(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121145
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 60/00 20200101AFI20240830BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240830BHJP
G08G 1/0965 20060101ALI20240830BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240830BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B60W60/00
G08G1/09 H
G08G1/09 V
G08G1/0965
G08G1/16 A
B60W30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028084
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】漆原 伴哉
(72)【発明者】
【氏名】中岡 謙
(72)【発明者】
【氏名】中野 将志
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241CE02
3D241CE03
3D241CE04
5H181AA01
5H181AA12
5H181BB04
5H181CC12
5H181FF05
5H181FF13
5H181FF14
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両の効率良い走行を支援する。
【解決手段】車両制御方法は、車両の周辺の他車両の対応可能な自動運転レベルを表す対応可能運転レベル情報を含む周辺車両情報を取得し、周辺車両情報に基づいて、他車両の車両からの退避行動を表す退避行動情報、および車両の他車両からの回避行動を表す回避行動情報を生成し、退避行動情報を他車両へ通知し、回避行動情報を車両に出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺の他車両の対応可能な自動運転レベルを表す対応可能運転レベル情報を含む周辺車両情報を取得し、
前記周辺車両情報に基づいて、前記他車両の前記車両からの退避行動を表す退避行動情報、および前記車両の前記他車両からの回避行動を表す回避行動情報を生成し、
前記退避行動情報を前記他車両へ通知し、
前記回避行動情報を前記車両に出力する、
車両制御方法。
【請求項2】
前記自動運転レベルは、
運転自動化レベルの最も低い自動運転無を表す手動運転レベルから、前記運転自動化レベルの最も高い完全運転自動化レベルに向かって複数のレベルに分類される、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項3】
前記周辺車両情報に含まれる前記対応可能運転レベル情報に基づいて、
より高い前記運転自動化レベルに対応可能な前記他車両ほどより高度な退避行動を行い、より高い前記運転自動化レベルへの対応不可能な前記他車両ほどより低度な退避行動を行うように、前記退避行動情報および前記回避行動情報を生成する、
請求項2に記載の車両制御方法。
【請求項4】
前記車両の前記他車両からの回避行動がより少なくなるように、前記退避行動情報および前記回避行動情報を生成する、
請求項3に記載の車両制御方法。
【請求項5】
前記他車両の前記退避行動および前記車両の前記回避行動の組み合わせの異なる複数の行動候補を生成し、
複数の前記行動候補の内、前記他車両であるかまたは前記車両であるかを表す車両種別および前記自動運転レベルに応じた車両係数と、前記退避行動および前記回避行動である行動の難易度に応じた行動係数と、によって表される前記退避行動および前記回避行動の総合難易度の最も低い1つの前記行動候補に含まれる前記退避行動を表す前記退避行動情報、および該行動候補に含まれる前記回避行動を表す前記回避行動情報を生成する、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項6】
前記周辺車両情報に基づいて、前記車両が回避行動及び退避行動無で走行継続可能か否かを判断し、
前記車両が回避行動及び退避行動無での走行継続不可能と判断したときに、
前記周辺車両情報に基づいて、前記退避行動情報および前記回避行動情報を生成する、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項7】
前記退避行動の内容を表す退避行動内容、および、前記退避行動時の前記自動運転レベル、を表す前記退避行動情報を生成する、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項8】
前記回避行動情報を、
前記車両の運転者が確認可能な出力部、および、前記車両の自動運転を制御する車両駆動制御部、の少なくとも一方に出力する、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項9】
車両の周辺の他車両から受信した、前記車両の対応可能な自動運転レベルを表す対応可能運転レベル情報を含む周辺車両情報に基づいて生成された、前記他車両からの退避行動を表す退避行動情報を取得し、
前記退避行動情報を前記車両に出力する、
車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緊急車両の周辺の周辺車両を緊急車両から退避させるためのシステムが知られている。例えば、周辺車両が、緊急車両の走行状態に関する走行情報に基づいて緊急車両を避けるような自動運転状態に切り替えて走行するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の技術では、周辺車両の対応可能な自動運転レベルに応じた退避行動の違いが考慮されておらず、周辺車両を緊急車両から効率よく退避させ、緊急車両による周辺車両を効率よく回避した走行を支援することは困難であった。すなわち、従来技術では、緊急車両および周辺車両等の車両の効率良い走行を支援することは困難であった。
【0005】
本開示は、車両の効率良い走行を支援することができる、車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる車両制御方法は、車両の周辺の他車両の対応可能な自動運転レベルを表す対応可能運転レベル情報を含む周辺車両情報を取得し、前記周辺車両情報に基づいて、前記他車両の前記車両からの退避行動を表す退避行動情報、および前記車両の前記他車両からの回避行動を表す回避行動情報を生成し、前記退避行動情報を前記他車両へ通知し、前記回避行動情報を前記車両に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる車両制御方法によれば、車両の効率良い走行を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の車両制御システムの一例の模式図である。
【
図2】
図2は、緊急車両の機能的構成の一例を示す模式図である。
【
図3A】
図3Aは、車両係数DBのデータ構成の一例の模式図である。
【
図3B】
図3Bは、行動係数DBのデータ構成の一例の模式図である。
【
図4】
図4は、行動候補の生成および総合難易度の計算の一例の説明図である。
【
図5A】
図5Aは、行動候補の生成および総合難易度の計算の一例の説明図である。
【
図5B】
図5Bは、行動候補の生成および総合難易度の計算の一例の説明図である。
【
図5C】
図5Cは、行動候補の生成および総合難易度の計算の一例の説明図である。
【
図5D】
図5Dは、行動候補の生成および総合難易度の計算の一例の説明図である。
【
図6】
図6は、周辺車両の機能的構成の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、周辺車両の走行支援装置が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、周辺車両の走行支援装置が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、ハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示にかかる車両制御方法の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の車両制御システム1の一例の模式図である。
【0011】
車両制御システム1は、緊急車両2に搭載された走行支援装置10と、緊急車両2の周辺の周辺車両3に搭載された走行支援装置20と、を備える。緊急車両2の走行支援装置10と周辺車両3の走行支援装置20とは、通信可能に接続されている。
【0012】
緊急車両2とは、緊急の用務に際して、道路における優先的な通行あるいは道路の優先的利用ができるよう指定され、許可されている車両である。緊急車両2は、例えば、消防用車両等の道路交通法に基づく緊急自動車、自衛隊車両、災害対策基本法等に基づく緊急通行車両、予め緊急車両として設定された車両等である。予め緊急車両として設定された車両には、バス等の優先車両が含まれていてよい。
【0013】
周辺車両3とは、緊急車両2の周辺に位置する車両である。周辺とは、緊急車両2から所定距離範囲内の領域である。
図1には、緊急車両2の周辺の周辺車両3として、周辺車両3A~周辺車両3Eを一例として示す。しかし、緊急車両2に対する周辺車両3の台数および緊急車両2との位置関係は
図1に示すものに限定されない。
【0014】
緊急車両2に設けられた走行支援装置10の詳細を説明する。
【0015】
図2は、緊急車両2の機能的構成の一例を示す模式図である。
【0016】
緊急車両2は、走行支援装置10と、車両駆動制御部11と、出力部12と、を備える。
【0017】
車両駆動制御部11は、緊急車両2に設けられた駆動部を制御する。車両駆動制御部11の詳細は後述する。
【0018】
出力部12は、緊急車両2に設けられた出力装置の一例である。出力部12は、緊急車両2の運転者が確認可能な形態で情報を出力する機構である。出力部12は、画像表示機能、音声出力機能、などを備える。画像表示機能は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や、OELD(Organic Electro-Luminescent Display)などである。音声出力機能は、例えば、スピーカである。具体的には、出力部12は、緊急車両2に設けられたHMI(human machine interface)であってよい。また、出力部12は、走行支援装置10の筐体(図示せず)に配置され、緊急車両2の運転者が確認可能な情報を含む電気信号を出力するコネクタと捉えることも可能である。この場合、出力部12は、
図2の構成とは異なり、走行支援装置10に含まれることになる。
【0019】
走行支援装置10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)インターフェース10Aと、車両情報インターフェース10Bと、無線通信部10Cと、制御部10Dと、を備える。
【0020】
制御部10Dは、メッセージ生成部10E、メッセージ解析部10F、および退避回避行動制御部10Gなどの機能部を備える。
【0021】
上述した機能部の一部または全ては、プロセッサとメモリに記憶された各種プログラムとの協働により実現されるソフトウェア構成であってよい。また、上述した機能部の一部または全ては、専用回路等で実現されるハードウェア構成であってもよい。
【0022】
GNSSインターフェース10Aは、自車両である緊急車両2に搭載された計測装置と通信するインターフェースである。GNSSインターフェース10Aは、計測装置から、自車両の車速情報、自車両の車両位置情報、自車両の走行方向情報、などを取得する。計測装置は、例えば緊急車両2の車輪の回転数や回転速度を計測する速度計、および、GPS(Global Positioning System)等の技術を利用した位置計測装置である。
【0023】
車両情報インターフェース10Bは、自車両である緊急車両2に搭載された電子機器と通信するインターフェースである。車両情報インターフェース10Bは、電子機器から、自車両の車両状態情報を取得する。車両状態情報は、例えば、ナビゲーション情報、などを含む。
【0024】
ナビゲーション情報は、自車両に搭載されたナビゲーションシステムによって生成される情報である。ナビゲーション情報は、例えば、緊急車両2の運転者によって入力された目的地、目的地から現在位置までの範囲を含む地図情報、現在位置から目的地までの走行経路を表す走行経路情報、などを含む。車両情報インターフェース10Bは、ナビゲーションシステムからナビゲーション情報を受信する。
【0025】
GNSSインターフェース10Aおよび車両情報インターフェース10Bは、自車両の車速情報、自車両の車両位置情報、自車両の走行方向情報、および自車両の走行経路情報、等を含む車両情報を退避回避行動制御部10Gへ出力する。GNSSインターフェース10Aおよび車両情報インターフェース10Bは、緊急車両2に搭載された電子機器など装置各部へ電力が供給されると、自車両の車速情報、自車両の車両位置情報、自車両の走行方向情報、および自車両の走行経路情報、等を含む車両情報を、電子機器などから継続して受付ける。GNSSインターフェース10Aおよび車両情報インターフェース10Bは、受付けた車両情報を退避回避行動制御部10Gへ順次出力する。
【0026】
メッセージ生成部10Eは、退避回避行動制御部10Gで生成された退避行動情報を用いて、周辺車両3へ送信するメッセージを生成する。
【0027】
例えば、メッセージ生成部10Eによって生成されるメッセージは、退避行動情報を含む。詳細には、メッセージ生成部10Eによって生成されるメッセージは、該メッセージの送信元の緊急車両2の識別情報である緊急車両IDと、退避行動情報と、を含む。退避行動情報の詳細は後述する。
【0028】
無線通信部10Cは、路車間通信または車車間通信を行う。路車間通信および車車通信は、V2X(Vehicle to Everything)と称される場合がある。
【0029】
本実施形態では、無線通信部10Cおよび後述する周辺車両3の無線通信部20Cは、退避行動情報を含むメッセージを通信する場合には、車両同士が直接通信を行うサイドリンク方式により通信する形態を一例として示す。このため、本実施形態では、無線通信部10Cは、メッセージ生成部10Eで生成された退避行動情報を含むメッセージを、該メッセージに含まれる退避行動情報に設定されている周辺車両IDによって識別される周辺車両3へ送信する。また、無線通信部10Cは、路車間通信または車車間通信を行うことで、他車両である周辺車両3から送信されたメッセージを受信する。
【0030】
例えば、他車両である周辺車両3から受信するメッセージは、メッセージの送信元の周辺車両3の識別情報である周辺車両IDと、該周辺車両3の周辺車両情報と、を含む。周辺車両情報の詳細は後述する。
【0031】
メッセージ解析部10Fは、他車両である周辺車両3から無線通信部10Cで受信したメッセージを解析する。メッセージ解析部10Fは、無線通信部10Cが周辺車両情報を含むメッセージを受信するごとに、該メッセージを退避回避行動制御部10Gへ出力する。
【0032】
退避回避行動制御部10Gは、GNSSインターフェース10Aおよび車両情報インターフェース10Bから自車両である緊急車両2の車両情報を取得する。
【0033】
退避回避行動制御部10Gは、自車両である緊急車両2に搭載されたセンサ等を用いて、緊急車両2の周辺の周辺車両3を直接更に検知してもよい。
【0034】
また、退避回避行動制御部10Gは、自車両である緊急車両2の周辺の周辺車両3から周辺車両情報を取得する。
【0035】
周辺車両情報とは、周辺車両3から緊急車両2へ送信される情報である。周辺車両情報は、周辺車両3の対応可能運転レベル情報を少なくとも含む。本実施形態では、周辺車両情報は、周辺車両3の対応可能運転レベル情報と、周辺車両3の車両情報と、周辺車両3の周辺車両IDと、を含む。周辺車両情報は、周辺車両3の現在の自動運転レベルを表す情報を更に含んでいてもよい。
【0036】
周辺車両3の車両情報とは、周辺車両3に関する情報である。周辺車両3の車両情報は、周辺車両3の車速情報、周辺車両3の車両位置情報、周辺車両3の走行方向情報、および周辺車両3の走行経路情報、等を含む。
【0037】
対応可能運転レベル情報とは、周辺車両3の対応可能な自動運転レベルを表す情報である。すなわち、対応可能運転レベル情報は、周辺車両情報の送信元の周辺車両3の対応可能な自動運転レベルを表す情報である。
【0038】
自動運転レベルとは、手動運転および自動運転を含む運転の種類を表す。自動運転レベルは、自動運転モード、または運転モード、等と称される場合がある。自動運転モードおよび運転モードは、自動運転レベルのレベルによって表される。
【0039】
自動運転レベルは、自動化の範囲およびドライバの運転への関与度によって複数のレベルに分類される。詳細には、自動運転レベルは、運転自動化レベルの最も低い自動運転無を表す手動運転レベルから、運転自動化レベルの最も高い完全運転自動化レベルに向かって複数のレベルに分類されている。
【0040】
具体的には、例えば、自動運転レベルは、運転自動化レベルの最も低いレベル0から運転自動化レベルの最も高いレベル5までの6段階のレベルに分類される。レベル0は、運転自動化無、すなわち、手動運転を表すレベルである。レベル1は、アクセル・ブレーキまたはハンドル操作の何れかの運転支援を行うレベルである。レベル2は、アクセル・ブレーキとハンドル操作の双方を支援する部分運転自動化を表すレベルである。レベル3は、場所・条件が限定された範囲で全運転操作を自動化する条件付運転自動化を表すレベルである。レベル4は、限定領域内であれば全運転操作を自動化する高度運転自動化を表すレベルである。レベル5は、条件なしで全運転操作を自動化する完全運転自動化を表すレベルである。
【0041】
例えば、周辺車両3が手動運転であるレベル0のみに対応可能である場合、該周辺車両3の対応可能運転レベル情報は、レベル0を表す情報である。また、例えば、周辺車両3が、レベル0から完全運転自動化であるレベル5までの全てのレベルに対応可能である場合、該周辺車両3の対応可能運転レベル情報は、レベル0からレベル5までの全てのレベルを表す情報である。なお、対応可能運転レベル情報は、周辺車両3の対応可能な自動運転レベルの内、最も高いレベルを表す情報であってもよい。この場合、対応可能運転レベル情報は、該対応可能運転レベル情報によって表されるレベルと、該レベルより低い他のレベルと、の全てに対応可能であることを表すものとすればよい。
【0042】
退避回避行動制御部10Gは、例えば、優先走行を行うための優先走行要求信号などを緊急車両2の乗員の操作指示などによって受け付けたときに、自車両である緊急車両2の周辺の1または複数の周辺車両3の各々から周辺車両情報を取得する。
【0043】
具体的には、例えば、周辺車両3は、周辺車両情報をブロードキャスト送信する。そして、緊急車両2の退避回避行動制御部10Gは、優先走行を行うための優先走行要求信号などを緊急車両2の乗員の操作指示などによって受け付けたときに、周辺車両3から無線通信部10Cおよびメッセージ解析部10Fを介して周辺車両情報を取得すればよい。また、これに限らず、周辺車両3側で緊急車両2の接近を検知したときに、周辺車両3から緊急車両2へ周辺車両情報を送信するようにしてもよい。
【0044】
また、例えば、退避回避行動制御部10Gは、優先走行を行うための優先走行要求信号などを緊急車両2の乗員の操作指示などによって受け付けたときに、情報収集要求メッセージをメッセージ生成部10Eおよび無線通信部10Cを介して周辺の周辺車両3へブロードキャスト送信する。また、これに限らず、緊急車両2の無線通信部10Cは、基地局を経由して広範囲に情報収集要求メッセージを送信するようにしてもよい。
【0045】
情報収集要求メッセージは、例えば、緊急車両2の緊急車両IDと、周辺車両情報の取得要求を表す情報と、を含む。情報収集要求メッセージを周辺車両3へ送信することで、周辺車両3側では、状況に応じた自動運転レベルの切り替え可否判断が可能となる。
【0046】
情報収集要求メッセージを受信した周辺車両3は、対応可能運転レベル情報と、自車両である該周辺車両3の車両情報と、該周辺車両3の周辺車両IDと、を含む周辺車両情報を緊急車両2へ送信する。周辺車両3の処理の詳細は後述する。
【0047】
退避回避行動制御部10Gは、緊急車両2の周辺の1または複数の周辺車両3の各々から周辺車両情報を取得する。
【0048】
なお、退避回避行動制御部10Gは、複数の周辺車両3の少なくとも1つから、該周辺車両3の周辺車両情報と、周辺車両3の周辺の他車両の周辺車両情報と、を含む情報を取得してもよい。例えば、ある周辺車両3がV2Xに非対応の車両である場合を想定する。この場合、V2X対応の周辺車両3は、自車両に設けられた機器により周囲の他車両を検知することで、該他車両の周辺車両情報を生成する。そして、該V2X対応の周辺車両3は、自車両の周辺車両情報および該他車両の周辺車両情報を緊急車両2へ送信してよい。なお、V2X対応の周辺車両3は、周辺の他車両から対応可能運転レベル情報を取得出来なかった場合、該他車両の対応可能運転レベル情報として、運転自動化レベルの最も低い取得運転レベルを表すレベル0を設定し、緊急車両2へ送信すればよい。
【0049】
また、退避回避行動制御部10Gは、自車両である緊急車両2に設けられたセンサを用いて周辺車両3を直接検知することで、周辺車両3の周辺車両情報を取得してもよい。
【0050】
また、退避回避行動制御部10Gが周辺車両3を直接検知した場合に該周辺車両3の対応可能運転レベル情報を取得出来ない場合がある。この場合、退避回避行動制御部10Gは、他の周辺車両3から無線通信部10Cを介して取得した周辺車両情報の内、直接検知した周辺車両3と同一の周辺車両3の周辺車両情報を、直接検知した周辺車両3の周辺車両情報として用いればよい。同一の周辺車両3であるか否かは、緊急車両2の周辺の撮影画像の画像解析結果や周辺車両3の車両位置情報などを用いて判定すればよい。
【0051】
退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3から取得した周辺車両情報に基づいて、退避行動情報、および回避行動情報を生成する。
【0052】
退避行動情報とは、周辺車両3が緊急車両2から退避して走行するための退避行動を表す情報である。退避行動とは、周辺車両3が緊急車両2を避けて走行するための行動を意味する。退避行動情報は、退避行動の内容を表す退避行動内容、および、退避行動時の自動運転レベル、を表す情報を含む。
【0053】
回避行動情報とは、緊急車両2が周辺車両3を回避して走行するための回避行動を表す情報である。回避行動とは、緊急車両2が周辺車両3を避けて走行するための行動を意味する。回避行動情報は、回避行動の内容を表す回避行動内容を含む。
【0054】
退避回避行動制御部10Gは、周辺車両情報に基づいて、緊急車両2が回避行動及び退避行動無で走行継続可能か否かを判断し、回避行動及び退避行動無での走行継続不可能と判断したときに、退避行動情報および回避行動情報を生成する。
【0055】
詳細には、退避回避行動制御部10Gは、自車両である緊急車両2の車両情報と、周辺車両3から取得した周辺車両情報に含まれる周辺車両3の車両情報と、を用いて、緊急車両2と周辺車両3の各々の車両位置情報、車速情報、走行方向情報、および走行経路情報を特定する。そして、退避回避行動制御部10Gは、特定したこれらの情報を用いて、緊急車両2が周辺車両3を回避する回避行動を行わず、且つ、周辺車両3が緊急車両2から退避する退避行動を行わずに走行を継続可能か判断すればよい。具体的には、退避回避行動制御部10Gは、緊急車両2および周辺車両3の各々の車両情報に含まれる、車速情報、車両位置情報、走行方向情報、および走行経路情報を用いて、回避行動無および退避行動無で緊急車両2が走行を継続可能か否か判断すればよい。
【0056】
そして、退避回避行動制御部10Gは、退避行動無および回避行動無での走行継続不可能と判断したときに、退避行動情報および回避行動情報を生成する。
【0057】
退避回避行動制御部10Gは、周辺車両情報に含まれる対応可能運転レベル情報に基づいて、より高い運転自動化レベルに対応可能な周辺車両3ほどより高度な退避行動を行い、より高い運転自動化レベルへの対応不可能な周辺車両3ほどより低度な退避行動を行うように、退避行動情報および回避行動情報を生成する。
【0058】
詳細には、退避回避行動制御部10Gは、緊急車両2の走行経路を確保するための、周辺車両3の退避行動および緊急車両2の回避行動の組み合わせの異なる複数の行動候補を生成する。
【0059】
このとき、退避回避行動制御部10Gは、緊急車両2の周辺の複数の周辺車両3の各々について、周辺車両情報に含まれる対応可能運転レベル情報によって表される運転自動化レベルごとに、運転自動化レベルが高いほどより高度な退避行動内容の退避行動を特定する。また、退避回避行動制御部10Gは、複数の周辺車両3の各々について、周辺車両3の対応可能運転レベル情報によって表される運転自動化レベルごとに、運転自動化レベルが低いほどより低度な退避行動内容の退避行動を特定する。
【0060】
より高度な退避行動としては、例えば、運転自動化レベルの低い他車両(周辺車両3)の退避スペースを空ける、運転自動化レベルの低い他車両の走行車線に車線変更する、などの退避行動が挙げられる。より低度な退避行動としては、例えば、減速のみ、そのままの速度で且つ車線変更無で走行、などが挙げられる。
【0061】
そして、退避回避行動制御部10Gは、複数の周辺車両3の各々の退避行動と、緊急車両2の回避行動と、の組み合わせの異なる複数の行動候補を生成する。
【0062】
そして、退避回避行動制御部10Gは、生成した複数の行動候補ごとに、車両係数と、行動係数と、によって表される退避行動および回避行動の総合難易度を計算する。
【0063】
車両係数とは、周辺車両3であるかまたは緊急車両2であるかを表す車両種別および自動運転レベルに応じて予め定められた係数である。車両係数には、自動運転レベルによって表される運転自動化レベルが高いほど低い値が予め対応付けられている。すなわち、運転自動化レベルがより高いほど、より難易度の高い高度な退避行動を割り当てる観点から、運転自動化レベルが高いほどより低い値の車両係数が予め定められている。
【0064】
また、緊急車両2による回避行動をより少なくする観点から、車両種別が緊急車両2である場合には、最も大きい値の車両係数が予め定められている。
【0065】
行動係数とは、退避行動および回避行動である行動の難易度に応じて予め定められた係数である。行動係数には、行動の難易度が高いほど高い値が予め対応付けられている。
【0066】
例えば、退避回避行動制御部10Gは、上記条件を予め設定した車両係数DB(データベース)および行動係数DBを予め記憶し、総合難易度の計算に用いる。
【0067】
図3Aは、車両係数DB16Aのデータ構成の一例の模式図である。車両係数DB16Aは、車両種別と、自動運転レベルと、車両係数と、を対応付けたデータベースである。車両係数DB16Aのデータ形式は、データベースに限定されない。
【0068】
図3Aに示すように、車両係数DB16Aには、自動運転レベルによって表される運転自動化レベルが高いほど低い値の車両係数が予め対応付けられている。また、車両種別が緊急車両2に対応する車両係数として、周辺車両3より大きい値の車両係数が予め定められている。なお、この緊急車両2の車両係数は、固定値に限定されるものではなく緊急車両2の運転自動化レベルに応じて異なる値としてもよい。例えば、運転自動化レベルに応じて1~6の値を割り振り、そこに緊急車両としての係数を加算して4~9としてもよく、または、係数を乗算して1.5~9としてもよい。
【0069】
図3Bは、行動係数DB16Bのデータ構成の一例の模式図である。行動係数DB16Bは、行動と、行動係数と、を対応付けたデータベースである。行動係数DB16Bのデータ形式は、データベースに限定されない。
【0070】
図3Bに示すように、行動係数DB16Bには、行動の難易度が高いほど高い値の行動係数が予め定められている。
【0071】
なお、
図3Bには、行動の種類として、車線変更、加速、加速しながら車線変更、を一例として示す。しかし、行動係数DB16Bには、更に複数種類の行動が登録されていてよい。また、行動係数DB16Bには、更に複数種類に分類した行動が登録されていてもよい。例えば、行動係数DB16Bには、車線変更として、車線変更のレーン数ごとに行動係数が対応付けられていてよい。また、行動係数DB16Bには、加速の速度差分、および減速の独度差分ごとに、行動係数が対応付けられていてよい。また、退避前後の相対距離ごとに、行動係数が対応付けられていてよい。これらの行動係数には、対応する行動の難易度が高いほど高い(大きい)値が対応付けられていればよい。
【0072】
具体的には、例えば、行動係数DB16Bには、行動「1レーン分車線変更+加速」に対応する行動係数「2」、行動「2レーン分車速変更+加速」に対応する行動係数「3」等が更に対応付けて登録されていてよい。
【0073】
【0074】
退避回避行動制御部10Gは、生成した複数の行動候補ごとに、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて、行動候補によって表される退避行動および回避行動の組み合わせによる総合難易度を計算する。
【0075】
具体例を挙げて説明する。
【0076】
図4、
図5A~
図5Dは、退避回避行動制御部10Gによる行動候補の生成および総合難易度の計算の一例の説明図である。
【0077】
例えば、道路を走行する緊急車両2と緊急車両2の周辺の複数の周辺車両3との位置関係が
図4に示す位置関係であった場合を想定する。また、周辺車両3Aの対応可能な自動運転レベルが手動運転を表すレベル0であり、周辺車両3Bの対応可能な自動運転レベルが運転支援を表すレベル1である場合を想定する。また、周辺車両3Cの対応可能な自動運転レベルが完全運転自動化を表すレベル4であり、周辺車両3Dの対応可能な自動運転レベルが部分運転自動化を表すレベル2である場合を想定する。また、周辺車両3Eの対応可能な自動運転レベルが条件付運転自動化を表すレベル3である場合を想定する。
【0078】
そして、緊急車両2が走行方向Xに走行し、周辺車両3についても走行方向Xと同じ走行方向に走行中であった場合を想定する。
【0079】
周辺車両3と周辺車両3との位置関係が
図4に示す状態である場合、緊急車両2は、緊急車両2の回避行動および周辺車両3の退避行動の少なくとも一方を行わずに走行を継続することは困難である。このため、退避回避行動制御部10Gは、退避行動無および回避行動無での走行継続不可能と判断し、退避行動情報および回避行動情報を生成する。
【0080】
この場合、退避回避行動制御部10Gは、例えば、
図5A~
図5Dに示す複数の行動候補A~行動候補Dを生成する。なお、退避回避行動制御部10Gは、更に複数の行動候補を生成してもよく、生成する行動候補は4種類に限定されない。
【0081】
【0082】
例えば、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Aについて対応可能なレベル0の自動運転レベルで隣の車線へ車線変更する退避行動Ya1と、周辺車両3Bについて対応可能なレベル1の自動運転レベルで加速する退避行動Yb1と、緊急車両2を車線変更させる回避行動X1と、の組み合わせからなる行動候補Aを生成する。行動候補Aでは、周辺車両3B、周辺車両3C、周辺車両3D、および周辺車両3Eについては、退避行動を行わない。
【0083】
この場合、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Aの総合難易度を以下計算により計算する。
【0084】
退避回避行動制御部10Gは、行動候補Aに含まれる周辺車両3Aの退避行動Ya1の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Aの該退避行動Ya1時の自動運転レベルであるレベル0に対応する車両係数「6」と、退避行動Ya1である車線変更に対応する行動係数「1」と、の乗算値である「6」を、周辺車両3Aの退避行動Ya1の行動難易度係数として計算する。
【0085】
同様に、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Aに含まれる周辺車両3Bの退避行動Yb1の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Bの該退避行動Yb1時の自動運転レベルであるレベル1に対応する車両係数「5」と、退避行動Yb1である加速に対応する行動係数「1」と、の乗算値である「5」を、周辺車両3Bの退避行動Yb1の行動難易度係数として計算する。
【0086】
同様に、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Aに含まれる緊急車両2の回避行動X1の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、緊急車両2に対応する車両係数「7」と、回避行動X1である車線変更に対応する行動係数「1」と、の乗算値である「7」を、緊急車両2の回避行動X1の行動難易度係数として計算する。
【0087】
そして、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Aを構成する、周辺車両3Aの退避行動Ya1の行動難易度係数「6」と、周辺車両3Bの退避行動Yb1の行動難易度係数「5」と、緊急車両2の回避行動X1の行動難易度係数「7」と、合計値である「18」を行動候補Aの総合難易度として計算する。
【0088】
【0089】
例えば、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Cについて対応可能なレベル4の自動運転レベルで隣の車線へ車線変更する退避行動Yc2と、周辺車両3Bについて対応可能なレベル1の自動運転レベルで加速しながら隣の車線へ車線変更する退避行動Yb2と、の組み合わせからなる行動候補Bを生成する。行動候補Bでは、周辺車両3A、周辺車両3D、および周辺車両3Eは退避行動を行わず、緊急車両2は回避行動を行わない。
【0090】
この場合、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Bの総合難易度を以下計算により計算する。
【0091】
退避回避行動制御部10Gは、行動候補Bに含まれる周辺車両3Cの退避行動Yc2の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Cの該退避行動Yc2時の自動運転レベルであるレベル4に対応する車両係数「2」と、退避行動Yc2である車線変更に対応する行動係数「1」と、の乗算値である「2」を、周辺車両3Cの退避行動Yc2の行動難易度係数として計算する。
【0092】
同様に、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Bに含まれる周辺車両3Bの退避行動Yb2の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Bの該退避行動Yb2時の自動運転レベルであるレベル1に対応する車両係数「5」と、退避行動Yb2である加速しながら車線変更に対応する行動係数「2」と、の乗算値である「10」を、周辺車両3Bの退避行動Yb2の行動難易度係数として計算する。
【0093】
そして、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Bを構成する、周辺車両3Cの退避行動Yc2の行動難易度係数「2」と、周辺車両3Bの退避行動Yb2の行動難易度係数「10」と、の合計値である「12」を行動候補Bの総合難易度として計算する。
【0094】
【0095】
例えば、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Cについて対応可能なレベル4の自動運転レベルで隣の車線へ車線変更する退避行動Yc3と、周辺車両3Bについて対応可能なレベル1の自動運転レベルで隣の車線へ車線変更する退避行動Yb3と、周辺車両3Dについて対応可能なレベル2の自動運転レベルで加速する退避行動Yd3と、の組み合わせからなる行動候補Cを生成する。行動候補Cでは、周辺車両3A、および周辺車両3Eは退避行動を行わず、緊急車両2は回避行動を行わない。
【0096】
この場合、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Cの総合難易度を以下計算により計算する。
【0097】
退避回避行動制御部10Gは、行動候補Cに含まれる周辺車両3Cの退避行動Yc3の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Cの該退避行動Yc3時の自動運転レベルであるレベル4に対応する車両係数「2」と、退避行動Yc3である車線変更に対応する行動係数「1」と、の乗算値である「2」を、周辺車両3Cの退避行動Yc3の行動難易度係数として計算する。
【0098】
同様に、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Cに含まれる周辺車両3Bの退避行動Yb3の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Bの該退避行動Yb3時の自動運転レベルであるレベル1に対応する車両係数「5」と、退避行動Yb3である車線変更に対応する行動係数「1」と、の乗算値である「5」を、周辺車両3Bの退避行動Yb3の行動難易度係数として計算する。
【0099】
同様に、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Cに含まれる周辺車両3Dの退避行動Yd3の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Dの該退避行動Yd3時の自動運転レベルであるレベル2に対応する車両係数「4」と、退避行動Yd3である加速に対応する行動係数「1」と、の乗算値である「4」を、周辺車両3Dの退避行動Yd3の行動難易度係数として計算する。
【0100】
そして、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Cを構成する、周辺車両3Cの退避行動Yc3の行動難易度係数「2」と、周辺車両3Bの退避行動Yb3の行動難易度係数「5」と、周辺車両3Dの退避行動Yd3の行動難易度係数「4」との合計値である「11」を行動候補Cの総合難易度として計算する。
【0101】
【0102】
例えば、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Cについて対応可能なレベル4の自動運転レベルで隣の車線へ車線変更する退避行動Yc4と、周辺車両3Eについて対応可能なレベル3の自動運転レベルで隣の車線へ車線変更する退避行動Ye4と、周辺車両3Dについて対応可能なレベル2の自動運転レベルで加速しながら隣の車線へ車線変更する退避行動Yd4と、緊急車両2を車線変更させる回避行動X4と、の組み合わせからなる行動候補Dを生成する。行動候補Dでは、周辺車両3A、および周辺車両3Bは退避行動を行わない。
【0103】
この場合、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Dの総合難易度を以下計算により計算する。
【0104】
退避回避行動制御部10Gは、行動候補Dに含まれる周辺車両3Cの退避行動Yc4の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Cの該退避行動Yc4時の自動運転レベルであるレベル4に対応する車両係数「2」と、退避行動Yc4である車線変更に対応する行動係数「1」と、の乗算値である「2」を、周辺車両3Cの退避行動Yc4の行動難易度係数として計算する。
【0105】
同様に、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Dに含まれる周辺車両3Eの退避行動Ye4の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Eの該退避行動Ye4時の自動運転レベルであるレベル3に対応する車両係数「3」と、退避行動Ye4である車線変更に対応する行動係数「1」と、の乗算値である「3」を、周辺車両3Eの退避行動Ye4の行動難易度係数として計算する。
【0106】
同様に、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Dに含まれる周辺車両3Dの退避行動Yd4の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Dの該退避行動Yd4時の自動運転レベルであるレベル2に対応する車両係数「4」と、退避行動Yd4である加速しながら車線変更に対応する行動係数「2」と、の乗算値である「8」を、周辺車両3Dの退避行動Yd4の行動難易度係数として計算する。
【0107】
また、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Dに含まれる緊急車両2の回避行動X4の行動難易度係数を、車両係数DB16Aおよび行動係数DB16Bを用いて計算する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、緊急車両2に対応する車両係数「7」と、回避行動X4である車線変更に対応する行動係数「1」と、の乗算値である「7」を、緊急車両2の回避行動X4の行動難易度係数として計算する。
【0108】
そして、退避回避行動制御部10Gは、行動候補Dを構成する、周辺車両3Cの退避行動Yc4の行動難易度係数「2」と、周辺車両3Eの退避行動Ye4の行動難易度係数「3」と、周辺車両3Dの退避行動Yd4の行動難易度係数「8」と、緊急車両2の回避行動X4の行動難易度係数「7」と、の合計値である「20」を行動候補Dの総合難易度として計算する。
【0109】
そして、退避回避行動制御部10Gは、総合難易度の最も低い1つの行動候補に含まれる退避行動を表す退避行動情報、および該行動候補に含まれる回避行動を表す回避行動情報を生成する。
【0110】
例えば、退避回避行動制御部10Gが、複数の行動候補として行動候補A~行動候補Dを生成し、行動候補ごとに上記の総合難易度を計算した場面を想定する。この場合、退避回避行動制御部10Gは、行動候補A~行動候補Dの内、総合難易度の最も低い行動候補Cを選定する。
【0111】
退避回避行動制御部10Gは、総合難易度の最も低い行動候補Cを選定することで、複数の周辺車両3に対して、対応可能な運転自動化レベルが高いほどより高度であり、対応可能な運転自動化レベルが低いほどより低度である退避行動内容の退避行動の割り当てられた1つの行動候補を選定する。すなわち、退避回避行動制御部10Gは、手動運転車両と自動運転車両の混在する環境下において、手動運転車両も含めた各周辺車両3に対して、対応可能な自動運転レベルに応じた最適な退避行動を選定することができる。
【0112】
そして、退避回避行動制御部10Gは、選定した行動候補Cによって表される退避行動を表す退避行動情報、および該行動候補に含まれる回避行動を表す回避行動情報を生成する。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、退避行動の内容を表す退避行動内容、退避行動時の自動運転レベル、および該退避行動を行う対象の周辺車両3の周辺車両ID、を含む退避行動情報を生成する。また、退避回避行動制御部10Gは、緊急車両2による回避行動の内容を表す回避行動内容を含む回避行動情報を生成する。
【0113】
具体的には、行動候補Cは、
図5Cを用いて説明したように、周辺車両3Cについて対応可能なレベル4の自動運転レベルで隣の車線へ車線変更する退避行動Yc3と、周辺車両3Bについて対応可能なレベル1の自動運転レベルで隣の車線へ車線変更する退避行動Yb3と、周辺車両3Dについて対応可能なレベル2の自動運転レベルで加速する退避行動Yd3と、の組み合わせからなる。また、行動候補Cでは、周辺車両3A、および周辺車両3Eは退避行動を行わず、緊急車両2は回避行動を行わない。
【0114】
このため、この場合、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Cに対する退避行動情報として、周辺車両3Cの周辺車両IDと、退避行動Yc3の内容として車線変更を表す退避行動内容と、該退避行動時の自動運転レベルとしてレベル4と、を表す情報を含む退避行動情報を生成する。また、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Bに対する退避行動情報として、周辺車両3Bの周辺車両IDと、退避行動Yb3の内容として車線変更を表す退避行動内容と、該退避行動時の自動運転レベルとしてレベル1と、を表す情報を含む退避行動情報を生成する。また、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Dに対する退避行動情報として、周辺車両3Dの周辺車両IDと、退避行動Yd3の内容として加速を表す退避行動内容と、該退避行動時の自動運転レベルとしてレベル2と、を表す情報を含む退避行動情報を生成する。
【0115】
なお、行動候補Cでは、周辺車両3A、および周辺車両3Eは退避行動を行わず、緊急車両2は回避行動を行わない。このため、退避回避行動制御部10Gは、周辺車両3Aおよび周辺車両3Eに対する退避行動情報を生成しなくてよい。また、退避回避行動制御部10Gは、緊急車両2に対する回避行動情報を生成しなくてよい。なお、退避行動、または、回避行動を行わない場合は、現在の走行状態を維持する、という内容の退避行動情報、または、回避行動情報を生成することとしてもよい。
【0116】
なお、選定した1つの行動候補に緊急車両2に対する回避行動が含まれる場合、退避回避行動制御部10Gは、選定した該行動候補に示される緊急車両2の回避行動の内容を表す回避行動内容情報を含む回避行動情報を生成すればよい。
【0117】
【0118】
退避回避行動制御部10Gは、生成した退避行動情報を周辺車両3へ通知する。
【0119】
詳細には、退避回避行動制御部10Gは、生成した退避行動情報をメッセージ生成部10Eへ出力する。メッセージ生成部10Eは、退避回避行動制御部10Gから受付けた退避行動情報と、メッセージの送信元の緊急車両2の識別情報である緊急車両IDと、を含むメッセージを生成する。無線通信部10Cは、路車間通信または車車間通信を行うことで、メッセージ生成部10Eで生成されたメッセージを周辺車両3へ送信する。
【0120】
このため、退避行動情報を含むメッセージを受信した周辺車両3は、自車両を識別する周辺車両IDを含む退避行動情報に含まれる退避行動内容によって表される内容の退避行動を、該退避行動情報に含まれる退避行動時の自動運転レベルで実行することで、退避行動を行う(詳細後述)。
【0121】
また、退避回避行動制御部10Gは、生成した回避行動情報を車両駆動制御部11および出力部12の少なくとも一方へ出力する。
【0122】
車両駆動制御部11は、緊急車両2に設けられた駆動部を制御する。駆動部は、緊急車両2の走行を実現するための駆動機構である。車両駆動制御部11の制御によって駆動部が駆動する。例えば、車両駆動制御部11は、緊急車両2を自動運転するために、緊急車両2に設けられた内界センサまたは撮影装置などの外界センサから得られる情報に基づいて、緊急車両2の駆動部を制御する。緊急車両2の駆動部の駆動によって、緊急車両2のアクセル量、ブレーキ量、操舵角などが制御される。このため、車両駆動制御部11が駆動部を制御することで、周辺車両3の自動運転が制御される。
【0123】
例えば、退避回避行動制御部10Gが、生成した回避行動情報を車両駆動制御部11へ出力した場合を想定する。この場合、車両駆動制御部11は、退避回避行動制御部10Gから受付けた回避行動情報によって表される回避行動に沿った走行経路を走行するように、駆動部を制御する。このため、緊急車両2は、退避回避行動制御部10Gによって選定された行動候補によって表される緊急車両2の回避行動に沿って自動走行する。
【0124】
また、例えば、退避回避行動制御部10Gが、生成した回避行動情報を出力部22へ出力した場面を想定する。この場合、緊急車両2のドライバは、出力部22から画像および音声の少なくとも一方として出力された回避行動情報に沿って走行するように、ステアリングの操作量、アクセルペダル、およびブレーキペダルの操作量を調整する。これらの操作により、緊急車両2は、退避回避行動制御部10G退避回避行動制御部10Gによって選定された行動候補によって表される緊急車両2の回避行動に沿ってドライバの手動により走行する。
【0125】
また、上述したように、退避回避行動制御部10Gで選定した1つの行動候補に緊急車両2に対する回避行動が含まれない場合には、退避回避行動制御部10Gは、回避行動情報を生成せず、車両駆動制御部11および出力部12へも出力しない。このため、この場合、周辺車両3は、回避行動を行わず現在の走行経路を変更することなく走行する。また、現状の走行状態を維持する、という内容の回避行動情報を生成する場合は、回避行動情報に基づいて自動運転により現状の走行状態を維持する、もしくは、現状の走行状態を維持するように出力部に出力しドライバの手動により走行する。
【0126】
次に、周辺車両3の詳細を説明する。
【0127】
図6は、周辺車両3の機能的構成の一例を示す模式図である。
【0128】
周辺車両3は、走行支援装置20と、車両駆動制御部21と、出力部22と、を備える。
【0129】
車両駆動制御部21は、周辺車両3に設けられた駆動部を制御する。車両駆動制御部21の詳細は後述する。
【0130】
出力部22は、周辺車両3に設けられた出力装置の一例である。出力部22は、周辺車両3の運転者が確認可能な形態で情報を出力する機構である。出力部22は、出力部12と同様である。具体的には、出力部22は、周辺車両3に設けられたHMIであってよい。また、出力部22は、走行支援装置20の筐体(図示せず)に配置され、周辺車両3の運転者が確認可能な情報を含む電気信号を出力するコネクタと捉えることも可能である。この場合、出力部22は、
図6の構成とは異なり、走行支援装置20に含まれることになる。
【0131】
走行支援装置20は、GNSSインターフェース20Aと、車両情報インターフェース20Bと、無線通信部20Cと、制御部20Dと、を備える。
【0132】
制御部20Dは、メッセージ生成部20E、メッセージ解析部20F、退避行動制御部20Gなどの機能部を備える。
【0133】
上述した機能部の一部または全ては、プロセッサとメモリに記憶された各種プログラムとの協働により実現されるソフトウェア構成であってもよい。また、上述した機能部の一部または全ては、専用回路等で実現されるハードウェア構成であってもよい。
【0134】
GNSSインターフェース20Aは、周辺車両3に搭載された計測装置と通信するインターフェースである。GNSSインターフェース20Aは、計測装置から、周辺車両3である自車両の車速情報、自車両の車両位置情報、自車両の走行方向情報、などを取得する。
【0135】
車両情報インターフェース20Bは、周辺車両3に搭載された電子機器と通信するインターフェースである。車両情報インターフェース20Bは、電子機器から、自車両の車両状態情報を取得する。車両情報インターフェース20Bが取得する車両状態情報は、自車両が緊急車両2に替えて周辺車両3である点以外は、緊急車両2の車両情報インターフェース10Bと同様である。すなわち、車両情報インターフェース20Bは、目的地、目的地から現在位置までの範囲を含む地図情報、現在位置から目的地までの走行経路を表す走行経路情報、などを含むナビゲーション情報を受信する。
【0136】
GNSSインターフェース20Aおよび車両情報インターフェース20Bは、周辺車両3である自車両の車速情報、自車両の車両位置情報、自車両の走行方向情報、および自車両の走行経路情報、を含む車両情報を退避行動制御部20Gへ出力する。GNSSインターフェース20Aおよび車両情報インターフェース20Bは、周辺車両3に搭載された電子機器など装置各部へ電力が供給されると、周辺車両3である自車両の車速情報、自車両の車両位置情報、自車両の走行方向情報、および自車両の走行経路情報、を含む車両情報を、電子機器などから継続して受付ける。GNSSインターフェース20Aおよび車両情報インターフェース20Bは、受付けた車両情報を退避行動制御部20Gへ順次出力する。
【0137】
メッセージ生成部20Eは、退避行動制御部20Gで生成された周辺車両情報を用いて、緊急車両2へ送信するメッセージを生成する。
【0138】
例えば、メッセージ生成部20Eによって生成されるメッセージは、周辺車両情報を含む。詳細には、メッセージ生成部20Eによって生成されるメッセージは、該メッセージの送信元の周辺車両3の識別情報である周辺車両IDと、周辺車両情報と、を含む。
【0139】
無線通信部20Cは、路車間通信または車車間通信を行うことで、メッセージ生成部20Eで生成されたメッセージを緊急車両2へ送信する。また、無線通信部10Cは、路車間通信または車車間通信を行うことで、緊急車両2から送信されたメッセージを受信する。
【0140】
上述したように、緊急車両2の走行支援装置10は、退避行動情報を含むメッセージを周辺車両3へ送信する。このため、無線通信部20Cは、退避行動情報を含むメッセージを緊急車両2から受信する。
【0141】
メッセージ解析部20Fは、無線通信部20Cで緊急車両2から受信したメッセージを解析する。メッセージ解析部20Fは、無線通信部20Cで退避行動情報を含むメッセージを受信するごとに、該メッセージを退避行動制御部20Gへ出力する。
【0142】
退避行動制御部20Gは、GNSSインターフェース20Aおよび車両情報インターフェース20Bから自車両である周辺車両3の車両情報を取得する。
【0143】
退避行動制御部20Gは、自車両である周辺車両3の対応可能運転レベル情報と、周辺車両3の車両情報と、周辺車両3の周辺車両IDと、を含む周辺車両情報を、緊急車両2へ送信する。
【0144】
例えば、退避行動制御部20Gは、GNSSインターフェース20Aおよび車両情報インターフェース20Bから取得した、自車両である周辺車両3の車速情報、周辺車両3の車両位置情報、周辺車両3の走行方向情報、および周辺車両3の走行経路情報、を含む周辺車両3の車両情報を特定する。
【0145】
また、退避行動制御部20Gは、周辺車両3の対応可能運転レベル情報を取得する。退避行動制御部20Gは、周辺車両3に設けられたECU(Electronic Control Unit)または記憶部等から、自車両である周辺車両3の対応可能運転レベル情報を取得すればよい。また、退避行動制御部20Gは、自車両である周辺車両3の現在の自動運転レベルを表す現在運転レベル情報を、周辺車両3のECU等から更に取得してもよい。
【0146】
また、退避行動制御部20Gは、自車両である周辺車両3の周辺車両IDを特定する。周辺車両IDは、周辺車両3を識別可能な情報であればよい。周辺車両IDは、例えば、周辺車両3のナンバープレートに記載されている番号である車両番号などであるが、この番号に限定されない。
【0147】
そして、退避行動制御部20Gは、特定または取得した、自車両である周辺車両3の車両情報、周辺車両3の対応可能運転レベル情報、および周辺車両ID、を含む周辺車両情報を、メッセージ生成部20Eへ出力する。メッセージ生成部20Eは、退避行動制御部20Gから受付けた周辺車両情報と、自車両である周辺車両3の周辺車両IDと、を含むメッセージを、緊急車両2へ送信する。
【0148】
なお、退避行動制御部20Gは、緊急車両2から情報収集要求メッセージを受信したときに、周辺車両情報を含むメッセージをメッセージ生成部20Eおよび無線通信部20Cを介して緊急車両2へ送信してよい。
【0149】
また、退避行動制御部20Gは、自車両である周辺車両3に設けられた計測機器等によって緊急車両2の接近を検知したときに、周辺車両情報を含むメッセージをメッセージ生成部20Eおよび無線通信部20Cを介して緊急車両2へ送信してもよい。
【0150】
また、退避行動制御部20Gは、自車両である周辺車両3の周辺の他車両(周辺車両3)の周辺車両情報を更に取得してもよい。例えば、退避行動制御部20Gの搭載された自車両である周辺車両3の周辺の他車両がV2Xに非対応の車両である場合がある。この場合、退避行動制御部20Gが、周辺車両3に設けられた機器により周辺車両3の周囲の他車両を検知することで該他車両の周辺車両情報を生成し、自車両の周辺車両情報と共に緊急車両2へ送信してよい。なお、退避行動制御部20Gは、自車両である周辺車両3の周辺の他車両から対応可能運転レベル情報を取得出来なかった場合、該他車両の対応可能運転レベル情報として、運転自動化レベルの最も低い取得運転レベルを表すレベル0、すなわち手動運転を表すレベルを設定し、緊急車両2へ送信すればよい。
【0151】
退避行動制御部20Gは、緊急車両2で生成された退避行動情報を取得する。
【0152】
詳細には、退避行動制御部20Gは、緊急車両2から無線通信部20Cおよびメッセージ解析部20Fを介して受信したメッセージに含まれる退避行動情報を取得する。退避行動情報は、上述したように、周辺車両3の周辺車両IDと、退避行動の内容を表す退避行動内容と、該退避行動時の自動運転レベルと、を表す情報を含む。
【0153】
退避行動制御部20Gは、取得した退避行動情報を、出力部22、および車両駆動制御部21の少なくとも一方に出力する。
【0154】
上述したように、本実施形態では、緊急車両2の無線通信部10Cおよび周辺車両3の無線通信部20Cは、退避行動情報を含むメッセージを、車両同士が直接通信を行うサイドリンク方式により通信する形態を一例として説明する。このため、退避行動制御部20Gが取得する退避行動情報は、該退避行動制御部20Gを搭載した周辺車両3に対して送信された退避行動情報である。このため、退避行動制御部20Gは、取得した退避行動情報を、出力部22、および車両駆動制御部21の少なくとも一方に出力する。
【0155】
また、緊急車両2の無線通信部10Cおよび周辺車両3の無線通信部20Cは、退避行動情報を含むメッセージを、基地局を経由して広範囲に通信するようにしてもよい。この場合、退避行動制御部20Gは、取得したメッセージまたは該メッセージに含まれる退避行動情報に規定されている周辺車両IDが、該退避行動制御部20Gの搭載された自車両である周辺車両3の識別情報と一致する場合、該退避行動情報を、出力部22および車両駆動制御部21の少なくとも一方に出力すればよい。また、緊急車両2の無線通信部10Cおよび周辺車両3の無線通信部20Cは、ブロードキャスト送信によりメッセージを通信してもよい。
【0156】
車両駆動制御部21は、周辺車両3に設けられた駆動部を制御する。この駆動部は、周辺車両3の走行を実現するための駆動機構である。車両駆動制御部21の制御によって駆動部が駆動する。例えば、車両駆動制御部21は、周辺車両3を自動運転するために、周辺車両3に設けられた内界センサまたは撮影装置などの外界センサから得られる情報に基づいて、周辺車両3の駆動部を制御する。周辺車両3の駆動部の駆動によって、周辺車両3のアクセル量、ブレーキ量、操舵角などが制御される。
【0157】
例えば、退避行動制御部20Gが、退避行動情報を車両駆動制御部21へ出力した場合を想定する。この場合、退避行動制御部20Gは、退避行動制御部20Gから受付けた退避行動情報に含まれる退避行動内容によって表される退避行動を、該退避行動情報に含まれる該退避行動時の自動運転レベルで実行するように、駆動部を制御する。このため、周辺車両3は、退避行動情報によって表される自動運転レベルで、退避行動情報に含まれる退避駆動内容によって表される退避行動を実行するように走行する。
【0158】
また、退避行動制御部20Gが、退避行動情報を出力部22へ出力した場面を想定する。この場合、周辺車両3のドライバは、出力部22から画像および音声の少なくとも一方として出力された退避行動情報に沿って走行するように、ステアリングの操作量、アクセルペダル、およびブレーキペダルの操作量を調整する。これらの操作により、周辺車両3は、緊急車両2から取得した退避行動情報に沿ってドライバの手動により走行する。
【0159】
また、緊急車両2から退避行動情報を含むメッセージを受信しない場合、退避行動制御部20Gは、退避行動を行わずに走行経路を変更することなく走行する。また、緊急車両2で現状の走行状態を維持する、という内容の退避行動情報を生成し、そのメッセージを受信した場合も、自動運転もしくは手動運転により現状の走行状態を維持する。
【0160】
次に、周辺車両3の走行支援装置10が実行する情報処理の流れを説明する。
【0161】
図7は、周辺車両3の走行支援装置10が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0162】
周辺車両3の走行支援装置10の退避回避行動制御部10Gは、GNSSインターフェース10Aおよび車両情報インターフェース10Bから自車両である緊急車両2の車両情報を取得する(ステップS100)。
【0163】
また、退避回避行動制御部10Gは、自車両である緊急車両2の周辺の周辺車両3から、周辺車両3の周辺車両情報を取得する(ステップS102)。
【0164】
次に、退避回避行動制御部10Gは、退避行動および回避行動が必要であるか否かを判断する(ステップS104)。退避回避行動制御部10Gは、ステップS100で取得した自車両である緊急車両2の車両情報と、ステップS102で周辺車両3から取得した周辺車両情報に含まれる周辺車両3の車両情報と、を用いて、緊急車両2が周辺車両3を回避する回避行動を行わず、且つ、周辺車両3が緊急車両2から退避する退避行動を行わずに走行を継続可能か判断する。
【0165】
退避行動および回避行動が必要ではないと判断した場合(ステップS104:No)、本ルーチンを終了する。すなわち、ステップS104で否定判断した場合、緊急車両2は、現在の走行経路を変更することなく走行を継続する。また、緊急車両2は、現在の走行状態を維持するように周辺車両3に更に指示する構成としてもよい。
【0166】
退避行動および退避行動の少なくとも一方が必要であると判断した場合(ステップS104:Yes)、ステップS106へ進む。
【0167】
ステップS106では、退避回避行動制御部10Gは、緊急車両2の走行経路を確保するための、周辺車両3の退避行動および緊急車両2の回避行動の組み合わせの異なる複数の行動候補を生成する(ステップS106)。退避回避行動制御部10Gは、ステップS102で取得した複数の周辺車両情報によって表される複数の周辺車両3の各々について、周辺車両情報に含まれる対応可能運転レベル情報によって表される運転自動化レベルごとに、運転自動化レベルが高いほどより高度な退避行動内容の退避行動を特定する。また、退避回避行動制御部10Gは、複数の周辺車両3の各々について、周辺車両3の対応可能運転レベル情報によって表される運転自動化レベルごとに、運転自動化レベルが低いほどより低度な退避行動内容の退避行動を特定する。そして、退避回避行動制御部10Gは、複数の周辺車両3の各々の退避行動と、緊急車両2の回避行動と、の組み合わせの異なる複数の行動候補を生成する。
【0168】
次に、退避回避行動制御部10Gは、ステップS106で生成した複数の行動候補の内、総合難易度の最も低い1つの行動候補を選定する(ステップS108)。
【0169】
そして、退避回避行動制御部10Gは、ステップS108で選定した総合難易度の最も低い1つの行動候補に含まれる退避行動を表す退避行動情報、および該行動候補に含まれる回避行動を表す回避行動情報を生成する(ステップS110)。詳細には、退避回避行動制御部10Gは、ステップS108で選定した総合難易度の最も低い1つの行動候補によって表される、退避行動の内容を表す退避行動内容、退避行動時の自動運転レベル、および該退避行動を行う対象の周辺車両3の周辺車両ID、を含む退避行動情報を生成する。また、退避回避行動制御部10Gは、該行動候補によって表される、緊急車両2による回避行動の内容を表す回避行動内容を含む回避行動情報を生成する。
【0170】
そして、退避回避行動制御部10Gは、ステップS110で生成した退避行動情報を周辺車両3へ通知する(ステップS112)。また、退避回避行動制御部10Gは、ステップS110で生成した回避行動情報を自車両である緊急車両2の車両駆動制御部11および出力部12の少なくとも一方へ出力する。ステップS114の処理によって、自車両である緊急車両2は、ステップS110で生成した回避行動情報によって表される回避行動に沿った経路を走行する。そして、本ルーチンを終了する。また、現状の走行状態を維持する、という内容の退避行動情報・回避行動情報を生成する場合は、S104でNoと判断された後、S110、S112、S114と同等のステップにおいて、それぞれ、現状の走行状態を維持するという内容の退避行動情報・回避行動情報を生成し、周辺車両3への通知と、回避行動情報の出力を行う。
【0171】
次に、周辺車両3の走行支援装置20で実行する情報処理の流れの一例を説明する。
【0172】
図8は、周辺車両3の走行支援装置20で実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0173】
周辺車両3の走行支援装置20の退避行動制御部20Gは、GNSSインターフェース20Aおよび車両情報インターフェース20Bから自車両である周辺車両3の車両情報を取得する(ステップS200)。
【0174】
退避行動制御部20Gは、自車両である周辺車両3の対応可能運転レベル情報と、ステップS200で取得した周辺車両3の車両情報と、周辺車両3の周辺車両IDと、を含む周辺車両情報を、緊急車両2へ送信する(ステップS202)。
【0175】
次に、退避行動制御部20Gは、緊急車両2から退避行動情報を取得したか否かを判断する(ステップS204)。退避行動制御部20Gは、退避行動情報を含むメッセージを、メッセージ解析部20Fおよび無線通信部20Cを介して緊急車両2から受信したか否かを判別することで、ステップS204の判断を行う。ステップS204で否定判断すると(ステップS204:No)、現在設定されている走行経路を変更することなく走行を継続し、本ルーチンを終了する。
【0176】
ステップS204で肯定判断すると(ステップS204:Yes)、ステップS206へ進む。ステップS206では、退避行動制御部20Gは、緊急車両2から取得した退避行動情報に含まれる退避行動内容によって表される退避行動を、ステップS204で取得した該退避行動情報に含まれる該退避行動時の自動運転レベルで実行するように、制御する(ステップS206)。詳細には、退避行動制御部20Gは、ステップS204で取得した退避行動情報を車両駆動制御部21および出力部22の少なくとも一方へ出力する。この制御により、車両駆動制御部21による制御または周辺車両3の運転者による操作により、周辺車両3は、ステップS204で取得した退避行動情報に含まれる退避行動内容によって表される退避行動を、該退避行動情報に含まれる該退避行動時の自動運転レベルで実行する。すなわち、周辺車両3は、退避行動情報によって表される退避行動に沿った経路を、該退避行動情報によって表される自動運転レベルで走行する。そして、本ルーチンを終了する。
【0177】
以上説明したように、本実施形態の緊急車両2の走行支援装置10で実行される車両制御方法は、緊急車両2(車両)の周辺の周辺車両3(他車両)の対応可能な自動運転レベルを表す対応可能運転レベル情報を含む周辺車両情報を取得し、周辺車両情報に基づいて、周辺車両3(他車両)の緊急車両2(車両)からの退避行動を表す退避行動情報、および緊急車両2(車両)の周辺車両3(他車両)からの回避行動を表す回避行動情報を生成し、退避行動情報を周辺車両3(他車両)へ通知し、回避行動情報を緊急車両2(車両)に出力する。
【0178】
このように、本実施形態の緊急車両2では、周辺車両3の対応可能な自動運転レベルを表す対応可能運転レベル情報を含む周辺車両情報を取得し、周辺車両情報に基づいて、周辺車両3の退避行動を表す退避行動情報、および緊急車両2の回避行動を表す回避行動情報を生成する。
【0179】
このため、本実施形態の車両制御方法は、周辺車両3の対応可能な自動運転レベルに応じて、効率よく退避および回避させるための最適な退避行動情報および回避行動情報を生成することができる。よって、本実施形態の車両制御方法は、より効率的な緊急車両2の走行支援が可能となる。
【0180】
従って、本実施形態の車両制御方法は、車両の効率良い走行を支援することができる。
【0181】
次に、本実施形態の走行支援装置10および走行支援装置20のハードウェア構成について説明する。
【0182】
図9は、制御部10D又は制御部20Dのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0183】
制御部10D又は制御部20Dは、CPU(Central Processing Unit)11A、ROM(Read Only Memory)11B、RAM(Random Access Memory)11C、および各種機器に接続するためのI/F11D、等がバス11Eにより相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0184】
CPU11Aは、制御部10D又は制御部20Dの全体の処理を制御する演算装置である。RAM11Cは、CPU11Aによる各種処理に必要なデータを記憶する。ROM11Bは、CPU11Aによる各種処理を実現するプログラム等を記憶する。I/F11Dは、外部装置や外部端末に通信回線等を介して接続し、接続した外部装置や外部端末との間でデータを送受信するためのインターフェースである。
【0185】
制御部10D又は制御部20Dで実行される上記各種処理を実行するためのプログラムは、ROM11B等に予め組み込んで提供される。本実施形態で実行される車両制御方法を実行するためのプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供するように構成してもよい。
【0186】
また、本実施形態で実行される車両制御方法を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態で実行される車両制御方法を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0187】
本開示の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態は、発明の範囲および要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0188】
2 緊急車両
3 周辺車両
10 走行支援装置
10G 退避回避行動制御部
20 走行支援装置
20G 退避行動制御部