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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121131
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20240830BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G03F7/42
H01L21/304 643A
H01L21/30 572B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028051
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 優大
【テーマコード(参考)】
2H196
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196JA04
2H196LA03
5F146MA02
5F146MA10
5F146MA17
5F157AA42
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB49
5F157AB90
5F157BC13
5F157BE23
5F157BE43
(57)【要約】
【課題】硫酸の使用量の低減に寄与しつつも、基板上の有機層を適切に除去できる技術を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、保持工程S1と、第1工程S3と、第2工程S4と、第3工程S5とを備える。保持工程S1では、第1硬化層、非硬化層および第2硬化層を有する有機層が主面に形成された基板を保持する。第1工程S3では、硫酸および過酸化水素水の混合液を基板の主面に供給して、第1硬化層を除去する。第2工程S4は、第1工程S1の後に、第1工程S1での混合液の反応性よりも反応性が低くなる混合比で混合された混合液を、基板の主面に供給して、非硬化層を除去する。第3工程S5では、第2工程S4の後に、第2工程S4での混合液の反応性よりも反応性が高くなる混合比で混合された混合液を、基板の主面に供給して、第2硬化層を除去する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1硬化層、非硬化層および第2硬化層を有する有機層が主面に形成された基板の前記有機層を除去する基板処理方法であって、
前記基板を保持する保持工程と、
硫酸および過酸化水素水の混合液を前記基板の前記主面に供給して、前記第1硬化層を除去する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記第1工程での前記混合液の反応性よりも反応性が低くなる混合比で混合された前記混合液を、前記基板の前記主面に供給して、前記非硬化層を除去する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記第2工程での前記混合液の反応性よりも反応性が高くなる混合比で混合された前記混合液を、前記基板の前記主面に供給して、前記第2硬化層を除去する第3工程と
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記第1工程および前記第3工程の少なくともいずれか一方において、液滴状態で前記混合液を前記基板の前記主面に供給し、
前記第2工程において、連続流の状態で前記混合液を前記基板の前記主面に供給する、基板処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記第3工程の後に、連続流の状態で前記混合液を前記基板の前記主面に供給する仕上げSPM工程をさらに備え、
前記第3工程において、液滴状態で前記混合液を前記基板の前記主面に供給する、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記第2工程における前記混合液の硫酸濃度は、前記第1工程における前記混合液の硫酸濃度よりも低い、基板処理方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記第2工程における前記混合液の硫酸濃度は、前記第1工程における前記混合液の硫酸濃度よりも高く、
前記第2工程において、タンクに貯留された硫酸を、給液管を通じて、前記基板の前記主面に供給し、前記基板の前記主面を経由した前記混合液を、回収管を通じて前記タンクに戻す、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板のレジストを除去する枚葉式の基板処理装置が提案されている。(例えば特許文献1)。特許文献1では、基板処理装置は、硫酸および過酸化水素水の混合液(以下、SPM液とも呼ぶ)を基板に供給することにより、レジストを除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-026489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レジストには、硬化層が含まれる。例えば、基板に対して不純物を注入する不純物注入工程によって、レジストには硬化層および非硬化層が形成される。硬化層は、レジストのうちの露出した表面側の部分(第1硬化層と呼ぶ)のみならず、基板の主面側の部分(第2硬化層と呼ぶ)にも形成され得る。このため、レジストの内部の非硬化層よりも下側にも第2硬化層の一部が形成され得る。このような第1硬化層および第2硬化層は非硬化層よりも除去されにくい。逆に言えば、非硬化層は第1硬化層および第2硬化層に比べて除去されやすい。
【0005】
このような第1硬化層、非硬化層および第2硬化層を有するレジストを除去するためには、高反応性を有する濃度で混合されたSPM液を常に用いることが最善とは限らない。特に、環境負荷を軽減するために硫酸の使用量を低減させることが要求されており、硫酸の使用量の低減という観点で、SPM液の濃度に関してなお工夫の余地があった。
【0006】
そこで、本開示は、硫酸の使用量の低減に寄与しつつも、基板上の有機層を適切に除去できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、第1硬化層、非硬化層および第2硬化層を有する有機層が主面に形成された基板の前記有機層を除去する基板処理方法であって、前記基板を保持する保持工程と、硫酸および過酸化水素水の混合液を前記基板の前記主面に供給して、前記第1硬化層を除去する第1工程と、前記第1工程の後に、前記第1工程での前記混合液の反応性よりも反応性が低くなる混合比で混合された前記混合液を、前記基板の前記主面に供給して、前記非硬化層を除去する第2工程と、前記第2工程の後に、前記第2工程での前記混合液の反応性よりも反応性が高くなる混合比で混合された前記混合液を、前記基板の前記主面に供給して、前記第2硬化層を除去する第3工程とを備える。
【0008】
第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記第1工程および前記第3工程の少なくともいずれか一方において、液滴状態で前記混合液を前記基板の前記主面に供給し、前記第2工程において、連続流の状態で前記混合液を前記基板の前記主面に供給する。
【0009】
第3の態様は、第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記第3工程の後に、連続流の状態で前記混合液を前記基板の前記主面に供給する仕上げSPM工程をさらに備え、前記第3工程において、液滴状態で前記混合液を前記基板の前記主面に供給する。
【0010】
第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記第2工程における前記混合液の硫酸濃度は、前記第1工程における前記混合液の硫酸濃度よりも低い。
【0011】
第5の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記第2工程における前記混合液の硫酸濃度は、前記第1工程における前記混合液の硫酸濃度よりも高く、前記第2工程において、タンクに貯留された硫酸を、給液管を通じて、前記基板の前記主面に供給し、前記基板の前記主面を経由した前記混合液を、回収管を通じて前記タンクに戻す。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様によれば、第1工程および第3工程では、反応性の高い混合液を利用するので、第1硬化層および第2硬化層をより適切に除去することができる。第2工程では、第1硬化層および第2硬化層に比べて柔らかい非硬化層を除去する。このため、反応性の低い混合比で混合された混合液でも、非硬化層を適切に除去することができる。しかも、第2工程では、第1工程および第3工程とは異なる混合比を採用できるので、硫酸の使用量を低減させる混合比を採用することもできる。
【0013】
第2の態様によれば、第1工程および第3工程の少なくともいずれか一方において、液滴による物理力を硬化層に作用させることができる。このため、硬化層をさらに適切に除去することができる。第2工程では、連続流の状態で混合液を基板に供給するので、液滴を生成するためのガスを使用する必要がなく、ランニングコストを低減させることができる。
【0014】
第3の態様によれば、有機層の残渣の発生を抑制することができる。
【0015】
第4の態様によれば、硫酸の使用量を低減させることができる。
【0016】
第5の態様によれば、硫酸濃度の高い混合液をタンクに戻すので、硫酸を再利用することができる。このため、硫酸の実質的な使用量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図2】基板の一部の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図3】制御部の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図4】第1の実施の形態にかかる処理部の構成の一例を概略的に示す図である。
図5】基板処理の一例を示すフローチャートである。
図6】各ステップにおける処理部の様子の一例を概略的に示す図である。
図7】硫酸の第1流量および過酸化水素水の第2流量およびSPM液の硫酸濃度の時間変化の一例を示すグラフである。
図8】各ステップの直後の基板Wの一部の構成の一例を示す図である。
図9】第2の実施の形態にかかる処理部1の構成の第1例を示す図である。
図10】各ステップにおける処理部の様子の一例を概略的に示す図である。
図11】処理部の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図12】第2の実施の形態にかかる処理部1の構成の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ実施の形態について詳細に説明する。なお図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また同様な構成及び機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。
【0019】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0020】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序に限定されるものではない。
【0021】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0022】
<第1の実施の形態>
<基板処理装置の全体構成>
図1は、基板処理装置100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。基板Wは板状の形状を有している。基板Wは、例えば、半導体基板であり、円板形状を有する。基板Wのサイズは特に制限されないものの、その直径は例えば約300mmである。なお、基板Wは必ずしも半導体基板に限らず、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板および光磁気ディスク用基板等の各種基板を基板Wに適用可能である。また基板の形状も円板形状に限らず、例えば矩形の板状形状など種々の形状を適用できる。
【0023】
図2は、基板Wの一部の構成の一例を概略的に示す断面図である。基板Wの主面には、パターンPTおよびレジスト層Rが形成されている。パターンPTは、半導体デバイスを構成するためのパターンであり、種々の層によって形成され得る。レジスト層Rは有機層である。図2の例では、レジスト層Rが一つのパターンPTを覆っている。これらのパターンPTおよびレジスト層Rは、基板処理装置100への搬送前に、レジスト形成装置(不図示)によって基板Wの主面上に形成される。
【0024】
また、当該基板Wには、基板処理装置100への搬送前に、不純物注入装置(不図示)によって不純物が注入される。この不純物注入工程では、高エネルギーかつ高電流のイオン注入、あるいは、プラズマドーピングが行われる。この不純物注入工程によって、基板Wのレジスト層Rが部分的に変質し、レジスト層Rに第1硬化層Ra、非硬化層Rbおよび第2硬化層Rcが形成される。言い換えれば、レジスト層Rは、第1硬化層Ra、非硬化層Rbおよび第2硬化層Rcによって構成される。
【0025】
第1硬化層Raは主としてレジスト層Rのうち露出した表面側の部分であり、不純物注入工程によって硬化した部分である。図2の例では、非硬化層Rbは、レジスト層Rのうち内部の部分であり、ほとんど硬化していない部分である。第2硬化層Rcは、レジスト層Rのうち第1硬化層Raよりも下側の部分であり、その一部が非硬化層Rbの直下にも位置している。第2硬化層Rcも、不純物注入工程によって硬化した部分である。このような構造において、第2硬化層Rcは第1硬化層Raよりも下側(基板W側)に位置し、第2硬化層Rcの少なくとも一部の上面(基板Wとは反対側の面)は非硬化層Rbによって覆われている。また、非硬化層Rbの上面(基板Wとは反対側の面)は第1硬化層Raによって覆われており、非硬化層Rbの側面は第1硬化層Raおよび第2硬化層Rcによって覆われている。第1硬化層Raおよび第2硬化層Rcは非硬化層Rbよりも硬く、除去されにくい。
【0026】
基板処理装置100は、基板Wのレジスト層Rを除去する有機物除去処理を行う。図1の例では、基板処理装置100は、インデクサブロック110と、処理ブロック120と、制御部90とを含む。インデクサブロック110は、処理ブロック120と外部との間で基板Wを搬出入するためのインターフェース部である。処理ブロック120は、主として、インデクサブロック110から受け取った基板Wを処理する部分である。制御部90は、基板処理装置100を統括的に制御する部分である。
【0027】
<インデクサブロック110>
図1の例では、インデクサブロック110は、複数のロードポート111と、インデクサロボット112とを含む。各ロードポート111は、外部から搬入された基板収容器(以下、キャリアCと呼ぶ)を保持する。キャリアCには、複数の基板Wが鉛直方向に並んだ状態で収容される。インデクサロボット112は、キャリアCと処理ブロック120との間で基板Wを搬送する搬送ユニットである。インデクサロボット112はキャリアCから未処理の基板Wを順次に取り出し、該基板Wを処理ブロック120に搬送する。また、インデクサロボット112は、処理ブロック120によって処理された処理済みの基板Wを処理ブロック120から順次に受け取り、該基板WをキャリアCに収容する。処理済みの複数の基板Wを収容したキャリアCはロードポート111から外部に搬出される。
【0028】
<処理ブロック120>
図1の例では、処理ブロック120は、1つ以上の処理部1と、センターロボット122とを含んでいる。図1の例では、処理ブロック120は複数の処理部1を含む。センターロボット122は、インデクサロボット112および処理部1の間で基板Wを搬送する搬送ユニットである。センターロボット122はインデクサロボット112からの未処理の基板Wを処理部1に搬入し、処理部1によって処理された処理済みの基板Wを処理部1から搬出する。センターロボット122は、必要に応じて基板Wを他の処理部1に搬送した後に、基板Wをインデクサロボット112に渡す。
【0029】
各処理部1は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。処理部1の具体的な構成の一例については後に詳述する。
【0030】
<制御部90>
制御部90は、基板処理装置100を統括的に制御する。具体的には、制御部90はインデクサロボット112、センターロボット122および処理部1を制御する。図3は、制御部90の構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御部90は電子回路であって、例えばデータ処理部91および記憶部92を有している。図3の具体例では、データ処理部91と記憶部92とはバス93を介して相互に接続されている。データ処理部91は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部92は非一時的な記憶部(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)921および一時的な記憶部(例えばRAM(Random Access Memory))922を有していてもよい。非一時的な記憶部921には、例えば制御部90が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理部91がこのプログラムを実行することにより、制御部90が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部90が実行する処理の一部または全部が専用の論理回路などのハードウェアによって実行されてもよい。
【0031】
<処理部>
図4は、第1の実施の形態にかかる処理部1の構成の一例を概略的に示す図である。なお、基板処理装置100に属する全ての処理部1が、図4に例示された構成を有している必要はない。基板処理装置100の少なくとも一つの処理部1が、図4に例示された構成を有していればよい。
【0032】
処理部1は硫酸および過酸化水素水の混合液(以下、SPM液と呼ぶ)を基板Wの主面に供給することで、基板Wに対して有機物除去処理を行う。ここでは、基板Wの主面には、有機層の一例であるレジスト層Rが形成されている。図4に示されるように、処理部1は、基板保持部2と、第1ノズル3とを含んでいる。
【0033】
図4の例では、処理部1はチャンバ10も含んでいる。チャンバ10は箱形の形状を有している。チャンバ10の内部空間は、基板Wを処理する処理空間に相当する。チャンバ10には、開閉可能な搬出入口(不図示)が設けられる。センターロボット122は搬出入口を通じて未処理の基板Wをチャンバ10内に搬入し、また、搬出入口を通じて処理済みの基板Wをチャンバ10から搬出する。基板Wは、例えば、レジスト層Rを有する主面が鉛直上方を向く姿勢でチャンバ10内に搬入される。つまり、ここでは、レジスト層Rが形成された基板Wの主面が上面となる。
【0034】
基板保持部2はチャンバ10内に設けられている。基板保持部2には、センターロボット122から基板Wが受け渡される。基板保持部2は基板Wを水平姿勢で保持しつつ、基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させる。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。回転軸線Q1は、基板Wの中心を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸線である。このような基板保持部2はスピンチャックとも呼ばれ得る。ここでは、基板保持部2は、レジスト層Rを有する主面が鉛直上方を向いた姿勢で、基板Wを保持する。
【0035】
図4の例では、基板保持部2は、スピンベース21と、複数のチャックピン22と、回転駆動部23とを含んでいる。スピンベース21は板状の形状(例えば円板形状)を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。
【0036】
複数のチャックピン22はスピンベース21の上面に設けられている。複数のチャックピン22は回転軸線Q1についての周方向に沿って例えば等間隔に設けられる。複数のチャックピン22は、次に説明する保持位置と解除位置との間で変位可能に設けられる。保持位置とは、チャックピン22が基板Wの周縁に当接する位置である。複数のチャックピン22がそれぞれの保持位置で停止することにより、複数のチャックピン22が基板Wを保持する。図4では、保持位置で停止したチャックピン22が示されている。解除位置とは、各チャックピン22が基板Wから離れた位置である。複数のチャックピン22がそれぞれの解除位置で停止することにより、チャックピン22による基板Wの保持が解除される。基板保持部2は、チャックピン22を変位させるピン駆動部(不図示)も含む。ピン駆動部は、例えばモータまたはエアシリンダ等の駆動源を含み、制御部90によって制御される。
【0037】
回転駆動部23はシャフト231とモータ232とを含んでいる。シャフト231の上端はスピンベース21の下面に接続されており、シャフト231はスピンベース21の下面から回転軸線Q1に沿って延びている。モータ232は制御部90によって制御され、シャフト231を回転軸線Q1のまわりで回転させる。これにより、スピンベース21、チャックピン22および基板Wが回転軸線Q1のまわりで一体に回転する。
【0038】
なお、基板保持部2は必ずしもチャックピン22を有している必要はない。例えば、基板保持部2は、真空チャック、静電チャックおよびベルヌーイチャック等のチャック方式により、基板Wを保持してもよい。
【0039】
第1ノズル3はチャンバ10内において、基板保持部2によって保持された基板Wよりも鉛直上方に設けられている。第1ノズル3は、基板保持部2によって保持された基板Wの主面に向かって、処理液を吐出する。図4の例では、第1ノズル3は、処理液として硫酸および過酸化水素水を混合したSPM液を吐出可能である。
【0040】
処理部1は、可変の濃度でSPM液を第1ノズル3から吐出させることが可能である。図4の例では、第1ノズル3は給液管31の下流端に接続され、給液管31の上流端は混合部4に接続されている。混合部4は第1給液管41aおよび第2給液管41bにも接続されている。混合部4には、第1給液管41aを通じて硫酸が流入し、第2給液管41bを通じて二酸化炭素水が流入する。これにより、混合部4において硫酸および過酸化水素水が混ざり合う。混合部4は、硫酸および過酸化水素水が混合したSPM液を給液管31に供給する。図4の例では、給液管31、第1給液管41aおよび第2給液管41bが互いに接続されており、その接続部が混合部4として機能する。
【0041】
第1給液管41aには、第1供給バルブ42aおよび第1流量調整バルブ43aが介挿されている。また、第1給液管41aの上流端は硫酸供給源45aに接続されている。第1供給バルブ42aが開くことにより、硫酸供給源45aからの硫酸が第1給液管41aを通じて給液管31に供給される。第1流量調整バルブ43aは、第1給液管41aを流れる硫酸の第1流量を調整する。第1供給バルブ42aおよび第1流量調整バルブ43aは制御部90によって制御される。図4の例では、第1給液管41aには第1流量センサ44aも設けられている。第1流量センサ44aは、第1給液管41aを流れる硫酸の第1流量を測定する。第1流量調整バルブ43aは、第1給液管41aを流れる硫酸の第1流量を、第1流量センサ44aの測定結果に基づいて調整する。第1流量調整バルブ43aおよび第1流量センサ44aの一組はマスフローコントローラであってもよい。
【0042】
第2給液管41bには、第2供給バルブ42bおよび第2流量調整バルブ43bが介挿されている。また、第2給液管41bの上流端は過酸化水素水供給源45bに接続されている。第2供給バルブ42bが開くことにより、過酸化水素水供給源45bからの過酸化水素水が第2給液管41bを通じて給液管31に供給される。第2流量調整バルブ43bは、第2給液管41bを流れる過酸化水素水の第2流量を調整する。第2供給バルブ42bおよび第2流量調整バルブ43bは制御部90によって制御される。図4の例では、第2給液管41bには第2流量センサ44bも設けられている。第2流量センサ44bは、第2給液管41bを流れる過酸化水素水の第2流量を測定する。第2流量調整バルブ43bは、第2給液管41bを流れる過酸化水素水の第2流量を、第2流量センサ44bの測定結果に基づいて調整する。第2流量調整バルブ43bおよび第2流量センサ44bの一組はマスフローコントローラであってもよい。
【0043】
このような構成によれば、硫酸の第1流量および過酸化水素水の第2流量に応じた混合比で混合されたSPM液が給液管31を流れる。SPM液は給液管31を通じて第1ノズル3に供給され、第1ノズル3から吐出される。
【0044】
第1給液管41aにはヒータ(不図示)が設けられてもよい。ヒータは、第1給液管41aを流れる硫酸を加熱して、硫酸の温度を処理に適した温度まで上昇させる。例えば、ヒータは、硫酸の温度を例えば、常温よりも高く、かつ、摂氏170度以下の範囲に調整してもよい。ヒータは制御部90によって制御される。ヒータは、例えば電熱線を有する電気抵抗式のヒータであってもよい。
【0045】
図4の例では、第1ノズル3はスプレーノズルである。第1ノズル3は例えば二流体ノズルである。第1ノズル3は、内部混合型のスプレーノズルであってもよく、外部混合型のスプレーノズルであってもよい。
【0046】
なお、第1ノズル3の種類は特に制限されない。例えば、第1ノズル3は、連続流の状態でSPM液を単一の吐出口から吐出するストレートノズルであってもよい。あるいは、第1ノズル3は、連続流の状態でSPM液を複数の吐出口から吐出するシャワーノズルであってもよい。あるいは、第1ノズル3は、SPM液の蒸気を吐出するスチームノズルであってもよい。この場合、硫酸供給源45aは硫酸の蒸気を第1給液管41aに供給し、過酸化水素水供給源45bは過酸化水素水の蒸気を第2給液管41bに供給する。ここでは一例として、第1ノズル3はスプレーノズルである。
【0047】
図4の例では、第1ノズル3には、給気管51の下流端も接続されており、給気管51の上流端はガス供給源55に接続されている。給気管51には、ガスバルブ52および流量調整バルブ53が介挿されている。ガスバルブ52が開くことにより、ガス供給源55からの高圧の不活性ガスが給気管51を通じて第1ノズル3に供給される。第1ノズル3に供給された不活性ガスはSPM液と混ざり合って、SPM液の状態を液滴状態に変化させる。これにより、第1ノズル3は液滴状態のSPM液を吐出する。一方、ガスバルブ52が閉じることにより、第1ノズル3への不活性ガスの供給が停止する。流量調整バルブ53は、給気管51を流れる不活性ガスの流量を調整する。ガスバルブ52および流量調整バルブ53は制御部90によって制御される。図4の例では、給気管51には流量センサ54も設けられている。流量センサ54は、給気管51を流れる不活性ガスの流量を測定する。流量調整バルブ53は、給気管51を流れる過酸化水素水の流量を、流量センサ54の測定結果に基づいて調整する。流量調整バルブ53および流量センサ54の一組はマスフローコントローラであってもよい。不活性ガスは、例えば、窒素ガスおよび希ガス(例えばアルゴンガス)の少なくともいずれか一方を含む。
【0048】
図4の例では、処理部1はノズル移動駆動部34も含んでいる。ノズル移動駆動部34は制御部90によって制御され、第1ノズル3をチャンバ10内で移動させる。具体的には、ノズル移動駆動部34は第1ノズル3を、次に説明する第1処理位置と第1待機位置との間で移動させる。第1処理位置は、第1ノズル3が、基板保持部2によって保持された基板Wの主面に向かってSPM液を吐出する位置であり、基板Wの主面と鉛直方向において対向する位置である。図4の例では、第1処理位置で停止した第1ノズル3が示されている。第1待機位置は、第1ノズル3が、基板保持部2によって保持された基板Wの主面に向かってSPM液を吐出しない位置であり、例えば、基板Wよりも径方向外側の位置である。
【0049】
図4の例では、ノズル移動駆動部34は、アーム35と、支持柱36と、回転駆動部37とを含んでいる。支持柱36は、鉛直方向に沿って延びる柱状の形状を有し、平面視において、後述のガード71よりも径方向外側に設けられている。アーム35は、水平方向に沿って延びる棒状の形状を有しており、その基端部が支持柱36に接続され、その先端部が第1ノズル3に接続されている。回転駆動部37は、制御部90によって制御されるモータ(不図示)を含んでおり、支持柱36をその中心軸線Q2のまわりで所定の角度範囲で正逆方向に回転させる。これにより、第1ノズル3は、中心軸線Q2についての周方向に沿って往復移動する。支持柱36は、第1ノズル3の移動軌跡上に第1処理位置および第1待機位置が位置するように、設置される。なお、ノズル移動駆動部34は必ずしも上記構成を有している必要はなく、例えばボールねじ機構またはリニアモータ等の直動駆動部を含んでいてもよい。
【0050】
第1ノズル3が第1処理位置に位置する状態で、第1ノズル3が回転中の基板Wの主面に向かってSPM液を吐出すると、基板Wの主面にSPM液が供給される。基板Wの主面に着液したSPM液は基板Wの回転に伴って径方向外側に流れ、基板Wの周縁から外側に飛散する。このとき、SPM液中の硫酸および過酸化水素水は互いに反応し、酸化力の高い有効成分(例えばカロ酸)を生成する。SPM液は、主として有効成分がレジスト層Rと反応することにより、レジスト層Rを除去することができる。
【0051】
図4の例では、処理部1は第2ノズル6も含んでいる。第2ノズル6はチャンバ10内において、基板保持部2によって保持された基板Wよりも鉛直上方に設けられている。第2ノズル6は、基板保持部2によって保持された基板Wの主面に向かってリンス液を吐出する。第2ノズル6の種類も特に制限されないものの、第2ノズル6は、連続流の状態でリンス液を吐出する単一の吐出口を有するストレートノズルであってもよい。
【0052】
第2ノズル6は給液管61の下流端に接続されており、給液管61の上流端はリンス液供給源65に接続されている。リンス液は例えば純水(つまり脱イオン水)である。給液管61には供給バルブ62および流量調整バルブ63が介挿されている。供給バルブ62が開くことにより、第2ノズル6からリンス液が吐出され、供給バルブ62が閉じることにより、第2ノズル6からのリンス液の吐出が停止する。流量調整バルブ63は、給液管61を流れるリンス液の流量を調整する。流量調整バルブ63はマスフローコントローラであってもよい。供給バルブ62および流量調整バルブ63は制御部90によって制御される。
【0053】
図4の例では、処理部1はノズル移動駆動部64も含んでいる。ノズル移動駆動部64は制御部90によって制御され、第2ノズル6を、次に説明する第2処理位置と第2待機位置との間で移動させる。第2処理位置は、第2ノズル6が、基板保持部2によって保持された基板Wの主面に向かってリンス液を吐出する位置であり、例えば、基板Wの主面の中央部と鉛直方向において対向する位置である。第2待機位置は、第2ノズル6が、基板保持部2によって保持された基板Wの主面に向かってリンス液を吐出しない位置であり、例えば、基板Wよりも径方向外側の位置である。図4では、第2待機位置で停止した第2ノズル6が示されている。ノズル移動駆動部64の具体的な構成の一例は、ノズル移動駆動部34の構成と同様である。
【0054】
第2ノズル6が第2処理位置に位置する状態で、第2ノズル6が回転中の基板Wの主面に向かってリンス液を吐出すると、基板Wの主面にリンス液が着液する。基板Wの主面に着液したリンス液は基板Wの回転に伴って径方向外側に流れ、基板Wの周縁から外側に飛散する。リンス液は基板Wの主面上のSPM液を径方向外側に押し流すことができるので、基板Wの主面上のSPM液をリンス液に置換することができる。
【0055】
図4の例では、処理部1はガード71およびガード昇降駆動部73も含んでいる。図4の例では、複数(具体的には3つ)のガード71が設けられている。各ガード71は、基板保持部2によって保持された基板Wを取り囲む筒状の形状を有する。複数のガード71は互いに同心状に設けられる。ガード昇降駆動部73は制御部90によって制御され、各ガード71を、次に説明する上位置と下位置との間で昇降させる。上位置は、ガード71の上端が、基板保持部2によって保持された基板Wよりも鉛直上方となる位置である。下位置は、ガード71の上端が、上位置よりも鉛直下方となる位置であり、例えばスピンベース21の上面よりも鉛直下方となる位置である。ガード昇降駆動部73は例えばボールねじ機構またはエアシリンダを有する。
【0056】
例えば、全てのガード71が上位置に位置する状態では、基板Wの周縁から飛散した処理液は、内側のガード71の内周面で受け止められる。外側のガード71および中側のガード71が上位置に位置し、内側のガード71が下位置に位置する状態では、基板Wの周縁から飛散した処理液は、中側のガード71の内周面で受け止められる。外側のガード71のみが上位置に位置する状態では、基板Wの周縁から飛散した処理液は外側のガード71の内周面で受け止められる。
【0057】
図4の例では、各ガード71に対応して環状のカップ72が設けられている。各ガード71の内周面を流下した処理液は、対応するカップ72によって受け止められる。各カップ72によって受け止められた処理液は配管74を通じてチャンバ10の外部に排出される。
【0058】
処理部1は、基板保持部2によって保持された基板Wを加熱する加熱部(不図示)を含んでいてもよい。加熱部は、例えば電熱線を含む電気抵抗式のヒータであってもよい。該ヒータは基板Wとスピンベース21との間に設けられ得る。あるいは、加熱部は、高温の熱媒体(例えば温水または高温の不活性ガス)を基板Wの主面(例えば下面)に向かって吐出するノズルを含んでいてもよい。
【0059】
<基板処理の第1例>
図5は、基板処理の一例を示すフローチャートである。制御部90は、予め設定された処理手順(レシピ)にしたがって、ステップS1からステップS8の処理を基板処理装置100に実行させる。図6は、後述のステップS3、ステップS4およびステップS5における処理部1の様子の一例を概略的に示す図である。図7は、硫酸の第1流量および過酸化水素水の第2流量およびSPM液の硫酸濃度の時間変化の一例を示すグラフである。
【0060】
まず、センターロボット122が基板Wを処理部1のチャンバ10内に搬入し、基板保持部2が基板Wを受け取って、基板Wを保持する(ステップS1:保持工程)。具体的な一例として、基板保持部2は複数のチャックピン22をそれぞれの解除位置から保持位置に変位させる。これにより、複数のチャックピン22が基板Wを保持する。基板保持部2は、基板Wに対する処理の終了まで基板Wを保持し続ける。基板Wの主面(ここでは上面)には、例えばレジスト層Rが形成されている。
【0061】
次に、基板保持部2は基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させ始める(ステップS2:回転開始工程)。基板保持部2は、基板Wに対する処理の終了まで基板Wの回転を維持してもよい。ステップS1の後に、ガード昇降駆動部73は適宜にガード71を上位置に上昇させる。
【0062】
次に、処理部1はSPM液を基板Wの主面に供給する(ステップS3:第1工程)。具体的には、処理部1は、第1ノズル3から回転中の基板Wの主面に向かって、SPM液を吐出させる。より具体的には、まずノズル移動駆動部34が第1ノズル3を第1処理位置に移動させる。そして、制御部90は第1供給バルブ42a、第2供給バルブ42bおよびガスバルブ52を開く。第1供給バルブ42aおよび第2供給バルブ42bが開くと、硫酸供給源45aから硫酸が第1給液管41aを通じて給液管31に流入し、過酸化水素水供給源45bから過酸化水素水が第2給液管41bを通じて給液管31に流入する。これにより、硫酸および過酸化水素水が混合され、その混合液であるSPM液が給液管31を通じて第1ノズル3に供給される。また、ガスバルブ52が開くことにより、ガス供給源55からの高圧の不活性ガスが給気管51を通じて第1ノズル3に供給される。これにより、第1ノズル3から液滴状態のSPM液(例えばスプレー状のSPM液)が基板Wの主面に向かって吐出される(図6(a)も参照)。
【0063】
ノズル移動駆動部34は第1ノズル3を、基板Wの主面に沿う方向(ここでは水平方向)に往復移動させてもよい。例えば、ノズル移動駆動部34は、基板Wの主面の中央部と対向する中央位置と、基板Wの主面の周縁部と対向する周縁位置との間で、第1ノズル3を往復移動させてもよい。図6(a)の例では、中央位置に位置する第1ノズル3が実線で示され、周縁位置に位置する第1ノズル3が仮想線で示されている。これによれば、処理部1はより均一にSPM液を基板Wの主面の全面に供給することができる。
【0064】
基板Wの主面上のSPM液は回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁から外側に飛散する。基板Wの周縁から飛散したSPM液はガード71の内周面によって受け止められ、カップ72および配管74を通じてチャンバ10の外部に排出される。この点は後述の各ステップでも同様である。
【0065】
ステップS3では、処理部1は、反応性の高い混合比(=第1流量/第2流量)で混合されたSPM液を基板Wの主面に供給する(図7も参照)。SPM液における過酸化水素濃度に対する硫酸濃度の比は、例えば、1/3以上かつ4以下であり、より具体的には2(つまり、硫酸:過酸化水素水=2:1)である。制御部90は、当該比が当該範囲内の値に近づくように、第1流量調整バルブ43aおよび第2流量調整バルブ43bを制御する。なお、ここでいう反応性が高いとは、SPM液における単位時間当たりの有効成分の生成量が大きいことをいう。つまり、ステップS3では、処理部1は、単位時間当たりの有効成分の生成量が大きい混合比で混合されたSPM液を、基板Wの主面に供給する。
【0066】
図8は、後述のステップS3およびステップS4の各々の直後の基板Wの一部の構成の一例を示す図である。図8(a)に示されるように、ステップS3によって、主としてレジスト層Rのうちの第1硬化層RaがSPM液によって除去される。これは、SPM液がレジスト層Rのうちの表面側の第1硬化層Raに作用しやすいからである。つまり、SPM液中の有効成分は主として第1硬化層Raと反応する。ステップS3では、有効成分がより多く生成されるので、より多くの有効成分が第1硬化層Raと反応することができる。したがって、処理部1は第1硬化層Raをより適切に除去することができる。つまり、第1硬化層Raは比較的に硬いものの、より多くの有効成分が第1硬化層Raと反応するので、第1硬化層Raをより適切に除去できる。
【0067】
ステップS3では、第2硬化層Rcのうちの非硬化層Rbよりも外側に張り出した部分にも、SPM液が作用し得るものの、第1硬化層Raに比べれば、作用しにくい。なぜなら、不純物を注入する際に、不純物およびレジストが基板Wの下地層(例えばシリコン層)に結合するため、第1硬化層Raよりも第2硬化層Rcの方が硬くなるからである。そのため、第2硬化層Rcは、第1硬化層Raと比較するとSPM液が作用しにくく、除去されにくい。したがって、図8(a)の例では、第2硬化層Rcのうちの非硬化層Rbよりも外側に張り出した部分も残留している。なお、第2硬化層Rcはレジスト層Rのうちの下部に位置しているため、SPM液が滞留しやすくなり、新鮮なSPM液が第2硬化層Rcに作用しにくくなり得る。これも、第2硬化層Rcが残留する一因になり得る。
【0068】
なお、上述の例では、ステップS3において、第1ノズル3は液滴状態のSPM液を吐出している。このため、SPM液の複数の液滴が基板Wの主面上のSPM液の液層に衝突する。したがって、その衝突力(物理力とも呼ぶ)がレジスト層Rにも伝達される。このように物理力が基板Wの主面上のレジスト層Rの第1硬化層Raにも作用することにより、基板Wの主面からの第1硬化層Raの剥離を促進させることができる。したがって、処理部1はより効率的に第1硬化層Raを除去することができる。
【0069】
ステップS3の開始から第1所定時間が経過すると、処理部1はステップS3を終了する。制御部90は例えばタイマ回路(不図示)を用いて、経過時間を測定することができる。第1所定時間は、第1硬化層Raの除去に要する時間以上に予め設定され、例えば記憶部921に記憶される。第1所定時間は、第1硬化層Raの厚みが大きいほど、長く設定され得る。なお、ステップS3において、非硬化層Rbの一部および第2硬化層Rcの一部が除去されてもよい。逆に言えば、第1所定時間は、非硬化層Rbの大部分および第2硬化層Rcの大部分が残る程度の時間に設定され得る。このため、ステップS3の終了時点では、レジスト層Rの非硬化層Rbおよび第2硬化層Rcが露出する。
【0070】
次に、処理部1は、ステップS3でのSPM液の反応性よりも反応性が低い混合比で混合されたSPM液を基板Wの主面に供給する(ステップS4:第2工程)。例えば、ステップS4におけるSPM液の硫酸濃度は、ステップS3におけるSPM液の硫酸濃度よりも低い(図7も参照)。具体的な一例として、SPM液における過酸化水素濃度に対する硫酸濃度の比は、1/4以上かつ1/3以下である。言い換えれば、制御部90は、当該比が当該範囲内の値に近づくように、第1流量調整バルブ43aおよび第2流量調整バルブ43bを制御する。具体的な一例として、制御部90は硫酸の第1流量を低下させ、過酸化水素水の第2流量を増加させてもよい。これにより、SPM液における硫酸濃度を低下させることができる。
【0071】
また、一例として、ステップS4では、制御部90はガスバルブ52を閉じる。ガスバルブ52が閉じることにより、第1ノズル3は連続流の状態でSPM液を吐出する。ノズル移動駆動部34は第1ノズル3を中央位置と周縁位置との間で往復移動させてもよく、中央位置で停止させてもよい。後者の場合、第1ノズル3から吐出されたSPM液は回転中の基板Wの主面の中央部に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの主面を径方向外側に流れる(図6(b)も参照)。これにより、SPM液が基板Wの主面の全面に供給される。
【0072】
図8(b)に示されるように、ステップS4によって、主としてレジスト層Rのうちの非硬化層RbがSPM液によって除去される。これは次の理由による。すなわち、SPM液はレジスト層Rのうち非硬化層Rbおよび第2硬化層Rcに接触するところ、ステップS4では、SPM液における単位時間当たりの有効成分の生成量は少ないので、第2硬化層Rcはあまり除去できず、主として非硬化層Rbを除去する。また、第2硬化層Rcのうちの一部は非硬化層Rbの直下に位置するので、ステップS4では、この部分に対しては、非硬化層Rbを除去するまでSPM液がほとんど作用しない。このため、第2硬化層Rcのうちの非硬化層Rbの直下に位置する部分は残留する。
【0073】
また、上述の例では、ステップS4でのSPM液の硫酸濃度は小さいので、硫酸の使用量(換言すれば廃棄量)を低減させることができる。
【0074】
また、上述の例では、ステップS4において、第1ノズル3は連続流の状態でSPM液を吐出する。この場合、液滴よる物理力は非硬化層Rbには作用しないものの、このようなSPM液でも柔らかい非硬化層Rbを除去することができる。また、不活性ガスの使用量を低減させることができ、ランニングコストを低減させることができる。
【0075】
ステップS4の開始から第2所定時間が経過すると、処理部1はステップS4を終了する。第2所定時間は予め設定され、例えば記憶部921に記憶される。第2所定時間は、例えば、非硬化層Rbが除去されるのに要する時間以上に設定されてもよい。なお、ステップS4の終了時点で基板Wの主面に非硬化層Rbが残っていても構わない。この非硬化層Rbは次のステップS5で除去されるからである。逆に、ステップS4において、第2硬化層Rcのうちの非硬化層Rbの直下の一部が除去されてもよい。要するに、第2所定時間は、非硬化層Rbが除去されて第2硬化層Rcの当該一部が除去される程度の時間に設定されてもよく、あるいは、非硬化層Rbの一部が残留する程度の時間に設定されてもよい。第2所定時間は、非硬化層Rbの厚みが大きいほど、長く設定され得る。
【0076】
次に、処理部1は、ステップS4でのSPM液の反応性よりも反応性が高い混合比で混合されたSPM液を基板Wの主面に供給する(ステップS5:第3工程)。例えば、ステップS5におけるSPM液の硫酸濃度は、ステップS4におけるSPM液の硫酸濃度よりも高い。硫酸濃度は例えばステップS3における硫酸濃度と同様である。具体的な一例として、制御部90は硫酸の第1流量を増加させ、過酸化水素水の第2流量を低減させてもよい。これにより、SPM液における硫酸濃度を増加させることができる。
【0077】
また、一例として、ステップS5では、制御部90はガスバルブ52を開く。この場合、第1ノズル3は液滴状態でSPM液を吐出する。ノズル移動駆動部34は第1ノズル3を中央位置と周縁位置との間で往復移動させる(図6(c)も参照)。
【0078】
ステップS5では、レジスト層Rのうちの第2硬化層RcにSPM液が接触する。ステップS5では、有効成分が多く生成されるので、より多くの有効成分が第2硬化層Rcと反応することができる。したがって、処理部1は硬い第2硬化層Rcをより適切に除去することができる。なお、ステップS4の終了時点で非硬化層Rbが残っている場合には、SPM液は非硬化層Rbも除去する。
【0079】
また、上述の例では、第1ノズル3は液滴状態のSPM液を吐出する。このため、物理力が基板Wの主面上のレジスト層Rの第2硬化層Rcにも作用する。したがって、処理部1はより効率的に第2硬化層Rcを除去することができる。
【0080】
ステップS5の開始から第3所定時間が経過すると、処理部1はステップS5を終了する。第3所定時間は、第2硬化層Rcの除去に要する時間以上に予め設定され、例えば記憶部921に記憶される。第3所定時間は、第2硬化層Rcの厚みが大きいほど、長く設定され得る。
【0081】
なお、ステップS5によっても第2硬化層Rcが完全には除去されず、その一部がレジスト層Rの残渣として残留する場合も考えられる。
【0082】
そこで、図5の例では、処理部1は連続流の状態でSPM液を基板Wの主面に供給する(ステップS6:仕上げSPM工程)。具体的には、制御部90はガスバルブ52を閉じる。これにより、第1ノズル3は連続流の状態でSPM液を吐出する。ノズル移動駆動部34は第1ノズル3を中央位置と周縁位置との間で往復移動させてもよく、中央位置で停止させてもよい。後者の場合、第1ノズル3から吐出されたSPM液は回転中の基板Wの主面の中央部に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの主面を径方向外側に流れる。ステップS6でのSPM液の硫酸濃度は、例えばステップS5と同様であってもよい。
【0083】
ステップS6により、処理部1は、基板Wの主面上にレジスト層Rの一部が残留していても、その残留層を除去することができる。つまり、処理部1はレジスト層Rの残渣の発生を抑制することができる。
【0084】
ステップS6の開始から第4所定時間が経過すると、処理部1はステップS6を終了する。第4所定時間は予め設定され、例えば記憶部921に記憶される。
【0085】
図5の例では、次に、処理部1は、過酸化水素水を基板Wの主面に供給する(ステップS7:押し出し工程)。具体的には、制御部90は第2供給バルブ42bを開いた状態で第1供給バルブ42aを閉じることにより、第1ノズル3へのSPM液の供給を停止しつつ、第1ノズル3への過酸化水素水の供給を継続する。これにより、過酸化水素水が、給液管31および第1ノズル3の内部流路に残留した硫酸を押し出して、第1ノズル3から吐出させることができる。したがって、第1ノズル3の内部の硫酸の残留を抑制することができる。ひいては、第1ノズル3の内部で硫酸の成分が析出することを抑制できる。
【0086】
第1ノズル3の内部の硫酸を十分に吐出させると、処理部1は過酸化水素水の供給を停止する。例えば、ステップS7の開始から所定の第5所定時間が経過したときに、制御部90は第2供給バルブ42bを閉じる。第2供給バルブ42bが閉じることにより、第1ノズル3からの過酸化水素水の吐出が停止する。そして、ノズル移動駆動部34が第1ノズル3を第1待機位置に移動させる。
【0087】
次に、処理部1は基板Wの主面にリンス液を供給する(ステップS8:リンス工程)。まず、ノズル移動駆動部64が第2ノズル6を第2処理位置に移動させる。次に、制御部90は供給バルブ62を開く。これにより、第2ノズル6はリンス液を回転中の基板Wの主面の中央部に向かって吐出する。リンス液は基板Wの主面の中央部に着液し、基板Wの回転に伴って基板Wの主面を径方向外側に流れる。このため、リンス液は基板Wの主面上の過酸化水素水を径方向外側に押し流すことができる。したがって、基板Wの主面上の処理液が過酸化水素水からリンス液に置換される。
【0088】
基板Wの主面上の過酸化水素水が十分にリンス液に置換されると、処理部1はリンス液の供給を停止する。例えば、リンス液の供給開始から第6所定時間が経過したときに、制御部90は供給バルブ62を閉じる。供給バルブ62が閉じることにより、第2ノズル6からのリンス液の吐出が停止する。そして、ノズル移動駆動部64が第2ノズル6を第2待機位置へ移動させる。
【0089】
次に、処理部1は基板Wを乾燥させる(ステップS9:乾燥工程)。例えば、基板保持部2が基板Wの回転速度を増加させる(いわゆるスピン乾燥)。これにより、基板Wが乾燥する。
【0090】
基板Wが十分に乾燥すると、処理部1は基板Wの回転を停止させる。例えば、回転速度の増加から第7所定時間が経過すると、基板保持部2は基板Wの回転を停止する。
【0091】
次に、基板保持部2は基板Wの保持を解除する(ステップS10:保持解除工程)。具体的には、基板保持部2は、複数のチャックピン22をそれぞれの保持位置から解除位置に変位させる。これにより、基板Wの保持が解除される。次に、センターロボット122が基板Wを基板保持部2から受け取って、基板Wを処理部1から搬出する。
【0092】
<効果>
以上のように、処理部1は基板Wの主面のレジスト層Rを除去することができる。しかも、本基板処理方法によれば、主として硬い第1硬化層Raを除去対象とするステップS3においては、処理部1は、反応性の高い濃度を有するSPM液を基板Wの主面に供給する。このため、より多くの有効成分を第1硬化層Raに作用させることができ、より適切に第1硬化層Raを除去することができる。
【0093】
上述の例では、ステップS3にてSPM液を吐出する第1所定時間は、第1硬化層Raの除去に必要な時間以上に予め設定されている。このため、処理部1はステップS3において、より確実に第1硬化層Raを除去することができる。なお、ステップS3では、非硬化層Rbの一部および第2硬化層Rcの一部も除去され得る。
【0094】
主として非硬化層Rbを除去対象とするステップS4においては、処理部1は、反応性の低い濃度を有するSPM液を基板Wの主面に供給する。非硬化層Rbは比較的に柔らかいので、単位時間当たりの有効成分の生成量が比較的に小さくても、処理部1は非硬化層Rbを除去することができる。このため、ステップS4では、硫酸の使用量を低減させる混合比を採用することができる。具体的な一例として、ステップS4でのSPM液の硫酸濃度はステップS3でのSPM液の硫酸濃度よりも低く設定される。これにより、硫酸の使用量を低減させることができる。
【0095】
上述の例では、ステップS4において、第1ノズル3は連続流の状態でSPM液を基板Wの主面に向かって吐出する。これにより、不活性ガスの使用量を低減させることができる。
【0096】
主として硬い第2硬化層Rcを除去対象とするステップS5においては、処理部1は、反応性の高い濃度を有するSPM液を基板Wの主面に供給する。このため、より適切に第2硬化層Rcを除去することができる。
【0097】
上述の例では、ステップS3およびステップS5の各々において、第1ノズル3は液滴状態のSPM液を基板Wの主面に向かって吐出する。これにより、複数の液滴が基板W上のレジスト層Rに物理力を作用させるので、レジスト層Rの剥離を促進させることができる。なお、必ずしもステップS3およびステップS5の両方で、第1ノズル3が液滴状態のSPM液を吐出する必要はない。ステップS3およびステップS5の一方で、第1ノズル3が液滴状態のSPM液を吐出し、他方で、第1ノズル3が連続状態のSPM液を吐出してもよい。
【0098】
上述の例では、ステップS5にてSPM液を吐出する第3所定時間は、第2硬化層Rcの除去に必要な時間以上に設定されている。このため、ステップS5において、より確実に第2硬化層Rcを除去することができる。
【0099】
また、上述の例では、ステップS5の後にステップS6が実行される。これにより、処理部1はレジスト層Rの残渣の発生を抑制することができる。
【0100】
<第2の実施の形態>
図9は、第2の実施の形態にかかる処理部1の構成の第1例を示す図である。図9の例では、硫酸供給源45aのタンク46が示されている。タンク46には硫酸が貯留されている。例えば、第1給液管41aの上流端はタンク46に接続される。タンク46内の硫酸は第1給液管41a、給液管31および第1ノズル3を通じて基板Wの主面に供給される。
【0101】
なお、硫酸供給源45aは、タンク46の温度を調整するための循環配管(不図示)を含んでいてもよい。循環配管の上流端および下流端はタンク46に接続され、循環配管にはヒータ(不図示)およびポンプ(不図示)が設けられる。タンク46内の硫酸が循環配管を通じて循環しつつ、ヒータが循環配管内の硫酸を加熱することにより、タンク46内の硫酸の温度を、処理に適した所定範囲内に調整することができる。
【0102】
図9の例では、内側のガード71に対応したカップ72に接続された配管74の下流部が、硫酸供給源45aに接続されている。この配管74の下流端はタンク46への供給口として機能している。第2の実施の形態では、第1ノズル3から基板Wに吐出されたSPM液は基板Wの主面を径方向外側に流れて基板Wの周縁から飛散し、内側のガード71で受け止められる。内側のガード71で受け止められたSPM液はカップ72および配管74を通じてタンク46に回収される。つまり、図9の例では、内側のガード71に対応する配管74は、SPM液をタンク46に戻す回収管として機能する。他のカップ72に接続された配管74の下流端は外部の廃棄部(工場ユーティリティ)に接続され得る。
【0103】
なお、ここでは内側のガード71に対応する配管74を回収管として機能させているものの、必ずしもこれに限らない。外側のガード71または中側のガード71に対応する配管74の下流端をタンク46に接続し、当該配管74を回収管として機能させてもよい。この場合、第1ノズル3がSPM液を吐出するときに、回収管として機能する配管74に対応したガード71が上位置に位置し、SPM液を受け止める。以下では、内側のガード71に対応した配管74が回収管として機能するものとする。
【0104】
第2の実施の形態にかかる基板処理の一例は、図5に示す通りである。ただし、ステップS3(第1工程)、ステップS4(第2工程)およびステップS5(第3工程)における具体的な動作が相違し得る。図10は、ステップS3からステップS5における処理部1の様子の一例を概略的に示す図であり、図11は、処理部1の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0105】
第2の実施の形態では、ステップS3において基板Wに供給されたSPM液は廃棄される。具体的な一例として、ステップS3において、ガード昇降駆動部73は外側のガード71および中側のガード71を上位置に位置させ、内側のガード71を下位置に位置させる(図10および図11参照)。これにより、ステップS3において基板Wの周縁から飛散したSPM液は、中側のガード71の内周面で受け止められ、中側のガード71に対応したカップ72および配管74を通じて外部の廃棄部に排出される。なお、ステップS3において、外側のガード71がSPM液を受け止めてもよい。言い換えれば、ガード昇降駆動部73は上側のガード71を上位置に位置させ、中側のガード71も下位置に位置させてもよい。
【0106】
ステップS3において第1硬化層Raが除去されると、言い換えれば、第1所定時間が経過すると、処理部1は、ステップS3でのSPM液の反応性よりも反応性が低い混合比で混合されたSPM液を基板Wの主面に供給する(ステップS4:第2工程)。ただし、第2の実施の形態では、ステップS4におけるSPM液の硫酸濃度は、ステップS3におけるSPM液の硫酸濃度よりも高い(図11参照)。例えば、SPM液における過酸化水素濃度に対する硫酸濃度の比は、4よりも大きく、かつ、20以下の範囲内に設定され、具体的な一例として、10(つまり、硫酸:過酸化水素水=10:1)程度に設定される。制御部90は、当該比が当該範囲内の値に近づくように、第1流量調整バルブ43aおよび第2流量調整バルブ43bを制御する。具体的な一例として、制御部90は硫酸の第1流量を増加させ、過酸化水素水の第2流量を低減させてもよい。これにより、硫酸濃度を増加させることができる。
【0107】
第2の実施の形態では、ステップS4において基板Wに供給されたSPM液は回収されて再利用される。具体的な一例として、ステップS4において、ガード昇降駆動部73は外側のガード71、中側のガード71および内側のガード71を上位置に位置させる(図10および図11参照)。これにより、ステップS4において基板Wの周縁から飛散したSPM液は、内側のガード71の内周面で受け止められ、内側のガード71に対応したカップ72および配管74(回収管)を通じて、タンク46に回収される。
【0108】
以上のように、ステップS4では、高硫酸濃度のSPM液は基板Wに供給された後に、タンク46に回収される。このSPM液の硫酸濃度は高いので、SPM液をタンク46に回収しても、タンク46内の硫酸濃度の低下を抑制することができる。そして、タンク46内の硫酸は基板Wの処理に再利用される。
【0109】
ステップS4において非硬化層Rbが除去されると、言い換えれば、第2所定時間が経過すると、処理部1は、ステップS4でのSPM液の反応性よりも反応性が高い混合比で混合されたSPM液を基板Wの主面に供給する(ステップS5:第3工程)。ただし、第2の実施の形態では、ステップS5におけるSPM液の硫酸濃度は、ステップS4におけるSPM液の硫酸濃度よりも低い(図11参照)。SPM液における過酸化水素濃度に対する硫酸濃度の比は、ステップS3と同様である。
【0110】
第2の実施の形態では、ステップS5において基板Wに供給されたSPM液は廃棄される。具体的な一例として、ステップS5において、ガード昇降駆動部73は外側のガード71および中側のガード71を上位置に位置させ、内側のガード71を下位置に位置させる(図10および図11参照)。これにより、ステップS5において基板Wの周縁から飛散したSPM液は中側のガード71の内周面で受け止められ、中側のガード71に対応したカップ72および配管74を通じて、廃棄部に排出される。
【0111】
ステップS5において第2硬化層Rcが除去されると、言い換えれば、第3所定時間が経過すると、処理部1は、第1の実施の形態と同様に、ステップS5を終了してステップS6からステップS10をこの順に実行する。
【0112】
以上のように、第2の実施の形態でも、ステップS3およびステップS5の各々において反応性が高いSPM液を基板Wに供給し、ステップS4において反応性が低いSPM液を供給する。このため、第1の実施の形態と同様に、反応性の高いSPM液を用いて第1硬化層Raおよび第2硬化層Rcを適切に除去しつつも、反応性の低いSPM液を用いて非硬化層Rbを除去することができる。しかも、第2の実施の形態では、ステップS4において基板Wに供給されるSPM液の硫酸濃度は高く、この高硫酸濃度のSPM液をタンク46に回収している。このため、ステップS4における硫酸の使用量をさらに低減させることができる。
【0113】
しかも上述の例では、廃棄用のガード71と、回収用のガード71が別々に設けられている。つまり、ステップS4で高硫酸濃度のSPM液を受け止めるガード71は、ステップS3およびステップS5の各々で低硫酸濃度のSPM液を受け止めるガード71と異なっている。これによれば、タンク46への低硫酸濃度のSPM液の混入を抑制することができる。
【0114】
<処理部の第2例>
図12は、第2の実施の形態にかかる処理部1の構成の第2例を示す図である。図12の例では、内側のガード71に対応した配管74の下流端は、切換部75に接続されており、切換部75には、廃棄管741の上流端および回収管742の上流端も接続されている。廃棄管741の下流端は外部の廃棄部に接続され、回収管742の下流端はタンク46への供給口として機能する。切換部75は、配管74に連通させる配管を、廃棄管741と回収管742との間で切り替える。切換部75は例えば三方弁である。切換部75は制御部90によって制御される。
【0115】
切換部75が配管74を廃棄管741に連通させた状態では、内側のガード71で受け止められたSPM液は、内側のガード71に対応したカップ72、配管74および廃棄管741を通じて、廃棄部に排出される。切換部75が配管74を回収管742に連通させた状態では、内側のガード71で受け止められたSPM液は、内側のガード71に対応したカップ72、配管74および回収管742を通じて、タンク46に回収される。
【0116】
なお、ここでは内側のガード71に対応する配管74を切換部75に接続させているものの、必ずしもこれに限らない。外側のガード71または中側のガード71に対応した配管74を、切換部75に接続させてもよい。以下では、内側のガード71に対応した配管74に切換部75が接続されているものする。
【0117】
基板処理装置100の動作の一例は図5と同様である。ただし、ステップS3からステップS5の全てにおいて、ガード昇降駆動部73は外側のガード71、中側のガード71および内側のガード71を上位置に位置させる。また、処理部1はステップS4(第2工程)において、ステップS3(第1工程)およびステップS5(第3工程)の両方よりも硫酸濃度の高いSPM液を基板Wの主面に供給する。
【0118】
さらに、ステップS4において、切換部75は配管74を回収管742に連通させる。これにより、ステップS4において硫酸濃度の高いSPM液は基板Wに供給された後に、内側のガード71、カップ72、配管74および回収管742を通じてタンク46に回収される。一方、ステップS3およびステップS5の各々において、切換部75は配管74を廃棄管741に連通させる。これにより、硫酸濃度の低いSPM液は基板Wに供給された後に、内側のガード71、カップ72、配管74および廃棄管741を通じて廃棄部に排出される。
【0119】
以上のように、処理部1の第2例においても、ステップS4において基板Wに供給されるSPM液の硫酸濃度は高く、この高硫酸濃度のSPM液をタンク46に回収している。このため、ステップS4における硫酸の使用量をさらに低減させることができる。
【0120】
以上のように、基板処理方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0121】
上述の具体例では、処理部1はステップS6(仕上げSPM工程)を実行しているものの、ステップS6の実行を省略してもよい。処理部1がステップS6を実行しない場合、処理部1は、ステップS5(第3工程)に続けてステップS7(押し出し工程)を実行するとよい。ステップS7において、第1ノズル3から過酸化水素水が吐出されるので、第1ノズル3の内部に硫酸が残留する可能性を低減させることができる。
【0122】
また、上述の例では、基板処理装置100は枚葉式の処理装置であるものの、バッチ式の処理装置であってもよい。例えば、基板処理装置100は、反応性の高い混合比で混合されたSPM液が貯留された第1処理タンクと、反応性の低い混合比で混合されたSPM液が貯留された第2処理タンクとを含んでもよい。基板処理装置100は、複数の基板Wを第1処理タンク内のSPM液に浸漬させて第1硬化層Raを除去した後に、複数の基板Wを第2処理タンク内のSPM液に浸漬させて非硬化層Rbを除去し、その後、複数の基板Wを再び第1処理タンク内のSPM液に浸漬させて第2硬化層Rcを除去してもよい。なお、第1処理タンクは必ずしもSPM液を貯留する必要はなく、第1処理タンク内にスプレーノズルを設けてもよい。基板処理装置100は、第1処理タンク内に複数の基板Wを搬入し、スプレーノズルから液滴状態のSPM液を複数の基板Wに向かって吐出してもよい。
【符号の説明】
【0123】
31 給液管
452 回収管
46 タンク
74 回収管(配管)
R 有機層(レジスト層)
Ra 第1硬化層
Rb 非硬化層
Rc 第2硬化層
S1 保持工程(ステップ)
S3 第1工程(ステップ)
S4 第2工程(ステップ)
S5 第3工程(ステップ)
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12