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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121125
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/08 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
B43K24/08 110
B43K24/08 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028041
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 恭平
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC04
2C353HG04
2C353MC02
2C353MC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カム筒の縮径部に切り欠き部が設けられている出没式筆記具が開示されており、出没式筆記具を組み立てる工程で、回転子をカム筒に挿入する際に、回転子の回転側カム部と縮径部との干渉を避けるため、回転側カム部が切り欠き部を通過するように周方向に位置合わせする必要があり、組み立てにくいという問題があった。本発明は、組み立てやすい出没式筆記具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも作動突起の側壁後方がカム突起に接触可能かつ係止不可能である出没式筆記具出没式筆記具を要旨とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内部に、筆記具本体が少なくとも前後動可能に配置され、かつ、少なくともカム部が形成された出没式筆記具であって、
筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、
カム部には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、
カム部の内壁面には、カム突起が形成され、
筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方とカム突起の側壁後方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方とカム突起の側壁前方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
少なくとも作動突起の側壁後方がカム突起に接触可能かつ係止不可能である、
出没式筆記具。
【請求項2】
前記係止突起の側壁後方の少なくとも一部が、前記作動突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、
少なくとも前記作動突起の側壁前方が前記カム突起の側壁後方に係止可能である、
請求項1に記載の出没式筆記具。
【請求項3】
前記作動突起の側壁前方の少なくとも一部が、前記係止突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置する、
請求項2に記載の出没式筆記具。
【請求項4】
軸筒内部に、筆記具本体が少なくとも前後動可能に配置され、かつ、少なくともカム部が形成された出没式筆記具であって、
筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、
カム部には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、
カム部の内壁面には、カム突起が形成され、
カム突起は、カム突起基部と、カム突起基部の側壁から前方に延び、カム突起基部よりカム部内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起前方端部と、で少なくとも構成され、
筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方とカム突起の側壁後方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方と、カム突起基部の側壁前方又はカム突起前方端部の側壁前方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
少なくとも作動突起の側壁後方が、カム突起基部の側壁前方に接触可能かつカム突起基部及びカム突起前方端部に係止不可能である、
出没式筆記具。
【請求項5】
前記係止突起の側壁後方の少なくとも一部が、前記作動突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、
少なくとも前記作動突起の側壁前方が前記カム突起の側壁後方に係止可能である、
請求項4に記載の出没式筆記具。
【請求項6】
前記作動突起の側壁前方の少なくとも一部が、前記係止突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置する、
請求項5に記載の出没式筆記具。
【請求項7】
軸筒内部に、筆記具本体が少なくとも前後動可能に配置され、かつ、少なくともカム部が形成された出没式筆記具であって、
筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、
作動突起は、作動突起基部と、作動突起基部の側壁から後方に延び、作動突起基部より筆記具本体外壁面からの径方向外側への高さが低い作動突起後方端部と、で少なくとも構成され、
カム部には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、
カム部の内壁面には、カム突起が形成され、
カム突起は、カム突起基部と、カム突起基部の側壁から前方に延び、カム突起基部よりカム部内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起前方端部と、で少なくとも構成され、
筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方とカム突起の側壁後方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方と、カム突起基部の側壁前方又はカム突起前方端部の側壁前方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
少なくとも作動突起後方端部の側壁後方が、カム突起基部の側壁前方に接触可能かつカム突起基部及びカム突起前方端部に係止不可能である、
出没式筆記具。
【請求項8】
前記係止突起の側壁後方の少なくとも一部が、前記作動突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、
少なくとも前記作動突起の側壁前方が前記カム突起の側壁後方に係止可能である、
請求項7に記載の出没式筆記具。
【請求項9】
前記作動突起の側壁前方の少なくとも一部が、前記係止突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置する、
請求項8に記載の出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内部に、前端に筆記部を有する筆記具本体が前後動可能に配置され、筆記具本体を軸筒内部で前後に異なる位置で係止させることで、筆記部の、軸筒前端開口部からの突出及び没入を可能とした、所謂出没式筆記具に関するものである。筆記部が軸筒前端開口部から突出して筆記可能になった状態を突出状態、筆記部が軸筒内部に没入した状態を没入状態とする。
【背景技術】
【0002】
出没式筆記具の出没機構として、所謂カム機構が採用されているものが知られている。出没式筆記具におけるカム機構では、筆記具本体に係止突起と作動突起とを設け、筆記具本体の前後動に伴いそれぞれの側壁がカム部に接触することで、筆記具本体の任意の位置での係止と、係止先の切り替えを可能としている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2019-155908号公報)には、軸筒内部にカム部としてのカム筒が配置され、カム筒内壁面に形成されたカム突起の側壁後方に回転子外壁面の作動突起の側壁前方が、カム筒前端面に回転子外壁面の係止突起の側壁後方が、それぞれ接触してカム機構が作動する出没式筆記具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-155908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている出没式筆記具では、カム筒の縮径部に切り欠き部が設けられている。出没式筆記具を組み立てる工程で、回転子をカム筒に挿入する際に、回転子の回転側カム部と縮径部との干渉を避けるため、回転側カム部が切り欠き部を通過するように周方向に位置合わせする必要があり、組み立てにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、組み立てやすい出没式筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸筒内部に、筆記具本体が少なくとも前後動可能に配置され、かつ、少なくともカム部が形成された出没式筆記具であって、筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、カム部には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、カム部の内壁面には、カム突起が形成され、筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方とカム突起の側壁後方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方とカム突起の側壁前方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、少なくとも作動突起の側壁後方がカム突起に接触可能かつ係止不可能である、出没式筆記具を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の出没式筆記具は、カム部の貫通孔前方から筆記具本体を挿通させる際に、作動突起の側壁後方がカム突起に意図せず係止しないため周方向の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ボールペン1の縦断面図
図2】ノック体9の外観斜視図
図3】後軸4の外観斜視図
図4】回転子7の外観図
図5】後軸4の縦断面図
図6】作動突起7aの側壁後方がカム突起4dの側壁前方と接触する場合を示した図
図7図6の状態から回転子7を後退させた図
図8図7の状態から回転子7を後退させた図
図9】作動突起7aの側壁後方がカム突起4dの側壁前方とは接触しない場合を示した図
図10図4のA部分拡大図
図11図8の状態から回転子7を後退させた図
図12図11の状態から回転子7を後退させた図
図13図12の状態から回転子7を前進させた図
図14図13の状態から回転子7を前進させた図
図15】後軸13の外観斜視図
図16】後軸13の縦断面図
図17】後方案内面16acと後方作動突起案内面13dbとが接触する場合を示した図
図18図17の状態から回転子16を後退させた図
図19図18の状態から回転子16を後退させた図
図20図19の状態から回転子16を後退させた図
図21】前方案内面16abと没入案内面13daとが接触する場合を示した図
図22図20の状態から回転子16を後退させた図
図23図22の状態から回転子16を後退させた図
図24図23の状態から回転子16を前進させた図
図25図24の状態から回転子16を前進させた図
図26】作動突起23aの側壁後方がカム突起20cの側壁前方と接触する場合を示した図
図27図26の状態から回転子23を後退させた図
図28図27の状態から回転子23を後退させた図
図29】作動突起23aの側壁後方がカム突起20cの側壁前方とは接触しない場合を示した図
図30】回転子23外観の図10相当図
図31図28の状態から回転子23を後退させた図
図32図31の状態から回転子23を後退させた図
図33図32の状態から回転子23を前進させた図
図34図33の状態から回転子23を前進させた図
図35】ボールペン24の縦断面図
図36】回転子30の外観図
図37】作動突起後方端部30cの側壁後方がカム突起27dの側壁前方と接触する場合を示した図
図38図37の状態から回転子30を後退させた図
図39図38の状態から回転子30を後退させた図
図40】作動突起後方端部30cの側壁後方がカム突起27dの側壁前方とは接触しない場合を示した図
図41図39の状態から回転子30を後退させた図
図42図41の状態から回転子30を後退させた図
図43図42の状態から回転子30を前進させた図
図44図43の状態から回転子30を前進させた図
図45】筆記具本体28が軸筒25内部において最も後退した状態を示した図
図46図45の状態から筆記具本体28を前進させた図
図47図46の状態から筆記具本体28を前進させた図
図48図47の状態から筆記具本体28を後退させた図
図49図48の状態から筆記具本体28を後退させた図
図50図49の状態から筆記具本体28を前進させた図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ボールペン、シャープペンシル、筆ペン、フェルトペン、マーキングペンなどの筆記具であって、ボールペンチップなどの筆記部を軸筒前端開口部から出没可能な出没式筆記具として実施することができる。以降、図面を適宜参照しつつ、本発明に係る各実施形態について説明する。本発明の技術的範囲は各実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0011】
図1(a)(b)は、は本発明の第1の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン1の縦断面図である。図1(b)は、図1(a)の状態からボールペン1を90°軸回転させた角度の縦断面図である。ボールペン1は、中空筒状の軸筒2内部に、筆記具本体5を構成するボールペンリフィル6及び回転子7や、ノック体9の一部等が配置され構成されている。
【0012】
軸筒2は、前軸3と後軸4とが着脱自在に結合して構成されている。前軸3の後方が後軸4の前端開口部から挿入される。前軸3の後端部付近の外壁面と後軸4の前端部付近の内壁面とには、それぞれ螺子部が設けられており、前軸3と後軸4とが螺子螺合により結合可能となっている。
【0013】
前軸3及び後軸4は、軸方向に貫通した円筒状の部材である。前軸3はポリプロピレン樹脂製の成形品であり、後軸4はポリカーボネート樹脂製の成形品である。
【0014】
筆記具本体5は、ボールペンリフィル6と回転子7とで構成されている。ボールペンリフィル6は、筆記部としてのボールペンチップ6aと、内部にボールペンインキが収納されるパイプ6bとで構成されている。回転子7はポリアセタール樹脂製の成形品であり、有底筒状の部材である。ボールペンリフィル6の後方が回転子7の前端開口部から挿入されるが固定はされておらず、ボールペンリフィル6と回転子7とが互いに逆方向に軸回転可能な程度に遊嵌されている。
【0015】
パイプ6bの外壁面には、コイルスプリング8の後端と接触する2本のコイルスプリング後端用突起6baが周方向等間隔に設けられている。また、前軸3の内壁面には、コイルスプリング8の前端と接触する6本のコイルスプリング前端用リブ3bが、周方向等間隔に設けられている。コイルスプリング8は自然状態から縮んだ状態でコイルスプリング後端用突起6baとコイルスプリング前端用リブ3bとにより挟持され、筆記具本体5を常時後方に付勢している。
【0016】
図2はノック体9の外観斜視図、図3(a)(b)は後軸4の外観斜視図である。図3(b)は後軸4の外壁を透明にして、カム部4bの内壁面に設けられたカム突起4dの一部を点線で図示している。ノック体9はポリアセタール樹脂製の成形品であり、有底筒状の部材である。ノック体9の外壁面にはヒンジ構造を有する摺動突起9aが形成されている。摺動突起9aはノック体9の外壁面において周方向に対向する位置に2か所設けられている。摺動突起9aのノック体9外壁面から径方向外側への高さは、ノック体9前方側から後方側向かって次第に高くなっている。ノック体9は、ノック体9の前方から後軸4の後端開口部を介して軸筒2内部へ挿入される。その際、摺動突起9aは後軸4の後端面及び内壁面と接触することで、一時的に径方向内側へ弾性変形する。後軸4には内外に貫通し軸方向に延びる孔である摺動孔4aが形成されている。摺動孔4aは周方向に対向する位置であって、摺動突起9aが挿入される位置に2か所設けられている。ノック体9の後軸4への挿入が進み、一時的に径方向内側へ弾性変形した摺動突起9aが摺動孔4aに差し掛かると、弾性変形が解除され、摺動突起9aは摺動孔4aに挿入される。ノック体9の後方は後軸4の後端開口部を介して軸筒2外部へ露出して配置される。筆記具本体5は軸筒2内部を前後動可能に配置されており、使用者がノック体9の後端部を押圧することで、筆記具本体5は軸筒2内部を前進する。ノック体9の前後動に伴い、摺動突起9aが摺動孔4a内を前後動するため、ノック体9は軸筒2に対して前後動のみ可能であり、軸回転は不可能である。回転子7の後方がノック体9の前端開口部から挿入されるが固定はされておらず、回転子7はノック体9の前後動に伴い軸回転可能である。また、回転子7が下方に位置する状態でノック体9のみを持っても、回転子7がノック体9から離脱及び落下しない程度に、回転子7はノック体9に遊嵌されている。
【0017】
前軸3の内壁面前方には周方向に連なった環状の突起である段部3aが設けられている。パイプ6bの前端面が段部3aに接触することで、ボールペン1の出没機構における筆記具本体5の前進が止まる。また、摺動突起9aの後端面が、摺動孔4aを形成する縁部の後端面に接触することで、ボールペン1の出没機構における筆記具本体5の後退が止まる。
【0018】
図4(a)(b)は、回転子7の外観図である。図4(b)は、図4(a)の状態から回転子7を90°軸回転させた角度の外観図である。回転子7の外壁面には、作動突起7aと係止突起7bとが設けられている。作動突起7aは回転子7の外壁面において周方向に対向する位置に2か所、係止突起7bは回転子7の外壁面において周方向等間隔に4か所、設けられている。作動突起7a及び係止突起7bはパイプ6bの外壁に設けてもよく、係止突起7bのみをパイプ6bに設けてもよい。回転子7の外壁面前方には環状突起7cが設けられている。環状突起7cの後方は係止突起7bの前方と連なっている。環状突起7cは径方向外側に向かって鍔状に突出している。
【0019】
後軸4には、カム部4bが形成されている。カム部4bは、軸方向に貫通し回転子7が挿通される貫通孔4cと、内壁面に形成されたカム突起4dとで構成されている。本実施形態において貫通孔4cは後軸4の軸方向に貫通した孔と連通しており、また、カム突起4dの内壁面とは後軸4の内壁面でもある。カム部4bを後軸4と一体とせず、貫通孔4c及びカム突起4dが形成された筒状の部材を後軸4に配置することで軸筒内部にカム部4bを形成することもできる。カム突起4dは係止突起7bの係止先であり、係止突起7bの側壁後方は、カム突起4dの側壁前方に係止可能である。カム突起4dは、カム部4bの内壁面において周方向等間隔に4か所設けられている。ボールペン1の出没機構において、筆記具本体5の前進に伴い、作動突起7aの側壁前方と、カム突起4dの側壁後方とが接触し、筆記具本体5を構成する回転子7は貫通孔4c内で軸回転可能である。また、筆記具本体5の後退に伴い、係止突起7bの側壁後方と、カム突起4dの側壁前方とが接触し、回転子7は貫通孔4c内で軸回転可能である。カム部4bは後軸4と一体に形成されており、後軸4は前軸3と螺子螺合により結合しているため、カム部4bは、筆記具本体5の前後動に伴い前後動も軸回転も不可能である。なお、突起の側壁前方及び側壁後方とは、その突起の側壁の前端面及び後端面のみではなく、その突起を軸方向前半と後半とで分けた範囲の側壁も含まれる。
【0020】
図5は後軸4の縦断面図である。カム突起4dは、カム突起基部4eと、カム突起基部4eの側壁から前方に延び、カム突起基部4eよりカム部4b内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起前方端部4fと、で少なくとも構成されている。カム突起基部4eの側壁前方には突出係止面4eaが形成されており、カム突起前方端部4fの側壁前方には没入案内面4faが形成されている。
【0021】
ボールペン1を組み立てる工程における、カム部4bの貫通孔4cの前方から、筆記具本体5を構成する回転子7を挿通させる様子について説明する。具体的には、後軸4の前端開口部から回転子7を挿入し、後軸4の軸方向中腹に位置するカム部4bの貫通孔4cの前方から回転子7を挿通させる工程を想定している。図6から図9は、作動突起7a及び係止突起7bと、カム突起4dとの接触関係を視認しやすくするために、回転子7とカム部4bとを周方向に展開し、また、本来径方向に向き合う関係である作動突起7a及び係止突起7bと、カム突起4dとを同一平面上で図示している。具体的には、作動突起7a及び係止突起7bが図面奥側から図面手前側に向かって突出する視点で図示し、カム突起4dが図面手前側から図面奥側に向かって突出する視点で図示している。カム突起4dは、カム突起4dの根元であるカム部4bの内壁面から切り取って図示し、断面を表すハッチングは省略している。カム部4bの回動方向である図面右側に向かう方向を回動方向前方、回動方向前方と逆方向であり図面左側に向かう方向を回動方向後方として説明する。例えば、突出係止面4eaと没入案内面4faとは、いずれも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面である。後方作動突起案内面4ebはカム突起基部4eの側壁前方の一部であって、突出係止面4eaより回動方向後方に位置し、カム突起前方端部4fより径方向内側の範囲の面である。後方作動突起案内面4ebも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面である。また、回転子7の前後動に伴いカム部4bが回動方向のいずれかに回動する様子を説明しているが、具体的には、回転子7の前後動に伴いカム部4bを介して周方向への力を受けた後軸4自体が回動している。本発明における筆記具本体5及びカム部4bの組み立て方法においては、一方又は両方を回動可能な状態で組み立てる方法も適宜選択可能である。また、回動方向は本実施形態と逆方向に構成することもできる。
【0022】
カム部4bの貫通孔4c前方から回転子7の後方を挿入していくと、カム部4bと回転子7との周方向の位置関係によっては、作動突起7aとカム突起4dとが接触する場合と、作動突起7aとカム突起4dとが接触せず、そのまま周方向に隣り合うカム突起4d間に入っていく場合とがある。
【0023】
図6は、作動突起7aの側壁後方がカム突起4dの側壁前方と接触する場合を示した図である。作動突起7aの側壁後方には、回動方向前方の前方案内面7abと、回動方向後方の後方案内面7acとの2つの平面が形成されている。前方案内面7abは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜しており、突出係止面4ea及び後方作動突起案内面4ebと互いに向かい合う平面となっている。
【0024】
図7は、図6の状態から回転子7を後退させた図である。作動突起7aの側壁後方に形成されている前方案内面7abは、カム突起基部4eの側壁前方の一部である突出係止面4eaから後方作動突起案内面4ebに亘るいずれかの面と接触する。作動突起7aの回転子7外壁面からの径方向外側への高さは、回転子7が貫通孔4c内に挿入された際に、作動突起7aの側壁後方が、カム突起基部4eの側壁前方に接触可能な高さであり、カム突起前方端部4fの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方作動突起案内面4ebも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面であるため、作動突起7aの側壁後方は、カム突起基部4e及びカム突起前方端部4fに係止不可能である。前方案内面7abが、突出係止面4eaから後方作動突起案内面4ebに亘るいずれかの面と接触すると、カム部4bは、回転子7の後退に伴い、突出係止面4ea及び後方作動突起案内面4ebを介して前方案内面7abから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0025】
図8は、図7の状態から回転子7を後退させた図である。図7の状態から回転子7を後退させると、前方案内面7abと、突出係止面4eaから後方作動突起案内面4ebに亘るいずれかの面との接触が解除される。更に回転子7を後退させると、作動突起7aは、当該カム突起4dと、当該カム突起4dより回動方向後方に位置するカム突起4dとの間に案内される。
【0026】
図9は、図6とは異なり、作動突起7aの側壁後方がカム突起4dの側壁前方とは接触しない場合を示した図である。カム突起基部4eのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁前方には、前方作動突起案内面4ecが形成されている。後方案内面7ac及び前方作動突起案内面4ecは、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。
【0027】
後方案内面7acと前方作動突起案内面4ecとが接触すると、カム部4bは、前方作動突起案内面4ecを介して後方案内面7acから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。更に回転子7を後退させると、後方案内面7acと前方作動突起案内面4ecとの接触が解除され、図8の状態となる。つまり、作動突起7aは、当該カム突起4dと、当該カム突起4dより回動方向前方に位置するカム突起4dとの間を通過する。なお作動突起7aの側壁後方がカム突起4dと一切接触せず、作動突起7aが周方向に隣り合うカム突起4d間を通過する場合もある。
【0028】
以上のように、本実施形態においては、作動突起7aの側壁後方がカム突起基部4e及びカム突起前方端部4fに係止不可能なため、カム部4bの貫通孔4c前方から回転子7を挿通させる際に、カム部4b及び回転子7の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0029】
図10は、図4のA部分拡大図である。本実施形態では、係止突起7bの側壁後方の少なくとも一部が、作動突起7aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域Bの外側に位置する。具体的には、係止突起7bの側壁後方に形成されている係止面7baのうち回動方向前方の一部が、領域Bの外側に位置している。係止面7baは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。
【0030】
図11は、図8の状態から回転子7を後退させた図である。カム部4bの貫通孔4c前方から回転子7を挿入し作動突起7aの側壁後方がカム突起基部4e及びカム突起前方端部4fの各側壁前方と係止せず挿通が進んだ際に、係止面7baのうち回動方向前方の一部が、領域Bの外側に位置し、作動突起7aの最大周方向幅がカム突起4d間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起7aと係止突起7bとが含まれる最小周方向幅がカム突起4d間の最小周方向幅より大きくなるため、没入案内面4faと係止面7baとが接触する。カム部4bは、没入案内面4faを介して係止面7baから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0031】
図12は、図11の状態から回転子7を後退させた図である。図11の状態から回転子7を後退させると、係止面7baと没入案内面4faとの接触が解除される。更に回転子7を後退させると、係止突起7bは、当該カム突起4dと、当該カム突起4dより回動方向後方に位置するカム突起4dとの間に案内され、貫通孔4cへの回転子7の挿通が完了する。なお、環状突起7cの側壁後方とカム突起4dの側壁前方とが接触するため、これ以上回転子7を後退させることは不可能である。
【0032】
図13は、図12の状態から回転子7を前進させた図である。ボールペン1を組み立てる工程において、カム部4bの貫通孔4cの前方から回転子7を挿通させる際に、不意に回転子7が前進してしまう状態を想定している。カム突起基部4eの側壁後方には、回動方向前方の前方作動面4edと、回動方向後方の後方作動面4eeとの2つの平面が形成されている。また、作動突起7aの側壁前方には、作動面7aaが形成されている。前方作動面4ed及び後方作動面4eeと、作動面7aaとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向前方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。図12の状態から回転子7を前進させると、作動突起7aの回転子7外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起7aの側壁前方が、カム突起基部4eの側壁後方に接触可能な高さであるため、作動面7aaと前方作動面4edとが接触する。カム部4bは、前方作動面4edを介して作動面7aaから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0033】
図14図13の状態から回転子7を前進させた図である。作動突起7aの回転子7外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起7aの側壁前方が、カム突起基部4eの側壁後方に接触可能な高さである。そのため、作動突起7aの側壁前方は、カム突起4dの側壁後方である、軸方向後方に後方作動面4eeが形成されているカム突起基部4eの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。
【0034】
以上より、カム部4bの貫通孔4c前方から回転子7を挿入し作動突起7aの側壁後方がカム突起基部4e及びカム突起前方端部4fの各側壁前方と係止せず挿通が進み、カム突起前方端部4fの側壁前方と係止面7baとが接触した後、回転子7が貫通孔4c前方へ移動しても、カム部4bと回転子7とが、作動突起7aの側壁前方とカム突起4dの側壁後方が接触し作動突起7aの側壁前方がカム突起4dの側壁後方に係止可能となる周方向位置に変位するため、回転子7が貫通孔4cから抜けないようカム部4b及び回転子7の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0035】
本発明の第2の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン10について、第1の実施形態との主な相違点である回転子16及びカム部13aを中心に説明する。ボールペン10は、中空筒状の軸筒11内部に筆記具本体14が配置されている。軸筒11も前軸12と後軸13とが結合して構成されており、カム部13aは後軸13内部に形成されている。筆記具本体14は、ボールペンリフィル15と回転子16とで構成されている。筆記具本体14は軸筒11内部を前後動可能に配置されている。回転子16の外壁面には、作動突起16aと係止突起16bとが設けられている。カム部13aの内壁面にはカム突起13cが設けられている。
【0036】
図15(a)(b)は後軸13の外観斜視図、図16は後軸13の縦断面図である。図15(b)は後軸13の外壁を透明にして、内壁面に設けられたカム突起13cの一部を点線で図示している。カム突起13cは、カム突起基部13dと、カム突起基部13dの側壁から前方に延び、カム突起基部13dよりカム部13a内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起前方端部13eと、で少なくとも構成されている。第1の実施形態では、カム突起前方端部4fが、カム突起基部4eの側壁前方のうち回動方向後方に形成されているのに対して、第2の実施形態では、カム突起前方端部13eが、カム突起基部13dの側壁前方のうち回動方向前方に形成されている。カム突起前方端部13eの側壁前方には突出係止面13eaが形成されており、カム突起基部13dの側壁前方には没入案内面13da及び後方作動突起案内面13dbが形成されている。
【0037】
ボールペン10を組み立てる工程における、カム部13aの貫通孔13bの前方から回転子16を挿通させる様子について説明する。図17から図25については、図6から図9及び図11から図14と同様の構図で図示している。
【0038】
図17は、作動突起16aの側壁後方がカム突起13cの側壁前方と接触する場合のうち、作動突起16aの側壁後方に形成されている後方案内面16acと、カム突起基部13dの側壁前方に形成されている後方作動突起案内面13dbとが接触する場合を示した図である。作動突起16aの側壁後方には、回動方向前方の前方案内面16abと、回動方向後方の後方案内面16acとの2つの平面が形成されている。前方案内面16abは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜しており、没入案内面13daと互いに向かい合う平面となっている。後方案内面16acは、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜しており、後方作動突起案内面13dbと互いに向かい合う平面となっている。
【0039】
図18は、図17の状態から回転子16を後退させた図である。作動突起16aの側壁後方に形成されている後方案内面16acは、カム突起基部13dの側壁前方に形成されている後方作動突起案内面13dbに接触する。作動突起16aの回転子16外壁面からの径方向外側への高さは、回転子16が貫通孔13b内に挿入された際に、作動突起16aの側壁後方が、カム突起基部13dの側壁前方に接触可能な高さであり、カム突起前方端部13eの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方作動突起案内面13dbも、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面であるため、作動突起16aの側壁後方は、カム突起基部13d及びカム突起前方端部13eに係止不可能である。後方案内面16acが、後方作動突起案内面13dbと接触すると、カム部13aは、回転子16の後退に伴い、後方作動突起案内面13dbを介して後方案内面16acから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。
【0040】
図19は、図18の状態から回転子16を後退させた図である。図18の状態から回転子16を後退させると、後方案内面16acと後方作動突起案内面13dbとの接触が解除される。更に回転子16を後退させると、作動突起16aは、当該カム突起13cと、当該カム突起13cより回動方向前方に位置するカム突起13cとの間に案内される。後方案内面16acは、前方作動突起案内面13dcと接触する。前方作動突起案内面13dcは、カム突起基部13dのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁前方に形成されている。前方作動突起案内面13dcは、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。後方案内面16acと前方作動突起案内面13dcとが接触すると、カム部13aは、前方作動突起案内面13dcを介して後方案内面16acから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。
【0041】
図20は、図19の状態から回転子16を後退させた図である。図19の状態から回転子16を後退させると、後方案内面16acと前方作動突起案内面13dcとの接触が解除される。そして、作動突起16aは、当該カム突起13cと、当該カム突起13cより回動方向前方に位置するカム突起13cとの間を通過する。なお、作動突起16aの側壁後方がカム突起13cの側壁前方とは接触しない場合も、後方案内面16acと前方作動突起案内面13dcとが接触し図19と同様の状態となるか、作動突起16aの側壁後方がカム突起13cと一切接触せず、作動突起16aが周方向に隣り合うカム突起13c間を通過する。
【0042】
図21は、図17とは異なり、作動突起16aの側壁後方がカム突起13cの側壁前方と接触する場合のうち、作動突起16aの側壁後方に形成されている前方案内面16abと、カム突起基部13dの側壁前方に形成されている没入案内面13daとが接触する場合を示した図である。没入案内面13daも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面であるため、作動突起16aの側壁後方は、カム突起基部13dに係止不可能である。前方案内面16abが、没入案内面13daと接触すると、カム部13aは、回転子16の後退に伴い、没入案内面13daを介して前方案内面16abから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0043】
図21の状態から回転子16を後退させると、前方案内面16abと没入案内面13daとの接触が解除される。更に回転子16を後退させると、作動突起16aは、当該カム突起13cと、当該カム突起13cより回動方向後方に位置するカム突起13cとの間に案内され、図20と同様の状態となる。
【0044】
以上のように、本実施形態においても、作動突起16aの側壁後方がカム突起基部13d及びカム突起前方端部13eに係止不可能なため、カム部13aの貫通孔13b前方から回転子16を挿通させる際に、カム部13a及び回転子16の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0045】
本実施形態においても、係止突起16bの側壁後方の少なくとも一部が、作動突起16aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置する。具体的には、係止突起16bの側壁後方に形成されている係止面16baのうち回動方向前方の一部が、作動突起16aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置している。係止面16baは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。
【0046】
図22は、図20の状態から回転子16を後退させた図である。カム部13aの貫通孔13b前方から回転子16を挿入し作動突起16aの側壁後方がカム突起基部13d及びカム突起前方端部13eの各側壁前方と係止せず挿通が進んだ際に、係止面16baのうち回動方向前方の一部が、作動突起16aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、作動突起16aの最大周方向幅がカム突起13c間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起16aと係止突起16bとが含まれる最小周方向幅がカム突起13c間の最小周方向幅より大きくなるため、没入案内面13daと係止面16baとが接触する。カム部13aは、没入案内面13daを介して係止面16baから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0047】
図23は、図22の状態から回転子16を後退させた図である。図22の状態から回転子16を後退させると、係止面16baと没入案内面13daとの接触が解除される。更に回転子16を後退させると、係止突起16bは、当該カム突起13cと、当該カム突起13cより回動方向後方に位置するカム突起13cとの間に案内され、貫通孔13bへの回転子16の挿通が完了する。なお、環状突起16cの側壁後方とカム突起13cの側壁前方とが接触するため、これ以上回転子16を後退させることは不可能である。
【0048】
図24は、図23の状態から回転子16を前進させた図である。ボールペン10を組み立てる工程において、カム部13aの貫通孔13bの前方から回転子16を挿通させる際に、不意に回転子16が前進してしまう状態を想定している。カム突起基部13dの側壁後方には、回動方向前方の前方作動面13ddと、回動方向後方の後方作動面13deとの2つの平面が形成されている。また、作動突起16aの側壁前方には、作動面16aaが形成されている。前方作動面13dd及び後方作動面13deと、作動面16aaとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向前方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。図23の状態から回転子16を前進させると、作動突起16aの回転子16外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起16aの側壁前方が、カム突起基部13dの側壁後方に接触可能な高さであるため、作動面16aaと前方作動面13ddとが接触する。カム部13aは、前方作動面13ddを介して作動面16aaから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0049】
図25は、図24の状態から回転子16を前進させた図である。作動突起16aの回転子16外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起16aの側壁前方が、カム突起基部13dの側壁後方に接触可能な高さである。そのため、作動突起16aの側壁前方は、カム突起13cの側壁後方であって、軸方向後方に後方作動面13deが形成されているカム突起基部13dの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。
【0050】
以上より、カム部13aの貫通孔13b前方から回転子16を挿入し作動突起16aの側壁後方がカム突起基部13d及びカム突起前方端部13eの各側壁前方と係止せず挿通が進み、カム突起基部13dの側壁前方と係止面16baとが接触した後、回転子16が貫通孔13b前方へ移動しても、カム部13aと回転子16とが、作動突起16aの側壁前方とカム突起13cの側壁後方が接触し作動突起16aの側壁前方がカム突起13cの側壁後方に係止可能となる周方向位置に変位するため、回転子16が貫通孔13bから抜けないようカム部13a及び回転子16の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0051】
本発明の第3の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン17について、第1の実施形態との主な相違点である回転子23及びカム部20aを中心に説明する。ボールペン17は、中空筒状の軸筒18内部に筆記具本体21が配置され構成されている。軸筒18も前軸19と後軸20とが結合して構成されており、カム部20aは後軸20内部に形成されている。筆記具本体21は、ボールペンリフィル22と回転子23とで構成されている。筆記具本体21は軸筒18内部を前後動可能に配置されている。回転子23の外壁面には、作動突起23aと係止突起23bとが設けられている。カム部20aの内壁面にはカム突起20cが設けられている。第1の実施形態と同様に、カム突起前方端部20eはカム突起基部20dの側壁前方のうち回動方向後方に形成されている。カム突起前方端部20eの側壁前方には没入案内面20eaが形成されており、カム突起基部20dの側壁前方には突出係止面20da及び後方作動突起案内面20dbが形成されている。
【0052】
ボールペン17を組み立てる工程における、カム部20aの貫通孔20bの前方から回転子23を挿通させる様子について説明する。図26から図29及び図31から図34については、図6から図9及び図11から図14と同様の構図で図示している。
【0053】
図26は、作動突起23aの側壁後方がカム突起20cの側壁前方と接触する場合を示した図である。作動突起23aの側壁後方には、回動方向前方の前方案内面23abと、回動方向後方の後方案内面23acとの2つの平面が形成されている。前方案内面23abは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜しており、突出係止面20da及び後方作動突起案内面20dbと互いに向かい合う平面となっている。
【0054】
図27は、図26の状態から回転子23を後退させた図である。作動突起23aの側壁後方に形成されている前方案内面23abは、カム突起基部20dの側壁前方の一部である突出係止面20daから後方作動突起案内面20dbに亘るいずれかの面と接触する。作動突起23aの回転子23外壁面からの径方向外側への高さは、回転子23が貫通孔20b内に挿入された際に、作動突起23aの側壁後方が、カム突起基部20dの側壁前方に接触可能な高さであり、カム突起前方端部20eの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方作動突起案内面20dbも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面であるため、作動突起23aの側壁後方は、カム突起基部20d及びカム突起前方端部20eに係止不可能である。前方案内面23abが、突出係止面20daから後方作動突起案内面20dbに亘るいずれかの面と接触すると、カム部20aは、回転子23の後退に伴い、突出係止面20da及び後方作動突起案内面20dbを介して前方案内面23abから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0055】
図28は、図27の状態から回転子23を後退させた図である。図27の状態から回転子23を後退させると、前方案内面23abと、突出係止面20daから後方作動突起案内面20dbに亘るいずれかの面との接触が解除される。更に回転子23を後退させると、作動突起23aは、当該カム突起20cと、当該カム突起20cより回動方向後方に位置するカム突起20cとの間に案内される。
【0056】
図29は、図26とは異なり、作動突起23aの側壁後方がカム突起20cの側壁前方とは接触しない場合を示した図である。カム突起基部20dのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁前方には、前方作動突起案内面20dcが形成されている。後方案内面23ac及び前方作動突起案内面20dcは、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。
【0057】
後方案内面23acと前方作動突起案内面20dcとが接触すると、カム部20aは、前方作動突起案内面20dcを介して後方案内面23acから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。更に回転子23を後退させると、後方案内面23acと前方作動突起案内面20dcとの接触が解除され、図28の状態となる。つまり、作動突起23aは、当該カム突起20cと、当該カム突起20cより回動方向前方に位置するカム突起20cとの間を通過する。なお作動突起23aの側壁後方がカム突起20cと一切接触せず、作動突起23aが周方向に隣り合うカム突起20c間を通過する場合もある。
【0058】
以上のように、本実施形態においても、作動突起23aの側壁後方がカム突起基部20d及びカム突起前方端部20eに係止不可能なため、カム部20aの貫通孔20b前方から回転子23を挿通させる際に、カム部20a及び回転子23の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0059】
図30は、回転子23外観の図10相当図である。図30(a)の通り、本実施形態においても、係止突起23bの側壁後方の少なくとも一部が、作動突起23aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域Cの外側に位置する。具体的には、係止突起23bの側壁後方に形成されている係止面23baのうち回動方向前方の一部が、作動突起23aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域Cの外側に位置している。係止面23baは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。
【0060】
図31は、図28の状態から回転子23を後退させた図である。カム部20aの貫通孔20b前方から回転子23を挿入し作動突起23aの側壁後方がカム突起基部20d及びカム突起前方端部20eの各側壁前方と係止せず挿通が進んだ際に、係止面23baのうち回動方向前方の一部が、作動突起23aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域Cの外側に位置し、作動突起23aの最大周方向幅がカム突起20c間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起23aと係止突起23bとが含まれる最小周方向幅がカム突起20c間の最小周方向幅より大きくなるため、没入案内面20eaと係止面23baとが接触する。カム部20aは、没入案内面20eaを介して係止面23baから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0061】
図32は、図31の状態から回転子23を後退させた図である。図31の状態から回転子23を後退させると、係止面23baと没入案内面20eaとの接触が解除される。更に回転子23を後退させると、係止突起23bは、当該カム突起20cと、当該カム突起20cより回動方向後方に位置するカム突起20cとの間に案内され、貫通孔20bへの回転子23の挿通が完了する。なお、環状突起23cの側壁後方とカム突起20cの側壁前方とが接触するため、これ以上回転子23を後退させることは不可能である。
【0062】
図33は、図32の状態から回転子23を前進させた図である。ボールペン17を組み立てる工程において、カム部20aの貫通孔20bの前方から回転子23を挿通させる際に、不意に回転子23が前進してしまう状態を想定している。カム突起基部20dの側壁後方には、回動方向前方の前方作動面20ddと、回動方向後方の後方作動面20deとの2つの平面が形成されている。また、作動突起23aの側壁前方には、作動面23aaが形成されている。前方作動面20dd及び後方作動面20deと、作動面23aaとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向前方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。図32の状態から回転子23を前進させると、作動突起23aの回転子23外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起23aの側壁前方が、カム突起基部20dの側壁後方に接触可能な高さであるため、作動面23aaと前方作動面20ddとが接触する。カム部20aは、前方作動面20ddを介して作動面23aaから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0063】
図34は、図33の状態から回転子23を前進させた図である。作動突起23aの回転子23外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起23aの側壁前方が、カム突起基部20dの側壁後方に接触可能な高さである。そのため、作動突起23aの側壁前方は、カム突起20cの側壁後方である、軸方向後方に後方作動面20deが形成されているカム突起基部20dの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。
【0064】
以上より、カム部20aの貫通孔20b前方から回転子23を挿入し作動突起23aの側壁後方がカム突起基部20d及びカム突起前方端部20eの各側壁前方と係止せず挿通が進み、カム突起前方端部20eの側壁前方と係止面23baとが接触した後、回転子23が貫通孔20b前方へ移動しても、カム部20aと回転子23とが、作動突起23aの側壁前方とカム突起20cの側壁後方が接触し作動突起23aの側壁前方がカム突起20cの側壁後方に係止可能となる周方向位置に変位するため、回転子23が貫通孔20bから抜けないようカム部20a及び回転子23の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0065】
図30(b)の通り、本実施形態においては、作動突起23aの側壁前方の少なくとも一部が、係止突起23bの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域Dの外側に位置する。具体的には、作動突起23aの側壁前方に形成されている作動面23aaのうち回動方向後方の一部が、係止突起23bの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域Dの外側に位置している。そのため、カム部20aの貫通孔20b前方から回転子23を挿入し作動突起23aの側壁後方がカム突起基部20d及びカム突起前方端部20eの各側壁前方と係止せず挿通が進む際に、カム突起基部20dの側壁前方又はカム突起前方端部20eの側壁前方と、係止突起23bの側壁後方とが接触しやすくなることでカム部20aの回動可能な範囲をより確保できる。具体的には、図31に示す、没入案内面20eaと係止面23baとが接触しやすくなることで、カム部20aの、没入案内面20eaを介し係止面23baから周方向の力を受けた回動方向前方への回動可能な範囲をより広く確保できる。よって、図33に示すように、回転子23がカム部20a前方へ移動しても作動突起23aの側壁前方とカム突起20cの側壁後方が接触可能な周方向の幅をより多く設けることができるため、回転子23が貫通孔20bから抜けないようカム部20a及び回転子23の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0066】
本発明の第4の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン24について、第3の実施形態との主な相違点である回転子30及びカム部27bを中心に説明する。図35(a)(b)はボールペン24の縦断面図である。図1同様、図35(b)は、図35(a)の状態からボールペン1を90°軸回転させた角度の縦断面図である。ボールペン24は、中空筒状の軸筒25内部に、筆記具本体28を構成するボールペンリフィル29及び回転子30や、ノック体32の一部等が配置され構成されている。軸筒25は、前軸26と後軸27とが螺子螺合により結合して構成されている。筆記具本体28は軸筒25内部を前後動可能に配置されている。
【0067】
回転子30の外壁面には、作動突起30aと係止突起30dとが設けられている。回転子30の後方は、有底筒状の部材であるノック体32の前端開口部に挿入されている。ノック体32の外壁面にはヒンジ構造を有する摺動突起32aが形成されている。摺動突起32aはノック体32の外壁面において周方向に対向する位置に2か所設けられている。後軸27には内外に貫通し軸方向に延びる孔である摺動孔27aが形成されている。摺動孔27aは周方向に対向する位置であって、摺動突起32aが挿入される位置に2か所設けられている。摺動突起32aは摺動孔27aに挿入される。ノック体32の後方は後軸27の後端開口部を介して軸筒25外部へ露出して配置される。使用者がノック体32の後端部を押圧することで、筆記具本体28は軸筒25内部を前進する。ノック体32の前後動に伴い、摺動突起32aが摺動孔4a内を前後動するため、ノック体32は軸筒25に対して前後動のみ可能であり、軸回転は不可能である。回転子30はノック体32に固定はされておらず、ノック体32の前後動に伴い軸回転可能である。また、回転子30が下方に位置する状態でノック体32のみを持っても、回転子30がノック体32から離脱及び落下しない程度に、回転子30はノック体32に遊嵌されている。
【0068】
前軸26の内壁面前方には周方向に連なった環状の突起である段部26aが設けられている。パイプ29bの前端面が段部26aに接触することで、筆記具本体28の前進が止まる。パイプ29bの外壁面には、コイルスプリング31の後端と接触する2本のコイルスプリング後端用突起29baが周方向等間隔に設けられている。前軸26の内壁面には、コイルスプリング31の前端と接触する6本のコイルスプリング前端用リブ26bが、周方向等間隔に設けられている。コイルスプリング31は自然状態から縮んだ状態でコイルスプリング後端用突起29baとコイルスプリング前端用リブ26bとにより挟持され、筆記具本体28を常時後方に付勢している。摺動突起32aの後端面が、摺動孔27aを形成する縁部の後端面に接触することで、ボールペン24の出没機構における筆記具本体28の後退が止まる。
【0069】
後軸27の内部にはカム部27bが形成されており、カム部27bの内壁面にはカム突起27dが形成されている。第1の実施形態及び第3の実施形態と同様に、カム突起前方端部27fはカム突起基部27eの側壁前方のうち回動方向後方に形成されている。カム突起前方端部27fの側壁前方には没入案内面27faが形成されており、カム突起基部27eの側壁前方には突出係止面27ea及び後方作動突起案内面27ebが形成されている。
【0070】
図36(a)(b)は、回転子30の外観図である。図4同様、図36(b)は、図36(a)の状態から回転子30を90°軸回転させた角度の外観図である。本実施形態においては、作動突起30aは、作動突起基部30bと、作動突起基部30bの側壁から後方に延び、作動突起基部30bより回転子30の外壁面からの径方向外側への高さが低い作動突起後方端部30cと、で少なくとも構成されている。作動突起30aの側壁後方と側壁前方とで回転子30外壁面からの径方向外側への高さが異なるため、作動突起30aの側壁前方とカム突起27dの側壁後方との接触によるカム部27bの回動に必要な作動突起基部30bの回転子30外壁面からの径方向外側への高さを確保でき、カム部27bを確実に回動させることができる。
【0071】
ボールペン24を組み立てる工程における、カム部27bの貫通孔27cの前方から回転子30を挿通させる様子について説明する。図37から図44についても、図6から図9及び図11から図14と同様の構図で図示している。
【0072】
図37は、作動突起後方端部30cの側壁後方がカム突起27dの側壁前方と接触する場合を示した図である。作動突起後方端部30cの側壁後方には、回動方向前方の前方案内面30caと、回動方向後方の後方案内面30cbとの2つの平面が形成されている。前方案内面30caは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜しており、突出係止面27ea及び後方作動突起案内面27ebと互いに向かい合う平面となっている。
【0073】
図38は、図37の状態から回転子30を後退させた図である。作動突起後方端部30cの側壁後方に形成されている前方案内面30caは、カム突起基部27eの側壁前方の一部である突出係止面27eaから後方作動突起案内面27ebに亘るいずれかの面と接触する。作動突起後方端部30cの回転子30外壁面からの径方向外側への高さは、回転子30が貫通孔27c内に挿入された際に、作動突起後方端部30cの側壁後方が、カム突起基部27eの側壁前方に接触可能な高さであり、カム突起前方端部27fの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方作動突起案内面27ebも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面であるため、作動突起後方端部30cの側壁後方は、カム突起基部27e及びカム突起前方端部27fに係止不可能である。前方案内面30caが、突出係止面27eaから後方作動突起案内面27ebに亘るいずれかの面と接触すると、カム部27bは、回転子30の後退に伴い、突出係止面27ea及び後方作動突起案内面27ebを介して前方案内面30caから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0074】
図39は、図38の状態から回転子30を後退させた図である。図38の状態から回転子30を後退させると、前方案内面30caと、突出係止面27eaから後方作動突起案内面27ebに亘るいずれかの面との接触が解除される。更に回転子30を後退させると、作動突起30aは、当該カム突起27dと、当該カム突起27dより回動方向後方に位置するカム突起27dとの間に案内される。
【0075】
図40は、図37とは異なり、作動突起後方端部30cの側壁後方がカム突起27dの側壁前方とは接触しない場合を示した図である。カム突起基部27eのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁前方には、前方作動突起案内面27ecが形成されている。後方案内面30cb及び前方作動突起案内面27ecは、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。
【0076】
後方案内面30cbと前方作動突起案内面27ecとが接触すると、カム部27bは、前方作動突起案内面27ecを介して後方案内面30cbから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。更に回転子30を後退させると、後方案内面30cbと前方作動突起案内面27ecとの接触が解除され、図39の状態となる。つまり、作動突起30aは、当該カム突起27dと、当該カム突起27dより回動方向前方に位置するカム突起27dとの間を通過する。なお作動突起後方端部30cの側壁後方がカム突起27dと一切接触せず、作動突起30aが周方向に隣り合うカム突起27d間を通過する場合もある。
【0077】
以上のように、作動突起後方端部30cの側壁後方がカム突起基部27e及びカム突起前方端部27fに係止不可能なため、カム部27bの貫通孔27c前方から回転子30を挿通させる際に、カム部27b及び回転子30の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0078】
本実施形態においても、係止突起30dの側壁後方の少なくとも一部が、作動突起30aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置する。具体的には、係止突起30dの側壁後方に形成されている係止面30daのうち回動方向前方の一部が、作動突起30aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置している。係止面30daは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。
【0079】
図41は、図39の状態から回転子30を後退させた図である。カム部27bの貫通孔27c前方から回転子30を挿入し作動突起後方端部30cの側壁後方がカム突起基部27e及びカム突起前方端部27fの各側壁前方と係止せず挿通が進んだ際に、係止面30daのうち回動方向前方の一部が、作動突起30aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、作動突起30aの最大周方向幅がカム突起27d間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起30aと係止突起30dとが含まれる最小周方向幅がカム突起27d間の最小周方向幅より大きくなるため、没入案内面27faと係止面30daとが接触する。カム部27bは、没入案内面27faを介して係止面30daから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0080】
図42は、図41の状態から回転子30を後退させた図である。図41の状態から回転子30を後退させると、係止面30daと没入案内面27faとの接触が解除される。更に回転子30を後退させると、係止突起30dは、当該カム突起27dと、当該カム突起27dより回動方向後方に位置するカム突起27dとの間に案内され、貫通孔27cへの回転子30の挿通が完了する。なお、環状突起30fの側壁後方とカム突起27dの側壁前方とが接触するため、これ以上回転子30を後退させることは不可能である。
【0081】
図43は、図42の状態から回転子30を前進させた図である。ボールペン24を組み立てる工程において、カム部27bの貫通孔27cの前方から回転子30を挿通させる際に、不意に回転子30が前進してしまう状態を想定している。カム突起基部27eの側壁後方には、回動方向前方の前方作動面27edと、回動方向後方の後方作動面27eeとの2つの平面が形成されている。また、作動突起30aの側壁前方である作動突起基部30bの側壁前方には、作動面30baが形成されている。前方作動面27ed及び後方作動面27eeと、作動面30baとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向前方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。図42の状態から回転子30を前進させると、作動突起30aの回転子30外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起30aの側壁前方である作動突起基部30bの側壁前方が、カム突起基部27eの側壁後方に接触可能な高さであるため、作動面30baと前方作動面27edとが接触する。カム部27bは、前方作動面27edを介して作動面30baから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0082】
図44は、図43の状態から回転子30を前進させた図である。作動突起30aの回転子30外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起30aの側壁前方である作動突起基部30bの側壁前方が、カム突起基部27eの側壁後方に接触可能な高さである。そのため、作動突起30aの側壁前方である作動突起基部30bの側壁前方は、カム突起27dの側壁後方である、軸方向後方に後方作動面27eeが形成されているカム突起基部27eの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。
【0083】
以上より、カム部27bの貫通孔27c前方から回転子30を挿入し作動突起後方端部30cの側壁後方がカム突起基部27e及びカム突起前方端部27fの各側壁前方と係止せず挿通が進み、カム突起前方端部27fの側壁前方と係止面30daとが接触した後、回転子30が貫通孔27c前方へ移動しても、カム部27bと回転子30とが、作動突起30aの側壁前方とカム突起27dの側壁後方が接触し作動突起30aの側壁前方がカム突起27dの側壁後方に係止可能となる周方向位置に変位するため、回転子30が貫通孔27cから抜けないようカム部27b及び回転子30の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0084】
本実施形態においても、作動突起30aの側壁前方の少なくとも一部が、係止突起30dの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置する。具体的には、作動突起30aの側壁前方である作動突起基部30bの側壁前方に形成されている作動面30baのうち回動方向後方の一部が、係止突起30dの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置している。そのため、カム部27bの貫通孔27c前方から回転子30を挿入し作動突起後方端部30cの側壁後方がカム突起基部27e及びカム突起前方端部27fの各側壁前方と係止せず挿通が進む際に、カム突起前方端部27fの側壁前方と、係止突起30dの側壁後方とが接触しやすくなることでカム部27bの回動可能な範囲をより確保できる。具体的には、図41に示すような、没入案内面27faと係止面30daとの接触がしやすくなることで、カム部27bの、没入案内面27faを介し係止面30daから周方向の力を受けた回動方向前方への回動可能な範囲をより広く確保できる。よって、図43に示すように、回転子30がカム部27b前方へ移動しても作動突起30aの側壁前方とカム突起27dの側壁後方が接触可能な周方向の幅をより多く設けることができるため、回転子30が貫通孔27cから抜けないようカム部27b及び回転子30の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0085】
図45から図50を参照しつつ、ボールペン24を例に、本発明の実施形態に係る出没式筆記具の出没機構について説明する。図45から図50についても、図6から図9及び図11から図14と同様の構図で図示している。
【0086】
図45は、筆記具本体28が軸筒25内部において最も後退した状態を示した図であり、没入状態における回転子30及びカム部27bの位置関係を示している。
【0087】
図46は、図45の状態から筆記具本体28を前進させた図である。図45の状態から筆記具本体28を前進すると、作動面30baと前方作動面27edとが接触する。
【0088】
図47は、図46の状態から筆記具本体28を前進させた図である。この状態が、筆記具本体28が軸筒25内部において最も前進した状態である。図46の状態から、筆記具本体28を前進させると、カム部27bは回動方向前方へ回動する。パイプ29bの前端面が段部26aに接触して筆記具本体28の前進が止まると、カム部27bの回動も止まり、図47に示す状態となる。
【0089】
図48は、図47の状態から筆記具本体28を後退させた図である。図47の状態から筆記具本体28を後退させると、係止面30daと突出係止面27eaとが接触する。
【0090】
図49は、図48の状態から筆記具本体28を後退させた図であり、突出状態における回転子30及びカム部27bの位置関係を示している。図48の状態から筆記具本体28を後退させると、カム部27bは、突出係止面27eaを介して係止面30daから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。突出係止面27eaの回動方向後方にはカム突起前方端部27fがあり、カム突起前方端部27fの回動方向前方の側壁と、係止突起30dの側壁後方のうち回動方向後方が接触することで、筆記具本体28の後退及びカム部27bの回動が停止し、図49に示す状態となる。
【0091】
図50は、図49の状態から筆記具本体28を前進させた図である。図49の状態から筆記具本体28を前進させると、作動面30baと後方作動面27eeとが接触する。筆記具本体28を更に前進させると、カム部27bは、後方作動面27eeを介して作動面30baから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。パイプ29bの前端面が段部26aに接触して筆記具本体28の前進が止まると、カム部27bの回動も止まる。
【0092】
その後筆記具本体28を後退させると、係止面30daと没入案内面27faとが接触する。カム部27bは、没入案内面27faを介して係止面30daから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。カム部27bが、没入案内面27faと係止面30daとの接触が解除されるまで回動し、更に筆記具本体28を後退させると、摺動突起32aの後端面が、摺動孔27aを形成する縁部の後端面に接触することで、筆記具本体28の後退が止まり、図45に示す没入状態となる。
【0093】
各実施形態に係る各樹脂成形品の材質は、成形性や耐久性などを考慮して、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、又は、これらの樹脂を含む複合材などを適宜選択することができる。また、成形方法も様々な方法を適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 ボールペン
2 軸筒
3 前軸
3a 段部
3b コイルスプリング前端用リブ
4 後軸
4a 摺動孔
4b カム部
4c 貫通孔
4d カム突起
4e カム突起基部
4ea 突出係止面
4eb 後方作動突起案内面
4ec 前方作動突起案内面
4ed 前方作動面
4ee 後方作動面
4f カム突起前方端部
4fa 没入案内面
5 筆記具本体
6 ボールペンリフィル
6a ボールペンチップ
6b パイプ
6ba コイルスプリング後端用突起
7 回転子
7a 作動突起
7aa 作動面
7ab 前方案内面
7ac 後方案内面
7b 係止突起
7ba 係止面
7c 環状突起
8 コイルスプリング
9 ノック体
9a 摺動突起
10 ボールペン
11 軸筒
12 前軸
13 後軸
13a カム部
13b 貫通孔
13c カム突起
13d カム突起基部
13da 没入案内面
13db 後方作動突起案内面
13dc 前方作動突起案内面
13dd 前方作動面
13de 後方作動面
13e カム突起前方端部
13ea 突出係止面
14 筆記具本体
15 ボールペンリフィル
16 回転子
16a 作動突起
16aa 作動面
16ab 前方案内面
16ac 後方案内面
16b 係止突起
16ba 係止面
16c 環状突起
17 ボールペン
18 軸筒
19 前軸
20 後軸
20a カム部
20b 貫通孔
20c カム突起
20d カム突起基部
20da 突出係止面
20db 後方作動突起案内面
20dc 前方作動突起案内面
20dd 前方作動面
20de 後方作動面
20e カム突起前方端部
20ea 没入案内面
21 筆記具本体
22 ボールペンリフィル
23 回転子
23a 作動突起
23aa 作動面
23ab 前方案内面
23ac 後方案内面
23b 係止突起
23ba 係止面
23c 環状突起
24 ボールペン
25 軸筒
26 前軸
26a 段部
26b コイルスプリング前端用リブ
27 後軸
27a 摺動孔
27b カム部
27c 貫通孔
27d カム突起
27e カム突起基部
27ea 突出係止面
27eb 後方作動突起案内面
27ec 前方作動突起案内面
27ed 前方作動面
27ee 後方作動面
27f カム突起前方端部
27fa 没入案内面
28 筆記具本体
29 ボールペンリフィル
29a ボールペンチップ
29b パイプ
29ba コイルスプリング後端用突起
30 回転子
30a 作動突起
30b 作動突起基部
30ba 作動面
30c 作動突起後方端部
30ca 前方案内面
30cb 後方案内面
30d 係止突起
30da 係止面
30f 環状突起
31 コイルスプリング
32 ノック体
32a 摺動突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50