(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121124
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】鉄道車両及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B61F 1/12 20060101AFI20240830BHJP
B61F 1/10 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B61F1/12
B61F1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028038
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中垣 望
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 航平
(57)【要約】
【課題】製造コストが安く、空気ばね受座の高さ調整を簡単に行うことができ、溶接による接合部が少なくてその点検も容易な台枠枕ばりを備えた鉄道車両及びその製造方法を提供する。
【解決手段】台枠DWの左右の側バリ11間に架け渡され、両側バリ寄りに台車DSの空気ばねKBに対する空気ばね受座221が形成された台枠枕ばり2を備えた鉄道車両10である。台枠枕ばりは、フランジ面21aが垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部21と両フランジ部を水平状に繋ぐウェブ部22とがH形断面を構成して一体形成されたH形部材2aと、当該H形部材の車両幅方向両端部2a1と溶接して接合され側バリと連結される側バリ連結部材2bとを備え、ウェブ部の下面には、空気ばね受座が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠の左右の側バリ間に架け渡され、両側バリ寄りに台車の空気ばねに対する空気ばね受座が形成された台枠枕ばりを備えた鉄道車両であって、
前記台枠枕ばりは、フランジ面が垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部と両フランジ部を水平状に繋ぐウェブ部とがH形断面を構成して一体形成されたH形部材と、当該H形部材の車両幅方向両端部と溶接して接合され前記側バリと連結される側バリ連結部材とを備え、
前記ウェブ部の下面には、前記空気ばね受座が形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記H形部材は、前記フランジ部と前記ウェブ部とが一体圧延形成されたH形鋼から構成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記側バリ連結部材は、前記H形部材に対してT字状に交差して車両長手方向へ延設され、
前記側バリ連結部材と前記H形部材とが直角に交差する4つのコーナ部には、前記H形部材の下端部と前記側バリ連結部材の下端部とに接合するコーナ下当板を備え、
4つの前記コーナ部の内、少なくとも一方の対角線上に配置されたコーナ部又は少なくとも一方の左右対称位置に配置されたコーナ部に位置する前記コーナ下当板には、前記台車の台車枠と連結されるボルスタアンカ及び/又はヨーダンパ装置を支持する支持金の取付座が形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記ウェブ部の上面と一対の前記フランジ部には、前記空気ばね受座の中心部近傍で車両長手方向に延設された受座補強板が接合されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記台枠には、端バリと当該端バリ寄りの前記フランジ部とを繋ぐ中バリを備え、
前記端バリ寄りの前記フランジ部と車両中央寄りの前記フランジ部には、前記中バリの延長線上で車両長手方向に延設された中央補強板が接合されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された鉄道車両の製造方法であって、
少なくとも、前記H形部材のフランジ部の上端部及び下端部を削正するフランジ削正工程と、前記H形部材のウェブ部に前記空気ばね受座を形成する受座形成工程と、を備えていることを特徴とする鉄道車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両及びその製造方法に関し、より詳しくは、台枠の左右の側バリ間に架け渡され、両側バリ寄りに台車の空気ばねに対する空気ばね受座がそれぞれ形成された台枠枕ばりを備えた鉄道車両及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両の台枠には、レール上を走行する台車に支持される台枠枕ばりが、左右の側バリ間に架け渡されている。従来の鋼製又はステンレス製車両の台枠枕ばりDM1は、例えば、
図11、
図12に示すように、車両幅方向に延設された鉄系の上平板101と下平板102とを鉄系の側帯板103で塞ぐ閉断面構造を有し、当該閉断面構造を構成する各板材101、102、103をアーク溶接等によって接合して組み立てられていた。また、上記鉄道車両100の台枠枕ばりDM1には、バリアフリーの社会的ニーズに対応して、客室の低床化を可能とするため、台車の空気ばね105に対する空気ばね受座104aが下平板102より上方へオフセットする略円筒状の台座部材104を備え、台座部材104の空気ばね受座104aを支持する筒状部104bの上下端が、上平板101及び下平板102にアーク溶接等によって接合されていた。
【0003】
ところが、上記台枠枕ばりDM1では、上平板101と下平板102と側帯板103とを溶接して接合し、台座部材104の筒状部104bの上下端を上平板101及び下平板102に溶接して接合する構造であったので、その組立てにかかる溶接量が多く、溶接に伴う熱歪や溶接欠陥が多くなり、その結果、溶接及びその修正作業に多くの工数が掛かり、製造コストが増加するという問題があった。また、上記台枠枕ばりDM1は、上平板101と下平板102と側帯板103とが略全周に亘って溶接されて閉断面を構成するので、定期的な検査の際、溶接部の確認が容易でないという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、
図13、
図14に示すように、台車に設けられた空気ばねの上部を挿入可能な凹部として構成されたバネ受け部(空気ばね受座)201が下面に形成された台枠枕ばりDM2を備えた鉄道車両200が、開示されている。上記鉄道車両200の台枠枕ばりDM2は、左右の側バリ(図示しない)と交差する車両幅方向(矢印Xの方向)に沿って延在する筒状部202と、筒状部202の内部空間を上部空間K1と下部空間K2とに仕切る仕切り部203とを有する中空押出形材から構成されており、バネ受け部201を構成する凹部の底面201aは、筒状部202の下壁部202aの一部と、下壁部202aと仕切り部203とを連結する下補強部202bの一部とが、切り取られることで外部に露出された仕切り部203の下面によって構成されている。ここで、上記台枠枕ばりDM2は、前後2本の筒状部202の上壁部202cの端縁同士及び下壁部202aの端縁同士を溶接することで構成されているが、溶接部は全体として削減され、溶接及びその修正作業に掛かる工数を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された鉄道車両200の台枠枕ばりDM2では、バネ受け部(空気ばね受座)201を構成する凹部の底面201aは、筒状部202の下壁部202aの一部と、下壁部202aと仕切り部203とを連結する下補強部202bの一部とが、切り取られることで外部に露出された仕切り部203の下面によって構成されているので、筒状部202の上壁部202cと下壁部202aとの離間距離205を変更せずに、下壁部202a(台枠枕ばりの下端面)に対するバネ受け部(空気ばね受座)201のオフセット量205の調整が簡単にできないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、溶接量を減らすことにより製造コストを低減でき、溶接部の点検も容易であって、台枠枕ばりの下端面に対する空気ばね受座のオフセット量の調整を簡単に行うことができる台枠枕ばりを備えた鉄道車両及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両及びその製造方法は、以下の構成を備えている。
(1)台枠の左右の側バリ間に架け渡され、両側バリ寄りに台車の空気ばねに対する空気ばね受座が形成された台枠枕ばりを備えた鉄道車両であって、
前記台枠枕ばりには、フランジ面が垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部と両フランジ部を水平状に繋ぐウェブ部とがH形断面を構成して一体形成されたH形部材と、当該H形部材の車両幅方向両端部と溶接して接合され前記側バリと連結される側バリ連結部材とを備え、
前記ウェブ部の下面には、前記空気ばね受座が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、台枠枕ばりには、フランジ面が垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部と両フランジ部を水平状に繋ぐウェブ部とがH形断面を構成して一体形成されたH形部材と、当該H形部材の車両幅方向両端部と溶接して接合され側バリと連結される側バリ連結部材とを備え、ウェブ部の下面には、空気ばね受座が形成されているので、溶接量を減らすことにより製造コストを低減でき、溶接部の点検も容易であって、台枠枕ばりの下端面に対する空気ばね受座のオフセット量の調整を簡単に行うことができる台枠枕ばりを形成することができる。
【0010】
すなわち、H形部材は、フランジ面が垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部と両フランジ部を水平状に繋ぐウェブ部とがH形断面を構成して一体形成されたものであるので、フランジ部とウェブ部とをわざわざ溶接して接合する必要がない。また、側バリ連結部材は、H形部材の車両幅方向両端部と溶接して接合されているので、上平板と下平板と側帯板とが略全周に亘って溶接されて閉断面を構成する従来の台枠枕ばりに比較して、溶接量を大幅に少なくできる。そのため、溶接に伴う熱歪や溶接欠陥等も生じにくい。その結果、溶接及びその修正作業を含めて製造コストを大幅に削減できる。さらに、従来の台枠枕ばりが閉断面を構成するのに対して、H形部材は開断面を構成し、また溶接量が少ないので、定期的な点検の際、その溶接部に対する確認が容易となる。
【0011】
また、ウェブ部の下面には、空気ばね受座が形成されているので、両フランジ部の上下端を削正することによって、H形部材の上下寸法(車両上下方向の長さ)を所定の値に保持しながら、台枠枕ばりの下端面に対する空気ばね受座のオフセット量の調整を簡単に行うことができる。この場合、フランジ部の上下端を削正するだけであるので、空気ばね受座に熱歪等が生じにくく、修正に掛かる手間も生じにくい。また、空気ばね受座を台枠枕ばりの下端面から上方へオフセットするための部材が不要となり、それに伴って溶接量も低減でき、結果として、熱歪や溶接欠陥等の修正に掛かる工数も削減できる。
【0012】
よって、本発明によれば、溶接量を減らすことにより製造コストを低減でき、溶接部の点検も容易であって、台枠枕ばりの下端面に対する空気ばね受座のオフセット量の調整を簡単に行うことができる台枠枕ばりを備えた鉄道車両を提供することができる。
【0013】
(2)(1)に記載された鉄道車両において、
前記H形部材は、前記フランジ部と前記ウェブ部とが一体圧延形成されたH形鋼から構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、H形部材は、フランジ部とウェブ部とが一体圧延形成されたH形鋼から構成されているので、JIS(Japan Industrial Standards)規格のH形鋼を活用でき、アルミ系の押出形部材のように専用の押出し成形金型等の専用設備を必要としない。そのため、設備費を含めて製造コストを大幅に低減することができる。また、H形部材は、鉄系部材であるので、H形部材に溶接する側バリ連結部材等を同質の鉄系部材で構成できる。そのため、材料費を低減できると共に、両者は簡単に溶接でき、溶接部における溶接欠陥等を低減できる。
【0015】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両において、
前記側バリ連結部材は、前記H形部材に対してT字状に交差して車両長手方向へ延設され、
前記側バリ連結部材と前記H形部材とが直角に交差する4つのコーナ部には、前記H形部材の下端部と前記側バリ連結部材の下端部とに接合するコーナ下当板を備え、
4つの前記コーナ部の内、少なくとも一方の対角線上に配置されたコーナ部又は少なくとも一方の左右対称位置に配置されたコーナ部に位置する前記コーナ下当板には、前記台車の台車枠と連結されるボルスタアンカ及び/又はヨーダンパ装置を支持する支持金の取付座が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、側バリ連結部材は、H形部材に対してT字状に交差して車両長手方向へ延設されているので、側バリに対する側バリ連結部材のラップ代を増大させ、両者の連結強度を高めることができる。また、側バリ連結部材とH形部材とが直角に交差する4つのコーナ部には、H形部材の下端部と側バリ連結部材の下端部とに接合するコーナ下当板を備えているので、コーナ下当板を4つのコーナ部に限定したことによって、溶接量を低減でき、結果として、製造コストを低減しつつ、各コーナ下当板の三角補強効果によってH形部材と側バリ連結部材との接合強度をより一層高めることができる。また、各コーナ下当板の板厚を調節することによって、台枠枕ばりを台枠に組立後の台枠下端面に対する空気ばね受座のオフセット量を最終的に微調整することができる。
【0017】
また、4つの前記コーナ部の内、少なくとも一方の対角線上に配置されたコーナ部又は少なくとも一方の左右対称位置に配置されたコーナ部に位置する前記コーナ下当板には、前記台車の台車枠と連結されるボルスタアンカ及び/又はヨーダンパ装置を支持する支持金の取付座が形成されているので、H形部材と側バリ連結部材との両方に接合されるコーナ下当板を介して、台車の牽引力及びブレーキ力を、台枠枕ばりに対してより確実に伝達することができる。
【0018】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記ウェブ部の上面と一対の前記フランジ部には、前記空気ばね受座の中心部近傍で車両長手方向に延設された受座補強板が接合されていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、ウェブ部の上面と一対のフランジ部には、空気ばね受座の中心部近傍で車両長手方向に延設された受座補強板が接合されているので、空気ばね受座におけるウェブ部の垂直荷重に対する強度低下を、受座補強板によって効果的に補完させることができる。この場合、ウェブ部全体の板厚を増加させることなく、空気ばね受座におけるウェブ部の必要な強度を確保することができる。したがって、台枠枕ばりにおける所要の強度を確保しながら軽量化でき、結果として、台枠枕ばりの製造コストを効果的に削減できる。
【0020】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記台枠には、端バリと当該端バリ寄りの前記フランジ部とを繋ぐ中バリを備え、
前記端バリ寄りの前記フランジ部と車両中央寄りの前記フランジ部には、前記中バリの延長線上で車両長手方向に延設された中央補強板が接合されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、台枠には、端バリと当該端バリ寄りのフランジ部とを繋ぐ中バリを備え、端バリ寄りのフランジ部と車両中央寄りのフランジ部には、中バリの延長線上で車両長手方向に延設された中央補強板が接合されているので、フランジ部全体の板厚を増加させることなく、H形部材と中バリとの接合部におけるH形部材の剛性を、簡単に高めることができる。そのため、台車から台枠枕ばりに伝達される牽引力及びブレーキ力を効果的に中バリに伝達して、中バリに装着される車両連結器を介して連結される次の鉄道車両へより確実に伝達できる。したがって、台枠枕ばりにおける所要の強度を確保しながら軽量化でき、結果として、台枠枕ばりの製造コストを効果的に削減できる。
【0022】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された鉄道車両の製造方法であって、
少なくとも、前記H形部材のフランジ部の上端部及び下端部を削正するフランジ削正工程と、前記H形部材のウェブ部に前記空気ばね受座を形成する受座形成工程と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、少なくとも、H形部材のフランジ部の上端部及び下端部を削正するフランジ削正工程と、H形部材のウェブ部に空気ばね受座を形成する受座形成工程と、を備えているので、台枠枕ばりの上下寸法を台枠の上下寸法に整合させながら、台枠枕ばりの下端面に対する空気ばね受座のオフセット量を簡単に調整することができる。また、H形部材のフランジ部の上端部及び下端部を削正するだけであるので、空気ばね受座を台枠枕ばりの下端面から上方へオフセットするための部材が不要となり、それに伴って溶接量も低減でき、結果として、熱歪や溶接欠陥等の修正に掛かる工数も削減できる。さらに、従来の台枠枕ばりが閉断面を構成するのに対して、H形部材は開断面を構成し、また溶接量が少ないので、定期的な点検の際、その溶接部に対する確認が容易となる。
【0024】
よって、本発明によれば、溶接量を減らすことにより製造コストを低減でき、溶接部の点検も容易であって、台枠枕ばりの下端面に対する空気ばね受座のオフセット量の調整を簡単に行うことができる台枠枕ばりを備えた鉄道車両の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、溶接量を減らすことにより製造コストを低減でき、溶接部の点検も容易であって、台枠枕ばりの下端面に対する空気ばね受座のオフセット量の調整を簡単に行うことができる台枠枕ばりを備えた鉄道車両及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図である。
【
図2】
図1に示すA部における台枠の概略部分平面図である。
【
図3】
図2に示すB部における台枠枕ばりの斜め後下方から見た概略斜視図である。
【
図8】
図3に示す台枠枕ばりの主要な製造工程を表すフローチャート図である。
【
図9】
図4に示す台枠枕ばりの変形例の平面図である。
【
図11】従来の台枠枕ばりの斜め後下方から見た概略斜視図である。
【
図13】特許文献1に記載された台枠枕ばりの斜め前下方から見た概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<本鉄道車両の構成>
次に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本鉄道車両の構成と作用効果について、
図1~
図7を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図を示す。
図2に、
図1に示すA部における台枠の概略部分平面図を示す。
図3に、
図2に示すB部における台枠枕ばりの斜め後下方から見た概略斜視図を示す。
図4に、
図3に示すC矢視の平面図を示す。
図5に、
図4に示すD1-D1断面図を示す。
図6に、
図4に示すD2-D2断面図を示す。
図7に、
図4に示すE-E断面図を示す。
【0028】
図1~
図7に示すように、本鉄道車両10は、台枠DWの左右の側バリ11、11間に架け渡され、両側バリ寄りに台車DSの空気ばねKBに対する空気ばね受座221が形成された台枠枕ばり2を備えた鉄道車両10である。
図1では、車両先頭部に運転室を備えた鉄道車両10が一両だけ図示されているが、本鉄道車両10には、車両連結器RKを介して複数の車両が接続されていても良い。
【0029】
ここでは、本鉄道車両10には、
図1、
図2に示すように、レールRL上を走行する前後一対の台車DSに支持された台枠DWと、台枠DWの前端部及び後端部に起立する妻構体TKと、台枠DWの両側端部に起立する側構体GKと、妻構体TK及び側構体GKの上端部に接続される屋根構体YKとを備えている。また、台車DSの輪軸と駆動装置(図示しない)を支持する台車枠DSWの車両幅方向両端部には、台枠DWの台枠枕ばり2に当接して、車両の垂直荷重を支持する空気ばねKBを備えている。なお、側構体GKには、各種大きさの側窓GMと、乗客が乗り降りする乗客用側扉GT1と、運転士等が乗り降りする乗員用側扉GT2とが形成されている。台枠DWには、床下機器KZが装着されている。台枠DWの台枠枕ばり2は、車両前端側と車両後端側の乗客用側扉GT1の近傍に配置されている。また、台枠DWの前端側と後端側には、車両連結器RKが装着されている。
【0030】
また、
図2~
図7に示すように、台枠枕ばり2は、フランジ面21aが垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部21、21と両フランジ部21、21を水平状に繋ぐウェブ部22とがH形断面を構成して一体形成されたH形部材2aと、当該H形部材2aの車両幅方向両端部2a1、2a1と溶接して接合され側バリ11、11と連結される側バリ連結部材2b、2bと、を備えている。また、ウェブ部22の下面には、円形状の空気ばね受座221、221が形成されている。空気ばね受座221、221は、側バリ連結部材2b、2bと隣接する位置に形成されている。
【0031】
ここでは、フランジ部21は、所定の幅寸法(車両上下方向の長さ)d2及び板厚t1で車両幅方向へ延設されている。ウェブ部22は、所定の幅寸法(車両長手方向の長さ)d1及び板厚t2で車両幅方向へ水平状に延設されている。一対のフランジ部21、21とウェブ部22とが、それぞれ車両幅方向の長さが同一に形成された長方形状に形成されている。しかも、ウェブ部22の幅寸法(車両長手方向の長さ)d1は、フランジ部21の幅寸法(車両上下方向の長さ)d2より大きく形成され、フランジ部21の板厚t1は、ウェブ部22の板厚t2より厚く形成されている。また、ウェブ部22は、車両上下方向において、フランジ部21の下端部212寄りの中間位置に配置されている。また、ウェブ部22の上方でフランジ部21の上端部211寄りの位置には、床下機器KZに対する配線又は配管用の貫通孔213が形成されている。
【0032】
また、フランジ部21の上端部211寄りのフランジ面21aには、上端部211と同一の高さに受け面が形成された床受け部材291が接合されている。また、フランジ部21の車両幅方向中央部寄りの下端部212には、台車DSの台車枠DSWと連結されるダンパ装置等(図示しない)を装着する中央下当板27が接合されている。中央下当板27には、中バリ13と接合される鍔部271、272が形成されている。また、中央下当板27には、台車枠DSWに台車DSの牽引力を伝達する中心ピン(図示しない)等を装着することもある。
【0033】
また、空気ばね受座221は、ウェブ部22の強度低下を最小化しつつ、水平な円形平坦面を確保できるように、ウェブ部22の下面に対して最小深さ(1~2mm程度)t3で切削形成されている。そして、空気ばね受座221の中心部には、空気ばね吸気口KB1の基端部を挿通する挿通孔221aが形成されている。挿通孔221aの外周側には、空気ばね吸気口KB1の基端部を取付ける円環状の取付板222が、ウェブ部22の上面に接合されている。また、前後一方のフランジ部21には、取付板222から上方へ突出した空気ばね吸気口KB1の先端部に接続される吸気配管KB2を挿通する配管孔214が形成されている。
【0034】
また、側バリ連結部材2bには、一対のフランジ部21、21の車両幅方向端縁とウェブ部22の車両幅方向端縁とにそれぞれ直角状に接合される内壁板241と、内壁板241の上端縁と直角状に接合され内壁板241の外表面と傾斜状に接合される外壁板242と、を備えている。外壁板242は、内壁板241と接合される領域では、略V字状断面に形成されている。外壁板242には、内壁板241より車両前方側へ突出する前突出領域242Fと、内壁板241より車両後方へ突出する後突出領域242Rとを備えている。そして、外壁板242の両突出領域242F、242Rは、略コの字状断面に形成されている。
【0035】
以上詳細に説明したように、本鉄道車両10において、H形部材2aは、フランジ面21aが垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部21、21と両フランジ部21、21を水平状に繋ぐウェブ部22とがH形断面を構成して一体形成されたものであるので、フランジ部21、21とウェブ部22とをわざわざ溶接して接合する必要がない。また、側バリ連結部材2b、2bは、H形部材2aの車両幅方向両端部2a1、2a1と溶接して接合されているので、前述した上平板101と下平板102と側帯板103とが略全周に亘って溶接されて閉断面を構成する従来の台枠枕ばりDM1に比較して、溶接量を大幅に少なくできる。そのため、溶接に伴う熱歪や溶接欠陥等も生じにくい。その結果、熱歪や溶接欠陥等を修正する工数を削減でき、溶接及びその修正作業を含む製造コストを大幅に低減できる。さらに、従来の台枠枕ばりDM1が閉断面を構成するのに対して、H形部材2aは開断面を構成し、また溶接量が少ないので、定期的な点検の際、その溶接部に対する良否の確認が容易となる。
【0036】
また、ウェブ部22の下面には、空気ばね受座221が形成されているので、両フランジ部21の上下端を削正することによって、台枠枕ばり2の下端面2Kに対する空気ばね受座221のオフセット量d3の調整を簡単に行うことができる。この場合、フランジ部21の上下端を削正するだけであるので、空気ばね受座221に熱歪等が生じにくく、修正に掛かる手間も生じにくい。また、空気ばね受座221を台枠枕ばり2の下端面2Kから上方へオフセットするための部材が不要となり、それに伴って溶接量も低減できる。結果として、熱歪や溶接欠陥等の修正に掛かる工数も削減できる。
【0037】
よって、本鉄道車両10によれば、溶接量を減らすことにより製造コストを低減でき、溶接部の点検も容易であって、台枠枕ばり2の下端面2Kに対する空気ばね受座221のオフセット量d3の調整を簡単に行うことができる台枠枕ばり2を備えた鉄道車両10を提供することができる。
【0038】
また、本鉄道車両10においては、H形部材2aは、一対のフランジ部21、21とウェブ部22とが一体圧延形成されたH形鋼から構成されていることが好ましい。この場合、JIS(Japan Industrial Standards)規格のH形鋼を活用でき、アルミ系の押出形部材のように専用の押出し成形金型等の専用設備を必要としない。
【0039】
また、JIS(Japan Industrial Standards)規格のH形鋼には、ウェブ部22の幅寸法(車両長手方向の長さ)d1が、フランジ部21の幅寸法(車両上下方向の長さ)d2より大きく形成され、フランジ部21の板厚t1が、ウェブ部22の板厚t2より厚く形成されているものが複数種類にわたって用意され、一般に市販されている。そのため、各種類の中からサイズ的、強度的に適したH形鋼を選定すればよく、わざわざ特注する必要もない。したがって、製造コストを大幅に低減することができる。
【0040】
また、H形鋼のH形部材2aは、鉄系部材であるので、H形部材2aに接合する側バリ連結部材2b等を同質の鉄系部材で構成できる。そのため、材料費を低減できると共に、両者は簡単にアーク溶接等によって接合でき、接合部における溶接欠陥等を低減できる。
【0041】
また、本鉄道車両10においては、
図1~
図7に示すように、側バリ連結部材2bは、H形部材2aに対してT字状に交差して車両長手方向へ延設され、側バリ連結部材2bとH形部材2aとが直角に交差する4つのコーナ部2c(2c1、2c2、2c3、2c4)には、H形部材2aの下端部2a2と側バリ連結部材2bの下端部2b2とに接合するコーナ下当板23(231、232、233、234)を備え、4つのコーナ部2c(2c1、2c2、2c3、2c4)の内、少なくとも一方の対角線上に配置されたコーナ部2c(2c1、2c4)に位置するコーナ下当板23(231、234)には、台車DSの台車枠DSWと連結されるボルスタアンカBA及び/又はヨーダンパ装置YDを支持する支持金25の取付座25Tが形成されていることが好ましい。ここで、支持金25には、ボルスタアンカBAとヨーダンパ装置YDの両方を装着しても良いし、ボルスタアンカBAとヨーダンパ装置YDの内、いずれか一方を装着しても良い。なお、上記支持金25の取付座25Tは、少なくとも一方の左右対称位置に配置されたコーナ部2c(2c1、2c3)に位置するコーナ下当板23(231、233)に形成されても良い。
【0042】
ここで、ヨーダンパ装置YDとは、例えば、シリンダケースと当該シリンダケースに対して伸縮可能に形成されたシリンダロッドとを備え、高速で走行する鉄道車両において、車体や台車が激しく左右に揺れだす蛇行動と呼ばれる不安定な振動を、シリンダロッドの伸縮によって減衰させるダンパ装置である。なお、ボルスタアンカBAのみを装着する場合は、一般的なボルスタ付き台車の鉄道車両10に適している。また、ヨーダンパ装置YDのみを装着する場合は、ボルスタレス台車で高速走行が必要な鉄道車両10に適している。また、ボルスタアンカBAとヨーダンパ装置YDの両方を装着する場合は、ボルスタ付き台車で高速走行が必要な鉄道車両10に適している。ボルスタアンカBAとヨーダンパ装置YDの両方を装着する場合は、例えば、ボルスタアンカBAとヨーダンパ装置YDとを上下方向で離間した位置に配置する。
【0043】
ここでは、ボルスタアンカBA及び/又はヨーダンパ装置YDを支持する支持金25の取付座25Tが形成されているコーナ下当板23(例えば、231、234)には、側バリ連結部材2bの外壁板242とフランジ部21のフランジ面21aとに接合される取付座補強板が接合されている。取付座25Tには、支持金25を締結するネジ孔が形成されている。なお、各コーナ下当板23(231、232、233、234)には、フランジ部21の下端部212に沿って空気ばね受座221の中心部近傍まで車内側先端部が延設され、当該車内側先端部には、空気ばねKBの外筒押え金(図示しない)が装着されている。
【0044】
このように、側バリ連結部材2bは、H形部材2aに対してT字状に交差して車両長手方向へ延設されているので、側バリ11、11に対する側バリ連結部材2bのラップ代を増大させ、両者の連結強度を高めることができる。また、側バリ連結部材2bとH形部材2aとが直角に交差する4つのコーナ部2c(2c1、2c2、2c3、2c4)には、H形部材2aの下端部2a2と側バリ連結部材2bの下端部2b2とに接合するコーナ下当板23(231、232、233、234)を備えているので、コーナ下当板23を4つのコーナ部2cに限定したことによって、溶接量を低減でき、結果として、製造コストを低減しつつ、各コーナ下当板23の三角補強効果によってH形部材2aと側バリ連結部材2bとの接合強度をより一層高めることができる。また、各コーナ下当板23の板厚t4を調節することによって、台枠枕ばり2を台枠DWに組立後の台枠下端面DWKに対する空気ばね受座221のオフセット量d3を最終的に微調整することができる。
【0045】
また、4つのコーナ部2cの内、少なくとも一方の対角線上に配置されたコーナ部2c(2c1、2c4)又は少なくとも一方の左右対称位置に配置されたコーナ部2c(2c1、2c3)に位置するコーナ下当板23(231、232、233、234)には、台車DSの台車枠DSWと連結されるボルスタアンカBA及び/又はヨーダンパ装置YDを支持する支持金25の取付座25Tが形成されているので、H形部材2aと側バリ連結部材2bとの両方に接合されるコーナ下当板23を介して、台車DSの牽引力及びブレーキ力を、台枠枕ばり2に対してより確実に伝達することができる。
【0046】
なお、コーナ下当板23は、側バリ連結部材2bとH形部材2aとが交差する4つのコーナ部2c(2c1、2c2、2c3、2c4)に対して、それぞれ分割して形成されているが、必ずしも、これに限る必要はない。例えば、車両幅方向右端側のコーナ下当板23(231、232)を一体に形成し、車両幅方向左端側のコーナ下当板23(233、234)を一体に形成しても良い。また、4つのコーナ部2c(2c1、2c2、2c3、2c4)には、H形部材2aの上端部と側バリ連結部材2bの上端部とに接合する略三角状のコーナ上当板(図示しない)を備えても良い。
【0047】
また、本鉄道車両10においては、
図4、
図5、
図7に示すように、ウェブ部22の上面と前後一対のフランジ部21、21には、空気ばね受座221の中心部近傍で車両長手方向に延設された受座補強板26、26が接合されていることが好ましい。
【0048】
この場合、空気ばね受座221におけるウェブ部22の垂直荷重に対する強度低下を、受座補強板26、26によって効果的に補完させることができる。すなわち、ウェブ部22全体の板厚t2を増加させることなく、空気ばね受座221におけるウェブ部22の必要な強度を確保することができる。したがって、台枠枕ばり2における所要の強度を確保しながら軽量化でき、結果として、台枠枕ばり2の製造コストを効果的に削減できる。
【0049】
ここでは、2つの受座補強板26、26が、空気ばね吸気口KB1の基端部を取付ける取付板222を挟んで、ウェブ部22の上面に接合されているが、必ずしも、これに限る必要はない。例えば、略コの字状断面に形成された1つの受座補強板が、空気ばね吸気口KB1の基端部を取付ける取付板222を挟んで、ウェブ部22の上面に接合されていても良い。
【0050】
また、本鉄道車両10においては、
図2~
図6に示すように、台枠DWには、端バリ12と当該端バリ12寄りのフランジ部21Fとを繋ぐ中バリ13、13を備え、端バリ12寄りのフランジ部21Fと車両中央寄りのフランジ部21Rには、中バリ13、13の延長線上で車両長手方向に延設された中央補強板28(281、282)が接合されていることが好ましい。
【0051】
ここでは、中バリ13、13は、車両幅方向中央部にて左右2つに分離して形成され、車両前後方向に沿って配置されている。中バリ13、13の端バリ12寄りの位置には、車両連結器RKが装着されている。中バリ13、13は、複数の横バリ14を介して側バリ11、11と接続されている。中央補強板28(281、282)は、左右の中バリ13、13の延長線上で、それぞれ車両長手方向に延設されている。
【0052】
上記構成によって、フランジ部21、21全体の板厚を増加させることなく、H形部材2aと中バリ13、13との接合部におけるH形部材2aの剛性を、簡単に高めることができる。そのため、台車DSから台枠枕ばり2に伝達される牽引力及びブレーキ力を効果的に中バリ13、13に伝達して、中バリ13、13に装着される車両連結器RKを介して連結される次の鉄道車両10へより確実に伝達できる。したがって、台枠枕ばり2における所要の強度を確保しながら軽量化でき、結果として、台枠枕ばり2の製造コストを効果的に削減できる。
【0053】
ここでは、中央補強板28(281、282)には、ウェブ部22を挟んで、フランジ部21F、21Rの上端側と接合される上中央補強板281と、フランジ部21F、21Rの下端側と接合される下中央補強板282とを備えているが、上中央補強板281又は下中央補強板282のみでも良い。また、車両中央寄りのフランジ部21Rには、車両中央側へ延設された中バリ13、13が接合されているが、この車両中央側へ延設された中バリ13、13は、必要に応じて長さを短縮し、又は省略しても良い。
【0054】
<本鉄道車両の製造方法>
次に、本発明の他の実施形態に係る鉄道車両の製造方法について、
図1~
図8を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図を示す。
図2に、
図1に示すA部における台枠の概略部分平面図を示す。
図3に、
図2に示すB部における台枠枕ばりの斜め後下方から見た概略斜視図を示す。
図4に、
図3に示すC矢視の平面図を示す。
図5に、
図4に示すD1-D1断面図を示す。
図6に、
図4に示すD2-D2断面図を示す。
図7に、
図4に示すE-E断面図を示す。
図8に、
図3に示す台枠枕ばりの主要な製造工程を表すフローチャート図を示す。
【0055】
ここでは、本鉄道車両10の特徴である台枠枕ばり2の主要な製造方法について説明し、それ以外の製造方法は、公知の製造方法を用いているので、原則として、その説明を割愛する。
【0056】
すなわち、本鉄道車両10の台枠枕ばり2の主要な製造方法には、
図1~
図8に示すように、H形部材2aを車両幅方向で所定の長さに切断する切断工程(S1)と、H形部材2aのフランジ部21、21の上端部211及び下端部212を削正するフランジ削正工程(S2)と、H形部材2aの車両幅方向両端部2a1、2a1に側バリ連結部材2b、2bを接合し、両部材2a、2bの接合部下端面にコーナ下当板23(231、232、233、234)を接合する接合工程(S3)と、H形部材2aのウェブ部22に空気ばね受座221、221を形成する受座形成工程(S4)と、コーナ下当板23(231、232、233、234)の板厚t4を調整して空気ばね受座221、221の高さを微調整する高さ微調整工程(S5)と、を備えている。
【0057】
はじめに、切断工程(S1)では、H形部材2aを車両幅方向で所定の長さに切断することによって、H形部材2aの長さを左右の側バリ11、11同士の離間距離に適合させる。切断したH形部材2aの車両幅方向両端部2a1、2a1は、車両上下方向及び車両幅方向と直交するように形成されている。
【0058】
次に、フランジ削正工程(S2)では、H形部材2aのフランジ部21、21の上端部211及び下端部212をそれぞれ所定量だけ削正することによって、フランジ部21、21の下端部212に対する空気ばね受座221のオフセット量を設定値に適合させると同時に、台枠枕ばり2の上下寸法を台枠DWの上下寸法に整合させる。ここでは、フランジ部21、21の上端部211と下端部212は、それぞれ異なる量だけ削正される。フランジ部21、21の上端部211の削正量は、フランジ部21、21の下端部212の削正量より少ない。
【0059】
次に、接合工程(S3)では、H形部材2aの車両幅方向両端部2a1、2a1に側バリ連結部材2b、2bを溶接して接合し、両部材2a、2bの接合部下端面にコーナ下当板23(231、232、233、234)を接合することによって、台枠枕ばり2の基本構造を形成する。
【0060】
なお、この接合工程(S3)にて、ボルスタアンカBA及び/又はヨーダンパ装置YDを支持する支持金25の取付座25Tが形成されているコーナ下当板23(231、234)には、側バリ連結部材2bの外壁板242とフランジ部21のフランジ面21aとに接合される取付座補強板を接合する。また、ウェブ部22の上面と前後一対のフランジ部21、21には、空気ばね受座221の中心部近傍で車両長手方向に延設された受座補強板26、26を接合する。また、フランジ部21には、上述した中央下当板27、中央補強板28(281、282)、床受け部材291等を接合する。
【0061】
次に、受座形成工程(S4)では、水平な円形平坦面の空気ばね受座221を、ウェブ部22の下面を最小深さ(1~2mm程度)t3で切削して形成する。空気ばね受座221におけるウェブ部22の強度低下を、最小化するためである。そして、空気ばね受座221の中心部には、空気ばね吸気口KB1の基端部を挿通する挿通孔221aを形成する。また、挿通孔221aの外周側には、空気ばね吸気口KB1の基端部を取付ける円環状の取付板222をウェブ部22の上面に接合する。
【0062】
次に、高さ微調整工程(S5)では、コーナ下当板23(231、232、233、234)の板厚t4を調整して空気ばね受座221、221の高さを微調整する。ここでは、台枠枕ばり2を台枠DWに組立てた後、コーナ下当板23(231、232、233、234)の板厚t4を、調整することによって、台枠下端面DWKに対する空気ばね受座221のオフセット量d3を最終的に微調整することができる。なお、コーナ下当板23(231、232、233、234)の板厚t4は、シム追加によって増加しても良い。
【0063】
以上詳細に説明したように、本鉄道車両10の製造方法は、少なくとも、H形部材2aのフランジ部21、21の上端部211及び下端部212を削正するフランジ削正工程S2と、H形部材2aのウェブ部22に空気ばね受座221を形成する受座形成工程S4と、を備えている。
【0064】
したがって、フランジ部21、21の下端部212に対する空気ばね受座221のオフセット量を簡単に調整しながら、台枠枕ばり2の上下寸法を台枠DWの上下寸法に整合させることができる。また、H形部材2aのフランジ部21の上端部211及び下端部212を削正するだけであるので、空気ばね受座221を台枠下端面DWKから上方へオフセットするための部材が不要となり、それに伴って溶接量も低減でき、結果として、熱歪や溶接欠陥等の修正に掛かる工数も削減できる。さらに、従来の台枠枕ばりDM1が閉断面を構成するのに対して、H形部材2aは開断面を構成し、また溶接量が少ないので、定期的な点検の際、その溶接部に対する良否の確認が容易となる。
【0065】
よって、本鉄道車両10の製造方法によれば、溶接量を減らすことにより製造コストを低減でき、溶接部の点検も容易であって、台枠枕ばり2の下端面2Kに対する空気ばね受座221のオフセット量d3の調整を簡単に行うことができる台枠枕ばり2を備えた鉄道車両10の製造方法を提供することができる。
【0066】
<変形例>
なお、本鉄道車両10は、本発明の要旨を変更しない範囲で、各種形態に変更できることは言うまでもない。例えば、本鉄道車両10において、台枠枕ばり2は、フランジ面21aが垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部21、21と両フランジ部21、21を水平状に繋ぐウェブ部22とがH形断面を構成して一体形成されたH形部材2aと、当該H形部材2aの車両幅方向両端部2a1、2a1と溶接して接合され側バリ11、11と連結される側バリ連結部材2b、2bと、を備えている。また、ウェブ部22の下面には、円形状の空気ばね受座221、221が形成されている。空気ばね受座221、221は、側バリ連結部材2b、2bと隣接する位置に形成されている。
【0067】
ここで、H形部材2aは、フランジ面21aが垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部21、21と両フランジ部21、21を水平状に繋ぐウェブ部22とがH形断面を構成して一体形成された、1つのH形部材2aで構成されているが、必ずしも、これに限る必要はない。
【0068】
(変形例)
例えば、
図9、
図10に示すように、変形例の鉄道車両10Bにおいて、台枠枕ばり2Bは、フランジ面21aが垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部21B、21Bと両フランジ部21B、21Bを水平状に繋ぐウェブ部22BとがH形断面を構成して一体形成された複数のH形部材2aBと、当該H形部材2aBの車両幅方向両端部2a1、2a1と接合され側バリ11、11と連結される側バリ連結部材2b、2bと、を備えているものでも良い。
【0069】
上記複数のH形部材2aBは、車両長手方向で隣接するフランジ部21B、21B同士が接合されている。円形状の空気ばね受座221、221は、複数のウェブ部22Bの下面に跨って形成されている。また、左右の空気ばね受座221、221が形成されている箇所のみ、接合されたフランジ部21B、21Bは部分的に切り欠かれている。この場合、H形部材2aBのフランジ部21Bの数量が増加することによって、H形部材2aB全体では、車両幅方向及び車両上下方向の剛性が高くなり、その分、フランジ部21B及びウェブ部22Bの板厚を薄くできる。その結果、台枠枕ばり2Bの軽量化が可能となり、製造コストを低減できる。
【0070】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両10、10Bによれば、台枠枕ばり2、2Bは、フランジ面21aが垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部21、21Bと両フランジ部21、21Bを水平状に繋ぐウェブ部22、22BとがH形断面を構成して一体形成されたH形部材2a、2aBと、当該H形部材2a、2aBの車両幅方向両端部2a1と溶接して接合され側バリ1、1と連結される側バリ連結部材2bとを備え、ウェブ部22、22Bの下面には、空気ばね受座221が形成されているので、溶接量を減らすことにより製造コストを低減でき、溶接部の点検も容易であって、台枠枕ばり2、2Bの下端面2Kに対する空気ばね受座221のオフセット量d3の調整を簡単に行うことができる台枠枕ばり2、2Bを形成することができる。
【0071】
すなわち、H形部材2a、2aBは、フランジ面21aが垂直状に起立され且つ車両幅方向へ平行に延設された一対のフランジ部21、21Bと両フランジ部21、21Bを水平状に繋ぐウェブ部22、22BとがH形断面を構成して一体形成されたものであるので、フランジ部21、21Bとウェブ部22、22Bとをわざわざ溶接して接合する必要がない。また、側バリ連結部材2bは、H形部材2a、2aBの車両幅方向両端部2a1と溶接して接合されているので、上平板101と下平板102と側帯板103とが略全周に亘って溶接されて閉断面を構成する従来の台枠枕ばりDM1に比較して、溶接量を大幅に少なくできる。そのため、溶接に伴う熱歪や溶接欠陥等も生じにくい。その結果、熱歪や溶接欠陥等を修正する工数を削減でき、溶接量を減らすことにより製造コストを大幅に低減できる。さらに、従来の台枠枕ばりDM1が閉断面を構成するのに対して、H形部材2a、2aBは開断面を構成し、また溶接量が少ないので、定期的な点検の際、その接合部に対する良否の確認が容易となる。
【0072】
また、ウェブ部22、22Bの下面には、空気ばね受座221が形成されているので、両フランジ部21、21Bの上下端を削正することによって、台枠枕ばり2、2Bの下端面2Kに対する空気ばね受座221のオフセット量d3の調整を簡単に行うことができる。この場合、フランジ部21、21Bの上下端を削正するだけであるので、空気ばね受座221に熱歪等が生じにくく、修正に掛かる手間も生じにくい。また、空気ばね受座221を台枠枕ばり2、2Bの下端面2Kから上方へオフセットするための部材が不要となり、それに伴って溶接量も低減でき、結果として、熱歪や溶接欠陥等の修正に掛かる工数も削減できる。
【0073】
よって、本実施形態によれば、溶接量を減らすことにより製造コストを低減でき、溶接部の点検も容易であって、台枠枕ばり2、2Bの下端面2Kに対する空気ばね受座221のオフセット量d3の調整を簡単に行うことができる台枠枕ばり2、2Bを備えた鉄道車両10、10Bを提供することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、H形部材2a、2aBは、フランジ部21、21Bとウェブ部22、22Bとが一体圧延形成されたH形鋼から構成されているので、JIS(Japan Industrial Standards)規格のH形鋼を活用でき、アルミ系の押出形部材のように専用の押出し成形金型等の専用設備を必要としない。そのため、設備費を含む製造コストを大幅に低減することができる。また、H形鋼のH形部材2a、2aBは、鉄系部材であるので、H形部材2a、2aBに接合する側バリ連結部材2b等を同質の鉄系部材で構成できる。そのため、材料費を低減できると共に、両者は簡単に溶接でき、接合部における溶接欠陥等を低減できる。
【0075】
また、本実施形態によれば、側バリ連結部材2bは、H形部材2a、2aBに対してT字状に交差して車両長手方向へ延設されているので、側バリ11、11に対する側バリ連結部材2bのラップ代を増大させ、両者の連結強度を高めることができる。また、側バリ連結部材2bとH形部材2a、2aBとが直角に交差する4つのコーナ部2c(2c1、2c2、2c3、2c4)には、H形部材2a、2aBの下端部2a2と側バリ連結部材2bの下端部2b2とに接合するコーナ下当板23(231、232、233、234)を備えているので、コーナ下当板23を4つのコーナ部2cに限定したことによって、溶接量を低減でき、結果として、製造コストを低減しつつ、各コーナ下当板23の三角補強効果によってH形部材2a、2aBと側バリ連結部材2bとの接合強度をより一層高めることができる。また、各コーナ下当板23の板厚t4を調節することによって、台枠枕ばり2、2Bを台枠DWに組立後の台枠下端面DWKに対する空気ばね受座221のオフセット量d3を最終的に微調整することができる。
【0076】
また、4つのコーナ部2cの内、少なくとも一方の対角線上に配置されたコーナ部2c(2c1、2c4)又は少なくとも一方の左右対称位置に配置されたコーナ部2c(2c1、2c3)に位置するコーナ下当板23(231、232、233、234)には、台車DSの台車枠DSWと連結されるボルスタアンカBA及び/又はヨーダンパ装置YDを支持する支持金25の取付座25Tが形成されているので、H形部材2a、2aBと側バリ連結部材2bとの両方に接合されるコーナ下当板23を介して、台車DSの牽引力及びブレーキ力を、台枠枕ばり2、2Bに対してより確実に伝達することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、ウェブ部22、22Bの上面と一対のフランジ部21、21Bには、空気ばね受座221の中心部近傍で車両長手方向に延設された受座補強板26、26が接合されているので、空気ばね受座221におけるウェブ部22、22Bの垂直荷重に対する強度低下を、受座補強板26、26によって効果的に補完させることができる。この場合、ウェブ部22、22B全体の板厚を増加させることなく、空気ばね受座221におけるウェブ部22、22Bの必要な強度を確保することができる。したがって、台枠枕ばり2、2Bにおける所要の強度を確保しながら軽量化でき、結果として、台枠枕ばり2、2Bの製造コストを効果的に削減できる。
【0078】
また、本実施形態によれば、台枠DWには、端バリ12と当該端バリ12寄りのフランジ部21Fとを繋ぐ中バリ13、13を備え、端バリ12寄りのフランジ部21Fと中央寄りのフランジ部21Rには、中バリ13、13の延長線上で車両長手方向に延設された中央補強板28、28が接合されているので、フランジ部21、21B全体の板厚を増加させることなく、H形部材2a、2aBと中バリ13、13との接合部におけるH形部材2a、2aBの剛性を、簡単に高めることができる。そのため、台車DSから台枠枕ばり2、2Bに伝達される牽引力及びブレーキ力を効果的に中バリ13、13に伝達して、中バリ13、13に装着される車両連結器RKを介して連結される次の鉄道車両10、10Bへより確実に伝達できる。したがって、台枠枕ばり2、2Bにおける所要の強度を確保しながら軽量化でき、結果として、台枠枕ばり2、2Bの製造コストを効果的に削減できる。
【0079】
また、他の実施形態に係る鉄道車両の製造方法によれば、少なくとも、H形部材2a、2aBのフランジ部21、21Bの上端部211及び下端部212を削正するフランジ削正工程S2と、H形部材2a、2aBのウェブ部22、22Bに空気ばね受座221を形成する受座形成工程S4と、を備えているので、フランジ部21、21Bの下端部212に対する空気ばね受座221のオフセット量を簡単に調整しながら、台枠枕ばり2、2Bの上下寸法を台枠DWの上下寸法に整合させることができる。また、H形部材2a、2aBのフランジ部21、21Bの上端部211及び下端部212を削正するだけであるので、空気ばね受座221を台枠下端面DWKから上方へオフセットするための部材が不要となり、それに伴って溶接量も低減でき、結果として、熱歪や溶接欠陥等の修正に掛かる工数も削減できる。さらに、従来の台枠枕ばりDM1が閉断面を構成するのに対して、H形部材2a、2aBは開断面を構成し、また溶接量が少ないので、定期的な点検の際、その接合部に対する良否の確認が容易となる。
【0080】
よって、本他の実施形態によれば、溶接量を減らすことにより製造コストを低減でき、溶接部の点検も容易であって、台枠枕ばり2、2Bの下端面2Kに対する空気ばね受座221のオフセット量d3の調整を簡単に行うことができる台枠枕ばり2、2Bを備えた鉄道車両10、10Bの製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、台枠の左右の側バリ間に架け渡され、両側バリ寄りに台車の空気ばねに対する空気ばね受座がそれぞれ形成された台枠枕ばりを備えた鉄道車両及びその製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0082】
2、2B 台枠枕ばり
2a、2aB H形部材
2a1 車両幅方向端部
2a2 下端部
2b 側バリ連結部材
2b2 下端部
2c、2c1、2c2、2c3、2c4 コーナ部
10、10B 鉄道車両
11 側バリ
12 端バリ
13 中バリ
21、21B、21F、21R フランジ部
21a フランジ面
22、22B ウェブ部
23、231、232、233、234 コーナ下当板
25 支持金
25T 取付座
26 受座補強板
28、281、282 中央補強板
221 空気ばね受座
211 上端部
212 下端部
BA ボルスタアンカ
YD ヨーダンパ装置
DS 台車
DSW 台車枠
DW 台枠
KB 空気ばね
S2 フランジ削正工程
S4 受座形成工程