(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121112
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】腕まくら
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20240830BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61G5/12 704
A61G5/12 707
A47C7/54 Z
A47C7/54 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028025
(22)【出願日】2023-02-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】523069197
【氏名又は名称】ていくあい有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(72)【発明者】
【氏名】竹村 ひとみ
(57)【要約】
【課題】
椅子やソファ等、特に車椅子への着座時に、使用者が腕を載せた状態を維持でき、使用者の体形や身体の疾患の程度を問わず、腕を載せる腕まくら本体を安定的に保持可能なだけでなく、使用者の姿勢や動作を制限することなく、身体に常時密着した状態を維持可能な腕まくらを提供する。
【解決手段】
使用者の腹部に当接する側に湾曲部を形成し後方に一対の突出部を設けた略方形板状をなす接合又は分離可能な下部クッション体と上部クッション体の2層のクッション体からなる腕まくら本体と、車椅子等の座面から使用者の大腿部上面までの高さを有し、使用者の股間に挟まれた状態で前記腕まくら本体を下面から水平に支持可能な略角柱形状の支持体と、長さ調節可能な固定ベルトにより下部クッション体と連結して腕まくらを使用者の腰部に固定可能な腰部クッション体とから構成される腕まくら。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子や車椅子等への着座時に使用者の大腿部に載置して使用されるクッション性のある部材で形成された腕まくらであって、
使用者の腹部に当接する側に湾曲部を形成し後方に一対の突出部を設けた略方形板状の腕まくら本体と、
前記椅子や車椅子等の座面から使用者の大腿部上面までの高さを有し、使用者の股間に挟まれた状態で前記腕まくら本体を下面から水平に支持可能なクッション性のある部材で形成された略角柱形状の支持体とから成り、
前記腕まくら本体は、前記支持体により支持された状態において、少なくとも使用者の腹部に当接する側の両側端部が、前記腕まくら本体上面に両腕を載せた使用者の両肘を保持可能な厚みを有すること
を特徴とする腕まくら。
【請求項2】
前記腕まくら本体は、接合又は分離可能な下部クッション体と上部クッション体の2層のクッション体からなり、
前記下部クッション体は、車椅子の両肘掛けの間に嵌合可能な幅と、前記支持体に支持された状態において上面がテーブルや机の天板の下面に干渉しない厚みとを有し、
前記上部クッション体は、左右両端が車椅子の両肘掛の上に被さる幅としたこと
を特徴とする、請求項1に記載の腕まくら。
【請求項3】
クッション性のある部材で形成され、端部に連結体を設けた長さ調節可能な一対の第1の固定ベルトを備えた腰部クッション体をさらに有し、
前記下部クッション体は、前記一対の記突出部のそれぞれに、連結体を設けた第2の固定ベルトを備え、
使用者の腰部に当接させた腰部クッション体の前記一対の第1の固定ベルトと前記下部クッション体の前記第2の固定ベルトとを各連結体で連結することにより、使用者の腹部に固定可能としたこと
を特徴とする、請求項2に記載の腕まくら。
【請求項4】
前記支持体は、前方側に対して後方側がやや窄まった平面形状を有すること
を特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の腕まくら。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子やソファ、車椅子等、自動車の座席などへの着座時に、使用者が腕を載せた状態を維持できる腕まくらであり、特に車椅子に適用して有用な腕まくらに関する。
【背景技術】
【0002】
身体の姿勢維持のための筋力が弱った高齢者や何らかの疾患により骨格の異常や筋肉の拘縮を起こしている障碍者は、起立や歩行に困難を感じるだけでなく、着座姿勢の維持にも苦労する場合が多い。
【0003】
着座時には、重量のある両腕を肘掛けに載せて支えることで姿勢が安定し、疲労も軽減するが、肘掛けのない椅子やソファはもとより、肘掛けがあってもその高さや位置が体格に適していない車椅子などに長時間座ることは負担が大きかった。特に、車椅子の場合、全幅の制約や車輪を操作する腕との干渉の防止のため、一般的に肘掛けは小さいものが採用されており、肘から先の腕は支持されない状態となって疲労したり、不用意に肘掛けから肘が落ちて姿勢を崩すことも多い。
【0004】
両腕が支えられていない状態で上体が前かがみの姿勢が続くと内臓が圧迫される。逆に上体を反らせて背凭れに体重が掛かった姿勢では骨盤が前にずれて姿勢が崩れがちとなり、椅子や車椅子から転落するおそれがあるほか、臀部の一部に体重が集中することで褥瘡の原因ともなる。
【0005】
かかる問題の解決のために、特許文献1には着座者が腕を載せた状態で休むことができる椅子用腕まくらが開示されており、この先行技術は商品化されて普及している。
【特許文献1】特開2006-55526号公開特許公報
【0006】
該先行技術に係る椅子用腕まくらは、使用者の大腿部上に載置するクッション性のある部材で形成されており、下面側に大腿部上面の前傾に見合う傾斜面を設けて上面側が略水平に保持されるようにするとともに、傾斜面に大腿部に被さる湾曲部を設けて安定性を確保するものである。また、該椅子用腕まくらは、両腕を上面に載せて休ませ、上体が前傾し過ぎて姿勢が崩れるのを防ぐとともに、着座中に上体に適度な前傾姿勢を保持させて骨盤を起こすことで下半身が前滑りすることを防ぎ、上体の体重預けることで座骨・尾骨周辺の圧力を緩和する効果も期待するものである。さらに、下面前端寄りには大腿部で挟む挟持部材を着脱可能に設けており、両膝が接触して痛むことを防ぐとともに腕まくらの安定も図っている。
【0007】
しかし、該先行技術に係る椅子用腕まくらは、あくまで使用者の大腿部上に載置して使用するものであり、使用者の腹部に当接する湾曲面を設けてはいるものの、身体に常時密着させるための特段の構成を有しない。そのため、使用者が下肢を動かす動作の都度、動作につられて動いて不安定となり、大腿部上からずれて落下したりしがちとなる。たとえば、下肢の筋肉が拘縮している患者などでは、そもそも両大腿部上に均等に載置することができず、継続的に安定を保つこと自体が難しい場合もある。さらに、使用者が手で物を取ったり、上半身をひねったりといった動作によっても椅子用腕まくらが腹部から離れてしまい、やはり不用意に落下するおそれがあるので、これを防ぐために都度位置を修正し直す必要もある。
【0008】
もちろん、使用者が両腕を常に椅子用腕まくらの上面に置いて大腿部上面に向けて押さえつけていれば、ずれたり落下したりすることは防げる。しかし、それでは使用者の両腕の自由度を制約することになるし、そもそも、椅子用腕まくらの使用中は使用者に常時前傾姿勢を強いることにもなるため、姿勢を固定化するという点において必ずしも適切とはいえない。高齢者や障碍者の介護現場においては、介護者が椅子用腕まくらの位置を常に確認する必要も生じるため、新たな負担となるおそれもある。
【0009】
また、先行技術に係る椅子用腕まくらは、下面前端寄りに設けた大腿部で挟む挟持部材により両膝が接触して痛むことを防ぐ効果を奏するが、該挟持部で接触を防止できるのは両膝だけである。しかし、使用者によっては長時間の着座中に大腿部の内側同士が擦れ合って褥瘡を生じたり、股関節が内股方向へ固まってしまうことがあり、該挟持部だけでは必ずしもこれらを防ぐことはできない。
【0010】
一方、先行技術に係る椅子用腕まくらは、特に車椅子への着座時に適用して有用な技術とされているが、大腿部の上面に載せて使用する以上、その幅は車椅子の左右の肘掛けの内幅に収まり、かつ、椅子用腕まくらの上面の高さは使用者の肘から前腕を支える高さである必要がある。使用者の体形、特に肩幅は様々であるが、前述のとおり椅子用腕まくらの幅が制限されるため、小柄な使用者には適していても、比較的大柄な使用者にとっては、前腕を載せることができても肘が支持されず、前腕が浮いて肩が落ちた形での前傾姿勢となる。この場合、胸郭が窄まった状態を強制され、呼吸が浅くなるといった問題が生じる。
【0011】
さらに、使用者の前腕から肘を支える高さである以上、車椅子に着座した状態で食事用テーブル等に着く場合には、上面がテーブルの天板と干渉するため、椅子用腕まくらは使用できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述した先行技術に係る椅子用腕まくらの問題点を解決すべく創作されたもので、椅子やソファ等、特に車椅子への着座時に、使用者が腕を載せた状態を維持でき、使用者の体形や身体の疾患の程度を問わず、腕を載せる腕まくら本体を安定的に保持可能なだけでなく、使用者の姿勢や動作を制限することなく、身体に常時密着した状態を維持可能な腕まくらを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載した腕まくらは、椅子や車椅子等への着座時に使用者の大腿部に載置して使用されるクッション性のある部材で形成された腕まくらであって、使用者の腹部に当接する側に湾曲部を形成し後方に一対の突出部を設けた略方形板状の腕まくら本体と、前記椅子や車椅子等の座面から使用者の大腿部上面までの高さを有し、使用者の股間に挟まれた状態で前記腕まくら本体を下面から水平に支持可能なクッション性のある部材で形成された略角柱形状の支持体とから成り、前記腕まくら本体は、前記支持体により支持された状態において、少なくとも使用者の腹部に当接する側の両側端部が、前記腕まくら本体上面に両腕を載せた使用者の両肘を保持可能な厚みを有することを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の腕まくらは、椅子や車椅子等の座面から使用者の大腿部上面までの高さを有する支持体を備えており、腕まくら本体は、主に支持体を介して椅子等の座面により、補助的に大腿部上面により水平に支持される。また、支持体は、使用者の股間に挟まれた状態であるため、容易には座面上で位置がずれることがなく、湾曲部が使用者の腹部に当接して嵌合する形となることとも相まって、結果的に腕まくら本体の位置ずれも起こりにくい。
【0015】
腕まくら本体はクッション性のある部材で形成するが、クッション性は表面付近のみとし、使用者の前腕から肘を載せても支持体により支持されていない部分が容易に大きく下垂変形しない程度の剛性を有する軽量な素材で構成することが望ましい。同様に、支持体も表面付近のみクッション性を有し、腕まくら本体に腕を載せた状態でも容易に圧縮変形しない程度の剛性を有する軽量な素材で構成することが望ましい。また、腕まくら本体の下面の中央部分と支持体の上面にはそれぞれ面ファスナー等の接合部材を設けておき、接合又は分離可能とすることが望ましい。
【0016】
次に、請求項2に記載の腕まくらは、請求項1に記載した腕まくらであって、前記腕まくら本体は、接合又は分離可能な下部クッション体と上部クッション体の2層のクッション体からなり、前記下部クッション体は、車椅子の両肘掛けの間に嵌合可能な幅と、前記支持体に支持された状態において上面がテーブルや机の天板の下面に干渉しない厚みとを有し、前記上部クッション体は、左右両端が車椅子の両肘掛の上に被さる幅としたことを特徴とするように構成している。
【0017】
なお、上部クッション体の幅は下部クッション体の幅よりも大きく、車椅子に適用した場合に左右両端が車椅子の両肘掛の上に被さるような幅とし、両側の湾曲部にかけての突出部の幅を、使用者の脇腹から肘掛の外側までに及ぶ幅とすることが望ましい。これにより、幅の狭い車椅子の肘掛けよりも広い幅の肘を支えるスペースを確保することができるため、使用者の体格、特に肩幅(両肘間の間隔)を問わず、常に無理なく前腕から肘までを腕まくら本体で支えることが可能となる。
【0018】
前記下部クッション体と上部クッション体は接合又は分離可能な2層構造に構成されているため、必要に応じて上部クッション体のみを取り外すことができる。これにより、車椅子で腕まくらを使用している状態で上部クッション体を取り外せば、そのまま食事用テーブル等に干渉することなく着席が可能となる。この状態でもテーブル等の天板の下で下部クッション体が使用者の腹部に当接した状態が維持されるとともに、使用者の両腕はテーブル上に置くことができる。
【0019】
次に、請求項3に記載した腕まくらは、請求項2に記載した腕まくらであって、クッション性のある部材で形成され、端部に連結体を設けた長さ調節可能な一対の第1の固定ベルトを備えた腰部クッション体をさらに有し、前記下部クッション体は、前一対の記突出部のそれぞれに、連結体を設けた第2の固定ベルトを備え、使用者の腰部に当接させた腰部クッション体の前記一対の第1の固定ベルトと前記下部クッション体の前記第2の固定ベルトとを各連結体で連結することにより、使用者の腹部に固定可能としたことを特徴とするように構成している。
【0020】
下部クッション体と上部クッション体を接合した状態で、上部クッション体の湾曲部を使用者の腹部に、腰部クッション体を背中側の腰部に当接させ、第1、第2の固定ベルトを連結することで、腕まくら全体を使用者の身体に固定することができる。上下のクッション体は重ねて接合することで一体化が可能であるので、使用者は、腕まくらを腕で常時上から押さえておかなくても、腕まくらが前後又は左右にずれたり大腿部の上から落ちたりする心配がなくなるため、両腕の自由が制約されず、また、安心して上半身を捻ったり傾けたりといった動きが可能となる。また、常時前傾姿勢を強制されることがなくなるため、上半身を前後に傾けて臀部の位置を動かしたり体重を移動させることもでき、座骨・尾骨周辺の圧力を緩和し、疲労を軽減したり臀部の褥瘡の発生を防ぐことができる。
【0021】
また、食事の際には、前述のとおり上部クッション体のみを取り外して、食事用テーブルに干渉することなく着席可能となる。この場合も、残った下部クッション体は腰部クッションと固定ベルトで連結されているので、やはり下部クッション体は使用者の身体に固定された状態を維持できるだけでなく、テーブル天板の下面と使用者の大腿部上面との間が支持体によって支持された下部クッション体により埋められた形となる。このため、たとえば、上半身を前後に動かして体重移動を行っても椅子や車椅子の座面上で使用者の下半身が下部クッション体により保持されるため、全身の姿勢が崩れにくくなり、筋力の弱った高齢者や筋肉が拘縮した患者であっても身体姿勢を安定させることができる。
【0022】
最後に、請求項4に記載した腕まくらは、前記支持体は、前方側に対して後方側がやや窄まった平面形状を有することを特徴とする。
【0023】
支持体をかかる形状とすることで、使用者の両足は椅子や車椅子の座面の上で無理なく股間をやや開いた状態に保持されるため、両膝だけでなく大腿部の内側同士が互いに擦れ合うことが防がれ、また、股間をやや開くことで上半身の左右のバランスも無理なく保たれる。
【0024】
また、前述のとおり、腕まくら本体の下面の中央部分と支持体の上面にそれぞれ面ファスナー等の接合部材を設けておき、両者を接合又は分離可能としてあれば、支持体の前後方向を逆転させて接合することもできる。この際、クッション性を有する支持体の断面が使用者の股間側の方が幅広くなり、股間をより広く拡げる状態となる。これにより、使用者が意識的に両大腿部を力を入れて閉じ、支持体の反発力で開く、といった動作を繰り返すことで、腰部や大腿部の筋肉、特にインナーマッスルを鍛える筋力トレーニングを手軽に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る腕まくらは、先行技術の有する問題点を解決可能であり、次のような効果を奏するものである。すなわち、腕まくら本体と腰部クッション体とをベルトで連結して使用者の腰部に固定可能なため、使用者が常時腕で腕まくらを上から押さえておかなくても、使用者の姿勢や動きにより腕まくらの位置がずれたり不用意に落下することがない。そのため、使用者の腕の自由度や上半身の動きが制約されないだけでなく、常に前傾姿勢を強制されることもなくなり、使用者や介護者の負担が軽減される。また、使用者の体格に関わらず、常に無理なく腕まくら本体で前腕から肘までを支えることができるため、上半身の姿勢保持と疲労軽減において冗長性が高まり、より有効である。さらに、腕まくら本体を下部クッション体と上部クッション体の2層構造として、上部クッション体のみを取り外し可能としたことで、車椅子等に着座して使用した状態でもテーブル等に干渉することなく着席可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明、特に腕まくら本体を上下2層構造とした腕まくらの実施形態について図を用いて説明する。
図1は実施形態に係る腕まくら1を斜め前方から見た状態を示す斜視図、
図2は上部クッション体11を分離した状態の斜視図である。
図3は下部クッション体10、
図4は上部クッション体11の平面図と側面図であり、
図5は支持体12の平面図と側面図、
図6は腰部クッション体13の平面図及び正面図である。
図7は腕まくら1を下方から見た底面図(腰部クッション13は省略)であり、
図8は同正面図(腰部クッション体は省略)、
図9は分離状態の腰部クッション体13を含む腕まくら1の側面図である。
【0027】
下部クッション体10、上部クッション体11、支持体12はクッション性を有する部材から構成しており、肌触りのよいテキスタイル生地または合成皮革等の柔軟性のある外皮によって、ある程度の硬度を有する熱可塑性発泡ポリウレタン樹脂で一体成型した部材を覆っている。部材としては上記に限られず、熱可塑性エラストマー素材や中綿などを用いることもでき、荷重による変形を抑えるために上記部材の内部に樹脂製・金属製・木製の芯材を内蔵させてもよい。また、軽量で硬度の高い部材の外部を柔らかく弾力性の高いスポンジ等のクッション層で覆った上で外皮を被せてもよいし、各構成を外皮で覆わないクッション性を有する部材のみで構成してもよい。
【0028】
一方、腰部クッション体13も同様にクッション性を有する部材から構成しているが、使用者の腰部に装着した際にフィットし、椅子等に着座し背もたれに凭れた際に過剰な異物感を感じない程度の柔らかさが望ましく、スポンジ等からなる部材を柔軟性のある外皮で覆った構成が好適である。
【0029】
下部クッション体10と上部クッション体11は概ね相似形であり、いずれも使用者の腹部に当接する側に湾曲部10a、11aを設け、後方に一対の突出部10b、11bを備えた略方形板状とし、湾曲部10a、11aのカーブは腹部に沿ってほぼ共通としている。また、下部クッション体10の上面中央部と上部クッション体11の下面中央部には面ファスナー(図示せず)を設けており、両者は接合・分離可能に一体化できる。下部クッション体10は、一般的な車椅子の両肘掛の間に無理なく押し込んで嵌合可能な程度の幅と、支持体12に支持された状態において上面がテーブルや机の天板の下面に干渉しない厚みを有としている。また、下部クッション体10の下面中央部には面ファスナー(図示せず)を設けており、支持体12の上面を着脱可能に接合できる。
【0030】
一方、上部クッション体11の幅は下部クッション体の幅よりも大きく、左右両端が一般的な車椅子の両肘掛の上に被さるだけの幅とし、両側の一対の突出部11bのそれぞれの幅を使用者の脇腹から肘掛の外側までに及ぶ幅としている。言い換えれば、使用者はその体格、特に肩幅(肘の間隔)を問わず、突出部11b上面のいずれかの位置に肘を載せることを可能としている。上部クッション体11の厚みは特に限定されないが、支持体12に支持された下部クッション体10の上に重ねて接合した状態において、使用者の両肘を当接させて支持可能な高さとしている。
【0031】
なお、下部クッション体10と上部クッション体11の前方は外部との干渉を低減するよう角を曲線にしており、上部クッション体11の前端上面はやや上方に傾斜させている。また、下部クッション体10の突出部10b、11bの外側面には、端部に連結体10cを設けた一対の第2の固定ベルト10bを備えている。
【0032】
支持体12は、その平面形状を前方側に対して使用者の股間側に向いた後方側がやや窄まった形としており、その上面には下部クッション体10の下面に着脱可能に接合可能な面ファスナー(図示せず)を設けている。
【0033】
腰部クッション体14は、
図8に示す如くその両端部付近に、端部に連結体14bを設けた一対の第1の固定ベルト14aを備えている。なお、少なくとも一対の第1の固定ベルト14aは長さ調節機構(図示せず)を有するが、前記一対の第2の固定ベルト10cにも長さ調節機構を設けてもよい。また、本実施形態では第2の固定ベルト10cは下部クッション体10にのみ設けているが、上部クッション体11にも同様に設け、必要に応じていずれかを腰部クッション体14と連結して装着してもよい。
【0034】
図10は、一般的な椅子に着座した状態で使用者が腕まくら1を装着した状態を示す模式図である(車椅子の場合も同様である。)。支持体12は座面から使用者の大腿部上面までの高さとしており、下部クッション体10を下方から支持しており、その上面に重ねられた上部クッション体11の上面が使用者の前腕から肘を無理なく支えている。また、下部クッション体10の第2の固定ベルト10cと使用者の腰部の背面に装着した腰部クッション体13の第1の固定ベルト13aとを連結することで、腕まくら1全体を使用者の身体に固定している。
【0035】
図11は、同じく使用者が腕まくら1を装着した状態で一般的な高さのテーブルに着席した状態を示す模式図である(車椅子の場合も同様である。)。この場合、上部クッション体11は取り外しており、下部クッション体10の上面はテーブルの天板の下面に干渉しない高さであるため、使用者は腹部が天板の縁近くまで近づけた状態で着席可能となっている。
【0036】
また、外した上部クッションを使用者の背中と椅子等の背凭れ等との間に挟みこめば、嚥下困難性のある患者の着座姿勢をやや前傾に保つことが可能になり、誤嚥性肺炎予防の姿勢保持準備のひとつになり、介護者の負担軽減にもつながる。
【0037】
図12は、使用者が腕まくら1を装着して標準的な車椅子に着座した状態を正面からみた模式図である。本図では肩幅が狭い比較的小柄な使用者を想定しており、そのような使用者の両肘の間隔は車椅子の肘掛けの幅よりも狭くなるものの、上部クッション体11の左右両端(具体的には突出部11bの上面)で両肘が無理なく支持される。逆に、肩幅が広い比較的大柄な使用者の場合でも、やはり両肘は上部クッション体11によって支えられるため問題はない。
【0038】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明したが、本発明は、必ずしも上述した構成にのみ限定されるものではなく、本発明の目的を達成し、効果を有する範囲内において、適宜変更実施することが可能なものであり、本発明の技術的思想の範囲内に属する限り、それらは本発明の技術的範囲に属する。
【0039】
また、本発明に係る腕まくらは様々な体格の使用者によって使用され、椅子や車椅子によって肘掛けの内幅も異なる場合があるため、適宜幾つかの異なるサイズのものを用意して実施することが望ましい。下部クッション体の幅は車椅子の肘掛けの内幅に応じたサイズとするほか、取り換え可能な高さの異なる複数の支持体を用意しておき、使用者の体格や着席するテーブル等の高さに応じて腕まくらの上面の高さを調整することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る腕まくらは、筋力の弱った高齢者や何らかの疾患によって筋肉が拘縮した障碍者など、長時間の着座時に身体の姿勢の維持が困難な人の疲労軽減、身体姿勢の保持に有効であり、特に車椅子の利用者が多い介護施設等での利用可能性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図2】上部クッション体を分離した状態を示す腕まくらの斜視図
【
図10】椅子に着座した状態で使用者が腕まくらを装着した状態を示す模式図
【
図11】腕まくらを装着した状態で使用者がテーブルに着席した状態を示す模式図
【
図12】腕まくらを装着して標準的な車椅子に着座した状態を正面からみた模式図
【符号の説明】
【0042】
1 腕まくら
10 下部クッション体
11 上部クッション体
12 支持体
13 腰部クッション体