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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121036
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】作業用車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240830BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E02F9/00 D
B60K15/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027881
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩入 裕一
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑太
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA00
3D038CA32
3D038CB09
(57)【要約】
【課題】工具を使用せずに位置の移動が可能な補給口を実現する。
【解決手段】作業用車両1は、車体2、3に搭載される機器の作動に必要な液体を補給するための補給口60を備え、補給口60は、液体の貯留部に連通して弾性変形可能な配管62と、配管62の上端に取付けられて開口・閉口を行う蓋機構64と、蓋機構64および配管62の位置を移動させる移動機構70とを有し、移動機構70は、車体2、3に対して回動可能に連結され、蓋機構64もしくは配管62が固定される固定部72と、固定部72に対して回動可能に連結され、操作者が把持するツマミ84が設けられた操作部74と、車体2、3に対して固定され、ツマミ84がスライド可能に挿通されてスライド範囲を規定するスライド孔86と、ロック溝87とが設けられたスライド支持部76と、を有し、ロック溝87に係脱されるロック突起80が固定部72もしくは操作部74に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、走行装置と、油圧により作動する作業装置と、を備える作業用車両であって、
前記車体に搭載される機器の作動に必要な液体を補給するための補給口を備え、
前記補給口は、前記液体の貯留部に連通して弾性変形可能な配管と、前記配管の上端に取付けられて開口・閉口を行う蓋機構と、前記蓋機構および前記蓋機構に連続する前記配管の位置を移動させる移動機構と、を有し、
前記移動機構は、
前記車体に対して回動可能に連結され、前記蓋機構もしくは前記配管が固定される固定部と、
前記固定部に対して回動可能に連結され、操作者が把持するツマミが設けられた操作部と、
前記車体に対して固定され、前記ツマミがスライド可能に挿通されてスライド範囲を規定するスライド孔と、上向きに開口するロック溝と、が設けられたスライド支持部と、を有し、
且つ、前記ロック溝に係脱されるロック突起が前記固定部もしくは前記操作部に設けられていること
を特徴とする作業用車両。
【請求項2】
前記配管は、前記液体の液面が視認可能な透明もしくは半透明の材料を用いて形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項3】
前記蓋機構および前記蓋機構に連続する前記配管は、前記車体の外側から内側へ向かって押込まれた状態で収納されており、
前記移動機構は、操作者が前記ツマミを上方へ持上げて、前記ロック突起が前記ロック溝から離脱した状態において、操作者が前記蓋機構もしくは前記蓋機構に連続する前記配管を把持して引出すことによって、または、前記配管の弾発力もしくは前記蓋機構の重心に作用する重力によって、前記蓋機構および前記蓋機構に連続する前記配管が前記車体の内側から外側に向かって移動するように、前記固定部、前記操作部、および前記スライド支持部が前記車体に対して位置決めされて取付けられていること
を特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項4】
前記走行装置もしくは前記作業装置の駆動源となる電動モータを備え、
前記液体は、運転室ヒータ用冷却水であり、
前記蓋機構は、配管用プラグと、前記配管用プラグが螺合されるネジ孔が設けられたプラグ固定部と、を有すること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の作業用車両。
【請求項5】
前記走行装置もしくは前記作業装置の駆動源となるエンジンを備え、
前記液体は、燃料およびエンジンオイルの少なくとも一方であること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の作業用車両。
【請求項6】
前記液体は、作動油もしくはウィンドウォッシャの少なくとも一方であること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の作業用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧により作動する作業装置を備える作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業用車両の例として、エンジン(内燃機)によって駆動される走行装置および作業装置を備える油圧ショベル、トラックローダ等が従来より知られている。
【0003】
昨今では、従来のエンジンに代えて電動モータによって駆動される作業用車両も開発されている(特許文献1:特許第6463537号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6463537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業用車両は、車体に搭載される機器の作動に必要な種々の液体が貯留部等に貯留され、使用される。当該液体の具体例としては、作動油や冷却水等が挙げられる。当該液体は、減少した場合や交換が必要となった場合に、補給口を介して補給される。
【0006】
駆動源がエンジンか電動モータかに関わらず、作業用車両における車体のコンパクト化は常に課題として存在する。
【0007】
特に、駆動源として電動モータを備える作業用車両の場合には、当該電動モータに加え、車体に蓄電池(大型のバッテリーセル等)が搭載される構成となる。そのため、従来のエンジンを備える作業用車両と比較して、搭載スペースの捻出が困難となり、車体が大型化してしまう課題が生じる。
【0008】
さらに、熱源となるエンジンが搭載されないため、運転室(キャビン)の暖房を行う運転室ヒータを備える場合には、ヒータコアに通流させる冷却水(運転室ヒータ用冷却水)を加熱するための液体加熱ヒータが搭載される構成となる。したがって、より一層、搭載スペースの捻出が困難となる課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、簡素な構成で、工具を使用せずに位置の移動が可能で、且つ、狭いスペースに収納でき、補給時に引出して液体を補給することが可能な補給口を実現し、車体のコンパクト化を図ることができる作業用車両を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0011】
本実施形態に係る作業用車両は、車体と、走行装置と、油圧により作動する作業装置と、を備える作業用車両であって、前記車体に搭載される機器の作動に必要な液体を補給するための補給口を備え、前記補給口は、前記液体の貯留部に連通して弾性変形可能な配管と、前記配管の上端に取付けられて開口・閉口を行う蓋機構と、前記蓋機構および前記蓋機構に連続する前記配管の位置を移動させる移動機構と、を有し、前記移動機構は、前記車体に対して回動可能に連結され、前記蓋機構もしくは前記配管が固定される固定部と、前記固定部に対して回動可能に連結され、操作者が把持するツマミが設けられた操作部と、前記車体に対して固定され、前記ツマミがスライド可能に挿通されてスライド範囲を規定するスライド孔と、上向きに開口するロック溝と、が設けられたスライド支持部と、を有し、且つ、前記ロック溝に係脱されるロック突起が前記固定部もしくは前記操作部に設けられていることを要件とする。
【0012】
上記の構成によれば、簡素な構成で、工具を使用せずに位置の移動が可能な液体の補給口を実現することができる。当該補給口は、蓋機構および配管の外形と同程度の大きさのスペースさえあれば収納でき、補給時には蓋機構および配管を車体の内側から外側へ引出すことによって液体を補給することが可能となる。したがって、補給口の上方に補給用のノズルや容器を進入させるための広い空間部を設けておく必要がないため、車体のコンパクト化を図ることができる。
【0013】
また、前記配管は、前記液体の液面が視認可能な透明もしくは半透明の材料を用いて形成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記蓋機構および前記蓋機構に連続する前記配管は、前記車体の外側から内側へ向かって押込まれた状態で収納されており、前記移動機構は、操作者が前記ツマミを上方へ持上げて、前記ロック突起が前記ロック溝から離脱した状態において、操作者が前記蓋機構もしくは前記蓋機構に連続する前記配管を把持して引出すことによって、または、前記配管の弾発力もしくは前記蓋機構の重心に作用する重力によって、前記蓋機構および前記蓋機構に連続する前記配管が前記車体の内側から外側に向かって移動するように、前記固定部、前記操作部、および前記スライド支持部が前記車体に対して位置決めされて取付けられていることが好ましい。
【0015】
一例として、前記走行装置もしくは前記作業装置の駆動源となる電動モータを備え、前記液体は、運転室ヒータ用冷却水であり、前記蓋機構は、配管用プラグと、前記配管用プラグが螺合されるネジ孔が設けられたプラグ固定部と、を有する。
【0016】
他の例として、前記走行装置もしくは前記作業装置の駆動源となるエンジンを備え、前記液体は、燃料およびエンジンオイルの少なくとも一方である。
【0017】
他の例として、前記液体は、作動油もしくはウィンドウォッシャの少なくとも一方である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、工具を使用せずに位置の移動が可能で、且つ、狭いスペースに収納でき、補給時に引出して液体を補給することが可能な補給口を実現することができる。したがって、車体のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係る作業用車両の例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す作業用車両における補給口および収納部の位置を示す斜視図である。
図3図3は、補給口(収納された状態)の斜視図である。
図4図4は、補給口(引出された状態)の斜視図である。
図5図5A図5Cは、図1に示す作業用車両における補給口を移動させる動作を説明する説明図である。図5Aは、ロック突起がロック溝に係合した状態の斜視図である。図5Bは、操作者がツマミを上方へ持上げて、ロック突起がロック溝から離脱した状態の斜視図である。図5Cは、蓋機構および蓋機構に連続する配管が車体の内側から外側に向かって移動した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る作業用車両1の例を示す概略図(左後部上方からの斜視図)である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により上下、左右、前後の方向を示す場合がある。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0021】
はじめに、作業用車両1の全体構成について説明する。作業用車両1として、油圧ショベルを例に挙げて説明する。ただし、作業用車両1は、油圧ショベルに限定されるものではない。
【0022】
図1に示すように、作業用車両1は、車体として下部体2および下部体2の上に配設される上部体3を備えている(なお、下部体2と上部体3とが一体の構成であってもよい)。
【0023】
作業用車両1は、下部体2や上部体3に取付けられて油圧(所定圧力の作動油)により作動する作業装置12、14を備えている。下部体2は、走行を行う走行装置10を備えている。上部体3は、前部にオペレータが乗車して走行や作業の操作を行う操作装置が設けられた運転室16を備えている。一例として、運転室16は密閉式であるが、これに限定されるものではない。
【0024】
走行装置10の例として、左右に一対のクローラ(無限軌道)26を備えている。ただし、走行装置10は、クローラ26に限定されるものではない。他の例として、作業用車両1は、クローラ26に代えてタイヤを備える構成としてもよい(不図示)。クローラ26は、走行油圧モータ(不図示)によって駆動(走行)される。
【0025】
作業装置12の例として、排土板22を備えている。排土板22は、上下(前後成分を含む)に揺動可能に下部体2に取付けられている。排土板22は、油圧シリンダ(排土板シリンダ)32によって駆動される。ただし、作業装置12は、上記の構成に限定されるものではない。
【0026】
作業装置14の例として、ブーム42、アーム44、およびアタッチメント(本実施形態においては、バケット)46を備えている。ただし、アタッチメント46はバケットに限定されるものではない。ブーム42は、上下(前後成分を含む)に揺動可能に上部体3に取付けられている。本実施形態においては、上部体3とブーム42との間にブームブラケット(不図示)が設けられている。ブームブラケットによって、ブーム42は上部体3に対して左右(前後成分を含む)に揺動可能となる。なお、ブームブラケットは省略されてもよい。アーム44は、上下(前後成分を含む)に揺動可能にブーム42に取付けられている。アタッチメント46は、上下(前後成分を含む)に揺動可能にアーム44に取付けられている。ブーム42は、油圧シリンダ(ブームシリンダ)52によって駆動される。アーム44は、油圧シリンダ(アームシリンダ)54によって駆動される。アタッチメント46は、油圧シリンダ(バケットシリンダ)56によって駆動される。ただし、作業装置14は、上記の構成に限定されるものではない。
【0027】
上記の走行油圧モータ、および各油圧シリンダの駆動を行うための駆動機構は、一例として駆動源18により駆動される油圧ポンプ、制御バルブ等から構成されている。オペレータが操作装置を操作することにより制御バルブを作動させて、油圧ポンプから送出される所定圧力の作動油を走行油圧モータ、および各油圧シリンダに供給する制御が行われる。これにより、走行装置10による走行、および作業装置12、14による作業を行うことができる。駆動機構を構成する油圧ポンプは、作業装置12、14や走行装置10の構成や負荷等に応じて、1個もしくは複数個が設けられる。
【0028】
なお、本実施形態に係る作業用車両1における走行および作業のためのその他の機構については、公知の作業用車両(油圧ショベル)と同様であるため、詳細の説明を省略する。
【0029】
作業用車両1は、上記の駆動源18として電動モータを備えている。駆動源18を構成する電動モータは、上記の油圧ポンプの個数や定格出力等に応じて、1個もしくは複数個が設けられる。なお、駆動源18の他の例として、電動モータに代えて、もしくは、電動モータと共に、エンジン(燃料を燃焼させる内燃機)を備える構成としてもよい(不図示)。
【0030】
作業用車両1は、電動モータ18に電力を供給する車載充電器、蓄電池、変換装置(インバータ等)、および、制御装置等を備えている(不図示)。
【0031】
作業用車両1は、運転室16の暖房を行う運転室ヒータ(不図示)を備えている。本実施形態においては、駆動源18として電動モータを備える構成(すなわち、駆動源および熱源として兼用されるエンジンを備えない構成)であるため、運転室ヒータは、ヒータコアと、当該ヒータコアに通流させる液体(運転室ヒータ用冷却水)を加熱するための液体加熱ヒータを備えて構成されている。
【0032】
また、作業用車両1は、車体(上部体3)に搭載される機器の作動に必要な液体が貯留される貯留部等、および、当該液体を補給するための補給口を備えている。当該液体の例として、主として作動油タンクに貯留され、走行油圧モータ、および各油圧シリンダの駆動に用いられる作動油が挙げられる。主としてウォッシャータンクに貯留され、運転室16の窓ガラスの洗浄に用いられるウィンドウォッシャが挙げられる。冷却水貯留部に貯留され、運転室ヒータの熱媒に用いられる運転室ヒータ用冷却水が挙げられる。本実施形態に係る冷却水貯留部は、専用のタンクを備えずに、液体が通流される機器(液体加熱ヒータ、運転室ヒータ用ヒータコア、および、それらに接続される配管等)の内部に貯留(且つ循環)される構成である。なお、専用のタンクを備える構成としてもよい(不図示)。
【0033】
一例として、運転室ヒータ用冷却水を補給する補給口60の構成について詳しく説明する。図2は、車体(上部体3)における補給口60と収納部28の位置を示す斜視図(左後部からの斜視図)である(左側部カバーの図示を省略している)。図3は、補給口60(収納部28に収納された状態)の斜視図である。図4は、補給口60(収納部28から引出された状態)の斜視図である。
【0034】
補給口60は、液体の貯留部(本実施形態では、液体加熱ヒータ、運転室ヒータ用ヒータコア、および、それらに接続される配管等)に、直接もしくは中継配管を介して連通し、弾性変形可能な配管62を備えている。補給口60は、配管62の上端に取付けられて開口・閉口を行う蓋機構64を備えている。補給口60は、蓋機構64および当該蓋機構64に連続する配管62の位置を移動させる移動機構70を備えている。
【0035】
蓋機構64、および当該蓋機構64に連続する配管62は、車体(上部体3)の外側から内側へ向かって押込まれた状態で、当該車体(上部体3)に設けられる収納部28に収納されている。
【0036】
一例として、蓋機構64は、配管用プラグ66と、当該配管用プラグ66が螺合されるネジ孔(内壁に雌ネジが形成された貫通孔)68aが設けられたプラグ固定部68と、を備えている。このプラグ固定部68が、配管62の上端に取付けられている。配管用プラグ66をネジ孔68aに対して係脱することで、配管62の上端を開閉することができる。
【0037】
本実施形態のように、電動モータによって駆動される作業用車両1は、エンジンによって駆動される作業用車両のようにエンジン冷却用のラジエターが搭載されておらず、ラジエター用冷却水が運転室ヒータ用冷却水として兼用される構成とはなっていない。そのため、前述の通り、運転室ヒータ用冷却水を加熱する液体加熱ヒータが設けられている。当該液体加熱ヒータによって加熱される運転室ヒータ用冷却水の温度および圧力は、ラジエター用冷却水が運転室ヒータ用冷却水として兼用されるエンジン駆動の作業用車両と比較して、両方(温度および圧力)共に低く設定することが可能となる。したがって、蓋機構64に圧力キャップを設ける必要が無く、簡素な機構で構成することができる。
【0038】
一例として、配管62は、液体(運転室ヒータ用冷却水)の液面が視認可能な透明もしくは半透明の材料(例えば、シリコーンゴム等)を用いて形成されている。これによれば、専用のインジケータや計量器を設けることなく、配管部分で液量を確認することができる。
【0039】
一例として、移動機構70は、車体(上部体3)に対して回動可能に連結され、蓋機構64(もしくは配管62でもよい)が固定される固定部72を備えている。なお、図中の符号81は、車体(上部体3)に対して固定部72を回動させる回動軸部材である。移動機構70は、固定部72に対して回動可能に連結され、操作者が把持するツマミ84が設けられた操作部74を備えている。移動機構70は、車体(上部体3)に対して固定され、ツマミ84がスライド可能に挿通されてスライド範囲を規定するスライド孔(第1スライド孔)86と、上向きに開口する(すなわち、側面視U字状の)ロック溝87と、が設けられたスライド支持部76を備えている。当該スライド孔(第1スライド孔)86のスライド範囲が、蓋機構64(および蓋機構64に連続する配管62)の移動範囲を規定する。
【0040】
さらに、移動機構70は、スライド支持部76のロック溝87に係脱されるロック突起80を備えている。本実施形態では、ロック突起80が固定部72に固定される構成で、操作部74にロック突起80が回転可能に挿通される挿通孔(第1挿通孔)85が設けられる構成としている。したがって、操作部74を持ち上げればロック突起80が上昇する。他の例として、ロック突起80が操作部74に固定される構成で、固定部72にロック突起80が回転可能に挿通される挿通孔(第2挿通孔)が設けられる構成としてもよい(不図示)。この構成によっても、操作部74を持ち上げればロック突起80が上昇する。
【0041】
なお、図中の符号73は固定部72に随伴して移動するサポートプレートである。サポートプレート73には、ロック突起80がスライド可能に挿通されるスライド孔(第2スライド孔)83が設けられている。サポートプレート73を設けない構成とすることも可能である(不図示)。
【0042】
上記の移動機構70によれば、簡素な構成で、工具を使用せずに位置の移動が可能な補給口60を実現することができる。補給口60の移動が可能となるため、車体(上部体3)に蓋機構64および配管62の外形と同程度の大きさのスペースさえあれば、補給口60の収納が可能となる。また、補給する際には、蓋機構64(および、これに連続する配管62)を車体(上部体3)の内側から外側へ引出すことによって、液体(本実施形態では、運転室ヒータ用冷却水)を補給することが可能となる。したがって、補給口60の上方に補給用のノズルや容器を進入させるための広い空間部を設けておく必要がないため、車体(上部体3)のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
ここで、図5A図5Cを参照しながら、作業用車両1の補給口60を移動させる動作を説明する。なお、図5A図5Cは、いずれも、図2におけるV部の位置に対応する図である。図5Aに示すように、蓋機構64および当該蓋機構64に連続する配管62は、車体(上部体3)の外側から内側へ向かって押込まれた状態で、当該車体(上部体3)に設けられる収納部28に収納されている。このとき、ロック突起80がスライド支持部76のロック溝87に係合した状態となっている。これにより、蓋機構64および当該蓋機構64に連続する配管62の移動が規制されている。次に、図5Bに示すように、操作者が操作部74のツマミ84を上方へ持上げることにより、ロック突起80が上昇してロック溝87から離脱した状態となる。すなわち、蓋機構64および当該蓋機構64に連続する配管62の移動が規制されていない状態となる。次に、図5Cに示すように、ロック突起80がロック溝87から離脱した状態において、一例として、操作者が蓋機構64および当該蓋機構64に連続する配管62を把持して引出すことによって、または、他の例として、配管62の弾発力、および蓋機構64の重心に作用する重力の両方もしくは一方によって、蓋機構64および当該蓋機構64に連続する配管62が車体(上部体3)の内側から外側に向かって移動する。本実施形態では、当該移動が可能となるように、固定部72、操作部74、およびスライド支持部76が車体(上部体3)に対して位置決めされて取付けられている。これによれば、工具を使用することなく、操作者が操作部74のツマミ84を上方へ持上げてロックを解除するだけで、補給口60を車体(上部体3)の内部から外部へ向かって移動することが可能な状態となる。
【0044】
逆に、補給口60を収納部28に収納する際は、操作者が蓋機構64もしくは配管62を、車体(上部体3)の外側から内側に向かって押込んで移動させる。
【0045】
以上説明した通り、本発明によれば、工具を使用せずに位置の移動が可能で、且つ、狭いスペースに収納でき、補給時に引出して液体を補給することが可能な補給口60を実現することができる。したがって、車体2、3のコンパクト化を図ることができる。
【0046】
車体2、3に搭載される機器の作動に必要な液体として、運転室ヒータ用の作動に用いられる運転室ヒータ用冷却水を例に挙げて、運転室ヒータ用冷却水を補給する補給口60の構成について説明した。補給口60の構成は、この例に限定されるものではない。補給口60の構成は、走行油圧モータ、および各油圧シリンダの作動に用いられる作動油を補給する補給口に適用することができる。補給口60の構成は、ウォッシャー機構の作動に用いられるウィンドウォッシャを補給する補給口に適用することができる。
【0047】
作業用車両1として、電動モータを駆動源とする作業用車両を例に挙げた。補給口60の構成は、この例に限定されるものではなく、エンジン(内燃機)を駆動源とする作業用車両にも適用できる。補給口60の構成は、エンジンの作動に用いられる燃料を補給する補給口に適用することができる。補給口60の構成は、エンジンの作動に用いられるエンジンオイルを補給する補給口に適用することができる。補給口60の構成は、ラジエターの作動に用いられるラジエター用冷却水を補給する補給口に適用することができる。
【0048】
本発明は、上記の作業用車両(油圧ショベル)に限定されるものではない。本発明は、その他の作業用車両(トラックローダ、キャリア等)に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 作業用車両
2 車体(下部体)
3 車体(上部体)
10 走行装置
12、14 作業装置
16 運転室
28 収納部
60 補給口
62 配管
64 蓋機構
70 移動機構
72 固定部
74 操作部
76 スライド支持部
80 ロック突起
84 ツマミ
86 スライド孔(第1スライド孔)
87 ロック溝
図1
図2
図3
図4
図5