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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121135
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】スパンボンド不織布およびマスク
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20240830BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20240830BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H3/007
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028057
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松山 菜歩
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 格
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA14
4L047AB03
4L047AB07
4L047BA08
4L047CC12
(57)【要約】
【課題】 接触冷感と持続冷感を付与することができ、かつ、実使用において十分な通気性を有するスパンボンド不織布およびマスクを提供すること。
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂からなる平均単繊維直径が10.5μm以上26.0μm以下の繊維から構成され、不織布の見かけ密度が0.15g/cm3以上0.50g/cm3以下であって、不織布の表面粗さの平均が2.0μm以上10.0μm以下であって、冷感剤を含むスパンボンド不織布およびそれが口元に配されてなるマスク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂からなる平均単繊維直径が10.5μm以上26.0μm以下の繊維から構成され、不織布の見かけ密度が0.15g/cm以上0.50g/cm以下であって、不織布の表面粗さの平均が2.0μm以上10.0μm以下であって、冷感剤を含むスパンボンド不織布。
【請求項2】
前記冷感剤が糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を含む粒子を含む請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
前記粒子の平均直径が5μm以上10μm以下である、請求項2に記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
前記粒子における直径5μm以上10μm以下の粒子の数の割合が50%以上100%以下である、請求項3に記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
糖アルコール類及び糖類の合計含有量が0.1質量%以上2.0質量%以下である、請求項2~4のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のスパンボンド不織布が少なくとも口元に配されてなる、マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパンボンド不織布およびマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布はさまざまな用途に使用されている。不織布の用途としては、例えば、産業資材、土木資材、建築資材、生活資材、農業資材、衛生資材および医療用資材等が挙げられる。
【0003】
中でも、感染症の世界的な流行からマスク向け用途が注目されている。不織布を用いたマスクは会話や咳による飛沫の飛散や吸い込みを防ぐ能力に優れるものの、特に夏場においてマスク着用者のマスク内空間が蒸れやすい課題がある。
【0004】
従来、このような課題に対し、吸熱剤が配された不織布をマスクに用いることで、冷感を付与したマスクの提案がされている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、繊維の空気層を低減させることで、冷感を発現させる手法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6862078号公報
【特許文献2】特開2021-175498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、吸熱剤が付与された不織布の記載はあるが、冷感の発現には呼気と吸熱剤が化学反応をする必要があり、冷感の発現に時間がかかる課題がある。
【0008】
また、特許文献2に開示された方法では、繊維のウェブにエアスルー処理及び、圧密化処理を施すことで空気層を低減させた不織布の記載はあるが、冷感の発現は接触後の瞬間的な熱の移動によるものであるため、冷感を持続させることは難しく、かつ、衛生材料の用途のひとつであるマスクとして使用するのに必要不可欠な通気性が圧密化処理によって低下してしまうという課題がある。
【0009】
したがって、従来の冷感が付与された不織布は、着用直後に冷感を発現する接触冷感、着用後、一定時間冷感を発現する持続冷感、実使用における十分な通気性を両立することは難しいものである。
【0010】
そこで、本発明の目的は、前記の課題に鑑み、接触冷感と持続冷感を付与することができ、かつ、実使用において十分な通気性を有するスパンボンド不織布およびマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の不織布は、下記の構成を有する。
(1)ポリオレフィン系樹脂からなる平均単繊維直径が10.5μm以上26.0μm以下の繊維から構成され、不織布の見かけ密度が0.15g/cm以上0.50g/cm以下であって、不織布の表面粗さの平均が2.0μm以上10.0μm以下であって、冷感剤を含むスパンボンド不織布。
(2)前記冷感剤が糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を含む粒子を含む前記(1)に記載のスパンボンド不織布。
(3)前記粒子の平均直径が5μm以上10μm以下である、前記(2)に記載のスパンボンド不織布。
(4)前記粒子における直径5μm以上10μm以下の粒子の数の割合が50%以上100%以下である、前記(3)に記載のスパンボンド不織布。
(5)糖アルコール類及び糖類の合計含有量が0.1質量%以上2.0質量%以下である、請求項(2)~(4)のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載の不織布が口元に配されてなる、マスク。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接触冷感と持続冷感を付与することができ、かつ、実使用において十分な通気性を有するスパンボンド不織布が得られる。また、それが口元に配されたマスクとすることで、接触冷感と持続冷感を付与され、かつ、実使用において十分な通気性を有するマスクが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のスパンボンド不織布は、ポリオレフィン系樹脂からなる平均単繊維直径が10.5μm以上26.0μm以下の繊維から構成され、不織布の見かけ密度が0.15g/cm以上0.50g/cm以下であって、不織布の表面粗さの平均が2.0μm以上10.0μm以下であって、冷感剤を含むスパンボンド不織布である。かかる構成を採用することにより、着用直後に冷感を発現する接触冷感と着用後、一定時間冷感を発現する持続冷感を両立することができ、さらに、実使用において十分な通気性を維持できる。以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
【0014】
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明のスパンボンド不織布は、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維で構成されてなる。ここで、本発明における「ポリオレフィン系樹脂」とは、主となる繰り返し単位がオレフィン単位である樹脂のことを指す。同様に「ポリエチレン系樹脂」、「ポリプロピレン系樹脂」とは、主となる繰り返し単位が、それぞれ、エチレン単位、プロピレン単位である樹脂のことを指すものである。ここで、「主となる繰り返し単位」とは、樹脂中にモル数で最も多く含まれる繰り返し単位のことである。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂などが挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体もしくはエチレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体もしくはプロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。紡糸性や強度の特性の観点からは、ポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。また、より冷感を発現しやすい観点からは、ポリエチレン系樹脂が好ましく用いられる。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂中のプロピレン単位の割合は60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。プロピレン単位の割合の上限は100質量%である。プロピレン単位の割合をかかる範囲とすることで良好な紡糸性を維持し、かつ強度をより向上させることができる。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレート(以下、MFRと略記することがある)が30g/10分以上850g/10分以下であることが好ましい。MFRを30g/10分以上、より好ましくは75g/10分以上、さらに好ましくは130g/10分以上とすることで、延伸時の応力を低くすることができ、速い紡糸速度で延伸したとしても、安定した紡糸をしやすくすることができる。一方、MFRを850g/10分以下、より好ましくは600g/10分以下、さらに好ましくは400g/10分以下とすることで、ポリオレフィン系樹脂の分子量が大きくなり、繊維1本あたりの強度が高くなるため、マスクとして使用するのに十分な強度の不織布が得られやすくなる。
【0018】
なお、本発明において、ポリオレフィン系樹脂のMFRは、ASTM D1238 (A法)によって測定される値を採用する。なお、この規格によれば、例えば、ポリプロピレンは荷重:2.16kg、温度:230℃にて、ポリエチレンは荷重:2.16kg、温度:190℃にて測定することが規定されている。
【0019】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂は、2種以上のポリオレフィン系樹脂の樹脂組成物であってもよく、また、熱可塑性エラストマー等を含有する樹脂組成物であってもよい。当然、MFRの異なる2種類以上の樹脂を任意の割合でブレンドして、ポリオレフィン系樹脂のMFRを調整することもできる。この場合、主となるポリオレフィン系樹脂に対してブレンドする樹脂のMFRは、10g/10分以上1000g/10分以下であることが好ましい。前記MFRは、より好ましくは20g/10分以上、さらに好ましくは30g/10分以上である。また、前記MFRは、より好ましくは800g/10分以下、さらに好ましくは600g/10分以下である。前記MFRをかかる範囲にすることにより、ブレンドしたポリオレフィン系樹脂に部分的に粘度斑が生じ、繊度が不均一化し、紡糸性が悪化することを防ぐことができる。
【0020】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、防曇剤、ブロッキング剤、滑剤、核剤、および酸化チタン等の顔料等の添加物、あるいは他の重合体を含んでいてもよい。
【0021】
また、後述する繊維を紡出する際、部分的な粘度斑の発生を防ぎ、繊維の繊度を均一化し、さらに繊維径を後述するように細くするため、用いる樹脂に対して、この樹脂の分子量を低下させてMFRを上げても良い。MFRを上げる方法としては、例えば、使用前に樹脂を加熱して熱分解する方法や、過酸化物を添加して熱処理する方法等が考えられる。
【0022】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂の融点は、80℃以上200℃以下であることが好ましい。融点を好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上とすることにより、より高い耐熱性が得られやすくなる。また、融点を好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下とすることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し安定した紡糸が行い易くなる。
【0023】
[繊維]
本発明において、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維は、平均単繊維直径が10.5μm以上26.0μm以下であることが重要である。平均単繊維直径を好ましくは10.5μm以上、より好ましくは12.5μm以上、さらに好ましくは14.5μm以上とすることにより、紡糸性の低下を防ぎ、安定した平均単繊維直径を有する不織布を形成することができるとともに、不織布の空隙が大きくなり通気性が向上する。一方、平均単繊維直径を好ましくは26.0μm以下、より好ましくは24.0μm以下、さらに好ましくは22.0μm以下とすることにより、熱カレンダーロールによる熱融着後の不織布において空隙が占める面積が小さくなるため、接触冷感が向上する。
【0024】
なお、繊維の平均単繊維直径(μm)は、以下の手順によって算出される。なお、測定には、例えば、株式会社キーエンス製の走査型電子顕微鏡「VHX-D500」を使用できる。以降、特に断りがない限り、測定方法の説明で示される走査型電子顕微鏡(SEM)としては本装置を使用することができるものとする。
(1)不織布について、ランダムに小片サンプル10個を採取する。
(2)SEMで撮影倍率500~1000倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の非融着部のポリオレフィン繊維の幅(直径)を測定する。繊維の断面が異形の場合には断面積を測定し、同一の断面積を有する正円の直径を求める。非融着部とは、繊維が互いに融着したり変形したりしていない部分である。
(3)測定した100本の値の平均値から平均単繊維直径(μm)を算出する。
【0025】
繊維の断面形状としては、丸断面の他、扁平断面、および、Y型やC型などの異形断面であってもよい。なかでも、曳糸性に優れ、高い紡糸速度で紡糸することで単糸強度の優れた繊維とすることができることから、丸断面がより好ましい態様である。
【0026】
本発明のスパンボンド不織布は、異なる種類の前記ポリオレフィン系樹脂を構成成分として含む複合繊維により構成されてもよい。複合繊維の複合形態としては、例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型などの複合形態を用いることができる。中でも、紡糸性に優れ、熱接着により繊維同士を均一に接着させることができることから、同心芯鞘型、偏心芯鞘型の複合形態とすることが好ましい。
【0027】
[冷感剤]
本発明のスパンボンド不織布は冷感剤を含んでなる。ここで、本発明において、スパンボンド不織布が「冷感剤を含む」とは、スパンボンド不織布を構成する繊維の表面に冷感剤が付与されている状態のことをいう。冷感剤としては、例えば、下記するような糖アルコール類や糖類(i)、融点が25℃以上37℃以下のパラフィンを封入してなるマイクロカプセル(ii)が挙げられる。
【0028】
(i)糖アルコール類、糖類
本発明のスパンボンド不織布において、冷感剤として用いられる糖アルコール類としては、例えば、キシリトール、エリスリトール、デキストロース、ソルビトール等が挙げられる。また、糖類としては、例えば、トレハロース、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)等が挙げられる。中でも、水に溶解する際の吸熱量が大きいことから、キシリトールあるいはエリスリトール、またはその両方を用いることが好ましい態様である。
【0029】
本発明のスパンボンド不織布は、糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を含む粒子を含むことが好ましい。ここで、本発明において、スパンボンド不織布が「粒子を含む」とは、スパンボンド不織布を構成する繊維の表面に粒子が付与されている状態のことをいう。
【0030】
スパンボンド不織布を構成する繊維の表面に粒子が付与されている状態としては、糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を含む粒子が繊維の表面に付与されている状態、より具体的には、スパンボンド不織布100質量%中に、糖アルコール類及び糖類の合計含有量が0.1質量%以上2.0質量%以下である状態が挙げられる。糖アルコール類及び糖類の合計含有量を好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上とすることにより、単位面積あたりに含まれる粒子の量が増え、冷感性能が向上する。また、糖アルコール類及び糖類の合計含有量を好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下とすることにより、摩擦により粒子が脱落し冷感性能が低下することを防ぐことができる。
【0031】
本発明のスパンボンド不織布に、糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を含む粒子を含むことは、例えば本発明のスパンボンド不織布から水で抽出した成分を高速液体クロマトグラフ(以下、HPLCという場合がある)で分離し、赤外分光分析法やプロトン核磁気共鳴(H-NMR)等で分析することで判別できる。
【0032】
本発明のスパンボンド不織布において、前記粒子の平均直径は5μm以上10μm以下であることが好ましい。粒子の平均直径を好ましくは5μm以上、より好ましくは6μm以上、さらに好ましくは7μm以上とすることによって、粒子1つに対する吸熱量が大きくなるため、スパンボンド不織布の冷感性能が向上する。一方、粒子の平均直径を10μm以下、より好ましくは9.5μm以下、さらに好ましくは9μm以下とすることによって、粒子をムラなく塗工することができ、かつ、粒子の繊維表面からの脱落が少なくなる。ここでいう粒子の直径とは、スパンボンド不織布の表面において観察される粒子が正円でない場合、その中心を通り、両端点がその円周上にある任意の線分のうち最も長い線分のことをいう。粒子の平均直径は、以下のように測定される。
(1)不織布について、ランダムに小片サンプル10個を採取する。
(2)SEMで撮影倍率1000~1500倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10個ずつ、計100個の粒子の直径を測定する。
(3)測定した100個の値の平均値から粒子の平均直径(μm)を算出する。
【0033】
粒子の平均直径を上記範囲とする方法としては、例えば、前記粒子が分散した分散液に含まれる界面活性剤の合計量を調整する方法が挙げられる。界面活性剤を添加することで界面活性効果により少なくとも糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を含む粒子の粒子径をより小さくできる。
【0034】
本発明のスパンボンド不織布において、前記粒子における直径5μm以上10μm以下の粒子の数の割合は50%以上100%以下であることが好ましい。粒子の直径5μm以上10μm以下の粒子の数の割合を、好ましくは50%以上とし、より好ましくは60%以上とし、さらに好ましくは70%以上とすることにより、粒子径のばらつきが少なくなるため、粒子が繊維表面から脱落しにくくなり、優れた冷感性能を発現する。ここでいう、粒子の割合は、以下のように測定される。
(1)不織布について、ランダムに小片サンプル10個を採取する。
(2)SEMで撮影倍率1000~1500倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10個ずつ、計100個の粒子の直径を測定する。
(3)測定した100本の値のうち5μm以上10μm以下を満たす粒子の数から粒子の割合を算出する。
【0035】
なお、上記粒子の平均直径の測定方法における(1)、(2)と粒子の割合の測定方法における(1)、(2)の操作は同じであるので、両方を測定する場合には、上記(1)、(2)の操作を行い、得られた直径の値をもとに、平均直径、割合をそれぞれ算出する方法を採用することも可能である。
【0036】
粒子の直径5μm以上10μm以下の粒子の数の割合を上記範囲とする方法としては、例えば、前記粒子が分散した分散液に含まれるアニオン系界面活性剤の量を調整する方法が挙げられる。アニオン系界面活性剤を添加することで粒子の分散性が向上し、より粒子径の揃った分散液が得られる。
【0037】
本発明のスパンボンド不織布において、上記の粒子を含む場合、さらに界面活性剤、および、シリコーンオイルを含むことが好ましい。このようにすることで、スパンボンド不織布の実使用において、粒子の脱落をより抑制し、持続冷感を発現しやすくすることができる。
【0038】
ここで、本発明において、スパンボンド不織布が「界面活性剤を含む」とは、スパンボンド不織布を構成する繊維の表面に界面活性剤が付与されている状態のことをいう。また、本発明で言う「界面活性剤」とは、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤よりなる群から選ばれる一つ以上を指す。
【0039】
そして、前記の非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル及びポリオキシエチレン硬化ひまし油等を例示できる。アニオン系界面活性剤としては、アルキルサルフェート・ナトリウム塩、アルキルエーテルサルフェート・ナトリウム塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム及びジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等を例示できる。カチオン系界面活性剤としては、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン、PPG-1/PEG-1ステアラミン、セトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド、ジメチルステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルステアリルアンモニウムクロライド、ベヘントリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ジステアリルジモニウムクロリド、クオタニウム-18、ベンザルコニウムクロリド等が挙げられる。
【0040】
上記の粒子を含む場合において、スパンボンド不織布に含まれる界面活性剤の量の合計は0.05質量%以上1.30質量%以下が好ましい。スパンボンド不織布に含まれる界面活性剤の量の合計を好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上、さらに好ましくは0.30質量%以上とすることにより、粒子の脱落をより少なくすることができる。また、スパンボンド不織布に含まれる界面活性剤の量の合計を好ましくは1.30質量%以下、より好ましくは1.00質量%以下、さらに好ましくは0.70質量%以下とすることにより、粒子あたりの吸熱量が大きくなるため、冷感性能が向上しやすくなる。
【0041】
また、上記の粒子を含む場合において、スパンボンド不織布に含まれるアニオン系界面活性剤の量は0.03質量%以上0.50質量%以下が好ましい。なお、ここで言うアニオン系界面活性剤の量とは、スパンボンド不織布中のアニオン系界面活性剤の含有量である。スパンボンド不織布に含まれるアニオン系界面活性剤の量を好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは質量0.10%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上とすることにより、粒子の脱落をより少なくすることができる。また、スパンボンド不織布に含まれるアニオン系界面活性剤の量を好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下、さらに好ましくは0.30質量%以下とすることにより、粒子あたりの吸熱量が大きくなるため、冷感性能が向上しやすくなる。
【0042】
なお、本発明のスパンボンド不織布に界面活性剤が含まれることは、以下の方法により判定される。すなわち、スパンボンド不織布から採取した試料溶液でメチレンブルークロロホルム試験を実施し、下層のクロロホルム層が青色を呈すればアニオン系界面活性剤、両層が同一呈色を示した場合は非イオン系界面活性剤、上層のみが青色を呈すれば、カチオン系界面活性剤を含むと判定される。メチレンブルークロロホルム試験は以下の手順によって測定されるものとする。
(1)メチレンブルー0.03g、濃硫酸12gおよび無水酢酸ナトリウム50gを水で薄めて1Lとする。(メチレンブルー溶液)
(2)スパンボンド不織布を水に30分間浸漬する。(試料溶液)
(3)試験管中にメチレンブルー溶液5mL、クロロホルム5mLを入れ、栓をして激しく振り放置して分層する。これに試料溶液を数滴加え、上下に激しく振った後、静置し分層し、色の変化を観察する。
【0043】
さらに、本発明において、スパンボンド不織布が「シリコーンオイルを含む」とは、スパンボンド不織布を構成する繊維の表面にシリコーンオイルが付与されている状態のことをいう。
【0044】
上記の粒子を含む場合において、シリコーンオイルを含む量は、スパンボンド不織布中に0.1質量%以上2.0質量%以下が好ましい。このようにすることによりスパンボンド不織布の実使用において、シリコーンオイルが摩擦抵抗を下げて粒子の脱落を抑制しやすくなる。
【0045】
そして、そのシリコーンオイルとしては、例えば、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボニル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ/アルコキシ変性シリコーンオイル、エポキシ/ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ/ポリエーテル変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、フェニルシリコーンオイル等が挙げられる。
【0046】
なお、本発明のスパンボンド不織布にシリコーンオイルが含まれることは、以下の方法により判定される。すなわち、スパンボンド不織布から採取した試験片の表面を、赤外分光分析装置により分析し、得られたスペクトルにおいて、1260cm-1と797cm-1にSi-CH結合、1089cm-1と1019cm-1にSi-O-SiおよびSi-O-C結合が検出された場合、スパンボンド不織布にシリコーンオイルが含まれていると判定される。
【0047】
上記界面活性剤およびシリコーンオイルを用いることで、糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を水中油滴型(O/W型)の分散液として乳化させることができる。これにより、糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を含む粒子を形成することができる。本発明の、糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を含む粒子としてはこのようにして得られた粒子を用いることが好ましい。
【0048】
(ii)パラフィンを封入してなるマイクロカプセル
本発明のスパンボンド不織布において、冷感剤として用いられるパラフィンを封入してなるマイクロカプセルに関し、このパラフィンとしては、融点が25℃以上37℃以下のパラフィンが好ましい。例えば、n-エイコサン、n-ノナデカン、n-オクタデカン等が挙げられる。パラフィンの融点が低すぎると、皮膚との接触前にパラフィンが溶けてしまい、皮膚が接触しても冷感効果は発現しない。一方、融点が高すぎると、接触したときにパラフィンが溶けないため、冷感効果は発現しない。
【0049】
上記パラフィンを内包するマイクロカプセルを構成する壁膜形成物質は特に限定されず、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素-ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができるが、中でも、強度の点から尿素-ホルマリン樹脂やメラミン樹脂を用いたものが好ましい。
【0050】
上記壁膜形成物質の厚さは0.1μm以上3.0μm以下であることが好ましい。壁膜形成物質の厚さを好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上とすることにより、不織布に付着させて加工する際、圧力負荷によるカプセルの破損を防ぐことができる。一方、壁膜形成物質の厚さを好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μmとすることにより、パラフィンが皮膚の熱を吸収しやすくなるため、接触冷感が向上する。なお、壁膜形成物質の厚さは、以下の手順によって算出される。
(1)不織布について、ランダムに断面サンプル10個を採取する。
(2)SEMで撮影倍率5000~10000倍の断面写真を撮影し、各サンプルから3個ずつ、計30個の壁膜形成物質の厚さを測定する。
(3)測定した30個の値の平均値から壁膜形成物質の厚さ(μm)を算出する。
【0051】
上記マイクロカプセルの平均粒子径は1.0μm以上20.0μm以下であることが好ましい。マイクロカプセルの平均粒子径を好ましくは1.0μm以上、より好ましくは2.0μm以上、さらに好ましくは3.0μmとすることにより、マイクロカプセル1つあたりの吸熱量が大きくなるため接触冷感が向上する。一方、マイクロカプセルの平均粒子径を好ましくは20.0μm以下、より好ましくは18.0μm以下、さらに好ましくは16.0μm以下とすることにより、繊維表面からマイクロカプセルが脱落しにくくなり冷感性能が向上する。ここでいうマイクロカプセルの平均粒子径とは、スパンボンド不織布の表面において観察される粒子が正円でない場合、その中心を通り、両端点がその円周上にある任意の線分のうち最も長い線分のことをいう。マイクロカプセルの平均粒子径は、以下のように測定される。
(1)不織布について、ランダムに小片サンプル10個を採取する。
(2)SEMで撮影倍率1000~1500倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10個ずつ、計100個の粒子の直径を測定する。
(3)測定した100個の値の平均値からマイクロカプセルの平均粒子径(μm)を算出する。
【0052】
スパンボンド不織布に含まれる上記マイクロカプセルの含有量は1質量%以上30質量%以下が好ましい。マイクロカプセルの含有量を好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上とすることにより、単位面積あたりに含まれる融点25℃以上37℃以下のパラフィンの量が増え、接触冷感が向上する。また、マイクロカプセルの含有量を好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下とすることにより、摩擦によりマイクロカプセルが脱落し冷感性能が低下することを防ぐことができる。
【0053】
本発明のスパンボンド不織布に、融点が25℃から37℃のパラフィンを封入してなるマイクロカプセルを含むことは、例えば本発明のスパンボンド不織布を赤外分光分析法や示差走査熱量計等で分析することで判別できる。
【0054】
[その他添加剤]
さらに、本発明のスパンボンド不織布は、清涼作用を有することから、L-メントール、DL-カンフル、ユーカリ油等を含んでもよい。
【0055】
[スパンボンド不織布]
本発明のスパンボンド不織布は、見かけ密度が0.15g/cm以上0.50g/cm以下であることが重要である。見かけ密度を好ましくは0.15g/cm以上、より好ましくは0.20g/cm以上、さらに好ましくは0.25g/cmとすることにより、ポリオレフィン系樹脂対比、熱伝導率の低い空気の層が低減するため、瞬間的に移動する熱量が多くなり、接触冷感が向上する。一方、見かけ密度を好ましくは0.50g/cm以下、より好ましくは0.45g/cm以下、さらに好ましくは0.40g/cmとすることにより、不織布の空気層が大きくなるため、通気性が向上し、実使用でより快適なマスクを提供することができる。なお、不織布の見かけ密度(g/cm)は、以下の手順によって算出される。
(i)不織布の目付(g/m)を、JIS L1913(2010年)の「6.2 単位面積当たりの質量」に準じ、以下の手順によって測定する。
(A)20cm×25cmの試験片を、試料の幅1mあたり3枚採取する。
(B)標準状態におけるそれぞれの重量(g)を量る。
(C)その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表する。
(ii)不織布の厚さ(mm)を、JIS L1906(2000年)の「5.1」に準じ、以下の手順によって測定する。
(A)直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向等間隔に1mあたり10点の厚さを0.01mm単位で測定する。
(B)上記10点の平均値の小数点以下第三位を四捨五入する。
(iii)上記の四捨五入前の目付と厚みから、次の式に基づいて見かけ密度を算出し、小数点以下第三位を四捨五入する。
・見かけ密度(g/cm)=[目付(g/m)]/[厚さ(mm)]×10-3
【0056】
見かけ密度を上記範囲とする方法としては、例えば、熱カレンダーロールの線圧やロール温度を調整する方法が挙げられる。
【0057】
本発明のスパンボンド不織布は、表面粗さの平均が2.0μm以上10.0μm以下であることが重要である。表面粗さの平均を好ましくは2.0μm以上、より好ましくは3.0μm以上、さらに好ましくは4.0μm以上とすることにより、不織布表面から冷感剤が脱落しにくくなり、持続冷感が向上する。一方、表面粗さの平均を好ましくは10.0μm以下、より好ましくは9.0μm以下、さらに好ましくは8.0μmとすることにより、不織布の肌に触れる面積が大きくなるため、瞬間的な熱の移動が大きくなり、接触冷感が向上する。なお、不織布の表面粗さの平均(μm)は、JIS B0601(2013年)の「4.2.1輪郭曲線の算術平均高さ」に準じ、以下の手順によって算出される。
(1)不織布から幅100mm×100mmの試験片を、不織布の幅方向等間隔に1m当たり10枚採取する。
(2)試験片を試料台にセットし、表面粗さ測定器(例えば、株式会社ミツトヨ社製小型表面粗さ測定器「SURFTEST SJ-210」)を用いて、タテ方向(不織布の長手方向、すなわちMD方向)とヨコ方向(不織布の幅方向、すなわちCD方向)の輪郭曲線をそれぞれ測定し、算術平均粗さRa(μm)を算出する。
(3)すべての試験片の測定値を平均して小数点以下第二位を四捨五入し、表面粗さの平均(μm)とする。
【0058】
表面粗さを上記範囲とする方法としては、例えば、繊維径を細くする、または捕集長を短く設定し不織布の地合いを改善する方法が挙げられる。
【0059】
また、本発明のスパンボンド不織布は、前記の粒子を含む場合、さらに界面活性剤、及び、シリコーンオイルを含むことが好ましいことは前記のとおりであるが、そうでない場合においても、界面活性剤、及び、シリコーンオイルを含んでもよいことは言うまでもない。さらに、その他の機能剤、例えば、抗菌剤、抗アレルゲン剤、抗ウイルス剤、ビタミン剤、親水剤、撥水剤を含ませることもできる。
【0060】
本発明のスパンボンド不織布は、接触冷感と持続冷感が付与され、かつ、実使用において十分な通気性を有するので、紙おむつ等の衛生材料や後述するようなマスク等に好適に用いることができる。
【0061】
[スパンボンド不織布の製造方法]
次に、本発明のスパンボンド不織布を製造する方法の好ましい態様について、具体的に説明する。
【0062】
本発明のスパンボンド不織布を製造する方法は、好ましくは、不織繊維ウェブを形成する工程(工程1)と、前記不織繊維ウェブを、双方のロール表面が平滑な熱ロールを用いて融着させ、シートを得る工程(工程2)と、前記シートの表面に冷感剤を付与する工程(工程3)と、を含む。
【0063】
(工程1:不織繊維ウェブを形成する工程)
不織繊維ウェブは、例えば、溶融したポリオレフィン系樹脂を紡糸口金から長繊維として紡出し、これを冷却して延伸した後、移動するネット上に繊維を捕集して形成することができる。なお、延伸はエジェクター等により圧縮エアで吸引して延伸してもよい。
【0064】
紡糸口金やエジェクターの形状は、丸形や矩形等、種々の形状のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアの使用量が比較的少なくエネルギーコストに優れること、糸条同士の融着や擦過が起こりにくく、糸条の開繊も容易であることから、矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせが好ましく用いられる。
【0065】
ポリオレフィン系樹脂を押出機において溶融し、計量して紡糸口金へと供給し、長繊維として紡出する。ポリオレフィン系樹脂を溶融し紡糸する際の紡糸温度は、200℃以上、より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上とすることにより、溶融粘度を低下させることができる。また270℃以下、より好ましくは260℃以下、さらに好ましくは250℃以下とすることで、ポリマーの熱分解を抑制することができる。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
【0066】
紡出した長繊維の糸条は冷却されるが、この冷却方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸温度および雰囲気温度等を考慮して、適宜調整して採用することができる。
【0067】
次に、冷却されて固化した糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引し、延伸してもよい。紡糸速度は、3000m/分以上6500m/分以下であることが好ましい。より好ましくは3200m/分以上、さらに好ましくは3500m/分以上とすることで、高い生産性を有し、また繊維の配向結晶化が進み、高強度の長繊維を得ることができる。一方、6500m/分以下であることで、糸切れなく紡糸できる。
【0068】
続いて、得られた長繊維を、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブを得る。
【0069】
前記の不織繊維ウェブに対して、ネット上でその片面から熱フラットロールを当接して仮接着させることも好ましい態様である。このようにすることにより、ネット上を搬送中に不織繊維ウェブの表層がめくれたり吹き流れたりして地合が悪化することを防いだり、糸条を捕集してから熱圧着するまでの搬送性を改善することができる。
【0070】
(工程2:不織繊維ウェブを、双方のロール表面が平滑な熱カレンダーロールを用いて融着させ、シートを得る工程)
不織繊維ウェブを融着させる方法は、例えば、上下一対のフラット(平滑)ロールからなる熱カレンダーロールにより熱融着させる方法、および不織繊維ウェブに熱風を貫通させて芯鞘型複合繊維の表面を軟化または融解させ、繊維交点同士を熱融着させるなどの方法が挙げられる。
【0071】
なかでも、上下一対のフラットロールからなる熱カレンダーロールを用いることが好ましい。このようにすることで、スパンボンド不織布の厚みを一定に調整することができる。
【0072】
熱カレンダーロールの表面材質としては、十分な熱圧着効果を得るため、金属製ロールを対にすることが好ましい態様である。
【0073】
融着させる際の熱カレンダーロールの表面温度は、使用しているポリオレフィン系樹脂の融点に対し-50℃以上-15℃以下とすることが好ましい態様である。熱カレンダーロールの表面温度をポリオレフィン系樹脂の融点に対し好ましくは-50℃以上とし、より好ましくは-45℃以上とすることにより、適度に融着させより高い強度のスパンボンド不織布を得ることができる。また、熱カレンダーロールの表面温度をポリオレフィン系樹脂の融点に対し好ましくは-15℃以下とし、より好ましくは-20℃以下とすることにより、過度な融着を抑制し、スパンボンド不織布として、特にマスク用途での使用に適した適度な柔軟性・加工性を得ることができる。
【0074】
融着させる際の熱カレンダーロールの線圧は、50N/cm以上500N/cm以下であることが好ましい。熱カレンダーロールの線圧を好ましくは50N/cm以上とし、より好ましくは100N/cm以上とし、さらに好ましくは150N/cm以上とすることにより、適度に融着させより高い強度のスパンボンド不織布を得ることができる。一方、熱カレンダーロールの線圧を好ましくは500N/cm以下とし、より好ましくは400N/cm以下とし、さらに好ましくは300N/cm以下とすることにより、スパンボンド不織布として、特にマスク用途での使用に適した適度な柔軟性・加工性を得ることができる。
【0075】
また、本発明では、スパンボンド不織布の厚みを調整することを目的に、上記の熱カレンダーロールによる融着の前および/あるいは後に、上下一対のフラットロールからなる熱カレンダーロールにより熱圧着を施すこともできる。上下一対のフラットロールとは、ロールの表面に凹凸のない金属製ロールや弾性ロールのことであり、金属製ロールと金属製ロールを対にしたり、金属製ロールと弾性ロールを対にしたりして用いることができる。
【0076】
また、ここで弾性ロールとは、金属製ロールと比較して弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールとしては、ペーパー、コットンおよびアラミドペーパー等のいわゆるペーパーロールや、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂および硬質ゴム、およびこれらの混合物からなる樹脂製のロールなどが挙げられる。
【0077】
(工程3:前記シートの表面に冷感剤を付与する工程)
本工程では、前記のシートの表面に、冷感剤を付与することによって、意図する冷感性能を有するスパンボンド不織布を得ることができる。
【0078】
前記冷感剤は糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を含む粒子であることが好ましい。前述のとおり、界面活性剤およびシリコーンオイルを用いることで、糖アルコール類及び糖類からなる群から選ばれる1種以上を水中油滴型(O/W型) の分散液として乳化させ、糖アルコール類及び糖類からなる群からえらばれる1種以上を含む粒子を形成することができる。そして所望の粒子径を有する粒子を形成した分散液とした後、シートの表面に付与するに適する濃度に希釈し、処理液とすることができる。
【0079】
前記粒子を含む分散液に含まれる界面活性剤の量の合計は1質量%以上26質量%以下であることが好ましい。界面活性剤の量の合計を好ましくは、1質量%以上とし、より好ましくは4質量%以上とし、さらに好ましくは6質量%以上とすることで、界面活性効果により少なくとも糖アルコール類及び糖類のうちのいずれかを含む粒子の粒子径をより小さくできる。一方、界面活性剤の量の合計を好ましくは、26質量%以下とし、より好ましくは20質量%以下とし、さらに好ましくは14質量%以下とすることで、スパンボンド不織布に溶液を付与した際の界面活性剤に起因するべとつきを抑制できる。
【0080】
また、前記粒子を含む分散液に含まれるアニオン系界面活性剤の量が0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。アニオン系界面活性剤の量を好ましくは、0.5質量%以上とし、より好ましくは1.0質量%以上とし、さらに好ましくは3.0質量%以上とすることで、粒子の分散性が向上し、より粒子径の揃った分散液が得られる。一方、アニオン系界面活性剤の量を好ましくは、10.0質量%以下とし、より好ましくは8.0質量%以下とし、さらに好ましくは質量6.0%以下とすることで、スパンボンド不織布に溶液を付与した際のアニオン系界面活性剤に起因するべとつきを抑制できる。
【0081】
また、前記粒子を含む分散液は、シリコーンオイルを1質量%以上30質量%以下含むことが好ましい。シリコーンオイルを好ましくは、1質量%以上とし、より好ましくは10質量%以上とし、さらに好ましくは15質量%以上とすることで、水で希釈した分散液をスパンボンド不織布に塗工したときに、粒子とスパンボンド不織布間の摩擦力が低下し、粒子の脱落をさらに抑制することができる。一方、シリコーンオイルが好ましくは、30質量%以下とし、より好ましくは25質量%以下とし、さらに好ましくは20質量%以下とすることで、スパンボンド不織布に分散液を付与した際のシリコーンオイルに起因するべとつきを抑制できる。
【0082】
少なくとも糖アルコール類及び糖類のうちのいずれかを含む粒子を塗工する条件としては、前記粒子を含む分散液中に、糖アルコール類及び糖類の合計濃度が0.2質量%以上6.0質量%以下となるように水で希釈した希釈液を処理剤としてスパンボンド不織布に塗工することが好ましい。
【0083】
また、前記冷感剤は、融点が25℃以上37℃以下のパラフィンを封入してなるマイクロカプセルであってもよい。このようなマイクロカプセルは、分散媒に分散させ、シートの表面に付与するに適する濃度にして処理液とすることができる。また、分散媒に分散させたスラリーもしくは分散液として市場から入手することも可能であるが、この場合は、所望の濃度になるように希釈して処理液とすればよい。上記分散媒、希釈剤としては水などが好ましく挙げられる。
【0084】
前記マイクロカプセルを塗工する条件としては、マイクロカプセルの濃度が2.0質量%以上60.0質量%以下となるように分散させた分散液を処理剤としてスパンボンド不織布に塗工することが好ましい。
【0085】
前記のシートへ冷感剤を付与する方法としては、水で希釈した冷感剤を満たした薬液槽から、薬液槽中を回転する金属ロールによって溶液を巻き上げ、金属ロールの上方にスパンボンド不織布を当接させることにより、分散液をスパンボンド不織布表面へ転写させるロールコーティング法、グラビア法、フレキソ法、スプレーコーティング法等が挙げられる。中でも、生産性に優れ、分散液を均一に付与することができ、かつ分散液の付与量の調節が容易にできることから、ロールコーティング法を用いることが好ましい。
【0086】
前記の冷感剤を付与した後は、前記の冷感剤に含まれる溶媒を乾燥させることが好ましい。この乾燥の方法としては、熱風及び赤外線により乾燥させる方法、熱源に接触させて乾燥させる方法等を用いてよい。
【0087】
[マスク]
前記のとおり、本発明のスパンボンド不織布は、接触冷感と持続冷感が付与され、かつ、実使用において十分な通気性を有するので、紙おむつ等の衛生材料やマスク等に好適に用いることができるが、なかでもマスクに用いることが好ましく、本発明のスパンボンド不織布が少なくとも口元に配されたマスクとすることが好ましい。
【0088】
マスクは、多くの場合、不織布を積層して用いられるが、その場合には、全ての層において本発明のスパンボンド不織布を用いてもよいし、他の不織布とともに積層してもよい。ただし、他の不織布とともに積層する場合には、上記のとおり、少なくとも口元に接する側に本発明のスパンボンド不織布を用いることが好ましい。例えば、三層構造として、口元からスパンボンド不織布A/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布Bの構成とする場合には、少なくともスパンボンド不織布Aとして本発明のスパンボンド不織布を用いることが好ましい。
【実施例0089】
実施例に基づき、本発明のスパンボンド不織布について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0090】
(1) スパンボンド不織布の平均単繊維直径(μm)
走査型電子顕微鏡として、株式会社キーエンス製「VHX-D500」を用い、前記の方法によって測定した。
【0091】
(2) スパンボンド不織布の表面粗さの平均(μm)
スパンボンド不織布から試験片を採取し、小型表面粗さ測定器として株式会社ミツトヨ社製「SURFTEST SJ-210」を用い、前記の方法によって測定した。
【0092】
(3) スパンボンド不織布の通気量(cm/cm/s)
JIS L1913(2010年)の「6.8」に準じ、フラジール形通気量測定機として「TEXTEST社製 FX3300」を用い、以下の手順によって測定する。
(i)スパンボンド不織布から、15cm×15cmの試験片を、試料の幅1mあたり3枚採取する。
(ii)測定圧力125Paにて、それぞれ通気量(cm/cm/s)を測定する。
(iii)その平均値をスパンボンド不織布の通気量(cm/cm/s)とする。
【0093】
(6) スパンボンド不織布に対する糖アルコール類及び糖類の合計含有量(質量%)
スパンボンド不織布に対する糖アルコール類及び糖類の合計含有量は、以下の手順によって測定した。
【0094】
本発明のスパンボンド不織布に、糖アルコール類及び糖類のいずれかを含むことは、本発明のスパンボンド不織布から水で抽出した成分をHPLC(株式会社日立ハイテクサイエンス製高速液体クロマトグラフ「Chromaster(登録商標)」)で分離し、赤外分光分析法やH-NMR等で分析することで判別した。
(i)スパンボンド不織布から20cm×25cmの試験片を、採取した。
(ii)質量を測定した試験片を水200mLに浸漬し、30分間撹拌した。
(iii)水で抽出した成分をHPLCで分離し、標準状態における単離後の糖アルコール類、糖類の各成分の質量(g)を量った。
(iv)試験片を乾燥し、標準状態における質量(g)を量った。
(v)下記の計算式によりスパンボンド不織布に対する糖アルコール類及び糖類の合計含有量(質量%)を算出した。
X=(A/W)×100(%)
【0095】
計算式中、Xは糖アルコール類及び糖類の合計含有量(質量%)を表す。Aは単離後の糖アルコール類及び糖類の合計質量(g)を表す。Wは浸漬後のスパンボンド不織布の質量(g)を表す。
【0096】
(4) スパンボンド不織布上の粒子の平均直径(μm)
走査型電子顕微鏡として、株式会社キーエンス製「VHX-D500」を用い、前記の方法によって測定した。
【0097】
(5) スパンボンド不織布上の5μm以上10μm以下の粒子の割合(%)
走査型電子顕微鏡として、株式会社キーエンス製「VHX-D500」を用い、前記の方法によって測定した。
【0098】
(6) スパンボンド不織布に対するマイクロカプセルの含有量(質量%)
スパンボンド不織布に対するマイクロカプセルの含有量は、DSC装置として「NETZSCH社製 DSC200F3Maia」を用い、以下の手順によって測定する。
(i)スパンボンド不織布から10mgの試験片を、採取した。
(ii)採取した試験片を測定温度0℃から200℃の条件でDSC測定し、2nd RUNで検出されたピークのピーク面積から融解熱(J/g)を算出した。
(iii)算出した融解熱をそれぞれのポリオレフィン系原料の潜熱で割った値を合計した。
(iv)1から(iii)で算出した値を引いた値に100を掛けた値をスパンボンド不織布に対するマイクロカプセルの含有量(質量%)とした。
【0099】
(7) スパンボンド不織布の接触冷感評価(W/cm
JIS L1927(2020年)に準じ、精密迅速熱物性測定装置としてカトーテック株式会社製「KES-F7 サーモラボ」を用い、以下の手順によって測定する。
(i)15cm×15cmの試験片を、試料の幅1mあたり5枚採取した。
(ii)測定台を室温と同温度に設定した。
(iii)熱源板を室温より、10.0℃高い温度に設定した。
(iv)試験片を肌に接触する面を上にして測定台の上に静置した。
(v)速やかに測定部と試験片とを圧力1.02kPaで接触させ、熱流束(W/cm)を算出した。
(vi)残り4枚の試験片を同様に測定し、その平均値をスパンボンド不織布の接触冷感評価(W/cm)とした。
【0100】
(8) スパンボンド不織布の持続冷感評価(℃)
スパンボンド不織布の冷感性能評価は以下の(i)~(iii)の手順によって測定した。
(i)不織布を2つ折りにしたものを試験片とし、折りたたんだ内側中央に温度センサーを設置した。
(ii)33℃の雰囲気中にて試験片中央部(センサー上)に0.2mLの水(0.2質量%浸透剤入り)を滴下し、湿潤部の温度を10分間測定した。
(iii)冷感剤の未塗工スパンボンド不織布との比較で、最大温度差(℃)により持続冷感性能を評価した。
【0101】
(9) スパンボンド不織布の冷感性能
前記の方法により、接触冷感と持続冷感を評価し、表1の基準をもとに冷感性能を1から5で評価した。3以上を「十分な冷感性能あり」と判定した。なお、点数が高い方が性能に優れることを意味する。
【0102】
【表1】
【0103】
(10) スパンボンド不織布のマスク性能
前記の方法により測定した通気量(cm/cm/s)が50(cm/cm/s)以上であった場合、「実使用において十分な通気性を有する」と判定した。「十分な冷感性能あり」かつ、「実使用において十分な通気性を有する」と判定した場合、「接触冷感、持続冷感、通気性を両立している」と判定した。なかでも、スパンボンド不織布の冷感性能が5であった場合、マスク性能「A」、スパンボンド不織布の冷感性能が4であった場合、マスク性能「B」、スパンボンド不織布の冷感性能が3であった場合、マスク性能「C」と表記した。なお、「十分な冷感性能あり」かつ、「実使用において十分な通気性を有する」を満たさない場合、マスク性能「F」と表記した。
【0104】
[分散液の調製法]
[分散液a]
キシリトール20.0g、並びに、ポリオキシエチレンセチルエーテル(CAS登録番号:9004-95-9)10.0g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(CAS登録番号:25155-30-0)1.2gを室温及び大気圧下で撹拌して混合し、得られた混合物に、室温及び大気圧下で70℃の水(以下、「水I」という場合がある)20.0gを添加した。次いで、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、アミノ変性シリコーンオイル(アミノ当量:約1500、粘度(25℃):800mm/s、重量平均分子量:約10000)20.0gを滴下添加した。次いで、室温及び大気圧下で該混合物を撹拌しながら、70℃の水(以下、「水II」という場合がある)28.8gを添加して分散液aを得た。
【0105】
[分散液b~f]
ポリオキシエチレンセチルエーテル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水I、水IIの量を表2のとおり変更した以外は、分散液aと同様にして分散液b~fを得た。
【0106】
【表2】
【0107】
[実施例1]
MFR200g/10分、融点163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂を押出機で溶融し、孔径φ0.30mm、孔深度1mmの矩形口金から、紡糸温度235℃、単孔吐出量0.5g/分の条件で紡出した。紡出した糸条を冷却固化した後、これを矩形エジェクターにおいて、エジェクター圧力を0.30MPaとした圧縮エアによって牽引、延伸し、移動するネット上に捕集して、繊維ウェブを得た。
【0108】
次いで、得られた繊維ウェブを、上下ロールが金属製フラットロールで構成される熱カレンダーロールを用いて、線圧400N/cm、熱接着温度135℃の条件で熱接着し、目付30g/mのスパンボンド不織布を得た。スパンボンド不織布を構成する繊維の平均単繊維直径は15.0μmであった。
【0109】
得られたスパンボンド不織布の片面側に、分散液aを25℃の水400gで希釈した液体で満たした槽中をウェブ搬送速度の15%の速さで回転する金属ロールを用いて、分散液aを付着させ、120℃に設定した乾燥機中を1秒間通過させることで揮発成分を除去し、スパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0110】
[実施例2]
実施例1において、孔径をφ0.60mm、単孔吐出量を2.0g/分に変更した以外は、実施例1と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0111】
[実施例3]
実施例1において、単孔吐出量を0.40g/分、エジェクター圧力を0.50MPa、線圧を100N/cmに変更した以外は、実施例1と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0112】
[実施例4]
実施例1において、分散液aを25℃の水400gで希釈した液体を、分散液aを25℃の水9900gで希釈した液体に変更した以外は、実施例1と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0113】
[実施例5]
実施例1において、分散液aを分散液bに変更した以外は、実施例1と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0114】
[実施例6]
実施例1において、分散液aを25℃の水400gで希釈した液体を、分散液cを25℃の水390gで希釈した液体に変更した以外は、実施例1と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0115】
[実施例7]
実施例1において、分散液aを分散液dに変更した以外は、実施例1と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0116】
[実施例8]
実施例1において、分散液aを25℃の水400gで希釈した液体を、分散液eを25℃の水380gで希釈した液体に変更した以外は、実施例1と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0117】
[実施例9]
実施例1において、分散液aを25℃の水400gで希釈した液体を、n-オクタデカンを封入したマイクロカプセル(壁膜形成物質:メラミン樹脂、壁膜形成物質の厚さ:0.15μm、マイクロカプセルの平均粒子径:5.0μm)が30質量%となるよう水で希釈した液体に変更した以外は、実施例1と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0118】
[比較例1]
実施例3において、上下ロールが金属製フラットロールで構成される熱カレンダーロールを用いて、線圧100N/cmで熱接着を、下ロールに金属製で水玉柄の彫刻がなされた接着面積率16%のエンボスロールを、上ロールに金属製フラットロールで構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、線圧400N/cmで熱接着に変更した以外は、実施例2と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0119】
[比較例2]
実施例1において、単孔吐出量を0.30g/分、エジェクター圧力を0.40MPaに変更した以外は、実施例1と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0120】
[比較例3]
実施例1において、分散液aを25℃の水400gで希釈した液体を塗工しなかった以外は、実施例1と同様にスパンボンド不織布を得た。評価結果を表3に示す。
【0121】
【表3】
【0122】
表3に示すとおり、実施例1~9のスパンボンド不織布は、接触冷感と持続冷感を付与することができ、かつ、実使用において十分な通気性を有するスパンボンド不織布であった。一方、比較例1~3のスパンボンド不織布は、十分な接触冷感や持続冷感が付与されない、もしくは実使用において十分な通気性を有さないスパンボンド不織布であった。