IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ハウストンの特許一覧

<>
  • 特開-冷暖房装置、冷房装置及び暖房装置 図1
  • 特開-冷暖房装置、冷房装置及び暖房装置 図2
  • 特開-冷暖房装置、冷房装置及び暖房装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121079
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】冷暖房装置、冷房装置及び暖房装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20240830BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240830BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20240830BHJP
   F24D 5/02 20060101ALI20240830BHJP
   F24D 5/00 20220101ALI20240830BHJP
【FI】
F24F5/00 101B
F24F13/02 H
F24F13/06 A
F24F13/06 E
F24D5/02 Z
F24D5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027974
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】520160417
【氏名又は名称】株式会社ハウストン
(74)【代理人】
【識別番号】100116573
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 幸司
(72)【発明者】
【氏名】佐々島 宏
(72)【発明者】
【氏名】石蔵 義浩
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 清隆
【テーマコード(参考)】
3L071
3L080
【Fターム(参考)】
3L071AA01
3L071AA04
3L071AB06
3L071AD05
3L080AE01
3L080BA02
3L080BE01
3L080BE03
(57)【要約】
【課題】 建築物とは独立して設置箇所に自由度があって、気流分布に必要な小型ファン等を必要とせずに装置構造をシンプルなものとし、清掃の手間を不要とし、単体の装置として成立する放射冷暖房による冷暖房装置等を提供する。
【解決手段】 放射冷暖房による冷暖房装置1は、装置本体3と、装置本体3の外部の温度に比べて低い温度の冷風及び高い温度の温風のいずれかを装置本体3に供給する供給源5とを備える。装置本体3は、供給源5から供給される冷風又は温風を蓄えて装置本体3の外部との間で放射熱のやり取りが可能な袋体7を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射冷暖房による冷暖房装置であって、
装置本体と、
前記装置本体の外部の温度に比べて低い温度の冷風及び高い温度の温風のいずれかを前記装置本体に供給する供給源とを備え、
前記装置本体は、
前記供給源から供給される冷風又は温風を蓄えて前記装置本体の外部との間で放射熱のやり取りが可能な袋体を有する、冷暖房装置。
【請求項2】
前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされる部分には穴が形成されており、前記供給源から供給される冷風又は温風を外部に噴き出すことが可能である、請求項1記載の冷暖房装置。
【請求項3】
前記装置本体は、
さらに、前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされない部分に貼られる遮熱材を有し、
前記袋体は前記遮熱材が貼られていない部分によって外部との間での放射熱のやり取りを行う、請求項1又は2記載の冷暖房装置。
【請求項4】
放射冷房による冷房装置であって、
装置本体と、
前記装置本体の外部の温度に比べて低い温度の冷風を前記装置本体に供給する供給源とを備え、
前記装置本体は、
前記供給源から供給される冷風を蓄えて外部との間で放射熱のやり取りが可能な袋体を有する、冷房装置。
【請求項5】
前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされる部分には穴が形成されており、前記供給源から供給される冷風を外部に噴き出すことが可能である、請求項4記載の冷房装置。
【請求項6】
前記装置本体は、
さらに、前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされない部分に貼られる遮熱材を有し、
前記袋体は前記遮熱材が貼られていない部分によって外部との間での放射熱のやり取りを行う、請求項4又は5記載の冷房装置。
【請求項7】
放射暖房による暖房装置であって、
装置本体と、
前記装置本体の外部の温度に比べて高い温度の温風を前記装置本体に供給する供給源とを備え、
前記装置本体は、
前記供給源から供給される温風を蓄えて外部との間で放射熱のやり取りが可能な袋体を有する、暖房装置。
【請求項8】
前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされる部分には穴が形成されており、前記供給源から供給される温風を外部に噴き出すことが可能である、請求項7記載の暖房装置。
【請求項9】
前記装置本体は、
さらに、前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされない部分に貼られる遮熱材を有し、
前記袋体は前記遮熱材が貼られていない部分によって外部との間での放射熱のやり取りを行う、請求項7又は8記載の暖房装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷暖房装置、冷房装置及び暖房装置に関し、特に、放射冷暖房による冷暖房装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の冷暖房空調技術は、多くが、冷風及び/又は暖風を運んで対流熱の熱移動を利用する。所謂エアーコンディショナー(エアコン)を用いた技術である。しかしながら、冷風及び/又は暖風を運んで対流熱の熱移動を利用する技術では、周りの空気を混合して空気調和をしているにすぎず、空気の風圧で人に当ててしまうと、人はとても疲れてしまうという問題がある。
【0003】
近年、これに対して、冷暖房に放射熱(輻射熱)を用いた技術も研究されてきている(非特許文献1参照)。ここで提案されているのは、放射熱(輻射熱)を用いて実現されているものは天井放射空調という形である。天井放射空調では、天井という建築物の構造を利用しており、天井裏チャンバを冷気又は暖気の供給源とする。
【0004】
なお、床吹き出し空調や空気式床暖房というものもあり、その場合には床下チャンバを冷気又は暖気の供給源としている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本建築学会環境系論文集 第618号,45-52,2007年8月,開放空間における採冷手法の可能性に関する実験研究,岩松俊哉,星野佳子,片岡えり,宿谷昌則著
【非特許文献2】日本建築学会環境系論文集 第84巻,第764号,947-952,2019年10月,実戸建住宅を対象とした温熱シミュレーションと実測結果との比較,井口雅登,蜂巣浩生,坂本雄三著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、天井放射空調では、建築物の構造を利用することが前提であり、設置に大きな制約があり、どこにでも設置できるというものでもなく、また設置箇所を変更できるというものではないという問題がある。なお、同様に、床下エアコンや階間エアコンでも、放射放熱(受熱)面としての床や天井、気流供給装置としての床吹き出し口、温風(冷風)の供給スペースとして床下チャンバや階間といった建築部材と一体化させたシステム構築を必要とする。
【0007】
また、天井放射空調は天井裏チャンバを冷気又は暖気の供給源としており、天井裏空間には高さ方向にも水平方向にも温度と気流のムラが生じるという問題がある。そのことから、そのムラの最小化のために小型ファンの設置が行われる。しかも、チャンバ内の気流分布を均一化するための計画時の詳細検討が必要であり、小型ファンは、通常、複数台が必要とされる。なお、床下エアコンや階間エアコンでも、同様の問題がある。
【0008】
さらに、天井放射空調では、天井裏空間、天井裏の気温・気流分布均一化のための複数台の小型ファンに加え、他にも、有孔金属放射空調パネル、天井吊り鉛直材などの複数の構成要素からなるシステムであり、建築物の構造を利用することが前提である上に、装置構造が複雑という問題もある。なお、床下エアコンや階間エアコンでも、同様の問題がある。
【0009】
加えて、天井放射空調では、天井裏のチャンバが空調空気の供給源なので内部の清掃を必要とする問題がある。なお、床下エアコンや階間エアコンでも、同様の問題がある。
【0010】
ゆえに、本発明は、建築物とは独立して設置箇所に自由度があって、気流分布に必要な小型ファン等を必要とせずに装置構造をシンプルなものとし、清掃の手間を不要とし、単体の装置として成立する放射冷暖房による冷暖房装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、放射冷暖房による冷暖房装置であって、装置本体と、前記装置本体の外部の温度に比べて低い温度の冷風及び高い温度の温風のいずれかを前記装置本体に供給する供給源とを備え、前記装置本体は、前記供給源から供給される冷風又は温風を蓄えて前記装置本体の外部との間で放射熱のやり取りが可能な袋体を有する、ものである。
【0012】
本発明の第2の観点では、第1の観点において、前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされる部分には穴が形成されており、前記供給源から供給される冷風又は温風を外部に噴き出すことが可能である。
【0013】
本発明の第3の観点では、第1又は第2の観点において、前記装置本体は、さらに、前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされない部分に貼られる遮熱材を有し、前記袋体は前記遮熱材が貼られていない部分によって外部との間での放射熱のやり取りを行う。
【0014】
本発明の第4の観点は、放射冷房による冷房装置であって、装置本体と、前記装置本体の外部の温度に比べて低い温度の冷風を前記装置本体に供給する供給源とを備え、前記装置本体は、前記供給源から供給される冷風を蓄えて外部との間で放射熱のやり取りが可能な袋体を有する、ものである。
【0015】
本発明の第5の観点では、第4の観点において、前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされる部分には穴が形成されており、前記供給源から供給される冷風を外部に噴き出すことが可能である。
【0016】
本発明の第6の観点では、第4又は第5の観点において、前記装置本体は、さらに、前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされない部分に貼られる遮熱材を有し、前記袋体は前記遮熱材が貼られていない部分によって外部との間での放射熱のやり取りを行う。
【0017】
本発明の第7の観点は、放射暖房による暖房装置であって、装置本体と、前記装置本体の外部の温度に比べて高い温度の温風を前記装置本体に供給する供給源とを備え、前記装置本体は、前記供給源から供給される温風を蓄えて外部との間で放射熱のやり取りが可能な袋体を有する、ものである。
【0018】
本発明の第8の観点では、第7の観点において、前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされる部分には穴が形成されており、前記供給源から供給される温風を外部に噴き出すことが可能である。
【0019】
本発明の第9の観点では、第7又は第8の観点において、前記装置本体は、さらに、前記袋体における前記外部との間での放射熱がやり取りされない部分に貼られる遮熱材を有し、前記袋体は前記遮熱材が貼られていない部分によって外部との間での放射熱のやり取りを行う。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、まず、気温と湿度に編重している空気調和を目的にした対流熱の熱移動による冷暖房で生じる問題を起こさない体感(温度、湿度、輻射、気流)を重視した放射熱(輻射熱)を利用している。同じく放射熱を利用するにしても、従来と異なり、建築の構造を利用することが前提ではなく、天井裏空間や床下の高さ方向と水平方向の温度と気流のムラを減らすために使用される小型ファンも使用する必要がなく、袋体の表面を通じて、放射授受熱面としての均一性と、暖気・冷気の供給源としての給気温度の均一性とを容易に実現することができる。その結果、建築物とは独立したものとできるとともに体感を重視して人に対して設置するサイズのような小型の完結した1つの装置とでき、設置場所の制限なく自由な設置が行えるとともに設置箇所の変更も容易に行えることになる。そして、このような点は、施工性にも影響してくる。すなわち、床暖房パネルや放射空調用の天井パネルと異なり、袋体を数か所固定した後に、供給源による送風で膨らませるだけで、設置作業が済む。そのため、工期が他の放射パネルなどと比べて著しく短く、人工(にんく)も少量で済む。天井放射空調では有孔金属天井を吊るという設置作業と天井裏チャンバ内の清掃が必要であり、床吹き出し空調では床下チャンバ内の清掃が必要であるが、本願発明では、チャンバ内の清掃が不要であり、工期短縮に効果がある。
【0021】
さらに、穴を通じて外部に冷風又は温風噴出させれば、袋体からの放射熱伝達作用だけでなく、気流で増強された対流熱伝達作用も冷暖房に寄与する気流効果を加えることができることで、より体感を快適なものとできる。
【0022】
さらに、遮熱材を使えば、袋体の放射熱が外部とやり取りする領域を絞ることができるため、対面する人などに対して放射熱効果を大きなものとできる。
【0023】
さらに、従来の天井放射空調は天井裏チャンバ内での結露を予防するために天井裏空間に除湿も兼ねた空調を行い、それとともに居室用の空調も行うため2つの空調機を必要とするが、本発明では、空調機で除湿された空気で袋体を膨らませれば、蓄冷するような部位がないことから、結露が袋体内で生じることはないため、建物部材での結露・カビの発生には至らない。その結果、空調機はエアマット用のような袋体の1つで済むという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態にかかる冷暖房装置を示した図である。
図2図1のIIの方向から見た図である。
図3図1の冷暖房装置の他の使い方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について述べる。なお、本発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
図1は本発明の実施の形態にかかる冷暖房装置を示した図である。図2図1のIIの方向から見た図である。
【0027】
図1及び図2を参照して、冷暖房装置1は、装置本体3と、装置本体3の外部の温度に比べて低い温度の冷風及び高い温度の温風のいずれかを装置本体3に供給する供給源5とを備える。
【0028】
装置本体3は、特殊な生地のエアマット構造のエアバッグである袋体7と、遮熱材の一例としての遮熱シート9とを備える。袋体7は、供給源5から供給される冷風又は温風を蓄えて装置本体3の外部との間で放射熱のやり取りを可能とする。ここで外部は、室内に限らず、屋外であってもよい。袋体7の形は限定されないが、ここでは直方体形状をしている。
【0029】
袋体7における外部との間での放射熱がやり取りされる部分には穴8が形成されており、供給源5から供給される冷風又は温風を外部に噴き出すことが可能である、具体的には、図1及び図2では、主に人10に対向する面となる前面7aには微小な複数の穴8がランダムに形成されている。ここでは、人10と冷暖房装置1のサイズ感は図では冷暖房装置1を誇張して大きくしているが、基本的には冷暖房装置1のサイズは人よりも小さいものが通常とする。例えば、厨房での利用であれば、サイズは縦20cm横2mとし、首筋の高さにセットすることを想定してる。なお、穴8が形成されるのは前面7aの全面である必要はなく一部でもよく、また前面7aに限定される必要もなく、前面7aに形成されずに他の部分に形成されてもよい。
【0030】
直方体の袋体7の裏面7bと上面7cと下面7dには遮熱シート9が貼られており、この場合には裏面7bと上面7cと下面7dには穴8は形成されなくてよい。遮熱シート9は袋体7における外部との間での放射熱がやり取りされない部分に貼られるため、袋体7は遮熱シート9が貼られていない部分によって外部との間での放射熱のやり取りを行うことになる。具体的には、ここでは、裏面7bと上面7cと下面7dに遮熱シート9が貼られるので、それ以外の部分で放射熱のやり取りが袋体7と外部との間で行われる。
【0031】
なお、ここでは遮熱材として遮熱シート9としたが、板状の遮熱板であってもよい。また、穴8と遮熱シート9との関係は、穴8が無い部分に全て遮熱シート9を貼る必要はない。遮熱シート9は上記したように人に対向する位置には貼られるべきであるが、図1及び図2に示すように袋体7の両側面7e、7fには遮熱シート9を貼っておらず、このようにしてもよい。もちろん、両側面7e、7fの両方又は一方に遮熱シート9を貼ってもよい。
【0032】
供給源5は、袋体7に冷風及び温風のいずれかを送り込む供給路11を備え、供給路11は風量を調整する絞り部13が設けられている。絞り部13は、ここでは、具体的には絞りロープとしている。
【0033】
以上のような構成とすることにより、前面7aの面温度は、冬場に温風を用いて22℃~30℃程度にでき、夏場に冷風を用いて16℃~20℃程度にできる。このような温度による放射熱(輻射熱)を利用することは、周りの空気を混合するだけの空気調和とは異なることになる。空気調和は、空気を運び冷やしたり暖めたりする(対流熱)ので、空気の風圧で、人10に当たった場合、とても疲労するが、放射熱(輻射熱)では、人10に近い部分の袋体7自体の温度を調整・制御し、表面温度をコントロールし、直接人体に届ける熱を流布する事で冷暖房を行うことになり、疲労を起こさなくて済むという効果がまずは得られる。
【0034】
加えて、空気調和とは異なる(対流熱での冷暖房とは違う)ので、サプライ温度(供給する空気の温度)が冷房時高く、暖房時低く、風量も少なくなるという大きな違いもあり、高温冷房・低温暖房は、著しく省エネになるという効果も得られる。さらに、大空間の全空気を空調で冷暖することではなく、人10の居る部分だけの輻射冷暖房をすることが可能になる。これまで、体感は、温度・湿度・輻射・気流であることは、原理的に周知されている事だが、気温と湿度に偏重した技術開発しか行われていなかった部分の修正した冷暖房装置になる。
【0035】
そして、遮熱シート9を裏面7b(人がいない方)に設置することで、前面7aの一方向面にのみに輻射熱の効果が集中するよう構成することにより、その効果を大きくできる。加えて、特に冷房時については、微細な穴8から微風で出すことで、気流効果も含め、体感温度をより下げることができる。
【0036】
以上のことから、大規模空間で寒い工場など、全体を空気調和(対流熱)で温めると、非常にエネルギーが必要となるが、人10がいる部分のみを本件設備では輻射熱で温めることが可能で、体感温度を上げる効果がある。夏は、表面温度を18℃程度にして、体温温度と微気流によりさらに、体感が涼しくなる。夏の暑いときは人が居る所の首筋近くに設置すると、効果がある。冬は足許から温めると効果がある。図1に矢印で示したように、袋体7自体を上下に動かせるようにしておけば、上記したように冬と夏とで最大の効果がある位置に設定することもできることになる。
【0037】
なお、上記では、冷暖房装置を示したが、冷房装置、暖房装置であってもよい。
【0038】
また、上記では、穴8を設けたが、設けないものであってもよい。穴8を設ける場合の数は利用状況に応じて適宜決定すればよく、穴8の数も踏まえながら状況に応じて送風量を設定すればよく、送風量を状況に応じて変更するようすると、より好ましい。
【0039】
さらに、冷暖房を感じる対象を人10としてるが、単数に限らず、複数の人の群でもよい。複数としては、例えば、人の並んだ列の他、パビリオンなどで集団になっている状況でもよい。さらに、対象は食品や乾燥させる木材等でもよい。さらに、例えば装置が動物園などで使われれば、動物が対象となる。さらに、対象は半導体でもよく、その発熱に対する冷却に使われてもよい。さらに、装置が、昆虫の安生、対象物の冷温熟成などに使われてもよい。すなわち、対象は問わない。
【0040】
その他にも、図3に示すように、冷蔵機17の前の床15の温度を上げるために、巾木として冷暖房装置1を配置してもよい。これにより、夏は外気を、冬が天井付近の空気を、微風で冷暖房装置1から吹き出し、輻射によって床15の床面を温めることができる。その際、冷やすときは気流を多く、温めるときは気流を少なくすると、効果的になる。
【0041】
本発明のポイントを整理しておくと、以下の通りとなる。類似品による補完が不可能な絶対的な長所と、類似品より勝っている相対的な長所との大きく2つに分けて記載する。
【0042】
1.絶対的な長所
1-1.建築との一体化(建築部材の使用)なしで単独で放熱(受熱)器・気流供給装置として機能可能
天井放射空調は天井裏空間、天井裏の気温・気流分布均一化のための小型ファン複数台、有孔金属放射空調パネル、天井吊り鉛直材などを複数の構成要素からなるシステムである。同様に、床下エアコンや階間エアコンでも、放射放熱(受熱)面としての床や天井、気流供給装置としての床吹き出し口、温風(冷風)の供給スペースとして床下チャンバや階間といった建築部材と一体化させたシステム構築を必要とする。これに対して、本装置は、それ単体で放熱(受熱)器、温風(冷風)供給スペース、気流供給装置の3者の役割を単独で担うことができる。そのため、シンプルな構成とできる。
【0043】
1-2.設置位置の非制限性と容易な変更
軽量のエアマット構造のため設置位置の変更が容易である。通常では天井付近の気温が高く、床付近の気温が低くなることを避けるために冷房時に壁上方に設置し、暖房時の足許の冷えを防ぐために壁下方に設置位置を変更することが、設置用の吊り下げフックなどを用意すればユーザーの手で容易に実現できる。天井裏や床下のチャンバ内に設置することも可能である。従来空調ではそれらのチャンバ内に気流・温度分布を均一化するファンなどを設置することになるが、エアマットを床下や天井裏に設置する場合、チャンバ内の束などの鉛直材をよける形でエアマットを設置することで、床・天井を放射と対流の熱授受面として機能させることができる。
【0044】
1-3.天井裏・床下チャンバ空調を付属機器(ファン等)・チャンバ内清掃なく実現
天井放射空調は天井裏チャンバ、床吹き出し空調や空気式床暖房は床下チャンバを冷気や暖気の供給源としているが、チャンバからの放射・対流の熱供給(熱除去)はチャンバ内の気流分布を均一化するために計画時の詳細検討や小型ファンの複数配置などの配慮を必要とする。また、天井裏や床下のチャンバが空調空気の供給源なので内部の清掃を必要とする。これに対して本装置1は、チャンバを空調空気の供給源として利用しないため、ファンだけでなくチャンバ内の清掃をも必要としない。
【0045】
1-4.温度・気流分布の小さい放熱(受熱)器・放熱(受熱)面の実現
天井放射空調は天井裏チャンバ、床吹き出し空調や空気式床暖房は床下チャンバを冷気や暖気の供給源としており、床下や天井裏空間には高さ方向にも水平方向にも温度と気流のムラが生じる。そのことから、そのムラの最小化のために小型ファンの設置が行われる。これに対して本装置1の場合、チャンバ内にマットを設置し膨らませることで、放射授受熱面としての均一性と、暖気・冷気の供給源としての給気温度の均一性を容易に実現することができる。
【0046】
2.相対的な長所
2-1.放射空調を1つの空調機で行える
オフィスなどの天井放射空調は天井裏チャンバ内での結露を予防するために天井裏空間に除湿も兼ねた空調を行い、それとともに居室用の空調も行うため2つの空調機を必要とする。これに対して、本装置の場合に空調機で除湿された空気でマットが膨らみ、蓄冷するような部位がないことから、結露がマット内で生じることはないため、建物部材での結露・カビの発生には至らない。その結果、空調機はエアマット用の1つで済む。
【0047】
2-2.対流熱伝達機能・総熱伝達量が大きい放射冷暖房パネルとしてのエアマット
放射冷暖房パネルは通常、その表面における対流熱授受は自然対流によって行われている。そのため放射パネルの対流熱伝達量を増加させたい場合、放射パネル近傍に小型ファンを設置し対流熱伝達量を増加させる試みがすでに手法として検討されている。これに対して、本装置1の場合、小型ファンを追加で設置することなく、エアマット上面に予め設けた細孔から微気流を吹き出すため、エアマット表面における放射熱伝達作用だけでなく、微気流で増強された対流熱伝達作用も冷暖房に寄与する。そのため、同じ形状・サイズの水式放射冷暖房パネルと比べて、装置の総熱伝達量を大きくすることが可能になり、冷暖房効果を高くできる。
【0048】
2-3.施工性
床暖房パネルや放射空調用の天井パネルと異なり、エアマットを数か所固定した後に、ファンによる送風で膨らませるだけで、設置作業が済む。そのため、工期が他の放射パネルなどと比べて著しく短く、人工(にんく)も少量で済む。天井放射空調では有孔金属天井を吊るという設置作業と天井裏チャンバ内の清掃が必要であり、床吹き出し空調では床下チャンバ内の清掃が必要であるが、本装置の場合、チャンバ内の清掃が不要な点も工期短縮に寄与する。
【符号の説明】
【0049】
1・・・冷暖房装置、3・・・装置本体、5・・・供給源、7・・・袋体、8・・・穴、9・・・遮熱シート

図1
図2
図3