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特開2024-121123研磨ヘッドの弾性膜を膨らませる方法、および研磨ヘッドシステム
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  • 特開-研磨ヘッドの弾性膜を膨らませる方法、および研磨ヘッドシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121123
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】研磨ヘッドの弾性膜を膨らませる方法、および研磨ヘッドシステム
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20240830BHJP
   B24B 49/08 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B24B37/30 E
B24B49/08
H01L21/304 621D
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028037
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】田村 元成
(72)【発明者】
【氏名】持田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】寺田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 紀之
(72)【発明者】
【氏名】山口 都章
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB94
3C034CA30
3C034CB13
3C034DD18
3C158AA07
3C158AB04
3C158AC02
3C158BA09
3C158BB04
3C158BB09
3C158BC01
3C158CB01
3C158CB06
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA13
3C158EB01
5F057AA05
5F057AA12
5F057CA12
5F057DA03
5F057EC24
5F057FA19
5F057FA20
5F057GA02
5F057GB32
(57)【要約】
【課題】ワークピースを研磨ヘッドから解放するとき、またはワークピースを研磨ヘッドで保持するときに、弾性膜を所望の形状に膨らませることができ、ワークピースに過度のストレスが発生することを防止することができる技術を提供する。
【解決手段】本方法は、研磨されたワークピースWを研磨ヘッド1から解放するとき、または研磨すべきワークピースWを研磨ヘッド1で保持するときに、気体を、第1流量制御弁FC1および第2流量制御弁FC1により調節された第1流量および第2流量で、弾性膜34により形成された圧力室25Aおよび圧力室25B内にそれぞれ供給することで、研磨ヘッド1の弾性膜34を膨らませる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨ヘッドの弾性膜を膨らませる方法であって、
研磨されたワークピースを研磨ヘッドから解放するとき、または研磨すべきワークピースを前記研磨ヘッドで保持するときに、気体を、第1流量制御弁および第2流量制御弁により調節された第1流量および第2流量で、前記弾性膜により形成された第1圧力室および第2圧力室内にそれぞれ供給する、方法。
【請求項2】
前記第1圧力室の容積は前記第2圧力室の容積よりも大きく、前記第1流量は前記第2流量よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1流量の積算値が第1目標流量積算値に到達するまで、前記気体を前記第1流量で前記第1圧力室に供給し、
前記第2流量の積算値が第2目標流量積算値に到達するまで、前記気体を前記第2流量で前記第2圧力室に供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1圧力室についての第1目標流量積算値を、予め設定された動作時間で割り算することで、前記第1流量を算定し、
前記第2圧力室についての第2目標流量積算値を、予め設定された動作時間で割り算することで、前記第2流量を算定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1圧力室および前記第2圧力室に前記気体を供給している間、前記第1流量および前記第2流量のうちの少なくとも一方を変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ワークピースを前記研磨ヘッドで研磨している間に前記第1圧力室に供給される気体の流量を前記第1流量制御弁により測定し、
前記測定された流量の積算値である研磨流量積算値を算定し、
前記研磨流量積算値の変化に基づいて、前記弾性膜の不具合、または前記ワークピースの研磨異常を判定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ワークピースを研磨するための研磨ヘッドシステムであって、
第1圧力室および第2圧力室を形成する弾性膜を有する研磨ヘッドと、
前記第1圧力室および前記第2圧力室にそれぞれ連通する第1気体移送ラインおよび第2気体移送ラインと、
前記第1気体移送ラインおよび前記第2気体移送ラインにそれぞれ連結された第1流量制御弁および第2流量制御弁と、
研磨されたワークピースを前記研磨ヘッドから解放するとき、または研磨すべきワークピースを前記研磨ヘッドで保持するときに、気体が第1流量および第2流量で前記第1圧力室および前記第2圧力室内にそれぞれ供給されるように前記第1流量制御弁および前記第2流量制御弁の動作を制御するシステム制御部を備えている、研磨ヘッドシステム。
【請求項8】
前記第1圧力室の容積は前記第2圧力室の容積よりも大きく、前記第1流量は前記第2流量よりも大きい、請求項7に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項9】
前記システム制御部は、
前記第1流量の積算値を算定し、
前記第1流量の積算値が第1目標流量積算値に到達するまで、前記第1流量制御弁に指令を与えて、前記気体を前記第1流量で前記第1圧力室に供給させ、
前記第2流量の積算値を算定し、
前記第2流量の積算値が第2目標流量積算値に到達するまで、前記第2流量制御弁に指令を与えて、前記気体を前記第2流量で前記第2圧力室に供給させるように構成されている、請求項7に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項10】
前記システム制御部は、
前記第1圧力室についての第1目標流量積算値を、予め設定された動作時間で割り算することで、前記第1流量を算定し、
前記第2圧力室についての第2目標流量積算値を、予め設定された動作時間で割り算することで、前記第2流量を算定するように構成されている、請求項7に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項11】
前記システム制御部は、前記第1圧力室および前記第2圧力室に前記気体が供給されている間、前記第1流量制御弁および前記第2流量制御弁のうちの少なくとも一方に指令を与えて、前記第1流量および前記第2流量のうちの少なくとも一方を変化させるように構成されている、請求項7に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項12】
前記第1流量制御弁は、ワークピースを前記研磨ヘッドで研磨している間に前記第1圧力室に供給される気体の流量を測定し、
前記システム制御部は、前記測定された流量の積算値である研磨流量積算値を算定し、
前記研磨流量積算値の変化に基づいて、前記弾性膜の不具合、または前記ワークピースの研磨異常を判定するように構成されている、請求項7に記載の研磨ヘッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ、基板、パネルなどのワークピースを研磨パッドに押し付けるための研磨ヘッドの弾性膜を膨らませる技術に関し、特にワークピースを研磨ヘッドからリリースするとき、またはワークピースを研磨ヘッドで保持するときに、弾性膜を膨らませる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨(CMP)は、研磨面上に研磨液を供給しながら、ウェーハを研磨面に押し付け、研磨液の存在下でウェーハを研磨面に摺接させることで、ウェーハの表面を研磨する技術である。ウェーハの研磨中、ウェーハは研磨ヘッドによって研磨面に押し付けられる。ウェーハの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および/または研磨パッドの機械的作用により平坦化される。
【0003】
図7は、研磨ヘッド100の一例を模式的に示す断面図である。研磨ヘッド100は、ウェーハW1の上面に接触する弾性膜110を有する。この弾性膜110は、複数の圧力室101~104を形成しており、それぞれの圧力室101~104内の圧力は独立に調節することが可能である。したがって、研磨ヘッド100は、これら圧力室101~104に対応するウェーハW1の複数の領域を異なる力で押し付けることができ、ウェーハW1の所望の膜厚プロファイルを達成することができる。
【0004】
ウェーハW1の研磨が終了すると、図8に示すように、研磨されたウェーハW1は研磨ヘッド100によってウェーハ受け渡し装置114の上方位置に移動される。そして、圧力室101~104内の圧力を増加させることで、弾性膜110を下方に湾曲させ、ウェーハW1のエッジ部と弾性膜110との間に隙間を形成させる。リリーノズル115は、ウェーハW1のエッジ部と弾性膜110との隙間にリリースガス(例えば窒素ガスなどの不活性ガス)を噴出する。その結果、図9に示すように、ウェーハW1は研磨ヘッド100から解放され、ウェーハ受け渡し装置114によって受け止められる。その後、研磨されたウェーハW1は、洗浄などの次工程に搬送される。
【0005】
図10は、次に研磨されるウェーハW2がウェーハ受け渡し装置114上に置かれた状態を示す模式図である。図10に示すように、次のウェーハW2は、搬送ロボットなどの搬送装置(図示せず)によって研磨ヘッド100の下方のウェーハ受け渡し装置114上に運ばれる。同時に、研磨ヘッド100は、洗浄ノズル120から供給される液体(例えば純水)で洗浄され、研磨ヘッド100から研磨液や研磨屑が除去される。
【0006】
研磨ヘッド100の洗浄に使用された液体は、ウェーハW2の上面に落下する。ウェーハW2の研磨時に、ウェーハW2と研磨ヘッド100の弾性膜110のとの間に液体が存在していると、研磨ヘッド100は、ウェーハW2に対して力を適切に加えることができない。そこで、図11に示すように、研磨ヘッド100がウェーハW2を保持する前に、圧力室101~104内の圧力を増加させることで、弾性膜110を下方に湾曲させる。そしで、図12に示すように、研磨ヘッド100を下降させ、下方に湾曲した弾性膜110で液体をウェーハW2の外側に押し出す。これにより、液体がウェーハW2の上面から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-11432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ウェーハの微細化および多層化は進む傾向にあり、ウェーハは脆く割れやすくなってきている。図8および図12に示すように、下方に湾曲した弾性膜110がウェーハに接触するため、ウェーハにはある程度のストレスが発生する。従来の技術では、弾性膜110を膨らませるときに圧力室101~104の圧力を制御するのであるが、弾性膜110の個体差、弾性膜110自体の構造または材料、弾性膜110の経年劣化などに起因して、圧力室101~104が所望の形に膨らまないことがある。例えば、弾性膜110が過度に膨張したり、局所的に膨張することがある。弾性膜110の個体差のために、弾性膜110を膨らませるために必要な圧力にはばらつきがあり、弾性膜110の膨らむ量も圧力室101~104の容積や配管の圧力損失などにより変化するため、圧力では予測制御が困難である。その結果、ウェーハに過度のストレスが生じ、ウェーハが破損するおそれがある。このような問題は、研磨ヘッドの圧力室の数が増加するにつれて顕著になると予想される。すなわち、研磨ヘッドの圧力室の数が増加すると1つの圧力室あたりの容積が減少し、圧力室の膨張の仕方は圧力および流量の影響を受けやすくなると予想される。
【0009】
そこで、本発明は、ウェーハ、基板、パネルなどのワークピースを研磨ヘッドから解放するとき、またはワークピースを研磨ヘッドで保持するときに、弾性膜を所望の形状に膨らませることができ、ワークピースに過度のストレスが発生することを防止することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、研磨ヘッドの弾性膜を膨らませる方法であって、研磨されたワークピースを研磨ヘッドから解放するとき、または研磨すべきワークピースを前記研磨ヘッドで保持するときに、気体を、第1流量制御弁および第2流量制御弁により調節された第1流量および第2流量で、前記弾性膜により形成された第1圧力室および第2圧力室内にそれぞれ供給する方法が提供される。
【0011】
一態様では、前記第1圧力室の容積は前記第2圧力室の容積よりも大きく、前記第1流量は前記第2流量よりも大きい。
一態様では、前記第1流量の積算値が第1目標流量積算値に到達するまで、前記気体を前記第1流量で前記第1圧力室に供給し、前記第2流量の積算値が第2目標流量積算値に到達するまで、前記気体を前記第2流量で前記第2圧力室に供給する。
一態様では、前記方法は、前記第1圧力室についての第1目標流量積算値を、予め設定された動作時間で割り算することで、前記第1流量を算定し、前記第2圧力室についての第2目標流量積算値を、予め設定された動作時間で割り算することで、前記第2流量を算定することをさらに含む。
一態様では、前記第1圧力室および前記第2圧力室に前記気体を供給している間、前記第1流量および前記第2流量のうちの少なくとも一方を変化させる。
一態様では、上記方法は、ワークピースを前記研磨ヘッドで研磨している間に前記第1圧力室に供給される気体の流量を前記第1流量制御弁により測定し、前記測定された流量の積算値である研磨流量積算値を算定し、前記研磨流量積算値の変化に基づいて、前記弾性膜の不具合、または前記ワークピースの研磨異常を判定することをさらに含む。
【0012】
一態様では、ワークピースを研磨するための研磨ヘッドシステムであって、第1圧力室および第2圧力室を形成する弾性膜を有する研磨ヘッドと、前記第1圧力室および前記第2圧力室にそれぞれ連通する第1気体移送ラインおよび第2気体移送ラインと、前記第1気体移送ラインおよび前記第2気体移送ラインにそれぞれ連結された第1流量制御弁および第2流量制御弁と、研磨されたワークピースを前記研磨ヘッドから解放するとき、または研磨すべきワークピースを前記研磨ヘッドで保持するときに、気体が第1流量および第2流量で前記第1圧力室および前記第2圧力室内にそれぞれ供給されるように前記第1流量制御弁および前記第2流量制御弁の動作を制御するシステム制御部を備えている、研磨ヘッドシステムが提供される。
【0013】
一態様では、前記第1圧力室の容積は前記第2圧力室の容積よりも大きく、前記第1流量は前記第2流量よりも大きい。
一態様では、前記システム制御部は、前記第1流量の積算値を算定し、前記第1流量の積算値が第1目標流量積算値に到達するまで、前記第1流量制御弁に指令を与えて、前記気体を前記第1流量で前記第1圧力室に供給させ、前記第2流量の積算値を算定し、前記第2流量の積算値が第2目標流量積算値に到達するまで、前記第2流量制御弁に指令を与えて、前記気体を前記第2流量で前記第2圧力室に供給させるように構成されている。
一態様では、前記システム制御部は、前記第1圧力室についての第1目標流量積算値を、予め設定された動作時間で割り算することで、前記第1流量を算定し、前記第2圧力室についての第2目標流量積算値を、予め設定された動作時間で割り算することで、前記第2流量を算定するように構成されている。
一態様では、前記システム制御部は、前記第1圧力室および前記第2圧力室に前記気体が供給されている間、前記第1流量制御弁および前記第2流量制御弁のうちの少なくとも一方に指令を与えて、前記第1流量および前記第2流量のうちの少なくとも一方を変化させるように構成されている。
一態様では、前記第1流量制御弁は、ワークピースを前記研磨ヘッドで研磨している間に前記第1圧力室に供給される気体の流量を測定し、前記システム制御部は、前記測定された流量の積算値である研磨流量積算値を算定し、前記研磨流量積算値の変化に基づいて、前記弾性膜の不具合、または前記ワークピースの研磨異常を判定するように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
研磨ヘッドの複数の圧力室の膨張は、気体の圧力ではなく気体の流量によって制御される。各圧力室の膨張速度、膨張後の容積は、対応する流量制御弁により容易かつ適正に調節できる。結果として、弾性膜を所望の形状に安定して膨らませることができ、ウェーハなどのワークピースの過度なストレスを防止することができる。予め定められた流量を圧力室に送り込むことが可能になるため、弾性膜の膨らみ量を一定に制御し、過度なストレスを防止することが出来る。送りこむ気体の流量を明確に規定出来れば、圧力と流量の関係で流速も制御出来るようになるため弾性膜を所望の形状に速やかかつ安定して形成することが出来る。さらに、ワークピースを研磨ヘッドから速やかおよび確実に解放することができるので、リリースガス(図8および図9参照)の供給量を少なくすることができる。結果として、研磨されたワークピースのリリースガスによる乾燥を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】研磨ヘッドシステムの一実施形態を示す断面図である。
図3】研磨されたウェーハを研磨ヘッドからリリースするときに、異なる流量で複数の圧力室に圧縮空気を供給する一例を説明する図である。
図4】研磨すべきウェーハを研磨ヘッドに保持する前に、異なる流量で複数の圧力室に圧縮空気を供給する一例を説明する図である。
図5】下方に湾曲した弾性膜により、研磨すべきウェーハの上面から液体を除去する一例を説明する図である。
図6】ウェーハを研磨しているときの圧力室に供給される圧縮気体の流量の時間変化の一例を示すグラフである。
図7】研磨ヘッドの一例を模式的に示す断面図である。
図8】複数の圧力室内の圧力を変えることで、弾性膜を下方に湾曲させる一例を説明する図である。
図9】研磨ヘッドの弾性膜からウェーハがリリースされる様子を示す図である。
図10】研磨されるウェーハがウェーハ受け渡し装置上に置かれた状態を示す模式図である。
図11】複数の圧力室内の圧力を変えることで、弾性膜を下方に湾曲させる一例を説明する図である。
図12】湾曲した弾性膜をウェーハに押し付けてウェーハから液体を押し出す様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、ワークピースの一例であるウェーハWを研磨パッド2に押し付ける研磨ヘッド1を含む研磨ヘッドシステム4と、研磨テーブル3を回転させるテーブルモータ6と、研磨パッド2上に研磨液(例えば、砥粒を含むスラリー)を供給するための研磨液供給ノズル5を備えている。研磨パッド2の表面は、ウェーハWを研磨する研磨面2aを構成する。
【0017】
研磨テーブル3はテーブルモータ6に連結されており、テーブルモータ6は研磨テーブル3および研磨パッド2を一体に回転させるように構成されている。研磨ヘッド1は、研磨ヘッドシャフト11の端部に固定されており、研磨ヘッドシャフト11は、ヘッドアーム15に回転可能に支持されている。ヘッドアーム15は、支軸16に回転可能に支持されている。研磨ヘッドシャフト11は、ヘッドアーム15内に配置された上下動機構18に連結されている。上下動機構18は、研磨ヘッドシャフト11をその軸方向に上下動させるように構成されている。上下動機構18による研磨ヘッドシャフト11の上下動により、研磨ヘッド1に保持されたウェーハWを研磨テーブル3上の研磨パッド2に対して近接および離間させることができる。
【0018】
研磨装置は、研磨装置の各構成要素の動作を制御する動作制御部9をさらに備えている。動作制御部9は、研磨ヘッド1、テーブルモータ6、研磨液供給ノズル5、および上下動機構18に電気的に接続されており、研磨ヘッド1、テーブルモータ6、研磨液供給ノズル5、および上下動機構18の動作を制御する。
【0019】
動作制御部9は、プログラムが格納された記憶装置9aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置9bを備えている。動作制御部9は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置9aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置9bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、動作制御部9の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0020】
ウェーハWは次のようにして研磨される。動作制御部9は、テーブルモータ6、研磨ヘッド1、および研磨液供給ノズル5に指令を発して、研磨テーブル3および研磨ヘッド1を図1の矢印で示す方向に回転させながら、研磨液供給ノズル5から研磨液が研磨テーブル3上の研磨パッド2の研磨面2aに供給させる。ウェーハWは研磨ヘッド1によって回転されながら、研磨パッド2とウェーハWとの間に研磨液が存在した状態で研磨ヘッド1によって研磨パッド2の研磨面2aに押し付けられる。ウェーハWの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および/または研磨パッド2の機械的作用により研磨される。
【0021】
次に、研磨ヘッド1を有する研磨ヘッドシステム4について説明する。図2は、研磨ヘッドシステム4の一実施形態を示す断面図である。研磨ヘッドシステム4は、複数の圧力室25A,25B,25C,25Dを形成する弾性膜34を有する研磨ヘッド1と、複数の圧力室25A,25B,25C,25Dにそれぞれ連通する気体移送ラインF1,F2,F3,F4と、気体移送ラインF1,F2,F3,F4にそれぞれ連結された流量制御弁FC1,FC2,FC3,FC4と、流量制御弁FC1,FC2,FC3,FC4の動作を制御するシステム制御部50を備えている。
【0022】
システム制御部50は、プログラムが格納された記憶装置50aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置50bと、ボタンまたはキーボードなどを有する入力部50cを備えている。システム制御部50は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置50aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置50bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、システム制御部50の具体的構成はこれらの例に限定されない。一実施形態では、システム制御部50と動作制御部9は、一体に構成されてもよい。
【0023】
研磨ヘッド1は、研磨ヘッドシャフト11の端部に固定されたキャリア31と、キャリア31の下部に取り付けられた弾性膜34と、キャリア31の下方に配置されたリテーナリング32とを備えている。リテーナリング32は、弾性膜34の周囲に配置されている。このリテーナリング32は、ウェーハWの研磨中にウェーハWが研磨ヘッド1から飛び出さないようにするためにウェーハWを保持する環状の構造体である。
【0024】
弾性膜34は、ウェーハWの上面に接触可能な接触面35aを有する接触部35と、接触部35に接続された内壁部36a,36b,36cおよび外壁部36dを備えている。接触部35は、ウェーハWの上面と実質的に同じ大きさおよび同じ形状を有している。内壁部36a,36b,36cおよび外壁部36dは、同心状に配列された無端状の壁である。外壁部36dは内壁部36a,36b,36cの外側に位置しており、内壁部36a,36b,36cを囲むように配置されている。本実施形態では、3つの内壁部36a,36b,36cが設けられているが、研磨ヘッド1の構成は本実施形態に限定されない。一実施形態では、2つの内壁部が設けられてもよく、あるいは4つ以上の内壁部が設けられてもよい。
【0025】
複数の(本実施形態では、4つの)圧力室25A,25B,25C,25Dは、弾性膜34とキャリア31との間に位置している。圧力室25A,25B,25C,25Dは、弾性膜34の接触部35、内壁部36a,36b,36c、および外壁部36dによって形成されている。弾性膜34の中央に位置する圧力室25Aは円形であり、他の圧力室25B,25C,25Dは環状である。これらの圧力室25A,25B,25C,25Dは、同心状に配列されている。本実施形態では、研磨ヘッド1は、4つの圧力室25A~25Dを有するが、一実施形態では、研磨ヘッド1は、弾性膜34は3つの圧力室を有してもよく、あるいは5つ以上の圧力室を有してもよい。
【0026】
キャリア31とリテーナリング32との間には、環状のメンブレン(ローリングダイヤフラム)37が配置されており、このメンブレン37の内部には圧力室25Eが形成されている。圧力室25A,25B,25C,25D,25Eにはそれぞれ気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5が連結されている。気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5は、研磨ヘッドシャフト11に取り付けられたロータリージョイント40を経由して延びている。
【0027】
気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5は、研磨装置が設置されている工場に設けられたユーティリティ供給源としての圧縮気体供給源(図示せず)に連結されている。圧縮空気等の圧縮気体は、気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5を通じて圧力室25A,25B,25C,25D,25Eにそれぞれ供給されるように構成されている。
【0028】
気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5には、流量制御弁FC1,FC2,FC3,FC4,FC5および圧力レギュレータRa1,Ra2,Ra3,Ra4,Ra5がそれぞれ接続されている。流量制御弁FC1~FC5は、圧縮気体の流れ方向において、圧力レギュレータRa1~Ra5の下流に配置されている。圧縮気体供給源からの圧縮気体は、圧力レギュレータRa1~Ra5および流量制御弁FC1~FC5を通って圧力室25A~25E内にそれぞれ独立に供給される。圧力レギュレータRa1~Ra5は、圧力室25A~25E内の圧縮気体の圧力を調節するように構成されている。流量制御弁FC1~FC5は、圧力室25A~25E内に供給される圧縮気体の流量を調節するように構成されている。流量は、単位時間あたりに流れる流体の量を表す。
【0029】
圧力レギュレータRa1~Ra5および流量制御弁FC1~FC5は、システム制御部50に電気的に接続されている。圧力レギュレータRa1~Ra5および流量制御弁FC1~FC5の動作は、システム制御部50によって制御される。システム制御部50は、圧力室25A~25Eのそれぞれの目標圧力値を圧力レギュレータRa1~Ra5に送り、圧力レギュレータRa1~Ra5は、圧力室25A~25E内の圧力が対応する目標圧力値に維持されるように動作する。
【0030】
圧力レギュレータRa1~Ra5は、圧力室25A~25Eの内部圧力を互いに独立して変化させることが可能である。したがって、研磨ヘッド1は、ウェーハWの対応する4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、およびエッジ部に対する研磨圧力、およびリテーナリング32の研磨パッド2の研磨面2aに対する押圧力を独立に調節することができる。例えば、研磨ヘッド1は、ウェーハWの表面の異なる領域を異なる研磨圧力で研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けることができる。したがって、研磨ヘッド1は、ウェーハWの膜厚プロファイルを制御して、目標とする膜厚プロファイルを達成することができる。
【0031】
流量制御弁FC1~FC5のそれぞれは、図示しないが、開度が変えられる可変弁と、可変弁を駆動するアクチュエータと、可変弁を通過した流体の流量を測定する流量計を備えている。システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC5に指令を与えて、設定された流量の圧縮気体を圧力室25A~25Eに流量制御弁FC1~FC5を通じて供給させる。より具体的には、システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC5に設定流量を示す指令信号をそれぞれ送り、流量制御弁FC1~FC5は、圧縮空気が設定流量で圧力室25A~25Eに送られるように動作する。
【0032】
真空ラインLb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5は、ロータリージョイント40の上流側において、気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5にそれぞれ連結されている。真空ラインLb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5には、真空弁Vb1,Vb2,Vb3,Vb4,Vb5がそれぞれ取り付けられている。
【0033】
圧縮気体が供給されていない状態で真空弁Vb1~Vb5が開かれると、圧力室25A~25E内の圧縮気体は、圧力室25A~25E内から、気体移送ラインF1~F5および真空ラインLb1~Lb5を通じてそれぞれ独立に外部へ排出され、圧力室25A~25E内に負圧が形成される。図示しないが、圧力室25A~25Eは、大気開放ラインにそれぞれ連結されてもよい。
【0034】
ウェーハWを研磨ヘッド1により研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けてウェーハWを研磨しているときは、流量制御弁FC1~FC5による流量制御は行われず、圧力レギュレータRa1~Ra5による圧力制御が行われる。上述したように、各流量制御弁は流量計を有しているので、ウェーハWの研磨中は流量制御弁FC1~FC5は、圧力室25A~25Eに供給される圧縮空気の流量を測定するために使用される。流量の測定値は流量制御弁FC1~FC5からシステム制御部50に送られ、圧縮空気の流量はシステム制御部50によって監視される。
【0035】
これに対して、研磨されたウェーハWを研磨ヘッド1からリリースするときは、圧力レギュレータRa1~Ra5による圧力制御は行われず、流量制御弁FC1~FC5による流量制御が行われる。すなわち、システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、圧力室25A~25Dに供給される圧縮空気の流量を調節させる。より具体的には、図3に示すように、システム制御部50は、流量制御弁FC1,FC2,FC3,FC4の動作を制御して、流量制御弁FC1,FC2,FC3,FC4により圧縮気体を流量FR1,FR2,FR3,FR4で圧力室25A,25B,25C,25Dにそれぞれ供給させる。
【0036】
本実施形態では、圧力室25A~25Dの容積は異なっている。より具体的には、圧力室25Aの容積は圧力室25Bの容積よりも大きく、圧力室25Bの容積は圧力室25Cの容積よりも大きく、圧力室25Cの容積は圧力室25Dの容積よりも大きい。圧縮気体の流量FR1,FR2,FR3,FR4は、圧力室25A~25Dの容積に従って異なっている。すなわち、圧力室の容積が大きいほど、供給される圧縮空気の流量は大きい。本実施形態では、流量FR1は流量FR2よりも大きく、流量FR2は流量FR3よりも大きく、流量FR3は流量FR4よりも大きい。図3に示す符号FR1,FR2,FR3,FR4の矢印の大きさは、流量の大きさを表している。
【0037】
このように、圧縮気体の流量FR1~FR4は、圧力室25A~25Dの容積に従って異なっているので、圧力室25A~25Dを膨らませて、弾性膜34の接触面(下面)35aを下方に湾曲させることができる。特に、圧縮空気の流量制御を実行することにより、限られた時間内に弾性膜34を所望の形状に膨らませることができる。図3に示すように、ウェーハWの中央が弾性膜34の接触面(下面)35aに接触し、ウェーハWのエッジ部は弾性膜34から離れている。リリースノズル51は、ウェーハWのエッジ部と弾性膜34との隙間にリリースガス(例えば窒素ガスなどの不活性ガス)を噴出する。その結果、ウェーハWは研磨ヘッド1から解放され、ワークピース受け渡し装置52上に支持される。
【0038】
流量制御弁FC1~FC4は、圧力室25A~25Dに供給される圧縮気体の流量を調節するので、図3に示すような下方に湾曲する形状を安定的かつ速やかに形成することができる。結果として、少ない量のリリースガスでウェーハWを研磨ヘッド1からリリースすることができ、リリースガスに起因するウェーハWの乾燥を防止することができる。
【0039】
システム制御部50は、圧縮気体を流量FR1,FR2,FR3,FR4で圧力室25A,25B,25C,25Dに供給しながら、流量FR1,FR2,FR3,FR4のそれぞれの積算値CV1,CV2,CV3,CV4を算定するように構成されている。システム制御部50は、流量FR1,FR2,FR3,FR4の積算値CV1,CV2,CV3,CV4が、対応する4つの目標流量積算値に到達するまで、圧縮気体を流量FR1,FR2,FR3,FR4で圧力室25A,25B,25C,25Dに供給する。各圧力室の膨張後の形状は、流量の積算値によって概ね決まるので、弾性膜34は、所望の形状に膨らむことができる。
【0040】
一実施形態では、システム制御部50は、圧力室25A,25B,25C,25Dに対応する複数の目標流量積算値を、予め設定された動作時間で割り算することで、圧力室25A,25B,25C,25Dに供給すべき圧縮気体の流量FR1,FR2,FR3,FR4を算定してもよい。例えば、システム制御部50は、圧力室25Aについての目標流量積算を、予め設定された動作時間で割り算することで、圧力室25Aに供給すべき圧縮気体の流量FR1を算定する。同様にして、システム制御部50は、圧力室25B,25C,25Dに供給すべき圧縮気体の流量FR2,FR3,FR4を算定することができる。
【0041】
図3に示すように、システム制御部50は、流量制御弁FC1,FC2,FC3,FC4に指令を与えて、圧縮気体を、算定された流量FR1,FR2,FR3,FR4で圧力室25A,25B,25C,25Dに供給させる。上記予め設定された動作時間は、圧力室25A,25B,25C,25Dについて同じであってもよく、あるいは圧力室25A,25B,25C,25Dについて異なってもよい。
【0042】
ユーザーは、圧力室25A,25B,25C,25Dに対応する目標流量積算値、および上記動作時間を入力部50cを介してシステム制御部50に入力してもよい。システム制御部50は、入力された目標流量積算値および動作時間に基づいて、圧力室25A,25B,25C,25Dに供給すべき圧縮気体の流量FR1,FR2,FR3,FR4を算定することができる。
【0043】
一実施形態では、システム制御部50は、ウェーハWを研磨ヘッド1からリリースするために弾性膜34を圧縮空気で膨らませているとき、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、圧縮空気の流量FR1,FR2,FR3,FR4を変化させてもよい。例えば、システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、圧縮空気の流量FR1,FR2,FR3,FR4を増加させる。圧縮空気の流量FR1,FR2,FR3,FR4を増加させる動作により、圧力室25A~25Dを所望の形まで速やかに膨張させることができ、研磨装置のスループットを向上させることができる。また、リリース動作が短くなるので、リリースガスに起因する、研磨後のウェーハの乾燥を防ぐことができる。流量FR1~FR4は、段階的に増加させてもよく(例えば二段階で増加)、あるいは直線的または曲線的に増加させてもよい。
【0044】
一実施形態では、システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、圧縮空気の流量FR1,FR2,FR3,FR4を減少させてもよい。例えば、システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、圧縮空気の流量FR1,FR2,FR3,FR4を、急速膨張用の設定流量から通常運転用の設定流量まで減少させる。急速膨張用の設定流量および通常運転用の設定流量は、急速膨張および通常運転に必要な、予め決定された流量である。この例でも、圧力室25A~25Dを所望の形まで速やかに膨張させることができる。
【0045】
研磨すべきウェーハWを研磨ヘッド1で保持するときも、システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、圧力室25A~25Dに供給される圧縮空気の流量を調節させる。より具体的には、図4に示すように、ワークピース受け渡し装置52上にある研磨すべきウェーハWを研磨ヘッド1で保持する前に、システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、弾性膜34を膨らませる。そして、図5に示すように、弾性膜34がワークピース受け渡し装置52上のウェーハWの上面に接触するまで研磨ヘッド1を上下動機構18(図1参照)により下降させ、下方に湾曲した弾性膜34により、研磨すべきウェーハWの上面から液体を除去することができる。
【0046】
図4に示すように、システム制御部50は、流量制御弁FC1,FC2,FC3,FC4の動作を制御して、流量制御弁FC1,FC2,FC3,FC4により圧縮気体を流量FR5,FR6,FR7,FR8で圧力室25A,25B,25C,25Dに供給させる。圧縮気体の流量FR5,FR6,FR7,FR8は、圧力室25A~25Dの容積に従って異なっている。すなわち、圧力室の容積が大きいほど、供給される圧縮空気の流量は大きい。本実施形態では、流量FR5は流量FR6よりも大きく、流量FR6は流量FR7よりも大きく、流量FR7は流量FR8よりも大きい。図3に示す符号FR5,FR6,FR7,FR8の矢印の大きさは、流量の大きさを表している。
【0047】
システム制御部50は、圧縮気体を流量FR5,FR6,FR7,FR8で圧力室25A,25B,25C,25Dに供給しながら、流量FR5,FR6,FR7,FR8のそれぞれの積算値CV5,CV6,CV7,CV8を算定するように構成されている。システム制御部50は、流量FR5,FR6,FR7,FR8の積算値CV5,CV6,CV7,CV8が、対応する4つの目標流量積算値に到達するまで、圧縮気体を流量FR5,FR6,FR7,FR8で圧力室25A,25B,25C,25Dに供給する。各圧力室の膨張後の形状は、流量の積算値によって概ね決まるので、弾性膜34は、所望の形状に膨らむことができる。
【0048】
一実施形態では、システム制御部50は、圧力室25A,25B,25C,25Dに対応する複数の目標流量積算値を、予め設定された動作時間で割り算することで、圧力室25A,25B,25C,25Dに供給すべき圧縮気体の流量FR5,FR6,FR7,FR8を算定してもよい。例えば、システム制御部50は、圧力室25Aについての目標流量積算を、予め設定された動作時間で割り算することで、圧力室25Aに供給すべき圧縮気体の流量FR5を算定する。同様にして、システム制御部50は、圧力室25B,25C,25Dに供給すべき圧縮気体の流量FR6,FR7,FR8を算定することができる。
【0049】
図4および図5に示すように、システム制御部50は、流量制御弁FC1,FC2,FC3,FC4に指令を与えて、圧縮気体を、算定された流量FR5,FR6,FR7,FR8で圧力室25A,25B,25C,25Dに供給させる。上記予め設定された動作時間は、圧力室25A,25B,25C,25Dについて同じであってもよく、あるいは圧力室25A,25B,25C,25Dについて異なってもよい。
【0050】
ユーザーは、圧力室25A,25B,25C,25Dに対応する目標流量積算値、および上記動作時間を入力部50cを介してシステム制御部50に入力してもよい。システム制御部50は、入力された目標流量積算値および動作時間に基づいて、圧力室25A,25B,25C,25Dに供給すべき圧縮気体の流量FR5,FR6,FR7,FR8を算定することができる。
【0051】
一実施形態では、システム制御部50は、弾性膜34により液体をウェーハWから除去するために弾性膜34を圧縮空気により膨らませているとき、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、圧縮空気の流量FR5,FR6,FR7,FR8を変化させてもよい。例えば、システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、圧縮空気の流量FR5,FR6,FR7,FR8を増加させる。圧縮空気の流量FR5,FR6,FR7,FR8を増加させる動作により、圧力室25A~25Dを所望の形まで速やかに膨張させることができ、研磨装置のスループットを向上させることができる。流量FR5~FR8は、段階的に増加させてもよく(例えば二段階で増加)、あるいは直線的または曲線的に増加させてもよい。
【0052】
一実施形態では、システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、圧縮空気の流量FR5,FR6,FR7,FR8を減少させてもよい。例えば、システム制御部50は、流量制御弁FC1~FC4に指令を与えて、圧縮空気の流量FR5,FR6,FR7,FR8を、急速膨張用の設定流量から通常運転用の設定流量まで減少させる。急速膨張用の設定流量および通常運転用の設定流量は、急速膨張および通常運転に必要な、予め決定された流量である。この例でも、圧力室25A~25Dを所望の形まで速やかに膨張させることができる。
【0053】
一実施形態では、ウェーハWを研磨ヘッド1で研磨パッド2に押し付けてウェーハWを研磨している間、流量制御弁FC1~FC4は、圧力室25A~25Dに供給される圧縮気体の流量をそれぞれ測定するように構成されている。ウェーハWを研磨している間は、流量制御弁FC1~FC4は、圧力室25A~25Dに供給される圧縮気体の流量を測定するが、調節はしていない。
【0054】
図6は、ウェーハWを研磨ヘッド1で研磨パッド2に押し付けてウェーハWを研磨しているときの圧力室25Aに供給される圧縮気体の流量の時間変化の一例を示すグラフである。図2に示す圧力レギュレータRa1,Ra2,Ra3,Ra4は、圧力室25A~25D内の圧縮気体の圧力を調節する。このような圧力調節動作に伴い、図6に示すように、圧力室25Aに供給される圧縮気体の流量は変化する。図示しないが、圧力室25B~25Dに供給される圧縮気体の流量も同じように変化する。
【0055】
システム制御部50は、ウェーハ研磨中に測定された流量の積算値である研磨流量積算値PV1,PV2,PV3,PV4を算定し、研磨流量積算値PV1,PV2,PV3,PV4のうちの少なくとも1つの変化に基づいて、弾性膜34の不具合、またはウェーハWの研磨異常を判定するように構成されている。研磨流量積算値PV1,PV2,PV3,PV4は、圧力室25A,25B,25C,25Dにそれぞれ対応する。
【0056】
より具体的には、研磨流量積算値PV1,PV2,PV3,PV4のうちの少なくとも1つが許容範囲から外れたときに、システム制御部50は、弾性膜34の不具合、またはウェーハWの研磨異常を検出する。例えば、ウェーハを研磨するたびに研磨流量積算値PV1が許容範囲から外れるときは、システム制御部50は弾性膜34または圧力レギュレータRa1に不具合があると判定する。他の例では、複数のウェーハのうちのあるウェーハを研磨したときに取得された研磨流量積算値PV1が許容範囲から外れたときは、システム制御部50はそのウェーハの研磨異常が起きたか、あるはそのウェーハ自体に不具合(例えば、ウェーハの膜厚の過大なばらつき、ウェーハの割れ)があると判定する。
【0057】
一実施形態では、上記許容範囲は、過去のウェーハを研磨したときに取得された研磨流量積算値の平均値を含む範囲とされる。研磨流量積算値PV1,PV2,PV3,PV4に対応する複数の許容範囲が設けられる。
【0058】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 研磨ヘッド
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 研磨テーブル
4 研磨ヘッドシステム
5 研磨液供給ノズル
6 テーブルモータ
9 動作制御部
9a 記憶装置
9b 演算装置
11 研磨ヘッドシャフト
15 ヘッドアーム
16 支軸
18 上下動機構
25A,25B,25C,25D,25E 圧力室
31 キャリア
32 リテーナリング
34 弾性膜
35 接触部
35a 接触面
36a,36b,36c 内壁部
36d 外壁部
37 メンブレン(ローリングダイヤフラム)
40 ロータリージョイント
50 システム制御部
50a 記憶装置
50b 演算装置
51 リリースノズル
52 ワークピース受け渡し装置
F1,F2,F3,F4,F5 気体移送ライン
Ra1,Ra2,Ra3,Ra4,Ra5 圧力レギュレータ
FC1,FC2,FC3,FC4,FC5 流量制御弁
Lb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5 真空ライン
Vb1,Vb2,Vb3,Vb4,Vb5 真空弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12