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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121116
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ホスホニウム塩の連続的製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/54 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
C07F9/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028030
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】中澤 真実
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA02
4H050AA04
4H050AB03
4H050AB40
4H050AB66
4H050AB68
4H050BB11
4H050BC10
4H050BC11
4H050BC18
4H050BD80
4H050WA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ホスホニウム塩を短時間で製造することができ、ホスホニウム塩の生産効率が向上する製造方法を提供すること。
【解決手段】トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを含む液を連続的に送液しながら、前記液を前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとが反応する条件に設定し、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとを反応させる、ホスホニウム塩の連続的製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを含む液を連続的に送液しながら、前記液を前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとが反応する条件に設定し、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとを反応させる、ホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項2】
前記トリオルガノホスフィンが、下記一般式(1)で表される請求項1に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【化1】
(式中、RからRは、直鎖状または分岐鎖を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、あるいはこれらのヒドロキシル基もしくはアルコキシ基置換体のいずれかを示し、それぞれが同一の基でもよく、また異なる基であってもよい。)
【請求項3】
前記ハロゲン化アルキルが、下記一般式(2)で表される請求項1または2に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【化2】
(式中、Rは直鎖状または分岐鎖を有するアルキル基、置換または未置換のアリール基を示す。Xはハロゲン基を示す。)
【請求項4】
前記一般式(1)中のRからRが,それぞれ独立に炭素数が2から8の直鎖状のアルキル基である請求項2に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項5】
前記一般式(2)中のRが、炭素数が1から16の直鎖状のアルキル基である請求項3に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項6】
前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとが反応する条件が前記液を20℃以上300℃以下に設定する請求項1または2に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項7】
0.1MPa超の加圧下で前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとを反応させる請求項1または2に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項8】
前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとの反応を線速度1m/分以上の送液速度で送液しながら行う請求項1または2に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項9】
前記トリオルガノホスフィンの融点が30℃以下であり、前記ハロゲン化アルキルの融点が30℃以下である請求項1または2に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項10】
前記トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルの反応を無溶媒で行う請求項9に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項11】
原料液を反応流路に導入するための注入口と、前記注入口から導入された原料液の反応を行う反応流路と、前記反応流路で反応させて得られる生成物を含む反応液を反応流路から排出する排出口とを有するフロー合成システムを用いる請求項1または2に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項12】
前記フロー合成システムが前記反応流路の少なくとも一部を加圧することができる加圧手段を有する請求項11に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項13】
前記フロー合成システムにおいて、加圧手段が背圧レギュレータを用いる請求項12に記載のホスホニウム塩の製造方法。
【請求項14】
前記フロー合成システムが前記反応流路の少なくとも一部を加熱することができる加熱手段を有する請求項11に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。
【請求項15】
前記フロー合成システムが前記反応流路の送液速度を制御できる流速制御手段を有する請求項11に記載のホスホニウム塩の連続的製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホニウム塩の製造方法に関する。より詳細には本発明はフロー合成法によるホスホニウム塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホスホニウム塩は、相関移動触媒や高分子材料用帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、エポキシ樹脂硬化触媒、イオン液体等に使用されている有用な物質である。
【0003】
ホスホニウム塩の製造方法としては、トリアルキルホスフィンとハロゲン化アルキルとを反応させる方法が知られている(特許文献1から3)。
【0004】
また、トリフェニルホスフィンとアルキルまたはアリルハライドとを有機溶媒の存在もしくは不在下のものに周期率系第8族元素のハロゲン化物を触媒として加熱反応させてホスホニウムハライドを製造する方法(特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62-161794号公報
【特許文献2】特開昭63-119491号公報
【特許文献3】特開平11-124388号公報
【特許文献4】特公昭30-9067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トリアルキルホスフィンとハロゲン化アルキルとの反応は、多くの場合、発熱を伴う。したがって、発熱による反応の暴走を抑えるため、例えばトリアルキルホスフィンにハロゲン化アルキルを徐々に滴下するようにして、発熱をできるだけ抑えながら反応を行う必要がある。
その結果、反応が完結するまで数時間以上を要し、ホスホニウム塩の生産効率が低い結果となっていた。
【0007】
したがって、ホスホニウム塩の製造において、生産効率の向上が望まれている。
本発明の目的は、ホスホニウム塩を短時間で製造することができ、ホスホニウム塩の生産効率が向上する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
フロー合成方法は、原料流体を細い流路の反応管に搬送しながら連続的に反応を行い、目的生成物を合成する方法である。従来のいわゆるバッチ式の合成方法に比べ、フロー合成方法は合成に用いる反応原料の種類を容易に広げることができ、省エネルギー、省スペース、省廃棄物が可能であり、また高い安全性を有する合成方法として期待されている。しかしながら、その応用例は少なく、さまざま合成反応へのフロー合成方法の実用化が期待されている。
【0009】
本発明者らは、前記フロー合成方法に着目し、フロー合成方法による新規な合成方法を検討する中で、トリオルガノホスフィンを含む液とハロゲン化アルキルを含む液を連続的に反応させホスホニウム塩を生成する方法を見出した。
さらに本発明者らは、原料液の反応を行う反応流路を備えたフロー合成システムを用い、フロー合成を行うことにより短時間で目的とするホスホニウム塩が合成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち本発明は、トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを含む液を連続的に送液しながら、トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを反応させ、連続的にホスホニウム塩を生成するホスホニウム塩の製造方法に関する。
また本発明は、原料液を反応流路に導入するための注入口と、前記注入口から導入された原料液の反応を行う反応流路と、前記反応流路で反応させて得られる生成物を含む反応液を反応流路から排出する排出口とを有するフロー合成システムを用いる前記ホスホニウム塩の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホスホニウム塩を短時間で製造することができ、ホスホニウム塩の生産効率が向上したホスホニウム塩の製造方法が提供される。また、本発明では、フロー合成方法を用いていることで、合成における反応原料の種類や合成スケールを容易に広げることができ、省エネルギー、省スペース、省廃棄物が可能であり、また高い安全性を有するホスホニウム塩の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明で用いるフロー合成システムの一例を示す概略図である。
図2】本発明で用いるフロー合成システムの一例を示す概略図である。
図3】実施例で用いたフロー合成システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について説明する。
本発明のホスホニウム塩の連続的製造方法(以下、「本製造方法」と記す。)は、トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを含む液を連続的に送液しながら、前記液を前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとが反応する条件に設定し、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとを反応させることで、連続的にホスホニウム塩を生成する方法である。
【0014】
原料の一つである前記トリオルガノホスフィンは、有機リン化合物の一種であり、リン原子に有機基が3つ結合した化合物である。得られるホスホニウム塩の有用性の観点から、トリオルガノホスフィンは下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
【化3】
【0015】
前記一般式(1)中、RからRは、それぞれ独立に直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、あるいはこれらのヒドロキシル基もしくはアルコキシ基置換体の何れかを示し、それぞれが同一の基でもよく、また異なる基であってもよい。
【0016】
前記RからRに係る直鎖状または分岐状のアルキル基としては、炭素数1から20の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0017】
前記RからRに係るシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数3から10のシクロアルキル基挙げられる。
【0018】
前記RからRに係るアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0019】
前記RからRに係るアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニチル基等が挙げられる。
【0020】
また、RからRに係る前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アリール基および前記アラルキル基の水素は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基またはアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0021】
前記一般式(1)中のRからRは、工業的に入手が容易で、反応性にも優れる観点から、それぞれ独立に炭素数2から8の直鎖状のアルキル基またはアリール基が特に好ましい。
前記一般式(1)で表されるトリオルガノホスフィンとしては、前記観点から、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリへキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジエチルブチルホスフィン、ブチルジオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンが好ましい。
【0022】
別の反応原料であるハロゲン化アルキルは、通常、下記一般式(2)で表される。
【化4】
【0023】
前記一般式(2)中のRは、直鎖または分岐鎖のアルキル基、置換または未置換のアリール基を示す。
【0024】
前記Rに係る直鎖状または分岐状のアルキル基としては、炭素数1から16の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基等が挙げられる。
【0025】
前記Rに係るアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0026】
前記一般式(2)中のXは、塩素基、臭素基、ヨウ素基等のハロゲン基を示し、本製造方法において、Xは取り扱いの容易さと反応性に優れる観点で、臭素基、ヨウ素基が好ましく、特に臭素基が好ましい。
【0027】
前記一般式(2)で表されるハロゲン化アルキルとしては、工業的に入手が容易で、反応性にも優れる観点から、メチルクロライド、エチルクロライド、プロビルクロライド、ブチルクロライド、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、テトラデシルクロライド、ヘキサデシルクロライド、オクタデシルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、プロビルブロマイド、ブチルブロマイド、ヘキシルブロマイド、オクチルブロマイド、テトラデシルブロマイド、ヘキサデシルブロマイド、オクタデシルブロマイド、ベンジルブロマイド、メチルヨージドが好ましい。
【0028】
本製造方法において、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルを含む液は連続的に送液される。
トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを含む液は、両者が溶媒に溶解した溶液、いずれか一方が溶解し、もう一方が分散した分散液が挙げられる。またトリオルガノホスフィンが室温で液体の場合は、トリオルガノホスフィンを溶媒として用いてもよく、ハロゲン化アルキルが室温で液体の場合は、ハロゲン化アルキルを溶媒として用いてもよい。
【0029】
前記トリオルガノホスフィンおよびハロゲン化アルキルのいずれか一方、または両者を溶解する溶媒としては、これら化合物に対して不活性な化合物であり、例えば、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、アセトン、メタノール、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素等が挙げられる。
【0030】
室温で液体のトリオルガノホスフィンとしては、融点が30℃以下の低融点のトリオルガノホスフィンが好ましく、例えば、トリオクチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリエチルホスフィン等がより好ましい。
室温で液体のハロゲン化アルキルとしては、融点が30℃以下の低融点のハロゲン化アルキルが好ましく、例えば、エチルブロマイド、ペンチルブロマイド、ドデシルブロマイド、ヘキサデシルブロマイド等がより好ましい。
またトリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを含む液を調製する方法は、前記溶媒にトリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを一括で混合する方法、トリオルガノホスフィンを含む液とハロゲン化アルキルを含む液を別々に調製し、両者を混合する方法等が挙げられる。
またトリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルの少なくともいずれか一方が室温で液体の場合、無溶媒でトリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを含む液としてもよい。
【0031】
トリオルガノホスフィンを含む液とハロゲン化アルキルを含む液を別々に調製する場合、前記トリオルガノホスフィンを含む液と前記ハロゲン化アルキルを含む液は同じ溶媒または分散媒を用いてもよく、異なった溶媒または分散媒を用いてもよい。
トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルの少なくともいずれか一方が室温で液体である化合物を用いた場合、無溶媒で後述する前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとの反応を行うことができる。したがって、脱溶媒等の後処理の工程が簡略される観点から、トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルの少なくともいずれか一方が室温で液体である化合物を用いるのが好ましく、両者が室温で液体である化合物を用いのがより好ましい。
【0032】
前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルの混合割合は、トリオルガノホスフィンに対するハロゲン化アルキルのモル比で0.1から10、好ましくは1.0から1.2、特に好ましくは1.01から1.10とすることが生産性の観点から好ましい。トリオルガノホスフィンに対するハロゲン化アルキルのモル比とは、ハロゲン化アルキルのモル数をトリオルガノホスフィンのモル数で除した値である。
【0033】
本製造方法において、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとの反応(以下「本反応」とも記す。)により得られるホスホニウム塩は、前記トリオルガノホスフィンのリン原子にさらに前記ハロゲン化アルキルが有するアルキル基が結合した化合物である。
本製造方法において、前記トリオルガノホスフィンとして前記一般式(1)で表される化合物を用い、前記ハロゲン化アルキル基として前記一般式(2)で表される化合物を用いることで、下記一般式(3)で表されるホスホニウム塩が得られる。
【化5】
(式中、RからRは、直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、あるいはこれらのヒドロキシル基もしくはアルコキシ基置換体の何れかを示し、それぞれが同一の基でもよく、また異なる基であってもよい。また、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基、置換または未置換のアリール基を示す。Xはハロゲン原子を示す。)
前記一般式(3)中、RからRは前記一般式(1)中のRからRに相当し、前記一般式(3)中、Rは前記一般式(2)のRに相当する。
【0034】
本製造方法において、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルを含む液(以下、「本原料液」とも記す。)を連続的に送液しながら、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルが反応する条件、すなわち本反応が開始する条件に本原料液を設定し、本反応を開始させる。本原料液が連続的に送液されることで、本反応が連続的に進行する。
本反応が開始後の本原料液(以下、「本反応液」とも記す。)は更に送液され、引き続き本反応が進行することで前記ホスホニウム塩が連続的に生成される。本反応液も連続的に送液し、後述するように回収してもよいし、そのまま別の反応に用いてもよい。
本反応液を送液する流速は本原料液を送液する流速と同じでも異なっていてもよい。
【0035】
本反応液中で引き続き本反応を継続させるために、本反応液を送液する間も本反応液を本反応が進行する条件に保持してもよいし、本反応を促進する条件としてもよいし、本反応が暴走する可能性がある場合は、反応を抑制する条件としてもよい。反応効率の観点から、本反応液を送液する間も本反応液を本反応が開始する条件に保持するのが好ましい。
これら反応条件は後述するホスホニウム塩を回収するまでに、適宜、切り替えてもよい。
【0036】
本反応が開始する条件は前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとの組み合わせにより、適宜、選定される。本反応が開始する条件としては、例えば、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとを接触させる、本原料液を加熱により本反応を開始する、等が挙げられる。本反応が開始する条件はこれら条件を組み合わせた条件としてもよい。
【0037】
トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルとを接触させさることを本反応が開始する条件とする場合、トリオルガノホスフィンを含む液とハロゲン化アルキルを含む液を別々に調製し、別々に送液して、本反応を開始させる直前に両液を合流させて反応を開始させることが好ましい。
またトリオルガノホスフィンまたはハロゲン化アルキルが室温で液体の場合、そのまま別々に送液し、本反応を開始させる直前に両液を合流させてもよい。
またはトリオルガノホスフィンまたはハロゲン化アルキルのいずれか一方を含む液、またはいずれか一方を送液しながら、本反応を開始させる直前に残りの一方、または残りの一方を含む液を送液されている液に滴下してもよい。
トリオルガノホスフィンを含む液とハロゲン化アルキルを含む液を別々に送液する場合、合流後の流速は線速度で1m/分以上が好ましく、合流前の両液の流速は線速度で1m/分以上が好ましい。
【0038】
トリオルガノホスフィンを含む液とハロゲン化アルキルを含む液の合流後、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとの反応を線速度1m/分以上の送液速度で送液しながら行うのが好ましく、5m/分以上がより好ましい。この場合、本原料液または本反応液の流速は線速度で1m/分以上が好ましく、5m/分以上がより好ましい。
本原料液または本反応液が前記流速で送液された後、本原料液または本反応液を送液する流速の線速度は前記線速度がそのまま維持されていてもよく、前記反応中に異なる流速としてもよい。
なお線速度とは流速を流路の断面積で除した値であり、本明細書では流速として1分間あたりに送液される液体の体積とした。流速は実測してもよいし、送液ポンプ等の送液手段で設定した流速を用いてもよい。
流路の断面積が一定でない場合、流路中で一番小さい断面積の値から線速度を算出する。
【0039】
本反応を開始する条件として本原料液を加熱する場合、反応速度の観点から、本原料液を20℃以上300℃以下の温度に設定するのが好ましく、50℃以上150℃以下の温度に設定するのがより好ましい。
本原料液を前記温度となるように必要なら加熱することで、本原料液を前記温度とすることができる。本原料液を前記温度とした後、さらに加熱して本反応液を前記温度に保持するのが好ましい。反応が発熱を伴う場合、冷却して本反応液の温度を維持してもよい。
【0040】
本反応を開始する条件後、反応を促進する観点から、本反応液を加圧下としてもよい。本反応液を加圧下とする場合、反応効率の観点から、本反応液を0.1MPa超の圧力をかけるのがより好ましく、0.5MPa以上の圧力をかけるのがさらに好ましい。また本原料液を加圧下で送液してもよい。
本原料液または本反応液を送液するために用いる送液ポンプの耐圧の観点から、本反応液を5MPa以下の加圧下とするのが好ましく、1MPa以下の加圧下とするのがより好ましい。
【0041】
前記のように本原料液を前記本反応が開始する条件に設定し、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルが反応する条件とすることで、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルが反応し、目的とするホスホニウム塩が生成する。
例えば、トリオルガノホスフィンとしてトリ-n-オクチルホスフィン、ハロゲン化アルキルとしてエチルブロマイドを用いた場合、温度を本反応が開始する条件に設定することで、エチル(トリ-n-オクチル)ホスホニウムブロマイドが得られる。
また、本製造方法において、本反応液の反応時間は、長くなるほど反応が進行する傾向があるが、通常は、1から120分、好ましくは1から30分であり、また、純度良く目的とするホスホニウム塩を得る観点から本原料液の反応時間は3から10分とすることが特に好ましい。
【0042】
前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルの反応により得られたホスホニウム塩は、ろ過、蒸留、晶析等により単離し回収してもよいし、そのまま別の反応に用いてもよい。
また得られたホスホニウム塩を洗浄、再結晶、精留等により精製してもよい。洗浄はn-ヘキサン、2-エチルヘキサン、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒で洗浄、或いは中和した後、n―ヘキサン、2-エチルヘキサン、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒で抽出等を適宜組み合わせて精製を行ってもよい。
得られたホスホニウム塩を単離または回収する際に、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルが反応する条件をそのまま維持した状態で単離または回収してもよいし、単離または回収しやすい条件に変更してもよい。
【0043】
前記のようにして本製造方法により目的とするホスホニウム塩を製造することができる。
本製造方法は本原料液が連続的に送液され、本反応が連続的に進行するので、ホスホニウム塩が連続的に生成する。また本製造方法ではバッチ式と異なり発熱を伴う反応であっても反応速度を抑えることなく、短時間で反応を完結することが出来る。
【0044】
本製造方法は、フロー合成システムを用いて行うのが、生産効率の観点から好ましい。
フロー合成システムは例えば、原料液を反応流路に導入するための注入口と、前記注入口から導入された原料液の反応を行う反応流路と、前記反応流路で反応させて得られる生成物を含む反応液を反応流路から排出する排出口とを有するシステムが挙げられる。
前記フロー合成システムを用いることで、トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルとを含む液を原料液として反応流路の注入口から連続的に導入して反応流路で反応を行い反応流路の排出口から反応液を排出させながらホスホニウム塩の生成反応を連続的に行うことができる。
【0045】
前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルが反応する条件が本原料液を加熱する場合、前記フロー合成システムに、前記反応流路を加熱する手段を備えることで、前記反応流路を本原料液が前記反応流路を送液される間に、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとが反応する条件である反応温度とすることができる。加熱する手段は前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルが反応する前記温度範囲とする手段が好ましい。
【0046】
また前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとの反応開始後、本反応液を加圧下とする場合、前記フロー合成システムに、前記反応流路の少なくとも一部を加圧する加圧手段を備えることで、本原料液が前記反応流路を送液される間に、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルとの前記圧力下とすることができる。加圧手段は前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルが反応する前記圧力範囲とする手段が好ましい。
【0047】
本原料液または本反応液を送液する流速を特定の線速度以上とする場合、前記フロー合成システムに、本原料液の流速を制御する手段を備えることで、本原料液を送液する流速を特定の線速度以上とすることができる。前記流速を制御する手段は本原料液の流速を前記線速度とするように制御する制御機構を有するのが好ましい。
【0048】
本製造方法を実施する好ましい一形態として、図1に本発明で用いるフロー合成システムの概略図を示した。以下、この図1に関して説明する。
図1は前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルが反応する条件が本原料液を加熱する場合であり、必要に応じて反応開始後の反応液を加圧下とする場合に好適に用いることができる。
【0049】
図1の実施形態のフロー合成システム1は、原料液貯蔵槽2、原料液供給流路a、ポンプ3、反応流路4、生成物排出流路b、生成物貯蔵槽5を備え、反応流路4には原料液を送液して反応流路4に原料液を導入するための導入口4aと、生成されたホスホニウム塩を含む反応液を排出するための排出口4bが設けられている。また、反応流路4は、ジョイントcを介して反応流路4と生成物排出流路bが繋がっている。
なお図1では、好ましい態様として反応流路4は、反応流路4の少なくとも一部が加圧される加圧部6が設けられている例を示した。加圧部6は、反応流路4の下流部の生成物排出流路b上に加圧手段として背圧レギュレータ6aを設置することにより加圧部6は反応流路4を加圧することができる。また、図1のフロー合成システムにおいて、加圧部6は、反応流路4および原料液供給流路aとを加圧できるものであってもよい。
図1から図3においては、便宜上、背圧レギュレータ6aも加圧部に含めて図示している。
【0050】
なお、本明細書において、「上流」および「下流」とは、液体が流れる方向に対して用いられ、例えば図1から図3では「上流」は原料液貯蔵槽2に近い方が上流、生成物貯蔵槽5に近い方が下流である。
【0051】
図1の原料液貯蔵槽2には、本原料液が貯蔵されている。
本原料液は、トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを前記溶媒に溶解させた溶液として原料液貯蔵槽2に貯蔵されていてもよい。
またトリオルガノホスフィンが、室温で液体であるような、融点が30℃以下のトリオルガノホスフィンであり、ハロゲン化アルキルが、融点が30℃以下のハロゲン化アルキルである場合には、両者の混合物は室温付近20℃でも溶液となるので、前記溶媒を用いない無溶媒で本原料液とすることができる。
【0052】
融点が30℃以下のトリオルガノホスフィンとしては、前記のとおりである。
融点が30℃以下のハロゲン化アルキルとしては、前記のとおりである。
【0053】
本原料液中のトリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルの混合割合は、前記のとおりトリオルガノホスフィンに対するハロゲン化アルキルのモル比で0.1から10、好ましくは1.0から1.2、特に好ましくは1.01から1.10とすることが生産性の観点から好ましい。トリオルガノホスフィンに対するハロゲン化アルキルのモル比とは、ハロゲン化アルキルのモル数をトリオルガノホスフィンのモル数で除した値である。
【0054】
本原料液で用いる溶媒としては、前記のとおりである。
トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルの少なくともいずれか一方が室温で液体の場合、本原料液は無溶媒でトリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルを含む液としてもよい。
【0055】
原料液貯蔵槽2に貯蔵された本原料液は、原料液供給流路aを介して送液され導入口4aから反応経路4に導入される。送液の手段として、図1にはポンプ3を用いる態様を示したが送液手段はこれに限定されるものではなく、例えば原料液供給流路に傾斜をつけ、本原料液の自重で送液されるようにしてもよい。
【0056】
ポンプ3は、例えば、プランジャーポンプ、シリンジポンプ、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、ペリスタポンプ等が挙げられる。
【0057】
原料液供給流路aの長さに特に制限はないが、圧力損失の観点から、長さが1cmから1000cm、好ましくは10cmから50cmの管等を配管することにより構成することができる。
原料液供給流路aに係る管の内径も特に制限はないが混合効率の観点から、内径は0.1から50mm、好ましくは1から10mmである。
原料液供給流路aに係る管の材質は、特に制限なく、例えば、ペルフルオロアルコキシフッ素(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレンコポリマー(FEP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、アルミニウム、石英ガラス、ライムソーダガラス、シリコンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0058】
本原料液は原料液供給流路aを通過して導入口4aから管状反応流路4へ連続的に導入され、反応流路4を通過する際に反応が行われる。
反応流路4内で前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルの反応を開始するために、後述する加熱手段、必要に応じて加圧手段または両手段をフロー合成システム1は備えてもよい。
【0059】
反応流路4は管状であるのが送液効率の観点から好ましく、管により構成することができる。反応流路4の長さは、流速と反応時間の関係で反応を制御しやすくする観点から0.1mから20m、好ましくは5mから15mである。
反応流路4が管状の場合、その内径は、加熱に要する時間を短くすることができる観点から通常、0.1から10mm、好ましくは1から5mmである。
図1のフロー合成システムにおいて、反応流路4が管状である場合、その容積は流速と反応時間の関係で反応を制御しやすくする観点から0.1から1000ml、好ましくは5から50mlである。
反応流路4の材質は、特に制限なく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレンコポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、アルミニウム、石英ガラス、ライムソーダガラス、シリコンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0060】
反応流路4により反応を行ったホスホニウム塩を含む反応液は、排出口4bから生成物排出流路bへ排出される。
【0061】
生成物排出流路bは、フロー反応システムの操作性を考慮して必要により設けられる。
生成物排出流路bの長さに特に制限はなく、例えば、長さが5cmから100cm、好ましくは10cmから20cmのチューブにより構成することができる。
生成物排出流路bを管を配管することで構成した場合。その内径も特に制限はなく、通常、0.1から10mm、好ましくは1から5mmである。
前記チューブの材質は、特に制限なく、例えば、ペルフルオロアルコキシフッ素(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレンコポリマー(FEP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)、ステンレス、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、アルミニウム、石英ガラス、ライムソーダガラス、シリコンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0062】
生成物排出流路bから排出される目的生成物であるホスホニウム塩を含む反応液は生成物貯蔵槽5に貯蔵される。
前記生成物貯蔵槽5へ反応液が送液される前、または前記生成物貯蔵槽5で、必要に応じて、前記オルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルの反応を停止してもよい。
反応の停止は冷却、希釈、反応停止剤の添加等の方法により行うことができる。
【0063】
図1のフロー合成システムは、反応流路4に、加熱することを目的としてヒーター等を介して加熱できる加熱手段を設置し加熱部6を設けた態様を示した。前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルの反応が発熱を伴う場合、反応流路4に、冷却することを目的として冷媒等を介して冷却できる冷却手段を設置し加熱部6の代わりに冷却部(図示せず)を設けてもよい。
【0064】
また、図1のフロー合成システムは原料液供給流路に、必要により本原料液の恒温化による反応の安定化や、原料の固結防止を目的として、恒温室やオーブン(図示せず)中に設置して温度調整が可能となるようにしてもよい。
【0065】
図1のフロー合成システムは、原料液貯蔵槽2に原料の本原料液を貯蔵した場合について示したが、前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルが反応する条件が前記トリオルガノホスフィンと前記ハロゲン化アルキルが接触する場合は、図2に示すようにトリオルガノホスフィンを含む液を貯蔵した原料液貯蔵槽2a、ハロゲン化アルキルを含む液を貯蔵した原料液貯蔵槽2bとを個別に準備するのが好ましい。図2では反応流路4に導入するための導入口4aに本原料液が送液される前の段階で、ジョイントc1を介してトリオルガノホスフィンを含む液とハロゲン化アルキルを含む液とを混合する態様を示している。トリオルガノホスフィンを含む液とハロゲン化アルキルを含む液とをより均一に混合するためにジョイントc1の代わりに2液混合用ミキサーを用いてもよい。
なお、図2のフロー合成システムを用いる場合には、ジョイントc1で、トリオルガノホスフィンとハロゲン化アルキルの混合割合がトリオルガノホスフィンに対するハロゲン化アルキルのモル比で好ましくは0.1から10、より好ましくは1.0から1.2、特に好ましくは1.01から1.10となるように、原料液貯蔵槽2aと原料液貯蔵槽2bの原料のそれぞれの濃度や送液の流量を適宜調製できるようにしてもよい。
【0066】
本原料液を送液する流速を、必要に応じて、特定の線速度以上とする場合は、前記フロー合成システムにおいて本原料液を原料液供給流路aで送液するときの流速は線速度で、1m/分以上とするのが好ましく、生産性および混合効率の向上の観点から1から100m/分とするのがより好ましく、1から50m/分とするのがさらに好ましく、3から10m/分とするのが特に好ましい。
前記線速度とするために、図1または図2に示したフロー合成システムは送液手段を有し、前記送液手段は流速制御手段を備えているのが好ましい。
【0067】
また、本製造方法において、本原料液の反応時間は、長くなるほど反応が進行する傾向があるが、通常は、1から120分、好ましくは1から30分であり、また、純度良く目的とするホスホニウム塩を得る観点から本原料液の反応時間は2から10分とすることが特に好ましい。
滞留時間の調整は本原料液の流速、本反応液の流速、および反応流路4の長さ等を調整することで適宜、制御することができる。
【0068】
なお、前記フロー合成システムを用いる場合、反応流路4における滞留時間が前記反応時間の範囲となればよく、フロー合成システムでの原料液の滞留時間は、特に制限はないが、多くの場合、1から30分、好ましくは2から10分である。
【0069】
また、前記フロー合成システムを用いる場合、反応流路4の圧力は、ハロゲン化アルキルの揮発防止の観点から0.1MPa超、好ましくは0.5MPa以上、特に好ましくは0.5から5MPaとすることで前記本製造方法の反応圧力とすることができる。
【0070】
また、前記フロー合成システムを用いる場合、反応流路4の温度は、反応を早期に完結させることおよびテフロン系配管を使用した場合の耐熱温度の観点から20℃以上、好ましくは20から300℃、特に好ましくは100から150℃とすることで前記本製造方法の反応温度とすることができる。
【0071】
また、前記フロー合成システムにより反応を行って生成されたホスホニウム塩は生成物貯蔵槽5に随時蓄えられるが、反応終了後、必要により、ろ過、蒸留、晶析等により単離し回収してもよいし、そのまま別の反応に用いてもよい。
また得られたホスホニウム塩を洗浄、再結晶、精留等により精製してもよい。洗浄はn―ヘキサン、2-エチルヘキサン、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒で洗浄、或いは中和した後、n―ヘキサン、2-エチルヘキサン、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒で抽出等を適宜組み合わせて精製を行ってもよい。
【0072】
図1のフロー合成システムは原料貯蔵槽2が一つの態様を示したが、原料貯蔵槽は複数あってもよく、それらを交互に使用するようにしてもよい。また原料貯蔵槽の数に応じて原料液供給流路も複数あってもよい。図2においても原料貯蔵槽2aおよび原料貯蔵槽2bはそれぞれ複数あってもよい。
また図2において、トリオルガノホスフィンを含む液とハロゲン化アルキルを含む液とを混合するジョイントc1は少なくとも一か所が反応流路4の前にあればよく、トリオルガノホスフィンを含む液とハロゲン化アルキルを含む液との混合箇所は複数あってもよい。
また図1および図2に示したように、フロー合成システムは加熱手段、加圧手段、流速制御手段、また冷却手段等複数種の制御手段を有していてもよい。
【0073】
前記本製造方法で得られたホスホニウム塩は相関移動触媒や高分子材料用帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、エポキシ樹脂硬化触媒、イオン液体等に好適に用いることができる。
【0074】
以上、本製造方法について説明した。しかしながら本発明は、前記実施形態の構成に限定されない。例えば図1および図2に示した実施形態の構成において、他の任意の工程、装置、機能を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の工程と置換されていてもよい。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
<フロー合成システム>
図3に、実施例で使用したフロー合成システムの概略図を示す。
原料液貯蔵槽2として、250mLのフラスコを用い、原料液貯蔵槽2はグローブボックスに設置した。
原料液送液用ポンプ3としてはタクミナ社製スムーズフローポンプQシリーズ品を用いた。
原料液供給流路aはSUS製管を用いた。なおSUS製管の内径は1mm、外径は1/16インチ、長さは1.3mであった。また、原料液供給流路aは、30℃に設定した加熱装置の中に設置した。
反応流路4はSUS製管を用いた。SUS製管の内径は1mm、外径は1/16インチ、長さは5m、容積は1mlであった。
【0077】
反応流路4の下流の生成物排出流路bの途中に背圧レギュレータ―(以下、「BPR」とも記す。)(IDEX社製)をジョイントcから30cmのところへ設置し、背圧レギュレータ―の上流の反応流路4および原料液供給流路aを500pai(約3.4MPa)の圧力をかけられるようにした。
また、反応流路4、BPRおよびジョイントcには、リボンヒータ(図示せず。)を設置して温度を200℃まで調整できるようにした。
生成物排出流路bはSUS製管を用いた。SUS製管の内径は1mm、外径は1/16、長さは10cmであった。
また、生成物貯蔵槽5には、200mLのフラスコを用い、フラスコ内に予めヘキサンを100ml貯蔵した。。
また、ジョイントcの部分に温度が記録できる記録計を設置し、これを反応温度とした。
【0078】
<合成反応>
トリオルガノホスフィンとしてトリオクチルホスフィン、ハロゲン化アルキルとしてエチルブロマイドを用いて下記式(4)の反応を行なった。
【化6】
【0079】
原料液貯蔵槽2の250mLのガラス瓶に、トリオクチルホスフィン(P―8)に対するエチルブロマイド(BrEt)をモル比(BrEt/P-8)で1.05に調製した原料液150gを仕込んだ。加熱装置の温度を30℃に設定し、原料液供給流路aの温度を調整した。
リボンヒータを用いて、ジョイントcの部分の温度が120℃になるように設定し、反応流路4の温度を調整した。
原料液の流量を5.0ml/min、反応流路4での滞留時間を0.2minに調整し、反応を行った。また、生成物貯蔵槽5に蓄えられた反応液を31P-NMRを用いて、PX―82Bの生成率をP-8とPX―82Bのピーク面積の比から評価した。
主な反応条件とPX―82Bの生成率の評価結果を表1に示す。
【0080】
[実施例2]
反応流路4として、内径が1mm、外径が1/16インチ、長さが3.8m、容積が3mlのSUS製管を用い、原料液の流量を5.0ml/minとし、反応流路4での滞留時間を0.60minとした以外は、実施例1と同様にして反応を行い、生成物貯蔵槽5に蓄えられた反応液を31P-NMRを用いて、PX―82Bの生成率をP-8とPX―82Bのピーク面積の比から評価した。
主な反応条件とPX―82Bの生成率の評価結果を表1に示す。
【0081】
[実施例3]
反応流路4として、内径が1mm、外径が1/16インチ、長さが6.4m、容積が5mlのSUS製管を用い、原料液の流量を5.0ml/minとし、反応流路4での滞留時間を1.00minとした以外は、実施例1と同様にして反応を行い、生成物貯蔵槽5に蓄えられた反応液を31P-NMRを用いて、PX―82Bの生成率をP-8とPX―82Bのピーク面積の比から評価した。
主な反応条件とPX―82Bの生成率の評価結果を表1に示す。
【0082】
[実施例4]
反応流路4として、内径が1mm、外径が1/16インチ、長さが6.4m、容積が5mlのSUS製管を用い、原料液の流量を3.5ml/minとし、反応流路4での滞留時間を1.43minとした以外は、実施例1と同様にして反応を行い、生成物貯蔵槽5に蓄えられた反応液を31P-NMRを用いて、PX―82Bの生成率をP-8とPX―82Bのピーク面積の比から評価した。
主な反応条件とPX―82Bの生成率の評価結果を表1に示す。
【0083】
[実施例5]
反応流路4として、内径が1mm、外径が1/16インチ、長さが13m、容積が10mlのSUS製管を用い、原料液の流量を3.0ml/minとし、反応流路4での滞留時間を3.33minとした以外は、実施例1と同様にして反応を行い、生成物貯蔵槽5に蓄えられた反応液を31P-NMRを用いて、PX―82Bの生成率をP-8とPX―82Bのピーク面積の比から評価した。
主な反応条件とPX―82Bの生成率の評価結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
前記結果より、本製造方法はホスホニウム塩を短時間で製造することができ、ホスホニウム塩の生産効率が向上すると考えられる。また、前記実施例で用いたフロー合成方法は本製造方法を好適に実施することができること。
【符号の説明】
【0086】
1 フロー合成システム
2、2a、2b 原料液貯蔵槽
3 ポンプ
4 反応流路
4a 反応流路の注入口
4b 反応流路の排出口
5 生成物貯蔵槽
6 加圧部
6a 背圧レギュレータ
a 原料液供給流路
b 生成物排出流路
c、c1 ジョイント
d 背圧レギュレータ

図1
図2
図3