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特開2024-121089カップリング構造、減速機、ギヤードモータ、および駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121089
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】カップリング構造、減速機、ギヤードモータ、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 1/033 20060101AFI20240830BHJP
   F16D 1/04 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F16D1/033 100
F16D1/04 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027987
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000237835
【氏名又は名称】富士変速機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西部 敬太
(57)【要約】
【課題】減速機および駆動モータの間の接続距離を短縮し、よりコンパクトな装置設計を可能とするカップリング構造を提供する。
【解決手段】カップリング構造100は、軸方向に延伸する回転可能な入力軸110であって、入力軸110は、減速機13のハウジング14の内部空間に配置され、内部空間で減速機13の減速機構17に接続される基端部位111と、内部空間から軸方向の入力側に突出する先端部位112とを有する、入力軸100と、入力軸110とともに回転するように入力軸100の先端部位112の周囲に固定され、軸方向の入力側を向くハブ面124を有するハブ120と、軸方向の入力側を向く第1端面132および軸方向の出力側を向く第2端面133を有し、第2端面133がハブ面124に固定され、少なくとも第1端面132に開口する接続孔134に駆動モータ11の出力シャフト12を挿入して、入力軸110の同軸上に出力シャフト12を接続するカップリング130と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータの出力シャフトを減速機の入力側に接続するためのカップリング構造であって、
軸方向に延伸する回転可能な入力軸であって、前記入力軸は、前記減速機のハウジングの内部空間に配置され、前記内部空間で前記減速機の減速機構に接続される基端部位と、前記内部空間から軸方向の入力側に突出する先端部位とを有する、入力軸と、
前記入力軸とともに回転するように前記入力軸の前記先端部位の周囲に固定され、軸方向の入力側を向くハブ面を有するハブと、
軸方向の入力側を向く第1端面および軸方向の出力側を向く第2端面を有し、前記第2端面が前記ハブ面に固定され、少なくとも前記第1端面に開口する接続孔に前記出力シャフトを挿入して、前記入力軸の同軸上に前記出力シャフトを接続するカップリングと、を備えることを特徴とするカップリング構造。
【請求項2】
前記接続孔は、前記カップリングの軸方向長さの略全体に亘って延在するとともに、前記出力シャフトの接続代のみを内挿可能な軸方向長さを有しており、前記カップリングの軸方向長さが、前記出力シャフトの突出長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載のカップリング構造。
【請求項3】
前記カップリングは、前記第1端面および前記第2端面を貫通する複数の貫通孔を有し、前記ハブ面には、前記複数の貫通孔に挿通された複数のボルトによって、前記カップリングを固定するための複数の固定孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のカップリング構造。
【請求項4】
前記ハブの前記ハブ面と、前記カップリングの前記第2端面とが、直接的に当接した状態で、またはワッシャを介した状態で固定されていることを特徴とする請求項3に記載のカップリング構造。
【請求項5】
前記入力軸の先端縁が、前記カップリングに干渉しない位置にあることを特徴とする請求項4に記載のカップリング構造。
【請求項6】
前記ハウジングには、前記入力軸の前記先端部位を内挿する前記ハブの外周面を、周方向に包囲する周壁部が設けられ、前記ハブの外周面と前記周壁部の内周面と間に介在する環状の軸受がさらに設けられていることを特徴とする請求項5に記載のカップリング構造。
【請求項7】
前記ハウジングの前記周壁部の周縁から入力側に延在するフランジが設けられ、前記カップリングは、前記フランジに包囲されるとともに前記フランジの入力側の端縁よりも軸方向の出力側に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載のカップリング構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のカップリング構造と、
前記カップリング構造の入力軸に出力側で接続された減速機構と、
前記減速機構に出力側で接続された出力軸と、を備えることを特徴とする減速機。
【請求項9】
出力シャフトを有する駆動モータと、
請求項1から7のいずれか一項に記載のカップリング構造、前記カップリング構造の入力軸に出力側で接続された減速機構、および、前記減速機構に出力側で接続された出力軸を備える減速機とを備え、
前記減速機の入力側が、前記カップリング構造を介して前記出力シャフトに接続されていることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項10】
出力シャフトを有する駆動モータと、
請求項1から7のいずれか一項に記載のカップリング構造、前記カップリング構造の入力軸に出力側で接続された減速機構、および、前記減速機構に出力側で接続された出力軸を備え、前記カップリング構造および前記出力シャフトが接続された、減速機と、
前記減速機の前記出力軸に接続された負荷と、を備え、
前記負荷は車輪であることを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップリング構造、減速機ギヤードモータ、および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、駆動モータの出力側を減速機の入力側に接続することは、駆動モータの出力シャフトと、減速機の入力軸とをカップリングによって同軸上に接続することによって行われる。
【0003】
例えば、特許文献1は、カップリングで駆動モータおよび減速機を接続したギヤードモータの一例を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。特許文献1のギヤードモータ(100)は、モータ軸(102)を有する駆動モータ(101)、および、モータ軸(102)の回転駆動力が入力され、回転駆動力を減速して低回転数且つ高トルクで車輪(17)に出力する減速機(110)を備える。減速機(110)は、基端から先端へと車軸方向に延在するハウジング(111)と、ハウジング(111)の基端で駆動モータ(101)のモータ軸(102)から回転駆動力が入力される入力部としてのカップリング(114)と、該カップリング(114)の後段に接続され、モータ軸(102)と同期回転する駆動軸(115)と、ハウジング(111)の先端から車軸方向に延伸し、車輪(17)が接続される出力軸(116)と、駆動軸(115)の回転を減速して出力軸(116)に伝達する減速機構(120)と、を備える。カップリング(114)は、その前段側で、ハウジング(111)の基端面から外部に臨んでおり、駆動モータ(101)のモータ軸(102)に対して、例えばキーおよびキー溝の関係で連結可能に構成されている。また、カップリング(114)は、その後段側で、モータ軸(102)と同期回転する減速機(110)の駆動軸(115)に接続されている。そして、モータ軸(102)および駆動軸(115)は、ハウジング(111)の横断面の中心を通る中心軸上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-50930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、特許文献1のような従来のカップリング構造を示す概略図である。図8に示すように、従来のカップリング構造1では、カップリング2は、前段側および後段側の両方に接続孔2a、2bを有しており、カップリング2の前段側の第1の接続孔2aに駆動モータ3の出力シャフト4が接続され、カップリング2の後段側の第2の接続孔2bに減速機5の入力軸6が接続されることによって、駆動モータ3と減速機5とが接続されてギヤードモータ7が構築される。このとき、減速機5の入力軸6の先端には、カップリング2の第2の接続孔2bに適合する接続代を設けることが必須となり、且つ、カップリング2にも同様に、第2の接続孔2bのためのスペースを設けることが必須となる。それ故、駆動モータ3および減速機5の間の接続距離が長くなることが避けられず、ギヤードモータ7の装置設計上の制限が生じることが問題として挙げられる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、よりコンパクトな装置設計を可能とする減速機のカップリング構造を提供することにある。さらに、本発明は、当該カップリング構造を有する、減速機、ギヤードモータ、および駆動装置をも提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態のカップリング構造は、駆動モータの出力シャフトを減速機の入力側に接続するためのカップリング構造であって、
軸方向に延伸する回転可能な入力軸であって、前記入力軸は、前記減速機のハウジングの内部空間に配置され、前記内部空間で前記減速機の減速機構に接続される基端部位と、前記内部空間から軸方向の入力側に突出する先端部位とを有する、入力軸と、
前記入力軸とともに回転するように前記入力軸の前記先端部位の周囲に固定され、軸方向の入力側を向くハブ面を有するハブと、
軸方向の入力側を向く第1端面および軸方向の出力側を向く第2端面を有し、前記第2端面が前記ハブ面に固定され、少なくとも前記第1端面に開口する接続孔に前記出力シャフトを挿入して、前記入力軸の同軸上に前記出力シャフトを接続するカップリングと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のカップリング構造によれば、入力軸の先端部位の周囲にハブが設けられ、軸方向の入力側を向くハブ面と、該ハブ面に対向するカップリングの第2端面とが合わさって互いに一体的に固定されることによって、入力軸に接続代およびカップリングに入力軸用の接続孔を設けることなく、カップリングの第1端面側の接続孔に出力シャフトを接続して、入力軸と出力シャフトとを同軸上に接続することが可能である。すなわち、本発明のカップリング構造は、従来のものと比べて、カップリングの後段(減速機の入力側)の接続孔とともに減速機の入力軸の接続代を省略することができるので、減速機および駆動モータ間の接続距離を短縮した、よりコンパクトな装置設計を可能とするものである。
【0009】
本発明のさらなる形態のカップリング構造は、上記形態のカップリング構造に加えて、前記接続孔は、前記カップリングの軸方向長さの略全体に亘って延在するとともに、前記出力シャフトの接続代のみを内挿可能な軸方向長さを有しており、前記カップリングの軸方向長さが、前記出力シャフトの突出長さ以下であることを特徴とする。すなわち、カップリング自体の軸方向長さを短縮可能としたことによって、結果として、減速機および駆動モータ間の接続距離を短縮し、装置全体のよりコンパクトな装置設計を可能とする。
【0010】
本発明のさらなる形態のカップリング構造は、上記形態のカップリング構造に加えて、前記カップリングは、前記第1端面および前記第2端面を貫通する複数の貫通孔を有し、前記ハブ面には、前記複数の貫通孔に挿通された複数のボルトによって、前記カップリングを固定するための複数の固定孔が形成されている。すなわち、カップリングおよびハブが複数のボルトで軸方向に一体的に固定されることにより、カップリングおよび入力軸の間の接続が安定し、結果として、入力軸と出力シャフトの軸芯のずれや、軸芯ぶれを軽減することが可能である。
【0011】
本発明のさらなる形態のカップリング構造は、上記形態のカップリング構造に加えて、前記ハブの前記ハブ面と、前記カップリングの前記第2端面とが、直接的に当接した状態で、またはワッシャを介した状態で固定されていることを特徴とする。すなわち、ハブ面と第2端面とを可能な限り近接させて固定することによって、減速機および駆動モータの間の接続距離を短縮し、装置全体のよりコンパクトな装置設計を可能とする。
【0012】
本発明のさらなる形態のカップリング構造は、上記形態のカップリング構造に加えて、前記入力軸の先端縁が、前記カップリングに干渉しない位置にあることを特徴とする。すなわち、減速機の入力軸の先端縁をカップリングに干渉させることなく、ハブ面と第2端面とを当接または近接させて固定することができる。
【0013】
本発明のさらなる形態のカップリング構造は、上記形態のカップリング構造に加えて、前記ハウジングには、前記入力軸の前記先端部位を周方向に包囲する周壁部が設けられ、前記ハブの外周面と前記周壁部の内周面と間に介在する環状の軸受がさらに設けられていることを特徴とする。すなわち、入力軸が軸受を介してハウジングの周壁部に回転可能に支持されることにより、カップリング構造が、より高い耐荷重性を発揮することが可能である。
【0014】
本発明のさらなる形態のカップリング構造は、上記形態のカップリング構造に加えて、前記ハウジングの前記周壁部の周縁から入力側に延在するフランジが設けられ、前記カップリングは、前記フランジに包囲されるとともに前記フランジの入力側の端縁よりも軸方向の出力側に配置されるように構成されていることを特徴とする。すなわち、カップリングの周囲をハウジングのフランジによって包囲することによって、出力シャフトとカップリング構造との接続部分を物理的に保護することが可能である。
【0015】
本発明の一形態の減速機は、上記形態のカップリング構造と、前記カップリング構造の入力軸に出力側で接続された減速機構と、前記減速機構に出力側で接続された出力軸と、を備えることを特徴とする。すなわち、本発明の減速機は、上記カップリング構造の作用効果を減速機として発揮し得る。したがって、本発明の減速機は、駆動モータとの接続のために当該カップリング構造を導入したことにより、ギヤードモータを構築する際において、よりコンパクトな装置設計を可能とする。
【0016】
本発明の一形態のギヤードモータは、出力シャフトを有する駆動モータと、上記形態のカップリング構造、前記カップリング構造の入力軸に出力側で接続された減速機構、および、前記減速機構に出力側で接続された出力軸を備える減速機とを備え、前記減速機の入力側が、前記カップリング構造を介して前記出力シャフトに接続されていることを特徴とする。すなわち、本発明のギヤードモータは、上記カップリング構造の作用効果をギヤードモータとして発揮し得る。したがって、本発明のギヤードモータは、駆動モータと減速機との接続に当該カップリング構造を導入したことにより、よりコンパクトな装置設計を可能とする。
【0017】
本発明の一形態の駆動装置は、出力シャフトを有する駆動モータと、上記形態のカップリング構造、前記カップリング構造の入力軸に出力側で接続された減速機構、および、前記減速機構に出力側で接続された出力軸を備え、前記カップリング構造および前記出力シャフトが接続された、減速機と、前記減速機の前記出力軸に接続された負荷と、を備え、前記負荷は車輪であることを特徴とする。すなわち、本発明の駆動装置は、上記カップリング構造の作用効果を駆動装置として発揮し得る。特には、車輪を負荷とする駆動装置にカップリング構造を導入したことにより、駆動装置の車軸を構成する出力シャフトから出力軸までの軸全体の長さを短縮し、その結果、軸方向に直交する方向への耐荷重性を向上させることができる。すなわち、本発明の駆動装置は、省スペース化に加えて、より高い耐荷重性をも駆動輪として発揮することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のカップリング構造は、減速機および駆動モータの間の接続距離を短縮し、よりコンパクトな装置設計を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態において、ギヤードモータの減速機の出力軸に負荷(車輪)を取着した状態の駆動装置を示す外観図。
図2図1の駆動装置の要部の内部構造を示す概略図。
図3図2の駆動装置の分解図。
図4】本発明の一実施形態のカップリング構造を示す断面概略図。
図5図4のカップリング構造を部分拡大図。
図6図5のカップリング構造において、カップリングを軸方向の入力側から見た概略図。
図7図5のカップリング構造の分解図。
図8】従来のカップリング構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0021】
本発明の一実施形態のカップリング構造100は、主に、ギヤードモータ10を構成する駆動モータ11および減速機13を接続するように設けられたものである。そして、カップリング構造100は、図1乃至図3に例示されるとおり、駆動輪として動作する駆動装置に組み込まれたものである。しかしながら、本実施形態は例示にすぎず、本発明のカップリング構造は、当該実施形態に限定されることなく、種々の用途に適用され得ることは言うまでもない。
【0022】
図1は、本実施形態のカップリング構造100を備えるギヤードモータ10によって構成された駆動装置の外観図である。図2は、駆動装置の要部の内部構造を示す概略図であり、図3は、駆動装置の分解図である。なお、本明細書においては、駆動モータ11の出力シャフト12および減速機13の入力軸110が延伸する方向(図1の左右方向)を軸方向、駆動モータ11側(図1の左側)を入力側または前段側、そして、負荷である車輪19側(図1の左側)を出力側または後段側と定めて、各構成要素について説明する。
【0023】
図1から図3に示すように、駆動装置は、軸方向に沿った入力側から、駆動モータ11、減速機13、車輪19を互いに連結したものである。ギヤードモータ10は、駆動モータ11の出力側と減速機13の入力側とを接続したものであり、駆動モータ11の回転を、減速機13の出力側で所定の減速比で減速して出力するように構成されている。そして、ギヤードモータ10の負荷として、減速機13の出力側に車輪19がさらに連結されている。すなわち、ギヤードモータ10および車輪19が、台車等の駆動輪として機能する駆動装置を成している。
【0024】
駆動モータ11は、その出力側に突出する出力シャフト12を備える。また、駆動モータ11は、電源(図示せず)に接続され、電力が供給されることで、出力シャフト12を回転駆動するように動作する。出力シャフト12の先端には、(一般的な製品を含む)カップリングの接続孔に接続される接続代が設けられている。本実施形態では、出力シャフト12の接続代は、軸方向に直交する方向からの締め付けボルトの締め付けによって、カップリングの接続孔に固定されるように構成されている。しかしながら、出力シャフト12の接続代は、例えば、キー状に形成されてもよい。その場合、当該接続代は、キー溝状の接続孔に嵌合し、キーおよびキー溝の関係で連結可能に構成されてもよい。なお、駆動モータ11は、一般的な任意の構成をとることができ、その基本的な内部構造の説明を省略する。
【0025】
減速機13は、内部に構成要素を収容する中空のハウジング14と、駆動モータ11の出力シャフト12を接続するカップリング構造100と、該カップリング構造100の後段側に配置された減速機構17と、該減速機構17の後段側に配置された出力軸18とを備える。ハウジング14は、その入力側において、カップリング構造100の一部である入力軸110が通過して外部に突出するための開口部14aを有する。この開口部14aの出力側(内側)の空間が、ハウジング14の内部空間として定められる。
【0026】
また、図2および図3に示すように、駆動モータ11の回転駆動される出力シャフト12が、減速機13の入力側に設けられたカップリング構造100を介して、軸方向に延伸する回転可能な入力軸110に接続されている。つまり、駆動モータ11の出力シャフト12および減速機13の入力軸110が、同軸上で同期回転するように接続されている。そして、減速機13の出力軸18が、減速機13のハウジング14の出力側の外部に突出している。この出力軸18には、負荷として選択された車輪19が装着されている。すなわち、駆動装置は、駆動モータ11の回転駆動力を、カップリング構造100を介して減速機13に入力し、減速機構17を介して所定の減速比で減速して出力軸18で出力することで、車輪19を低速かつ高トルクで回転駆動するものである。なお、減速機13は、一般的な任意の構成をとることができ、その基本的な内部構造の説明を省略する。
【0027】
次に、図4から図7を参照して、本発明の一実施形態のカップリング構造100について説明する。図4は、カップリング構造100を示す断面概略図である。図5は、カップリング構造100の拡大断面図である。図6は、カップリング構造100のカップリング130を軸方向の入力側(図4の左側)から見た概略図である。図7は、カップリング構造100の分解図である。なお、説明の便宜上、図中のカップリング130の断面形状を示していないが、一般的なカップリング(接続)機構が採用され得る。
【0028】
カップリング構造100は、軸方向に延伸する回転可能な入力軸110と、該入力軸110と一体的に結合されたハブ120と、該ハブ120の入力側に固定されたカップリング130とを備える。
【0029】
入力軸110は、ハウジング14の開口部14aを介して貫通して、ハウジング14の内外に亘って延伸している。後述するとおり、開口部14aは、入力軸110を内挿した状態で、ハブ本体121(小径円筒部121b)およびシール部材141によって閉鎖されている。また、入力軸110は、減速機13のハウジング14の内部空間に配置され、内部空間で減速機13の出力側で減速機構17に接続される基端部位111と、内部空間から軸方向の入力側に突出する先端部位112とを有する。基端部位111の外周には、複数の歯が形成され、または、歯車が取着されることで、減速機構17の歯車と噛み合うように構成される。また、先端部位112は、その先端側でハブ120に嵌着する嵌合部113と、該嵌合部113よりも基端側で拡径した拡径部114とを有している。嵌合部113と拡径部114との間には段差が形成され、この拡径部114の軸方向の入力側を向く面には、ハブ120内部の段差部126に係合する係合部115が定められている。
【0030】
ハブ120は、入力軸110とともに回転するように入力軸110の先端部位112の周囲に固定されるように構成されている。より具体的には、ハブ120は、軸方向両側に開口し、かつ、軸方向に延伸する2つの円筒体を結合した形状を有するハブ本体121を備える。つまり、ハブ本体121は、入力側の大径円筒部121aと出力側の小径円筒部121bとを軸方向に組み合わせてなる。また、ハブ本体121は、大径円筒部121aの内部に(軸方向に直交する)円形断面を有する第1中空部122を画定し、小径円筒部121bの内部に(軸方向に直交する)円形断面を有する第2中空部123を画定する。大径円筒部121a、小径円筒部121b、第1中空部122および第2中空部123は、全て同心円状に形成されている。
【0031】
第1中空部122および第2中空部123は、入力軸110を挿通するように軸方向に連通し、第1中空部122の内径よりも第2中空部123の内径の方が大きい。そして、第1中空部122と第2中空部123との間には、出力側を向く段差部126が形成されている。この第1中空部122は、入力軸110の嵌合部113と嵌合するように形成されている。一方で、第2中空部123は、入力軸110の拡径部114を内部に収容可能に形成されている。そして、段差部126が、入力軸110の係合部115と軸方向に係合した状態で、第1中空部122および嵌合部113が嵌合している。本実施形態では、段差部126と係合部115との間には、ワッシャ127が介在しているが、これは省略されてもよい。そして、第1中空部122および嵌合部113の嵌合関係によって、ハブ本体121が入力軸110と同期回転するように固定される。
【0032】
また、ハブ120は、軸方向の入力側を向くハブ面124を有する。すなわち、大径円筒部121aの軸方向の入力側を向く面にハブ面124が定められている。ハブ面124は、中心が開口した円環状の平面を成している。図6に示すように、ハブ面124には、カップリング130を軸方向に複数のボルト143で固定するための複数(本実施形態では4つ)の固定孔125が形成されている。本実施形態では、同一の直径上に配置された2つの固定孔125を1つの組とすると、2組の固定孔125が形成されている。そして、1つの四分円内に2つの隣接する固定孔125が配置されている。
【0033】
カップリング130は、出力側でハブ120に一体的に固定されるとともに、入力側で入力軸110の同軸上に出力シャフト12を接続するように構成されている。具体的には、カップリング130は、軸方向に延伸する中空の円筒形状を有するカップリング本体131を備える。カップリング本体131には、軸方向の入力側を向く第1端面132および軸方向の出力側を向く第2端面133が定められている。カップリング本体131の内部には、出力シャフト12のみを接続するための接続孔134が形成されている。また、カップリング130は、図7に示すように、カップリング本体131の軸方向に直交する方向に螺着された締め付けボルト136をさらに備え、この締め付けボルト136の締め付けによって、接続孔134を縮小させて、内挿する出力シャフト12の接続代を締め付けて固定するように構成されている。
【0034】
接続孔134は、少なくとも第1端面132に開口し、出力シャフト12を入力側から受入可能である。接続孔134は、カップリング130の軸方向長さの略全体に亘って延在するとともに、出力シャフト12の接続代のみを内挿可能な軸方向長さを有している。そして、カップリング130の軸方向長さが、出力シャフト12の突出長さ以下である。つまり、図8に示した従来のカップリング構造1のカップリング2と比較すると、後段側の第2の接続孔2bが省略された分、カップリング130の軸方向長さが約半分に短縮されている。また、接続孔134は、挿入された出力シャフト12の先端縁が第2端面133を越えないように、その出力側で出力シャフト12を係止するように構成されている。例えば、第2端面133側の開口を出力シャフト12の外径よりも小径にすることによって、あるいは、第2端面133で接続孔134を閉塞することによって、接続孔134に押し込まれた出力シャフト12を係止することができる。
【0035】
また、カップリング130の第2端面133は、ハブ120のハブ面124に合わさって固定されるように構成されている。特には、カップリング130は、第1端面132および第2端面133を貫通する複数の貫通孔135を有する。複数の貫通孔135は、第2端面133とハブ面124とが合わさったときに、ハブ面124に形成された複数の固定孔125とそれぞれ連通する位置に形成されている。複数(本実施形態では4本)のボルト143が貫通孔135を介して固定孔125に締め付けられることによって、カップリング130およびハブ120が、第2端面133とハブ面124とが合わさった状態で強固に一体的に固定されている。
【0036】
すなわち、カップリング130およびハブ120が、それらの平面において当接した状態で、複数のボルト143によって軸方向に一体的に固定されることにより、カップリング130および入力軸110の間の接続が安定し、結果として、入力軸110と出力シャフト12の軸芯のずれや、軸芯ぶれを軽減することが可能である。
【0037】
なお、本実施形態では、ハブ面124と第2端面133とが当接した状態で固定されている。しかしながら、ハブ面124と第2端面133とがワッシャを介して間接的に当接した状態で固定されてもよい。また、入力軸110の先端縁が、カップリング130に干渉しない位置にある。これにより、減速機13の入力軸110の先端縁をカップリング130に物理的に干渉させることなく、ハブ面124と第2端面133とを当接または近接させて固定することができる。また、本実施形態では、入力軸110の先端縁とハブ面124とがほぼ面一に配置されているが、入力軸110の先端縁がハブ面124よりも軸方向の出力側に後退して配置されてもよい。
【0038】
また、本実施形態のカップリング構造100において、ハウジング14には、入力軸110の先端部位112を内挿するハブ120の外周面を周方向に包囲する周壁部15が設けられている。周壁部15の一部である開口部14aの内周面と、ハブ本体121の小径円筒部121bとの間には、環状のシール部材141が介在している。また、開口部14aより入力側の周壁部15の内周面と、ハブ本体121の大径円筒部121aとの間には、環状の軸受142が介在している。この軸受142は、周壁部15とハブ120との間に嵌め付けられているとともに、入力側からボルトで押さえ板によって軸方向に押さえ付けられて固定されている。すなわち、軸受142によって、入力軸110およびハブ120が回転可能にハウジング14に対して安定的に支持されている。これにより、入力軸110は、より高い耐荷重性を発揮し、かつ、回転時の軸芯ぶれも軽減され得る。特に、本実施形態では、駆動装置が駆動輪であることから、当該カップリング構造100の高い耐荷重性および軸芯ぶれの軽減はより一層、製品に有利に働くといえる。
【0039】
さらに、本実施形態のカップリング構造100において、ハウジング14の周壁部15の周縁から入力側に延在するフランジ16が設けられている。図2および図4に示すとおり、フランジ16は、周壁部15に対してボルトで固定され、また、駆動モータ11にもボルトで固定されている。そして、フランジ16は、駆動モータ11と減速機13とを軸方向に連結し、出力シャフト12およびカップリング130を周方向に包囲している。つまり、カップリング構造100は、カップリング130がフランジ16に包囲されるとともにフランジ16の軸方向内側(出力側)に配置されるように構成されている。このフランジ16によって、出力シャフト12およびカップリング構造100接続部分が、外部に露出することなく、物理的に保護されている。そして、ギヤードモータ10は、フランジ16自体の軸方向の長さも従来と比べて軸方向に短縮されるように設計されている。
【0040】
すなわち、本実施形態のカップリング構造100は、入力軸110にハブ120を一体的に固定したことによって、入力軸の接続代およびカップリングの後段側の接続孔を省略したものであり、従来と比べて、駆動装置全体の軸方向の長さを短縮可能としたものである。また、従来のカップリング構造では、カップリングと軸との接続箇所が2箇所あり、この接続箇所が軸ぶれの要因となり得る。これに対して、本実施形態のカップリング構造100は、カップリングと軸との接続箇所は1箇所であり、従来よりも軸ぶれのおそれを軽減するものである。
【0041】
さらに、本実施形態において、車輪19を負荷とする駆動装置にカップリング構造100を導入したことにより、駆動装置の車軸を構成する出力シャフト12から出力軸18までの軸全体の長さを短縮し、その結果、軸方向に直交する方向への耐荷重性を効果的に向上させることができる。すなわち、本実施形態の駆動装置は、省スペース化に加えて、より高い耐荷重性をも駆動輪として発揮することが可能である。
【0042】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0043】
10 ギヤードモータ
11 駆動モータ
12 出力シャフト
13 減速機
14 ハウジング
14a 開口部
15 周壁部
16 フランジ
17 減速機構
18 出力軸
19 車輪(負荷)
100 カップリング構造
110 入力軸
111 基端部位
112 先端部位
113 嵌合部
114 拡径部
115 係合部
120 ハブ
121 ハブ本体
121a 大径円筒部
121b 小径円筒部
122 第1中空部
123 第2中空部
124 ハブ面
125 固定孔
126 段差部
127 ワッシャ
130 カップリング
131 カップリング本体
132 第1端面
133 第2端面
134 接続孔
135 貫通孔
136 締め付けボルト
141 シール部材
142 軸受
143 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8