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特開2024-121137舶用二重反転プロペラ装置の給油装置及び舶用二重反転プロペラ装置
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  • 特開-舶用二重反転プロペラ装置の給油装置及び舶用二重反転プロペラ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121137
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】舶用二重反転プロペラ装置の給油装置及び舶用二重反転プロペラ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240830BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20240830BHJP
   F16N 11/08 20060101ALI20240830BHJP
   B63H 5/10 20060101ALI20240830BHJP
   B63H 23/36 20060101ALI20240830BHJP
   B63H 23/34 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F16H57/04 K
F16N7/38 E
F16N11/08
F16H57/04 Q
B63H5/10
B63H23/36
B63H23/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028059
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】520357718
【氏名又は名称】日本シップヤード株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593172223
【氏名又は名称】今治造船株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 政宏
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA23
3J063AB01
3J063BA11
3J063BB01
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD43
3J063XD73
(57)【要約】
【課題】簡便な構造で二重反転軸受に潤滑油を供給することができ、製造コストを低減し、潤滑油の飛散を抑制することができる、舶用二重反転プロペラ装置の給油装置及び舶用二重反転プロペラ装置を提供する。
【解決手段】舶用二重反転プロペラ装置1は、内側プロペラ軸2を備え、内側プロペラ軸2は、前端から前側二重反転シール装置51及び前側二重反転軸受41により形成された隙間11に隣接する位置まで軸方向に形成された中空部23と、と隙間11と中空部23とを連通するように形成された複数の給油口24と、を備え、中空部23及び複数の給油口24を介して二重反転軸受4を含む軸受系統に潤滑油を供給している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後プロペラを備えた内側プロペラ軸と、前プロペラを備えた外側プロペラ軸と、前記内側プロペラ軸と前記外側プロペラ軸との間に配置された二重反転軸受と、前記内側プロペラ軸と前記外側プロペラ軸との間に配置された二重反転シール装置と、を備えた舶用二重反転プロペラ装置の給に装置であって、
前記二重反転軸受は、船首側に配置される前側二重反転軸受と、船尾側に配置される後側二重反転軸受と、を含み、
前記二重反転シール装置は、前記前側二重反転軸受よりも船首側に配置される前側二重反転シール装置と、前記後側二重反転軸受よりも船尾側に配置される後側二重反転シール装置と、を含み、
前記内側プロペラ軸は、前端から前記前側二重反転シール装置及び前記前側二重反転軸受により形成された隙間に隣接する位置まで軸方向に形成された中空部と、前記隙間と前記中空部とを連通するように形成された複数の給油口と、を備え、
前記中空部及び前記複数の給油口を介して前記二重反転軸受を含む軸受系統に潤滑油を供給するようにした、
ことを特徴とする舶用二重反転プロペラ装置の給油装置。
【請求項2】
前記舶用二重反転プロペラ装置は、前記内側プロペラ軸に同心軸上に接続される軸部材を含み、前記軸部材は、前記中空部と連通する連通流路を備え、前記連通流路を介して前記中空部に前記潤滑油を供給するようにした、請求項1に記載の舶用二重反転プロペラ装置の給油装置。
【請求項3】
前記舶用二重反転プロペラ装置は、前記内側プロペラ軸と前記外側プロペラ軸とを反転させる二重反転ギア装置と、前記二重反転ギア装置に動力を出力する駆動装置と、を含み、前記二重反転ギア装置は、前記内側プロペラ軸を駆動させる内側ロータ軸と、前記外側プロペラ軸を駆動させる外側ロータ軸と、を含み、前記駆動装置は、前記内側ロータ軸と並行に配置された出力軸を備え、前記内側ロータ軸は、前記中空部と連通する連通流路を備え、前記連通流路を介して前記中空部に前記潤滑油を供給するようにした、請求項1に記載の舶用二重反転プロペラ装置の給油装置。
【請求項4】
前記舶用二重反転プロペラ装置は、前記内側プロペラ軸と前記外側プロペラ軸とを反転させる二重反転ギア装置と、前記二重反転ギア装置に動力を出力する駆動装置と、を含み、前記二重反転ギア装置は、前記内側プロペラ軸を駆動させる内側ロータ軸と、前記外側プロペラ軸を駆動させる外側ロータ軸と、を含み、前記駆動装置は、前記内側ロータ軸と同心軸上に配置された出力軸を備え、前記内側ロータ軸は、前記中空部と連通する第一連通流路を備え、前記出力軸は、前記第一連通流路と連通する第二連通流路を備え、前記第二連通流路から前記第一連通流路を経由して前記中空部に前記潤滑油を供給するようにした、請求項1に記載の舶用二重反転プロペラ装置の給油装置。
【請求項5】
前記複数の給油口は、前記内側プロペラ軸の周方向に均等の間隔で形成されている、請求項1に記載の舶用二重反転プロペラ装置の給油装置。
【請求項6】
静止系から回転系に前記潤滑油を供給する給油用継手を含む、請求項1に記載の舶用二重反転プロペラ装置の給油装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の舶用二重反転プロペラ装置の給油装置を備えたことを特徴とする舶用二重反転プロペラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用二重反転プロペラ装置の給油装置及び舶用二重反転プロペラ装置に関し、特に、舶用二重反転プロペラ装置の軸受系統への潤滑油の供給に適した舶用二重反転プロペラ装置の給油装置及び舶用二重反転プロペラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
舶用二重反転プロペラ装置は、同心軸上に取り付けた2基のプロペラ(前プロペラ及び後プロペラ)を互いに逆方向に回転させる装置である。この装置は、前プロペラで損失される回転流のエネルギーを後プロペラで回収して推進力に変えることができ、推進性能を向上させることができる。
【0003】
舶用二重反転プロペラ装置は、例えば、特許文献1,2に記載されたように、後プロペラを備えた内側プロペラ軸と、前プロペラを備えた外側プロペラ軸と、内側プロペラ軸と外側プロペラ軸との間に配置された一対の二重反転軸受(前側二重反転軸受及び後側二重反転軸受)と、内側プロペラ軸と外側プロペラ軸とを反転させる二重反転ギア装置と、船尾管と外側プロペラ軸との間に配置された船尾管軸受と、船尾管の両端に配置された一対の船尾管シール装置(前側船尾管シール及び後側船尾管シール)と、内側プロペラ軸と外側プロペラ軸との間に配置された一対の二重反転シール装置(前側二重反転シール装置及び後側二重反転シール装置)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5033664号公報
【特許文献2】特許第6532927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した舶用二重反転プロペラ装置では、二重反転軸受の摩耗や焼き付きを防止するために潤滑油を供給する必要があるが、内側プロペラ軸及び外側プロペラ軸を含む回転系にどのように潤滑油を静止系である外部から供給するかが問題となる。
【0006】
例えば、上述した特許文献1,2に記載された舶用二重反転プロペラ装置では、前側船尾管シール装置のハウジング(静止系)から潤滑油を供給し、前側船尾管シール装置のシールライナ(回転系)から潤滑油を取り出した後、二重反転軸受に潤滑油を供給するようにしている。
【0007】
しかしながら、船尾管シール装置を介して二重反転軸受に潤滑油を供給する場合には、シールライナに給油系統の加工が必要になる、船尾管シール装置と外側プロペラ軸とを繋ぐ給油配管が必要になる等の制約があり、構造が複雑になってしまう、製造コストが増大してしまうという問題があった。
【0008】
また、船尾管シール装置と外側プロペラ軸とを繋ぐ給油配管は回転系に含まれることから、配管接続部等から潤滑油が漏れた場合には、外側プロペラ軸の回転に伴って漏れた潤滑油が周囲に飛散してしまうという問題もあった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、簡便な構造で二重反転軸受に潤滑油を供給することができ、製造コストを低減し、潤滑油の飛散を抑制することができる、舶用二重反転プロペラ装置の給油装置及び舶用二重反転プロペラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、後プロペラを備えた内側プロペラ軸と、前プロペラを備えた外側プロペラ軸と、前記内側プロペラ軸と前記外側プロペラ軸との間に配置された二重反転軸受と、前記内側プロペラ軸と前記外側プロペラ軸との間に配置された二重反転シール装置と、を備えた舶用二重反転プロペラ装置の給油装置であって、前記二重反転軸受は、船首側に配置される前側二重反転軸受と、船尾側に配置される後側二重反転軸受と、を含み、前記二重反転シール装置は、前記前側二重反転軸受よりも船首側に配置される前側二重反転シール装置と、前記後側二重反転軸受よりも船尾側に配置される後側二重反転シール装置と、を含み、前記内側プロペラ軸は、前端から前記前側二重反転シール装置及び前記前側二重反転軸受により形成された隙間に隣接する位置まで軸方向に形成された中空部と、前記隙間と前記中空部とを連通するように形成された複数の給油口と、を備え、前記中空部及び前記複数の給油口を介して前記二重反転軸受を含む軸受系統に潤滑油を供給するようにした、ことを特徴とする舶用二重反転プロペラ装置の給油装置が提供される。
【0011】
前記舶用二重反転プロペラ装置は、前記内側プロペラ軸に同心軸上に接続される軸部材を含み、前記軸部材は、前記中空部と連通する連通流路を備え、前記給油装置は、前記連通流路を介して前記中空部に前記潤滑油を供給するようにしてもよい。
【0012】
前記舶用二重反転プロペラ装置は、前記内側プロペラ軸と前記外側プロペラ軸とを反転させる二重反転ギア装置と、前記二重反転ギア装置に動力を出力する駆動装置と、を含み、前記二重反転ギア装置は、前記内側プロペラ軸を駆動させる内側ロータ軸と、前記外側プロペラ軸を駆動させる外側ロータ軸と、を含み、前記駆動装置は、前記内側ロータ軸と並行に配置された出力軸を備え、前記内側ロータ軸は、前記中空部と連通する連通流路を備え、前記給油装置は、前記連通流路を介して前記中空部に前記潤滑油を供給するようにしてもよい。
【0013】
前記舶用二重反転プロペラ装置は、前記内側プロペラ軸と前記外側プロペラ軸とを反転させる二重反転ギア装置と、前記二重反転ギア装置に動力を出力する駆動装置と、を含み、前記二重反転ギア装置は、前記内側プロペラ軸を駆動させる内側ロータ軸と、前記外側プロペラ軸を駆動させる外側ロータ軸と、を含み、前記駆動装置は、前記内側ロータ軸と同心軸上に配置された出力軸を備え、前記内側ロータ軸は、前記中空部と連通する第一連通流路を備え、前記出力軸は、前記第一連通流路と連通する第二連通流路を備え、前記給油装置は、前記第二連通流路から前記第一連通流路を経由して前記中空部に前記潤滑油を供給するようにしてもよい。
【0014】
前記複数の給油口は、前記内側プロペラ軸の周方向に均等の間隔で形成されていてもよい。
【0015】
前記給油装置は、静止系から回転系に前記潤滑油を供給する給油用継手を含んでいてもよい。
【0016】
また、本発明によれば、上述した何れかの構成を有する舶用二重反転プロペラ装置の給油装置を備えたことを特徴とする舶用二重反転プロペラ装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明に係る舶用二重反転プロペラ装置の給油装置及び舶用二重反転プロペラ装置によれば、軸受系統の潤滑油を内側プロペラ軸の端部側から供給するようにしたことにより、回転する給油配管をなくすことができ、簡便な構造で二重反転軸受に潤滑油を供給することができ、製造コストを低減し、潤滑油の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第一実施形態に係る舶用二重反転プロペラ装置の給油装置を示す概略構成図である。
図2図1に示した給油装置の給油口の一例を示す内側プロペラ軸の断面図であり、(A)は第一例、(B)は第二例、である。
図3】第二実施形態に係る舶用二重反転プロペラ装置の給油装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図1図3を用いて説明する。ここで、図1は、第一実施形態に係る舶用二重反転プロペラ装置の給油装置を示す概略構成図である。図2は、図1に示した給油装置の給油口の一例を示す内側プロペラ軸の断面図であり、(A)は第一例、(B)は第二例、である。なお、図1において、説明の便宜上、断面部分のハッチングを省略してある。
【0020】
本明細書において、「前」の用語は相対的に船首方向側にある位置又は状態を意味し、「後」の用語は相対的に船尾方向側にある位置又は状態を意味している。また、「内側」の用語は相対的に径方向内方にある位置又は状態を意味し、「後」の用語は相対的に径方向外方にある位置又は状態を意味している。
【0021】
舶用二重反転プロペラ装置1は、例えば、図1に示したように、後プロペラ21を備えた内側プロペラ軸2と、前プロペラ31を備えた外側プロペラ軸3と、内側プロペラ軸2と外側プロペラ軸3との間に配置された二重反転軸受4と、内側プロペラ軸2と外側プロペラ軸3との間に配置された二重反転シール装置5と、内側プロペラ軸2と外側プロペラ軸3とを反転させる二重反転ギア装置6と、二重反転ギア装置6に動力を出力する駆動装置(図示省略)と、船尾管7と外側プロペラ軸との間に配置された船尾管軸受8と、船尾管7の両端に配置された一対の船尾管シール装置9と、を備えている。
【0022】
二重反転ギア装置6は、例えば、二重反転機構を構成する歯車機構を内蔵したギアボックス61と、内側プロペラ軸2を駆動させる内側ロータ軸62と、外側プロペラ軸3を駆動させる外側ロータ軸63と、を備えている。なお、内側プロペラ軸2と内側ロータ軸62との間又は外側プロペラ3と外側ロータ軸63との間に中間軸が介在していてもよい。
【0023】
駆動装置は、例えば、内側ロータ軸62と並行に配置された出力軸を備えている。駆動装置は、例えば、内側ロータ軸62に動力を出力する第一駆動装置と、外側ロータ軸63に動力を出力する第二駆動装置と、を備え、ギアボックス61に内蔵された歯車機構により、内側ロータ軸62と外側ロータ軸63とは反対方向に回転駆動される。
【0024】
図1に示した舶用二重反転プロペラ装置1は、二重反転機構を構成する歯車機構として、いわゆる並行歯車機構を採用したものである。なお、かかる並行歯車機構を採用した二重反転ギア装置6及び駆動装置の具体的な構成については、例えば、上述した特許文献1,2等に既に開示されているので、ここでは詳細な説明及び図を省略する。
【0025】
内側プロペラ軸2は、外側プロペラ軸3の内側に同心軸上に配置されたプロペラ軸であり、後端に後プロペラ21が配置されている。なお、後プロペラ21の後端にはプロペラキャップ22が配置される。
【0026】
外側プロペラ軸3は、内側プロペラ軸2の外側に同心軸上に配置されたプロペラ軸であり、後端に前プロペラ31が配置されている。外側プロペラ軸3及び前プロペラ31は、軸中心部を貫通する空洞を有し、その空洞に内側プロペラ軸2が挿通される。
【0027】
外側プロペラ軸3は、軸部とプロペラ部とにより構成されるが、特段の説明がある場合を除いて、「外側プロペラ軸」の表記は、前プロペラ31を接続した状態で内側プロペラ軸2の外側に配置される略円筒形状部を意味するものとする。すなわち、外側プロペラ軸3は前プロペラ31のボス部を含むものとする。
【0028】
前プロペラ31によって生じるスラスト荷重は、内側プロペラ軸2と外側プロペラ軸3との間に配置されたスラスト軸受10によって支持される。スラスト軸受10は、例えば、内側プロペラ軸2の中間部に形成された凸部を外側プロペラ軸3に形成された凹部(軸部とプロペラ部との境界部)に挿入することによって形成された軸部に対して垂直な対峙面に配置される。
【0029】
二重反転軸受4は、内側プロペラ軸2のラジアル荷重を支持する軸受であり、例えば、内側プロペラ軸2の軸方向の両端部に配置される。船首側の端部付近に配置される二重反転軸受4を前側二重反転軸受41と称し、船尾側の端部付近に配置される二重反転軸受4を後側二重反転軸受42と称する。後側二重反転軸受42は、例えば、スラスト軸受10の直後に配置される。二重反転軸受4は、例えば、転がり軸受である。
【0030】
二重反転シール装置5は、内側プロペラ軸2と外側プロペラ軸3との間の隙間を封止するシール装置であり、外側プロペラ軸3の両端部に配置される。船首側の端部付近に配置される二重反転シール装置5を前側二重反転シール装置51と称し、船尾側の端部付近に配置される二重反転シール装置5を後側二重反転シール装置52と称する。
【0031】
二重反転シール装置5は、例えば、内側プロペラ軸2の周面に配置されるシールライナ53と、シールライナ53の表面に配置されたシールケーシング54と、シールライナ53に押し付けられた状態でシールケーシング54内に配置されたシールリング55と、を備えている。なお、二重反転シール装置5の構成は、図示した構成に限定されるものではない。
【0032】
前側二重反転シール装置51のシールライナ53は、クランプリング56により軸方向に位置決めされる。また、後側二重反転シール装置52のシールライナ53は、後プロペラ21のボス部により軸方向に位置決めされる。
【0033】
後側二重反転シール装置52において、後側のシールリング55間にはシールエアが供給される。なお、シールエアの供給系統については、例えば、上述した特許文献1,2等に既に開示されているので、ここでは詳細な説明及び図を省略する。
【0034】
船尾管軸受8は、外側プロペラ軸3のラジアル荷重を支持する軸受であり、例えば、船尾管7の両端部付近に配置される。船首側の端部付近に配置される船尾管軸受8を前側船尾管軸受81と称し、船尾側の端部付近に配置される船尾管軸受8を後側船尾管軸受82と称する。
【0035】
船尾管軸受8には、給油ライン83から潤滑油が供給される。具体的には、潤滑油は、船尾管7内の配管を経由して後側船尾管軸受82の船尾側の空間に流入し、後側船尾管軸受82に供給される。後側船尾管軸受82を通過した潤滑油は、船尾管7を経由して前側船尾管軸受81に供給され、回収ライン84から排出される。
【0036】
船尾管シール装置9は、船尾管7と外側プロペラ軸3との間の隙間を封止するシール装置であり、船尾管7の両端部に配置される。船首側の端部付近に配置される船尾管シール装置9を前側船尾管シール装置91と称し、船尾側の端部付近に配置される船尾管シール装置9を後側船尾管シール装置92と称する。
【0037】
船尾管シール装置9は、例えば、外側プロペラ軸3の周面に配置されるシールライナ93と、シールライナ93の表面に配置されたシールケーシング94と、シールライナ93に押し付けられた状態でシールケーシング94内に配置されたシールリング95と、を備えている。なお、船尾管シール装置9の構成は、図示した構成に限定されるものではない。
【0038】
前側船尾管シール装置91のシールライナ93は、クランプリング96により軸方向に位置決めされる。また、後側船尾管シール装置92のシールライナ93は、前プロペラ31のボス部により軸方向に位置決めされる。
【0039】
また、船尾管シール装置9は、例えば、油潤滑方式のシール装置である。前側船尾管シール装置91には給油ライン97から潤滑油が供給され、回収ライン98から潤滑油が排出される。なお、後側船尾管シール装置92の船首側のシールリング95の潤滑及び冷却は、後側船尾管軸受82の船尾側の空間に供給された船尾管軸受8の潤滑油によって賄われる。
【0040】
なお、後側船尾管シール装置92において、後側のシールリング95間にはシールエアが供給される。なお、シールエアの供給系統については、例えば、上述した特許文献1,2等に既に開示されているので、ここでは詳細な説明及び図を省略する。
【0041】
上述した二重反転軸受4及びスラスト軸受10は、舶用二重反転プロペラ装置1の軸受系統を構成し、この軸受系統に潤滑油を供給する必要がある。本実施形態に係る給油装置は、この軸受系統に潤滑油を給油する構造に特徴を有している。
【0042】
具体的には、内側プロペラ軸2は、前端から前側二重反転シール装置51及び前側二重反転軸受41により形成された隙間11に隣接する位置まで軸方向に形成された中空部23と、隙間11と中空部23とを連通するように形成された複数の給油口24と、を備え、中空部23及び複数の給油口24を介して軸受系統に潤滑油を供給している。
【0043】
中空部23は、内側プロペラ軸2の軸心部に形成された部分的な空洞である。中空部23の軸方向深さは、給油口24を配置することができるように、隙間11に隣接する位置に設定される。中空部23は、前側二重反転軸受41と隣接する位置(すなわち、前側二重反転軸受41の前端を超える位置)まで形成してもよい。なお、中空部23は、前側二重反転軸受41を超えた位置(すなわち、前側二重反転軸受41の後端を超える位置)まで形成する必要性は少ないが、そのような場合を除外するものではない。
【0044】
複数の給油口24は、例えば、図2(A)に示したように、内側プロペラ軸2の周方向に均等の間隔で放射状に形成される。ここでは、給油口24が12本の場合を図示しているが、かかる本数に限定されるものではない。また、給油口24は、隙間11側(外側)の口径が中空部23側(内側)の口径よりも大きくなるように形成されていてもよい。
【0045】
また、複数の給油口24は、図2(B)に示したように、中空部23の軸方向位置が異なる位置に形成されていてもよい。ここでは、前側に6本の給油口24を均等の間隔で放射状に配置し、後側に6本の給油口24を均等の間隔で放射状に配置し、前後の給油口24の位相をずらして12本の給油口24が周方向に均等に分配されるように構成している。図2(B)では、前側に配置した給油口24を実線で図示し、後側に配置した給油口24を点線で図示している。
【0046】
なお、給油口24の配置は図示した構成に限定されるものではなく、前後に分配する段数を増やしてもよいし、前後の給油口24の口径が異なっていてもよいし、前後で給油口24の本数が異なっていてもよい。
【0047】
また、図1に示したように、並行歯車機構を採用した舶用二重反転プロペラ装置1では、内側プロペラ軸2の前端に二重反転ギア装置6の内側ロータ軸62が接続されている。したがって、本実施形態では、内側ロータ軸62を介して中空部23に潤滑油を供給するようにしている。具体的には、内側ロータ軸62に内側プロペラ軸2の中空部23と連通する連通流路64を形成し、連通流路64を介して中空部23に潤滑油を供給している。
【0048】
連通流路64は、例えば、内側ロータ軸62の軸心部を貫通する空洞である。連通流路64は、中空部23と同心軸上に配置され、中空部23と略同一径を有していることが好ましい。連通流路64の前端には、静止系から回転系に潤滑油を供給する給油用継手65が配置される。給油用継手65は、例えば、ロータリージョイントであるが、これに限定されるものではない。
【0049】
また、給油用継手65は、内側ロータ軸62の周面に配置される給油シールであってもよい。この場合、連通流路64は、内側ロータ軸62を貫通している必要はないが、給油用継手65から連通流路64に潤滑油を供給する複数の給油口を周上に形成する必要がある。
【0050】
潤滑油供給システムは、例えば、潤滑油を貯蔵するオイルタンク12と、潤滑油を送り出すポンプ13と、潤滑油を冷却する冷却器14と、給油用継手65に接続される給油ライン15と、船尾管7から潤滑油を排出しオイルタンク12に回収する回収ライン16と、を備えている。
【0051】
したがって、潤滑油はオイルタンク12から給油ライン15を経由して内側ロータ軸62の連通流路64に供給される。連通流路64に供給された潤滑油は、内側プロペラ軸2の中空部23に供給される。中空部23に供給された潤滑油は、給油口24から前側二重反転シール装置51及び前側二重反転軸受41により形成された隙間11に供給され、前側二重反転シール装置51及び前側二重反転軸受41に供給される。
【0052】
前側二重反転軸受41を通過した潤滑油は、内側プロペラ軸2及び外側プロペラ軸3との間に形成された第一軸間空間17を介してスラスト軸受10に供給される。スラスト軸受10を通過した潤滑油は、直後に配置された後側二重反転軸受42に供給される。
【0053】
後側二重反転軸受42を通過した潤滑油は、前プロペラ31及び後側船尾管シール装置92に形成された流路を通過して船尾管7内に設置された排油ラインを通過した後、回収ライン16に排出される。
【0054】
また、図示したように、船尾管軸受8の給油ライン83及び前側船尾管シール装置91の給油ライン97を給油ライン15から分岐するように構成してもよい。給油ライン15,83,97には、必要に応じて、仕切弁や流量調整弁が配置される。また、船尾管軸受8の回収ライン84及び前側船尾管シール装置91の回収ライン98をオイルタンク12に接続し、潤滑油を回収するようにしてもよい。なお、これらの潤滑油を供給及び回収するオイルタンク12、潤滑油を送り出すポンプ13及び潤滑油を冷却する冷却器14は、一つに共有化されていてもよいし、それぞれ個別に設置されていてもよい。
【0055】
また、二重反転軸受4及び二重反転シール装置5から排出されるドレンは、ドレン回収装置(図示省略)に回収される。ドレンの回収系統については、例えば、上述した特許文献1,2等に既に開示されているので、ここでは詳細な説明及び図を省略する。
【0056】
上述した本実施形態に係る給油装置を備えた舶用二重反転プロペラ装置1によれば、軸受系統の潤滑油を内側プロペラ軸2の端部側から供給するようにしたことにより、回転する給油配管をなくすことができ、簡便な構造で二重反転軸受4に潤滑油を供給することができ、製造コストを低減し、潤滑油の飛散を抑制することができる。
【0057】
また、従来の舶用二重反転プロペラ装置のように、船尾管シール装置を介して二重反転軸受に潤滑油を供給する場合には、シールライナに給油系統の特殊な加工が必要となり、船尾管シール装置等を特注品にする必要があった。
【0058】
それに対して、上述した本実施形態に係る給油装置を備えた舶用二重反転プロペラ装置1では、船尾管シール装置9と二重反転軸受4を接続する給油配管をなくしたことにより、船尾管シール装置9に汎用品を適用することができる。
【0059】
また、従来の舶用二重反転プロペラ装置では、シールライナの摩耗時に外周を再研磨するために軸から引き抜く作業が必要となり、給油配管の取り外し等の付帯作業が多く、メンテナンスに時間と費用を要する。
【0060】
また、シールライナの摩耗時にシールライナの取付位置を軸方向にずらして新しい摺動面を形成するメンテナンス方法もある。この場合、シールライナを予め長めに形成しておく必要があり製造コストの増大を招く、シールライナの取付位置によって給油配管の長さや給油口の位置が変わるため給油配管や給油口の再製作が必要となる。
【0061】
それに対して、上述した本実施形態に係る給油装置を備えた舶用二重反転プロペラ装置1では、船尾管シール装置9に汎用品を適用することができ、シールライナ93の摩耗時にシールライナ93の取付位置をずらして新しい摺動面を形成するメンテナンス方法を容易に採用することができ、シールライナ93の摩耗時に外周を再研磨するために軸から引き抜く作業をする必要がない。
【0062】
次に、本発明の第二実施形態に係る舶用二重反転プロペラ装置1について、図3を参照しつつ説明する。ここで、図3は、第二実施形態に係る舶用二重反転プロペラ装置の給油装置を示す概略構成図である。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0063】
図3に示した舶用二重反転プロペラ装置1は、二重反転機構を構成する歯車機構として、いわゆる遊星歯車機構を採用したものである。なお、遊星歯車機構を採用した二重反転機構は周知技術であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0064】
第二実施形態に係る舶用二重反転プロペラ装置1は、第一実施形態と同様に、内側プロペラ軸2と外側プロペラ軸3とを反転させる二重反転ギア装置6と、二重反転ギア装置6に動力を出力する駆動装置100と、を備え、二重反転ギア装置6は、内側プロペラ軸2を駆動させる内側ロータ軸62と、外側プロペラ軸を駆動させる外側ロータ軸63と、を備えている。
【0065】
駆動装置100は、内側ロータ軸62と同心軸上に配置された出力軸101を備え、内側ロータ軸62は、内側プロペラ軸2の中空部23と連通する第一連通流路66を備え、出力軸101は、第一連通流路66と連通する第二連通流路102を備えている。第二連通流路102の前端には給油用継手103が配置される。
【0066】
第一連通流路66は、内側ロータ軸62の軸心部を貫通する空洞である。第二連通流路102は、例えば、出力軸101の軸心部を貫通する空洞である。給油用継手103は、例えば、ロータリージョイントであるが、これに限定されるものではない。
【0067】
軸受系統の潤滑油は、オイルタンク12から給油ライン15を経由して出力軸101の第二連通流路102に供給される。第二連通流路102に供給された潤滑油は、内側ロータ軸62の第一連通流路66に供給され、第一連通流路66に供給された潤滑油は、内側プロペラ軸2の中空部23に供給される。
【0068】
中空部23に供給された潤滑油は、給油口24から前側二重反転シール装置51及び前側二重反転軸受41により形成された隙間11に供給され、前側二重反転シール装置51及び前側二重反転軸受41に供給される。その後の潤滑油の流れは、上述した第一実施形態に係る給油装置と同様である。
【0069】
このように、本実施形態に係る舶用二重反転プロペラ装置1の給油装置は、駆動装置の構成に応じて適宜対応させることができる。また、内側プロペラ軸2と内側ロータ軸62との間や内側ロータ軸62と出力軸101との間に、これらの軸系統を接続する中間軸を有する場合であっても、中間軸に中空部23に連通する連通流路を形成することにより、連通流路を介して中空部23に軸受系統の潤滑油を供給することができる。
【0070】
すなわち、内側プロペラ軸2と同心軸上に単数又は複数の軸部材を有する場合には、軸部材に内側プロペラ軸2の中空部23と連通する連通流路を形成し、最前の軸部材に給油用継手を配置することにより、舶用二重反転プロペラ装置1の軸受系統に潤滑油を供給することができる。
【0071】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
1 舶用二重反転プロペラ装置
2 内側プロペラ軸
3 外側プロペラ軸
4 二重反転軸受
5 二重反転シール装置
6 二重反転ギア装置
7 船尾管
8 船尾管軸受
9 船尾管シール装置
10 スラスト軸受
11 隙間
12 オイルタンク
13 ポンプ
14 冷却器
15,83,97 給油ライン
16,84,98 回収ライン
17 第一軸間空間
18 第二軸間空間
21 後プロペラ
22 プロペラキャップ
23 中空部
24 給油口
31 前プロペラ
41 前側二重反転軸受
42 後側二重反転軸受
51 前側二重反転シール装置
52 後側二重反転シール装置
53,93 シールライナ
54,94 シールケーシング
55,95 シールリング
56,96 クランプリング
61 ギアボックス
62 内側ロータ軸
63 外側ロータ軸
64 連通流路
65 給油用継手
66 第一連通流路
81 前側船尾管軸受
82 後側船尾管軸受
91 前側船尾管シール装置
92 後側船尾管シール装置
100 駆動装置
101 出力軸
102 第二連通流路
103 給油用継手

図1
図2
図3