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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121072
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】発信機
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240830BHJP
   H01H 9/16 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G08B17/00 H
H01H9/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027960
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大下 剛
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 俊介
(72)【発明者】
【氏名】石田 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】原田 麻魚
(72)【発明者】
【氏名】武井 隆
【テーマコード(参考)】
5G052
5G405
【Fターム(参考)】
5G052AA21
5G052BB01
5G052JA02
5G052JA09
5G052JB05
5G052JC04
5G405AA02
5G405CA21
5G405CA57
5G405CA58
5G405FA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発信機において保護板を押し込む際に抗力を付与し保護板を元の位置に復帰させる。
【解決手段】外方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチ11を内蔵した本体部10と、本体部の外方に配置された外面カバー20と、押しボタンスイッチ11の外方に位置するように配置された保護板21と、外面カバーの内方に配設された光源として機能する複数の発光素子23と、を備えた表示灯付発信機であって、外面カバーは、開口を有し光源から放出された光を誘導する導光板22Bと、開口を有し導光板の外面側に接合されたカバー部材22Cと、を備える。カバー部材は、透光材により形成された保形部材とその外面に被着された伸縮性を有する布製の表皮とからなり、表皮には、ロッド部21aの断面よりも大きく保護板21の押圧部の径よりも小さな開口が形成され、保護板がカバー部材の最前部よりも内方に配設されることで表皮に張力が付与される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体部と、前記本体部の外方に配置された外面カバーと、前記押しボタンスイッチの外方に位置するように配置され背面にロッド部を有する保護板と、を備え、前記保護板が押し込まれることで前記ロッド部が前記押しボタンスイッチをオンさせるように構成された発信機であって、
前記外面カバーは、外面に被着された弾性を有する表皮を備え、内側に開口が形成され、
前記表皮には前記ロッド部の断面よりも大きく前記保護板の押圧部の径よりも小さな開口が形成され、前記ロッド部が前記表皮の前記開口に挿通され前記保護板が前記外面カバーの最外部よりも内方に位置するように配設されることで前記表皮に張力が付与されていることを特徴とする発信機。
【請求項2】
前記ロッド部の内端に形成された段差部と干渉することで、前記保護板の外方位置を規制する位置規制手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の発信機。
【請求項3】
前記外面カバーの内方に配設された光源が配設され、
前記外面カバーは、開口を有し前記光源から放出された光を誘導する導光板と、前記開口に対応する部位に開口を有し前記導光板の外面側に接合されたカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、透光材により形成された保形部材を有しその外面に前記表皮が被着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発信機。
【請求項4】
前記導光板は、内方に向かって径が小さくなり内側に開口を有するすり鉢状部と、該すり鉢状部の外端から外側方へ向かって広がる平坦部と、を有し、
前記光源は、前記すり鉢状部の内端部に設けられた光入射面に対向するように配設され、前記光源から放出された光は前記光入射面より入射して前記すり鉢状部を通って前記平坦部へ誘導され、該平坦部にて外方側へ放出されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の発信機。
【請求項5】
前記導光板の周縁に庇部が設けられ、前記カバー部材は周縁部が前記庇部を覆うように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の発信機。
【請求項6】
前記表皮は周縁部に沿って環状をなす固定部が設けられ、前記固定部内にはリング状弾性体が設置され、
前記表皮はその周縁部が前記庇部を覆いさらに前記導光板の背面側に回り込むように配設されて、前記リング状弾性体の弾性力により前記表皮の周縁部を中心側へ絞り込むことで前記表皮に張力を付与するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の発信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁部等に設置され緊急事態の発生時に操作されることで警報を発する警報器の発信機および起動装置(以下、発信機と呼ぶ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内部には、火災など緊急事態の発生を知らせるため、押しボタンスイッチを備えた手動の発信機が壁面に適切な高さで設置されている。緊急事態の発生時には、発見者が発信機の押しボタンを強く押して内部のスイッチをオンさせることにより、緊急事態の発生を知らせる信号が受信機等へ伝送されるとともに、発信機の近傍に設けられるベルから警報音が発せられて、周囲の人に対し緊急事態の発生を知らせることができるようになっている。
【0003】
なお、発信機に関しては、火災発見等の非常時に、発見者が発信機の押しボタン(保護板)を強く押しその押力によって保護板を粉砕し、内部のスイッチをオンさせることにより火災信号を発する構成のものが過去においては一般的であった。しかし、押しボタンの保護板は使用の度に粉砕され再使用ができないため、操作されるたびに新品に交換することが必要であった。更に、メンテナンス上、管理者は予備の保護板を在庫として用意しておく必要があり、在庫管理が面倒であった。
【0004】
そこで、粉砕されない保護板構造、すなわち押された保護板は粉砕せずに奥にとどまり、リセット操作または押力を緩めることで定位置に戻る構造を有する発信機が普及し、保護板の交換や予備の保護板を在庫として用意しておく手間が不要になった。かかる構造の発信機は、保護板が発信機表面構造体の内側に位置しており、発信機表面構造体に設けられている開口部よりのぞき見ることができ、抗力の生成と元の位置への復帰機能を有する様、本体構造体を基部として圧縮バネによって押しボタン(保護板)を外方へ付勢する構造を有していた。
また、このような構成を有する発信機には、火災関連設備(発信機を含む)があることを知らせるための表示灯が一体に設けられているものもある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-120516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている表示灯付発信機は、発信機の周囲に円弧状の発光部を配設して、発光部が発光することで発信機があることを知らせる位置表示灯として機能するように構成されており、発信機と周囲の発光部の外面は平坦に形成されている。そのため、真横からの視認性が良好でない。また、表示部と保護板の外面が同一平面上に位置しているため、押圧する箇所が視覚的に分かりにくいという課題がある。
また、特許文献1の発信機は、保護板を押し込む際に抗力を付与するとともに保護板を元の位置に復帰させるためのバネを、発信機本体ケースに内蔵した構成であるため構造が複雑となり、大型化やコストアップにつながるという課題がある。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、バネを内蔵することなく保護板を押し込む際に抗力を付与するとともに保護板を元の位置に復帰させることができ、それによって構造を簡単にし、大型化やコストアップを回避することができる発信機を提供することにある。
本発明の他の目的は、真横からの視認性が良好であるとともに押圧する箇所が視覚的に分かり易い表示灯付発信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、
外方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体部と、前記本体部の外方に配置された外面カバーと、前記押しボタンスイッチの外方に位置するように配置され背面にロッド部を有する保護板と、を備え、前記保護板が押し込まれることで前記ロッド部が前記押しボタンスイッチをオンさせるように構成された発信機において、
前記外面カバーは、外面に被着された弾性を有する表皮を備え、内側に開口が形成され、
前記表皮には前記ロッド部の断面よりも大きく前記保護板の押圧部の径よりも小さな開口が形成され、前記ロッド部が前記表皮の前記開口に挿通され前記保護板が前記外面カバーの最外部よりも内方に位置するように配設されることで前記表皮に張力が付与されているように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有する発信機によれば、張力が付与された表皮の開口に保護板のロッド部が挿通され保護板の鍔部が表皮に接した構造となるため、バネを内蔵することなく保護板を押し込む際に抗力を付与するとともに保護板を元の位置に復帰させることができ、それによって発信機の構造を簡単にし、大型化やコストアップを回避することができる。また、保護板がカバー部材の最外部よりも内方に位置するため、外面カバーの内側に位置する保護板の部位が凹んだ状態となるので、押圧すべき箇所が視覚的に認識し易くなる。
さらに、外面カバーの表面が弾性を有する表皮で被覆されているため意匠性が向上するとともに、表皮の縁部を保護板の鍔部で容易に押さえ込むことができ、表皮を押さえ込む複雑な構造を設ける必要がないので、製造コストを抑えることができる。また、保護板と表皮とが隙間なく接するため、埃や異物の侵入も抑制することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記ロッド部の内端に形成された段差部と干渉することで、前記保護板の外方位置を規制する位置規制手段を備えているように構成する。
かかる構成によれば、位置規制手段によって保護板(押しボタン)が表皮の張力で外方へ押されて抜け落ちるのを容易に防止することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記外面カバーの内方に配設された光源が配設され、
前記外面カバーは、開口を有し前記光源から放出された光を誘導する導光板と、前記開口に対応する部位に開口を有し前記導光板の外面側に接合されたカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、透光材により形成された保形部材を有しその外面に前記表皮が被着されているようにする。
かかる構成によれば、外面カバーを表示灯として機能させることができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記導光板は、内方に向かって径が小さくなり内側に開口を有するすり鉢状部と、該すり鉢状部の外端から外側方へ向かって広がる平坦部と、を有し、
前記光源は、前記すり鉢状部の内端部に設けられた光入射面に対向するように配設され、前記光源から放出された光は前記光入射面より入射して前記すり鉢状部を通って前記平坦部へ誘導され、該平坦部にて外方側へ放出されるように構成する。
かかる構成によれば、外面カバー全体から光を放出させることができるため、表示灯の視認性を良好にすることができるとともに、表皮を通して光を放出するため、ぼんやりとした柔らかな質感を与えることができ、意匠性を向上させることができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記導光板の周縁に庇部が設けられ、前記カバー部材は周縁部が前記庇部を覆うように形成されているようにする。
かかる構成によれば、導光板の周縁に設けた庇部からも光が放出されるため、側方からも見え易くなり表示灯の視認性を極めて良好にすることができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記表皮は周縁部に沿って環状をなす固定部が設けられ、前記固定部内にはリング状弾性体が収納され、
前記表皮はその周縁部が前記庇部を覆いさらに前記導光板の背面側に回り込むように配設されて、前記リング状弾性体の弾性力により前記表皮の周縁部を中心側へ絞り込むことで前記表皮に張力を付与するように構成する。
かかる構成によれば、表皮が緩むのを防止して表皮の張りを一定に維持できるので、伸縮性のある表皮材料を採用しても発信機の形状を安定して保つことができる。また、カバー部材を導光板の外面に容易に装着することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る発信機によれば、バネを内蔵することなく保護板を押し込む際に抗力を付与するとともに保護板を元の位置に復帰させることができ、それによって構造を簡単にし、大型化やコストアップを回避することができる。また、真横からの視認性が良好であるとともに押圧する箇所が視覚的に分かり易くすることができる。さらに、外面カバー表面の弾性を有する表皮の縁部を容易に押さえ込むことができるため、製造コストを抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の表示灯付発信機を外方側から見た外観を示す斜視図である。
図2図1の表示灯付発信機の内部構造を示す断面側面図である。
図3図2の内部構造の一部を拡大して示す要部拡大断面図である。
図4図1の表示灯付発信機を構成する発光部のカバー部材の表皮の固定方法を示す内面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明が適用される発信機は、内側に押しボタンを有する外面カバー部と、外面カバー部の内方に設けられ押しボタンの押込み操作によってオン状態にされる押しボタンスイッチおよび該スイッチのオンによって信号を生成し外部へ送出する回路基板を内蔵した発信機本体部とから構成される。
以下、図面を参照しながら、本発明を適用した表示灯付発信機の実施形態について説明する。
【0018】
図1および図2は本発明を適用した表示灯付発信機の一実施形態を示す。このうち、図1は発信機の全体斜視図、図2図1に示す発信機の内部構造を示す断面側面図である。
本実施形態の発信機は、図1に示すように、押しボタンスイッチを内蔵した箱状の収納ケース12を備えた発信機本体部10と、外面中央の内方に位置する押しボタンスイッチを保護する押しボタン21を備えその周囲に発光部22を有し発信機本体部10の前部に結合された円盤状の発信機カバー20とから構成されている。
【0019】
図2に示すように、押しボタン(外保護板)21はその背面中央に、内方へ向かって突出する棒状の押圧ロッド部21aが設けられており、発信機本体部10の収納ケース12内には上記押圧ロッド部21aの後端面に対向するように、円板状をなし背面中央に内方へ向かって突出する棒状部材13aを有する内保護板13が配設されている。
また、収納ケース12内には、上記内保護板13の棒状部材13aの後端に対向する位置に押しボタンスイッチ11を実装した回路基板14が配設されている。図示しないが、この回路基板14には、上記押しボタンスイッチ11のオンによって信号を生成し外部へ送出する回路が設けられている。
【0020】
さらに、回路基板14の背面には、信号を火災受信機へ伝送する外部の配線の端部が接続される端子を備えた端子台15が設けられている。
また、収納ケース12には、内保護板13の外周壁を案内する外側ガイド部16aと内保護板13の棒状部材13aと嵌合してこれを案内する内側ガイド部16bとを有するガイド部材16が、収納ケース12と一体に形成されている。収納ケース12の後端には、埃や遺物の侵入を防止するための防塵カバー17が被着されている。一方、収納ケース12の前端側には、フランジ状のプレート部12aが設けられており、プレート部12aの外面側には複数の係合爪12bが設けられている。
【0021】
発信機カバー20は、図2に示すように、押しボタンスイッチ11を内蔵した収納ケース12の外面側開口を覆うように結合された円板状の本体プレート22Aと、該本体プレート22Aの外面に接合された導光板22Bと、導光板22Bの外面に接合されたカバー部材22Cとを備える。そして、この発信機カバー20の中央に、押しボタンスイッチ11を保護する外保護板としての押しボタン21が配設されている。
【0022】
また、発信機カバー20の本体プレート22Aは、中央に円板状の内側平坦部22a、その周囲にすり鉢状部22b、さらにその周囲に円環状をなす外側平坦部22cを有し、外側平坦部22cの周縁には内方へ向かって折曲された短円筒状をなす庇部22dが形成されている。また、本体プレート22Aの中央の背面には、内方へ向かって突出する円筒部22eが設けられ、この円筒部22eに、上記押しボタン21の背面に内方へ向かって突出するように形成されたロッド部21aが挿通されている。
【0023】
さらに、円筒部22eの内周面には、図3に拡大して示すように、一対の係止爪22fが形成されているとともに、ロッド部21aの外周には上記係止爪22fが軸方向移動可能に係合される一対の溝21bが形成されている。この溝21bの後端部は閉塞されて段差を有しており、押しボタン21が外方へ移動した際に、この段差が係止爪22fに当接することで、それ以上の外方への移動が阻止される。つまり、押しボタン21が外方へ抜けるのを規制する位置規制手段として機能する。
また、本体プレート22Aの外面側の中央には、押しボタン21のロッド部21aを囲繞するように、円筒形をなす壁体部22gが設けられており、この壁体部22gは押しボタン21を押し込んだ際のストッパとして機能する。
【0024】
なお、発信機カバー20の本体プレート22Aは、その背面に設けられた係合爪22hが、前記収納ケース12のプレート部12aの係合爪12bに係合することで、収納ケース12の前端に結合されている。本体プレート22Aは、係合爪22hと係合爪12bとが互いに円周方向にずれている状態で、先ず収納ケース12の前端に接触され、それから少し回転されることで、係合爪22hが係合爪12bに噛み合うように構成されている。これにより、発信機本体部10の外面側に発信機カバー20を装着することができる。ただし、本体プレート22Aと収納ケース12は、プレート部12aにてビスによって結合するように構成しても良い。
【0025】
一方、上記導光板22Bは、その中央に、押しボタン21のロッド部21aが挿通される円形の開口22iが形成されている。また、導光板22Bは、本体プレート22Aの形状に対応して、中央にすり鉢状部、その周囲に円環状をなす平坦部を有し、平坦部の周縁には内方へ向かって折曲された短円筒状をなす庇部22jが形成されている。
また、本実施形態の発信機においては、発信機カバー20の本体プレート22Aの内側平坦部22aの外面に、光源として機能する複数の発光素子(LED:発光ダイオード)23が出射部を外方に向けた状態で実装された回路基板24が配設されている。
一方、導光板22Bは、中央の開口22iの縁部の後端に光入射面が形成され、この光入射面に、上記発光素子23の出射部が対向するように配設されている。なお、上記複数の発光素子23は、開口22iの縁部の光入射面に対応して環状に配設されている。
【0026】
押しボタン21のロッド部21aは、本体プレート22Aの円筒部22eの内周面に沿って前後に移動可能であり、押しボタン21の外面の押圧部が指で押されると、押圧ロッド部21aが内方へ移動して後端面が収納ケース12内の内保護板13を内方へ移動させ、内保護板13の棒状部材13aの後端が押しボタンスイッチ11のアクチュエータに当たってスイッチをオンさせる。
なお、特に限定されるものでないが、押しボタン21は透光性を有する材料で形成されており、上記発光素子23から出射された光の一部が押しボタン21の背部より入射し外面より出射することにより、押しボタン21の表面が発光するように構成されている。
【0027】
さらに、本実施形態の発信機においては、導光板22B全体がアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂のような光透過性を有する導光材により形成されている。ここで、導光材とは、内部に光反射粒子が混入もしくは裏面に微細な溝が形成されることで、入射された光が表面と裏面で反射を繰り返して進み、途中で一部の光が光反射粒子または微細な溝に当たって方向を変えて表面側から放出されることで、全体が明るく発光する構造を有する。また、発光素子23から出射された光の一部が導光板22Bを通って押しボタン21の背部より入射し外面より出射して押しボタン21の表面が発光するように構成しても良い。
【0028】
一方、発信機カバー20のカバー部材22Cは、シリコーン樹脂等の透光性を有し形状を保持可能な軟質材料で形成され、この保形部材の表面が例えばメタ系アミド繊維のような柔軟性および耐熱性があり弾性を有する素材からなるファブリック(布)等で形成された表皮22kで被覆されている。そして、カバー部材22Cは、導光板22Bの外縁部の庇部22jを側部から背部まで覆うように形成されている。
これにより、カバー部材22Cに外部から衝撃が加わったとしても保形部材が変形して衝撃を吸収し、表面の損傷を防止できるとともに、庇部22jからの光の放出で発信機側方からの視認性を高めることができる。また、保形部材の表面がファブリックからなる表皮22kで覆われているため、導光板22Bにより導かれて来た光を拡散または透過させて外方へ放出することで、ぼんやりとした柔らかな質感を与えることができる。なお、カバー部材22Cの表皮22kには、伸縮可能な性質を呈することができるような編み方で編み込まれたものが使用されている。
【0029】
また、カバー部材22Cの保形部材の内縁は押しボタン21の外周近傍で止まっているが、表皮22kはさらに内側まで延びるように形成されている。そして、表皮22kの中央には、押しボタン21の押圧ロッド部21aの外径と同一の大きさの開口が形成され、この開口に押圧ロッド部21aが挿通されている。これにより、押しボタン21の鍔部の裏面で表皮22kの中央を収納ケース12側へ押さえ込む構成となる。このとき、表皮22kが内側へ引っ張られて伸びた状態となり、その張力が押しボタン21を外方へ押す力として作用する。その結果、押しボタン21を外方へ付勢するバネを収納ケース12内に設けなくても、押しボタン21を押し込む際の抗力および押しボタン21をもとに戻す力を付与することができる。
【0030】
さらに、発信機カバー20は、図2に示すように、押しボタン21の裏面で表皮22kの中央を押さえ込んだ状態で、カバー部材22Cの中央部が収納ケース12側へ凹んだ形状となり、押しボタン21の外面がカバー部材22Cの外面の最も膨らんでいる部位よりも内方に位置するため、搬送物が発信機に当たって誤って押しボタン21が押されてスイッチがオンされ、誤信号が受信機へ送信されるのを回避することができる。
なお、押しボタン21から押力が解除されて表皮22kがその緊張力で定位置まで戻ると、収納ケース12内の押しボタンスイッチ11がオフされるが、火災警報発生の状態は、回路基板14に設けられている電気回路にて自己保持されるように構成されている。そのため、押しボタンスイッチ11がオフしても火災警報状態が維持される。また、回路基板14上の電気回路による状態保持は、受信機からの復旧パルスによって解除される。
【0031】
次に、カバー部材22Cを構成するファブリックからなる表皮22kの外縁部の止着の仕方について、図3および図4を用いて説明する。
表皮22kの周縁部は、図3に示すように、袋状に縫製され、この袋状縫製部内には、円形をなすゴム紐または図4に示すようなリングバネからなるリング状弾性体25が収納されている。リング状弾性体25の自然状態での径は、導光板22Bの径よりも充分に小さくなるように設定されている。
【0032】
また、表皮22kは、図3に示すように、その周縁部が導光板22Bの外縁部の庇部22jの側部を覆い背部まで折り返されている。そして、このとき、リング状弾性体25は引き伸ばされた状態にあるため、リング状弾性体25の縮まろうとする力によって表皮22kの周縁部は中央側へ絞り込まれ、表皮22kに張力が付与される。その結果、表皮22kにより、カバー部材22Cの保形部材および導光板22Bを本体プレート22Aの外面に固定することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の表示灯付発信機は、発光素子23から放出された光が、導光板22Bの中央開口部近傍の光入射面から入射してすり鉢状部22bを進み、カバーの外面に到達すると外側へ反射され、発信機カバー20の外面全体が明るく発光する。また、導光板22Bのすり鉢状部22bを進んだ光の一部は中央側へ放出されて、押しボタン21の鍔部から内部に入射し、外面より放出される。
【0034】
その結果、カバー部材22Cの外面全体および押しボタン21の外面全体が発光することとなる。従って、外面カバーの径を大きくしなくても外面側からの視認性が良好となる。また、発信機カバー20の導光板22Bに入射した光は、外周部に設けられた庇部の表面すなわち発信機カバー20の外周面からも放出される。そのため、発信機側方からの視認性も良好である。
さらに、本実施形態の表示灯付発信機は、カバー部材22Cの外面が平坦に近い湾曲形状であるため、従来の砲弾型の表示灯に比べて外方への突出量がなく、備品を搬送する際に移動の障害となることがないという利点がある。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、発信機カバー20のカバー部材22Cの表皮22kが内側へ引っ張られて伸びた状態となり、その張力が押しボタン21を外方へ押す力として作用するようにしているが、弾力性を有する素材でカバー部材22Cの保形部材を形成して、押しボタン21で表皮22kの中央を内方へ押さえ込むと保形部材が変形し、その弾性復元力で押しボタン21を元に戻す力を付与するように構成しても良い。
【0036】
また、前記実施形態では、カバー部材22Cの表皮22kの周縁に袋状縫製部を設け、その中にリング状弾性体を収納してその弾性力で袋状縫製部を内側へ絞り込むことで、カバー部材22Cを本体プレート22Aおよび導光板22Bに装着する構成を示したが、カバー部材22Cを本体プレート22Aに熱圧着して固定したり、ファブリックを引っ掛けるフックを本体プレート22Aに設けたりしても良い。また、袋状縫製部内に、リングバネの代わりに紐を通して絞り込んだり、ホッチキスや釘、ネジでファブリックの縁部を本体プレート22Aに固定、あるいは両面テープのような粘着テープまたは接着剤で本体プレート22Aに固定したりしても良い。
【0037】
また、前記実施形態では、発信機カバー20を円形としているが、楕円形あるいは多角形であっても良い。
さらに、前記実施形態では、主として火災報知システムを構成する火災発信機を想定してそれに本発明を適用したものを説明したが、本発明は火災発信機に限定されず、駅のプラットホームや踏切に設置される列車緊急報知用の発信機、トイレや浴室など設置される緊急呼出し用の発信機に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 発信機本体部
11 押しボタンスイッチ
12 収納ケース
12a フランジ状のプレート部
12b 係合爪
13 内保護板
14 回路基板
15 端子台
16 ガイド部材
20 発信機カバー(外面カバー)
21 押しボタン(外保護板)
21a ロッド部
21b 溝
22 発光部
22A 本体プレート
22B 導光板
22C カバー部材
22a 本体プレートの内側平坦部
22b 本体プレートのすり鉢状部
22c 本体プレートの外側平坦部
22d 本体プレートの庇部
22e 本体プレートの円筒部
22f 係止爪
22h 係合爪
22i 開口
22j 庇部
22k 表皮
23 発光素子(LED)
24 回路基板
25 リング状弾性体(リングバネ)
図1
図2
図3
図4