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特開2024-121138ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法および射出成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121138
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法および射出成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20240830BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240830BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20240830BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240830BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CES
C08K7/14
C08L23/10
C08L23/26
C08K5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028063
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 猛
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AB03
4F070AB11
4F070AB22
4F070AB23
4F070AB24
4F070AC28
4F070AC56
4F070AC75
4F070AD02
4F070AE01
4F070AE08
4F070AE09
4F070DA55
4F070FA03
4F070FA17
4F070FC06
4F070GA08
4J002BB111
4J002BB113
4J002BB212
4J002DL006
4J002EK037
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD157
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】生産性に優れ、且つ、より良好な外観、物性を有する成形体を得るのに好適なガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法および射出成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂(A)、変性ポリプロピレン系樹脂(B)、特定のメタロセンポリプロピレン(C)、および有機過酸化物(D)を二軸押出機により溶融混合して溶融混合物を得る工程(1)、得られた溶融混合物を含浸ダイ中に充填する工程(2)、含浸ダイ中にガラス長繊維(E)束を通し、ガラス長繊維(E)束に溶融混合物を含浸してストランド状の成形体を得る工程(3)、および得られたストランド状の成形体を5~9mmの長さに切断してペレットとする工程(4)を含む、ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂(A)、変性ポリプロピレン系樹脂(B)、下記要件(I)および(II)を満たすメタロセンポリプロピレン(C)、および有機過酸化物(D)を二軸押出機により溶融混合して溶融混合物を得る工程(1)、
前記工程(1)で得られた溶融混合物を含浸ダイ中に充填する工程(2)、
前記含浸ダイ中にガラス長繊維(E)束を通し、前記ガラス長繊維(E)束に前記溶融混合物を含浸してストランド状の成形体を得る工程(3)、および
前記工程(3)で得られたストランド状の成形体を5~9mmの長さに切断してペレットとする工程(4)を含む、ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法:
(I)示差走査型熱量計(DSC)により測定された融点(Tm)が155~165℃の範囲にある;
(II)ゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)により測定された、数平均分子量(Mn)が10,000~50,000の範囲にあり、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0~2.5の範囲にある。
【請求項2】
前記工程(1)で得られた溶融混合物のMFRが200~650g/10minの範囲にある、請求項1に記載のガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)において、前記溶融混合物を含浸ダイ中に充填する際の溶融温度が210~320℃の範囲である、請求項1に記載のガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項4】
前記ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットが、
前記成分(A)を80~98質量部の範囲、
前記成分(B)を1~10質量部の範囲、および
前記成分(C)を1~10質量部の範囲で含有し(ただし、前記成分(A)、(B)および(C)の合計を100質量部とする。)、かつ、
前記成分(D)を0.001~0.5質量部の範囲、および
前記成分(E)を50~150質量部の範囲で含有する、請求項1に記載のガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項5】
前記ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットが、さらに酸化防止剤(F)を含む、請求項4に記載のガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法によりガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを得る工程(i)、
前記工程(i)で得られた組成物ペレット10~90質量部と、ポリオレフィン系樹脂ペレット90~10質量部(但し、組成物ペレットとポリオレフィン系樹脂ペレットとは異なり、かつ、両者の合計を100質量部とする。)とをドライブレンドして混合物を得る工程(ii)、および
前記工程(ii)で得られた混合物を射出成形する工程(iii)を含む、射出成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法および射出成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂成形体は軽量であり、かつ剛性および耐熱性に優れているので、電気機器、自動車、住宅設備、医療器具など多様な分野で利用されている。
繊維強化樹脂成形体としては、例えば、ガラス繊維等の強化繊維と、ポリアミド、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂とを用いた成形体が知られている。このような繊維強化樹脂成形体は、自動車分野において、エンジンルーム内のファンシュラウドやプロペラファン等の高剛性および耐熱性が要求される部材に利用されている。
【0003】
繊維強化樹脂成形体の原料に用いる被覆された連続多繊維ストランドを製造する方法として、含浸助剤として、不揮発性であり、熱可塑性マトリクスの融点よりも少なくとも20℃低い融点を有し、施用温度で2.5から100cSの粘度を有する化合物、好ましくはポリエチレンワックスを用いる方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、ポリエチレンワックスはポリプロピレンとの親和性が良くないため成形体における外観が必ずしも十分ではなかった。一方、成形体の外観を改善するために含浸剤を多く含ませると成形体の物性低下を引き起こす恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5662156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、生産性に優れ、且つ、より良好な外観、物性を有する成形体を得るのに好適なガラス長繊維強化プロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法および射出成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを製造する際に、特定のメタロセンポリプロピレンを用いることにより、生産性に優れ、より良好な外観、物性を有する成形体を得ることができるガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の態様の例を以下に示す。
[1]
ポリプロピレン系樹脂(A)、変性ポリプロピレン系樹脂(B)、下記要件(I)および(II)を満たすメタロセンポリプロピレン(C)、および有機過酸化物(D)を二軸押出機により溶融混合して溶融混合物を得る工程(1)、
前記工程(1)で得られた溶融混合物を含浸ダイ中に充填する工程(2)、
前記含浸ダイ中にガラス長繊維(E)束を通し、前記ガラス長繊維(E)束に前記溶融混合物を含浸してストランド状の成形体を得る工程(3)、および
前記工程(3)で得られたストランド状の成形体を5~9mmの長さに切断してペレットとする工程(4)を含む、ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法:
(I)示差走査型熱量計(DSC)により測定された融点(Tm)が155~165℃の範囲にある;
(II)ゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)により測定された、数平均分子量(Mn)が10,000~50,000の範囲にあり、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0~2.5の範囲にある。
【0009】
[2]
前記工程(1)で得られた溶融混合物のMFRが200~650g/10minの範囲にある、項[1]に記載のガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【0010】
[3]
前記工程(2)において、前記溶融混合物を含浸ダイ中に充填する際の溶融温度が210~320℃の範囲である、項[1]または[2]に記載のガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【0011】
[4]
前記ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットが、
前記成分(A)を80~98質量部の範囲、
前記成分(B)を1~10質量部の範囲、および
前記成分(C)を1~10質量部の範囲で含有し(ただし、前記成分(A)、(B)および(C)の合計を100質量部とする。)、かつ、
前記成分(D)を0.001~0.5質量部の範囲、および
前記成分(E)を50~150質量部の範囲で含有する、項[1]~[3]のいずれか1項に記載のガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【0012】
[5]
前記ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットが、さらに酸化防止剤(F)を含む、項[1]~[4]のいずれか1項に記載のガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【0013】
[6]
項[1]~[5]のいずれか1項に記載の製造方法によりガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを得る工程(i)、
前記工程(i)で得られた組成物ペレット10~90質量部と、ポリオレフィン系樹脂ペレット90~10質量部(但し、組成物ペレットとポリオレフィン系樹脂ペレットとは異なり、かつ、両者の合計を100質量部とする。)とをドライブレンドして混合物を得る工程(ii)、および
前記工程(ii)で得られた混合物を射出成形する工程(iii)を含む、射出成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法は、当該組成物の生産性に優れており、且つ得られる組成物ペレットを用いて得られる成形体は、外観が良好で、且つ良好な物性を有するので、成形体の原料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
[ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法]
本発明のガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの製造方法(以下、単に「本発明のペレットの製造方法」と略記する場合がある。)は、
後述するポリプロピレン系樹脂(A)、変性ポリプロピレン系樹脂(B)、メタロセンポリプロピレン(C)、および有機過酸化物(D)を二軸押出機により溶融混合して溶融混合物を得る工程(1)、
前記工程(1)で得られた溶融混合物を含浸ダイ中に充填する工程(2)、
前記含浸ダイ中にガラス長繊維(E)束を通し、前記ガラス長繊維(E)束に前記溶融混合物を含浸してストランド状の成形体を得る工程(3)、および
前記工程(3)で得られたストランド状の成形体を5~9mmの長さに切断してペレットとする工程(4)を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明のペレットの製造方法では、得られるガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットが、変性ポリプロピレン系樹脂(B)を含むので、ポリプロピレン系樹脂(A)とガラス長繊維(E)束との接着性が良好であり、メタロセンポリプロピレン(C)を含むことにより、生産性を損なうことなく、ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを製造することができる。このようにして得られたガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを用いて得られる成形体は外観および物性に優れる。
【0018】
本発明のペレットの製造方法では、前記工程(1)で得られた溶融混合物のMFRが、好ましくは200~650g/10min、より好ましくは250~640g/10min、さらに好ましくは270~630g/10minの範囲にある。溶融混合物のMFRは、JIS K 7210に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定した値である。
【0019】
溶融混合物のMFRが前記範囲にあると、得られるガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの生産性や物性を損なうことなくガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを提供することができる。
【0020】
本発明のペレットの製造方法では、前記工程(2)において、前記溶融混合物を前記含浸ダイ中に充填する際の溶融温度が、好ましくは210~320℃、より好ましくは230~300℃の範囲にある。溶融混合物の充填温度が前記範囲にあると、前記溶融混合物が前記ガラス長繊維(E)束に十分含侵される。
【0021】
本発明のペレットの製造方法では、得られるガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットが、
成分(A)を好ましくは80~98質量部、より好ましくは91~95質量部の範囲、
成分(B)を好ましくは1~10質量部、より好ましくは3~5質量部の範囲、および
成分(C)を好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~4質量部(ただし、成分(A)、(B)、(C)の合計を100質量部とする。)の範囲で含有し、かつ、
成分(D)を好ましくは0.001~0.5質量部、より好ましくは0.01~0.05質量部の範囲、および
成分(E)を好ましくは50~150質量部、より好ましくは60~140質量部の範囲で含有する。
【0022】
ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットにおける成分(A)などの量が前記範囲を満たすと、生産性に優れ、且つ、当該組成物を用いて得られる成形体は、より物性が良好である。すなわち、生産性と物性のバランスがよいガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを製造することできる。
【0023】
<ポリプロピレン系樹脂(A)>
本発明のペレットの製造方法に用いる成分の一つであるポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン由来の構造単位を主たる構造単位として含む重合体であり、その例として、ポリプロピレン単独重合体、ならびにプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体およびプロピレン系ブロック共重合体などのプロピレン系共重合体が挙げられる。
【0024】
プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレンとエチレン、および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体が挙げられる。ランダム共重合体に占めるプロピレン由来の構造単位の含量は通常90~99モル%、好ましくは92~98モル%である。ブロック共重合体に占めるプロピレン由来の構造単位の含量は通常70~99モル%、好ましくは75~98モル%である。
【0025】
前記炭素原子数4~20のα-オレフィンの具体例としては、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンが挙げられる。
【0026】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、単独でも、2種以上のポリプロピレン系樹脂(例えばプロピレン単独重合体とプロピレン系共重合体)との混合物(組成物)であってもよい。
【0027】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、少なくとも1種以上のバイオマス由来モノマー(プロピレン、およびα-オレフィン(エチレンを含む))に由来する構成単位を含んでいてもよい。重合体を構成する同じ種類のモノマーがバイオマス由来モノマーのみでもよいし、化石燃料由来モノマーのみであってもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。バイオマス由来モノマーとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーで、炭素として14C同位体を1×10-12程度の割合で含有し、ASTMD 6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来モノマーは、たとえば、従来から知られている方法により得られる。
【0028】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)がバイオマス由来モノマーに由来する構成単位を含むことは環境負荷低減の観点から好ましい。重合用触媒、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、原料オレフィンがバイオマス由来オレフィンを含むプロピレン系重合体であっても、14C同位体を1×10-12程度の割合で含む以外の分子構造は化石燃料由来モノマーからなるプロピレン系重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0029】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、ケミカルリサイクル由来プロピレンを含んでいてもよい。重合体を構成するプロピレンがケミカルリサイクル由来プロピレンのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンおよび/またはバイオマス由来プロピレンを含んでもよい。ケミカルリサイクルス由来プロピレンは、従来から知られている方法により得られる。前記ポリプロピレン系樹脂(A)がケミカルリサイクル由来プロピレンを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。原料モノマーがケミカルリサイクル由来モノマーを含んでいても、ケミカルリサイクル由来モノマーは廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でプロピレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるので、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるプロピレン単独重合体と同等である。従って、性能も変わらない。
【0030】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の例の一つである前記プロピレン系ブロック共重合体は、好ましくはプロピレン単独重合体部分とプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体部分とから構成される。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体部分の具体的な態様は、前記プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の具体的な態様と同様である。
【0031】
前記プロピレン系ブロック共重合体は、n-デカン溶剤分別した場合、23℃のn-デカンに可溶な成分(以下「デカン可溶部」とも記載する。)と23℃のn-デカンに不溶な成分(以下「デカン不溶部」とも記載する。)に分別される。デカン可溶部の含有量は、通常は5~30質量%、好ましくは5~25質量%、より好ましくは8~18質量%であり、デカン不溶部の含有量は、通常は70~95質量%、好ましくは75~95質量%、より好ましくは82~92質量%である。
【0032】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、通常、JIS K 7210に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が、好ましくは20g/10分以上、より好ましくは30g/10分以上、さらに好ましくは40g/10分以上であり、その上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは300g/10分以下、より好ましくは250g/10分以下、さらに好ましくは200g/10分以下である。
【0033】
MFRが前記範囲にあると、前記ポリプロピレン系樹脂(A)を含むガラス長繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物ペレットを含む組成物は、射出成形性が良好である。
【0034】
<変性ポリプロピレン系樹脂(B)>
本発明のペレットの製造方法に用いる成分の一つである変性ポリプロピレン系樹脂(B)は、前記ポリプロピレン系樹脂(A)を変性することにより得られる変性重合体である。ポリプロピレン系樹脂(A)の変性方法としては、従来公知の方法、例えばグラフト変性および共重合化が挙げられる。
【0035】
ポリプロピレン系樹脂(A)の変性に用いる変性剤としては、例えば、不飽和カルボン酸およびその誘導体が挙げられる。不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、およびフタル酸が挙げられる。また、その誘導体の例としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、および金属塩等が挙げられ、具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、無水フタル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸およびその誘導体が好ましく、無水マレイン酸および無水フタル酸がより好ましい。
【0036】
前記変性ポリプロピレン系樹脂(B)の酸付加量、換言すると変性ポリプロピレン系樹脂(B)中の前記酸に由来する構造の割合は、好ましくは0.1~14重量%であり、より好ましくは0.3~8重量%である。酸付加量は、樹脂のIRスペクトルを測定し、1,670cm-1~1,810cm-1のピークの面積から決定される。
【0037】
前記変性ポリプロピレン系樹脂(B)としては、ガラス繊維と前記ポリプロピレン系樹脂(A)との親和性を改良し、製造される成形体の強度または耐熱性を向上させる観点から、不飽和ジカルボン酸およびその誘導体変性ポリプロピレン系樹脂が好ましく、特に無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0038】
前記変性ポリプロピレン系樹脂(B)は、JIS K 7210に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が、好ましくは50g/10分以上、より好ましくは80g/10分以上であり、その上限値は、特に限定されるものではないが、好ましくは1000g/10分以下、より好ましくは800g/10分以下、さらに好ましくは600g/10分以下である。変性ポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレートがこの範囲にあると、本発明の製造方法で得られるガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを含む組成物は、射出成形に適した流動性を有する。
【0039】
また、前記ポリプロピレン系樹脂(A)と前記変性ポリプロピレン系樹脂(B)全体としてのメルトフローレート(ISO 1133-1に準拠、230℃、2.16kg荷重。)は、機械的特性に優れた成形体を良好な加工性で射出成形する観点から、好ましくは25~500g/10分、より好ましくは50~400g/10分である。
【0040】
<メタロセンポリプロピレン(C)>
本発明のガラス長繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物ペレットの製造方法に用いる成分の一つであるメタロセンポリプロピレン(C)は、いわゆるメタロセン触媒を用いて得られたプロピレン系重合体であり、下記(I)および(II)を満たすプロピレンの単独重合体またはプロピレンとプロピレンを除く炭素数2~10のα-オレフィンとの共重合体である。なお、成分(C)は、前記成分(A)および(B)とは異なる。
【0041】
(I)示差走査型熱量計(DSC)により測定された融点(Tm)が155~165℃、好ましくは157~163℃の範囲にある。
融点(Tm)が前記範囲にあるとマトリックス樹脂であるポリプロピレン系樹脂(A)との親和性に優れ生産性、外観に優れたガラス長繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物ペレットが得られる。
【0042】
(II)GPC(ゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー)により測定された、数平均分子量(Mn)が10,000~50,000、好ましくは15,000~45,000の範囲、および、分子量分布(Mw/Mn)が2.0~2.5、好ましくは2.1~2.4の範囲にある。
【0043】
Mn、Mw/Mnが前記範囲にあるとマトリックス樹脂であるポリプロピレン系樹脂(A)との粘度差が小さくなり含浸樹脂が整流化しやすくなると考えられる。結果、ノズルから発生する毛羽が少なくなり、生産性に優れたガラス長繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物ペレットが得られる。
【0044】
≪ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)≫
前記Mn、MwおよびMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の装置および条件で測定し、得られたクロマトグラムを公知の方法によって解析することで算出される。
【0045】
(GPC測定装置)
液体クロマトグラフ:東ソー(株)製、HLC-8321GPC/HT
検出器:RI
カラム:東ソー(株)製TOSOH GMHHR-H(S)HT×2本を直列接続
(測定条件)
移動相媒体:1,2,4-トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
測定温度:145℃
検量線の作成方法:標準ポリスチレンサンプルを使用して検量線を作成した。
分子量換算:ユニバーサルキャリブレーション法により、PS(ポリスチレン)からPP(ポリプロピレン)換算分子量へ変換
サンプル濃度:5mg/10ml
サンプル溶液量:300μl
【0046】
<有機過酸化物(D)>
本発明のペレットの製造方法に用いる成分の一つである有機過酸化物(D)は、架橋剤の一種であり、具体的には、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0047】
これらのうちでは、ジクミルペルオキシド(DCP)、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレートが好ましい。
【0048】
<ガラス長繊維(E)>
本発明のペレットの製造方法に用いる成分の一つであるガラス長繊維(E)は、種々公知のガラス長繊維であり、具体的には、Eガラス(Electrical glass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)および耐アルカリガラスなどのガラスを溶融紡糸してフィラメント状の繊維にしたものを挙げることができる。
【0049】
本発明のペレットの製造方法に用いるガラス長繊維(E)としては、通常、ガラス長繊維が使用される。ガラス長繊維の原料としては、通常、連続状ガラス長繊維束が用いられ、これはガラスロービングとして市販されている。その平均繊維径は、通常3~30μm、好ましくは13~20μm、さらに好ましくは16~18μmであり、フィラメント集束本数は、通常400~10,000本、好ましくは1,000~6,000本、さらに好ましくは3,000~5,000本である。
【0050】
また、特開平6-114830号公報に記載されているように、複数の繊維束を束ねて使用することもできる。
前記ガラス長繊維(E)の表面には、電解処理または収束剤処理などの様々な表面処理方法で官能基が導入されていてもよい。表面処理には、収束剤を用いることが好ましく、カップリング剤を含む収束剤を用いることが特に好ましい。表面処理されたガラス繊維を用いると、ガラス長繊維と樹脂成分との接着性が向上し、強度および外観の良好な成形体が得られる。
【0051】
収束剤の例としては、特開2003-253563号公報に記載されたカップリング剤を含むものが挙げられる。
カップリング剤としては、たとえば、アミノシラン、エポキシシラン等のシラン系カップリング剤、およびチタン系カップリング剤が挙げられる。
【0052】
また、収束剤としては、カップリング剤の他に、取り扱いを容易にするために樹脂エマルジョンを含むものも好ましい。
収束剤に含まれる樹脂エマルジョンとしては、たとえば、ウレタン系、オレフィン系、アクリル系、ナイロン系、ブタジエン系またはエポキシ系のものが挙げられ、これらのうち、ウレタン系またはオレフィン系のものが好ましい。
【0053】
本発明のペレットの製造方法では、前記各成分以外に、必要に応じて、酸化防止剤(F)、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、銅害防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤(前記メタロセンポリプロピレン(C)を除く。)、充填剤、着色剤、顔料、発泡剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で(たとえば、前記溶融混合物100質量%に対し5質量%以下の割合で)配合してもよい。これらの成分はマスターバッチ化されていてもよい。
【0054】
<ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物>
本発明のペレットの製造方法では、
成分(A)を好ましくは80~98質量部、より好ましくは91~95質量部の範囲、
成分(B)を好ましくは1~10質量部、より好ましくは3~5質量部の範囲、および
成分(C)を好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~4質量部(ただし、成分(A)、(B)、(C)の合計を100質量部とする。)の範囲で含有し、かつ、
成分(D)を好ましくは0.001~0.5質量部、より好ましくは0.01~0.05質量部の範囲、および
成分(E)を好ましくは50~150質量部、より好ましくは60~140質量部の範囲で含有する組成物が得られる。
【0055】
かかるガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物は、成形加工して、下記ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットが用いられる用途に用いることができる。
【0056】
<ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの用途>
本発明の製造方法で得られるガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットは、例えばインパネ、コンソールボックス、バックドアモジュール、テールゲート、フロントドアモジュール、アクセルペダルモジュール、エアバッグ筐体、空気路、サンルーフ構造、蓄電池外箱などの自動車部品や洗濯機、洗濯乾燥機、冷蔵庫、掃除機などの電化製品に用いることができる。
【0057】
[射出成形体の製造方法]
本発明の射出成形体の製造方法は、上述した本発明のペレットの製造方法により前記ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを得る工程(i)、
前記工程(i)で得られた組成物ペレット10~90質量部、好ましくは20~80質量部と、ポリオレフィン系樹脂ペレット90~10質量部、好ましくは80~20質量部(但し、前記組成物ペレットとポリオレフィン系樹脂ペレットとは異なり、かつ、両者の合計を100質量部とする。)とをドライブレンドして混合物を得る工程(ii)、および
前記工程(ii)で得られた混合物を射出成形する工程(iii)を含むことを特徴とする。
【0058】
<ポリオレフィン系樹脂>
本発明の射出成形体の製造方法に用いるポリオレフィン系樹脂(ペレット)は、α-オレフィンの単独重合体、および、2種以上のα-オレフィンの共重合体で樹脂の重合体であり、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、および、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体、2種以上のα-オレフィンの共重合体、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)などのエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのオレフィン系重合体などである。なお、前記ポリオレフィン系樹脂ペレットを構成するポリオレフィン系樹脂は、前記ポリプロプロピレン系樹脂(A)であってもよい。
【0059】
本発明の射出成形体の製造方法で得られる射出成形体は、自動車内外装部品、家電部品などの種々の分野に好適に用いることができる。自動車内外装部品の例としては、バックドアのインナー材が挙げられる。
【実施例0060】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
実施例および比較例で用いたプロピレン系重合体、変性ポリプロピレン系樹脂、メタロセンポリプロピレンを以下に示す。
【0062】
<ポリプロピレン系樹脂(A)>
ポリプロピレン系樹脂(A)として、以下のポリプロピレン系樹脂を用いた。
ポリプロピレン(A-1)[(株)プライムポリマー製プロピレン単独重合体、MFR=60g/10min]
ポリプロピレン(A-2)[(株)プライムポリマー製プロピレン単独重合体、MFR=30g/10min]
【0063】
<変性ポリプロピレン系樹脂(B)>
変性ポリプロピレン系樹脂(B)として、アディバントジャパン社製の無水マレイン酸グラフト量0.5質量%の無水マレイン酸変性ポリプロピレン(B-1)[商品名:ポリボンド3200「Polybond3200」、MFR=230g/10min]を用いた。
【0064】
<メタロセンポリプロピレン(C)および(C’)>
メタロセンポリプロピレン(C)および(C’)(メタロセンポリプロピレン(C)に該当しないメタロセンポリプロピレン)として、以下のメタロセンポリプロピレン(以下「メタロセンPP」ともいう。)(C-1)~(C-3)および(C’-4)を用いた。
メタロセンPP(C-1)(Tm(第一ピークの融点):160℃、数平均分子量:17,000、分子量分布:2.3)
メタロセンPP(C-2)(Tm(第一ピークの融点):160℃、数平均分子量:27,000、分子量分布:2.3)
メタロセンPP(C-3)(Tm(第一ピークの融点):163℃、数平均分子量:43,000、分子量分布:2.2)
メタロセンPP(C’-4)(Tm(第一ピークの融点):153℃、数平均分子量:6,800、分子量分布:2.6)
【0065】
実施例および比較例で用いた有機過酸化物、ガラス長繊維、酸化防止剤およびワックスを以下に示す。
<有機過酸化物(D)>
有機過酸化物(D-1)として、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(商品名「パーカドックス14」、化薬アクゾ社製)を用いた。
【0066】
<ガラス長繊維(E)>
ガラス長繊維(E-1)として、日本電気硝子(株)製のガラス繊維径17μm、2400tex(フィラメント集束本数:約4000本)のガラス繊維ロービングを用いた。
【0067】
<酸化防止剤(F)>
酸化防止剤として、以下の二種の酸化防止剤を用いた。
酸化防止剤(F-1)(商品名「Irg1010」:BASF社製のフェノール系酸化防止剤、イルガノックス(登録商標)1010)
酸化防止剤(F-2)(商品名「Irg168」:BASF社製のリン系酸化防止剤、イルガノックス(登録商標)168)
【0068】
<ワックス(G)>
ワックス(G)として、ポリエチレン系ワックス(G-1)(商品名「NL900」:三井化学(株)製、Tm:103℃、分子量分布:5.1、密度:920kg/m3
【0069】
実施例および比較例において使用した組成物に関する測定方法、並びに、成形体の評価方法は、以下の通りである。
(1)溶融混合物〔成分(A)+(B)or(G)+(C)or(C’)+(D)〕のMFR
成分(A)+(B)or(G)+(C)or(C’)+(D)の混合物を同方向二軸混練機(神戸製鋼所社製、KTX30(登録商標))に供給して溶融混合し、溶融混合物を含浸ダイ中に充填後、混合物を含浸ダイより抜き出し、230℃、2.16kg荷重にてMFRを測定した。
【0070】
(2)外観
実施例および比較例で得られたガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットをシリンダー温度240℃にて80×240×2mmtの大きさの射出成形片を30枚作成した。その射出成形片30枚中に試験片表面上に確認されるガラス繊維束の数を目視にてカンウントした。
【0071】
(3)引張破壊応力
実施例および比較例で得られたISO1号ダンベルを使用し、ISO 527に準拠し、引張速度5mm/minの条件で引張破壊応力を測定した。
【0072】
[実施例1~5、比較例1~3]
表1に示す成分(E)以外の各成分をタンブラーミキサーで均一に混合し、その混合物を同方向二軸混練機(神戸製鋼所社製、KTX30(登録商標))に供給して溶融混合した後、260℃の温度で、溶融混合物を含浸ダイ中に充填させた。次いで、その含浸ダイ中にガラス長繊維ロービング(成分(E-1))を投入し、溶融混合物を含浸させた後、ストランド状に引き上げ、ペレタイザーにてカッティングすることにより、ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを得た。ストランド状物の引き上げ速度は、含浸ダイ出口でのガラス長繊維の断線を確認し、断線しない速度まで引き取り速度を上げ、その最大速度を引き取り速度とした。
【0073】
[実施例6]
実施例2と同様にして得られたガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットに対して、ポリプロピレン(A-2)からなるペレット150質量部をドライブレンドしてペレットの混合物を得た。
【0074】
得られた各ペレットを用いて、射出成形機にて成形温度240℃、金型温度40℃でISO 1号ダンベル、及び80×240×2mmtの試験片を成形し、上記評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から明らかなように、実施例1~5ではメタロセンポリプロピレン(C)を添加することにより生産速度を低下させることなく、ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを製造することできた。また、得られたペレットを用いて製造した成形体は、外観および引張破壊応力に優れていた。
【0077】
一方、メタロセンポリプロピレン(C)を添加しなかった比較例2では、ガラス長繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットの生産速度が低下したが、得られた組成物ペレットを用いて得られた成形体の外観および引張破壊応力は問題なかった。なお、比較例1では、メタロセンポリプロピレン(C)に該当しないメタロセンポリプロピレン(C’-4)を用いたが、ポリプロピレン系樹脂(A)とメタロセンポリプロピレン(C’-4)の親和性がメタロセンポリプロピレン(C)ほど良好ではないために生産速度の低下が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明で得られる繊維強化ポリポリプロピレン系樹脂組成物ペレットは、インパネ、コンソールボックス等の自動車内外装部品、家電部品等、種々の分野の成形体の材料として好適に用いることができる。