特開 2024-121127 出没式筆記具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024121127

(43)【公開日】2024-09-06

(54)【発明の名称】出没式筆記具

(51)【国際特許分類】

   B43K 24/08 20060101AFI20240830BHJP

【ＦＩ】

B43K24/08 110

B43K24/08 150

【審査請求】未請求

【請求項の数】9

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023028043

(22)【出願日】2023-02-27

(71)【出願人】

【識別番号】000005511

【氏名又は名称】ぺんてる株式会社

(72)【発明者】

【氏名】野村 恭平

【テーマコード（参考）】

2C353

【Ｆターム（参考）】

2C353HC04

2C353HG04

2C353MC02

2C353MC09

(57)【要約】      （修正有）

【課題】カム筒の縮径部に切り欠き部が設けられている出没式筆記具は開示されているが、出没式筆記具を組み立てる工程で、回転子をカム筒に挿入する際に、回転子の回転側カム部と縮径部との干渉を避けるため、回転側カム部が切り欠き部を通過するように周方向に位置合わせする必要があり、組み立てにくいという問題があった。本発明は、組み立てやすい出没式筆記具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも係止突起の側壁前方がカム突起に接触可能かつ係止不可能である出没式筆記具出没式筆記具を要旨とする。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

軸筒内部に、筆記具本体が少なくとも前後動可能に配置され、かつ、少なくともカム部が形成された出没式筆記具であって、
筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、
カム部には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、
カム部の内壁面には、カム突起が形成され、
筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方とカム突起の側壁後方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方とカム突起の側壁前方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
少なくとも係止突起の側壁前方がカム突起に接触可能かつ係止不可能である、
出没式筆記具。

【請求項2】

前記作動突起の側壁前方の少なくとも一部が、前記係止突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置し、
少なくとも前記係止突起の側壁後方が前記カム突起の側壁前方に係止可能である、
請求項１に記載の出没式筆記具。

【請求項3】

前記係止突起の側壁後方の少なくとも一部が、前記作動突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置する、
請求項２に記載の出没式筆記具。

【請求項4】

軸筒内部に、筆記具本体が少なくとも前後動可能に配置され、かつ、少なくともカム部が形成された出没式筆記具であって、
筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、
カム部には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、
カム部の内壁面には、カム突起が形成され、
カム突起は、カム突起基部と、カム突起基部の側壁から後方に延び、カム突起基部よりカム部内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起後方端部と、で少なくとも構成され、
筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方と、カム突起基部の側壁後方又はカム突起後方端部の側壁後方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方とカム突起の側壁前方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
少なくとも係止突起の側壁前方が、カム突起基部の側壁後方に接触可能かつカム突起基部及びカム突起後方端部に係止不可能である、
出没式筆記具。

【請求項5】

前記作動突起の側壁前方の少なくとも一部が、前記係止突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置し、
少なくとも前記係止突起の側壁後方が前記カム突起の側壁前方に係止可能である、
請求項４に記載の出没式筆記具。

【請求項6】

前記係止突起の側壁後方の少なくとも一部が、前記作動突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置する、
請求項５に記載の出没式筆記具。

【請求項7】

軸筒内部に、筆記具本体が少なくとも前後動可能に配置され、かつ、少なくともカム部が形成された出没式筆記具であって、
筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、
係止突起は、係止突起基部と、係止突起基部の側壁から前方に延び、係止突起基部より筆記具本体外壁面からの径方向外側への高さが低い係止突起前方端部と、で少なくとも構成され、
カム部には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、
カム部の内壁面には、カム突起が形成され、
カム突起は、カム突起基部と、カム突起基部の側壁から後方に延び、カム突起基部よりカム部内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起後方端部と、で少なくとも構成され、
筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方と、カム突起基部の側壁後方又はカム突起後方端部の側壁後方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方とカム突起の側壁前方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、
少なくとも係止突起前方端部の側壁前方が、カム突起基部の側壁後方に接触可能かつカム突起基部及びカム突起後方端部に係止不可能である、
出没式筆記具。

【請求項8】

前記作動突起の側壁前方の少なくとも一部が、前記係止突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置し、
少なくとも前記係止突起の側壁後方が前記カム突起の側壁前方に係止可能である、
請求項７に記載の出没式筆記具。

【請求項9】

前記係止突起の側壁後方の少なくとも一部が、前記作動突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置する、
請求項８に記載の出没式筆記具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、軸筒内部に、前端に筆記部を有する筆記具本体が前後動可能に配置され、筆記具本体を軸筒内部で前後に異なる位置で係止させることで、筆記部の、軸筒前端開口部からの突出及び没入を可能とした、所謂出没式筆記具に関するものである。筆記部が軸筒前端開口部から突出して筆記可能になった状態を突出状態、筆記部が軸筒内部に没入した状態を没入状態とする。

【背景技術】

【0002】

出没式筆記具の出没機構として、所謂カム機構が採用されているものが知られている。出没式筆記具におけるカム機構では、筆記具本体に係止突起と作動突起とを設け、筆記具本体の前後動に伴いそれぞれの側壁がカム部に接触することで、筆記具本体の任意の位置での係止と、係止先の切り替えを可能としている。

【0003】

例えば特許文献１（特開２０１９－１５５９０８号公報）には、軸筒内部にカム部としてのカム筒が配置され、カム筒内壁面に形成されたカム突起の側壁後方に回転子外壁面の作動突起の側壁前方が、カム筒前端面に回転子外壁面の係止突起の側壁後方が、それぞれ接触してカム機構が作動する出没式筆記具が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１９－１５５９０８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

特許文献１に開示されている出没式筆記具では、カム筒の縮径部に切り欠き部が設けられている。出没式筆記具を組み立てる工程で、回転子をカム筒に挿入する際に、回転子の回転側カム部と縮径部との干渉を避けるため、回転側カム部が切り欠き部を通過するように周方向に位置合わせする必要があり、組み立てにくいという問題があった。

【0006】

本発明は、組み立てやすい出没式筆記具を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明は、軸筒内部に、筆記具本体が少なくとも前後動可能に配置され、かつ、少なくともカム部が形成された出没式筆記具であって、筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、カム部には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、カム部の内壁面には、カム突起が形成され、筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方とカム突起の側壁後方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方とカム突起の側壁前方とが接触し、筆記具本体は貫通孔内で軸回転可能であり、少なくとも係止突起の側壁前方がカム突起に接触可能かつ係止不可能である、出没式筆記具を要旨とする。

【発明の効果】

【0008】

本発明の出没式筆記具は、カム部の貫通孔後方から筆記具本体を挿通させる際に、係止突起の側壁前方がカム突起に意図せず係止しないため周方向の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】ボールペン１の縦断面図

【図2】ノック体９の外観斜視図

【図3】後軸４の外観斜視図

【図4】回転子７の外観図

【図5】後軸４の縦断面図

【図6】係止突起７ｂの側壁前方がカム突起４ｄの側壁後方と接触する場合を示した図

【図7】図６の状態から回転子７を前進させた図

【図8】図７の状態から回転子７を前進させた図

【図9】係止突起７ｂの側壁前方がカム突起４ｄの側壁後方とは接触しない場合を示した図

【図10】図４のＡ部分拡大図

【図11】図８の状態から回転子７を前進させた図

【図12】図１１の状態から回転子７を前進させた図

【図13】図１２の状態から回転子７を後退させた図

【図14】図１３の状態から回転子７を後退させた図

【図15】後軸１３の外観斜視図

【図16】後軸１３の縦断面図

【図17】後方案内面１６ｂｂと後方係止突起案内面１３ｄｂとが接触する場合を示した図

【図18】図１７の状態から回転子１６を前進させた図

【図19】図１８の状態から回転子１６を前進させた図

【図20】図１９の状態から回転子１６を前進させた図

【図21】前方案内面１６ｂａと後方作動面１３ｄａとが接触する場合を示した図

【図22】図２０の状態から回転子１６を前進させた図

【図23】図２２の状態から回転子１６を前進させた図

【図24】図２３の状態から回転子１６を後退させた図

【図25】図２４の状態から回転子１６を後退させた図

【図26】係止突起２３ｂの側壁前方がカム突起２０ｃの側壁後方と接触する場合を示した図

【図27】図２６の状態から回転子２３を前進させた図

【図28】図２７の状態から回転子２３を前進させた図

【図29】係止突起２３ｂの側壁前方がカム突起２０ｃの側壁後方とは接触しない場合を示した図

【図30】回転子２３外観の図１０相当図

【図31】図２８の状態から回転子２３を前進させた図

【図32】図３１の状態から回転子２３を前進させた図

【図33】図３２の状態から回転子２３を後退させた図

【図34】図３３の状態から回転子２３を後退させた図

【図35】ボールペン２４の縦断面図

【図36】回転子３０の外観図

【図37】係止突起前方端部３０ｄの側壁前方がカム突起２７ｄの側壁後方と接触する場合を示した図

【図38】図３７の状態から回転子３０を前進させた図

【図39】図３８の状態から回転子３０を前進させた図

【図40】係止突起前方端部３０ｄの側壁前方がカム突起２７ｄの側壁後方とは接触しない場合を示した図

【図41】図３９の状態から回転子３０を前進させた図

【図42】図４１の状態から回転子３０を前進させた図

【図43】図４２の状態から回転子３０を後退させた図

【図44】図４３の状態から回転子３０を後退させた図

【図45】筆記具本体２８が軸筒２５内部において最も後退した状態を示した図

【図46】図４５の状態から筆記具本体２８を前進させた図

【図47】図４６の状態から筆記具本体２８を前進させた図

【図48】図４７の状態から筆記具本体２８を後退させた図

【図49】図４８の状態から筆記具本体２８を後退させた図

【図50】図４９の状態から筆記具本体２８を前進させた図

【発明を実施するための形態】

【0010】

本発明は、ボールペン、シャープペンシル、筆ペン、フェルトペン、マーキングペンなどの筆記具であって、ボールペンチップなどの筆記部を軸筒前端開口部から出没可能な出没式筆記具として実施することができる。以降、図面を適宜参照しつつ、本発明に係る各実施形態について説明する。本発明の技術的範囲は各実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。

【0011】

図１（ａ）（ｂ）は、は本発明の第１の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン１の縦断面図である。図１（ｂ）は、図１（ａ）の状態からボールペン１を９０°軸回転させた角度の縦断面図である。ボールペン１は、中空筒状の軸筒２内部に、筆記具本体５を構成するボールペンリフィル６及び回転子７や、ノック体９の一部等が配置され構成されている。

【0012】

軸筒２は、前軸３と後軸４とが着脱自在に結合して構成されている。前軸３の後方が後軸４の前端開口部から挿入される。前軸３の後端部付近の外壁面と後軸４の前端部付近の内壁面とには、それぞれ螺子部が設けられており、前軸３と後軸４とが螺子螺合により結合可能となっている。

【0013】

前軸３及び後軸４は、軸方向に貫通した円筒状の部材である。前軸３はポリプロピレン樹脂製の成形品であり、後軸４はポリカーボネート樹脂製の成形品である。

【0014】

筆記具本体５は、ボールペンリフィル６と回転子７とで構成されている。ボールペンリフィル６は、筆記部としてのボールペンチップ６ａと、内部にボールペンインキが収納されるパイプ６ｂとで構成されている。回転子７はポリアセタール樹脂製の成形品であり、有底筒状の部材である。ボールペンリフィル６の後方が回転子７の前端開口部から挿入されるが固定はされておらず、ボールペンリフィル６と回転子７とが互いに逆方向に軸回転可能な程度に遊嵌されている。

【0015】

パイプ６ｂの外壁面には、コイルスプリング８の後端と接触する２本のコイルスプリング後端用突起６ｂａが周方向等間隔に設けられている。また、前軸３の内壁面には、コイルスプリング８の前端と接触する６本のコイルスプリング前端用リブ３ｂが、周方向等間隔に設けられている。コイルスプリング８は自然状態から縮んだ状態でコイルスプリング後端用突起６ｂａとコイルスプリング前端用リブ３ｂとにより挟持され、筆記具本体５を常時後方に付勢している。

【0016】

図２はノック体９の外観斜視図、図３（ａ）（ｂ）は後軸４の外観斜視図である。図３（ｂ）は後軸４の外壁を透明にして、カム部４ｂの内壁面に設けられたカム突起４ｄの一部を点線で図示している。ノック体９はポリアセタール樹脂製の成形品であり、有底筒状の部材である。ノック体９の外壁面にはヒンジ構造を有する摺動突起９ａが形成されている。摺動突起９ａはノック体９の外壁面において周方向に対向する位置に２か所設けられている。摺動突起９ａのノック体９外壁面から径方向外側への高さは、ノック体９前方側から後方側向かって次第に高くなっている。ノック体９は、ノック体９の前方から後軸４の後端開口部を介して軸筒２内部へ挿入される。その際、摺動突起９ａは後軸４の後端面及び内壁面と接触することで、一時的に径方向内側へ弾性変形する。後軸４には内外に貫通し軸方向に延びる孔である摺動孔４ａが形成されている。摺動孔４ａは周方向に対向する位置であって、摺動突起９ａが挿入される位置に２か所設けられている。ノック体９の後軸４への挿入が進み、一時的に径方向内側へ弾性変形した摺動突起９ａが摺動孔４ａに差し掛かると、弾性変形が解除され、摺動突起９ａは摺動孔４ａに挿入される。ノック体９の後方は後軸４の後端開口部を介して軸筒２外部へ露出して配置される。筆記具本体５は軸筒２内部を前後動可能に配置されており、使用者がノック体９の後端部を押圧することで、筆記具本体５は軸筒２内部を前進する。ノック体９の前後動に伴い、摺動突起９ａが摺動孔４ａ内を前後動するため、ノック体９は軸筒２に対して前後動のみ可能であり、軸回転は不可能である。回転子７の後方がノック体９の前端開口部から挿入されるが固定はされておらず、回転子７はノック体９の前後動に伴い軸回転可能である。また、回転子７が下方に位置する状態でノック体９のみを持っても、回転子７がノック体９から離脱及び落下しない程度に、回転子７はノック体９に遊嵌されている。

【0017】

前軸３の内壁面前方には周方向に連なった環状の突起である段部３ａが設けられている。パイプ６ｂの前端面が段部３ａに接触することで、ボールペン１の出没機構における筆記具本体５の前進が止まる。また、摺動突起９ａの後端面が、摺動孔４ａを形成する縁部の後端面に接触することで、ボールペン１の出没機構における筆記具本体５の後退が止まる。

【0018】

図４（ａ）（ｂ）は、回転子７の外観図である。図４（ｂ）は、図４（ａ）の状態から回転子７を９０°軸回転させた角度の外観図である。回転子７の外壁面には、作動突起７ａと係止突起７ｂとが設けられている。作動突起７ａは回転子７の外壁面において周方向に対向する位置に４か所、係止突起７ｂは回転子７の外壁面において周方向等間隔に２か所、設けられている。作動突起７ａ及び係止突起７ｂはパイプ６ｂの外壁に設けてもよく、係止突起７ｂのみをパイプ６ｂに設けてもよい。回転子７の外壁面には環状突起７ｃが設けられている。環状突起７ｃの前方は作動突起７ａの後方と連なっている。環状突起７ｃは径方向外側に向かって鍔状に突出している。

【0019】

後軸４には、カム部４ｂが形成されている。カム部４ｂは、軸方向に貫通し回転子７が挿通される貫通孔４ｃと、内壁面に形成されたカム突起４ｄとで構成されている。本実施形態において貫通孔４ｃは後軸４の軸方向に貫通した孔と連通しており、また、カム突起４ｄの内壁面とは後軸４の内壁面でもある。カム部４ｂを後軸４と一体とせず、貫通孔４ｃ及びカム突起４ｄが形成された筒状の部材を後軸４に配置することで軸筒内部にカム部４ｂを形成することもできる。カム突起４ｄは係止突起７ｂの係止先であり、係止突起７ｂの側壁後方は、カム突起４ｄの側壁前方に係止可能である。カム突起４ｄは、カム部４ｂの内壁面において周方向等間隔に４か所設けられている。ボールペン１の出没機構において、筆記具本体５の前進に伴い、作動突起７ａの側壁前方と、カム突起４ｄの側壁後方とが接触し、筆記具本体５を構成する回転子７は貫通孔４ｃ内で軸回転可能である。また、筆記具本体５の後退に伴い、係止突起７ｂの側壁後方と、カム突起４ｄの側壁前方とが接触し、回転子７は貫通孔４ｃ内で軸回転可能である。カム部４ｂは後軸４と一体に形成されており、後軸４は前軸３と螺子螺合により結合しているため、カム部４ｂは、筆記具本体５の前後動に伴い前後動も軸回転も不可能である。なお、突起の側壁前方及び側壁後方とは、その突起の側壁の前端面及び後端面のみではなく、その突起を軸方向前半と後半とで分けた範囲の側壁も含まれる。

【0020】

図５は後軸４の縦断面図である。カム突起４ｄは、カム突起基部４ｅと、カム突起基部４ｅの側壁から後方に延び、カム突起基部４ｅよりカム部４ｂ内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起後方端部４ｆと、で少なくとも構成されている。カム突起基部４ｅの側壁後方には前方作動面４ｅａが形成されており、カム突起後方端部４ｆの側壁後方には後方作動面４ｆａが形成されている。

【0021】

ボールペン１を組み立てる工程における、カム部４ｂの貫通孔４ｃの後方から、筆記具本体５を構成する回転子７を挿通させる様子について説明する。具体的には、後軸４の後端開口部からノック体９と結合した回転子７を挿入し、後軸４の軸方向中腹に位置するカム部４ｂの貫通孔４ｃの後方から回転子７を挿通させる工程を想定している。図６から図９は、作動突起７ａ及び係止突起７ｂと、カム突起４ｄとの接触関係を視認しやすくするために、回転子７とカム部４ｂとを周方向に展開し、また、本来径方向に向き合う関係である作動突起７ａ及び係止突起７ｂと、カム突起４ｄとを同一平面上で図示している。具体的には、作動突起７ａ及び係止突起７ｂが図面奥側から図面手前側に向かって突出する視点で図示し、カム突起４ｄが図面手前側から図面奥側に向かって突出する視点で図示している。カム突起４ｄは、カム突起４ｄの根元であるカム部４ｂの内壁面から切り取って図示し、断面を表すハッチングは省略している。カム部４ｂの回動方向である図面左側に向かう方向を回動方向前方、回動方向前方と逆方向であり図面右側に向かう方向を回動方向後方として説明する。例えば、前方作動面４ｅａと後方作動面４ｆａとは、いずれも、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面である。後方係止突起案内面４ｅｂはカム突起基部４ｅの側壁後方の一部であって、カム突起４ｄより回動方向後方に位置し、カム突起後方端部４ｆより径方向内側の範囲の面である。後方係止突起案内面４ｅｂも、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面である。また、回転子７の前後動に伴いカム部４ｂが回動方向のいずれかに回動する様子を説明しているが、具体的には、回転子７の前後動に伴いカム部４ｂを介して周方向への力を受けた後軸４自体が回動している。本発明における筆記具本体５及びカム部４ｂの組み立て方法においては、一方又は両方を回動可能な状態で組み立てる方法も適宜選択可能である。また、回動方向は本実施形態と逆方向に構成することもできる。

【0022】

カム部４ｂの貫通孔４ｃ後方から回転子７の前方を挿入していくと、カム部４ｂと回転子７との周方向の位置関係によっては、係止突起７ｂとカム突起４ｄとが接触する場合と、係止突起７ｂとカム突起４ｄとが接触せず、そのまま周方向に隣り合うカム突起４ｄ間に入っていく場合とがある。

【0023】

図６は、係止突起７ｂの側壁前方がカム突起４ｄの側壁後方と接触する場合を示した図である。係止突起７ｂの側壁前方には、回動方向前方の前方案内面７ｂａと、回動方向後方の後方案内面７ｂｂとの２つの平面が形成されている。前方案内面７ｂａは、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜しており、前方作動面４ｅａ及び後方係止突起案内面４ｅｂと互いに向かい合う平面となっている。

【0024】

図７は、図６の状態から回転子７を前進させた図である。係止突起７ｂの側壁前方に形成されている前方案内面７ｂａは、カム突起基部４ｅの側壁後方の一部である前方作動面４ｅａから後方係止突起案内面４ｅｂに亘るいずれかの面と接触する。係止突起７ｂの回転子７外壁面からの径方向外側への高さは、回転子７が貫通孔４ｃ内に挿入された際に、係止突起７ｂの側壁前方が、カム突起基部４ｅの側壁後方に接触可能な高さであり、カム突起後方端部４ｆの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方係止突起案内面４ｅｂも、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面であるため、係止突起７ｂの側壁前方は、カム突起基部４ｅ及びカム突起後方端部４ｆに係止不可能である。前方案内面７ｂａが、前方作動面４ｅａから後方係止突起案内面４ｅｂに亘るいずれかの面と接触すると、カム部４ｂは、回転子７の前進に伴い、前方作動面４ｅａ及び後方係止突起案内面４ｅｂを介して前方案内面７ｂａから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0025】

図８は、図７の状態から回転子７を前進させた図である。図７の状態から回転子７を前進させると、前方案内面７ｂａと、前方作動面４ｅａから後方係止突起案内面４ｅｂに亘るいずれかの面との接触が解除される。更に回転子７を前進させると、係止突起７ｂは、当該カム突起４ｄと、当該カム突起４ｄより回動方向後方に位置するカム突起４ｄとの間に案内される。

【0026】

図９は、図６とは異なり、係止突起７ｂの側壁前方がカム突起４ｄの側壁後方とは接触しない場合を示した図である。カム突起基部４ｅのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁後方には、前方係止突起案内面４ｅｃが形成されている。後方案内面７ｂｂ及び前方係止突起案内面４ｅｃは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。

【0027】

後方案内面７ｂｂと前方係止突起案内面４ｅｃとが接触すると、カム部４ｂは、前方係止突起案内面４ｅｃを介して後方案内面７ｂｂから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。更に回転子７を前進させると、後方案内面７ｂｂと前方係止突起案内面４ｅｃとの接触が解除され、図８の状態となる。つまり、係止突起７ｂは、当該カム突起４ｄと、当該カム突起４ｄより回動方向前方に位置するカム突起４ｄとの間を通過する。なお係止突起７ｂの側壁前方がカム突起４ｄと一切接触せず、係止突起７ｂが周方向に隣り合うカム突起４ｄ間を通過する場合もある。

【0028】

以上のように、本実施形態においては、係止突起７ｂの側壁前方がカム突起基部４ｅ及びカム突起後方端部４ｆに係止不可能なため、カム部４ｂの貫通孔４ｃ後方から回転子７を挿通させる際に、カム部４ｂ及び回転子７の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【0029】

図１０は、図４のＡ部分拡大図である。本実施形態では、作動突起７ａの側壁前方の少なくとも一部が、係止突起７ｂの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域Ｂの外側に位置する。具体的には、作動突起７ａの側壁前方に形成されている作動面７ａａのうち回動方向前方の一部が、領域Ｂの外側に位置している。作動面７ａａは、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面となっている。

【0030】

図１１は、図８の状態から回転子７を前進させた図である。カム部４ｂの貫通孔４ｃ後方から回転子７を挿入し係止突起７ｂの側壁前方がカム突起基部４ｅ及びカム突起後方端部４ｆの各側壁後方と係止せず挿通が進んだ際に、作動面７ａａのうち回動方向前方の一部が、領域Ｂの外側に位置し、係止突起７ｂの最大周方向幅がカム突起４ｄ間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起７ａと係止突起７ｂとが含まれる最小周方向幅がカム突起４ｄ間の最小周方向幅より大きくなるため、後方作動面４ｆａと作動面７ａａとが接触する。カム部４ｂは、後方作動面４ｆａを介して作動面７ａａから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0031】

図１２は、図１１の状態から回転子７を前進させた図である。図１１の状態から回転子７を前進させると、作動面７ａａと後方作動面４ｆａとの接触が解除される。更に回転子７を前進させると、作動突起７ａは、当該カム突起４ｄと、当該カム突起４ｄより回動方向後方に位置するカム突起４ｄとの間に案内され、貫通孔４ｃへの回転子７の挿通が完了する。なお、環状突起７ｃの側壁前方とカム突起４ｄの側壁後方とが接触するため、これ以上回転子７を前進させることは不可能である。

【0032】

図１３は、図１２の状態から回転子７を後退させた図である。ボールペン１を組み立てる工程において、カム部４ｂの貫通孔４ｃの後方から回転子７を挿通させる際に、不意に回転子７が後退してしまう状態を想定している。カム突起基部４ｅの側壁前方には、回動方向前方の突出係止面４ｅｄと、回動方向後方の没入案内面４ｅｅとの２つの平面が形成されている。また、係止突起７ｂの側壁後方には、係止面７ｂｃが形成されている。突出係止面４ｅｄ及び没入案内面４ｅｅと、係止面７ｂｃとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。図１２の状態から回転子７を後退させると、係止突起７ｂの回転子７外壁面からの径方向外側への高さは、係止突起７ｂの側壁後方が、カム突起基部４ｅの側壁前方に接触可能な高さであるため、係止面７ｂｃと突出係止面４ｅｄとが接触する。カム部４ｂは、突出係止面４ｅｄを介して係止面７ｂｃから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0033】

図１４は図１３の状態から回転子７を後退させた図である。係止突起７ｂの回転子７外壁面からの径方向外側への高さは、係止突起７ｂの側壁後方が、カム突起基部４ｅの側壁前方に接触可能な高さである。そのため、係止突起７ｂの側壁後方は、カム突起４ｄの側壁前方である、軸方向前方に没入案内面４ｅｅが形成されているカム突起基部４ｅの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。

【0034】

以上より、カム部４ｂの貫通孔４ｃ後方から回転子７を挿入し係止突起７ｂの側壁前方がカム突起基部４ｅ及びカム突起後方端部４ｆの各側壁後方と係止せず挿通が進み、カム突起後方端部４ｆの側壁後方と作動面７ａａとが接触した後、回転子７が貫通孔４ｃ後方へ移動しても、カム部４ｂと回転子７とが、係止突起７ｂの側壁後方とカム突起４ｄの側壁前方が接触し係止突起７ｂの側壁後方がカム突起４ｄの側壁前方に係止可能となる周方向位置に変位するため、回転子７が貫通孔４ｃから抜けないようカム部４ｂ及び回転子７の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【0035】

本発明の第２の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン１０について、第１の実施形態との主な相違点である回転子１６及びカム部１３ａを中心に説明する。ボールペン１０は、中空筒状の軸筒１１内部に筆記具本体１４が配置されている。軸筒１１も前軸１２と後軸１３とが結合して構成されており、カム部１３ａは後軸１３内部に形成されている。筆記具本体１４は、ボールペンリフィル１５と回転子１６とで構成されている。筆記具本体１４は軸筒１１内部を前後動可能に配置されている。回転子１６の外壁面には、作動突起１６ａと係止突起１６ｂとが設けられている。カム部１３ａの内壁面にはカム突起１３ｃが設けられている。

【0036】

図１５（ａ）（ｂ）は後軸１３の外観斜視図、図１６は後軸１３の縦断面図である。図１５（ｂ）は後軸１３の外壁を透明にして、内壁面に設けられたカム突起１３ｃの一部を点線で図示している。カム突起１３ｃは、カム突起基部１３ｄと、カム突起基部１３ｄの側壁から後方に延び、カム突起基部１３ｄよりカム部１３ａ内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起後方端部１３eと、で少なくとも構成されている。第１の実施形態では、カム突起後方端部４ｆが、カム突起基部４ｅの側壁後方のうち回動方向後方に形成されているのに対して、第２の実施形態では、カム突起後方端部１３eが、カム突起基部１３ｄの側壁後方のうち回動方向前方に形成されている。カム突起後方端部１３eの側壁後方には前方作動面１３ｅａが形成されており、カム突起基部１３ｄの側壁後方には後方作動面１３ｄａ及び後方係止突起案内面１３ｄｂが形成されている。

【0037】

ボールペン１０を組み立てる工程における、カム部１３ａの貫通孔１３ｂの後方から回転子１６を挿通させる様子について説明する。図１７から図２５については、図６から図９及び図１１から図１４と同様の構図で図示している。

【0038】

図１７は、係止突起１６ｂの側壁前方がカム突起１３ｃの側壁後方と接触する場合のうち、係止突起１６ｂの側壁前方に形成されている後方案内面１６ｂｂと、カム突起基部１３ｄの側壁後方に形成されている後方係止突起案内面１３ｄｂとが接触する場合を示した図である。係止突起１６ｂの側壁前方には、回動方向前方の前方案内面１６ｂａと、回動方向後方の後方案内面１６ｂｂとの２つの平面が形成されている。前方案内面１６ｂａは、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜しており、後方作動面１３ｄａと互いに向かい合う平面となっている。後方案内面１６ｂｂは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜しており、後方係止突起案内面１３ｄｂと互いに向かい合う平面となっている。

【0039】

図１８は、図１７の状態から回転子１６を前進させた図である。係止突起１６ｂの側壁前方に形成されている後方案内面１６ｂｂは、カム突起基部１３ｄの側壁後方に形成されている後方係止突起案内面１３ｄｂに接触する。係止突起１６ｂの回転子１６外壁面からの径方向外側への高さは、回転子１６が貫通孔１３ｂ内に挿入された際に、係止突起１６ｂの側壁前方が、カム突起基部１３ｄの側壁後方に接触可能な高さであり、カム突起後方端部１３ｅの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方係止突起案内面１３ｄｂも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面であるため、係止突起１６ｂの側壁前方は、カム突起基部１３ｄ及びカム突起後方端部１３eに係止不可能である。後方案内面１６ｂｂが、後方係止突起案内面１３ｄｂと接触すると、カム部１３ａは、回転子１６の前進に伴い、後方係止突起案内面１３ｄｂを介して後方案内面１６ｂｂから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。

【0040】

図１９は、図１８の状態から回転子１６を前進させた図である。図１８の状態から回転子１６を前進させると、後方案内面１６ｂｂと後方係止突起案内面１３ｄｂとの接触が解除される。更に回転子１６を前進させると、係止突起１６ｂは、当該カム突起１３ｃと、当該カム突起１３ｃより回動方向前方に位置するカム突起１３ｃとの間に案内される。後方案内面１６ｂｂは、前方係止突起案内面１３ｄｃと接触する。前方係止突起案内面１３ｄｃは、カム突起基部１３ｄのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁後方に形成されている。前方係止突起案内面１３ｄｃは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。後方案内面１６ｂｂと前方係止突起案内面１３ｄｃとが接触すると、カム部１３ａは、前方係止突起案内面１３ｄｃを介して後方案内面１６ｂｂから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。

【0041】

図２０は、図１９の状態から回転子１６を前進させた図である。図１９の状態から回転子１６を前進させると、後方案内面１６ｂｂと前方係止突起案内面１３ｄｃとの接触が解除される。そして、係止突起１６ｂは、当該カム突起１３ｃと、当該カム突起１３ｃより回動方向前方に位置するカム突起１３ｃとの間を通過する。なお、係止突起１６ｂの側壁前方がカム突起１３ｃの側壁後方とは接触しない場合も、後方案内面１６ｂｂと前方係止突起案内面１３ｄｃとが接触し図１９と同様の状態となるか、係止突起１６ｂの側壁前方がカム突起１３ｃと一切接触せず、係止突起１６ｂが周方向に隣り合うカム突起１３ｃ間を通過する。

【0042】

図２１は、図１７とは異なり、係止突起１６ｂの側壁前方がカム突起１３ｃの側壁後方と接触する場合のうち、係止突起１６ｂの側壁前方に形成されている前方案内面１６ｂａと、カム突起基部１３ｄの側壁後方に形成されている後方作動面１３ｄａとが接触する場合を示した図である。後方作動面１３ｄａも、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面であるため、係止突起１６ｂの側壁前方は、カム突起基部１３ｄに係止不可能である。前方案内面１６ｂａが、後方作動面１３ｄａと接触すると、カム部１３ａは、回転子１６の前進に伴い、後方作動面１３ｄａを介して前方案内面１６ｂａから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0043】

図２１の状態から回転子１６を前進させると、前方案内面１６ｂａと後方作動面１３ｄａとの接触が解除される。更に回転子１６を前進させると、係止突起１６ｂは、当該カム突起１３ｃと、当該カム突起１３ｃより回動方向後方に位置するカム突起１３ｃとの間に案内され、図２０と同様の状態となる。

【0044】

以上のように、本実施形態においても、係止突起１６ｂの側壁前方がカム突起基部１３ｄ及びカム突起後方端部１３eに係止不可能なため、カム部１３ａの貫通孔１３ｂ後方から回転子１６を挿通させる際に、カム部１３ａ及び回転子１６の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【0045】

本実施形態においても、作動突起１６ａの側壁前方の少なくとも一部が、係止突起１６ｂの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置する。具体的には、作動突起１６ａの側壁前方に形成されている作動面１６ａａのうち回動方向前方の一部が、係止突起１６ｂの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置している。作動面１６ａａは、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面となっている。

【0046】

図２２は、図２０の状態から回転子１６を前進させた図である。カム部１３ａの貫通孔１３ｂ後方から回転子１６を挿入し係止突起１６ｂの側壁前方がカム突起基部１３ｄ及びカム突起後方端部１３eの各側壁後方と係止せず挿通が進んだ際に、作動面１６ａａのうち回動方向前方の一部が、係止突起１６ｂの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置し、係止突起１６ｂの最大周方向幅がカム突起１３ｃ間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起１６ａと係止突起１６ｂとが含まれる最小周方向幅がカム突起１３ｃ間の最小周方向幅より大きくなるため、後方作動面１３ｄａと作動面１６ａａとが接触する。カム部１３ａは、後方作動面１３ｄａを介して作動面１６ａａから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0047】

図２３は、図２２の状態から回転子１６を前進させた図である。図２２の状態から回転子１６を前進させると、作動面１６ａａと後方作動面１３ｄａとの接触が解除される。更に回転子１６を前進させると、作動突起１６ａは、当該カム突起１３ｃと、当該カム突起１３ｃより回動方向後方に位置するカム突起１３ｃとの間に案内され、貫通孔１３ｂへの回転子１６の挿通が完了する。なお、環状突起１６ｃの側壁前方とカム突起１３ｃの側壁後方とが接触するため、これ以上回転子１６を前進させることは不可能である。

【0048】

図２４は、図２３の状態から回転子１６を後退させた図である。ボールペン１０を組み立てる工程において、カム部１３ａの貫通孔１３ｂの後方から回転子１６を挿通させる際に、不意に回転子１６が後退してしまう状態を想定している。カム突起基部１３ｄの側壁前方には、回動方向前方の突出係止面１３ｄｄと、回動方向後方の没入案内面１３ｄｅとの２つの平面が形成されている。また、係止突起１６ｂの側壁後方には、係止面１６ｂｃが形成されている。突出係止面１３ｄｄ及び没入案内面１３ｄｅと、係止面１６ｂｃとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。図２３の状態から回転子１６を後退させると、係止突起１６ｂの回転子１６外壁面からの径方向外側への高さは、係止突起１６ｂの側壁後方が、カム突起基部１３ｄの側壁前方に接触可能な高さであるため、係止面１６ｂｃと突出係止面１３ｄｄとが接触する。カム部１３ａは、突出係止面１３ｄｄを介して係止面１６ｂｃから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0049】

図２５は、図２４の状態から回転子１６を後退させた図である。係止突起１６ｂの回転子１６外壁面からの径方向外側への高さは、係止突起１６ｂの側壁後方が、カム突起基部１３ｄの側壁前方に接触可能な高さである。そのため、係止突起１６ｂの側壁後方は、カム突起１３ｃの側壁前方であって、軸方向前方に没入案内面１３ｄｅが形成されているカム突起基部１３ｄの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。

【0050】

以上より、カム部１３ａの貫通孔１３ｂ後方から回転子１６を挿入し係止突起１６ｂの側壁前方がカム突起基部１３ｄ及びカム突起後方端部１３ｅの各側壁後方と係止せず挿通が進み、カム突起基部１３ｄの側壁後方と作動面１６ａａとが接触した後、回転子１６が貫通孔１３ｂ後方へ移動しても、カム部１３ａと回転子１６とが、係止突起１６ｂの側壁後方とカム突起１３ｃの側壁前方が接触し係止突起１６ｂの側壁後方がカム突起１３ｃの側壁前方に係止可能となる周方向位置に変位するため、回転子１６が貫通孔１３ｂから抜けないようカム部１３ａ及び回転子１６の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【0051】

本発明の第３の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン１７について、第１の実施形態との主な相違点である回転子２３及びカム部２０ａを中心に説明する。ボールペン１７は、中空筒状の軸筒１８内部に筆記具本体２１が配置され構成されている。軸筒１８も前軸１９と後軸２０とが結合して構成されており、カム部２０ａは後軸２０内部に形成されている。筆記具本体２１は、ボールペンリフィル２２と回転子２３とで構成されている。筆記具本体２１は軸筒１８内部を前後動可能に配置されている。回転子２３の外壁面には、作動突起２３ａと係止突起２３ｂとが設けられている。カム部２０ａの内壁面にはカム突起２０ｃが設けられている。第１の実施形態と同様に、カム突起後方端部２０ｅはカム突起基部２０ｄの側壁後方のうち回動方向後方に形成されている。カム突起後方端部２０ｅの側壁後方には後方作動面２０ｅａが形成されており、カム突起基部２０ｄの側壁後方には前方作動面２０ｄａ及び後方係止突起案内面２０ｄｂが形成されている。

【0052】

ボールペン１７を組み立てる工程における、カム部２０ａの貫通孔２０ｂの後方から回転子２３を挿通させる様子について説明する。図２６から図２９及び図３１から図３４については、図６から図９及び図１１から図１４と同様の構図で図示している。

【0053】

図２６は、係止突起２３ｂの側壁前方がカム突起２０ｃの側壁後方と接触する場合を示した図である。係止突起２３ｂの側壁前方には、回動方向前方の前方案内面２３ｂａと、回動方向後方の後方案内面２３ｂｂとの２つの平面が形成されている。前方案内面２３ｂａは、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜しており、前方作動面２０ｄａ及び後方係止突起案内面２０ｄｂと互いに向かい合う平面となっている。

【0054】

図２７は、図２６の状態から回転子２３を前進させた図である。係止突起２３ｂの側壁前方に形成されている前方案内面２３ｂａは、カム突起基部２０ｄの側壁後方の一部である前方作動面２０ｄａから後方係止突起案内面２０ｄｂに亘るいずれかの面と接触する。係止突起２３ｂの回転子２３外壁面からの径方向外側への高さは、回転子２３が貫通孔２０ｂ内に挿入された際に、係止突起２３ｂの側壁前方が、カム突起基部２０ｄの側壁後方に接触可能な高さであり、カム突起後方端部２０ｅの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方係止突起案内面２０ｄｂも、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面であるため、係止突起２３ｂの側壁前方は、カム突起基部２０ｄ及びカム突起後方端部２０ｅに係止不可能である。前方案内面２３ｂａが、前方作動面２０ｄａから後方係止突起案内面２０ｄｂに亘るいずれかの面と接触すると、カム部２０ａは、回転子２３の前進に伴い、前方作動面２０ｄａ及び後方係止突起案内面２０ｄｂを介して前方案内面２３ｂａから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0055】

図２８は、図２７の状態から回転子２３を前進させた図である。図２７の状態から回転子２３を前進させると、前方案内面２３ｂａと、前方作動面２０ｄａから後方係止突起案内面２０ｄｂに亘るいずれかの面との接触が解除される。更に回転子２３を前進させると、係止突起２３ｂは、当該カム突起２０ｃと、当該カム突起２０ｃより回動方向後方に位置するカム突起２０ｃとの間に案内される。

【0056】

図２９は、図２６とは異なり、係止突起２３ｂの側壁前方がカム突起２０ｃの側壁後方とは接触しない場合を示した図である。カム突起基部２０ｄのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁後方には、前方係止突起案内面２０ｄｃが形成されている。後方案内面２３ｂｂ及び前方係止突起案内面２０ｄｃは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。

【0057】

後方案内面２３ｂｂと前方係止突起案内面２０ｄｃとが接触すると、カム部２０ａは、前方係止突起案内面２０ｄｃを介して後方案内面２３ｂｂから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。更に回転子２３を前進させると、後方案内面２３ｂｂと前方係止突起案内面２０ｄｃとの接触が解除され、図２８の状態となる。つまり、係止突起２３ｂは、当該カム突起２０ｃと、当該カム突起２０ｃより回動方向前方に位置するカム突起２０ｃとの間を通過する。なお係止突起２３ｂの側壁前方がカム突起２０ｃと一切接触せず、係止突起２３ｂが周方向に隣り合うカム突起２０ｃ間を通過する場合もある。

【0058】

以上のように、本実施形態においても、係止突起２３ｂの側壁前方がカム突起基部２０ｄ及びカム突起後方端部２０ｅに係止不可能なため、カム部２０ａの貫通孔２０ｂ後方から回転子２３を挿通させる際に、カム部２０ａ及び回転子２３の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【0059】

図３０は、回転子２３外観の図１０相当図である。図３０（ａ）の通り、本実施形態においても、作動突起２３ａの側壁前方の少なくとも一部が、係止突起２３ｂの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域Ｃの外側に位置する。具体的には、作動突起２３ａの側壁前方に形成されている作動面２３aａのうち回動方向前方の一部が、係止突起２３ｂの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域Ｃの外側に位置している。作動面２３ａａは、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面となっている。

【0060】

図３１は、図２８の状態から回転子２３を前進させた図である。カム部２０ａの貫通孔２０ｂ後方から回転子２３を挿入し係止突起２３ｂの側壁前方がカム突起基部２０ｄ及びカム突起後方端部２０ｅの各側壁後方と係止せず挿通が進んだ際に、作動面２３ａａのうち回動方向前方の一部が、係止突起２３ｂの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域Ｃの外側に位置し、係止突起２３ｂの最大周方向幅がカム突起２０ｃ間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起２３ａと係止突起２３ｂとが含まれる最小周方向幅がカム突起２０ｃ間の最小周方向幅より大きくなるため、後方作動面２０ｅａと作動面２３ａａとが接触する。カム部２０ａは、後方作動面２０ｅａを介して作動面２３aａから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0061】

図３２は、図３１の状態から回転子２３を前進させた図である。図３１の状態から回転子２３を前進させると、作動面２３ａａと後方作動面２０ｅａとの接触が解除される。更に回転子２３を前進させると、作動突起２３ａは、当該カム突起２０ｃと、当該カム突起２０ｃより回動方向後方に位置するカム突起２０ｃとの間に案内され、貫通孔２０ｂへの回転子２３の挿通が完了する。なお、環状突起２３ｃの側壁前方とカム突起２０ｃの側壁後方とが接触するため、これ以上回転子２３を前進させることは不可能である。

【0062】

図３３は、図３２の状態から回転子２３を後退させた図である。ボールペン１７を組み立てる工程において、カム部２０ａの貫通孔２０ｂの後方から回転子２３を挿通させる際に、不意に回転子２３が後退してしまう状態を想定している。カム突起基部２０ｄの側壁前方には、回動方向前方の突出係止面２０ｄｄと、回動方向後方の没入案内面２０ｄｅとの２つの平面が形成されている。また、係止突起２３ｂの側壁後方には、係止面２３ｂｃが形成されている。突出係止面２０ｄｄ及び没入案内面２０ｄｅと、係止面２３ｂｃとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。図３２の状態から回転子２３を後退させると、係止突起２３ｂの回転子２３外壁面からの径方向外側への高さは、係止突起２３ｂの側壁後方が、カム突起基部２０ｄの側壁前方に接触可能な高さであるため、係止面２３ｂｃと突出係止面２０ｄｄとが接触する。カム部２０ａは、突出係止面２０ｄｄを介して係止面２３ｂｃから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0063】

図３４は、図３３の状態から回転子２３を後退させた図である。係止突起２３ｂの回転子２３外壁面からの径方向外側への高さは、係止突起２３ｂの側壁後方が、カム突起基部２０ｄの側壁前方に接触可能な高さである。そのため、係止突起２３ｂの側壁後方は、カム突起２０ｃの側壁前方である、軸方向前方に没入案内面２０ｄｅが形成されているカム突起基部２０ｄの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。

【0064】

以上より、カム部２０ａの貫通孔２０ｂ後方から回転子２３を挿入し係止突起２３ｂの側壁前方がカム突起基部２０ｄ及びカム突起後方端部２０ｅの各側壁後方と係止せず挿通が進み、カム突起後方端部２０ｅの側壁後方と作動面２３ａａとが接触した後、回転子２３が貫通孔２０ｂ後方へ移動しても、カム部２０ａと回転子２３とが、係止突起２３ｂの側壁後方とカム突起２０ｃの側壁前方が接触し係止突起２３ｂの側壁後方がカム突起２０ｃの側壁前方に係止可能となる周方向位置に変位するため、回転子２３が貫通孔２０ｂから抜けないようカム部２０ａ及び回転子２３の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【0065】

図３０（ｂ）の通り、本実施形態においては、係止突起２３ｂの側壁後方の少なくとも一部が、作動突起２３ａの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域Ｄの外側に位置する。具体的には、係止突起２３ｂの側壁後方に形成されている係止面２３ｂｃのうち回動方向後方の一部が、作動突起２３ａの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域Ｄの外側に位置している。そのため、カム部２０ａの貫通孔２０ｂ後方から回転子２３を挿入し係止突起２３ｂの側壁前方がカム突起基部２０ｄ及びカム突起後方端部２０ｅの各側壁後方と係止せず挿通が進む際に、カム突起基部２０ｄの側壁後方又はカム突起後方端部２０ｅの側壁後方と、作動突起２３ａの側壁前方とが接触しやすくなることでカム部２０ａの回動可能な範囲をより確保できる。具体的には、図３１に示す、後方作動面２０ｅａと作動面２３ａａとが接触しやすくなることで、カム部２０ａの、後方作動面２０ｅａを介し作動面２３ａａから周方向の力を受けた回動方向前方への回動可能な範囲をより広く確保できる。よって、図３３に示すように、回転子２３がカム部２０ａ後方へ移動しても係止突起２３ｂの側壁後方とカム突起２０ｃの側壁前方が接触可能な周方向の幅をより多く設けることができるため、回転子２３が貫通孔２０ｂから抜けないようカム部２０ａ及び回転子２３の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【0066】

本発明の第４の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン２４について、第３の実施形態との主な相違点である回転子３０及びカム部２７ｂを中心に説明する。図３５（ａ）（ｂ）はボールペン２４の縦断面図である。図１同様、図３５（ｂ）は、図３５（ａ）の状態からボールペン１を９０°軸回転させた角度の縦断面図である。ボールペン２４は、中空筒状の軸筒２５内部に、筆記具本体２８を構成するボールペンリフィル２９及び回転子３０や、ノック体３２の一部等が配置され構成されている。軸筒２５は、前軸２６と後軸２７とが螺子螺合により結合して構成されている。筆記具本体２８は軸筒２５内部を前後動可能に配置されている。

【0067】

回転子３０の外壁面には、作動突起３０ａと係止突起３０ｂとが設けられている。回転子３０の後方は、有底筒状の部材であるノック体３２の前端開口部に挿入されている。ノック体３２の外壁面にはヒンジ構造を有する摺動突起３２ａが形成されている。摺動突起３２ａはノック体３２の外壁面において周方向に対向する位置に２か所設けられている。後軸２７には内外に貫通し軸方向に延びる孔である摺動孔２７ａが形成されている。摺動孔２７ａは周方向に対向する位置であって、摺動突起３２ａが挿入される位置に２か所設けられている。摺動突起３２ａは摺動孔２７ａに挿入される。ノック体３２の後方は後軸２７の後端開口部を介して軸筒２５外部へ露出して配置される。使用者がノック体３２の後端部を押圧することで、筆記具本体２８は軸筒２５内部を前進する。ノック体３２の前後動に伴い、摺動突起３２ａが摺動孔４ａ内を前後動するため、ノック体３２は軸筒２５に対して前後動のみ可能であり、軸回転は不可能である。回転子３０はノック体３２に固定はされておらず、ノック体３２の前後動に伴い軸回転可能である。また、回転子３０が下方に位置する状態でノック体３２のみを持っても、回転子３０がノック体３２から離脱及び落下しない程度に、回転子３０はノック体３２に遊嵌されている。

【0068】

前軸２６の内壁面前方には周方向に連なった環状の突起である段部２６ａが設けられている。パイプ２９ｂの前端面が段部２６ａに接触することで、筆記具本体２８の前進が止まる。パイプ２９ｂの外壁面には、コイルスプリング３１の後端と接触する２本のコイルスプリング後端用突起２９ｂａが周方向等間隔に設けられている。前軸２６の内壁面には、コイルスプリング３１の前端と接触する６本のコイルスプリング前端用リブ２６ｂが、周方向等間隔に設けられている。コイルスプリング３１は自然状態から縮んだ状態でコイルスプリング後端用突起２９ｂａとコイルスプリング前端用リブ２６ｂとにより挟持され、筆記具本体２８を常時後方に付勢している。摺動突起３２ａの後端面が、摺動孔２７ａを形成する縁部の後端面に接触することで、ボールペン２４の出没機構における筆記具本体２８の後退が止まる。

【0069】

後軸２７の内部にはカム部２７ｂが形成されており、カム部２７ｂの内壁面にはカム突起２７ｄが形成されている。第１の実施形態及び第３の実施形態と同様に、カム突起後方端部２７ｆはカム突起基部２７ｅの側壁後方のうち回動方向後方に形成されている。カム突起後方端部２７ｆの側壁後方には後方作動面２７ｆａが形成されており、カム突起基部２７ｅの側壁後方には前方作動面２７ｅａ及び後方係止突起案内面２７ｅｂが形成されている。

【0070】

図３６（ａ）（ｂ）は、回転子３０の外観図である。図４同様、図３６（ｂ）は、図３６（ａ）の状態から回転子３０を９０°軸回転させた角度の外観図である。本実施形態においては、係止突起３０ｂは、係止突起基部３０ｃと、係止突起基部３０ｃの側壁から前方に延び、係止突起基部３０ｃより回転子３０の外壁面からの径方向外側への高さが低い係止突起前方端部３０ｄと、で少なくとも構成されている。係止突起３０ｂの側壁前方と側壁後方とで回転子３０外壁面からの径方向外側への高さが異なるため、係止突起３０ｂの側壁後方とカム突起２７ｄの側壁前方との接触によるカム部２７ｂの回動に必要な係止突起基部３０ｃの回転子３０外壁面からの径方向外側への高さを確保でき、カム部２７ｂを確実に回動させることができる。

【0071】

ボールペン２４を組み立てる工程における、カム部２７ｂの貫通孔２７ｃの後方から回転子３０を挿通させる様子について説明する。図３７から図４４についても、図６から図９及び図１１から図１４と同様の構図で図示している。

【0072】

図３７は、係止突起前方端部３０ｄの側壁前方がカム突起２７ｄの側壁後方と接触する場合を示した図である。係止突起前方端部３０ｄの側壁前方には、回動方向前方の前方案内面３０ｄａと、回動方向後方の後方案内面３０ｄｂとの２つの平面が形成されている。前方案内面３０ｄａは、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜しており、前方作動面２７ｅａ及び後方係止突起案内面２７ｅｂと互いに向かい合う平面となっている。

【0073】

図３８は、図３７の状態から回転子３０を前進させた図である。係止突起前方端部３０ｄの側壁前方に形成されている前方案内面３０ｄａは、カム突起基部２７ｅの側壁後方の一部である前方作動面２７ｅａから後方係止突起案内面２７ｅｂに亘るいずれかの面と接触する。係止突起前方端部３０ｄの回転子３０外壁面からの径方向外側への高さは、回転子３０が貫通孔２７ｃ内に挿入された際に、係止突起前方端部３０ｄの側壁前方が、カム突起基部２７ｅの側壁後方に接触可能な高さであり、カム突起後方端部２７ｆの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方係止突起案内面２７ｅｂも、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面であるため、係止突起前方端部３０ｄの側壁前方は、カム突起基部２７ｅ及びカム突起後方端部２７ｆに係止不可能である。前方案内面３０ｄａが、前方作動面２７ｅａから後方係止突起案内面２７ｅｂに亘るいずれかの面と接触すると、カム部２７ｂは、回転子３０の前進に伴い、前方作動面２７ｅａ及び後方係止突起案内面２７ｅｂを介して前方案内面３０ｄａから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0074】

図３９は、図３８の状態から回転子３０を前進させた図である。図３８の状態から回転子３０を前進させると、前方案内面３０ｄａと、前方作動面２７ｅａから後方係止突起案内面２７ｅｂに亘るいずれかの面との接触が解除される。更に回転子３０を前進させると、係止突起３０ｂは、当該カム突起２７ｄと、当該カム突起２７ｄより回動方向後方に位置するカム突起２７ｄとの間に案内される。

【0075】

図４０は、図３７とは異なり、係止突起前方端部３０ｄの側壁前方がカム突起２７ｄの側壁後方とは接触しない場合を示した図である。カム突起基部２７ｅのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁後方には、前方係止突起案内面２７ｅｃが形成されている。後方案内面３０ｄｂ及び前方係止突起案内面２７ｅｃは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。

【0076】

後方案内面３０ｄｂと前方係止突起案内面２７ｅｃとが接触すると、カム部２７ｂは、前方係止突起案内面２７ｅｃを介して後方案内面３０ｄｂから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。更に回転子３０を前進させると、後方案内面３０ｄｂと前方係止突起案内面２７ｅｃとの接触が解除され、図３９の状態となる。つまり、係止突起３０ｂは、当該カム突起２７ｄと、当該カム突起２７ｄより回動方向前方に位置するカム突起２７ｄとの間を通過する。なお係止突起前方端部３０ｄの側壁前方がカム突起２７ｄと一切接触せず、係止突起３０ｂが周方向に隣り合うカム突起２７ｄ間を通過する場合もある。

【0077】

以上のように、係止突起前方端部３０ｄの側壁前方がカム突起基部２７ｅ及びカム突起後方端部２７ｆに係止不可能なため、カム部２７ｂの貫通孔２７ｃ後方から回転子３０を挿通させる際に、カム部２７ｂ及び回転子３０の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【0078】

本実施形態においても、作動突起３０ａの側壁前方の少なくとも一部が、係止突起３０ｂの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置する。具体的には、作動突起３０ａの側壁前方に形成されている作動面３０ａａのうち回動方向前方の一部が、係止突起３０ｂの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置している。作動面３０ａａは、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面となっている。

【0079】

図４１は、図３９の状態から回転子３０を前進させた図である。カム部２７ｂの貫通孔２７ｃ後方から回転子３０を挿入し係止突起前方端部３０ｄの側壁前方がカム突起基部２７ｅ及びカム突起後方端部２７ｆの各側壁後方と係止せず挿通が進んだ際に、作動面３０ａａのうち回動方向前方の一部が、係止突起３０ｂの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置し、係止突起３０ｂの最大周方向幅がカム突起２７ｄ間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起３０ａと係止突起３０ｂとが含まれる最小周方向幅がカム突起２７ｄ間の最小周方向幅より大きくなるため、後方作動面２７ｆａと作動面３０ａａとが接触する。カム部２７ｂは、後方作動面２７ｆａを介して作動面３０ａａから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0080】

図４２は、図４１の状態から回転子３０を前進させた図である。図４１の状態から回転子３０を前進させると、作動面３０ａａと後方作動面２７ｆａとの接触が解除される。更に回転子３０を前進させると、作動突起３０ａは、当該カム突起２７ｄと、当該カム突起２７ｄより回動方向後方に位置するカム突起２７ｄとの間に案内され、貫通孔２７ｃへの回転子３０の挿通が完了する。なお、環状突起３０ｆの側壁前方とカム突起２７ｄの側壁後方とが接触するため、これ以上回転子３０を前進させることは不可能である。

【0081】

図４３は、図４２の状態から回転子３０を後退させた図である。ボールペン２４を組み立てる工程において、カム部２７ｂの貫通孔２７ｃの後方から回転子３０を挿通させる際に、不意に回転子３０が後退してしまう状態を想定している。カム突起基部２７ｅの側壁前方には、回動方向前方の突出係止面２７ｅｄと、回動方向後方の没入案内面２７ｅｅとの２つの平面が形成されている。また、係止突起３０ｂの側壁後方である係止突起基部３０ｃの側壁後方には、係止面３０ｃaが形成されている。突出係止面２７ｅｄ及び没入案内面２７ｅｅと、係止面３０ｃaとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。図４２の状態から回転子３０を後退させると、係止突起３０ｂの回転子３０外壁面からの径方向外側への高さは、係止突起３０ｂの側壁後方である係止突起基部３０ｃの側壁後方が、カム突起基部２７ｅの側壁前方に接触可能な高さであるため、係止面３０ｃaと突出係止面２７ｅｄとが接触する。カム部２７ｂは、突出係止面２７ｅｄを介して係止面３０ｃaから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。

【0082】

図４４は、図４３の状態から回転子３０を後退させた図である。係止突起３０ｂの回転子３０外壁面からの径方向外側への高さは、係止突起３０ｂの側壁後方である係止突起基部３０ｃの側壁後方が、カム突起基部２７ｅの側壁前方に接触可能な高さである。そのため、係止突起３０ｂの側壁後方である係止突起基部３０ｃの側壁後方は、カム突起２７ｄの側壁前方である、軸方向前方に没入案内面２７ｅｅが形成されているカム突起基部２７ｅの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。

【0083】

以上より、カム部２７ｂの貫通孔２７ｃ後方から回転子３０を挿入し係止突起前方端部３０ｄの側壁前方がカム突起基部２７ｅ及びカム突起後方端部２７ｆの各側壁後方と係止せず挿通が進み、カム突起後方端部２７ｆの側壁後方と作動面３０ａａとが接触した後、回転子３０が貫通孔２７ｃ後方へ移動しても、カム部２７ｂと回転子３０とが、係止突起３０ｂの側壁後方とカム突起２７ｄの側壁前方が接触し係止突起３０ｂの側壁後方がカム突起２７ｄの側壁前方に係止可能となる周方向位置に変位するため、回転子３０が貫通孔２７ｃから抜けないようカム部２７ｂ及び回転子３０の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【0084】

本実施形態においても、係止突起３０ｂの側壁後方の少なくとも一部が、作動突起３０ａの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置する。具体的には、係止突起３０ｂの側壁後方である係止突起基部３０ｃの側壁後方に形成されている係止面３０ｃaのうち回動方向後方の一部が、作動突起３０ａの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置している。そのため、カム部２７ｂの貫通孔２７ｃ後方から回転子３０を挿入し係止突起前方端部３０ｄの側壁前方がカム突起基部２７ｅ及びカム突起後方端部２７ｆの各側壁後方と係止せず挿通が進む際に、カム突起後方端部２７ｆの側壁後方と、作動突起３０ａの側壁前方とが接触しやすくなることでカム部２７ｂの回動可能な範囲をより確保できる。具体的には、図４１に示すような、後方作動面２７ｆａと作動面３０ａａとの接触がしやすくなることで、カム部２７ｂの、後方作動面２７ｆａを介し作動面３０ａａから周方向の力を受けた回動方向前方への回動可能な範囲をより広く確保できる。よって、図４３に示すように、回転子３０がカム部２７ｂ後方へ移動しても係止突起３０ｂの側壁後方とカム突起２７ｄの側壁前方が接触可能な周方向の幅をより多く設けることができるため、回転子３０が貫通孔２７ｃから抜けないようカム部２７ｂ及び回転子３０の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。

【0085】

図４５から図５０を参照しつつ、ボールペン２４を例に、本発明の実施形態に係る出没式筆記具の出没機構について説明する。図４５から図５０についても、図６から図９及び図１１から図１４と同様の構図で図示している。

【0086】

図４５は、筆記具本体２８が軸筒２５内部において最も後退した状態を示した図であり、没入状態における回転子３０及びカム部２７ｂの位置関係を示している。

【0087】

図４６は、図４５の状態から筆記具本体２８を前進させた図である。図４５の状態から筆記具本体２８を前進すると、作動面３０ａａと後方作動面２７ｆａとが接触する。

【0088】

図４７は、図４６の状態から筆記具本体２８を前進させた図である。この状態が、筆記具本体２８が軸筒２５内部において最も前進した状態である。図４６の状態から、筆記具本体２８を前進させると、カム部２７ｂは回動方向前方へ回動する。パイプ２９ｂの前端面が段部２６ａに接触して筆記具本体２８の前進が止まると、カム部２７ｂの回動も止まり、図４７に示す状態となる。

【0089】

図４８は、図４７の状態から筆記具本体２８を後退させた図である。図４７の状態から筆記具本体２８を後退させると、係止面３０ｃaと突出係止面２７ｅｄとが接触する。

【0090】

図４９は、図４８の状態から筆記具本体２８を後退させた図であり、突出状態における回転子３０及びカム部２７ｂの位置関係を示している。図４８の状態から筆記具本体２８を後退させると、カム部２７ｂは、突出係止面２７ｅｄを介して係止面３０ｃaから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動し、軸方向前方に没入案内面２７ｅｅが形成されているカム突起基部２７ｅの回動方向前方の側壁と、係止突起３０ｂの側壁後方のうち回動方向後方が接触することで、筆記具本体２８の後退及びカム部２７ｂの回動が止まり、図４９に示す状態となる。

【0091】

図５０は、図４９の状態から筆記具本体２８を前進させた図である。図４９の状態から筆記具本体２８を前進させると、作動面３０ａａと前方作動面２７ｅａとが接触する。筆記具本体２８を更に前進させると、カム部２７ｂは、前方作動面２７ｅａを介して作動面３０ａａから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。パイプ２９ｂの前端面が段部２６ａに接触して筆記具本体２８の前進が止まると、カム部２７ｂの回動が止まる。

【0092】

その後筆記具本体２８を後退させると、係止面３０ｃａと没入案内面２７ｅｅとが接触する。カム部２７ｂは、没入案内面２７ｅｅを介して係止面３０ｃａから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。カム部２７ｂが、没入案内面２７ｅｅと係止面３０ｃａとの接触が解除されるまで回動し、更に筆記具本体２８を後退させると、摺動突起３２ａの後端面が、摺動孔２７ａを形成する縁部の後端面に接触することで、筆記具本体２８の後退が止まり、図４５に示す没入状態となる。

【0093】

各実施形態に係る各樹脂成形品の材質は、成形性や耐久性などを考慮して、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ＡＢＳ樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、又は、これらの樹脂を含む複合材などを適宜選択することができる。また、成形方法も様々な方法を適宜選択することができる。

【符号の説明】

【0094】

１ ボールペン
２ 軸筒
３ 前軸
３ａ 段部
３ｂ コイルスプリング前端用リブ
４ 後軸
４ａ 摺動孔
４ｂ カム部
４ｃ 貫通孔
４ｄ カム突起
４ｅ カム突起基部
４ｅａ 前方作動面
４ｅｂ 後方係止突起案内面
４ｅｃ 前方係止突起案内面
４ｅｄ 突出係止面
４ｅｅ 没入案内面
４ｆ カム突起後方端部
４ｆａ 後方作動面
５ 筆記具本体
６ ボールペンリフィル
６ａ ボールペンチップ
６ｂ パイプ
６ｂａ コイルスプリング後端用突起
７ 回転子
７ａ 作動突起
７ａａ 作動面
７ｂ 係止突起
７ｂａ 前方案内面
７ｂｂ 後方案内面
７ｂｃ 係止面
７ｃ 環状突起
８ コイルスプリング
９ ノック体
９ａ 摺動突起
１０ ボールペン
１１ 軸筒
１２ 前軸
１３ 後軸
１３ａ カム部
１３ｂ 貫通孔
１３ｃ カム突起
１３ｄ カム突起基部
１３ｄａ 後方作動面
１３ｄｂ 後方係止突起案内面
１３ｄｃ 前方係止突起案内面
１３ｄｄ 突出係止面
１３ｄｅ 没入案内面
１３ｅ カム突起後方端部
１３ｅａ 前方作動面
１４ 筆記具本体
１５ ボールペンリフィル
１６ 回転子
１６ａ 作動突起
１６ａａ 作動面
１６ｂ 係止突起
１６ｂａ 前方案内面
１６ｂｂ 後方案内面
１６ｂｃ 係止面
１６ｃ 環状突起
１７ ボールペン
１８ 軸筒
１９ 前軸
２０ 後軸
２０ａ カム部
２０ｂ 貫通孔
２０ｃ カム突起
２０ｄ カム突起基部
２０ｄａ 前方作動面
２０ｄｂ 後方係止突起案内面
２０ｄｃ 前方係止突起案内面
２０ｄｄ 突出係止面
２０ｄｅ 没入案内面
２０ｅ カム突起後方端部
２０ｅａ 後方作動面
２１ 筆記具本体
２２ ボールペンリフィル
２３ 回転子
２３ａ 作動突起
２３ａａ 作動面
２３ｂ 係止突起
２３ｂａ 前方案内面
２３ｂｂ 後方案内面
２３ｂｃ 係止面
２３ｃ 環状突起
２４ ボールペン
２５ 軸筒
２６ 前軸
２６ａ 段部
２６ｂ コイルスプリング前端用リブ
２７ 後軸
２７ａ 摺動孔
２７ｂ カム部
２７ｃ 貫通孔
２７ｄ カム突起
２７ｅ カム突起基部
２７ｅａ 前方作動面
２７ｅｂ 後方係止突起案内面
２７ｅｃ 前方係止突起案内面
２７ｅｄ 突出係止面
２７ｅｅ 没入案内面
２７ｆ カム突起後方端部
２７ｆａ 後方作動面
２８ 筆記具本体
２９ ボールペンリフィル
２９ａ ボールペンチップ
２９ｂ パイプ
２９ｂａ コイルスプリング後端用突起
３０ 回転子
３０ａ 作動突起
３０ａａ 作動面
３０ｂ 係止突起
３０ｃ 係止突起基部
３０ｃａ 係止面
３０ｄ 係止突起前方端部
３０ｄａ 前方案内面
３０ｄｂ 後方案内面
３０ｆ 環状突起
３１ コイルスプリング
３２ ノック体
３２ａ 摺動突起

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】