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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121152
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】解析方法、及び解析装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028094
(22)【出願日】2023-02-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日:令和4年3月1日 ウェブサイトのアドレス: https://gakkai-web.net/p/iee/ippan/mod2.php https://gakkai-web.net/p/iee/smp/mod2.php https://gakkai-web.net/p/iee/reg/mod2.php 公開者:志村勇一、高木育博、岩村一昭、中西要祐、鈴木亮平、藤本久 公開された発明の内容:「確率潮流計算を用いた高速な想定事故解析の検討」 [刊行物等] 開催日:令和4年3月21日(至:令和4年3月23日) 集会名、開催場所:令和4年電気学会全国大会 公開者:志村勇一、高木育博、岩村一昭、中西要祐、鈴木亮平、藤本久 公開された発明の内容:「確率潮流計算を用いた高速な想定事故解析の検討」 [刊行物等] ウェブサイトの掲載日:令和4年8月26日 ウェブサイトのアドレス: 「令和4年 電気学会 電力・エネルギー部門大会」の参加者がアクセス可能に設けられた大会専用のウェブサイトに設置された、ダウンロード専用リンク(大会専用のウェブサイトは令和4年9月末に閉鎖されている) 公開者:志村勇一、岩村一昭、中西要祐、鈴木亮平、藤本久 公開された発明の内容:「確率潮流計算を用いた想定事故解析の高速化についての一検討」 [刊行物等] 開催日:令和4年9月7日(至:令和4年9月9日) 集会名、開催場所:令和4年 電力・エネルギー部門大会 公開者:志村勇、岩村一昭、中西要祐、鈴木亮平、藤本久 公開された発明の内容:「確率潮流計算を用いた想定事故解析の高速化についての一検討」 [刊行物等] ウェブサイトの掲載日:令和4年6月14日 ウェブサイトのアドレス:https://www.waseda.jp/fsci/weri/assets/uploads/2022/06/71bd689dc9d97fd076d832950cb0e653.pdf 公開者:中西要祐、中垣隆雄、滝沢研二、小野田弘士 公開された発明の内容:「確率的潮流計算手法の研究」
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮平
(72)【発明者】
【氏名】藤本 久
(72)【発明者】
【氏名】中西 要祐
(72)【発明者】
【氏名】岩村 一昭
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA01
5G066AA03
5G066AE04
5G066AE09
(57)【要約】
【課題】出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上を含む電力系統の潮流計算の計算量を減らす。
【解決手段】本発明の1つの態様に係る解析方法は、出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上を含む電力系統に関するデータに基づいて、感度法におけるLODF(Line Outage Distribution Factors)のファクター係数を決定することと、電力系統に含まれている1つ以上の電源の出力、及び、1つ以上の負荷機器の負荷量の確率分布と、電力系統内の各ブランチの潮流の確率分布とを直接的に関係付ける近似モデルを決定することと、電力系統内のいずれか1つのブランチに事故が生じた後のブランチの各々の潮流の確率分布を、ファクター係数、及び近似モデルに基づいて算出することと、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上を含む電力系統に関するデータに基づいて、感度法におけるLODF(Line Outage Distribution Factors)のファクター係数を決定することと、
前記電力系統に含まれている前記1つ以上の電源の出力、及び、前記1つ以上の負荷機器の負荷量の確率分布と、前記電力系統内の各ブランチの潮流の確率分布とを直接的に関係付ける近似モデルを決定することと、
前記電力系統内のいずれか1つの前記ブランチに事故が生じた後の前記ブランチの各々の潮流の確率分布を、前記ファクター係数、及び前記近似モデルに基づいて算出することと、
を含む解析方法。
【請求項2】
前記近似モデルは、
それぞれが直交多項式系に属し、かつ、前記電力系統のトポロジーに応じた重みがそれぞれ重み係数によって与えられる複数の基底関数の線形結合で表された関数である、
請求項1に記載の解析方法。
【請求項3】
前記電力系統内のいずれか1つの前記ブランチに事故が生じた後の前記ブランチの各々の潮流の確率分布を、前記ファクター係数、及び前記近似モデルに基づいて算出することは、
前記電力系統内のいずれか1つの前記ブランチに事故が生じた後の前記電力系統のトポロジーに対応する前記重み係数の行列を、前記事故が発生する前に対応する前記重み係数の行列と、前記ファクター係数とに基づいて決定することと、
前記電力系統内のいずれか1つの前記ブランチに事故が生じた後の前記電力系統のトポロジーに対応する前記重み係数の行列と、前記複数の基底関数の行列との行列演算によって、前記電力系統内のいずれか1つの前記ブランチに事故が生じた後の前記ブランチの各々の潮流の確率分布を算出すること、
を含む請求項2に記載の解析方法。
【請求項4】
前記近似モデルは、多項式カオス展開に基づく関数である、
請求項2または請求項3に記載の解析方法。
【請求項5】
出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上を含む電力系統に関するデータに基づいて、感度法におけるLODF(Line Outage Distribution Factors)のファクター係数を決定するファクター係数決定部と、
前記電力系統に含まれている前記1つ以上の電源の出力、及び、前記1つ以上の負荷機器の負荷量の確率分布と、前記電力系統内の各ブランチの潮流の確率分布とを直接的に関係付ける近似モデルを決定する近似モデル決定部と、
前記電力系統内のいずれか1つの前記ブランチに事故が生じた後の前記ブランチの各々の潮流の確率分布を、前記ファクター係数、及び前記近似モデルに基づいて算出する確率潮流計算部と、
を含む解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析方法、及び解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統内の潮流、及び電圧等を算出する潮流計算が知られている。潮流計算の手法は、一般に、交流潮流計算と直流潮流計算に分類される。交流潮流計算は、非線形方程式で表される電力方程式を厳密に解くことにより潮流を求める手法であり、一例として、非線形方程式の解を反復的な収束計算により求めるニュートン法が知られている。直流潮流計算は交流潮流計算を単純な線形理論間題に変換することにより潮流の近似値を高速に計算する手法であり、その応用の一例として、非特許文献1に示された感度法が知られている。
【0003】
また、1以上の送電線が切断される等の事故が電力系統に発生した場合、電力系統の各送電線に流れる電力潮流は事故発生の前後で大きく変化し、当該変化の影響により、電力系統内の送電線、及びバンク等の損傷を招く虞がある。この対策として、想定事故解析手法を用いて事故発生の前後の潮流を推定し、電力系統の信頼度を事前に定量的に評価することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
一般に、想定事故解析では、事故発生の前、及び後のそれぞれにおける潮流断面について、想定事故ごとに上述の潮流計算が行われる。実際の電力系統を対象とする想定事故解析では想定事故の数が膨大となる。特に、想定事故解析が電力系統を監視する監視制御装置などに用いられる場合には、監視制御装置は、想定事故解析によって事故後の数多くの系統状態を短時間に処理し、速やかにアラーム処理をする必要がある。そこで、想定事故解析には、計算の高速化が可能な上述の直流潮流計算に基づく感度法が広く用いられる。特許文献1、及び非特許文献2には、感度法と分散並列処理とを併用することによって想定事故解析の更なる高速化を図ること、並びに、感度法を用いることによって想定事故発生の前後の潮流を簡易な線形計算で推定すること、が示されている。
【0004】
一方、特許文献2、及び特許文献3には、確率論的な手法を用いて潮流を計算する確率潮流計算として、負荷量などの物理量の値が正規分布をしていると仮定して潮流を計算する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-270477号公報
【特許文献2】特開2003-37937号公報
【特許文献3】特開2005-57821号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Allen J. Wood, Bruce F. Wollenberg, Gerald B. Sheble, “Wollenberg, Power Generation, Operation, and Control 3rd Edition”,Wiley-Interscience,2013
【非特許文献2】北川慎治, 他2名, “分散並列処理を用いた想定事故解析の高速化に関する検討”,電気学会研究会資料.PE, 電力技術研究会, 1999年9月30日, 1999(151), p.65-70
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電力系統には、再生可能エネルギーに基づく多くの電源が導入され始めている。再生可能エネルギーの代表的な例には、太陽光、及び風力などの自然エネルギーが挙げられ、当該再生可能エネルギーの出力は、天候等の自然現象によって変動する。したがって、再生可能エネルギーの出力変動により電力系統の不安定化が懸念され、当該電力系統の潮流を推定し、また、信頼度を事前に評価することは非常に重要である。
【0008】
しかしながら、従来の技術では、再生可能エネルギーに基づく電力を発生する電源を含む電力系統を対象とした潮流計算に膨大な計算量を要し、そのため計算時間等の多くのコストが費やされる、といった問題がある。
【0009】
詳述すると、自然現象に起因する再生可能エネルギーの出力の変動は確率的あり、出力変動に不確定性を有するものの、その確率分布は、特許文献2、及び特許文献3で用いられている正規分布から乖離する。したがって、特許文献2、及び特許文献3の確率潮流計算では、再生可能エネルギーに基づき電力を発生する電源を含む電力系統の潮流が正確には算出されない、という問題がある。この問題の対応策として、モンテカルロ法を特許文献2、及び特許文献3の確率潮流計算に導入することが考えられる。しかしながら、モンテカルロ法によって十分な精度を得るためには、再生可能エネルギーの出力の変動について数万から数十万点の計算点が必要となる。そして、確率潮流計算では、各計算点について潮流計算が行われるため、計算量は膨大なものとなる。
【0010】
また、再生可能エネルギーに基づく電力を発生する電源を含む電力系統を対象に信頼度を評価する場合、上述の想定事故解析が行われる。しかしながら、想定事故解析においては想定事故の数のだけ潮流計算が必要であるため、膨大な計算量が更に増加し、上述した計算時間等のコストの問題が、より顕著なものとなる。
【0011】
なお、上述の問題は、出力に不確定性を有する1つ以上の電源に限らず、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器を電力系統が含む場合でも同様に生じる。
【0012】
本開示は、出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上を含む電力系統の潮流計算の計算量を減らすことができる解析方法、及び解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の1つの態様に係る解析方法は、出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上を含む電力系統に関するデータに基づいて、感度法におけるLODF(Line Outage Distribution Factors)のファクター係数を決定することと、前記電力系統に含まれている前記1つ以上の電源の出力、及び、前記1つ以上の負荷機器の負荷量の確率分布と、前記電力系統内の各ブランチの潮流の確率分布とを直接的に関係付ける近似モデルを決定することと、前記電力系統内のいずれか1つの前記ブランチに事故が生じた後の前記ブランチの各々の潮流の確率分布を、前記ファクター係数、及び前記近似モデルに基づいて算出することと、を含む。
【0014】
本開示の1つの態様に係る解析装置は、出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上を含む電力系統に関するデータに基づいて、感度法におけるLODF(Line Outage Distribution Factors)のファクター係数を決定するファクター係数決定部と、前記電力系統に含まれている前記1つ以上の電源の出力、及び、前記1つ以上の負荷機器の負荷量の確率分布と、前記電力系統内の各ブランチの潮流の確率分布とを直接的に関係付ける近似モデルを決定する近似モデル決定部と、前記電力系統内のいずれか1つの前記ブランチに事故が生じた後の前記ブランチの各々の潮流の確率分布を、前記ファクター係数、及び前記近似モデルに基づいて算出する確率潮流計算部と、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示の1つの態様によれば、出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上を含む電力系統の潮流計算の計算量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施形態に係る解析装置の電気的構成の一例を示す図である。
図2】電力系統の一例を示す図である。
図3】解析装置における確率潮流計算処理の一例を示すフローチャートである。
図4】確率潮流計算の精度についての検証結果を示す図である。
図5】確率潮流計算の計算速度についての検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本開示に係る好適な形態を説明する。なお、以下の説明において、本開示を限定する旨の特段の記載がない限り、本開示の範囲は以下の説明に記載された形態に限られない。本開示の範囲は当該形態の均等の範囲を含む。
【0018】
図1は、本実施形態に係る解析装置1の電気的構成の一例を示す図である。
解析装置1は、再生可能エネルギーに基づく電力を出力する1つ以上の電源、すなわち、出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上を含む電力系統を対象に、想定事故発生の前、及び後のそれぞれの潮流断面(各ブランチの潮流の確率分布)を計算し、それぞれの潮流断面の計算結果を解析結果として出力する装置である。この解析結果は、電力系統の信頼度評価の1つである想定事故解析に用いられる。電力系統の信頼度評価は、一般に、静的信頼度評価(SSA : Static Security Assessment)、電圧信頼度評価(VSA : Voltage Security Assessment)、及び動的信頼度評価(DSA : Dynamic Security Assessment)に分類される。静的信頼度評価は電力系統内で事故が発生した際に、その事故が系統に及ぼす影響を、線路過負荷、及び電圧低下度を指標として評価するものである。電圧信頼度評価は、その事故が系統に及ぼす影響を、電圧安定度を指標として評価するものである。また、動的信頼度評価は、その事故が系統に及ぼす影響を、過渡安定度を指標として評価するものである。そして、本実施形態の解析装置1の解析結果は、信頼度評価のうちの静的信頼度評価に用いられる。
なお、以下の説明では、「再生可能エネルギーに基づく電力を発生する電源、及び、負荷量に不確定性を有する負荷機器」を「不確定性ノード」と称する。
【0019】
本実施形態の解析装置1は、確率潮流計算を実行する。加えて、解析装置1は、電力系統内の各ブランチの潮流の確率分布を、モンテカルロ法を用いた一般的な確率潮流計算によって求めることに代えて、近似モデルYを用いる。近似モデルYは、電力系統が含む各不確定性ノードの出力の確率分布と、各ブランチの潮流の確率分布とを直接的に関係付ける関数である。解析装置1は、近似モデルYを用いることにより、事故発生の前及び後のそれぞれについて、各ブランチの潮流の確率分布を求めるための計算量を大幅に削減し、計算時間等の多くのコストを大幅に削減可能とする。なお、感度法、及び近似モデルYについては、後に詳述する。
【0020】
[解析装置1の電気的、及び機能的な構成]
解析装置1は、図1に示すように、処理装置10と、記憶装置12と、入力I/F装置14と、出力I/F装置16と、を備えるコンピュータを含み、このコンピュータには、パーソナルコンピュータ、及びスーパーコンピュータ等が用いられる。
処理装置10は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの少なくとも1つのプロセッサーを含む。処理装置10の機能の一部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路によって構成されてもよい。記憶装置12は、処理装置10が読み取り可能な記録媒体である。記憶装置12は、例えば、不揮発性メモリーと揮発性メモリーとを含む。不揮発性メモリーは、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。揮発性メモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)である。入力I/F装置14は、入力機器が有線又は無線により接続される入力インターフェース回路を含む装置であり、当該外部機器からデータの入力を受け付け、受け付けたデータを処理装置10に出力する。出力I/F装置16は、出力機器が有線又は無線により接続される出力インターフェース回路を含む装置であり、処理装置10の制御により各種のデータを出力機器に出力する。入力機器の代表的な例は、キーボード、記録媒体読取装置、及び他のコンピュータである。出力機器の代表的な例は、ディスプレイ、プリンタ、記録媒体記録装置、及び他のコンピュータ等である。
【0021】
本実施形態の記憶装置12は、確率潮流計算のためのプログラムPRを記憶する。そして解析装置1は、処理装置10がプログラムPRを実行することによって、入力データ取得部100と、近似モデル決定部102と、ファクター係数決定部104と、確率潮流計算部106、結果出力部108として機能する。
入力データ取得部100は、近似モデルY、及び、感度法における後述するファクター係数dの決定に用いられる入力データを入力I/F装置14を通じて外部機器から取得する機能部である。入力データの詳細については後述する。近似モデル決定部102は近似モデルYを入力データに基づいて決定する機能部である。ファクター係数決定部104はファクター係数dを入力データに基づいて決定する機能部である。確率潮流計算部106は、電力系統内の事故発生後における各ブランチの潮流の確率分布を、ファクター係数dと、近似モデルYとに基づいて算出する。結果出力部108は、事故発生後における各ブランチの潮流の確率分布の算出結果を、出力I/F装置16を通じて出力機器に出力する機能部である。
【0022】
次いで、感度法、及び近似モデルYについて詳述する。
【0023】
[感度法]
電力系統内に事故が発生した場合、機器の損傷や事故の波及を防止するために、一般に、事故部位を高速に遮断するが、その結果、潮流、及び需給バランスが変化する。感度法は、電力系統内のある1つの送電線又はバンクが切断された場合、及び、電力系統内のある1つのノードの出力が変化した場合の各々に対し、個々の事故が潮流に与える影響を示す感度を用いて、事故発生の前後の潮流の変化を高速に計算する手法である。ある1つの送電線又はバンクの事故が各送電線の潮流変化に与える影響度を示す感度はLODF(Line Outage Distribution Factors)と呼ばれる。また、ある1つの不確定性ノードの出力又は負荷量の変化が各送電線の潮流変化に与える影響度を示す感度はGFS(Generation Shift Factors)と呼ばれる。
【0024】
本実施形態の解析装置1において、確率潮流計算部106は、LODFに基づいて事故発生後における各ブランチの潮流の確率分布を算出しており、このLODFについて次に説明する。
【0025】
[LODF]
感度法では、非線形方程式で表される電力方程式を線形方程式に変換することにより、単純な線形理論問題として取り扱い可能とするために、電力系統について次の3つの仮定が導入される。
【0026】
(仮定1)各ブランチにおける無効電力は適正値であり計算値から除外でき、なおかつ、各ブランチの抵抗はゼロであること。
(仮定2)全てのノードの電圧値は1.0[p.u.]であること。
(仮定3)各ノード間の位相角の差は十分小さいこと。
【0027】
これらの仮定により、電力方程式は次式(1)の線形方程式によって表される。
【0028】
【数1】
【0029】
また、LODFにおいて、送電線kの切断事故が送電線lの潮流変化に与える影響度を示すファクター係数dl、kは、上述の非特許文献2等に示される通り、次式(2)によって定義される。
【0030】
【数2】
【0031】
式(2)は、母線nと母線mがスラックノードではない場合、アドミタンス行列の逆行列の要素、及び、送電線k、及び送電線lのリアクタンスを用いると、次式(3)となる。
【0032】
【数3】
【0033】
そして、送電線kの事故発生後に送電線lに流れる潮流量は、式(3)を用いて次式(4)のように表現される。
【0034】
【数4】
【0035】
したがって、電力系統内の1つの送電線kに事故が発生した場合、他の送電線に流れる潮流量は、この式(4)を用いて求められる。
【0036】
[近似モデルY]
不確定性ノードが電力系統に含まれる場合、モンテカルロ法に基づく確率潮流計算を行うと計算量が膨大となる。
【0037】
加えて、上記式(4)を用いて、事故発生後における各送電線の潮流の確率分布を計算する場合であっても、潮流同士の加算は、確率分布の加算演算となるため、畳み込み積分などを用いた計算が必要となる。例えば、図2に示す電力系統において、ブランチ2の送電線が解列される、という事故を想定する。事故発生後における各ブランチの送電線の潮流の確率分布は、事故発生前におけるブランチ2の送電線の潮流の確率分布を他の送電線に加算することにより求められる。この場合、ブランチ2の送電線に係る上記ファクター係数dを、他のブランチの送電線の潮流の確率分布に乗算するのではなく、ブランチ2の送電線の潮流の確率分布と、他のブランチの送電線の潮流の確率分布とを畳み込み積分する必要があり、単純な加算演算に比べて計算量が大幅に増加する。
【0038】
このように、不確定性ノードが電力系統に含まれる場合、潮流の確率分布を計算するためにモンテカルロ法を用いた膨大な計算量が必要となることに加え、潮流同士の加算に要する計算量も大幅に増加する。
【0039】
そこで、本実施形態の解析装置1は、一般的の確率潮流計算に代えて、上記近似モデルYを用いる。上述の通り、近似モデルYは、電力系統が含む1以上の不確定性ノードの出力の確率分布と、各ブランチの潮流の確率分布とを直接的に関係付ける関数である。
【0040】
詳述すると、N個の不確定性ノードと、M本のブランチとを含む電力系統の確率潮流計算は、次式(5)のように簡易的に表される。
【0041】
【数5】
【0042】
上述したモンテカルロ法を用いた確率潮流計算の手法は、N組の独立変数ζ、ζ、・・・ζについて膨大な数の計算点を設定し、それぞれの計算点について、式(5)の関数gに対応する電力方程式を、例えばニュートンラフソン方法を用いた収束計算によって演算することにより、各ブランチの潮流の確率分布である出力変数yを得る手法である。このため、計算量は、計算点に収束計算の計算量を乗じた量となり非常に膨大となる。
【0043】
一方、本実施形態の近似モデルYは、関数gを被近似関数とする近似関数に相当し、N組の独立変数ζ、ζ、・・・ζに対する確率潮流計算の応答関数である上記関数gを近似する関数である。換言すれば、近似モデルYは、N組の独立変数ζ、ζ、・・・ζの入力、(すなわちノードのそれぞれの出力の確率分布)と、式(5)におけるM組の出力変数y(すなわち各ブランチのそれぞれの潮流の確率分布)の推定値と、を直接的に関係付ける関数、又は数値モデルでもある。
【0044】
近似モデルYには、式(6A)及び式(6B)に示すように、それぞれが直交多項式系に属し、かつ、電力系統のトポロジーに応じた重みがそれぞれ重み係数によって与えられる複数の基底関数の線形結合で表された関数が用いられる。なお、Kは基底関数の個数である。
【0045】
【数6】
【0046】
本実施形態では、この式(6B)で表される関数に多項式カオス展開に基づく関数が用いられる。多項式カオス展開については、例えば、「Kazuaki Iwamura, et al., ”Arbitrary Polynomial Chaos Based Simulation of Probabilistic Power Flow Including Renewable Energies”, IFAC-PapersOnLine, Volume 53, Issue 2, 2020, Pages 12145-12150」の文献に記載されている。以下、この文献を「非特許文献3」と称する。
【0047】
多項式カオス展開において、基底関数の多項式は任意である。この場合において、基底関数の数Kが多いほど近似の精度が高められる。ただし、基底関数の数Kと、電力系統が含む不確定性ノードの数Nとは、次式(7)の関係を満たす必要がある。この式(7)において、dは全ての基底関数における最大次数であり、この式(7)により基底関数の最大次数d、及び基底関数の数Kが算定される。
【0048】
【数7】
【0049】
一方、重み係数行列Cの各係数は、非特許文献3に記載の通り、選点法を用いて求められる。選点法は、基底関数のベクトル(式(6C)を構成する直交多項式の基底関数の代表となる確率変数値を式(5)に代入し、その値に対応する推定値Yを潮流計算によって求めることで各係数を求める手法である。この場合において、代表となる確率変数値の選択には、通常、基底関数の最大次数dの一つ上の次数(d+1)の一変数多項式の根が用いられる。確率変数の数(すなわち不確定性ノードの数)がN個である場合、確率変数ごとに(d+1)個の計算点が算出される。そして、零点の数をmとすると、最大次数d、及び確率変数の数Nの関係は次式(8)の通りとなる。
【0050】
【数8】
【0051】
零点は直交多項式の基底関数ごとに求められるため、行列で表現すると式(9)のようになる。
【0052】
【数9】
【0053】
式(9)における左辺の行列はm×K(ただし、Kはm以下)となる。したがって、この左辺の行列から線形独立となるK行を選ぶことで、式(10)に示すK×Kの正方行列が得られる。そして、この式(10)における左辺の逆行列を求めることにより、重み係数行列Cが求められる。
【0054】
【数10】
【0055】
[LODFへの近似モデルYの適用]
近似モデルYにより求められる各ブランチの潮流の確率分布を、上記式(2)に適用することにより、事故発生後における各ブランチの潮流の確率分布が求められる。この場合、ODFへの近似モデルYの適用手法には、次の第1手法、及び第2手法が考えられる。
【0056】
第1手法は、事故発生前における個々のブランチの潮流の確率分布を近似モデルYによって求め、次いで、個々のブランチごとに、事故発生の後における潮流の確率分布を式(2)によって計算する手法である。具体的には、この第1手法において、送電線kが切断された場合の送電線lの事故後における上記出力変数の推定値は、次式(11)のように表される。したがって、ある送電線に事故が発生した場合には、他の送電線のそれぞれの潮流の確率分布が式(11)を用いて個々に求められる。
【0057】
【数11】
【0058】
第2手法は、事故発生の後に対応する近似モデルYを求めることにより、事故発生後の個々のブランチの潮流の確率分布を計算する手法である。
詳述すると、上記式(6A)及び式(6B)で表現される近似モデルYは、例えば、事故発生により電力系統の系統構成(トポロジー)が変化した場合でも、不確定性ノードの数N、及び、当該不確定性ノードについての上記確率変数ζが変化しない限り、基底関数は不変である。このことは、式(6A)及び式(6B)における重み係数行列Cを、事故発生後における電力系統のトポロジーを表す係数に変更するだけで、当該事故発生後に対応した近似モデルYcが得られることを意味する。そこで、第2手法では、先ず、事故発生後に対応する重み係数行列Ccを求めることにより、事故発生後に対応する近似モデルYcを求め、当該近似モデルYcを用いて、事後発生後におけるブランチの潮流の確率分布を求める。なお、本開示において「Cc」及び「Yc」は、それぞれ「C」及び「Y」に記号「~」を付加した文字に対応する。
【0059】
事故発生後に対応する重み係数行列Ccは、事故発生前に対応する重み係数行列Cと、ファクター係数dとに基づいて求められる。
詳述すると、上記式(11)は、事故発生前に対応する近似モデルYを用いることにより、式(12)のように、基底関数の線形結合の形に変形される。
【0060】
【数12】
【0061】
この式(12)において、基底関数ベクトルの各基底関数は、それぞれ重み係数行列Ccの係数によって重み付けされる。また、この重み係数行列Ccは、式(12A)に示すように、事故発生前に対応する重み係数行列Cと、ファクター係数dとによって決定される。
そして、電力系統内の各ブランチに式(12)を適用することにより、事故発生後に対応する近似モデルYcを表す式(13)が導出される。したがって、ある送電線に事故が発生した場合には、他の送電線のそれぞれの潮流の確率分布が式(13)の行列計算により求められる。
【0062】
【数13】
【0063】
[解析装置1の動作]
図3は、解析装置1における確率潮流計算処理の一例を示すフローチャートである。
解析装置1において、先ず、入力データ取得部100が入力データを取得する(ステップSa1)。入力データは、LODFのファクター係数d、近似モデルYの決定に必要なデータ、及び、想定事故に関するデータを少なくとも含む。ファクター係数dの決定に必要なデータは、例えば系統構成、各線路のインピーダンス、各負荷容量、各電源と各電源の容量、及び電圧指定値等といった、電力系統に関するデータを含む。近似モデルYの決定に必要なデータは、1以上の基底関数、及び、各不確定性ノードの出力を示すデータを含む。なお、基底関数は設計者等により予め適宜の多項式が設定される。想定事故に関するデータは、電力系統において事故が発生し得る1つ以上のブランチを特定するデータを含む。
【0064】
次に、ファクター係数決定部104は、入力データに基づいて、式(3)にしたがってLODFのファクター係数dを算出する(ステップSa2)。
【0065】
次いで、近似モデル決定部102は、入力データに基づいて近似モデルYの重み係数行列Cを決定するための処理を実行する。
具体的には、近似モデル決定部102は、選点法によって基底関数ごとに求められた零点を用いて上記式(10)を決定し、当該式(10)の左辺の逆行列を求めることにより、重み係数行列Cを決定する(ステップSa4)。重み係数行列Cが決定されることによって近似モデルYが決定する。
なお、ステップSa3、及びステップSa4の処理は、ステップSa2の前、又は同時に行われてもよい。
【0066】
次いで、確率潮流計算部106は、想定事故に関するデータに基づいて、想定事故ごとに、事故発生後の各ブランチの潮流の確率分布を計算する(ステップSa5)。この計算は、上述の通り、近似モデルY、及びファクター係数dに基づいて、上記第1手法、又は第2手法を用いて行われる。
そして、結果出力部108は、想定事故のそれぞれについての事故発生後の各ブランチの潮流の確率分布を解析結果として出力機器に出力する(ステップSa6)。
【0067】
この解析結果に基づいて、各ブランチの潮流量と各送電容量限界値とを想定事故ごとに比較することで、過負荷となるブランチがあるか否かを判定するといった信頼度評価を実施することができる。なお、この判定を実施する機能部を処理装置10が備えることにより、解析装置1が想定事故解析装置として機能してもよい。
【0068】
[パフォーマンス検証]
図4は本実施形態の確率潮流計算の精度についての検証結果を示す図であり、図5は本実施形態の確率潮流計算の計算速度についての検証結果を示す図である。
なお、検証は、前掲図2に示した電力系統を対象に、本実施形態の確率潮流計算を実施した場合と、モンテカルロ法を用いた一般的な確率潮流計算を実施した場合とを比較することにより行った。以下では、「モンテカルロ法を用いた一般的な確率潮流計算」を「従来手法」と称し、本実施形態の確率潮流計算を「近似モデル手法」と称する。
【0069】
図2の電力系統は、基準電圧が154kV,系統基準容量が1000MVAであり、4つの母線、及び4本のブランチを含む系統である。また、母線0がスラックであり,母線1、母線2、及び母線3に、それぞれ負荷、同期発電機G、及び風力発電WTが接続されている。風力発電WTが本開示における不確定性ノードに相当する。すなわち、風力発電WTの出力は確率的に変動する。この検証では、風力発電WTの過去の発電実績データとして、5分毎の1年間の風力発電データをモンテカルロ法の試行点として用いる。この場合、試行点の数は105、120点である。また、想定事故として、母線0と母線1の間のブランチ2の送電線において断線事故が発生し、ブランチ2の送電線の両端を解列したという事故を想定する。
【0070】
検証では、事故発生の前及び後のそれぞれについて、試行点の数だけ従来手法によって潮流を計算した。そして、この計算の精度を真値とみなし、事故発生の前及び後のそれぞれについて近似モデル手法の計算結果を、その真値からの平均二乗誤差(RSME)として精度を評価した。なお、近似モデル手法において、近似モデルYには多項式カオス展開に基づく関数を用い、また、事故発生後の潮流の計算には上記第2手法を用いた。
図4に示される通り、近似モデル手法の誤差は、ブランチ0、ブランチ1、及びブランチ2のいずれにおいても、十分に小さく、潮流を高い精度で求められることが確認された。
また、図2の電力系統のように系統の規模が小さい場合でも、図5に示される通り、事故発生の前及び後のそれぞれの潮流計算に要する時間を従来手法と近似モデル手法とで比べると、従来手法は、近似モデル手法の約630倍の計算時間を要しており、近似モデル手法が非常に高速であることが分かる。なお、図示を省略するが、近似モデル手法において、上記第1手法を用いた場合と上記第2手法を用いた場合とで事故発生後の潮流の計算に要する時間を比べると、第2手法を用いた場合は、第1手法は第2手法よりも約3倍の計算時間を要することが確認されている。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の解析方法は、出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上を含む電力系統に関するデータに基づいて、感度法におけるLODF(Line Outage Distribution Factors)のファクター係数dを決定することと、電力系統に含まれている1つ以上の電源の出力、及び、1つ以上の負荷機器の負荷量の確率分布と、電力系統内の各ブランチの潮流の確率分布とを直接的に関係付ける近似モデルYを決定することと、電力系統内のいずれか1つのブランチに事故が生じた後のブランチの各々の潮流の確率分布を、ファクター係数d、及び近似モデルYに基づいて算出することと、を含む。
この方法によれば、出力に不確定性を有する1つ以上の電源、及び、負荷量に不確定性を有する1つ以上の負荷機器の少なくとも1つ以上、すなわち出力、又は負荷量の確率分布が不特定である不確定性ノードを含む電力系統について、モンテカルロ法を用いて従来の確率潮流計算を行う場合に比べ、電力系統の潮流計算に要する計算量を大幅に削減でき、計算時間等のコストを削減できる。
【0072】
また、本実施形態において、近似モデルYは、それぞれが直交多項式系に属し、かつ、電力系統のトポロジーに応じた重みがそれぞれ重み係数によって与えられる複数の基底関数の線形結合で表された関数である。
この近似モデルYによれば、各不確定性ノードの出力の確率分布は不特定であってもよく、上述の特許文献2、及び特許文献3のように、確率分布を正規分布に制限する必要がない。
【0073】
また、本実施形態において、電力系統内のいずれか1つのブランチに事故が生じた後のブランチの各々の潮流の確率分布を、ファクター係数d、及び近似モデルYに基づいて算出することは、電力系統内のいずれか1つのブランチに事故が生じた後の電力系統のトポロジーに対応する重み係数の行列Ccを、事故が発生する前に対応する重み係数の行列Cと、ファクター係数dとに基づいて決定することと、電力系統内のいずれか1つのブランチに事故が生じた後の電力系統のトポロジーに対応する前記重み係数の行列と、複数の基底関数の行列との行列演算によって、電力系統内のいずれか1つのブランチに事故が生じた後のブランチの各々の潮流の確率分布を算出すること、を含む。
この方法によれば、電力系統内のいずれか1つのブランチに事故が生じた後のブランチの各々の潮流の確率分布を、ブランチごとに、近似モデルYとファクター係数dとに基づいて算出する手法(上述の第1手法)に比べ計算量を削減し、計算時間を短縮できる。
【0074】
また、本実施形態において、近似モデルYは、多項式カオス展開に基づく関数である。
この方法によれば、モンテカルロ法を用いて従来の確率潮流計算を行う場合に比べ、電力系統の潮流計算に要する計算量を大幅に削減しつつ、高い精度を維持できる。
【0075】
2.変形例
以上に例示した実施形態に付加される具体的な変形の形態を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の形態を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0076】
解析装置1は、1台のコンピュータに限らず、複数のコンピュータによって実現されてもよい。具体的には、解析装置1の処理装置10が備える各機能部は、複数のコンピュータがそれぞれ備える各プロセッサーによって実現されてもよい。この場合、図3に示した各ステップが、複数のコンピュータに割り当てられ、各コンピュータによって実行される。
【符号の説明】
【0077】
1…解析装置、10…処理装置、12…記憶装置、14…入力I/F装置、16…出力I/F装置、100…入力データ取得部、102…近似モデル決定部、104…ファクター係数決定部、106…確率潮流計算部、108…結果出力部、C、Cc…重み係数行列、PR…プログラム、Y、Yc…近似モデル、d…ファクター係数。
図1
図2
図3
図4
図5