(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012104
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】有害酸化物除去剤および有害酸化物の除去方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240118BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20240118BHJP
B01D 53/76 20060101ALI20240118BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240118BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20240118BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240118BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/50 ZAB
B01D53/50 200
B01D53/76
B01D53/78
B01D53/56 200
C09K3/00 S
C11B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098227
(22)【出願日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2022112254
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507155317
【氏名又は名称】アットアロマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 礼央
(72)【発明者】
【氏名】坂井 沙綾
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正貴
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4H059
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA12
4D002AC01
4D002AC04
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA03
4D002CA01
4D002CA07
4D002DA70
4D002GA01
4D002GB20
4D020AA05
4D020AA06
4D020BA15
4D020BA30
4D020BB07
4D020CA01
4D020CA02
4D020CB25
4D020DA03
4D020DB20
4H059BC12
4H059BC23
4H059DA14
4H059DA17
4H059EA40
(57)【要約】
【課題】容易にかつ効率よくNOxおよびSOx等の有害酸化物を除去できる天然成分を見出し、これを利用する有害酸化物除去剤を提供する。
【解決手段】ミカン科の植物の抽出物を有効成分とする有害酸化物除去剤および前記有害酸化物除去剤を、有害酸化物を含有する大気と接触させることを特徴とする大気中の有害酸化物の除去方法
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミカン科の植物の精油を有効成分とする有害酸化物除去剤。
【請求項2】
ミカン科の植物が、ミカン科サンショウ属またはミカン科ミカン属の植物である請求項1記載の有害酸化物除去剤。
【請求項3】
ミカン科サンショウ属の植物がブドウザンショウまたはアサクラザンショウである請求項2記載の有害酸化物除去剤。
【請求項4】
ブドウザンショウまたはアサクラザンショウの軸の精油である請求項3記載の有害酸化物除去剤。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の有害酸化物除去剤を、有害酸化物を含有する大気と接触させることを特徴とする大気中の有害酸化物の除去方法。
【請求項6】
前記有害酸化物除去剤と、有害酸化物を含有する大気との接触が、前記有害酸化物除去剤を、有害酸化物を含有する大気中に揮散させることにより行う請求項5記載の大気中の有害酸化物の除去方法。
【請求項7】
前記有害酸化物除去剤と、有害酸化物を含有する大気との接触が、前記有害酸化物除去剤を含浸させたフィルター中に有害酸化物を含有する大気を通過させることにより行う請求項5記載の大気中の有害酸化物の除去方法。
【請求項8】
前記有害酸化物除去剤と、有害酸化物を含有する大気との接触が、前記有害酸化物除去剤を含有させたゲルに有害酸化物を含有する大気を接触させることにより行う請求項5記載の大気中の有害酸化物の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害酸化物の除去剤に関し、更に詳細には、各種の排煙、排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を浄化することのできる有害酸化物の除去剤及びこれを用いる有害酸化物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や工場のボイラー、あるいはゴミの焼却場の稼動に伴い、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を含む種々の化学物質を含む排煙が排出されている。また、自動車排気ガスにも、特にNOx、SOxなどの各種の人体に有害な化学物質が含まれていることが知られている。
【0003】
これらのNOxおよびSOxは、単に人体に有害であるだけでなく、酸性雨の原因ともなっている。更に、NOxと非メタン系炭化水素が存在する状態で、太陽光による光化学反応が加わると光化学スモッグが発生する。この光化学スモッグは、大気中の炭化水素やNOxが紫外線を吸収して光化学反応を起こし、有害物質である光化学オキシダントなどを生成する現象といわれている。しかしながら、NOx、特に自動車等の移動発生源に起因するNOxについては対策が遅れており、深刻な問題となっている。
【0004】
現在、NOxの除去方法としては、カルボン酸やアルカリ液といった吸収液の中を通したり、特殊な機械の中を通すことにより、NOxを処理するという方法が知られている。しかしながら、それらの方法はいずれも手間や費用がかかるという問題があった。
【0005】
一方、特許文献1には、ヒノキ科植物、ツバキ科植物、イチョウ科植物、イネ科植物、しそ科植物を水蒸気蒸留して得た精油と、水蒸気蒸留の際に得られた水溶性画分と、水からなる植物精油含有水溶液を有効成分とする有害化学物質除去剤が開示されている。また、特許文献2には、α-テルピネン、ミルセン、アロオシメンなどの共役二重結合を有するテルペン化合物を、ガス状にして、空気中に散布することにより、空気中のNOxをテルペン化合物中に包含させて、NOxを除去するNOxの除去方法が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1の方法は、NOxやSOxに対する効果があるとは記載されているものの、実際の試験は、二酸化炭素(CO2)のみで行われており、NOx等に実際に効果があるかどうか不明なものである。また、特許文献2に記載の化合物の、NOxやSOxの除去効果は十分でなく、より高い除去能力を持った安全性の高い化合物を見出し、これを利用する除去剤の提供が待たれていた。
【0007】
また、本発明者らは、β-フェランドレン及びオシメンよりなる群から選ばれる1種若しくは2種の化合物を有効成分として含有するもの(特許文献3)、テルピネン-4-オール、シトロネラール、ボルニルアセテート、カジネン、サビネン、α-テルピネオール、δ-3-カレン、テルピノレン、γ-テルピネン、1,4-シネオールおよび1,8-シネオールよりなる群から選ばれる1種若しくは2種以上の化合物を有効成分として含有するもの(特許文献4)、ヒノキ科ヒノキ属、ヒノキ科スギ属、マツ科モミ属、フトモモ科ユーカリ属、コウヤマキ科コウヤマキ属及びヒノキ科アスナロ属よりなる群から選ばれた樹木の1種または2種以上の木質部及び/または葉の精油を有効成分とするもの(特許文献5)を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-210526号公報
【特許文献2】特開平6-327934号公報
【特許文献3】特開2012-121004号公報
【特許文献4】再公表特許WO2010/098438号
【特許文献5】再公表特許WO2010/098439号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、容易にかつ効率よくNOxおよびSOx等の有害酸化物を除去できる天然成分を見出し、これを利用する有害酸化物除去剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、植物の抽出物の有害酸化物除去効果について検討を行っていたところ、ミカン科の植物から得た精油は、非常に効率よく有害酸化物を除去し除去剤として利用しうることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ミカン科の植物の精油を有効成分とする有害酸化物除去剤を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記有害酸化物の除去剤を、大気と接触させることを特徴とする有害
酸化物の除去方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、NOxおよびSOx等の各種の人体に有害な酸化物を効率よく除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において有効成分として使用されるミカン科の植物の精油は、ミカン科の植物を原料とするものである。ミカン科の植物としては、例えば、サンショウ属、ミカン属、カラタチ属、キンカン属等の植物が挙げられる。
【0015】
ミカン科サンショウ属の植物としては、例えば、アサクラザンショウ(朝倉山椒、Z. piperitum (L.)DC forma inerme (Makino) Makino)、ヤマアサクラザンショウ(山朝倉山椒、Z. piperitum (L.)DC forma brevispinosum Makino)、リュウジンザンショウ(竜神山椒、Z. piperitum (L.)DC forma ovalifoliolatum (Nakai) Makino)、ブドウザンショウ(葡萄山椒、学名なし)、タカハラサンショウ(高原山椒)、カラスザンショウ(Z. ailanthoides)、アマミザンショウ(Z. amamiense)、トウフユザンショウ(Z. armatum)、フユザンショウ(Z. armatum var. subtrifoliatum)、イワザンショウ(別名: ヒレザンショウ)(Z. beecheyanum)、オーストラリアサティンウッド(英語: satinwood in Australia)(Z. brachyacanthum)、カホクザンショウ(Z. bungeanum)、ヒメハゼザンショウ(Z. dimorphophyllum)、コカラスザンショウ(Z. fauriei)、ウエストインディアンサティンウッド(英: West Indian satinwood)(Z. flavum)(シノニム: Fagara flava)、オロンボゴ(ガボン: olon-vogo)(Z. gilletii)(シノニム: Fagara macrophylla)、オロン(ガボン: olon; 赤道ギニア: olong)(Z. heitzii)(シノニム: Fagara heitzii)、ネワタノキ(Z. integrifoliolum)、チェンクリン(マラヤ: chenkring)(Z. myriacanthum)、テリハザンショウ(別名: テリバザンショウ)(Z. nitidum (Roxb.) DC.)、サンショウ(Z. piperitum (L.) DC.)、ハンタールドゥリ(マラヤ: hantar duri)(Z. rhetsa)、ツルザンショウ(Z. scandens)、イヌザンショウ(Z. schinifolium)(シノニム: アリサンザンショウ:Z. pteropodum)、トウザンショウ(Z. simulans)、ヤクシマカラスザンショウ(Z. yakumontanum)等が挙げられる。これらのミカン科サンショウ属の植物の中でもブドウザンショウまたはアサクラザンショウが好ましい。
【0016】
ミカン科ミカン属の植物としては、例えば、ダイダイ(Citrus aurantium)、デコポン(Citrus unshiu x reticulata 'Siranui')、ユズ(Citrus junos)、ウンシュウミカン(Citrus unshiu)等が挙げられる。これらのミカン科ミカン属の植物の中でもダイダイまたはデコポンが好ましく、ダイダイがより好ましい。
【0017】
ミカン科カラタチ属の植物としては、カラタチ(Citrus trifoliata)等が挙げられる。
【0018】
ミカン科キンカン属の植物としては、マルミキンカン(Fortunella japonica)、ナガミキンカン(Fortunella margarita)、フクシュウキンカン(Fortunella obovata)等が挙げられる。
【0019】
これら植物として好ましいものとしては、例えば、ミカン科サンショウ属またはミカン科ミカン属の植物が挙げられ、これらの中でもサンショウ属の植物、ミカン属のダイダイまたはデコポンが好ましく、サンショウ属のブドウザンショウ、サンショウ属のアサクラザンショウまたはミカン属のダイダイがより好ましく、サンショウ属のブドウザンショウまたはアサクラザンショウが特に好ましく、サンショウ属のアサクラザンショウが最も好ましい。
【0020】
精油を得るための植物の部位としては、例えば、枝、葉、花、実、種子、果皮、軸(実がついている房から実を取ったもの)等が挙げられる。これら植物の部位は複数を組み合わせて用いてもよい。これら植物の部位の中でも、果皮、種子、軸が好ましく、軸がより好ましい。本来廃棄される軸の部分を利用することで、未利用資源を有効利用することができ、資源循環を効率良くするために役立ち、環境面においても優位性がある。また、これらの植物の部位は精油を得るにあたり、生でも乾燥させておいてもよい。
【0021】
上記植物から精油を得る方法は特に限定されないが、例えば、常圧蒸留法、減圧蒸留法、水蒸気蒸留法、直接蒸留法、減圧水蒸気蒸留法、溶媒抽出法等の従来公知の精油採取方法が挙げられる。これらの精油採取方法の中でも直接蒸留法、水蒸気蒸留法が好ましい。
【0022】
上記したミカン科の植物の精油は、更に、濾過、カラムクロマトグラフィー等の精製を行ってもよい。
【0023】
本発明において、好ましい精油としては、例えば、ブドウザンショウまたはアサクラザンショウの軸、あるいは果皮および種子から得られる精油、ミカン科ミカン属ダイダイの枝および葉から得られる精油、ミカン科ミカン属のデコポンの果皮から得られる精油等が挙げられ、ブドウザンショウの軸、あるいは果皮および種子から得られる精油、ミカン科ミカン属ダイダイの枝および葉から得られる精油が好ましく、ブドウザンショウまたはアサクラザンショウの軸、あるいは果皮および種子から得られる精油がより好ましく、ブドウザンショウまたはアサクラザンショウの軸から得られる精油が特に好ましく、アサクラザンショウの軸から得られる精油が最も好ましい。
【0024】
本発明において、最も好ましい精油としては、アサクラザンショウの軸から直接蒸留法により得られるものである。この精油は、例えば、アサクラザンショウの軸80kgを容器に入れ、これに1~5倍量の水を入れて90~100℃で沸騰させて精油採取管等で精油を採取することにより得られる。
【0025】
このアサクラザンショウの軸の精油は、概ね、比重が0.8~0.95(25℃)、屈折率が1.4~1.5のものである。なお、比重や屈折率は従来公知の測定方法や測定機器で測定することができる。なお、本発明において好ましい精油であるブドウザンショウの軸の精油も上記したアサクラザンショウの軸の精油と同様に得ることができ、精油の比重や屈折率も同様である。
【0026】
これらミカン科の植物の精油としては、上記のようにして得られるものの他に市販品を利用することもできる。
【0027】
かくして得られるミカン科の植物の精油(以下、単に「精油」ということもある)は、窒素酸化物、硫黄酸化物等の有害酸化物の除去活性を有するためこれを有効成分とすることにより有害酸化物除去剤とすることができる。有害酸化物のうち、窒素酸化物としては、一酸化窒素 (NO)、二酸化窒素 (NO2)、亜酸化窒素(一酸化二窒素)(N2O)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素 (N2O4)、五酸化二窒素 (N2O5)等が挙げられる。また、硫黄酸化物としては、一酸化硫黄 (SO)、二酸化硫黄 (SO2)、三酸化硫黄 (SO3)等が挙げられる。
【0028】
精油の有害酸化物の除去活性の測定方法は、特に限定されないが、例えば、有害酸化物を液体状態の精油中に通過させる測定方法、精油を気体状態としてから、これに有害酸化物を直接反応させる測定方法等が挙げられる。
【0029】
有害酸化物を液体状態の精油中に通過させる測定方法としては、例えば、一定量の精油を均一に含浸させたろ紙を、必要により気体を撹拌するためのファン等と共に、有害酸化物の入っているテドラーバックに内に設置し、ガスの検知管により検出する方法、一定量の精油を均一に含浸させた紙製のウエスを内径が5mmΦのガラス管に充填し、当該管の片方を有害酸化物の入っているテドラーバックに接続し、他方をこれらガスの検知管に接続し、検出する方法等が挙げられる。
【0030】
精油を気体状態としてから、これに有害酸化物を直接反応させる測定方法としては、例えば、予め精油を封入したテドラーバックを加温することにより、精油を気化させて飽和状態の精油ガスを調製し、これを有害酸化物ガスの入っているテドラーバックに導入し、混合後一定時間毎の有害酸化物ガス濃度を検知管あるいは大気汚染物質測定装置で検出して測定する方法等が挙げられる。
【0031】
本発明の有害酸化物除去剤は、上記のようにして得られた精油をそのまま、あるいはこれを適当な担体と組み合わせることにより調製することができる。また、精油は必要により組み合わせてもよい。
【0032】
精油と組み合わせる適当な担体としては、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンアルコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等の溶剤が挙げられる。この溶剤中に、有効成分である精油を、0.001~99質量%程度の濃度で溶解させることにより、本発明の有害酸化物除去剤を調製することができる。
【0033】
また、本発明の有害酸化物除去剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、香料、界面活性剤等の任意成分を加えることができる。香料としては、例えば、d-リモネン、リナロール、l-メントール、アネトール、シトロネラール、オイゲノール、エチルバニリン、エチルマルトール、ヒノキチオール、γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。また、界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0034】
以上のようにして調製される本発明の有害酸化物除去剤は、従来の有害酸化物除去剤に用いられる方法と同様に、例えば、有害酸化物除去剤を、有害酸化物を含有する大気と接触させることにより使用することが可能である。
【0035】
本発明の有害酸化物除去剤を、有害酸化物を含有する大気と接触させる方法としては、例えば、有害酸化物除去剤を、有害酸化物を含有する大気中に揮散させることにより行う方法が挙げられる。揮散させる方法としては、例えば、本発明の有害酸化物除去剤をそのままあるいは適当な揮散装置を用いて揮散させる方法、ポンプスプレー、エアゾール、超音波振動子、加圧液噴霧スプレー、加圧空気霧化噴霧装置等の霧化装置を用い、霧化させて揮散させる方法等が挙げられる。これらの方法の中でも本発明の有害酸化物除去剤を揮散装置を用いて揮散させる方法が好ましい。
【0036】
本発明の有害酸化物除去剤を、有害酸化物を含有する大気と接触させる別の方法としては、例えば、本発明の有害酸化物除去剤を紙(パルプ)、不織布、樹脂シート、木材シート、木粉、樹脂ビーズ等で構成されたフィルターに含浸させ、このフィルター中に、有害酸化物を含む大気を通過させる方法、有害酸化物を含む大気を、本発明の有害酸化物除去剤中でバブリングさせることにより有効成分と接触させる方法等が挙げられる。これらの方法の中でも有害酸化物除去剤を含浸させたフィルター中に有害酸化物を含有する大気を通過させる方法が好ましい。
【0037】
本発明の有害酸化物除去剤を、有害酸化物を含有する大気と接触させる更に別の方法としては、例えば、本発明の有害酸化物除去剤を含有するゲルを調製し、このゲルに有害酸化物を含む大気を接触させる方法等が挙げられる。これに用いられるゲルは、本発明の有害酸化物除去剤を含有させてもゲルを維持できるものであれば特に限定されないが、金属石鹸を用いたゲルが好ましい。
【0038】
本発明の有害酸化物除去剤の有効成分は、植物から得られた自然物であるため、人体への危険性もないものである。従って、これを生活空間の大気中に接触や噴霧した場合であっても、人間やその他の動植物に不快感や悪影響を及ぼすことがない。
【実施例0039】
以下、本発明の実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0040】
実 施 例 1
ブドウザンショウ精油の製造:
ミカン科サンショウ属のブドウザンショウ(和歌山県産)の生の軸(実がついている房から実を取ったもの)約80kgをステンレス製タンクに入れ、2.5倍量の水を加えた後、当該タンクを90~100℃に加熱し沸騰させた。精油採取管には加熱前に基準線まで水を入れておいた。1~2時間煮沸を続けて精油を蒸留し、ブドウザンショウ精油を200mL(本発明品1)得た。この精油の比重は0.861(25℃)、屈折率1.47であった。
【0041】
実 施 例 2
デコポン精油の製造:
ミカン科ミカン属のデコポンの果皮20kgを粉砕し、減圧水蒸気蒸留器(16kPaの減圧条件下、蒸気温度60℃)に入れ、減圧水蒸気蒸留法によりデコポン精油を100mL得た(本発明品4)。
【0042】
実 施 例 3
二酸化窒素の除去効果:
実施例1で得られたブドウザンショウ精油(本発明品1)36mgをひだ折りろ紙(半径55mm)に含浸させたものを含浸後約30秒後にファンとともに10Lのテドラーバック内に設置した。含浸後約10分後に、約70ppmの濃度の二酸化窒素ガスを注入後、経時的に残存している二酸化窒素ガスの濃度を検知管で測定した。本発明品2として、市販品のブドウ山椒精油(商品名:FRAGRANT KISHU-WAKA 山椒、抽出部位:果皮、種子、水蒸気蒸留法:中野BC株式会社製)を用いた。本発明品3として、ミカン科ミカン属のダイダイの精油(製品名:Petitgrain oil morocco、抽出部位:枝、葉、水蒸気蒸留法:山本香料(株)製)を用いた。本発明品4として、実施例2で得られたデコポンの精油を用いた。これらを用いて本発明品1と同様の試験を行った。結果を表1に示した。
【0043】
【0044】
以上の結果より、本発明品のミカン科の植物の精油は、いずれも二酸化窒素ガスを除去していることが分かった。これらの中でもミカン科サンショウ属のブドウザンショウ精油およびミカン科ミカン属のダイダイの精油の除去効果が高く、ミカン科サンショウ属のブドウザンショウ精油の除去効果がより高く、ブドウザンショウの軸の精油の除去効果は顕著に高いことが分かった。
【0045】
実 施 例 4
アサクラザンショウ精油の製造:
ミカン科サンショウ属のアサクラザンショウ(兵庫県産)の生の軸(実がついている房から実を取ったもの)約5kgを水6Lを入れた蒸留窯に入れ、当該蒸留窯を90~100℃に加熱し沸騰させた。精油採取管には加熱前に基準線まで水を入れておいた。1~2時間煮沸を続けて精油を蒸留し、アサクラザンショウ精油を15.8mL(本発明品5)得た。この精油の比重は0.844(25℃)、屈折率1.47であった。
【0046】
実 施 例 5
二酸化窒素の除去効果:
実施例1で得られたブドウザンショウ精油(本発明品1)および実施例4で得られたアサクラザンショウ精油(本発明品5)36mgをひだ折りろ紙(半径55mm)に含浸させたものを含侵後約30秒後にファンとともに10Lのテドラーバック内に設置した。含浸後約10分後に、約80ppmの濃度の二酸化窒素ガスを注入後、経時的に残存している二酸化窒素ガスの濃度を検知管で測定した。結果を表2に示した。
【0047】
【0048】
以上の結果より、本発明品1および本発明品5のミカン科サンショウ属の植物の精油は、いずれも二酸化窒素ガスを除去していることが分かった。ミカン科サンショウ属の中でも、アサクラザンショウの軸の精油の二酸化窒素ガスの除去効果は顕著に高いことが分かった。
【0049】
実 施 例 6
有害酸化物除去剤およびその使用:
本発明品1の精油7mLを車のエアコンルーバー用有害酸化物除去剤(エステー(株)社製クリアフォレスト、クルマ エアコンルーバー用)の容器に入れ、車のエアコンルーバーに設置したところ、車内の窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0050】
実 施 例 7
有害酸化物除去剤およびその使用:
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールと本発明品1の精油を50質量%ずつ配合し、空間噴霧用有害酸化物除去剤を製造した。この有害酸化物除去剤を加熱蒸散装置(エステー(株)社製消臭プラグ)を用いて空間に噴霧し、窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0051】
実 施 例 8
有害酸化物除去剤:
本発明品1の精油1gをスプレーにて通気性のセルロース不織布(目付:100g/m3:フタムラ化学社製)に噴霧して二酸化窒素除去フィルターを作成した。これを20cm×30cmに裁断後、10枚を重ねて、自動車用室外空気取り入れ口用フィルターを作製した。
【0052】
実 施 例 9
有害酸化物除去剤およびその使用:
本発明品5の精油1g、香料1g、界面活性剤5gと水393gを混合して有害酸化物除去剤組成物を作成した。この有害酸化物除去剤組成物を揮散装置(エステー(株)社製消臭力玄関・リビング用)に入れ、室内に設置したところ、約2か月間室内の窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0053】
実 施 例 10
有害酸化物除去剤およびその使用
本発明品5の精油0.5g香料0.5gをエタノール5gに溶かしたものを噴射剤(液化石油ガス)とともに、定量噴射エアゾールに充填したものを、噴霧装置(エステー(株)社製消臭力自動でシュパッと)を用いて、室内に約15分間隔で噴霧させたところ、約15日間、室内の窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
本発明の有害酸化物除去剤は、効率的に大気と接触させることにより、二酸化窒素、二酸化硫黄等の有害酸化物を無害化できるだけでなく、光化学スモックの原因となる大気汚染物質、シックハウス等家庭内汚染物質、自動車内および病院等の医療施設の有害酸化物をも無害化できるものである。