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  • 特開-濡れ性試験装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121110
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】濡れ性試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 13/00 20060101AFI20240830BHJP
   B23K 31/12 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G01N13/00
B23K31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028017
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 正和
(72)【発明者】
【氏名】原 理
(57)【要約】
【課題】固体表面における独立した溶滴の挙動を観察しやすい濡れ性試験装置を提供する。
【解決手段】棒状の金属材料よりなる放電用電極21と、金属材料よりなり、放電用電極21に対して、重力方向と交差する方向に離間して配置される対極3と、放電用電極21と対極3との間にパルス電流を印加して、放電によってアークを発生させるパルス電源4と、アークによって溶融可能な被溶融材Mを、アークの発生箇所に供給することができる材料供給装置5と、アークの発生箇所の重力方向下方で基材Sを支持する基材支持体6と、アークによって溶融され、基材Sの表面に落下する被溶融材Mの溶滴を観察することができる観察装置71,72と、を有する、濡れ性試験装置1とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の金属材料よりなる放電用電極と、
金属材料よりなり、前記放電用電極に対して、重力方向と交差する方向に離間して配置される対極と、
前記放電用電極と前記対極との間にパルス電流を印加して、放電によってアークを発生させるパルス電源と、
前記アークによって溶融可能な被溶融材を、前記アークの発生箇所に供給することができる材料供給装置と、
前記アークの発生箇所の重力方向下方で基材を支持する基材支持体と、
前記アークによって溶融され、前記基材の表面に落下する前記被溶融材の溶滴を観察することができる観察装置と、を有する、濡れ性試験装置。
【請求項2】
前記放電用電極は、TIG溶接トーチを構成する電極であり、
前記対極は、冷却可能な金属の板材である、請求項1に記載の濡れ性試験装置。
【請求項3】
前記放電用電極と前記対極は、重力方向に垂直な方向に離間し、相互に正対して配置される、請求項1または請求項2に記載の濡れ性試験装置。
【請求項4】
前記材料供給装置は、前記被溶融材を、重力方向に沿って、上方から下方に向かって供給する、請求項1または請求項2に記載の濡れ性試験装置。
【請求項5】
前記放電用電極と前記対極との間の距離よりも、前記アークの発生箇所と前記基材との間の距離の方が大きい、請求項1または請求項2に記載の濡れ性試験装置。
【請求項6】
前記観察装置は、
前記基材の表面に落下する前記溶滴を撮影することができる溶滴撮影装置と、
前記基材の表面に落下する前記溶滴における温度分布を計測することができる溶滴温度計測装置と、
の少なくとも一方を含む、請求項1または請求項2に記載の濡れ性試験装置。
【請求項7】
前記基材の温度を計測可能な基材温度計測装置をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の濡れ性試験装置。
【請求項8】
前記基材の温度を変更可能な基材温度変更装置をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の濡れ性試験装置。
【請求項9】
前記放電用電極、前記対極、前記材料供給装置により供給される前記被溶融材、前記基材、を収容する収容空間を有し、前記収容空間内を雰囲気制御可能なチャンバーをさらに備える、請求項1または請求項2に記載の濡れ性試験装置。
【請求項10】
前記放電用電極の先端の角度が、30°以上60°以下である、請求項1または請求項2に記載の濡れ性試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濡れ性試験装置に関し、さらに詳しくは、金属等の材料を溶融させて、固体表面における濡れに関する挙動を観察するための濡れ性試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶射、はんだ付け、ろう付け、溶接、積層造形等、溶融させた材料を固体材料の表面に供給する工程を含んだ加工方法が種々存在する。それらの加工方法について、使用材料やプロセスに関する検討や開発、最適化等を行うに際し、基礎情報として、溶融材料が固体材料の表面において示す濡れ性、つまり濡れ広がりの程度や形態に関する情報を得ることが重要となる。そこで、濡れ性試験が行われる。濡れ性試験においては、溶融させた材料を固体材料の表面に接触させ、その溶融材料の挙動を観察する。濡れ性試験に用いる装置の一例として、特許文献1に、真空容器内に互いに先端部の対向角度を変更可能に設置された、冷却されたTIGトーチおよび冷却された電極と、TIGトーチと電極の間に放電電圧を印加する電源と、TIGトーチと電極の間に生じるアーク放電中に金属試験材の先端部を順次送給して先端部を溶解させ液滴を生じさせる試験材保持手段とを備える濡れ性試験装置が開示されている。生じた液滴は自重で落下してTIGトーチ及び電極の下方に位置する試験基板の板面上に付着し凝固する。この試験基板に付着して凝固する過程の液滴の形状変化が高速度カメラで捉えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-3337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、TIGトーチを用いた放電により、金属材料を溶融させる方法によれば、一般のアーク溶接に用いられるTIGトーチを活用して、濡れ性試験装置を簡便に構築することができる。しかし、一般のアーク溶接においては、アークによって金属材料の溶融が連続的に行われる。そのため、溶融した金属材料が、1滴ずつ独立した溶滴を形成しにくい。また、多量に溶融した金属材料が、TIGトーチと相手方の電極との間に発生する気流によって、電極の表面やその周辺に飛散しやすい。それらの結果として、試験基板の表面に、溶融金属が独立した溶滴の形状をとって供給されにくくなり、試験基板の表面における1滴の溶滴の挙動を詳細に観察することが難しくなる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、固体表面における独立した溶滴の挙動を観察しやすい濡れ性試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明にかかる濡れ性試験装置は、以下の構成を有している。
(1)本発明にかかる濡れ性試験装置は、棒状の金属材料よりなる放電用電極と、金属材料よりなり、前記放電用電極に対して、重力方向と交差する方向に離間して配置される対極と、前記放電用電極と前記対極との間にパルス電流を印加して、放電によってアークを発生させるパルス電源と、前記アークによって溶融可能な被溶融材を、前記アークの発生箇所に供給することができる材料供給装置と、前記アークの発生箇所の重力方向下方で基材を支持する基材支持体と、前記アークによって溶融され、前記基材の表面に落下する前記被溶融材の溶滴を観察することができる観察装置と、を有する。
【0007】
(2)上記(1)の態様において、前記放電用電極は、TIG溶接トーチを構成する電極であり、前記対極は、冷却可能な金属の板材であるとよい。
【0008】
(3)上記(1)または(2)の態様において、前記放電用電極と前記対極は、重力方向に垂直な方向に離間し、相互に正対して配置されるとよい。
【0009】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つの態様において、前記材料供給装置は、前記被溶融材を、重力方向に沿って、上方から下方に向かって供給するとよい。
【0010】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの態様において、前記放電用電極と前記対極との間の距離よりも、前記アークの発生箇所と前記基材との間の距離の方が大きいとよい。
【0011】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つの態様において、前記観察装置は、前記基材の表面に落下する前記溶滴を撮影することができる溶滴撮影装置と、前記基材の表面に落下する前記溶滴における温度分布を計測することができる溶滴温度計測装置と、の少なくとも一方を含むとよい。
【0012】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つの態様において、前記濡れ性試験装置は、前記基材の温度を計測可能な基材温度計測装置をさらに備えるとよい。
【0013】
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つの態様において、前記濡れ性試験装置は、前記基材の温度を変更可能な基材温度変更装置をさらに備えるとよい。
【0014】
(9)上記(1)から(8)のいずれか1つの態様において、前記濡れ性試験装置は、前記放電用電極、前記対極、前記材料供給装置により供給される前記被溶融材、前記基材、を収容する収容空間を有し、前記収容空間内を雰囲気制御可能なチャンバーをさらに備えるとよい。
【0015】
(10)上記(1)から(9)のいずれか1つの態様において、前記放電用電極の先端の角度が、30°以上60°以下であるとよい。
【発明の効果】
【0016】
上記(1)の構成を有する本発明にかかる濡れ性試験装置は、パルス電源を備えており、放電用電極と対極との間にパルス電流が印加される。そのため、アークがパルス状に発生し、材料供給装置より供給される被溶融材の溶融も、時間的に不連続に進行する。被溶融材の不連続な溶融によって、1滴ずつ溶滴が形成される。そのため、溶滴が連続的に発生して、連続的に基材の表面に供給されることや、対極の表面や周囲に多量の溶融した材料が飛散することが起こりにくい。さらに、放電用電極と対極が重力に交差する方向に離間して配置され、それらの間のアーク発生箇所の重力方向下方に基材が配置されているため、アークによってパルス状に生成された溶滴が、対極の表面に飛散せずに、重力に従って、基材支持体に支持された基材の表面に落下しやすくなっている。それらの結果、溶滴が基材の表面に1滴で独立して到来することになり、その溶滴を観察装置によって観察することで、基材の表面において、濡れに関する溶滴の挙動を、他の溶滴や飛散した材料の影響を排除して、明快に解析することができる。被溶融材としては、金属材料のみならず、セラミックスや有機材料等の絶縁性材料も適用することができる。
【0017】
ここで、上記(2)の態様においては、放電用電極として、TIG溶接トーチを構成する電極を用いるとともに、対極として、冷却可能な金属の板材を用いる。TIG溶接トーチを用いることで、アーク放電による金属材料等の被溶融材の溶融を、簡便に、また高効率で行うことができる。また、対極として板材を用いることで、そのTIG溶接トーチとの間にアークを安定して発生させ、独立した溶滴を形成しやすくなる。板材よりなる対極を冷却しておくことで、対極の溶融を抑えることができる。
【0018】
上記(3)の態様においては、放電用電極と対極が、重力方向に垂直な方向に離間し、相互に正対して配置されている。すると、アークによって形成された被溶融材の溶滴が、対極の方向に飛散することなく、重力方向に配置された基材に向かって落下しやすくなる。
【0019】
上記(4)の態様においては、材料供給装置によって、被溶融材が、重力方向に沿って、上方から下方に向かって供給される。すると、被溶融材の溶融によって形成される溶滴が、自重によって、下方に配置された基材に向かって落下しやすくなる。
【0020】
上記(5)の態様においては、放電用電極と対極との間の距離よりも、アークの発生箇所と基材との間の距離の方が大きくなっている。すると、基材が金属より構成されている場合に、放電用電極から基材へのアークの短絡が起こらず、放電用電極と対極との間に発生したアークによる溶滴の形成が、安定して進行する。
【0021】
上記(6)の態様においては、観察装置が、溶滴撮影装置と溶滴温度計測装置との少なくとも一方を含む。高速カメラ等の溶滴撮影装置を用いれば、形状をはじめとする溶滴の外観の変化に関する情報を詳細に得ることができる。一方、サーモグラフィ装置等の溶滴温度計測装置を用いれば、溶滴の各部の温度変化に関する情報を詳細に得ることができる。
【0022】
上記(7)の態様においては、濡れ性試験装置が基材温度計測装置を備えている。溶滴が基材に接触し、基材表面で濡れ広がる際の基材の温度変化を、基材温度計測装置によって計測することで、溶滴と基材の間の熱の移動に関する情報を取得することができる。その情報を、観察装置で得られた溶滴の挙動に関する情報と合わせることで、基材表面での濡れの現象に関して、知見を深めることができる。基材温度計測装置としては、例えば基材の表面に溶滴が落下する箇所の下方に、熱電対等、温度計測用の部材を埋設して配置しておけばよい。
【0023】
上記(8)の態様においては、濡れ性試験装置が基材温度変更装置を備えている。基材温度変更装置を用いて、基材を所定の温度に保って、その基材の表面における溶滴の挙動を観察することで、その温度の基材の表面における溶滴の濡れ性に関する評価を行うことができる。また、種々に基材の温度を変更しながら同様の試験を行い、結果を比較することで、溶滴の濡れ広がりの現象に関して、深い知見を得ることも可能となる。基材温度変更装置としては、例えば抵抗加熱によるヒータを用いる形態や、基材を誘導加熱炉に収容して誘導加熱を行う形態がありうる。
【0024】
上記(9)の態様においては、濡れ性試験装置が、放電用電極、対極、被溶融材、基材を収容して雰囲気制御可能なチャンバーをさらに備えている。それにより、真空中や不活性ガス中等、所定の雰囲気において、溶滴の挙動を観察することができる。また、特に基材を加熱して試験を行う場合に、基材が酸化等の変性を起こすのを、雰囲気制御により抑制することができる。
【0025】
上記(10)の態様においては、放電用電極の先端の角度が、30°以上60°以下となっている。すると、対極との間でのアークの形成、およびアークによる被溶融材の溶融を、安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態にかかる濡れ性試験装置の構成を示す概略図である。
図2】放電により被溶融材を溶融させる際に、放電用電極および対極の近傍の状態を撮影した動画より抜粋した画像である。(a),(b)は、放電用電極と対極との間にパルス電流を印加した場合を示しており、(a)はパルス電流を印加した直後の状態、(b)はその後、溶滴が落下している状態を示している。(c)は、放電用電極と対極との間に直流電流を印加した場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施形態にかかる濡れ性試験装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。濡れ性試験装置は、溶融した材料が固体表面で示す濡れの挙動に関する観察を行うための装置である。
【0028】
[濡れ性試験装置の構成]
図1に、本発明の一実施形態にかかる濡れ性試験装置1の構成を模式的に示す。図1の上下方向が、重力方向に沿った上下方向に対応する。以下、特記しなくても、各方向は重力方向を基準として示すものとする。また、垂直、水平等、方向を示す語には、厳密な概念のみならず、±10°程度の誤差を有する形態も含むものとする。
【0029】
本実施形態にかかる濡れ性試験装置1は、放電用電極21、対極3、パルス電源4、材料供給装置5、基材支持体6、観察装置としての溶滴撮影装置71および溶滴温度計測装置72を備えている。また、任意ではあるが、本実施形態にかかる濡れ性試験装置1は、基材温度計測装置8、および基材温度変更装置9を備えている。さらに、濡れ性試験装置1は、図示しないチャンバーを備えていてもよい。
【0030】
放電用電極21は、棒状の金属材料よりなる電極である。対極3は、金属材料よりなる電極であり、放電用電極21に対して、重力方向と交差する方法に離間して配置されている。放電用電極21および対極3は、放電によってアークを発生させ、材料供給装置5より供給される被溶融材Mを溶融させることができる電極であれば、具体的な形状や材質を問わない。しかし、放電用電極21としては、TIG溶接トーチ2、つまりTIG(Tungsten Inert Gas)溶接を行うためのトーチに備えられる電極(タングステン電極)を用いることが好ましい。この場合には、濡れ性試験装置1に、構成部材として、TIG溶接トーチ2が含まれることになる。放電用電極21の具体的な形状は特に限定されないが、先端部にテーパ形状が設けられており、先端の角度(中心軸を含む断面における角度)が、30°以上60°以下となっていることが好ましい。
【0031】
一方、対極3は、棒状の放電用電極21との間にアークを安定して発生させる観点から、板状の金属材より構成されることが好ましい。金属材の種類は特に限定されないが、電気伝導率の高さ、熱伝導率の高さおよび融点の高さ等の観点から、銅または銅合金を用いることが好ましい。板状の金属材よりなる対極3は、冷却可能に構成しておくことが好ましい。冷却により、放電時に対極3の溶融を抑制することができる。対極3を冷却するための方法としては、対極3を大面積に形成して、放冷されやすく構成すること、対極3の面に対して気流を供給するファンを対極3の近傍に設けること、対極3に管状構造を形成しておき、その管状構造に冷媒を通過させること、等が挙げられる。装置構成の簡素性の観点からは、放冷または気流による冷却を用いることが好ましい。
【0032】
放電用電極21と対極3は、重力方向に交差する方向に相互に離間して配置されていれば、具体的な配置は特に限定されるものではない。しかし、図示したとおり、重力方向に垂直な方向、つまり水平方向に相互に離間し、かつ相互に正対して配置されることが好ましい。この場合に、放電用電極21が軸方向を水平に向けて配置され、その放電用電極21の先端から水平方向に離間して、板状の対極3が、板面を鉛直に立てて配置される。
【0033】
パルス電源4は、放電用電極21と対極3の間に、放電を起こし、アークを発生させる電源である。アークの出力は、電流によって制御される。パルス電源4によって、放電用電極21と対極3の間にパルス状に電流を与えることで、放電用電極21と対極3の間の放電によるアークの出力が時間的に不連続に変化し、パルス状のアークが発生する。パルス電流の周波数は、特に限定されるものではないが、2Hz以上50Hz以下とする形態を、好ましいものとして例示することができる。電流波形も特に限定されるものではないが、交流波形、つまり正負の極性が交互に切り替わる波形ではなく、直流の短波形、つまり放電用電極21側が一定の極性となるように電流が短時間だけ印加される、パルス状の波形を用いることが好ましい。放電用電極21が陰極、対極3が陽極となるように、電流の印加が行われる。パルス波形におけるピーク電流とベース電流の比としては、2以上10以下の範囲を例示することができる。
【0034】
材料供給装置5は、放電用電極21と対極3の間の箇所に相当するアークの発生箇所に、被溶融材Mを供給することができる装置である。ここで、被溶融材Mとは、溶融した状態における濡れ性を評価する対象の材料であり、放電用電極21と対極3の間で発生するアークによって溶融可能な材料より選択される。被溶融材Mとしては、種々の金属等の導電性材料、またはセラミックス、有機材料等の絶縁性材料を適用することができる。アークによる溶融させやすさや、濡れ性の挙動を解析することの意義の大きさから、被溶融材Mとして金属材料を適用することが好ましく、以下でも被溶融材Mが金属材料である形態を主に扱う。被溶融材Mの形状も特に限定されるものではなく、ワイヤ状、棒状、粉末状等とすることができる。そして、材料供給装置5としては、被溶融材Mの形状に応じて、被溶融材Mを円滑にアーク発生箇所に供給できるものを用いればよい。ここでは、材料供給装置5の構成の簡便性等の観点から、被溶融材Mとしてワイヤ状の材料を用い、材料供給装置5として、ワイヤを順次繰り出すことができるワイヤ送給装置を用いる形態を想定している。その種のワイヤ送給装置は、アーク溶接において、溶接材料の供給に一般的に使用されており、本実施形態にかかる濡れ性試験装置1でも、材料供給装置5として、アーク溶接用のワイヤ送給装置を転用することができる。材料供給装置5が被溶融材Mをアーク発生箇所に供給する方向は特に限定されるものではないが、溶融した材料の不要な飛散を防ぐ等の観点から、放電用電極21と対極3を結ぶ離間方向よりも、上方の角度から、アーク発生箇所へと被溶融材Mを供給する形態が好ましい。特に、図示するように、重力方向に沿って上方から下方に向かって被溶融材Mを供給する形態が好ましい。つまり、被溶融材Mがワイヤ状である場合に、そのワイヤの軸方向を鉛直に立てて、ワイヤの送給経路を設定すればよい。
【0035】
基材支持体6は、試験対象の基材Sを支持する部材である。ここで、基材Sとは、溶融された被溶融材Mの挙動を表面において観察する固体材料であり、金属や、セラミックス、有機材料等、種々の固体材料を適用することができる。多くの場合、基材Sは、平板状の材料として準備される。ここでは、主に基材Sが金属の平板より構成される形態を扱う。基材支持体6は、放電用電極21と対極3の間のアーク発生箇所に対して、重力方向下方にて基材Sを支持する。この配置により、アークによって被溶融材Mが溶融すると、その溶融した材料が、自重により、基材Sの表面に落下することになる。基材支持体6は、好ましくは、アーク発生箇所を挟んで、材料供給装置5から供給される被溶融材Mの先端部の直下の箇所を含む位置にて、基材Sを支持するものであるとよい。基材支持体6は、台状の部材として構成すればよいが、任意に、基材Sをずれないように固定する固定部材や、基材Sの位置を調整する位置調整部材を備えていてもよい。
【0036】
アーク発生箇所と基材Sの表面との間の距離d1は、放電用電極21と対極3との間の距離d2よりも大きいことが好ましい。これにより、基材Sが金属より構成される場合にも、放電用電極21と基材Sとの間で、アークの短絡が生じにくくなる。また、アーク発生箇所と基材Sの表面との間の距離d1として、30mm以上500mm以下の範囲を好適に例示することができる。一方、放電用電極21と対極3との間の距離d2として、1mm以上10mm以下の範囲、特に3mm以上7mm以下の範囲を好適に例示することができる。
【0037】
観察装置71,72は、アークによって溶融され、基材支持体6に支持された基材Sの表面に落下する被溶融材Mの溶滴を観察することができる装置である。好ましくは、溶滴の挙動を、動的に、つまり空間分解および時間分解して、観察できるものであることが好ましい。そのような観察装置の好適例として、上記のとおり、溶滴撮影装置71および溶滴温度計測装置72を挙げることができる。濡れ性評価装置1は、観察装置として、それらのうち少なくとも一方を含むとよい。図示した形態においては、観察装置として、それら両方が設けられている。
【0038】
溶滴撮影装置71は、基材Sの表面に落下する溶滴を撮影することができる装置であり、溶滴の外観、つまり溶滴の位置および形状、さらに任意に溶滴の色彩に関する情報を取得ことができる。溶滴撮影装置71としては、高速カメラを好適に用いることができる。溶滴温度計測装置72は、基材Sの表面に落下する溶滴における温度分布を計測することができる。溶滴温度計測装置72としては、赤外線サーモグラフィ装置を好適に用いることができる。溶滴撮影装置71および溶滴温度計測装置72は、それぞれ、基材Sにおける溶滴落下箇所、つまりアーク発生箇所の直下に相当する位置を少なくとも含んで、水平方向および鉛直方向に、ある程度の領域を観察できるように、配置および視野を設定しておくとよい。図示した形態においては、基材Sの表面の位置からそれぞれ水平方向に離れた位置に、溶滴撮影装置71および溶滴温度計測装置72を、相互に対向させて設置している。
【0039】
基材温度計測装置8は、基材支持体6に支持された基材Sの温度を計測することができる装置である。溶融した被溶融材Mの溶滴が基材Sの表面に落下すると、その溶滴から基材Sへと熱の移動が起こる。溶滴と基材Sとの熱のやりとりは、基材Sの表面での溶滴の濡れの挙動と密接に関係するため、基材Sの温度変化も、濡れ性試験において、重要な情報となる。基材温度計測装置8は、少なくとも、基材Sの表面において溶滴が落下する位置、つまりアーク発生箇所の直下の位置において、基材の温度を計測できるものであることが好ましい。例えば、基材温度計測装置8として、KタイプやRタイプの熱電対、あるいは光ファイバーよりなる計測部を備えた温度計を用いることができる。これらの場合に、図示したとおり、基材Sにおいて、溶滴が落下する位置に対応する箇所に、表面のすぐ近くまで達する穴を裏面から形成しておいたうえで、基材温度計測装置8の計測部をその穴に挿入することで、計測部を基材Sに埋設しておけばよい。すると、溶滴が落下した際の基材Sの表面の温度変化を敏感に検出することができる。さらには、基材Sの温度計測を、溶滴が落下する1箇所だけでなく、基材Sの面に沿った複数の箇所で独立して行えるようにしておけば、溶滴の濡れ広がりに伴う、基材Sの面に沿った熱拡散に関する情報までも、得ることができる。
【0040】
基材温度変更装置9は、基材支持体6に支持された基材Sの温度を変更し、所定の温度に保つことができる(溶滴の落下による一時的な温度上昇分は除く)。温度の変更は、基材Sを冷却する方向と、基材Sを加熱する方向の少なくとも一方について行うことができればよいが、少なくとも基材Sを加熱できるものであることが好ましい。図示した形態では、基材温度変更装置9として、基材支持体6と基材Sのとの間に、板状のヒータを配置している。基材Sを加熱することができる基材温度変更装置9としては、抵抗加熱式等のヒータを好適に用いることができる。この場合は、加熱温度は、おおむね1000℃程度までとなる。さらに高温にまで基材Sを加熱したい場合には、基材Sを誘導炉に収容し、誘導加熱により、基材Sを加熱すればよい。この場合には、基材Sの融点近傍の温度まで基材Sを加熱することができる。基材Sが非導電体よりなる場合に誘導加熱を利用するには、黒鉛等よりなるサセプタを用いて、間接的に基材Sを加熱すればよい。
【0041】
濡れ性試験装置1は、上記各構成部材を大気中に備え、濡れ性試験を大気中で行うものであってもよいが、チャンバーを備え、雰囲気制御して濡れ性試験を行えるものとして構成してもよい。チャンバーは収容空間を備えており、その収容空間に、少なくとも、放電用電極21、対極3、材料供給装置5より供給される被溶融材M、基材Sを収容する。そして、収容空間内を雰囲気制御することができる。雰囲気制御としては、真空排気、および/または不活性ガス等の任意のガスによる雰囲気置換を行えるようにしておけばよい。チャンバーを設けることで、種々の雰囲気において濡れ性試験を行うことができるとともに、特に基材温度変更装置9によって基材Sを高温に加熱して濡れ性試験を行う場合に、チャンバー内を真空または不活性ガス雰囲気としておくことで、高温によって基材Sが酸化等の変性を起こすのを抑制できる。濡れ性試験装置1にチャンバーを設ける場合に、チャンバーにガラス板等で閉塞した覗き窓を設けておき、チャンバーの外に配置した観察装置71,72によって、その覗き窓を介して、溶滴の観察を行えるように構成しておけばよい。基材温度変更装置として誘導炉を用いる場合には、その誘導炉自体を、チャンバーとして用いればよい。
【0042】
[濡れ性試験の方法]
次に、上記で説明した濡れ性試験装置1を用いて、濡れ性試験を行う方法について説明する。濡れ性試験は、溶融した被溶融材Mが固体の基材Sの表面において、濡れに関して示す挙動を観察する試験である。
【0043】
濡れ性試験の準備として、被溶融材Mとして、溶融させて溶滴の挙動を観察する対象となる材料を、材料供給装置5に設置する。また、表面におけるその溶滴の挙動を観察する対象となる固体材料を、基材Sとして、基材支持体6に支持させる。対極3が冷却機構を備えている場合には、対極3の冷却を開始しておく。また、必要に応じて、基材温度変更装置9によって、基材Sの温度を所望の温度に制御しておくとともに、チャンバー内を所望の雰囲気としておく。
【0044】
この状態で、放電用電極21と対極3の間に、放電によりアークを発生させる。この際、パルス電源4によって、放電用電極21と対極3の間に電流をパルス状に与えることで、アークの発生がパルス状に起こる。アークの発生が安定すれば、材料供給装置5より被溶融材Mを繰り出し、アーク中に被溶融材Mを供給する。すると、アークにより被溶融材Mが溶融され、溶滴が形成される。この際、アークがパルス状となっていることより、溶滴の形成が不連続に起こる。そのため、1滴の溶滴が、他の溶滴と接触・融合等することなく、独立して形成される。形成された溶滴は、自重により下方に向かって落下する。アーク発生箇所の下方には基材Sが配置されているため、生じた溶滴は、基材Sの表面に向かって落下することになる。なお、濡れ性試験装置1を、TIG溶接トーチ2を転用して構築している場合には、放電を行う際に、通常のTIG溶接を行う場合と同様に、シールドガスとして不活性ガスを流通させながら、放電を行えばよい。溶滴の大きさは、印加するパルス電流の大きさや、ピーク電流とベース電流の比、材料供給装置5からの被溶融材Mの供給量により、制御することができ、1mm以上3mm以下とする形態を、好適に例示することができる。パルス電源の周波数は、基材Sの表面に落下した1滴の溶滴の濡れ広がりおよび温度変化が十分に収束してから、次の溶滴が基材Sの表面に供給されるように設定すればよい。
【0045】
アーク放電による溶滴の形成を行う間、観察装置、つまり溶滴撮影装置71および溶滴温度計測装置72は、基材Sの表面における溶滴の挙動を連続的に観察する状態としておく。少なくとも、落下した溶滴が基材Sの表面に達する直前の状態から、落下した溶滴が基材Sの表面を濡れ広がり、その濡れ広がりの挙動が収束するまでの状態を、連続して動的に観察できるように、観察情報の取得(カメラ撮影像やサーモグラフィ像の取得)を行うことが好ましい。合わせて、基材温度計測装置8による基材Sの温度の計測も行えばよい。観察情報の取得速度としては、例えば、1秒あたり500フレーム以上とする形態が好適である。
【0046】
得られた観察情報を解析することで、基材Sの表面における溶滴の挙動に関する知見を得ることができる。例えば、溶滴の形状や接触角、温度分布、またその時間変化、溶滴から基材Sへのエネルギー移動等の現象に着目して解析を行うことが考えられる。得られた知見は、溶射等、溶融した材料が固体表面に接触する工程を含む種々の加工方法について、材料やプロセスに関する検討、最適化、開発等を行うに際し、基礎情報として利用することができる。例えば、被溶融材Mおよび基材Sの構成材料を変化させながら、あるいは溶滴の大きさ、また基材Sの温度や雰囲気等の試験条件を変化させながら、濡れ性試験を行い、結果を比較することで、濡れの現象に関して深い知見を得ることや、想定している加工工程に適した材料やプロセスを見出すことができる。
【0047】
本実施形態にかかる濡れ性試験装置1においては、パルス電源4を用いて、放電用電極21と対極3の間への電流の印加を、パルス状に行っている。そのため、被溶融材Mの溶融が不連続に起こり、独立した溶滴が形成されて、基材Sの表面に1滴ずつ落下するものとできる。その結果、独立した溶滴の基材Sの表面における挙動を、詳細に観察し、解析することができる。例えば、他の溶滴との接触等の影響を排除して、基礎的な物理現象と、実際の溶滴の挙動とを、正確に、また簡素に対照して、濡れに関与する物理現象についての知見を深めることができる。これに対し、もしパルス電源4の代わりに直流電源を用いるとした場合のように、被溶融材Mの溶融が連続的に起こるとすれば、溶融した材料が、独立した溶滴の状態をとらずに、多数の溶滴が連続して基材Sの表面に落下する事態や、さらには溶滴にならずに液流状に基材Sの表面に流下する事態、また溶滴が生成しても、その溶滴が基材Sではなく対極3の方に飛散して対極3に付着する事態が起こりうる。すると、1滴の溶滴に着目して、基材Sの表面における溶滴の挙動を正確に観察・解析することは難しくなる。
【0048】
さらに、パルス電源4を用いることで、不要な溶融材(溶融された被溶融材M)の飛散を抑制することができる。放電用電極21と対極3の間にパルス電流を印加している間しか、被溶融材Mの溶融が起こらないため、溶融材が多量に発生しにくいからである。その結果、過剰に発生した溶融材が、アーク発生箇所の周辺に飛散する事態が起こりにくくなる。直流電源を用いる場合のように、被溶融材Mの溶融が連続的に起こるとすれば、多量に発生した溶融材が、周囲に飛散し、観察装置71,72による観察を妨げる可能性や、濡れ性試験装置1の各部の汚染を引き起こす可能性がある。
【0049】
上記で説明した形態のように、TIG溶接トーチ2を転用することで、濡れ性試験装置1を簡便に構築することができ、また被溶融材Mの溶融を高効率で実施することができる。ただし、TIG溶接トーチを用いて通常の溶接を行う場合には、溶融した金属材料が連続的に供給される条件でTIG溶接トーチが運用されるのに対し、本実施形態にかかる濡れ性試験装置1においては、パルス電源4と組み合わせてTIG溶接トーチ2を用いることで、溶融材の供給を不連続に行い、独立した溶滴を形成することが可能となる。TIG溶接トーチを通常の溶接に用いる場合には、TIG溶接トーチから、相手方の金属材(この場合には対極3)に向かって気流が発生し、その気流に乗って、溶融した金属材料が飛散しやすいが、本実施形態においては、パルス電源4を用いて、被溶融材Mの溶融を不連続に行っており、余剰の溶融材の発生が抑えられていることにより、TIG溶接トーチ2を用いていても、気流による溶融材の飛散は起こりにくい。また、本実施形態においては、パルス電源4を用いることで、瞬時に大電流を印加することができるので、通常の溶接で用いられる金属材料だけでなく、セラミックスや有機材料等の絶縁材料も溶融させて、濡れ性試験の対象とすることができる。
【0050】
さらに、本実施形態にかかる濡れ性試験装置1においては、放電用電極21と対極3とが、重力方向に交差する方向に離間して配置されるとともに、基材Sがアーク発生箇所に対して重力方向下方に配置されていることにより、基材Sに向かって溶滴が落下する方向と、放電用電極21と対極3の間での放電の方向とが、相互に交差している。そのため、対極3に向かって溶融材が飛散することがあっても、その飛散の方向と、観察すべき溶滴の落下方向が異なる。その結果として、パルス電源4を用いて独立した溶滴を形成できるようにしていることの効果と合わせて、溶融材の飛散による影響を低減して、基材Sの表面における溶滴の挙動を観察しやすくなっている。材料供給装置5からの被溶融材Mの供給を重力方向に沿って下方に向かって行うこと、また放電用電極21と対極3の間の距離d2よりもアーク発生箇所と基材Sの間の距離d1を大きくしてアークの短絡を防ぐこと、放電用電極21として、30°以上60°以上の角度など、先端が尖ったものを用いること、対極3として金属平板を用いることも、アーク放電による被溶融材Mからの溶滴の形成を安定に進め、かつ余剰の金属材料の飛散を抑え、基材Sの表面に落下する溶滴の独立性を保つのに、効果を有する。
【実施例0051】
以下に本発明の実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。ここでは、放電用電極と対極との間にパルス電流を印加する場合と、直流電流を印加する場合について、溶滴の挙動を比較した。
【0052】
[試験方法]
図1に示したように、放電用電極(TIG溶接トーチ)と対極を、水平方向に相互に離間させ、かつ相互に正対させて配置した。そして、放電用電極と対極との間に上方から、ステンレス鋼の線材よりなる被溶融材を供給して、試験装置を準備した。対極としては、空冷した銅板を用いた。この試験装置において、放電用電極と対極の間に、パルス電源を用いたパルス電流の印加、または直流電流(連続電流)の印加を行い、放電により、被溶融材から溶滴を生成させた。溶滴の生成中およびその後の期間において、放電用電極と対極、被溶融材を含む領域を、動画撮影し、生じた溶滴の挙動を観察した。パルス電流の印加は、ピーク電流100A、ベース電流30A、周波数2.5Hzの条件で行った。直流電流は電流値100Aとした。
【0053】
[試験結果]
撮影した動画から抜粋した代表的な画像を図2に示す。図2(a),(b)はパルス電流を印加した場合の画像である。(a)は溶滴が発生した直後の状態を示しており、(b)はその後時間が経過した状態を示している。一方、図2(c)は直流電流を印加した場合の画像である。なお、各図において、分かりやすいように、被溶融材の位置を直線、対極の位置を四角形にて表示している。
【0054】
図2(a)によると、パルス電流の印加により、被溶融材の下端に、1滴の溶滴が発生している。図2(b)によると、発生した溶滴は、下方に向かって落下している。ここでは、動画撮影のフレーム間隔よりも、溶滴の落下速度の方が速いため、溶滴が粒状に撮影されておらず、落下軌跡が線状に撮影されている。このように、パルス電流を印加した場合には、独立した溶滴が形成され、下方に落下するため、被溶融材の下方に基材を配置しておけば、基材上にて溶滴の挙動を詳細に観察することができる。
【0055】
一方で、図2(c)によると、直流電流を印加した場合にも、溶滴は生成しているが、生成した溶滴は、下方に落下することなく、対極の方に飛散し、対極の表面に付着している。この場合には、被溶融材の下方に基材を配置しておいても、基材の表面に溶滴が供給されず、基材の表面における溶滴の挙動を観察することができない。また、対極への溶滴の付着は、不要な溶融材の周囲へ飛散が起こりうることを示している。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明は、これらの実施形態に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 濡れ性試験装置
2 TIG溶接トーチ
21 放電用電極
3 対極
4 パルス電源
5 材料供給装置
6 基材支持体
71 溶滴撮影装置
72 溶滴温度計測装置
8 基材温度計測装置
9 基材温度変更装置
M 被溶融材
S 基材
図1
図2