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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121119
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   F28F 13/00 20060101AFI20240830BHJP
   F28D 1/00 20060101ALI20240830BHJP
   B61C 17/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F28F13/00
F28D1/00
B61C17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028033
(22)【出願日】2023-02-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月21日に東海旅客鉄道株式会社名古屋車両区へ搬入
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊東 拓
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA37
3L103BB39
3L103CC02
3L103CC22
3L103DD03
(57)【要約】
【課題】床下にラジエータを配置する鉄道車両において、ラジエータの冷却効率を向上させること。
【解決手段】上面に床板215を配置される台枠21と、台枠21の下面に取り付けられるラジエータ6と、を有し、冷却水が流れる正面コア61、第1側面コア62、および第2側面コア63をラジエータ6が備え、空気が正面コア61、第1側面コア62、および第2側面コア63に流通することによって冷却水が冷却される鉄道車両1において、床板215とラジエータ6との間に空間S51が形成されており、正面コア61、第1側面コア62、および第2側面コア63の上側にふさぎ部材10を配置し、ふさぎ部材10によって空間S51を塞ぐ。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に床板を配置される台枠と、前記台枠の下面に取り付けられる冷却装置と、を有し、熱媒体が流れるコアを前記冷却装置が備え、空気が前記コアに流通することによって前記熱媒体が冷却される鉄道車両において、
前記床板と前記冷却装置との間に空間が形成されており、
前記コアの上側に配置されて前記空間を塞ぐふさぎ部材を有する、
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両において、
前記台枠は、一対の側梁と、前記一対の側梁の間に架設される複数の横梁とを有し、前記一対の側梁と前記複数の横梁の上面に前記床板が取り付けられており、
前記冷却装置は、一方の側梁より車両中央側に配置され、前記コアに流通させる空気を吸い込む吸い込み口を前記一方の側梁側に向けた姿勢で、前記台枠に取り付けられ、
前記ふさぎ部材は、前記空間のうち前記一方の側梁と前記冷却装置との間の領域を塞いでいる、
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項2に記載する鉄道車両において、
前記複数の横梁は、それぞれ、軌道方向に貫通する貫通穴を形成されており、
前記ふさぎ部材は、前記貫通穴より下側に配置されている、
ことを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示する技術は、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の床下には、例えば、ラジエータが配置される。ラジエータは、冷却水や潤滑油などの熱媒体が循環するチューブやフィンで構成されるコアを有する。ラジエータは、コアから空気を吸い込み、吸い込んだ空気と熱媒体との間で熱交換させることによって、熱媒体を冷却する。ラジエータは、熱交換した空気をコアと反対側へ排出する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-130962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラジエータは、コアから吸い込む空気の温度(以下「吸い込み温度」とする)が外気温に近いほど、熱媒体と吸い込み温度との温度差が大きくなり、熱媒体を冷却する冷却効率が良くなる。ところが、従来の鉄道車両は、ラジエータの吸い込み温度が外気温より大幅に高いことが多かった。その要因は、ラジエータから排出された空気がコアに回り込んで再循環することにあると、発明者は考えた。そこで、発明者は、ラジエータから排出された空気がラジエータのコアに回り込む経路を遮断するように、邪魔板を設置した。
【0005】
しかし、吸い込み温度は、期待するほど下がらなかった。発明者が定置試験で様々な検証を行った結果、ラジエータから排出される空気より、コアから発生する熱の方が、吸い込み温度に影響することが判明した。よって、ラジエータを床下に配置される鉄道車両には改善の余地がある。
【0006】
本明細書において開示する技術は、床下にラジエータを配置する鉄道車両において、ラジエータの冷却効率を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において開示する技術の一態様は、(1)上面に床板を配置される台枠と、前記台枠の下面に取り付けられる冷却装置と、を有し、熱媒体が流れるコアを前記冷却装置が備え、空気が前記コアに流通することによって前記熱媒体が冷却される鉄道車両において、前記床板と前記冷却装置との間に空間が形成されており、前記コアの上側に配置されて前記空間を塞ぐふさぎ部材を有する。
【0008】
上記構成を有する鉄道車両では、冷却装置のコアを流れる熱媒体と、コアに吸い込まれて流通する空気とが熱交換することによって、熱媒体が冷却される。冷却装置のコアは、熱媒体によって加熱され、コアと床板との間の空間にある空気を加熱する。ふさぎ部材は、コアの上側に配置されて、床板と冷却装置との間に形成される空間を塞いでいる。そのため、コアの吸い込み口が空気を吸い込むことによって負圧状態になっても、空間内の高温の空気は、ふさぎ部材によって遮られ、コアに殆ど吸い込まれない。これにより、冷却装置は、コアを介して、コアによって温められていない新鮮な空気を吸い込むことが可能になる。よって、上記構成の鉄道車両によれば、冷却装置が吸い込む空気の吸い込み温度と、冷却装置を流れる熱媒体の温度である媒体温度との温度差が大きくなり、冷却装置の冷却効率を向上させることができる。
【0009】
(2)(1)に記載する鉄道車両において、前記台枠は、一対の側梁と、一対の側梁の間に架設される複数の横梁とを有し、前記一対の側梁と前記複数の横梁の上面に前記床板が取り付けられており、前記冷却装置は、一方の側梁より車両中央側に配置され、前記コアに流通させる空気を吸い込む吸い込み口を前記一方の側梁側に向けた姿勢で、前記台枠の下面に取り付けられ、前記ふさぎ部材は、前記空間のうち前記一方の側梁と前記冷却装置との間の領域を塞いでいる、ことが好ましい。
【0010】
上記構成を有する鉄道車両では、冷却装置は、吸い込み口を一方の側梁側に向けた姿勢で、一方の側梁より中央側に配置されることにより、車両走行時に空気がコアに流入することが促進される。ふさぎ部材は、一方の側梁と冷却装置との間の領域を塞いでいる。そのため、例えば、車両走行時にコアの吸い込み口付近が負圧状態になっても、コアと床板との間の空間にある高温の空気がふさぎ部材に遮られ、コアに殆ど吸い込まれない。よって、上記構成を有する鉄道車両によれば、車両走行時にも、吸い込み温度と媒体温度との温度差が大きくなり、冷却装置の冷却効率を向上させることができる。
【0011】
(3)(2)に記載する鉄道車両において、前記複数の横梁は、それぞれ、軌道方向に貫通する貫通穴を形成されており、前記ふさぎ部材は、前記貫通穴より下側に配置されている、ことが好ましい。
【0012】
上記構成を有する鉄道車両では、走行風が横梁に形成した貫通穴を通過する。ふさぎ部材は、貫通穴の下側に配置され、コアと床板との間の空間にある高温の空気が、横梁の貫通穴を通過してコアに流れ込むのを防いでいる。よって、上記構成を有する鉄道車両によれば、吸い込み温度と媒体温度との温度差が大きくなり、冷却装置の冷却効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記鉄道車両によれば、床下にラジエータを配置する鉄道車両において、ラジエータの冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】鉄道車両の側面図である。
図2】床下機器の配置の一例を示す図である。
図3】ラジエータの正面図である。
図4図3に示すラジエータの上面図である。
図5】ラジエータ取付構造を示す正面図である。
図6図5のA方向矢視図である。
図7図6のB方向矢視図である。
図8図6のC方向矢視図である。
図9】ふさぎ部材がない鉄道車両における空気の流れを説明する図である。
図10】ふさぎ部材がない鉄道車両における空気の流れを説明する図である。
図11】ふさぎ部材がない鉄道車両における空気の流れを説明する図である。
図12】ふさぎ部材がない鉄道車両における空気の流れを説明する図である。
図13】ふさぎ部材がある鉄道車両における空気の流れを説明する図である。
図14】ふさぎ部材がある鉄道車両における空気の流れを説明する図である。
図15】ふさぎ部材がある鉄道車両における空気の流れを説明する図である。
図16】ふさぎ部材がある鉄道車両における空気の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態にかかる鉄道車両について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書は、床下に空冷式のラジエータを配置した鉄道車両について開示する。各図の軌道方向、枕木方向、車高方向は、鉄道車両1における方向を示している。図1の前側、後側、上側、下側は、鉄道車両1の向きを示す。例えば、図1の前側、後側は、車両走行方向X1に走行する鉄道車両1の向きを示す。なお、鉄道車両1が車両走行方向X1と逆向きに走行する場合、前側と後側が逆になる。図1の手前側を正面側、奥側を背面側とする。
【0016】
図1に示すように、鉄道車両1は、車体2と台車3とを備える。車体2は、台枠21と、一対の側構体22と、一対の妻構体23と、屋根構体24とを接合した6面体によって構成されている。台枠21は、枕木方向両端部に側構体22を接合され、軌道方向両端部に妻構体23を接合されている。屋根構体24は、一対の側構体22の上端部と一対の妻構体23の上端部とに接合されている。
【0017】
台車3は、台枠21の軌道方向両端部に取り付けられている。各種の床下機器が台枠21に吊り下げられている。床下機器は、例えば、エンジン5、ラジエータ6、燃料タンク7である。
【0018】
図2に示すように、エンジン5は、台車3に伝達されて鉄道車両1を走行させる駆動力を発生する装置である。図2では、台枠21と後述するふさぎ部材10、エンジン5とラジエータ6とを接続する配管などが省略され、床下機器の配置が簡潔に記載されている。なお、床下機器の配置、種類、サイズなどは、図2と異なってもよい。
【0019】
エンジン5は、発電機に接続されていてもよい。この場合、鉄道車両1は、蓄電池を床下に設置し、発電機が発生した電気を蓄電池に蓄えてもよい。鉄道車両1は、例えば、ディーゼルエンジンおよび発電機と、蓄電池との2系統を駆動源とするハイブリッド車両であってもよい。エンジン5に供給する燃料は、例えば、軽油、ガソリン、水素である。
【0020】
ラジエータ6は、エンジン5と燃料タンク7との間に配置されている。エンジン5は冷却水によって冷却される。冷却水は、エンジン5とラジエータ6との間を循環する。ラジエータ6は、空気を用いて冷却水を冷却する空冷式の冷却装置である。ラジエータ6は「冷却装置」の一例である。冷却水は「熱媒体」の一例である。
【0021】
ラジエータ6の構成を図3および図4を参照して説明する。図3および図4に記載する正面側、背面側、左側、右側、上側、下側は、ラジエータ6を鉄道車両1の側面側から見たときのラジエータ6の向きを示している。すなわち、ラジエータ6の正面コア61に正対して立つ者から見て手前側を正面側、奥側を背面側とする。左側、右側、上側、下側も同様に、ラジエータ6の正面コア61に正対して立つ者から見た向きを示している。
【0022】
ラジエータ6は、筐体60と、第1整風部材67と、第2整風部材68と、流入口69と、流出口70と、ファン75と、を備えている。
【0023】
図3に示すように、筐体60は、6面体により構成された箱形をなし、内部空間60cを備える。筐体60の正面には、正面コア61,61が左右に並んで収容されている。正面コア61の形状および数は本形態に限定されない。筐体60の左側面には、第1側面コア62が収容されている。筐体60の右側面には、第2側面コア63が収容されている。第1側面コア62と第2側面コア63とは、正面コア61の左右両端部に対して垂直に配置されている。つまり、ラジエータ6には、コアがコの字状に設けられている。
【0024】
図4に示すように、筐体60の背面には、背板66が配置されている。筐体60の上面には、上板64が配置されている。上板64は、正面コア61、第1側面コア62、第2側面コア63、および、背板66の上部に接続している。図3に示すように、筐体60の下面には、下板65が配置されている。下板65は、正面コア61、第1側面コア62、第2側面コア63、および、背板66の下部に接続している。
【0025】
ラジエータ6は、第1側面コア62と正面コア61と第2側面コア63とに渡って、複数の熱交換管が設けられている。複数の熱交換管の間には、空気通路が設けられている。正面コア61、第1側面コア62、および、第2側面コア63には、それぞれ、正面吸い込み口61a、第1側面吸い込み口62a、および、第2側面吸い込み口63aが形成されている。正面吸い込み口61a、第1側面吸い込み口62a、および、第2側面吸い込み口63aは、空気通路を介して、筐体60の内部空間60cに繋がっている。
【0026】
上板64、下板65、および、背板66には、吸い込み口も、熱交換管も、空気通路も設けられていない。図4に示すように、背板66には、高温の冷却水がエンジン5から送り込まれる流入口69、および、冷却された冷却水がエンジン5に戻っていく流出口70が設けられている。流入口69と流出口70は、それぞれ、複数の熱交換管に接続している。背板66には、ファン75が取り付けられている。ファン75は、背板66に形成された開口部66a(図3参照)を介して筐体60の内部空間60cと繋がっている。ファン75は、正面吸い込み口61a、第1側面吸い込み口62a、および、第2側面吸い込み口63aから内部空間60cを介してラジエータ6の背面側へと空気が流れる気流を形成することができる。
【0027】
図3および図4に示すように、筐体60の左右両側には、第1整風部材67と第2整風部材68とが取り付けられている。第1整風部材67は、第1側面コア62から離れた位置に第1側面コア62の第1側面吸い込み口62aに対向して(略平行に)第1側板67aを配置している。第1上板67bは、一端が第1側板67aの上端部に接続し、他端が第1側面コア62に接続している。第1側板67aおよび第1上板67bの背面側端部には、第1背板67cが接続している。第1整風部材67は、第1側板67aと反対側に位置する端部(第1上板67bの右端および第1背板67cの右端)を第1側面コア62に接合されている。第1背板67cは、正面側から流入した空気を第1側面吸い込み口62aに円滑に誘導するための傾斜部67dが第1側板67aの背面側端部との間に形成されている。
【0028】
第1整風部材67は、正面側と下側とに開口する状態で筐体60に取り付けられ、正面側開口部から流入した空気を第1側面吸い込み口62aに誘導することができる。第1側面吸い込み口62aに流入しなかった空気は、第1整風部材67の下方開口部から外部に排出され、第1整風部材67内に残らない。よって、ラジエータ6には、新鮮な空気が第1側面吸い込み口62aに誘導される。
【0029】
第2整風部材68は、第1整風部材67と同様に、第2側板68aと、第2上板68bと、第2背板68cと、傾斜部68dとを有し、空気を第2側面吸い込み口63aに誘導する。
【0030】
図5図6図7、および、図8に示すように、ラジエータ6は、台枠21の下面に取り付けられる。台枠21は、一対の側梁211と、複数の横梁212と、床板215とを備えている。
【0031】
図6は、床板215の記載を省略している。一対の側梁211は、軌道方向に沿って配置されている。複数の横梁212は、一対の側梁211の間に軌道方向に間隔を空けて配置されている。横梁212の両端部は一対の側梁211に接合されている。
【0032】
図5に示すように、横梁212は、縦板部212aの上下端部を同一方向に直角に折り曲げることによって、上側横板部212bと下側横板部212dとを設けられている。
【0033】
床板215は、一対の側梁211の上面および複数の横梁212の上側横板部212bに対して取り付けられ、台枠21の上面に配置されている。側梁211および横梁212は、床板215の下面215aから下向きに突出している。床板215の下側には、一対の側梁211および複数の横梁212によって区切られた複数の空間S51が形成されている。
【0034】
図7および図8に示すように、横梁212の縦板部212aは、軌道方向に対して直交するように配置されている。縦板部212aは、床板215の下面215aに対して下向きに突出している。縦板部212aには、複数の貫通穴212hが軌道方向に貫通して形成されている。車両走行時には、走行風が貫通穴212hを介して空間S51から隣の空間S51へと流れることができ、空気抵抗が抑制される。
【0035】
図6図8に示すように、ラジエータ6は、正面コア61を一方の側梁211側に向けた姿勢で台枠21の下面に取り付けられている。ラジエータ6の正面コア61は、一方の側梁211より車両中央側に配置されている。つまり、正面コア61は、枕木方向の車両限界L1より車両中央側に配置されている。この配置によって、鉄道車両1の走行により誘起される走行風は、正面コア61の正面吸い込み口61a、第1整風部材67の正面側開口部、および、第2整風部材68の正面側開口部に自然に流れ込む。
【0036】
ラジエータ6は、隣合う横梁212の下側横板部212dにそれぞれ取り付けられ、空間S51の下方開口部を部分的に塞いでいる。ラジエータ6は、横梁212の貫通穴212hより下側に配置されている。そのため、例えば、ラジエータ6から空間S51へ放出された熱は、走行風によって、貫通穴212hを介して隣の空間S51に移動することができる。
【0037】
図5図6図7図8に記載するふさぎ部材10には、他の部材と見分けやすくするために、ドットハッチングが付されている。ふさぎ部材10は、板材により構成されている。ふさぎ部材10は、ラジエータ6の正面コア61、第1側面コア62、および、第2側面コア63の上側に水平に配置されて、床板215の下面215aと、ラジエータ6のコア(正面コア61、第1側面コア62、第2側面コア63)と、の間に形成される空間S51の下側(横梁212の下側横板部212dの下面)を塞いでいる。
【0038】
図6に示すように、ふさぎ部材10の軌道方向の長さは、ラジエータ6の左側に位置する横梁212(第1側面コア62の軌道方向後側で直近の横梁212)からラジエータ6の右側に位置する横梁212(第2側面コア63の軌道方向苗側で直近の横梁212)までの長さを有する。ふさぎ部材10は、側梁211に沿って配置され、横梁212の下側横板部212dに固定されている。
【0039】
ふさぎ部材10の側梁211側に位置する端部は、ストレートに形成されている。これに対して、ふさぎ部材10のラジエータ6側に位置する端部は、上面視において、凹形状に形成されている。具体的に、ふさぎ部材10のラジエータ6側に位置する端部の中央分は、ラジエータ6の正面コア61の上部形状に倣って軌道方向外側に窪んでいる。そして、ふさぎ部材10のラジエータ6側に位置する端部の左側端部分は、第1側面コア62に取り付けられた第1整風部材67の第1上板67bの正面側端部まで突出して設けられている。さらに、ふさぎ部材10のラジエータ6側に位置する端部の右側端部分は、第2側面コア63に取り付けられた第2整風部材68の第1上板68bの正面側端部まで突出して設けられている。これにより、ふさぎ部材10は、ラジエータ6の正面側に空間S51と連通する隙間を設けないように配置され、ラジエータ6の上方に位置する空間S51のうち、側梁211とラジエータ6のコア(正面コア61、第1側面コア62、第2側面コア63)との間に対応する領域S51aを塞ぐことができる。
【0040】
ふさぎ部材10は、横梁212の貫通穴212hより下側の位置で横梁212に固定されている。この配置によって、ふさぎ部材10は、貫通穴212hを通過した空気が正面コア61、第1側面コア62、および、第2側面コア63に流入することを抑制できる。
【0041】
ふさぎ部材10は、床下機器のレイアウトやラジエータ6の形状などに応じて形状や配置を本形態と変えてもよい。ふさぎ部材10は、1枚の板で構成してもよいし、複数の板で構成してもよい。例えば、ふさぎ部材10は、横梁212の位置に応じて分割した構成であってもよい。
【0042】
図5に示すように、ラジエータ6の左側には、箱51が配置されている。箱51は、隣り合う横梁212に対して下方から固定され、図8に示すように、空間S51を塞いでいる。箱51には、例えば、配線や配管が収容される。図5に示すように、ラジエータ6は、上板64より低い位置であって、第1側面コア62および第2側面コア63より高い位置に、第1上板67bおよび第2上板68bが接合されるように、第1整風部材67および第2整風部材68が配置されている。すなわち、ラジエータ6は、箱51などの他の部材と干渉しないように配置されている。
【0043】
続いて、ラジエータ6の周囲における空気の流れについて説明する。図9図16は、停車時における空気の流れを示している。図9図12に示す比較例の鉄道車両1Xは、図13図16に示す実施例の鉄道車両1のふさぎ部材10を省略したものであり、その他は鉄道車両1と同様に構成されている。
【0044】
図9図12に示す比較例の鉄道車両1Xおよび図13図16に示す実施例の鉄道車両1では、それぞれ、エンジン5の排熱を冷却して高温になった冷却水がラジエータ6の流入口69に流入する。流入口69に流入した冷却水は、複数の熱交換管に分流され、第2側面コア63、正面コア61、第1側面コア62を流れる。冷却水は、流出口70の手前で合流し、流出口70からエンジン5に戻される。
【0045】
図中F12に示すように、ラジエータ6は、ファン75の駆動により、正面コア61の正面吸い込み口61aと、第1側面コア62の第1側面吸い込み口62aと、第2側面コア63の第2側面吸い込み口63aと、から内部空間60cに空気を吸い込み、図中F18に示すように、内部空間60cからラジエータ6の背面側へ空気を排出する気流を形成する。空気は、第1整風部材67と第2整風部材68とに誘導されて、第1側面吸い込み口62aと第2側面吸い込み口63aに効率良く吸い込まれる。
【0046】
正面吸い込み口61aと第1側面吸い込み口62aと第2側面吸い込み口63aとに吸い込まれた空気は、正面コア61、第1側面コア62、第2側面コア63に配置される複数の熱交換管の間に設けられた空気通路を通過して、内部空間60cへ流れる。空気は、空気通路を通過する際に、熱交換管を流れる冷却水と熱交換して、冷却水を冷却する。冷却水により加熱された空気は、ラジエータ6の内部空間60cを経由して、ラジエータ6の背面側に排出される。
【0047】
正面コア61と、第1側面コア62と、第2側面コア63とは、エンジン5の排熱により加熱された冷却水によって加熱される。その熱がラジエータ6、特にその上部に伝達される。ラジエータ6の上方は、床板215によって塞がれている。そのため、図11図12図15図16のF10に示すように、ラジエータ6の上面から放熱される熱で加熱された空気は、床板215とラジエータ6との間に形成される空間S51に対流で溜まる。
【0048】
一方、空間S51の下方に配置されるラジエータ6は、ファン75の駆動によって、正面吸い込み口61aと第1側面吸い込み口62aと第2側面吸い込み口63aとが負圧状態になっている。
【0049】
図9図12に示すように、比較例の鉄道車両1Xでは、空間S51の下方開口部のうち、側梁211とラジエータ6との間の領域S51aが、ふさぎ部材10によって塞がれていない。そのため、図9および図10のF11に示すように、空間S51に溜まった高温の空気が、車外から流入する新鮮な空気(外気)に混ざって、負圧状態の正面コア61の正面吸い込み口61aに流れ込む。
【0050】
また、図11のF13に示すように、空間S51の高温の空気は、外気に混ざって、第1整風部材67の正面側開口部から第1側面コア62の第1側面吸い込み口62aに流れ込む。これと同様に、図12のF14に示すように、空間S51の高温の空気は、外気に混ざって、第2整風部材68の正面側開口部から第2側面コア63の第2側面吸い込み口63aに流れ込む。
【0051】
このように、比較例の鉄道車両1Xでは、ラジエータ6の正面コア61、第1側面コア62、第2側面コア63に吸い込まれる外気に空間S51の高温の空気が混ざるため、ラジエータ6の正面コア61、第1側面コア62、第2側面コア63に吸い込まれる空気の吸い込み温度が、車外から吸い込まれる新鮮な空気(外気)の温度(外気温)より高くなる。
【0052】
これに対して、図13図16に示すように、実施例の鉄道車両1では、空間S51の下方開口部のうち、側梁211とラジエータ6との間の領域S51aが、ふさぎ部材10によって塞がれている。そのため、図13および図14に示すように、空間S51に溜まった高温の空気が、ふさぎ部材10に遮られ、領域S51aから負圧状態の正面コア61の正面吸い込み口61aに流れ込みにくい。
【0053】
また、図15に示すように、空間S51の高温の空気は、ふさぎ部材10に遮られ、第1整風部材67の正面側開口部から第1側面コア62の第1側面吸い込み口62aに外気と一緒に流れ込みにくい。これと同様に、図16に示すように、空間S51の高温の空気は、ふさぎ部材10に遮られて、第2整風部材68の正面側開口部から第2側面コア63の第2側面吸い込み口63aに、外気と一緒に流れ込みにくい。
【0054】
このように、実施例の鉄道車両1では、ラジエータ6の正面コア61、第1側面コア62、第2側面コア63に吸い込まれる外気に空間S51の高温の空気があまり混ざらないため、ラジエータ6に吸い込まれる空気の吸い込み温度が、外気温と同程度になる。
【0055】
従って、実施例の鉄道車両1は、ラジエータ6のコア(正面コア61、第1側面コア62、第2側面コア63)の上側にふさぎ部材10を配置し、床板215とラジエータ6との間に形成される空間S1とラジエータ6との間の領域51aを塞ぐことによって、ラジエータ6の吸い込み温度を外気温に近づけることができる。その結果、ふさぎ部材10を有する鉄道車両1では、ふさぎ部材10を有していない鉄道車両1Xと比べて、ラジエータ6のコアを流れる冷却水の温度(熱媒体温度)と吸い込み温度との温度差が大きくなり、ラジエータ6の冷却効率を向上させることができる。
【0056】
鉄道車両1は、ラジエータ6が側梁211より車両中央側に配置され、走行風が正面コア61と、第1整風部材67にガイドされた第1側面コア62と、第2整風部材68にガイドされた第2側面コア63と、に流れ込みやすい。そのため、車両走行時には、停車時より、正面吸い込み口61aと第1側面吸い込み口62aと第2側面吸い込み口63aとの負圧状態が促進される。しかし、空間S51に溜まった高温の空気は、ふさぎ部材10に遮られ、領域S51aから負圧状態の正面コア61の正面吸い込み口61aや、第1側面コア62の第1側面吸い込み口62aや、第2側面コア63の第2側面吸い込み口63aへ流れ込まない。よって、鉄道車両1は、車両走行時にも、熱媒体温度と吸い込み温度との温度差が大きくなり、ラジエータ6の冷却効率を向上させることができる。
【0057】
図11および図12のF15に示すように、ふさぎ部材10を有していない鉄道車両1Xでは、空間S51から貫通穴212hを介して移動する高温の空気が、第1側面コア62の第1側面吸い込み口62aや、第2側面コア63の第2側面吸い込み口63aへ、外気と混ざって流れ込む。
【0058】
これに対して、図15および図16のF25に示すように、ふさぎ部材10を有する鉄道車両1では、空間S51から貫通穴212hを介して移動する高温の空気が、ふさぎ部材10に遮られ、正面コア61の正面吸い込み口61aや、第1整風部材67の正面開口部や、第2整風部材68の正面開口部へ、外気と混ざって流れ込まない。
【0059】
このように、鉄道車両1は、貫通穴212hを通過する高温の空気もラジエータ6に吸い込まれにくいので、空気抵抗を抑制しつつ、ラジエータ6の冷却効率を向上させることができる。
【0060】
本明細書に開示される実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本明細書に開示される技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。
【0061】
ふさぎ部材10は、側梁211とラジエータ6との間の領域S51aの一部を塞ぐように配置されてもよい。ただし、ふさぎ部材10が、ラジエータ6の上方に位置する空間S51のうち一方の側梁211と正面コア61との間に形成される領域S51a全体を塞ぐ鉄道車両1では、ラジエータ6に空気が流通することによって正面コア61、第1側面コア62、および、第2側面コア63付近が負圧状態になっても、空間S51内の空気がふさぎ部材10に遮断され、正面コア61、第1側面コア62、および、第2側面コア63にあまり吸い込まれない。これによれば、吸い込み温度と熱媒体温度との温度差が大きくなり、ラジエータ6の冷却効率を向上させることができる。
【0062】
ふさぎ部材10は、貫通穴212hより上方、あるいは、貫通穴212hの途中に配置されてもよい。ただし、ふさぎ部材10が貫通穴212hより下側に配置する鉄道車両1では、貫通穴212hを通過した空間S51内の高温の空気が正面コア61、第1側面コア62、および、第2側面コア63に流れ込むのを防ぐことが可能である。このような構成によれば、車両走行時に発生する空気抵抗を抑制しつつ、ラジエータ6の冷却効率を向上させることができる。
【0063】
鉄道車両1は、ラジエータ6の軌道方向前後に邪魔板を配置し、ラジエータ6が排出した空気がラジエータ6の正面側に回り込まないようにしてもよい。
【0064】
例えば、第1整風部材67と第2整風部材68は省略してもよい。ただし、第1整風部材67と第2整風部材68とを備える鉄道車両1では、ラジエータ6に吸い込まれる空気の吸い込み量が増える。これにより、吸い込み温度が外気温に近くなり、ラジエータ6の冷却効率が向上する。
【0065】
ラジエータ6は、さらに潤滑油を冷却する機能を有していてもよい。ラジエータ6は、潤滑油を冷却するオイルクーラであってもよい。この場合、オイルクーラが「冷却装置」の一例となる。潤滑油は「熱媒体」の一例となる。
【0066】
ラジエータ6は、第1側面吸い込み口62aと第2側面吸い込み口63aの少なくとも一方がなくてもよい。ただし、第1側面吸い込み口62aと第2側面吸い込み口63aをラジエータ6に設けることにより、空気の吸い込み量が増加し、ラジエータ6の冷却効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0067】
1……鉄道車両、6……ラジエータ、10……ふさぎ部材、21……台枠、215……床板、61……正面コア、62……第1側面コア、63……第2側面コア、67……第1整風部材、68……第2整風部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16