(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121053
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】短絡判定回路
(51)【国際特許分類】
H02H 3/087 20060101AFI20240830BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H02H3/087
H02J1/00 304H
H02J1/00 309Q
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027920
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 弘真
【テーマコード(参考)】
5G004
5G165
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB02
5G004BA03
5G004CA04
5G004DA02
5G004DC07
5G004EA01
5G165BB08
5G165CA02
5G165EA02
5G165GA09
5G165LA01
5G165LA02
5G165MA09
5G165NA02
5G165NA05
(57)【要約】
【課題】短絡を適正に判定することができる短絡判定回路を提供する。
【解決手段】短絡判定回路60は、電流検出部61と、電圧検出部62と、電流異常判定部63と、電圧異常判定部64と、短絡判定部65とを備える。電流検出部61は、電力回路Pに流れる電流を検出する。電圧検出部62は、電力回路Pに印加される電圧を検出する。電流異常判定部63は、電流検出部61により検出された電流の電流値及び予め定められた電流閾値に基づいて電流異常を判定する。電圧異常判定部64は、電圧検出部62により検出された電圧の電圧値及び予め定められた電圧閾値に基づいて電圧異常を判定する。短絡判定部65は、電流異常判定部63により判定された判定結果及び電圧異常判定部64により判定された判定結果に基づいて短絡や地絡(漏電)等の電気的な接続異常を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力回路に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電力回路に印加される電圧を検出する電圧検出部と、
前記電流検出部により検出された電流の電流値及び予め定められた電流閾値に基づいて電流異常を判定する電流異常判定部と、
前記電圧検出部により検出された電圧の電圧値及び予め定められた電圧閾値に基づいて電圧異常を判定する電圧異常判定部と、
前記電流異常判定部により判定された判定結果及び前記電圧異常判定部により判定された判定結果に基づいて前記電力回路における短絡を判定する短絡判定部と、
を備えることを特徴とする短絡判定回路。
【請求項2】
前記電力回路は、第1電気機器と第2電気機器との間に渡って設けられ、
前記第1電気機器は、電力を供給可能なメインバッテリであり、
前記第2電気機器は、前記メインバッテリに遮断回路を介して接続され、電力を供給可能なサブバッテリであり、
前記電流検出部は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に流れる電流を検出し、
前記電圧検出部は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に印加される電圧を検出し、
前記短絡判定部は、前記電流異常判定部により電流異常と判定し、かつ、前記電圧異常判定部により電圧異常と判定した場合に短絡と判定し、前記遮断回路を遮断する請求項1に記載の短絡判定回路。
【請求項3】
前記電流検出部は、電流を増幅する電流増幅回路及びシャント抵抗器を含み、
前記電圧検出部は、電圧を増幅する電圧増幅回路を含み、
前記電流異常判定部は、電流を比較する電流比較回路を含み、
前記電圧異常判定部は、電圧を比較する電圧比較回路を含み、
前記短絡判定部は、論理積を演算するAND回路を含み、
前記シャント抵抗器は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に設けられ、
前記電流増幅回路は、前記シャント抵抗器に印加される電圧を増幅した電流値を前記電流比較回路に出力し、
前記電圧増幅回路は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に印加される電圧を増幅した電圧値を前記電圧比較回路に出力し、
前記電流比較回路は、前記電流増幅回路から出力された前記電流値が前記電流閾値以上である場合、電流異常を表す電流異常信号を前記AND回路に出力し、
前記電圧比較回路は、前記電圧増幅回路から出力された前記電圧値が前記電圧閾値未満である場合、電圧異常を表す電圧異常信号を前記AND回路に出力し、
前記AND回路は、前記電流比較回路から前記電流異常信号が出力され、かつ、前記電圧比較回路から前記電圧異常信号が出力された場合、前記遮断回路に遮断信号を出力して当該遮断回路を遮断する請求項2に記載の短絡判定回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡判定回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、双方向に流れる電流を高速で遮断することができる電源装置が記載されている。この電源装置は、電源の電力を変換し負荷に出力する電力変換器と、電源と電力変換器との間に接続された開閉器と、電源から開閉器を介して電力変換器に流れる電流経路に接続された第1整流回路及び第2整流回路と、第1整流回路及び第2整流回路の少なくともいずれか一方の整流回路に対して並列に接続されたスイッチング回路とを備え、第1整流回路及び第2整流回路は、順方向のみ電流を導通させる回路であり、互いの順方向を逆向きにして電流経路に直列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の電源装置は、緊急時にスイッチング回路をオフすることで第1整流回路及び第2整流回路により双方向の電流を高速に遮断するが、この緊急時として例えば短絡が考えられる。そして、電源装置は、この短絡を迅速かつ精度よく判定することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、短絡を適正に判定することができる短絡判定回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る短絡判定回路は、電力回路に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電力回路に印加される電圧を検出する電圧検出部と、前記電流検出部により検出された電流の電流値及び予め定められた電流閾値に基づいて電流異常を判定する電流異常判定部と、前記電圧検出部により検出された電圧の電圧値及び予め定められた電圧閾値に基づいて電圧異常を判定する電圧異常判定部と、前記電流異常判定部により判定された判定結果及び前記電圧異常判定部により判定された判定結果に基づいて前記電力回路における短絡を判定する短絡判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る短絡判定回路は、電流値及び電圧値の両方に基づいて短絡を判定するので、ノイズを除去するフィルタ回路を設けなくても、短絡を精度よく判定することができる。また、短絡判定回路は、検出した電圧値と電圧閾値とに基づいて電圧異常を判定するので、例えば電圧の時間変化に対する傾きに基づいて電圧異常を判定する場合と比較して、短絡発生時から短絡を判定するまでの時間を短くすることができる。この結果、短絡判定回路は、短絡を適正に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源装置の構成例を示す回路図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る遮断回路の状態遷移を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る短絡判定回路の動作例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る短絡判定回路の判定例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る短絡判定回路の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0010】
図面を参照しながら実施形態に係る電源装置1について説明する。電源装置1は、車両に搭載され、車両の負荷部に電力を供給するものであり、例えば、電力回路Pにおける短絡や地絡(漏電)等の電気的な接続異常を判定して電力供給路を遮断するものである。電源装置1は、
図1に示すように、電力回路Pと、第1電気機器としてのメインバッテリ10と、第2電気機器としてのサブバッテリ20と、遮断回路30と、ゲートドライバ40と、ゲートドライバ制御部50と、短絡判定回路60とを備える。電力回路Pは、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に渡って設けられる。
【0011】
メインバッテリ10は、電力を充電及び供給可能な蓄電池であり、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン電池である。メインバッテリ10は、車両に搭載された負荷部に電力を供給する。また、メインバッテリ10は、遮断回路30を介してサブバッテリ20に接続され、サブバッテリ20を充電する。
【0012】
サブバッテリ20は、電力を充電及び供給可能な蓄電池であり、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン電池である。サブバッテリ20は、車両に搭載された負荷部に電力を供給する。また、サブバッテリ20は、遮断回路30を介してメインバッテリ10に接続され、メインバッテリ10から供給された電力を充電する。
【0013】
遮断回路30は、電流を遮断するものであり、例えば、back to back回路である。遮断回路30は、1対のFET31a,31bと、1対のFET31c,31dと、1対のFET31e,31fと、抵抗器R1~R6とを含んで構成される。これらのFET31a~31fは、例えば、Nチャネル型のMOSFETである。3組の1対のFETは、それぞれが並列に接続されている。
【0014】
具体的には、1対のFET31a,31bは、互いのソース端子同士が接続され、一方のFET31aのドレイン端子がメインバッテリ10に接続され、一方のFET31aのゲート端子が抵抗器R1を介してゲートドライバ40に接続され、他方のFET31bのドレイン端子がサブバッテリ20に接続され、他方のFET31bのゲート端子が抵抗器R2を介してゲートドライバ40に接続されている。1対のFET31a,31bは、ゲート端子に電圧が印加された場合にONしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電可能に導通させ、ゲート端子に電圧が印加されない場合にOFFしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電不可に遮断する。
【0015】
1対のFET31c,31dは、互いのソース端子同士が接続され、一方のFET31cのドレイン端子がメインバッテリ10に接続され、一方のFET31cのゲート端子が抵抗器R3を介してゲートドライバ40に接続されている。また、他方のFET31dのドレイン端子がサブバッテリ20に接続され、他方のFET31dのゲート端子が抵抗器R4を介してゲートドライバ40に接続されている。1対のFET31c,31dは、ゲート端子に電圧が印加された場合にONしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電可能に導通させ、ゲート端子に電圧が印加されない場合にOFFしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電不可に遮断する。
【0016】
1対のFET31e,31fは、互いのソース端子同士が接続され、一方のFET31eのドレイン端子がメインバッテリ10に接続され、一方のFET31eのゲート端子が抵抗器R5を介してゲートドライバ40に接続されている。また、他方のFET31fのドレイン端子がサブバッテリ20に接続され、他方のFET31fのゲート端子が抵抗器R6を介してゲートドライバ40に接続されている。1対のFET31e,31fは、ゲート端子に電圧が印加された場合にONしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電可能に導通させ、ゲート端子に電圧が印加されない場合にOFFしてメインバッテリ10とサブバッテリ20との間を双方向に通電不可に遮断する。
【0017】
ゲートドライバ40は、遮断回路30を制御するものである。ゲートドライバ40は、遮断回路30のFET31a~31fのゲート端子に接続され、当該ゲート端子に電圧を印加することでFET31a~31fをONし、当該ゲート端子への電圧の印加を停止することでFET31a~31fをOFFする。
【0018】
ゲートドライバ制御部50は、短絡判定回路60からの指令に基づいてゲートドライバ40を制御するものである。ゲートドライバ制御部50は、トランジスタ51を含んで構成される。トランジスタ51は、例えば、npn型のバイポーラトランジスタであり、コレクタ端子がゲートドライバ40とFET31a~31fのゲート端子との間に接続され、エミッタ端子がグランドに接続され、ベース端子が短絡判定回路60に接続されている。トランジスタ51は、短絡判定回路60により電圧が印加されてONした場合、コレクタ端子からエミッタ端子にコレクタ電流(ゲートドライバ40から出力される電流)が流れ、これによりゲートドライバ40による各ゲート端子への電圧の印加が停止される。従って、トランジスタ51は、FET31a~31fをOFFすることができる。一方で、トランジスタ51は、短絡判定回路60により電圧が印加されずOFFした場合、コレクタ端子からエミッタ端子にコレクタ電流が流れず、これによりゲートドライバ40による各ゲート端子への電圧の印加が継続される。従って、トランジスタ51は、FET31a~31fのONを維持することができる。
【0019】
短絡判定回路60は、短絡や地絡等の電気的な接続異常を判定するものである。短絡判定回路60は、例えば、メインバッテリ10が地絡したと判定した場合、遮断回路30を遮断する。短絡判定回路60は、電流検出部61と、電圧検出部62と、電流異常判定部63と、電圧異常判定部64と、短絡判定部65とを備える。
【0020】
電流検出部61は、電流を検出するものであり、この例では、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に流れる電流を検出する。電流検出部61は、シャント抵抗器R7と、電流増幅回路611と、抵抗器R8~R11とを含んで構成される。
【0021】
シャント抵抗器R7は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に設けられ、一端がメインバッテリ10に接続され、他端がサブバッテリ20に接続される。
【0022】
電流増幅回路611は、電流を増幅するものである。電流増幅回路611は、非反転入力端子(+)と、反転入力端子(-)と、出力端子とを有する。非反転入力端子(+)は、抵抗器R8を介してサブバッテリ20とシャント抵抗器R7との間に接続されている。反転入力端子(-)は、抵抗器R10を介してシャント抵抗器R7とメインバッテリ10との間に接続され、かつ、抵抗器R11を介して出力端子に接続されている。出力端子は、電流異常判定部63に接続されている。抵抗器R9は、一端が抵抗器R8と非反転入力端子(+)との間に接続され、他端がグランドに接続されている。抵抗器R9は、シャント抵抗器R7に印加される電圧を分圧している。電流増幅回路611の増幅率は、抵抗器R10の抵抗と抵抗器R11の抵抗との比率に基づいて定まる。電流増幅回路611は、シャント抵抗器R7に印加される電圧を増幅した増幅電圧(電流値)を電流異常判定部63に出力する。
【0023】
電圧検出部62は、電圧を検出するものであり、この例では、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に印加される電圧を検出する。電圧検出部62は、電圧増幅回路621と、抵抗器R12とを含んで構成される。
【0024】
電圧増幅回路621は、電圧を増幅するものである。電圧増幅回路621は、非反転入力端子(+)と、反転入力端子(-)と、出力端子とを有する。非反転入力端子(+)は、抵抗器R12を介してメインバッテリ10とサブバッテリ20との間に接続されている。非反転入力端子(+)は、例えば、シャント抵抗器R7とサブバッテリ20との間に接続されている。反転入力端子(-)は、出力端子に接続されている。出力端子は、電圧異常判定部64に接続されている。電圧増幅回路621は、ボルテージフォロワを構成し、増幅率が1倍となる。電圧増幅回路621は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に印加される電圧を増幅した増幅電圧(電圧値)を電圧異常判定部64に出力する。なお、ボルテージフォロアは、後段の電圧比較回路641の構成によっては、不要になる場合もある。
【0025】
電流異常判定部63は、電流の異常を判定するものである。電流異常判定部63は、例えば、電流検出部61により検出された電流の電流値、及び、予め定められた電流閾値Ith(
図3参照)に基づいて電流異常を判定する。電流異常判定部63は、電流比較回路631と、抵抗器R13とを含んで構成される。
【0026】
電流比較回路631は、電流値を比較する比較回路である。電流比較回路631は、抵抗器R13を介して電流増幅回路611に接続され、電流増幅回路611から出力される電流値(増幅電圧)と電流閾値Ithとを比較し、当該電流値が電流閾値Ith以上である場合、電流異常を表す電流異常信号(Highレベル信号)を短絡判定部65に出力する。一方で、電流比較回路631は、電流増幅回路611から出力される電流値が電流閾値Ith未満である場合、電流正常を表す電流正常信号(Lowレベル信号)を短絡判定部65に出力する。
【0027】
電圧異常判定部64は、電圧の異常を判定するものである。電圧異常判定部64は、例えば、電圧検出部62により検出された電圧の電圧値、及び、予め定められた電圧閾値Vth(
図3参照)に基づいて電圧異常を判定する。電圧異常判定部64は、電圧比較回路641と、抵抗器R14とを含んで構成される。
【0028】
電圧比較回路641は、電圧値を比較する比較回路である。電圧比較回路641は、抵抗器R14を介して電圧増幅回路621に接続され、電圧増幅回路621から出力される電圧値(増幅電圧)と電圧閾値Vthとを比較し、当該電圧値が電圧閾値Vth未満である場合、電圧異常を表す電圧異常信号(Highレベル信号)を短絡判定部65に出力する。一方で、電圧比較回路641は、電圧増幅回路621から出力される電圧値が電圧閾値Vth以上である場合、電圧正常を表す電圧正常信号(Lowレベル信号)を短絡判定部65に出力する。
【0029】
短絡判定部65は、短絡や地絡等の電気的な接続異常を判定するものである。短絡判定部65は、例えば、電流異常判定部63により判定された判定結果、及び、電圧異常判定部64により判定された判定結果に基づいて短絡を判定する。短絡判定部65は、例えば、電流異常判定部63により電流異常と判定し、かつ、電圧異常判定部64により電圧異常と判定した場合に短絡と判定し、遮断回路30を遮断する。短絡判定部65は、AND回路651を含んで構成される。
【0030】
AND回路651は、第1入力端子と、第2入力端子と、出力端子とを含んで構成される。第1入力端子は、電流比較回路631に接続され、第2入力端子は、電圧比較回路641に接続され、出力端子は、ゲートドライバ制御部50のトランジスタ51に接続されている。AND回路651は、論理積を演算する論理積回路であり、第1入力端子及び第2入力端子にHighレベル信号が入力された場合、遮断信号をトランジスタ51に出力する。AND回路651は、例えば、遮断信号としてトランジスタ51に電圧を印加してトランジスタ51をONする。一方で、AND回路651は、第1入力端子又は第2入力端子の少なくとも一方にLowレベル信号が入力された場合、遮断信号をトランジスタ51に出力しない。AND回路651は、例えば、トランジスタ51に電圧を印加しないことでトランジスタ51をOFFする。この例では、AND回路651は、電流比較回路631からHighレベル信号(電流異常信号)が出力され、かつ、電圧比較回路641からHighレベル信号(電圧異常信号)が出力された場合、すなわち地絡等を検出した場合、トランジスタ51をONして遮断回路30を遮断する。一方で、AND回路651は、電流比較回路631又は電圧比較回路641の少なくとも一方からLowレベル信号が出力された合、すなわち地絡等を検出していない場合、トランジスタ51をOFFして遮断回路30の通電状態を維持する。
【0031】
次に、上述のように構成された電源装置1の状態遷移について説明する。電源装置1は、例えば、
図2に示すように、パワーがオンされると、遮断回路30を遮断状態に遷移させる。そして、電源装置1は、パワーがオンされた際に、短絡判定回路60により地絡等の異常を検出せず、かつ、電源装置1を起動させるウェイクアップ条件が成立する場合、遮断回路30を通電状態に遷移させる。電源装置1は、遮断回路30を通電状態に遷移後に、短絡判定回路60により地絡等の異常を検出し、かつ、電源装置1を待機させるスリープ条件が成立する場合、遮断回路30を遮断状態に遷移させる。このように、電源装置1は、パワーオンから状態が遷移する。
【0032】
次に、電源装置1の動作例について説明する。この例では、電源装置1は、正常状態ではメインバッテリ10からサブバッテリ20に電流が流れる場合を想定する。電源装置1は、例えば、
図3に示すように、メインバッテリ10に地絡が発生した場合(時刻t1)、電流が逆流してサブバッテリ20からメインバッテリ10に流れる(時刻t2)。このとき、電圧比較回路641は、電圧増幅回路621から出力される電圧値が電圧閾値Vth未満である場合、電圧異常を表す電圧異常信号(Highレベル信号)をAND回路651に出力する(時刻t1と時刻t2との間)。また、電流比較回路631は、電流増幅回路611から出力される電流値が電流閾値Ith以上である場合、電流異常を表す電流異常信号(Highレベル信号)をAND回路651に出力する(時刻t3)。
【0033】
AND回路651は、電流比較回路631から電流異常信号(Highレベル信号)が出力され、かつ、電圧比較回路641から電圧異常信号(Highレベル信号)が出力された場合、短絡(地絡)と判定して遮断信号を出力し、ゲートドライバ制御部50のトランジスタ51をONして遮断回路30を遮断する(
図3の時刻t3、
図4の時刻t1)。ゲートドライバ制御部50は、ラッチ回路(図示省略)を有しており、AND回路651から遮断信号が出力された場合、電流比較回路631から電流正常信号(Lowレベル信号)が出力され、かつ、電圧比較回路641から電圧正常信号(Lowレベル信号)が出力されるまで、ラッチ回路によりトランジスタ51のONを継続し、遮断回路30の遮断状態を維持する(時刻t3~時刻t5)。ゲートドライバ制御部50は、遮断回路30の遮断後、電流比較回路631から電流正常信号(Lowレベル信号)が出力され、かつ、電圧比較回路641から電圧正常信号(Lowレベル信号)が出力された場合、遮断回路30の遮断を解除して遮断回路30を通電状態とする(時刻t5)。
【0034】
なお、AND回路651は、電圧比較回路641から電圧異常信号(Highレベル信号)が出力された際に、電流比較回路631から電流正常信号(Lowレベル信号)が出力された場合、電圧値が異常でも電流値が正常であるので、遮断回路30を遮断しない(時刻t6)。また、電流検出部61は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に過電圧が印加された際に、メインバッテリ10からサブバッテリ20に過電流が流れた場合、マスク回路(図示省略)によりマスクすることによって過電流が流れたことを検出しない(時刻t7)。ここで、マスク回路は、メインバッテリ10からサブバッテリ20に電流が流れた場合、電流検出部61により検出される電流を無効にする(マスクする)回路である。
【0035】
次に、フローチャートを参照して短絡判定回路60の動作例について説明する。短絡判定回路60は、
図5に示すように、電流検出部61によりメインバッテリ10とサブバッテリ20との間に流れる電流を検出し、電圧検出部62によりメインバッテリ10とサブバッテリ20との間に印加される電圧を検出する(ステップS1)。短絡判定部65は、電流異常判定部63により電流異常と判定し、かつ、電圧異常判定部64により電圧異常と判定した場合に短絡等と判定した場合(ステップS2;Yes)、遮断回路30を遮断する(ステップS3)。短絡判定部65は、ステップS1で検出された結果が電流正常又は電圧正常の少なくとも一方である場合(ステップS2;No)、遮断回路30を遮断しない。
【0036】
以上のように、実施形態に係る短絡判定回路60は、電流検出部61と、電圧検出部62と、電流異常判定部63と、電圧異常判定部64と、短絡判定部65とを備える。電流検出部61は、電力回路Pに流れる電流を検出する。電圧検出部62は、電力回路Pに印加される電圧を検出する。電流異常判定部63は、電流検出部61により検出された電流の電流値及び予め定められた電流閾値Ithに基づいて電流異常を判定する。電圧異常判定部64は、電圧検出部62により検出された電圧の電圧値及び予め定められた電圧閾値Vthに基づいて電圧異常を判定する。短絡判定部65は、電流異常判定部63により判定された判定結果及び電圧異常判定部64により判定された判定結果に基づいて電力回路Pにおける短絡や地絡(漏電)等の電気的な接続異常を判定する。
【0037】
この構成により、短絡判定回路60は、電流値及び電圧値の両方に基づいて短絡等を判定するので、ノイズを除去するフィルタ回路を設けなくても微小なノイズに対する誤動作を抑制でき、短絡等を精度よく判定することができる。また、短絡判定回路60は、検出した電圧値と電圧閾値Vthとに基づいて電圧異常を判定するので、例えば電圧の時間変化に対する傾きに基づいて電圧異常を判定する場合と比較して、短絡発生時から短絡を判定するまでの時間を短くすることができる。この結果、短絡判定回路60は、短絡等を適正に判定することができる。
【0038】
短絡判定回路60において、電力回路Pは、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に渡って設けられる。サブバッテリ20は、メインバッテリ10に遮断回路30を介して接続される。電流検出部61は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に流れる電流を検出する。電圧検出部62は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に印加される電圧を検出する。短絡判定部65は、電流異常判定部63により電流異常と判定し、かつ、電圧異常判定部64により電圧異常と判定した場合に短絡等と判定し、遮断回路30を遮断する。この構成により、短絡判定回路60は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間における短絡等を適正に判定して遮断処理を実行することができる。
【0039】
短絡判定回路60において、電流検出部61は、電流を増幅する電流増幅回路611及びシャント抵抗器R7を含み、電圧検出部62は、電圧を増幅する電圧増幅回路621を含み、電流異常判定部63は、電流を比較する電流比較回路631を含み、電圧異常判定部64は、電圧を比較する電圧比較回路641を含み、短絡判定部65は、論理積を演算するAND回路651を含む。シャント抵抗器R7は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に設けられる。電流増幅回路611は、シャント抵抗器R7に印加される電圧を増幅した電流値を電流比較回路631に出力する。電圧増幅回路621は、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間に印加される電圧を増幅した電圧値を電圧比較回路641に出力する。電流比較回路631は、電流増幅回路611から出力された電流値が電流閾値Ith以上である場合、電流異常を表す電流異常信号をAND回路651に出力する。電圧比較回路641は、電圧増幅回路621から出力された電圧値が電圧閾値Vth未満である場合、電圧異常を表す電圧異常信号をAND回路651に出力する。AND回路651は、電流比較回路631から電流異常信号が出力され、かつ、電圧比較回路641から電圧異常信号が出力された場合、遮断回路30に遮断信号を出力して当該遮断回路30を遮断する。この構成により、短絡判定回路60は、電流増幅回路611等のアナログ回路を用いて、メインバッテリ10とサブバッテリ20との間における短絡等を適正に判定することができる。
【0040】
なお、上記説明では、短絡判定回路60は、電流増幅回路611等のアナログ回路を用いる例について説明したが、これに限定されず、例えば、デジタル回路を用いて構成してもよい。
【0041】
第1電気機器がメインバッテリ10であり、第2電気機器がサブバッテリ20である例について説明したが、これに限定されず、第1電気機器及び第2電気機器はその他の電気機器であってもよい。
【0042】
図1に示す電源装置1は、メインバッテリ10側に生じる地絡(
図3における通電電流:サブバッテリ→メインバッテリ)を検出する為の回路となっているが、これに限定されない。電源装置1は、例えば、電流検出部61の電流増幅回路(OPアンプ)611の極性を逆にすれば、サブバッテリ20側の地絡検出も可能となる。このように、電源装置1は、電流の検出方向には囚われない。また、電源装置1は、メインバッテリ10側の地絡を検出する例を示しており、
図3における電流検出(通電電流:メインバッテリ→サブバッテリ)は検出対象外としている。
【符号の説明】
【0043】
10 メインバッテリ(第1電気機器)
20 サブバッテリ(第2電気機器)
30 遮断回路
60 短絡判定回路
61 電流検出部
62 電圧検出部
63 電流異常判定部
64 電圧異常判定部
65 短絡判定部
611 電流増幅回路
621 電圧増幅回路
631 電流比較回路
641 電圧比較回路
651 AND回路
Ith 電流閾値
Vth 電圧閾値
R7 シャント抵抗器
P 電力回路
【手続補正書】
【提出日】2024-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力回路に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電力回路に印加される電圧を検出する電圧検出部と、
前記電流検出部により検出された電流の電流値及び予め定められた電流閾値に基づいて電流異常を判定する電流異常判定部と、
前記電圧検出部により検出された電圧の電圧値及び予め定められた電圧閾値に基づいて電圧異常を判定する電圧異常判定部と、
前記電流異常判定部により判定された判定結果及び前記電圧異常判定部により判定された判定結果に基づいて前記電力回路における短絡を判定する短絡判定部と、を備え、
前記電力回路は、第1電気機器と第2電気機器との間に渡って設けられ、
前記第1電気機器は、電力を供給可能なメインバッテリであり、
前記第2電気機器は、前記メインバッテリに遮断回路を介して接続され、電力を供給可能なサブバッテリであり、
前記電流検出部は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に流れる電流を検出し、
前記電圧検出部は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に印加される電圧を検出し、
前記短絡判定部は、前記電流異常判定部により電流異常と判定し、かつ、前記電圧異常判定部により電圧異常と判定した場合に短絡と判定し、前記遮断回路を遮断し、
パワーオン時に前記遮断回路が遮断状態とされ、当該遮断状態において短絡異常が検出されず、かつ、起動の条件が成立した場合に前記遮断回路が通電状態とされる、
短絡判定回路。
【請求項2】
前記電流検出部は、電流を増幅する電流増幅回路及びシャント抵抗器を含み、
前記電圧検出部は、電圧を増幅する電圧増幅回路を含み、
前記電流異常判定部は、電流を比較する電流比較回路を含み、
前記電圧異常判定部は、電圧を比較する電圧比較回路を含み、
前記短絡判定部は、論理積を演算するAND回路を含み、
前記シャント抵抗器は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に設けられ、
前記電流増幅回路は、前記シャント抵抗器に印加される電圧を増幅した電流値を前記電流比較回路に出力し、
前記電圧増幅回路は、前記メインバッテリと前記サブバッテリとの間に印加される電圧を増幅した電圧値を前記電圧比較回路に出力し、
前記電流比較回路は、前記電流増幅回路から出力された前記電流値が前記電流閾値以上である場合、電流異常を表す電流異常信号を前記AND回路に出力し、
前記電圧比較回路は、前記電圧増幅回路から出力された前記電圧値が前記電圧閾値未満である場合、電圧異常を表す電圧異常信号を前記AND回路に出力し、
前記AND回路は、前記電流比較回路から前記電流異常信号が出力され、かつ、前記電圧比較回路から前記電圧異常信号が出力された場合、前記遮断回路に遮断信号を出力して当該遮断回路を遮断する請求項1に記載の短絡判定回路。