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  • 特開-光ファイバおよび光ファイバリボン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121142
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】光ファイバおよび光ファイバリボン
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240830BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240830BHJP
   C03C 25/285 20180101ALI20240830BHJP
   C03C 25/42 20060101ALI20240830BHJP
   C03C 25/106 20180101ALI20240830BHJP
   C03C 25/1065 20180101ALI20240830BHJP
【FI】
G02B6/44 301A
G02B6/44 331
G02B6/02 461
G02B6/02 401
G02B6/44 371
C03C25/285
C03C25/42
C03C25/106
C03C25/1065
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028080
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩口 矩章
(72)【発明者】
【氏名】浜窪 勝史
(72)【発明者】
【氏名】池川 未歩
【テーマコード(参考)】
2H201
2H250
4G060
【Fターム(参考)】
2H201AX02
2H201BB03
2H201BB06
2H201BB12
2H201BB23
2H201BB24
2H201DD02
2H201DD06
2H201DD23
2H201DD28
2H201DD33
2H201KK02
2H201KK26A
2H201KK29A
2H201KK37A
2H201KK39A
2H201KK48B
2H201KK54B
2H201KK63
2H201KK72
2H201MM03
2H201MM23
2H250AB04
2H250AB05
2H250AB10
2H250AC64
2H250AC94
2H250AC95
2H250AD32
2H250AD34
2H250AD35
2H250BA03
2H250BA32
2H250BB07
2H250BB14
2H250BB19
2H250BB33
2H250BC01
2H250BC02
2H250BD00
2H250BD02
2H250BD17
2H250BD18
4G060AA01
4G060AA03
4G060AC02
4G060AD32
4G060AD43
4G060CA09
4G060CB09
(57)【要約】
【課題】十分な硬化度を有し且つ被覆除去性に優れる被覆樹脂層を備える光ファイバおよび光ファイバリボンを提供すること。
【解決手段】光ファイバは、コアおよびクラッドを含むガラスファイバと、前記ガラスファイバに接して前記ガラスファイバを被覆する第1の樹脂層と、を備え、前記第1の樹脂層が、光重合性化合物および光重合開始剤を含有する樹脂組成物の硬化物を含み、前記第1の樹脂層を30℃から150℃まで加熱した場合、前記第1の樹脂層の質量減少率が6.0質量%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよびクラッドを含むガラスファイバと、前記ガラスファイバに接して前記ガラスファイバを被覆する第1の樹脂層と、を備え、
前記第1の樹脂層が、光重合性化合物および光重合開始剤を含有する樹脂組成物の硬化物を含み、
前記第1の樹脂層を30℃から150℃まで加熱した場合、前記第1の樹脂層の質量減少率が6.0質量%以下である、光ファイバ。
【請求項2】
前記第1の樹脂層のヤング率が23℃で1MPa以上600MPa以下である、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記樹脂組成物におけるウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量が、前記樹脂組成物の総量を基準として20質量%以下である、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記光重合性化合物が、ビスフェノール骨格を有するアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記光重合開始剤が、α-ヒドロキシアセトフェノン化合物を含む、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記樹脂組成物におけるα-ヒドロキシアセトフェノン化合物の含有量が、前記樹脂組成物の総量を基準として0.5質量%以上である、請求項5に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記第1の樹脂層を被覆する着色層を更に備える、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記着色層の厚みが、2μm以上14μm以下である、請求項7に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記着色層が、酸化チタン粒子を含む、請求項7に記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記ガラスファイバが前記コアを複数含む、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項11】
前記ガラスファイバの外径が170μm以上190μm以下である、請求項10に記載の光ファイバ。
【請求項12】
並列に配置された複数の請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の光ファイバと、
複数の前記光ファイバを被覆して連結する連結樹脂層と、を備える、光ファイバリボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバおよび光ファイバリボンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光ファイバは、光伝送体であるガラスファイバを保護するための被覆樹脂層を備えている。被覆樹脂層は、例えば、ガラスファイバと接するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層の外周面に形成されるセカンダリ樹脂層とからなる2層構造を有することが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-211707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、データセンター用途において、光ファイバの充填密度を高めた高密度ケーブルの需要が高まっている。ケーブル内での光ファイバの充填密度が高くなると、光ファイバの外径を細くすることが有利である。従来の2層構造の被覆樹脂層を備える光ファイバの場合、光ファイバを細くしたり、光ファイバの製造速度が上昇したりすると、光ファイバの偏心率が劣化し易くなり、これにより、光ファイバの耐マイクロベンド特性が低くなることがある。被覆樹脂層のヤング率を調整すること、例えばプライマリ樹脂層のヤング率を下げることにより、光ファイバの耐マイクロベンド特性を改善することが考えられるが、その場合は被覆樹脂層の十分な硬化度と被覆除去性とを両立させることが困難であることがある。
【0005】
本開示は、十分な硬化度を有し且つ被覆除去性に優れる被覆樹脂層を備える光ファイバおよび光ファイバリボンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る光ファイバは、コアおよびクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接してガラスファイバを被覆する第1の樹脂層と、を備え、第1の樹脂層が、光重合性化合物および光重合開始剤を含有する樹脂組成物の硬化物を含み、第1の樹脂層を30℃から150℃まで加熱した場合、第1の樹脂層の質量減少率が6.0質量%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、十分な硬化度を有し且つ被覆除去性に優れる被覆樹脂層を備える光ファイバおよび光ファイバリボンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本実施形態に係る光ファイバの一例を示す概略断面図である。
図2図2は本実施形態に係る光ファイバの別の一例を示す概略断面図である。
図3図3は本実施形態に係る光ファイバリボンの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一形態に係る光ファイバは、コアおよびクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接してガラスファイバを被覆する第1の樹脂層と、を備え、第1の樹脂層が、光重合性化合物および光重合開始剤を含有する樹脂組成物の硬化物を含み、第1の樹脂層を30℃から150℃まで加熱した場合、第1の樹脂層の質量減少率(以下、「加熱時の質量減少率」ともいう)が6.0質量%以下である。
【0011】
本開示に係る光ファイバは、上述のような単層構造である第1の樹脂層を備えることにより、十分な硬化度を有し且つ被覆除去性に優れる被覆樹脂層を備える光ファイバを提供することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、硬化度および被覆除去性の観点から、第1の樹脂層のヤング率が23℃で1MPa以上600MPa以下であってもよい。
【0013】
(3)上記(1)または(2)において、加熱時の質量減少を抑制する観点から、樹脂組成物におけるウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量が、樹脂組成物の総量を基準として20質量%以下であってもよい。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、加熱時の質量減少を抑制する観点から、光重合性化合物が、ビスフェノール骨格を有するアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0015】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、加熱時の質量減少を抑制する観点から、光重合開始剤が、α-ヒドロキシアセトフェノン化合物を含んでもよい。
【0016】
(6)上記(5)において、加熱時の質量減少を抑制する観点から、樹脂組成物におけるα-ヒドロキシアセトフェノン化合物の含有量が、樹脂組成物の総量を基準として0.5質量%以上であってもよい。
【0017】
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、光ファイバの識別性の観点から、第1の樹脂層を被覆する着色層を更に備えてもよい。
【0018】
(8)上記(7)において、光ファイバの識別性および被覆除去性の観点並びに第1の樹脂層に働く引張応力を下げる観点から、着色層の厚みが、2μm以上14μm以下であってもよい。
【0019】
(9)上記(7)または(8)において、光ファイバの識別性の観点から、着色層が、酸化チタン粒子を含んでもよい。
【0020】
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、高密度ケーブルの観点から、ガラスファイバがコアを複数含んでもよい。
【0021】
(11)上記(10)において、量産性およびコストの観点から、ガラスファイバの外径が170μm以上190μm以下であってもよい。
【0022】
(12)本開示の一形態に係る光ファイバリボンは、並列に配置された複数の上記(1)から(11)のいずれかに記載の光ファイバと、複数の光ファイバを被覆して連結する連結樹脂層と、を備える。これにより、十分な硬化度を有し且つ被覆除去性に優れる被覆樹脂層を有する光ファイバを備える光ファイバリボンを提供することができる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光ファイバおよび光ファイバリボンの具体例を、必要により図面を参照しつつ説明する。本開示はこれらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態において、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸等の他の類似表現についても同様である。
【0024】
(光ファイバ)
本実施形態に係る光ファイバは、コアおよびクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接してガラスファイバを被覆する第1の樹脂層とを備える。第1の樹脂層は、単層構造である。
【0025】
図1は、本実施形態に係る光ファイバの一例を示す概略断面図である。光ファイバ10は、コア11およびクラッド12を含むガラスファイバ13と、ガラスファイバ13の外周面に設けられた第1の樹脂層14とを備えている。
【0026】
クラッド12はコア11を取り囲んでいる。コア11およびクラッド12は石英ガラス等のガラスを主に含み、例えば、コア11にはゲルマニウムを添加した石英ガラス、または、純石英ガラスを用いることができ、クラッド12には純石英ガラス、または、フッ素が添加された石英ガラスを用いることができる。
【0027】
図1において、例えば、ガラスファイバ13の外径(D2)は100μm以上125μm以下であり、ガラスファイバ13を構成するコア11の直径(D1)は、7μm以上15μm以下である。第1の樹脂層14の厚みは、20μm以上70μm以下、22μm以上65μm以下、22μm以上45μm以下、または22μm以上30μm以下であってもよい。光ファイバ10の外径は、150μm以上250μm以下、170μm以上250μm以下、170μm以上220μm以下、または170μm以上190μm以下であってもよい。
【0028】
ガラスファイバ13の外径(D2)が125μm程度である場合、第1の樹脂層14の厚みは、60μm以上70μm以下、または、22μm以上63μm以下であってもよい。ガラスファイバ13の外径(D2)が100μm程度である場合、第1の樹脂層14の厚みは、22μm以上45μm以下であってもよい。
【0029】
図1には、1個のコアを有するガラスファイバを含む光ファイバが示されているが、本実施形態に係る光ファイバは、複数のコアを有するガラスファイバを含む光ファイバ(以下、「マルチコア光ファイバ」ともいう)であってもよい。マルチコア光ファイバは、ファイバ軸方向に延在する複数のコアが共通のクラッドで覆われた光ファイバである。マルチコア光ファイバにおいて、ガラスファイバが有するコアの数は、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上または6個以上であってもよい。マルチコア光ファイバにおいて、複数のコアの材料は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。マルチコア光ファイバの一例として、図2には、4個のコア11を有するガラスファイバ13Aを含む光ファイバ20が示されている。図2において、ガラスファイバ13Aの外径は、量産性およびコストの観点から、例えば170μm以上190μm以下であり、第1の樹脂層14の厚みは、例えば22μm以上45μm以下である。
【0030】
第1の樹脂層14は、光重合性化合物および光重合開始剤を含有する樹脂組成物(以下、「樹脂組成物A」ともいう)の硬化物を含む。樹脂組成物Aは、紫外線硬化性の樹脂組成物である。
【0031】
光重合性化合物は、加熱時の質量減少を抑制する観点から、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まないほうがよいが、少量含んでもよい。ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量は、樹脂組成物Aの総量を基準として、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下または5質量%以下であってもよい。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られる化合物であってもよい。ポリオール化合物としては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオールが挙げられる。ヤング率を調整する観点から、ポリオール化合物の数平均分子量(Mn)は、300以上8000以下、400以上5000以下、または500以上4000以下であってもよい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナートが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物を合成する際の触媒として、一般に有機スズ化合物が使用される。有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸2-エチルヘキシル)、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチル)、およびジブチルスズオキシドが挙げられる。易入手性または触媒性能の観点から、有機スズ化合物として、例えば、ジブチルスズジラウレートまたはジブチルスズジアセテートを使用してもよい。
【0034】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物の合成時に炭素数5以下の低級アルコールを使用してもよい。低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、および2,2-ジメチル-1-プロパノールが挙げられる。
【0035】
光重合性化合物は、加熱時の質量減少を抑制する観点から、硬化性に優れるビスフェノール骨格を有するアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート(以下、「アルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート」ともいう)を含んでもよい。
【0036】
アルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートは、ヤング率を調整する観点から、エチレンオキサイド(EO)鎖およびプロピレンオキサイド(PO)鎖からなる群より選ばれる少なくとも1種を有してもよい。エチレンオキサイド鎖を「(EO)n」、プロピレンオキサイド鎖を「(PO)n」と表すことができる。nは1以上の整数であり、2以上または3以上であってもよく、40以下、35以下、または30以下であってもよい。
【0037】
アルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートは、硬化度の観点から、ビスフェノールA骨格を有してもよい。ビスフェノールA骨格を有するアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAのEO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO変性ジ(メタ)アクリレート、およびビスフェノールAのEO・PO変性ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートは、ビスフェノールAのEO変性ジ(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0038】
アルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートの含有量は、加熱時の質量減少を抑制する観点から、樹脂組成物Aの総量を基準として、25質量%以上85質量%以下、30質量%以上80質量%以下、または30質量%以上75質量%以下であってもよい。
【0039】
光重合性化合物は、ヤング率を調整する観点から、ビスフェノール骨格を有するエポキシジ(メタ)アクリレート(以下、「エポキシジ(メタ)アクリレート」ともいう)を含んでもよい。エポキシジ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノール骨格を有するジグリシジルエーテル化合物と、(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物との反応物を用いることができる。
【0040】
エポキシジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、およびビスフェノールFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。
【0041】
エポキシジ(メタ)アクリレートの含有量は、ヤング率を調整する観点から、樹脂組成物Aの総量を基準として、55質量%以下、45質量%以下、35質量%以下、25質量%以下、15質量%以下、5質量%以下または0質量%であってもよい。
【0042】
光重合性化合物は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、アルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートおよびエポキシジ(メタ)アクリレート以外の光重合性化合物(以下、「モノマー」ともいう)を更に含んでもよい。モノマーとしては、例えば、重合性基を1つ有する単官能モノマー、重合性基を2つ以上有する多官能モノマーを用いることができる。モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノールアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、3-(3-ピリジル)プロピル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート等の複素環含有(メタ)アクリレート;マレイミド、N-シクロへキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等のN-置換アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマーが挙げられる。
【0044】
多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,20-エイコサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソペンチルジオールジ(メタ)アクリレート、3-エチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびカプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレートが挙げられる。
【0045】
光重合開始剤は、公知のラジカル光重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。光重合開始剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
光重合開始剤は、加熱時の質量減少を抑制する観点から、α-ヒドロキシアセトフェノン化合物を使用してもよい。樹脂組成物Aは、光重合開始剤としてα-ヒドロキシアセトフェノン化合物を用いることで、表面硬化性が向上し、形成される樹脂層の加熱時の質量減少を抑制することができる。α-ヒドロキシアセトフェノン化合物としては、例えば、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(Omnirad 1173、IGM Resins社製)、および1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社製)が挙げられる。
【0047】
α-ヒドロキシアセトフェノン化合物の含有量は、加熱時の質量減少を抑制する観点から、樹脂組成物Aの総量を基準として、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、3.0質量%、3.5質量%以上または4.0質量%以上であってもよい。α-ヒドロキシアセトフェノン化合物の含有量は、樹脂組成物Aの総量を基準として、10.0質量%以下であってもよい。同様の観点から、α-ヒドロキシアセトフェノン化合物の含有量は、光重合開始剤の総量を基準として、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上または80質量%以上であってもよい。
【0048】
光重合開始剤は、α-ヒドロキシアセトフェノン化合物以外の光重合開始剤を使用してもよい。このような光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン(Omnirad 907、IGM Resins社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO、IGM Resins社製)、およびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Omnirad 819、IGM Resins社製)が挙げられる。
【0049】
光重合開始剤の含有量は、加熱時の質量減少を抑制する観点から、樹脂組成物Aの総量を基準として、1.5質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、4.5質量%以上または5.0質量%以上であってもよい。光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物Aの総量を基準として、12.0質量%以下であってもよい。
【0050】
樹脂組成物Aは、光重合性化合物および光重合開始剤以外のその他の成分を更に含有してもよい。その他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、光酸発生剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、または増感剤が挙げられる。
【0051】
シランカップリング剤としては、樹脂組成物の硬化の妨げにならなければ、特に限定されない。シランカップリング剤として、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、およびγ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが挙げられる。
【0052】
光酸発生剤としては、Aの構造をしたオニウム塩を用いてもよい。光酸発生剤としては、例えば、UVACURE1590(ダイセル・サイテック製)、CPI-100P、110P、210S(サンアプロ製)等のスルホニウム塩、Omnicat 250(IGM Resins社製)、WPI-113(富士フイルム和光純薬製)、Rp-2074(ローディア・ジャパン製)等のヨードニウム塩が挙げられる。
【0053】
第1の樹脂層14を30℃から150℃まで加熱した場合、第1の樹脂層14の質量減少率は、6.0質量%以下であり、5.0質量%以下、4.5質量%以下、4.0質量%以下、3.5質量%以下、3.0質量%以下、2.5質量%以下または2.0質量%以下であってもよい。加熱時の質量減少率は、実施例に記載の方法により算出することができる。加熱時の質量減少率が上記の範囲内であると、第1の樹脂層14は、十分な硬化度を有し且つ被覆除去性に優れる。第1の樹脂層14は、加熱時の質量減少率が6.0質量%を超えると、硬化度が不十分であるので、外傷し易くなり、線引き中に断線し易くなる。加熱時の質量減少率が上記の範囲内であると、耐外傷性に優れ且つ線引中における断線を防止することができる光ファイバを得ることができる。
【0054】
第1の樹脂層14のヤング率は、硬化度および被覆除去性の観点から、23℃で1MPa以上であってもよく、600MPa以下、500MPa以下、または300MPa以下であってもよい。ヤング率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0055】
第1の樹脂層14は、光ファイバを識別するために、その外周面において着色層を更に備えていてもよい。着色層を有する光ファイバは、着色光ファイバともいう。着色層の厚みは、光ファイバの識別性および被覆除去性の観点から、2μm以上、3μm以上、4μm以上または5μm以上であってもよく、第1の樹脂層に働く引張応力を下げる観点から、14μm以下、12μm以下、10μm以下または7μm以下であってもよい。着色層の厚みは、2μm以上14μm以下、3μm以上12μm以下、4μm以上10μm以下、または5μm以上7μm以下であってもよい。
【0056】
着色層は、光ファイバの識別性を向上する観点から、顔料を含有してもよい。顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華等の着色顔料、γ-Fe、γ-Feとγ-Feの混晶、CrO、コバルトフェライト、コバルト被着酸化鉄、バリウムフェライト、Fe-Co、Fe-Co-Ni等の磁性粉、MIO、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、トリポリリン酸アルミニウム、亜鉛、アルミナ、ガラス、マイカ等の無機顔料;およびアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料が挙げられる。顔料には、各種表面改質、複合顔料化等の処理が施されていてもよい。識別性の観点から、着色層は、酸化チタン粒子を含んでもよい。
【0057】
着色層は、例えば、光重合性化合物と、光重合開始剤と、酸化チタン粒子とを含有する樹脂組成物(以下、「樹脂組成物B」ともいう)を用いて形成することができる。樹脂組成物Bは、紫外線硬化性の樹脂組成物である。樹脂組成物Bに含まれる光重合性化合物および光重合開始剤としては、例えば、樹脂組成物Aに含まれる光重合性化合物および光重合開始剤が挙げられる。着色層と第1の樹脂層との密着性の観点から、樹脂組成物Bの組成は、樹脂組成物Aの組成に近いほうがよい。例えば、樹脂組成物Bにおけるウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量は、樹脂組成物Bの総量を基準として20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下または5質量%以下であってもよい。
【0058】
酸化チタン粒子は、樹脂組成物中の分散性の観点から、表面処理酸化チタン粒子であってもよい。表面処理酸化チタン粒子は、酸化チタンが無機物により表面処理が施された粒子である。
【0059】
表面処理に用いる無機物としては、例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、および二酸化ジルコニウムが挙げられる。表面処理酸化チタン粒子が、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、および二酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む表面処理層を有することで、分散性をより向上することができる。表面処理層は、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部に形成されていてもよく、酸化チタン粒子の全表面に形成されていてもよい。表面処理層は、酸化チタン粒子の表面処理によって形成されたものである。
【0060】
表面処理酸化チタン粒子における表面処理層の量は、分散性をより向上する観点から、1質量%以上、1.5質量%以上、または2質量%以上であってもよく、隠蔽力を高める観点から、10質量%以下、9質量%以下、または8質量%以下であってもよい。表面処理層の量は、誘導結合質量分析(ICP-MS)を用いて、表面処理酸化チタン粒子に含まれるチタン元素およびチタン以外の無機物の元素の量を測定することで算出することができる。
【0061】
表面処理酸化チタン粒子の平均一次粒径は、第1の樹脂層の側圧耐性を向上する観点から、300nm以下、295nm以下、または290nm以下であってもよい。表面処理酸化チタン粒子の平均一次粒径は、隠蔽力を高める観点から、100nm以上、150nm以上、または200nm以上であってもよく、200nm以上300nm以下であってもよい。平均一次粒径は、例えば、電子顕微鏡写真の画像解析、光散乱法、BET法等によって測定することができる。
【0062】
酸化チタン粒子の含有量は、識別性の観点から、樹脂組成物Bの総量を基準として2質量%以上、2.5質量%以上または3質量%以上であってもよく、樹脂組成物Bの硬化性の観点から、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、または8質量%以下であってもよい。
【0063】
着色層のヤング率は、第1の樹脂層に働く引張応力を下げる観点および着色層が脆くなることを抑制する観点から、23℃で2000MPa以下であってもよく、被覆除去性の観点から、23℃で300MPa以上、または500MPa以上であってもよい。
【0064】
本実施形態に係る光ファイバは、ガラスファイバの外周面に樹脂組成物Aを塗布した後に紫外線照射することにより樹脂組成物Aを硬化させて第1の樹脂層を形成する工程を含む方法により作製することができる。
【0065】
(光ファイバリボン)
本実施形態に係る光ファイバを用いて光ファイバリボンを作製することができる。本実施形態に係る光ファイバリボンは、並列に配置された複数の光ファイバと、複数の光ファイバを被覆して連結する連結樹脂層と、を備える。
【0066】
図3は本実施形態に係る光ファイバリボンの一例を示す概略断面図である。図3において、光ファイバリボン100は、並列に配置された複数の光ファイバ10と、複数の光ファイバ10がリボン用樹脂により被覆されて連結された連結樹脂層40とを有している。図3では、一例として4本の光ファイバ10が示されているが、その本数は特に限定されるものではない。
【0067】
光ファイバ10は接して並列された状態で一体化されていてもよく、一部または全部の光ファイバ10が一定間隔をあけて並列された状態で一体化されていてもよい。隣り合う光ファイバ10同士の中心間距離Fは、220μm以上280μm以下であってもよい。中心間距離を220μm以上280μm以下とした場合は、既存のV溝に光ファイバを載せ易く、一括融着性に優れる光ファイバリボンを得ることができる。光ファイバリボン100の厚みTは、光ファイバ10の外径にもよるが、164μm以上310μm以下であってもよい。リボン用樹脂は、特に限定されず、連結樹脂層は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂等を含むことができる。
【実施例0068】
以下、本開示に係る実施例および比較例を用いた評価試験の結果を示し、本開示を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0069】
[第1の樹脂層用の樹脂組成物]
表1に示す各成分を、同表に示す配合量(質量部)で混合することにより、樹脂組成物Aを調製した。試験例1から試験例6が実施例に相当し、試験例7および8が比較例に相当する。表1に示す各成分の詳細は、以下のとおりである。
(光重合性化合物)
・A1:ビスフェノールAのEO変性ジアクリレート(EO数:30)
・A2:ビスフェノールAエポキシジアクリレート
・A3:ノニルフェノールのEO変性アクリレート
・A4:トリプロピレングリコールジアクリレート
・A5:数平均分子量600のポリプロピレングリコールと2,4-トリレンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルアクリレートとを反応させて得られたウレタンアクリレート(Mn:約1200)
(光重合開始剤)
・B1:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO)
・B2:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184)
【0070】
[着色層用の樹脂組成物]
ビスフェノールAエポキシジアクリレートを60質量部、ビスフェノールAのEO変性ジアクリレートを29質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO)を1質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184)を4質量部、エーテル変性シリコーン化合物を1質量部、および表面処理酸化チタン粒子を5質量部混合して、樹脂組成物Bを得た。表面処理酸化チタン粒子は、酸化アルミニウム(Al)を含む表面処理層を有する酸化チタン粒子であり、平均一次粒径が200nm以上300nm以下であり、ICP-MSの測定により算出されるAlの量は、2質量%であった。
【0071】
[リボン用の樹脂組成物]
ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオール1mol、トリレンジイソシアネート2molおよびヒドロキシエチルアクリレート2molを反応させて得られるウレタンアクリレートaと、ポリテトラメチレングリコール1mol、トリレンジイソシアネート2molおよびヒドロキシエチルアクリレート2molを反応させて得られるウレタンアクリレートbとを準備した。ウレタンアクリレートaを18質量部、ウレタンアクリレートbを10質量部、トリシクロデカンジアクリレートを15質量部、N-ビニルピロリドンを10質量部、イソボルニルアクリレートを10質量部、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオールジアクリレートを5質量部、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン(Omnirad 907)を0.7質量部、および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO)を1.3質量部混合して、樹脂組成物Rを得た。
【0072】
[光ファイバの作製]
コアおよびクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周面に樹脂組成物Aを塗布し、紫外線を照射することで樹脂組成物を硬化させ、厚み22.5μmの第1の樹脂層(以下、「樹脂層A」ともいう)を形成して、直径170μmの光ファイバを作製した。
【0073】
(ヤング率)
光ファイバを溶剤(エタノール:アセトン=3:7)に浸してガラスファイバを抜き取って得られるパイプ状の樹脂層A(長さ:50mm以上)を用いて、23℃での引張試験(標線間距離:25mm)を行い、2.5%割線値から求めた。ヤング率が高いほど、樹脂層Aの硬化度が高くなる傾向がある。
【0074】
(質量減少率)
光ファイバから樹脂層Aのみを抜き出し、得られた樹脂層AをSTA449 F3 Jupiter(登録商標、NETZSCH社製)で窒素雰囲気下、30℃から150℃まで20℃/分の速度で昇温し、樹脂層Aの150℃での質量を測定した。下記式により質量減少率を算出した。
質量減少率(質量%)=[樹脂層Aの質量減少量]/[樹脂層Aの30℃での質量]×100
ここで、樹脂層Aの質量減少量とは、樹脂層Aの30℃での質量と樹脂層Aの150℃での質量との差である。
【0075】
[着色光ファイバの作製]
光ファイバを、着色機で改めて繰り出しながら、樹脂層Aの外周面に樹脂組成物Bを用いて厚み5μmの着色層を形成し、着色層を有する直径180μmの光ファイバを作製した。
【0076】
[光ファイバリボンの作製]
12本の並列に配置された着色光ファイバの周囲に樹脂組成物Rを用いて厚み10μmの連結樹脂層を形成し、光ファイバリボンを作製した。
【0077】
(被覆除去性)
住友電気工業株式会社製のホットジャケットリムーバ「JR-6+」を使用して、光ファイバリボンを95℃で5秒間加熱した後、光ファイバリボンから樹脂層の被覆を除去した。以下の基準にて被覆除去性を評価した。
A:ガラスファイバ上に樹脂層の被覆カスがなく、ガラスファイバの断線もなかった。
B:ガラスファイバ上に残存した樹脂層の被覆カスを、エタノールで湿らせたキムワイプで簡単に拭き取ることができた。
C:ガラスファイバ上に残存した樹脂層の被覆カスを、エタノールで湿らせたキムワイプで拭き取れず、または、ガラスファイバの断線があった。
【0078】
【表1】
【符号の説明】
【0079】
10,20…光ファイバ
11…コア
12…クラッド
13,13A…ガラスファイバ
14…第1の樹脂層
40…連結樹脂層
100…光ファイバリボン
図1
図2
図3