(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121154
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】クリップ状端子及び導体接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
H01R13/11 E
H01R13/11 302P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028096
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】大場 光
(57)【要約】
【課題】第1弾性片と第2弾性片との間に挟まれる導体の様々な方向の位置ズレに追従可能なクリップ状端子、及び該クリップ状端子を備えた導体接続構造を提供する。
【解決手段】導体接続構造1は、第1導体4及び第2導体5と、クリップ状端子2とを備えている。第1導体4及び第2導体5は、板状の第1接続部44,54同士が互いに間隔をあけて平行に配置されている。クリップ状端子2は、基部20と、第1弾性片21と、第2弾性片22とを備えている。各弾性片21,22には、切欠き23が形成されている。第1導体4及び第2導体5は、第1接続部44,54が第1弾性片21と第2弾性片22との間に挟まれることでクリップ状端子2を介して導通する。この際、第1弾性片21の屈曲部21aが第1導体4の凸部41に弾性接触し、第2弾性片22の屈曲部22aが第2導体5の凸部51に弾性接触する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板で構成されており、基部と、前記基部の一端から曲げ起こされた第1弾性片と、前記基部の他端から曲げ起こされ、前記第1弾性片と対向した第2弾性片と、を備え、
前記第1弾性片及び前記第2弾性片は、自然状態において前記基部側から先端側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部が形成されており、前記屈曲部よりも前記基部側の部分に切欠きが形成されている
ことを特徴とするクリップ状端子。
【請求項2】
前記第1弾性片及び前記第2弾性片に、前記切欠きが一対形成され、
前記一対の切欠きは、前記第1弾性片及び前記第2弾性片それぞれの幅方向両端部を互いに近付く方向に切り欠いている
ことを特徴とする請求項1に記載のクリップ状端子。
【請求項3】
前記第1弾性片及び前記第2弾性片を複数備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のクリップ状端子。
【請求項4】
互いに間隔をあけて配置された第1導体及び第2導体と、請求項1~3の何れか1項に記載のクリップ状端子と、を備え、
前記第1導体及び前記第2導体が前記第1弾性片と前記第2弾性片との間に挟まれることで、前記クリップ状端子を介して前記第1導体と前記第2導体とが導通する
ことを特徴とする導体接続構造。
【請求項5】
前記第1導体及び前記第2導体は、それぞれ、板状に形成され、互いに離れる側に突出した凸部を備え、
前記第1弾性片の前記屈曲部が前記第1導体の前記凸部に接触し、前記第2弾性片の前記屈曲部が前記第2導体の前記凸部に接触する
ことを特徴とする請求項4に記載の導体接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ状端子を用いた導体接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリップ状端子を用いた導体接続構造の一例として、
図6,7に示すものが公知である(特許文献1を参照)。
【0003】
図6,7に示す導体接続構造501は、電気自動車の電源回路に適用されるものであり、互いに間隔をあけて配置された板状の第1導体504及び第2導体505と、クリップ状端子502と、を備えている。第1導体504は、バッテリ側に接続された電線511の端末に接続されている。第2導体505は、負荷側に接続された電線512の端末に接続されている。
【0004】
クリップ状端子502は、金属板で構成されており、基部520と、基部520の一端から曲げ起こされた第1弾性片521と、基部520の他端から曲げ起こされた第2弾性片522と、を備えている。また、クリップ状端子502は、第1弾性片521及び第2弾性片522を複数対備えている。
【0005】
第1弾性片521及び第2弾性片522は、自然状態において基部520側から先端側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部521a,522aが形成されている。
【0006】
第1導体504及び第2導体505は、第1弾性片521と第2弾性片522との間に挟まれることで、クリップ状端子502を介して導通する。この際、第1弾性片521の屈曲部521aが第1導体504に弾性接触し、第2弾性片522の屈曲部522aが第2導体505に弾性接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記各弾性片521,522は、第1導体504及び第2導体505に位置ズレが生じた場合、第1弾性片521及び第2弾性片522の対向方向のズレには追従してズレを吸収できるが、ねじれ方向のズレには追従できず、接触が不安定になるおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、第1弾性片と第2弾性片との間に挟まれる導体の様々な方向の位置ズレに追従可能なクリップ状端子、及び該クリップ状端子を備えた導体接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のクリップ状端子は、金属板で構成されており、基部と、前記基部の一端から曲げ起こされた第1弾性片と、前記基部の他端から曲げ起こされ、前記第1弾性片と対向した第2弾性片と、を備え、前記第1弾性片及び前記第2弾性片は、自然状態において前記基部側から先端側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部が形成されており、前記屈曲部よりも前記基部側の部分に切欠きが形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の導体接続構造は、互いに間隔をあけて配置された第1導体及び第2導体と、上記クリップ状端子と、を備え、前記第1導体及び前記第2導体が前記第1弾性片と前記第2弾性片との間に挟まれることで、前記クリップ状端子を介して前記第1導体と前記第2導体とが導通することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1弾性片と第2弾性片との間に挟まれる導体の様々な方向の位置ズレに追従可能なクリップ状端子、及び該クリップ状端子を備えた導体接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる導体接続構造を示す斜視図である。
【
図4】
図1のクリップ状端子のみを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態にかかる「クリップ状端子」及び「導体接続構造」について、
図1~5を参照して説明する。
【0015】
図1~3に示す導体接続構造1は、電気自動車の電源回路に適用されるものであり、第1導体4及び第2導体5と、クリップ状端子2と、を備えている。第1導体4は、バッテリ側に接続されている。第2導体5は、負荷側に接続されている。
【0016】
第1導体4は、金属板にプレス加工等が施されて得られるものであり、
図5に示すように、クリップ状端子2に挟まれる長方形板状の第1接続部44と、不図示の電線又はバスバと接続される第2接続部45と、を備えている。
【0017】
第2導体5は、第1導体4と同一形状であり、
図2に示すように、クリップ状端子2に挟まれる長方形板状の第1接続部54と、不図示の電線又はバスバと接続される第2接続部55と、を備えている。
【0018】
第1導体4及び第2導体5は、不図示の樹脂部に保持されており、第1接続部44,54同士が互いに間隔をあけて平行に配置された状態が維持されている。
【0019】
第1導体4の第1接続部44は、第2導体5の第1接続部54と反対側の平坦面40から突出した凸部41を複数備えている。複数の凸部41は、第1接続部44の長手方向に間隔をあけて並んでいる。
【0020】
同様に、第2導体5の第1接続部54は、第1導体4の第1接続部44と反対側の平坦面50から突出した凸部51を複数備えている。複数の凸部51は、第1接続部54の長手方向に間隔をあけて並んでいる。
【0021】
クリップ状端子2は、金属板で構成されており、
図4に示すように、平板状の基部20と、基部20の一端から曲げ起こされた第1弾性片21と、基部20の他端から曲げ起こされ、第1弾性片21と対向した第2弾性片22と、を備えている。また、クリップ状端子2は、第1弾性片21及び第2弾性片22を二対備えている。二つの第1弾性片21は、基部20の一端に間隔をあけて並んでいる。同様に、二つの第2弾性片22は、基部20の他端に間隔をあけて並んでいる。
【0022】
第1弾性片21及び第2弾性片22は、細長い帯状に形成されている。対を成す第1弾性片21及び第2弾性片22は、自然状態において基部20側から先端21b,22b側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端21b,22b側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部21a,22aが形成されている。
【0023】
第1弾性片21及び第2弾性片22は、屈曲部21a,22aよりも基部20側の部分に切欠き23が一対形成されている。一対の切欠き23は、第1弾性片21及び第2弾性片22それぞれの幅方向両端部を互いに近付く方向に切り欠いている。
【0024】
第1導体4及び第2導体5は、第1接続部44,54が第1弾性片21と第2弾性片22との間に挟まれることで、クリップ状端子2を介して導通する。この際、各第1弾性片21の屈曲部21aが第1導体4の各凸部41に弾性接触し、各第2弾性片22の屈曲部22aが第2導体5の各凸部51に弾性接触する。また、
図2,3に示すように、各屈曲部21a,22aの接触面は曲面(円柱の外周面の一部の形状)であり、各凸部41,51の接触面は平面である。
【0025】
上述したように、クリップ状端子2は、各弾性片21,22に切欠き23が形成されている。これにより、例えば
図3の矢印で示すように第1導体4にねじれが生じた場合、クリップ状端子2の各弾性片21,22が第1導体4のねじれに追従して弾性変形し、全接点において安定した接触状態を維持することができる。第2導体5にねじれが生じた場合も同様である。
【0026】
このように、導体接続構造1においては、クリップ状端子2の各弾性片21,22に、ねじれ方向追従構造としての切欠き23が形成されている。これにより、全接点(全ての屈曲部21a,22aとこれらに接触した凸部41,51)において安定した接触状態、即ち十分な接触面積が確保でき、接触抵抗の増加を抑制できる。
【0027】
また、上述した実施形態では、ねじれ方向の追従性をより高くするために各弾性片21,22に切欠き23が一対形成されているが、切欠き23は、各弾性片21,22に少なくとも一つ形成されていればよい。
【0028】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 導体接続構造
2 クリップ状端子
4 第1導体
5 第2導体
20 基部
21 第1弾性片
21a 屈曲部
22 第2弾性片
22a 屈曲部
23 切欠き
41 凸部
51 凸部