、油圧機器が収容される油圧機器室と、に仕切り、電気機器を冷却する専用の冷却装置と、油圧機器を冷却する専用の冷却装置と、を別に設けることで、冷却効率の向上を図っている。機器の冷却に関しては、各機器室の最も耐熱性の低い(熱に弱い)機器に基準温度を合わせて冷却装置を稼働する必要がある。しかし、電気機器と油圧機器という括りでは、機器毎の適正温度帯の幅が大きいため、冷却装置の制御が困難となり、効率的な冷却がなされているとはいえなかった。結果として、冷却装置の稼働率が上がりやすくなり、電力消費量の増大や冷却装置(ファン等)による騒音の発生につながっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、冷却効率の向上を図り、電力消費量の低減および騒音の抑制を実現し得る作業用車両を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
車体と、走行装置と、油圧により作動する作業装置と、前記走行装置もしくは前記作業装置の駆動源となる電動モータと、を備える作業用車両であって、前記車体の前部に設けられる第1機器室と、前記車体の後部に設けられる第2機器室と、前記車体の内部において前記第1機器室を周囲から仕切る第1仕切部と、前記車体の内部において前記第2機器室を周囲から仕切る第2仕切部と、を備え、前記第1機器室は、前記走行装置もしくは前記作業装置に作動油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する前記電動モータと、前記電動モータの駆動電圧を制御するインバータと、を含む熱を発生して相対的に高温になるもしくは耐熱性が相対的に高い機器を備え、前記第2機器室は、前記電動モータを駆動する電力を供給する車載充電器と、前記車載充電器から供給される電力を蓄える蓄電池を有するバッテリパックと、前記バッテリパックの出力電圧を変換するコンバータと、コントローラと、を含む熱を発生して相対的に高温にならないもしくは耐熱性が相対的に低い機器を備え、前記第1機器室と前記第2機器室とは、別個の冷却ファンによって冷却されることを要件とする。
【0009】
上記の構成によれば、各機器室に配設されている機器の適正温度帯の幅が小さくなるため、基準温度の管理(すなわち、冷却ファンの制御)を容易化することができる。従って、冷却効率が向上し、電力消費量の低減や冷却ファンによる騒音の抑制が可能である。また、第1機器室と第2機器室とが仕切部によって隔離されているため、第1機器室で発生した熱が第2機器室に伝わることを防止することができる。従って、耐熱性の低い機器の熱害を防止することができる。
【0010】
また、前記第1機器室は、前記車体の前部に第1吸気口を有し、前記車体の一方の側部に第1排気口を有することが好ましい。
【0011】
また、前記第2機器室は、前記車体の他方の側部に第2吸気口を有し、前記一方の側部に第2排気口を有し、前記第2吸気口に対して近い位置に配置される前記車載充電器と、遠い位置に配置される前記バッテリパックと、を仕切る第3仕切部を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記車体は、前記後部に設けられて旋回時のバランスをとるカウンタウェイトを備え、前記カウンタウェイトは、前記第2吸気口に近い位置に第3吸気口を有し、前記バッテリパックは、主として前記第3吸気口から取込まれた外気によって冷却されることが好ましい。
【0013】
また、前記第2機器室は、前記第2排気口に近接するオイルクーラを備え、前記カウンタウェイトは、前記第2排気口に近い位置に第4吸気口を有し、前記オイルクーラは、前記第2吸気口、前記第3吸気口、および前記第4吸気口から取込まれた外気によって冷却されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業用車両における冷却効率の向上を図ることができる。従って、電力消費量の低減および騒音の抑制を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る作業用車両の例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す作業用車両の別方向からの斜視図である。
【
図3】
図3Aは、作業用車両の上部体の背面図である。
図3Bは、カウンタウェイトおよびバッテリカバーを不図示とした作業用車両の上部体の背面図である。
【
図5】
図5は、第1機器室の内部を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第2機器室の内部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1および
図2は、本実施形態に係る作業用車両1の例を示す概略図(左後部上方および右前部上方からの斜視図)である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により上下、左右、前後の方向を示す場合がある。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
本実施形態の作業用車両1として、油圧ショベルを例に挙げて説明する。ただし、作業用車両1は、油圧ショベルに限定されるものではない。
【0018】
図1および
図2に示すように、作業用車両1は、車体として下部体2および下部体2の上に配設される上部体3を備えている。上部体3は、電動旋回モータ(不図示)によって旋回される。なお、作業用車両1は、下部体2と上部体3とが一体の構成であってもよい。
【0019】
下部体2は、走行を行う走行装置10を備えている。走行装置10の例として、左右に一対のクローラ(無限軌道)26を備えている。ただし、走行装置10は、クローラ26に限定されるものではない。他の例として、作業用車両1は、クローラ26に代えてタイヤを備える構成としてもよい(不図示)。クローラ26は、走行油圧モータ28によって駆動(走行)される。
【0020】
作業用車両1は、下部体2や上部体3に取付けられて油圧(所定圧力の作動油)により作動する作業装置12、14を備えている。
【0021】
作業装置12の例として、排土板24を備えている。排土板24は、上下(前後成分を含む)に揺動可能に下部体2に取付けられている。排土板24は、油圧シリンダ(排土板シリンダ)30によって駆動される。ただし、作業装置12は、上記の構成に限定されるものではない。
【0022】
作業装置14の例として、ブーム32、アーム34、およびアタッチメント(本実施形態においては、バケット)36を備えている。ただし、アタッチメント36は、バケットに限定されるものではない。ブーム32は、上下(前後成分を含む)に揺動可能に上部体3に取付けられている。本実施形態においては、上部体3とブーム32との間にブームブラケット37が設けられている。ブームブラケット37によって、ブーム32は上部体3に対して左右(前後成分を含む)に揺動可能となる。なお、ブームブラケット37は省略されてもよい。アーム34は、上下(前後成分を含む)に揺動可能にブーム32に取付けられている。アタッチメント36は、上下(前後成分を含む)に揺動可能にアーム34に取付けられている。ブーム32は、油圧シリンダ(ブームシリンダ)38によって駆動される。アーム34は、油圧シリンダ(アームシリンダ)40によって駆動される。アタッチメント36は、油圧シリンダ(バケットシリンダ)42によって駆動される。ただし、作業装置14は、上記の構成に限定されるものではない。
【0023】
上記の走行油圧モータ28および各油圧シリンダの駆動を行うための駆動機構は、駆動源により駆動される油圧ポンプ(詳細は後述する)、制御バルブ(不図示)等からなる。オペレータが操作装置を操作することにより制御バルブを作動させて、油圧ポンプから送出される所定圧力の作動油を走行油圧モータ28および各油圧シリンダに供給する制御が行われる。これにより、走行装置10による走行、および作業装置12、14による作業を行うことができる。本実施形態において、作業用車両1は、上記の駆動源として電動モータ(詳細は後述する)を備えている。
【0024】
また、作業用車両1は、電動モータに電力を供給する車載充電器94を備えている。車載充電器94から出力される電力は、バッテリパック96、インバータ(詳細は後述する)を介して電動モータに供給される。バッテリパック96は、供給された電力を蓄える第1蓄電池(例えば、リチウムイオン蓄電池)、電動モータや蓄電池(第1蓄電池)への電力供給の制御を行う制御部等を備えている(いずれも不図示)。バッテリパック96には、第2蓄電池(例えば、鉛蓄電池)、各スイッチ(コントローラ)が接続されている(いずれも不図示)。
【0025】
続いて、上部体3の構成について詳しく説明する。上部体3は、下部に強度部材であり且つ搭載機器の支持部材である本体フレーム18を備えている。本体フレーム18は、所定形状に加工された板材や梁材等が溶接されて一体に形成されている。上部体3は、左前部にオペレータが乗車して走行や作業の操作を行う操作装置が設けられた運転室16を備えている。本実施形態においては、運転室16の室内空調用のエアコンが設けられている。
【0026】
上部体3は、後部に旋回時のバランスをとるカウンタウェイト20を備えている。上部体3は、右中央部に作動油を貯留する作動油タンク22を備えている。上部体3は、本体フレーム18上に搭載された機器を覆う外装カバー(右サイドカバー44、左サイドカバー46、およびバッテリカバー48)を備えている。運転室16、カウンタウェイト20、および作動油タンク22は、本体フレーム18に取付けられている。各外装カバーは、フロアフレーム(不図示)に取付けられている。
【0027】
図4に示すように、上部体3は、前部(運転室16の右方且つ作動油タンク22の前方)に第1機器室50を備えている。第1機器室50は、本体フレーム18上に立設されている仕切板60と、作動油タンク22の前面22aと、からなる第1仕切部62によって、上部体3の内部において周囲から区切られている。第1機器室50は、上部が右サイドカバー44によって覆われている。上部体3は、後部(運転室16および作動油タンク22の後方)に第2機器室52を備えている。第2機器室52は、本体フレーム18上に立設されている仕切板91と、作動油タンク22の後面22bと、からなる第2仕切部92によって、上部体3の内部において周囲から区切られている。第2機器室52は、上部が左サイドカバー46およびバッテリカバー48によって覆われている。
【0028】
先ず、第1機器室50について説明する(
図5および
図6参照)。第1機器室50には、作業用車両1の稼働に際して熱を発生して相対的に高温になるもしくは耐熱性が相対的に高い(以下、「適正温度帯が高い」という)機器が配設されている。具体的に、第1機器室50は、第1油圧ポンプ64および第2油圧ポンプ66を備えている。第1機器室50は、第1電動モータ68および第2電動モータ70を備えている。第1機器室50は、第1インバータ72、第2インバータ74、第3インバータ76、および第4インバータ78を備えている。第1機器室50は、エアコンコンプレッサ80およびミニ電動モータ82を備えている。
【0029】
第1電動モータ68および第2電動モータ70は、電動モータブラケット83に上下に並べて取付けられている。第1電動モータ68は、第1油圧ポンプ64を駆動する。第2電動モータ70は、第2油圧ポンプ66を駆動する。
【0030】
第1油圧ポンプ64は、第1電動モータ68の後部に取付けられている。第2油圧ポンプ66は、第2電動モータ70の後部に取付けられている。第1油圧ポンプ64および第2油圧ポンプ66は、作動油タンク22に貯留されている作動油を吸い込んで走行装置10もしくは作業装置12、14に供給(圧送)する。
【0031】
第1インバータ72、第2インバータ74、第3インバータ76、および第4インバータ78は、仕切板60に取付けられている。第1インバータ72は、第1電動モータ68の駆動電圧を制御する。第2インバータ74は、第2電動モータ70の駆動電圧を制御する。第3インバータ76は、電動旋回モータの駆動電圧を制御する。第4インバータ78は、ミニ電動モータ82の駆動電圧を制御する。
【0032】
エアコンコンプレッサ80は、電動モータブラケット83の上方に配設されている。
【0033】
ミニ電動モータ82は、エアコンコンプレッサ80の前部に取付けられている。ミニ電動モータ82は、エアコンコンプレッサ80を駆動する。
【0034】
第1機器室50は、上部体3(右サイドカバー44)の前部に第1吸気口88を有している。第1吸気口88は、一つもしくは複数設けられている。第1機器室50は、上部体3(右サイドカバー44)の右側部に第1排気口90を有している。第1排気口90は、一つもしくは複数設けられている。
【0035】
第1機器室50は、冷却ファン84、86を備えている。冷却ファン84、86は、前部(第1吸気口88の手前)に上下に並べて配設されている。冷却ファン84は、常時稼働のメインファンである。冷却ファン86は、作業用車両1の稼働状況に応じて補助的に稼働するサブファンである。なお、冷却ファン86は省略されてもよい。
【0036】
第1機器室50には、冷却ファン84、86を回転させることで、第1吸気口88を通じて冷却風(外気)が取込まれる。取込まれた冷却風は、第1仕切部62に沿って第1機器室50内を通流し、当該室内の各機器を冷却する。当該機器から吸熱して昇温した冷却風は、第1排気口90を通じて第1機器室50外に排出される。
【0037】
次に、第2機器室52について説明する(
図3B、
図7、および
図8参照)。第2機器室52には、作業用車両1の稼働に際して熱を発生して相対的に高温にならないもしくは耐熱性が相対的に低い(以下、「適正温度帯が低い」という)機器が配設されている。具体的に、第2機器室52は、車載充電器94、バッテリパック96、コンバータ98、およびコントローラ100を備えている。
【0038】
また、第2機器室52は、オイルクーラ102およびエアコンコンデンサ104を備えている。
【0039】
車載充電器94は、第2機器室52の左部(第2吸気口110(詳細は後述する)に対して近い位置)に配設されている。車載充電器94は、電動モータ68、70等を駆動する電力を供給する。
【0040】
バッテリパック96は、第2機器室52の中央部(第2吸気口110に対して遠い位置)に配設されている。バッテリパック96は、仕切板114、116からなる第3仕切部118によって、第2機器室52の内部において、車載充電器94、コンバータ98、およびコントローラ100から区切られている。仕切板114は、車載充電器94とバッテリパック96との間に設けられている。仕切板116は、バッテリパック96の上方に設けられている。バッテリパック96は、車載充電器94から供給される電力を蓄える。
【0041】
コンバータ98は、仕切板116上に取付けられている。コンバータ98は、バッテリパック96の出力電圧を変換する。
【0042】
コントローラ100は、コンバータ98の左方に位置し、仕切板116上に取付けられている。コントローラ100は、作業用車両1の作動(電動旋回モータによる旋回、走行装置10による走行、作業装置12、14による作業、室内空調用のエアコンの運転等)の制御と、搭載機器に対する電力供給の制御と、を含む複数の制御を行う。なお、これらの制御は、複数のコントローラ(不図示)によって行われてもよい。
【0043】
オイルクーラ102は、右部(第2排気口112に近接した位置)に配設されている。オイルクーラ102は、走行装置10および作業装置12、14から返送される作動油を冷却する。
【0044】
エアコンコンデンサ104は、オイルクーラ102の下方に配設されている。
【0045】
第2機器室52は、上部体3(左サイドカバー46)の左側部に第2吸気口110を有している。第2吸気口110は、一つもしくは複数設けられている。第2機器室52は、上部体3(右サイドカバー44)の右側部(第1排気口90よりも後方の位置)に第2排気口112を有している。第2排気口112は、一つもしくは複数設けられている。
【0046】
第2機器室52は、冷却ファン106、108を備えている。冷却ファン106は、オイルクーラ102の左方に取付けられている。冷却ファン108は、エアコンコンデンサ104の左方に取付けられている。なお、冷却ファン108は、エアコンコンデンサ104を主たる冷却対象とする冷却ファンである。
【0047】
第2機器室52には、冷却ファン106、108を回転させることで、第2吸気口110を通じて冷却風が取込まれる。取込まれた冷却風は、第2仕切部92および第3仕切部118に沿って第2機器室52内を通流し、当該室内の各機器を冷却する。具体的に、冷却風は、先ず車載充電器94を冷却し、次いでコントローラ100を冷却し、次いでコンバータ98を冷却し、次いでオイルクーラ102およびエアコンコンデンサ104を冷却する。当該機器から吸熱して昇温した冷却風は、第2排気口112を通じて第2機器室52外に排出される。
【0048】
ここで、バッテリパック96は、第3仕切部118によって区切られて(遮蔽されて)いるため、昇温した冷却風は、バッテリパック96側へ流入しない。これにより、特に熱に弱いとされているバッテリパック96の温度上昇を抑制することができる。
【0049】
バッテリパック96は、後部がカウンタウェイト20によって覆われている。カウンタウェイト20は、左部(第2吸気口110に近い位置)に第3吸気口120を有している。カウンタウェイト20は、右部(第2排気口112に近い位置)に第4吸気口122を有している。
【0050】
バッテリパック96は、第3吸気口120を通じて取込まれた冷却風によって冷却される。取込まれた冷却風は、バッテリパック96から発生した熱の滞留を解消する。これにより、バッテリパック96の熱害を防止することができる。
【0051】
オイルクーラ102およびエアコンコンデンサ104は、第2吸気口110を通じて取り込まれた冷却風に加え、第3吸気口120および第4吸気口122を通じて取込まれた冷却風によって冷却される。取込まれた冷却風は、第2排気口112を通じて第2機器室52外に排出される。これにより、オイルクーラ102およびエアコンコンデンサ104を効率よく冷却することができる。
【0052】
ここまで説明した通り、本実施形態における作業用車両1は、上部体3の前部に設けられる第1機器室50と、上部体3の後部に設けられる第2機器室52と、を備え、第1機器室50には、適正温度帯が高い機器が配設され、第2機器室52には、適正温度帯が低い機器が配設され、第1機器室50と第2機器室52とは、別個の冷却ファン84(86)と106(108)とによって冷却される構成である。これにより、各機器室50、52に配設されている機器の適正温度帯の幅が小さくなるため、基準温度の管理(すなわち、冷却ファンの制御)を容易化することができる。従って、冷却効率が向上し、電力消費量の低減や冷却ファンによる騒音の抑制が可能である。また、機器室50、52が仕切部62、92によって隔離されているため、第1機器室50で発生した熱が第2機器室52に伝わることを防止することができる。従って、耐熱性の低い機器の熱害を防止することができる。
【0053】
また、本実施形態における作業用車両1は、上部体3の前部に第1吸気口88を有し、上部体3の左側部に第2吸気口110を有している。作業用車両1は、上部体3の右側部に第1排気口90および第2排気口112を有している。すなわち、吸気口88、110は、排気口90、112が設けられている車体面の対面もしくは側面に設けられているため、第1機器室50および第2機器室52は、常に新鮮な(すなわち、外気温の)冷却風を取込むことができる。従って、冷却効率を向上することができる。
【0054】
以上説明した通り、本発明によれば、冷却効率の向上を実現し得る作業用車両を提供することができる。
【0055】
作業用車両1として、駆動機構を構成する油圧ポンプを二個搭載する作業用車両を例に上げたが、作業装置12、14や走行装置10の構成や負荷等に応じて、一個もしくは三個以上の複数個を搭載する構成としてもよい。また、上記の油圧ポンプの個数や定格出力等に応じて、駆動源を構成する電動モータの数を適宜変更してもよい。
【0056】
作業用車両1として、室内空調用の運転室16にエアコンを搭載する作業用車両を例に上げたが、エアコンを搭載しない構成としてもよい。その場合、エアコンコンプレッサ80、ミニ電動モータ82、第4インバータ78、エアコンコンデンサ104、および冷却ファン108は省略される。
【0057】
本発明は、上記の例(油圧ショベル)に限定されるものではない。本発明は、その他の作業用車両(例えば、トラックローダ、キャリア等)に対して同様に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 作業用車両
2 下部体
3 上部体
10 走行装置
12、14 作業装置
50 第1機器室
52 第2機器室
62 第1仕切部
92 第2仕切部
118 第3仕切部