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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121091
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】描画装置および描画方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240830BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G03F7/20 505
G01B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027990
(22)【出願日】2023-02-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネエレクトロニクスの製造基盤強化に向けた技術開発事業/半導体製造装置の高度化に向けた開発/直描露光機に関する高解像度化開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慎也
【テーマコード(参考)】
2F065
2H197
【Fターム(参考)】
2F065AA09
2F065AA20
2F065FF16
2H197AA28
2H197AA29
2H197CA07
2H197CB11
2H197CB16
2H197CD12
2H197CD15
2H197CD17
2H197CD18
2H197CD41
2H197CD43
2H197DA03
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
(57)【要約】
【課題】基板を載置するステージを移動させながら光による描画を行う技術において、装置の大型化および高コスト化を招くことなく、リニアエンコーダーの原理によるステージ位置計測を可能とする。
【解決手段】本発明に係る描画装置および描画方法は、上面に基板を載置したステージを移動させて、互いに交わる主走査方向への主走査移動と副走査方向への副走査移動とを交互に実行しながら、基板に描画部から光を照射して描画する。ステージと一体的に設けられ主走査方向に沿ってスケールが形成されたリニアスケールを読取ヘッドが読み取ることにより、主走査方向における描画部とステージとの相対位置を検出し、ステージが副走査方向に移動するとき、ステージの移動量に応じた移動量だけ読取ヘッドを移動させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に基板を載置可能なステージと、
前記ステージに載置された前記基板に光を照射して描画する描画部と、
前記描画部に対して相対的に前記ステージを移動させて、前記上面に平行かつ互いに交わる主走査方向への主走査移動と前記主走査方向に交わる副走査方向への副走査移動とを実行する第1移動機構と、
前記主走査方向における前記描画部と前記ステージとの相対位置を検出する位置検出部と
を備え、
前記位置検出部は、
前記ステージと一体的に設けられ、前記主走査方向に沿ってスケールが形成されたリニアスケールと、
前記スケールを読み取る読取ヘッドと、
前記描画部に対して相対的に、前記読取ヘッドを前記副走査方向に移動させる第2移動機構と
を有し、
前記第1移動機構により前記ステージが前記副走査方向に移動されるとき、前記第2移動機構は、前記ステージの移動量に応じた移動量だけ前記読取ヘッドを移動させる、描画装置。
【請求項2】
前記リニアスケールは、前記主走査方向および前記副走査方向のそれぞれにスケールが設けられた二次元リニアスケールである、請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記位置検出部は、前記読取ヘッドの読み取り結果に基づき、前記主走査方向および前記副走査方向それぞれにおける前記ステージの位置と、前記ステージのヨーイングの大きさとを検出する、請求項2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記位置検出部は、前記副走査方向に位置を異ならせて設けられた複数の前記リニアスケールと、前記複数のリニアスケールの各々に対応して設けられた複数の読取ヘッドとを有する、請求項1に記載の描画装置。
【請求項5】
前記位置検出部は、前記複数の読取ヘッド各々の読み取り結果に基づき、前記主走査方向における前記ステージの位置と、前記ステージのヨーイングの大きさとを検出する、請求項4に記載の描画装置。
【請求項6】
前記複数のリニアスケールのうち少なくとも1つは、前記主走査方向および前記副走査方向のそれぞれにスケールが設けられた二次元リニアスケールである、請求項4に記載の描画装置。
【請求項7】
前記位置検出部は、前記複数の読取ヘッドの読み取り結果に基づき、前記主走査方向および前記副走査方向それぞれにおける前記ステージの位置と、前記ステージのヨーイングの大きさとを検出する、請求項6に記載の描画装置。
【請求項8】
前記第1移動機構により前記ステージが前記副走査方向へ移動する期間と、前記第2移動機構により前記読取ヘッドが移動する期間とが互いに重ならない、請求項1ないし7のいずれかに記載の描画装置。
【請求項9】
上面に基板を載置したステージを移動させて、前記上面に平行かつ互いに交わる主走査方向への主走査移動と前記主走査方向に交わる副走査方向への副走査移動とを交互に実行しながら、前記基板に描画部から光を照射して描画する描画方法であって、
前記ステージと一体的に設けられ、前記主走査方向に沿ってスケールが形成されたリニアスケールを読取ヘッドが読み取ることにより前記主走査方向における前記描画部と前記ステージとの相対位置を検出し、
前記ステージが前記副走査方向に移動するとき、前記ステージの移動量に応じた移動量だけ前記読取ヘッドを移動させる、描画方法。
【請求項10】
前記ステージが前記副走査方向へ移動する期間と、前記読取ヘッドが移動する期間とが互いに重ならない、請求項9に記載の描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板、ガラス基板等の基板にパターンを描画する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板に配線パターン等のパターンを形成する技術として、表面に感光層が形成された基板に対し形成すべきパターンに応じた光照射を行うことで感光層を露光させるものがある。例えば特許文献1には、描画すべきパターンに応じて変調した光ビームを基板に照射することで、基板に所定のパターンを描画する装置が記載されている。また例えば特許文献2には、パターン形状に対応するレチクルを介して露光用照明光を基板に照射することでパターンを描画する装置が記載されている。
【0003】
これらの描画装置においては、基板の全体に描画を行うために、部分的な露光が光の入射位置を変化させながら複数回実行される。具体的には、基板を載置するステージを主走査方向へ移動させる主走査移動と、これに交わる副走査方向にステージをステップ送りする副走査移動とを交互に実行する、いわゆるステップ・アンド・リピート方式またはステップ・アンド・スキャン方式の走査移動を行いながら露光が実行される。
【0004】
基板上の適切な位置に描画が行われるために、走査移動時のステージ位置が正確に計測される必要がある。この目的のために、特許文献1に記載の技術では、レーザー干渉計を用いた位置計測部が用いられている。一方、特許文献2に記載の技術では、計測ステージに形成された二次元スケールを光学的に読み取るリニアエンコーダーにより、ステージ位置が計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-169549号公報
【特許文献2】特許第5035247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの位置計測技術の間では、計測精度や分解能、長期的な安定性の面で優れていることから、これまでレーザー干渉計方式が主に使用されてきた。しかしながら、さらなる計測精度の向上を図るのに際して、レーザー光の光路上の雰囲気の温度揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が大きな誤差要因となってきている。
【0007】
一方、リニアエンコーダー方式でも近年では性能向上が進んでおり、特に分解能の点ではレーザー干渉計方式と同等以上のものが実用化されてきている。ただし、リニアエンコーダー方式の位置計測技術では、スケールが刻まれたリニアスケールとこれを読み取る読取ヘッドとを互いに対向させて配置する必要がある。このため、主走査方向および副走査方向への移動を伴うステップ・アンド・リピート方式またはステップ・アンド・スキャン方式のステージ移動と組み合わせるためには、特許文献2に記載されているように、読取ヘッドを多数配置してステージの移動範囲の全体をカバーする必要がある。
【0008】
特に、パターンの高精細化や基板の大型化が進む現状においては、1枚の基板に対する副走査方向へのステップ送りが多数回必要となってきており、このような移動範囲に対応するには多数の読取ヘッドが必要となる。このことが、装置の大型化および高コスト化を招くという問題が従来技術には残されている。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板を載置するステージを移動させながら光による描画を行う技術において、装置の大型化および高コスト化を招くことなく、リニアエンコーダーの原理によるステージ位置計測を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の一の態様は、上面に基板を載置可能なステージと、前記ステージに載置された前記基板に光を照射して描画する描画部と、前記描画部に対して相対的に前記ステージを移動させて、前記上面に平行かつ互いに交わる主走査方向への主走査移動と前記主走査方向に交わる副走査方向への副走査移動とを実行する第1移動機構と、前記主走査方向における前記描画部と前記ステージとの相対位置を検出する位置検出部とを備える描画装置である。この描画装置において、前記位置検出部は、前記ステージと一体的に設けられ、前記主走査方向に沿ってスケールが形成されたリニアスケールと、前記スケールを読み取る読取ヘッドと、前記描画部に対して相対的に、前記読取ヘッドを前記副走査方向に移動させる第2移動機構とを有し、前記第1移動機構により前記ステージが前記副走査方向に移動されるとき、前記第2移動機構は、前記ステージの移動量に応じた移動量だけ前記読取ヘッドを移動させる。
【0011】
このように構成された発明では、主走査方向に延設されステージと一体的に移動するリニアスケールのスケール(目盛)を読取ヘッドが読み取ることで、ステージの主走査方向における位置が検出される。すなわち、位置検出部は、リニアエンコーダー方式の計測原理により、ステージの主走査方向位置を計測する。一方、ステージが副走査移動に移動する際には、その移動量に応じた量だけ、読取ヘッドが副走査方向に移動される。
【0012】
そのため、ステージと一体的に移動するリニアスケールが副走査方向に移動すると、これに追随して読取ヘッドも副走査方向に移動する。したがって、移動後の読取ヘッドによってスケールを読み取ることで、引き続きステージの位置検出を行うことが可能である。このように、本発明によれば、ステージの副走査方向への移動回数が多くなっても読取ヘッドの設置数を増やす必要がなく、少数の読取ヘッドを使用してステージの位置検出を行うことができる。
【0013】
また、この発明の他の態様は、上面に基板を載置したステージを移動させて、前記上面に平行かつ互いに交わる主走査方向への主走査移動と前記主走査方向に交わる副走査方向への副走査移動とを交互に実行しながら、前記基板に描画部から光を照射して描画する描画方法であって、前記ステージと一体的に設けられ、前記主走査方向に沿ってスケールが形成されたリニアスケールを読取ヘッドが読み取ることにより前記主走査方向における前記描画部と前記ステージとの相対位置を検出し、前記ステージが前記副走査方向に移動するとき、前記ステージの移動量に応じた移動量だけ前記読取ヘッドを移動させる。
【0014】
このように構成された発明では、上記した描画装置の発明と同様の原理により、ステージの副走査方向への移動回数が多くなった場合でも少数の読取ヘッドによりステージの位置検出を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明によれば、リニアスケールと読取ヘッドとの対により構成されるリニアエンコーダーでステージ位置を検出するのに際して、ステージの副走査移動に対応して読取ヘッドも副走査方向に移動する。このため、ステージの副走査方向への移動回数が多い場合でも少数の読取ヘッドによる位置検出が可能であり、装置の大型化や高コスト化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る描画装置の第1実施形態を模式的に示す正面図である。
図2図1の露光装置が備える電気的構成の一例を示すブロック図である。
図3】露光装置の主要部をY方向に見た図である。
図4】ステージ駆動機構の構成を模式的に示す斜視図である。
図5】露光ヘッドを2組設けた構成例を示す図である。
図6】位置検出機構における位置検出の原理を説明する図である。
図7】この実施形態における露光動作の処理内容を示すフローチャートである。
図8】ステージおよび読取ヘッドの移動態様を示す図である。
図9】第2実施形態の露光装置の主要部をY方向に見た図である。
図10】ステージ駆動機構および周辺の構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は本発明に係る描画装置の第1実施形態としての露光装置の概略構成を模式的に示す正面図であり、図2図1の露光装置が備える電気的構成の一例を示すブロック図である。図1および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向、鉛直方向であるZ方向およびZ方向に平行な回転軸を中心とする回転方向θを適宜示す。
【0018】
露光装置1は、レジストなどの感光材料の層が形成された基板S(露光対象基板)に所定のパターンのレーザー光を照射することで、感光材料にパターンを描画する。基板Sとしては、例えば半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板、各種表示装置用のガラス基板などの各種基板を適用可能である。また、その形状は特に限定されず、例えば円板状基板、矩形基板、特定の外形に加工された異形基板等を基板Sとして適用可能である。
【0019】
露光装置1は本体11を備え、本体11は、本体フレーム111と、本体フレーム111に取り付けられたカバーパネル(図示省略)とで構成される。そして、本体11の内部と外部とのそれぞれに、露光装置1の各種の構成要素が配置されている。
【0020】
露光装置1の本体11の内部は、処理領域112と受け渡し領域113とに区分されている。処理領域112には、主として、ステージ2、ステージ駆動機構3、露光ユニット4、アライメントユニット5および位置検出機構8が配置される。これらの各部は、ベース部100上に配置され、または、ベース部100からこれを跨ぐように配置されるガントリー状の支持フレーム101に取り付けられる。また、本体11の外部には、アライメントユニット5に照明光を供給する照明ユニット6が配置されている。受け渡し領域113には、処理領域112に対して基板Sの搬出入を行う搬送ロボット等の搬送装置7が配置される。さらに、本体11の内部には制御部9が配置されており、制御部9は、露光装置1の各部と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する。
【0021】
本体11の内部の受け渡し領域113に配置された搬送装置7は、図示しない外部の搬送装置または基板保管装置から未処理の基板Sを受け取って処理領域112に搬入(ローディング)するとともに、処理領域112から処理済みの基板Sを搬出(アンローディング)し外部へ払い出す。未処理の基板Sのローディングおよび処理済みの基板Sのアンローディングは制御部9からの指示に応じて搬送装置7により実行される。
【0022】
ステージ2は、平板状の外形を有し、その上面に載置された基板Sを水平姿勢に保持する。ステージ2の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を付与することによって、ステージ2上に載置された基板Sをステージ2の上面に固定する。このステージ2はステージ駆動機構3により駆動される。
【0023】
ステージ駆動機構3は、ステージ2をY方向(主走査方向)、X方向(副走査方向)、Z方向および回転方向θ(ヨー方向)に移動させるX-Y-Z-θ駆動機構である。ステージ駆動機構3は、Y方向に延設された単軸ロボットであるY軸ロボット31と、Y軸ロボット31によってY方向に駆動されるY移動テーブル32と、Y移動テーブル32の上面においてX方向に延設された単軸ロボットであるX軸ロボット33と、X軸ロボット33によってX方向に駆動されるX移動テーブル34と、X移動テーブル34の上面に支持されたステージ2をX移動テーブル34に対して回転方向θに駆動するθ軸ロボット35とを有する。
【0024】
したがって、ステージ駆動機構3は、Y軸ロボット31が有するY軸サーボモーターによってステージ2をY方向に駆動し、X軸ロボット33が有するX軸サーボモーターによってステージ2をX方向に駆動し、θ軸ロボット35が有するθ軸サーボモーターによってステージ2を回転方向θに駆動することができる。これらのサーボモーターについては図示を省略する。また、ステージ駆動機構3は、Z軸ロボット37によってステージ2をZ方向に駆動することができる。かかるステージ駆動機構3は、制御部9からの指令に応じて、Y軸ロボット31、X軸ロボット33、θ軸ロボット35およびZ軸ロボット37を動作させることで、ステージ2に載置された基板Sを移動させる。
【0025】
このようにして移動されるステージ2の位置を検出するために、位置検出機構8が設けられている。具体的には、位置検出機構8は、ステージ2の上面にY方向に延設されたリニアスケール81と、支持フレーム101に取り付けられて、リニアスケール81に刻設されたスケール(目盛)を読み取る読取ヘッド82とを有しており、これらはリニアエンコーダーを構成している。読取ヘッド82の出力は制御部9に入力される。
【0026】
露光ユニット4は、ステージ2上の基板Sより上方に配置された露光ヘッド41と、光源駆動部42、レーザー出射部43および照明光学系44を含み露光ヘッド41に対してレーザー光を照射する光照射部40とを有する。露光ユニット4は、X方向に位置を異ならせて複数設けられてもよい。
【0027】
光源駆動部42の作動によりレーザー出射部43から射出されたレーザー光が、照明光学系44を介して露光ヘッド41へと照射される。露光ヘッド41は、光照射部40から出射されたレーザー光を空間光変調器400(以下、単に「光変調器」ということがある)によって変調して、その直下を移動する基板Sに対して落射する。こうして基板Sをレーザー光ビームによって露光することで、パターンが基板Sに描画される(露光動作)。
【0028】
アライメントユニット5は、ステージ2上の基板Sより上方に配置されたアライメントカメラ51を有する。このアライメントカメラ51は、鏡筒、対物レンズおよびCCDイメージセンサーを有し、その直下を移動する基板Sの上面に設けられたアライメントマークを撮像する。アライメントカメラ51が備えるCCDイメージセンサーは、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成される。
【0029】
照明ユニット6は、アライメントカメラ51の鏡筒と光ファイバー61を介して接続され、アライメントカメラ51に対して照明光を供給する。照明ユニット6から延びる光ファイバー61によって導かれる照明光は、アライメントカメラ51の鏡筒を介して基板Sの上面に導かれ、基板Sでの反射光が、対物レンズを介してCCDイメージセンサーに入射する。これによって、基板Sの上面が撮像されて撮像画像が取得されることになる。アライメントカメラ51は制御部9と電気的に接続されており、制御部9からの指示に応じて撮像画像を取得して、この撮像画像を制御部9に送信する。
【0030】
制御部9は、上記した各ユニットの動作を制御することで各種の処理を実現する。この目的のために、制御部9は、CPU(Central Processing Unit)91、メモリー(RAM)92、ストレージ93、入力部94、表示部95およびインターフェース部96などを備えている。CPU91は、予めストレージ93に記憶されている制御プログラム931を読み出して実行し、後述する各種の動作を実行する。メモリー92はCPU91による演算処理に用いられ、あるいは演算処理の結果として生成されるデータを短期的に記憶する。ストレージ93は各種のデータや制御プログラムを長期的に記憶する。具体的には、ストレージ93は、フラッシュメモリー記憶装置、ハードディスクドライブ装置などの不揮発性記憶装置であり、CPU91が実行する制御プログラム931の他に例えば、描画すべきパターンの内容を表す設計データであるCAD(Computer Aided Design)データ932を記憶している。
【0031】
入力部94は、ユーザーからの操作入力を受け付け、この目的のために、キーボード、マウス、タッチパネル等の適宜の入力デバイス(図示省略)を有している。表示部95は、各種の情報を表示出力することでユーザーに報知し、この目的のために適宜の表示デバイス、例えば液晶表示パネルを有している。インターフェース部96は外部装置との間の通信を司る。例えば、この露光装置1が制御プログラム931およびCADデータ932を外部から受け取る際に、インターフェース部96が機能する。この目的のために、インターフェース部96は、外部記録媒体からデータを読み出すための構成(例えばディスクドライブ)および機能を備えていてもよい。
【0032】
CPU91は、制御プログラム931を実行することにより、露光データ生成部911、露光制御部912、フォーカス制御部913、ステージ制御部914などの機能ブロックをソフトウェア的に実現する。なお、これらの機能ブロックのそれぞれは、少なくとも一部が専用ハードウェアにより実現されてもよい。
【0033】
露光データ生成部911は、ストレージ93から読み出されたCADデータ932に基づき、光ビームをパターンに応じて変調するための露光データを生成する。基板Sに歪み等の変形がある場合には、露光データ生成部911は、基板Sの歪み量に応じて露光データを修正することで、基板Sの形状に合わせた描画が可能となる。露光データは露光ヘッド41に送られ、該露光データに応じて露光ヘッド41が、光照射部40から出射されるレーザー光を変調する。こうしてパターンに応じて変調された変調光ビームが基板Sに照射され、基板S表面が部分的に露光されてパターンが描画される。
【0034】
露光制御部912は、光照射部40を制御して、所定のパワーおよびスポットサイズを有するレーザー光ビームを出射させる。フォーカス制御部913は、露光ヘッド41に設けられた投影光学系を制御してレーザー光ビームを基板Sの表面に収束させる。
【0035】
ステージ制御部914はステージ駆動機構3を制御して、アライメント調整のためのステージ2の移動および露光時の走査移動のためのステージ2の移動を実現する。アライメント調整においては、ステージ2に載置された基板Sと露光ヘッド41との間における露光開始時の相対的な位置関係が予め定められた関係となるように、ステージ2の位置がX方向、Y方向、Z方向およびθ方向に調整される。一方、露光時の走査移動においては、ステージ2を一定速度でY方向に移動させることで基板Sを露光ヘッド41の下方を通過させる主走査移動と、一定ピッチでのX方向へのステップ送り(副走査移動)とが組み合わせられる。位置算出部915は、位置検出機構8の読取ヘッド82がリニアスケール81を読み取って出力する信号に基づき、ステージ2の位置を算出する。
【0036】
図3は露光装置の主要部をY方向に見た図であり、図4はステージ駆動機構3の構成を模式的に示す斜視図である。なお、図3は露光装置1を(+Y)方向に見た側面図に対応するものであるが、特にステージ駆動機構3の構成を明示するため、光照射部40、アライメントユニット5および制御部9等の記載を省略している。また、これらの図および以下の図において、装置各構成の近傍に示された破線矢印は、当該構成の移動方向を示すものとする。
【0037】
図3(a)に示すように、ステージ駆動機構3およびこれに支持されるステージ2をX方向に跨ぐように、ガントリー状の支持フレーム101がベース部100に取り付けられている。この支持フレーム101に、露光ユニット4の露光ヘッド41が取り付けられている。ここでは代表的に1基の露光ヘッド41のみを示しているが、配設数はこれに限られず任意である。互いに同一構造を有する複数の露光ヘッド41が設けられる場合、それらはX方向に等間隔に配置される。これらは走査移動において一体的に、基板Sに対し相対移動する。
【0038】
露光ヘッド41と基板Sとの相対移動は、ステージ駆動機構3がステージ2を移動させることによって実現される。すなわちステージ駆動機構3は、ステージ2をY方向に連続的に移動させる主走査移動と、ステージ2をX方向に所定ピッチだけ送る副走査移動とを交互に実行することで、露光ヘッド41から出射される露光ビームの基板Sへの入射位置を変化させ、最終的に基板S全体に対する露光動作を実現する。
【0039】
これらの動作におけるステージ2の位置検出については、位置検出機構8が担う。具体的には、図4に示すように、ステージ2の上面のうち(+X)側端部近傍に、Y方向に延びるリニアスケール81が取り付けられている。リニアスケール81は例えばガラス板で形成されており、後述するように、X方向およびY方向のそれぞれに沿って所定間隔でスケール(目盛)が刻設された二次元リニアスケールである。
【0040】
以下において「X方向スケール」というとき、X方向に沿って所定間隔で目盛が配置され、X方向における位置を検出するために用いられるものを指すこととする。同様に、「Y方向スケール」というとき、Y方向に沿って所定間隔で目盛が配置され、Y方向における位置を検出するために用いられるものを指すこととする。
【0041】
リニアスケール81の上方には読取ヘッド82が設けられている。読取ヘッド82はリニアスケール81のスケールを光学的に読み取り、読み取り結果に応じた信号を出力する。後述するように、読取ヘッド82は、二次元のリニアスケール81に設けられたX方向のスケールおよびY方向のスケールをそれぞれ個別に読み取ることのできる、二次元読取ヘッドである。読取ヘッド82からの出力信号は制御部9の位置算出部915に入力される。位置算出部915は、読取ヘッド82から出力される信号をカウントし、ステージ2の位置を算出する。また、その位置の変化から、移動速度および移動量を求めることが可能である。
【0042】
読取ヘッド82は、X方向を可動方向とする直動機構83を介して支持フレーム101に取り付けられている。直動機構83は、制御部9からの制御指令に応じて、読取ヘッド82を所定の可動範囲内でX方向に移動させる。直動機構としては、例えばリニアモーター、ボールねじ機構、ラックピニオン機構などを用いることができる。
【0043】
読取ヘッド82は、X方向においてリニアスケール81と対応する位置に位置決めされる。読取ヘッド82のY方向位置は変更されない。したがって、ステージ2がY方向に移動(主走査移動)するとき、リニアスケール81は読取ヘッド82の直下位置を通過してゆき、これにより読取ヘッド82はリニアスケール81に設けられたスケールを順次読み取ってゆく。
【0044】
一方、ステージ2のX方向への移動(副走査移動)に対しては、該移動に連動させるように、直動機構83が読取ヘッド82をX方向に移動させる。これにより、副走査移動の前後のそれぞれにおいて、読取ヘッド82がリニアスケール81と対向した状態を維持することができる。
【0045】
読取ヘッド82の可動範囲の設定について、図3(b)および図3(c)を参照して説明する。図3(b)は、露光ヘッド41から出射されるレーザー光Lが基板Sの(+X)側端部に入射するときのステージ2の位置を示している。また、図3(c)は、露光ヘッド41から出射されるレーザー光Lが基板Sの(-X)側端部に入射するときのステージ2の位置を示している。
【0046】
このように、副走査移動におけるステージ2の移動範囲は、X方向における基板Sの両端部を含む全域に露光ビームLが照射されるように設定される。したがって、読取ヘッド82の可動範囲も、ステージ2の移動範囲の全体にわたってリニアスケール81との対向配置が実現されるように設定される。すなわち、図3(b)に示すようにステージ2がその移動範囲内で最も(-X)方向に寄った位置にあるときのリニアスケール81の直上位置と、図3(c)に示すようにステージ2がその移動範囲内で最も(+X)方向に寄った位置にあるときのリニアスケール81の直上位置とを含むように、可動範囲が定められる。
【0047】
この例のように露光ヘッド41が1組だけ設けられる構成例では、ステージ2および読取ヘッド82の移動量は、実質的に基板SのX方向における長さと略同じとなる。一方、次に説明するように、露光ヘッド41がX方向に複数組並べられている構成例では、個々の露光ヘッド41は基板Sの一部領域だけを露光すればよいので、ステージ2および読取ヘッド82の必要な移動量はより小さくなる。
【0048】
図5は露光ヘッドを2組設けた構成例を示す図である。図5(a)に示すように、例えば2組の露光ヘッド41,41が、それらの配列ピッチPが基板SのX方向長さWxの半分に設定されているとき、各露光ヘッド41は、基板Sの全面のうちそれぞれX方向において半分ずつを露光すればよいこととなる。したがって、図5(b)および図5(c)に示すように、ステージ2および読取ヘッド82の移動量は、図3(b)および図3(c)に示した事例よりも小さくて済む。露光ヘッド41の配設数が多いほど、ステージ2および読取ヘッド82の移動量は少なくなる。
【0049】
なお、近年では基板Sの大型化およびパターンの微細化が進んでいるため、1回の主走査移動で露光可能な領域は基板Sの表面のごく一部であり、たとえ多数の露光ヘッドを設けたとしても、多数回の、例えば数十ステップの副走査移動が必要となっている。特許文献2に記載の従来技術では、このような移動範囲の全体をカバーするために多数の読取ヘッドを配置する必要がある。これに対して、本実施形態では、読取ヘッド82を副走査方向に移動させる直動機構83を有しているため、読取ヘッド82を複数設ける必要はない。
【0050】
図6は位置検出機構における位置検出の原理を説明する図である。前記したように、この実施形態の位置検出機構8は、二次元リニアスケール81とこれを読み取る読取ヘッド82との組み合わせによってステージ2の位置検出を行っている。具体的には、図6(a)に示すように、読取ヘッド82は、それぞれスケールを光学的に検出する3つの光学センサー821,822,823を有する。一方、リニアスケール81は、X方向に一定ピッチで形成されたX方向スケールSxと、Y方向に一定ピッチで形成されたY方向スケールSyとを有している。
【0051】
なお、ここでは原理説明のため、このような単純なスケールパターンを有する二次元リニアスケールを例示しているが、二次元リニアスケールとしてはこれ以外にも種々のスケールパターンのものが実用化されており、本実施形態でもそれらから適宜選択して用いることが可能である。また、スケールの分解能としては、本装置のステージ位置制御において必要とされる精度よりも高いものが用いられる。例えばナノメートルオーダーの分解能を有するリニアスケールが製品化されており、本実施形態に好適に適用可能である。
【0052】
3つの光学センサーのうち1つの光学センサー823は、Y方向スケールSyを読み取るように配置されている。一方、他の2つの光学センサー821,822は、X方向スケールSxを読み取るように配置され、しかもそれらの位置はY方向に異なっている。以下の説明では、X方向スケールを読み取ることのできる光学センサー(例えば、この例における光学センサー821,822)を単に「X方向センサー」、Y方向スケールを読み取ることのできる光学センサー(例えば、この例における光学センサー823)を単に「Y方向センサー」と、それぞれ称することがある。
【0053】
なお、例えば二次元イメージセンサーのように、1つの光学センサーが互いに直交する2種類のスケールを読み取ることができる場合には、当該1つの光学センサーに「X方向センサー」としての機能と「Y方向センサー」としての機能とを兼備させることも可能である。
【0054】
このように構成された読取ヘッド82と二次元リニアスケール81との組み合わせにより、位置検出機構8は、X方向およびY方向それぞれにおけるステージ2の位置と、Z軸に平行なθ軸まわりのステージ2の回転量(ヨーイング)とを検出することが可能である。具体的には、光学センサー821,822の少なくとも一方の読み取り結果に基づき、X方向におけるステージ2の位置を検出することができる。また、光学センサー823の読み取り結果に基づき、Y方向におけるステージ2の位置を検出することができる。さらに、次に説明するように、光学センサー821,822の読み取り結果を比較することで、ステージ2のヨーイング量を求めることができる。これらの演算は制御部9の位置算出部915により実行される。
【0055】
図6(b)に示すように、2つのX方向センサー821,822の並び方向であるY方向に対して、X方向スケールSxが角度θだけ傾いている状態を考える。この傾きに起因して、2つの光学センサー821,822がX方向スケールSxを読み取った結果に基づいて算出されるステージ2のX方向位置は互いに相違する。ここでは、光学センサー821,822の出力から算出されたステージ2のX方向位置をそれぞれ符号X1,X2により表す。また、2つの光学センサー821,822間のY方向における距離を符号dにより表す。
【0056】
そうすると、図6(b)に示す関係から、以下の計算式:
θ=arctan{(X1-X2)/d} … (式1)
により、傾きθ、つまりヨーイング量を求めることが可能である。現実的には傾きθは微小であるから、下記の近似式:
θ≒(X1-X2)/d … (式2)
を用いることが可能である。
【0057】
なお、位置検出の対象物であるステージ2と、検出の主体である読取ヘッド82とのX方向への移動が同時に行われると、露光ヘッド41に対するステージ2の移動量を適切に検出することができなくなる。この問題を解決するために、本実施形態における露光動作は以下のように構成されている。
【0058】
図7はこの実施形態における露光動作の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、制御部9のCPU91が、ストレージ93に記憶された制御プログラム931を実行することにより実現される。なお、この処理は、予めステージ2に描画対象となる基板Sが載置され、所定のアライメント調整が行われた状態で開始されるものであるが、アライメント調整技術は公知であるため、ここでは説明を省略する。
【0059】
適正な位置に基板Sが載置されたステージ2は、ステージ駆動機構3により所定の初期位置に位置決めされる(ステップS101)。そして、位置検出機構8による位置検出が開始されるとともに(ステップS102)、ステージ駆動機構3がステージ2をY方向に移動させることで主走査移動が開始される(ステップS103)。ステージ2の移動中、位置検出機構8によるステージ位置の検出が随時行われ、その結果に応じてステージ駆動機構3および露光ヘッド41の動作が制御される。
【0060】
露光ヘッド41から出射される光ビームLの入射位置が基板Sの一方端部に差し掛かる露光開始位置までステージ2が移動してくると(ステップS104)、露光ヘッド41による基板Sへの露光が開始される(ステップS105)。その際、ステージ位置の検出結果により必要に応じて、ステージ位置の補正(X方向、θ方向)および露光ヘッド41(空間光変調器400)の制御(Y方向)が随時行われる。
【0061】
ステージ2がY方向に移動し、1ストライプ分の露光が終了する露光終了位置に到達すると(ステップS106)、次いで基板Sの全体に対する露光が終了したか否かが判断される(ステップS107)。基板Sの全面に対し露光が終了していれば(ステップS107においてYES)、処理は終了する。
【0062】
一方、基板Sに未露光の領域が残っている場合には(ステップS107においてNO)、引き続き露光を行う。すなわち、ステージ2を副走査方向へ所定ピッチでステップ移動させる(ステップS108)。これにより、露光ヘッド41からの露光ビームの入射位置がX方向にシフトする。ステージ2の副走査方向への移動が終了すると、次に直動機構83が、ステージ2の移動量に応じて読取ヘッド82をX方向に移動させる(ステップS109)。このように、ステージ2と読取ヘッド82とを互いに異なるタイミングで二段階に移動させるのは次の理由による。
【0063】
図8はステージ2および読取ヘッド82の移動態様を示す図である。なお、図8では、各小図間の位置関係を明確にして理解を容易にするため、X方向スケールSxのうち1つを強調表示しているが、実機においてはこのような区別は必ずしもなされていない。ステップS108では、図8に矢印Aで示すように、読取ヘッド82(より正確には、X方向センサー821,822)が固定された状態で、ステージ2のみがX方向、例えば(+X)方向に移動する。この間もX方向センサー821,822が作動することで、ステージ2のX方向への移動量を検出することができる。このときに検出される移動量M1は、支持フレーム101に固定されている露光ヘッド41に対するステージ2の移動量であり、これは露光動作の制御に用いられる情報である。
【0064】
一方、ステップS109では、ステージ2は停止した状態で読取ヘッド82のみが(+X)方向に移動する。ただし図8では説明の便宜上、矢印Bで示すように、読取ヘッド82を基準として相対的に、ステージ2が(-X)方向に移動したものとして表している。この間も読取ヘッド82が作動することで、ステージ2に対する読取ヘッド82の移動量M2が求められる。
【0065】
ステージの副走査移動に対応するため予め多数の読取ヘッドを配置する構成では、各読取ヘッドの位置は移動ピッチに合わせた状態で固定されているため、ステージとの間の位置ずれを考慮する必要は生じない。これに対して、本実施形態では、読取ヘッド82自体が移動することで、ステージ2との相対移動はより複雑な様相を呈する。上記のように両者を異なるタイミングで移動させ、その間の移動量をそれぞれ検出しておくことで、ステージ2と露光ヘッド41との間の移動量と、ステージ2と読取ヘッド82との間の移動量とを個別に検出することができる。
【0066】
これにより、上記した位置ずれの問題を解消することができる。具体的には、読取ヘッド82が固定された状態で検出されたステージ2の移動量M1と、ステージ2が固定された状態で検出された読取ヘッド82の移動量M2との差が、ステージ2に対する読取ヘッド82の相対的な移動量、つまり上記した「位置ずれ」の量ΔMを表している。第N回(Nは自然数)の副走査移動(例えば図8の矢印A)の後に検出されるステージ位置は、読取ヘッド82の移動に際して生じた上記位置ずれを含んだものとなっている。例えば、第(N+1)回の副走査移動(例えば図8の矢印C)において読取ヘッド82の検出結果から求められるステージ2の移動量M3は、第N回のステージ移動と第(N+1)回のステージ移動との間に行われる読取ヘッド82の移動の際に生じた上記位置ずれを含んだものとなっている。
【0067】
したがって、第(N+1)回の副走査移動におけるステージ2の本来の移動量M4については、読取ヘッド82の検出結果から求められる移動量M3に、位置ずれの大きさに対応するオフセット量ΔMを加算または減算することにより、正確に求めることができる。読取ヘッド82が移動する度にステージ2に対する位置ずれは累積してゆくから、例えば初期位置を基準としてステージ位置を求める場合には、移動ごとの位置ずれ量を積算しておき、その積算値によって初期位置からのステージ移動量を補正することで、ステージ位置を適正に求めることが可能となる。
【0068】
このような処理を可能とするためのハードウェア構成上の要件は、ステージ2の1回の副走査移動の前後両方において、読取ヘッド82を移動させることなくリニアスケール81を読み取ることができることである。読取ヘッド82の読み取り可能な範囲(視野)、リニアスケール81のX方向サイズ、および、リニアスケール81に対する読取ヘッド82の位置を適切に設定することで、この要件を満たすことが可能である。
【0069】
読取ヘッド82のX方向への移動に際しては、そのY方向の位置も幾らか変動することがあり得る。この問題に対応するためには、読取ヘッド82を移動する際に、X方向の位置ずれだけでなく、Y方向についても、Y方向スケールSyの読み取り結果に基づき位置ずれを検出することにより、その情報を用いて適宜補正することが可能である。さらに、X方向、Y方向のそれぞれで位置ずれが把握されることにより、θ軸、つまり傾き方向のずれについても把握することが可能となり、その結果を用いることで、ステージ2の傾き量(ヨーイング量)に対しても同様に補正を行うことができる。
【0070】
以上のように、この実施形態の露光装置1においては、主走査移動および副走査移動におけるステージ2の位置を、リニアスケール81と読取ヘッド82とを組み合わせたリニアエンコーダーの計測原理を用いた位置検出機構8により検出している。リニアスケール81は主走査方向であるY方向に延設されており、主走査移動におけるステージ2の位置検出を連続的に行うことができる。
【0071】
一方、副走査方向であるX方向については、ステージ2(リニアスケール81)のステップ移動に応じて読取ヘッド82を移動させることで、副走査方向の各位置で読取ヘッド82によるスケールの読み取りを可能としている。このため、副走査方向に多数の読取ヘッドを設ける必要はなくなっており、このことに起因する装置の大型化およびコストの増大を抑えることが可能である。
【0072】
リニアスケール81は二次元スケールであり、読取ヘッド82はX方向およびY方向それぞれにスケールを読み取り可能な複数の光学センサー821~823を備えている。これらの読み取り結果から、位置検出機構8は、X方向、Y方向におけるステージ2の位置およびθ方向(ヨー方向)におけるステージ2の姿勢を検出することが可能である。
【0073】
読取ヘッド82の移動に際しては、ステージ2の移動とは異なるタイミングで排他的に、つまり互いの移動期間が時間的に重ならないように実行される。つまり、読取ヘッド82が静止した状態でステージ2が移動され、その読取ヘッド82に対する移動量が読取ヘッド82により検出される。そして、読取ヘッド82の移動はステージ2が静止した状態で行われ、この間にステージ2に対する読取ヘッド82の移動量が読取ヘッド82により検出される。なお、ここではまずステージ2を副走査移動させ、その後で読取ヘッド82を移動させているが、この順番は逆でもよい。
【0074】
こうすることで、読取ヘッド82が移動することによる弊害、つまり、本来の計測対象である露光ヘッド41とステージ2との相対位置が計測の主体である読取ヘッド82の位置が変化することで計測精度が低下するという問題を、未然に回避することができる。見方を変えれば、直動機構83による読取ヘッド82の位置決め精度がそれほど高くなくても、それによる位置ずれがあれば検出して補正することができるので、露光ヘッド41に対するステージ2の位置の計測精度には影響を及ぼさない。直動機構83として高精度のものを必要としないので、これによるコスト増大を抑えることができる。
【0075】
<第2実施形態>
図9および図10は本発明に係る描画装置の第2実施形態としての露光装置1Aの要部の概略構成を示す図である。より具体的には、図9は第2実施形態の露光装置1Aの主要部をY方向に見た図であり、図10はそのうちステージ駆動機構3および周辺の構成を模式的に示す斜視図である。この実施形態の露光装置では、位置検出機構の構成が第1実施形態のものとは異なっているが、その他の構成および基本的な動作は第1実施形態のものと共通である。そこで、第1実施形態と共通の構成には同一の符号を付し、詳しい説明を省略することとする。
【0076】
図9(a)および図10に示すように、この実施形態の露光装置1Aの位置検出機構8Aは、ステージ2上に設けられた2つのリニアスケール851,852と、2つの読取ヘッド861,862と、これらを一体的に支持する可動部材87と、可動部材87をX方向に移動させる直動機構88とを備えている。一方のリニアスケール851はステージ2の(-X)側端部近傍に、他方のリニアスケール852はステージ2の(+X)側端部近傍に、それぞれY方向に延設されている。
【0077】
2つの読取ヘッド861,862は、X方向に延設された可動部材87の下部に、X方向に互いに位置を異ならせて、かつステージ2上におけるリニアスケール851,852の配置ピッチと略同ピッチで取り付けられている。直動機構88は、制御部9からの制御指令に応じて可動部材87をX方向に移動させる。これにより、2つの読取ヘッド861,862は一体的に、X方向に移動する。
【0078】
なお、第1実施形態における読取ヘッド82のように、それぞれが独立した直動機構によって支持された2つの読取ヘッドが設けられてもよい。また、この実施形態においても、露光ヘッド41の数は任意であり、複数の露光ヘッド41を配置することで、ステージ2の副走査移動における移動範囲を小さくすることができる。この場合でも、位置検出機構8Aは、露光ヘッド41の配設数によらずステージ2の両端部に対応する2組のリニアスケールおよび読取ヘッドが設けられればよい。ステージ2の移動範囲が小さくなることで各読取ヘッドの移動範囲も小さくて済む点は、上記実施形態と同様である。
【0079】
読取ヘッド861はリニアスケール851のスケールを読み取る。一方、読取ヘッド862はリニアスケール852のスケールを読み取る。すなわち、この実施形態では、ステージ2のX方向両端部にそれぞれリニアエンコーダーが設けられている。
【0080】
このような構成によれば、X方向におけるステージ2の両端部でリニアエンコーダーによる位置検出が行われる。位置検出の原理およびその処理を含む露光動作は、基本的に第1実施形態のものと同じである。すなわち、この実施形態でも、図7に示される処理を実行するによって露光動作を実現することが可能である。
【0081】
この場合、もし両端部での読み取り結果からそれぞれ求められるステージ2のY方向位置が互いに相違していれば、ステージ2がθ方向の傾きを有していると考えられる。言い換えれば、ステージ両端部でY方向の位置検出を行う場合には、X方向の位置検出結果を用いなくてもステージ2のθ方向の傾きを検出することが可能である。
【0082】
図6(b)に示す第1実施形態の事例と比較すると、ステージ2のθ方向の傾きを検出するための比較対象となる2つの光学センサーの距離を十分に大きく取ることができるため、傾きの検出精度に関しては、むしろ第2実施形態の方が第1実施形態よりも良好となり得る。
【0083】
したがって、読取ヘッド861,862の各々がそれぞれY方向スケールを読み取ることができれば、ステージ2のY方向位置およびθ軸まわりの傾き量を検出することが可能である。この意味において、読取ヘッド861,862の少なくとも一方は、X方向スケールを読み取る機能を有していなくてもよい。これらに対応するリニアスケール851,852についても、二次元リニアスケールである必要は必ずしもなく、Y方向スケールが設けられていれば足りる。
【0084】
一方で、ステージ2のX方向位置を検出するという目的においては、依然として二次元リニアスケールが有用である。このことから、例えばリニアスケール851,852のうち一方を一次元スケール、他方を二次元スケールとして、読取ヘッド861,862のうち対応するリニアスケールが一次元スケールであるものについては、Y方向位置のみを読み取るように構成されたものを使用することができる。
【0085】
また、第1実施形態の読取ヘッド82には、X方向の位置だけでなくθ軸まわりのステージ2の姿勢をも検出可能とするために、X方向スケールを読み取るための2つの光学センサー821,822が設けられている。しかしながら、この実施形態では、ステージ2の両端部におけるY方向位置の検出結果を比較することでステージ2の姿勢を求めることができるから、X方向スケールを読み取る光学センサーは1つであってもよい。
【0086】
したがって、位置検出機構8Aの構成としては、
(1)リニアスケール851,852がいずれも二次元スケールである構成、
(2)リニアスケール851,852の一方が二次元スケール、他方が一次元(Y方向)スケールである構成、
の両方が成立し得る。
【0087】
そしてさらに、2つの読取ヘッド861,862のうち、対向する関係にあるリニアスケールが二次元スケールであるものについては、
(A)図6(a)に示されるように、2つのX方向センサーと1つのY方向センサーとを有する構成、
(B)X方向センサーとY方向センサーとを1つずつ有する構成、
の両方が成立し得る。なお、対向する関係にあるリニアスケールが一次元スケールである読取ヘッドについては、少なくともY方向センサーが1つ備えられていれば足りる。
【0088】
現実問題としては、これらを適宜に組み合わせた各種の構成が考えられ、それらのいずれによっても、主走査移動および副走査移動の実行中における、露光ヘッド41(またはこれに代わる不動の位置基準)に対するステージ2のX方向およびY方向位置と、θ軸まわりの傾きの大きさとを随時、精度よく検出することが可能である。
【0089】
さらに、例えば高精度の直動機構88が用いられるなど、読取ヘッド861,862のX方向への移動における位置決めの精度が十分に高くかつ再現性がある場合には、読取ヘッド861,862の移動に起因する位置ずれが問題とならないケースがあり得る。このような場合には、2つのリニアスケール851,852をそれぞれ一次元(Y方向)スケールとし、読取ヘッド861,862についてもY方向センサーのみを有するものとすることもできる。このような構成でも、少なくともステージ2のY方向位置とθ方向の傾きについては、上記実施形態と同等の精度で検出することが可能である。
【0090】
<その他>
以上説明したように、上記各実施形態においては、露光装置1,1Aが本発明の「描画装置」の一態様に相当している。また、基板Sが本発明の「基板」に、ステージ2が本発明の「ステージ」に、それぞれ相当している。また、露光ユニット4、特に露光ヘッド41が、本発明の「描画部」として機能している。また、ステージ駆動機構3が本発明の「第1移動機構」として機能している。
【0091】
また、リニアスケール81,851,852が本発明の「リニアスケール」に、読取ヘッド82,861,862が本発明の「読取ヘッド」に、直動機構83,88が本発明の「第2移動機構」にそれぞれ相当しており、これらを有する位置検出機構8,8Aと、位置算出部915とが一体として、本発明の「位置検出部」として機能している。
【0092】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、ステージ2の平坦な上面のうちX方向の両端部にリニアスケールが取り付けられている。しかしながら、リニアスケールは、ステージと一体的に移動し、より好ましくはそれらの相対的な位置関係が変動しないように構成されていればよく、ステージに直接取り付けられている必要はない。例えば、共通のベース部材に対し、ステージとリニアスケールとがそれぞれ取り付けられた構造であってもよい。
【0093】
また例えば、上記実施形態の位置検出機構8,8Aにおける読取ヘッド82,861,862はステージ2を跨ぐガントリー状の支持フレーム101に取り付けられており、このためリニアスケール81,851,852との距離が比較的大きくなっている。しかしながら、読取ヘッドの配置についてはこれに限定されず、リニアスケールを読み取り可能な位置で、ステージ2の移動とは独立し、かつ該移動に干渉しない状態に支持されていればよい。
【0094】
また、位置検出機構8,8Aにより検出されたステージ2の位置および姿勢に関する情報をどのように利用するかについては任意である。上記実施形態に関しては露光ヘッド41やステージ駆動機構3の制御に用いることを説明しているが、これ以外にも、例えば位置検出結果に基づいて異常検知を行う目的にも利用可能である。
【0095】
また、上記第2実施形態では、ステージ2のX方向における両端部にリニアスケールを配置している。しかしながら、2つのリニアスケールはX方向に位置を異ならせて配置されていればよく、例えばステージの片側の2箇所に設けられていてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、ステージ2のX方向端部に設けたリニアスケールを読み取ることでステージ2のX方向およびY方向における位置検出を行っているが、本発明において、リニアスケールは少なくとも「主走査方向におけるステージの位置をリニアエンコーダーの原理で検出する」ことが可能なものであれば足りる。したがって、X方向の位置検出については他の手段が用いられてもよい。例えば、ステージにX方向(副走査方向)に延びるリニアスケールを設け、それを読み取ることでX方向の位置検出を行うようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施形態の露光装置1,1Aは、本発明に係る「描画装置」の具体的事例として、感光層が形成された基板表面を描画データに基づき変調された光ビームで露光することによりパターン描画を行う装置である。しかしながら描画の態様はこれに限定されるものではなく任意であり、例えばフォトマスク、レチクル等を介して露光し描画を行う態様であってもよく、またレーザー光により基板表面を直接加工して描画する態様であってもよい。
【0098】
また、上記実施形態の露光装置1,1Aは、主走査方向への連続的なステージ移動と、副走査方向へのステップ移動とを交互に実行するステップ・アンド・スキャン方式のステージ駆動機構を備えるものであるが、これ以外に、例えば所定の二次元領域ごとの描画を位置を変えながら順次行う、ステップ・アンド・リピート方式の移動態様の描画装置に対しても、本発明を適用することが可能である。
【0099】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る描画装置の位置検出部において、例えばリニアスケールは、主走査方向および副走査方向のそれぞれにスケールが設けられた二次元リニアスケールであってもよい。このような構成によれば、主走査方向および副走査方向のそれぞれにおいて、互いに独立してステージ位置を検出することが可能である。また、このような構成を備えることで、位置検出部は、読取ヘッドの読み取り結果に基づき、主走査方向および副走査方向それぞれにおけるステージの位置とに加えて、ステージのヨーイングの大きさを検出することも可能となる。
【0100】
また例えば、位置検出部は、副走査方向に位置を異ならせて設けられた複数のリニアスケールと、複数のリニアスケールの各々に対応して設けられた複数の読取ヘッドとを有していてもよい。このような構成によれば、複数の読取ヘッド各々の読み取り結果に基づき求められる位置のずれからステージの傾きを検出することが可能である。すなわち、このように構成された位置検出部は、主走査方向におけるステージの位置に加えて、ステージのヨーイングの大きさを検出することが可能となる。
【0101】
この場合において、複数のリニアスケールのうち少なくとも1つは、主走査方向および副走査方向のそれぞれにスケールが設けられた二次元リニアスケールであってもよい。このような構成によれば、主走査方向および副走査方向のそれぞれにおいて、互いに独立してステージ位置を検出することが可能である。このようにすれば、主走査方向および副走査方向それぞれにおけるステージの位置と、ステージのヨーイングの大きさとを検出することが可能になる。
【0102】
また、本発明に係る描画装置および描画方法においては、ステージが副走査方向へ移動する期間と、読取ヘッドが移動する期間とが互いに重ならない、つまり、これらの移動が互いに異なるタイミングで排他的に行われるように構成されてもよい。このような構成によれば、読取ヘッドが静止した状態でステージが移動し、このときのリニアスケールの読み取り結果から、ステージの移動量だけを求めることができる。一方、ステージが静止した状態で読取ヘッドが移動する際のリニアスケールの読み取り結果から、ステージに対する読取ヘッドの移動量を求めることができる。これらの情報を用いれば、計測の基準となるべき読取ヘッドが移動することにより検出精度の低下を未然に回避することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
この発明は、例えば半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板あるいはガラス基板等の基板にパターンを形成するために基板に描画を行う技術分野に好適である。
【符号の説明】
【0104】
1,1A 露光装置(描画装置)
2 ステージ
3 ステージ駆動機構(第1移動機構)
8,8A 位置検出機構(位置検出部)
41 露光ヘッド(描画部)
81,851,852 リニアスケール
82,861,862 読取ヘッド
83,88 直動機構(第2移動機構)
821,822 X方向センサー
823 Y方向センサー
915 位置算出部(位置検出部)
S 基板
Sx X方向スケール
Sy Y方向スケール
X 副走査方向
Y 主走査方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10