(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012109
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】風力タービンのメンテナンス用キャビンおよび風力タービンのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
F03D 80/50 20160101AFI20240118BHJP
【FI】
F03D80/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023102206
(22)【出願日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】22382675.1
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513131419
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック レノバブレス エスパーニャ, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ヤコ・ニース
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB79
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】風力タービンのメンテナンス用キャビンおよび風力タービンのメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】風力タービン(10)のアップタワー構成要素(110)のメンテナンスを行うためのキャビン(100)が提供される。キャビン(100)は、キャビン(100)の内部でオペレータ及び/又は工具を支持するように構成される。キャビン(100)は、アップタワー構成要素(110)に対して回転可能であるように、風力タービン(10)に取り付け可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(10)のアップタワー構成要素(110)の外装のメンテナンスを行うためのキャビン(100)であって、
キャビン(100)は、キャビン(100)の内部でオペレータ及び/又は工具を支持するように構成され、
キャビン(100)は、キャビン(100)がアップタワー構成要素(110)に対して回転可能であるように、風力タービン(10)に取り付け可能である、キャビン(100)。
【請求項2】
フロア(120)がキャビン(100)の異なる複数の位置で実質的に水平な支持を提供するように、キャビン(100)に対して変位可能なフロア(120)をさらに含む、請求項1に記載のキャビン。
【請求項3】
キャビン(100)は、キャビン(100)がアップタワー構成要素(110)の中心軸を中心として回転可能であるように、アップタワー構成要素(110)に取り付け可能である、請求項1または請求項2に記載のキャビン。
【請求項4】
アップタワー構成要素(110)の対応する複数の取り付けポイント(126)に接合されるように構成された複数の取り付けポイント(125)をさらに含む、請求項3に記載のキャビン。
【請求項5】
アップタワー構成要素(110)の1つまたは複数のガイド要素(129)に沿って移動するように構成された1つまたは複数のガイド要素(123)をさらに含む、請求項3に記載のキャビン。
【請求項6】
キャビンは、キャビンの中心軸の周りを回転するように構成されている、請求項1乃至5のいずれかに記載のキャビン。
【請求項7】
タワー(15)と、
タワー(15)に支持されるアップタワー構成要素(110)と、
風力タービン(10)に取り付けられる請求項1乃至6のいずれかに記載のキャビン(100)と、
を備える風力タービン(10)。
【請求項8】
アップタワー構成要素(110)は、風力タービン発電機構成要素、ナセル(16)、またはヨーシステムである、請求項7に記載の風力タービン。
【請求項9】
アップタワー構成要素(110)の周りにキャビン(100)を回転させるために、アップタワー構成要素(110)とキャビン(100)とを接続するアクチュエータ(130)をさらに含む、請求項7または8に記載の風力タービン。
【請求項10】
アクチュエータ(130)は、リニアアクチュエータ又はケーブルである、請求項9に記載の風力タービン。
【請求項11】
キャビン(100)は、ハブ(20)またはナセル(16)に取り付けられる、請求項7または8に記載の風力タービン。
【請求項12】
ハブ(20)又はナセル(16)は、ハブ(20)又はナセル(16)の内部からキャビン(100)にアクセスするためのハッチ(132)を備える、請求項11に記載の風力タービン。
【請求項13】
風力タービン(10)のアップタワー構成要素(110)のメンテナンスを行うための方法(200)であって、
キャビン(100)内のオペレータ及び/又は工具を支持するように構成されたキャビン(100)を風力タービン(10)に取り付けるステップ(210)と、
アップタワー構成要素(110)に対してキャビン(100)をメンテナンス位置まで回転させるステップ(220)と、
メンテナンス位置にあるアップタワー構成要素(110)のメンテナンスを行うステップ(230)と、
を含む方法。
【請求項14】
キャビン(100)を回転させるステップは、ハブ(20)を回転させるステップ、またはナセル(16)をヨーイングするステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
キャビン(100)を回転させるステップは、アップタワー構成要素(110)の中心軸の周りにキャビン(100)を回転させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力タービンのメンテナンスを行うためのキャビン及び方法に関する。本開示は、さらに、そのようなキャビンを含む風力タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは、電力網に電力を供給するために使用されるのが一般的である。この種の風力タービンは、一般に、タワーと、タワー上に配置されたロータとから構成される。ロータは、通常、ハブと複数のブレードから構成され、ブレードにかかる風の影響により回転する。この回転によりトルクが発生し、通常、ロータシャフトを介して、直接(「直接駆動:ダイレクトドライブ」または「ギアレス」)またはギアボックスの使用により発電機に伝達される。このようにして、発電機は電力を生成し、電力網に供給することができる。
【0003】
風力タービンハブは、ナセルの前部に回転可能に結合されてもよい。風力タービンハブは、ロータシャフトに連結されてもよく、ロータシャフトは、その後、ナセル内のフレームに配置された1つまたは複数のロータシャフトベアリングを用いてナセルに回転可能に取り付けられてもよい。ナセルは、風力タービンタワーの上に配置されるハウジングで、ギアボックス(ある場合)および発電機(ナセルの外に配置されていない場合)、さらに風力タービンによっては電力変換器や補助システムなどのその他の構成要素(コンポーネント)を格納し、保護することができる。
【0004】
風力タービンのメンテナンス(修理など)は、通常、風力タービンの設置または運転開始後一定期間が経過した場合、または風力タービンの構成要素が損傷または破損した場合に必要となる。さらに、損傷や劣化に気付かないことがないように、定期的に目視検査が必要な場合や計画される場合もある。風力タービンの修理は、50m、70m、100m以上の高さにある風力タービン部分にアクセスする必要があるため、オペレーターにとって困難であり、健康や安全上の危険をもたらす可能性がある。また、突風や天候の変化により、メンテナンス時の危険性が増すこともある。
【0005】
オペレータは、1本以上のロープを介して風力タービンに固定され、ロープの1本にぶら下がって修理すべき風力タービン構成要素または部分の外部にアクセスすることがある。特に、ナセルやハブの下側に手を伸ばす場合や、直接駆動式風力タービンの発電機の外側に手を伸ばす場合などには、操作者にとって危険で不快(uncomfortable)な場合がある。
【0006】
また、風力タービンにプラットフォームを吊り下げ、オペレータがプラットフォーム上を移動し、プラットフォームから修理できるようにすることも可能である。プラットフォームは、例えば、ブレードにアクセスするためにナセルまたはロータから吊り下げることができる。プラットフォームとブレードの間の接続部、例えば剛性アームは、プラットフォームを比較的静止させ、ブレードに近づけることを容易にすることができる。プラットフォームによっては、ブレードを完全に囲むことができる。直接駆動式風力タービンの発電機、ナセルやハブの側面や上面など、特定の風力タービン構成要素の外側にアクセスするための吊り下げ式プラットフォームは、設置が複雑な場合がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様では、風力タービンのアップタワー構成要素の外装(exterior)のメンテナンスを実施するためのキャビンが提供される。キャビンは、オペレータ及び/又は工具をキャビンの内部で支持するように構成される。キャビンは、キャビンがアップタワー構成要素に対して回転可能であるように、風力タービンに取り付け可能である。
【0008】
この態様によれば、1人または複数のオペレータが入り、および/または1つまたは複数の工具(ツール)が導入され、風力タービンの外装のメンテナンス作業(maintenance operations保守業務)を実行することができるキャビンが提供される。キャビンは、キャビンがアップタワー構成要素に対して回転することができるように、風力タービンに取り付け可能である。
【0009】
このようなキャビンを風力タービンに設置することで、構成要素の複数の部位でメンテナンスや点検を行うことができる。
【0010】
本開示のさらなる態様では、風力タービンのアップタワー構成要素のメンテナンスを実行するための方法が提供される。本方法は、オペレータ及び/又は工具をキャビン内に支持するように構成されたキャビンを風力タービンに取り付けることを含む。本方法は、さらに、キャビンをアップタワー構成要素に対してメンテナンス位置まで回転させることを含んでいる。本方法は、メンテナンス位置でアップタワー構成要素のメンテナンスを実行することをさらに含む。
【0011】
さらに本開示のさらなる態様において、別の方法が提供される。本方法は、直接駆動式風力タービンの風力タービン発電機の外側にキャビンを取り付けることを含んでいる。本方法は、キャビンを風力タービンの外周(circumference)に沿ってメンテナンス位置まで変位(displace)させることをさらに備える。本方法は、メンテナンス位置でメンテナンスを実行することをさらに含む。
【0012】
本開示を通じて、キャビンは、オペレータ及び/又は工具を完全に囲むように構成された、例えばサイズ及び形状を有する、実質的に閉じた構造として理解され得る。すなわち、キャビン内のオペレータおよび/または工具は、キャビン壁によって実質的に完全に囲まれることがある。キャビンは、例えば、底壁、頂壁(top wall)、及び頂壁と底壁の間に延びる1つ以上の側壁を有することができる。キャビンは、例えば、人の出入りや工具の出し入れを可能にするため、また、メンテナンス作業を支援するための工具や構造物を展開(deploy)するため、必要に応じて開閉される1つ以上のハッチを含んでいてもよい。
【0013】
本開示を通じて、アップタワー構成要素は、タワーによって直接又は間接的に支持される風力タービン構成要素として理解され、特に、風力タービンが組み立てられたときに風力タービンタワーの上方に位置することがある。アップタワー構成要素は、例えば、ナセル又はステータ(直接駆動式風力タービンのステータ)又は(直接駆動式風力タービンの)発電機ロータ又は風力タービンロータ又はハブ又はヨーシステムであってよい。
【0014】
本開示を通じて、メンテナンスまたはメンテナンス作業は、検査、修理および修復作業、ならびに風力タービンで行われる同様の性質の活動をも含むと理解される場合がある。例えば、メンテナンスは、接合部または他の接続部の検査、ボルトの締め付け、および複合構造(composite structure)の修復を含むことができる。メンテナンスには、例えば、直接駆動式風力タービンのステータフレームにステータ磁極(stator poles:ステータポール)を接続するスルーボルト(through-bolts)の交換が含まれ、ステータは発電機のロータを取り囲む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1の風力タービンのナセルの一例を簡略化して示す内部図である。
【
図3】直接駆動型風力タービンの発電機の外部ステータに接続されるキャビンの一例を模式的に示す正面図である。
【
図4A】直接駆動型風力タービンの発電機の外部ステータに接続されるキャビンの他の例を模式的に示す正面図である。
【
図4B】直接駆動型風力タービンの発電機の外部ステータに接続されるキャビンの他の例を模式的に示す側面図である。
【
図5】風力タービンハブに固定されたキャビンの一例を模式的に示す透視図である。
【
図6】風力タービンのアップタワー構成要素の外面に対してメンテナンスを行うための方法のフローチャートである。
【
図7】直接駆動型風力タービンの風力タービン発電機の外装側のメンテナンスを行うための他の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面に例示されている1つまたは複数の例を含む実施形態について詳細に言及する。各例は、説明のためにのみ提供されるものであり、限定として提供されるものではない。実際、当業者には、本開示において様々な修正および変形がなされ得ることが明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として図示または説明された特徴は、別の実施形態と共に使用され、さらに別の実施形態をもたらすことができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入るような修正および変形をカバーすることが意図される。
【0017】
図1は、風力タービン10の一例を示す透視図である。本実施例では、風力タービン10は、水平軸型風力タービンである。あるいは、風力タービン10は、垂直軸型風力タービンであってもよい。実施例では、風力タービン10は、地面12上の支持システム14から延びるタワー15と、タワー15に取り付けられたナセル16と、ナセル16に結合されるロータ18と、を含む。ロータ18は、回転可能なハブ20と、ハブ20に結合され、ハブ20から外側に伸びる少なくとも1つのロータブレード22とを含む。例では、ロータ18は、3つのロータブレード22を有している。代替実施形態では、ロータ18は、3つよりも多い又は少ない数のロータブレード22を含む。タワー15は、支持システム14とナセル16との間に空洞(
図1には示されていない)を規定するために、管状鋼から製作され得る。代替的な実施形態では、タワー15は、任意の適切な高さを有する任意の適切なタイプのタワーである。代替によれば、タワーは、コンクリート製の部分と管状鋼製の部分とからなるハイブリッドタワーとすることができる。また、タワーは、部分的または完全なラティスタワーとすることができる。
【0018】
ロータブレード22は、ロータ18を回転させて運動エネルギーを風から使用可能な機械エネルギー、ひいては電気エネルギーに変換できるようにするために、ハブ20に対して間隔をあけて配置される。ロータブレード22は、複数の荷重伝達領域26においてブレード根元部分24をハブ20に結合することによって、ハブ20に嵌合される。荷重伝達領域26は、ハブ荷重伝達領域とブレード荷重伝達領域(いずれも
図1には示されていない)を有することができる。ロータブレード22に誘起された荷重(Loads:負荷)は、荷重伝達領域26を介してハブ20に伝達される。
【0019】
例では、ロータブレード22は、約15m(メートル)~約90m以上の範囲の長さを有することができる。ロータブレード22は、風力タービン10が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な長さを有してもよい。例えば、ブレードの長さの非限定的な例としては、20m以下、37m、48.7m、50.2m、52.2m、または91mを超える長さが挙げられる。 風向28からロータブレード22に風が当たると、ロータ18はロータ軸30を中心に回転される。ロータブレード22が回転して遠心力を受けると、ロータブレード22にも様々な力やモーメントがかかる。そのため、ロータブレード22は、中立位置、すなわち非偏向位置(a neutral, or non-deflected)から偏向位置まで偏向および/または回転することがある。
【0020】
さらに、ロータブレード22のピッチ角、すなわち、風向きに対するロータブレード22の向きを決定する角度をピッチシステム32によって変更し、風ベクトルに対する少なくとも1つのロータブレード22の角度位置を調整することによって風力タービン10によって発生する負荷および電力を制御することができる。ロータブレード22のピッチ軸34が示される。風力タービン10の動作中、ピッチシステム32は、特に、ロータブレード(の一部)の迎え角が減少するようにロータブレード22のピッチ角を変更することができ、これにより、回転速度の低減を容易にし、及び/又はロータ18の失速(stall)を容易にする。
【0021】
実施例では、各ロータブレード22のブレードピッチは、風力タービン制御装置(wind turbine controller:ウインドタービンコントローラ)36によって、またはピッチ制御システム80によって個別に制御される。あるいは、全てのロータブレード22のブレードピッチは、前記制御システムによって同時に制御されてもよい。
【0022】
さらに、本実施例では、風向28が変化すると、ナセル16のヨー方向をヨー軸38を中心に回転させて、風向28に対してロータブレード22を配置してもよい。
【0023】
実施例では、風力タービン制御装置36は、ナセル16内に集中配置されているように示されているが、風力タービン制御装置36は、風力タービン10全体、支持システム14上、風力発電所(wind farm:ウインドファーム)内、及び/又は遠隔制御センターでの分散システムであってもよい。風力タービン制御装置36は、本明細書に記載される方法及び/又はステップの一部を実行するように構成されたプロセッサ40を含むことができる。さらに、本明細書に記載される他の構成要素の多くは、プロセッサを含む。
【0024】
本明細書で使用する場合、「プロセッサ」という用語は、当該技術分野でコンピュータと呼ばれる集積回路に限定されず、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、アプリケーション固有の、集積回路、および他のプログラマブル回路を広く指し、これらの用語は、本明細書で交換可能に使用される。プロセッサおよび/または制御システムは、メモリ、入力チャネル、および/または出力チャネルも含むことができることを理解されたい。
【0025】
制御システム36は、メモリ、例えば1つまたは複数のメモリデバイスを含むこともできる。メモリは、コンピュータ可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))、コンピュータ可読不揮発性媒体(例えば、フラッシュメモリ)、フロッピーディスク(登録商標)、コンパクトディスク-読み取り専用メモリ(CD-ROM)、光磁気ディスク(MOD)、デジタル多用途ディスク(DVD)及び/又は他の適切なメモリ要素を含むが、これらに限定はしない1つ以上のメモリ要素を含んでいても良い。そのようなメモリデバイス(複数可)は、一般に、1つ以上のプロセッサ40によって実行されるとき、制御装置36を構成して、本明細書に開示される様々なステップを実行する、またはその実行をトリガする、適切なコンピュータ読み取り可能命令を格納するように構成され得る。メモリはまた、例えば測定及び/又は計算からのデータを記憶するように構成され得る。
【0026】
図2は、風力タービン10の一部を示す拡大断面図である。本実施例において、風力タービン10は、ナセル16と、ナセル16に回転可能に結合されるロータ18とを含む。より具体的には、ロータ18のハブ20は、メインシャフト44、ギアボックス46、高速シャフト48、及びカップリング50によって、ナセル16内に配置された電気発電機42に回転可能に結合される。実施例では、メインシャフト44は、ナセル16の長手方向軸(図示せず)と少なくとも部分的に同軸上に配置される。メインシャフト44の回転は、ロータ18およびメインシャフト44の比較的遅い回転運動を高速シャフト48の比較的速い回転運動に変換することによって、その後高速シャフト48を駆動するギアボックス46を駆動する。後者は、カップリング50の助けを借りて、電気エネルギーを生成するための発電機42に接続される。さらに、400V~1000Vの電圧を有する発電機42によって生成された電気エネルギーを中電圧(10~35KV)を有する電気エネルギーに変換するために、ナセル16内に変圧器90および/または適切な電子機器、スイッチおよび/またはインバータを配置することができる。前記電気エネルギーは、ナセル16からタワー15に電力ケーブルを介して伝導される。
【0027】
ギアボックス46、発電機42および変圧器90は、任意にメインフレーム52として具現化されるナセル16の主支持構造フレーム(main support structure frame)によって支持されてもよい。ギアボックス46は、1つまたは複数のトルクアーム103によってメインフレーム52に接続されるギアボックスハウジングを含んでもよい。実施例では、ナセル16は、主前方支持ベアリング60と主後方支持ベアリング62も含む。さらに、発電機42は、特に、発電機42の振動がメインフレーム52に導入され、それによって騒音放出源が生じることを防止するために、デカップリング支持手段54によってメインフレーム52に取り付けられることができる。
【0028】
任意選択で、メインフレーム52は、ロータ18及びナセル16の構成要素の重量、並びに風の荷重及び回転の荷重によって生じる荷重全体を担持し、更に、これらの荷重を風力タービン10のタワー15に導入するように構成される。ロータシャフト44、発電機42、ギアボックス46、高速シャフト48、カップリング50、並びに支持体(support)52、並びに前方支持ベアリング60及び後方支持ベアリング62を含むがこれに限定されない任意の関連する締結、支持、及び固定デバイスは、駆動列(drive train:ドライブトレイン)64と称されることがある。
【0029】
いくつかの例では、風力タービンは、ギアボックス46のない直接駆動式風力タービンであってもよい。発電機42は、直接駆動式風力タービンにおいてロータ18と同じ回転速度で動作する。したがって、それらは一般に、ギアボックスを有する風力タービンよりも同程度の電力を供給するために、ギアボックス46を有する風力タービンで使用される発電機よりもはるかに大きな直径を有する。
【0030】
ナセル16はまた、風向28に対するロータブレード22の遠近を制御するために、ナセル16を回転させ、それによってまたロータ18をヨー軸38を中心に回転させるために使用され得るヨー駆動機構56を含み得る。
【0031】
風向28に関してナセル16を適切に位置決めするために、ナセル16は、風向計および風速計を含むことができる少なくとも1つの気象学的測定システムも含むことができる。気象測定システム58は、風向28および/または風速を含み得る情報を風力タービン制御装置36に提供し得る。実施例では、ピッチシステム32は、少なくとも部分的に、ハブ20にピッチアセンブリ66として配置される。ピッチアセンブリ66は、1つまたは複数のピッチ駆動システム68と、少なくとも1つのセンサ70とを含む。各ピッチ駆動システム68は、ピッチ軸34に沿ったロータブレード22のピッチ角を変調するために、それぞれのロータブレード22(
図1に示す)に結合される。
図2には、3つのピッチ駆動システム68のうちの1つだけが示されている。
【0032】
実施例では、ピッチアセンブリ66は、それぞれのロータブレード22をピッチ軸34を中心に回転させるために、ハブ20とそれぞれのロータブレード22(
図1に示す)に結合された少なくとも1つのピッチベアリング72を含む。ピッチ駆動システム68は、ピッチ駆動モータ74と、ピッチ駆動ギアボックス76と、ピッチ駆動ピニオン78とを含む。ピッチ駆動モータ74は、ピッチ駆動モータ74がピッチ駆動ギアボックス76に機械的な力を付与するように、ピッチ駆動ギアボックス76に結合される。ピッチ駆動ギアボックス76は、ピッチ駆動ピニオン78がピッチ駆動ギアボックス76によって回転されるように、ピッチ駆動ピニオン78に結合される。ピッチベアリング72は、ピッチ駆動ピニオン78の回転がピッチベアリング72の回転を引き起こすように、ピッチ駆動ピニオン78に結合される。
【0033】
ピッチ駆動システム68は、風力タービン制御装置36からの1つまたは複数の信号の受信時にロータブレード22のピッチ角を調整するために風力タービン制御装置36に結合される。実施例では、ピッチ駆動モータ74は、ピッチアセンブリ66が本明細書に記載されるように機能することを可能にする、電力及び/又は油圧システムによって駆動される任意の適切なモータである。あるいは、ピッチアセンブリ66は、油圧シリンダ、バネ、および/またはサーボ機構など(ただし、これらに限定されない)の任意の適切な構造、構成、配置、および/または構成要素を含み得る。特定の実施形態では、ピッチ駆動モータ74は、ハブ20の回転慣性から抽出されたエネルギー及び/又は風力タービン10の構成要素にエネルギーを供給する貯蔵エネルギー源(図示せず)によって駆動される。
【0034】
ピッチアセンブリ66はまた、特定の優先された状況の場合、および/またはロータ18の過速度(overspeed)の間、風力タービン制御装置36からの制御信号に従ってピッチ駆動システム68を制御するための1つまたは複数のピッチ制御システム80を含むことができる。実施例では、ピッチアセンブリ66は、風力タービン制御装置36から独立してピッチ駆動システム68を制御するために、それぞれのピッチ駆動システム68に通信可能に結合された少なくとも1つのピッチ制御システム80を含む。実施例では、ピッチ制御システム80は、ピッチ駆動システム68と、センサ70とに結合される。風力タービン10の通常運転中、風力タービン制御装置36は、ロータブレード22のピッチ角を調整するためにピッチ駆動システム68を制御し得る。
【0035】
実施形態によれば、例えばバッテリ及び電気コンデンサを含む発電機84が、ハブ20に又はハブ20内に配置され、センサ70、ピッチ制御システム80、及びピッチ駆動システム68に結合され、これらの構成要素に電力源を提供する。本実施例では、発電機84は、風力タービン10の運転中にピッチアセンブリ66に継続的な電力源を提供する。代替実施形態では、発電機84は、風力タービン10の電力損失事象(electrical power loss event)の間だけ、ピッチアセンブリ66に電力を供給する。電力損失事象は、電力網の損失またはディップ(power grid loss or dip)、風力タービン10の電気システムの誤動作、および/または風力タービン制御装置36の故障を含み得る。電力損失事象の間、発電機84は、ピッチアセンブリ66が電力損失事象の間に動作できるように、ピッチアセンブリ66に電力を供給するために動作する。
【0036】
例では、ピッチ駆動システム68、センサ70、ピッチ制御システム80、ケーブル、および発電機84はそれぞれ、ハブ20の内面(inner surface)88によって規定される空洞(cavity)86内に配置される。代替実施形態では、これらの構成要素は、ハブ20の外面に対して位置決めされ、外面に直接又は間接的に結合され得る。
【0037】
本開示の一態様では、風力タービン10のアップタワー構成要素110の外装のメンテナンスを行うためのキャビン100が提供される。キャビン100は、キャビン内でオペレータ及び/又は工具を支持するように構成される。キャビン100は、キャビンがアップタワー構成要素110に対して回転可能であるように、風力タービン10に取り付け可能である。
【0038】
この態様によれば、風力タービンロータ18(ナセル16)が回転(ヨーイング)したときに、アップタワー構成要素110の周りを移動することができる、またはハブ20(またはナセル16)とともに移動することができる、キャビン100が提供される。一人又は複数のオペレータ及び/又は1つ又は複数の工具がキャビン100の内部に存在し、キャビン100から必要なメンテナンス作業を行うことができる。いくつかの例では、工具は、ロボット工具、例えば、キャビンの外側、例えば、地上から制御作動可能な工具であってもよい。
【0039】
例えば、キャビンは、ナセルや直接駆動風力タービンなどのアップタワー構成要素の外部側に接続されるように構成され、当該アップタワー構成要素の周囲を移動可能であってもよい。キャビンは、メンテナンスを行うために、アップタワー構成要素の周囲のある位置に停止して保持されることがある。あるいは、例えばキャビンはハブの外側に接続され、ハブ(一般的には風力タービンのロータ)の回転時にハブと共に移動するように構成されることもある。キャビンは、直接駆動式風力タービンのハブに対して同じ位置に保たれるかもしれないが、キャビンの位置は、例えば直接駆動式風力タービンの発電機に対して変化させることができる。さらに他の例では、キャビンがナセルに対して同じ位置に保たれるように、キャビンがナセルの外部底面に接続されるように構成されることもある。ナセルがヨーイングされるとき、キャビンは、例えば、ヨーシステムに対して移動するが、ナセルに対しては移動しないことがある。
【0040】
一連の位置(sequence of positions)に沿って移動可能なキャビンは、オペレータがより快適かつ安全な方法で、到達が困難な風力タービンの領域にアクセスすることを可能にするかもしれない。
【0041】
キャビン100は、例えば、キャビン100が取り付けられているアップタワー風力タービン構成要素110の周囲で、またはハブ20もしくはナセルとともに、アップタワー構成要素110に対して移動することができるので、アップタワー風力タービン構成要素110のいくつかの異なる領域に安全かつ容易にアクセスすることができる。例えば、直接駆動式風力タービン発電機の外部側の異なる接線位置、すなわち発電機の接線方向に沿って、必要に応じてアクセスし、メンテナンスすることができる。
【0042】
アップタワー構成要素は、いくつかの例では、静的なアップタワー構成要素であってもよい。静的なアップタワー構成要素は、構成要素がある期間中に大きく動くことは、全くないとしても期待できないという意味で、アップタワー風力タービン構成要素として理解することができる。例えば、構成要素は、特定の動作及び/又は条件に応答してのみ動くように構成されている場合があり、又は構成要素は、メンテナンスが行われるために停止され、任意にロックされている場合がある。このような期間は、例えば、望ましくない振動やヨーイングなどの動作によって終了することがある。したがって、静止アップタワー構成要素は、例えば、(例えば、直接駆動式風力タービンの)ナセル又はステータであってもよい。静的なアップタワー構成要素(static uptower component)は、メンテナンスが行われる際に一定期間固定されるかロックされる場合、(例えば直接駆動式風力タービンの)発電機ロータまたは風力タービンロータまたはハブである可能性もある。静的なアップタワー構成要素は、ヨーシステムである場合もある。
【0043】
アップタワー構成要素110は、例えば、風力タービン構成要素、例えば、いくつかの例では、直接駆動風力タービンの発電機の外部ロータ又は外部ステータであってもよい。ここで、外部ロータは、ステータとロータとの間に半径方向のエアギャップを有するステータを取り囲むロータを指し、外部ステータは、そのような半径方向のエアギャップを有するロータを取り囲むステータを指す。
【0044】
アップタワー構成要素110は、いくつかの他の例では、ナセル16又はヨーシステムであってもよい。本開示を通じて説明されるキャビン100は、例えば、ナセル(及び/又はタワー15の頂部)の下側、又は直接駆動式風力タービンの発電機の下側に、オペレータにとって安全かつ快適な方法で到達するために特に有用であり得る。
【0045】
直接駆動式風力タービンの外部ステータに取り付けられたキャビン100の概略的な例が、
図3に示されている。直接駆動式風力タービンの外部ステータに取り付けられたキャビン100の別の概略例を
図4A及び
図4Bに示す。これらの図のキャビンは、キャビン内に少なくとも1人以上のオペレータを支持するように構成されており、例えばサイズや形状が決められている。
図3及び
図4Bは、ステータ110の周りの2つの異なる接線位置におけるキャビン100を示す。これらの図の例では、キャビン100は、キャビン100がアップタワー構成要素110の中心軸を中心として回転可能であるように、アップタワー構成要素110(これらの図では発電機ステータ:generator stator)に取り付け可能である。中心軸は、軸方向122に沿って又は長手方向に沿って延びるアップタワー構成要素の軸を指す場合がある。いくつかの例では、例えば、アップタワー構成要素が直接駆動式風力タービンの発電機または発電機ロータまたは発電機ステータである場合、中心軸は、発電機(構成要素)の軸線方向に沿って延びることがある。いくつかの他の例では、例えば、アップタワー構成要素がナセルである場合、中心軸は、ナセルの長手方向に沿って延びることがある。
【0046】
図3の例では、キャビン100はまた、キャビン100の中心軸を中心として回転可能であるように、アップタワー構成要素100に取り付け可能である。キャビンの中心軸は、アップタワー構成要素110の中心軸に平行であるキャビン100の軸を指す場合がある。
【0047】
図4A及び
図4Bの例に見られるように、キャビン100は、フロア120がキャビン100の異なる位置において実質的に水平な支持を提供するようにキャビン100に対して変位可能なフロア120を更に含んでいてもよい。例えば、フロア120は、キャビン100が回転したときにキャビン100内のオペレータに水平支持を提供するために、キャビン100の接線方向(tangential direction)111に沿って回転するように構成され得る。このように、キャビン100がステータ又は任意の適切なアップタワー構成要素の周りを回転するとき、又はハブと共に回転するとき、フロア120は、常に水平な向きを有することができる。したがって、オペレータは、そのようなフロア120が提供されない場合よりも、キャビン100の内部でより安定し、快適である可能性がある。いくつかの例では、フロア120は、プラットフォーム、例えば、長方形状又は正方形状のプラットフォームであってもよい。
【0048】
フロア120は、キャビンの内部に移動可能に結合されてもよい。いくつかの例では、フロア120は、キャビン100の内壁に沿って、またはキャビン内の構造物に沿って変位可能であってもよい。フロア120は、キャビン100に沿って又はキャビン100の内部を移動するための1つ又は複数の適切なガイド要素(suitable guiding elements )116を有することができる。例えば、キャビン100は、フロア120が移動し得る1つまたは複数のトラック115を含んでいてもよい。
【0049】
いくつかの例では、例えば
図4Bの例のように、キャビン100は、キャビン100の接線方向111に沿って延びるキャビン100の前部(front)105及び後部(back)106側の2つの反対側のトラック115を含んでいてもよい。キャビンの前部105及び後部106の側面は、いくつかの例では、ロータ18の平面と平行であってもよい。前部105は風上側であってもよく、後部106は風下側であってもよい。他の実施例では、1つ以上の接線方向に延びるトラックが、キャビン100の外側接線方向側面(outside tangential side)107に設けられてもよい。フロア120がキャビン100に対してキャビンの接線方向111に回転することを可能にするために、フロア120と1つ以上のトラック115との間に滑走パッド(Gliding pads)が設けられていてもよい。
【0050】
フロア120の回転を可能にするための1つ以上の滑動ベアリング(gliding bearings)を備える代わりに、他の適切な回転配置が提供されてもよい。例えば、フロア120をキャビン100に回転可能に結合するために、2つ以上のローラーベアリングが提供されてもよい。また、この目的のために、例えば、車又は車列(car or train)をジェットコースター(roller coaster)に可動的に連結するために使用される一組の車輪と同様に、複数の車輪が提供されてもよい。
【0051】
いくつかの例では、フロアは、キャビンに対していくつかの異なる予め定義された向きで、例えば限られた数の予め定義された向きで、所定の位置にロックまたは他の方法で固定され得る。
【0052】
図3の例には示されていないが、
図3のキャビン100は、キャビンがステータ110の周りを移動するときにキャビン内のオペレータを支持するためにキャビンに移動可能に結合される上述のようなフロア120を含むこともできる。
図3のキャビン100の内部でフロア120が回転できるようにするために、円形のトラックまたはレールが提供されることがある。
【0053】
キャビン100は、キャビン100に対してフロアをある位置に固定するための1つまたは複数の固定要素をさらに含むことができる。キャビンがメンテナンス作業が行われる位置まで移動された場合、固定要素は、一人以上のオペレータがキャビン内を歩いたり工具を動かしたりしても、フロア120を所望の向きに維持することができる。
【0054】
いくつかの例では、キャビン100は、アップタワー構成要素110の対応する取付点126に接合されるように構成された複数の取付点125をさらに含んでもよい。キャビンの取付点125は、キャビン100の接線方向111に沿って規則的に間隔を空けて配置されてもよい。同様に、アップタワー構成要素、例えば直接駆動式風力タービンの外部ステータの取付点126は、アップタワー構成要素110の接線方向121に沿って規則的に間隔を空けて配置されてもよい。キャビンの連続する取付点125間の距離と、アップタワー構成要素110の連続する取付点126間の距離は、
図3に概略的に示されるように、同じであってよい。したがって、
図2の例のキャビン100がステータの周りに引っ張られるとき、キャビンの自由取付点(free attachment point)127は、点線で示されるように、ステータの自由取付点128に取り付けられ得る。
【0055】
キャビン100の取付点125の数は、適宜選択することができる。
図3の例では、キャビン100は、キャビンの外側の接線方向側面107に6つの取り付けポイント125を構成している。しかし、キャビンは、より多くのまたはより少ない取り付けポイント125を構成することができる。いくつかの例では、取り付けポイント125は、キャビン100の外側接線方向側面107の中央領域に提供されてもよい。他の例では、キャビン100の外側接線方向側面107は、1列以上のアタッチメントポイント125から構成されてもよい。例えば、キャビン100の外側接線方向側面107は、キャビンの外側接線方向側面107の前縁に近い又は前縁にある第1列の取り付けポイント125と、キャビンの外側接線方向側面107の後縁に近い又は後縁にある第2列の取り付けポイント125とから構成されても良い。
【0056】
取付点125、126は、いくつかの例では、D型リング(D-shaped rings)又は他の適切なアンカー点であってもよい。ボルトとナットを使用して、キャビンの取付点125と、アップタワー構成要素110の取付点126を取り付けることができる。これにより、キャビン100は、アップタワー構成要素110に固定され得る。したがって、キャビン100は、アップタワー構成要素に移動可能に取り付けられてもよく、キャビンは、アップタワー構成要素の周囲の特定の位置で、例えば、ピンまたはナットおよびボルトでロックされて固定されてもよい。これらの位置では、キャビンは、アップタワー構成要素の周りで移動せず、オペレータは、安全にメンテナンス作業を行うことができる。
【0057】
いくつかの例では、キャビン100は、アップタワー構成要素110の1つまたは複数のガイド要素129に沿って移動するように構成された1つまたは複数のガイド要素123をさらに含むことができる。ガイド要素129は、
図4の実施例のような、例えばレールであってもよい。
【0058】
ガイド要素123は、複数の固定取付点(fixed attachment points)125の使用よりも、キャビン100の所望の接線位置への配置をより緩やかに(more gradual placement)することができる場合がある。フロア120のガイド要素116と同様に、キャビン100の1つ以上のガイド要素123は、キャビン100が、タワー状構成要素110上のレール又は他のガイド要素に接触し、タワー状構成要素110の接線方向121に沿ってタワー状構成要素110の周りのレール上を移動できるようにする、ローラ軸受リング、滑動軸受軌道、1つ以上のギア、例えばピニオン、複数の車輪又は他の適切な要素(pinions, a plurality of wheels or other suitable elements)を含むことができる。
【0059】
キャビン100の1つ以上のガイド要素123は、例えば
図4Bの例におけるように、キャビン100の前部105及び後部106側に提供されてもよい。他の例では、キャビン100の近位接線側(proximal tangential side)108、すなわち、アップタワー構成要素に最も近くなるようにキャビンの接線側が、1つまたは複数のガイド要素123を構成することができる。
【0060】
図3及び
図4の例のようないくつかの例では、キャビンは、それ自体の中心軸の周りを回転するように構成されることがある。
【0061】
本発明のさらなる態様では、風力タービン10に、例えば、アップタワー構成要素110に可動に取り付けられたり、ハブ20に固定に取り付けられたり、さらにはナセル16に固定に取り付けられたりする、本開示を通じて説明した実施例のいずれかによるキャビン100を含む風力タービン10が提供される。風力タービン10は、タワー15と、タワー15によって支持されるアップタワー構成要素110と、本明細書に記載されるキャビンとを備える。キャビン100は、キャビンがアップタワー構成要素110に対して回転可能であるように、風力タービンに取り付けられる。
【0062】
固定されたキャビンは、キャビンがハブ(ナセル)に接続されている限り、ハブ(ナセル)へのキャビンの1つ又は複数の接続点が、その位置を変えることなく維持される方法で、ハブ(又は例えばナセル)に接続されているキャビンと理解することができる。したがって、ハブ(ナセル)が回転(ヨーイング)したときに、キャビンがハブ(ナセル)に対して移動することが防止され得る。風力タービンロータ(ナセル)は、1人または複数のオペレータがそれらの位置でメンテナンス作業を安全に行うことができるように、特定の位置で停止および固定されることがある。アップタワー構成要素100は、例えば、直接駆動式風力タービンの外部ロータ、直接駆動式風力タービンの外部ステータ又はナセル16(又はヨーシステム)であってよい。
【0063】
キャビンがロータハブ、またはいくつかの例ではナセルに固定的に取り付けられていても、これらの例のいくつかでは、取り付けは一時的なものであってもよい。例えば、メンテナンスが必要な場合、キャビンをクレーンで吊り上げ、ハブ又はナセルに取り付けることができる。メンテナンスが完了したら、キャビンを取り外すことができる。キャビンは、ナセルに可動式に取り付けられることもあることを明確にしておく。キャビンがナセルに可動または固定で取り付けられているかにかかわらず、例えばナセルおよび/またはタワーの頂部のメンテナンスを行うことができる。ヨーシステムのメンテナンスは、ナセルに取り付けられたキャビンから行うことができる。
【0064】
風力タービン10は、キャビン100をアップタワー構成要素110の周りに回転させるために、アップタワー構成要素110とキャビン100とを接続するアクチュエータ130をさらに含んでもよい。アクチュエータ130は、例えば、リニアアクチュエータ、ケーブル又は歯車(a linear actuator, a cable or a gear)であってもよい。「ケーブル」という用語は、ロープ、チェーン及び同様の要素(ropes, chains and similar elements)をカバーすることを意図している。このように、アクチュエータがキャビン100に作動すると、キャビン100がその中心軸を中心に回転することがあり、例えば
図3の実施例を参照されたい。
【0065】
キャビン100が複数のキャビン取付点125を備え、アップタワー構成要素110が複数のキャビン取付点126を備える場合、例えば
図3の例のように、キャビン100の取付点125の1つまたは複数がアップタワー構成要素110の取付点126の1つまたは複数に取り付けられることがある。ボルトおよびナットが、例えば使用され得る。これにより、キャビン100は、アップタワー構成要素110に固定され得る。
【0066】
これらの例では、アクチュエータ130は、キャビン100をアップタワー構成要素110の周りで移動させるために、アップタワー構成要素110の取付点126とキャビン100を接続してもよい。アクチュエータ130は、いくつかの例では、リニアアクチュエータ、例えば、油圧アクチュエータ又はケーブルであってもよい。
図3は、油圧アクチュエータを模式的に示している。ケーブルが使用され、ケーブルの端部は、例えば、アップタワー構成要素110の取付点126に取り付けられ、ケーブルの反対側の端部は、例えば、キャビン100に設けられたウィンチに取り付けられてもよい。ウィンチは、ケーブルを巻き取るためのモータを含んでいてもよい。アップタワー構成要素は、いくつかの例において、ケーブルがアップタワー構成要素の外側の接線方向側面から移動するのを避けるため、又はケーブルの軸方向122に沿った移動を抑制するための適切なエッジ又は突出部(edges or protrusions)を含んでいてもよい。軸方向は、接線方向が存在する平面に対して垂直な方向として理解され得る。ナセルの場合、軸方向は、前後方向を意味することがある。風力タービンタワーの場合、軸方向は鉛直方向を指すことがある。
【0067】
他の例では、例えば
図4A及び
図4Bの例のように、アップタワー構成要素110は、接線方向121に沿ってアップタワー構成要素110を取り囲む1つ又は複数のレール129を含んでよく、キャビン100は1つ又は複数のレール129に取り付けられてもよい。これらの例では、アクチュエータ130は、アップタワー構成要素110とキャビン100の適切な取付点126を接続してもよい。このようなアクチュエータ130は、
図3の例のように、リニアアクチュエータ又はケーブルであってもよい。アクチュエータ130は、代替的に、キャビン100をレール129に接続することができる。アクチュエータは、例えば、別のギアに噛み合うように構成されたピニオンなどの1つまたは複数のギアであってもよい。レール129は、いくつかの例において、キャビン100が噛み合って移動することができる複数の歯から構成されてもよい。キャビンの1つ以上の歯車を動かし、キャビンを歯付きレールに沿って前進させるために、モータが提供されてもよい。さらに他の実施例では、キャビンは、車輪または1つ以上のボールベアリングリングまたは1つ以上のグライディングベアリングリングを備えてもよく、モータは、車輪またはグライディングベアリングリングのボールベアリングリングを1つ以上のレール129に対して移動させるようにしてもよい。
【0068】
キャビン100がハブ20(又はナセル16)に固定的に接続される例では、キャビン100は、1つ又は複数のアーム131によって風力タービンハブ20(ナセル16)に取り付けられ得る。
図5は、4つのアーム(1つのアームは図示せず)を介してハブ20に取り付けられたキャビン100の模式的な例を示す。1つまたは複数のアームは、いくつかの例では伸縮可能である。ハブ20(ナセル)に対するキャビン100の位置は、メンテナンスが行われるべき領域へのアクセスを容易にするために変化させることができる。しかし、アーム(またはキャビンをハブ(ナセル)に固定する任意の適切なコネクタ)の接続点は、キャビンがハブ(ナセル)に接続されている間、変化することはない。
【0069】
キャビン100がハブ20(又はナセル)に固定的に取り付けられている例では、ハブ20(ナセル)は、ハブ20(ナセル)の内部からキャビン100にアクセスするためのハッチ132をさらに含んでいてもよい。風力タービンは、ハブハッチ(hub hatch)132と風力タービン10のナセル16とを接続する通路133をさらに含んでもよい。したがって、1人または複数のオペレータは、ナセル16からキャビン100に安全にアクセスすることができる。これらの例又は他の例では、オペレータがロータ18の前方からハブに入ることができるように、ハブの先端とハブのハッチ132との間に通路が設けられることもある。キャビン100は、例えば、1人以上のオペレータがキャビンに出入りするため、及び/又はメンテナンス作業を支援するための工具又は構造物を展開するために、開閉可能な適切な形状及び寸法の1つ又は複数のハッチを有することができる。ハブハッチ132は、同様に、任意の適切な形状および寸法を有することができる。
【0070】
本開示のさらなる態様では、風力タービン10のアップタワー構成要素にメンテナンスを行うための方法200が提供される。本方法は、
図6のフローチャートにおいて概略的に示されている。本方法は、ブロック210において、キャビン100の内部にオペレータ及び/又は工具を支持するように構成されたキャビン100を風力タービン10に取り付けることを含む。本方法はさらに、ブロック220において、キャビン100をアップタワー構成要素110に対して回転させてメンテナンス位置にすること、例えば、キャビン100をアップタワー構成要素110の周りに、又はハブ20と共に、又はナセル16と共にメンテナンス位置に移動させることを備える。本方法は、ブロック230において、メンテナンス位置において、アップタワー構成要素110のメンテナンスを実行することをさらに含む。
【0071】
メンテナンスを必要とする複数の場所へのアクセスは、比較的迅速な方法で実行されると、一人以上のオペレータのリスク及び不快感は低減され得る。前述したように、アップタワー構成要素110は、例えば、直接駆動式風力タービンの外部ロータ、直接駆動式風力タービンの外部ステータ、またはナセル16であってもよい。また、アップタワー構成要素110は、ヨーシステムであってもよい。キャビン100およびキャビン100が取り付けられた風力タービン10に関する説明および特徴は、本方法200に適用され得るし、その逆も同様である。
【0072】
オペレータは、キャビン100に入ることができ、キャビンは、例えば、ハブ20又はハブ20とは異なるアップタワー構成要素110に固定される。キャビン100は、開始位置(starting position)にあることがある。
【0073】
キャビン100を回転させることは、キャビン100がハブ20に固定されている例では、ハブ20を回転させることを含んでよい。オペレータは、例えば、ナセル16の内部とハブハッチ132とを接続する通路133を介してキャビン100にアクセスすることができる。次に、ハブ20は、キャビン100のための所望の位置に到達するまで、例えば、ロータブレード22への風の作用を通じて、回転させることができる。ブレードのピッチ角及び/又は発電機トルクは、ハブ100を適切な回転速度で移動させ、キャビン100を所望の位置で停止させるために変化させることができる。その後、風力タービンロータ18は、ロックされてもよい。他の例では、発電機は、風力タービンロータ18を回転させ、キャビン100をハブ20と共に移動させるためのモータとして使用されてもよい。
【0074】
キャビン100を回転させることは、キャビン100がナセル16に固定されているいくつかの例では、ナセル16をヨーイングすることを含んでよい。他の例では、キャビンは、ナセルに対して、例えば1つ又は複数のレール上で、又は他の適切な方法で移動することができる。ナセルに対するメンテナンス及び/又はヨーシステムに対するメンテナンスは、ナセルに可動又は固定的に取り付けられたキャビンから行うことができる。
【0075】
キャビン100が、例えば、レール129又はアップタワー構成要素110上の取付点126を介してアップタワー構成要素110に接続されている例では、キャビン100を回転させることは、キャビン100をアップタワー構成要素110の周りに引っ張る又は押すことを含む場合がある。したがって、キャビン100は、アップタワー構成要素110の接線方向121に沿って移動することができる。すなわち、キャビン100を回転させることは、一般に、キャビン100をアップタワー構成要素の中心軸の周りに回転させることを含む場合がある。
【0076】
この方法は、さらに、キャビン100をアップタワー構成要素110に対して回転させて、さらなる、すなわち新たなメンテナンス位置に移動させること、例えば、キャビン100をアップタワー構成要素110の周りに、またはハブ20もしくはナセル16とともに、さらなるメンテナンス位置に移動させ、さらなるメンテナンス位置でアップタワー構成要素のメンテナンスを実行することを含んでよい。すなわち、アップタワー構成要素110の他の領域でメンテナンスがさらに必要な場合、現在のメンテナンス位置が開始位置となり、そこからキャビンを他のメンテナンス位置に移動させる。
【0077】
いくつかの例では、キャビン100は、メンテナンス作業を行うことが必要な場合に風力タービンに設置されることがある。メンテナンスが終了した後、キャビン100は風力タービン10から取り外すことができる。クレーンなどの1つまたは複数の持ち上げ装置を使用して、キャビン100を持ち上げて設置することができる。
【0078】
本開示のさらなる態様によれば、さらなる方法300が提供される。方法300は、
図7に概略的に示される。本方法は、ステップ310において、直接駆動式風力タービンの風力タービン発電機の外側にキャビン100を取り付けることを含む。一人または複数のオペレータが、発電機に固定されたキャビン100に、例えば直接駆動式風力タービンの発電機の外部ロータまたは外部ステータに入ることができる。本方法は、ステップ320において、風力タービン発電機の円周に沿ってキャビン100をメンテナンス位置に変位(displace)させることをさらに含む。本方法は、ステップ330において、メンテナンス位置でメンテナンスを実行することをさらに含む。
【0079】
本方法は、さらに、風力タービンの円周に沿ってキャビン100を新たなメンテナンス位置まで変位させることと、新たなメンテナンス位置でメンテナンスを実行することとを含んでいてもよい。一般に、本方法は、直接駆動式風力タービンの発電機の接線方向121に沿ってキャビン100を、メンテナンスが必要な位置に順次変位させる、例えば回転させることを含んでいてもよい。
【0080】
キャビン100は、1つ以上のレール129又は他のガイド要素に沿ってキャビン100を移動させることによって変位させることができる。レール129は、外部ロータ(external rotor)又はステータに(又は一般に本開示の任意のアップタワー構成要素に)恒久的に取り付けられてもよく、又はメンテナンスが必要な場合にロータ又はステータに取り付けられてもよい。レール129は、外部ロータまたはステータに持ち上げて取り付けることができる複数のレール部分に分割されてもよい。レール129またはレール部分を外部ロータまたはステータに結合するために、1つまたは複数のヘリコプター、ドローン、クレーンまたは適切な持ち上げ装置を使用することができる。いくつかの例では、レール129又はレール部分の間に中間要素(intermediate element)が提供されることがある。中間要素は、例えば、外部ロータ又はステータにクランプされるように構成されることがある。
【0081】
キャビン100を順次回転させることは、発電機の外部ロータまたは外部ステータの1つまたは複数の取付点126からキャビンの1つまたは複数の取付点125を取り外し、キャビンを、例えばキャビンを引っ張ることによって回転させ、キャビン100の1つまたは複数の他の取付点125を外部ロータまたは外部ステータの1つまたは複数の他の取付点126に取り付けることを含み得る。キャビン100は、メンテナンスが行われる位置のそれぞれで固定されてもよい。例えば、キャビン100を固定し、発電機の接線方向121に沿ったキャビン100のさらなる移動を回避するために、ボルトおよびナットが使用されてもよい。キャビン100を回転させる前に、キャビンの固定を解除する、例えばロックを解除する必要がある場合がある。
【0082】
いくつかの例では、キャビン100は、発電機の外部ロータまたは外部ステータとキャビン100との間の1つまたは複数のリニアアクチュエータ、ケーブルまたはギヤ接続(linear actuators, a cable or a geared connection)を使用して変位することができる。
【0083】
キャビン100の変位の間、例えばキャビン100の順次回転(sequential rotation)の間、キャビン100のフロア120は、水平方向に維持されてもよい。フロア120は、キャビン100が風力タービンの円周に沿って変位するときにキャビン100の接線方向111に沿って移動するように構成されたプラットフォームであってもよい。したがって、オペレータは、キャビン100の内部で快適な姿勢になることができる。
【0084】
キャビン100、キャビン100が取り付けられる風力タービン10、および方法200に関するこれまでの説明および特徴は、この方法300にも適用することができ、その逆も同様である。
【0085】
さらに詳細に図示されていないとしても、本明細書に開示されたキャビン、風力タービン及び方法の実施例のいずれにおいても、キャビンは、人に加えて又は人の代わりに工具を収容するように構成されてもよい。キャビンは、本明細書に例示されるように、アップタワー構成要素に対して変位することができる。工具、例えば自動化されたロボットは、その後、必要に応じてメンテナンスを実行することができる。いくつかの例では、そのようなキャビンは、風力タービン構成要素に対する工具の位置を特定するためのビデオカメラ又は他の可視化システム(visualization system)を含むことができる。
【0086】
いくつかの例では、工具がメンテナンスを行うことができるように、キャビンを少なくとも部分的に開くことができる。例えば、ハッチや開閉可能な屋根を使用して、工具がキャビンから外に出ることができるようにすることができる。
【0087】
本書では、好ましい実施形態を含む教示を開示するために例を用い、また、任意の装置またはシステムの製造および使用ならびに組み込まれた任意の方法の実行を含む教示を当業者が実践することを可能にする。特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に思い浮かぶ他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と実質的でない差異を有する同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。説明した様々な実施形態からの側面、およびそのような各側面に対する他の既知の等価物は、本願の原理に従って追加の実施形態および技術を構築するために、当業者によって混合およびマッチングすることができる。図面に関連する参照符号が請求項において括弧内に配置されている場合、それらは単に請求項の分かりやすさを向上させようとするためのものであり、請求項の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0088】
10:風力タービン 12:地面 14:支持システム 15:タワー 16:ナセル 18:ロータ 20:ハブ 22:ロータブレード 23:基準線 24:ブレード根元部分 25:ピッチ角 26:荷重伝達領域 28:風向 30:ロータ軸 32:ピッチシステム 34:ピッチ軸 36:風力タービン制御装置 38:ヨー軸 40:プロセッサ 42:発電機 43:通信モジュール 44:メインシャフト 46:ギアボックス 48:高速シャフト 50:カップリング 52:メインフレーム 54:デカップリング支持手段 56:ヨー駆動機構 58:気象測定システム 60:主前方支持ベアリング 62:後方支持ベアリング 64:駆動列 66:ピッチアセンブリ 68:ピッチ駆動システム 70:センサ 72:ピッチベアリング 78:ピッチ駆動ピニオン 80:ピッチ制御システム 84:発電機 86:空洞 88:内面 90:変圧器 100:キャビン 103:トルクアーム 105:前部 106:後部 107:外側接線方向側面 108:近位接線側 110:アップタワー構成要素 111:接線方向 115:トラック 116:ガイド要素 120:フロア 121:接線方向 122:軸方向 123:ガイド要素 125:取付点(キャビン) 126:取付点(アップタワー構成要素) 127:自由取付点(キャビン) 128:自由取付点(アップタワー構成要素) 129:ガイド要素 130:アクチュエータ 131:アーム 132:ハブハッチ 133:通路
【外国語明細書】